JP2017224815A - 複合材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】太陽電池等における光電変換効率を向上させる複合材料、導電性ナノワイヤ、これらを有する、光電変換素子、及び電子デバイスの提供。【解決手段】ペロブスカイト化合物と、金属酸化物で被覆された導電性ナノ繊維とを含む、複合材料。【選択図】図1

Description

本発明は、複合材料、導電性ナノワイヤ、光電変換素子、及び電子デバイスに関する。
酸化物半導体と導電物質との複合体は、電子素子の性能向上に利用されてきた。例えば、色素増感太陽電池(DSSC)の酸化チタン層に、導電性銀ナノワイヤの周囲に酸化チタンを被膜した導電材を導入することで、光電変換効率が向上することが報告されている(非特許文献1)。また、カーボンナノチューブ(CNT)周囲に酸化チタンが被膜された複合体を導電材として利用することで太陽電池性能が向上することも報告されている(非特許文献2)。
また、色素増感太陽電池の酸化チタン電極材料として、成形された金ナノロッドをパルスレーザー堆積法により酸化チタンで被膜したものを利用することが報告されている(非特許文献4)。
一方、色素増感太陽電池より派生したペロブスカイト型太陽電池は、透明導電膜の上に緻密酸化チタン層、多孔質酸化チタン層、ペロブスカイト層、正孔輸送層が積層された全固体型太陽電池であり、その性能のポテンシャルから現在多くの研究が行われている(特許文献1、非特許文献3)。
特開2015−046585号公報
M.Sun et al. Electrochemistry Communications 13(2011)1324−1327 I.Inoue et al. ChemSusChem 7(10),2805−2810 T.Miyasaka. Chem.Lett. 2015,44,720−729 G.Sahu et al. RSC Adv.,2012,2,3791−3800
しかしながら、ペロブスカイト型太陽電池は、先行するシリコン型太陽電池と比較して光電変換効率が低く、さらなる光電変換効率の向上が求められている。一方、溶液中に分散した繊維状の金を直接酸化チタン等で被膜する技術は報告されていない。さらに、金は、電解液の成分であるヨウ素に侵されるため、太陽電池の集電材としてあまり検討されていなかった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、太陽電池等における光電変換効率を向上させる複合材料、導電性ナノワイヤ、これらを有する、光電変換素子、及び電子デバイスを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、ペロブスカイト化合物と金属酸化物で被覆された導電性ナノ繊維とを含む複合材料を用いることで、太陽電池の光電変換効率が改善することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] ペロブスカイト化合物と、金属酸化物で被覆された導電性ナノ繊維とを含む、複合材料。
[2] 導電性ナノ繊維が、導電性ナノワイヤである、[1]に記載の複合材料。
[3] 導電性ナノワイヤが、金属ナノワイヤである、[2]に記載の複合材料。
[4] 金属ナノワイヤが、金ナノワイヤ、又は銀ナノワイヤである、[3]に記載の複合材料。
[5] 導電性ナノ繊維が、カーボンナノチューブである、[1]に記載の複合材料。
[6] 金属酸化物が、酸化チタン、酸化ニオブ、又は酸化アルミニウムである、[1]〜[5]のいずれかに記載の複合材料。
[7] ペロブスカイト化合物が、有機鉛ペロブスカイト化合物である、[1]〜[6]のいずれかに記載の複合材料。
[8] 金属酸化物ナノ粒子をさらに含む、[1]〜[7]のいずれかに記載の複合材料。
[9] 金属酸化物ナノ粒子が、酸化チタンナノ粒子、酸化ニオブナノ粒子、又は酸化アルミニウムナノ粒子である、[8]に記載の複合材料。
[10] 金属酸化物で被覆された導電性ナノワイヤ。
[11] 導電性ナノワイヤが、金ナノワイヤ、又は銀ナノワイヤである、[10]に記載の導電性ナノワイヤ。
[12] 金属酸化物が、酸化チタン、酸化ニオブ、又は酸化アルミニウムである、[10]又は[11]に記載の導電性ナノワイヤ。
[13] 第1の電極と、第2の電極と、第1及び第2の電極間に、[1]〜[9]のいずれかに記載の複合材料を含む活性層とを備える、光電変換素子。
[14] [13]に記載の光電変換素子を備える、電子デバイス。
[15] 太陽電池である、[14]に記載の電子デバイス。
本発明によれば、太陽電池等における光電変換効率を向上させる複合材料、導電性ナノワイヤ、これらを有する、光電変換素子、及び電子デバイスを提供できるようになった。
図1は、複合材料の一例を模式的に示した図である。 図2Aは、複合ナノ繊維の一例の概略的な平面図である。 図2Bは、図2AのIB−IB一点鎖線で示される位置で切断した複合ナノ繊維の切断端面を示す概略的な図である。 図3は、太陽電池の一例を示す概略的な図である。 図4は、太陽電池の製造方法の一例を示す概略的な図である。 図5は、TDG1被膜された金ナノワイヤの透過型電子顕微鏡像を示す図である。 図6は、酸化チタン被膜させた金ナノワイヤの無染色サンプルのTEM像である。 図7は、複合ナノ繊維のエネルギー分散型X線分析を用いた元素分析のマッピング像を示す図である。 図8は、酸化チタン被膜させた金ナノワイヤの電子エネルギー損失分光法を用いた元素分析のマッピング像を示す図である。 図9は、実施例3と比較例1のペロブスカイト型太陽電池の電流密度と電圧の関係を示すグラフである。 図10は、実施例2〜5、比較例1の光電変換効率を示すグラフである。 図11は、実施例3、比較例1及び比較例2のペロブスカイト型太陽電池の光電変換効率を示すグラフである。 図12は、実施例3及び比較例1のペロブスカイト型太陽電池のナイキスト曲線を示すグラフである。 図13は、実施例8と比較例1のペロブスカイト型太陽電池の電流密度と電圧の関係を示すグラフである。 図14は、実施例7〜10、比較例1の光電変換効率を示すグラフである。 図15は、実施例8、比較例1及び比較例3のペロブスカイト型太陽電池の光電変換効率を示すグラフである。 図16は、実施例8及び比較例1のペロブスカイト型太陽電池のナイキスト曲線を示すグラフである。 図17は、実施例11、及び比較例4のペロブスカイト型太陽電池の電流密度と電圧の関係を示すグラフである。 図18は、実施例11、及び比較例4のペロブスカイト型太陽電池の各波長における外部量子効率の関係を示すグラフである。
以下に、本発明にかかる複合材料及びその製造方法の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<複合材料>
本発明の複合材料は、ペロブスカイト化合物と、金属酸化物で被覆された導電性ナノ繊維(以下、金属酸化物で被覆された導電性ナノ繊維を「複合ナノ繊維」ということがある。)とを含む。本発明の複合材料を光電変換素子、及び電子デバイスに用いることにより、素子内の抵抗を小さくして導電性を改善できるので、光電変換素子及び電子デバイスの光電変換効率を向上させることができる。本発明の複合材料は、ペロブスカイト化合物、複合ナノ繊維に加え、さらに金属酸化物ナノ粒子を含んでいてもよい。
図1に一例として示したように、複合材料は、ペロブスカイト化合物1と、金属酸化物(図示せず)で被覆された導電性ナノ繊維(複合ナノ繊維)10とを含み、複合ナノ繊維10は、ペロブスカイト化合物1中に混在している。即ち、複合材料は、通常、ペロブスカイト化合物、及び複合ナノ繊維を含む。複合材料は、金属酸化物ナノ粒子20をさらに含んでいてもよい。金属酸化物ナノ粒子20は、複合ナノ繊維10の周囲を取り囲むように位置していてもよく、金属酸化物ナノ粒子が凝集した凝集体として存在していてもよい。例えば、本発明の複合材料を太陽電池に用いる場合、複合ナノ繊維により電極に導電パスが形成され、その結果導電性及び光電変換効率が向上するものと考えられる。
(ペロブスカイト化合物)
本発明において、ペロブスカイト化合物とは、ペロブスカイト構造を有する化合物をいい、無機化合物であってもよく、有機化合物と無機化合物の複合物質であってもよい。また、本発明の複合材料は、ペロブスカイト化合物を1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。本発明におけるペロブスカイト化合物は、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
CHNH (1)
(式(1)中、Mは2価の金属イオンを表し、Xはそれぞれ独立にハロゲン原子を表す。)
としては、例えばCu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Eu2+等が挙げられ、Pb2+が好ましい。即ち、ペロブスカイト化合物としては、有機鉛ペロブスカイト化合物であることが好ましい。
Xとしては、F、Cl、Br、I、又はこれらの組み合わせが挙げられ、Br及びIが好ましい。
ペロブスカイト化合物の具体例としては、CHNHPbI、CHNHPbBr、(CH(CHCHCHNHPbI[n=5〜8]、(CNHPbBr等が挙げられ、CHNHPbIが好ましい。
(複合ナノ繊維)
図2A及び図2Bに一例として示したように、複合ナノ繊維10は、導電性ナノ繊維11と、この導電性ナノ繊維を被覆する金属酸化物30とを含む。金属酸化物30は、多孔質でもよく、金属酸化物30の導電性ナノ繊維11よりに偏在する複数の第1の空孔部32や金属酸化物30に散在する複数の第2の空孔部34を有していてもよい。金属酸化物は、導電性ナノ繊維の周囲を取り囲むように位置していることから、金属酸化物の外形は導電性ナノ繊維の外形と相似している。
金属酸化物の厚さT1、すなわち導電性ナノ繊維の長尺方向に直交する方向であって、導電性ナノ繊維と金属酸化物との界面から金属酸化物の表面までの距離は、本発明の複合材料が用いられる電子デバイス、求められる特性などを考慮して、任意好適な距離(厚さT1)とすることができる。例えば、金属酸化物の厚さT1は、1nm〜100nmであることが好ましく、1nm〜50nmであることがより好ましく、1nm〜20nmであることがさらに好ましい。金属酸化物の長さL2、即ち複合ナノ繊維の長尺方向の距離は、一般に500nm〜5000nm程度である。L2及びT1は、電子顕微鏡(TEM又はSEM)による観察で測定することができる。例えば、複合ナノ繊維のサンプルを無染色で透過型電子顕微鏡(例えば、JEOL日本電子(株)製「JEM−2200FS」)により、1〜5個程度の複合ナノ繊維が写真内に納まるように、10〜50枚程度写真撮影を行い、これら複合ナノ繊維の長さL2と導電性ナノ繊維表面に堆積した金属酸化物の厚さT1の平均値を求める。好ましい倍率は15000〜100000倍である。複合ナノ繊維の内部に含まれる導電性ナノ繊維はTEM像から陰影の差で判別でき、判別しづらい場合にはエネルギー分散型X線分析(EDS)マッピングや電子エネルギー損失分光法(EELS)マッピングなどによって見分けることができる。得られた写真の画像を、画像処理ソフト(米国NIH社製「Image−J」)で、8bitグレースケールに変更する。Straightコマンド等でTEM画像中の10nm〜50nmの長さバーと同じ長さに線を引き、Image−Jのツールバーに表示されたその長さを画像中の単位長さとする。次にTEM画像中の複合ナノ繊維の長軸の長さをStraightコマンド等で計測し、長軸の平均値を複合ナノ繊維の長さとし、撮影された複合ナノ繊維の50〜200個の長さの平均値をとることにより複合ナノ繊維の長さL2が求められる。
また、TEM画像中の複合ナノ繊維1本の短軸の長さを10箇所、Straightコマンド等で計測し、短軸の平均値を複合ナノ繊維の太さとする。続いて、複合ナノ繊維中に含有される導電性ナノ繊維1本の短軸の長さを10箇所、Straightコマンド等で計測し、短軸の平均値を導電性ナノ繊維の太さD1とする。その複合ナノ繊維の太さと、その中に含有される導電性ナノ繊維の太さの差の1/2を、その複合ナノ繊維の金属酸化物の厚さとする。TEM撮影された複合ナノ繊維の金属酸化物の50〜200個の厚さの平均値をとることにより複合ナノ繊維の金属酸化物の厚さT1が求められる。
