JP2017223646A - 時計部品の製造方法および時計部品 - Google Patents
時計部品の製造方法および時計部品 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2017223646A JP2017223646A JP2017034062A JP2017034062A JP2017223646A JP 2017223646 A JP2017223646 A JP 2017223646A JP 2017034062 A JP2017034062 A JP 2017034062A JP 2017034062 A JP2017034062 A JP 2017034062A JP 2017223646 A JP2017223646 A JP 2017223646A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- base material
- hairspring
- timepiece
- temperature compensation
- etching
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Micromachines (AREA)
Abstract
【課題】強度向上と温度補償性能の確保とを両立させた時計部品の製造方法および強度向上と温度補償性能の確保とを両立させた時計部品を提供すること。
【解決手段】SOI基板における活性層にマスクを形成し、当該マスクを用いてデバイス層に対するエッチング加工をおこない、このエッチング加工によりエッチングされたデバイス層に形成された細溝内に、シリコンの温度特性とは異なる温度特性を有する温度補償材料を用いて温度補償部材204を形成し、当該温度補償部材204を形成した母材200の表面を当該温度補償部材204とともにシリコンよりも粘靱性の高い材料を用いて形成された樹脂膜206によって被覆することにより、強度向上と温度補償性能の確保とを両立させた時計部品108を形成することができる。
【選択図】図2B
【解決手段】SOI基板における活性層にマスクを形成し、当該マスクを用いてデバイス層に対するエッチング加工をおこない、このエッチング加工によりエッチングされたデバイス層に形成された細溝内に、シリコンの温度特性とは異なる温度特性を有する温度補償材料を用いて温度補償部材204を形成し、当該温度補償部材204を形成した母材200の表面を当該温度補償部材204とともにシリコンよりも粘靱性の高い材料を用いて形成された樹脂膜206によって被覆することにより、強度向上と温度補償性能の確保とを両立させた時計部品108を形成することができる。
【選択図】図2B
Description
この発明は、時計における機械部品を構成する時計部品の製造方法および時計部品に関する。
機械式時計の駆動機構は、ひげぜんまいやてん輪などによって構成される調速機構(テンプ)や、がんぎ車およびアンクルによって構成される脱進機など、各種の時計部品によって構成されている。このような時計部品のうち、たとえば、ひげぜんまいにおいては、従来、水晶やシリコンなどの結晶構造を有する材料をエッチング加工することによって形成されるものがあった。
水晶やシリコンなどの結晶構造を有する材料を用いて形成されるひげぜんまいは、金属を加工して形成されるひげぜんまいよりも、加工精度のばらつきや、金属のようにひげぜんまいを形成する材料自体が有する内部応力の影響などが少ない。また、水晶やシリコンなどの結晶構造を有する材料を用いて形成されるひげぜんまいは、金属を加工して形成されるひげぜんまいと比較して、環境温度に対して変形が少なく良好な温度特性を示す。
関連する技術として、具体的には、従来、たとえば、機械式時計の駆動機構を構成する時計部品を、シリコン製のコアと当該コアの表面に成膜した二酸化珪素などの非晶質材料とによって形成するようにした技術があった(たとえば、下記特許文献1、2を参照。)。
しかしながら、上述した特許文献1、2に記載された従来の技術は、いずれも、時計部品の強度向上と温度補償性能の確保とを両立させるためには、当該時計部品におけるシリコン製のコアの表面に十分な膜厚の非晶質材料を成膜しなければならず、当該十分な膜厚の非晶質材料の成膜に時間を要するという問題があった。そして、生産性を向上させるために非晶質材料の膜厚を薄くすると、時計部品の強度向上と温度補償性能の確保との両立が難しいという問題があった。
