処方薬、特にオピオイドの乱用は深刻で高まりつつある公衆衛生問題である。この問題に取り組むため、乱用抑止特性を含む新規の製剤が開発されている。乱用抑止特性は、製品の操作をより困難にするか、又は操作された製品を乱用する魅力若しくはやりがいを減じさせる特性を含む。
最近、FDAは乱用抑止特性を有する製剤に関する、産業向けのドラフトガイダンスを発行した。その全内容が参照により本明細書に組み込まれている、Guidance for Industry: Abuse-Deterrent Opioids-Evaluation and Labeling、米国保健福祉省、FDA、CDER、2013年1月。これらのガイドラインは乱用抑止性製剤を、物理的/化学的バリア、アゴニスト/アンタゴニストの組み合わせ、忌避、デリバリーシステム、プロドラッグ又は上記の組み合わせを含む6つのカテゴリーに分類している。FDAガイダンスに記載されているように、カテゴリーは以下の通りである。
物理的/化学的バリア- 物理的バリアは、咀嚼、粉砕、切断、すりおろし又はすりつぶしを防止することが可能である。化学的バリアは、水、アルコール又は他の有機溶媒のような一般的な溶媒を使用したオピオイドの抽出に抵抗することが可能である。物理的及び化学的バリアは、経口薬の物理的形態を変化させてより乱用されにくくすることが可能である。
アゴニスト/アンタゴニストの組み合わせ- オピオイドアンタゴニストは、乱用に伴う陶酔感を妨害、減少又は打破するために添加可能である。アンタゴニストは製品を操作した時のみ封鎖されて放出されうる。例えば、アンタゴニストとして作用する物質が、製品が嚥下された場合には臨床的に活性でないが、製品が破砕され注射又は鼻から吸引された場合には活性になるように、薬物製品を製剤化することが可能である。
忌避- 摂取前に剤形が操作された場合、又は指示よりも高い用量が使用された場合に不快な効果が生じるように、物質を組み合わせることが可能である。
デリバリーシステム(蓄積注射製剤及び埋込錠を含む)- 特定の薬物放出設計又は薬物デリバリー方法により、乱用に対する抵抗性をもたらすことが可能である。例えば、筋肉内投与される、又は皮下埋込錠である徐放性蓄積注射製剤は、操作することがより困難でありうる。
プロドラッグ- 消化管において転換されるまでオピオイド活性を欠くプロドラッグは、静脈内注射又は経鼻経路での乱用に不向きでありうる。
組み合わせ- 乱用を抑止するために上記の方法のうち2つ以上を組み合わせることが可能である。
乱用抑止性製剤(ADF)ラベリングに提出されるオピオイド鎮痛剤は、これらのカテゴリーのうち1つ以上への適合を示さなければならない。本開示は、活性医薬物質の持続放出を生じ、これらのカテゴリーのうち1つ以上に適合する、経口投与用の乱用抑止性丸剤に関する。一実施形態において、本開示の乱用抑止性製剤は6つのFDAカテゴリーのうち少なくとも1つに適合する。別の実施形態において、本開示の乱用抑止性製剤は6つのFDAカテゴリーのうち少なくとも2つに適合する。別の実施形態において、本開示の乱用抑止性製剤は6つのFDAカテゴリーのうち少なくとも3つに適合する。別の実施形態において、本開示の乱用抑止性製剤は6つのFDAカテゴリーのうち少なくとも4つに適合する。別の実施形態において、本開示の乱用抑止性製剤は6つのFDAカテゴリーのうち少なくとも5つに適合する。
例えば、本開示の乱用抑止性丸剤は、少なくとも1種の物理的バリアを組み込むことにより乱用を減少させることが可能である。物理的バリアは、咀嚼、粉砕、切断、すりおろし又はすりつぶしに基づく乱用を防止するように設計されている。好ましくは、物理的バリアはこれらの方法の有効性を防止するか又は減少させる。本明細書で使用される、「乱用抑止性」という語は、例えばすりつぶしなどの手段による乱用に好適な形態で製剤から活性物質を容易に分離できないことを意味する。本開示の乱用抑止性丸剤は、すりつぶし、抽出又はその両方が容易にできなくなっている。乱用抑止手段により、丸剤を、例えば経鼻若しくは静脈内などの非経口投与のための粉末又は抽出物に転換することが困難となる。
一実施形態において、本開示は直接成形された経口用の押出成形された持続放出性乱用抑止性丸剤に関する。丸剤は、乱用されやすい活性物質、約50Kダルトン〜約350Kダルトンの間の平均分子量を有するマトリックス剤、制御放出剤、及び場合により、可塑剤、染料、又は両方を含む。丸剤は、活性物質の持続放出プロファイルを示し、乱用を減少させるための物理的バリアを含む。押出後、押出物は切断ステップの使用などのさらなる加工なしに、丸剤に直接成形される。
本明細書で使用される、「活性物質」又は「乱用されやすい活性物質」という語は、潜在的に乱用されやすいオピオイド又はオピオイド関連化合物を意味する。活性物質は、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アンフェタミン、アニレリジン、ベンジルモルヒネ、ベジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、シクラゾシン、デソモルヒネ、デキストロアンフェタミン、デキストロモラミド、デゾシン、ジアムプロミド、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアムブテン、ジオキサフェチルブチラート、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアムブテン、エチルモルヒネ、エトニタゼン、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レバロルファン、レボフェナシルモルファン、レボルファノール、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルヒネ、ミロフィン、ナルブフィン(nalbulphine)、ナルセイン、ニコモルヒネ、ノルピパノン、アヘン、オキシコドン、パプブレタム(papvretum)、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェナゾシン、フェノモルファン、フェノペリジン、ピミノジン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジン、及びトラマドール、並びにそれらの薬学的に許容される塩及び混合物を含みうるが、これらに限定されない。好ましくは、活性物質はオキシコドンHCl、ヒドロコドン酒石酸水素塩、ヒドロモルフォンHCl、モルヒネ硫酸塩又はメタドンHClである。一実施形態において、本開示の製剤はオキシモルフォンを除外する。例えば、本開示の製剤は、活性物質がオキシモルフォンでないという条件で、少なくとも1種の乱用されやすい活性物質を含む。
製剤中の活性物質の量は、活性物質、安定性、放出プロファイル及び生物学的利用能次第で変化しうる。製剤中の活性物質の量は約1.0重量%〜約50重量%の範囲でありうる。具体的には、製剤中の活性物質の量は約4重量%〜約40重量%の範囲でありうる。例えば、製剤は約8mg〜約80mgの間の活性物質(例えばオキシコドンHCl)を有する200mgの丸剤でありうる。別の実施形態において、製剤は15mg〜約200mgの間の活性物質(例えばモルヒネ硫酸塩)を有する500mgの丸剤でありうる。
製剤中に少なくとも1種のマトリックス剤を組み込んで従来の剤形よりも錠剤の強度を増大させることにより、本開示の剤形を乱用抑止性とすることが可能である。マトリックス剤は、粉砕又はすりつぶしなどの物理的又は機械的な力に対する剤形の抵抗性を増大させる。製剤中に存在するマトリックス剤の適切な分子量グレード及び量を選択することにより、持続放出プロファイルを有する多様な乱用抑止性丸剤を作り出すように、剤形の強度特性を操作することが可能である。
マトリックス剤はまた、ゲル化剤又は増粘剤として作用することにより、剤形を乱用抑止性にすることも可能である。溶媒(例えば水溶液又は準水溶液)と接触すると、剤形は溶媒を吸収して膨張し、粘性又は半粘性の物質を形成することができる。粘性又は半粘性の物質が形成されることにより、ある量の活性物質を含み、注射器に吸い入れることが可能な遊離の溶媒の量が顕著に減少及び/又は最小限になる。マトリックス剤はまた、ゲルマトリックス中に活性物質を閉じ込めることにより、溶媒を用いて抽出可能な活性物質の全体量を減少させることも可能である。典型的なマトリックス剤は薬学的に許容されるポリマー、典型的にはヒドロゲルを形成するポリマーなどの親水性ポリマーを含む。これらの特性により、FDAガイダンスにおけるカテゴリー(例えば、「物理的及び化学的バリアは、経口薬の物理的形態を変化させてより乱用されにくくすることが可能である」)のうち少なくとも1つを満足する経口薬デリバリーシステムが可能になる。
マトリックス剤は、好適な溶媒と接触すると高い粘度を示しうる。水性又は半水性媒体中で製剤の内容物を破砕して溶解させ、静脈内に注射しようとすると、粘性が高いことにより高粘性ゲルの形成が増強されうる。例えば、乱用者が溶媒中で製剤を破砕して溶解させると、粘性又は半粘性のゲルが形成される。溶液の粘性が増大すると、乱用者は静脈内又は筋肉内にゲルを注射することを思いとどまる。
一部の実施形態において、マトリックス剤は乱用されやすい活性成分の抽出を防止する。例えば、本開示の製剤が少量の水溶液又は準水溶液に導入された場合、マトリックス剤は、乱用される可能性のある溶液中の剤形から相当量の活性物質を分離することができないように、比較的短時間で粘性溶液及び/又はヒドロゲルを形成する。製剤は無傷であってもよいし、混ぜものをされたり、例えばすりつぶしたり又は粉々に破壊してもよい。少量の水は、0.1mL〜100mL、具体的には1mL〜10mLでありうる。少量の溶液中の製剤の濃度は10mg/mL〜200mg/mL、具体的には5mg/mL〜80mg/mLでありうる。一部の実施形態において、少量の溶液は撹拌される。その他の実施形態において、少量の溶液は撹拌されない。撹拌される又は撹拌されない条件両方において、マトリックス剤は粘性溶液及び/又はヒドロゲルを形成することにより、乱用されやすい活性成分の抽出を防止する。
拘束されることを望むわけではないが、水性媒体に導入された場合、マトリックス剤、例えばPEOの分子量の差が、剤形の乱用される能力に影響すると考えられる。例えば、低分子量PEO(例えば50Kダルトン〜500K、600K、700K、800K、900K又は1Mダルトン)を含むと、ヒドロゲルが速やかに形成され、撹拌されない場合にはAPIに結合する。より高い分子量のPEOを含むと、ヒドロゲルの形成により長い時間を要する。典型的には、APIは分子がはるかに小さく、PEOよりもはるかに速やかに水和するため、高分子量PEOよりも水に溶けやすい。そのため、APIがマトリックス剤よりも水に溶けやすい状況では、ヒドロゲルが形成する前にAPIが剤形から浸出し、乱用がより容易になる可能性がある。
好適なマトリックス剤は、粉砕又はすりつぶしに対する抵抗性の増大をもたらすことが可能な天然又は合成ポリマーである。マトリックス剤は、寒天、アラミン酸(alamic acid)、アルギン酸、カルメロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キトサン、コポビドン、デキストリン、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース誘導体、微結晶セルロース、ポリアクリル酸、ポリアルカレンオキシド(例えばポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシド)、ポリビニルアルコール、ポビドン、アルギン酸プロピレングリコール、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、プルラン、二酸化ケイ素、アルギン酸ナトリウム、デンプン、並びにビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーからなる群から選択可能である。一実施形態において、マトリックス剤はポリエチレンオキシドである。ポリエチレンオキシドは、広範囲の分子量グレードで容易に入手可能な非イオン性水溶性ポリマーである。
マトリックス剤は、押出、又は力及び熱を利用するその他の工程により固形剤形が確実に形成されること、活性物質を持続放出させる助けとなること、並びに/又は粉砕若しくは少量抽出による乱用を防止することが可能であるべきである。マトリックス剤は、約50K、75K、100K、125K、150K、175K、200K、250K、300K、350K、400K、450K、500K、550K、600K、650K、700K、750K、800K、850K、900K、950K又は1000Kダルトンの分子量を有していてよい。これらの値はまた、例えば約75Kダルトン〜約175Kダルトンなどの範囲を規定するためにも使用可能である。一部の実施形態において、本開示の製剤は、約50Kダルトン〜約650Kダルトンの間などの適切な分子量(又は適切な平均分子量)を有するマトリックス剤を使用することにより、これらの能力を実現することが可能である。一実施形態において、マトリックス剤は約50K〜約150Kダルトンの間、又は約100Kダルトンの分子量を有する。別の実施形態において、マトリックス剤は約250K〜約350Kダルトンの間、又は約300Kダルトンの分子量を有する。別の実施形態において、マトリックス剤は約550K〜約650Kダルトンの間、又は約600Kダルトンの分子量を有する。
