JP2017227274A - ピストンリング - Google Patents

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Abstract

【課題】厳しい摺動条件下でも、熱をシリンダ壁面に効率良く逃がすことができ、高い耐摩耗性、耐アルミ凝着性を得ることが可能なピストンリングを提供する。
【解決手段】摺動部材は、鉄鋼材料からなる基材18と、該基材上に形成され、表面が少なくとも摺動面となる硬質炭素被膜14と、を有し、前記硬質炭素被膜が水素を含まず、sp2結合とsp3結合とが混在した炭素からなり、sp2結合とsp3結合のうちのsp3結合比が60%超であり、前記基材の熱伝導率が30W/m・K以上である。
【選択図】図1

Description

本発明は、往復動内燃機関に使用されるピストンリングに関するものである。
従来、ピストンリングは、SUS440B、SWOSC-V等の鉄鋼材料からなる基材の表面(摺動面)を窒化処理して硬化させ、その表面に硬質被膜を被覆して耐摩耗性を高めることが一般的に行われている。この硬質被膜としては、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)と呼ばれる非晶質炭素が例示される。DLCの構造的本質は、炭素の結合としてダイヤモンド結合(sp3結合)とグラファイト結合(sp2結合)とが混在したものである。よってDLCは、ダイヤモンドに類似した硬度、耐摩耗性、化学安定性を有し、一方でグラファイトに類似した固体潤滑性を有し、さらに摩擦係数が低い特性を有することから、例えば自動車部品などの摺動部材の保護膜として好適である。
ピストンリングに適用する硬質被膜として、DLC被膜は種々開発されている。例えば、特許文献1には、ピストンリング外周摺動面上に、水素を0.1〜5原子%含有し、sp2結合の成分比が40%〜80%の硬質炭素被膜を形成することが記載されている。また、特許文献2には、摺動表面に炭素のsp2/sp3比が1〜3(sp2結合比:50%〜75%)のDLC被覆層を備えるピストンリングが記載されている。
WO2015/115601号公報 特表2016−502593号公報
近年の内燃機関は、環境保全に対応して燃費を向上させたダウンサイジングターボエンジンなど、燃焼温度がより高温かつ摺動部の面圧もより高面圧となっている。そのため、ピストンリングの場合、このような高温かつ高面圧という非常に厳しい摺動環境においても、燃焼室内の熱をピストンからピストンリングを介してシリンダ壁面に効率良く逃がす高熱伝導性とともに、ピストンリングの摺動面の耐摩耗性とが求められている。
炭素で構成された材料において、sp3結合で形成されているダイヤモンドは非常に熱伝導率が高いことで知られている。さらに、sp2結合で構成されているグラファイトにおいてもab面の伝導率は高い。これらの材料では熱は主に格子振動(フォノン)によって伝達される。しかしながら、これらの材料と同じ炭素で構成されるDLCは、軽元素という優位性はあるものの非晶質であるため、結晶性が高いダイヤモンドなどと比較してフォノンの平均自由行程が短くなり、熱伝導率は高くない。このため、硬質炭素被膜を摺動面に形成した従来のピストンリングは、高温かつ高面圧となる厳しい摺動条件下において、熱をシリンダ壁面に効率良く逃がすことができず、特にsp2結合の成分比が高い硬質炭素被膜においては、温度上昇により被膜の摩耗が加速され、耐摩耗性を十分に得ることができない問題があった。さらに、熱をシリンダ壁面に効率良く逃がすことができないため、ピストンの温度もより高温となり、軟化したアルミピストン材が、ピストンリング側面に凝着することによってピストンのピストンリング溝が損傷し、燃焼室の気密性が損なわれる可能性がある。そのため、従来の技術では、上記のような厳しい摺動条件下での耐摩耗性や耐アルミ凝着性に関して十分ではなかった。
本発明は上記課題に鑑み、厳しい摺動条件下でも、高い耐摩耗性、耐アルミ凝着性を有し、さらに内燃機関の燃費を改善することが可能なピストンリングを提供することを目的とする。
上記目的を達成するべく、本発明者らが鋭意検討したところ、ピストンリング基材に高熱伝導な材料を適用し、基材の上に形成する硬質炭素被膜のsp3結合比率を特定の値以上とすれば、ピストンリングの熱伝導率の不足を補い、燃焼室内の熱をより効率よくシリンダ壁面に逃がして、ピストン及びピストンリングの温度上昇を抑制し、且つピストンリングに高い耐摩耗性を得ることを見出した。