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、強度向上と温度補償性能の確保とを両立させた時計部品の製造方法および強度向上と温度補償性能の確保とを両立させた時計部品を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる時計部品の製造方法は、支持層の一面側に少なくとも酸化膜を介して積層された活性層またはシリコン単結晶基板に、当該活性層または当該シリコン単結晶基板を時計の駆動機構を構成する時計部品の形状に成形するエッチング加工に用いるマスクであって当該成形にかかる第1の開口よりも小さい第2の開口が一部に形成されたマスクを形成するマスク形成工程と、前記マスク形成工程において形成されたマスクを用いて、前記活性層または前記シリコン単結晶基板から前記第1の開口部分を除去して母材を形成するエッチング加工をおこなうエッチング工程と、シリコンの温度特性とは異なる温度特性を有する温度補償材料を用いて、前記エッチング工程により形成された母材において前記第2の開口に対応する位置に形成される細溝内に温度補償部材を形成する温度補償部材形成工程と、前記温度補償部材形成工程において温度補償部材が形成された母材の表面を、当該温度補償部材とともに、シリコンよりも粘靱性の高い材料を用いて被覆する被膜形成工程と、を含んだことを特徴とする。
また、この発明にかかる時計部品の製造方法は、上記の発明において、前記被膜形成工程が、前記母材の表面を、前記温度補償部材とともに、樹脂を用いて被覆することを特徴とする。
また、この発明にかかる時計部品の製造方法は、上記の発明において、前記温度補償部材形成工程が、二酸化ケイ素を用いて前記温度補償部材を形成することを特徴とする。
また、この発明にかかる時計部品の製造方法は、上記の発明において、前記エッチング工程が、前記マスクと前記母材との積層方向に沿って当該母材を貫通しない、有底の前記細溝を形成するエッチング加工を含むことを特徴とする。
また、この発明にかかる時計部品の製造方法は、上記の発明において、前記エッチング工程が、前記マスクと前記母材との積層方向に沿って当該母材を貫通する前記細溝を形成するエッチング加工を含むことを特徴とする。
また、この発明にかかる時計部品の製造方法は、上記の発明において、前記エッチング工程が、前記マスクと前記母材との積層方向に沿って当該母材を貫通する前記細溝と、当該母材を貫通しない有底の前記細溝と、を混在させて形成するエッチング加工を含むことを特徴とする。
また、この発明にかかる時計部品の製造方法は、上記の発明において、前記エッチング工程が、前記母材の形成と前記細溝の形成とを同時におこなうエッチング加工をおこなうことを特徴とする。
また、この発明にかかる時計部品は、時計の駆動機構を構成する時計部品であって、シリコンによって形成され、外表面から内側に凹む細溝を備えた母材と、前記細溝内に設けられて、前記シリコンの温度特性とは異なる温度特性を有する温度補償部材と、シリコンよりも粘靱性の高い材料によって形成され、前記母材および前記温度補償部材を被覆する被膜と、を備えたことを特徴とする。
また、この発明にかかる時計部品は、上記の発明において、前記被膜が、樹脂を用いて形成されていることを特徴とする。
また、この発明にかかる時計部品は、上記の発明において、前記被膜が、前記母材および前記温度補償部材を連続して被覆することを特徴とする。
また、この発明にかかる時計部品は、上記の発明において、前記細溝が、有底形状をなし、前記母材の表側面および裏側面の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする。
また、この発明にかかる時計部品は、上記の発明において、前記細溝が、前記母材を当該母材の表側面から裏側面へ貫通していることを特徴とする。
また、この発明にかかる時計部品は、上記発明において、前記母材を当該母材の表側面から裏側面へ貫通している前記細溝と、前記母材の表側面および裏側面の少なくとも一方に設けられた有底形状をなす前記細溝と、が混在していることを特徴とする。
また、この発明にかかる時計部品は、上記発明において、前記温度補償部材が、二酸化ケイ素であることを特徴とする。
この発明にかかる時計部品の製造方法および時計部品によれば、強度向上と温度補償性能の確保とを両立させた時計部品を提供することができるという効果を奏する。
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる時計部品の製造方法および当該製造方法によって製造される時計部品の好適な実施の形態を詳細に説明する。
まず、この発明にかかる実施の形態の製造方法によって製造される、この発明にかかる実施の形態の時計部品が組み込まれる時計の駆動機構として、機械式時計の駆動機構について説明する。図1は、この発明にかかる実施の形態の製造方法によって製造される、この発明にかかる実施の形態の時計部品が組み込まれる機械式時計の駆動機構を示す説明図である。