一実施形態において、本開示は、乱用されやすい活性物質、及び約50Kダルトン〜150Kダルトンの間の平均分子量を有するマトリックス剤を有する経口用の持続放出性乱用抑止性投与製剤であって、乱用されやすい活性物質は、持続放出プロファイルを有し、該製剤は、乱用を減少させるための物理的バリアを含む、経口用の持続放出性乱用抑止性投与製剤に関する。
別の実施形態において、本開示は、乱用されやすい活性物質、及び約250Kダルトン〜350Kダルトンの間の平均分子量を有するマトリックス剤を含む経口用の持続放出性乱用抑止性投与製剤であって、乱用されやすい活性物質は、持続放出プロファイルを有し、該製剤は、乱用を減少させるための物理的バリアを含む、経口用の持続放出性乱用抑止性投与製剤に関する。
別の実施形態において、本開示は、乱用されやすい活性物質、及び約550Kダルトン〜650Kダルトンの間の平均分子量を有するマトリックス剤を含む経口用の持続放出性乱用抑止性投与製剤であって、乱用されやすい活性物質は、持続放出プロファイルを有し、該製剤は、乱用を減少させるための物理的バリアを含む、経口用の持続放出性乱用抑止性投与製剤に関する。
マトリックス剤及び製剤の働きはまた、製剤中に存在するマトリックス剤の量次第でもある。製剤又は最終剤形は、約8、10、12、14、15、16、18、20、22、23、24、26、27、28、30、32、34、36、37、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78又は80重量%のマトリックス剤を含みうる。これらの値はまた、例えば約8重量%〜約12重量%、又は約15重量%〜約40重量%、又は約20重量%〜約37重量%、又は約23重量%〜約30重量%、又は約25重量%〜約27重量%、又は値の任意の組合せ、例えば約23重量%〜約27重量%、又は約37重量%〜40重量%などの、製剤中のマトリックス剤の範囲を規定するために使用可能でもある。
マトリックス剤が約50Kダルトン〜150Kダルトンの間の平均分子量を有する実施形態において、製剤又は最終剤形は、約8重量%〜約40重量%、又は約8重量%〜約12重量%、又は約15重量%〜約35重量%、又は約20重量%〜約30重量%、又は約23重量%〜約27重量%、又は値の任意の組合せのマトリックス剤を含みうる。マトリックス剤が約250Kダルトン〜350Kダルトンの間の平均分子量を有する実施形態において、製剤又は最終剤形は、約15重量%〜約40重量%、又は約20重量%〜約37重量%、又は約25重量%〜約30重量%、又は値の任意の組合せのマトリックス剤を含みうる。マトリックス剤が約550Kダルトン〜650Kダルトンの間の平均分子量を有する実施形態において、製剤又は最終剤形は、約15重量%〜約40重量%、又は約20重量%〜約37重量%、又は約25重量%〜約30重量%、又は値の任意の組合せのマトリックス剤を含みうる。
本開示の剤形はまた、製剤中に少なくとも1種の可塑剤も含みうる。一部の実施形態において、可塑剤の組み込みは任意である。可塑剤は、粉砕又はすりつぶしなどの物理的又は機械的な力に曝露されると蝋のような性質の付与をもたらすことにより乱用抑止特性を増大させることが可能である。可塑剤はまた、押出機における製剤の融点及び粘度を低下させることにより、製剤の製造又は加工も改善しうる。さらに、可塑剤は、抽出物の純度、及びその後の純度の高い結晶形態への再構成を減少させることにより、抽出防止の助けとなりうる。好適な可塑剤は、ポリアルカレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール及びポリエチレングリコールモノメチルエーテル)、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、ヒマシ油、ジアセチル化モノグリセリド、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、グリセリン、プロピレングリコール、プルラン、ソルビトールソルビタン溶液、トリアセチン、クエン酸トリブチル並びにクエン酸トリエチルからなる群から選択可能である。一実施形態において、可塑剤はポリエチレングリコールである。
可塑剤の働きは、製剤中に存在する可塑剤のサイズ及び量次第である。本開示の製剤は、約1Kダルトン〜約15Kダルトンの間の分子量を有する可塑剤を含みうる。具体的には、分子量は約1Kダルトン〜約10K、約3K〜約9Kダルトンの間である。製剤又は最終剤形は、約0重量%〜約40重量%、又は約1重量%〜約35重量%、又は約2重量%〜約35重量%、又は約3重量%〜約30重量%、又は約5重量%〜約30重量%、又は約10重量%〜約20重量%、又は約10重量%〜約15重量%の間、又は値の任意の組合せ、例えば約1重量%〜約3重量%の可塑剤を含みうる。
マトリックス剤が約50Kダルトン〜150Kダルトンの間の平均分子量を有する実施形態において、製剤又は最終剤形は、約0重量%〜約30重量%、又は約1重量%〜約25重量%、又は約2重量%〜約22重量%、又は約3重量%〜約18重量%、又は約10重量%〜約15重量%、又は値の任意の組合せの可塑剤を含みうる。マトリックス剤が約250Kダルトン〜350Kダルトンの間の平均分子量を有する実施形態において、製剤又は最終剤形は、約0重量%〜約40重量%、又は約5重量%〜約35重量%、又は約10重量%〜約32重量%、又は約24重量%〜約31重量%、又は約27重量%〜約30重量%、又は値の任意の組合せの可塑剤を含みうる。マトリックス剤が約550Kダルトン〜650Kダルトンの間の平均分子量を有する実施形態において、製剤又は最終剤形は、約0重量%〜約40重量%、又は約5重量%〜約35重量%、又は約10重量%〜約32重量%、又は約24重量%〜約31重量%、又は約27重量%〜約30重量%、又は値の任意の組合せの可塑剤を含みうる。
本開示の剤形はまた、制御放出剤も含みうる。制御放出剤は、投与後、長期間にわたって製剤からの時間依存性薬物放出をもたらす。制御放出剤は、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、セルロースエーテル、セルロースエステル、アクリル樹脂及びそれらの誘導体、並びにそれらの組合せからなる群から選択可能である。具体的には、制御放出剤はエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリ(メタ)アクリル酸及びそれらの塩、アミド又はエステルなどの誘導体、並びにそれらの組合せから選択可能である。製剤又は最終剤形は、約8重量%〜約62重量%、又は約10重量%〜約60重量%、又は約15重量%〜約58重量%、又は約20重量%〜約50重量%、又は約30重量%〜約45重量%、又は約32重量%〜約43重量%、又は約35重量%〜約40重量%の間、又は下限値及び上限値の任意の組合せ、例えば約58重量%〜約62重量%の制御放出剤を含みうる。
マトリックス剤が約50Kダルトン〜150Kダルトンの間の平均分子量を有する実施形態において、製剤又は最終剤形は、約8重量%〜約60重量%、又は約20重量%〜約60重量%、又は約30重量%〜約55重量%の制御放出剤を含みうる。マトリックス剤が約250Kダルトン〜350Kダルトンの間の平均分子量を有する実施形態において、製剤又は最終剤形は、約10重量%〜約50重量%、又は約15重量%〜約45重量%、又は約20重量%〜約40重量%の制御放出剤を含みうる。マトリックス剤が約550Kダルトン〜650Kダルトンの間の平均分子量を有する実施形態において、製剤又は最終剤形は、約10重量%〜約50重量%、又は約15重量%〜約45重量%、又は約20重量%〜約40重量%の制御放出剤を含みうる。一部の実施形態において、制御放出剤の重量パーセントは製剤中の制御放出剤全ての合計である。その他の実施形態において、制御放出剤の重量パーセントは製剤の成分1つのみを指す。
一部の実施形態において、制御放出剤は、ゲルを形成することにより溶液の粘度を増大させること、及び活性物質を持続放出させることの両方が可能であるべきである。本開示の製剤は、例えば約1kmPa・s〜約200kmPa・sの間などの適切な粘度を有する制御放出剤を使用することにより、両方の能力を実現することが可能である。具体的には、粘度は約3kmPa・s〜約150kmPa・s、又は約4kmPa・s〜約100kmPa・sの間である。
マトリックス剤は、マトリックス剤の働きを増大させる特定の制御放出剤とともに製剤化することが可能である。例えば、約50Kダルトン〜約350Kダルトン、又は約50K〜約650Kの間の分子量を有するPEOマトリックス剤を有する製剤は、PVAc及びPVPを含む制御放出剤と組み合わせることが可能である。一実施形態において、PVAc及びPVPの量は約29重量%〜約60重量%、又は約40重量%〜約50重量%である。別の実施形態において、製剤は、組み合わせられる制御放出剤として約24重量%〜約48重量%のPVAc、及び約5重量%〜約12重量%のPVPを含む。
別の実施例において、約50Kダルトン〜約650Kダルトン、又は約250Kダルトン〜約350Kダルトンの間、又は約100Kダルトン又は約300Kダルトン、又は約600Kダルトンの分子量を有するPEOマトリックス剤を有する製剤は、HPMCを含む制御放出剤と組み合わせることが可能である。一実施形態において、HPMCの量は約20重量%〜約40重量%である。
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むわけではないが、一部の実施形態において、制御放出剤(例えばHPMC)は、水性媒体と接触すると、丸剤マトリックスの膨張/ゲル化をもたらすと考えられている。マトリックスの膨張/ゲル化により、長期間にわたって丸剤の表面が侵食されることで時間依存性薬物放出が可能になる。その他の実施形態において、制御放出剤の水溶性が異なることにより、長期間にわたる拡散による時間依存性薬物放出が可能になると考えられている。例えば、制御放出剤はPVAc及びPVPの組合せとすることができる。PVAcは押出中に溶融して均一なマトリックスを形成することができるが、PVPは溶融しない。水性媒体に導入された場合、非水溶性PVAcは製剤中に留まることができるが、水溶性PVPは溶解し、製剤から浸出することができる。除去されたPVPから孔が形成され、そこから活性物質が拡散可能である。一実施形態において、本開示は、押出中に溶融して均一なマトリックスを形成することができ、投与後に活性物質が放出されている間などの水性条件下で実質的に不溶性である第1の成分(例えばPVAc)、及びこのような条件下で水溶性であり、活性物質がそこから拡散される孔又は通路を形成することができる第2の成分(例えばPVP)を有する制御放出剤を含む。
一部の実施形態において、製剤は染料を含む。染料は、乱用者が静脈内注射することを思い留まらせることにより、乱用を抑止するのに有用である。例えば、活性成分とともに染料を抽出すると着色された溶液が生じ、乱用者は静脈内注射することを思い留まるであろう。このように、特定の実施形態において、染料は抽出及び注射による乱用を減少させる。染料は医薬製剤での使用に好適であるか、そのような使用についてFDAの認可を受けた公知の染料から選択可能である。例えば、染料は連邦食品医薬品化粧品法(FD&C)黄色5号又はFD&C黄色5号の50/50重量%ポリエチレングリコール溶液でありうる。別の実施形態において、染料はFD&C黄色5号及びFD&C青色2号を含む緑色染料でありうる。この染料は50%PEG3350ブレンドでありうる。別の実施形態において、染料はFD&C赤色40号及びFD&C青色1号を含む紫色染料でありうる。この染料は50%PEG3350ブレンドでありうる。特定の実施形態において、4mgの染料ブレンド又は約2mgの濃縮染料が各丸剤に使用される。特定の実施形態において、染料は視覚的に抑止性かつ不透明であるため使用される。剤形は、約0.10重量%、0.20重量%、0.30重量%、0.40重量%、0.50重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%又は20重量%の染料を含みうる。これらの値のうちいずれも、染料の重量パーセントの範囲を規定するために使用可能である。例えば、剤形は約0.10重量%〜約15重量%の間の染料を含みうる。具体的には、剤形は約0.20重量%〜約1.5重量%の間の染料、約0.50重量%〜約1.0重量%の間の染料、又は約7〜約14重量%の染料を含みうる。特定の実施形態において、剤形は約1mg、1.4mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、21mg、22mg、23mg、24mg、25mg、26mg、27mg、28mg、29mg又は30mgの染料を含みうる。別の実施形態において、本開示の剤形は染料を除外する。
