本発明は、D−エリトロースおよびアセチルリン酸の生成方法であって、ホスホケトラーゼを使用することによる、D−フルクトースおよびリン酸のD−エリトロースおよびアセチルリン酸への酵素的変換を含む生成方法を提供する。次いで、アセチル−CoAの前駆体である生成したアセチルリン酸は、有益なことには、以下にさらに記載の通りアセチル−CoAに変換され、生成したD−エリトロースは当技術分野で既知の酵素を利用する方法により、エリスリトールに変換されうる。実際、真核生物は、NAD(P)H−依存性還元反応によりエリスリトールを生じる、エリトロースの還元を触媒するエリトロースレダクターゼを含む;Moon et al., Appl Microbiol. Biotechnol, 86:1017-1025 (2010)を参照のこと。
生成したD−エリトロースは、グリコールアルデヒドの生成方法であって、アルドラーゼを使用することによる、D−エリトロースのグリコールアルデヒドへの酵素的変換を含み、前記アルドラーゼが2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼまたはフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼである、生成方法により、グリコールアルデヒドにさらに変換されうる。生成したグリコールアルデヒドは、ホスホケトラーゼまたはスルホアセトアルデヒドアセチルトランスフェラーゼ(EC 2.3.3.15)を使用することによる、このように生成したグリコールアルデヒドのアセチルリン酸への酵素的変換により、アセチルリン酸に最終的に変換されうる。D−グルコースから出発すると、上記D−フルクトースが、グルコース−フルクトースイソメラーゼを使用することによる、D−グルコースのD−フルクトースへの酵素的変換により得られる。対応する反応を図1に図式的に示す。したがって、上記方法を行うことによりアセチルリン酸が生成し、次いでこれがホスホトランスアセチラーゼによりアセチル−CoAに変換され、次いで代謝物、例えば、アセチル−CoA由来のアルケンまたはアセトンなどを生成するために有益に使用されうる。アセチル−CoA生成のための上記の人工の代謝経路には、アセチルリン酸(したがってアセチル−CoA)の収量が、天然の代謝経路と比較して増加するという利点がある。これは、最終的に、基質としてグルコースから出発すると、アセチル−CoAが3分子(ATPを消費することなく)生成するが、天然に存在するEMMP経路(解糖系)ではアセチル−CoAが2分子しか生じないためである。
したがって、一態様において、本発明は、D−エリトロースおよびアセチルリン酸の生成方法であって、反応:
D−フルクトース+リン酸→D−エリトロース+アセチルリン酸+H2O
による、ホスホケトラーゼを使用することによる、D−フルクトースおよびリン酸のD−エリトロースおよびアセチルリン酸への酵素的変換を含む生成方法に関する。
本発明者は、驚くべきことに、ホスホケトラーゼに分類される酵素が、上記反応に従って、D−フルクトースおよびリン酸のD−エリトロースおよびアセチルリン酸への酵素的変換を触媒することができることを発見した。非リン酸化型D−フルクトースがホスホケトラーゼの基質となることは知られていなかったため、このことは驚くべきことである。
様々な種類のホスホケトラーゼが知られており、それら全てが本発明による方法において使用可能である。一般的に、ホスホケトラーゼは、それらの天然における触媒反応での基質選択性に基づき、2種類に分類される:EC 4.1.2.9に分類され、基質としてキシルロース−5−リン酸(X5P)およびフルクトース−6−リン酸(F6P)を天然に使用するが、X5Pをより好むキシルロース−5−リン酸(X5P)ホスホケトラーゼ、ならびに4.1.2.22に分類され、X5PおよびF6P両方を基質として同等の活性で使用可能であるX5P/フルクトース−6−リン酸(F6P)ホスホケトラーゼ(Suzuki et al., J. Biol. Chem. 44 (2010), 34279-34287)。以下では、「ホスホケトラーゼ」という語は常に両方の種類を指す。
したがって、X5Pホスホケトラーゼは、EC 4.1.2.9に分類され、以下の反応を触媒することができる酵素である:
D−キシルロース−5−リン酸+リン酸→D−グリセルアルデヒド−3−リン酸+アセチルリン酸+H2O
EC 4.1.2.22に分類されるもう一方の種類のホスホケトラーゼは、一般的にフルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼと称され、以下の反応:
D−フルクトース−6−リン酸+リン酸→アセチルリン酸+D−エリトロース4−リン酸+H2O
を天然に触媒することができる。
ホスホケトラーゼが両方の種類のホスホケトラーゼに割り当てられる場合、例えば、ニトロランセトゥス・ホランディクス(Nitrolancetus hollandicus)Lb由来のホスホケトラーゼの場合、または同定されたホスホケトラーゼが2種類のいずれにも未だ割り当てられておらず、一般的にホスホケトラーゼに分類されているのみである場合もある。「ホスホケトラーゼ」という語は、本明細書ではこれらのホスホケトラーゼも指す。
したがって、本発明による方法の一実施形態において、D−フルクトースおよびリン酸のD−エリトロースおよびアセチルリン酸への酵素的変換は、EC 4.1.2.9のホスホケトラーゼに分類されるホスホケトラーゼを使用することにより実現される。この酵素は様々な生物、特に細菌および菌類などの微生物で確認されている。好ましい一実施形態において、ホスホケトラーゼ(EC 4.1.2.9)は原核生物、好ましくは細菌由来である。この酵素は、例えば、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)(Uniprot受入番号:Q88S87;Q88U67)、ラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)(Uniprot受入番号:Q937F6)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)(Uniprot受入番号:A0PAD9)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis)(Uniprot受入番号:Q9AEM9)、ブチロビブリオ・フィブリソルベンス (Butyrovibrio fibrisolvens)、フィブロバクター・インテスティナリス(Fibrobacter intestinalis)、フィブロバクター・スクシノゲネス(Fibrobacter succinogenes)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)、オエノコッカス・オエニ(Oenococcus oeni)、スタルケヤ・ノベラ(Starkeya novella)、チオバチルス属の種(Thiobacillus sp.)、サーモビスポラ・ビスポラ(Thermobispora bispora)(株ATCC 19993/DSM43833/CBS139.67/JCM10125/NBRC14880/R51;Uniprot受入番号D6YAD9)、サーモバキュラム・テレヌム(Thermobaculum terrenum)(株ATCC BAA−798/YNP1;Uniprot受入番号D1CI63)およびニトロランセトゥス・ホランディクス(Nitrolancetus hollandicus)Lb(Uniprot受入番号I4EJ52)に存在することが記載されている。
別の好ましい実施形態において、ホスホケトラーゼ(EC 4.1.2.9)は真核生物、好ましくは菌類、例えばS・セレビシア(S. cerevisia)などの酵母由来である。この酵素は、例えば、エメリセラ・ニデュランス(Emericella nidulans)(Uniprot受入番号:Q5B3G7)、メタリジウム・アニソプリエ(Metarhizium anisopliae)(Uniprot受入番号:C1K2N2)、キャンディダ・ボイディニ(Candida boidinii)、キャンディダ・クルバタ(Candida curvata)、キャンディダ・ファマータ(Candida famata)、キャンディダ・フミコラ(Candida humicola)、キャンディダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)、キャンディダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)NCYC926、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、サイバリンドネラ・ジャディニ(Cyberlindnera jadinii)、サイバリンドネラ・サツルヌス(Cyberlindnera saturnus)、デバロマイセス・ロベルトシエ(Debaromyces robertsiae)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、クリベロマイセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)、クリベロマイセス・ファゼオロスポラス(Kluyveromyces phaseolosporus)、リポマイセス・スターケイ(Lipomyces starkeyi)、オガタエ・アングスタ(Ogataea angusta)、パキソレン・タンノフィラス(Pachysolen tannophilus)、プリセオマイセス・メディウス(Priceomyces medius)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ロドスピリジウム・トルロイデス(Rhodospiridium toruloides)、ロドトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)、ロドトルラ・グラミニス(Rhodotorula graminis)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)、トリコスポロン・クタネウム(Trichosporon cutaneum)およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)に存在することが記載されている。
ホスホケトラーゼ(EC 4.1.2.9)の酵素活性は、当業者に既知の方法で評価可能である。このような方法は、例えば、Meile et al. (J. Bacteriol. 183 (2001), 2929-2936)およびSuzuki et al (Acta Cryst. F66 (2010), 941-943)に記載されている。
ホスホケトラーゼ(上記の通りそれぞれ、キシルロース 5−リン酸ホスホケトラーゼおよびフルクトース 6−リン酸ホスホケトラーゼと一般的に称されるEC 4.1.2.9およびEC 4.1.2.22)は、構造的にも機能的にも十分に規定されている。例えば、EC 4.1.2.9およびEC 4.1.2.22のホスホケトラーゼの代表例として、Petrareanu et al. (Acta Crystallographica F66 (2010), 805-807)は、基質としてのキシルロース 5−リン酸およびフルクトース 6−リン酸の両方に対し活性であることが示された酵素である、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)由来のキシルロース−5−リン酸ホスホケトラーゼのX線結晶解析について記載している。
本発明による方法の別の実施形態において、D−フルクトースおよびリン酸のD−エリトロースおよびアセチルリン酸への酵素的変換は、EC 4.1.2.22のフルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼに分類されるホスホケトラーゼを使用することにより実現される。この酵素は、様々な生物、特に細菌および菌類などの微生物で確認されている。好ましい一実施形態において、フルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼ(EC 4.1.2.22)は原核生物、好ましくは細菌由来である。この酵素は、例えば、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム・アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis)(Uniprot受入番号:Q9AEM9)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム(Bifidobacterium pseudolongum)、特にビフィドバクテリウム・シュードロンガム亜種グロボサム(Bifidobacterium pseudolongum subsp. globosum)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・デンティウム(Bifidobacterium dentium)、ビフィドバクテリウム・モンゴリエンス(Bifidobacterium mongoliense)、ビフィドバクテリウム・ボンビ(Bifidobacterium bombi)、カプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)、ガードネレラ・バジナリス(Gardnerella vaginalis)、グルコンアセトバクター・キシリナス(Gluconacetobacter xylinus)、ラクトバチルス・パラプランタラム(Lactobacillus paraplantarum)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)およびニトロランセトゥス・ホランディクス(Nitrolancetus hollandicus)Lb(Uniprot受入番号I4EJ52)に存在することが記載されている。
別の好ましい実施形態において、フルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼ(EC 4.1.2.22)は真核生物、好ましくは菌類、例えばS・パストリアヌス(S. pastorianus)などの酵母由来である。この酵素は、例えば、キャンディダ属の種(Candida sp.)、キャンディダ属の種(Candida sp.)107、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、ロドトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)、ロドトルラ・グラミニス(Rhodotorula graminis)およびサッカロマイセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)に存在することが記載されている。