図2A及び図2Bに一例を示すように、複合ナノ繊維において、後述する複合材料の製造方法により製造することにより、金属酸化物30は、複数の第1の空孔部32を有すると推定される。複数の第1の空孔部32は、導電性ナノ繊維11寄りに偏在していると推定される。すなわち、複数の第1の空孔部32は、導電性ナノ繊維11の近傍に特異的に位置していると推定される。複数の第1の空孔部32は、複数の第1の空孔部32それぞれの導電性ナノ繊維11の表面からの距離S1(導電性ナノ繊維11の表面に対して直交して第1の空孔部32の中心を通る方向における、導電性ナノ繊維11の表面と第1の空孔部32の輪郭との距離)が、いずれも、同一距離(等距離)だけとなる離間するように位置し、かつ導電性ナノ繊維11を取り囲むように配列していると推定される。
本明細書において「同一」とは、実質的に同一であることを意味しており、本質的な機能を損なわない程度の微差であって、不可避的に生じ得る意図しない微差を含み得ることを意味する。
ここで「同一距離」とは、距離が実質的に同一であることを意味しており、本発明の複合材料の機能を損なわない程度の距離の差であって、例えば製造工程において不可避的に生じる程度の距離の差が、第1の空孔部32それぞれについての距離S1を比較した場合に現れたとしても許容されることを意味する。
第1の空孔部32は、後述する融合タンパク質多量体の形状に由来し、略球形の形状を有していると推定される。複数の第1の空孔部32は、いずれもほぼ同一の形状及び径(直径)D3を有していると推定される。第1の空孔部32の形状及び径D3は、複合ナノ繊維の製造工程で導電性ナノ繊維を被膜する金属酸化物30の形成に用いられる融合タンパク質多量体の形状等に由来している(詳細は後述する)。第1の空孔部32の径D3は、その形状を例えば球とみた場合の直径は、融合タンパク質多量体の直径に由来し、通常、約5nm〜15nmの範囲内となると推定される。
複数の第1の空孔部32は、通常、金属酸化物30の厚み内に存在する。しかしながら、複数の第1の空孔部32の全部又は一部が、金属酸化物30の表面及び導電性ナノ繊維11の表面のうちの少なくとも一方に開口していてもよい。
距離S1は、金属酸化物30で被膜される前の導電性ナノ繊維と融合タンパク質多量体との距離に由来し、融合タンパク質多量体は通常長さが1nm〜50nm、典型的には1nmから10nmのペプチド鎖で導電性ナノ繊維の表面に吸着していることから、通常1nm〜50nm、典型的には1nm〜10nmであると考えられる。距離S1が上記範囲となることにより、本発明の複合材料を特にペロブスカイト型太陽電池に適用する場合、光照射により生成したキャリアの寿命と移動距離とを適切に調整することができるので、光電変換効率を向上させることができる。
金属酸化物30は、後述する複合材料の製造方法で製造することにより、通常、複数の第2の空孔部34を有していると推定される。複数の第2の空孔部34は、金属酸化物30に散在していると考えらえる。すなわち、複数の第2の空孔部34は、金属酸化物30の全体にランダムに散在していると考えられる。
複数の第2の空孔部34の形状は一様でなく、略球形、ロッド状等種々の形状を有し得る。複数の第2の空孔部34のサイズ(径、長さ)も一様ではなく不均一であると考えられる。第2の空孔部34は、導電性ナノ繊維を被膜する金属酸化物30が、その前駆体から形成される際の金属酸化物30の局所的な形成量のゆらぎや、前駆体の加熱により不要な成分が気体として除去されたことに由来している。第2の空孔部34と第1の空孔部32とは、第2の空孔部34は、その輪郭の形状、サイズが不均一であって、金属酸化物30の全体に散在しているのに対して、第1の空孔部32は、その輪郭の形状がほぼ同一である略球形であって、かつ第1の空孔部32のすべてが導電性ナノ繊維11の表面からほぼ等距離の位置に特異的に偏在することで相違する。
複数の第2の空孔部34は、通常、金属酸化物30の厚み内に存在する。しかしながら、複数の第2の空孔部34のうちの一部分が、金属酸化物30の表面及び導電性ナノ繊維11の表面のうちの少なくとも一方に至るように開口していてもよい。また、第2の空孔部34は、第1の空孔部32と連通していてもよい。
金属酸化物30は、複数の第1の空孔部32を有していると推定される。よって金属酸化物30の表面積を大きくすることができる。このため、本発明の複合材料を特にペロブスカイト型太陽電池の機能性材料として用いれば、特に金属酸化物の厚み内において、第1の空孔部32にペロブスカイト化合物を坦持させた場合にペロブスカイト化合物の表面積を大きくすることができる。
[導電性ナノ繊維]
複合材料における導電性ナノ繊維は、導電性を有する物質を用いて構成された微細繊維であり、その直径D1は通常1nm〜100nmである。導電性ナノ繊維の長尺方向の平均長さL1は、例えば電子デバイスへの適用を考慮すると、電気的特性、光学的特性の観点から任意に設定でき、例えば、500nm〜5000nmとできる。L1及びD1は、導電性ナノ繊維を電子顕微鏡(TEM又はSEM)による観察で測定することができる。例えば、複合ナノ繊維のサンプルを無染色で透過型電子顕微鏡(例えば、JEOL日本電子(株)製「JEM−2200FS」)により、1〜5個程度の複合ナノ繊維が写真内に納まるように、10〜50枚程度写真撮影を行い、これら複合ナノ繊維の内部に含まれる導電性ナノ繊維の長さL1とその直径D1の平均値を求める。好ましい倍率は15000〜100000倍である。複合ナノ繊維の内部に含まれる導電性ナノ繊維はTEM像から陰影の差で判別でき、判別しづらい場合には、エネルギー分散型X線分析(EDS)マッピングや電子エネルギー損失分光法(EELS)マッピングなどによって見分けることができる。得られた写真の画像を、画像処理ソフト(米国NIH製「Image−J」)で、8bitグレースケールに変更する。Straightコマンド等でTEM画像中の10nm〜50nmの長さバーと同じ長さに線を引き、Image−Jのツールバーに表示されたその長さを画像中の単位長さとする。次にTEM画像中の複合ナノ繊維の長軸の長さをStraightコマンド等で計測し、長軸の平均値を導電性ナノ繊維の長さとし、撮影された導電性ナノ繊維の50〜200個の長さの平均値をとることにより導電性ナノ繊維の長さL1が求められる。
また、TEM画像中の導電性ナノ繊維1本の短軸の長さを10箇所、Straightコマンド等で計測し、短軸の平均値を導電性ナノ繊維の直径とする。導電性ナノ繊維TEM撮影された導電性ナノ繊維の50〜200個の直径の平均値をとることにより複合ナノ繊維の直径D1が求められる。
導電性ナノ繊維の素材としては、導電性を有する素材であれば特に限定されないが、例えば、金属、半導体材料、炭素材料等が挙げられる。金属としては、例えば、金、銀、ニッケル、銅、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、鉄、コバルト、スズ、アルミニウム、タリウム、亜鉛、ニオブ、チタン、インジウム、タングステン、モリブデン、クロム、バナジウム、タンタル等が挙げられ、導電性の観点から金、銀が好ましい。半導体材料としては、シリコン、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(SiN)、ゲルマニウム(Ge)、窒化ガリウム(GaN)、ヒ化ガリウム(GaAs)、ガリウムリン(GaP)、インジウムリン(InP)、インジウム砒素(InAs)、インジウムアンチモン(InSb)、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。炭素材料としては、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノホン(CNH)、フラーレン(例、C60フラーレン)、グラフェンシート、グラファイト等が挙げられる。導電性ナノ繊維は、1種類のみならず、2種類以上であってもよい。中でも導電性ナノ繊維の素材としては、金属及び/又は炭素材料が好ましい。
導電性ナノ繊維としては、後述する電子デバイスに適用することを考慮すると、ナノワイヤ構造、ナノチューブ構造が好ましく、中でも導電性ナノワイヤ、カーボンナノチューブが好ましい。導電性ナノワイヤとしては、金属ナノワイヤが好ましく、中でも金ナノワイヤ、銀ナノワイヤが好ましい。
[金属酸化物]
導電性ナノ繊維を被覆する金属酸化物としては、特に限定されず、例えば、チタン、ニオブ、アルミニウム、クロム、亜鉛、鉛、マンガン、カルシウム、銅、カルシウム、ゲルマニウム、ガリウム、カドミウム、鉄、コバルト、金、銀、プラチナ、パラジウム、ハフニウム、テルル等の各酸化物等が挙げられる。これらの中でも、特に、酸化チタン(一酸化チタン、二酸化チタン(アナタース型、アナターゼ型、ルチル型を含む)、三酸化二チタンを含む)、酸化ニオブ、酸化アルミニウムが好ましい。なお、金属酸化物の結晶構造は、特に限定されない。金属酸化物としては、複合材料の製造方法に用いられる融合タンパク質(融合タンパク質多量体)の析出作用により析出し得る金属酸化物ナノ粒子を用いることが好ましい(詳細は後述する。)。金属酸化物は、1種類のみならず、2種類以上であってもよい。
本発明の複合材料を光電変換素子に適用する場合には、金属酸化物として、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン及びブルッカイト型酸化チタンよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものが好ましく、光に対する活性という観点から、アナターゼ型酸化チタンがより好ましい。なお、酸化チタンの結晶構造は、例えば、X線回折法、ラマン分光分析法等により測定することができる。
金属酸化物の被覆量は、導電性ナノ繊維100質量%に対して、導電性ナノ繊維の密度C1および金属酸化物の密度C2とすると(C1およびC2の単位はg/cm)、
金属酸化物の質量=Y×(C2/C1)×100 (質量%)
の関係式で、Yの値が、一般に2〜4,040,000、典型的には2〜260,000、より典型的には2〜44,000の範囲となる。例えば、代表的な複合ナノ繊維である酸化チタンで被膜された金ナノ繊維では、金ナノ繊維(直径50nm)の密度は19.3g/cm、酸化チタン(アナターゼ型)の密度は3.9g/cmであり、金ナノ繊維100質量%に対して、酸化チタンの被覆量は0.4質量%〜160質量%程度が一般的である。また、酸化チタンで被膜されたカーボンナノチューブでは、カーボンナノチューブ(直径1〜10nm)の密度は1.3g/cm、酸化チタン(アナターゼ型)の密度は3.9g/cmであり、カーボンナノチューブ100質量%に対して、酸化チタンの被覆量は60質量%〜132,000質量%程度が一般的である。金属酸化物の被覆量は、熱や酸、ヨウ素などにより導電性ナノ繊維を焼失あるいは溶解で除去し、その前後の質量を比較することにより測定することができる。金属酸化物の被覆量を前記範囲とすることにより、光電変換素子及び電子デバイスの光電変換効率を向上させることができる。
[金属酸化物ナノ粒子]
本発明の複合材料は、金属酸化物ナノ粒子をさらに含んでいてもよい。複合材料中、金属酸化物ナノ粒子は、複合ナノ繊維の周囲を取り囲むように位置していてもよく、さらに金属酸化物ナノ粒子が凝集した凝集体として存在していてもよい。
金属酸化物ナノ粒子に含まれる金属酸化物としては、導電性ナノ繊維を被覆する金属酸化物と同様であり、好ましい例も同様である。
本発明の複合材料を光電変換素子に適用する場合には、金属酸化物ナノ粒子として、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン及びブルッカイト型酸化チタンよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものが好ましく、光に対する活性という観点から、アナターゼ型酸化チタンがより好ましい。なお、酸化チタンの結晶構造は、例えば、X線回折法、ラマン分光分析法等により測定することができる。