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、その要旨構成は以下のとおりである。
(1)鉄鋼材料からなるピストンリング基材と、該ピストンリング基材の上に形成され、表面が少なくとも摺動面となる硬質炭素被膜と、を有するピストンリングにおいて、前記硬質炭素被膜が実質的に水素を含まず、sp2結合とsp3結合とが混在した炭素からなり、前記sp2結合とsp3結合のうちsp3結合の比率が60%超(100%未満)であることを特徴とする。ここで実質的に水素を含まないとは、リークや残留ガスなど不可避的に混入する水などの水素を含む物質から離脱した水素の被膜への混入を除き、外部より何ら水素を含むガスを導入しないで形成された硬質炭素被膜のことを指し、水素含有量が10原子%以下の硬質炭素被膜のことを意味する。水素含有量は5原子%以下であることがより好ましい。
(2)前記硬質炭素被膜が、水素を10原子%以下(0を除く)含む硬質炭素被膜である、上記(1)に記載のピストンリング。
(3)前記ピストンリング基材の熱伝導率が30W/m・K以上である、上記(1)又は(2)に記載のピストンリング。
(4)前記硬質炭素被膜が、膜厚5〜30μmである、上記(1)から(3)のいずれか一項に記載のピストンリング。
(5)前記ピストンリング基材と前記硬質炭素被膜との間に、Cr、Ti、Co、V、Mo、Si及びWからなる群から選択された一つ以上の元素またはその炭化物、(窒化物、炭窒化物)からなる中間層が形成される、上記(1)から(4)のいずれが一項に記載のピストンリング。
(6)前記硬質炭素被膜の一部に柱状の構造を有する、上記(1)から(5)のいずれが一項に記載のピストンリング。
(7)前記硬質炭素被膜の表面におけるマクロパーティクルの面積比が20%以下である、上記(1)から(5)のいずれか一項に記載のピストンリング。
本発明の摺動部材及びピストンリングは、高温かつ高面圧となる厳しい摺動条件下でも、熱をシリンダ壁面に効率良く逃がすことができ、高い耐摩耗性、耐アルミ凝着性を得ること、そして内燃機関の燃費を改善することが可能である。
本発明の一実施形態による基材18の外周面3に硬質炭素被膜14を形成したピストンリング40の斜視図及び模式断面図である。 本発明の他の実施形態による基材18の外周面3’に中間層16を介して硬質炭素被膜14を形成したピストンリング40の斜視図と模式断面図である。 本発明のピストンリング40に形成する他の硬質炭素被膜の構成を示す模式断面図である。 往復摺動試験の方法を示す図である。 硬質炭素被膜の摩耗量の算出方法を示す図である。 実施例1において形成された、一部に柱状の構造を有する本発明の硬質炭素被膜の破断面である。
(ピストンリング)
図1及び図2を参照して、本発明の実施形態によるピストンリング40,40’は、基本的に潤滑油下で使用されるものであり、基材18と、この基材上に直接、または基材上に形成された中間層16を介して形成され、表面が少なくとも摺動面となる硬質炭素被膜14と、を有する。また、図1及び図2においては、ピストンリング40,40’の外周面3,3’にsp3結合の比率が60%を超える硬質炭素被膜14を形成しているが、ピストンリング40,40’の上下面6にも前記硬質炭素被膜14を形成することができる。これにより、厳しい条件下でも、摺動面となる外周面3,3’は優れた耐摩耗性、上下面6は優れた耐アルミ凝着性を有する。
(基材)
本実施形態において、基材18は、熱伝導率が30W/m・K以上の鉄鋼材料からなるものとし、このような鉄鋼材料としては、例えば、SUP9材(45.7W/m・K)、SUP10材(39.5W/m・K)などのばね鋼、シリコンクロム鋼SWOSC-V材(32.2W/m・K)などを挙げることができる。基材を構成する鉄鋼材料の熱伝導率が30W/m・K未満であると、既述のような高温かつ高面圧の厳しい摺動環境下でピストン及びピストンリングが高温化してしまい、耐摩耗性、耐アルミ凝着性が確保できないからである。鉄鋼材料の熱伝導率の上限は特に限定されない。