この酵素は、構造的にも機能的にも十分に規定されている。例えば、Suzuki et al. (Acta Crystallographica F66 (2010), 941-943;J. Biol. Chem. 285 (2010), 34279-34287)は、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)由来のホスホケトラーゼの過剰発現、結晶化およびX線解析について記載している。ビジフォバクテリウム・ラクティス(Bidifobacterium lactis)由来のキシルロース−5−リン酸/フルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼをコードする遺伝子が、例えばMeile et al. (J. Bacteriol. 183 (2001), 2929-2936)に記載されている。
フルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼ(EC 4.1.2.22)の酵素活性は、当業者に既知の方法で評価可能である。このような方法は、例えば、Meile et al. (J. Bacteriol. 183 (2001), 2929-2936)およびSuzuki et al. (Acta Cryst. F66 (2010), 941-943)に記載されている。
EC 4.2.1.9またはEC 4.2.1.22に未だ分類されておらず、本発明による方法において使用可能であるその他のホスホケトラーゼは、例えば、サーモシネコッカス・エロンガトゥス(Thermosynechococcus elongatus)(株BP−1;Uniprot受入番号:Q8DJN6)由来のホスホケトラーゼ、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)36D1(Uniprot受入番号:G2TIL0)由来のホスホケトラーゼ、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis subp. lactis)(株KF147;Uniprot受入番号:A9QST6)由来のホスホケトラーゼ、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム亜種グロボサム(Bifidobacterium pseudolongum subsp. globosum)(Uniprot受入番号:Q6R2Q6)由来のホスホケトラーゼ、およびクロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)(株ATCC 824;Uniprot受入番号:Q97JE3;Servisky et al. (J. Ind. Microbiol. Biotechnol. 39 (2012), 1859-1867);配列番号2)由来のホスホケトラーゼである。
添付の実施例において、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム亜種グロボサム(Bifidobacterium pseudolongum subsp. globosum)(Uniprot受入番号:Q6R2Q6;配列番号1)、クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)(株ATCC 824;Uniprot受入番号:Q97JE3;配列番号2)およびラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis subp. lactis)(株KF147;Uniprot受入番号:A9QST6;配列番号3)のホスホケトラーゼが、D−フルクトースおよびリン酸をD−エリトロースおよびアセチルリン酸に変換できることが示される。
好ましい実施形態において、本発明の方法において使用されるホスホケトラーゼは、配列番号1〜3のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するか、配列番号1〜3のいずれか1つに対し少なくともx%相同なアミノ酸配列を示し、かつホスホケトラーゼ活性を有し、ここで、xは30〜100の間の整数、好ましくは35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99であり、このような酵素は、本明細書で上記に示す通り、D−フルクトースおよびリン酸をD−エリトロースおよびアセチルリン酸に変換することができる。好ましくは、同一性の程度は、各配列を上記の配列番号のいずれか1つのアミノ酸配列と比較することにより決定される。比較される配列が同じ全長でない場合、同一性の程度は、好ましくは、より長い配列中のアミノ酸残基と同一である、より短い配列中のアミノ酸残基のパーセンテージ、またはより短い配列中のアミノ酸残基と同一である、より長い配列中のアミノ酸残基のパーセンテージのいずれかを指す。配列同一性の程度は、当技術分野で周知の方法により、好ましくはCLUSTALなどの適切なコンピュータアルゴリズムを使用して決定可能である。
特定の配列が、例えば、参照配列に対し80%同一であるかどうかを決定するためClustal解析法を使用する場合、デフォルト設定を使用してもよく、または設定を好ましくは以下の通りにする:アミノ酸配列の比較においては、マトリクス:blosum30;オープンギャップペナルティ:10.0;伸長ギャップペナルティ:0.05;ディレイディバージェント(Delay divergent):40;ギャップ分離距離(Gap separation distance):8。ヌクレオチド配列の比較においては、伸長ギャップペナルティが好ましくは5.0に設定される。
好ましくは、同一性の程度は配列の全長にわたって算出される。
ホスホケトラーゼ配列の多重アラインメントにより、高度に保存されたいくつかの領域が示され、これらの領域のうち2つが、ホスホケトラーゼのシグネチャーパターンとして使用されることが記載されている(http://prosite.expasy.org/PDOC60002)。第1のシグネチャーパターンはE−G−G−E−L−G−Yであり、第2のシグネチャーパターンはG−x(3)−[DN]−x−P−x(2)−[LIVFT]−x(3)−[LIVM]−x−G−D−G−Eである。第1のシグネチャーパターンの機能は未だ不明であるが、第2のシグネチャーパターンはチアミンピロリン酸結合部位に相当する。したがって、好ましい実施形態において、本明細書で上記に定義されるホスホケトラーゼは、上記2つのシグネチャーパターンのうち少なくとも1つ、好ましくは少なくとも第2のシグネチャーパターン、さらにより好ましくは両方のシグネチャーパターンを含むアミノ酸配列を有する。
配列の比較により、様々な起源のホスホケトラーゼ間の全体の配列同一性が、約26%と低い場合があることが示されている。例えば、Meile et al. (J. Biol. Chem. 183 (2001), 2929-2936)は、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)のD−キシルロース 5−リン酸/D−フルクトース 6−リン酸ホスホケトラーゼ遺伝子(xfp)が、その他の生物のゲノムにおける配列に対し26%〜55%の同一性を示したことを報告している。
選択されたホスホケトラーゼが、D−フルクトースおよびリン酸のD−エリトロースおよびアセチルリン酸への変換を触媒することができるかどうかは、例えば、添付の実施例に示すアッセイにより評価可能である。
「リン酸」という語は、本発明の方法に関して、D−フルクトースおよびリン酸のD−エリトロースおよびアセチルリン酸への変換方法において使用される酵素のための、リン酸供給源として許容される化合物を指す。リン酸、すなわちH3PO4の形態でリン酸を用意することが可能である。しかし、その他の形態、特に、水素原子のうち1つ、2つまたは3つが、ナトリウムイオンなどのその他のイオンで置き換えられたリン酸(H3PO4)塩も想定可能である。
ホスホケトラーゼはチアミン二リン酸依存性酵素である、すなわち補因子としてチアミン二リン酸(ThDPまたはTPPとも称される)が必要である。したがって、本発明による方法において、反応中にTPPを供給することが有利である。さらに、一部のホスホケトラーゼには、補因子としてMg2+またはCa2+などのイオンが必要である。このような場合、本発明による方法は、上記の変換中にこのようなイオンが存在することも含む。
ホスホケトラーゼによるD−フルクトースおよびリン酸の上記変換の産物、すなわちD−エリトロースおよびアセチルリン酸は、目的の化合物にさらに変換されうる重要な代謝物である。アセチルリン酸の目的の化合物へのさらなる変換については、これより下に記載する。
以下で、D−エリトロースの変換、特に、第1の態様における、最終的にアセチルリン酸2分子をさらに生じるD−エリトロースの変換についてさらに記載する。この文脈において、D−エリトロース1分子をグリコールアルデヒド2分子に変換させる方法が提供される。したがって、別の態様において、本発明は、グリコールアルデヒドの生成方法であって、アルドラーゼを使用することによる、D−エリトロース1分子のグリコールアルデヒド2分子への酵素的変換を含む方法にも関する。適切なアルドラーゼの例は、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)およびフルクトース-ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)である。
本発明者は、驚くべきことに、アルドラーゼ、例えば2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)またはフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)を、D−エリトロース1分子をグリコールアルデヒド2分子に変換するのに使用することができることを発見した。これらの酵素により天然に触媒される反応は全く異なるものであり、リン酸化基質を伴い、これらの酵素が、D−エリトロースをグリコールアルデヒドに変換するために、基質としてD−エリトロースを使用できることは知られていなかったため、この発見は驚くべきものである。
2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)に分類されるアルドラーゼは、デオキシリボース−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)とも称され、以下の反応を触媒する酵素である:
この酵素はリアーゼ、具体的にはアルデヒドリアーゼのグループに属し、炭素−炭素結合を切断する。この酵素クラスの系統名は、2−デオキシ−D−リボース−5−リン酸アセトアルデヒドリアーゼ(D−グリセルアルデヒド−3−リン酸形成性)である。この酵素はしばしば、ホスホデオキシリボアルドラーゼ、デオキシリボアルドラーゼ、デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼおよび2−デオキシ−D−リボース−5−リン酸アセトアルデヒドリアーゼとも称される。この酵素はペントースリン酸経路に関与する。
2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)は様々な生物、特に細菌などの微生物で確認されている。好ましい一実施形態において、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)は、原核生物、好ましくは細菌由来である。この酵素は、例えば、大腸菌(Escherichia coli)(Uniprot受入番号:P0A6L0)、アエロピュルム・ペルニクス(Aeropyrum pernix)(Uniprot受入番号:Q9Y948)、枯草菌(Bacillus subtilis)、クレブシエラ・ブチリカス(Klebsiella butylicus)(Uniprot受入番号:A2BLE9)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)(SwissProt受入番号:Q7WT44)、パエニバチルス属の種(Paenibacillus sp.)(Uniprot受入番号:C7E719)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)(SwissProt受入番号:Q9AIP7)、サーモコッカス・コダカラエンシス(Thermococcus kodakarensis)(SwissProt受入番号:Q877I0)およびエルシニア属の種(Yersinia sp)EA015(Uniprot受入番号:C0LSK9)に存在することが記載されている。
別の好ましい実施形態において、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)は真核生物由来である。この酵素は、例えば、ウシ(Bos Taurus)およびヒト(Homo sapiens)に存在することが記載されている。
さらに、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)は、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)(株HB8)(Uniprot受入番号:Q5SJ28)、クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)(株ATCC 824)(Uniprot受入番号:Q97IU5)、アセトバクター属の種(Acetobacter sp.)(Uniprot受入番号:R5Q5K8)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)(株ATCC 700396)(Uniprot受入番号:Q5FLZ2)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(株ウシRF122)(Uniprot受入番号:Q2YUU4)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)(Uniprot受入番号:K1GTP0)、アセトバクテリウム・ウッディ(Acetobacterium woodii)(株ATCC 29683)(Uniprot受入番号:H6LFY1)、ストレプトコッカス・ゴルドニ(Streptococcus gordonii)(株Challis)(Uniprot受入番号:A8AX59)、シェワネラ・オネイデンシス(Shewanella oneidensis)(株MR−1)(Uniprot受入番号:Q8EHK4)、ネオサルトリア・フミガタ(Neosartorya fumigata)(アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus))(株ATCC MYA−4609)(Uniprot受入番号:A4D9G0)およびハイパーサーマス・ブチリカス(Hyperthermus butylicus)(Uniprot受入番号:A2BLE9)でも確認されている。
2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)の酵素活性は、当業者に既知の方法で評価可能である。このような方法は、例えば、DeSantis et al., Biorg. Med. Chem. 11: 43-52 (2003)およびSakuraba et al., Appl. Environ. Microbiol. 73: 7427-7434 (2007)に記載されている。そこに記載される通り、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼの酵素活性は、例えば、2−デオキシリボース−5−リン酸切断(逆アルドール)アッセイまたはアルドール縮合(アルドール)アッセイにより評価可能である。
