JP2017500046A - 複製ポリメラーゼおよびヘリカーゼの使用によるナノポア配列決定 - Google Patents

複製ポリメラーゼおよびヘリカーゼの使用によるナノポア配列決定 Download PDF

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Abstract

本発明は、核酸結合タンパク質を使用したナノポア配列決定システムであって、前記タンパク質の活性と、配列決定される核酸分子によるナノポアの通過とが連動したシステムに関する。特に、本発明によれば、ナノポアの捕捉と開裂ポリヌクレオチドとを容易に同調させることが可能であり、捕捉およびヌクレオチド特徴化の全工程を繰り返す簡便な方法が提供される。

Description

本発明は、特に未知の核酸の配列決定のためあるいは診断において特定の核酸配列の検出するために有用な、核酸、DNAまたはRNAの配列を決定する迅速な方法に関する。
低コストの配列決定法に対する高い需要は、配列決定プロセスを並列化して一度に数千または数百万の配列を生成するハイスループットシークエンシング技術の開発が促進している(Shendure & Ji, Nat Biotechnol, 26(10): 1135-45. 2008)。ハイスループットシークエンシング技術は、標準的なダイターミネーター法が可能とする以上にDNA配列決定コストの低減を意図している。かかる方法は、例えば米国特許第4,882,127号、同第4,849,077号、同第7,556,922号、同第6,723,513号、PCT特許出願第WO03/066896号;PCT特許出願第WO2007111924号、米国特許出願第2008/0020392号、PCT特許出願第WO2006/084132号;米国特許出願第2009/0186349、米国特許出願第2009/0181860号、米国特許出願第2009/0181385号、米国特許出願第2006/0275782号、欧州特許第EP−Bl−1141399号;Shendure & Ji, Nat Biotechnol., 26(10): 1135-45. 2008; Pihlak et al, Nat Biotechnol., 26(6): 676-684, 2008; Fuller et al., Nature Biotechnol., 27(11): 1013-1023, 2009; Mardis, Genome Med., 1(4): 40, 2009; Metzker, Nature Rev. Genet., 11(1): 31-46, 2010に記載されている。
しかしながら、これまでに開発された全ての方法には重大な欠点がある。ナノポア、(つまりナノスケールの孔)の使用に基づく新しい一本鎖の配列決定法が近年開発され、現行の配列決定プラットフォームのほとんどの欠点に対応する。すなわち、読み取りが非常に長く、エラーは一度の読み取りにおいて最後にまとまってではなくランダムに起こり、データをリアルタイムで読み取ることが可能であり、スループットが高く、かつ導入されるDNAが工程中に破壊されない(Branton et al., Nature Biotechnol., 26(10): 1146-1153, 2008)。
この方法によると、非透過性薄膜に横断的に広がったナノポアが、電解質を含む2つのチャンバ(Chamber)の間に配置され、2つの電極を使用して電圧が膜に横断的に印加される。これらの状態が、ポアを横断するイオン電流の安定的な流れにつながる。一本鎖DNA(ssDNA)分子は、ナノポアを介して電気泳動により移動しうる。分子が孔を移動するにつれ、ポア内の塩基の性質に応じて、孔を流れるイオン電流が下がる。対時間で電流を読み取ることにより、配列を推測する方法が提供される。(Kasianowicz, Proc Natl Acad Sci USA, 93: 13770-13773, 1996)。
この方法は、厳しい限界をかかえている。その理由はナノポアを通過するDNA鎖の制御不能な電気泳動が速すぎて、精度の高い塩基の読み取りができないためである。(Branton et al., Nature Biotechnol., 26(10): 1146-1153, 2008; Wanunu, Phys Life Rev., 9(2): 125-158, 2012)。
移動速度の実質的な減少は前進型DNA酵素によって実現が可能であり、該酵素によればDNA鎖に結合することにより移動速度を制限し、酵素処理速度より早くポアの狭い隙間にDNA鎖が移動するのを防ぐことができる(例としてBenner et al., Nat Nanotechnol., 2(11): 718-724, 2007; Olasagasti et al., Nat Nanotechnol., 5(11): 798-806, 2010; Lieberman et al., J. Am. Chem. Soc., 132: 17961-17972, 2010; Venkatesan & Bashir, Nat Nanotechnol., 6(10): 615-624, 2011; Cherf et al., Nat. Biotechnol., 30(4): 344-348, 2012; Manrao et al., Nat Biotechnol., 30(4):349-353, 2012を参照のこと)。しかしながら、正常時にはかかる酵素はそれぞれのDNA基質を認識するたびに作用を開始してしまい、何らかの信号を待つわけではない。
文献には、分子モーターの開始とssDNAのナノポア内への進入とを同調させる巧妙な手順が記載されている。例えば、作動複合体がちょうどナノポアで集合するのを確実にするため、ATPまたはMg2+共同因子のレベルの変動が使用されている(第WO2008/124107号)。
代替的な方法は、phi29DNAポリメラーゼに依存している。この酵素は、DNAをポア内へ導入するために必要な印可電圧が作用してもDNAに結合したままでいるため、特にこの手法に適している。例えば、第一の研究では、DNAプライマーの一次的な化学保護を適用して、バルク相での伸長および除去を防いでいる (Lieberman et al., J. Am. Chem. Soc., 132: 17961-17972, 2010)。別の研究は、プライマーの下流にハイブリダイズしかつ一本鎖DNAがポアに捕捉されると直ちに置換される、ブロッキングオリゴヌクレオチドの使用を基礎としていた(Cherf et al., Nat. Biotechnol., 30(4): 344-348, 2012; Manrao et al., Nat Biotechnol., 30(4):349-353, 2012)。
しかしながら、これら手法の一つとして完全に満足できるものはない。それらの全ては、技術的に難易度が高いためハイスループット配列決定に容易に適用可能なものではない。またこれらの手法は、新しい核酸鎖の重合に依存していて、これが導入エラーにつながり、そのため精度が低い。実際にそのエラー率は約4%である一方で、従来のハイスループット配列決定方法は99.99%正確である(Cherf et al., Nat. Biotechnol., 30(4): 344-348, 2012; Schneider & Dekker, Nat. Biotechnol., 30(4): 326-328, 2012; Liu et al., J Biomed Biotechnol, 2012: 251364, doi:10.1155/2012/251364, 2012)。さらに、同一のDNA分子に数回ポアを通過させ、その手法を繰り返して感度を改善することは不可能である。
従って正確でかつ精度の高い、単一分子核酸配列決定方法が求められている。
本発明は、核酸結合タンパク質を使用したナノポア配列決定システムであって、前記タンパク質の活性と、配列決定される核酸分子によるナノポア通過とが組み合わさったシステムに関する。特に、本発明によれば、ナノポアの捕捉とポリヌクレオチドの開裂(unwind)とが容易に同調可能であり、それにより捕捉およびヌクレオチド特徴化の全工程を繰り返す容易な方法が提供される。