別の実施形態において、製剤は保存料又は抗酸化剤を含むことができる。保存料又は抗酸化剤は、乱用抑止性剤形の分解又は劣化を減少又は制限する。例えば、経口薬デリバリーシステムの成分(例えば活性物質、マトリックス剤)は酸化による分解(例えば、酸化的還元、鎖開裂)を受ける可能性がある。一部の実施形態において、分解の防止は、活性物質濃度及び意図した乱用抑止特性を維持するために不可欠である。例えば、製剤中のPEOの分子量は、粉砕抵抗性及び水性媒体に導入した場合の粘度に影響する。製剤に、PEOの分子鎖長の分解を減少させる又は無くす保存料又は抗酸化剤を添加することは、剤形の乱用抑止特性を維持するために有用である(例えばブチル化ヒドロキシトルエン)。さらに、抗酸化剤を含むと、活性物質の酸化を防止することができ、ゆえに製品の完全性を維持することができる(例えばクエン酸)。
保存料又は抗酸化剤は、医薬製剤において使用するための、当業者に公知である保存料又は抗酸化剤、例えばシリカ、ラウリル硫酸ナトリウム、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、エリソルビン酸、次亜リン酸、ラクトビオン酸、モノチオグリセロール、ピロ亜硫酸カリウム、没食子酸プロピル、ラセメチオニン、亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシ酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、塩化スズ、二酸化硫黄及びトコフェロールなどから選択可能である。製剤又は最終剤形は、約0.1重量%〜約3.0重量%、又は約0.25重量%〜約1.5重量%の間の保存料又は抗酸化剤を含みうる。別の実施形態において、本開示の製剤は、保存料又は抗酸化剤を除外する。
製剤は、界面活性剤、充填剤、増量剤、潤滑剤、着色剤、香味料又はそれらの組合せから独立に選択される、少なくとも1種の添加剤をさらに含みうる。
特定の実施形態において、本開示は、約5〜約40重量%で存在するオキシコドン、約50K〜約150Kダルトンの平均分子量を有し、約8重量%〜35重量%の間で存在するPEO、約8重量%〜60重量%の間で存在するPVAc、PVP又はそれらの組合せ、約8Kダルトンの平均分子量を有し、約0重量%〜30重量%の間で存在するポリエチレングリコール、及び場合により、約0%〜15%の間で存在するFD&C染料対ポリエチレングリコール比を有する染料ブレンドを有する、経口用の持続放出性乱用抑止性投与製剤に関する。製剤はまた、USPモノグラフによる持続放出性オキシコドン又は持続放出性オキシコドンの適合参照リスト薬(matching reference listed drug)についての基準を通過する活性物質の持続放出プロファイルも有し、製剤の物理的又は機械的操作後に、粒径0.5mm超の粒子を少なくとも50重量%有する。製剤はまた、約20重量%〜70重量%の間で存在するPEO、約20重量%〜60重量%の間で存在するPVAc、PVP又はそれらの組合せ、及び約2重量%〜20重量%の間で存在するポリエチレングリコールも有しうる。代わりに、製剤はまた、約23重量%〜40重量%の間で存在するPEO、約30重量%〜55重量%の間で存在するPVAc、PVP又はそれらの組合せ、及び約2重量%〜15重量%の間で存在するポリエチレングリコールも有しうる。
その他の実施形態において、本開示は、約5〜約40重量%で存在するオキシコドン、約250K〜約350Kダルトンの平均分子量を有し、約15重量%〜70重量%の間で存在するPEO、約10重量%〜50重量%の間で存在するHPMC、約8Kダルトンの平均分子量を有し、約0重量%〜40重量%の間で存在するポリエチレングリコール、及び場合により、約0%〜15%の間で存在するFD&C染料対ポリエチレングリコール比を有する染料ブレンドを有する、経口用の持続放出性乱用抑止性投与製剤に関する。製剤はまた、USPモノグラフによる持続放出性オキシコドン又は持続放出性オキシコドンの適合参照リスト薬についての基準を通過する活性物質の持続放出プロファイルも有し、製剤の物理的又は機械的操作後に粒径0.5mm超の粒子を少なくとも50重量%有する。製剤はまた、約20重量%〜40重量%の間で存在するPEO、約15重量%〜45重量%の間で存在するHPMC、及び約5重量%〜40重量%の間で存在するポリエチレングリコールも有しうる。代わりに、製剤はまた、約25重量%〜30重量%の間で存在するPEO、約20重量%〜40重量%の間で存在するHPMC、及び約10重量%〜35重量%の間で存在するポリエチレングリコールも有しうる。
その他の実施形態において、本開示は、約5〜約40重量%で存在するオキシコドン、約550K〜約650Kダルトンの平均分子量を有し、約15重量%〜70重量%の間で存在するPEO、約10重量%〜50重量%の間で存在するHPMC、約8Kダルトンの平均分子量を有し、約0重量%〜40重量%の間で存在するポリエチレングリコール、及び場合により、約0%〜15%の間で存在するFD&C染料対ポリエチレングリコール比を有する染料ブレンドを有する、経口用の持続放出性乱用抑止性投与製剤に関する。製剤はまた、USPモノグラフによる持続放出性オキシコドン又は持続放出性オキシコドンの適合参照リスト薬についての基準を通過する活性物質の持続放出プロファイルも有し、製剤の物理的又は機械的操作後に粒径0.5mm超の粒子を少なくとも50重量%有する。製剤はまた、約20重量%〜40重量%の間で存在するPEO、約15重量%〜45重量%の間で存在するHPMC、及び約5重量%〜40重量%の間で存在するポリエチレングリコールも有しうる。代わりに、製剤はまた、約25重量%〜30重量%の間で存在するPEO、約20重量%〜40重量%の間で存在するHPMC、及び約10重量%〜35重量%の間で存在するポリエチレングリコールも有しうる。
本開示の乱用抑止性丸剤は、活性物質を持続放出することが可能である。剤形は、少なくとも1種の活性物質について持続放出プロファイルを示す組成物を提供するように製造されうる。本明細書で使用される場合、「持続放出性」は、活性物質又はその薬学的に許容される塩を、長期間、例えば6〜8時間、8〜12時間にわたって、使用者の消化管内に放出する剤形を指す。具体的には、活性物質は、例えば6〜8又は8〜12時間の期間にわたって実質的に継続的に放出される。一実施形態において、8〜12時間以内に模擬胃液への曝露によって剤形から放出される活性物質、例えばオキシコドンHClの量は約85%である。別の実施形態において、6〜8時間以内に模擬胃液への曝露によって剤形から放出される活性物質、例えばオキシコドンHClの量は約80%である。本開示の製剤は、USPモノグラフ又は持続放出性活性物質の適合参照リスト薬(RLD)についての基準を通過する持続放出プロファイルを示す。
様々な実施形態において、模擬胃液への曝露によって剤形から放出される活性物質の量を表1〜4に示す。表1〜4の値は、許容されるUSP基準を表し、RLD規格に関連する値とは異なる可能性がある。
製剤又は乱用抑止性丸剤はまた、乱用を減少させるために少なくとも1種の物理的バリアも含みうる。物理的バリアは、粉砕して鼻から吸引、粉砕して注射すること又はそれらの組み合わせにより丸剤が乱用されることを不可能にすることができる。例えば、本開示の乱用抑止性丸剤は、物理的又は機械的な力により顕著に粉砕することが不可能でありうる。
経口投与されるオピオイド鎮痛剤の乱用の最も一般的な手段の1つは、経鼻吹送による血流への迅速な運搬を引き起こすために、経口剤形を操作することを含む。吸入が乱用の有効な手段として使用されるために、元の剤形は、摂取された薬物の粒径が約0.5mm以下に減少するように操作されなければならない。有効な経鼻吸収が起こるには、約0.5mm以下の粒径が必要である。乱用者が妥当な方法で得ることが可能な約0.5mm未満の粒子の量を制限することにより、吸入を乱用の手段として無効にすることが可能である。この物理的バリアが作り出されうる1つの方法は、物理的に破壊され約0.5mmよりも小さい粒子を生ずることに対し抵抗性である可塑性マトリックス中に、乱用されやすい活性物質を捕捉することによるものである。
本開示の剤形は、コーヒーグラインダーなどの一般的な器具を使用する、すりつぶし又は粉砕による操作を阻害することが可能である。例えば、製剤がすりつぶされうる粒径を制限することにより、製剤は乱用を抑止する。製剤は、丸剤、又は少なくとも丸剤の大部分が、鼻腔の膜を通過して血流への活性物質の迅速な送達を引き起こす可能性がある約0.5mm以下の粒径を有する粒子にすりつぶされることを防止する。剤形はまた、一般的な溶媒(例えば、冷水、温水(少量)又は高度数エタノール)による、製剤からの活性物質の抽出を顕著に制限することも可能である。例えば、活性物質が非経口投与のために容易に濃縮されることができないように、(意図的又は非意図的に)活性物質を製剤から抽出する能力を制限することにより、製剤は乱用を抑止する。乱用抑止性製剤はまた、アンタゴニスト又は刺激物など他の抑止剤の組み込みを含んでいてもよいが、必要不可欠ではない。
一実施形態において、本開示の乱用抑止性丸剤は、すりつぶすことにより乱用可能な形態に破砕不可能でありうる。典型的なコーヒーグラインダー解析(例えば、コーヒーグラインダーにおいて約20,000+rpmで約30〜60秒間すりつぶし)において、丸剤は乱用不可能な形態のままである。コーヒーグラインダー解析は、乱用抑止性丸剤をすりつぶすことが可能な、市販のコーヒーグラインダー又は同等物を使用して行うことが可能である。コーヒーグラインダー解析を使用して試験された丸剤は、生じる粒子の大部分が、乱用、すなわち経鼻投与が不可能な粒径を有する。このような粒子を相当量有する乱用抑止性丸剤は、製剤を乱用する動機又は費用対効果を減少させる。例えば、経鼻投与に活性物質の約50%未満しか利用できない潜在的な乱用者は、製剤の乱用を抑止されるであろう。
研削力(例えばコーヒーグラインダー解析又は同等物)に曝露されると、乱用抑止性丸剤は粒子にすりつぶされることができ、すりつぶされた粒子の少なくとも約50重量%が約0.5mm超の粒径を有する。具体的には、研削力に曝露されると、乱用抑止性丸剤は粒子にすりつぶされることができ、すりつぶされた粒子の少なくとも約55重量%、すりつぶされた粒子の60重量%、すりつぶされた粒子の65重量%、すりつぶされた粒子の70重量%、すりつぶされた粒子の75重量%、すりつぶされた粒子の80重量%、すりつぶされた粒子の85重量%、すりつぶされた粒子の90重量%、又はすりつぶされた粒子の95重量%が約0.5mm超の粒径を有する。
別の実施形態において、本開示の乱用抑止性丸剤は、水溶液又は準水溶液に曝露されるとヒドロゲルを形成することが可能でありうる。ヒドロゲルの形成は、活性物質が非経口投与のために容易に濃縮されることができないように、人が活性物質を製剤から抽出する能力を制限することにより、乱用を抑止する。
別の実施形態において、製剤又は乱用抑止性丸剤はまた、乱用を減少させるための少なくとも1種の化学的バリアも含みうる。オピオイドを乱用する一般的な手段は、活性物質を非常に高純度の溶液に抽出するため、一般に入手可能な溶媒を使用することである。例えば、オキシコドンはエタノールに可溶であるが、その他多くの賦形剤は部分的に可溶であるのみか、完全に不溶である。これにより、乱用者は剤形から活性物質を抽出し、剤形の持続放出特性を無くし、活性物質を乱用可能にするため結晶形態に戻すことが可能となる。本開示の製剤は、最終溶液の純度が約80%、70%、60%、50%、40%、30%又は約20%の純度となるように、活性物質と同じ溶媒の多くにも可溶である賦形剤を含む。これらのさらなる賦形剤を含むと、抽出が試みられた場合に、着色された蝋状の残留物が形成されることにより、乱用者が活性物質を純度の高い結晶形態に戻すことが防止される。一部の実施形態において、剤形は乱用を減少させるための化学的バリアを含まない。
別の実施形態において、本開示は、少なくとも1種の乱用されやすい活性物質を含む経口用の持続放出性乱用抑止性丸剤を製造する方法であって、加熱溶融押出により、少なくとも1種の乱用されやすい活性物質、マトリックス剤、制御放出剤、可塑剤及び染料の均一なブレンドを加工し、押出物を製造するステップを含む方法に関する。押出物はその際、成形ユニットを使用して丸剤に成形されうる。直接成形された経口用の持続放出性乱用抑止性剤形は、乱用されやすい活性物質、マトリックス剤、制御放出剤、可塑剤及び染料を有することができ、成形ユニットを有する押出工程から直接成形されることができる。成形ユニットは、カレンダー、ロータリー又はチェーン式成形機であってよい。
加熱溶融押出は、特定の乱用抑止特性を有する均質なポリマーマトリックスを作り出すことが可能であるため、本開示の製剤及び組成物を作製するために使用される加工技術である。例えば、配合及び加工パラメータを変化させることにより、溶解プロファイル、破砕抵抗性、材料加工性及び安定性などの特定の特性が選択的に改質されうる。ポリマーマトリックス剤(例えばPEO)を含む製剤は、乱用(例えば経鼻吸入又は静脈内注射という手段による)を防止する物理的バリアも作り出しつつ、放出特徴が制御可能である製剤を可能にするため、独自の利点をもたらすことが可能である。さらに、加熱溶融押出工程において、工程解析データがリアルタイムでもたらされうる。この工程はまた、加工を一括する伝統的なバッチとは対照的に、連続工程製造手順にも適合されうる。
