JP2017512482A - 細胞の増殖及び多能性の調節 - Google Patents

細胞の増殖及び多能性の調節 Download PDF

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Abstract

細胞の増殖、分化、及び多能性の調節のための、組成物、系、及び方法が、ここで開示される。本発明は、幹細胞の増殖、分化、及び多能性が、細胞代謝の操作によって制御できるという発見を包含する。本発明は、細胞内のα−ケトグルタル酸レベル及び/またはコハク酸レベルの調節によって、細胞の自己複製及び分化を制御できるという発見をさらに包含する。いくつかの実施形態では、本発明は、細胞集団の増殖のための組成物、方法、及び系を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、細胞培養において、細胞を増殖させることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、生体外で細胞を増殖させることを含む。【選択図】図1

Description

関連出願
本特許出願は、2014年4月7日出願の米国仮特許出願第61/976,488号及び2014年10月20日出願の米国仮特許出願第62/066,294号の利益及びそれらに対する優先権を主張し、参照によって、それらの全体が、任意及びあらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
政府の支援
35 U.S.C.202(c)(6)に準拠し、本明細書に記載または主張する1つまたは複数の発明に関して、出願人は、本発明が、National Institutes of Healthより付与された政府の支援によって実施されたことを明記する。米国政府は、本発明に対して、一定の権利を有する。
配列リスト
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列リストを含み、参照によって、その全体が、本明細書に組み込まれる。2015年4月6日に作成された当該ASCIIコピーは、2003080−0824_SL.txtと命名され、サイズは、16,587バイトである。
グルタミンは、他の細胞経路の中でも特に、高分子合成及びトリカルボン酸(TCA)回路の補充反応に寄与する主要な代謝基質である。グルタミンは、非必須アミノ酸であるが、ほとんどの哺乳類細胞は、外来性グルタミンの添加無しでは、増殖することができない。
本発明は、幹細胞の増殖、分化、及び多能性が、細胞代謝の操作によって制御できるという発見を包含する。本発明は、細胞内のα−ケトグルタル酸レベル及び/またはコハク酸レベルの調節によって、細胞の自己複製及び分化を制御できるという発見をさらに包含する。
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞集団の増殖のための組成物、方法、及び系を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、細胞培養において、細胞を増殖させることを含む。いくつかの実施形態では、方法は、生体外で細胞を増殖させることを含む。
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞集団における、細胞の多能性維持のための組成物、方法、及び系を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は、幹細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、前駆細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、胚性幹細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、成体幹細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)である。
いくつかの実施形態では、方法は、培地中における哺乳類幹細胞を含む細胞培養の提供段階と、増殖の促進または細胞の多能性維持のための、細胞内のコハク酸レベルに対するα−ケトグルタル酸レベルの維持段階と、を含む。いくつかの実施形態では、方法は、培地中における哺乳類幹細胞を含む細胞培養の提供段階と、多能性の維持のための、細胞内のコハク酸レベルに対するα−ケトグルタル酸レベルの維持段階と、を含む。
いくつかの実施形態では、方法は、細胞内のコハク酸レベルに対するα−ケトグルタル酸レベルを増加させる物質または化合物の投与を含む。いくつかの実施形態では、方法は、物質または化合物が存在しない同等条件下で維持された細胞で観測されるものと比較して、細胞内のα−ケトグルタル酸が、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%上昇したレベルの達成または維持を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、物質または化合物が存在しない同等条件下で維持された細胞で観測されるものと比較して、細胞内のコハク酸が、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%低下したレベルの達成または維持のための、組成物、系、及び方法を提供する。
いくつかの実施形態では、本発明は、物質または化合物が存在しない同等条件下で維持された細胞で観測されるものと比較して、細胞内のコハク酸に対するα−ケトグルタル酸の比率が、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、または少なくとも250%上昇したレベルの達成または維持のための組成物、系、及び方法を提供する。
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞集団の増殖の制御のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、細胞培養における幹細胞または前駆細胞の増殖のための組成物、系、及び方法を提供する。
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞集団の分化の制御のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、細胞培養における分化の制御のための組成物、系、及び方法を提供する。
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞内のコハク酸レベルに対するα−ケトグルタル酸レベルの維持による、細胞集団の増殖または分化の制御のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、細胞内のコハク酸レベルに対するα−ケトグルタル酸レベルを減少させる物質または化合物の投与による、細胞集団の増殖または分化の制御のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、細胞と、外来性のコハク酸化合物との接触による、細胞集団の増殖または分化の制御のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、外来性のコハク酸化合物は、細胞透過性である。いくつかの実施形態では、コハク酸化合物は、コハク酸ジメチル(DM−コハク酸)である。
いくつかの実施形態では、本発明は、物質または化合物が存在しない同等条件下で維持された細胞で観測されるものと比較して、細胞内のコハク酸が、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%上昇したレベルの達成または維持による、細胞集団の増殖または分化の制御のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、物質または化合物が存在しない同等条件下で維持された細胞で観測されるものと比較して、細胞内のα−ケトグルタル酸が、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%低下したレベルの維持による、細胞集団の増殖または分化の制御のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、物質または化合物が存在しない同等条件下で維持された細胞で観測されるものと比較して、細胞内のコハク酸レベルに対するα−ケトグルタル酸レベルの比率を、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低下させて維持することによる、細胞集団の増殖または分化の制御のための組成物、系、及び方法を提供する。
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞のα−ケトグルタル酸レベルを減少させる物質の投与を含む、細胞増殖の阻害のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、細胞のコハク酸レベルを増加させる物質の投与を含む、細胞増殖の阻害のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、MAPK阻害剤及び/またはGSK3β阻害剤の投与をさらに含む。
いくつかの実施形態では、本発明は、生体内での使用のための、細胞増殖の阻害のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、生体外での使用のための、細胞増殖の阻害のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、試験管内での使用のための、細胞増殖の阻害のための、組成物、系、及び方法を提供する。
いくつかの実施形態では、本発明は、幹細胞または前駆細胞の集団と、培地とを含む細胞培養を提供する。いくつかの実施形態では、培地は、α−ケトグルタル酸化合物、MAPK阻害剤、及び/またはGSK3β阻害剤を含む。
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞培養向けの基質を提供する。いくつかの実施形態では、基質は、α−ケトグルタル酸化合物、MAPK阻害剤、及び/またはGSK3β阻害剤を含む。
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞内のヒストンのメチル化の促進のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、細胞と、細胞内のコハク酸レベルに対する、細胞のα−ケトグルタル酸レベルを増加させる物質と、の接触を含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞と、細胞内のコハク酸レベ
ルに対する、細胞のα−ケトグルタル酸レベルを減少させる物質と、の接触を含む。
いくつかの実施形態では、本発明は、生体内での細胞増殖の阻害のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、動物における生体内での細胞増殖の阻害のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、動物は、哺乳類である。いくつかの実施形態では、動物は、ヒトである。いくつかの実施形態では、治療レジメンのそれを必要とする対象に対する付与を提供する。いくつかの実施形態では、レジメンは、1回もしくは複数回用量のコハク酸化合物、細胞のコハク酸を増加させる1回もしくは複数回用量の物質、細胞のα−ケトグルタル酸を減少させる1回もしくは複数回用量の物質、1回もしくは複数回用量のグルタミン合成酵素阻害剤、またはそれらの組み合わせを含む。
いくつかの実施形態では、本発明は、生体内での細胞分化の促進のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、動物における生体内での細胞増殖の阻害のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、動物は、哺乳類である。いくつかの実施形態では、動物は、ヒトである。いくつかの実施形態では、方法は、1回もしくは複数回用量のコハク酸化合物、細胞のコハク酸を増加させる1回もしくは複数回用量の物質、細胞のα−ケトグルタル酸を減少させる1回もしくは複数回用量の物質、1回もしくは複数回用量のグルタミン合成酵素阻害剤、またはそれらの組み合わせの投与を含む治療レジメンの、それを必要とする対象に対する付与を含む。いくつかの実施形態では、本発明は、細胞に対する、物質または化合物の送達の達成のための組成物及び系を提供する。
いくつかの実施形態では、本発明は、動物における生体内での細胞増殖の促進にむけた組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、動物は、哺乳類である。いくつかの実施形態では、動物は、ヒトである。いくつかの実施形態では、方法は、1回もしくは複数回用量の、α−ケトグルタル酸化合物である物質、または1回もしくは複数回用量の、細胞のα−ケトグルタル酸を増加させる物質を含む治療レジメンの、それを必要とする対象に対する付与を含む。
いくつかの実施形態では、本発明は、生体内での、細胞集団の回復のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は、造血幹細胞である。いくつかの実施形態では、本発明は、患者における生体内での、細胞が欠乏している細胞集団の回復のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、患者は、化学療法を受けているか、または受けたことがある。
いくつかの実施形態では、本発明は、対象における生体内での、幹細胞または前駆細胞の多能性維持のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、1回もしくは複数回用量の、α−ケトグルタル酸化合物である物質、または1回もしくは複数回用量の、細胞のα−ケトグルタル酸を増加させる物質の投与を含む治療レジメンの、対象に対する付与を含む。
いくつかの実施形態では、本発明は、移植(transfer)中、輸送(transportation)中、または貯蔵中の、幹細胞または前駆細胞の多能性維持のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、細胞と、α−ケトグルタル酸化合物または細胞のα−ケトグルタル酸化合物を増加させる物質を含む組成物と、の接触を含む。
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞集団を多能性細胞について富化するための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、混合細胞集団と、α−ケトグルタル酸化合物または細胞内のコハク酸レベルに対するα−ケトグルタル酸レベルを増加させる物質と、の接触を含む。いくつかの実施形態では、外来性のグルタミンは、培地に対して添加されない。いくつかの実施形態では、多能性細胞は、多能性細胞ではない細胞から選定することができ、これは、前者の増殖速度が、後者と比較して高いためである。いくつかの実施形態では、多能性細胞は、多能性細胞ではない細胞から選定することができ、これは、前者の生存率が、後者と比較して高いためである。いくつかの実施形態では、本発明は、総細胞集団の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%となるまで多能性細胞を増大させるための組成物、系、及び方法を提供する。
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞集団を多能性細胞について富化するための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、混合細胞集団と、グルタミンレベルが顕著に減少した培地と、の接触を含む。いくつかの実施形態では、外来性のグルタミンは、培地に対して添加されない。いくつかの実施形態では、本発明は、総細胞集団の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%となるまで多能性細胞を増大させるための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、多能性細胞は、幹細胞である。いくつかの実施形態では、多能性細胞は、前駆細胞である。いくつかの実施形態では、多能性細胞は、誘導される。
いくつかの実施形態では、本発明は、多能性細胞集団の同定のための方法を提供し、当該方法は、培養物における細胞集団の提供であって、当該培養物は、グルタミンを実質的に含まない培地を含む当該提供と、細胞生存に基づく多能性細胞の同定と、を含む。
いくつかの実施形態では、本発明は、多能性細胞集団の選定のための方法を提供し、当該方法は、培養物における細胞集団の提供であって、当該培養物は、グルタミンを実質的に含まない培地を含む当該提供と、生存細胞の選定と、を含む。
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞内のDNAメチル化の調節のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、細胞と、α−ケトグルタル酸化合物、または細胞内のコハク酸レベルに対する、細胞のα−ケトグルタル酸レベルを増加させる物質と、の接触段階を含む方法を提供する。