本発明者らは、驚くべきことにいくつかの核酸結合タンパク質の酵素活性は、核酸分子へ外的な力を印加することにより活性化させることが可能であることを見出した。力が印加されなければ、前記タンパク質は不活性のままである。したがって、ポリヌクレオチドの一方の末端をナノポアで捕捉してポリヌクレオチドに力(tension)を付加することにより、ポリヌクレオチド上の核酸結合タンパク質の活性を制御することは可能である。力が付加されると前記タンパク質は活性化し、ナノポアに対するポリヌクレオチド鎖の移動をもたらす。この移動がヌクレオチドの性質に依存する信号を発生させる。
第一の実施形態において、本発明は、ポリヌクレオチドを配列決定する方法であって、
a)前記ポリヌクレオチドと、ナノポアおよび核酸結合酵素とを接触させ、
b)前記ナノポア内に前記ポリヌクレオチドを導入し、前記酵素の活性の活性化を生じ、
c)前記ナノポアに対して(with respect to)前記ポリヌクレオチドを移動させ、ここで、前記ポリヌクレオチドの移動が、前記酵素の活性により制御されており、
d)前記ナノポアに対する前記ポリヌクレオチドの移動に関連した信号をモニタリングし、それにより前記ポリヌクレオチドの配列を発生させ、
e)前記酵素の活性を停止させ、かつ
f)a)からe)の工程を繰り返すこと
を含んでなる方法に関する。
本発明において「ポリヌクレオチド」 とは、2以上のヌクレオチドを含む高分子である。本発明におけるポリヌクレオチドまたは核酸(これらの用語は、本明細書を通して同義に用いられ、同じ意味を有すると解釈されるものとする)は、あらゆるヌクレオチドの組み合わせを含む。本明細書に使用されるポリヌクレオチドは、天然、合成、または修飾ヌクレオチドを含むDNAまたはRNAを指す。
本明細書にて一般的に使用される「ヌクレオチド」または「塩基」とは、天然ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体であってよい。天然ヌクレオチドは、デオキシアデノシンモノ−ホスフェート(dAMP),デオキシシチジンモノ−ホスフェート(dCMP),デオキシグアノシンモノ−ホスフェート(dGMP),デオキシチミジンモノ−ホスフェート(dTMP),アデノシンモノ−ホスフェート(AMP), シチジンモノ−ホスフェート(CMP),グアノシンモノ−ホスフェート(GMP) またはウリジンモノ−ホスフェート(UMP)である。ヌクレオチド類似体は、第1級(primary)核酸塩基(A,C,G,TおよびU)、デオキシリボース/リボース構造体、第1級(primary)ヌクレオチドのホスフェート基、またはこれらの組み合わせに対して修飾を有する第1級ヌクレオチドの類似体または模倣体である。例えば、ヌクレオチド類似体は、天然に存在しているか人工の修飾塩基を有することがある。修飾塩基の例としては、特に限定されないが、メチル化核酸塩基,修飾プリン塩基(例えば、ヒポキサンチン、キサンチン、7−メチルグアニン、isodG)、修飾ピリミジン塩基(例えば、5,6−ジヒドロウラシルおよび5−メチルシトシン、isodC)、ユニバーサル塩基(例えば、3−ニトロピロールおよび5−ニトロインドール)、非結合塩基の模倣体(例えば、4−メチルベンゾイミダゾール(methylbezimidazole)および2,4−ジフルオロロルエンまたはベンゼン)、および塩基なし(ヌクレオチド類似体が塩基をもたない脱塩基ヌクレオチド)が挙げられる。修飾デオキシリボース(例えば、ジデオキシグアノシン、ジデオキシアデノシン、ジデオキシチミジン、およびジデオキシシチジンなどのジデオキシヌクレオシド)および/またはホスフェート構造体)を有するヌクレオチド類似体(合わせて主鎖構造体といわれる)の例としては、特に限定されないが、グリコールヌクレオチド,モルフォリノおよびロックドヌクレオチドが挙げられる。
本明細書で使用される「デオキシリボ核酸」および「DNA」という用語は、デオキシリボヌクレオチドから構成されるポリマーを意味する。本明細書で使用される「リボ核酸」および「RNA」という用語は、リボヌクレオチドから構成されるポリマーを意味する。前記核酸はまた、例えばリボース部分が2’酸素および4’炭素をつなぐ付加的な架橋で修飾されたヌクレオチドであるロックド核酸(LNA)、または主鎖がペプチド結合で連結されたN−(2−アミノエチル)−グリシンユニットの繰り返しから構成されるペプチド核酸(PNA)などの修飾ヌクレオチドから作製されてもよい。
好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、二本鎖核酸である。この点について、本発明は、あらゆるタイプの二本鎖核酸に適用されることが強調されるべきである。ほとんどの場合、二本鎖核酸はDNAであるが、本発明はまた、完全に対合しているもしくは完全は対合していない一本鎖DNA−一本鎖DNAの二本鎖、または完全に対合しているもしくは完全には対合していない一本鎖DNA−一本鎖RNAの二本鎖、または完全に対合しているもしくは完全には対合していない一本鎖RNA−一本鎖RNAの二本鎖に適用されると理解される。さらに、この二本鎖は、異なる起源のサンプルから得られた2本の一本鎖の少なくとも部分的な再対合から構成されてもよい。特に、本発明はまた、単独の一本鎖DNAまたは単独の一本鎖RNAの二次構造に適用される。
溶液の2つのリザーバー(reservoir)が、周知の寸法の流体狭窄としての役割を果たすナノポアで分断され、DC電圧が2つの容器へ印加されると、存在するポリヌクレオチドは、ナノポアを通過して1つのリザーバーへ移動する。ナノポアにより前記ポリヌクレオチドが捕捉されると、前記ポリヌクレオチドに加わる力をもたらされる(Wanunu, Phys Life Rev., 9(2): 125-158, 2012)。好ましくは、ポリヌクレオチドに対する前述の力の印加により、本発明の方法における核酸結合酵素の活性化がもたらされる。
よって、好ましい実施形態においては、本発明の方法における工程b)は、ポアに電圧を印加することをさらに含む。より好ましい実施形態においては、工程c)において前記ポリヌクレオチドが前記ポアを介して移動する。より一層好ましい実施形態においては、ナノポア開口部の直径は、所定時間のいつでも、ポリヌクレオチドの一本鎖のみを許容してナノポア開口部を横切らせる。当業者は、本発明のこの実施形態において、鎖(stand)がポアに進入する配向に基づいて、前記ポアを通過するポリヌクレオチドの移動方向を容易に決定することが可能であると容易に理解するであろう。好ましくは、前記ポアを介する前記ポリヌクレオチドの移動方向は、5’から3’、または3’から5’である。
より好ましい実施形態においては、ポアを介する移動は、前記ポリヌクレオチドの変性と関連している。別のより好ましい実施形態においては、ポアを介する移動は、前記ポリヌクレオチドの復元と関連している。本明細書において「変性」とは、鎖の間の大部分の水素結合が切れた場合に起こる二本鎖核酸分子の鎖の分離工程を意味する。この変性工程は変性した核酸分子を生じ、それにより、本明細書においては、二本鎖核酸分子の変性の結果2本の分離した相補鎖が生じることを意味する。本明細書において「復元」とは、2本の分離した相補鎖がハイブリダイゼーションを介して二重らせんを再形成する工程を意味する。本明細書において「ハイブリダイゼーション」とは、核酸の2本以上の相補鎖の間の非共有結合的な配列特異的相互作用を確立して単一のハイブリッドとする工程である。ポリヌクレオチドの変性は、5’から3’への移動に特に関連しやすく、一方で3’から5’への移動は前記ポリヌクレオチドの復元を特に生じやすいことは当業者に容易に理解されるであろう。