金属酸化物ナノ粒子の平均粒子径は、ペロブスカイト化合物を吸着しやすく、光を効率的に吸収させるという観点から、5nm〜500nmが好ましく、10nm〜50nmがより好ましい。なお、平均粒子径は、電子顕微鏡(TEM又はSEM)観察や動的光散乱(DLS)分析等により測定することができる。例えば、金属酸化物のサンプルを無染色で透過型電子顕微鏡(例えば、JEOL日本電子(株)製「JEM−2200FS」)により解析する。得られた画像を、画像処理ソフト(米国NIH製「Image−J」)で、8bitグレースケールに変更する。TEM画像中の20nmの長さバーと同じ長さに線を引き、その長さを画像中の単位長さとする。次にTEM画像中の粒子の長軸と短軸の長さをStraightコマンド等で計測し、長軸と短軸の平均値を粒子の直径として求められる。あるいは、TEM画像の明るさとコントラストを調整、画像を二値化し、楕円近似にて画像中の粒子の長軸と短軸の長さを計測し、長軸と短軸の平均値を粒子の直径粒子の直径として求められる。あるいは、動的光散乱(DLS)分析を使用する場合、例えば、適当な金属酸化物の粒子濃度となるように調製した溶液サンプルを、動的光散乱式粒子径分布測定装置(例えば、英国マルバーン製のゼータサイザーナノZS)を用いた測定により得られる分布のモード径として、金属酸化物の粒子サイズを決定できる。
複合材料における金属酸化物ナノ粒子の配合量は、金属酸化物ナノ粒子の周囲のペロブスカイト化合物で発生した光励起電子を複合ナノ繊維へ効率的に輸送するという観点から、複合ナノ繊維を100質量%とした場合に、10,000質量%〜1,000,000質量%が好ましく、10,000質量%〜100,000質量%がより好ましく、20,000質量%〜50,000質量%がさらに好ましい。複合材料における金属酸化物ナノ粒子の配合量は、複合材の製造に使用される金属酸化物ナノ粒子と複合ナノ繊維が分散した溶液中の、金属酸化物ナノ粒子と複合ナノ繊維の質量比を上記の範囲に調整することで、制御することができる。
<複合材料の製造方法>
本発明の複合材料の製造方法は、
(I)導電性ナノ繊維に結合し得る第1のペプチド部分、金属酸化物又はその前駆体に結合し得る第2のペプチド部分、及び内腔を有する融合タンパク質多量体を含む複合ナノ繊維を得る工程、及び
(II)ペロブスカイト化合物の前駆体溶液と、複合ナノ繊維とを混合させ、加熱する工程、を含む。
また、複合材料の製造方法は、必要に応じて、(III)金属酸化物ナノ粒子を配合する工程を含んでいてもよい。(III)工程は(I)工程の後に行ってもよく、(II)工程の後に行ってもよい。以下、各工程について説明する。
((I)工程)
(I)工程では、導電性ナノ繊維に結合し得る第1のペプチド部分、金属酸化物又はその前駆体に結合し得る第2のペプチド部分、及び内腔を有する融合タンパク質多量体を含む複合ナノ繊維を得る。
まず、導電性ナノ繊維及び融合タンパク質多量体を用意する。導電性ナノ繊維は、公知の方法により製造することができ、例えば液相法、固相法、アーク放電法、レーザーアブレーション法、CVD法、スーパーグロス法等で製造することができ、市販品を使用してもよい。
融合タンパク質多量体を構成する融合タンパク質は、内腔を有する多量体を形成し得るポリペプチド部分、並びに導電性ナノ繊維に結合し得る第1のペプチド部分及び金属酸化物に結合し得る第2のペプチド部分を含み得る。このような融合タンパク質及びその多量体の作製方法、並びにこれらを用いた導電性ナノ繊維の製造方法は、既報(例、WO2012/086647号、WO2013/022051号、特開2015−082985号公報)の方法にしたがって行うことができる。
内腔を有する多量体を形成し得るポリペプチド部分とは、内部に空間を有する多量体を、ポリペプチド部分の会合によって形成する能力を有するポリペプチド部分をいう。このようなポリペプチド部分としては、幾つかのタンパク質が知られている。例えば、このようなポリペプチド部分としては、内腔を有する24量体を形成し得るフェリチン、及び内腔を有する多量体を形成し得るフェリチン様タンパク質が挙げられる。内腔を有する多量体を形成し得るフェリチン様タンパク質としては、例えば、内腔を有する12量体を形成し得るDpsが挙げられる。
好ましくは、内腔を有する多量体を形成し得るポリペプチド部分は、Dpsである。Dps(DNA−binding protein from starved cells)とは、内腔を有する12量体を形成し得るタンパク質をいう。Dpsには、天然に生じるDps又はその変異体が含まれる。天然に生じるDpsの変異体としては、天然に生じるDpsと同様に、12量体を形成したときに、そのN末端部及びC末端部が12量体の表面に露出し得るものが好ましい。なお、Dpsは、それが由来する細菌の種類によってはNapA、バクテリオフェリチン、Dlp又はMrgAと呼称される場合があり、また、Dpsには、DpsA、DpsB、Dps1、Dps2等のサブタイプが知られている(T.Haikarainen and A.C.Papageorgion, Cell.Mol.Life Sci.,2010 vol.67,p.341を参照)。したがって、本発明では、Dpsは、これらの別名で呼称されるタンパク質も含むものとする。
導電性ナノ繊維に結合し得る第1のペプチド部分、及び金属酸化物に結合し得る第2のペプチド部分は、任意の導電性ナノ繊維又は金属酸化物(標的素材ともいう)に対して親和性を有するペプチドをいう。種々の標的素材に対して親和性を有する種々のペプチドが知られているので、本発明では、このようなペプチドを、上記ペプチド部分として用いることができる。以下、第1のペプチド部分及び第2のペプチド部分を、単に、標的素材に結合し得るペプチド部分と称する場合がある。表現「標的素材に結合し得るペプチド部分」は、用語「導電性ナノ繊維に結合し得る第1のペプチド部分」及び「金属酸化物に結合し得る第2のペプチド部分」を包括する表現である。標的素材に結合し得るペプチド部分は、任意の標的素材に対して親和性を有する1個のペプチドのみを有していてもよいし、あるいは任意の標的素材に対して親和性を有する同種又は異種の複数(例、2個、3個、4個、5個又は6個等の数個)のペプチドを有していてもよい。標的素材に結合し得るペプチド部分が上記のような複数のペプチドを有する場合、複数のペプチドは、当該ペプチド部分中に任意の順序で融合され得る。
標的素材に結合し得るペプチド部分は、上述したような標的素材に対して親和性を有する限り特に限定されない。標的素材に対して結合し得る種々のペプチドが知られており、また、開発されている。例えば、導電性ナノ繊維として金ナノワイヤを含む複合材料を製造する場合、導電性ナノ繊維に結合し得る第1のペプチド部分として、金に結合し得るペプチドを用いることができる(例、S.Brown,Nat.Biotechnol.,1997,vol.15.p.269.)。導電性ナノ繊維として銀ナノワイヤを含む複合材料を製造する場合、第1のペプチド部分として、銀に結合し得るペプチドを用いることができる(例、K.Sano et al.,Langmuir,2004,vol.21,p.3090.、及びWO2005/010031号)。導電性ナノ繊維としてカーボンナノチューブを含む複合材料を製造する場合、第1のペプチド部分として、カーボンナノチューブに結合し得るペプチドを用いることができる(例、S.Wang et al.,Nat.Mater.,2003,vol.2,p.196.、国際公開第2006/068250号、及び特開2004−121154号公報)。また、金属酸化物として酸化チタンで被覆された導電性ナノ繊維を含む複合材料を製造する場合、金属酸化物に結合し得る第2のペプチド部分として、酸化チタンに結合し得るペプチドを用いることができる(例、国際公開第2006/126595号、及びM.J.Pender et al.,Nano Lett.,2006,vol.6,No.1,p.40−44)。金属酸化物として酸化ニオブで被覆された導電性ナノ繊維を含む複合材料を製造する場合、第2のペプチド部分として、酸化ニオブに結合し得るペプチドを用いることができる。金属酸化物として酸化アルミニウムで被覆された導電性ナノ繊維を含む複合材料を製造する場合、第2のペプチド部分として、酸化アルミニウムに結合し得るペプチドを用いることができる(例、R. J. Zuo et al., Appl. Microbiol. Biotechnol.,2005, vol. 68, p.505−509)。
なお、金属酸化物に結合し得るペプチドは、金属酸化物の析出(mineralization)作用を有することが知られている(例、K.Sano et al.,Langmuir,2004,vol.21,p.3090.、M.Umetsu et al.,Adv.Mater.,2005,vol.17,p.2571.)。したがって、金属酸化物に結合し得るペプチドが用いられる場合、金属酸化物に結合し得る第2のペプチドは、このような析出作用を有する。
融合タンパク質多量体は、その内腔中に物質を含んでいてもよい。物質は、錯体又は粒子(例、ナノ粒子、磁性粒子)のような形態で、融合タンパク質多量体中に内包されていてもよい。当業者は、融合タンパク質多量体の内腔のサイズ、及び融合タンパク質多量体における物質の取り込みに関与し得る領域(例、C末端の領域:R.M.Kramer et al.,2004,J.Am.Chem.Soc.,vol.126,p.13282を参照)中のアミノ酸残基の電荷特性等を考慮することにより、融合タンパク質多量体に内包され得る物質を適切に選択できる。例えば、ポリペプチド部分としてDpsを有する融合タンパク質多量体の場合、Dpsは、40nm〜60nm(直径約5nm)の内腔を有する。融合タンパク質多量体の内腔に内包され得る物質としては、例えば、有機材料及び無機材料が挙げられるが、無機材料が好ましい。具体的には、このような無機材料としては、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、酸化鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、リン、ウラン、ベリリウム、アルミニウム、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、パラジウム、クロム、銅、銀、ガドリウム錯体、白金コバルト、酸化シリコン、酸化コバルト、酸化インジウム、白金、金、硫化金、セレン化亜鉛、カドミウムセレンが挙げられる。
融合タンパク質多量体の内腔中への物質の内包は、周知の方法により行うことができ、例えば、フェリチン又はDps等のフェリチン様タンパク質の多量体の内腔中への物質の内包方法(例、I.Yamashita et al.,Chem.,lett.,2005.vol.33,p.1158を参照)と同様にして行うことができる。
以下、製造工程について具体的に説明する。
まず、融合タンパク質多量体に導電性ナノ繊維と金属酸化物とが結合された結合体を調製する工程を行う。
融合タンパク質多量体を準備し、次に、融合タンパク質多量体と導電性ナノ繊維とを結合させて、融合タンパク質多量体と導電性ナノ繊維とが結合した結合体を得る。融合タンパク質多量体と導電性ナノ繊維との結合は、選択された導電性ナノ繊維に適した工程により実施することができる。
この工程は、例えば、複数種類の異なる金属酸化物に結合する融合タンパク質多量体を用いて実施することもできる。
融合タンパク質多量体と導電性ナノ繊維との結合は、例えば水又は緩衝液中で融合タンパク質多量体と導電性ナノ繊維とを混合することにより行うことができる。
融合タンパク質多量体と導電性ナノ繊維とを結合させるために用いられ得る緩衝液としては、例えばリン酸緩衝液、グッド緩衝液、トリス塩酸緩衝液が挙げられる。