本開示の乱用抑止性丸剤は、市販の押出機、例えば二軸押出機などを使用した加熱溶融押出により成形可能である。押出工程に関連する熱は、製造工程の前に、それと同時に又はその後に加えられてもよい。軸の設計(剪断速度)、軸速度、温度プロファイル、供給速度、滞留時間、ダイ圧力及びダイサイズを含む、押出工程のいくつかの因子が最終押出物に影響を与えうる。これらの因子は、押出物が均一で、その形状を維持し、成形ユニットにより丸剤に成形されることが可能であるような、望ましい加工性能を有する押出物を得るように変化させることが可能である。
例示的な押出機及び成形ユニットシステム(10)を図1に示す。押出機(14)はホッパー又は供給ユニット(12)を含み、製剤の均一なブレンドがそこで作製されるか、又はそこへ移送される。均一なブレンドは、重量測定又は体積測定投入ユニットを介した欠乏供給(starve feeding)により、押出機(14)の注入口(16)に供給される。本開示の製剤は、好ましくは押出工程への導入前に均一にブレンドされる。成分のブレンドが不十分であると、活性物質を一定の量で有しない、不均一な押出物及び不均一な乱用抑止性丸剤が製造される可能性がある。過剰にブレンドすると、十分に作用しない製剤が製造される可能性がある。ブレンド工程は、いつ均一なブレンドが得られるかを決定するために、工程解析技術を使用してモニタリングされうる。一実施形態において、混合容器又はホッパー(12)は、ブレンドをインラインで連続的にモニタリングするための近赤外(NIR)モニタリングシステムを備えていてよい。
一実施形態において、NIRによるブレンド工程のモニタリングは、各製剤についてNIR標準スペクトルを作成することを含む。NIR標準スペクトルは、製剤の異なるバッチのブレンドをモニタリングすることにより実験的に作成されうる。ブレンド条件及び/又は押出工程は、NIR標準スペクトルを決定するために、NIRスペクトルと関連させることが可能である。一旦最適なNIRモニタリングスペクトル及び条件が決定されると、製剤はNIR標準が得られるまでブレンドされる。本開示を備える当業者であれば、ブレンドをインラインで連続的にモニタリングするための近赤外モニタリングシステムを実装可能である。
押出機(14)は、その後ブレンドを溶融物に加工し、押出物(50)を押出機(14)からダイ部分(30)及びダイ出口(18)へ通過させる。押出機(14)は温度領域(20〜30)及び圧力領域(40〜43)を有しうる。これらの領域は、押出機(14)を加熱、加圧するための部品を含んでいてよく、個々の領域の温度又は圧力を測定するためのセンサーを含んでいてもよい。
本明細書で使用される場合、溶融温度という語は、賦形剤が固体から液体の状態に変化する温度を指す。本明細書で使用される場合、軟化温度という語は、賦形剤が固形から可鍛性の動的な固体に変化する温度を指す。
押出機(14)の温度プロファイルは、ほとんど〜まったく分解産物がない、均一な押出物(50)を得るために重要である。賦形剤(例えばマトリックス剤、制御放出剤、可塑剤)を軟化させ、一部の実施形態においては溶融させて、活性物質を封入するための均質なマトリックスを形成するために熱が加えられうる。押出機の温度プロファイル又は押出機領域(20〜30)の温度は、好ましくは活性物質の溶融点未満、しばしば分解点未満に保たれる。
例えば、PEOの溶融温度は約67℃であり、ポリエチレングリコールの溶融温度は約63℃である。一般的な活性物質はこれよりかなり高い温度で溶融し始める。例えば、オキシコドンHClの溶融温度は約219℃である。好ましくは、領域(20〜30)の1つ以上の温度は活性医薬成分の溶融点以下に保たれる。具体的には、領域(20〜30)の1つ以上の温度は約150℃、140℃、130℃、120℃、110℃、100℃、90℃、80℃、75℃、70℃、65℃又は60℃未満に保たれる。
一実施形態において、押出機領域(20〜30)の少なくとも1つの温度は活性医薬成分の溶融点以下に保たれる。具体的には、領域の少なくとも1つの温度は約150℃、140℃、130℃、120℃、約110℃、約100℃、約90℃、約80℃、約75℃、約70℃、約65℃又は約60℃未満に保たれる。
別の実施形態において、押出機領域(20〜30)の少なくとも2つの温度は活性医薬成分の溶融点以下に保たれる。具体的には、領域の少なくとも2つの温度は約150℃、140℃、130℃、120℃、約110℃、約100℃、約90℃、約80℃、約75℃、約70℃、約65℃又は約60℃未満に保たれる。
別の実施形態において、押出機領域(20〜30)の少なくとも3つの温度は活性医薬成分の溶融点以下に保たれる。具体的には、領域の少なくとも3つの温度は約150℃、140℃、130℃、120℃、約110℃、約100℃、約90℃、約80℃、約75℃、約70℃、約65℃又は約60℃未満に保たれる。
別の実施形態において、押出機領域(20〜30)の少なくとも4つの温度は活性医薬成分の溶融点以下に保たれる。具体的には、領域の少なくとも4つの温度は約150℃、140℃、130℃、120℃、約110℃、約100℃、約90℃、約80℃、約75℃、約70℃、約65℃又は約60℃未満に保たれる。
別の実施形態において、押出機領域(20〜30)の少なくとも5つの温度は活性医薬成分の溶融点以下に保たれる。具体的には、領域の少なくとも5つの温度は約150℃、140℃、130℃、120℃、約110℃、約100℃、約90℃、約80℃、約75℃、約70℃、約65℃又は約60℃未満に保たれる。
別の実施形態において、押出機領域(20〜30)の少なくとも6つの温度は活性医薬成分の溶融点以下に保たれる。具体的には、領域の少なくとも6つの温度は約150℃、140℃、130℃、120℃、約110℃、約100℃、約90℃、約80℃、約75℃、約70℃、約65℃又は約60℃未満に保たれる。
別の実施形態において、全ての押出機領域(20〜30)の温度は、ダイ領域を任意で除外して、活性医薬成分の溶融点以下に保たれる。具体的には、全ての領域の温度は、ダイ領域を任意で除外して、約150℃、140℃、130℃、120℃、約110℃、約100℃、約90℃、約80℃、約75℃、約70℃、約65℃又は約60℃未満に保たれる。
ダイ(18、30)の温度は、他の領域の1つ以上の温度よりもわずかに高い温度に維持されうる。一部の実施形態において、ダイ(18、30)の温度は、均一な押出物(50)が確実にダイ出口(18)から出て行くように、押出物の溶融点、又はそれをわずかに上回って保たれる。
押出機(14)はまた、圧力プロファイルも有する。賦形剤を溶融させて混合をより効率的にするため、また押出物(50)を一貫してダイ出口(18)を通って押出機(14)から排出させるために、圧力は重要である。具体的には、領域の圧力、さらにダイ出口(18)での圧力は、約30bar、約40bar、約50bar、約60bar、約70bar、約80bar、約90bar、約100bar、約110bar、約120bar、約130bar、約140bar又は約150bar以上に保たれる。
一実施形態において、押出機(14)の圧力領域(40〜43)の1つ以上の圧力は、マトリックス剤、制御放出剤及び可塑剤と、非溶融性の賦形剤(例えば活性物質、保存料/抗酸化剤など)との溶融、圧縮及び混合を遂行するのに十分な高さの圧力に保たれ、その一方、温度領域(20〜30)の1つ以上の温度は、標準圧力でこれらの薬剤の1つ以上の溶融点であるか、又はそれをわずかに下回る。圧力を増大させると、圧縮力及び剪断力により、温度を劇的に増加させる必要なくより効率的な混合が可能になる。これらのより低い温度により、活性物質からの分解産物の形成が減少、又は実質的になくなる。一実施形態において、押出機(14)のダイ(43)で生じる圧力は、脈動流を減少させ、均一な押出物(50)がダイ出口(18)を通って確実に運搬されるのに十分な高さに保たれる。十分に高い圧力は、均質な溶融物を望ましい直径の加工可能なストランドに圧縮する助けとなる。
一実施形態において、圧力領域(40〜43)の少なくとも1つの圧力は、マトリックス及び可塑剤と、活性物質及び任意の非溶融性の賦形剤との溶融、圧縮及び混合を遂行するのに十分な高さの圧力に保たれる。具体的には、領域の少なくとも1つの圧力は約30bar、約40bar、約50bar、約60bar、約70bar、約80bar、約90bar、約100bar、約110bar、約120bar、約130bar、約140bar又は約150bar以上に保たれる。
別の実施形態において、圧力領域(40〜43)の少なくとも2つの圧力は、マトリックス及び可塑剤と、活性物質及び任意の非溶融性の賦形剤との溶融、圧縮及び混合を遂行するのに十分な高さの圧力に保たれる。具体的には、領域の少なくとも2つの圧力は約30bar、約40bar、約50bar、約60bar、約70bar、約80bar、約90bar、約100bar、約110bar、約120bar、約130bar、約140bar又は約150bar以上に保たれる。
別の実施形態において、圧力領域(40〜43)の少なくとも3つの圧力は、マトリックス及び可塑剤と、活性物質及び任意の非溶融性の賦形剤との溶融、圧縮及び混合を遂行するのに十分な高さの圧力に保たれる。具体的には、領域の少なくとも3つの圧力は約30bar、約40bar、約50bar、約60bar、約70bar、約80bar、約90bar、約100bar、約110bar、約120bar、約130bar、約140bar又は約150bar以上に保たれる。
別の実施形態において、全ての圧力領域(40〜43)の圧力は、マトリックス及び可塑剤と、活性物質及び任意の非溶融性の賦形剤との溶融、圧縮及び混合を遂行するのに十分な高さの圧力に保たれる。具体的には、全ての領域の圧力は約30bar、約40bar、約50bar、約60bar、約70bar、約80bar、約90bar、約100bar、約110bar、約120bar、約130bar、約140bar又は約150bar以上に保たれる。
別の実施形態において、圧力パラメータは製剤の成形にとって重要ではない。圧力領域(40〜43)の全ての圧力は、約5〜約20barで、具体的には約10〜約15barで作動させることができる。
溶融押出物は、近赤外技術を使用して、押出機(14)内で任意で解析されてよい。NIR分光法は、高速液体クロマトグラフィー技術の非侵襲性の代替として使用可能である。NIRプローブ(80)が押出機(14)内に含まれていてよい。溶融押出物の有機原料が光エネルギーを吸収する波長及び強度をプロットし、標準と比較するためのスペクトルを作り出すことができる。これを、既知のAPIのスペクトルを用いて、リアルタイムで押出物中に存在する活性医薬成分の重量%を決定及びモニタリングするために使用することができる。
押出物のサイズ又は形状が、成形ユニットに導入される前に調節されうるという条件で(例えばロープサイザーによって)、押出機からの押出物は成形ユニットを使用して丸剤に直接成形される。一部の実施形態において、押出物は切断又は磨砕ステップなどのさらなる加工ステップなしに、剤形に直接成形される。成形ユニットは、押出物を切断又は磨砕することなく丸剤を成形することが可能なユニットでありうる。成形ユニットは、カレンダー、ロータリー又はチェーン式成形機でありうる。図1に示すように、押出物(50)は、成形ユニット(60)により乱用抑止性形態(70)に成形されうる。一実施形態において、押出物(50)はカレンダー工程により乱用抑止性形態(70)に成形される。
成形ユニット(60)は2つの回転部品を含んでいてよく、それぞれが回転部品中にはめ込まれた型(62)を有し、回転部品が接触した時に型(62)が互いに重なるように並べられている。十分な量の押出物が回転部品間に誘導され供給されるという条件で、押出物(50)が成形ユニット(60)の回転部品間に誘導されると、オフセットされ及び整列された型(62)(又は空洞)が押出物を受け入れ、型(62)の形状により生じる剤形に押出物を成形する。
別の実施形態において、成形ユニットはまた、付属の挟持リングを有する、回転する一連のパンチダイ、例えばチェーンダイ成形ユニットを含んでいてよい。図2はチェーン成形ユニットの実施形態を示す。チェーン成形ユニットは、入ってくる押出物(56)を成形済み丸剤(19)に成形するための、上側及び下側チェーンシステム(110及び112)、並びに型押し(100)を含む。押出物(56)がチェーンダイ成形ユニット中に供給されると、リング型押し(100)が押出物(56)を最終丸剤の正確な重量に挟み、同時にそれをカム軌道によるパンチによって最終形態に固める。一実施形態において、機械の回転により生じる求心力が、最終丸剤形態(19)の放出の助けとなる。