有利には、本発明のポリヌクレオチドはフォークを包含する。本明細書において「フォーク」とは、部分的に変性したポリヌクレオチドの範囲を指す。好ましくは、フォークを含むポリヌクレオチドは、フォークの一方で変性しながら他方では完全にハイブリダイズされている。よって、かかる分子中では、ポリヌクレオチドの二本鎖は、フォークの一方で分離されながら他方でハイブリダイズされている。フォークの存在は、ナノポアに容易に捕捉されうるポリヌクレオチドの一本鎖の末端を提供する。かかるフォークは、ポリヌクレオチド中に天然に存在することが可能である。あるいは、ポリヌクレオチドの一つの末端に付加されたリンカー配列を通じて人工的に工作されうる。例えば、2つの部分的に相補なオリゴヌクレオチドはアニール(anneal)され、分子生物学上の一般的な技術によりその後ポリヌクレオチドの一方の末端に連結されてもよい。
ポリヌクレオチドの一つの遊離した一本鎖の末端が、電圧が印加された後、ナノポアに進入すると、ポリヌクレオチドに力が加わり、それにより核酸分子全体の変性につながる。結果として、フォークは、ポリヌクレオチドの長さに沿って、ポアに捕捉された分子の末端から分子の他方の末端まで移動する(よって結果的に前記ポリヌクレオチドの推進的な変性がもたらされる)。
ナノポアが、常にポリヌクレオチドの同じ末端を捕捉するよう確実にすることは有利であり得る。この場合において、フォークは常に同じ方向に移動し、これは核酸結合酵素の活性にとって必要となりうる。さらに、これは本発明の方法が繰り返される度に同じ鎖が配列決定されるよう確実にし、よって方法の感度が改善される。これはポリヌクレオチドの一本鎖の末端を封鎖することで達成が可能である。
好ましくは、ポリヌクレオチドは、当該ポリヌクレオチドの一つの末端にヘアピンを含む。本明細書において「ヘアピン」とは、一方の鎖の5’末端が、対合していないループを介して他方の鎖の3’末端に物理的に結合している二重らせんを意味する。物理結合は共有結合でも非共有結合でもよい。優先的には、物理結合は共有結合である。よって、ヘアピンは、二本鎖のステムおよび対合していない一本鎖ループからなる。
ポリヌクレオチドの一方の末端にヘアピンが存在することは、ナノポアによる末端の捕捉を防ぐのに有用である。これに関して、ポリヌクレオチドの一つの末端のみがヘアピンを含んでいることが特に有用である。
フォークを含むポリヌクレオチドは、フォークの一方で変性し、他方で完全にハイブリダイズされ、そして変性したそれぞれの二本の鎖はポアに捕捉されうる。 同じ鎖がポアに常に捕捉されるよう確実にするためには、ヘアピンを含む末端が、変性した鎖に対応するものであると有利である。
好ましくは、ヘアピンは、本発明におけるポリヌクレオチドの末端の二本の鎖のうち一方にのみ物理的に連結している。より好ましくは、ポリヌクレオチドの一方の鎖の3’末端が、当該末端のナノポアへの進入を防ぐヘアピンに連結している。この場合、ナノポアに捕捉されうる唯一の一本鎖ポリヌクレオチド末端は、5’末端であり、結果としてポリヌクレオチドの5’から3’へのポアを介する移動がもたらされる。例えば、本発明の方法で使用される酵素が複製ポリメラーゼである場合、5’末端がポアに捕捉され、ヘアピンは従って3’末端に連結される。あるいは、ポリヌクレオチドの5’末端は、当該末端のナノポアへの進入を防ぐヘアピンに連結している。この場合、酵素が複製ヘリカーゼである場合、ナノポアに捕捉されうる唯一の一本鎖ポリヌクレオチド末端は、3’末端であり、結果としてポリヌクレオチドの3’から5’へのポアを介する移動がもたらされる。
本発明における「核酸結合酵素」とは、核酸分子を結合させ、前記分子に活性を加えることが可能なあらゆるタイプの酵素をいう。有利には、本発明における酵素の活性はポリヌクレオチドに加わった力に反応しやすい。好ましい実施形態において、酵素は、前記ポリヌクレオチドに力がかかると活性化する。この活性化は、直接的であっても間接的であってもよい。酵素が、活性の障壁を克服するのにポアにより付与される力を必要とする場合、活性化は「直接的」である。例えば、T4およびT7ホロ酵素は、ホロ酵素の上流のDNAフォークが、ホロ酵素の重合を促す前進運動を阻害する逆向きの圧力を発生させるため、鎖が置換状態の中では伸長を行うことができない (Manosas et al., Nucl Acids Res, 40(13):6174-6186, 2012)。同様に、T4ヘリカーゼgp41は、単独でDNAを開裂させることができない受動的ヘリカーゼである(Lionnet et al., Proc Natl Acad Sci USA, 104(50): 19790-19795, 2007)。よって、T4およびT7ホロ酵素は、gp41と同じく、DNAを開裂させるためにポアからの直接的補助を必要とする。他方でポアの働きが、単に酵素を正しい基質で発現させるために必要な場合、活性化は「間接的」である。例えば、一方の末端において二本の鎖の間に共有結合架橋を有するポリヌクレオチドは、架橋が開裂工程を停止させるまでナノポアの働きにより変性することがある。結果として得られる分子は、部分的に開裂したフォークであり、UvsWおよびRecGのような巻き戻しヘリカーゼの好ましい基質である (Manosas et al., Nat Commun, 4: 2368, doi: 10.1038/ncomms3368, 2013)。
一つの実施形態において、本発明の核酸結合酵素は、フォークを移動させることが可能な分子モーターである。分子モーターが存在しているとき、分子モーターはポリヌクレオチドに結合し、フォークを動かすことが可能である。これはポリヌクレオチドをナノポアに通過させる効果を有し、よって結果としてナノポア内に存在しているヌクレオチドに特有の多様な電流がもたらされる。
分子モーターは、ポリヌクレオチドを移動させることが可能な、あらゆる好適な分子であってよい。ポリヌクレオチドの移動は、収縮、延伸、回転および/またはスーパーコイルを通してでよい。これによってポリヌクレオチドがポアを通過する。好適な分子モーターとしては、トポイソメラーゼ、ポリメラーゼ(例えばDNAポリメラーゼ)、ヘリカーゼ、リコンビナーゼ、クロマチンおよびクロマチン−リモデリング因子、調整因子、トランスロカーゼおよび制限修飾酵素が含まれる。例えば、FtsのようなDNAトランスロカーゼまたはEcoR.1241のようなタイプI制限修飾酵素を使用することが可能である。他の好適な酵素は、Rad54、トポイソメラーゼ 1、UvrD、RecQおよびgp41である。さらなる好適な酵素の例としては、例えば、UvrDヘリカーゼ、recBCDヘリカーゼ、大腸菌UvrDヘリカーゼ、Tte−UvrDヘリカーゼ、T7 gp4ヘリカーゼ、RecBCDヘリカーゼ、DnaBヘリカーゼ、MCMヘリカーゼ、RTEL1ヘリカーゼ、Repヘリカーゼ、RecQヘリカーゼ、PcrAヘリカーゼ、T4 UvsWヘリカーゼ、SV40ラージT抗原ヘリカーゼ、ヘルペスウイルスヘリカーゼ、酵母Sgslヘリカーゼ、DEAH_ATP依存性ヘリカーゼおよび乳頭腫ウイルスヘリカーゼElタンパク質およびその同族体を含むヘリカーゼ類が挙げられる。好ましくは、分子モーターは、DNA操作酵素である。
第一の態様では、前記分子モーターは、複製ヘリカーゼまたは複製ポリメラーゼである。本明細書において「複製ヘリカーゼ」とは、染色体複製中にDNAを開裂させる酵素である。これは、ヌクレオシドトリホスフェート加水分解からのエネルギーを使用し、二重構造のDNAの一本鎖に沿って移動し、相補鎖を置換する。本発明による複製ヘリカーゼとしては、DnaB、Mcm4、6、7ヘテロトリマー、gp41、RTEL1,RecQ、gp4等のような酵素が含まれる。本明細書において「複製ポリメラーゼ」とは、迅速的かつ推進的なプライマー伸長DNA合成を提示するが、二重核酸を開裂させるのに外的な補助を必要とする酵素である。複製ポリメラーゼの例としては、T4 DNA ポリメラーゼ、T7 DNA ポリメラーゼ、DNAポリメラーゼ α、大腸菌Pol II、大腸菌Pol II,RB69ポリメラーゼ gp43、および類似の酵素が挙げられる。本実施形態による好ましい酵素には、T4 DNA ポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼおよびT4ヘリカーゼgp41等のような酵素が含まれる。