緩衝液の水素イオン濃度指数(pH)は、選択された材料に応じて任意好適な範囲に調整することができる。導電性ナノ繊維として、特にCNTを用いる場合には、融合タンパク質多量体と導電性ナノ繊維との結合性をより良好にできるので、pHを6〜9の範囲とするのが好ましく、6〜7の範囲とするのがより好ましい。
また、導電性ナノ繊維として、特に導電性ナノワイヤを用いる場合には、融合タンパク質多量体と導電性ナノ繊維との結合性をより良好にできるので、pHを5〜10の範囲とするのが好ましく、6〜9の範囲とするのがより好ましい。
結合に用いられる緩衝液は、例えば融合タンパク質多量体の表面電荷や親水度を変化させることを目的として、塩化ナトリウム(NaCl)、硫酸アンモニウムのような成分をさらに含み得る。
また、混合及び結合を促進するために、例えば超音波処理、攪拌などのさらなる処理を実施してもよい。
次いで、導電性ナノ繊維が結合した融合タンパク質多量体に、さらに金属酸化物を結合させる。導電性ナノ繊維が結合した融合タンパク質多量体へのさらなる金属酸化物の結合は、選択された金属酸化物に適した工程により行うことができる。
融合タンパク質多量体への金属酸化物の結合は、例えば水、エタノール水溶液、緩衝液中で導電性ナノ繊維が結合した融合タンパク質多量体と金属酸化物とを混合して結合させることにより行うことができる。例えば、前記結合体を含む系に金属酸化物の溶液を混合すると、結合体が有する融合タンパク質多量体に結合した金属酸化物が析出し、金属酸化物による被覆が達成される。融合タンパク質多量体に金属酸化物を結合させるために用いられ得る緩衝液としては、例えばリン酸緩衝液、グッド緩衝液が挙げられる。
金属酸化物の融合タンパク質多量体への結合は、選択された材料、融合タンパク質多量体の触媒活性などを勘案してpHなどの条件を任意好適な範囲に調整して実施し得る。本発明においては、融合タンパク質多量体の触媒活性がより高くなる条件で実施することが好ましい。
金属酸化物の融合タンパク質多量体への結合に用いられる緩衝液は、例えば融合タンパク質多量体、金属酸化物の電荷状態を調整したり、金属酸化物の分散性を調整したりすることを目的として、NaCl、ポリエチレングリコール、tween(登録商標)20(東京化成工業(株)製)などの他の成分をさらに含み得る。また、混合及び結合を促進するために、超音波処理、攪拌、加熱、冷却などのさらなる処理を実施してもよい。
この工程では、金属酸化物の代わりに、金属酸化物の前駆体を用いて実施することもできる。金属酸化物の前駆体とは、選択された前駆体が、例えばタンパク質(融合タンパク質多量体)、機能性ペプチド、酸などの触媒によって金属酸化物になり得る物質や、焼成(加熱処理)等の任意好適な処理を行うことにより、金属酸化物になり得る物質をいう。
金属酸化物が例えば酸化チタンである場合には、タンパク質、機能性ペプチドなどの生体分子との相互作用、酸処理、加熱処理により金属酸化物である酸化チタンとなり得る観点から、金属酸化物の前駆体として、例えばチタン(IV)ビス(アンモニウムラクタト)ジヒドロキシド(Titanium(IV) bis(ammonium lactato)dihydroxide)、チタニウム2−エチルヘキシルオキシド(Titanium(IV) 2−ethylhexyloxide)、チタンエトキシド(Titanium ethoxide)、チタンイソプロポキシド(Titanium isopropoxide)、チタンブトシキド(Titanium n−butoxide)、チタンテトラブトキシド(Titanium(IV) tetrabutoxide)、四塩化チタン等を用いることができる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
金属酸化物が例えば酸化ニオブである場合には、金属酸化物の前駆体として、例えばニオブ(V)酸シュウ酸アンモニウム、ニオブ酸カリウム、ニオブ(V)アセチルアセトネート、ニオブアルコキシド、塩化ニオブ(V)等を用いることができる。
金属酸化物が例えば酸化アルミニウムである場合には、金属酸化物の前駆体として、例えば硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミニウムアルコキシド等を用いることができる。
以上の工程により、融合タンパク質多量体に結合した金属酸化物又は金属酸化物の前駆体は、前記融合タンパク質多量体により導電性ナノ繊維に固定されることとなる。すなわち、複数の融合タンパク質多量体が有する内腔は、導電性ナノ繊維の表面から実質的に等距離(図2Bにおける、距離S1に相当する。)離間した位置に固定される。
距離S1の調整は、例えば(1)金属酸化物の析出条件(反応時間、pHなど)を調整する、(2)導電性ナノ繊維と結合する結合ペプチドの長さ、及び/又はこの結合ペプチドと内腔を画成し得るポリペプチド部分との間のリンカーの長さを変更する(融合タンパク質の種類を変更する)、(3)まず第1段階として融合タンパク質多量体を用いて金属酸化物を導電性ナノ繊維の周囲に析出させた後(この段階で析出した金属酸化物は第1の空孔部32を画成せずともよい。)、さらに第2段階として金属酸化物に結合でき、かつ内腔を画成し得る融合タンパク質多量体を析出した金属酸化物に結合させ、先に析出した金属酸化物の周囲に内腔を画成し得る融合タンパク質多量体を内包する新たな金属酸化物を析出させることにより行うことができる。
形成される金属酸化物の厚さを増大させるために、融合タンパク質多量体に金属酸化物を結合させる工程において、金属酸化物の前駆体及び/又は金属酸化物を高濃度で供給、又は金属酸化物の前駆体及び/又は金属酸化物の供給量を増やすことで、金属酸化物の前駆体及び/又は金属酸化物を導電性ナノ繊維の周囲に多量に析出させてもよい。
融合タンパク質多量体のうち、金属酸化物に結合し得るペプチド部分は、既に説明したとおり、金属の析出(mineralization)作用を有し得ること、及び金属化合物に結合し得るペプチド部分は、金属化合物の析出作用を有し得ることが知られている。
したがって、金属酸化物に結合し得るペプチド部分として、金属酸化物に結合し得る既に説明した構成のペプチド部分を用いれば、金属酸化物に結合し得るペプチド部分は、当該ペプチド部分の周辺近傍に金属酸化物を析出させる析出作用を有し得る。
この析出は、従来公知の任意好適な条件で実施することができる。金属酸化物及び/又は金属酸化物の前駆体を析出させるにあたり、例えば反応時間、金属酸化物及び/又は金属酸化物の前駆体の濃度などを調整することにより金属酸化物の厚さを制御することができる。
複合材料の製造方法では、必要に応じて、複合ナノ繊維を焼成(加熱処理)し、融合タンパク質多量体を消滅させてもよい。これにより、第1及び第2の空孔部を形成することができる。複合ナノ繊維の焼成は、(I)工程にて行ってもよく、(III)工程後に行ってもよい。
複合ナノ繊維を焼成するにあたり、公知の任意好適な方法を使用することができる。具体的には、例えば、複合ナノ繊維が形成されるべき領域に、導電性ナノ繊維を含有する水又は緩衝液を含む組成物である塗工液(溶液、懸濁液)を塗布して成膜し、形成された膜を焼成する方法が挙げられる。複合ナノ繊維を含有する塗工液を得るための緩衝液としては、例えば酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、グリシン緩衝液が挙げられる。
成膜に用いられる塗工液は、例えば金属酸化物の厚さT1を制御するために、金属酸化物及び/又は金属酸化物の前駆体をさらに含む組成物として構成されていてもよい。また、成膜に用いられる塗工液は、例えば複合ナノ繊維をより効果的に分散させることを目的として、tween(登録商標)20(東京化成工業(株)製)のような界面活性剤を成分としてさらに含み得る。
複合ナノ繊維の焼成は、複合ナノ繊維が形成されるべき領域、金属酸化物又は金属酸化物ナノ粒子の種類等により、温度、時間、雰囲気等を適宜調整して実施することができる。
複合ナノ繊維の焼成は、例えば、大気下又は不活性ガス雰囲気下、50℃〜800℃、10秒間〜12時間の条件で行うことができる。複合ナノ繊維の焼成は、単一の温度で1回又は温度を変化させて2回以上行うこともできる。
この工程により、融合タンパク質多量体が消滅して、導電性ナノ繊維寄りに偏在する複数の第1の空孔部32、及び複数の第2の空孔部34が形成されると推定される。すなわち、複数の第1の空孔部32が、複数の第1の空孔部32それぞれの導電性ナノ繊維の表面からの距離S1(図2B参照)がいずれも実質的に同一となるように、かつ導電性ナノ繊維を取り囲むように配列されると推定される。
第2の空孔部34のサイズ、形状は、例えば供給される金属酸化物ナノ粒子及び/又は金属酸化物ナノ粒子の前駆体の粒径、焼成温度、焼成時間を適宜変更することにより調整し得る。また、例えば鋳型として界面活性剤を添加したり、水熱処理を実施したりすることにより、第2の空孔部34のサイズをより微小化する方向に調整し得る。
以上の工程により形成された導電性ナノ繊維は、例えばエタノールなどの媒質に溶解させるか、又は懸濁させることにより単体とし保存することができる。
((II)工程)
(II)工程は、ペロブスカイト化合物の前駆体溶液と、複合ナノ繊維とを混合させ、加熱する。ペロブスカイト化合物の前駆体溶液と、複合ナノ繊維とを混合させた後に加熱することにより、自己組織化反応によりペロブスカイト化合物が合成され、ペロブスカイト化合物と複合ナノ繊維とを含む複合材料を得ることができる。
混合方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。一例は、ペロブスカイト化合物の前駆体溶液を複合ナノ繊維に滴下、又は塗布する方法である。
ペロブスカイト化合物の前駆体としては、例えば、ヨウ化メチルアンモニウムとヨウ化鉛との組み合わせ、ヨウ化ホルムとアミジニウムとヨウ化鉛との組み合わせなどのハロゲン化鉛とハロゲン化有機アミンとの組み合わせ、ヨウ化メチルアンモニウムとヨウ化スズとの組み合わせなどが挙げられる。
ペロブスカイト化合物溶液における溶剤としては、特に限定されず、N,N−ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、γ−ブチロラクトン、クロロベンゼン、アセトニトリル、もしくはジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
加熱温度としては、50℃〜200℃が好ましく、60℃〜150℃がより好ましく、70℃〜120℃がさらに好ましい。加熱温度の保持時間としては、1分〜300分が好ましく、3分〜100分がより好ましく、5分〜50分がさらに好ましい。
ペロブスカイト化合物と、複合ナノ繊維の混在比率(ペロブスカイト化合物/複合ナノ繊維)は、複合ナノ繊維が分散した溶液や複合ナノ繊維からなる膜に含まれる複合ナノ繊維と複合ナノ繊維の間にペロブスカイト化合物が生成し充填されることで複合材料が合成されることから、ペロブスカイト化合物の前駆体溶液を混合や滴下する前の複合ナノ繊維のバルク状態に依存するが、一般的には0.05〜10である。一例として、酸化チタンと金ナノ繊維からなる複合ナノ繊維で構成される膜に鉛ペロブスカイト化合物の前駆体溶液を滴下する場合、複合ナノ繊維の密度を3.5g/cm、複合ナノ繊維の空間充填率が40%〜70%、鉛ペロブスカイト化合物(CHNHPbI)の密度を4.2g/cmとすると、ペロブスカイト化合物と、複合ナノ繊維の混在比率(ペロブスカイト化合物/複合ナノ繊維)は、質量比で0.17〜0.59と推測される。また、酸化チタンとカーボンナノチューブからなる複合ナノ繊維で構成される膜に鉛ペロブスカイト化合物の前駆体溶液を滴下する場合、複合ナノ繊維の密度を10.7g/cm、複合ナノ繊維の空間充填率が40%〜70%、鉛ペロブスカイト化合物(CHNHPbI)の密度を4.2g/cmとすると、ペロブスカイト化合物と、複合ナノ繊維の混在比率(ペロブスカイト化合物/複合ナノ繊維)は、質量比で0.51〜1.80と推測される。
