本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
<A.装置構成>
次に、本実施の形態に従う画像読取装置および画像読取装置を含む画像形成装置の装置構成について説明する。以下では、典型例として、画像読取装置を含む複合機(MFP:Multi-Functional Peripheral)として実装される画像形成装置1について説明する。特にこれに限定されることなく、画像読取装置を含む複写機またはファクシミリとして実装してもよいし、画像読取装置を単一の装置として実装してもよい。
(a1:画像形成装置)
図1は、本実施の形態に従う画像読取装置を含む画像形成装置の外観構成例を示す模式図である。図1を参照して、本実施の形態に従う画像形成装置1は、コピー機能、スキャナ機能、プリンター機能、ファックス機能といった複数の機能を有しており、LAN(Local Area Network)や電話回線などのネットワークを介してのデータを送受信できる。すなわち、画像形成装置1は、スキャナ機能またはコピー機能として、読取対象から読み取った画像情報(画像データ)をネットワーク経由で他のコンピュータに出力することができ、プリンター機能またはファックス機能として、ネットワーク経由で他のコンピュータから画像情報(画像データ)を取得し、当該画像データに基づく印刷、または、FAXの送信ができる。
画像読取装置を画像形成装置に実装した場合において、画像形成装置の画像形成部(プリントエンジン)については、どのような方式を採用してもよい。例えば、電子写真方式(モノクロ方式またはカラー方式)、インクジェット方式、感熱方式、熱転写方式などが挙げられる。図1には、典型例として、電子写真方式を採用した画像形成装置1を示す。
画像形成装置1は、画像形成部5と、画像形成部5の下部に配置された給紙部6と、画像形成部5の上部に配置された画像読取装置4とからなる。
画像読取装置4は、読取対象から画像情報を読み取って画像データなどを出力するものであり、主として、読取本体部2および自動原稿搬送部3からなる。ユーザは、1枚の原稿を読取本体部2に直接配置して画像情報を読み取らせることもでき、あるいは、1または複数枚の原稿を自動原稿搬送部3に配置して画像情報を連続的に読み取らせることもできる。この連続読取動作において、読取本体部2と自動原稿搬送部3とは同期して作動することで、自動原稿搬送部3に配置された原稿を1枚ずつから読取本体部2に向けて搬送し、読取本体部2は原稿が所定の位置を通過する際に画像情報を読み取って、画像データを生成する。
給紙部6は、記録媒体である紙を収容するとともに、画像形成部5での画像形成動作に対応させて、収納している記録媒体を1枚ずつ画像形成部5に供給する。
画像形成部5は、画像読取装置4により読み取られた画像データ、ネットワーク経由で取得した画像データ、直接入力された画像データなどに基づいて、給紙部6から供給される記録媒体上に画像を形成する。このように、画像形成部5は、任意の画像データを記録媒体上に印刷する。一つの典型例として、画像形成部5は、画像読取装置4により読み取られた画像情報に基づいて画像を形成する。画像形成部5により画像が形成された記録媒体は、画像形成部5と読取本体部2との間にある排紙部7に出力される。
画像形成装置1の正面側(ユーザが操作する側)には、複数のキーまたはボタンを有する操作パネル8が設けられている。操作パネル8は、ユーザからの操作指示などを受け付け、その受付けた操作指示を画像形成部5などへ出力する。
(a2:画像読取装置)
次に、図1に示す画像読取装置4の装置構成について、より詳細に説明する。図2は、本実施の形態に従う画像読取装置4の断面構成例を示す模式図である。
図2に示す画像読取装置4の構成例では、原稿の両面から画像情報を読み取ることができる。具体的には、自動原稿搬送部3は、1または複数枚の原稿70が配置される給紙トレイ31を有している。給紙トレイ31に配置された原稿70は、ピックアップローラ32および給紙ローラー対33にて、最上層のものから1枚ずつ原稿搬送路30に送り出される。原稿搬送路30において、原稿70は、中間ローラー対34によりレジストローラ対35まで搬送される。レジストローラ対35は、斜行補正ローラーとして機能し、搬送された原稿70を本来の姿勢に補正するとともに、原稿70を所定のタイミングで第1搬送ローラー対36に向けて送り出す。原稿70は、第1搬送ローラー対36によって、読取本体部2の搬送読取面であるスリットガラス21上に送り出されるとともに、読取ローラー42によって、スリットガラス21上を通過する。
原稿70がスリットガラス21上を通過する際に、スリットガラス21の下方に位置する第1読取部22が、原稿70における下向きの面(表面)の画像情報を読み取る。
原稿搬送路30のスリットガラス21より搬送下流側には、第2搬送ローラー対37と、第2読取部38と、第3搬送ローラー対39と、排紙ローラー40とが配置されている。スリットガラス21上を通過した原稿70は、第2搬送ローラー対37により第2読取部38の直下まで送り出される。原稿70が第2読取部38の直下を通過する際に、原稿70における上向きの面(裏面)の画像情報を読み取る。
第2読取部38の直下を通過した原稿70は、第3搬送ローラー対39および排紙ローラー40により、排紙トレイ41上に排出される。
読取本体部2の上面には、スリットガラス21とプラテンガラス23とが設けられている。第1読取部22は、読取本体部2の内部に配置される。第1読取部22は、スリットガラス21上を通過する原稿70の表面の画像情報、および/または、プラテンガラス23上に配置された原稿70の画像情報の読み取りに用いられる。スリットガラス21上を通過する原稿70の画像情報を読み取る際には、走査ユニット24および走行ユニット25は固定した状態に置かれる。一方、プラテンガラス23上に配置された原稿70の画像情報を読み取る際には、走査ユニット24および走行ユニット25が副走査方向Yに移動することで、第1読取部22が読み取る範囲を順次変更する。
走査ユニット24および走行ユニット25は、読取本体部2内に配置された一対の支持レール46に支持されており、図示しないアクチュエータの動力によってスライド移動する。
第2読取部38は、自動原稿搬送部3内に固定的に配置される。第2読取部38は、読取ローラー43によって搬送される原稿70の裏面の画像情報を読み取る。読取ローラー43は、原稿70を搬送する機能の他、シェーディング補正用の白色基準体としての機能も兼ねている。
第1読取部22および第2読取部38は、原稿の読取対象の面に向けて光を照射するための光源と、読取対象で生じた反射光を受光するためのラインセンサーとを含む。ラインセンサーは、主走査方向に沿って並ぶ複数の光電変換素子からなり、入射した反射光の輝度(光の強度)に応じた出力値を出力する。すなわち、ラインセンサーは、読取対象で生じた光学的な反射像を電気的な画像信号に変換して出力する。