これらの酵素は、補助なしに鎖の置換を行うことができないと知られている。一方で、発明者らは、鎖の置換活性が印加された力により強く刺激されることを明らかにしている(Lionnet et al., Proc Natl Acad Sci USA, 104(50): 19790-19795, 2007; Manosas et al., Nucl Acids Res, 40(13):6174-6186, 2012)。
かかる力は、本実施形態において、ナノポアに印加された電圧により提供されている。当該実施形態によれば、酵素が本発明のポリヌクレオチド上に配置された際に、たとえヌクレオチドトリホスフェートが存在していても、酵素は、ポリヌクレオチドを単独で開裂させることができない。しかしながら、ポアによりポリヌクレオチド鎖が捕捉されることによって、酵素の活性化のために必要な力が与えられる。例えば、これらの状況下で、複製ポリメラーゼは、フォークを置換しながら新しい鎖を合成しはじめ、よってフォークの手前で核酸分子の開裂につながる。複製ヘリカーゼは、ポリヌクレオチドの一本鎖がナノポアに導入された際にしか持続的な率で開裂を開始しない。ナノポアに印加された電圧は、ポリヌクレオチドの一本鎖に力を加えて、ポリヌクレオチドの二本鎖部分から引き裂こうとする。この実施形態においては、酵素の活性化は、鎖のナノポア内への通過と関連している。これにより、酵素の活性によってナノポア内への鎖の移動速度が制限され、よって読み取りと同定が可能なヌクレオチドに依存的な信号が発生する。
当該実施形態によれば、使用される電圧は典型的に+100mV〜+400mVである。使用される電圧は、好ましくは+120mV〜+240mVの間に含まれる範囲内である。より好ましくは、前記電圧は+160mV〜+240mVの間である。特に好ましくは、前記電圧は+180mV〜+240mVの間に含まれている。
当業者であれば、ポリヌクレオチドおよび酵素が、開裂を開始するリスクを一切伴わずに、ナノポアと混合されうると直ちに理解するであろう。ポリヌクレオチドがポア内に引き込まれて酵素が活性化するのは、電圧が印加された際に限られる。この実施形態において、本発明の分子モーターは、よってポアにより直接的に活性化される。
この実施形態によれば、酵素を活性化させるには実質的な電圧誘導が必要とされるため、電圧の低下は酵素の不活性化をもたらすことが容易に理解されるであろう。よって、さらなる好ましい実施形態においては、ポリヌクレオチドが実質的に開裂した後に印加される電圧は、最小値、例えば10mVを下回るように抑制される。これにより酵素の不活性化および二本鎖核酸の再形成がもたらされる。
この点について、T4 DNAポリメラーゼまたはT7 DNAポリメラーゼのような複製ポリメラーゼを使用することは、電圧が下がった際に当該酵素が新鎖の合成を停止するだけでなくアセンブルされたばかりの鎖を実際に除去し始めるため、特に有用であり得る。これによって確実に、変性したポリヌクレオチドが効率的に復元され、それにより次のラウンドで分子を開裂するための基質が得られるようになる。T4 DNAポリメラーゼおよびT7 DNAポリメラーゼは、二本鎖テンプレートに力が印加されていない状態で鎖の置換活性のあることは知られていなかったが、二本鎖ヘアピンが10pN以下の力におかれた際、重合中に下流の核酸を除去することが可能であることを発明者らは確かに発見した (Manosas et al., Nucl Acids Res, 40(13):6174-6186, 2012)。本明細書における「T4 DNAポリメラーゼ」および「T7 DNAポリメラーゼ」とは、モノメリック酵素およびホロ酵素の両方をさす。
誘導電圧が力の働きをするため、ポリメラーゼは、実質的な電圧誘導により活性化される。電圧が下がると、ポリメラーゼの活性はエキソヌクレアーゼモードへ切り替わり、よってそれは後ろ向きに戻りながら新しく合成された鎖を推進的にデグレードする。この動きは、フォークの付随運動を伴い、よって変性したポリヌクレオチドの復元およびナノポアに繋がった鎖の引き戻しを推進する。T4 DNAポリメラーゼおよびT7 DNAポリメラーゼのような複製ポリメラーゼは、よって本発明の方法を実行するのに特に好適である。
この特定の実施形態によれば、対合および不対合を複数サイクル実行し、よって単純に電圧を制御することにより信号/ノイズを改善させることが可能である。
例えば、ナノポアによる誘導電圧は、電圧を所定期間高くし、その後より長い期間低い値に戻すことで周期的に変調させることが可能である。高電圧をかけた時間により、分子の開裂する最大の長さが定まる。有利なのは、この長さが分子より短いことであり、それによって電圧が一度下がると分子をリフォールドさせることができる。二本の鎖の対合は、2つのDNAアームが相補的でなくなると、つまり5’アームがポアに繋がったままの分子の開始点において、停止する。次のサイクルでの電圧の上昇があり次第、酵素はポリヌクレオチドを開裂させはじめ、新しいサイクルを再開させる。この工程は、よってDNA鎖によるナノポア内への複数の移動を提供する。
酵素がポリヌクレオチドを完全に開裂せずにむしろ分子上に留まることを確実にするため、修飾ヌクレオチドをポリヌクレオチドの一つの末端に追加することが可能である。好ましくは、修飾ヌクレオチドは、ナノポアが捕捉していないポリヌクレオチドの末端に付加される。開裂状況下では、酵素は、電圧が下がるまでこれらのヌクレオチド上で止められる。フォークは、その後分子の他方の末端にたどり着くまで後ろ向きに動き、システムがもう一回の高電圧および低電圧によるラウンドへ準備が整っていることを示す。
前記工程の利点は数多い。最も顕著なのは、それが非常に簡便であるということである。確かに、電圧は分子の捕捉から独立して増加または低下させることが可能であり、一方で酵素は電圧の変調と直接同調する。
別の態様では、分子モーターは巻き戻しヘリカーゼである。「巻き戻しヘリカーゼ」とは、本明細書では鎖のアニーリング活性を供するヘリカーゼを指す。 巻き戻しヘリカーゼはよって、ヌクレオチドトリホスフェートの存在下または不在下で、核酸の相補鎖の巻き戻し、またはアニーリングが可能なヘリカーゼである。巻き戻しヘリカーゼは、当技術分野で周知(Wu, J Nucleic acids, 2012: 140601, 2012, doi: 10.1155/2012/140601)であり、ヒトHARP、ヒトAH2、T4 UvsW、大腸菌RecG、ヒトWRN、マイコバクテリア結核菌XPB、サッカロマイセス セレビシエ Ded1,ヒトRECQ4、ヒトBLM、S.セレビシエ Sgs1のような酵素を包含する。
これらの酵素は、二本鎖ポリヌクレオチドを開裂するのに効率的ではないが、部分的に開裂した二本鎖ポリヌクレオチドをリアニール(re−anneal)するのには非常に効率的である。これらの酵素は、開裂したフォーク上に配置してポリヌクレオチドをリアニールすることが可能である。しかしながら、一度ポリヌクレオチドが完全にリアニールされると、酵素ははずれる(Manosas et al., Science, 338(6111): 1217-1220, 2012; Manosas et al., Nat Commun,4: 2368, 2013)。
本発明における該態様において、酵素の基質の存在は、ヌクレオチドトリホスフェートの所望による付加と共に、巻き戻しヘリカーゼによる鎖のアニーリング活性を高めるために、必要でありかつ十分なものである。酵素の活性化は、よってポアにより間接的に引き起こされる。
本発明の好ましい実施形態において、酵素は、部分的に解離した (unzipped)ポリヌクレオチドを与えられることにより活性化される。好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、ナノポアの作動により解離する。ナノポアが鎖を捕捉することで、結果としてナノポア内への鎖の素早い移動がもたらされ、一方で他方の鎖は、元の区画に残っている。よって、より好ましくは、ポリヌクレオチドが鎖を捕捉することにより、ポリヌクレオチドが開裂し、そして酵素の活性化につながる。