グルタミン非存在下で増殖したESCの増殖曲線を示す折れ線グラフ及び代表的な画像を示す。図a及び図bは、グルタミン非含有のS/L培地または2i/L培地において培養したESC−V19細胞(a)及びV6.5 ESC株(ESC−1〜4)(b)の増殖曲線を示す。図cは、グルタミン非含有の2i/L培地で3日間培養したESC−1細胞を示す位相画像を示し、上の画像は、明視野(BF)、下の画像は、アルカリホスファターゼ(AP)染色、バーは、500μmを示す。図dは、グルタミン非含有のS/L培地またはS/L+2i培地におけるESC−V19細胞の増殖曲線を示す。図eは、グルタミン非含有のS/L+2i培地で3日間培養したESC−1細胞の位相画像を示す。図fは、N2補充剤及びB27補充剤を含む2種の無血清培地製剤である2i/L及びBmp4/Lで培養したESC−V19細胞の増殖曲線である。図gは、グルタミン含有または非含有の培地を添加後8時間の細胞内グルタミン酸レベルを示す。Qは、グルタミンを示す。データは、代表的な実験から得られた3連ウェルの平均値±s.d.として示されている。 細胞の代謝物及び動力学を分析した棒グラフ及び折れ線グラフを示す。図aは、グルコースの取り込み(左)、グルタミンの取り込み(中央)、及び乳酸の分泌(右)の分析を示す。図bは、αKG、コハク酸、リンゴ酸、及びアスパラギン酸の細胞内レベルを示す。バーは、代表的な実験から得られた、n=4(a)またはn=3(b)の複製ウェルの平均値±s.d.を示す。図cは、グルコース由来の炭素及びグルタミン由来の炭素の入り口点を含むTCA回路の模式図である。同位体を使用して、赤で示される代謝物の追跡を実施した。図d及び図eは、[U−13C]グルタミン(13C−gln)(d)由来の13Cまたは[U−13C]グルコース(13C−glc)(e)由来の13Cによって標識化されたそれぞれの代謝物の画分を継時的(0〜12時間、h)に示したものである。3回の独立した実験の平均値±s.e.m.が示されている。図f及び図gは、αKG及びリンゴ酸のプールを介したグルタミン(f)及びグルコース(g)の流動(flux)を示す。3回の独立した実験(図2d及び図2eに示される実験)について計算した流動の平均値±s.e.m.が示されている。は、p<0.05、**は、p<0.005、***は、p<0.0005であることを示す。p値は、独立両側スチューデントt検定によって決定した。 図3a〜図3gは、下記の内容を示す。図aは、S/L培地または2i/L培地のいずれかにおいて増殖した4種のES細胞株(ESC−1〜4)におけるαKG:コハク酸の比のGC−MS分析を示す。***は、p<0.0001であることを示し、Sidak多重比較事後検定を使用した二元配置ANOVAによって決定した。図bは、グルタミン含有または非含有の2i/L培地において3日間増殖したESC−1細胞及びESC−2細胞のウエスタンブロットを示す。図cは、αKG依存性ジオキシゲナーゼ(Fe(II)示さず)の反応機構を単純化した模式図を示す。UTX及びJmjd3は、H3K27me3脱メチル化酵素であり、GSK−J4は、UTX/Jmjd3に特異的な阻害剤である。図dは、Jmjd3/UTXの阻害剤であるGSK−J4を増加させて存在させ、S/Lにおいて、24時間増殖したESC−1細胞を示す。図eは、UTX/Jmjd3の阻害剤であるGSK−J4を30μMで含むS/Lまたは2i/Lにおいて5時間培養したESC−1細胞のH3K27me3のChIP−PCRを示す。値は、個々の二価ドメイン(bivalent domain)遺伝子(n=14)における倍数変化(GSK−J4/対照)を示す。p<0.0001は、独立スチューデントt検定によって決定した。図fは、S/Lまたは2i/Lにおいて培養したJMJD3Δ/Δ−1(左)細胞及びJMJD3Δ/Δ−2(右)細胞のH3K27me3のChIP−PCRを示す。値は、個々の二価ドメイン遺伝子(n=10)における倍数変化(対照細胞に対するJMJD3Δ/Δ細胞)を示す。p値は、独立スチューデントt検定によって決定した。図gは、GSK−J4またはGSK−J5を1μMまたは5μMで含むS/L培地または2i/L培地において3時間増殖したESC−1細胞内のコハク酸に対するαKGの比を示す。**は、p<0.001であることを示し、Sidak多重比較事後検定を使用した二元配置ANOVAによって決定した。データは、代表的な実験から得られた、3連ウェルの平均値±s.d(a)または平均値±s.e.m.(g)として示されている。 図4a〜図4cは、下記の内容を示す。図aは、アルカリホスファターゼ染色したコロニーの代表的な明視野画像を示す。図bは、コロニーの定量化を示す。データは、代表的な実験から得られた3連ウェルの平均値±s.e.m.として示されている。ビヒクルまたはDM−コハク酸で処理したウェルと比較して、DM−αKGでは、未分化コロニーが多く存在する。***は、p<0.0001であることを示し、チューキー(Tukey)多重比較事後検定を使用した二元配置ANOVAによって計算した(図a及び図bのESC−1細胞を使用したコロニー形成アッセイは、下記のとおり実施した。すなわち、細胞をクローン密度で播種し、2日目にDM−αKGまたはDM−コハク酸のいずれかを含む実験培地へ培地を交換した後、4日後にアルカリホスファターゼ染色によって分析し、分化コロニー、混合コロニー及び未分化コロニー、または未分化コロニーの数を点数化した)。図cは、DM−αKG有り、または無しで、3日間処理したNanog−GFP細胞の平均GFP強度の定量化を示す。データは、代表的な実験から得られた3連ウェルの平均値±s.d.(b)または95%信頼区間(c)として示されている。 図5a〜図5kは、下記の内容を示す。図aは、血清/LIF(S/L)または2i/LIF(2i/L)において培養したESC−V19細胞の倍加時間の棒グラフを示す。図bは、グルコースを含まないS/L培地またはS/L+2i培地において培養したESC−1細胞の増殖曲線を示す。図cは、グルタミン含有または非含有のS/L(左)培地及び2i/L(右)培地の試料をガスクロマトグラフィー−質量分析によって分析したものを示す。総イオン数の代表的なクロマトグラムは、+Q培地(灰色)においては、グルタミン(Q)のピークが明確に検出され、−Q培地(赤)においては、検出可能なグルタミンは存在しないことを明らかにしている。mは、分を示す。図dは、グルタミン非含有の2i/L培地において3日間増殖したESC由来の奇形腫形成を示す。ヘマトキシリン染色及びエオシン染色の代表的な画像は、神経組織(外胚葉)、肝細胞及び膵腺房細胞(内胚葉)、ならびに平滑筋(中胚葉)を明らかにしている。スケールバーは、200μmを示す。図eは、グルタミン非含有の2i/L培地または2i培地において増殖したESC−1細胞の増殖曲線を示す。図fは、Fgf及びアクチビンAと共に培養することによって、EpiSCが、ESC−1細胞から産生したことが、遺伝子発現解析により確認されたことを示す。転写レベルは、qRT−PCRによって評価し、Gapdhに対し正規化して、2i/L培地において培養したmESCの値の比として表した。図gは、グルタミン含有または非含有のエピブラスト培地(Fgf/ActA)において培養したエピブラスト幹細胞(EpiSC)の増殖曲線を示す。図hは、グルタミン非含有のS/L培地または2i/L培地において培養した線維芽細胞から、Oct3/4(O)、Klf4(K)、及びSox2(S)を使用して得られた人工多能性(iPS)細胞株の増殖曲線を示す。図iは、グルタミン存在下及び非存在下で2i/L培地において培養したESC−1細胞の倍加時間を示す。図jは、1μMのメチルスルホキシド(MSO)の存在下または非存在下でグルタミン非含有の2i/L培地において培養したESC−V19細胞の増殖曲線を示す。図k及び図lは、4mMのα−ケトグルタル酸ジメチル(dimethyl−α−ketoglutarate)(DM−αKG)存在下または非存在下で、グルタミン非含有のS/L培地(k)または2i/L培地(l)において増殖したESC−V19細胞を示す。増殖曲線の実験では、0日目に完全培地に細胞を播種した後、1日目に実験培地へと変更した。データは、代表的な実験から得られた3連ウェルの平均値±s.dとして示されている。 図6a〜図6cは、下記の内容を示す。図aは、グルコール由来の炭素から産生したグルタミン酸を示す棒グラフを示す。[U−13C]グルコースを含むグルタミン非含有のS/L培地または2i/L培地において、ESC−1細胞を4時間培養することでグルコース由来の炭素によって標識化されたグルタミン酸の総量が示されている。図bは、2iによって、グルコース由来の炭素からグルタミン酸合成が可能になることを示す。[U−13C]グルコースを含むS/L培地、S/L/2i培地、または2i/L培地においてESC−1細胞を4時間培養した後の、グルコース由来の炭素を含むグルタミン酸の画分が示されている。図c及び図dは、48時間インキュベートした後の、総細胞タンパク質への[U−14C]グルタミン(14C−gln)由来の14Cの取り込み(c)または[U−14C]グルコース(14C−glc)由来の14Cの取り込み(d)を示す。14C−glcでは、p<0.05、14C−glnでは、p=0.1であり、独立両側スチューデントt検定によって計算した。データは、代表的な実験から得られた3連ウェルの平均値±s.d(a、b)または平均値±s.e.m(c)として示されている。 図7a〜図7cは、下記の内容を示す。図aは、記載の添加内容で、グルタミン非含有のS/L培地または2i/L培地において、24時間増殖したESC−1細胞のウエスタンブロットを示す(DM−αKGは、α−ケトグルタル酸ジメチルである)。図b及び図cは、UTX/Jmjd3の阻害剤であるGSK−J4を30μMで含有するか、またはGSK−J4を含有しないS/L(b)培地または2i/L(c)培地において5時間培養したESC−1細胞のH3K27me3のChIP−PCRを示す。データは、代表的な実験から得られた3連試料の平均値±s.e.m.として示されており、は、p<0.05であることを示し、独立両側スチューデントt検定によるものである。 図8a〜図8cは、下記の内容を示す。図aは、gRNAが、マウスJmjd3のエクソン17を標的化する方法の模式図である。gRNA配列は、灰色の背景で強調されている。図bは、本研究で使用した2種のクローン由来の代表的な配列である。サンガー法による配列決定により、模式図に示されるように、挿入欠失が明らかとなった。破線は、塩基の欠失を示し、下線のある塩基は、挿入を示す。gRNAは、灰色の背景で強調されており、PAM配列は、AGGであると同定された。予想切断部位は、赤色の三角で示されている。右側にインフレームの下流終止位置が示されている。図cは、予想Cas9切断部位での単一塩基対の挿入を示すクローンJMJD3Δ/Δ−2のクロマトグラムの例を示す。図8a〜図8bにおいて示される配列は、下記のものを含む。(配列番号1)5’−TGC CTG TGG ATG TTA CCC GCA TGA AGG CGG G 3’(配列番号1);3’−ACG GAC ACC TAC AAT GGG CGT ACA TCC GCC C 5’(配列番号2);5’−TGT GGA TGT TAC CCG CAT GA−3’(配列番号3);5’−GAA GGT CCC TGG CAG CCG AAC GCC AGG TGT G−3’(配列番号4);3’−CTT CCA GGG ACC GTC GGC TTG CGG TCC ACA C−5’(配列番号5);5’−GTC CCT GGC AGC CGA ACG CC−3’(配列番号6);5’ TGT GGA TGT TAC CCG CAT GAA GG 3’(配列番号7);5’ TGT GGA TGT TAC CCG TGA AGG 3’(配列番号8);5’ TGT GGA TGT TAC CCG AAG G 3’(配列番号9);5’ GTC CCT GGC AGC CGA ACG CCA GG 3’(配列番号10);5’ GTC CCT GGC AGC CGA ACA GCC AGG 3’(配列番号11);5’ GTC CCT GGC AGC CGA ACC GCC AGG 3’(配列番号12)。 図9a〜図9eは下記の内容を示す。図aは、αKGからコハク酸への変換におけるTet1/2の役割を示す図である。図bは、DM−αKG含有または非含有のS/L培地において、24時間培養したESC−1細胞内の5−メチルシトシンの相対パーセント(%5−mC)を示す。それぞれのデータポイントは、代表的な実験の3連ウェルから得られた試料を示す。図cは、DM−αKGまたはDMコハク酸と共に3日間培養したESC−1細胞における遺伝子発現量を示す。図dは、DM−αKG含有のS/L培地において、ESC−1細胞を24時間または4回継代して培養したものを示す。図eは、野生型またはTet1/Tet2二重ノックアウト(DKO)のmESCをDM−αKGまたはDM−コハク酸と共に72時間培養したものを示す。qRT−PCRデータ(b〜d)は、アクチンまたはGapdhに対して正規化し、試料は、対照に対して正規化した。Oct3/4の変化は無いと予想され、対照として含めた。データは、代表的な実験から得られた3連ウェルの±s.e.m.として示されている。 図10a〜図10bは、下記の内容を示す。図aは、3日間のDM−αKG処理有り、または処理無しのNanog−GFP細胞のGFP強度を示す代表的なヒストグラムを示す。図bは、DM−αKGと共にESC−1細胞を4回継代して培養した後、記載の量のDM−αKGを含む培地に、3日間切り替えたものを示す。FACSによってGFP発現量(平均蛍光強度、M.F.I.)を決定した。バーは、代表的な実験から得られた、3連ウェルの±s.d.である。
定義
別段の記載がない限り、本明細書で使用される用語は、当該技術分野の当業者が、一般に理解する意味を有し、本開示の理解の促進のために、本明細書では、いくつかの用語が使用されることになり、下記の定義を有する。
本発明をより理解しやすいものとするために、ある特定の用語が、以下に最初に定義される。下記の用語及び他の用語に向けた追加の定義は、本明細書にわたって記載されている。
本出願では、文脈から明らかでない限り、(i)「a」という用語は、「少なくとも1つ(at least one)」を意味すると理解してよく、(ii)「または(or)」という用語は、「及び/または(and/or」を意味すると理解してよく、(iii)「含む(comprising)」及び「含む(including)」という用語は、単独で示されていようと、1つまたは複数の追加の成分または段階と共に示されていようと、記載の成分または段階を包含すると理解してよく、(iv)「約(about)」及び「およそ(approximately)」という用語は、当業者であれば理解するであろう標準変動を許容すると理解してよく、ならびに(v)範囲が与えられる場合は、終点を含む。
活性化物質:
本明細書では、「活性化物質(activating agent)」または活性化因子(activator)という用語は、その存在またはレベルが、当該物質が存在しない場合に観測されるもの(または異なるレベルで当該物質が存在する場合に観測されるもの)と比較した際に、標的のレベルまたは活性の上昇と相関する物質を指す。いくつかの実施形態では、活性化物質は、その存在またはレベルが、特定の参照レベルまたは活性(例えば、正の対照といった既知の活性化物質が存在するなどの適切な参照条件下で観測されるものなど)と同等であるか、またはそれを超える標的のレベルまたは活性と相関する物質である。
投与:
本明細書では、「投与」という用語は、対象に対する組成物の投与を指す。投与は、任意の適切な経路によるものであってよい。例えば、いくつかの実施形態では、投与は、気管支(気管支滴下注入によるものを含む)、頬側、腸内、皮間(interdermal)、動脈内、皮内、胃内、髄内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、くも膜下腔内、静脈内、脳室内、粘膜、経鼻、経口、直腸、皮下、舌下、局所、気管(気管内滴下注入によるものを含む)、経皮、腟、及び硝子体の経路であってよい。
物質:
本明細書では、「物質(agent)」という用語は、任意の化学的クラスの化合物または実体を指してよく、当該化学的クラスには、例えば、ポリペプチド、核酸、糖類、脂質、小分子、金属、またはそれらの組み合わせが含まれる。文脈から明らかであろうが、いくつかの実施形態では、物質は、細胞もしくは生物、またはその画分、抽出物、もしく成分であり得るか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、物質は、天然に見出される天然物、及び/もしくは天然から得られる天然物であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、物質は、人の手による行為を介して設計、操作、及び/もしくは産生された、ならびに/または天然に見出されないという点において人工である1つもしくは複数の実体であるか、あるいはそれを含む。いくつかの実施形態では、物質は、単離形態または純粋形態で利用されてよく、いくつかの実施形態では、物質は、粗形態で利用されてよい。
アミノ酸:
本明細書では、「アミノ酸」という用語は、その広義において、ポリペプチド鎖へと組み込むことができる任意の化合物及び/または物質を指す。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、H2N−C(H)(R)−COOHの一般構造を有する。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、天然起源のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、合成アミノ酸であり、いくつかの実施形態では、アミノ酸は、d−アミノ酸であり、いくつかの実施形態では、アミノ酸は、l−アミノ酸である。「標準アミノ酸」は、天然起源のペプチドにおいて一般に見出される20個の標準l−アミノ酸のいずれかを指す。「非標準アミノ酸」は、合成的に調製されるか、または天然源から得られるかにかかわらず、標準アミノ酸以外の任意のアミノ酸を指す。本明細書では、「合成アミノ酸」は、化学的に改変されたアミノ酸を包含し、当該改変アミノ酸には、限定はされないが、塩、アミノ酸の誘導体(アミドなど)、及び/または置換が含まれる。ペプチドのカルボキシ末端及び/またはアミノ末端のアミノ酸を含むアミノ酸は、メチル化、アミド化、アセチル化、保護基、及び/または他の化学基であって、その活性に有害な影響を与えることなくペプチドの循環半減期を変えることができる他の化学基での置換、によって改変することができる。アミノ酸は、ジスルフィド結合に関与してよい。アミノ酸は、1つまたは複数の化学実体(例えば、メチル基、アセテート基、アセチル基、リン酸基、ホルミル部分、イソプレノイド基、硫酸基、ポリエチレングリコール部分、脂質部分、糖質部分、ビオチン部分等)との結合(association)などの1つまたは複数の翻訳後修飾を含んでよい。「アミノ酸」という用語は、「アミノ酸残基」と互換的に使用され、遊離アミノ酸及び/またはペプチドのアミノ酸残基を指してよい。用語が、遊離アミノ酸を指すか、またはペプチドの残基を指すかは、当該用語が使用される文脈から明らかであろう。
アナログ:
本明細書では、「アナログ」という用語は、参照物質と、1つまたは複数の特定の構造的な特徴、元素、成分、または部分を共有する物質を指す。典型的には、「アナログ」は、参照物質と顕著な構造的類似性を示し、例えば、コア構造またはコンセンサス構造を共有しているが、ある特定の別々の様式において異なりもする。いくつかの実施形態では、アナログは、参照物質の化学的操作によって、参照物質から生成させることができる物質である。いくつかの実施形態では、アナログは、参照物質を生成させるものと実質的に類似の(例えば、複数の段階を共有する)合成プロセスの実施により生成させることができる物質である。いくつかの実施形態では、アナログは、参照物質を生成させるために使用するものとは異なる合成プロセスの実施により生成するか、または生成させることができる。
動物:
本明細書では、「動物」という用語は、動物界の任意のメンバーを指す。いくつかの実施形態では、「動物」は、いずれかの性別であり、任意の発育段階にあるヒトを指す。いくつかの実施形態では、「動物」は、任意の発育段階にあるヒトではない動物を指す。ある特定の実施形態では、ヒトではない動物は、哺乳類(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、及び/またはブタ)である。いくつかの実施形態では、動物には、限定はされないが、哺乳類、トリ、爬虫類、サカナ、昆虫、及び/または虫が含まれる。いくつかの実施形態では、動物は、遺伝子導入動物、遺伝子学的に操作された動物、及び/またはクローンであってよい。