本実施の形態に従う画像読取装置4においては、第1読取部22および第2読取部38の少なくとも一方のラインセンサーとしてCISが用いられる。特に、第1読取部22および/または第2読取部38は、1ラインCIS読取方式が採用される。
なお、第1読取部22および第2読取部38の両方に1ラインCIS読取方式を採用する必要はなく、一方のみに1ラインCIS読取方式を採用するようにしてもよいし、あるいは、画像読取装置4には、第1読取部22および第2読取部38の一方のみを採用するようにしてもよい。
<B.新たに発見した課題>
次に、1ラインCIS読取方式の関連する構成例について説明するとともに、関連構成例における新たに発見した課題について説明する。以下の説明においては、図2に示す第1読取部22および第2読取部38を「読取部22」と総称することもある。
(b1:関連構成例)
図3は、関連技術に従う1ラインCIS読取方式の構成例を示す模式図である。1ラインCIS読取方式の読取部22#は、読取対象に対して、異なる波長特性を有する光を順次切り換えて照射するとともに、読取対象から生じる反射像を共通の受光素子(光電変換素子)で順次検出した結果を合成することで、画像情報を生成する。
より具体的には、図3に示す関連技術に係る読取部22#は、読取対象の対象面に対して照射するための光を発生する発光部220#と、発光部220#から発生した光を一様化して読取対象へ照射するための導光体222と、ラインセンサー226と、読取対象からの反射像をラインセンサー226上の検出面に結像させる結像レンズ224とを含む。
発光部220#は、読取対象へ照射する赤色、緑色、青色の各色の光を生成するための発光手段である。発光部220#は、赤色波長成分を含む光を発生する赤色光源(以下、「R光源」とも称す。)220Rと、緑色波長成分を含む光を発生する緑色光源(以下、「G光源」とも称す。)220Gと、青色波長成分を含む光を発生する青色光源(以下、「B光源」とも称す。)220Bとを含む。
導光体222は、発光部220#と一体的に配置または近接した位置に配置され、発光部220#から発生した光を空間的に平滑化(均一化)するとともに、発光部220#からの光を読取対象の方向に方向付ける。
ラインセンサー226は、主走査方向に沿って複数の光電変換素子を配置したCISが用いられる。ラインセンサー226は、モノクロセンサーがライン状に配置された一種のセンサー群であり、各光電変換素子は、各光電変換素子に入射した像の輝度(明るさ/光の強度)に応じた大きさの信号を出力する。
結像レンズ224は、ラインセンサー226の焦点距離を短縮化するための結像光学系であり、例えば、主走査方向に沿って複数の屈折率分布型レンズを配置したSLA(Selfoc Lens Array)を用いることができる。SLAは、ラインセンサー226上に、全体として1つの連続した像を形成できる結像光学系である。
図3に示す読取部22#では、単一のラインセンサー226(モノクロセンサーのアレイ)を用いて、発光部220#から照射する光源を順次切り替えることで、読取対象からの反射像に含まれる複数の波長成分を時間的に分離する。すなわち、発光部220#に含まれる、R光源220R、G光源220G、B光源220Bを順次切り替えて発光させることで、R、G、Bの色ごとのラインデータを順次取得する。このラインデータの取得に際して、波長分離を行なう機構は存在しないため、各ラインデータを取得したときに発光していた光源からの光と同じ波長の光を受光していたものとみなして、波長成分を時間的に分離する。
ラインセンサー226から出力される電気信号は、図示しない画像処理部へ与えられて、アナログ信号処理、A/D(Analog to Digital)変換、シェーディング補正、画像圧縮処理などを経て、デジタル化した画像データとして出力される。この画像データを出力するための処理において、色ごとのラインデータに対して、対応する光源の波長特性が乗じられることで、反射像のスペクトルおよび反射像のカラーの画像情報を再生できる。
(b2:新たに発見した課題)
次に、図3に示すような1ラインCIS読取方式の読取部を用いて画像情報を読み取る場合に生じ得る、本願発明者らが発見した色再現性に関する新たな課題について説明する。
図3に示すような1ラインCIS読取方式の読取部を用いて原稿の画像情報を読み取る場合、原稿内に蛍光色素により描画されている領域があると、読み取られた画像情報において、当該領域の色が本来の色に比較して薄くなり、消えてしまうといった、1ラインCIS読取方式固有の課題があることを本願発明者は新たに発見した。例えば、一般に市販されている蛍光ペンなどでマークされた原稿などには、蛍光色素による描画の領域が含まれることになり、このような原稿から読み取られた画像データにおいて、対象領域の色が薄くなり、あるいは、消えて見えなくなる場合がある。
このような現象は、蛍光の性質と1ラインCIS読取方式の原理との組合せに起因するものである。以下、このような現象が生じる理由について説明する。図4は、蛍光色素による描画部分から生じる反射光の波長特性を説明するための模式図である。図5は、蛍光色素による描画部分を含む読取対象を1ラインCIS読取方式および3ラインCIS読取方式でそれぞれ読み取る場合の処理を説明するための図である。
一般的に、蛍光色素は、各色素に特有な固有波長または固有波長域の成分を吸収して、当該吸収した波長よりも短い波長の光(蛍光)を発生する。例えば、可視光の中でも波長の長い赤色または黄色の蛍光を発する蛍光色素については、可視光の波長のより短い青色などの成分を吸収して、赤色または黄色を発光する。
図4には、蛍光ペンでなぞられた描画部分72を含む原稿70に対して、青色光を照射した場合の例を示す。この場合、描画部分72から生じる反射光には、黄色波長成分が主として含まれることになる。
図5(A)には、図4に示す原稿70を読取対象として、1ラインCIS読取方式の読取部22#を用いて画像情報を読み取る処理を示す。図4を参照して説明したように、B光源220Bを点灯すると、読取対象である原稿70からは、主として黄色波長成分を含む反射光が生じる。読取部22#のラインセンサー226にはカラーフィルターが装着されていないので、主として黄色波長成分を含む反射光が入射すると、その入射した反射光の輝度に応じた電気信号を、B光源220Bを照射したときの検出値(B信号)として出力する。しかしながら、ラインセンサー226に入射した反射光はおおよそ黄色光であるので、出力されるB信号は誤った検出結果になる。
すなわち、1ラインCIS読取方式の読取部22#は、反射光と蛍光とが混ざった光を色別に分離する機構(例えば、カラーフィルターなど)を有していないので、受光した光に含まれる蛍光成分を分離することができる、B光源220Bが点灯中のラインセンサー226からの出力であることから、青色光の反射光と誤って判断してしまう。
この結果、本来得られるべき黄色の描画については、蛍光色素に吸収されるべき青色光を照射した際の出力が蛍光色素により過剰に発現するため、結果的に、色ごとの画像信号の合計出力値としては、輝度が本来の値より大きい、すなわち白に近い薄い色として再現され、あるいは、算出される輝度が大きすぎて消えてしまうといった事態が生じ得る。