ポアの作動によりポリヌクレオチドが完全に開裂せずに部分的に開裂したフォークの状態で停止することを確実にするために、分子の一つの末端の二本の鎖の間で架橋連結を付加することは有利であり得る。好ましくは、架橋連結は、ナノポア内へ引き込まれていない末端で導入される。そのような場合、鎖は、一切の遅延する要素なしにナノポア内へ通され、よってポリヌクレオチドが開裂する。しかしながら、共有結合である架橋連結の位置でこの開裂は停止する。一度分子がナノポア内に閉じ込められると、それは巻き戻しヘリカーゼに対して好ましい基質に対応する停止したフォークを含むことになる。本発明における巻き戻しヘリカーゼは、次に基質上に配置され、ポリヌクレオチド全体がアニールされるまで本発明におけるポリヌクレオチドをリアニールする。ポリヌクレオチドの巻き戻しは、ポアから出る鎖の牽引力を伴い、よってポアを通過するヌクレオチドの特性に依存したシグナルが発生する。
本発明の巻き戻しヘリカーゼは、完全にアニールされた核酸分子には結合しない。従って、好ましい実施形態においては、一度ポリヌクレオチドの全体が巻き戻しポリメラーゼによりアニールされると、前記酵素は、二重ポリヌクレオチドからはずれる。酵素のこの挙動によって、同じ配列のポアを介する移動を繰り返す方法を提供される。さらなる好ましい実施形態においては、開裂/巻き戻しのサイクルが数回繰り返される。ポリヌクレオチドと酵素の解離は、変性/復元の新サイクルを開始させる。つまり、ポリヌクレオチドの鎖がポアにより捕捉され、そのポアは分子の開裂が架橋連結に到達するまで前記鎖を引っ張り続け、この時点で、巻き戻しヘリカーゼが基質上に配置され、ポリヌクレオチドをリアニールする。
従って本発明の方法における当該実施形態は、開裂および巻き戻しを複数ラウンド実行し、よって信号/ノイズ比率を改善する、容易かつ効率的な方法を提供する。
巻き戻しヘリカーゼは、対抗する力に対してポリヌクレオチドを巻き戻すことが可能である。例えば、発明者らは、UsvWおよびRecGヘリカーゼ共にナノポアからポリヌクレオチドを押し出すのに十分な力を示すことを明らかにした(Manosas et al., Science, 338(6111): 1217-1220, 2012; Manosas et al., Nat Commun, 4: 2368, 2013)。この状態は、電圧を下げる必要がないため特に有利である。従って、全工程を同じ電圧下で実行可能である。本方法は、典型的には、膜およびポアに渡って電圧を印加させることで実行される。使用される電圧は、典型的には−400mV〜+400mVである。使用される電圧は好ましくは、−400mV、−300mV、−200 mV、−150mV、−100mV、−50mV、−20mVおよび0mVから選択される下限、ならびに+10mV、+20mV、+50mV、+100mV、+10mV、+200m、+300mVおよび+400mVから独立的に選択される上限を有する範囲にある。使用される電圧は好ましくは、50mVおよび300mVの間、より好ましくは、100mVおよび250mVの間、特に好ましくは、150mVおよび250mVの間を含む。
しかしながら、巻き戻しヘリカーゼが、より効果的に基質ポリヌクレオチド上に配置することができるように電圧を下げることは、特定の実施形態においても有利であり得る。
本発明による「ナノポア」とは、 支持構造体内の開口部、隙間または他の孔である。
好ましくは、ナノポアは、膜の一方から他方へイオンを移動させる膜内の開口部である。ナノポアは、縦軸および横軸の寸法を有すると記載されることがある。ナノポアの縦軸寸法は、ポリヌクレオチドがポアを通過するために移動しなければならない距離を決定する。つまり、ポアの厚さである。ナノポアの横軸寸法は、ポアに進入可能な最大の種を決定する。つまり、ポアの幅である。ポアは、配列決定がされるポリヌクレオチドを受け入れるのに十分広くなければならない。望ましくは、ナノポアの縦軸寸法は、ポリマーを測定可能な形態の別個のセットに制限するほど小さい。縦軸寸法も、望ましくは観察される形態より小さい。本発明において有用なナノポアは、典型的には横軸寸法が1〜1000nmの範囲に及び、例えば最大で750、500、400、300、250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、または2nmおよび最小で2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、400、500、または750nmとする。本発明において有用なナノポアは、典型的には縦軸寸法が1〜1000nmの範囲に及び、例えば最大で750、500、400、300、250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、または2nmおよび最小で2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、400、500、または750nmとする。採用されるナノポアの寸法は、精査されるポリヌクレオチドのタイプおよびポリヌクレオチド溶液の状態による。
好ましくは、制限的なナノポア開口部は、一本鎖のポリヌクレオチドを受け入れるのに丁度十分である。
ナノポアは、合成素材から作製するか(固体ナノポア)あるいはタンパク質またはタンパク質錯体(タンパク質ナノポア)から得ることが可能である。
第一の実施形態においては、ナノポアは固体ナノポアである。本明細書で使用される「固体(solid-state)」とは、生物由来でない素材のものを指す。生物由来とは、生体または細胞あるいは生物学的に入手可能な構造体を合成的に製造したもののような生物学的環境に由来するかまたはそれから単離されていることを意味する。固体は、有機および無機両方の素材を包含しており、マイクロエレクトロニクス素材、Si、Al、およびSiOのような絶縁素材、ポリアミドのような有機および無機のポリマー、テフロン(登録商標)(Teflon(R))のようなプラスチック、または2−成分付加硬化型シリコーンゴムおよびガラスのようなエラストマーが挙げられるが、これに限定されず、本発明にによれば使用してもよい素材に特段の制限はない。より好ましくは、固体は、窒化ケイ素、酸化ケイ素、炭化ケイ素、雲母、ポリイミド(PI)、脂質、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリ(ビニリデンフルオライド)(PVDF)およびグラフェンのような素材を含む。
本発明による「固体ナノポア」とは、従って例えば窒化ケイ素、酸化ケイ素、雲母、ポリイミド(PI)、脂質、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリ(ビニリデンフルオライド)(PVDF)およびグラフェンを含むが、これに限定されず、あらゆる適切な素材で作製されたナノポアである。固体ナノポアは、一本鎖のポリヌクレオチドのみがナノポア開口部を所定時間通過するように寸法をあわせることが可能なため、特に有利である。固体ナノポアは、当技術分野で周知である(Wanunu and Meller, Nano Lett, 7(6):1580-1585, 2007; WO 00/78668; WO 2009/020682)。本明細書において詳細に述べる必要はない。
別の実施形態において、本発明のナノポアは、タンパク質ポアである。好ましくは、本発明におけるナノポアは、膜透過タンパク質ポアである。膜透過タンパク質ポアは、水和イオンが膜の一方から膜の他方へ流動するのを許容するポリペプチドまたはポリペプチドの集合である。本発明において、膜透過タンパク質ポアは、印可された電位により誘導された水和イオンが、膜の一方から他方へ流動するのを許容するポアを形成することが可能である。膜透過タンパク質ポアは、好ましくは、ヌクレオチドのような分析物を、脂質二重層のような膜の一方から他方へ流動させる。膜透過タンパク質ポアは、DNAまたはRNAのようなポリヌクレオチドによるポアを介する移動を可能とする。
膜透過タンパク質ポアは、単一分子ポリヌクレオチド分析にいくつかの利点を与える。第一に、細胞は、未だに半導体産業によって複製できない原子レベルの精密さで生物学的ナノポアを多数生成することが可能である。第二に、X線結晶学により、ナノポア構造体に関する情報は、オングストロームの長さの基準で提供されている。第三に、ナノポアの物理的および化学的特性をあわせる(tailor)ため、構築された遺伝子技術(とりわけ部位特異的突然変異誘発)を使用することが可能である。そして第四に、サイズおよび組成物の観点から生物学的ナノポアの間で顕著な不均質が観察されている。