2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)は、構造的にも機能的にも十分に規定されている。例えば、Heine et al. (J. Mol. Biol. (2004) 343: 1019-1034)は、分解能0.99ÅでのSe−Met多波長異常分散(MAD)法により、大腸菌(E. coli)の細菌性クラスI 2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼの結晶構造について記載している。Heine et al.およびその中の文献は、一次配列解析から予測される通り、大腸菌(E.coli)由来の2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼが、典型的なTIM(α/β)8バレルフォールドを示すことを記載している。アルドラーゼに見られるTIMβ/αバレルからなる構造ドメインは、InterProにおいて、InterPro IPR013785として参照される(http://www.ebi.ac.uk/interpro/entry/IPR013785)。
その化学的機構に従って、アルドラーゼは、2つのクラスに分けられる。デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(DERA、EC 4.1.2.4)は、クラスIアルドラーゼの1つである。クラスIアルドラーゼは補因子非依存性であり、厳密に保存された活性部位のリジンとシッフ塩基を形成することにより、供与体基質を活性化する(Dean et al. Adv.Synth.Catal. 349 (2007), p. 1308-1320)。
Heine et al.により示される通り、大腸菌(E.coli)2−デオキシリボース 5−リン酸アルドラーゼは、活性部位に2つのリジン残基を含む。Lys167がシッフ塩基中間体を形成する一方、反応性のリジン残基のすぐ近くにあるLys201は、Lys167のpKa撹乱の原因となり、したがって、これも重要な残基である。
様々な生物由来の2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼを大腸菌(E.coli)−2デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼと比較すると、以下の配列同一性が明らかとなった(Heine et al., 前に引用):
サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)由来の2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼとは30%、アエロピュルム・ペルニクス(Aeropyrum pernix)由来の2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼとは23%、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)由来の2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼとは32%、およびアクイフェックス・エオリカス(Aquifex aeolicus)由来の2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼとは27%。
しかし、配列同一性レベルが低いにもかかわらず、活性部位環境はこれらの 酵素全てにおいて類似している。
Kullartz and Pietruzska (Journal of Biotechnology 161 (2012) p.174-180)は、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)由来の新規の2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼを特定し、この酵素と大腸菌(E. coli)由来の2−デオキシリボース 5−リン酸アルドラーゼとの間の配列アラインメントを与えている。配列は低い同一性(28%)、および59%の類似性しか共有していなかったが、大腸菌(E.coli)由来の2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼの触媒活性部位の非常に重要な残基(DeSantis et al., Biorg. Med. Chem. 11 (2003) p. 43-52)が、R・エリスロポリス(R. erythropolis)由来の2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼにおける対応する残基と完全に一致する。大腸菌(E.coli)由来の2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼにおける、シッフ塩基を形成する残基Lys167は、R・エリスロポリス(R. erythropolis)由来のDERAにおけるLys155に相当し、大腸菌(E. coli)におけるAsp102およびLys176のプロトンシャッフリング系(proton shuffling system)は、R・エリスロポリス(R.erythropolis)におけるAsp92およびLys176と一致する。
A・ブーネイ(A. boonei)(Uniprot受入番号:B5IEU6)、A・ペルニクス(A.pernix)(Uniprot受入番号:Q9Y948)、P・アエロフィラム(P. aerophilum)(Uniprot受入番号:Q8ZXK7)およびT・マリティマ(T.maritime)(Uniprot受入番号:Q9X1P5)を含む好熱性微生物の代表的な2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼタンパク質の配列アラインメントにより、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼにおいて、シッフ塩基を形成するのに不可欠な残基Lys127が高度に保存されていることが示された。さらに、プロトンリレーにおいて重要であることが知られる残基Asp92およびLys185も、これらの酵素全てにおいて高度に保存されていた(Yin et al, African journal of Biotechnology, 10 (2011) p.16260-16266)。
本発明の方法において、D−エリトロースのグリコールアルデヒドへの変換において使用される2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)は、原核生物または真核生物由来の任意の2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)であってよい。実施例のセクションにおいては、原核生物の2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ、すなわち、大腸菌(E. coli)、株K12の2−デオキシ−D−リボース−5−リン酸アルドラーゼ(配列番号4);Uniprot P0A6L0が記載されている。添付の実施例に示される通り、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)が基質としてD−エリトロースを使用でき、これをグリコールアルデヒドに変換できることが判明した。基本的には、任意の2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)、特に原核生物または真核生物由来の2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)が、本発明による方法において使用可能である。
好ましい実施形態において、本発明の方法においてD−エリトロースのグリコールアルデヒドへの変換において使用される2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)は、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)(株HB8/ATCC 27634/DSM579)由来のデオキシリボース−リン酸アルドラーゼ;Uniprot Q5SJ28(配列番号5)、クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)(株ATCC 824/DSM792/JCM1419/LMG5710/VKM B−1787)由来のデオキシリボース−リン酸アルドラーゼ;Uniprot Q97IU5(配列番号6)、アセトバクター属の種(Acetobacter sp.)由来のデオキシリボース−リン酸アルドラーゼ;Uniprot R5Q5K8(配列番号7)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)(株 ATCC 700396/NCK56/N2/NCFM)由来のデオキシリボース−リン酸アルドラーゼ;Uniprot Q5FLZ2(配列番号8)、ハイパーサーマス・ブチリカス(Hyperthermus butylicus)(株DSM5456/JCM9403)由来のデオキシリボース−リン酸アルドラーゼ;Uniprot A2BLE9(配列番号9)、ストレプトコッカス・ゴルドニ(Streptococcus gordonii)(株Challis/ATCC 35105/CH1/DL1/V288)由来のデオキシリボース−リン酸アルドラーゼ;Uniprot A8AX59(配列番号10)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)由来のデオキシリボース−リン酸アルドラーゼ;Uniprot K1GTP0(配列番号11)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(株ウシRF122/ET3−1)由来のデオキシリボース−リン酸アルドラーゼ;Uniprot Q2YUU4(配列番号12)、アセトバクテリウム・ウッディ(Acetobacterium woodii)(株ATCC 29683/DSM1030/JCM2381/KCTC1655)由来のデオキシリボース−リン酸アルドラーゼ;Uniprot H6LFY1(配列番号13または配列番号32)、ネオサルトリア・フミガタ(Neosartorya fumigata)(株ATCC MYA−4609/Af293/CBS101355/FGSC A1100)(アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus))由来のデオキシリボース−リン酸アルドラーゼ;Uniprot A4D9G0(配列番号14)またはシェワネラ・オネイデンシス(Shewanella oneidensis)(株MR−1)由来のデオキシリボース−リン酸アルドラーゼ;Uniprot Q8EHK4(配列番号15)であってよい。
したがって、好ましい実施形態において、D−エリトロースをグリコールアルデヒドに変換するための、本発明の方法において使用される2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)は、配列番号4〜15のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するか、配列番号4〜15のいずれかに対し少なくともx%相同なアミノ酸配列を示し、かつD−エリトロースのグリコールアルデヒドへの変換を触媒する活性を有し、ここで、xは30〜100の間の整数、好ましくは35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である。好ましくは、同一性の程度は、各配列を上記配列番号のいずれか1つのアミノ酸配列と比較することにより決定される。比較される配列が同じ全長でない場合、同一性の程度は、好ましくは、より長い配列中のアミノ酸残基と同一である、より短い配列中のアミノ酸残基のパーセンテージ、またはより短い配列中のアミノ酸残基と同一である、より長い配列中のアミノ酸残基のパーセンテージのいずれかを指す。配列同一性の程度は、当技術分野で周知の方法により、好ましくはCLUSTALなどの適切なコンピュータアルゴリズムを使用して決定可能である。
特定の配列が、例えば、参照配列に対し80%同一であるかどうかを決定するためClustal解析法を使用する場合、デフォルト設定を使用してもよく、または設定を好ましくは以下の通りにする:アミノ酸配列の比較においては、マトリクス:blosum30;オープンギャップペナルティ:10.0;伸長ギャップペナルティ:0.05;ディレイディバージェント:40;ギャップ分離距離:8。ヌクレオチド配列の比較においては、伸長ギャップペナルティが好ましくは5.0に設定される。
好ましくは、同一性の程度は配列の全長にわたって算出される。
選択された2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)が、D−エリトロースのグリコールアルデヒドへの変換を触媒することができるかどうかは、例えば、添付の実施例に示すアッセイにより評価可能である。
上記の通り、D−エリトロース1分子のグリコールアルデヒド2分子への変換は、フルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)により触媒される酵素反応によっても実現されうる。フルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)は、以下の反応を触媒することができる酵素である:
この酵素は様々な生物で確認されており、フルクトース−1,6−ビスリン酸アルドラーゼは、異なる反応機構に依存する2つのクラスに分けられる。クラスIのフルクトース−1,6−ビスリン酸アルドラーゼは主に動物および高等植物に見られ、クラスIIのフルクトース−1,6−ビスリン酸アルドラーゼは主に藻類、細菌および酵母に見られる。クラスIIに属する酵素には、補因子として二価の金属イオンが必要である。
タイプIおよびタイプIIの両方のフルクトース−1,6−ビスリン酸アルドラーゼが様々な原核生物および真核生物起源から単離されており、そのため、フルクトース−1,6−ビスリン酸アルドラーゼは、解糖系、糖新生およびフルクトース代謝において非常に重要な役割を果たす、普遍的な解糖酵素である(Brovetto M. et al. Chem. Rev. 111 (2011), 4346-4403)。
したがって、好ましい実施形態において、フルクトース−1,6−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)は原核生物、好ましくは細菌由来である。この酵素は、例えば、ペプトニフィラス・アサッカロリチカス(Peptoniphilus asaccharolyticus)、大腸菌(Escherichia coli)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ニホンコウジカビ(Aspergillus oryzae)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、枯草菌(Bacillus subtilis)、クロストリジウム属の種(Clostridium sp.)、コリネバクテリウム属の種(Corynebacterium sp.)、ヘリコバクター・ピロリ(Heliobacter pylori)、ラクトバチルス属の種(Lactobacillus sp.)、マイコバクテリウム属の種(Mycobacterium sp.)、ペニシリウム属の種(Penicillinum sp.)、シュードモナス属の種(Pseudomonas sp.)、熱帯性マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、サッカロマイセス属の種(Saccharomyces sp.)およびメチロコッカス・クニクルス(Methylococcus cuniculus)に存在することが記載されている。