比較例として、図5(B)には、同様の読取対象を3ラインCIS読取方式の読取部22##を用いて画像情報を読み取る処理を示す。3ラインCIS読取方式の読取部22##では、波長範囲が比較的広い白色光を発生する白色光源(以下、「W光源」とも称す。)220Wを用いるとともに、モノクロのラインセンサー226に代えて、結像レンズ224R,224G,224Bおよびラインセンサー226R,226G,226Bが配置される。ラインセンサー226R,226G,226Bには、カラーフィルター227R,227G,227Bが装着され、R、G、Bの色ごとに検出感度を有するようになっている。
このような3ラインCIS読取方式を採用した場合には、黄色波長成分を含む反射光が入射すると、赤色光に検出感度を有するラインセンサー226R、および、緑色光に検出感度を有するラインセンサー226Gから、それぞれ検出値(R信号およびG信号)が出力され、これらのR信号およびG信号から、蛍光色素を含む描画部分も基本的には正しく再現されることになる。
図6は、蛍光色素を含む描画部分を有する読取対象から1ラインCIS読取方式および3ラインCIS読取方式でそれぞれ読み取った画像情報の再現結果の一例を示す模式図である。図6(A)には、読取対象として、蛍光色素を含む描画部分72を有する原稿70に一例を示す。
図6(B)には、図5(A)に示すような1ラインCIS読取方式の読取部22#を用いて、図6(A)に示す原稿70から画像情報を読み取った結果の一例を示す。この再現された再現画像80においては、蛍光色素を含む描画部分72に対応する描画部分82が全体的に薄くなる。
これに対して、図6(C)には、図5(B)に示すような3ラインCIS読取方式の読取部22##を用いて、図6(A)に示す原稿70から画像情報を読み取った結果の一例を示す。この再現された再現画像90においては、蛍光色素を含む描画部分72に対応する描画部分92の色調が変化し得る場合もある。
3ラインCIS読取方式の読取部22##を用いた場合には、上述の特開平10−107970号公報(特許文献1)に開示されるような「蛍光色がコピー出力上で見た目よりくすんで見える」といった事態が生じ得る可能性はあるものの、1ラインCIS読取方式の読取部22#を用いた場合に生じる「蛍光色がコピー出力上で薄く、消えてしまう」といった課題が生じ得ない。すなわち、上述の特開平10−107970号公報(特許文献1)は、上述したような、本願発明者らが発見した色再現性に関する新たな課題について何ら示唆するものではなく、かつ、後述するような当該新たな課題に対する解決手段についても何ら示唆するものではない。
本実施の形態に従う1ラインCIS読取方式の読取部を含む画像読取装置は、上述したような新たな課題を考慮して、蛍光色素を含む描画部分の読取精度を向上させて、色再現性を高めることを目的とする。
なお、CCD読取方式、3ラインCIS読取方式、1ラインCIS読取方式のそれぞれのラインセンサーのユニットコストを比較すると、CCD読取方式、3ラインCIS読取方式、1ラインCIS読取方式の順で低くなる。すなわち、低コスト化を進めるにあたって、1ラインCIS読取方式に固有の課題を解決することが重要である。
<C.画像読取装置の構成>
次に、上述したような、本願発明者らが発見した色再現性に関する新たな課題を解決可能な画像読取装置の一例について説明する。
本実施の形態に従う画像読取装置4においては、上述したような新たな課題に対して、本来の色ごとの画像信号を取得するための光源(R光源、G光源、B光源)に加えて、主として、蛍光色素からの蛍光成分を発生させるための別の光源を配置するとともに、当該別の光源からの光照射によって発生した蛍光成分を検出および補正する処理を採用する。
より具体的には、1ラインCIS読取方式の画像読取装置において、通常の光源(R光源、G光源、B光源)に加えて、紫外領域波長の光を発生する光源と、読取対象からの反射光のうち紫外成分を遮断するカットフィルターとを追加的に配置する。そして、紫外光源からの光を読取対象に照射したときに検出される読取対象からの蛍光成分を用いて、色ごとの画像信号(各色での読取強度)を補正することで、蛍光色に対する色再現性および可読性を向上させる。
図7は、本実施の形態に従う画像読取装置4の読取部22の構成例を示す模式図である。図7を参照して、本実施の形態に従う画像読取装置4の読取部22は、1ラインCIS読取方式のラインセンサーを採用しており、読取対象に対して、異なる波長特性を有する光を順次切り換えて照射するとともに、読取対象から生じる反射像を共通の受光素子(光電変換素子)で順次検出した結果を合成することで、画像情報を生成する。
より具体的には、読取部22は、読取対象の対象面に対して照射するための光を発生する発光部220と、発光部220から発生した光を一様化して読取対象へ照射するための導光体222と、ラインセンサー226と、読取対象からの反射像をラインセンサー226上の検出面に結像させる結像レンズ224と、紫外成分を遮断するためのカットフィルター228とを含む。
発光部220は、読取対象へ照射する赤色、緑色、青色の各色の光を生成するための発光手段である。発光部220は、赤色光源(R光源)220Rと、緑色光源(G光源)220Gと、青色光源(B光源)220Bとに加えて、紫外成分を含む光を発生する紫外光源(以下、「UV光源」とも称す。)220UVとを含む。
導光体222は、発光部220と一体的に配置または近接した位置に配置され、発光部220から発生した光を空間的に平滑化(均一化)するとともに、発光部220からの光を読取対象の方向に方向付ける。導光体222は、発光部220により生成された光を読取対象へ導くための部材である。典型的には、導光体222は、アクリルなどの樹脂またはガラスなどの光学材料で構成される。
ラインセンサー226は、主走査方向に沿って複数の光電変換素子を配置したCISが用いられる。ラインセンサー226は、モノクロセンサーがライン状に配置された一種のセンサー群であり、各光電変換素子は、各光電変換素子に入射した像の輝度(明るさ/光の強度)に応じた大きさの電気信号を出力する。ラインセンサー226は、結像レンズ224によって結像された光学像を電位信号に変換する光電変換素子であり、読取対象への光照射により生じる反射像の各領域(各光電変換素子の受光面に相当)の輝度を示す値を出力する光電変換部に相当する。
なお、本発明に係る技術思想は、CISという名称に限られることなく、共通の光電変換部を用いて、読取対象からの反射像に含まれる複数の波長成分を時間的に分離する構成であれば、どのような構成に対しても適用可能である。
例えば、カラーフィルターが装着されていないCCDを用いてラインセンサー226を構成してもよい。また、ラインセンサー226の受光素子(光電変換素子)のアレイは、1列に限らず、複数列になるようにしてもよい。