膜透過タンパク質ポアは、モノマーまたはオリゴマーであってよい。ポアは、好ましくは、6、7または8サブユニットのように、いくつかの繰り返しサブユニットで構成されてよい。ポアは、より好ましくは、七量体または八量体のポアでる。
膜透過タンパク質ポアは、典型的にはイオンが通過することが可能なバレルまたはチャンネルを含む。ポアのサブユニットは、典型的には中央軸を囲み、膜透過β−のバレルまたはチャンネルあるいは膜透過α−へリックスの束またはチャンネルに対して鎖を付与する。
膜透過タンパク質ポアのバレルまたはチャンネルは、典型的にヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは核酸のような分析物との相互作用を促進するアミノ酸を含む。これらのアミノ酸は、好ましくは、バレルまたはチャンネルの狭窄部付近に位置する。膜透過タンパク質ポアは、典型的には、アルギニン、リシンまたはヒスチジンのような1つ以上の正に帯電したアミノ酸あるいはチロシンまたはトリプトファンのような芳香族アミノ酸を含む。これらのアミノ酸は、典型的には、ポアと、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは核酸との間の相互作用を促進する。本発明に従い使用される膜透過タンパク質ポアは、β−バレルポアまたはα−へリックス束ポアに由来してよく、β−バレルポアは、β鎖から形成されたバレルまたはチャンネルを含む。好適なβ−バレルポアには、特に限定されないが、α−溶血素、炭疽トキシンおよび白血球毒のようなβ−トキシン、ならびにマイコバクテリアスメグマ(Mycobacterium smegmatis)ポリン(Msp)、例としてMspA、外膜ポリンF(OmpF)、外膜ポリンG(OmpG)、外膜ホスホリパーゼAおよびナイセリア自己輸送体脂質タンパク質(NalP)のような細菌のタンパク質/ポリン外膜が含まれる。α−へリックス束ポアには、α−へリックスから形成されるバレルまたはチャンネルが含まれる。好適なα−へリックス束ポアには、特に限定されないが、WZAおよびClyAトキシンのような内膜タンパク質および外膜タンパク質が含まれる。好ましくは、膜透過タンパク質ポアは、Msp またはα−溶血素(α−HL)に由来してもよい (例えば: Akeson et al., Biophys. J, 77: 3227-3233, 1999; Meller et al., Proc Nat Acad Sci, 97: 1079-1084, 2000; Braha et al. Nat. Biotech, 18(9): 1005-1007, 2000; Meller et al., Phys. Rev. Lett, 86: 3435-3438, 2001; Meller et al., Electrophoresis, 23: 2583-2591, 2002; Bates et al., Biophys. J, 84: 2366-2372,2003; Zwolak et al., Rev Mod Phys, 80: 141-165, 2007を参照)。さらに一層好ましくは、膜透過タンパク質ポアは、異なるDNA塩基間の差別化を可能とする。この点について、Butlerら記載(Proc Natl Acad Sci USA, 105: 20647-20652, 2008)の、MpsAタンパク質の変異体を使用することが特に有利である。
ナノポアが電気的に絶縁の膜内に存在している際、それは単一分子検出器として使用することが可能である。よって、好ましい実施形態においては、本発明によるナノポアは膜に結合している。
本発明による「膜」とは、2つの区画を分断し、イオンや他の分子による区画間の自由な拡散を防ぐ薄いフィルムである。
本発明によれば、あらゆる膜を使用することが可能である。好適な膜は、当技術分野で周知であり、中でも両親媒性層および固体層を含む。第一の実施形態において、前記膜は固体膜である。つまり層が固体素材から調製され、そこで1以上の開口部が形成されている。膜は、支持基質上のコーティングもしくはフィルムのような層であってもよく、独立要素であってよい。あるいは、サンドイッチ構造のさまざまな素材による複合材であってよい。膜の厚さは異なっていてよく、特に、膜は、開口部を含んだ領域において他と比較して大幅に薄くなっていてよい。膜が支持基質上に配置される層である場合の実施形態において、支持基質は、適切に配置された隙間を含み、そのため開口部を含む膜の部分が隙間を広げる。
固体膜が、固体ナノポアに有利に結合されることは、当業者にとって直ちに明らかである。確かに、集束電子またはイオンビームのような方法により、固体ナノポアは、前記に記載された固体膜内でルーチン的に生成される (Dekker, Nature Nanotech, 2: 209-215, 2007; Kocer et al., Biosens Bioelectron, 38(1):1-10, 2012)。
別の実施形態において、本発明の膜は両親媒性層である。両親媒性層は、両親媒性分子により形成されている。つまり分子が、親水性および親油性の両方の特性を有している。 かかる両親媒性分子は、リン脂質のような天然のものかまたは合成のどちらであってもよい。合成の両親媒性分子の例としては、ポリ(n−ブチルメタクリレートホスホリルコリン)、ポリ(エステルアミド)−ホスホリルコリン、ポリアクチド−ホスホリルコリン、ポリエチレングリコール−ポリ(カプロラクトン)−ジ−または−トリ−ブロック、ポリエチレングリコール−ポリラクチド−ジ−または−トリ−ブロックおよびポリエチレングリコール−ポリ(ラクチド−グリコリド)ジ−または−トリ−ブロックのような分子が挙げられる。好ましくは、両親媒性層は、脂質二重層である。脂質二重層は、細胞膜の原型であり、実験目的で広く使用されてきた。例えば、脂質二重層は、イオンチャンネルの特性を研究するために使用されてきた (Heimburg, Biophys Chem, 150(1-3): 2-22, 2010)。 かかる脂質二重層は、人工または細胞由来のどちらであってもよい。
よって、本発明の方法は、(i)脂質二重層のようなポアを含む人工膜、(ii)単離された、ポアを含む天然の脂質二重層、または(iii)ポアが挿入された細胞を使用することで実行することが可能である。方法は、好ましくは脂質二重層のような人工二重層を使用して実行される。脂質二重層の形成方法は、当技術分野で周知である(例えば Montal & Mueller, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69(12): 3561-3566, 1972; WO 01/070419; WO 2006/110350; WO 2006/100484; WO 2008/102121; WO 2009/077734; Phung et al., Biosens Bioelectron, 26(7):3127-3135, 2011; Hirano-Iwata et al., Anal Sci., 28(11): 1049-1057, 2012を参照のこと)。
本発明の配列決定方法は、ポアが膜内に存在しているかまたは挿入されている膜/ポアシステムを研究するのに好適な、いずれの装置を使用して実行してもよい。当該方法は、ナノポア感知に好適なあらゆる装置を使用して実行可能である。例えば、装置は、水溶液および仕切りを備えたチャンバを含み、仕切りはチャンバを2つのリザーバーに分断する。仕切りは、開口部を有していて、ここでポアを含んだ膜が形成される。ポリヌクレオチドは、チャンバの2つのリザーバーのどちらに存在してもよい。