アンタゴニスト:
本明細書では、「アンタゴニスト」という用語は、i)例えば、受容体を不活性化する別の物質の効果を阻害、低減、または減少させる物質、及び/またはii)例えば、1つもしくは複数の受容体の活性化、または1つもしくは複数の生物学的経路の刺激といった1つまたは複数の生物学的事象を阻害、低減、減少、または遅延させる物質を指す。特定の実施形態では、アンタゴニストは、1つまたは複数の受容体チロシンキナーゼの活性化及び/または活性を阻害する。アンタゴニストは、任意の化学的クラスの物質であり得、またはそれを含んでよく、当該化学的クラスには、例えば、小分子、ポリペプチド、核酸、糖質、脂質、金属、及び/または関連する阻害活性を示す任意の他の実体が含まれる。アンタゴニストは、直接的(この場合、アンタゴニストは、受容体に対して直接的にその影響を与える)、または間接的(この場合、アンタゴニストは、受容体に対する結合以外によってその影響を与え、これは、例えば、受容体の発現もしくは転写の変更、受容体が直接的に活性化するシグナル伝達経路の変更、受容体のアゴニストの発現、転写もしくは活性の変更である)であってよい。
およそ:
本明細書では、1つまたは複数の関心値に適用される「およそ(approximately)」または「約(about)」という用語は、記載の参照値と類似の値を指す。ある特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、別段の記載が無いか、または文脈から明らかでない限り、記載の参照値のいずれかの方向(記載の参照値を超えるか、またはそれを下回る)で、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ未満以内に入る値の範囲を指す(そのような数が可能な値の100%を超えることになる場合は除く)。
と結び付いている:
本明細書では、一方の存在、レベル、及び/または形態が、もう一方と相関するのであれば、2つの事象または実体が、お互いに「結び付いている(associated)」。例えば、特定の実体(例えば、ポリペプチド)は、その存在、レベル、及び/または形態が、疾患、障害、または状態の発症率及び/または感受性と相関する(例えば、関連集団にわたる)のであれば、特定の疾患、障害、または状態と結び付いていると考えられる。いくつかの実施形態では、2つ以上の実体が、直接的または間接的に相互作用し、その結果、それらが、お互いに物理的に近接しているか、または依然として物理的に近接しているのであれば、それらは、お互いに物理的に「結び付いている」。いくつかの実施形態では、お互いに物理的に結び付いている2つ以上の実体は、共有結合的にお互いが連結されており、いくつかの実施形態では、お互いに物理的に結び付いている2つ以上の実体は、お互いに共有結合的に連結されていないが、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁性、及びそれらの組み合わせによる手段によって非共有結合的に結び付いている。
生物学的に活性:
本明細書では、「生物学的に活性」という語句は、生物学的系(例えば、細胞培養、生物等)において、活性を有する任意の化合物の特徴を指す。例えば、生物に投与されると、その生物に対して生物学的効果を有する物質は、生物学的に活性であると考えられる。特定の実施形態では、タンパク質またはポリペプチドが、生物学的に活性である場合、当該タンパク質またはポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を共有するそのタンパク質またはポリペプチドの部分は、典型的には、「生物学的に活性」な部分と称される。
併用療法:
本明細書では、「併用療法」という用語は、疾患の治療のための2つ以上の異なる医薬物質が、重複するレジメンにおいて投与され、その結果、対象が、少なくとも2つの物質に同時に曝露される状況を指す。いくつかの実施形態では、異なる物質は、同時に投与される。いくつかの実施形態では、1つの物質の投与は、少なくとも1つの他の物質の投与と重複する。いくつかの実施形態では、異なる物質は、順次投与され、その結果、物質は、対象において同時に生物学的活性を有する。
同等:
本明細書では、「同等(comparable)」という用語は、お互いに同一ではあり得ないが、その比較を可能にするために十分類似しており、その結果、観測される差異または類似性に基づいて、結論を合理的に導き得る2つ以上の物質、実体、状況、状態のセット等を指す。当業者であれば、任意の所与の状況において、2つ以上のそのような物質、実体、状況、状態のセット等が、同等であると考えるために、状況に応じてどの程度の類似性が必要であるかを理解されよう。
誘導体:
本明細書では、「誘導体」という用語は、参照物質の構造的なアナログを指す。すなわち、「誘導体」は、参照物質と顕著な構造的類似性を示す物質であり、例えば、コア構造またはコンセンサス構造を共有しているが、ある特定の別々の様式において異なりもする。いくつかの実施形態では、誘導体は、化学的操作によって、参照物質から生成させることができる物質である。いくつかの実施形態では、誘導体は、参照物質を生成させるものと実質的に類似の(例えば、複数の段階を共有する)合成プロセスの実施により生成させることができる物質である。
決定する:
「決定(determining)」は、例えば、本明細書で明示的に示される特定の手法を含む、当業者が利用可能な任意の様々な手法のいずれかを利用できるか、または当該手法のいずれかを使用して達成することができることを、当業者であれば理解している。いくつかの実施形態では、決定には、物理的な試料の操作を伴う。いくつかの実施形態では、決定には、例えば、関連する分析の実施に適合したコンピューターまたは他の処理装置を利用した、データまたは情報の考慮及び/または操作を伴う。いくつかの実施形態では、供給源からの関連する情報及び/または材料の受け取りを伴う。いくつかの実施形態では、決定には、試料または実体の1つまたは複数の特徴と、同等の参照との比較を伴う。
診断情報:
本明細書では、診断における使用のための診断情報または情報は、患者が、疾患もしくは状態を有しているかどうかの決定において有用である任意の情報、及び/または表現型のカテゴリーあるいは疾患もしくは状態の予後、または疾患もしくは状態の治療(一般治療もしくは任意の特定の治療のいずれか)に対する可能性のある応答、に関して重要性を有する任意のカテゴリーへの疾患または状態の分類において有用である任意の情報である。同様に、診断は、任意の型の診断情報の提供を指し、当該診断情報には、限定はされないが、対象が、疾患もしくは状態(癌など)を有しているかどうかの可能性、対象において顕在化している疾患もしくは状態の状況、段階分け、もしくは特徴、腫瘍の性質もしくは分類に関係する情報、予後に関係する情報、及び/または適切な治療の選定において有用な情報が含まれる。治療の選定には、特定の治療(例えば、化学療法)、物質もしくは手術、放射線等などの他の治療様式の選択、治療を保留もしくは実施するかどうかについての選択、投薬レジメン(例えば、1回もしくは複数回用量の特定の治療物質の頻度もしくはレベル、または治療物質の組み合わせ)に関係する選択等が含まれてよい。
投薬形態:
本明細書では、「投薬形態(dosage from)」及び「単位投薬形態(unit dosage form)」という用語は、対象に対して投与されることになる治療組成物の物理的に別々の単位を指す。それぞれの単位は、所定量の活性材料(例えば、抗受容体チロシンキナーゼ抗体などの治療物質)を含む。いくつかの実施形態では、所定量は、投薬レジメンにおいて用量として投与されると、所望の治療効果と相関したことがある量である。当業者であれば、特定の対象に対して投与される治療組成物または治療物質の総量は、1人または複数人の担当医によって決定され、複数の投薬形態の投与を伴い得ることを理解している。
投薬レジメン:
本明細書では、「投薬レジメン(dosing regimen)」(または「治療レジメン(therapeutic regimen)」)は、対象に対して個々に投与され、典型的には、期間によって分けられている単位用量(典型的には複数回)のセットである。いくつかの実施形態では、所与の治療物質には、1回または複数回の用量を含み得る推奨の投薬レジメンが存在する。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、複数回の用量を含み、そのそれぞれが、同一の長さの期間でお互いに分かれており、いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、複数回の用量、及び個々の用量を分ける少なくとも2つの異なる期間を含む。いくつかの実施形態では、患者集団にわたって投与されるとき、投薬レジメンは、所望の治療結果と相関するか、または相関したことがある。
機能性:
本明細書では、「機能性(functional)」生物学的分子は、それにより特徴づけられる性質及び/または活性を示す形態にある生物学的分子である。生物学的分子は、2つの機能(すなわち、二機能性)または多くの機能(すなわち、多機能性)を有してよい。
異性体:
当該技術分野において知られるように、多くの化学実体(具体的には、多くの有機分子及び/または多くの小分子)が、様々な構造異性体及び/または光学異性体の形態で存在することができる。いくつかの実施形態では、当業者であれば文脈から明らかであるように、本明細書の特定の化合物の構造の記述またはそれに対する参照は、その構造異性体及び/または光学異性体のすべてを包含することを意図する。いくつかの実施形態では、当業者であれば文脈から明らかであるように、本明細書の特定の化合物の構造の記述またはそれに対する参照は、記載される異性体または参照される異性体形態のみを包含することを意図する。いくつかの実施形態では、様々な異性体形態として存在することができる化学実体を含む組成物は、複数のそのような形態を含み、いくつかの実施形態では、そのような組成物は、単一の形態のみを含む。例えば、いくつかの実施形態では、様々な光学異性体(例えば、立体異性体、ジアステレオマー等)として存在することができる化学実体を含む組成物は、そのような光学異性体のラセミ集団を含み、いくつかの実施形態では、そのような組成物は、単一の光学異性体のみを含み、及び/または光学活性を一緒に保持する複数の光学異性体を含む。
マーカー:
本明細書では、マーカーは、その存在またはレベルが、特定の腫瘍またはその転移性疾患に特徴的である物質を指す。例えば、いくつかの実施形態では、当該用語は、特定の腫瘍、腫瘍のサブクラス、腫瘍の段階等に特徴的な遺伝子発現産物を指す。あるいは、またはさらに、いくつかの実施形態では、特定マーカーの存在またはレベルは、例えば、特定のクラスの腫瘍に特徴的であり得る特定のシグナル経路の活性(または活性レベル)と相関する。マーカーの存在または非存在の統計学的有意性は、特定マーカーに応じて変わり得る。いくつかの実施形態では、腫瘍が特定のサブクラスのものであるという可能性の高さを反映するという点において、マーカーの検出は、高度に特異的である。そのような特異性は、感度が犠牲になり得る(すなわち、例え腫瘍が、マーカーを発現するであろうと予想される腫瘍であったとしても、負の結果が生じ得る)。逆に高感度であるマーカーは、低感度のものと比較して特異性が低くあり得る。本発明によれば、有用なマーカーによって、100%の正確性で、特定のサブクラスの腫瘍が区別される必要はない。
質量分析:
質量分析は、気相イオンの質量対荷電比へと変換することができるパラメータを測定する気相イオン分光計を使用する方法を指す。質量分析計は、一般に、イオン源及び質量分析計を含む。質量分析計の例は、飛行時間型、磁場セクター型、四重極フィルター型、イオントラップ型、イオンサイクロトロン共鳴型、静電セクター分析計、及びこれらの複合型である。
代謝物:
本明細書では、「代謝物」は、体内でエネルギーを生じさせるか、またはエネルギーを使用する物理的プロセスまたは化学的プロセスの間、産生または使用する任意の物質を指し、当該プロセスは、食物及び栄養分の消化、尿及び糞便を介した老廃物の排出、呼吸、血液循環、ならびに温度制御などである。「代謝前駆物質(metabolic precursor)」という用語は、そこから代謝物が生じる化合物を指す。「代謝産物(metabolic product)」という用語は、代謝経路の一部である任意の物質を指す(例えば、代謝物、代謝前駆物質)。
修飾因子:
「修飾因子(modulator)」という用語は、関心活性が観測される系において、修飾因子が存在しなければ同等である条件下で観測されるものと比較した際、その存在が、その活性のレベル及び/または性質の変化と相関する実体を指すために使用される。いくつかの実施形態では、修飾因子が存在しなければ同等である条件下で観測されるものと比較した際、それが存在することで活性が増加するという点において、修飾因子は、活性化因子である。いくつかの実施形態では、修飾因子が存在しなければ同等である条件と比較した際、それが存在することで活性が減少するという点において、修飾因子は、阻害剤である。いくつかの実施形態では、修飾因子は、関心活性を有する標的実体と直接的に相互作用する。いくつかの実施形態では、修飾因子は、関心活性を有する標的実体と間接的に(すなわち、標的実体と相互作用する中間物質と直接的に)相互作用する。いくつかの実施形態では、修飾因子は、関心標的実体のレベルに影響を与え、あるいは、またはさらに、いくつかの実施形態では、修飾因子は、標的実体のレベルに影響を与えることなく、関心標的実体の活性に影響を与える。いくつかの実施形態では、修飾因子は、関心標的実体のレベル及び活性の両方に影響を与え、その結果、観測される活性差異は、観測されるレベル差異によって完全に説明されるものではないか、または観測されるレベル差異と完全に釣り合うものではない。
医薬組成物:
本明細書では、「医薬組成物」という用語は、1つまたは複数の医薬的に許容可能な担体と共に製剤化される活性物質を指す。いくつかの実施形態では、関連集団に対して投与されると所定の治療効果を達成する可能性が、統計学的に有意である治療レジメンでの投与に適切である単位用量において、活性物質は存在する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、下記に適合するものを含む固体形態または液体形態での投与向けに特別に製剤化されてよい。すなわち、例えば、水薬(水溶性もしくは非水溶性の溶液もしくは懸濁液)、例えば、頬側吸収、舌下吸収、及び全身性吸収を標的としたものといった錠剤、ボーラス、粉末、顆粒、舌に適用するためのペースト剤といった経口投与、例えば、皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射、または硬膜外注射による、例えば、無菌溶液もしくは懸濁液、または持続放出製剤としての非経口投与、例えば、皮膚、肺、または口腔に適用するクリーム、軟膏、または制御放出パッチもしくはスプレーとしての局所適用、例えば、ペッサリー、クリーム、または泡沫といった腟内または直腸内へのもの、舌下へのもの、眼へのもの、経皮的なもの、あるいは経鼻的なもの、肺へのもの、及び他の粘膜表面へのものである。
医薬的に許容可能:
本明細書では、「医薬的に許容可能」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴わず、ヒト及び動物の組織との接触使用に適しており、合理的な利益/危険比に見合う物質を指す。
多能性:
本明細書では、「多能性(pluripotency)」、「多能性(pluripotent)」、または「多能性状態(pluripotent state)」という用語は、細胞の性質、すなわち、様々な組織または臓器へと分化する能力を指す。例えば、いくつかの実施形態では、多能性細胞は、三つの胚性生殖層のすべてへと分化する能力を有した細胞であり、当該三つの胚性生殖層は、内胚葉(例えば、腸組織)、中胚葉(例えば、血液、筋肉、及び血管)、ならびに外胚葉(例えば、皮膚及び神経)である。多能性細胞は、典型的には、広範に分裂する潜在力を有する。
前駆細胞:
本明細書では、「前駆細胞(progenitor cell)」という用語は、より大きな発生上の潜在力を有する細胞、すなわち、分化によって生じさせることができる細胞と比較して、より原始的な(例えば、発生上の経路または進行に沿う早期段階にある)細胞表現型を指す。前駆細胞は、顕著または非常に高い増殖性の潜在力を有することが多い。前駆細胞は、発生上の潜在力が低下した複数の別々の細胞、すなわち、分化した細胞型を生じさせることができるか、または発生上の経路及び細胞が発生もしくは分化する環境に応じて、単一の分化した細胞型を生じさせることができる。
予後情報及び予測情報:
本明細書では、予後情報及び予測情報という用語は、治療の有無を問わず、疾患または状態の過程の任意の側面を示すために使用し得る任意の情報を指すために互換的に使用される。そのような情報には、限定はされないが、患者の平均余命、患者が、所与の期間(例えば、6ヶ月、1年、5年等)生存するであろう見込み、患者の疾患が、治癒するであろう見込み、患者の疾患が、特定治療に応答するであろう見込み(応答は、様々な方法のいずれかで定義されてよい)。予後情報及び予測情報は、診断情報の広範なカテゴリー内に含まれる。
純粋:
本明細書では、他の成分を実質的に含まないのであれば、物質または実体は、「純粋(pure)」である。例えば、特定の物質または実体の含量が、約90%を超える調製物は、典型的には、純粋な調製物であると考えられる。いくつかの実施形態では、物質または実体は、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%、純粋である。
参照:
「参照(reference)」という用語は、関心物質または関心値が比較される標準物質もしく標準値または対照物質もしくは対照値を説明するために、本明細書で使用されることが多い。いくつかの実施形態では、関心物質または関心値の試験または決定と実質的に同時に、参照物質が、試験され、及び/または参照値が、決定される。いくつかの実施形態では、参照物質または参照値は、歴史的参照であり、任意選択で実体媒体において具現化している。当業者であれば理解されようが、典型的には、参照物質または参照値は、関心物質または関心値の決定または特徴づけに利用するものと同等の条件下で決定または特徴づけられる。
危険:
文脈から理解されるように、疾患、障害、または状態の「危険(risk)」は、特定の個人に、疾患、障害、または状態が生じるであろう見込みの程度である。いくつかの実施形態では、危険は、割合として表現される。いくつかの実施形態では、危険は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10〜最大で100%である。いくつかの実施形態では、危険は、参照試料または参照試料の群と結び付いている危険に対する危険として表現される。いくつかの実施形態では、参照試料または参照試料の群は、疾患、障害、または状態の既知の危険を有する。いくつかの実施形態では、参照試料または参照試料の群は、特定の個人と同等の個人に由来する。いくつかの実施形態では、相対的危険は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれよりも大きい。