押出機/成形ユニットシステム(10)はまた、追加の部品、又は押出物(50)を押出機(14)から成形ユニット(60)へ移送する助けとなる移送ユニットを備えていてもよい。移送ユニットは、温度、圧力、環境及び/又は押出物の形状を制御することが可能でありうる。例えば、移送ユニットは、成形ユニットに入る前に押出物(50)を一定のサイズ(例えば直径)に加工する加熱/冷却サイジングローラーを含みうる。移送ユニットはまた、押出物を成形ユニット(60)の回転部品中及び間に誘導することも可能でありうる。
例えば、押出物は、押出物をサイズ変更する、押出物を再成形する、又はその両方を行う装置により調節されうる。図3は押出物サイジング装置(例えばロープサイザー)の実施形態を示す。ロープサイザーは、押出機(14)又は別のステップのいずれかから入ってくる押出物(52)をサイズ変更又は再成形するための、複数の連続したローラー(90〜96)を含む。ローラー(90〜96)の数、形状及び向きは、望ましいサイズ変更及び/又は再成形の程度次第で変化しうる。一部の実施形態において、押出物はより小さい直径の押出物にサイズ変更される。これらの実施形態において、回転ローラーは連続して速い速度で回転する。そのため、より小さい直径を有する、サイズ変更及び/又は再成形された押出物はより速い速度で動き、ロープサイザーから出る。
押出物(50)のサイズ及び形状は、異なる形状の型(62)と効率的に相互作用するように設計されうる。例えば、楕円形に成形された押出物は、幅広で浅い一連の型(62)と相互作用するように成形されうる。また、押出物(50)の速度及び質量(又は体積)も、成形ユニットのサイズ及び速度と効率的に相互作用するように設計されうる。成形ユニット(60)の回転部品間に誘導された押出物(50)の速度及び質量(又は体積)は、各一連の型を隙間なく完全に満たすのに十分なものであるべきである。
押出物(50)のサイズ及び形状、並びに速度及び質量(又は体積)、並びに型(62)のサイズ及び形状、並びに成形ユニットの速度は、剤形に成形されない過剰な押出物の量を減少させる(例えば、廃棄物を減少させる)ように調和させることが可能である。2つの工程は、両方を同じ駆動システムに接続することにより同調させることができる。好ましくは、成形ユニットは押出物から乱用抑止性丸剤を成形することが可能であり、そこでは押出物の約90%超が利用(例えば剤形に成形)される。より好ましくは、成形ユニットは押出物の約95%超を利用する。さらにより好ましくは、成形ユニットは押出物の約99%超を利用する。
型(62)は、場合により、成形後に丸剤を容易に除去することを可能にするため、不均一な底面又は下面で成形されてもよい。型(62)はまた、成形の際に乱用抑止性丸剤上に印を付けるために、底面又は下面に印を有していてもよい。
成形後、各丸剤の品質、体積及び重量を、自動光学検査技術を使用して決定することが可能である。光学検査技術では、重量決定ステップ及び視覚検査ステップが単一のステップにまとめられる。例えば、視覚化ステップは各丸剤の複数の画像を撮影することを含みうる。これらの画像から推定体積が決定される。製剤の組成物の推定体積及び前以って測定された密度から、各丸剤について推定重量を求めることができる。特定の品質、体積及び重量基準を満足するそれらの丸剤が、光学検査を通過する。
別の実施形態において、本開示は、少なくとも1種の乱用されやすい活性物質を含む経口用の持続放出性乱用抑止性丸剤を製造する方法であって、少なくとも1種の乱用されやすい活性物質、マトリックス剤、制御放出剤、可塑剤及び染料をホッパー内で混合し、混合物を成形するステップ、均一なブレンドが得られるまで、ホッパー内で混合物をブレンドするステップ、工程解析技術を使用してブレンド中に混合物をモニタリングし、いつ均一なブレンドが得られるかを決定するステップ、均一なブレンドを押出機に供給するステップ、加熱溶融押出により均一なブレンドを加工し、押出物を製造するステップ、場合によりPAT NIRプローブを用いてダイヘッドで押出物をモニタリングするステップ、温度、圧力、環境及び/又は押出物の形状を制御することが可能な移送ラインを使用して、押出物を成形ユニットへ移送するステップ、成形ユニットを使用して、押出物を丸剤に成形するステップ、並びに光学検査技術を使用して、丸剤の品質、体積及び重量を決定するステップを含む方法に関する。
別の実施形態において、本開示の少なくとも1種の乱用されやすい活性物質を含む持続放出性乱用抑止性丸剤は、直接打錠、及び先に、同時に又は後で加熱し剤形を硬化させることを組み合わせた工程を使用して調製される。この工程は賦形剤を均一なブレンドにブレンドするステップ、打錠機を使用して直接圧縮するステップ、及び先に、同時に又は後で加熱し、破砕を抑止するための、剤形周りのハードシェルを形成するステップを含む。一部の実施形態において、この工程はオーブン又はコーティングパンを利用して実施可能である。このステップの工程温度は、丸剤が顕著に溶融又は変形しない点で保たれる。具体的には、工程温度は150℃、140℃、130℃、120℃、110℃、100℃、90℃、80℃、70℃、60℃、50℃又は40℃以下に保たれる。その他の実施形態において、この工程は、圧縮前及び/又は圧縮中に加熱される打錠工具を利用して実施可能である。
別の実施形態において、本開示は治療有効量の本明細書に記載される剤形を、それを必要とする個体に投与するステップを含む、痛みを治療する方法に関する。剤形は、約12時間にわたって、中度〜重度の痛みの治療のために鎮痛をもたらす。
出版物、特許及び特許出願を含む、引用された全ての参考文献の開示は、その全体が参照によって本明細書に明確に組み込まれている。さらに、量、濃度又は他の値若しくはパラメータが、範囲、好ましい範囲、又は好ましい上限値及び好ましい下限値の列挙のいずれかとして与えられる場合、これは、範囲が別個に開示されるか否かに関わらず、任意の上限範囲又は好ましい値、及び任意の下限範囲又は好ましい値の任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示するものとして理解されるべきである。数値の範囲が本明細書で列挙される場合、他に記述されない限り、範囲はそのエンドポイント、並びに範囲内の全ての整数及び分数を含むと意図される。範囲を規定する場合に、本発明の範囲が、列挙される特定の値に限定されることを意図するものではない。
本発明は、以下の実施例においてさらに記載される。これらの実施例は本発明の好ましい実施形態を示すものの、例示目的でのみ与えられると理解されるべきである。
[実施例]
[実施例1]
アセトアミノフェンを含む乱用抑止性投与製剤を使用して最初の試験を行った。アセトアミノフェンを、その有効性、類似した溶解/可溶性プロファイル及び費用対効果により、初期実験におけるオキシコドンHClの代わりにトレーサーとして利用した。オキシコドンHClの代わりにアセトアミノフェンを含む持続放出性乱用抑止性丸剤を、表5〜6に示す以下の配合に従って製造した。
アセトアミノフェンを含む乱用抑止性丸剤を、Turbula T2Fミキサーシェーカーで5分間30RPMで製剤成分をブレンドすることにより作製した。
押出は、Steer Omega 20型の二軸押出機を用いて行った。良好な加工性能を有する均一な押出物を得るために、中剪断軸設計を、比較的低い軸速度(150RPM)で使用した。温度プロファイルは、溶融性賦形剤(例えばPEO、ポリエチレングリコール及び/又はPVAc)が即時溶融するように設計した。その後、混合が遂行され、粘度が低下し、押出機にかかる高いトルク力が制限されるように、温度を標準圧力で製剤の溶融性賦形剤の溶融温度以上となるように調節した。押出機において高圧を維持することにより、十分な混合が遂行された。
時折、ダイを押出物の一般的な溶融温度を上回って加熱した。押出物の溶融温度でのダイ温度で、ダイ内面に接触した押出物の部分が摩擦により削ぎ取られることが判明した。ダイ温度の増大により、この摩擦力が減少し、また押出物がダイに沿って滑り、光沢があり均一な押出物を製造することが可能となった。作動温度及び圧力を表7に示す。表7の温度及び圧力領域は、図1に示す領域に対応する。
温度プロファイル、供給速度及びダイサイズは全て、ダイヘッドで生じる圧力に対し影響を及ぼす。6mmのダイサイズを使用した。温度プロファイルは比較的一定に保った。供給速度を、ダイヘッドで約50barという一定の高圧が維持されるように調節した。
実験のため、Carver Pressを使用して、押出物を丸剤の形態に成形した。Carver Pressは、ダイにおいて接触する自立式のNatoli上側及び下側パンチセットを利用する、手動油圧式プレスである。200〜400mgの丸剤を製造するために、専用の型押しを実験のために作製した。
押出物を、重量(200〜400mg)に基づき手動で切断した。ダイを下側パンチの頂部に配置し、切断された押出物をダイの空洞中に配置し、上側パンチをダイの頂部を通して配置した。切断された押出物を、Carver Press及びNatoliダイセットを使用して、約1±0.5メートルトンの力で丸剤に成形した。
溶解試験
アセトアミノフェンを含む乱用抑止性丸剤を、溶解について試験した。活性物質としてオキシコドンHClを含む、さらなる丸剤を成形し、試験した。溶解試験は、オキシコドン塩酸塩持続放出性錠剤についてのUSPモノグラフを参照して行った。これらの試験は、模擬胃液(酵素なし)900mLを媒体とし、バスケット速度100rpmで、UPS<711>装置I(バスケット)を利用する溶解装置において行った。日本製のSinker Basket(部品番号PSCUSBSK-JPMAG)を利用した。1時間、4時間及び12時間で試料1.5mLを取り(オキシコドン塩酸塩持続放出性錠剤についてのUSPモノグラフによる溶解試験2)、HPLC解析に提供した。HPLCの条件は、アセトアミノフェン又はオキシコドンHClの放出を観察するために、USPモノグラフから変更した。HPLCの条件は以下の通りであった:注入体積:20μL(アセトアミノフェン)、30μL(オキシコドン)、流速1.5mL/分(アセトアミノフェン)、1.7mL/分(オキシコドン)、検出:295nmUV(アセトアミノフェン)、225nmUV(オキシコドン)、カラム温度:25℃、オートサンプラー温度:常温、勾配:アイソクラティック、及びランタイム:5分。別の実施形態において、溶解試験は、模擬胃液(酵素なし)900mLを媒体とし、バスケット速度100rpmで、UPS<711>装置I(バスケット)を利用する溶解装置において行った。日本製のSinker Basket(部品番号PSCUSBSK-JPMAG)を利用した。1時間、2時間、4時間、6時間及び8時間で試料1.5mLを取り(オキシコドン塩酸塩持続放出性錠剤についてのUSPモノグラフによる溶解試験1)、HPLC解析に提供した。HPLCの条件は、オキシコドンHClの放出を観察するために、USPモノグラフから変更した。HPLCの条件は以下の通りであった:注入体積: 30μL、流速1.7mL/分、検出: 225nmUV、カラム温度:25℃、オートサンプラー温度:常温、勾配:アイソクラティック、及びランタイム:5分。この溶解試験の規格を表1〜4に示す。
丸剤の持続放出特性を決定するために、製剤中の制御放出剤(例えばPVAc/PVP又はHPMC)の重量パーセントを変化させる効果を試験した。試験の最初の段階において、PVAc/PVPを二重マトリックス/制御放出剤として試験した。PVAc/PVPの重量パーセントが可塑剤により埋め合わせされる、表5及び6に示す一般的な配合を、溶解度について試験した。
図4は異なる重量パーセントのPVAc/PVP(30〜60重量%)を有する4つの製剤についての溶解度を示す。PVAc/PVPの含有量が高いほど、1、4及び12時間時点での活性物質の放出が遅くなり、ゆえにPVAc/PVPの重量パーセントは放出プロファイルと直接相関関係にある。
乱用抑止性試験
乱用抑止性丸剤を、コーヒーグラインダー解析を使用した粉砕/すりつぶしに対する抵抗性について試験した。試験された製剤は表5及び6で言及される材料を含んでいた。PEOの各特定の重量パーセントについて、3つの丸剤を選択し、市販のコーヒーグラインダー(Mr. Coffee(登録商標)、モデル番号IDS55)中に入れた。コーヒーグラインダーを時折脈動させながら約30秒間作動させた。すりつぶされた丸剤を、2分間ATM L3Pソニックシフターセパレーター(sonic sifter separator)(スクリーンサイズ35メッシュ)を使用する粒径解析に提供した。35メッシュは篩サイズ500μmに相当する。500μmを上回る粒子の重量パーセントを、その後の吸入のための粉砕及びすりつぶしに対する乱用抑止性を測定するための測定基準として使用した。
PVAc及びPVPの組合せを、表5及び6で言及される配合における乱用抑止性のための、マトリックス剤での適用について試験した。40%、50%及び60%超のPVAc/PVPを有する配合において、45%未満の粒子が、コーヒーグラインダーで30秒間粉砕した後500μm超であった。PVAc/PVP単独では、二重マトリックス/制御放出剤として使用した場合、粉砕に対する十分な抑止性を有しない。
[実施例2]