ラインセンサー226から出力される電気信号は、後述する画像処理部へ与えられて、アナログ信号処理、A/D(Analog to Digital)変換、本実施の形態に従う補正処理(後述の蛍光補正処理)、シェーディング補正、画像圧縮処理などを経て、デジタル化した画像データとして出力される。この画像データを出力するための処理において、色ごとのラインデータに対して、対応する光源の波長特性が乗じられることで、反射像のスペクトルおよび反射像のカラーの画像情報を再生できる。
結像レンズ224は、ラインセンサー226の焦点距離を短縮化するための結像光学系であり、例えば、主走査方向に沿って複数の屈折率分布型レンズを配置したSLA(Selfoc Lens Array)を用いることができる。SLAは、ラインセンサー226上に、全体として1つの連続した像を形成できる結像光学系である。
カットフィルター228は、紫外成分を遮断する帯域通過フィルターあるいは帯域遮断フィルターであり、読取対象から光電変換部であるラインセンサー226までの光路上に配置される。これにより、紫外成分の光を発生する発光部220の光路上で、読取対象と光電変換素子の間の紫外成分を遮断する。図7に示す構成例においては、読取対象と結像レンズ224との間に配置されている例を示すが、結像レンズ224とラインセンサー226との間に配置されてもよい。
画像読取装置4は、発光部220の各光源をそれぞれ順次発光させたときの光電変換素子からの電位信号により、発光部220から照射される光の波長成分に対応した画像データを読み取ることになる。
図8は、図7に示す発光部220を構成する各光源および紫外域カットフィルターの波長特性(スペクトル)の一例を示す図である。図8を参照して、R光源220R、G光源220G、B光源220Bは、それぞれのピーク発光波長が赤色、緑色、青色に対応するような波長特性を有する光を発生する。
UV光源220UVは、紫外成分の光を生成するための発光手段であり、そのピーク発光波長が紫外域にある波長特性を有する光を発生する。UV光源220UVが発生する光は、紫外域の成分を含むものであればよく、それに加えて、可視域の成分を含むようなものであってもよい。すなわち、UV光源220UVが発生する光のスペクトルが紫外域から可視域を含むようなものであってもよい。但し、UV光源220UVが発生する光と、R光源220Rが発生する光との間は、波長域において重複しないようにすることが好ましい。すなわち、UV光源220UVからの光の波長は、R光源220Rからの光が有する波長とは互いに重複しないように設定されることが好ましい。なお、UV光源220UVからの光とR光源220Rからの光との間で重複する波長域が存在するとしても、その強度差が十分に大きければ、実質的な問題はない。
図8には、カットフィルター228の遮断特性を併せて記載する。カットフィルター228は、UV光源220UVからの光(紫外光)がラインセンサー226に直接入射することを防止する。UV光源220UVからの光は、読取対象から蛍光成分を発生させるために用いられるものであり、その発生した蛍光成分とUV光源220UVからの光とが混ざった状態でラインセンサー226に入射すると、蛍光成分の強度などを推定することができなくなる。そのため、カットフィルター228としては、UV光源220UVからの光の実質的にすべてを遮断できるような遮断特性を有するものが採用される。
但し、カットフィルター228は、UV光源220UVからの光を完全に遮断する必要はなく、透過後の光(紫外光)の強度をラインセンサー226の検出感度以下にできるものであれば、どのようなカットフィルター228を採用してもよい。
<D.読取結果および補正処理の概要>
次に、関連技術に従う1ラインCIS読取方式と比較しつつ、本実施の形態に従う画像読取装置での補正処理について説明する。
(d1:読取結果)
まず、図3に示す関連技術に係る読取部22#を用いて、原稿中の4種類の領域について画像読取を実際に行なった結果を以下に示す。
図9は、関連技術に係る読取部を用いた読取結果の一例を示す図である。図9に示す読取結果においては、(1)余白、(2)黒文字、(3)蛍光成分を含まない一般的な黄色インクによるマーク部分、(4)黄色蛍光インクによるマーク部分、について、それぞれラインセンサー226を構成する光電変換素子からの出力値を示す。
図9において、R光源220R、G光源220G、B光源220Bをそれぞれ1度だけ順次点灯させたときに、ある特定画素に対応する光電変換素子から出力されたそれぞれの出力値をS_R,S_G,S_Bとしている。なお、出力値は、0−255の範囲に規格化されているものとする。
また、「1ラインCIS(関連技術)の読取結果」の欄には、対応する出力値S_R,S_G,S_Bを合成することで最終的に出力される読取結果を示す。
図9に示すように、(1)余白、(2)黒文字、(3)蛍光成分を含まない一般的な黄色インクによるマーク部分については、いずれも、目視による色の見え方と、読み取られた色とが一致しており、関連技術に係る読取部22#を用いた場合も問題はない。
一方で、(4)黄色蛍光インクによるマーク部分については、目視による色の見え方と、読み取られた色とが一致していない。
一般的に、黄色蛍光インクは、黄色の蛍光を発する蛍光色素と、主に、青色の波長成分を吸収する黄色色素とを含んでおり、白色光(すなわち、赤色光、緑色光、青色光のすべてを含む光)が照射されると、目視では鮮やかな黄色に見えるものである。この目視での見え方を再現するためには、理想的には、S_R=S_G=255,S_B=0となるべきである。
しかしながら、図9においては、S_Bの値が、理想的な「0」を大きく超えて、「130」となっている。S_RおよびS_Gはいずれも「230」であり概ね妥当な値であるが、明らかに大きな値になっているS_Bを用いて色再現を行なうと、本来、鮮やかな黄色に見えるはずの描画部分が、白に近い、薄い黄色と読み取られてしまう。本実施の形態に従う画像読取装置は、後述するような補正処理を行なうことで、このような色再現性の課題を解決する。
図10は、本実施の形態に従う画像読取装置により黄色蛍光インクによるマーク部分を含む原稿に対して各光源を点灯したときに生じる反射光の波長特性(スペクトル)の一例を示す図である。図10(A)には、R光源220Rを点灯したときに得られる反射光のスペクトルを示し、図10(B)には、G光源220Gを点灯したときに得られる反射光のスペクトルを示し、図10(C)には、B光源220Bを点灯したときに得られる反射光のスペクトルを示し、図10(D)には、UV光源220UVを点灯したときに得られる反射光のスペクトルを示す。
図10(A)に示すように、黄色光より波長の長い赤色光を読取対象へ照射した場合には、蛍光色素からの蛍光の発生はない。一方、図10(B)および図10(C)に示すように、黄色光より波長の短い緑色光および青色光を読取対象へそれぞれ照射した場合には、蛍光色素から蛍光が発生することになる。