(II)工程の具体的な一例を示す。はじめに、1質量%〜10質量%の複合ナノ繊維を含む溶液を基板上に塗布し(複合ナノ繊維を含む溶液が、後述する、複合ナノ繊維及び金属酸化物ナノ粒子を含む溶液である場合、0.0001〜1質量%の複合ナノ繊維を含む、複合ナノ繊維及び金属酸化物ナノ粒子を含む溶液を基板上に塗布する。)、90℃から150℃で3分から10分加熱した後、400℃から550℃で30分から1時間加熱し、基板上に複合ナノ繊維を積層する。その基板上に積層された複合ナノ繊維を70℃〜90℃で加熱した後、すばやく200g/l〜900g/lのPbIを含むN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液(ペロブスカイト化合物の前駆体溶液)を滴下し、スピンコーターにて1000rpm〜8000rpmの速さで5秒〜60秒間回転させる。PbI含有DMF溶液の滴下量は、複合ナノ繊維が積層された基板の大きさによるが、2cm角基板では40μl〜100μl程度である。PbI含有DMF溶液を滴下後、70℃〜120℃で加熱し、溶剤を蒸発させる。その基板を5g/l〜20g/lのヨウ化メチルアンモニウムを含む2−プロパノール溶液に10秒〜60秒間浸漬する。浸漬後の基板を2−プロパノールに1秒〜5秒間浸して洗浄し、スピンコーターにて500rpm〜5000rpmの速さで30秒〜90秒間回転させた後、70℃〜120℃で20分間から50分間加熱する。この加熱により、溶媒を蒸発させことで、複合ナノ繊維の周囲に鉛ペロブスカイト層が形成され複合材料を得ることができる。
あるいは、他の具体的な一例として、複合材料を得るために、基板上に積層された複合ナノ繊維に、200g/l〜900g/lのPbIと100g/l〜300g/lのヨウ化メチルアンモニウムとを含むDMF溶液を滴下する。このPbI−ヨウ化メチルアンモニウム含有DMF溶液に10〜100μlのジメチルスルホキシド(DMSO)が含有されていても良い。PbI−ヨウ化メチルアンモニウム含有DMF溶液の滴下量は、複合ナノ繊維が積層された基板の大きさによるが、2cm角基板では40μl〜100μl程度である。その基板をスピンコーターにて1000rpm〜8000rpmの速さで5秒〜10秒間回転させた後、クロロベンゼンあるいはジエチルエーテルを基板の中央に勢いよく滴下し、さらに10秒〜60秒間回転させる。クロロベンゼンの滴下量は、複合ナノ繊維が積層された基板の大きさによるが、2cm角基板では100μl〜200μl程度である。また、ジエチルエーテルの滴下量は、複合ナノ繊維が積層された基板の大きさによるが、2cm角基板では300μl〜700μl程度である。最後に、その後基板を70℃〜120℃で1分間〜20分間加熱することで、複合ナノ繊維の周囲に鉛ペロブスカイト層が形成され複合材料を得ることができる。最後の基板加熱の前に、50℃から70℃で30秒から90秒の前加熱を行っても良い。この方法により(II)工程を行うことで外部量子収率も向上させることができる。
ペロブスカイト化合物と複合ナノ繊維とを含む複合材料の形成は、シリコン基板等に複合材料を載せ、乾燥させた後、シリコン基板を切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)のエネルギー分散型X線分析(EDS)で分析し、ペロブスカイト化合物の構成成分である鉛等と複合ナノ繊維の構成成分であるチタンや金等の空間的局在をマッピングし、ナノレベルで混在状態であることで確認できる。あるいは、複合材料を透過型電子顕微鏡(TEM)のEDSや電子エネルギー損失分光法(EELS)で分析し、ペロブスカイト化合物の構成成分である鉛等と複合ナノ繊維の構成成分であるチタンや金等の空間的局在をマッピングし、ナノレベルで混在状態であることで確認できる。
((III)工程)
(III)工程は、金属酸化物ナノ粒子を配合する工程である。
配合方法は特に限定されない。好適な実施形態として、金属酸化物ナノ粒子含有溶液と、(I)工程で得た複合ナノ繊維とを混合する。その後、必要に応じて焼成(加熱処理)してもよい。
金属酸化物ナノ粒子含有溶液における溶剤としては、後述する複合ナノ繊維含有溶液における溶剤と同様である。焼成は、((I)工程)にて上述したとおりであり、好ましい範囲も同様である。配合量は前記記載の通りである。
(III)工程は、(I)工程と(II)工程と間に実施することが好ましい。この場合、複合ナノ繊維及び金属酸化物ナノ粒子を含む溶液に、ペロブスカイト化合物の前駆体溶液を混合させ、(II)工程と同様の条件にて加熱する。
複合ナノ繊維及び金属酸化物ナノ粒子を含む溶液中に含まれる複合ナノ繊維の含有量は、金属酸化物ナノ粒子100質量%あたり、0.01質量%〜10質量%含有することが好ましく、0.1質量%〜1質量%含有することがより好ましく、0.2質量%〜0.5質量%含有することがさらに好ましい。
<光電変換素子>
本発明の光電変換素子は、第1の電極と、第2の電極と、第1及び第2の電極間に、本発明の複合材料を含む活性層とを備える。本発明の電子デバイスは、本発明の光電変換素子を含む。
活性層の厚みは、特に限定されるものではないが、50nm〜3000nmであることが好ましく、100nm〜1500nmがより好ましく、200nm〜1000nmがさらに好ましい。本発明の光電変換素子における活性層は、本発明の複合材料を含むことから、厚みが10nm〜1000nmであっても導電性及び光電変換効率を向上させることができる。活性層は単層であっても多層であってもよく、多層の場合は合計厚みが上記範囲内であることが好ましい。
活性層の厚みの測定には、走査型電子顕微鏡や段差計を用いて測定できる。例えば、光電変換素子を切断し、オスミウムコーター(例えば、メイワフォーシス株式会社製「Neoc‐Pro ネオオスミウムコーター」)でオスミウムコーティングした後、その断面を走査型電子顕微鏡(例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製「SU6600」)により、素子断面が写真内に納まるように、5〜10枚程度写真撮影を行う。好ましい倍率は10000〜50000倍である。活性層はSEM像の陰影の差で判別でき、判別しづらい場合にはエネルギー分散型X線分析(EDS)マッピングによって見分けることができる。得られた写真の画像を、画像処理ソフト(米国NIH製「Image−J」)で、8bitグレースケールに変更する。Straightコマンド等でSEM画像中の100nm〜1μmの長さバーと同じ長さに線を引き、Image−Jのツールバーに表示されたその長さを画像中の単位長さとする。次にSEM画像中の活性層の厚みをStraightコマンド等で計測し、撮影された活性層の50〜100箇所の長さの平均値をとることにより活性層の厚みが求められる。
電子デバイスとしては、太陽電池、発光素子、スイッチング素子、光センサーなどが挙げられ、中でも太陽電池が好ましい。太陽電池の中でも、ペロブスカイト型太陽電池がより好ましい。
(太陽電池)
図3は、ペロブスカイト型太陽電池(以下、特に断りがない限り単に「太陽電池」ともいう。)の切断端面を示す概略的な図である。図3に一例として示されるように、本発明の太陽電池100は、透明電極61と、この透明電極61上に設けられている、本発明の複合材料を含む光電変換層70を有している。光電変換層70は、透明電極61と組み合わされて光電極を構成する。また、太陽電池100は、光電変換層70に対向する位置に、正孔輸送層80及び対向電極90が配置されている。
透明電極の材料としては、例えばインジウムスズ酸化物(ITO)、亜鉛スズ酸化物(ZTO)、フッ素ドープスズ酸化物(FTO)、SnO、In、ZnO等が挙げられる。また、金属リード線等を用いてもよい。金属リード線の材質はアルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケル等の金属が挙げられる。金属リード線は、基板に蒸着、スパッタリング、圧着等で設置し、その上にITO又はFTOを設ける方法が挙げられる。
透明電極の材料自体は透明でなくてもよい。透明電極は、例えば不透明な材料を用いた多孔性の層とし、透明電極全体として透光性の構造として構成してもよい。
また、透明電極の代わりに、Chem. Mat. 20[15](2008)4974−4979に記載されているような不透明な材料を用いて、光が入射する側の基板から離間するように形成される電極を備える、いわゆるBCE(back contact electrode)構造を採用することもできる。
透明電極は、これらの材料からなる単層又は複数の層が積層された積層層により形成し得る。
光電変換層70は、透明電極側から、緻密電子輸送層71及び多孔質電子輸送層72を備え、多孔質電子輸送層72は本発明の複合材料を含む。なお、多孔質電子輸送層は、本発明の光電変換素子における活性層に相当し、多孔質電子輸送層の厚みは該活性層と同様であり、好ましい範囲も同様である。緻密電子輸送層の「緻密」とは、多孔質電子輸送層よりも高密度で材料が充填されていることを意味する。
緻密電子輸送層の材料としては、通常半導体に用いるものを使用することができる。具体的には、シリコン、ゲルマニウムのような単体半導体、あるいは金属のカルコゲニドに代表される化合物半導体、酸化物半導体、又はペロブスカイト構造を有する化合物等を挙げることができる。金属のカルコゲニドとしてはチタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、あるいはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマスの硫化物、カドミウム、鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム、等のリン化物、ガリウム砒素、銅−インジウム−セレン化物、銅−インジウム−硫化物等が好ましい。また、ペロブスカイト構造を有する化合物としては、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等が好ましい。これらの中でも、逆電子移動の抑制手段、短絡防止手段、及び電荷を蓄える観点から、酸化物半導体が好ましく、特に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブが好ましく、単独、あるいは2種以上の混合で使用しても構わない。これらの半導体の結晶型は特に限定されるものではなく、単結晶でも多結晶でも、あるいは非晶質でも構わない。酸化チタンは、ルチル型、アナターゼ型のいずれであってもよい。
半導体の微粒子のサイズに特に制限はないが、一次粒子の平均粒子径は1〜100nmが好ましく、5〜50nmがより好ましい。また、より大きい平均粒子径の微粒子を混合あるいは積層して入射光を散乱させる効果により、効率を向上させることも可能である。この場合の半導体の平均粒子径は50〜500nmが好ましい。半導体の平均粒子径は、動的光散乱(DLS)分析により決定できる。例えば、適当な粒子濃度となるように調製した溶液サンプルを、動的光散乱式粒子径分布測定装置(例えば、英国マルバーン製のゼータサイザーナノZS)を用いた測定により得られる分布のモード径として決定できる。
緻密電子輸送層の厚みとしては、逆電子移動の抑制手段、短絡防止手段、及び電荷を蓄える観点から、20nm〜80nmが好ましく、30nm〜70nmがより好ましく、40nm〜60nmがさらに好ましい。緻密電子輸送層は単層であっても多層であってもよく、多層の場合は合計厚みが上記範囲内であればよい。
多孔質電子輸送層は、複合材料を含み、さらに増感色素を含んでいてもよい。増感色素は、吸収波長が可視光領域及び赤外光領域にあるものであって、複合材料に強固に吸着させるために、増感色素の分子中に例えばカルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等のインターロック基を有するものが好ましく、なかでもカルボン酸基及びカルボン酸無水基を有するものがより好ましい。インターロック基とは、励起状態の増感色素と複合材料との間の電子の移動を容易にする電気的結合を提供する基である。