粉砕に対する乱用抑止性が低い実施例1により、溶解プロファイルに大きな影響を及ぼさず、丸剤の粉砕を防止するように作用することが可能な別のマトリックス剤が必要となった。ポリマー鎖長の絡み合いにより粉砕を防止する能力から、PEOを選択した。持続放出性乱用抑止性丸剤を表8及び9に従って製造した。
表8及び9に記載される持続放出性乱用抑止性丸剤の配合に対し、実施例1に記載されるものと同じ製造手順及び溶解試験を行った。図5は、2つの重量パーセントのPVAc/PVPに、3つの重量パーセントの100KダルトンPEOを含む6つの配合の溶解度を示す。PVAc/PVPは、薬物の制御放出に影響を及ぼさない100KダルトンPEOを有するこの配合における、制御放出速度改質剤であると考えられる。
乱用抑止性試験
乱用抑止性丸剤を、コーヒーグラインダー解析を使用した粉砕/すりつぶしに対する抵抗性について試験した。試験された製剤は表8及び9で言及される材料を含んでいた。実施例1に記載されるものと同じ方法で試験を行い、同じ500μmの粒径を、その後の吸入のための粉砕及びすりつぶしに対する乱用抑止性を測定するための測定基準として使用した。
100KダルトンPEOをPVAc/PVPを有する乱用抑止性丸剤に添加すると、コーヒーグラインダー試験後の500μm超の粒径のパーセンテージが有意に増加した。このことは、100KダルトンPEOが、より乱用抑止性の高い丸剤を作製する助けとなることを示唆している。
製剤中10〜15%の100KダルトンPEOにより、500μm超の粒子のパーセンテージが70〜80%に増加し、PEOのパーセンテージが20〜25%であった場合には、すりつぶし後ほとんどの場合で500μm超の粒子が80%超に増加した。表10を参照されたい。表10において、PVAc/PVP及び可塑剤を、配合の残りを補完するように調節した。
100 KダルトンPEOが粉砕に及ぼす効果は、PVAc/PVP重量パーセントとは無関係であった。15重量%の100KダルトンPEO、並びに38%から50%及び60%に重量パーセントを変化させたPVAc/PVPを有する製剤について、コーヒーグラインダー解析を行った。500μm超の粒子のパーセンテージは、3種のPVAc/PVP重量パーセント全てについて70〜75%の間であり、PEOが粉砕に対する抵抗性を制御していることを示唆した。表11を参照されたい。
活性成分のレベルが増大するにつれて、丸剤の粉砕がいくらか減少するかどうかを観察するために、製剤中の活性成分のパーセンテージについても試験した。試験配合は、15重量%の100KダルトンPEO、及び5重量%、20重量%又は40重量%のいずれかの活性成分を含んでいた。PVAc/PVP及び可塑剤を使用して、配合の残りを補完した。投薬量のパーセンテージが粉砕レベルに及ぼす効果を表12に示す。表12に示すように、PEOのパーセンテージが一定に維持された場合、活性成分のパーセンテージは製剤のADF特性に影響しなかった。
これらの配合は粉砕及びすりつぶしに関する乱用抑止特性の測定基準を満たすか超える。製剤中に10〜15重量%の100KダルトンPEOを含むと良好な乱用抑止特性が生じ、製剤中に20〜25重量%の100KダルトンPEOを含むと吸入に対し優れた乱用抑止特性が生じる。
[実施例3]
制御放出速度改質剤としてHPMCを含む乱用抑止性製剤を使用する試験も行った。アセトアミノフェンを、その有効性、類似した溶解/可溶性プロファイル及び費用対効果により、これらの実験におけるオキシコドンHClの代わりにトレーサーとして利用した。オキシコドンHClの代わりにアセトアミノフェンを含む持続放出性乱用抑止性丸剤を、表13及び14に示す以下の配合に従って製造した。実施例1に記載されるものと同じ製造及び溶解方法を使用してこれらを製造した。
溶解に対するPEOの効果を試験するため、HPMCとともに300KダルトンPEOを使用する最初の試験を行った。HPMCの重量パーセントを維持しつつ、PEOの重量パーセントを変化させた。図6は、300KダルトンPEOの重量パーセントを変化させた(50〜80重量%)4つの配合の溶解プロファイルを示す。これらの結果は、製剤中のより高い重量パーセント(すなわち60、70及び80重量%)の300KダルトンPEOで非常に類似した溶解プロファイルを示している。50重量%の配合はより早い放出プロファイルを示した。この実験は、300KダルトンPEOが活性物質を制御放出させるのに十分に高い分子量を有しないことを示している。
300KダルトンPEOを一定に維持しつつ、製剤中のHPMCの重量パーセントを変化させた制御放出効果を試験するため、さらなる試験を行った。表13及び14に従って製剤を製造した。図7はHPMCの重量パーセントを変化させた(30〜66重量%)5つの配合の溶解プロファイルを示す。
結果は、HPMCの重量パーセントに関わらず、1時間時点では非常に類似したデータ点を示す。4時間時点では、放出プロファイルはHPMCの重量パーセントに反比例し、50重量%で変化しなくなる。この実験は、HPMCが50重量%未満で、HPMCの重量パーセント及び活性物質の放出速度の間に直接相関関係があることを示している。
乱用抑止性試験
乱用抑止性丸剤を、実施例1に記載されるものと同じ方法で、コーヒーグラインダー解析を使用した粉砕/すりつぶしに対する抵抗性について試験した。試験された製剤は表13及び14で言及される材料を含んでいた。同じ500μmの測定基準を、吸入のための粉砕及びすりつぶしに対する乱用抑止性についてのマーカーとして使用した。
300KダルトンPEOを含む乱用抑止性丸剤を、コーヒーグラインダー解析を使用した粉砕/すりつぶしに対する抵抗性について試験した。29重量%以上の300KダルトンPEOを含む全ての配合が、コーヒーグラインダーで粉砕した後、500μm超のサイズの粒子を90%以上の重量パーセンテージで有する(92%〜100%)。以下の表15に結果を概説する。
より大きい最終丸剤重量を有する、300KダルトンPEOを使用して製剤化された丸剤に対して、さらなる試験を行った。製剤は300mg及び400mgの丸剤重量で作製され、類似の200mg製剤と比較して粒径分布に相当量の変化がなかったことを示した。表15ではこの実験の結果を列挙する。
丸剤が粉砕を防止する能力に及ぼす効果を試験するため、HPMCのパーセンテージを変化させた。HPMCレベルを変化させ、300KダルトンPEOが29%及び60%である配合を定数として使用した。可塑剤を使用して、同じ丸剤重量を維持するために製剤のパーセンテージを補完した。HPMCの重量パーセントは粉砕結果に影響を及ぼさないことが判明した。HPMCの重量パーセントを5%〜66%で変化させると、コーヒーグラインダー解析後の500μm超の粒子の重量パーセントは92%以上であった。結果を表16に概説する。
全ての配合が、粉砕及びすりつぶしに関する乱用抑止特性の測定基準を満たすか超えた。29〜60重量%以上の300KダルトンPEO、及び持続放出剤として5〜66重量%のHPMCを含む丸剤は、吸入可能な形態に粉砕又はすりつぶすことが困難である。
[実施例4]
理論上の用量10mgで、実施例1に記載されるものに類似の方法で表13及び14に従って、活性物質としてオキシコドンHClを使用する製剤を製造した。所定の時点で溶解した活性物質のパーセントとして列挙される3つの丸剤を表17に示す。
結果は、各時点で溶解した活性物質の平均パーセントが、10mg持続放出性オキシコドンHCl丸剤についての参照リスト薬の規格の範囲内となることを示している。
同様に、理論上の用量80mgのオキシコドンHClを利用する製剤を、表13及び14に従って作製した。所定の時点で溶解した活性物質のパーセントとして列挙される3つの丸剤に対し溶解試験を行い、表18に示す。
これらの結果は、表13及び14に列挙される80mg製剤について、1、4及び12時間時点での溶解度が、80mgオキシコドンHCl ER錠剤についてUSPにより規定された基準の範囲内であることを示す。
乱用抑止試験
乱用抑止性丸剤を、実施例1に記載されるものと同じ方法で、コーヒーグラインダーアッセイを使用した粉砕/すりつぶしに対する抵抗性について試験した。試験された製剤は、この実施例の残りで言及される、活性物質としてオキシコドンHClを含む材料を含んでいた。同じ500μmの粒径を、その後の吸入のための粉砕及びすりつぶしに対する乱用抑止性を測定するための測定基準として使用した。
乱用抑止性丸剤が、実施例1〜3で行われた以前の粉砕試験と同等又はより良好に機能したことが判明した。粉砕による乱用を防止する能力を確認するため、10mg及び80mg用量の丸剤を試験した。活性成分としてオキシコドンHClを使用して、100KダルトンPEO及び300KダルトンPEOの両方を試験した。これらの配合及びAPIとしてオキシコドンを有する全ての丸剤が、コーヒーグラインダーで粉砕後、500μm超のサイズの粒子を70%超の重量パーセンテージで有していたことが判明した。表19を参照されたい。
例示的なオキシコドンHCl製剤を図8〜11に示す。図8は、10mg〜80mgの活性物質及び100KダルトンPEOを有する例示的な配合を示す。図8に列挙されるPEO、PVAc/PVP(組み合わせて及び別々に)並びにPEGの重量パーセント値は、各配合内で±1%〜±3%まで変動していてもよい。例えば、10mg剤形は、約23重量%〜約27重量%のPEO、約53重量%〜約57重量%のPVAc/PVP、及び約12重量%〜約16重量%のPEGを含むことができる。図9は5mg〜40mgの活性物質及び100KダルトンPEOを有する例示的な配合を示す。図9に列挙されるPEO、PVAc/PVP(組み合わせて及び別々に)並びにPEGの重量パーセント値は、各配合内で±1%〜±3%まで変動していてもよい。図10は5mg〜80mgの活性物質及び300KダルトンPEOを有する例示的な配合を示す。図10に列挙されるPEO、HPMC及びPEGの重量パーセント値は、各配合内で±1%〜±3%まで変動していてもよい。
図11に示す、賦形剤の量を変化させた、10mg及び80mgの活性物質を有するさらなるオキシコドンHCl製剤を調製した。上記のように、溶解プロファイル及び乱用抑止特性について製剤を評価した。許容される溶解プロファイル及び乱用抑止特性を示す配合が図11で特定される(例えば実験5、9、11、20及び23)。各配合内で±1%〜±3%まで変化するPEO、PVAc/PVP又はHPMC、及びPEGを含む配合が、本開示により想定される。例えば、80mg剤形は約27重量%〜約31重量%の300KダルトンPEO、約35重量%〜約39重量%のHPMC及び約27重量%〜約31重量%のPEGを含みうる。
[実施例5]
エタノール中で、持続放出性剤形の活性物質を用量ダンピング(dose dumping)させることは、薬物製品を乱用することができる別の方法である。アルコール中での用量ダンピングに関して、乱用抑止性と分類されためには、薬物製品は、アルコールを含む媒体中での活性物質のダンピングに抵抗可能であるべきである。用量ダンピングは、「意図せずに、調節放出剤形に含まれる薬物の全量又はかなりの割合が、短期間で迅速に薬物放出されること」として一般的に定義される。実際の状況を試験するため、模擬胃液(オキシコドンHCl溶解媒体)90%及びエタノール10%、又は模擬胃液(SGF)810mL及びエタノール(EtOH)90mLからなる媒体を作り出した。これは、80度のアルコールを7.22液量オンス消費したヒトの胃と同等の環境である。迅速な薬物放出を、60分時点で溶解した薬物の顕著な増加として規定した。実験は表8、9、13及び14に列挙する配合に基づいた。
PEO及びPVAc/PVPのマトリックス錠剤における結果は、アルコール環境での溶解度において無視できる差を示す。結果について表20を参照されたい。溶解度の最大の増加はわずか1.82%である。PEO及びHPMCを含む配合は、60分時点で、溶解した活性物質量のわずかな減少のみを示す。これらの結果は、アルコールの存在により活性物質の放出速度が実際には減少しうるということを示唆している。本開示の製剤はアルコールによる用量ダンピングを受けない。本開示の製剤は、模擬アルコール胃液環境において放出される活性物質の約50%未満の増加、又は約40%未満の増加、又は約30%未満の増加、又は約20%未満の増加、又は約10%未満の増加、又は約5%未満の増加を示す。本開示の製剤は、アルコール環境において無効な放出も行わない。
抽出例
薬物製剤中に1種以上の染料を含めることは、製剤を乱用抑止性にする1つの方法である。乱用されやすい製剤からの抽出産物が顕著に変色すると、潜在的な乱用者は抽出産物を使用(例えば注射又は摂取)することを思いとどまる可能性がある。本開示の製剤における染料の効果を調べるために、研究を行った。製剤全体又は切断された製剤からの抽出産物を目視して、アルコール抽出後、及びその後の濾過後にも乱用抑止性を決定した。
色は、市販の薬物製品の特徴を識別する1つである。2つの方法:染料又はコーティングで剤形に色を付けることが可能である。高度数アルコール(すなわち190度(95%)以上)は、水に不溶のAPIのために、又は他の水溶性賦形剤からAPIを分離するために、乱用者が使用可能な1つの抽出溶媒である。染料又はコーティングは、薬物製品の抽出溶液の物理的な外見を変化させる(すなわち、生じる溶液を視認可能な色に変える)ために使用することが潜在的に可能である。