さらに、好ましい実施形態において、フルクトース 1,6−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)は真核生物由来である。この酵素は、例えば、ヒト(Homo sapiens)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、アナウサギ(Oryctolagus cuniculus)、セキショクヤケイ(Gallus gallus)、トウモロコシ(Zea mays)、ウシ(Bos Taurus)、ハツカネズミ(Mus musculus)およびアルファルファ(Medicago sativa)に存在することが記載されている。
Siebers et al.の研究はまず、伝統的なクラスIおよびクラスII酵素をコードする遺伝子が、配列決定された古細菌ゲノムのいずれにおいても確認されないことを明らかにした(Siebers B. et al., J Bol.Chem. 276 (2001), 28710-28718)。後に、2種類の超好熱性古細菌、サーモプロテウス・テナックス(Thermoproteus tenax)およびパイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)由来のアルドラーゼの生化学的および構造的特性決定により、これらの酵素がシッフ塩基機構を使用しており、そのためクラスIアルドラーゼに属することが示された(Siebers et al., 前に引用;Lorentzen E. et al., Biochem. Soc. Trans. 32 (2004), 259-263)。
クラスIフルクトース−1,6−ビスリン酸アルドラーゼは、免疫反応性、ならびにフルクトース−1,6−二リン酸およびフルクトース 1−リン酸基質についての代謝回転に基づいて区別される、3つのアイソザイム型に分類されうる(Blonski et al., Biochem. J. 323 (1997), 71-77)。ウサギの筋肉由来のアイソザイムAは、クラスIのフルクトース−1,6−ビスリン酸アルドラーゼのうち最も広く研究されているものである(Gefflaut et al., Prog. Biophys. Mol. Biol. 63 (1995), 301-340)。数十の異なるアイソザイムが配列決定されており、ウサギの筋肉由来のもの(Sygusch et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 84 (1987), 7846-7850)、ヒトの筋肉由来のもの(Gamblin et al., FEBS Lett. 262 (1987), 282-286、Arakaki et al., Protein Sci. 13 (2004), 3077-3084)およびショウジョウバエ由来のもの(Hester et al., FEBS Lett. 292 (1991), 237-242)を含む、いくつかのアルドラーゼアイソザイムの構造が決定されている。C末端領域を構成する20個のアミノ酸残基を除いて、これらのアイソザイムの分子構造は高度に保存されている。ホモ四量体の各酵素サブユニットのポリペプチドフォールドはβ−バレルに相当し、活性部位はβ−バレルの中心に位置する(Sygusch et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 84 (1987), 7846-7850)。その他のβ−バレルアイソザイムとは異なり、活性部位が相当数の荷電アミノ酸残基、すなわちAsp−33、Lys−107、Lys−146、Glu−187およびLys−229から構成されている(Blonski et al., Biochem. J. 323 (1997), 71-77)。
クラスIIのFBP−アルドラーゼには、二価カチオン、通常Zn2+が必要であり、一価カチオンにより活性化される(Horecker et al., In The Enzymes (Boyer, P. D.,ed.), 1972, 3rd edit., vol. 7, 213-258, Academic Press, New York)。クラスIIのFBP−アルドラーゼは、クラスIの酵素と約15%の配列同一性を共有している(Naismith et al., J. Mol. Biol. 225 (1992), 1137-1141)。したがって、好ましい実施形態において、本発明の方法において使用されるフルクトース−1,6−ビスリン酸アルドラーゼは、二価カチオン、好ましくはZn2+存在下で供給され、一価カチオンにより活性化される。
クラスIIのFBP酵素は、クラスIIAおよびクラスIIBファミリーにさらに分類されうる。伝統的に、クラスIIAおよびクラスIIBのFBP酵素は、配列相同性およびオリゴマー状態に従って分類されていた。クラスIIAのFBP酵素は二量体と考えられ、クラスIIBのFBAは二量体、四量体または八量体である可能性があった(Izard and Sygush, J. Biol. Chem 279 (2004), 11825-11833;Galkin et al., Biochemistry 48 (2009), 3186-3196;Nakahara et al., Plant Cell Physiol. 44 (2003), 326-333)。FBP−タンパク質の配列アラインメントにより、各ファミリーに属するメンバーが40%の配列類似性を示し、タイプAおよびBのクラスIIFBPアルドラーゼ間のアミノ酸配列同一性が25〜30%程度であることが示された(Plaumann et al., Curr. Genet. 31 (1997), 430-438)。その後、8つの既知のクラスIIFBPアルドラーゼの配列アラインメントにより、Arg−331が高度に保存された残基の1つであることが示された。化学修飾および部位特異的突然変異誘発により、活性部位におけるこのアミノ酸の不可欠な役割が確認された(Qamar et al., Protein Sci. 5 (1996), 154-161)。
いくつかの酵素、すなわち大腸菌(E.coli)由来(Hall et al., J. Mol. Biol. 287 (1999), 383-394)、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)由来(Izard and Sygush; 前に引用)、サーマス・カルドフィラス(Thermus caldophilus)由来(Lee et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 347 (2006), 616-625)、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)由来(Galkin et al.; 前に引用)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来(Pegan et al., J. Mol.Biol. 386 (2009), 1038-1053)の酵素についての結晶構造が決定されている。結核菌(Mycobacterium tuberculosis)FBPアルドラーゼの二次構造は、その他の細菌性クラスIIアルドラーゼと類似している(Pegan et al., 前に引用)。酵素は8本鎖のβ−シートコアを有し、一般的には各β鎖(β1〜β8)にα−ヘリックス(α1〜α8a)が続き、TIMバレルフォールドとしても知られる全体の(β/α)8−バレルフォールドを生じる(InterProデータベースでの参照番号はIPR013785)。
基本的には、本発明の方法によるD−エリトロースのグリコールアルデヒドへの変換において、任意のフルクトース 1,6−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)が使用可能である。
好ましい実施形態において、本発明による方法において使用されるフルクトース−1,6−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)は、
配列番号26に示されるアミノ酸配列を示す、アナウサギ(Oryctolagus cuniculus)由来のフルクトース−1,6−ビスリン酸アルドラーゼ(Uniprot P00883)、または配列番号27に示されるアミノ酸配列を示す、大腸菌(Escherichia coli)(株K12)由来のフルクトース−1,6−ビスリン酸アルドラーゼ(すなわち、クラスIIフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ)(Uniprot P0AB71)、または配列番号28に示されるアミノ酸配列を示す、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(株ATCC 204508/S288c)由来のフルクトース−1,6−ビスリン酸アルドラーゼ(Uniprot P14540)、または配列番号29に示されるアミノ酸配列を示す、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)由来のフルクトース−1,6−ビスリン酸アルドラーゼ(Uniprot Q9RHA2)、または配列番号30に示されるアミノ酸配列を示す、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のフルクトース−1,6−ビスリン酸アルドラーゼ(Uniprot P67475)、または配列番号31に示されるアミノ酸配列を示す、メチロコッカス・カプスラタス(Methylococcus capsulatus)(株ATCC 33009/NCIMB11132/Bath)由来のフルクトース−1,6−ビスリン酸アルドラーゼ(すなわち、クラスIIフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ)(Uniprot Q602L6)である。
したがって、好ましい実施形態において、本発明の方法において使用されるフルクトース−1,6−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)は、配列番号26〜31のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するか、配列番号26〜31のいずれか1つに対し少なくともx%相同なアミノ酸配列を示し、かつフルクトース−1,6−ビスリン酸アルドラーゼ活性を有し、ここで、xは30〜100の間の整数、好ましくは35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99であり、このような酵素は、本明細書で上記に示す通り、D−エリトロースをグリコールアルデヒドに変換することができる。好ましくは、同一性の程度は上記の通り決定される。
フルクトース−1,6−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)の酵素活性は、当業者に既知の方法で評価可能である。このような方法は、例えばBlonski K. et al., Biochem. J. 323 (1997), 71-77およびSzwergold et al., Arch. Biochem. Biophys. 317 (1995), 244-252に記載されている。
本発明は、D−フルクトースからグリコールアルデヒドおよびアセチルリン酸の生成をもたらすその後の反応において、上記2つの酵素的変換が組み合わされる方法にも関する。したがって、本発明は、D−フルクトースからのグリコールアルデヒドおよびアセチルリン酸の生成方法であって、(a)上記の本発明の方法による、ホスホケトラーゼを使用することによるD−フルクトースおよびリン酸からのD−エリトロースおよびアセチルリン酸の生成;を含み、(b)上記の本発明の方法による、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)またはフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)を使用することによる、このように生成したD−エリトロースのグリコールアルデヒドへの酵素的変換をさらに含む生成方法を提供する。ホスホケトラーゼ、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)およびフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)に関しては、各変換に関して上記に示すものと同じものが適用される。
2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼまたはフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)を使用することによる、D−エリトロースのグリコールアルデヒドへの上記変換により生成するグリコールアルデヒドは、有利なことには、アセチルリン酸にさらに変換されうる。それにより、D−フルクトースから出発する全体の反応は、アセチルリン酸3分子を生じる。
したがって、本発明のさらなる態様において、本明細書で上記される任意の方法に従って生成するグリコールアルデヒドはアセチルリン酸にさらに変換され、これ自体が下記の通り、例えば、アセチル−CoAなどの生成のための基質として機能しうる。
グリコールアルデヒドのアセチルリン酸への変換は、当業者に既知の方法、特に、ホスホケトラーゼにより触媒される酵素反応により実現されうる。グリコールアルデヒドのアセチルリン酸への変換は、不可逆的な以下の反応によって発生する:
グリコールアルデヒド+リン酸→アセチルリン酸+H2O
この変換は、Melvin et al., J. Biol. Chem. 237: 3841-3842 (1962)に記載されている。
「リン酸」という語は、本発明の方法に関して、グリコールアルデヒドおよびリン酸のアセチルリン酸への変換方法において使用される酵素のための、リン酸供給源として許容される化合物を指す。リン酸、すなわちH3PO4の形態でリン酸を用意することが可能である。しかし、その他の形態、特に、水素原子のうち1つ、2つまたは3つが、ナトリウムイオンなどのその他のイオンで置き換えられたリン酸(H3PO4)塩も想定可能である。
したがって、上記の本発明による方法は、ホスホケトラーゼを使用することによる、生成したグリコールアルデヒドのアセチルリン酸への酵素的変換のステップをさらに含みうる。ホスホケトラーゼについては、D−フルクトースおよびリン酸のD−エリトロースおよびアセチルリン酸への酵素的変換についての文脈において、上に既に記載されている。D−フルクトースおよびリン酸をD−エリトロースおよびアセチルリン酸に変換することができるホスホケトラーゼについて、ならびに補助基質リン酸について上記に示すものと同じものが、グリコールアルデヒドおよびリン酸のアセチルリン酸への変換に使用可能なホスホケトラーゼについても適用される。