増感色素としては、例えばルテニウムビピリジン色素、アゾ色素、キノン色素、キノンイミン色素、キナクリドン色素、スクアリリウム色素、シアニン色素、メロシアニン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素、ポリフィリン色素、フタロシアニン色素、べリレン色素、インジゴ色素、ナフタロシアニン色素等が挙げられる。
多孔質電子輸送層中の複数の複合材料の配列の態様は特に限定されない。複数の複合材料は、例えばマトリクス状に複数の複合材料同士が互いに等間隔となるように配列していてもよい。
正孔輸送層は、正孔輸送化合物を含み、多孔質電子輸送層上に設けられてなる。正孔輸送化合物は、溶液塗布可能で固体状になる有機正孔輸送材料が好ましく、例えば、2,2’,7,7’−テトラキス−(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン)−9,9−スピロビフルオレン(Spiro−OmeTAD)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)、4−(ジエチルアミノ)ベンゾアルデヒドジフェニルヒドラゾン、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等が挙げられる。
対向電極は、既に説明した透明電極と同じ材料を用いて形成することができる。対向電極の材料は、具体的には、金属(例、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム)、導電性金属酸化物(例、ITO、SnO)が挙げられる。対向電極の厚みは、3nm〜10μmが好ましく、材料が特に金属の場合には、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。
太陽電池は、例えばスーパーストレート型、サブストレート型のいずれの型の太陽電池としても構成することができる。
透明電極は、第1の基板(図示せず)上に設けられていてもよく、対向電極の光電変換層側とは反対側の面に第2の基板(図示せず)を有していてもよい。
第1の基板及び第2の基板としては、太陽電池全体を支持し得ることを条件として特に限定されない。第1の基板及び第2の基板としては、例えば、ガラス;ポリイミド、PET、PEN、PES、テフロン(登録商標)等の耐熱性の高分子フィルム;ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム板等の金属、セラミック等を単独又は積層構造で用いることができる。第1の基板は、光を入射させる側であるので、透明又は半透明であることが好ましく、高い透明性を有することがより好ましい。
(太陽電池の製造方法)
本発明の太陽電池の製造方法は、図4に一例を示すように、
(i)第1の基板50上に透明電極61を準備する工程、
(ii)透明電極61上に緻密電子輸送層71を形成する工程、
(iii)緻密電子輸送層71上に多孔質電子輸送層72を成膜する工程、
(iv)多孔質電子輸送層72上に正孔輸送層80を成膜する工程、及び
(v)正孔輸送層80上に対向電極90を形成する工程、を含む。
−(i)工程−
(i)工程では、透明電極を準備する。透明電極は第1の基板を備える。第1の基板上に、透明電極をスパッタ法、真空蒸着法等によって成膜することにより形成してもよい。
−(ii)工程−
(ii)工程では、透明電極上に緻密電子輸送層を形成する。緻密電子輸送層の形成方法は特に制限はなく、真空蒸着法、スパッタリング等が挙げられ、真空蒸着法が好ましい。また、湿式製膜法により緻密電子輸送層を形成してもよく、例えば、緻密電子輸送層を構成する微粒子の粉末あるいはゾルを分散したペーストを調製し、透明電極上に塗布する方法が好ましい。また、緻密電子輸送層を構成する微粒子の前駆体となる金属アルコキシドが含有された溶液を透明電極上に塗布し、加熱処理などの適切な処理によって緻密電子輸送層に変換する方法が好ましい。この湿式製膜法を用いた場合、塗布方法は特に制限はなく、公知の方法に従って行なうことができる。例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等様々な方法を用いることができる。湿式製膜法に用いる溶剤は、後述する複合ナノ繊維含有溶液における溶剤と同様である。
−(iii)工程−
(iii)工程では、緻密電子輸送層上に多孔質電子輸送層を成膜する。詳細は、緻密電子輸送層上に複合ナノ繊維含有溶液を塗布し、複合ナノ繊維含有膜721を成膜後、ペロブスカイト化合物の前駆体溶液を複合ナノ繊維含有膜上に塗布してペロブスカイト化合物の前駆体を複合ナノ繊維含有膜721に浸透させた後、加熱を行う。複合ナノ繊維含有溶液とは、溶剤中に、複合ナノ繊維が分散した溶液であり、その中に金属酸化物ナノ粒子を含んでいてもよい。複合ナノ繊維含有溶液中の固形分の含有量は、溶液100質量%に対して、好ましくは、1質量%〜20質量%、より好ましくは3質量%〜7質量%となるように溶剤中に複合ナノ繊維や金属酸化物ナノ粒子を含有させる。複合ナノ繊維含有溶液中の固形分は、複合ナノ繊維(金属酸化物ナノ粒子が含まれる場合は複合ナノ繊維及び金属酸化物ナノ粒子)である。
複合ナノ繊維含有溶液の塗布方法は特に制限はなく、公知の方法に従って行なうことができる。例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等様々な方法を用いることができる。
複合ナノ繊維含有溶液における溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、α−テルピネオール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、あるいはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ギ酸エチル、酢酸エチル、あるいは酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、あるいはジオキサン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、あるいはN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、あるいは1−クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、1,5−ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、あるいはクメン等の炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらは単独、あるいは2種以上の混合溶剤として用いることができる。また、複合ナノ繊維含有溶液は、必要に応じて半導体及び/又は金属酸化物ナノ粒子を含んでいてもよい。
ペロブスカイト化合物の前駆体溶液の塗布方法は、複合ナノ繊維含有溶液の塗布方法と同様である。また、塗布後の加熱は、<複合材料の製造方法>にて上述したとおりであり、好ましい範囲も同様である。
(iv)工程では、多孔質電子輸送層上に正孔輸送層を成膜する。正孔輸送化合物を含有する正孔輸送化合物含有溶液を塗布し、乾燥して正孔輸送層を成膜する。正孔輸送化合物含有溶液の塗布方法は導電性ナノ繊維含有溶液の塗布方法と同様である。
(v)工程は、(i)工程と同様にして行うことが好ましい。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。これらの実施例により本発明はなんら限定されない。
<実施例1:複合ナノ繊維(酸化チタンで被覆された金ナノワイヤ)の作製>
N末端にminTBP−1(アミノ酸配列RKLPD(配列番号1)(K.Sano,H.Sasaki,K.Shiba,Langmuir 2005,21,3090−3095参照))が融合され、C末端にGBP(アミノ酸配列HGKTQATSGTIQS(配列番号2)(S.Brown,Nat.Biotechnol. 1997,15,269−272.を参照))が融合されたListeria innocua由来の金属内包性タンパク質Dps(TDG1)を構築するため、minTBP−1が融合されたDps遺伝子(TD遺伝子)が搭載されたpET20(pET20−TD(I.Inoue,B.Zheng,K.Watanabe,Y.Ishikawa,K.Shiba,H.Yasueda,Y.Uraoka,I.Yamashita,Chem.Commun. 2011,47,12649−12651.を参照))を鋳型として、5’−TTTGGATCCT TAGCTCTGAA TGGTGCCGCT GGTCGCCTGG GTTTTGCCAT GTTCTAATGG AGCTTTTCCA AG−3’(配列番号3)および5’−TTTGGATCCG AATTCGAGCT CCGTCG−3’(配列番号4)をプライマーとしてPCRを行った。得られたPCR産物を、制限酵素DpnIとBamHIで消化し、セルフライゲーションさせることで、TDG1をコードする遺伝子が搭載された発現プラスミド(pET20−TDG1)を構築した。
続いて、構築したpET20−TDG1を導入したEscherichia coli BL21(DE3)をLB培地(10g/lのBacto−typtone、5g/l Bacto−yeast extract、5g/lのNaCl、100mg/lのアンピシリンを含む)100ml、37℃で24時間フラスコ培養した。得られた菌体を超音波破砕した後、上清を60℃で20分間加熱した。加熱後得られた上清を、50mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)で平衡化されたHiLoard 26/10 Q−Sepharose High Performanceカラム(GE healthcare社)に注入し、0mMから500mM NaClを含む50mM TrisHCl緩衝液(pH8.0)で塩濃度勾配をかけることで、TDG1を分離精製した。
金ナノワイヤ(716944−10ML、Sigma−Aldrich製)を室温から60℃に加熱した水で5回洗浄し、金ナノワイヤの分散剤を除去した。その金ナノワイヤとTDG1を共に終濃度0.1mg/mlとなるようにTris−HCl緩衝液(50mM、pH8.0)中に懸濁し、超音波処理(200W、20%Duty、1秒/ON、3秒/OFF、ON合計5分間、4℃)した。その後、遠心分離(15,000rpm、2分)で沈殿を回収した。その沈殿をTris−HCl緩衝液(50mM、pH8.0)で2回洗浄した後、MES−NaOH緩衝液(50mM、pH6.0)に懸濁し、TDG1被膜された金ナノワイヤを得た。
図5(図5(b)は図5(a)の拡大像)に示すように、TDG1被膜された金ナノワイヤは、3%りんタングステン酸染色による透過型電子顕微鏡(TEM)像によって確認した。
続いて、MES−NaOH緩衝液に懸濁されたTDG1被膜された金ナノワイヤに、終濃度2.5体積%となるようにTitanium(IV)bis−(ammonium lactato)−dihydroxideを加え室温で6時間放置した。放置後、15,000rpmで2分間遠心分離し、沈殿を回収した。沈殿を水とエタノールでそれぞれ二回ずつ洗浄した後、エタノールに懸濁した。その溶液に終濃度0.001体積%となるようにTitanium(IV) Tetrabutoxideを加え80℃で2時間放置し、沈殿を得た。その沈殿を水に懸濁後、超音波処理(200W、20%Duty、1秒/ON、1秒/OFF、ON合計30秒)し、分散させた。図6(図6(b)は図6(a)の拡大像)に示すように、得られたサンプルを無染色でTEM解析したところ、金ナノワイヤ周囲に金属質の薄膜が特異的に形成されていた。
(複合ナノ繊維(酸化チタンを被膜した金ナノワイヤ)の物性評価)
実施例1にて作製した複合ナノ繊維は、透過型電子顕微鏡(TEM、JEM−3100FEF、JEOL日本電子(株)製)によるエネルギー分散型X線分析(EDS)マッピングと電子エネルギー損失分光法(EELS)マッピングによって確認した。