本研究において、190度エタノールを抽出溶媒として利用した。市販のコーヒーフィルターを、数種の薬物製品のあらゆる粒子状物質を濾過して除去するために使用した。生じた溶液を物理的な外見について解析した。着色又はコーティングされた薬物製品間の物理的な外見の違いを(もしあれば)評価した。
実験:本開示において記載されるADFオキシコドン10mg及び80mg(持続放出性)、Opana(登録商標)ER 5mg(再製剤化)(Endo Health Solutions)、Opana(登録商標)ER 40mg(再製剤化)(Endo Health Solutions)、OxyContin(登録商標)10mg(再製剤化)(Purdue Pharma)、OxyContin(登録商標)40mg(再製剤化)(Purdue Pharma)、OxyContin(登録商標)60mg(再製剤化)(Purdue Pharma)、OxyContin(登録商標)80mg(再製剤化)(Purdue Pharma)を含む。試験された試料全ての概要を以下の表に示す。
試験された本開示の試料、すなわち試料4及び5の配合を以下の表に示す。
本開示のさらなる実施形態において、製剤中の活性物質の量は約0.50重量%〜約40重量%の範囲であってよい。具体的には、製剤中の活性物質の量は約1.0重量%〜約35重量%、又は約5.0重量%〜約33重量%の範囲であってよい。本開示のさらなる実施形態において、可塑剤(例えばPEG)の量は約0.25重量%〜約20重量%の可塑剤の範囲であってよい。
各試料について、投与ユニット全体及び切断された投与ユニットの両方を試験した。投与ユニット全体については、2つの投与ユニット全体を、EtOH10mLを含む25mLのエルレンマイヤーフラスコ中に配置した。切断された投与ユニットについては、切断された投与ユニットの小片全てを同様のフラスコ中に配置した。切断された投与ユニットを、ニッパーを使用して約8つの小片に切断した。各フラスコをパラフィルムで密封し、約150rpmで少なくとも10時間、プラットフォームシェーカー上で振とうさせた。生じた溶液をコーヒーフィルターで濾過し、あらゆる粒子状物質を除去した。濾過した溶液を50mLのネスラー比色管に収集した。30分後、各試料管を色(もしあれば)、透明度/濁度、及びもしあれば濾過された溶液の体積の視認可能な差(すなわち、元のEtOH10mLからの顕著な減少)について目視検査した。投与ユニット全体又は切断された投与ユニットについての結果を以下の2つの表に示す。
濾過中、試料は様々な速度でフィルターを通過した。例えば、試料6〜11は、体積全体がコーヒーフィルターを完全に通過するのに約20秒を要した。試料4及び5は、体積全体がコーヒーフィルターを完全に通過するのに約60分を要した。濾過後、試料4及び5は約30分間の静置後、色において均一であったが、試料8〜11は比色管の底で顕著な沈殿を有した。試料6及び7は視認可能な沈殿を有しなかったが、本開示のバッチよりも顕著に着色が薄かった。
切断された各剤形試料由来の濾液約5mLを、25mm、0.2μm PTFE Titanシリンジフィルター(Scientific Resources, Inc.カタログ番号42225-PC、ロット709029003054)に通過させた。生じた各溶液にその後、0(ゼロ)が無色の試料を表し、5が濃い顕著な色の試料を表す(0-無色、1-淡い、2-薄い、3-中程度、4-鮮明、及び5-濃い)、0〜5の段階に従って番号を割り振った。濃い着色を含む、少なくとも薄い色の試料は、潜在的な乱用者が濾過抽出物(例えば、色2以上、3以上、4以上又は5)を注射又は摂取することを抑止しうる。以下の表は、シリンジフィルターで濾過された、切断された投与ユニット溶液についての色番号の割り振りを示す。
一部の実施形態において、本開示の製剤は、コーティングにのみ染料を組み込むこととは対照的に、投与ユニット全体に染料を組み込んでいる。染料は水溶性、アルコール可溶性、又はその両方であってよい。染料は約0.01g/100mL、約0.1g/100mL、約1g/100mL又は約10g/100mL超の、水、アルコール、又はその両方への可溶性を有していてよい。伝統的な製剤染料は水、アルコール、又はその両方に不溶であるか又は顕著に不溶である。それらはしばしば製剤のコーティングに配合される。一部の実施形態において、染料は水溶性、アルコール可溶性、又はその両方であり、経口投与のために認可されているか、又は許容されると考えられる染料である。一部の例において、染料がアルコールに可溶であることは、アルコール及び抽出されたAPIの両方を消費することでの複合効果、及びそれに関連する相互作用の可能性のために重要である。
以下の表は製剤の例示的成分の相対的な可溶性を列挙したものである。複数の異なる染料を、様々な文献の情報源から引用し、また実験的に試験(200度エタノール、0.22マイクロメートルPTFEフィルターで濾過)した可溶性情報に沿って列挙する。
OxyContin(登録商標)バッチ(試料8〜11)の比色管の底に観察された沈殿は、溶液というよりも懸濁液を示す。典型的には、懸濁液は遠心処理又は濾過してより透明な溶液(一部の場合では無色の溶液)を得ることが可能である。反対に、溶液は染料が溶液中に完全に溶解しているため、さらに遠心処理、又は一般的な家庭用コーヒーフィルター若しくは容易に入手可能なシリンジフィルターを使用して濾過し、より透明な溶液を得ることができない。着色された製剤はコーティングされた製剤よりも、さらなる乱用抑止機構をもたらしうる。
製剤中に存在する染料の量は、水、アルコール又は両方の組み合わせを使用して、開示された視覚的段階又は同様の段階に基づき、0超、又は1超、又は2超、又は3超、又は4超の色を有する抽出物又は濾過抽出物を生じる量でありうる。染料の量は配合及び存在する成分次第で変化しうる。一部の実施形態において、製剤は少なくとも0.1%の染料、少なくとも0.2%の染料、少なくとも0.3%の染料、少なくとも0.4%の染料、少なくとも0.5%の染料、少なくとも0.6%の染料、少なくとも0.7%の染料、少なくとも0.8%の染料、少なくとも0.9%の染料、少なくとも1.0%の染料、少なくとも1.5%の染料、少なくとも2.0%、又はこれらの値のうち任意の範囲(例えば約0.1%〜約1.0%の間の染料)を含みうる。
延長された濾過時間後、試料4及び5について体積変化(約3〜4mL減少)が生じたことも観察された。特定の賦形剤(例えばHPMC)は、生じた溶液がコーヒーフィルターを完全に通過できないほど高粘性になる原因となりうる。HPMC又は同等物を含む配合により、さらなる乱用抑止性(例えば抽出時間の延長及び体積損失)が得られうる。
さらなる例示的な配合
本開示のさらなる例示的な配合を以下の表に示す。
切断力の例
剤形の切断又は破壊に関する乱用抑止性を評価するために使用される現存の方法は、USP「錠剤破壊力」試験に基づく。この試験は「錠剤破壊力」を、錠剤が特定の面において損なわれる(すなわち破壊される)原因となるのに必要な力として定義する。USPはこの試験を以下のように記載している。「一般的に錠剤は2枚の圧盤の間に配置され、圧盤の一方は、破砕が引き起こされるのに十分な力を錠剤に加えるように動く。圧盤は平行であるべきである。それらの面は滑らかに磨かれ、動く方向に対して垂直に精密に配置されるべきである。圧盤が動く間、垂直が維持されなければならず、装置は荷重が加えられた時にいかなる曲げ変位又はねじれ変位も受けてはならない。接触面は錠剤との接触面積よりも大きくなくてはならない」。図12は、伝統的な「錠剤破壊力」解析を行うことが可能な器具を示す。
USPは、錠剤破壊力の適用、及びそれが産業利用される理由についてさらに説明している。「錠剤は、製造工場、薬物流通システム、及びエンドユーザー(患者/消費者)の手元において受ける、取扱い及び輸送の厳しさに耐えることができなければならない。コーティング、包装及び印字などの製造工程はかなりのストレスを含む可能性があり、錠剤はこれに耐えることができなければならない。これらの理由のため、錠剤の機械的強度はかなり重要であり、定期的に測定される」。これらの適用の意図は、錠剤を破壊しうる力(すなわち錠剤の瓶の中で激しく振とうされること)を受ける可能性がある伝統的な製剤のためのものである。この意図は乱用抑止可能性に対処するためのものではない。さらに、この試験は錠剤の配合を評価するのに適用可能であり、また有益であるのみである。この試験は、押出法により調製された丸剤又は他の製剤を評価するのに適用可能でも有益でもない。
PEOなどの賦形剤を利用し、また押出工程でこのような賦形剤を使用する製剤において、パラメータ「錠剤破壊力」は適用されない。例えば、長い分子鎖長のPEO(例えば100,000ダルトン〜7,000,000ダルトン)が原因となり、伝統的な意味での「錠剤破壊力」を加えた場合に、薬物製品は(他の伝統的な薬物製品と比較して)平らにはなるが決して実際に「損なわれる」(すなわち破壊される)ことはない。「錠剤破壊力」の伝統的な適用は、剤形、特に乱用を抑止することを意図された剤形の「切断力」について、可鍛性のある賦形剤(例えばPEO)を含む製剤を評価するために、改質される必要がある。本研究において提示される伝統的な「錠剤破壊力」試験の改質は、剤形が「損なわれる」(すなわち破壊される)ことを引き起こすために利用される「圧盤」、すなわち「錠剤との接触面積よりも大きい」接触面から、乱用のために一般的に使用される道具を模した鋭い面に変更することからなる。図13、14及び15は、破砕楔セット(一般的な台所はさみを模すために使用される。図13及び14は同一のセットの異なる視点を示す)、及び剃刀刃(図15)を含む参照付属品を示す。
本研究の目的は、CII麻薬製品の異なる製剤を切断するために必要な切断力を作用させ、まとめることであった。テクスチャー解析は、医薬製品の物理的特性を測定するための、医薬製品の機械的試験である。テクスチャーアナライザーXT2iは、切断力を含む、医薬製品の多数の物理的特性について試験を行うことが可能である。テクスチャーアナライザー(TE37)の異なる付属品を利用して、CII麻薬製品の数種の異なる製剤を切断するために必要な切断力を調査した。乱用の意図を有する薬物製品を切断するために、容易に入手可能な、乱用に使用される道具(例えば剃刀刃及び台所はさみ)を模した2つの付属品を含む多数の道具を利用した。評価された薬物製品全てについての切断力を、各付属品を用いて評価した。
実験:試験された試料は、表21に列挙したそれらの試料を含む。試験された本開示の試料の配合を表13及び14に列挙する。テクスチャーアナライザー、モデルXT2i HRを以下の条件で作動させた:予備試験速度:1mm/秒、試験速度:0.25mm/秒、事後試験速度:10mm/秒、距離:99.9%(%ひずみ)、トリガータイプ:自動(力=0.2N)及び破壊検出:オフ。試料サイズN=10を、切断付属品毎に各試料について使用した。両方の切断付属品(剃刀刃及び破砕楔セット)を利用した、CII麻薬製品の切断力結果を決定した。図16は、剃刀刃及び破砕楔セットについての切断力データ表を示す。
剃刀刃を利用した、試験されたあらゆるCII麻薬製品を切断するために必要な、個別での最大切断力は142ニュートン(N)であった(試料7)。剃刀刃を利用した、試験されたあらゆるCII麻薬製品を切断するために必要な最大平均切断力は131Nであった(試料7)。破砕楔セットを利用した、試験されたあらゆるCII麻薬製品を切断するために必要な、個別での最大切断力は163Nであった(試料6)。破砕楔セットを利用した、試験されたあらゆるCII麻薬製品を切断するために必要な最大平均切断力は156Nであった(試料6)。
試験されたCII麻薬製品全てが実際に切断可能であり、ゆえに、従来の手段(すなわち一般的な台所はさみ又は剃刀刃)を利用した破壊強度試験又は同等物(500N超、米国特許US8,309,060を参照)を使用して報告されたものよりも、実質的に小さい力により乱用される可能性がある。(伝統的な「錠剤破壊力」の定義を用いて)500N超の力を利用して錠剤を「平らにすること」は、試験されたCII麻薬製品における乱用抑止可能性に対処していない。
一実施形態において、本発明の製剤は、切断力-剃刀刃試験又は切断力-破砕楔セット試験のいずれか、又は両方により試験されたように、約40N、約50N、約60N、約70N、約80N、約90N、約100N、約110N、約120N若しくは約130N超、又はこれらの値のうち任意の範囲(例えば約40N〜約120Nの間)の切断強度(すなわち製剤を切断するのに必要な力)を示す。
本開示の試料4及び5は、圧縮硬化試料(すなわち試料8〜11)と比較して改善された切断強度を示す。圧縮硬化手順により調製された試料は成分のみ乾式混合を受ける。これらの成分はその後剤形に圧縮され、剤形に熱を加える乾燥パン上に配置される。圧縮硬化剤形では、押出ベースの手順と比較して、溶融又は同様に液化して剤形内の顕著な均質性が作り出されることがないと考えられている。本発明の製剤は押出により調製され、ゆえに溶融流動条件下で、押出機内で押出物を混合した結果として顕著な均質性を有する。押出物は、求められる硬さ及び強度を確実に得るために必要な機械的エネルギーを生み出す、高い剪断力を受ける。高い剪断力は、選択された成分、例えばPEOなどに対して作用し、それらを、増大した強度及び安定性を示すマトリックスに転換することが可能である。