したがって、グリコールアルデヒドおよびリン酸のアセチルリン酸への変換において使用されるホスホケトラーゼは、任意のホスホケトラーゼ、特に(a)ホスホケトラーゼ(EC 4.1.2.9)または(b)フルクトース−6−リン酸ホスホケトラーゼ(EC 4.1.2.22)に分類されるホスホケトラーゼであってよい。グリコールアルデヒドおよびリン酸をアセチルリン酸に変換するのに使用されるホスホケトラーゼは、原核生物または真核生物由来のホスホケトラーゼであってよい。実施例のセクションにおいては、この変換に関して、原核生物ホスホケトラーゼ、例えば、(a)ビフィドバクテリウム・シュードロンガム亜種グロボサム(Bifidobacterium pseudolongum subsp. globosum)のホスホケトラーゼ(EC 4.1.2.22)(配列番号1)、または(b)クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)(株ATCC824)由来のホスホケトラーゼ(配列番号2)、または(c)ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis subp. lactis)のホスホケトラーゼ(株KF147;Uniprot受入番号:A9QST6;配列番号3)が記載されている。
好ましい実施形態において、グリコールアルデヒドおよびリン酸をアセチルリン酸に変換するための、本発明の方法において使用されるホスホケトラーゼは、配列番号1〜3のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するか、配列番号1〜3のいずれかに対し少なくともx%相同なアミノ酸配列を示し、かつグリコールアルデヒドおよびリン酸のアセチルリン酸への変換を触媒する活性を有し、ここで、xは30〜100の間の整数、好ましくは35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である。同一性の程度の決定に関しては、上記に示すものと同じものが適用される。
選択されたホスホケトラーゼが、グリコールアルデヒドおよびリン酸のアセチルリン酸への変換を触媒することができるかどうかは、例えば、添付の実施例に示すアッセイにより決定可能である。
グリコールアルデヒドのアセチルリン酸への変換は、スルホアセトアルデヒドアセチルトランスフェラーゼ(EC 2.3.3.15)により触媒される酵素反応によっても実現されうる。スルホアセトアルデヒドアセチルトランスフェラーゼ(EC 2.3.3.15)は、以下の反応を触媒することができる酵素である:
2−スルホアセトアルデヒド+リン酸→アセチルリン酸+亜硫酸
「リン酸」という語は、本発明の方法に関して、2−スルホアセトアルデヒドおよびリン酸のアセチルリン酸および亜硫酸への変換方法において使用される酵素のための、リン酸供給源として許容される化合物を指す。リン酸、すなわちH3PO4の形態でリン酸を用意することが可能である。しかし、その他の形態、特に、水素原子のうち1つ、2つまたは3つが、ナトリウムイオンなどのその他のイオンで置き換えられたリン酸(H3PO4)塩も想定可能である。
この酵素は様々な生物、特に細菌で確認されている。好ましい一実施形態において、スルホアセトアルデヒドアセチルトランスフェラーゼ(EC 2.3.3.15)は原核生物、好ましくは細菌由来である。この酵素は、例えば、カステラニエラ・デフラガンス(Castellaniella defragans)(Uniprot受入番号:Q84H44;以前はアルカリゲネス・デフラガンス(Alcaligenes defragans)(Ruff et al., Biochem. J. 369 (2003), 275-285))、アルカリゲネス・キシロソキシダンス・キシロソキシダンス(Alcaligenes xylosoxydans xylosoxydans)(Uniprot受入番号:Q84H41)、デスルフォニスポラ・チオスルファティゲネス(Desulfonispora thiosulfatigenes)(Uniprot受入番号:Q93PS3)、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)(株1021)(Uniprot受入番号:Q92UW6)、ルエゲリア・ポメロイ(Ruegeria pomeroyi)(Uniprot受入番号:Q5LMK2)、カプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)(Uniprot受入番号:Q0K022)、ロゼオバリウス・ヌビンヒベンス(Roseovarius nubinhibens)(Uniprot受入番号:A3SR25)、アシネトバクター属の種(Acinetobacter sp.)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に存在することが記載されている。
基本的には、任意のスルホアセトアルデヒドアセチルトランスフェラーゼ(EC 2.3.3.15)が、本発明の方法によるグリコールアルデヒドおよびリン酸のアセチルリン酸への変換において使用可能である。
スルホアセトアルデヒドアセチルトランスフェラーゼは、ホスホケトラーゼと同様に、チアミンピロリン酸(TPP)依存性酵素であり、したがってTPP結合ドメインを含むことを特徴とする。既知のスルホアセトアルデヒドアセチルトランスフェラーゼの間では、TPP結合ドメインが高度に保存されている(例えば、Ruff et al., Biochem. J. 369 (2003), 275-285を参照のこと)。総じて、既知のスルホアセトアルデヒドアセチルトランスフェラーゼは、TPP結合ドメインを含むN末端付近に高度の配列保存を示す(Ruff et al., 前に引用、を参照)。酵素自体のN末端、およびC・デフラガンス(C. defragans)酵素のアミノ酸400付近の領域において、配列相違が観察される場合がある。Ruff et al.(前に引用)は、スルホアセトアルデヒドアセチルトランスフェラーゼが3つのサブグループを形成することを記載している(前記公開の図4を参照のこと)。サブグループ2および3は、PROSITEコンセンサス配列(L/I/V/M/F)(G/S/A)X5PX4(L/I/V/M/F/Y/W)X(L/I/V/M/F)XGD(G/S/A)(G/S/A/C)と一致するTPP結合ドメインを示すと言われているが、サブグループはこのコンセンサス配列とわずかに異なる:(L/I/V/M/F)(G/S/A)X5PX4(L/I/V/M/F/Y/W)X(L/I/V/M/F/Y)XGD(G/S/A)(G/S/A/C)。
これらの領域以外では、異なるスルホアセトアルデヒドアセチルトランスフェラーゼ間の配列同一性はかなり低い場合がある(約44%まで減少)。
好ましい実施形態において、本発明による方法において使用されるスルホアセトアルデヒドアセチルトランスフェラーゼは、配列番号21に示されるアミノ酸配列を示す、C・デフラガンス(C. defragans)のスルホアセトアルデヒドアセチルトランスフェラーゼ、または配列番号22に示されるアミノ酸配列を示す、アルカリゲネス・キシロソキシダンス・キシロソキシダンス(Alcaligenes xylosoxydans xylosoxydans)のスルホアセトアルデヒドアセチルトランスフェラーゼ、または配列番号23に示されるアミノ酸配列を示す、デスルフォニスポラ・チオスルファティゲネス(Desulfonispora thiosulfatigenes)のスルホアセトアルデヒドアセチルトランスフェラーゼ、または配列番号24に示されるアミノ酸配列を示す、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)(株1021)のスルホアセトアルデヒドアセチルトランスフェラーゼ、または配列番号25に示されるアミノ酸配列を示すか、関連アミノ酸配列を示す、ロゼオバリウス・ヌビンヒベンス(Roseovarius nubinhibens)のスルホアセトアルデヒドアセチルトランスフェラーゼである。
したがって、好ましい実施形態において、本発明の方法において使用されるスルホアセトアルデヒドアセチルトランスフェラーゼは、配列番号21〜25のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するか、配列番号21〜25のいずれか1つに対し少なくともx%相同なアミノ酸配列を示し、かつスルホアセトアルデヒドアセチルトランスフェラーゼ活性を有し、ここで、xは30〜100の間の整数、好ましくは35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99であり、このような酵素は、本明細書で上記に示す通り、グリコールアルデヒドおよびリン酸をアセチルリン酸に変換することができる。好ましくは、同一性の程度は、上記の通り決定される。
スルホアセトアルデヒドアセチルトランスフェラーゼ(EC 2.3.3.15)の酵素活性は、当業者に既知の方法で評価可能である。このような方法は、例えば、Ruff et al.(Biochem. J. 369 (2003), 275-285)に記載されている。
上記の通り、本発明は、ホスホケトラーゼを使用することによる、D−フルクトースのD−エリトロースおよびアセチルリン酸への酵素的変換に関し、D−エリトロースが場合により、アルドラーゼ(2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)またはフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13))を使用することによりグリコールアルデヒドにさらに変換されてよく、このように生成したグリコールアルデヒドが場合により、アセチルリン酸にさらに変換されてよい。D−エリトロースおよびアセチルリン酸生成のための基質として使用されるD−フルクトースは、外部から、すなわちこれを基質として添加するか、D−フルクトースを含む炭素供給源を使用することにより供給されてよく、またはD−フルクトース自体が酵素的変換により供給されてもよい。この点における1つの選択肢は、当業者に既知の方法によるD−グルコースのD−フルクトースへの酵素的変換である。例えば、グルコース−フルクトースイソメラーゼを使用することにより、D−グルコースがD−フルクトースに酵素的に変換されうることが周知である。
したがって、別の実施形態において、本発明は、本明細書で上記される方法であって、上記反応のための基質を形成する前記D−フルクトース自体が、グルコース−フルクトースイソメラーゼを使用することによる、D−グルコースの酵素的変換により生成するさらなるステップが、上記のステップに先行する、方法にも関する。D−グルコースのD−フルクトースへの酵素的変換は、天然に発生しグルコース−フルクトースイソメラーゼを利用する酵素的ステップである。この文脈で使用されうるグルコース−フルクトースイソメラーゼは、当業者に既知である。このように、本発明において、D−グルコースは、グルコース−フルクトースイソメラーゼを使用することにより、インビトロまたはインビボで、酵素的にD−フルクトースに変換されうる。
「グルコース−フルクトースイソメラーゼ」または「グルコース−フルクトースイソメラーゼ活性」 は、本発明では、D−グルコースをD−フルクトースに変換することができる酵素または酵素活性を意味する。このようなグルコース−フルクトースイソメラーゼは、通常キシロースイソメラーゼ(EC 5.3.1.5)に分類される。キシロースイソメラーゼ(EC 5.3.1.5)は以下の反応を触媒する酵素である:
グルコース−フルクトースイソメラーゼ(またはキシロースイソメラーゼ)酵素は、イソメラーゼファミリー、具体的にはアルドースおよびケトースを相互変換する、分子内オキシドレダクターゼに属する。この酵素クラスの系統名は、D−キシロースアルドース−ケトース−イソメラーゼである。これらの酵素は、D−キシロースイソメラーゼ、D−キシロースケトイソメラーゼおよびD−キシロースケトール−イソメラーゼとも称される。この酵素は、ペントースおよびグルクロン酸の相互変換、ならびにフルクトースおよびマンノースの代謝に関与する。この酵素は、高フルクトースコーンシロップの製造において、グルコースをフルクトースに変換するために工業的に使用される。この酵素は、「グルコースイソメラーゼ」と称されることもある。
グルコース−フルクトースイソメラーゼ(またはキシロースイソメラーゼ)酵素は、多様な生物、特に原核生物、真核生物および古細菌に存在する。このように、本発明による方法の好ましい実施形態において、上記に示され図1に図示される反応図式による、D−グルコースのD−フルクトースへの酵素的変換は、キシロースイソメラーゼ(EC 5.3.1.5)に分類されるグルコース−フルクトースイソメラーゼ(またはキシロースイソメラーゼ)酵素を使用することにより実現される。好ましい一実施形態において、グルコース−フルクトースイソメラーゼは、原核生物、好ましくは細菌由来である。この酵素は、例えば、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス属の種(Bacillus sp.)および大腸菌(E. coli)に存在することが記載されている。別の好ましい実施形態において、グルコース−フルクトースイソメラーゼは真核生物、好ましくは菌類、例えば、サッカロマイセス・セレビシア(Sacharomyces cerevisia)などの酵母由来である。この酵素は、例えば、ストレプトマイセス・オリボクロモゲネス(Streptomyces olivochromogenes)(Uniprot受入番号:P15587)、サーモアナエロバクター・エタノリカス(Thermoanaerobacter ethanolicus)(Uniprot受入番号:D2DK62)、ビブリオ属の種(Vibrio sp.)(Uniprot受入番号:C7G532)、アクチノプラネス・ミズーリエンシス(Actinoplanes missouriensis)(Uniprot受入番号:P12851)、バークホレリア・サッカリ(Burkholeria sacchari)(Uniprot受入番号:B6VCW7)、オルピノマイセス属の種(Orpinomyces sp.)(Uniprot受入番号:B7SLY1)、ストレプトマイセス・ルビジノサス(Streptomyces rubiginosus)(Uniprot受入番号:P24300)およびサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)(P26997)に存在することが記載されている。
本発明の方法において、グルコースのフルクトースへの変換に使用されるグルコース−フルクトースイソメラーゼは、任意のグルコース−フルクトースイソメラーゼ、特に原核生物または真核生物由来のグルコース−フルクトースイソメラーゼであってよい。例として、(配列番号16)のアミノ酸配列を有する、大腸菌(E. coli)由来のグルコース−フルクトースイソメラーゼ(またはキシロースイソメラーゼ)(Uniprot P00944)が使用可能である。