2つのリザーバー間に一定の直流電圧を印加すると、結果として測定される基準のイオン流がもたらされる。ポリヌクレオチドがリザーバーに導入された場合、電解溶液とポリヌクレオチドとの伝導率の差により、流体のチャンネルを通過して観察される電流を変化させるかもしれない。電流の変化の大きさは、ポリヌクレオチドが流体のチャンネル内に存在している間に置換する電解質の量による。電流の変化の持続時間は、ポリヌクレオチドがナノポア狭窄部を通過するのにかかる時間に関係する。ナノポアを介するDNAの移動の場合、物理的な移動は、印加された直流電圧により発生する電気泳動の力で誘導することができる。
本発明の方法は、ポアに対して標的ポリヌクレオチドが移動する際にポアに流れる電流を測定することを含む。従って、装置には、電位を印可しかつ膜およびポアを横切る電気的信号を測定することが可能な電気的回路も含まれる。方法は、パッチクランプまたは電圧クランプを使用して実行可能である。方法は、好ましくは、電圧クランプの使用を含む。
ナノポアの感知は、ナノポアを通過するイオンに依存している。伝導性電解質で満たされた2つのチャンバを分断している絶縁膜内でナノポアが形成される場合、イオンのような荷電した分子は、印加された電気的電位の下ポアを介して誘導されてよく(電気泳動として知られる方法)、それによりナノポアを通過するイオン流が変調する。ポリヌクレオチドおよびポアの相互作用がある間、ポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチドに特有の態様により、ポアを介して流れる電流に影響を与える。この電流が、分子の構造および力学的な動きについての有用な情報を明らかにする。
よって、好ましい実施形態において、ポリヌクレオチド検出装置は、前述のナノポアであって所望により膜へ結合しているもの、ナノポアを通過した試料を収容するリザーバー、および標的ポリヌクレオチドを試料内で動かすためのナノポアに至る電場を形成する電力供給を含んでよい。換言すれば、所望により膜に結合している本発明によるナノポアは、ポリヌクレオチドに特化した検出器の一部である。前記検出器は、ポリヌクレオチドの存在、不在または特徴に応じた、読み取り可能な信号を提供する構造体である。
好ましい実施形態において、検出器は、電気的手段を用いてポリヌクレオチドを検出する。この点に関して、有利には、本発明の方法は、電極に隣接または近接して配置された膜内に、少なくとも1つのナノポアを提供することを含む。電極は、ナノポアを通過する電流の検出に適用可能である。方法は、ポリヌクレオチドまたはその一部をナノポアへ導入し、そしてナノポアおよび/または膜を通じて印可された電圧を変位することをさらに含むことが可能である。ある実施形態においては、方法は、ポリヌクレオチドの存在、不在または特徴を検出するため、複数の電圧における電流を測定することを含む。ある実施形態においては、複数の電圧の電流は、電気信号を含み、そして複数の参照電気信号と電気信号とを比較してポリヌクレオチドの特徴を同定することさらに含む。
ナノポアは、集積回路のような、感知回路における感知電極に隣接して配置された膜の中に形成またはさもなければ埋め込み可能である。集積回路は、特定用途向け集積回路(ASIC)であってよい。ある実施例においては、集積回路は、電界効果トランジスタまたは相補性金属酸化膜半導体(CMOS)である。感知回路は、チップまたはナノポアを有する他の装置の中に配置してもよく、またはオフチップコンフィギュレーションのようにチップまたは装置に外付け配置が可能である。半導体は、あらゆる半導体であってよく、特に限定されないが、グループIV(例えば、ケイ素)およびグループIII〜Vの半導体(例えば、ガリウムヒ素)を含む。本発明で使用される手段を実行するのに十分なほど高感度であり、かつコンピュータによる取り込み率および記憶容量が配列データ蓄積の素早いペースに適した、様々な電子装置が利用可能である。
本発明の方法は、典型的には、バッファの存在のもと実行される。上記装置において、バッファは、チャンバ内の水溶液に存在する。本発明の方法では、あらゆるバッファの使用が可能である。一つの好適なバッファは、Tris−HClバッファである。方法は、典型的にpHが4.0〜12.0、4.5〜10.0、5.0〜9.0、5.5〜8.8、6.0〜8.7または7.0〜8.8または7.5〜8.5の値で実行される。好ましくは、使用されるpHは、約7.5である。
本発明の方法は、典型的には、0°C〜100°C、15°C〜95°C,16°C〜90°C、17°C〜85°C、18°C 〜80°C、19°C〜70°C、または20°C〜60°Cで実行される。方法は、室温で実行可能である。方法は、好ましくは約37°Cのような、酵素機能を保持する温度で実行される。
本発明の実施においては、特段の記載がない限り、通常技術または当技術の範囲におけるタンパク質化学、分子ウィルス学、微生物学、組換DNA技術、および薬理学を採用する。かかる技術は、文献において十分に説明されている。(Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Eds., John Wiley & Sons, Inc. New York, 1995; Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985; and Sambrook et al., Molecular cloning: A laboratory manual 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press - Cold Spring Harbor, NY, USA, 1989を参照のこと)。
以下の実施例によれば、本発明の他の特徴および利点を見出すことができるであろう。
Cherfら(Nat. Biotechnol., 30(4): 344-348, 2012)の記載に従ったナノポアによるDNA鎖の捕捉およびポリメラーゼの開始の同調原理 (i)分子の捕捉を待つナノポア。(ii)分子テンプレートが5’末端よりナノポアを通され、結合ポリメラーゼ、保護オリゴヌクレオチド(オレンジ色)および保護オリゴヌクレオチド後にハイブリダイズされるプライマーを伴う。保護オリゴヌクレオチドは、テンプレートにハイブリダイズされていないフラップを有する。(iii)保護ポリヌクレオチドを解離しかつポリメラーゼをそのプライマーと共に定位置に誘導する、強い順方向電圧が印加される。これが起こるにつれ、テンプレートがナノポア内を前進し、ナノポア感知部分のテンプレート脱塩基部位(青色箇所)の通過により検出が可能である。(v)ポリメラーゼが、そのプライマーを延伸し始めるにつれ、テンプレートはその時点でポリメラーゼのペースでナノポアから引き出される。(vi)最後に脱塩基部位がポリメラーゼに到達すると延伸は停止する。 複製ポリメラーゼとナノポアのカップリング 1)ナノポアの上側で、フォークアダプタつきで調製されたDNA分子を、複製ポリメラーゼおよびdNTPsと併せて溶液内に収容する。ポリメラーゼは、プライマー上に配置しても配置しなくてもよい。もし配置した場合、延伸は、置換される必要があるラギング鎖により直ちに失速する。よって、ポリメラーゼは、この基質を溶液内で延伸させることができない。2)フォークの5’アームは、実質的誘導電圧Vcaptureを有するナノポアにより捕捉される。捕捉が検出されるに従い、電圧は中間値Vholdに下げられ、分子を解離するのに十分でない緩やかな力を鎖に加える。3)ある時点でポリメラーゼがプライマー上に配置され、ナノポアがDNAを開裂させるのを補助するため、ポリメラーゼは延伸モードに切り替わり、ラギング鎖がナノポアから引き出される。4)しばらくの後またはポリメラーゼが脱塩基部位により停止した後、誘導電圧は非常に低下し、ポリメラーゼはエキソヌクレアーゼモードに切り替わる。ポリメラーゼは、ナノポア(naopore)内へラギング鎖を引き戻し、ポリメラーゼが、二本の鎖がもはや相補した状態でないフォークの原点に到着するまで後ろ向きに移動する。段階3)および4)は、高い誘導電圧Vejectを印加することにより分子が除去できるまで、サイクルとして数回繰り返すことが可能である。 巻き戻しヘリカーゼ、例えばUvsWまたはRecG、とナノポアのカップリング 1)フォークを一つの末端に有するdsDNA基質は開始分子を提供し、それは二本鎖の間に架橋連結を有するdsDNAの一部に結合している。このアダプタは、ナノポア内へ進入するのを防ぐためのヘアピンであってもよい。UvsWまたはRecG共にこの基質に対して影響を及ぼさない。2)ナノポアが一つのアームを捕捉すると、3)誘導電圧は、ナノポアが2つの鎖を結合する架橋に当たるまで、dsDNA分子を完全に開裂させる程に強い値に設定される。4)この段階では、UvsW(またはrecG)ヘリカーゼはdsDNA基質上に配置されるまで、分子がナノポア内に留まる。これが起きると、酵素は、ナノポアからssDNAを押し出しているdsDNAのリアニールを開始する。5)それは非常に前進的な方法でフォークの原点に到達するまで行われる。ヘリカーゼがナノポアからDNAを切り離すかまたは完全に解離させるかは、アーム長さによる。 実験例で使用された組立物