図1において、この発明にかかる実施の形態の製造方法によって製造される時計部品が組み込まれる機械式時計の駆動機構101は、香箱102、脱進機103、調速機構(テンプ)104、輪列105などを備えている。香箱102は、薄い円筒形状をなす箱の内側に、図示を省略する動力ぜんまいを収容している。香箱102の外周部の香箱車と呼ばれる歯車が設けてあり、輪列105を構成する番車と噛み合っている。
動力ぜんまいは、巻回された状態の長尺状の金属薄板であって、香箱102の中に収容されている。動力ぜんまいの中心の端部(巻回された状態において内周側に位置する端部)は、香箱102の中心軸(香箱真)に取り付けられている。動力ぜんまいの外側の端部(巻回された状態において外周側に位置する端部)は、香箱102の内面に取り付けられている。
脱進機103は、がんぎ車106およびアンクル107によって構成される。がんぎ車106は、カギ型の歯を備えた歯車であって、がんぎ車106の歯はアンクル107に噛み合う。アンクル107は、がんぎ車106の歯に噛み合うことによってがんぎ車106の回転運動を往復運動に変換する。
テンプ104は、ひげぜんまい108やテンワ109などによって構成される。ひげぜんまい108は、巻回された状態の長尺状の部材であって、渦巻き形状をなしている。ひげぜんまい108は、機械式時計に組み込まれて駆動機構101を構成した状態において、優れた等時性を示すように設計されている。
テンプ104は、ひげぜんまい108のバネ力による伸縮によって、規則正しく往復運動をおこなうことができる。テンワ109は、リング形状をなし、アンクル107からの反復運動を調節・制御して、一定速度の振動を保つ。テンワ109は、テンワ109がなすリング形状の内側に、テンワ109の中心(てん真)109aから放射状に延設するアームを備えている。
輪列105は、香箱102からがんぎ車106の間に設けられて、それぞれが噛み合わされた複数の歯車によって構成される。具体的には、輪列105は、二番車110、三番車111、四番車112などによって構成される。香箱102の香箱車は、二番車110と噛み合っている。四番車112には秒針113が装着され、二番車110には分針114が装着されている。図1においては、時針や各歯車を支持する地板などは図示を省略する。
駆動機構101においては、動力ぜんまいの中心は逆回転できないように香箱102の中心(香箱真)に固定されており、動力ぜんまいの外側の端部は香箱の内周面に固定されているため、香箱102の中心(香箱真)に巻き付けられた動力ぜんまいが元に戻ろうとすると、巻き上げられた方向と同じ方向にほどけようとする動力ぜんまいの外側の端部に付勢されて、香箱102が巻き上げられたぜんまいがほどける方向と同じ方向に回転する。香箱102の回転は、二番車110、三番車111、四番車112に順次伝達され、四番車112からがんぎ車106に伝達される。
がんぎ車106にはアンクル107が噛み合っているため、がんぎ車106が回転すると、がんぎ車106の歯(衝撃面)がアンクル107の入り爪を押し上げ、これによってアンクル107におけるテンプ104側の先端がテンプ104を回転させる。テンプ104が回転すると、アンクル107の出爪が即座にがんぎ車106を停止させる。テンプ104がひげぜんまい108の力で逆回転すると、アンクル107の入り爪が解除され、がんぎ車106が再び回転する。
このように、調速機は、等時性のあるひげぜんまい108の伸縮によってテンプ104に規則正しい往復回転運動を繰り返させ、脱進機103は、テンプ104に対して往復運動するための力を与え続けるとともに、テンプ104からの規則正しい振動によって輪列105における各歯車を一定速度で回転させる。がんぎ車106、アンクル107、テンプ104は、テンプ104の往復運動を回転運動に変換する調速機構を構成する。
(ひげぜんまい108の構造)
つぎに、ひげぜんまい108の構造について説明する。図2Aは、ひげぜんまい108の構造を示す説明図である。図2Aにおいては、図1における矢印X方向に沿って見たひげぜんまい108の平面図を示している。図2Bは、図2Aの一部を拡大して示す説明図である。図2Bにおいては、図2AにおけるA−A‘線に沿って切断したひげぜんまい108のうち、図2Aにおいて点線で囲まれた領域Bを拡大して示している。
つぎに、ひげぜんまい108の構造について説明する。図2Aは、ひげぜんまい108の構造を示す説明図である。図2Aにおいては、図1における矢印X方向に沿って見たひげぜんまい108の平面図を示している。図2Bは、図2Aの一部を拡大して示す説明図である。図2Bにおいては、図2AにおけるA−A‘線に沿って切断したひげぜんまい108のうち、図2Aにおいて点線で囲まれた領域Bを拡大して示している。