基材18は、その表面を窒化処理されていないものが好ましい。但し、熱伝導率が30W/m・K以下とならない程度の窒化処理であれば施してもよい。本実施形態によれば、後述するように、基材に窒化処理を施すことなく、高い耐摩耗性、耐アルミ凝着性を有することができる。しかしながら、基材にビッカース硬さで表面硬度がHV700以上となる一般的な窒化処理を施すと、基材の熱伝導率が著しく低下し、硬質炭素被膜を表面に形成して組み合わせると、さらに熱伝導が低下する。このため、上記のような厳しい摺動条件下での耐摩耗性、耐アルミ凝着性を十分に得ることができないからである。そして、高熱伝導の材料からなる基材に窒化処理を施さずに、sp2結合比率が高い低硬度の硬質炭素被膜を形成すると、摺動時に潤滑油内のスラッジを摺動面に噛み込んだときに、硬質炭素被膜の摩耗が進行しやすくなる可能性がある。
(中間層)
中間層16は、基材18と硬質炭素被膜14との間に形成されることにより基材18との界面の応力を緩和し、硬質炭素被膜14の密着性を高める機能を有する。この機能を発揮する観点から、中間層16は、Cr、Ti、Co、V、Mo、Si及びWからなる群から選択された一つ以上の元素またはその炭化物、窒化物、炭窒化物からなるものとすることが好ましい。中間層16は、前記の群から選択された一つ以上の元素またはその炭化物、窒化物、炭窒化物を、単層、複数層積層、又は異なる層を2層以上組み合わせた積層としてもよい。
中間層16の厚さは、0.01μm以上0.6μm以下であることが好ましく、0.02μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。厚さが0.01μm未満の場合、一様な中間層を形成することが困難であり、硬質炭素被膜14の密着性を高める機能を十分に得ることができない可能性がある。これに対して、厚さが0.6μmを超えると、摺動時に中間層16が塑性流動を起こしやすく、硬質炭素被膜14が剥離しやすくなるからである。これに加え、窒化物など熱伝導率が小さい物質で構成された中間層を形成したとしても、硬質炭素被膜と比較して中間層の厚さは十分薄いので、中間層の熱伝導率はほとんど影響しない。
中間層16の形成方法としては、例えばアークイオンプレーティング法やスパッタリング法、プラズマCVD法などを挙げることができる。例えばスパッタリング法であれば、洗浄後の基材18をPVD成膜装置の真空チャンバー内に配置し、Arガスを導入した状態でターゲット近傍にグロー放電プラズマを励起し、生成されたArイオンによってターゲット材料をスパッタして中間層16を成膜する。ターゲットは、Cr、Ti、Co、V、Mo、Si、W及びWCから選択すればよい。中間層16の厚さは、金属ターゲットの放電時間や印加電力などにより調整できる。
(硬質炭素被膜)
本実施形態において適用される硬質炭素被膜14は、実質的に水素を含まない非晶質硬質炭素膜であり、sp2結合とsp3結合のうちsp3結合の比率が60%を超え100%未満の硬質炭素被膜である。硬質炭素被膜14は、前記sp3結合の比率の範囲内であれば、sp3結合の比率が異なる複数の層を積層してもよい。また、硬質炭素被膜の深さ方向のsp3結合の比率が基材側から表面に向かってリニアに変化してもよく、連続的ではなく段階的に変化してもよい。また、前記の積層した硬質炭素被膜の層間に、熱伝導率の高い金属層を形成してもよい。さらに、硬質炭素被膜の一部に柱状の構造を有していてもよい。硬質炭素被膜の一部に柱状の構造を有する場合を図6に示す。
硬質炭素被膜14の全体の厚さは5〜30μmとすることが好ましい。5μm未満の場合、相手材との摺動において必要な耐久性を確保できず、30μm超えの場合、膜の内部応力により欠け、剥離などの問題を生じたり、被膜の熱抵抗が大きく、高熱伝導材を基材に使用してもピストンリングの放熱性に課題が生じる場合があるからである。
硬質炭素被膜14は、実質的に水素を含まない非晶質硬質炭素(DLC)のみからなるものとすることが好ましい。非晶質炭素であることは、ラマン分光光度計(Arレーザ)を用いたラマンスペクトル測定により確認できる。
硬質炭素被膜14は、例えば、イオンプレーティング等のPVD法を用いて形成することができる。PVD法は、水素をほとんど含まない高硬度で耐摩耗性に優れた非晶質炭素被膜を形成することができる。硬質炭素被膜14の表面のマクロパーティクル量は、面積割合で20%以下である。マクロパーティクル量が20%を超えると、表面の面粗度が大きくなって平滑化加工が困難となったり、摺動中に脱落して相手材の摩耗量を増大させることがある。マクロパーティクル量は15%以下がより好ましい。