すりつぶし例
本研究の目的は、CII麻薬製品の異なる製剤のすりつぶし可能性を調べ、まとめることであった。CII薬物製品を経鼻乱用(吸入)に好適な粒径にすりつぶすために、RetschナイフミルGRINDOMIX GM200を市販のコーヒーグラインダー(Mr. Coffee)を模すために利用した。市販のコーヒーグラインダーも比較目的で評価した。ATM L3Pソニックシフターを利用し、500マイクロメートル(μm)粒径篩(35メッシュ)を利用して粒径解析を行った。本研究の目的のため、直径500μm未満のあらゆる粒子が経鼻乱用に好適であると考えられた。直径500μm超のあらゆる粒子が鼻道の血管により十分に吸収されることができないことは、業界標準として一般的に受け入れられている。
RetschナイフミルGRINDOMIX GM200は、市販のコーヒーグラインダーを模すために円形刃付属品を利用する。GM200は最高速度10,000回毎分(rpm)を有するが、市販のコーヒーグラインダーは最高速度約20,000rpmを有する(GM200をMr. Coffeeグラインダーと比較すると、速度において約2倍の増加)。しかし、刃の直径が約2倍に増大すること(GM200をMr. Coffeeグラインダーと比較すると、それぞれ118mm対60mm)で、2つの変数の反比例関係によって、最高速度が約1/2減少することが補われる。さらに、GM200により生じるトルクはMr. Coffeeグラインダーにより生じるトルクよりも顕著に高く(それぞれGM200の0.860Nm(ニュートンメートル)対Mr. Coffeeグラインダーの0.062Nm)、それによりMr. Coffeeグラインダーが薬物製品を経鼻乱用に好適な粒径に改質する能力(又はその欠如)がさらに説明される。本研究では、GM200及びMr. Coffeeグラインダーによる改質(すりつぶし)後の、CII麻薬製品の数種の異なる製剤の粒径における差を評価した。
実験:試験された試料は、表21に列挙したそれらの試料を含む。試験された本開示の試料の配合を表13及び14に列挙する。以下の試験器具を使用した:RetschナイフミルGRINDOMIX GM200、コーヒーグラインダー(Mr. Coffee)、ATM L3Pソニックシフター、500μm篩(35メッシュ)及びShimpo Instrumentsタコメーター。以下の試験条件を使用した:解析速度:10,000rpm(GM200)、20,000rpm(Mr. Coffee)、解析時間:30秒、篩サイズ:500μm(35メッシュ)、解析時間:2分(脈動なし)。各試料を3連で調製した(N=3)。
各試料について、3つの投与ユニットを秤量し、試験した。次の条件をGM200に使用した:解析時間30秒及び速度10,000rpm。両方のパラメータを各解析前にセットした。複合試料を、風袋を秤量したボートに移送し試料の重量を記録した。以下の方程式を、試料損失%を算出するために使用した。
35メッシュ篩及び試料パンの重量を記録した。試験装置を、35メッシュ篩が試料パン上部にある状態に組み立てた。複合試料を試験装置に移送し、以下のパラメータを利用して解析した:解析時間2分及び脈動なし。解析された35メッシュ篩及び試料パンを秤量した。35メッシュ篩上(500μm以上)及び試料パン中(500μm以下)に残っている物質の%を、以下の方程式を使用して算出した。
GM200の代わりにMr. Coffeeグラインダーについて手順を繰り返した。Mr. Coffeeグラインダーは1つの作動速度(約20,000rpm)を有する。粒径解析及びすりつぶしの結果を図17に示す。図17は、試験された持続放出性(ER)CII麻薬製品を製造業者間で比較した場合の、粒径結果(500μm以上の%)を表すものである。
95%信頼区間又はp値0.05未満で統計上有意性を試験した。組み合わせたOxyContin(登録商標)バッチは、本開示の組み合わせた製剤(例えばER試料及びプロトコルに記載されるすりつぶし及び粒径解析後に組み合わせたOpana(登録商標)バッチ)とは統計上差がある(低い)500μm以上の粒子の量を生じる。
製造業者、すなわち本開示、Opana(登録商標)ERバッチの結果、及びOxyContin(登録商標)の結果ごとに結果を組み合わせ、群として解析した。組み合わせたOpana(登録商標)バッチは、すりつぶし及び粒径解析後に、本開示の組み合わせた製剤(例えばER試料)と統計上類似した500μm以上の粒子の量を生じる。
アルコール抽出例
本研究の目的は、異なる製剤について、アルコール抽出、濾過及び生じる抽出溶液の純度試験を行い、その結果をまとめることであった。CII麻薬製品の製剤は、剤形から活性物質の総量を除去するために、意図した剤形から改質される可能性がある。これは薬物製品を「乱用可能」にすることとして知られる。患者が製品をこの「乱用可能な」形態に改質する能力を減少させることを意図した、製剤の開発が起こった。押出及び圧縮硬化は、CII薬物製品を製造するための2つの方法である。どちらの方法も、適切に製剤化された場合、患者が製品を「乱用可能な」形態に改質する能力を減少させる特徴を有する(伝統的な方法と比較した場合)。
二軸押出は、剪断力を使用することにより、ブレンドされた配合物を混合するものとして記載されうる。共に回転する軸が、2つの軸の間、及び軸とバレル壁との間での材料の接触を介して、剪断/摩擦力を生み出す。剪断力は、材料に対しその粘性(粒子間摩擦)に基づいて作用し、均質なポリマー溶融物を生み出す。加熱されたバレルは、押出機の様々な領域において一定の温度を維持することにより溶融を制御するだけでなく、工程におけるエネルギーを維持するためにさらなる熱を加える。これは、材料が押出機を通って移送されている間、同時連続工程において起こる。ポリマー溶融物はその後ダイを通って押し出され、均一な押出物を成形することが可能となる。これは、最終薬物製品を製造するための分離連続工程において、まずブレンドされた配合物を(力により)圧縮し、次いで圧縮後に(熱により)硬化させると記載されうる圧縮硬化とは異なる。各製造方法を利用するCII薬物製品が現在市販されている。一部の実施形態において、本開示の製剤は、製剤に強度及び安定性を与えるために、十分な剪断応力下での押出工程により成形される。製剤は、押出機の異なる領域で剪断力、圧力及び熱が一緒に又は別々に加えられる押出機を使用して調製されうる。一部の実施形態において、製剤は、均一な押出物(すなわち局所的な均一性)を製造する助けとなるように、押出機において特定の配合物の溶融流動温度に達することにより調製される。その他の実施形態において、製剤は、先に、同時に又は後で加熱することを利用する、圧縮硬化工程を使用して調製される。
「乱用可能」にするためにCII薬物製品を改質する3つの主な方法、すなわち切断、すりつぶし及び抽出が存在する。剤形の切断は、消化管への溶解速度を増大させる目的で、摂取前に製品の表面積を増大させるために行われうる。切断はすりつぶし又は抽出の効率を増大させるためにも使用されうる。しかし、切断単独では製剤を乱用可能にするのに十分ではない。切断に使用される容易に入手可能な道具は、剃刀刃及び一般的な台所はさみである。剤形のすりつぶしは、鼻道の血管中に即時放出させるため、吸引(鼻から吸引)する目的で製品の粒径を減少させるために行われる。製品のすりつぶし後にさらなる乱用の経路が存在する。すりつぶしに使用される容易に入手可能な道具は、市販のコーヒーグラインダーである。抽出は、濾過してその後嚥下、注射又は別の方法で乱用されることが可能な液体に、剤形の活性物質を溶解させるために行われる。抽出に使用される容易に入手可能な道具は、高度数アルコール(すなわち190度(95%)以上)である。
本研究の目的は、多量の高度数アルコールを使用してアルコール抽出試料の純度を決定することであった。この実験のため、本開示の40mg及び80mgのER製剤を、40mg及び80mgのRLDのOxyContin(登録商標)と比較した。Retsch Knife Mill GRINDOMIX GM200を使用して、10,000RPMで30秒間、投与ユニット全体4つをすりつぶした。次いで試料を、190度エタノール40.0mL中に入れた。試料に蓋をし、250RPMで3時間、プラットフォームシェーカー上で振とうさせた。生じた溶液5.0mLをピペットで取り、ビーカー中に入れた。エタノールが全て蒸発するまでビーカーを〜100℃で加熱した。一旦冷却し、残留物をこすり落とし、秤量し、溶解し、オキシコドンHCl含有量を定量するのに有効なHPLC法を用いて解析した。図19は、アルコール抽出後の4つの剤形それぞれの純度パーセントを示す。各用量はアルコール溶液中で約100%の表示量(label claim)を有すると考えられるが、本開示のER製剤ではアルコール抽出物の純度が約2〜3倍減少する。これは、アルコールを直接静脈注射することができないという事実のために重要であり、すなわちアルコール抽出後の低純度な製剤は、静脈注射による乱用を抑止すると考えられる。
少量抽出例
本研究の目的は、活性物質を、少量の水(単一の投与ユニットと比較して)を使用して比較的短時間で剤形から抽出することができるかどうかを決定することであった。材料が容易に入手でき、待ち時間が一般的に1時間以下であるため、少量の水の使用は乱用の一般的な方法である。少量抽出を防止又は減少させることができる剤形は、乱用に対する別の抑止物である。
溶液が、乱用者により静脈注射されうるかどうかについての測定値として、生じた少量抽出液の粘度が測定又は算出される。本開示の持続放出性80mg剤形を、OxyContin(登録商標)(再製剤化)80mg、Opana(登録商標)ER(再製剤化)40mg及びRoxicodone(登録商標)IR30mgの剤形と比較した。各剤形10錠を半分に切断し、90℃の水30mL中に入れた。3つの時点:30分、45分及び60分を試験するため、各剤形の3つのビーカーを用意した。試料を撹拌せず放置した。撹拌しないことは、溶液の粘度を増大させることなく活性物質を抽出する好ましい方法であると考えられている。撹拌により、高分子量で水溶性の賦形剤が活性化されると考えられている。各所定の時点で、オキシコドンHCl含有量のHPLC解析のために試料1mLを取り、表示量のパーセントとして提示した。その後残った溶液を、25℃での毛細管粘度計による粘度解析のため、ビーカーからデカントした。オキシコドンHCl含有量及び生じた粘度についての結果を、それぞれ表31及び表32に示す。
30、45及び60分後、OxyContin(登録商標)80mgは、本開示のER 80mg製剤よりも、それぞれ0.0% LC、5.1% LC及び6.6% LC(絶対値)高いオキシコドンHCl含有量結果を示した。本開示のER 80mgは、OxyContin(登録商標)80mg ERと比較してより少ないオキシコドンHClを放出するが、3つの時点全てにおいて差は小さい。
30、45及び60分後、OxyContin(登録商標)80mgは、Roxicodone(登録商標)30mg IRの3倍以下の粘度結果を示した。Roxicodone(登録商標)IR剤形は、乱用抑止特性を有しない伝統的な直接圧縮錠剤である。結果として、Roxicodone(登録商標)IR溶液では、水のみの試料(約1cSt)を上回って粘度が増大しない。30、45及び60分後、Opana(登録商標)ER 40mgは、Roxicodone(登録商標)30mg IRの3倍以下の粘度で、OxyContin(登録商標)80mgと比較的類似した粘度結果を示した。30、45及び60分後、本開示のER 80mg製剤は、OxyContin(登録商標)80mgと比較してそれぞれ約16倍、36倍及び33倍、Opana(登録商標)ER 40mgと比較してそれぞれ約17倍、25倍及び29倍、並びにRoxicodone(登録商標)30mg IRと比較してそれぞれ22倍、61倍及び70倍の粘度増加を示した。本開示の本開示の80mg剤形は、少量水性抽出において、OxyContin(登録商標)80mg ERと比較してオキシコドンHClの類似した濃度及び/又は濃度の減少を示し、3つの時点全てにおいて、その他の持続放出性剤形を上回る粘度の著しい増加をも示す。例えば約50K〜1Mダルトン未満のPEOなどの低分子量マトリックス剤、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%若しくは約60%のHPMC (若しくは同等物)、又は両方を含まないその他の製剤を上回って、本開示の剤形は、本明細書に記載するように、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍又は100倍増加した少量抽出粘度を示す。
本開示は、その例示的実施形態を参照して具体的に示され、記載されているが、添付の特許請求の範囲により網羅される本発明の範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における様々な変更がなされてよいことが当業者により理解されるであろう。