図2Aにおいて、ひげぜんまい108は、中心から外周方向に向かって渦を巻いた、細いコイル形状の旋回部201を備えている。また、ひげぜんまい108は、細いコイル形状の旋回部201における、内周側の端部に設けられたひげ玉202を備えている。旋回部201とひげ玉202とは接続部202aによって接続されている。旋回部201は、接続部202aを介して、ひげ玉202を中心にひげ玉202を巻回するコイル形状をなす。さらに、ひげぜんまい108は、細いコイル形状の旋回部201における、外周側の端部に設けられたひげ持203を備えている。この実施の形態におけるひげぜんまい108は、少なくとも一部が、シリコン酸化物によって形成されている。
ひげぜんまい108の厚さ寸法は、後述する積層基板(SOIウエハ)におけるデバイス層の板厚寸法(厚さ方向の寸法)または、シリコン単結晶基板(Siウエハ)の板厚寸法(厚さ方向の寸法)に応じて定められる。ひげぜんまい108の幅寸法(ひげぜんまい108の半径方向の寸法)は、ひげぜんまい108の位置に応じて異ならせてもよい。すなわち、ひげぜんまい108における旋回部201の一部の幅寸法を、別の一部の幅寸法よりも大きい寸法としてもよい。
ひげぜんまい108は、図2Bに示すように、温度補償部材204を備えている。図2Bにおいて、温度補償部材204は、ひげぜんまい108の巻き方向(旋回部201の長さ方向)に沿って、中心から外周方向に向かって渦を巻く形状に設けられている。温度補償部材204は、ひげぜんまい108の母材200の内部に埋め込まれている。温度補償部材204は、母材200に形成された細溝205に、SiO2などの温度補償材料を埋め込むことによって形成されている。SiO2のヤング率の温度特性は、Siのヤング率の温度特性とは逆の温度特性を示す。一般的に、ヤング率は、温度の変動に応じて変動するという温度特性を示す。
ヤング率(Young’s modulus)は、フックの法則が成立する弾性範囲における同軸方向のひずみと応力との比例定数であって、物体に対して当該物体を引っ張る方向に外力を加えた場合における、当該物体の伸びと当該物体に加えられた外力との関係から求められる。ヤング率は、縦弾性係数、曲げ剛性あるいはたわみ剛性などとも称される。具体的に、たとえば、断面積(S)の物体に力(F)が加えられることによって、当該物体の元の長さ(L)が(ΔL)だけ伸びた場合のヤング率(E)は、E=(F/S)/(ΔX/X)であらわされる。
上記のように、ヤング率は、温度の変動に応じて変動するという温度特性を示すため、水晶やシリコンの結晶構造を有する材料を単体で用いて製造した時計部品は、温度の変動にともなうヤング率の変動に起因して、環境温度に応じて性能が変動してしまう。上記のように、ひげぜんまい108などの時計部品は非常に精密な精度が要求されるため、温度の変化にともなう性能の変動は、計時の精度にばらつきを生じる原因となる。
これに対し、この発明にかかる実施の形態のひげぜんまい108は、主としてシリコンからなるひげぜんまい108の一部に、シリコンのヤング率の温度特性とは逆のヤング率の温度特性を示すSiO2からなる温度補償部材204を備えているため、ひげぜんまい108においては、温度補償部材204以外の部分の温度特性と、温度補償部材204の温度特性とが互いに打ち消す方向に作用する。これにより、シリコンのヤング率の温度特性を補償することができ、温度特性に優れ、耐久性に優れたひげぜんまい108を製造することができる。
また、ひげぜんまい108は、図2Bに示すように、シリコンによって形成された母材200の表面を被覆する樹脂膜206を備えている。この実施の形態1においては、樹脂膜206によって、この発明にかかる被膜を実現することができる。樹脂膜206は、母材200の表面全体を被覆するように設けられている。樹脂膜206は、シリコンよりも粘靭性の高い樹脂を用いて形成することができる。
樹脂膜206は、たとえば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、高分子合成材料であるパラキシリレン系ポリマーなどを用いて形成することができる。アクリル樹脂は、近年、さまざまな改良がなされており、電着法によって一定の厚みで成膜ができ、かつ、パターニングができる電着レジストと称されるアクリル樹脂が開発されている。このようなアクリル樹脂からなる電着レジストを用いることによって、ひげぜんまい108などの精密かつ複雑な形状の時計部品の表面に、一定(均一)の膜厚の樹脂膜206を設けることができる。