試料:
本明細書では、対象から得られる試料は、限定はされないが、下記のいずれかまたはすべてを含んでよい。すなわち、単一の細胞もしくは複数の細胞、組織の一部、血液、血清、腹水、尿、唾液、及び他の体液、分泌物、または排泄物である。「試料」という用語は、そのような試料の処理によって得られる任意の材料も含む。得られる試料は、試料から抽出されるか、またはmRNA等の増幅もしくは逆転写などの手法に試料を供することによって得られるヌクレオチド分子またはポリペプチドを含んでよい。
小分子:
本明細書では、「小分子」という用語は、低分子量の有機化合物及び/または無機化合物を意味する。一般に、「小分子」は、サイズが、約5キロダルトン(kD)未満の分子である。いくつかの実施形態では、小分子は、約4kD未満、3kD未満、約2kD未満、または約1kD未満である。いくつかの実施形態では、小分子は、約800ダルトン(D)未満、約600D未満、約500D未満、約400D未満、約300D未満、約200D未満、または約100D未満である。いくつかの実施形態では、小分子は、約2000g/mol未満、約1500g/mol未満、約1000g/mol未満、約800g/mol未満、または約500g/mol未満である。いくつかの実施形態では、小分子は、ポリマーではない。いくつかの実施形態では、小分子は、ポリマー部分を含まない。いくつかの実施形態では、小分子は、タンパク質またはポリペプチドではない(例えば、オリゴペプチドまたはペプチドではない)。いくつかの実施形態では、小分子は、ポリヌクレオチドではない(例えば、オリゴヌクレオチドではない)。いくつかの実施形態では、小分子は、多糖ではない。いくつかの実施形態では、小分子は、多糖を含まない(例えば、糖タンパク質、プロテオグリカン、糖脂質等ではない)。いくつかの実施形態では、小分子は、脂質ではない。いくつかの実施形態では、小分子は、調節物質である。いくつかの実施形態では、小分子は、生物学的に活性である。いくつかの実施形態では、小分子は、検出可能である(例えば、少なくとも1つの検出可能部分を含む)。いくつかの実施形態では、小分子は、治療的である。
特異的:
「特異的」という用語が、活性を有する物質または実体に対する参照と共に本明細書で使用されるとき、当該物質または実体が、可能性のある標的または状態を識別することを意味すると、当業者であれば理解する。例えば、競合する別の標的が存在する中で、物質が、優先的に標的に対して結合するのであれば、当該物質は、その標的に対して「特異的に」結合すると言われる。いくつかの実施形態では、物質または実体は、その標的に対して結合する条件下で、競合する別の標的に対して、検出可能なほどは結合しない。いくつかの実施形態では、物質または実体は、競合する別の標的(複数可)と比較して、結合速度の上昇、解離速度の低下、親和性の増加、解離の低減、及び/または安定性の増加を伴って、その標的に対して結合する。
幹細胞:
「幹細胞」という用語は、限定はされないが、単一細胞レベルで、自己複製及び分化の両方を行い、子孫細胞を産生するその能力によって定義される未分化細胞を含み、当該子孫細胞には、自己複製前駆細胞、非複製前駆細胞、及び最終分化細胞が含まれる。例えば、「幹細胞」には、(1)全能性幹細胞、(2)多能性幹細胞、(3)複能性(multipotent)幹細胞、(4)少能性幹細胞、及び(5)単能性幹細胞が含まれてよい。幹細胞は、胚性供給源または成体供給源を起源としてよい。本発明の目的に向けて使用することができる幹細胞には、限定はされないが、胚性幹細胞または再プログラム化(reprogrammed)幹細胞が含まれ、例えば、人工多能性幹細胞、または体細胞核移植(SCNT)から得られた細胞である。
対象:
「対象」は、哺乳類(例えば、ヒトであり、いくつかの実施形態では出生前のヒト形態を含む)を意味する。いくつかの実施形態では、対象は、関連する疾患、障害、または状態を患っている。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態に対して感受性である。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態の1つまたは複数の症状または特徴を示す。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態の症状または特徴を全く示さない。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態に感受性であるか、またはその危険に特徴的な1つまたは複数の特徴を有する任意のヒト(someone)である。対象は、患者であり得、患者は、疾患の診断または治療のために、医療提供者を訪れるヒトを指す。いくつかの実施形態では、対象は、治療が施される個人である。
実質的に:
本明細書では、「実質的に(substantially)」という用語は、全部または全部に近い範囲または程度の関心特徴または関心性質を示す定性的な状態を指す。生物学的技術分野の当業者であれば、生物学的現象及び化学的現象は、皆無ではないにせよ、完了まで進行し、及び/または完全性まで進行するか、または絶対的結果を達成もしくは回避することは稀であることを理解されよう。したがって、本明細書では、「実質的」という用語は、多くの生物学的現象及び化学的現象において固有である完全性の潜在的な欠如をとらえるために使用される。
患う:
疾患、障害、または状態を「患う(suffering from)」個人は、疾患、障害、もしくは状態の1つもしくは複数の症状もしくは特徴の診断を受けたことがあり、及び/またはそれを示すか、もしくは示したことがある。
に対して感受性:
疾患、障害、または状態に「対して感受性」である個人は、疾患、障害、または状態が生じる危険がある。いくつかの実施形態では、そのような個人は、関連する疾患、障害、及び/または状態が生じる危険の増加と統計学的に相関する1つまたは複数の因子を有することが知られている。いくつかの実施形態では、疾患、障害、または状態に対して感受性である個人は、疾患、障害、または状態の症状を全く示さない。いくつかの実施形態では、疾患、障害、または状態に対して感受性である個人は、疾患、障害、及び/または状態の診断を受けたことがない。いくつかの実施形態では、疾患、障害、または状態に対して感受性である個人は、疾患、障害、または状態の発症と結び付いている状態に対して曝露されたことがある個人である。いくつかの実施形態では、疾患、障害、及び/または状態が生じる危険は、集団に基づく危険である(例えば、アレルギー等を患っている個人の家族のメンバー。
症状が低減する:
本発明によれば、特定の疾患、障害、または状態の1つまたは複数の症状の程度(例えば、強度、重症度等)及び/または頻度が低減すると、「症状が低減する」。明確化の目的で記載すると、特定症状の発症の遅延は、その症状の頻度低減の1つの形態であると考えられる。例えば、小さな腫瘍を有する癌患者の多くは、症状を示さない。症状が消失した場合のみに、本発明が、限定されることは意図しない。本発明は、1つまたは複数の症状が、完全に消失はしないが、低減する(及び対象の状態が、それによって「改善する」)ような治療を具体的に企図する。
治療物質:
本明細書では、「治療物質(therapeutic agent)」という語句は、対象に対して投与されると、治療効果を有し、ならびに/または所望の生物学的及び/もしくは薬理学的な効果を誘発する任意の物質を指す。
治療上有効な量:
本明細書では、「治療上有効な量」という用語は、任意の医学的治療に適用可能な合理的な利益/危険比で、治療される対象に対して治療効果を与える治療タンパク質の量を指す。治療効果は、客観的(すなわち、ある試験もしくはマーカーによって測定可能)であっても、または主観的(すなわち、対象が、効果の徴候を示すか、もしくは効果を感じる)であってもよい。具体的には、「治療上有効な量」は、疾患に結び付いている症状の寛解、疾患発症の予防もしくは遅延、及び/または同様に、疾患症状の重症度もしくは頻度の減弱などによって、所望の疾患もしくは状態の治療、寛解、もしくは予防のために有効であるか、または検出可能な治療効果もしくは予防効果を示すために有効である治療タンパク質または治療組成物の量を指す。治療上有効な量は、一般に、複数回の単位用量を含み得る投薬レジメンにおいて投与される。どのような特定の治療タンパク質でも、例えば、投与経路、他の医薬物質との組み合わせに応じて、治療上有効な量(及び/または有効な投薬レジメン内の適切な単位用量)は、変わってよい。同様に、任意の特定患者に向けた特定の治療上有効な量(及び/または単位用量)は、様々な因子に依存してよく、当該因子には、治療される障害及び障害の重症度、用いる特定の医薬物質の活性、用いる特定の組成物、患者の年齢、体重、健康状態、性別、及び食事、投与時間、投与経路、及び/または用いる特定の融合タンパク質の排出速度もしくは代謝速度、治療の継続期間、ならびに医学分野でよく知られる同様の因子が含まれる。
治療:
本明細書では、「治療(treatment)(同様に、「治療する(treat)」または「治療(treating)」)という用語は、特定の疾患、障害、及び/または状態(例えば、癌)の1つまたは複数の症状、特徴、及び/または原因を、部分的、または完全に、軽減、寛解、緩和、抑制、その発症を遅延、その重症度を低減、及び/またはその発症率を低減する物質の任意の投与を指す。そのような治療は、関連する疾患、障害、及び/もしくは状態の徴候を示さない対象、ならびに/または疾患、障害、及び/もしくは状態の早期の徴候のみを示す対象へのものであってよい。あるいは、またはさらに、そのような治療は、関連する疾患、障害、及び/または状態の1つまたは複数の確立された徴候を示す対象へのものであってよい。いくつかの実施形態では、治療は、関する疾患、障害、及び/または状態を患っていると診断されたことがある対象へのものであってよい。いくつかの実施形態では、治療は、関連する疾患、障害、及び/または状態が生じる危険の増加と統計学的に相関する1つまたは複数の感受性因子を有していることが分かっている対象へのものであってよい。
単位用量:
本明細書では、「単位用量(unit dose)」という表現は、単回用量として投与される量、または医薬組成物の物理的に別々の単位において投与される量を指す。多くの実施形態では、単位用量は、所定量の活性物質を含む。いくつかの実施形態では、単位用量は、物質の単回用量全体を含む。いくつかの実施形態では、総単回用量を達成するために、単位用量を超える用量が投与される。いくつかの実施形態では、意図する効果を達成するために、複数回単位用量の投与が必要であるか、または必要であると予想される。単位用量は、例えば、所定量の1つまたは複数の治療物質を含むある特定の体積の液体(例えば、許容可能な担体)、所定量の1つまたは複数の固体形態の治療物質、所定量の1つまたは複数の治療物質を含む持続放出製剤または薬物送達装置等であってよい。単位用量は、治療物質(複数可)に対して代替え的、または追加的に任意の様々な成分を含む製剤において存在してよいと理解されよう。例えば、許容可能な担体(例えば、医薬的に許容可能な担体)、希釈剤、安定剤、緩衝剤、保存剤等が、下記の説明のように含まれてよい。多くの実施形態において、毎日の適切な総投与量の特定の治療物質は、一部、または複数回の単位用量を含んでよく、例えば、健全な医学的判断の範囲内で、担当医によって決定されてよいことを当業者であれば理解されよう。いくつかの実施形態では、任意の特定の対象または生物に向けた特定の有効用量レベルは、治療中の障害及び障害の重症度、用いる特定の活性化合物の活性、用いる特定の組成物、対象の年齢、体重、健康状態、性別、及び食事、投与時間及び用いる特定の活性化合物の排出速度、治療の継続時間、用いる特定の化合物(複数可)と組み合わせて、または同時に使用される薬物または追加療法、ならびに医学分野でよく知られる同様の因子を含む様々な因子に依存してよい。
ある特定の実施形態の詳細な説明
本発明は、幹細胞の増殖及び多能性が、細胞代謝の操作によって制御できるという発見を包含する。本発明は、細胞内のα−ケトグルタル酸レベル:コハク酸レベルを調節し、細胞の自己複製及び分化を制御できるという発見にさらに含む。
胚性幹細胞モデルを使用した細胞運命の決定
多能性を維持する条件下で増殖した胚性幹細胞(ESC)などの幹細胞は、外来性のグルタミン無しで増殖することが可能であり、これは、当該幹細胞が、グルコース由来のα−ケトグルタル酸(αKG)からグルタミンを合成することが可能であることを実証している。これにもかかわらず、ESCは、代謝物が利用可能であると、高レベルのグルタミンを消費する。同位体追跡試験を使用し、本発明者らは、分化細胞との比較において、ナイーブESCは、TCA回路及びタンパク質合成における消費を避けて獲得するグルタミンを管理すると共に、代わりにグルタミンを利用し、ヒストンの脱メチル化を促進するαKGのプールを維持して多能性を持続させるということを見出している。ナイーブESCでは、コハク酸に対するαKGの比が、顕著に増加しており、αKG依存性の反応の平衡バランスを変えるために十分である。同様に、本発明者らは、αKG:コハク酸の相対レベルによって、発生間の系譜決定に重要な「二価ドメイン」遺伝子におけるH3K27me3を含む、構成的ヘテロクロマチン及び条件的ヘテロクロマチンの両方と結び付いている複数のヒストン修飾を制御できることを実証している1、2。本研究によって、細胞内のαKGレベル:コハク酸レベルは、細胞独自性の維持に寄与すると共に、ナイーブ多能性細胞の転写状態及びエピジェネティック状態において機構的役割を担えることが明らかとなっている。
細胞内の相対的なαKGレベル:コハク酸レベルを調節するための、本発明の培養方法に従って、細胞運命または細胞集団を決定することができる。
いくつかの実施形態では、細胞運命は、遺伝子型、表現型、形態学、遺伝子発現、代謝マーカー、細胞表面マーカーを同定する当該技術分野における1つまたは複数の方法、及び/または細胞の細胞機能アッセイによって確認される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の特定遺伝子の遺伝子発現は、特定培地における培養などの特定の条件に細胞を曝露した後に同定される。遺伝子レベル、タンパク質レベル、及び/または機能は、例えば、ノーザンブロット、ウエスタンブロット、サザンブロット、フローサイトメトリー、ELISA、qPCR等を使用して確認されてよい。いくつかの実施形態では、細胞成熟度は、例えば、ヒストン修飾のパターンといったエピジェネティック変化によって決定される。特定の実施形態では、遺伝子は、好気性呼吸と結び付いている特定経路及びそれに結び付いている経路に関与するタンパク質をコードし、当該経路には、酸化的リン酸化、クエン酸回路(TCA)、脂肪酸酸化、ピルビン酸脱炭酸、及び同様のものが含まれる。特定の実施形態では、遺伝子は、CPT1またはPPARa(脂肪酸酸化に結び付いている遺伝子)を含んでよい。いくつかの場合では、遺伝子は、ホルモン発現(NPPA/ANP及びNPPB/BNPの発現の減少など)などの、成熟型の細胞の発生を示すタンパク質、ならびに成熟(ミオシン軽鎖2Vの発現は、増加するが、平滑筋アクチン及び骨格アクチンの発現は減少するなど)に結び付いている構造タンパク質をコードする。
細胞培養における細胞運命の制御
本発明は、多能性及び/もしくは自己複製の特性維持のための組成物、系、及び方法、または細胞培養における、細胞のαKGレベル:コハク酸レベルの操作を介した、幹細胞もしくは前駆細胞の細胞分化の促進のための組成物、系、及び方法も提供する。
αKGレベル:コハク酸レベルの制御によって、細胞における多能性の維持及び/または誘導が、顕著に改善されるという驚くべき知見が、本明細書に記載されている。αKG化合物またはαKG活性化因子と、MAPK阻害剤(例えば、MEK阻害剤、ErK阻害剤、もしくはp38阻害剤)またはGSK3β阻害剤と、の組み合わせによって、細胞の多能性の誘導及び/または維持が可能になる。
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞培養のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、培地中における哺乳類幹細胞を含む細胞培養の提供段階と、増殖促進のための、細胞内のコハク酸レベルに対するα−ケトグルタル酸レベルの維持段階と、を含む。いくつかの実施形態では、方法は、培地中における哺乳類幹細胞を含む細胞培養の提供段階と、多能性の維持のための、細胞内のコハク酸レベルに対するα−ケトグルタル酸レベルの達成段階または維持段階と、を含む。いくつかの実施形態では、細胞を、外来性のα−ケトグルタル酸化合物と接触させる。いくつかの実施形態では、外来性のα−ケトグルタル酸化合物が、培地に対して添加される。いくつかの実施形態では、外来性のα−ケトグルタル酸は、細胞透過性である。いくつかの実施形態では、α−ケトグルタル酸化合物は、α−ケトグルタル酸ジメチル(DM−αKG)である。
いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)阻害剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK3β)阻害剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)阻害剤及びグリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(GSK3β)阻害剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、外来性のグルタミンは、培地に対して添加されない。
いくつかの実施形態では、細胞増殖阻害または分化促進のための系及び方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、培地中における哺乳類幹細胞を含む細胞培養の提供段階と、細胞内のコハク酸レベルに対するα−ケトグルタル酸レベルの維持段階と、を含む。いくつかの実施形態では、外来性のコハク酸化合物が、培地に対して添加される。いくつかの実施形態では、外来性のコハク酸化合物は、細胞透過性である。いくつかの実施形態では、コハク酸は、コハク酸ジメチル(DM−コハク酸)である。
いくつかの実施形態では、本発明は、幹細胞及び培地を含む培養物を提供し、当該培地は、α−ケトグルタル酸化合物、MAPK阻害剤、及びGSK3β阻害剤を含む。
いくつかの実施形態では、本発明は、分裂細胞の増殖阻害のための系及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、細胞内のα−ケトグルタル酸レベルを減少させる物質の投与を含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞内のコハク酸のレベルを増加させる物質の投与を含む。いくつかの実施形態では、方法は、グルタミン合成酵素阻害剤の投与をさらに含む。
化合物、活性化因子、または阻害剤のそれぞれの量は、詳細な培養条件、使用する特定の阻害剤、及び培養する細胞の型に応じた最適な利点によって変更及び決定することができる。