好ましい実施形態において、本発明の方法においてグルコースのフルクトースへの変換に使用されるグルコース−フルクトースイソメラーゼ(またはキシロースイソメラーゼ)は、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)(株DSM13/ATCC 14580)由来のキシロースイソメラーゼ;Uniprot P77832(配列番号17)、ストレプトマイセス・オリボクロモゲネス(Streptomyces olivochromogenes)由来のキシロースイソメラーゼ;Uniprot P15587(配列番号18)、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)(株HB8/ATCC 27634/DSM579)由来のキシロースイソメラーゼ;Uniprot P26997(配列番号19)またはキャンディダ・ボイディニ(Candida boidinii)由来のキシロースイソメラーゼ;Uniprot I1VX39(配列番号20)であってよい。
したがって、好ましい実施形態において、本発明の方法において使用されるグルコース−フルクトースイソメラーゼ(またはキシロースイソメラーゼ)は、配列番号16〜20のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するか、配列番号16〜20のいずれかに対し少なくともx%相同なアミノ酸配列を示し、かつD−グルコースのD−フルクトースへの変換を触媒する活性を有し、ここで、xは30〜100の間の整数、好ましくは35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99である。同一性の程度の決定に関しては、上記に示すものと同じものが適用される。
上記の通り、本発明は、D−エリトロースの生成方法を提供する。D−エリトロースはエリスリトールの直接の前駆体であり、下記の通りエリスリトールに変換可能である;Moon et al., Appl Microbiol. Biotechnol, 86:1017-1025 (2010)を参照のこと。したがって、本発明は、本発明の上記方法により生成するD−エリトロースからのエリスリトールの生成方法も提供する。したがって、本発明は、その後のステップとして、D−エリトロースをエリスリトールに変換することができる対応する酵素を使用することによる、生成したD−エリトロースのエリスリトールへの酵素的変換を含む、エリスリトールの生成方法を提供する。D−エリトロースのエリスリトールへの変換のための酵素は、当技術分野で既知である。例として、真核生物は、エリトロースの還元を触媒し、NAD(P)H依存性還元反応によりエリスリトールを生じるエリトロースレダクターゼを含む;Moon et al., Appl Microbiol. Biotechnol, 86:1017-1025 (2010)を参照のこと。このような酵素が、D−エリトロースのエリスリトールへの変換において使用可能である。
このように生成したエリスリトールは、次いで、食品および医薬品産業において使用される生物的甘味料として使用可能である。エリスリトールは、糖尿病および肥満の人々のための特別食において、機能性の糖代用品としても使用可能である。さらに、生成したエリスリトールは、食品における非う食性甘味料として使用可能であり、その他の糖の生成のための出発物質としても機能しうる。
上記の通り、上記の人工の代謝経路(図1にまとめる)は、基質としてのグルコース1分子から出発して最終的にアセチルリン酸3分子の生成をもたらしうる。本発明によれば、本発明の方法に従ってこのように生成したアセチルリン酸は、大部分の生物における中心的な代謝物である、酢酸またはアセチル−補酵素A(アセチル−CoAとも称される)などの望ましい分子にさらに変換されうる。
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、上記の本発明の方法のいずれかによるアセチルリン酸の生成を含み、このように生成したアセチルリン酸の酢酸への変換をさらに含む酢酸の生成方法に関する。
アセチルリン酸はかなり不安定であるため、インビトロでのアセチルリン酸の酢酸への加水分解は自然に発生する。アセチルリン酸は、例えば酢酸キナーゼ(EC 2.7.2.1)、プロピオン酸キナーゼ(EC 2.7.2.15)、酪酸キナーゼ(EC 2.7.2.7)または酢酸キナーゼ(二リン酸)(EC 2.7.2.12)を使用することにより、インビトロまたはインビボで、酵素的に酢酸に変換されてもよい。
酢酸キナーゼは、以下の反応を触媒する酵素である:
この反応は可逆性であるため、この酵素は、アセチルリン酸を酢酸に変換するために使用可能である。反応からATPを継続的に除去すること、例えば、さらなる酵素的変換または当業者に既知の手段および方法により反応から除去することにより、反応を酢酸の側に押し進めることができる。この酵素は、多様な生物、特に原核生物、真核生物および古細菌に存在する。これは解糖系における重要な酵素であり、酵素レベルは過剰量のグルコース存在下で通常増大する。基本的には、任意の酢酸キナーゼ(EC 2.7.2.1)が、本発明による方法においてアセチルリン酸を酢酸に変換するために使用可能である。
プロピオン酸キナーゼ(EC 2.7.2.15)も、反応図式:
に従ってアセチルリン酸を酢酸に変換可能であることが記載されている。
この酵素は、大腸菌(E. coli)またはサルモネラ・エンテリック亜種エントリカ血清型チフィムリウム(Salmonella enteric subsp. enterica serovar. thyphimurium)などの腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に見られる。
アセチルリン酸の酢酸への変換は、酪酸キナーゼ(EC 2.7.2.7)を使用することによっても実現可能である。酪酸キナーゼは、以下の反応を触媒する酵素である:
しかし、一部の酪酸キナーゼ、例えばクロストリジウム・ブチリクム(Clostridium butyricum)およびクロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)由来の酪酸キナーゼについては、反応:
したがって、ATP+酢酸のADP+アセチルリン酸への可逆的な変換も触媒することができる任意の酪酸キナーゼが、アセチルリン酸を酢酸に変換するために、本発明の方法において使用可能である。
さらに、アセチルリン酸の酢酸への変換は、酢酸キナーゼ(二リン酸)(EC 2.7.2.12)を使用することによっても実現可能である。酢酸キナーゼ(二リン酸)(EC 2.7.2.12)は、以下の反応を触媒する酵素である:
この酵素は、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)に存在することが記載されている。
アセチルリン酸の酢酸およびH3PO4への酵素的加水分解は、アシルホスファターゼ(EC 3.6.1.7)を使用することによっても実現可能である。アシルホスファターゼ(AcP;EC 3.6.1.7)は、真核生物および原核生物(中温性および極限環境性の両方)に広く発現する細胞質酵素(分子量約10kDa)である。AcPは、筋肉型AcP(MT−AcP)として骨格筋および心臓において、(器官)一般型AcP(CT−AcP)として赤血球、脳および精巣において、脊椎動物種の多くの組織に見られる(Zuccotti et al., Acta Cryst. 61 (2005), 144-146)。アシルホスファターゼは以下の反応を触媒する:
アセチルリン酸+H2O→酢酸+H3PO4
この酵素は多様な生物において記載されている。好ましくは、本発明による方法において使用されるアシルホスファターゼは、セキショクヤケイ(Gallus gallus)、モルモット(Cavia porcellus)(Liguri et al.、Biochem. J. 217 (1984), 499-505)、ヒト(Homo sapiens)、イノシシ(Sus scrofa)、ウシ(Bos Taurus)、アナウサギ(Oryctolagus cuniculus)、エクウス・アカルス(Equus acallus)またはパイロコッカス・ヒロコシ(Pyrococcus hirokoshii)(Miyazoo et al., Acta Crystallographica D60 (2004), 1135-1136)由来である。
これらの酵素の構造的および機能的特性は、既に詳細に研究され、例えば、Liguri et al. (Biochem. J. 217 (1984), 499-505)、Miyazoo et al. (Acta Crystallographica D60 (2004), 1135-1136)およびTaddei et al. (FEBS Letters 362 (1995), 175-179)に記載されている。
別の好ましい実施形態において、生成したアセチルリン酸は、ホスホトランスアセチラーゼによってアセチル−CoAにも変換可能であり、アセチル−CoAは、例えば、アセチル−CoA由来のアルケンまたはアセトンなどの、多くのさらなる代謝物生成の開始点として機能しうる。したがって、本発明は、アセチル−CoAの生成方法であって、上記の本発明の方法のいずれかによるアセチルリン酸の生成を含み、(b)補酵素A(CoA)存在下でホスホトランスアセチラーゼを使用することによる、このように生成したアセチルリン酸のアセチル−CoAへの酵素的変換をさらに含む生成方法に関する。
(インビトロまたはインビボでの)アセチルリン酸のアセチル−CoAへの変換は、例えばリン酸アセチルトランスフェラーゼ(EC 2.3.1.8)の使用により、酵素的に実現可能である。この酵素はホスホトランスアセチラーゼ、ホスホアシラーゼまたはPTAとも称される。この酵素は以下の反応を天然に触媒する:
この酵素は数多くの生物、すなわち原核生物、真核生物および古細菌に存在する。基本的には任意の既知のリン酸アセチルトランスフェラーゼ(EC 2.3.1.8)がこの変換に使用可能である。
アミノ酸またはヌクレオチド配列に関して「相同性」に言及する場合、言及は好ましくは配列同一性についてなされる。配列同一性の程度は当技術分野で周知の方法により、好ましくはCLUSTALなどの適切なコンピュータアルゴリズムを使用して決定可能である。
特定の配列が、例えば、参照配列に対し少なくとも60%同一であるかどうかを決定するためClustal解析法を使用する場合、デフォルト設定を使用してよく、または設定を好ましくは以下の通りにする:アミノ酸配列の比較においては、マトリクス:blosum30;オープンギャップペナルティ:10.0;伸長ギャップペナルティ:0.05;ディレイディバージェント:40;ギャップ分離距離:8。ヌクレオチド配列比較においては、伸長ギャップペナルティが好ましくは5.0に設定される。
好ましい実施形態において、ClustalW2がアミノ酸配列の比較に使用される。ペアワイズ比較/アラインメントの場合、好ましくは以下の設定が選択される:タンパク質重量マトリクス:BLOSUM62;ギャップオープン:10;ギャップ伸長:0.1。多重比較/アラインメントの場合、好ましくは以下の設定が選択される:タンパク質重量マトリクス:BLOSUM62;ギャップオープン:10;ギャップ伸長:0.2;ギャップ距離:5;エンドギャップなし。
好ましくは、同一性の程度は配列の全長にわたって算出される。比較される配列が同じ全長でない場合、同一性の程度は、より長い配列中の残基と同一である、より短い配列中の残基のパーセンテージ、またはより短い配列中の残基と同一である、より長い配列中の残基のパーセンテージのいずれかを指す。好ましくは、同一性の程度は、より長い配列中の残基と同一である、より短い配列中の残基のパーセンテージを指す。
本発明による方法は、インビトロまたはインビボで実施されてよい。インビトロでの反応は、細胞が使用されない反応、すなわち無細胞反応であると理解される。このように、インビトロは好ましくは無細胞系内であることを意味する。一実施形態における「インビトロでの」という語は、単離された酵素(または場合によって必要な補因子を含む酵素系のこともある)の存在下であることを意味する。一実施形態において、この方法において使用される酵素は、精製された形態で使用される。
インビトロでの方法を実施するため、酵素を活性化し、酵素的変換を発生させる条件(緩衝液、温度、補助基質、補因子など)下で、反応用の基質および酵素がインキュベートされる。反応を、各産物を生成するのに十分な時間進行させる。各産物の生成は、場合により質量分析(MS)検出と連動させた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの、当技術分野で既知の方法により測定可能である。
酵素は、酵素反応を行わせるのに適切な任意の形態であってよい。これらは精製されていても部分的に精製されていても、粗細胞抽出物または部分的に精製された抽出物の形態であってもよい。酵素が適切な担体に固定化されることも可能である。
実施例では、様々な起源に由来するホスホケトラーゼおよび/またはアルドラーゼを使用する、本発明によるインビトロでの反応について例示する。
本発明によるインビトロでの方法は、ワンポット反応、すなわち、基質が望ましい変換に必要な上記酵素と1つの反応混合物中で組み合わされ、反応を、各産物を生成するのに十分な時間進行させる反応において実施されうる。あるいはこの方法は、連続的に1種または複数の酵素的ステップを行うことにより、すなわち、まず基質を1種または複数の酵素と混合し、反応を中間体へ進行させ、次いで1種または複数のさらなる酵素を添加して中間体をさらに中間体または最終産物のいずれかに変換することにより実施されてもよい。
本発明によるインビトロでの方法は、当技術分野で既知の方法を使用して望ましい産物を回収することにより、これを収集するステップをさらに含みうる。
別の実施形態において、本発明による方法は、D−フルクトース、および/もしくはD−エリトロース、および/もしくはグリコールアルデヒド、および/もしくはアセチルリン酸を生成するのに必要な、または生成したアセチルリン酸を、本明細書で上記される通り、酢酸もしくはアセチル−CoAなどのその他の化合物にさらに変換するのに必要な上記の酵素のうち、少なくとも1つを生成する生物、好ましくは微生物の存在下で、培養物中で実施される。したがって、別の実施形態において、本発明による方法は、本発明の方法のうち1つによるD−フルクトースを生成するのに必要な少なくとも1つの上記酵素を生成する生物、好ましくは微生物の存在下で、培養物中で実施される。さらに、別の実施形態において、本発明による方法は、本発明の方法のうち1つによる、D−エリトロースおよびアセチルリン酸を生成するのに必要な上記酵素を生成する生物、好ましくは微生物の存在下で、培養物中で実施される。さらに、別の実施形態において、本発明による方法は、本発明の方法のうち1つによる、グリコールアルデヒドを生成するのに必要な上記酵素を生成する生物、好ましくは微生物の存在下で、培養物中で実施される。さらに、別の実施形態において、本発明による方法は、本発明の方法のうち1つによる、アセチルリン酸を生成するのに必要な上記酵素のうち少なくとも1つを生成する生物、好ましくは微生物の存在下で、培養物中で実施される。本発明による方法を実施するための微生物を使用する方法は、「インビボでの」方法と称される。
各基質は外部から供給されても、上記各基質の生成のための対応する酵素を発現する、使用される微生物により生成されてもよい。このような微生物は、上記の酵素的変換のうち1つのための少なくとも1つの酵素を発現する。
したがって、本発明のこのような実施形態において、上記で指定される酵素のうち少なくとも1つを生成する生物、好ましくは微生物が使用される。必要な酵素のうち1種または複数を天然に生成する(微)生物を使用すること、およびこのような(微)生物を、これが天然に発現しない酵素も発現するように遺伝子改変することも可能である。