一定の周期で伸縮運動することが求められるひげぜんまい108においては、ひげぜんまい108の表面に設ける樹脂膜206の厚さが一様でないとバランスを崩して偏心してしまう。ここで、空気抵抗などを無視した場合のテンプ104の振動周期Tは、ひげぜんまい108のバネ定数をKとし、テンワ109の慣性モーメントをIとすると、テンプ104の運動方程式に基づいて下記(1)式のように算出される。
T=2π√(I/K) ・・・(1)
T=2π√(I/K) ・・・(1)
上記(1)式によれば、ひげぜんまい108のバネ定数によってあらわされる「バネの力」と、テンワ109の慣性モーメントによってあらわされる「テンワ109のバランス」と、が釣り合っている場合に、時計が正しい時間を刻むことがわかる。ひげぜんまい108のバネ定数K、および、テンワ109の慣性モーメントIは温度変化に応じて変動する。
このため、機械式時計(テンプ104)の「歩度」は、温度変化によって変動する。歩度は、1日あたりの誤差秒数を示し、単位は[s/day]であらわされる。テンプ104の温度特性(温度係数)は、温度ごとの歩度を示し、単位は[s/day/℃]であらわされる。温度と歩度とは比例関係にあり、歩度は温度変化に応じて直線的に変化するため、テンプ104の温度特性(温度係数)は、温度と歩度との関係を示す一次関数によってあらわされる。
具体的には、たとえば、「1s/day/℃」という温度特性のテンプ104においては、1℃温度が上昇すると、1日の誤差が1秒増加する。テンプ104の温度特性(温度係数)は、温度と歩度との関係を示す一次関数における傾きが0(ゼロ)に近い、すなわち、一次関数の傾きがなだらかである方が好ましい。
樹脂は、一般的に、金属よりも軽量であり、このような軽量な樹脂によって母材200の表面を被覆することにより、樹脂膜206を設けることによるひげぜんまい108の重量の増加を抑えることができる。また、樹脂は、金属のように酸化して錆びることがないため、樹脂によって母材200の表面を被覆することにより、ひげぜんまい108の経年劣化を防ぐことができる。また、樹脂には、耐薬品性に優れたものが多く、酸・アルカリ・溶剤に対しても安定性を保つものがあるため、目的に応じて樹脂の種類を選定することができ、応用性が高い。
特に、電着レジストと称されるアクリル樹脂を用いることにより、腕時計に用いられるひげぜんまい108などの時計部品のように、微細で、溝・孔・エッジ部分などにより複雑な形状であっても、ピンホールがなく、一定(均一)の膜厚の樹脂膜206を設けることができる。これにより、ひげぜんまい108に樹脂膜206を設けることによってひげぜんまい108における重心の偏りなどが発生することを防止し、ひげぜんまい108を正しく動作させることができる。
このように、アクリル樹脂からなる電着レジストは、精密かつ複雑な形状の時計部品、特に、伸縮することによって動作するひげぜんまい108などに用いる樹脂膜206の材料として適している。また、ひげぜんまい108の母材200の表面に、粘靱性の高い樹脂膜206を設けることにより、樹脂膜206がクッションの役割を果たし、ひげぜんまい108が他の構造体と当接したとしても、樹脂膜206によって衝撃を緩和することができる。また、ひげぜんまい108は、樹脂膜206を備えることにより、角部などへの応力集中によるひびや欠けを防止することができる。これにより、ひげぜんまい108の耐久性の向上を図ることができる。
(実施の形態1)
(時計部品の製造方法)
つぎに、この発明にかかる実施の形態1の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品の製造方法について説明する。実施の形態1においては、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品として、ひげぜんまい108の製造方法について説明する。
(時計部品の製造方法)
つぎに、この発明にかかる実施の形態1の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品の製造方法について説明する。実施の形態1においては、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品として、ひげぜんまい108の製造方法について説明する。
図3A〜図3Jは、この発明にかかる実施の形態1の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品(ひげぜんまい108)の製造方法を示す説明図である。実施の形態1の製造方法によるひげぜんまい108の製造に際しては、まず、図3Aに示すSOIウエハ314を形成する。