ここで、硬質炭素被膜14中のsp3結合の比率は、カーボンカソードを用いた真空アーク放電によるイオンプレーティング法を用いる際に、基材18にバイアス電圧を印加する。バイアスには直流、パルス、浮遊電位などの印加方法を1以上用いることができる。複数の方法を組み合わせてもよい。特に、パルスバイアスや浮遊電位は被膜に流れるバイアス電流を小さくすることができるので、sp3性が高く絶縁性の硬質炭素被膜の形成には好ましいバイアス印加方法である。そして、印加するバイアス電圧を調整することによってsp3性を制御することができる。具体的には、バイアス電圧を高くすると、基材に衝突するカーボンイオンの運動エネルギーが大きくなることや、被膜内において導電性が確保されることにより硬質炭素被膜中のsp2結合の比率が高くなる。このため、sp3結合の比率が60%を超える硬質炭素被膜を形成するためには、バイアス電圧を所定の範囲として成膜することが好ましい。硬質炭素被膜中の炭素の結合状態(sp2結合とsp3結合の比)は、電子エネルギー損失分光法(Electron
Energy Loss
Spectroscopy,EELS)により測定することができる。
上記説明したように、本実施形態では、熱伝導率が30W/m・K以上の鉄鋼材料からなる基材18を用いることと、その上に、sp3結合の比率が60%を超える硬質炭素被膜を形成することによって、熱伝導率の低下を抑えられるため、燃焼室内の熱を効率よくシリンダ壁面に逃がし、ピストンリングの高い耐摩耗性、耐アルミ凝着性を得ることができる。鉄鋼材料からなる基材18には、熱伝導率が30W/m・K以下とならない程度の窒化処理を施してもよいが、窒化処理などの表面改質処理を施さず、その上にsp3結合の比率が60%を超える硬質炭素被膜を形成することが好ましい。
表2に示した基材を用いたピストンリング(Topリング)の外周面に、中間層及び硬質炭素被膜を形成した。
各実施例および比較例における基材の材質、表面処理、熱伝導率、中間層の材質、膜厚および硬質炭素被膜のsp3結合比率、水素含有量、膜厚を表2に示す。
中間層は、ピストンリング本体(基材)をアセトン及びイソプロピルアルコールにて超音波洗浄を行った後、PVD成膜装置の真空チャンバー内に配置し、Arガスを導入した雰囲気下で基材に周波数250kHzの所定の電圧のパルスバイアスを印加することによって形成されるプラズマを利用してクリーニングを実施した。そして、Arガスを導入した状態でスパッタリング法を用いて金属ターゲットの材質の金属中間層を形成した。金属ターゲットにはCr、Tiを用いた。中間層の厚さは、金属ターゲットの放電時間によって調整した。なお、実施例6において形成された中間層は、基材に周波数250kHzの所定の電圧のパルスバイアスを印加することによって形成されるプラズマを利用し、雰囲気ガスとしてテトラメチルシラン(TMS)及びArを所定の分圧で導入してプラズマCVD法によってSiC膜を形成した。中間層の厚さは、プラズマ放電時間によって調整した。
中間層の形成後、続けて同一チャンバー内で実質的に水素を含まない非晶質硬質炭素被膜を形成した。非晶質硬質炭素被膜は、カーボンカソードをアーク放電によって蒸発、イオン化させて基材表面に被膜を形成した。放電中に何ら外部よりガスを導入しない条件や導入する場合はArなどの希ガスの圧力、ピストンリングに印加するバイアス電圧を調整することで、表2に示すsp3結合の比率の硬質炭素被膜を形成した。硬質炭素被膜の厚さ、水素含有量も表2に示す。
ピストンリングの側面には、下地処理としてリン酸マンガン処理を施して、化成処理被膜の一種であるリン酸マンガン被膜(厚さ2μm)を形成した。そして、ピストンリングを100℃に加熱し、その側面にポリ[2,2−(m−フェニレン)−5,5−ビベンズイミダゾール]を溶媒ジメチルアセトアミドで1.6倍に希釈し、平均粒径2μmの黒鉛粉末(日本黒鉛工業株式会社,USSP-D)を添加した混合物をスプレーガンを用いて吹き付けて、280℃で120min間加熱焼成した。なお、黒鉛粉末の添加量は、樹脂硬化後において16質量%となるよう調整した。これを両側面に対して実施し、厚さ6μmの樹脂被膜を形成した。
(基材の熱伝導率の測定)
熱伝導率は、直径5