EDSマッピングでは、金原子、酸素原子、及びチタン原子の3元素に対してマッピングを行った。図7は、複合ナノ繊維(酸化チタン被膜させた金ナノワイヤ)のエネルギー分散型X線分析(EDS)を用いた元素分析のマッピング像を示す図である。これにより、得られたワイヤ状の構造物が少なくとも金元素、酸素元素及びチタン元素で構成されていることが分かった。特に、酸素元素とチタン元素のマッピング像では、金元素のマッピング像で観察されたワイヤ構造よりも、幅の太いワイヤ構造が観察されており、金元素周囲の膜構造には酸素とチタンが含有されていることが示唆された。また、EELSマッピングでも同様に金原子が豊富なワイヤ状の構造体の周囲にチタン原子が豊富に存在することが分かった。図8は、酸化チタン被膜させた金ナノワイヤの電子エネルギー損失分光法(EELS)を用いた元素分析のマッピング像を示す図である。以上のことから、TDG1を利用することで、金ナノワイヤの周囲に特異的に酸化チタン膜を形成させることができたことがわかる。
<実施例2:ペロブスカイト型太陽電池の作製>
1.5cm角にカットされた高耐久性透明導電膜基板(15Ω/□、ジオマテック製)をアルカリ洗剤(M−241N、アズワン)とアセトンそれぞれで超音波洗浄し、室温でUV/O処理を15分間行った。その導電膜基板の上に、電子線蒸着装置を用いて酸化チタンを50nm堆積させ緻密電子輸送層を形成した。続いて、酸化チタンペースト(PST−18NR、日揮触媒化成製)に対して99%エタノールを質量比1対5で混和し、酸化チタン溶液を得た。実施例1で作製した複合ナノ繊維を、酸化チタンペーストに含有される酸化チタンナノ粒子100質量%あたり0.2質量%で酸化チタン溶液に添加した。その酸化チタン溶液を緻密電子輸送層の上に100μl滴下し、スピンコーターを用いて1000rpmで5秒間回転後、5000rpmで25秒間回転した。その基板をホットプレートにより125℃で5分間加熱し、マッフル炉にて500℃で30分間加熱することで複合ナノ繊維含有膜を形成させた。
その複合ナノ繊維含有膜が積層された基板をグローブボックス(露点<−65℃、O濃度<5ppm)に入れ、多孔質電子輸送層の形成を行った。まず、45質量%鉛ペロブスカイト前駆体溶液を調製するため、ヨウ化メチルアンモニウム(MAI)0.200gとPbI 0.578gをバイアル瓶に取り、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)1mlを加え溶解させた。回転子を用いて室温で20分以上撹拌した後、ポリテトラフルオロエチレンフィルター(0.2μm)でろ過した。続いて、先に作製した複合ナノ繊維含有膜が形成された基板をスピンコーターにセットし、鉛ペロブスカイト前駆体溶液を50μl滴下した。その基板を5000rpmで31秒間回転させた。ここで、基板を回転させてから6秒後に150μlのクロロベンゼンを基板の中央に滴下した。その後基板を100℃で10分間加熱した後、アルミニウム板の上に置き室温まで冷却させ、多孔質電子輸送層を形成した。多孔質電子輸送層が形成された基板をスピンコーターにセットし、Spiro−OmeTAD溶液を40μl滴下し、1000rpmで4秒、4000rpmで26秒間回転させ正孔輸送層を形成させた。なお、Spiro−OmeTAD溶液は、有機p型半導体Spiro−OmeTAD 28.9mgを400μlのクロロベンゼンに溶解後、4−tert−Butyl Pyridineを11.5μl、520mg/mlのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアセトニトリル溶液を7μl加えることで調整した。
最後に、抵抗線加熱蒸着装置を用いて正孔輸送層表面に金電極を形成した。続いて、余分な正孔輸送層をアセトンでふき取り、むき出しになった緻密電子輸送層をガラス用特殊はんだセラソルザ(旭硝子社製)で被膜し、ペロブスカイト型太陽電池を得た。
<実施例3:ペロブスカイト型太陽電池の作製>
実施例2において、実施例1で作製した複合ナノ繊維の添加量を酸化チタンペーストに含有される酸化チタンナノ粒子100質量%あたり0.2質量%から0.3質量%に代えた。以上の事項以外は実施例2と同様にしてペロブスカイト型太陽電池を作製した。
<実施例4:ペロブスカイト型太陽電池の作製>
実施例2において、実施例1で作製した複合ナノ繊維の添加量を酸化チタンペーストに含有される酸化チタンナノ粒子100質量%あたり0.2質量%から0.4質量%に代えた。以上の事項以外は実施例2と同様にしてペロブスカイト型太陽電池を作製した。
<実施例5:ペロブスカイト型太陽電池の作製>
実施例2において、実施例1で作製した複合ナノ繊維の添加量を酸化チタンペーストに含有される酸化チタンナノ粒子100質量%あたり0.2質量%から0.5質量%に代えた。以上の事項以外は実施例2と同様にしてペロブスカイト型太陽電池を作製した。
<実施例6:複合ナノ繊維(酸化チタンで覆されたカーボンナノチューブ)の作製>
N末端にNHBP−1(アミノ酸配列DYFSSPYYEQLF(配列番号5)からなる。国際公開第2006/068250号を参照)が融合され、C末端にminTBP−1(アミノ酸配列RKLPD(配列番号1)(K.Sano,H.Sasaki,K.Shiba,Langmuir 2005,21,3090−3095参照))が融合されたListeria innocua由来の金属内包性タンパク質Dps(CDT1、WO2012/086647あるいはI.Inoue,et al.,Chem.Commun.,2011,47,12649−12651を参照)をコードする遺伝子が搭載された発現プラスミド(pET20−CDT1)を導入したE.coli BL21(DE3)をLB培地(10g/lのBacto−typtone、5g/l Bacto−yeast extract、5g/lのNaCl、100mg/lのアンピシリンを含む)100ml、37℃で24時間フラスコ培養した。得られた菌体を超音波破砕した後、上清を60℃で20分間加熱した。加熱後得られた上清を、50mMのTrisHCl緩衝液(pH8.0)で平衡化されたHiLoard 26/10 Q−Sepharose High Performanceカラム(GE healthcare社製)に注入し、0mMから500mM NaClを含む50mM TrisHCl緩衝液(pH8.0)で塩濃度勾配をかけることで、CDT1を分離精製した。
カーボンナノチューブを室温から60℃に加熱した水で5回洗浄し、カーボンナノチューブの分散剤を除去した。そのカーボンナノチューブとCDT1を共に終濃度0.1mg/mlとなるようにTris−HCl緩衝液(50mM、pH8.0)中に懸濁し、超音波処理(200W、20%Duty、1秒/ON、3秒/OFF、ON合計5分間、4℃)した。その後、遠心分離(15,000rpm、2分)で沈殿を回収した。その沈殿をTris−HCl緩衝液(50mM、pH8.0)で2回洗浄した後、MES−NaOH緩衝液(50mM、pH6.0)に懸濁し、CDT1被膜されたカーボンナノチューブを得た。
続いて、MES−NaOH緩衝液に懸濁されたCDT1被膜されたカーボンナノチューブに、終濃度2.5体積%となるようにTitanium(IV)bis−(ammonium lactato)−dihydroxideを加え室温で6時間放置した。放置後、15,000rpmで2分間遠心分離し、沈殿を回収した。沈殿を水とエタノールでそれぞれ二回ずつ洗浄した後、エタノールに懸濁し酸化チタンで覆されたカーボンナノチューブを得た。
<実施例7:ペロブスカイト型太陽電池の作製>
1.5cm角にカットされた高耐久性透明導電膜基板(15Ω/□、ジオマテック社製)をアルカリ洗剤(M−241N、アズワン社製)とアセトンそれぞれで超音波洗浄し、室温でUV/O処理を15分間行った。その導電膜基板の上に、電子線蒸着装置を用いて酸化チタンを50nm堆積させ緻密電子輸送層を形成した。続いて、酸化チタンペースト(PST−18NR、日揮触媒化成社製)に対して99%エタノールを質量比1対5で混和し、酸化チタン溶液を得た。実施例6で作製した複合ナノ繊維を、酸化チタンペーストに含有される酸化チタンナノ粒子100質量%あたり0.2質量%で酸化チタン溶液に添加した。その酸化チタン溶液を緻密電子輸送層の上に100μl滴下し、スピンコーターを用いて1000rpmで5秒間回転後、5000rpmで25秒間回転した。その基板をホットプレートにより125℃で5分間加熱し、マッフル炉にて500℃で30分間加熱することで複合ナノ繊維含有膜を形成させた。
その複合ナノ繊維含有膜が積層された基板をグローブボックス(露点<−65℃、O濃度<5ppm)に入れ、多孔質電子輸送層の形成を行った。まず、45質量%鉛ペロブスカイト前駆体溶液を調製するため、ヨウ化メチルアンモニウム(MAI)0.200gとPbI 0.578gをバイアル瓶に取り、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)1mlを加え溶解させた。回転子を用いて室温で20分以上撹拌した後、ポリテトラフルオロエチレンフィルター(0.2μm)でろ過した。続いて、先に作製した複合ナノ繊維含有膜が形成された基板をスピンコーターにセットし、鉛ペロブスカイト前駆体溶液を50μl滴下した。その基板を5000rpmで31秒間回転させた。ここで、基板を回転させてから6秒後に150μlのクロロベンゼンを基板の中央に滴下した。その後基板を100℃で10分間加熱した後、アルミニウム板の上に置き室温まで冷却させ、多孔質電子輸送層を形成した。多孔質電子輸送層が形成された基板をスピンコーターにセットし、Spiro−OmeTAD溶液を40μl滴下し、1000rpmで4秒、4000rpmで26秒間回転させ正孔輸送層を形成させた。なお、Spiro−OmeTAD溶液は、有機p型半導体Spiro−OmeTAD 28.9mgを400μlのクロロベンゼンに溶解後、4−tert−Butyl Pyridineを11.5μl、520mg/mlのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド/アセトニトリル溶液を7μl加えることで調整した。
最後に、抵抗線加熱蒸着装置を用いて正孔輸送層表面に金電極を形成した。続いて、余分な正孔輸送層をアセトンでふき取り、むき出しになった緻密電子輸送層をガラス用特殊はんだセラソルザ(旭硝子社製)で被膜し、ペロブスカイト型太陽電池を得た。
<実施例8:ペロブスカイト型太陽電池の作製>
実施例7において、実施例6で作製した複合ナノ繊維の添加量を酸化チタンペーストに含有される酸化チタンナノ粒子100質量%あたり0.2質量%から0.3質量%に代えた。以上の事項以外は実施例7と同様にしてペロブスカイト型太陽電池を作製した。
<実施例9:ペロブスカイト型太陽電池の作製>
実施例7において、実施例6で作製した複合ナノ繊維の添加量を酸化チタンペーストに含有される酸化チタンナノ粒子100質量%あたり0.2質量%から0.4質量%に代えた。以上の事項以外は実施例7と同様にしてペロブスカイト型太陽電池を作製した。
<実施例10:ペロブスカイト型太陽電池の作製>
実施例7において、実施例6で作製した複合ナノ繊維の添加量を酸化チタンペーストに含有される酸化チタンナノ粒子100質量%あたり0.2質量%から0.5質量%に代えた。以上の事項以外は実施例7と同様にしてペロブスカイト型太陽電池を作製した。
<比較例1:ペロブスカイト型太陽電池の作製>
実施例2において、実施例1で作製した複合ナノ繊維を添加しなかった。以上の事項以外は実施例2と同様にしてペロブスカイト型太陽電池を作製した。
<比較例2:ペロブスカイト型太陽電池の作製>
実施例3において、実施例1で作製した複合ナノ繊維の代わりに金ナノワイヤを添加した。以上の事項以外は実施例3と同様にしてペロブスカイト型太陽電池を作製した。
<比較例3:ペロブスカイト型太陽電池の作製>
実施例8において、実施例6で作製した複合ナノ繊維の代わりにカーボンナノチューブを添加した。以上の事項以外は実施例8と同様にしてペロブスカイト型太陽電池を作製した。
<ペロブスカイト型太陽電池の評価>