図3Aに示すように、SOIウエハ314は、支持層311、中間層(Box層)312およびデバイス層(活性層)313の3つの層を備えている。SOIウエハ314において、支持層311、中間層312およびデバイス層313は、SOIウエハ314の厚さ方向に沿って順次積層されている。SOIウエハ314において、中間層312は、支持層311とデバイス層313との間に挟まれている。
SOIウエハ314の形成に際しては、まず、支持層311の一方の面に、中間層312を形成する。支持層311は、シリコン(Si)からなる。中間層312は、二酸化ケイ素(SiO2)からなる。中間層312は、以降の工程において、深掘りRIE(D−RIE)技術によるエッチング加工をおこなう際のストッパとして機能する。中間層312は、公知の各種の成膜技術や公知の各種の酸化技術を用いて形成することができる。中間層312の形成方法については説明を省略する。
この実施の形態1においては、以降、支持層311における中間層312が形成される側の面を支持層311の「表側面」として説明し、支持層311における表側面とは反対側の面を支持層311の「裏側面」として説明する。また、この実施の形態においては、以降、中間層312における支持層311とは反対側の面を中間層312の「表側面」として説明し、中間層312における支持層311側の面を中間層312の「裏側面」として説明する。
SOIウエハ314の形成方法については、図示を省略するが、SOIウエハ314の形成に際しては、まず、支持層311の表側面に中間層312を形成し、その後、当該中間層312の表側面にデバイス層313を形成する。デバイス層313は、支持層311と同様にシリコン(Si)からなる。
このように、支持層311の表面側に、当該支持層311の厚さ方向に沿って中間層312およびデバイス層313を順次積層することにより、支持層311とデバイス層313との間に中間層312が挟まれた状態のSOI基板314が形成される。この実施の形態においては、以降、デバイス層313における中間層312とは反対側の面をデバイス層313の「表側面」として説明し、デバイス層313における中間層312側の面をデバイス層313の「裏側面」として説明する。
デバイス層313は、公知の各種の成膜技術を用いて形成することができる。デバイス層313の形成方法については説明を省略する。この発明にかかる製造方法により、SOIウエハ314を用いて製造される時計部品は、デバイス層313に形成される。すなわち、この発明にかかる実施の形態1のひげぜんまい108は、後述する製造方法によって製造することによりデバイス層313の一部によって実現される。
つぎに、図3Bに示すように、デバイス層313の表側面に酸化膜321を成膜する。酸化膜321は、デバイス層313の表側面の全面にわたって成膜する。酸化膜321は、たとえば、上記の中間層312と同様に、二酸化ケイ素(SiO2)によって形成することができる。
つぎに、酸化膜321の表側面(すなわち、酸化膜321におけるデバイス層313とは反対側の面)に、レジストパタニングをおこなう。レジストパタニングに際しては、まず、酸化膜321の表側面に、フォトレジストを塗布する。つぎに、酸化膜321を、当該酸化膜321の表側面から、ひげぜんまい108の形状に基づいたパタン状に露光する。そして、露光をおこなった後のSOIウエハ314を現像液によって処理して、不要なフォトレジストを除去する。これによって、図3Cに示すように、デバイス層313の表側面に、ひげぜんまい108の形状に基づいたマスク331を形成することができる。この実施の形態においては、マスク331によって、この発明にかかる「エッチング加工に用いるマスク」を実現することができる。
レジストパタニングに際して用いるフォトレジストは、光(あるいは電子線など)に露光されることによって現像液に対する溶解性などの物性が変化する感光性の物質であって、たとえば、露光されることによって現像液に対して溶解性が増大するポジ型のフォトレジストを用いることができる。あるいは、レジストパタニングに際しては、ポジ型のフォトレジストに代えて、たとえば、露光されることによって現像液に対して溶解性が低下するネガ型のフォトレジストを用いてもよい。
露光パタンは、ポジ型のフォトレジストを用いる場合と、ネガ型のフォトレジストを用いる場合と、によって異なる。ポジ型のフォトレジストを用いる場合の露光パタンと、ネガ型のフォトレジストを用いる場合の露光パタンとは、露光位置が反転した関係にある。レジストパタニングにかかる一連の処理については、公知の技術を用いて容易に実現可能であるため説明を省略する。上記のようにフォトリソグラフィ技術を用いることにより、マスク331を高精度に形成することができる。