いくつかの実施形態では、GSK3βの阻害剤には、GSK3βに対する抗体、GSK3βのドミナントネガティブ変異体、及びGSK3を標的とするアンチセンス核酸が含まれる。GSK3阻害剤の特定例には、限定はされないが、CHIR99021、CHIR98014、AR−AO 14418(例えば、Gould,et al,The International Journal of Neuropsychopharmacology 7:387−390(2004)を参照のこと)、CT 99021(例えば、Wagman,Current Pharmaceutical Design 10:1105−1137(2004)を参照のこと)、CT 20026(Wagman,上記を参照のこと)、SB216763(例えば、Martin,et al,Nature Immunology 6:111−IM(2005)を参照のこと)、AR−A014418(例えば、Noble,et al,PNAS 102:6990−6995(2005)を参照のこと)、リチウム(例えば、Gould,et al,Pharmacological Research 48:49−53(2003)を参照のこと)、SB 415286(例えば、Frame,et al,Biochemical Journal 359:1−16(2001)を参照のこと)、及びTDZD−8(例えば、Chin,et al,Molecular Brain Research,137(1−2):193−201(2005)を参照のこと)が含まれる。Calbiochemから入手できるGSK3阻害剤(例えば、Dalton,et al,WO2008/094597を参照のこと。当該文献は、参照によって本明細書に組み込まれる)のさらなる例には、限定はされないが、BIO(2’Z,3’£)−6−ブロモインジルビン−3’−オキシム(GSK3阻害剤IX)、BIO−アセトキシム(2’Z,3’E)−6−ブロモインジルビン−3’−アセトキシム(GSK3阻害剤X)、(5−メチル−lH−ピラゾール−3−イル)−(2−フェニルキナゾリン−4−イル)アミン(GSK3−阻害剤XIII)、ピリドカルバゾール−シクロペナジエニルルテニウム(cyclopenadienylruthenium)錯体(GSK3阻害剤XV)、TDZD−8 4−ベンジル−2−メチル−l,2,4−チアジアゾリジン−3,5−ジオン(GSK3ベータ阻害剤I)、2−チオ(3−ヨードベンジル)−5−(l−ピリジル)−[l,3,4]−オキサジアゾール(GSK3ベータ阻害剤II)、OTDZT 2,4−ジベンジル−5−オキソチアジアゾリジン−3−チオン(GSK3ベータ阻害剤III)、アルファ−4−ジブロモアセトフェノン(GSK3ベータ阻害剤VII)、AR−AO 14418 N−(4−メトキシベンジル)−N’−(5−ニトロ−l,3−チアゾール−2−イル)尿素(GSK−3ベータ阻害剤VIII)、3−(l−(3−ヒドロキシプロピル)−lH−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−4−ピラジン−2−イル−ピロール−2,5−ジオン(GSK−3ベータ阻害剤XI)、TWSl 19 ピロロピリミジン化合物(GSK3ベータ阻害剤XII)、L803 H−KEAPP APPQSpP−NH2またはそのミリストイル化形態(GSOベータ阻害剤XIII)、2−クロロ−l−(4,5−ジブロモ−チオフェン−2−イル)−エタノン(GSK3ベータ阻害剤VI)、AR−AO144−18、SB216763、及びSB415286が含まれる。阻害剤と相互作用するGSK3bの残基は同定されており、例えば、Bertrand et al.,J MoI Biol.333(2):393−407(2003)を参照のこと。
いくつかの実施形態では、MAPKシグナルの阻害は、1つまたは複数の物質の使用を含み、当該物質には、小分子阻害剤、RNAi、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどの阻害性ポリヌクレオチド、及び同様のものが含まれる。例えば、Schindler et al.(2007)J.Dental Res.86:800、Kumar et al.(2003)Nature Reviews 2:717、及びZheng et al.(2007)Trends in Pharmacological Sciences 28:286を参照のこと。これらはそれぞれ、参照によって、本明細書に明確に組み込まれる。阻害剤のクラスには、非ジアリールヘテロ環化合物(Cirillo et al.(2002)Curr.Top.Med.Chem.2(9):1021−1035を参照のこと)、イミダゾールを基礎とするピリド−ピリミジン−2−オン化合物(Natarajan et al.(2005)Curr.Top.Med.Chem.5(10):987−1003を参照のこと)、抗酸化剤(Sadowska et al.(2007)Pulm Pharmacol Ther.20(1):9−22を参照のこと)、次世代阻害剤(Zhang et al.(2007)Trends Pharmacol Sci.28(6):286−95)が含まれ、それぞれが、参照によって、本明細書に明確に組み込まれる。他の経路阻害剤は、TNF、IL−1、及び他のもの(Silva et al.(2010)Immunotherapy 2(6):817−833、Furst et al.(2005)Ann Rheum Dis.64 Suppl 4:iv2−14)などの、p38活性化を上方制御する炎症性サイトカイン、アンチセンスオリゴヌクレオチド及び妨害オリゴヌクレオチド、p38を脱リン酸化するタンパク質ホスファターゼ(例えば、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼホスファターゼ−7)の活性化因子/異所性発現、p38経路における上流アダプターのドミナントネガティブ形態の発現(例えば、ドミナントネガティブMKK3、またはドミナントネガティブMKK6、またはドミナントネガティブASK1)、ならびに同様のものを標的としてよい。p38阻害剤は、小分子、siRNA(例えば、US2005/0239731、WO04/097020、WO03/072590)アンチセンス分子、タンパク質、リボザイム、または抗体であり得る。
本明細書に記載の、多能性及び/もしくは自己複製の特性維持のための組成物、系、及び方法、または細胞分化の促進のための組成物、系、及び方法は、任意の幹細胞または前駆細胞に適用可能である。実例として、それぞれの方法において、ESCもしくはiPSCまたはそれぞれの細胞株の任意の培養を使用してよい。そのような細胞の集団を得る手段は、当該技術分野においてよく確立されている(例えば、Thomson,J.A.et al.[1998]Science 282,1145−1147、またはCowan,CA.et al.[2004]JV.Engl.J.Med.350,1353−1356を参照のこと)。方法が、前駆細胞向けの使用を意図する場合、開示の本方法において、任意の前駆細胞を使用することができる。適した前駆細胞の例には、限定はされないが、神経前駆細胞、内皮前駆細胞、赤血球前駆細胞、心筋前駆細胞、オリゴデンドロサイト前駆細胞、網膜前駆細胞、または造血前駆細胞が含まれる。前駆細胞を得る方法は、当該技術分野においてよく知られている。2つの実例として、巨核球前駆細胞を得る方法が、米国特許出願第2005/0176142号において開示されており、マウス肝臓前駆細胞株を得る方法が、Liら((2005)Stem Cell Express,doi:10.1634/stemcells.2005−0108)によって説明されている。
本明細書に記載の組成物、系、及び方法は、神経細胞、造血細胞、及び間葉細胞などの組織特異的な幹細胞または前駆細胞にも適用可能である。培養された細胞集団は、不均一ならびに実質的に均一な集団を含む。本明細書に記載の方法に従って培養された細胞は、増進した潜在力(分化能力)を達成、維持、または有する。細胞集団は、異なる潜在力を有する細胞が混ざった細胞型を含んでよい(例えば、単一の系譜を確約するものもあれば、2つの系譜を確約するものもあり、さらに、3つすべての系譜を確約するものもある)。集団は、例えば、細胞がすべて、内胚葉前駆体であるように単一の系譜細胞に制限されてよい。または、例えば、内胚葉前駆体及び中胚葉前駆体といった、2つ以上の型の単一系譜の前駆体が存在する、混ざった集団となるであろう。
幹細胞または前駆細胞は、当該技術分野で利用できる培養培地において維持及び増殖させることができる。そのような培地には、限定はされないが、Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(登録商標)(DMEM)、DMEM F12培地(登録商標)、Eagle’s Minimum Essential Medium(登録商標)、F−12K培地(登録商標)、Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium(登録商標)、RPMI−1640培地(登録商標)が含まれる。培地の多くは、ピルビン酸ナトリウム添加または非添加で、低グルコース製剤としても利用可能である。細胞培養培地に哺乳類の血清を添加することも企図する。血清は、生存及び増殖に必要な細胞因子及び成分を含むことが多い。血清の例としては、ウシ胎仔血清(fetal bovine serum)(FBS)、ウシ血清(BS)、仔ウシ血清(CS)、ウシ胎仔血清(fetal calf serum)(FCS)、ウシ新生仔血清(NCS)、ヤギ血清(GS)3、ウマ血清(HS)、ヒト血清、トリ血清、ブタ血清、ヒツジ血清、ウサギ血清、血清代替物、及びウシ胚液(bovine embryonic fluid)が含まれる。補体カスケード成分の非働化が望ましいのであれば、血清は、約55〜65℃で熱非働化できることが知られている。追加の補充剤を有利に使用して、最適な成長及び増殖のための微量要素を細胞に供給することもできる。そのような補充剤には、インスリン、トランスフェリン、亜セレン酸ナトリウム(sodium selenium)、及びそれらの組み合わせが含まれる。こうした成分は、限定はされないが、Hanks’ Balanced Salt Solution(登録商標)(HBSS)、Earle’s Salt Solution(登録商標)、抗酸化剤補充剤、MCDB−201(登録商標)補充剤、リン酸緩衝食塩水(PBS)、アスコルビン酸、及びアスコルビン酸−2−リン酸、ならびに追加のアミノ酸などの塩溶液に含めることができる。細胞培養培地の多くが、すでにアミノ酸を含んでいるが、細胞培養前に添加が必要なものもある。そのようなアミノ酸には、限定はされないが、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−アスパラギン、L−システイン、L−シスチン、L−グルタミン酸、L−グルタミン、L−グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、及びL−バリンが含まれる。こうした補充剤の適切な濃度は、当業者であれば容易に決定することができる。
細菌、マイコプラズマ、及び真菌の混入を軽減するために、細胞培養において、典型的には、抗生物質も使用される。典型的には、使用される抗生物質または抗真菌性組成物は、ペニシリン/ストレプトマイシンの混合物であるが、アンホテリシン(Fungizone(登録商標))、アンピシリン、ゲンタマイシン、ブレオマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ナリジクス酸、ネオマイシン、ニスタチン、パロモマイシン、ポリミキシン、ピューロマイシン、リファンピシン、スペクチノマイシン、テトラサイクリン、タイロシン、及びゼオシンも含まれ得、これらに限定されるものではない。
細胞培養において、ホルモンも有利に使用することができ、限定はされないが、D−アルドステロン、ジエチルスチルベストロール(DES)、デキサメタゾン、β−エストラジオール、ヒドロコルチゾン、インスリン、プロラクチン、プロゲステロン、ソマトスタチン/ヒト成長ホルモン(HGH)、甲状腺刺激ホルモン、チロキシン、及びL−チロニンが含まれる。細胞の型及び分化細胞の運命に応じて、脂質及び脂質担体を使用し、細胞培養培地を補充することもできる。そのような脂質及び担体には、限定はされないが、数ある中でも、シクロデキストリン(α、β、γ)、コレステロール、アルブミンに複合化されたリノール酸、アルブミンに複合化されたリノール酸及びオレイン酸、複合化されていないリノール酸、アルブミンに複合化されたリノール酸−オレイン酸−アラキドン酸、アルブミンに複合化されていないオレイン酸、及びアルブミンに複合化されたオレイン酸が含まれ得る。
支持細胞層の使用も企図する。支持細胞は、幹細胞を含む偏好性の培養細胞の成長を支持するために使用される。支持細胞は、γ線照射によって不活性化した通常の細胞である。培養においては、支持層は、自体がさらに成長または分裂することなく、他の細胞のための基底層として役立つと共に、細胞因子を供給する(Lim,J.W.and Bodnar,A.,2002)。支持層細胞の例は、典型的には、ヒト二倍体肺細胞、マウス胚線維芽細胞、Swissマウス胚線維芽細胞であるが、細胞の最適な成長、生存、及び増殖を可能にすることにおいて有利である細胞成分及び細胞因子の供給が可能である任意の分裂終了細胞を使用することができる。白血病抑制因子(LIF)が、抗分化特性を有するため、多くの場合、ES細胞を未分化の増殖状態に保つために、支持細胞層は必要ではない。したがって、LIF添加は、非胚細胞を未分化状態に維持するために使用することができるであろう。さらに、GSK−3阻害剤及びMAPK阻害剤を使用して、細胞を未分化状態に維持してよい。
培養中の細胞は、懸濁液中で維持するか、または細胞外マトリックス成分及び合成ポリマーもしくはバイオポリマーなどの固体の支持体に接着させて維持することができる。I型コラーゲン、II型コラーゲン、及びIV型コラーゲン、コンカナバリンA、コンドロイチン硫酸、フィブロネクチン、「スーパーフィブロネクチン」、及びフィブロネクチン様ポリマー、ゼラチン、ラミニン、ポリ−D−リジン及びポリ−L−リジン、トロンボスポンジン、ならびにビトロネクチンなどの固体の支持体への細胞接着を促す追加因子を、細胞が必要とする場合がある。非胚細胞の維持条件は、ESCまたはiPSCなどの細胞を未分化形態にとどめることを可能にする細胞因子も含み得る。細胞が、自己複製する未分化状態にとどまっていなくてはならない条件下では、培地が、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、白血病抑制因子(LIF:選定種において)、GKS−3阻害剤、MARK阻害剤、またはそれらの混合物を含むことが有利である。細胞の自己複製は可能にするが、分化はさせない補充剤は、分化に先立って、培養培地から除去されるべきであることは、当業者には、明らかなことである。別の細胞型との共培養によって、細胞に利益を与えることができる。そのような共培養方法は、細胞を特定の系譜または細胞型へと分化させることを可能にする、依然として未知である細胞因子を、ある特定の細胞が供給できるという観測から広がったものである。こうした細胞因子は、細胞表面の受容体の発現を誘導することもでき、こうした受容体のいくつかは、モノクローナル抗体によって容易に同定することができる。一般に、当業者が誘導を意図する系譜の型に基づいて、共培養向けの細胞は選定され、当業者であれば、共培養向けに適した細胞を選定することができる。
分化細胞を同定し、その後に対応する未分化細胞から分化細胞を分離する方法は、当該技術分野においてよく知られる方法によって実施することができる。分化誘導された細胞は、それによって分化細胞数が未分化細胞数を上回る条件下で細胞を選択的に培養することによって同定することができる。同様に、分化細胞は、対応する未分化細胞には存在しない形態学的な変化及び特徴によって同定することができ、こうした変化及び特徴は、細胞のサイズ、細胞プロセス(すなわち、樹状突起または分岐の形成)の数、及び細胞内小器官の分布の複雑性などである。細胞受容体及び膜貫通タンパク質などの特異的細胞表面マーカーの発現による分化細胞の同定方法も企図する。こうした細胞表面マーカーを標的とするモノクローナル抗体は、分化細胞を同定するために使用することができる。こうした細胞の検出は、蛍光標識細胞分取(FACS)及び酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を介して達成することができる。特定遺伝子の転写増加の観点から、分化細胞は、未分化細胞とは異なる遺伝子発現レベルを示すことが多い。逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を使用して、分化応答した遺伝子発現の変化を監視することもできる。あるいは、またはさらに、マイクロアレー技術を使用した全ゲノム解析を使用して、分化細胞を同定することができる。
したがって、分化細胞を同定した後、必要であれば、対応する未分化細胞から分化細胞を分離することができる。上記の詳細な同定方法は、FACSなどの分離方法、優先的な細胞培養方法、ELISA、磁気ビーズ、及びそれらの組み合わせなども提供する。本開示の好ましい実施形態は、細胞表面抗原の発現に基づいて、細胞を同定及び分離するためにFACSを使用することを想定する。
α−ケトグルタル酸レベル及びコハク酸レベルを調節する少なくとも1つの物質と組み合わせた、幹細胞または前駆細胞を含む組成物が、本明細書に記載されており、当該細胞は、複数の系譜の細胞型へと分化することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、培養培地中の細胞を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、試験管内の細胞集団を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、生体外の細胞集団を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、生体内の細胞集団を含む。本発明は、幹細胞または前駆細胞と、α−ケトグルタル酸レベル及びコハク酸レベルを調節する少なくとも1つの物質と、を混合し、任意選択で担体(例えば、細胞培養培地または医薬的に許容可能な担体)を混合して含む組成物調製のための系も提供し、当該細胞は、複数の胚系譜の細胞型へと分化することができる。
細胞を培地中で培養する容器には、限定はされないが、下記のものが含まれる。すなわち、フラスコ、組織培養用フラスコ、ディッシュ、ペトリ皿、組織培養用ディッシュ、マルチディッシュ、マイクロプレート、マイクロウェルプレート、マルチプレート、マルチウェルプレート、マイクロスライド、チャンバースライド、チューブ、トレー、CellSTACK(登録商標)チャンバー、培養バッグ、及びローラーボトルである。細胞は、培養の必要に応じて、少なくとももしくは約0.2、0.5、1、2、5、10、20、30、40、50ml、100ml、150ml、200ml、250ml、300ml、350ml、400ml、450ml、500ml、550ml、600ml、800ml、1000ml、1500ml、2000ml、またはその中から導き出せる任意の範囲の体積で培養してよい。ある特定の実施形態では、培養容器は、生物学的に活性な環境を支持する任意の装置またはシステムを指し得るバイオリアクターであってよい。バイオリアクターは、少なくとももしくは約2リットル、4リットル、5リットル、6リットル、8リットル、10リットル、15リットル、20リットル、25リットル、50リットル、75リットル、100リットル、150リットル、200リットル、500リットル、1立方メートル、2立方メートル、4立方メートル、6立方メートル、8立方メートル、10立方メートル、15立方メートル、またはその中から導き出せる任意の範囲の体積を有してよい。