UV光源220UVからの紫外光を読取対象へ照射した場合には、より多くの蛍光成分が発生することになる。なお、カットフィルター228がラインセンサー226の前段に配置されているので、UV光源220UVからの紫外光はラインセンサー226で検出されることはない。すなわち、UV光源220UVを点灯したときにラインセンサー226から出力される出力値S_UVは、読取対象から発生した反射光に含まれる蛍光成分の大きさを示すことになる。
なお、図10には、R光源220Rからの赤色光では蛍光成分が発生しない例を示すが、R光源220Rからの赤色光によって励起される蛍光色素なども想定され、この場合には、R光源220Rを点灯したときのラインセンサー226からの出力値は、当該蛍光成分を含む値になり得る。
本実施の形態に従う画像読取装置4は、予め定められた順序で発光部220からいずれかの光を発生させるとともに、ラインセンサー226(光電変換部)から順次出力されるそれぞれの出力値を、対応する光の波長特性と対応付けて処理することで、読取対象の画像情報を生成する。すなわち、画像読取装置4は、R光源220R、G光源220G、B光源220B、UV光源220UVからなる4光源を1つずつ順次点灯させたときに得られる光電変換素子からの出力値に基づいて、主走査方向1列の画像情報を読み取る。
図10に示すように、各光源が発生する光の波長と蛍光色素の特徴との関係に応じて、各光源が点灯したときに、当該点灯により照射された光とは波長の異なる蛍光成分が過剰に検出され得る。このような過剰に検出される出力値をUV光源220UVが点灯したときに得られる出力値を用いて補正する。より具体的には、R光源220R、G光源220G、B光源220Bからの光を読取対象に照射したときにそれぞれ出力される出力値のうち少なくとも1つの出力値(光電変換素子出力値)から、UV光源220UVからの光を読取対象に照射したときの出力値(光電変換素子出力値)に応じた成分を減じる補正処理を行なうことで、読取対象の画像情報を生成する。
このように、画像読取装置4においては、紫外成分に対応する光源を点灯しせたときの光電変換素子出力値を、R光源、G光源、B光源の各々を点灯したときの、いずれか1色以上の光電変換素子出力値から減算する補正を行なう。
以下、このような補正処理を「蛍光補正処理」とも称し、その蛍光補正処理の内容について説明する。
なお、「蛍光補正処理」との名称は便宜上のものであり、蛍光物質と同様の特性を有する物質が読取対象に存在する場合の補正処理についても、本発明の技術的範囲に含まれ得る。
(d2:第1蛍光補正方法)
上述の図10に示すように、B光源220Bを点灯させたときにラインセンサー226に入射する反射光は、反射成分に比較してより多くの蛍光成分を含むことになる。この蛍光成分によって、色再現性が低下し得る。そこで、B光源220Bを点灯させたときに得られる出力値S_Bを、蛍光成分の大きさを反映した値、すなわちUV光源220UVを点灯させたときに得られる出力値S_UVを用いて補正することになる。具体的には、以下の補正式(1)に従う補正式を用いることができる。
I_B=S_B−α_B×S_UV …(1)
ここで、補正係数α_Bは、UV光源220UVの点灯時に発生する蛍光成分とB光源220Bの点灯時に発生するに発生する蛍光成分との比率に基づく係数である。B光源220Bの点灯時に得られる出力値から蛍光成分を除去することを目的としているため、補正係数α_B>0に設定される。
このように、画像読取装置4においては、紫外成分に対応する光源を点灯させたときの光電変換素子出力値を用いて、B光源を点灯させたときの光電変換素子出力が補正される。
補正係数α_Bは、UV光源220UVおよびB光源220Bから読取対象へ光をそれぞれ照射したときに得られる実測値などに基づいて予め定めてもよい。あるいは、一般的に、B光源220Bが発生する光およびUV光源220UVが発生する光のピークスペクトルは近いことから、蛍光色素の励起特性も近似していると考えられるので、B光源220Bからの光の強度とUV光源220UVからの光の強度とがほぼ同等であるという前提においては、補正係数α_Bは、1に近似した固定値が好ましい。
あるいは、読取対象に含まれる蛍光色素の種類を予めユーザが指定できる場合、あるいは、何らかの手法により読取対象に含まれる蛍光色素の種類を判別できる場合などには、蛍光色素の種類に応じて、補正係数α_Bの値を動的に変更するようにしてもよい。
図11は、本実施の形態に従う第1蛍光補正方法の補正効果を示す表である。図11には、上述の図9と同様に、(1)余白、(2)黒文字、(3)蛍光成分を含まない一般的な黄色インクによるマーク部分、(4)黄色蛍光インクによるマーク部分、についての読取結果を示す。
図11において、R光源220R、G光源220G、B光源220B、UV光源220UVをそれぞれ1度だけ順次点灯させたときに、ある特定画素に対応する光電変換素子から出力されたそれぞれの出力値をS_R,S_G,S_B,S_UVとしている。また、補正後の読み取られた画像データの画素のR,G,Bの値をI_R,I_G,I_Bとしている。いずれの値も0−255の範囲に規格化されているものとする。
何らの補正処理も行なわない場合には、I_R=S_R,I_G=S_G,I_B=S_Bとなる。
(1)余白、(2)黒文字、(3)蛍光成分を含まない一般的な黄色インクによるマーク部分については、いずれも蛍光成分が発生しないので、UV光源220UVの点灯時に得られる出力値S_UV=0になる。なお、UV光源220UVからの紫外光はカットフィルター228により遮断されるので、ラインセンサー226からの出力値S_UVには現われないことになる。その結果、上述の補正式(1)を適用した場合であっても、補正項の値がゼロになるので補正による悪影響はない。すなわち、これらの描画部分については、関連技術に係る読取部22#と同様に、目視による色の見え方と一致した読取結果を得ることができる。
また、(4)黄色蛍光インクによるマーク部分については、B光源220Bの点灯時に得られる出力値S_Bに対して、上述の補正式(1)に従う補正を行なうことで、補正値I_Bの値が本来の値に近づき、より目視による「鮮やかな黄色」に近い読取結果「黄色」を得ることができる。すなわち、第1蛍光補正方法を適用することで、蛍光成分が白とは区別できる明度で再現されて、視認性が向上できていることが分かる。
このような第1蛍光補正方法および後述の第2蛍光補正方法は、R光源220R、G光源220G、B光源220Bのうち、読取対象にUV光源220UVからの光を照射したときに発生し得る蛍光の波長と少なくとも一部重複する波長を有する光を発生する光源、に対応する出力値に対して適用されることが好ましい。典型例として、第1蛍光補正方法においては、B光源220Bからの光を読取対象に照射したときの出力値に対して、UV光源220UVからの光を読取対象に照射したときの出力値に応じた成分を減じる処理が実行される。
このように、本実施の形態に従う第1蛍光補正方法を適用することで、蛍光成分を発生しない読取対象に対する色再現性は維持したまま、蛍光成分を発生する読取対象についての色再現性を向上できる。