作製した太陽電池の電流−電圧特性は、ソーラーシミュレーターを用いてキセノンランプで100mW/cmの強さの光(AM1.5)が照射される中、半導体パラメーター・アナライザ4156B(Agilent Technologies製)で逆バイアス電圧をかけながら測定した。なお、その電流−電圧特性を測定する際の遅延時間は100m秒で行った。ペロブスカイト型太陽電池のインピーダンス解析には、Potentiostat/Galvanostat(SP−150(BioLogic製)を使用し、ソーラーシミュレーターを用いてキセノンランプで100mW/cmの強さの光(AM1.5)が照射される中、100mHz〜1MHzの周波数域で測定した。結果を図9及び図13に示す。
太陽電池の特性として、太陽電池において、照射光による入射エネルギーのうち、電力に変換された割合である光電変換効率(η(%))、電流が流れていないときの電圧である開放電圧(Voc(V))、電圧0V時に計測される電流密度である短絡電流密度(Jsc(mA/cm))及び光電変換効率ηについての関係式:光電変換効率η=Jsc×Voc×FFにおけるフィルファクター(FF:曲線因子)を評価した。結果を下記表に示す。下記表は、それぞれ独立して試作された3個から30個の太陽電池の平均を示している。また、図10に実施例2〜5、比較例1の光電変換効率を示し、図14に実施例7〜10、比較例1の光電変換効率を示した。
その結果、実施例2〜5、7〜10は、比較例1と比較して、光電変換効率の向上が確認できた。
実施例3は約8.3%の光電変換効率を達成し、比較例1の太陽電池素子と比較して、電流密度が1.20倍、曲線因子の値が1.2倍向上し、光電変換効率は1.5倍向上していた。そして、その性能向上は、比較例2の利用による性能向上(1.3倍)よりも高く、酸化チタン被膜された金ナノワイヤがキャリア輸送の効率化に寄与していることが示唆された。図11に実施例3、比較例1及び比較例2のペロブスカイト型太陽電池の光電変換効率を示す図を示す。
実施例4、5は、実施例3よりも光電変換効率の向上効果は小さくなっていた。これは、複合ナノ繊維が高い濃度で含有することで複合ナノ繊維同士が接触してしまい、発生した光電流が短絡することで多孔質電子輸送層の抵抗が向上してしまった可能性や、照射光が複合ナノ繊維に直接吸収され熱となり、電流として取り出せなかった可能性が考えられる。
実施例8は約7.9%の光電変換効率を達成し、比較例1の太陽電池素子と比較して、電流密度が1.19倍、曲線因子の値が1.2倍向上し、光電変換効率は1.4倍向上していた。そして、その性能向上は、比較例3の利用による性能向上(1.2倍)よりも高く、酸化チタン被膜されたカーボンナノチューブがキャリア輸送の効率化に寄与していることが示唆された。図15に実施例8、比較例1及び比較例3のペロブスカイト型太陽電池の光電変換効率を示す図を示す。
実施例9、10は、実施例8よりも光電変換効率の向上効果は小さくなっていた。これは、複合ナノ繊維が高い濃度で含有することで複合ナノ繊維同士が接触してしまい、発生した光電流が短絡することで多孔質電子輸送層の抵抗が向上してしまった可能性や、照射光が複合ナノ繊維に直接吸収され熱となり、電流として取り出せなかった可能性が考えられる。
図12は、実施例3及び比較例1のペロブスカイト型太陽電池のナイキスト曲線を示す図である。これらの結果から、本発明の複合材料により、多孔質電子輸送層の抵抗が減少し、電流密度や曲線因子が改善したことがわかった。
図16は、実施例8及び比較例1のペロブスカイト型太陽電池のナイキスト曲線を示す図である。これらの結果から、本発明の複合材料により、多孔質電子輸送層の抵抗が減少し、電流密度や曲線因子が改善したことがわかった。
<実施例11:ペロブスカイト型太陽電池の作製>
1.5cm角にカットされた高耐久性透明導電膜基板(FTO、t=1.8mm、AGC Fabritech社製)をエッチングしない部分をテープで被覆し,エッチングしたい部分に亜鉛粉末を撒いた。亜鉛粉末の上から2M塩酸を滴下し、数分間放置した。純水で亜鉛を洗い流した後、アルカリ洗剤(M−241N、アズワン社)とアセトンそれぞれで超音波洗浄し、室温でUV/O処理を115℃で30分間行った。その処理された導電膜基板の上に、酸化チタン前駆体としてTitanium diisopropoxide bis(acetylacetonate)が終濃度0.15Mで溶解した1−butanol溶液50μLを滴下し、700rpmで8秒、1000rpmで10秒、そして2000rpmで40秒と連続的に回転数を変えてスピンコートした。その後、125℃に加熱したホットプレート上で5分間加熱し、緻密電子輸送層として緻密酸化チタン層を構築した。続いて、酸化チタンペースト(PST−18NR、日揮触媒化成社製)に対して99%エタノールを質量比1対5で混和し、酸化チタン溶液を得た。実施例1で作製した複合ナノ繊維を、酸化チタンペーストに含有される酸化チタンナノ粒子100質量%あたり0.3質量%で酸化チタン溶液に添加した。その酸化チタン溶液を緻密電子輸送層の上に50μl滴下し、スピンコーターを用いて1000rpmで5秒間回転後、5000rpmで25秒間回転した。その基板をホットプレートにより125℃で5分間加熱し、マッフル炉にて450℃で1時間加熱した。その基板を115℃で加熱しながら、UV/O処理を15分間行うことで複合ナノ繊維含有膜を形成させた。
その複合ナノ繊維含有膜が積層された基板を、窒素による換気で気相中の有機溶剤が除去され、酸素と水分を除去されたグローブボックス(露点<−65℃、O濃度<5ppm)に入れ、多孔質電子輸送層の形成を行った。まず、45質量%鉛ペロブスカイト前駆体溶液を調製するため、ヨウ化メチルアンモニウム(MAI)0.159gとPbI 0.461gをバイアル瓶に取り、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)0.635mlを加え溶解させた。さらに、ジメチルスルホキシド(DMSO)を0.0672ml加え、回転子を用いて室温で3時間以上撹拌した後、ポリテトラフルオロエチレンフィルター(0.2μm)でろ過した。続いて、先に作製した複合ナノ繊維含有膜が形成された基板をスピンコーターにセットし、鉛ペロブスカイト前駆体溶液を50μl滴下した。その基板を4000rpmで25秒間回転させた。ここで、基板を回転させてから6秒後に500μlのジエチルエーテルを基板の中央に滴下した。その後基板を65℃で1分間、100℃で2分間加熱した後、アルミニウム板の上に置き室温まで冷却させ、多孔質電子輸送層を形成した。多孔質電子輸送層が形成された基板をスピンコーターにセットし、Spiro−OmeTAD溶液を40μl滴下し、1000rpmで4秒、4000rpmで26秒間回転させ正孔輸送層を形成させた。なお、Spiro−OmeTAD溶液は、有機p型半導体Spiro−OmeTAD 17mgを240μlのクロロベンゼンに溶解後、4−tert−Butyl Pyridineを6.9μl、520mg/mlのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド/アセトニトリル溶液を4.2μl加えることで調整した。
最後に、抵抗線加熱蒸着装置を用いて正孔輸送層表面に厚さ80nmの金電極を形成した。続いて、余分な正孔輸送層をアセトンでふき取り、むき出しになった緻密電子輸送層をガラス用特殊はんだセラソルザ(旭硝子社製)で被膜し、ペロブスカイト型太陽電池を得た。
<実施例12:ペロブスカイト型太陽電池の作製>
実施例11において、複合ナノ繊維の添加量を酸化チタンペーストに含有される酸化チタンナノ粒子100質量%あたり0.3質量%から0.6質量%に代えた。以上の事項以外は実施例11と同様にしてペロブスカイト型太陽電池を作製した。
<比較例4:ペロブスカイト型太陽電池の作製>
実施例11において、複合ナノ繊維を添加しなかった。以上の事項以外は実施例11と同様にしてペロブスカイト型太陽電池を作製した。
<ペロブスカイト型太陽電池の評価>
作製された太陽電池の電流−電圧特性は、分光感度測定装置(分光計器CEP−2000RR)を用いてキセノンランプで100mW/cmの強さの光(AM1.5)が照射される中、測定範囲−0.2Vから1.2V、測定間隔0.05Vで逆バイアス電圧をかけながら測定した。この時の、光が照射される面積は0.09cmであった。なお、その電流−電圧特性を測定する際の遅延時間は3秒で行った。また、外部量子効率(EQE)も、同様のシステムを用いて、測定光波長の範囲300nmから900nm、測定間隔10nm、各波長の照射エネルギー2.5mW/cmで測定した。
太陽電池の特性として、太陽電池において、照射光による入射エネルギーのうち、電力に変換された割合である光電変換効率(η(%))、電流が流れていないときの電圧である開放電圧(Voc(V))、電圧0V時に計測される電流密度である短絡電流密度(Jsc(mA/cm))及び光電変換効率ηについての関係式:光電変換効率η=Jsc×Voc×FFにおけるフィルファクター(FF:曲線因子)を評価した。結果を下記表に示す。下記表は、それぞれ独立して試作された6個から7個の太陽電池の平均を示している。
その結果、実施例11及び実施例12は、比較例4と比較して、光電変換効率の向上が確認できた。
実施例11は約13.7%の光電変換効率を達成し、比較例4の太陽電池素子と比較して、電流密度が1.12倍、曲線因子の値が1.16倍向上し、光電変換効率は1.33倍向上していた。そして、使用された光のうち400nm以上のすべての波長において外部量子収率は向上しており、酸化チタン被膜された金ナノワイヤがキャリア輸送の効率化や光トラップに寄与していることが示唆された。図17および図18に実施例11及び比較例4のペロブスカイト型太陽電池の光電変換効率及び外部量子収率を示す図を各々示す。
1 ペロブスカイト化合物
10 複合ナノ繊維
11 導電性ナノ繊維
20 金属酸化物ナノ粒子
30 金属酸化物
32 第1の空孔部
34 第2の空孔部
50 第1の基板
61 透明電極
70 光電変換層
71 緻密電子輸送層
72 多孔質電子輸送層
721 導電性ナノ繊維含有膜
80 正孔輸送層
90 対向電極
100 太陽電池

Claims (15)

  1. ペロブスカイト化合物と、金属酸化物で被覆された導電性ナノ繊維とを含む、複合材料。
  2. 導電性ナノ繊維が、導電性ナノワイヤである、請求項1に記載の複合材料。
  3. 導電性ナノワイヤが、金属ナノワイヤである、請求項2に記載の複合材料。
  4. 金属ナノワイヤが、金ナノワイヤ、又は銀ナノワイヤである、請求項3に記載の複合材料。
  5. 導電性ナノ繊維が、カーボンナノチューブである、請求項1に記載の複合材料。
  6. 金属酸化物が、酸化チタン、酸化ニオブ、又は酸化アルミニウムである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合材料。
  7. ペロブスカイト化合物が、有機鉛ペロブスカイト化合物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合材料。
  8. 金属酸化物ナノ粒子をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合材料。
  9. 金属酸化物ナノ粒子が、酸化チタンナノ粒子、酸化ニオブナノ粒子、又は酸化アルミニウムナノ粒子である、請求項8に記載の複合材料。
  10. 金属酸化物で被覆された導電性ナノワイヤ。
  11. 導電性ナノワイヤが、金ナノワイヤ、又は銀ナノワイヤである、請求項10に記載の導電性ナノワイヤ。
  12. 金属酸化物が、酸化チタン、酸化ニオブ、又は酸化アルミニウムである、請求項10又は11に記載の導電性ナノワイヤ。
  13. 第1の電極と、第2の電極と、第1及び第2の電極間に、請求項1〜9のいずれか1項に記載の複合材料を含む活性層とを備える、光電変換素子。
  14. 請求項13に記載の光電変換素子を備える、電子デバイス。
  15. 太陽電池である、請求項14に記載の電子デバイス。
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