培養容器は、細胞接着性または非細胞接着性であり得、目的に応じて選定される。細胞接着性培養容器は、細胞に対する容器表面の接着性を改善するために、細胞外マトリックス(ECM)などの細胞接着向けの任意の基質で被覆することができる。細胞接着向けの基質は、幹細胞または支持細胞(使用するのであれば)の接着を意図する任意の材料であり得る。細胞接着向けの材料には、コラーゲン、ゼラチン、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、ラミニン、及びフィブロネクチン、ならびにそれらの混合物、Matrigel(商標)、ならびに溶解された細胞膜調製物(Klimanskaya et al.,2005)が含まれ得る。
他の培養条件を適切に適用することができる。例えば、培養温度は、約30〜40℃にすることができ、例えば、少なくともまたは約31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃である。CO2濃度は、約1〜10%にすることができ、例えば、約2〜5%、またはその中から導き出せる任意の範囲である。酸素分圧は、少なくとも、または約1%、5%、8%、10%、20%、またはその中から導き出せる任意の範囲にすることができる。
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の方法による細胞培養のための細胞培養培地を提供する。
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞集団を多能性細胞について富化するための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、混合細胞集団と、α−ケトグルタル酸化合物または細胞内のコハク酸レベルに対するα−ケトグルタル酸レベルを増加させる物質と、の接触を含む。いくつかの実施形態では、外来性のグルタミンは、培地に対して添加されない。いくつかの実施形態では、多能性細胞は、多能性ではない細胞から選定することができ、これは、前者の増殖速度が、後者と比べて高いためである。いくつかの実施形態では、多能性細胞は、多能性細胞ではない細胞から選定することができ、これは、前者の生存率が、後者と比較して高いためである。いくつかの実施形態では、本発明は、総細胞集団の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%となるまで、多能性細胞を増大させるための組成物、系、及び方法を提供する。
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞集団を幹細胞または多能性細胞について富化するための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、混合細胞集団と、グルタミンレベルが顕著に減少した培地と、の接触を含む。いくつかの実施形態では、外来性のグルタミンは、培地に対して添加されない。
増大させる多能性細胞については、非多能性細胞の割合は、好ましくは、総細胞集団の、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、またはより好ましくは、1%以下である。多能性細胞向けのマーカーは、当該技術分野で知られる方法に従って、多能性細胞としての細胞割合を評価するために使用でき、当該方法は、例えば、蛍光染色及び多能性マーカーのイメージング、またはFACS分析である。
エピジェネティック制御
本発明者らは、細胞内のαKGレベル:コハク酸レベルの調節が、ある特定のエピジェネティック変化に特異的に影響を与えるということを見出した。ヒストンのメチル化は、ヘテロクロマチン形成、X−染色体の不活性化、ゲノムインプリンティング、DNA損傷の修復、及び遺伝子転写の制御において重要な役割を担っていると共に、ヒストンのメチル化部位は、異なる種間で高度に保存されており、異なる分化潜在力を有する細胞は、ヒストンのメチル化修飾が異なるプロファイルを有することが示唆されている。
α−ケトグルタル酸代謝を操作して、細胞におけるエピジェネティック変化を調節し得る。いくつかの実施形態では、本発明は、細胞の増殖または分化のエピジェネティック制御のための系及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、細胞内のα−ケトグルタル酸レベルを減少させて、クロマチン修飾を制御する物質の投与を含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞内のα−ケトグルタル酸レベルを減少させて、H3K27me3及びTen eleven translocation(Tet)依存性DNA脱メチル化を制御する物質の投与を含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞内のコハク酸レベルを増加させて、クロマチン修飾を制御する物質の投与を含む。いくつかの実施形態では、方法は、細胞内のコハク酸レベルを増加させて、H3K27me3及びTen eleven translocation(Tet)依存性DNA脱メチル化を制御する物質の投与を含む。いくつかの実施形態では、方法は、グルタミン合成酵素阻害剤の投与をさらに含む。
ヒストン修飾に加えて、いくつかの実施形態では、本発明は、細胞内のDNAメチル化の調節のための組成物、系、及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、細胞と、α−ケトグルタル酸化合物または細胞内のコハク酸レベルに対する、細胞のα−ケトグルタル酸レベルを増加させる物質と、の接触について説明する。
DNAメチル化は、組織特異的遺伝子発現、インプリンティング、X染色体不活性化、及び発癌などの様々な現象において、重要な役割を担っていることが知られている。クローン化動物において、DNAメチルトランスフェラーゼ遺伝子またはDNAメチル化状態の異常、及びDNAメチル化の異常に起因する先天性疾患または後天性疾患が知られている。
細胞内のDNAメチル化を同定するために、様々な方法が使用されてきた。例えば、ある方法は、制限酵素ランドマークゲノムスキャニングを含み(Kawai et al.,Mol.Cell.Biol.14:7421−7427,1994)、及び別の例は、メチル化感受性任意プライムPCRを含む(Gonzalgo et al.,Cancer Res.57:594−599,1997)。特定のCpG部位におけるメチル化パターンの変化は、メチル化感受性の制限酵素でゲノムDNAを消化した後、関心領域のサザン解析(消化−サザン法)を実施することによって監視されてきた。メチル化パターンの変化を解析する別の方法は、PCRによる増幅前に、メチル化感受性の制限酵素でゲノムDNAを消化することを含む、PCRを基礎としたプロセスを含む(Singer−Sam et al.,Nucl.Acids Res.18:687,1990)。
治療用途
いくつかの実施形態では、本発明は、癌患者の治療のための組成物、系、及び方法を提供する。本発明者らは、細胞の増殖及び分化が、αKGレベル:コハク酸レベルを制御することよって操作できることを見出した。本開示は、数ある中でも特に、αKGレベル:コハク酸レベルの減少が、細胞増殖を阻害できることを示している。いくつかの実施形態では、本開示は、細胞分化を促進するであろうαKGレベル:コハク酸レベルの制御のための組成物及び系について説明している。
いくつかの実施形態では、本開示の組成物及び系は、癌(例えば、限定はされないが、リンパ腫、白血病、前立腺癌、肺癌、胃癌、膵癌、乳癌、及び結腸癌を含む)を治療するために試験管内で使用することができる。本発明の方法が、生体内で実施される場合であって、例えば、癌細胞が、ヒト対象内に存在する場合、接触は、1回または複数回用量の治療上有効な量の、相対的なαKGレベル:コハク酸レベルを減少させる物質のヒト対象に対する投与(例えば、腫瘍への化合物の直接注射によって、ナノ粒子などの標的送達によって、または全身性投与を介して)によって実施することができる。
いくつかの実施形態では、本発明は、患者における、ある特定の細胞の集団を回復させるための組成物、系、及び方法を提供し、当該細胞は、例えば、ある特定の幹細胞である。例えば、患者の癌細胞集団を根絶するための癌治療によって、患者の骨髄幹細胞が消失し得る。患者自身またはドナーの保管幹細胞を患者に対して戻すことによって、患者の造血幹細胞の生体内プールが、補充または再配置され得る。方法は、造血幹細胞数を増加させ、こうした細胞を骨髄から血流へと動員し得、化学療法または放射線療法などの高用量の癌治療を使用することを可能にし得るが、骨髄移植と比較して、危険は少ない。
いくつかの実施形態では、本発明は、自家幹細胞集団または異種幹細胞集団の移植のための組成物、系、及び方法を提供する。例えば、本発明の系及び組成物を使用して、患者または他のドナーから得られる細胞を起源とする幹細胞を培養することができる。組成物は、癌治療の前、後、または治療中に、患者に対して投与されてよく、及び/またはドナーに対して投与されてよい。
そのような応用の1つの非限定例では、造血幹細胞を含む幹細胞集団を含み得る血液または末梢血白血球細胞が、患者から単離されてよい。細胞は、組成物の投与後、及び癌治療の前に、患者から単離されてよい。自家幹細胞集団は、後の使用に向けて保存されてよい。当該幹細胞集団は、癌治療を以前に受けたことがある患者に対して、後に投与されてよい。さらに、保存された自家幹細胞は、移植で使用されてよい。そのような治療は、免疫抑制治療の治療前、治療中、治療後の移植の成功を増進し得る。
本発明は、下記の実施例を参照することによって、より完全に理解されよう。しかしながら、そうした実施例が、本発明の範囲の限定するものであると解釈されるべきではない。
下記の実施例は、説明向けに提供され、本発明の範囲をいかなる形においても限定するものではない。
実施例1:2i含有培地中のGSK3B阻害剤及びERK阻害剤は、細胞培養において、グルタミン非依存性を与える。
着床前胚盤胞の内部細胞塊(ICM)の多能性細胞は、一過性にしか存在しないが、適切な培地製剤では、試験内において顕著な分化無しに、増殖することができる1、2。具体的には、mESCは、以前に確立された2つの培地製剤において維持させることができ、当該培地製剤の1つ目は、ICMの「ナイーブ」エピブラスト細胞を模倣する細胞表現型を支持することが報告されている無血清培地であり(2i/LIFまたは2i/L)、2つ目は、より確約されたES細胞表現型の増殖を支持する、血清を基礎とする培地である(血清/LIFまたはS/L)3〜10。ES細胞代謝を特徴づけるために、本発明者らは、こうした2つの成長培地において培養した細胞が、グルコース及び/またはグルタミンに対する異なるパターンの依存性を示すかどうかを検討した(図1a及び図5a〜図5c)。ほとんどの哺乳類細胞において、グルコースは、生体エネルギー学及び高分子合成を支持する主要な炭素源である一方で、グルタミンは、増殖中の細胞に還元窒素を供給し、トリカルボン酸(TCA)回路の補充反応を維持する。いずれの培地において培養されたESCも、グルコース及びグルタミンが豊富に存在すると、等しい速度で増殖し、2i有りまたは2i無しで培養された細胞は、グルコース無しでは、増殖することができなかった(図5a及び図5b)。対照的に、2i/L培地において培養された細胞は、外来性のグルタミン無しで確実に増殖した一方で、S/L培地において培養した細胞は増殖することができなかった(図1a及び図5c)。
上記結果は、驚くべきものであった、なぜなら、ごく限られた癌細胞株において例外はあるものの、哺乳類細胞は、グルタミン添加無しでは、組織培養において増殖することができないためである11。この表現型の再現性を試験するために、本発明者らは、4種の追加のV6.5ESC株(ESC−1〜4)を作成した。すべての細胞株が、ESC様形態学、アルカリホスファターゼ(AP)に対する反応性、及び生体内における奇形腫形成能力を含む、多能性細胞の特徴を保持しながら、2i/L培地において、確実なグルタミン非依存性の増殖を示した(図1b、図1c、図5d)。2i培地単独において培養された細胞も外来性のグルタミン無しで増殖することができた(図5e)。2i培地に存在するGSK3B阻害剤及びERK阻害剤を血清/LIF培地に添加しても、ESC形態学及び多能性マーカーを維持したグルタミン非依存性の増殖が可能であったため、本効果は、培地栄養製剤のわずかな差異に起因するものではなかった(図1d、図1e)。いくつかの研究室において、血清/LIF培地の代わりとして使用される代替えのESC培地は、2i/LIFと同一の血清非含有製剤に対して添加されたBMP4及びLIFを含む12。このBMP4/LIF培地は、グルタミン非依存性の成長を支持することはできなかった(図1f)。同様に、着床後多能性を示し、FGF2及びアクチンAを含む無血清培地において増殖するエピブラスト幹細胞(EpiSC)は、外来性のグルタミン無しでは、増殖することができなかった(図5f、図5g)。しかしながら、グルタミン非依存性の成長を行う能力は、胚性多能性に限ったものではなく、線維芽細胞由来の人工多能性細胞(iPSC)株も、グルタミン非含有2i/L培地において増殖することができた(図5h)。まとめると、こうした結果は、2i含有培地におけるGSK3B阻害剤及びERK阻害剤が、外来性のグルタミン無しで、多能性細胞の増殖を可能にすることを示している。
グルタミンは、ヌクレオチド合成に必須の窒素ドナーであることから、2i/L培地において、外来性のグルタミン無しで細胞が増殖したという事実は、グルタミンが豊富な培地において培養した細胞と比較すると、速度が遅くはあるが(図5i)、こうした細胞が、グルタミンのデノボ合成が可能であるにちがいないことを示している。実際、グルタミン合成を化学的に阻害することで、グルタミン非含有2i/L培地における細胞増殖は、十分に遮断された(図5j)。同様に、グルタミン合成の前駆物質として働くことができる細胞透過性のα−ケトグルタル酸ジメチル(DM−αKG)を添加することで、S/L及び2i/Lの両条件において、グルタミン非依存性の増殖が、十分に可能であり(図5k)、このことは、グルタミン合成の代謝前駆物質の供給が、グルタミン無しで多能性細胞が増殖する能力を決定していることを示している。本モデルの裏付けとして、グルタミンの即時型前駆物質である、細胞内グルタミン酸プールは、S/L条件におけるグルタミン供給中止の8時間以内に、劇的な(約10倍)欠乏を起こした(図1g)。対照的に、2i/L細胞は、グルタミン供給中止後、有意により高いグルタミン酸(p<0.0005)レベルを示した(図1g)。こうした結果は、2i/L細胞は、グルタミン自体以外の炭素源からグルタミン酸(及びグルタミン)を産生することができることを示している。
2i/Lが、グルタミン非依存性の細胞成長をどのように支持するかを解明するために、本発明者らは、培地中で最も豊富な2つの代謝物であるグルコース及びグルタミンの取り込みを測定した。S/L及び2i/Lの両方おいて培養された細胞は、類似したレベルの乳酸を排出しながら、高レベルのグルコース及びグルタミンを消費し、これは、癌細胞及び多能性細胞を含むほとんどの増殖中の細胞の代謝プロファイルと一致するものであった(図2a)13、14。増殖中の細胞は、大量の乳酸を産生すると同時に、娘細胞の産生に必要となる、ヌクレオチド、アミノ酸、及び脂肪酸を含む高分子前駆物質を産生しなくてはならない。ミトコンドリアTCA回路を介したグルコース及びグルタミンの酸化は、こうした生合成前駆物質の重要な供給源を提供する。2i/Lが、グルタミン無しでの、ESCの増殖を可能にしたという事実は、2iが、TCA回路の動態
を変え得ることを示している。α−ケトグルタル酸(α−KG)は、例外であるが、TCA回路の代謝物の定常状態レベルは、2i/Lにおいて培養されたESCにおいて、再現性よく減少した(図2b)。
ほとんどの細胞において、グルタミンは、αKGへと異化され、TCA回路の補充反応を支持する(図2c)。S/L培地において増殖したESCは、高レベルのTCA回路の中間体を示し、[U−13C]グルタミンの添加後、実質的に、細胞内のすべてのグルタミン酸、αKG、及びリンゴ酸が、迅速に標識化された(図2d)。対照的に、2i/Lにおいて増殖したESCにおいては、こうした代謝物のかなりの画分が、グルタミンで標識化されなかった。代わりに、こうした三つの代謝物プールは、[U−13C]グルコースに由来して、迅速に標識化された(図2e)。代謝物流動の定量によって、αKGを介したグルタミン由来の炭素の流動は、両条件において類似していたものの、リンゴ酸を介したグルタミンの流動は、2i/Lにおいて培養された細胞において有意に減少することが明らかとなり、このことは、グルタミン由来のαKGのTCA回路への流入が、2i/Lにおける培養によって抑制されていることを示している(図2f)。代わりに、細胞が、2i/Lにおいて培養されると、αKG及びリンゴ酸の両方が、グルコースから産生し、これはかなりの量であった(図2g)。
まとめると、こうした観測は、2iにおいて培養された細胞がグルタミン無しで増殖する能力に対する、有望な説明を提供するものである。グルタミンのデノボ合成に必要な前駆物質である細胞内のグルタミン酸は、αKGから産生する(図2c)。2i阻害剤と共に培養された細胞は、かなりのグルコース依存性グルタミン酸産生を示した(図6a)。結果的に、グルタミン欠乏条件の間、2i/L培地において培養された細胞は、グルコース由来の炭素を使用し、細胞増殖を支持するために、グルタミン酸プールを十分に増加させて維持することが可能であった(図6b)。
2iが、グルコース依存性のアミノ酸合成の増加を促進することをさらに確認するために、グルコース由来の炭素及びグルタミン由来の炭素のタンパク質への相対的な取り込みを調べた。[U−14C]グルタミンまたは[U−14C]グルコースと共に細胞をインキュベートした後、タンパク質抽出物における14Cのシグナルを測定することによって、本発明者らは、2i/L細胞は、そのS/L対応物との比較において、タンパク質合成を支持するために、グルコース由来の炭素を、より多く利用しており、グルタミン由来の炭素の利用は、相対的に少ないことを確認した(図5c)。
材料及び方法:
細胞株