必要な酵素活性のうち1つを天然に発現する(微)生物が使用される場合、この活性が(微)生物において過剰発現するように、このような(微)生物を改変することができる。これは、例えば、遺伝子を確実により高度に発現するプロモーターが生じるように、対応する遺伝子のプロモーター領域に突然変異を起こすことにより実現可能である。あるいは、より高い活性を示す酵素が生じるように遺伝子を突然変異させることもできる。
上記の酵素的変換を実現するのに必要な酵素を発現する(微)生物を使用することにより、酵素を分離または精製する必要なく、培養培地において直接、本発明による方法を実施することができる。
一実施形態において、本発明による方法において使用される生物は、上記酵素のうち1種または複数をコードする、1種または複数の外来性の核酸分子を含むように遺伝子改変された生物、好ましくは微生物である。「外来性の」という語は、この文脈において、核酸分子が前記生物/微生物に天然に存在しないことを意味する。これは、核酸分子が同じ構造で、またはその生物/微生物の同じ位置に存在しないことを意味する。好ましい一実施形態において、外来性の核酸分子は、プロモーターおよび各酵素をコードするコード配列を含み、コード配列の発現を推進するプロモーターがコード配列に関して異種である、組換え分子である。この文脈において、異種の、はプロモーターが、前記コード配列の発現を天然に推進するプロモーターではなく、異なるコード配列の発現を天然に推進するプロモーターである、すなわち、プロモーターが別の遺伝子由来であるか、合成プロモーターまたはキメラプロモーターであることを意味する。好ましくは、プロモーターは生物/微生物に対し異種のプロモーター、すなわち、各生物/微生物に天然に存在しないプロモーターである。さらにより好ましくは、プロモーターは誘導性プロモーターである。異なる種類の生物、特に微生物における発現を推進するプロモーターが、当業者に周知である。
さらなる実施形態において、核酸分子は、コードされる酵素がその生物/微生物にとって内因性でない、すなわち、その生物/微生物が遺伝子改変されていない場合、その生物/微生物によって天然に発現されないという点で、その生物/微生物にとって外来性である。言い換えれば、コードされる酵素がその生物/微生物に関して異種である。外来性の核酸分子は、染色体外の形態、例えばプラスミドとして生物/微生物に存在していても、染色体に安定に組み込まれていてもよい。安定な組み込みが好ましい。したがって、遺伝子改変は、例えば、酵素をコードする対応する遺伝子を染色体に組み込むこと、または酵素コード配列の上流にプロモーターを含むプラスミドであって、プロモーターおよびコード配列が好ましくは異なる生物由来であるプラスミドから酵素を発現させること、または当業者に既知の任意のその他の方法からなることがある。
本発明で使用される生物は、原核生物または真核生物であってよく、好ましくは、細菌、酵母、菌類もしくはカビなどの微生物、または植物細胞、または動物細胞である。特定の実施形態において、微生物は細菌、好ましくはエシェリキア(Escherichia)またはバチルス(Bacillus)属の細菌、さらにより好ましくは大腸菌(Escherichia coli)または枯草菌(Bacillus subtilis)種の細菌である。
サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)などの極限環境性細菌、またはクロストリジア(Clostridiae)科の嫌気性細菌を使用することもできる。
一実施形態において、微生物は菌類、より好ましくはサッカロマイセス(Saccharomyces)、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)、アスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、ピキア(Pichia)またはクリベロマイセス(Kluyveromyces)属の菌類、さらにより好ましくはサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)またはクリベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)種の菌類である。
別の実施形態において、本発明による方法は、少なくとも1つの、上記の酵素的変換を実現するのに必要な酵素を発現する光合成微生物を使用する。好ましくは、微生物は光合成細菌または微細藻類である。さらなる実施形態において、微生物は藻類、より好ましくは珪藻類に属する藻類である。
本発明による方法において、異なる(微)生物が上記の異なる酵素を発現する、(微)生物の組み合わせを使用することも想定できる。
別の実施形態において、本発明による方法は、上記の酵素的変換を実現するのに必要な酵素のうち、少なくとも1つを発現する多細胞生物を使用する。このような生物の例は植物または動物である。
特定の実施形態において、本発明による方法は、標準的な培養条件(30〜37℃、1atm、細菌を好気的に増殖させる発酵槽内)または非標準的な条件(例えば好熱性生物の培養条件に相当するより高い温度)において微生物を培養することを伴う。
本発明による方法が、各酵素活性をもたらす生物/微生物を使用することによりインビボで実施される場合、生物、好ましくは微生物が、酵素反応を発生させる適切な培養条件下で培養される。特定の培養条件は、使用される特定の生物/微生物によって決まるが、当業者に周知である。培養条件は一般的に、各反応のための酵素をコードする遺伝子が発現されるように選択される。化学的誘導因子または温度変化による遺伝子発現の誘導など、培養の特定の段階で特定の遺伝子発現を改善および微調整するための各種方法が、当業者に既知である。
別の実施形態において、本発明による方法において使用される生物は植物である。基本的には、可能性のある任意の植物、すなわち単子葉植物または双子葉植物が使用可能である。農学的に有意義な規模で栽培可能であり、多量のバイオマスを生成する植物を使用することが好ましい。例は、ドクムギ属(Lolium)などのイネ科草本、ライムギ、コムギ、オオムギ、エンバク、アワ、トウモロコシなどの穀物、ジャガイモなどのその他のデンプン貯蔵植物、またはサトウキビもしくはテンサイなどの糖貯蔵植物である。タバコ、またはトマト、コショウ、キュウリ、ナスなどの野菜植物の使用も想定可能である。別の可能性は、ナタネ、オリーブなどの油貯蔵植物の使用である。樹木、特にユーカリ、ポプラまたはゴムノキ(パラゴムノキ(Hevea brasiliensis))などの生育の早い樹木の使用も想定可能である。
別の実施形態において、本発明の方法は、(細胞)培養物の形態で、好ましくは液体の細胞培養物の形態で、各々の酵素活性(単数または複数)を有する生物、好ましくは微生物を用意するステップ、各酵素を発現させる適切な条件下で、発酵槽(しばしばバイオリアクターとも称される)において生物、好ましくは微生物を培養するその後のステップを含み、本明細書で上記される本発明の方法での酵素的変換を行うステップをさらに含む。適切な発酵槽またはバイオリアクター装置、および発酵条件が当業者に既知である。バイオリアクターまたは発酵槽は、生物的に活性な環境を支持する、当技術分野で既知の製造または設計された任意の装置または系を指す。したがって、バイオリアクターまたは発酵槽は、本発明の方法などの化学的/生化学的プロセスが実施され、生物、好ましくは微生物、および/または生化学的に活性な物質、すなわち、このような生物または上記酵素を含有する生物由来の上記酵素を内包する容器であってよい。バイオリアクターまたは発酵槽において、このプロセスは好気的でも嫌気的でもよい。これらのバイオリアクターは、一般的に円筒状であり、リットル〜立方メートルのサイズの範囲であってよく、しばしばステンレス鋼製である。この点において、理論に拘束されることなく、発酵槽またはバイオリアクターは、例えば、当技術分野で全てが一般的に既知であるバッチ培養、流加培養、灌流培養またはケモスタット培養において、生物、好ましくは微生物を培養するのに適切であるように設計されてよい。
培養培地は、各生物または微生物を培養するのに適切な任意の培養培地であってよい。好ましい実施形態において、培養培地は、フルクトース、またはフルクトース(スクロースなど)を含み、そこからフルクトースが遊離されうる化合物、またはその他のヘキソース、例えばグルコースなどの、フルクトースに変換されうる化合物を含む。
上記の通り、本発明による方法において、上記の酵素的変換を実現するのに必要な酵素のうち、少なくとも1つをコードする核酸分子を含むように遺伝子改変された(微)生物を使用することができる。上記酵素をコードするこのような核酸分子は、単独でまたはベクターの一部として使用可能である。核酸分子は、核酸分子に含まれるポリヌクレオチドに作動可能に連結させた発現制御配列をさらに含んでいてよい。「作動可能に(operatively)連結させた」または「作動可能に(operably)連結させた」という語は、本明細書を通して、発現制御配列に適合する条件下で発現が実現されるような、1種または複数の発現制御配列と発現されるべきポリヌクレオチドのコード領域との間の連結を指す。
発現は、異種のDNA配列の、好ましくは翻訳可能なmRNAへの転写を含む。菌類および細菌における発現を確実にする調節エレメントが当業者に周知である。これらは、プロモーター、エンハンサー、終結シグナル、ターゲティングシグナルなどを包含する。ベクターについての説明に関して、例をこれより下に示す。
核酸分子と連結して使用するプロモーターは、その起源に関しておよび/または発現されるべき遺伝子に関して相同または異種であってよい。適切なプロモーターは、例えば構成的発現に適したプロモーターである。しかし、外的影響により決定されるある時点でのみ活性化されるプロモーターが使用されてもよい。人工および/または化学的誘導性プロモーターがこの文脈で使用されてもよい。
ベクターは、ベクターに含まれる前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結させた発現制御配列をさらに含んでいてよい。これらの発現制御配列は、細菌または菌類において、翻訳可能なRNAを確実に転写および合成するのに適していてよい
本発明による方法において使用される酵素は、天然に存在する酵素(すなわち、ホスホケトラーゼ、アルドラーゼ、グルコース−フルクトースイソメラーゼおよび/またはホスホトランスアセチラーゼ)、または例えば、突然変異、もしくは例えば酵素活性、安定性などを変化もしくは改善するその他の変化の導入による、天然に存在する酵素由来の酵素であってよい。
タンパク質の望ましい酵素活性を改変および/または改善する方法は当業者に周知であり、例えば、ランダム突然変異誘発もしくは部位特異的突然変異誘発、およびその後の、望ましい特性を有する酵素の選択、またはいわゆる「定向進化」手法を含む。
さらに、分子生物学における通常の方法により(例えばSambrook and Russell (2001), Molecular Cloning:A Laboratory Manual, CSH Press, Cold Spring Harbor, NY, USAを参照のこと)、ポリヌクレオチドに様々な突然変異を挿入することができ、場合により改変された生物的特性を有するポリペプチドの合成がもたらされる。例えばアミノ酸配列の改変がポリペプチドの生物活性または調節に影響を及ぼす位置での、点突然変異の導入が想定可能である。
さらに、改変された基質または産物特異性を有する突然変異体が調製可能である。好ましくは、このような突然変異体は活性の増大を示す。さらに、上記で定義される酵素をコードするポリヌクレオチドに突然変異を導入することで、前記ポリヌクレオチドによりコードされる酵素の遺伝子発現率および/または活性を最適化することができる。
細菌または菌類を遺伝子改変するため、上記で定義される酵素をコードするポリヌクレオチドまたはこれらの分子の一部が、突然変異誘発、またはDNA配列の組換えによる配列改変を可能にするプラスミドに導入されてよい。標準的な方法(Sambrook and Russell (2001), Molecular Cloning:A Laboratory Manual, CSH Press, Cold Spring Harbor, NY, USAを参照のこと)により、塩基置換を行い、または天然もしくは合成配列を加えることができる。断片にアダプターおよびリンカーを適用することにより、DNA断片を互いに連結することができる。さらに、適切な制限部位をもたらすか、過剰なDNAまたは制限部位を除去する工学的操作手段(engineering measure)が使用可能である。挿入、欠失または置換が可能である場合、インビトロでの突然変異誘発、「プライマー修復」、制限またはライゲーションが使用可能である。一般的に、配列解析、制限解析、ならびにその他の生化学的および分子生物学的方法が解析方法として実施される。
本発明の文脈において、「活性の増大」は、酵素の、特に、遺伝子改変された微生物におけるホスホケトラーゼ、アルドラーゼ、グルコース−フルクトースイソメラーゼおよび/またはホスホトランスアセチラーゼの発現および/または活性が、対応する非改変微生物よりも少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%または50%、さらにより好ましくは少なくとも70%または80%、特に好ましくは少なくとも90%または100%高いことを意味する。さらにより好ましい実施形態において、発現および/または活性の増大は少なくとも150%、少なくとも200%または少なくとも500%であってよい。特に好ましい実施形態において、発現は、対応する非改変微生物よりも少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも100倍、さらにより好ましくは少なくとも1000倍高い。
発現/活性の「増大」という語は、対応する非改変微生物が対応する酵素を発現しないため、非改変微生物における対応する発現/活性がゼロである状態も包含する。
細胞における所定のタンパク質の発現レベルを測定する方法は、当業者に周知である。一実施形態において、発現レベルの測定は、対応するタンパク質の量を測定することにより行われる。対応する方法は当業者に周知であり、ウェスタンブロット、ELISAなどが含まれる。別の実施形態において、発現レベルの測定は、対応するRNAの量を測定することにより行われる。対応する方法は当業者に周知であり、例えばノザンブロットが含まれる。
本発明による方法において使用される酵素の酵素活性を測定する方法は、当技術分野で既知であり、既に上記されている。
(微)生物に導入されたポリヌクレオチドは、上記の活性のうちいずれかを有するポリペプチドの生成をもたらすように発現される。様々な発現系の概要が、例えば、Methods in Enzymology 153 (1987), 385-516、Bitter et al. (Methods in Enzymology 153 (1987), 516-544)およびSawers et al. (Applied Microbiology and Biotechnology 46 (1996), 1-9)、Billman-Jacobe (Current Opinion in Biotechnology 7 (1996), 500-4)、Hockney (Trends in Biotechnology 12 (1994), 456-463)、Griffiths et al., (Methods in Molecular Biology 75 (1997), 427-440)に含まれる。酵母発現系の概要が、例えば、Hensing et al. (Antonie van Leuwenhoek 67 (1995), 261-279)、Bussineau et al. (Developments in Biological Standardization 83 (1994), 13-19)、Gellissen et al. (Antonie van Leuwenhoek 62 (1992), 79-93)、Fleer (Current Opinion in Biotechnology 3 (1992), 486-496)、Vedvick (Current Opinion in Biotechnology 2 (1991), 742-745)およびBuckholz (Bio/Technology 9 (1991), 1067-1072)で与えられる。