実験例
細胞:細胞は、U字型のチューブで接続された2つの区画(シスおよびトランス区画とよばれる)から構成される。このチューブは、直径10〜30ミクロンの孔により、一端(シス側)で終わっていて、この上に脂質二重層が形成される。この手製の細胞は、テフロン製である。チャンバとチューブは、バッファ溶液:通常pH8.5においてKCl 1MおよびTris−HCl 10mMまたはpH7.5においてHEPES 5mMで満たされている。しかし酵素が良く処理できるように、それは、pH7.5においてKOAc 300〜600mM、Mg(OAc)10mMおよびTrisOAc 25mMを使用するよう適用される。AgCl電極は、直接KClバッファの中に差し込まれるか、または寒天ブリッジを用いたアセテートバッファに接続されたKCl溶液1M自自体中に差し込まれる。一方(シス側)の電極は、基質に接続される。他方(トランス側)は、印加された電位に接続される。
細胞がバッファで満たされると、2つのチャンバ間の電気的接続を確認した後に、脂質二重層は、10〜30ミクロンの孔の上に配置される。使用される脂質は、最も一般的には、ジフィタノイルフォスファチジコリン(Avanti Lipidsから)である。二重層は、その容量(10−ミクロン孔に対して約10pF)およびその抵抗力(ギガシールを得るのに1GOhm)を測定して確認される。その後、トキシンモノマー(例えばα−溶血素)が最終濃度約10pg/mlでシス側に付加される。単一タンパク質ポアが二重層に挿入される際、トキシンの注入は、(室温で)100pAのイオン電流を発生させる+100mVの電圧を印加することにより観察される。トキシンが注入されると直ちに、さらなる進入および挿入されたナノポアの電流電圧特性の計測を防ぐため、シスチャンバはバッファの循環により洗浄される(チャンバの容量の10倍)。トキシンは、その電流の約20%の修正を有するべきであり、つまり、後ろ向きのバイアスを有する電流は、前向きのバイアスを有するものより20%小さいということである。それはまた、本実験において使用される、あらゆる電圧において安定的であるべきである。トキシンが十分でなければ、脂質膜は再形成され、トキシンはシスチャンバに再度付加される。使用可能なトキシンが注入されると、システムは加熱されるか冷却され、上記のテフロン細胞を保持している銅ブロックにはめ込まれたペルチェ効果モジュールを使用して望ましい温度に設定される。ペルチェ効果モジュールは、Newport(model 3040)温度制御装置を経由して制御される。
イオン電流は測定され、パッチクランプ用アンプ(典型的にはAxopatch 200B,Axon Instrument,分子装置)を使用して、バイアス電圧が印加される。増幅され変換されたイオン電流は、次に、DAQカードおよびLabViewで書かれた手製のプログラムの使用によりデジタル化(1 Msamples/s)および記録する前に、100kHzのローパスフィルタ(Khron Hite 3361)を使用してフィルタされる。
分子または分子集合体は、細胞のシス側へ加えられる。正電圧を印加することでDNA分子がトランス側に向かって引き動かされる。分子がナノポアに導入されるたびに、イオン電流を遮断する。この急激なポアの抵抗の発生は、その後配列に対する力の印加のトリガーとして使用される。この地点から適宜開始されることにより、酵素による推進を開始させるには小さすぎるもののポア内にDNA分子を保持する力、または、ポア内で一定の速度でDNAを移動させることにより塩基の配列を推定するための電流を読み取る酵素の推進を開始させるほど高い力を印加することが可能である。

Claims (20)

  1. ポリヌクレオチドを配列決定する方法であって、
    a)前記ポリヌクレオチドと、ナノポアおよび核酸結合酵素とを接触させ、
    b)前記ポア内に前記ポリヌクレオチドを導入し、前記酵素の活性の活性化を生じ、
    c)前記ポアに対して前記ポリヌクレオチドを移動させ、ここで、前記ポリヌクレオチドの移動は、前記酵素の活性により制御されており、
    d)前記ポアに対する前記ポリヌクレオチドの移動に関連した信号をモニタリングし、それにより前記ポリヌクレオチドの配列を発生させ、
    e)前記酵素の活性を停止させ、かつ
    f)a)からe)の工程を繰り返すこと
    を含んでなる、方法。
  2. 前記ポリヌクレオチドが二本鎖核酸である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ポリヌクレオチドの一つの末端がヘアピンに連結している、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記ポリヌクレオチドが脱塩基部位またはLNA塩基を含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記ポリヌクレオチドが前記ポアを介して移動する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 工程b)が前記ポアに電圧を印加することをさらに含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記酵素が分子モーターである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記分子モーターが、複製ヘリカーゼであり、特にはgrp41、または複製ポリメラーゼであり、特にはT4 DNAポリメラーゼまたはT7 DNAポリメラーゼである、請求項7に記載の方法。
  9. 工程c)における前記ポリヌクレオチドの移動が、前記ポリヌクレオチドの開裂を生じる、請求項8に記載の方法。
  10. 酵素の活性の停止が、前記ポリヌクレオチドの巻き戻しを生じる、請求項9に記載の方法。
  11. 前記分子モーターが、巻き戻しヘリカーゼであり、特にはUvsWまたはRecGである、請求項8に記載の方法。
  12. 工程c)における前記ポリヌクレオチドの移動が、前記ポリヌクレオチドの開裂を生じる、請求項11に記載の方法。
  13. 酵素の活性の停止が、ポリヌクレオチドの巻き戻しを生じる、請求項12に記載の方法。
  14. ポリヌクレオチドが二本鎖間の架橋を含んでなる、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記ポアがタンパク質ポアまたは固体ポアである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記タンパク質ポアがMspまたはα−溶血素(α−HL)に由来する、請求項15に記載の方法。
  17. 前記ポアが膜に結合している、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記膜が両親媒性層または固体層である、請求項17に記載の方法。
  19. 前記膜が脂質二重層である、請求項18に記載の方法。
  20. 前記信号がポアを通過する電流である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
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