ESC1〜4株は、V.65(F1 C57BL6 X 129S4/SvJae) mESCである。Tet1/2ダブルノックアウトES細胞、V19 ES細胞(ESC−V19)及びOKS iPSCは、Rudolf Jaenisch(MIT/Whitehead Institute Cambridge、MA USA)から供与された。V6.5 ESC番号1〜4は、標準的なES細胞単離手順に従ってE3.5胚盤胞から得た。2i/LIF培地を入れたラミニン被覆ディッシュ(20μg/ml、Stemgent 06−0002)に洗浄胚盤胞を播種した。マウスは、Jackson Labs、Bar Harbor、MEから購入した(C57BL/6 JAX、000664及び129S4/SvJae JAX 009104)。
細胞培養
ES細胞用の維持培地は、下記のとおりである。15%のESC適格FBS(Gemini)、ペニシリン/ストレプトマイシン(Life Technologies)、0.1mMの2−メルカプトエタノール、L−グルタミン(2mM、Life Technologies)、及び白血病抑制因子(LIF)を添加したKnockout DMEM(Gibco)を含む血清/LIF(S/L)維持培地を照射された支持マウス胚線維芽細胞(MEF)プレートに添加した。2i/LIF維持条件では、DMEM/F12(Life Technologies 11302−033)と、N2補充剤及びB27補充剤(Life Technologies 17502−048及び17504−044、1:100希釈)、ペニシリン/ストレプトマイシン、0.1mMの2−メルカプトエタノール、L−グルタミン(2mM)、LIF、3μMのCHIR99021(Stemgent)、ならびに1μMのPD0325901(Stemgent)を含むNeurobasal(Life Technologies 21103−049)と、を1:1で混合して調製した基本培地を使用した。グルタミン非含有DMEM(Life Technologies 11960−051)と、2mMのグルタミン含有または非含有のNeurobasal(Life Technologies 21103−049)と、の1:1混合物を含む実験培地を、すべての実験(グルコース有りまたは無しの増殖曲線、13C同位体追跡実験、及び14C標識実験は除く)で利用した。S/L実験培地における、15%の透析済FBS(Gemini 100−108)は例外であるが、他のすべての補充剤は、維持培地(S/Lまたは2i/L)と同じである。グルコース有りまたは無しの増殖曲線、13C同位体追跡実験、及び14C標識実験では、グルタミン及びグルコース非含有DMEM(Invitrogen A14430−01)と、20mMの[U−13C]グルコースまたは2mMの[U−13C]グルタミン(Cambridge Isotope Labs)のいずれか、及び必要に応じて20mMの非標識化グルコースまたは2mMの非標識化グルタミンのいずれかを含むグルタミン及びグルコース非含有Neurobasal(Invitrogen 0050128DJ)と、の1:1混合物を含む培地を使用した。すべての補充剤は、上記の実験培地(S/Lまたは2i/L)と同一であった。すべての実験は、支持(feeder)無しの条件を使用して実施した。ESC−1 EpiSCは、支持無しでフィブロネクチン(Sigma)被覆プレートにて、DMEM/F12、N2補充剤及びB27補充剤、ペニシリン/ストレプトマイシン、0.1mMの2−メルカプトエタノール、L−グルタミン、ヒトアクチビンA(20ng/ml、Peprotech)と、bFgf(10ng/ml、Invitrogen)と、を添加した75μg/mlのBSA(Gibco)を含むEpiSC維持培地において培養した。EpiSCは、Accutaseを使用して、1日おきに、1:2または1:4で継代した。ESCからEpiSCへの分化では、ESC−1細胞は、フィブロネクチン被覆ディッシュに播種した。播種後24時間に、6μMのJAK阻害剤(Calbiochem)を添加したEpiSC維持培地へと培地を交換し、5回継代した。7継代目のEpiSCに対して分析を実施した。UTX/Jmjd3の阻害剤であるGSK−J4及びGSK−J5は、Tocris Bioscienceから購入した。
奇形腫
T25ディッシュ当たり2.5x10個の細胞濃度で、維持培地にESC−1細胞を播種した。翌日に、グルタミン含有または非含有の2i/L実験培地へと培地を交換した。72時間後に、それぞれの群から1x10個の細胞を回収し、Matrigel Basement Membrane Matrix(BD)を加えた実験培地(グルタミン非含有)または実験培地単独と1:1で混合し、レシピエントのSCIDマウスの側腹部へと注射した。4〜8週間で、すべての条件で腫瘍が形成された。マウスは、腫瘍サイズが直径1.5cmを超える前に安楽死させた。腫瘍を切除し、4℃で一晩、4%のパラホルムアルデヒド中で固定した。腫瘍は、パラフィン包埋し、Histoserv Incの標準手順に従って、切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色した。
グルコース、グルタミン、及び乳酸の測定
培養培地中のグルコース、グルタミン、及び乳酸のレベルは、YSI7100多チャネル生化学分析器(YSI Life Sciences)を使用して測定した。細胞が、サブコンフルエントとなった12ウェルプレートに、新鮮培地を添加し、48時間後に回収した。それぞれのウェルのタンパク質含量に対して、新鮮培地に対する代謝物濃度の変化量を正規化した。
代謝物プロファイリング
代謝物の実験ではすべて、6ウェルプレート中のその標準培養培地に、細胞を播種し、翌日に実験培地へと交換した。回収前の記載の時間(通常、1〜24時間)に再び培地を交換した。内部標準として、20μMの重水素化2−ヒドロキシグルタル酸(D−2−ヒドロキシグルタル−2,3,3,4,4−d酸、d5−2HG)を添加した1mLの氷冷した80%メタノールで代謝物を抽出した。−80℃で一晩インキュベートした後、可溶化液を回収し、21,000gで20分間遠心してタンパク質を除去した。抽出物をエバポレーター(Genevac EZ−2 Elite)で乾燥させ、40mg/mLでメトキシアミン塩酸塩を含む50μLのピリジン中に再懸濁し、30℃で2時間インキュベートした。80μLのMSTFA+1%のTCMS(Thermo Scientific)及び70μlの酢酸エチル(Sigma)を添加して、代謝物をさらに誘導体化し、37℃で30分間インキュベートした。Agilent 5975C質量選択的検出器に連結したAgilent 7890A GCを使用して、試料を分析した。GCは、1mL/分の一定ヘリウムガス流のスプリットレスモードで操作した。1μlの誘導体化代謝物をHP−5MSカラムへ注入し、GCオーブンで25分間にわたって60℃〜290℃の温度勾配をかけた。関心化合物を示すピークを抽出し、MassHunterソフトウェア(Agilent Technologies)を使用して積分した後、内部標準(d5−2HG)のピークエリア、及びBCAタンパク質アッセイ(Thermo Scientific)によって定量した2連試料のタンパク質含量の両方に対して正規化した。代謝物レベルの定量化に使用したイオンは、下記のとおりである。d5−2HG m/z 354;KG、m/z 304;アスパラギン酸、m/z 334;クエン酸、m/z 465;グルタミン酸、m/z 363;リンゴ酸、m/z 335、及びコハク酸、m/z 247。すべてのピークを手動で視検し、それぞれの代謝物の既知のスペクトルと比較して検証した。同位体追跡試験では、12C−グルコース(Sigma)及び12C−グルタミン(Gibco)またはそれぞれの代謝物の13C型、[U−13C]グルコースもしくは[U−13C]グルタミン(Cambridge Isotope Labs)を添加したグルコース及びグルタミン非含有DMEM:NB培地を使用して上記のように実験を構成した。下記のイオンの存在量を定量化することによって、13Cの濃縮を評価した。αKG、m/z 304−315;アスパラギン酸、m/z 334−346;クエン酸、m/z 465−482;グルタミン酸、m/z 363−377、及びリンゴ酸、m/z 335−347。天然の同位体存在量の補正は、IsoCorソフトウェアを使用して実施した。流動は、動力学的標識曲線の一次速度定数の結果、及び相対的な代謝物プールサイズ(それぞれの実験で平均S/L値に対して正規化)として計算した。グルコース由来の炭素及びグルタミン由来の炭素の流動は、独立した3つの実験のそれぞれで計算し、それぞれの代謝物の平均総流動として示した。
タンパク質標識
0.01%の非濃縮D−[U−14C]−グルコース(Perkin Elmer NEC042V250UC)またはL−[U−14C]−グルタミン(Perkin Elmer NEC451050UC)を含む実験培地(S/Lまたは2i/L)に、6ウェルプレート当たり7.5x10個で、ES細胞を播種した。48時間後、細胞をPBSで洗浄し、剥がしてから4℃でペレット状にした。Bligh−Dyer法に従って、脂質画分を含まないタンパク質ペレットを単離した。簡潔に記載すると、200μLのdH20、265μLの100%メタノール、及び730μLのクロロホルムにペレットを再懸濁した。4℃で1時間、試料をボルテックスした。有機相を除去し、残存試料を1x体積のメタノールで洗浄し、14,200gで5分間遠心した。上清を捨て、65℃で30〜45分間、6Mの塩酸グアニジンにペレットを再懸濁した。Beckman LS 60001C機器を使用して、試料を定量化した。値は、2連試料のタンパク質に対して正規化した4つの独立したウェルを代表するものである。
成長曲線
12ウェルプレート当たり375,000個の細胞濃度で、維持培地にESCまたはEpiSCを播種した。翌日、PBSで細胞を洗浄し、個々の代謝物の含有または非含有実験培地(S/L条件向けであり、透析済FBSを含む)へと培地を交換した。Beckman Coulter Multisizer 4を使用して、細胞数を毎日数えた。
qRT−PCR
RNAは、RNeasy kit(Qiagen)を使用して単離した。DNase処理の後、First−Strand Synthesisキット(Invitrogen)を使用したcDNA合成に、1〜2μgのRNAを使用した。ABI Prism 7000(Applied Biosystems)を使用し、Platinum SYBR greenを用いて、生物学的に3連で、定量的RT−PCR分析を実施した。
実施例2:αKGは、細胞のエピジェネティック変化を制御する
2i/L培地において増殖した細胞が、TCA回路の補充反応を支持するためにグルコース利用を増加させたことは、TCA回路の中間体レベルが減少したにもかかわらず、αKGの上昇が観測されたことに対する有望な説明を示唆するものであった。グルコース由来の炭素が、TCA回路からグルタミン酸として流出することが観測されたことに加えて、TCA回路へのグルタミンの移行が減少したことは、2i/Lにおいて培養された細胞が、グルタミンから産生したαKGのすべてを、ミトコンドリアにおいて酸化していないであろうことを示唆するものであった。実際、αKG:コハク酸の比は、試験したあらゆるESC株において、2i/Lによって明確に上昇した(図3a)。細胞のαKG:コハク酸の比は、αKG依存性ジオキシゲナーゼの大きなファミリーの制御において関係づけられてきた15。こうした酵素は、補助基質としてαKGを利用し、最終産物としてコハク酸を産生し、次にコハク酸は、αKG依存性ジオキシゲナーゼの競合阻害剤として働くことができる。結果的に、αKG:コハク酸の比は、こうした酵素の平衡状態の重要な要因(driver)である。十文字ドメイン含有ヒストン脱メチル化酵素及びDNA脱メチル化酵素のTetファミリーが、こうした酵素の主要なサブセットを含むため、2i/L培地において増殖した細胞において観測されたαKG:コハク酸の比の上昇は、クロマチン構造の制御にとって、重要な意味を有するものであろう。
αKGの大部分が、グルタミン代謝から得られたため(図2d)、本発明者らは、αKG依存性脱メチル化酵素16によって部分的に制御されることで知られるヒストンのリジンのメチル化に、グルタミン欠乏が影響を与えるかどうかを試験した。2i/Lにおいて増殖中のESCを、グルタミン非含有2i/L培地へと3日間切り替え、そのヒストンのメチル化状態を調べた。グルタミン非含有培地へと移された細胞は、H3K9、H3K27、H3K36、H4K20上において、リジンのトリメチル化の増加と、モノメチル化の減少とを示した一方で、H3K4のメチル化は、変化しないままであった(図3b)。こうした変化が、グルタミン依存性αKGの減少に起因するかを説明し得るものであるかを確認するために、本発明者らは、DM−αKGを添加することで、グルタミン欠乏培地において観測されたH3K27me3及びH4K20me3の増加が、逆戻りすることも示した(図7a)。
上記のデータは、2i/L培地において維持された細胞において、H3K27を含む、ある特定のヒストンリジンのメチル化が、αKG依存性ヒストン脱メチル化酵素によって能動的に抑制されていることを示唆している。この可能性を検討するために、本発明者らは、UTX及びJmjd3を優先的に阻害する、細胞透過性阻害剤であるGSK−J417を使用した。UTX及びJmjd3は、H3K27me3に特異的なKDM6 JmjCファミリーのヒストン脱メチル化酵素の2つである(図3c)。GSK−J4で処理することによって、H3K27me1の減少を同時に伴う用量依存的なH3K27me3の増加が誘導され、この増減は、グルタミン有り、または無しで、細胞が培養されたときに観測された差異の大きさと同等であった(図3b、d)。
ES細胞における「二価ドメイン」は、発生的に制御されるゲノム領域であり、H3K4me3及びH3K27me3の共局在化によって特徴づけられると共に、分化の間に、活性クロマチンまたは抑制クロマチンのいずれかへの移行に向けて予備刺激されたクロマチン状態を反映すると考えられている18〜20。S/Lまたは2i/Lのいずれかで培養されたESCにおけるH3K4me3及びH3K27me3に対して最近なされたゲノム規模での解析によって、2i/Lで培養された細胞における二価ドメイン遺伝子プロモーターにおいて、H3K27me3が、特異的に欠乏していることが報告された10。本発明のデータは、観測されたαKGの増加が、2i/L ES細胞におけるαKG依存性のH3K27me3の脱メチル化を促進し得ることを示唆している。逆に、S/L ESCにおいて報告されたH3K27me3の高レベル化10は、ヒストン脱メチル化酵素の活性を制限するαKG:コハク酸の比の減少を反映し得るものである。これと一致して、S/L培地において増殖した細胞をH3K27me3脱メチル化酵素の阻害剤であるGSK−J4で処理すると、二価ドメインプロモーターにおけるH3K27me3のレベルは、変化しないことを本発明者らは、見出した(図3e及び図7b)。対照的に、2i/LIF ESCにおける類似処理は、二価ドメインプロモーターにおけるH3K27me3の一貫した増加をもたらした(図3e及び図7c)。試験した14個の二価プロモーターにわたる平均倍数変化は、S/Lで培養されたESCと比較して、2i/Lで培養されたESCにおいて、高度に有意な増加を示した(p<0.0001)(図3f)。こうした知見を遺伝子学的に確認するために、本発明者らは、CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を使用して、H3K27me3脱メチル化酵素であるJMJD3の十文字ドメインにおける変異を有する2つの独立細胞株を作成した(JMJD3Δ/Δ−1及びJMJD3Δ/Δ−2)(図8a〜図8c)。GSK−J4での処理と類似して、JMJD3における変異によって、2i/Lにおいて培養された細胞において、有意に高化したH3K27me3レベルの増加が生じ、これは、2i/Lで培養されたmESCにおけるこうした遺伝子座の脱メチル化の増進を反映するものである(図3f)。
本発明のデータは、2i/Lが、グルタミン代謝を再構築し(rewire)、様々なヒストンマークの脱メチル化の活性化に有利に働くαKGプールを維持することを示している。ヒストンの脱メチル化が、αKG消費の重要な起源であるかどうかを試験するために、GSK−J4または不活性異性体であるGSK−J5と共に、細胞を3時間インキュベートし、αKGレベル及びコハク酸レベルを監視した。UTX及びJMJD3の阻害は、S/L及び2i/Lの両方で培養された細胞において、αKG:コハク酸の比の増加を引き起こした。しかしながら、GSK−J4によって誘導されたαKG:コハク酸の比の絶対的及び相対的な増加の両方共が、2i/L培地において増殖した細胞において、より明白であった一方で、GSK−J5は、効果を有しなかった(図3g)。こうしたデータは、2i/Lにおいて増殖した細胞において、顕著な量のαKGが消費されて、H3K27の脱メチル化を維持している一方で、S/L培地においては、H3K27の脱メチル化が消費するαKGは、少ないことを示唆している。
二価ドメインプロモーターにおけるH3K27me3の減少に加えて、2i/Lにおいて培養された細胞は、DNAの低メチル化を示す。4、6〜8以前の研究によって、αKG依存性ジオキシゲナーゼの補助因子であるアスコルビン酸と共に細胞をインキュベートすることで、mESCにおいて、Tet酵素の活性及びDNA脱メチル化が、十分に誘導され、生殖系列に結び付いている遺伝子パネルの発現増進をもたらすことが示唆された。21したがって、本発明者らは、αKG処理が、類似の効果を発揮し得るかを試験した(図9b)。細胞透過性αKGと共に培養された細胞において、総DNAメチル化は、減少した(図9b)。あるいは、またはさらに、αKGでの処理は、Tet媒介性の活性化の標的として以前に同定された、ICM及び生殖系列に結び付いている遺伝子の発現を誘導したが、コハク酸処理では誘導されなかった(図9c)。21αKGの効果は、継代延長の際に持続し(図9d)、Tet1/Tet2ダブルノックアウトES細胞において、大部分が抑制された(図9e)。こうした結果は、ナイーブ多能性に特徴的なエピジェネティックマークの協調的制御のために、細胞内のαKG産生が、複数のαKG依存性ジオキシゲナーゼの活性を刺激し得ることを示唆している。
ES細胞では、グルタミン代謝及びαKG依存性ジオキシゲナーゼを介したクロマチン修飾の制御は、発生上の遺伝子制御だけでなく、多能性状態の維持にも役立ち得る。αKG:コハク酸の比の調節が、多能性細胞の運命決定に影響を与え得るかどうかを試験するために、コロニー形成アッセイを使用して、αKG及び/またはコハク酸の操作が、S/L ESCの自己複製能力に影響を与え得るのかを試験した。S/L培地にクローン密度でESCを播種し、翌日、S/L、SL+DM−コハク酸、またはS/L+DM−αKGへと交換した。4日後、アルカリホスファターゼでコロニーを染色し、分化、混合、または未分化として点数化した。定性的明視野画像によって、S/L+DM−αKGのコロニーが、より明るく染色され、未分化ES細胞に典型的な、より緻密なコロニー形態を保持していることが示された(図4a)。実際、コロニー総数は、三つすべての条件で類似していたが、S/L+DM−αKGのウェルは、S/L及びSL+DM−コハク酸と比較して、2倍を超える数の完全に未分化のコロニーを含んでいた(p<0.0001)一方で、S/L及びS/L+DM−コハク酸処理の両方において、優勢であったコロニー型は、混合または分化のいずれかであった(図4b)。逆に、S/L+DM−コハク酸は、未分化コロニーが減少し、分化コロニーが増加する傾向を示し、これには再現性があった。ESC維持を促進するαKGの能力のさらなる試験として、本発明者らは、ノックインNanog−GFPレポーター株22を利用し、αKGが、GFPの蛍光によって検出されるNanog発現を、用量依存的様式において十分増進することを見出した(図4c及び図10)。こうした結果は、αKGが、試験管内においてES細胞の自己複製を促進するという結論を支持するものである。