(d3:第2蛍光補正方法)
上述の第1蛍光補正方法においては、B光源220Bを点灯したときに得られる出力値S_Bを、UV光源220UVを点灯したときに得られる出力値S_UVで補正する処理について説明したが、蛍光色素の種類によっては、G光源220Gを点灯したときに得られる出力値S_Gについても補正することが好ましい場合がある。この場合には、上述の補正式(1)と同様に、以下の補正式(2)を用いることができる。
I_G=S_G−α_G×S_UV …(2)
ここで、補正係数α_Gは、正負いずれの値にも設定されてもよい。すなわち、上述の第1蛍光補正方法の意味で補正する場合には、補正係数α_G<0に設定される、一方、後述の第3蛍光補正方法の意味で補正する場合には、補正係数α_G<0に設定される。補正係数α_Gをどのような値にするのかについては、読取対象の蛍光成分の波長などに応じて適宜設定すればよい。
(d4:第3蛍光補正方法)
上述の第1蛍光補正方法による補正効果(図11参照)に示すように、B光源220Bを点灯したときに得られる出力値S_Bを補正することで、蛍光色素を含む描画部分の読取結果を目視で見える色に近付けることができる。さらに、目視での見え方に近い色再現性を実現するために、R光源220Rを点灯したときに得られる出力値S_Rについても補正することが好ましい場合がある。この場合には、以下の補正式(3)を用いることができる。
I_R=S_R−α_R×S_UV …(3)
ここで、蛍光成分を含む反射光をより鮮やかな色として再現するためには、赤色成分の輝度を高める必要がある。そのため、補正式(3)において、補正係数α_R<0に設定される。これは、白色光から赤色光を除いた光(すなわち、緑色光および青色光)を照射した際に生じる蛍光成分を、R光源220Rを点灯したときに得られる出力値S_Rに対して加算することを目的としたものである。
このように、画像読取装置4においては、光電変換素子出力値に対して減算する補正を行なうB光源の発する光より波長が長い、いずれか1色以上の光電変換素子出力値に対して、紫外成分の光源を点灯させたときの光電変換素子出力値を加算する補正が行なわれる。
補正係数α_Rとしては、各光源の波長特性などに基づいた固定値を採用してもよい。
あるいは、補正係数α_Rは、UV光源220UV、B光源220B、G光源220Gから読取対象へ光をそれぞれ照射したときに得られる実測値などに基づいて予め定めてもよい。
さらにあるいは、読取対象に含まれる蛍光色素の種類を予めユーザが指定できる場合、あるいは、何らかの手法により読取対象に含まれる蛍光色素の種類を判別できる場合などには、蛍光色素の種類に応じて、補正係数α_Rの値を動的に変更するようにしてもよい。
図12は、本実施の形態に従う第3蛍光補正方法の補正効果を示す表である。図12には、上述の図9および図11と同様に、(1)余白、(2)黒文字、(3)蛍光成分を含まない一般的な黄色インクによるマーク部分、(4)黄色蛍光インクによるマーク部分、についての読取結果を示す。図12には、上述の補正式(1)および(3)を適用するとともに、補正係数として、α_B=1,α_R=−1に設定した場合の読取結果を示す。
図12に示すように、第3蛍光補正方法を適用することで、(1)余白、(2)黒文字、(3)蛍光成分を含まない一般的な黄色インクによるマーク部分に加えて、(4)黄色蛍光インクによるマーク部分についても、目視による色の見え方と一致した読取結果を得ることができていることが分かる。すなわち、第3蛍光補正方法を用いることで、読取結果としては、より目視による色に近い色相および彩度を再現できる。
(d5:補正係数)
上述した第1蛍光補正方法〜第3蛍光補正方法は、以下のような補正式にまとめることができる。
I_B=S_B−α_B×S_UV …(1)
I_G=S_G−α_G×S_UV …(2)
I_R=S_R−α_R×S_UV …(3)
一般的に、蛍光色素は、固有波長または固有波長域の成分を吸収して、当該吸収した波長よりも短い波長の光(蛍光)を発生するという性質を利用して、いずれの蛍光色素に対しても、適切な補正が実行されることが好ましい。そのため、波長に依存して、補正係数を設定することが好ましい。
図13は、本実施の形態に従う蛍光補正方法において用いられる補正係数の組合せの一例を示す図である。図13に示すように、各光源から発生する光の波長の長短に応じて、対応する補正係数の大きさを設定することが好ましい。なお、上述の第3蛍光補正処理においては、出力値S_Rに対して蛍光成分に応じた値を加算することを目的とするので、補正係数α_Rは負の値が設定される。
このように、R光源220R、G光源220G、B光源220Bを順次切り替えて発光させたときに出力値S_R,S_G,S_Bに対する補正処理を行なう場合において、波長の短い光源を発光したときの出力値ほど、紫外光を発生するUV光源220UVを発光したときの出力値に掛ける補正係数を大きくした値を減算する一方で、波長の長い光源を発光したときの出力値ほど、紫外光を発生するUV光源220UVを発生したときの出力値に掛ける係数を小さくした値(負の値も含み得る)を減算する。
本実施の形態に従う蛍光補正方法は、波長の短い光を読取対象に照射したときの出力値ほど、UV光源220UVからの光を読取対象に照射したときの出力値に対してより大きな係数を乗じた値を減じる処理を含むようにしてもよい。このような波長の長さに依存させて補正係数の大きさを決定することで、蛍光色素の特性を反映した補正を実現できる。
さらに、これらの補正係数は、予め定められた固定値であってもよいし、その全部または一部を、動的に変更するようにしてもよい。例えば、読取対象に含まれる蛍光色素の種類を予めユーザが指定できる場合、あるいは、何らかの手法により読取対象に含まれる蛍光色素の種類を判別できる場合などには、蛍光色素の種類に応じて、全部または一部の補正係数の値を動的に決定するようにしてもよい。
<E.制御構成および制御方法>
次に、本実施の形態に従う画像読取を実現するための制御構成および制御方法などについて説明する。
(e1:ハードウェア構成例)
図14は、本実施の形態に従う画像読取装置4における画像読取に係るハードウェア構成例を示す模式図である。図14には、読取本体部2およびその周辺回路のブロック図を示す。一例として、図14には、読取本体部2(図1および図2参照)内に配置されたコントローラ基板60と、画像処理部50とが協働して、制御機能を実現する構成例を示す。
図14に示す構成においては、制御機能(コントローラ基板60および画像処理部50)は、予め定められた順序で発光部220からいずれかの光を発生させるとともに、ラインセンサー226(光電変換部)から順次出力されるそれぞれの出力値を、対応する光の波長特性と対応付けて処理することで、読取対象の画像情報を生成する。
コントローラ基板60は、発光部220からの光の照射タイミングを制御するとともに、それぞれの光の照射タイミングに応じて、ラインセンサー226(光電変換素子)から出力される電気信号を取得する。より具体的には、コントローラ基板60は、タイミング制御部62と、発光制御部64と、信号取得部66とを含む。