mmφの素材から厚さ1
mmの測定用サンプルを切り出し、研磨して、レーザーフラッシュ法により3回測定した。3回の測定値の平均値を熱伝導率とした。
(評価試験)
各実施例・比較例のピストンリング片80と、SUJ2材(JIS
G
4805)からなる相手材50とを用いた図4に示す往復摺動試験(SRV試験)にて、以下のとおり、耐摩耗性(耐久性)の評価を行った。試験条件を表1に示す。
(耐摩耗性の評価方法)
相手材50に0W-20エンジン油60を塗布して80℃に加熱した後、ピストンリング片に480Nの荷重を印加して相手材に押しつけ、50Hzの周波数にて120min往復摺動させた。試験後のピストンリング摺動痕の形状から炭素被膜の摩耗量(摩耗深さ)を求めた。結果は、比較例1の摩耗量を基準としたときに、摩耗量が10%以上少ないものを◎、10%未満少ないものを○、摩耗量の増加したものを×で表2に示す。
(エンジン耐久試験)
直噴ターボチャージャーエンジンを用いて、実施例及び比較例のピストンリングの耐久試験を実施した。1つのエンジンのすべての気筒に同じ仕様のピストンとピストンリングを装着し、出力が最大となる回転数を維持したまま400時間試験を行った。なお、試験に供するピストンはアルミ合金製(AC8A)で、そのピストンリング溝には何ら表面処理を施していない。エンジンに供給する冷却水の温度は90±5℃、油温は120±5℃とした。そしてブローバイ値を観測し、初期のブローバイ値に対して30%以上の上昇が認められたら試験を中断してピストンリングを取り出し、その側面を観察する。そして、長さ1mm以上のアルミ凝着が認められたら「?」とする。アルミ凝着が認められない場合は、ピストンリングを元に戻して試験を再開する。そして、試験終了後にすべてのピストンリングを取り出しすべてのリングにおいて長さ1mm以上のアルミ凝着が認められなければ「○」とする。
各ピストンリング実施例及び比較例におけるアルミ凝着の結果を表2に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜6では、耐摩耗性及び耐アルミ凝着性が良好であるのに対して、比較例1〜3は、そのいずれも不十分であった。
本発明のピストンリングは、環境保全に対応して燃費を向上させたダウンサイジングターボエンジンを含め、燃費改善を目指して厳しい摺動条件下で使用される場合でも、高い耐摩耗性及び耐アルミ凝着性を有しているので、アルミ合金製ピストンに装着して好適に使用できる。
3,3’ 外周摺動面
6 上下面(上下側面)
14 硬質炭素被膜
16 中間層
18 基材
40、40’ ピストンリング
80 リング試験片

Claims (7)

  1. 鉄鋼材料からなるピストンリング基材と、該ピストンリング基材上に形成され、表面が少なくとも摺動面となる硬質炭素被膜と、を有するピストンリングにおいて、前記硬質炭素被膜が、水素を含まず、sp2結合とsp3結合とが混在した炭素からなり、前記sp2結合とsp3結合のうちsp3結合の比率が60%超(100%未満)であることを特徴とするピストンリング。
  2. 前記硬質炭素被膜が、水素を10原子%以下(0を除く)含む硬質炭素被膜である、請求項1に記載のピストンリング。
  3. 前記ピストンリング基材(及び/又は硬質炭素被膜を形成する下地層)が、熱伝導率30W/m・K以上である、請求項1又は2に記載のピストンリング。
  4. 前記硬質炭素被膜の膜厚が5〜30μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のピストンリング。
  5. 前記ピストンリング基材と前記硬質炭素被膜との間に、Cr、Ti、Co、V、Mo、Si及びWからなる群から選択された一つ以上の元素、またはその炭化物、(窒化物、炭窒化物)からなる中間層が形成される、請求項1〜4のいずれが一項に記載のピストンリング。
  6. 前記硬質炭素被膜の一部に柱状の構造を有する、請求項1〜5のいずれが一項に記載のピストンリング。
  7. 前記硬質炭素被膜の表面におけるマクロパーティクルの面積比が20%以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のピストンリング。
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