発現ベクターは、文献に広く記載されている。概して、これらは、選択マーカー遺伝子、および選択された宿主における複製を確実にする複製起点だけでなく、細菌またはウイルスプロモーター、およびほとんどの場合、転写のための終結シグナルも含む。プロモーターと終結シグナルとの間には、一般的に少なくとも1つの制限部位、またはコーディングDNA配列の挿入を可能にするポリリンカーが存在する。対応する遺伝子の転写を天然に制御するDNA配列は、選択された宿主生物において活性であれば、プロモーター配列として使用可能である。しかし、この配列はその他のプロモーター配列と置換されてもよい。遺伝子の構成的発現を確実にするプロモーター、および遺伝子発現の意図的な制御を可能にする誘導性プロモーターを使用することができる。これらの特性を有する細菌およびウイルスプロモーター配列が、文献に詳細に記載されている。微生物(例えば大腸菌(E. coli)、S・セレビシエ(S. cerevisiae))における発現のための制御配列も文献に十分に記載されている。下流の配列を特に高度に発現させるプロモーターは、例えば、T7プロモーター(Studier et al., Methods in Enzymology 185 (1990), 60-89)、lacUV5、trp、trp−lacUV5(DeBoer et al., in Rodriguez and Chamberlin (Eds), Promoters, Structure and Function; Praeger, New York, (1982), 462-481;DeBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1983), 21-25)、lp1、rac(Boros et al., Gene 42 (1986), 97-100)である。誘導性プロモーターは、好ましくはポリペプチドの合成に使用される。これらのプロモーターはしばしば、構成的プロモーターよりも高いポリペプチド収量をもたらす。最適な量のポリペプチドを得るため、2段階プロセスがしばしば使用される。まず、比較的高い細胞密度になるまで、最適な条件下で宿主細胞を培養する。第2のステップでは、使用されるプロモーターの種類に応じて転写が誘導される。この点において、ラクトースまたはIPTG(=イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)により誘導されうるtacプロモーターが特に適切である(deBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80 (1983), 21-25)。転写の終結シグナルについても文献に記載されている。
本発明による、ポリヌクレオチドまたはベクターによる宿主細胞の形質転換は、例えばSambrook and Russell (2001), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSH Press, Cold Spring Harbor, NY, USA;Methods in Yeast Genetics, A Laboratory Course Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1990に記載される通り、標準的な方法により実施することができる。宿主細胞は、特にpH値、温度、塩濃度、エアレーション、抗生物質、ビタミン、微量元素などに関して、使用される特定の宿主細胞の必要条件を満たす栄養培地において培養される。
本発明は、D−フルクトースからのD−エリトロースおよび/またはアセチルリン酸の生成のための、ホスホケトラーゼの使用またはホスホケトラーゼを発現する(微)生物の使用にも関する。ホスホケトラーゼおよび(微)生物に関しては、本発明による方法に関して上記に示すものと同じものが適用される。
本発明は、D−エリトロースからのグリコールアルデヒドの生成のための、上記、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)またはフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)、または2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)を発現する(微)生物またはフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)を発現する(微)生物の使用にも関する。2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)、フルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)および(微)生物に関しては、本発明による方法に関して上記に示すものと同じものが適用される。
好ましい実施形態において、本発明は、D−フルクトースからのアセチルリン酸の生成のための、生物または微生物の使用にも関する。したがって、好ましい実施形態において、本発明は、D−フルクトースからのアセチルリン酸の生成ための生物または微生物の使用であって、前記生物または微生物が(i)上記で定義されるホスホケトラーゼ;および(ii)上記で定義される2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)またはフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)を発現する、使用にも関する。ホスホケトラーゼ、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)、フルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)および(微)生物に関しては、本発明による方法に関して上記に示すものと同じものが適用される。
本発明が、D−グルコースからのアセチルリン酸の生成のための、生物または微生物の使用に関することも好ましい。したがって、好ましい実施形態において、本発明は、D−グルコースからのアセチルリン酸の生成のための生物または微生物の使用であって、前記生物または微生物が、(i)上記で定義されるホスホケトラーゼ;および(ii)2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ (EC 4.1.2.4)またはフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)を発現し、前記生物または微生物が、(iii)フルクトース−グルコースイソメラーゼ、好ましくはキシロースイソメラーゼ(EC 5.3.1.5)をさらに発現する、使用にも関する。ホスホケトラーゼ、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)、フルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)、フルクトース−グルコースイソメラーゼおよび(微)生物に関しては、本発明による方法に関して上記に示すものと同じものが適用される。
本発明は、D−フルクトースからのD−エリトロースおよび/またはアセチルリン酸の生成のための、ホスホケトラーゼの使用またはホスホケトラーゼを発現する(微)生物の使用だけでなく、D−フルクトースからのグリコールアルデヒドおよびアセチルリン酸の生成のための、ホスホケトラーゼ、または上記ホスホケトラーゼを発現する(微)生物、および2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)もしくはフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)、または上記2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)を発現するかフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)を発現する(微)生物の組み合わせの使用にも関する。ホスホケトラーゼ、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)、フルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)および(微)生物に関しては、本発明による方法に関して上記に示すものと同じものが適用される。
本発明は、D−グルコースからのアセチルリン酸およびD−エリトロースの生成のための、ホスホケトラーゼ、または上記ホスホケトラーゼを発現する(微)生物、およびグルコース−フルクトースイソメラーゼ、または上記グルコース−フルクトースイソメラーゼを発現する(微)生物の組み合わせの使用にも関する。ホスホケトラーゼ、グルコース−フルクトースイソメラーゼおよび(微)生物に関しては、本発明による方法に関して上記に示すものと同じものが適用される。
本発明は、D−フルクトースからのアセチルリン酸の生成のための、ホスホケトラーゼ、または上記ホスホケトラーゼを発現する(微)生物、および2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)もしくはフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)、または上記2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)を発現するかフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)を発現する(微)生物の組み合わせの使用にも関する。ホスホケトラーゼ、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)、フルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)および(微)生物に関しては、本発明による方法に関して上記に示すものと同じものが適用される。
本発明は、D−グルコースからのアセチルリン酸の生成のための、ホスホケトラーゼ、または上記ホスホケトラーゼを発現する(微)生物、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)もしくはフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)、または上記2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)を発現するか、フルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)を発現する(微)生物、およびグルコース−フルクトースイソメラーゼ、または上記グルコース−フルクトースイソメラーゼを発現する(微)生物の組み合わせの使用にも関する。ホスホケトラーゼ、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)、フルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)、グルコース−フルクトースイソメラーゼおよび(微)生物に関しては、本発明による方法に関して上記に示すものと同じものが適用される。
本発明は、D−フルクトースおよびホスホケトラーゼを含む組成物にも関する。本発明は、D−フルクトースおよびホスホケトラーゼ、および2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)またはフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)を含む組成物にも関する。
本発明は、D−エリトロース、および2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)またはフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)を含む組成物にも関する。本発明は、D−エリトロース、および2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)またはフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)、およびホスホケトラーゼを含む組成物にさらに関する。
本発明は、D−グルコース、グルコース−フルクトースイソメラーゼおよびホスホケトラーゼを含み、場合によって、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)またはフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)も含む組成物にも関する。
さらに、本発明は、
(i)D−フルクトース;および
(ii)上記ホスホケトラーゼを発現する生物または微生物
を含む組成物にも関する。
好ましくは、生物または微生物は、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)またはフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)も発現する。
さらに、本発明は、
(i)D−エリトロース;および
(ii)上記2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)またはフルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)を発現する生物または微生物
を含む組成物にも関する。
好ましくは、生物または微生物は、上記で定義されるホスホケトラーゼまたはスルホアセトアルデヒドアセチルトランスフェラーゼ(EC 2.3.3.15)も発現する。
本発明は、
(i)D−グルコース;ならびに
(ii)上記グルコース−フルクトースイソメラーゼを発現し、かつホスホケトラーゼを発現する生物または微生物
を含む組成物にも関する。
好ましくは、生物または微生物は、2−デオキシリボース−5−リン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.4)、フルクトース−ビスリン酸アルドラーゼ(EC 4.1.2.13)も発現し、さらにより好ましくはスルホアセトアルデヒドアセチルトランスフェラーゼ(EC 2.3.3.15)も発現する。
上記組成物の成分の好ましい実施形態に関しては、本発明による方法に関して上記に示すものと同じものが適用される。