タイミング制御部62は、読取対象の原稿の搬送速度などに基づいて、発光部220から発生する光のタイミングを決定し、発光制御部64へ与えるとともに、信号取得部66から入力された電気信号をそのときに発光している光源の種別に応じて、出力値S_R,S_G,S_B,S_UVのいずれかとして出力する。
発光制御部64は、タイミング制御部62からの指令に従って、発光部220を構成する、R光源220R、G光源220G、B光源220B、UV光源220UV(典型的には、LED(Light Emitting Diode))のいずれかを選択的に駆動する。信号取得部66は、タイミング制御部62からの指令に従って、ラインセンサー226を構成する光電変換素子を活性化することで、読取対象から入射した反射像を示す電気信号を取得し、その取得した電気信号をタイミング制御部62へ出力する。
画像処理部50は、コントローラ基板60から出力値S_R,S_G,S_B,S_UVを受けて、読取結果である画像データを出力する。より具体的には、画像処理部50は、蛍光補正処理部52と、エッジ検出部54と、色補正部56とを含む。
蛍光補正処理部52は、コントローラ基板60からの出力値S_R,S_G,S_B,S_UVに対して、上述したような蛍光補正処理を実行し、補正後の画像情報を示す補正値I_R,I_G,I_Bを生成する。典型的には、蛍光補正処理部52は、R光源220R、G光源220G、B光源220Bからの光を読取対象に照射したときにそれぞれ出力される出力値S_R,S_G,S_Bのうち少なくとも1つの出力値から、UV光源220UVからの光を読取対象に照射したときの出力値S_UVに応じた成分を減じる。
エッジ検出部54および色補正部56は、蛍光補正処理部52からの補正値I_R,I_G,I_Bに基づいて画像情報を再生するとともに、必要な入力画像処理を実行して、最終的な画像データとして出力する。この出力された画像データに基づいて、画像形成処理などが実行される。
図9においては、一例として、蛍光補正処理部は、読取本体部2から出力される色ごとの信号が画像処理部50へ与えられ、蛍光補正処理が先に実行された後に、入力画像処理が実行される。このような一般的な入力画像処理の前段にて蛍光補正処理を実行することで、従前より存在する各種の入力画像処理(例えば、RGB画像データに対する処理)を変更することなく、そのまま利用できる。また、画像処理部50にて蛍光補正処理および入力画像処理を実行するように構成することで、他の入力画像処理を含めた単一の半導体装置(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)など)で実装できるので、装置構成の簡素化および低コスト化を実現できる。
なお、画像処理部50に含まれる蛍光補正処理部52および入力画像処理(エッジ検出部54および色補正部56など)の一部または全部の機能を、読取本体部2に実装してもよい。あるいは、図14に示す機能を単一のシステム基板などを用いて実現してもよいし、図14に示す機能の一部をハードワイヤード回路で実現するとともに、残りの機能をプロセッサによりプログラムを実行することで実現するようにしてもよい。
本発明は、画像読取装置の実装形態を限定するものではなく、当業者であれば、現実に得られる任意の技術を用いて、適宜実装するであろう。
(e2:蛍光補正処理部の機能構成)
次に、図14に示す画像処理部50の蛍光補正処理部52の機能構成の一例について説明する。図15は、図14に示す画像処理部50の蛍光補正処理部52の機能構成の一例を示す模式図である。図15に示す蛍光補正処理部52の機能構成は、ハードワイヤード回路で実現してもよいし、プロセッサによりプログラムを実行することで実現してもよい。
図15を参照して、蛍光補正処理部52は、そのコンポーネントとして、コントローラ基板60からの出力値S_R,S_G,S_B,S_Bを格納するための出力値バッファ522R,522G,522B,522UVと、減算器524R,524G,524Bと、乗算器526R,526G,526Bとを含む。
赤色に関する補正として、乗算器526Rは、出力値バッファ522UVに格納されているUV光源220UVを点灯したときの出力値S_UVに補正係数α_Rを乗じて得られる補正量を減算器524Rへ出力する。減算器524Rは、出力値バッファ522Rに格納されているR光源220Rを点灯したときの出力値S_Rから減算器524Rからの補正量を減じて、出力値の補正値I_Rとして出力する。
緑色および青色に関する補正についても同様に、減算器524Gおよび乗算器526G、ならびに、減算器524Bおよび乗算器526Bがそれぞれ協働して処理を実行することで、蛍光補正処理を実現する。
(e3:処理手順)
次に、本実施の形態に従う画像読取装置4における画像読取の処理手順について説明する。図16は、本実施の形態に従う画像読取装置4における画像読取の処理手順を示すフローチャートである。図16に示す各ステップは、画像処理部50およびコントローラ基板60が連係して実現してもよいし、制御装置のプログラムがプログラムを実行することで実現してもよい。
図16を参照して、読取対象に対する画像読取タイミングが到来すると(ステップS2においてYESの場合)、画像読取装置4は、発光部220を構成する複数の光源のうち予め定められた順序に従って1つの光源を選択し(ステップS4)、当該選択した光源からの光を読取対象へ照射する(ステップS6)。すなわち、画像読取装置4は、R光源220Rと、G光源220Gと、B光源220Bと、UV光源220UVとを含む発光部220から、予め定められた順序でいずれかの光を発生させる。
併せて、ラインセンサー226から出力値を取得するとともに、選択した光源および現在の読取位置に対応付けて格納する(ステップS8)。すなわち、画像読取装置4は、ラインセンサー226(光電変換部)から順次出力される、読取対象への光照射により生じる反射像の各領域の輝度を示す出力値を対応する光の波長特性(すなわち、色)と対応付けて格納する。
そして、画像読取装置4は、発光部220を構成する複数の光源に対応する出力値が1ライン分揃っているか否かを判断する(ステップS10)。すなわち、R光源220R、G光源220G、B光源220B、UV光源220UVをそれぞれ点灯したときの出力値のセットがすでに取得されているか否かが判断される。
発光部220を構成する複数の光源に対応する出力値が1ライン分揃っていない場合(ステップS10においてNOの場合)には、画像読取装置4は、現在の読取位置から1/4ドット分進めた位置を新たな読取位置に設定し(ステップS12)、新たに設定した読取位置が読取対象の有効範囲内であるか否かを判断する(ステップS14)。すなわち、読取対象の対象面の読取が完了したか否かが判断される。なお、1ライン分(副走査方向の1ドット分)の読み取りに対して、4回の点灯を行なうため、1点灯あたり読取位置が1/4ドットずつ進むことになる。