結論として、上記データは、細胞内のαKG:コハク酸の比は、ES細胞が分化を抑制する能力に寄与することを示している。GSK3β及びMAPK/ERKシグナル伝達の阻害剤による細胞代謝の再構築(rewiring)は、αKGの蓄積を導き、抑制的なクロマチンマークの脱メチル化に有利に働く、グルコース及びグルタミンの代謝の再プログラム化をもたらす。本発明の結果は、αKG依存性の脱メチル化の活性化は、mESCにおけるDNAメチル化、ならびにH3K9me3、H3K27me3、及びH4K20me3などの抑制的なクロマチンマークのメチル化状態を管理する主要な制御機構であることを示唆している。実際、最近実施された多能性細胞のクローン解析によって、DNAメチル化は、高度に動的であり、除去と付加とが拮抗するプロセスの平衡を保っていることが明らかとなった。23さらに、多能性ESC細胞とは対照的に、分化細胞は、H3K27me3の広範なドメインを示し、これは、脱メチル化酵素活性の増進が、多能性細胞におけるH3K27me3の網羅的な減少にも寄与し得ることを示唆している。24、25対照的に、観測された効果が、活性化に結び付いているH3K4のメチル化マークに対して存在しないことは、マウスESCにおいて、H3K4me2/me3が、スレオニン代謝によって制御されているという最近の報告を反映し得るものである。すなわち、スレオニンは、S−アデノシルメチオニン(SAM)の産生を支持して、ヒストンメチルトランスフェラーゼの反応に重大な意味を有する高SAM/SAH比を維持する。26、27
αKG依存性ジオキシゲナーゼ反応の補助因子であるアスコルビン酸の、mESC培地への添加は、試験管内におけるDNAメチル化の誘導、及び胚盤胞様状態の促進もなし得る。21αKG依存性ジオキシゲナーゼの大きなファミリーの他の基質、産物、及び/または補助因子の変化が共に作用することで、クロマチンの状態及び細胞の独自性に影響を与え得る。本発明者らは、ESCに対するαKG添加のクロマチン非依存性効果の可能性を除外することはできないが、我々の結果は、多能性ESCにおけるクロマチンが、細胞内代謝における変化に対して高度に応答性のままであるという概念を支持するものである。まとめると、こうした結果は、シグナル伝達と、細胞代謝との相互接続が、幹細胞生物学、生命体の発生、及び細胞の分化において役割を担っていることを示唆するものである。
材料及び方法:
DNAメチル化
ゲノムDNAは、Puregene Core Kit A(Sigma)を使用してESC試料から抽出した。DNAメチル化は、製造者の説明書に従って、比色分析MethylFlash Methylated DNA定量キット(Epigentek)を使用して測定した。
クロマチン免疫沈降
ナイーブChIPアッセイ(ヒストン)は、実験当たりおよそ6x10個のESCで実施した。細胞を低浸透圧性溶解に供し、小球菌ヌクレアーゼで処理してモノヌクレオソーム〜トリヌクレオソームを回収した。核は、短時間の超音波処理によって溶解し、N−ChIP緩衝液(10mMのトリス pH7.6、1mMのEDTA、0.1%のSDS、0.1%のNa−デオキシコール酸、1%のTriton X−100)中で、4℃で2時間透析した。可溶性材料は、75μLのプロテインA Dynal磁気ビーズ(Invitrogen)に結合した抗体を3〜5μg添加した後、インプットDNAとして5%を維持し、4℃で一晩インキュベートした。磁気ビーズを洗浄してクロマチンを溶出させ、定量的PCR反応(下記参照)に向けて、pH8の10mMのトリスにChIP DNAを溶解した。
ChIP−qPCR
プライマーを以下に記載した。qPCRはすべて、Applied Biosystems StepOnePlus system及びPower SYBR Green PCR master mixを使用して実施した。ChIP試料は、HOで1:100に希釈し、反応当たり5μLを使用した。ChIP−qPCRシグナルは、パーセントインプット(percent input)として計算した。
CRISPR/Cas9 ESC
Cas9−2A−PUROプラスミドは、Addgeneから購入した(Addgeneプラスミド48139)。マウスJMJD3のエクソン17を標的とする2つのgRNAは、Zhang Laboratory(MIT Cambridge、MA USA)が提供するオンラインソフトウェア(crispr.mit.edu)資源を使用して設計し、BbsI制限酵素部位を使用して、Cas9−2A−Puroへとクローン化した。Lipofectamine 2000(Life Technologies)を使用して、2i/L培地において培養されたESC−1細胞に、Cas9−2A−Puro対照またはJmjd3 gRNA含有プラスミドのいずれかをトランスフェクトした。24時間後、1μg/mlのピューロマイシン含有新鮮培地へと細胞を移し、48時間保った。選択後に、2i/L培地において、細胞を24時間培養した後、クローン密度まで分裂させた。およそ7日後、コロニーを選定し、分析に向けて拡大させた。ゲノムDNAを個々のクローンから精製し、それぞれのgRNA標的部位の周辺領域のPCR増幅に使用した。gRNA番号1産物は、367bpであり、gRNA番号2は、317bpである。PCR産物のクローニングは、pGEM−T Easy(Promega)を使用して実施した。変異体は、サンガー法(Genewiz Inc.)によって同定した。
FACS
Nanog−GFP ESCは、S/L実験培地において3回継代して培養し、6ウェルプレートに2.4x10個の細胞を播種した。24時間後、ビヒクル対照またはDM−AKGを含むS/L培地へと培地を交換した。続いて、48時間後に培地を交換し、翌日に細胞を回収した。FACS分析は、The Rockefeller University Flow Cytometry Resource Centerにおいて、BD LSR IIを使用して実施した。データは、FlowJoを使用して、作成した。分析は、生物学的に3連で実施した。
抗体
ウエスタンブロット法には、下記の抗体を使用した。H3(Abcam 1791)、H3K4me3(Active Motif 39159)、H3K4me1(Millipore 07−436)、H3K9me1(T.Jenuweinからの供与)、H3K9me3(Active Motif 39161)、H4(Abcam 番号0158)、H4K20me1(Abcam 9051)、H4K20me3(Millipore 07−463)、H3K27me1(Millipore 07−448)、H3K27me3(Millipore 07−449)、H3K36me3(Abcam 9050)、及びH3K36me1(Millipore 07−548)。ChIP−qPCRに使用した抗体は、H3K27me3(Cell Signaling 9733BF)及びH3K4me3(Active Motif 39159)である。
自己複製アッセイ
20μg/mLのマウスラミニン(Stemgent 06−0002)で被覆され、維持S/L培地を含む6ウェルプレートに、ウェル当たり100個の細胞で、ES細胞を支持MEF無しで播種した。翌日に、α−ケトグルタル酸ジメチル(4mM、Sigma 349631)、コハク酸ジメチル(4mM、Sigma W239607)、またはDMSOビヒクル対照を含むS/L実験培地へと培地を交換した。4日後に、PBSで細胞を洗浄してから、製造者の説明書に従って、Vector Red Alkaline Phosphatase Kit(Vector Labs)を使用して、アルカリホスファターゼ染色を実施した。
統計
比較は、記載のように、独立両側スチューデントt検定または適切な事後検定(post−test)(GraphPad Prismを使用して決定)を用いた二元配置ANOVAを使用して実施した。
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Claims (45)

  1. 細胞集団の増殖方法であって、
    培地中における哺乳類の幹細胞または前駆細胞を含む細胞集団の提供段階と、
    細胞増殖を促進するための、前記細胞内のコハク酸レベルに対するα−ケトグルタル酸レベルの維持段階と、
    を含む前記方法。
  2. 細胞集団における多能性の維持方法であって、
    培地中における哺乳類の幹細胞または前駆細胞を含む細胞集団の提供段階と、
    前記細胞多能性を維持するための、前記細胞内のコハク酸レベルに対するα−ケトグルタル酸レベルの維持段階と、
    を含む前記方法。
  3. 前記コハク酸レベルに対するα−ケトグルタル酸レベルが、少なくとも.05、.10、.15、.20である、請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
  4. 前記維持段階が、前記細胞内のコハク酸レベルに対するα−ケトグルタル酸レベルを増加させる物質の投与を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記維持段階が、外来性のα−ケトグルタル酸化合物の投与を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記外来性のα−ケトグルタル酸化合物が、細胞透過性である、請求項5に記載の方法。
  7. 前記α−ケトグルタル酸化合物が、α−ケトグルタル酸ジメチル(DM−αKG)である、請求項6に記載の方法。
  8. MAPK阻害剤及びGSK3β阻害剤の投与をさらに含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 前記維持段階が、グルタミン合成酵素の活性化因子の投与を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  10. 前記維持段階が、細胞のコハク酸を減少させる物質の投与を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  11. 外来性のグルタミンが、前記培地に対して添加されない、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 前記維持段階が、前記物質または化合物が存在しない同等条件下で維持された細胞で観測されるものと比較して、前記細胞内のα−ケトグルタル酸が、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%上昇したレベルの達成または維持を含む、請求項4〜10のいずれかに記載の方法。
  13. 前記維持段階が、前記物質または化合物が存在しない同等条件下で維持された細胞で観測されるものと比較して、前記細胞内のコハク酸が、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%低下したレベルの達成または維持を含む、請求項4〜10のいずれかに記載の方法。
  14. 前記維持段階が、前記物質または化合物が存在しない同等条件下で維持された細胞で観測されるものと比較して、前記細胞内のコハク酸に対するα−ケトグルタル酸の比率が、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、または少なくとも250%上昇したレベルの達成または維持を含む、請求項4〜10のいずれかに記載の方法。
  15. 細胞集団の増殖の制御方法であって、
    培地中における哺乳類の幹細胞または前駆細胞を含む細胞集団の供給段階と、
    細胞増殖の阻害のための、前記細胞中のコハク酸レベルに対するα−ケトグルタル酸レベルの維持段階と、
    を含む前記方法。
  16. 細胞集団の分化の制御方法であって、
    培地中における哺乳類の幹細胞または前駆細胞を含む細胞集団の提供段階と、
    細胞分化の促進のための、前記細胞中のコハク酸レベルに対するα−ケトグルタル酸レベルの維持段階と、
    を含む前記方法。
  17. 前記維持段階が、前記細胞内のコハク酸レベルに対するα−ケトグルタル酸レベルを減少させる物質の投与を含む、請求項15〜16のいずれかに記載の方法。
  18. 前記維持段階が、外来性のコハク酸化合物の投与を含む、請求項15〜17のいずれかに記載の方法。
  19. 前記外来性のコハク酸化合物が、細胞透過性である、請求項18に記載の方法。
  20. 前記コハク酸化合物が、コハク酸ジメチル(DM−コハク酸)である、請求項18に記載の方法。
  21. 前記維持段階が、前記物質または化合物が存在しない同等条件下で維持された細胞で観測されるものと比較して、前記細胞内のコハク酸が、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%上昇したレベルの達成または維持を含む、請求項17〜20のいずれかに記載の方法。
  22. 前記維持段階が、前記物質または化合物が存在しない同等条件下で維持された細胞で観測されるものと比較して、前記細胞内のα−ケトグルタル酸が、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%低下したレベルの達成または維持を含む、請求項17〜20のいずれかに記載の方法。
  23. 前記維持段階が、前記物質または化合物が存在しない同等条件下で維持された細胞で観測されるものと比較して、前記細胞内のコハク酸レベルに対するα−ケトグルタル酸レベルの比率が、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低下した前記レベルの達成または維持を含む、請求項17〜20のいずれかに記載の方法。
  24. 細胞増殖の阻害方法であって、細胞のα−ケトグルタル酸レベルを減少させる物質の投与を含む前記方法。
  25. 細胞増殖の阻害方法であって、細胞のコハク酸レベルを増加させる物質の投与を含む、前記方法。
  26. MAPK阻害剤及びGSK3β阻害剤の投与をさらに含む、請求項15〜25のいずれかに記載の方法。
  27. 幹細胞または前駆細胞の集団と、培地と、を含む細胞培養であって、前記培地が、α−ケトグルタル酸化合物、MAPK阻害剤、及びGSK3β阻害剤を含む前記細胞培養。
  28. α−ケトグルタル酸化合物、MAPK阻害剤、及びGSK3β阻害剤を含む細胞培養向けの基質。
  29. 細胞内のヒストンのメチル化の促進方法であって、前記細胞と、前記細胞内のコハク酸レベルに対する、細胞のα−ケトグルタル酸レベルを増加させる物質と、の接触を含む、前記方法。
  30. 細胞内のヒストンのメチル化の阻害方法であって、前記細胞と、前記細胞内のコハク酸レベルに対する、細胞のα−ケトグルタル酸レベルを減少させる物質と、の接触を含む前記方法。
  31. 前記ヒストンのメチル化が、ヒストン3リジン9のトリメチル化(H3K9me3)、H3K27のトリメチル化、H4K20のトリメチル化、またはそれらの組み合わせを含む、請求項29または30に記載の方法。
  32. 前記細胞が、胚性幹細胞、成体幹細胞、または人工多能性幹細胞を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
  33. 生体内での細胞増殖の阻害を必要とする対象における、その阻害方法であって、1回もしくは複数回用量のコハク酸化合物、細胞のコハク酸を増加させる1回もしくは複数回用量の物質、細胞のα−ケトグルタル酸を減少させる1回もしくは複数回用量の物質、1回もしくは複数回用量のグルタミン合成酵素阻害剤、またはそれらの組み合わせの、前記細胞に対する送達を達成する経路を介した投与を含む治療レジメンの、前記対象に対する付与を含む前記方法。
  34. 生体内での細胞分化の促進を必要とする対象における、その促進方法であって、1回もしくは複数回用量のコハク酸化合物、細胞のコハク酸を増加させる1回もしくは複数回用量の物質、細胞のα−ケトグルタル酸を減少させる1回もしくは複数回用量の物質、1回もしくは複数回用量のグルタミン合成酵素阻害剤、またはそれらの組み合わせの、前記細胞に対する送達を達成する経路を介した投与を含む治療レジメンの、前記対象に対する付与を含む前記方法。
  35. 生体内での細胞増殖の促進を必要とする対象における、その促進方法であって、1回もしくは複数回用量の、α−ケトグルタル酸化合物である物質、または1回もしくは複数回用量の、細胞のα−ケトグルタル酸を増加させる物質の、細胞集団に対する送達を達成する経路を介した投与を含む治療レジメンの、前記対象に対する付与を含む前記方法。
  36. 前記細胞集団が、幹細胞または前駆細胞を含む、請求項35に記載の方法。
  37. 生体内での幹細胞または前駆細胞の多能性の維持を必要とする対象における、その維持方法であって、1回もしくは複数回用量の、α−ケトグルタル酸化合物である物質、または1回もしくは複数回用量の、細胞のα−ケトグルタル酸を増加させる物質の、前記細胞に対する送達を達成する経路を介した投与を含む治療レジメンの、前記対象に対する付与を含む前記方法。
  38. 前記治療レジメンが、1回もしくは複数回用量のMAPK阻害剤、または1回もしくは複数回用量のGSK3β阻害剤をさらに含む、請求項35〜37のいずれかに記載の方法。
  39. 移植中、輸送中、または貯蔵中の、細胞の多能性の維持方法であって、前記細胞と、α−ケトグルタル酸化合物または細胞のα−ケトグルタル酸を増加させる物質を含む組成物と、の接触を含む前記方法。
  40. 細胞集団を多能性細胞について富化するための方法であって、
    培地中における多能性細胞を含む細胞集団の提供段階と、
    前記細胞集団内の多能性細胞の割合を増加させるための、前記細胞内のコハク酸レベルに対するα−ケトグルタル酸レベルの維持段階と、
    を含む前記方法。
  41. 前記維持段階が、α−ケトグルタル酸化合物または前記細胞内のコハク酸レベルに対するα−ケトグルタル酸レベルを増加させる物質の投与を含む、請求項40に記載の方法。
  42. 外来性のグルタミンが、前記培地に対して添加されない、請求項40に記載の方法。
  43. 前記多能性細胞が、前記維持段階後に、前記細胞集団の少なくとも50%を構成する、請求項40に記載の方法。
  44. 細胞集団を多能性細胞について富化するための方法であって、
    グルタミンを実質的に含まない培地中における多能性細胞を含む細胞集団の培養と、
    前記細胞集団内の多能性細胞の割合を増加させるための、前記培地中のグルタミンレベルの維持と、
    を含む前記方法。
  45. 多能性細胞集団の同定方法であって、
    培養物における細胞集団の提供であって、前記培養物が、グルタミンを実質的に含まない培地を含む前記提供と、
    細胞生存に基づく、前記多能性細胞の同定と、
    を含む前記方法。
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