新たに設定した読取位置が読取対象の有効範囲内である場合(ステップS14においてYESの場合)には、ステップS4以下の処理が繰り返される。これに対して、新たに設定した読取位置が読取対象の有効範囲外である場合(ステップS14においてNOの場合)には、画像読取の処理は終了する。
一方、発光部220を構成する複数の光源に対応する出力値が1ライン分揃っている場合(ステップS10においてYESの場合)には、画像読取装置4は、格納した出力値から読取対象の画像情報を生成する。この読取対象の画像情報を生成する際、上述の蛍光補正が実施される。より具体的には、画像読取装置4は、UV光源220UVを点灯したときの出力値S_UVに補正係数α_R,α_G,α_Bをそれぞれ乗じて各色の補正量を算出する(ステップS16)とともに、出力値S_R,S_G,S_Bからそれぞれ対応する補正量を減じることで、補正値I_B,I_G,I_Bを算出する(ステップS18)。そして、ステップS12以下の処理が実行される。
上述したような処理手順に従って、読取対象から画像情報が取得される。
(e4:光源の点灯順序)
次に、本実施の形態に従う画像読取装置4での蛍光補正処理において好ましい光源の点灯順序について説明する。図17は、本実施の形態に従う画像読取装置4での蛍光補正処理における好ましい光源の点灯順序を説明するための模式図である。
図17(A)には、画像読取装置4における画像読取動作時における各光源の点灯時の読取範囲を示す。一般的に、1ラインCIS読取方式においては、各ライン(各ドット)の読み取りに際して、原稿またはラインセンサーとの間の相対移動を停止させることなく連続して行なう。この連続した相対移動に関連付けて、複数の光源を順次点灯させて色ごとの画像信号を取得することになるので、図17(A)に示すように、発光順が隣接する光源間において、読取位置に所定量のズレ(3つの光源を用いる場合には1/3ドット、4つの光源を用いる場合には1/4ドット)が生じる。
厳密に考えると、ラインセンサー226からの出力値S_R,S_G,S_B,S_UVは、読取対象の互いに異なる読取範囲の値を意味する。画像データに用いる出力値S_R,S_G,S_Bについては、副走査方向の連続性を考慮して、これらの読取位置誤差を補正することはできるが、蛍光補正処理のみに使用する出力値S_UVについては、副走査方向の連続性などを反映した補正が難しい。
そこで、波長が短く蛍光成分からの影響を受けやすいB光源220Bと、蛍光成分の大きさを計測するためのUV光源220UVとの発光順序を隣接させることで、1ラインCIS読取方式に固有に生じる読取位置誤差による画質への影響を小さくできる。すなわち、赤色、緑色、青色、紫外線からなる4つの光源のうち、紫外線の光源と青色の光源とを連続する順番で発光させるようにしてもよい。
このように光源の点灯順序として、B光源220BとUV光源220UVとが少なくとも連続して発光するように定められることで、蛍光補正の精度を高めることができる。
<F.紫外光源の波長特性>
次に、本実施の形態に従う画像読取装置4において使用されるUV光源220UVの波長特性について説明する。
上述したように、本実施の形態に従う画像読取装置4においては、読取対象から生じる蛍光成分の大きさを計測するためのUV光源220UVが用いられる。そのため、UV光源220UVが発する紫外光は、本来の画像読取に用いられる光源の波長と重複しないようにすることが好ましい。つまり、紫外成分の光を生成するためのUV光源220UVは、B光源220Bの発光波長と重複がないようにすることが好ましい。そのため、例えば、以下に示すような波長特性を有する光を発するUV光源220UVを採用することが好ましい。図18は、本実施の形態に従う画像読取装置4に用いられるUV光源220UVの波長特性の例を示す図である。図18には、UV光源220UVおよびB光源220Bがそれぞれ発生する光のスペクトルを概念的に示す。
図18(A)には、UV光源220UVが発生する紫外光の波長特性と、B光源220Bが発生する青色光の波長特性との間に重複がなく、それぞれの光が波長上で完全に分離されている例を示す。図18(A)に示すように、読取対象に照射される紫外光と可視光とはスペクトル上で分離されている。すなわち、UV光源220UVからの光の波長は、B光源220Bからの光が有する波長とは互いに重複しないように設定されるようにしてもよい。このような波長特性を有する紫外光を発生するUV光源220UVを採用することで、蛍光補正の精度を高めることができる。
図18(B)には、UV光源220UVが発生する紫外光のピーク発光波長が370nm以下の例を示す。このように、ピーク発光波長が紫外域であるような紫外光を発生するUV光源220UVを用いることで、B光源220Bが発生する青色光との波長上での干渉を抑制できる。すなわち、紫外成分の光を生成するためのUV光源220UVからの光のピーク発光波長は、370nm以下であってもよい。
図18(C)には、UV光源220UVが発生する紫外光の370nmでの強度が、B光源220Bが発生する青色光のピーク発光強度の1/2以下である例を示す。このように、青色光のピーク発光波長から十分に離れた発光特性を有するUV光源220UVを用いることで、B光源220Bが発生する青色光との波長上での干渉を抑制できる。すなわち、紫外成分の光を生成するためのUV光源220UVからの光の370nm以上の波長成分の強度は、B光源220Bのピーク発光強度の1/2以下であってもよい。
図18(A)に示すような、B光源220Bが発生する青色光に対して、スペクトル上で分離されたUV光源220UVを用意できない場合であっても、図18(B)および図18(C)に示すような、UV光源220UVの可視光成分が十分に少なければ、紫外光の可視成分が発生して蛍光成分であると誤って過剰に検出することを防止できる。すなわち、このような波長特性を有するUV光源220UVを採用することで、本実施の形態に従う画像読取装置における蛍光補正の補正精度を高めることができる。
<G.利点>
本実施の形態に従う1ラインCIS読取方式を採用する画像読取装置では、一般的な3光源(R光源、G光源、B光源)に加えて、紫外光を発生するUV光源、および、読取対象からの反射光に含まれる紫外光をカットするカットフィルターを追加することで、紫外光を照射した際に読取対象から発生する蛍光成分を用いて、各光源からの光を読取対象へ照射したときに得られる画像信号を補正することで、蛍光色の色再現性を高めるとともに、可読性を向上できる。
本実施の形態に従う1ラインCIS読取方式を採用する画像読取装置によれば、蛍光色素を含む読取対象の描画範囲に対する色再現性について、CCD読取方式および3ラインCIS読取方式と同等の性能を実現できるので、これらの読取方式に比較して、同等性能であって、かつ、より低コストの構成を実現できる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。