具体的に、マスク331は、部品パタンと、細溝パタンと、によって構成される。部品パタンは、製造対象とする時計部品(この実施の形態においては、ひげぜんまい108)の外形状に応じたパタン形状をなしている。マスク331の形成に際して、たとえば、ポジ型のフォトレジストを用いる場合、マスク331における部品パタンは、デバイス層313のうち、ひげぜんまい108として取り出す部分を覆うように設けられ、残余の部分は第1の開口として開口している。
ひげぜんまい108にかかるマスク331の場合、部品パタンは、旋回部201がなすコイル形状に応じて、中心から外周方向に向かって渦を巻いたコイル形状をなす。このため、中心を通り直径方向に沿って切断した場合のマスク331の断面は、当該直径方向に沿って複数の部品パタンが所定の間隔を空けて配置された状態となる。後述するデバイスエッチングに際しては、デバイス層313のうち、部品パタンによって覆われた部分が製造対象とする時計部品(ひげぜんまい108)として残り、部品パタンによって覆われていない部分が除去される。
細溝パタンは、部品パタン内に配置され、SOIウエハ314の板厚(厚さ)方向に沿って部品パタンを貫通するスリット331aによって構成される。細溝パタンを構成するスリット331aの幅方向の寸法は、マスク331における部品パタンによって覆われていない部分(デバイスエッチングに際して除去される部分)がなす開口よりも小さい。
この実施の形態1においては、細溝パタンがなすスリット331aによって、この発明にかかる第2の開口を実現することができる。また、この実施の形態においては、酸化膜321の表側面にマスク331を形成するレジストパタニングによって、この発明にかかる時計部品の製造方法におけるマスク形成工程を実現することができる。
つぎに、酸化膜エッチングをおこなう。酸化膜エッチングは、マスク331を用いた、酸化膜321に対するエッチング加工によって実現される。この酸化膜エッチングにより、図3Dに示すように、酸化膜321のうちマスク331によって覆われていない部分が除去され、酸化膜321の一部がマスク331の形状に応じた形状に加工される。すなわち、酸化膜321は、部品パタンと細溝パタン(スリット331a)とからなるマスク331と同じ形状に加工される。
つぎに、デバイスエッチングをおこなう。デバイスエッチングは、マスク331の形状に応じた形状に加工された酸化膜321および当該酸化膜321に積層されたマスク331を用いた、デバイス層313に対するエッチング加工によって実現される。
上記のレジストパタニングおよび酸化膜エッチングにより、デバイス層313の表面側には、部品パタンと細溝パタンとからなるマスク331および当該マスク331と同じ形状に加工された酸化膜321が設けられている。このため、デバイスエッチングをおこなうことにより、デバイス層313のうち酸化膜321およびマスク331によって覆われていない部分が除去される。
このデバイスエッチングにより、図3Eに示すように、デバイス層313を、酸化膜321およびマスク331の形状に応じた形状に加工することができる。ひげぜんまい108の旋回部201となる部分は、ひげぜんまい108の直径方向において、溝351によって隣り合う旋回部201と分離されている。
デバイスエッチングは、エッチングガスなどの反応性の気体、イオン、ラジカルなどによって材料をエッチングするドライエッチング加工によって実現することができる。上記のように、フォトリソグラフィ技術を用いて高精度に形成されたマスク331および当該マスク331によって加工された酸化膜321を用いてデバイスエッチングをおこなうことにより、デバイス層313を、ひげぜんまい108の形状にしたがって高精度に加工することができる。
デバイスエッチングは、ドライエッチング加工の一つである反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching;RIE)が好ましく、深掘りRIE技術によるドライエッチング加工によって実現することがより好ましい。デバイス層313に対するエッチング加工を、深掘りRIE技術によるドライエッチング加工によって実現することにより、高い精度での微細加工をおこなうことができる。具体的には、この実施の形態の時計部品の製造方法においては、たとえば、SF6(六フッ化硫黄)とC4F8(八フッ化シクロブタン)との混合ガス(SF6+C4F8)を用いて、デバイス層313を深掘りRIE技術でドライエッチングする。
反応性イオンエッチングは、ドライエッチングに分類される微細加工技術の一つであり、反応室内でエッチングガスに電磁波などを与えプラズマ化するとともに、試料が載置される陰極に高周波電圧を印加することにより試料とプラズマの間に自己バイアス電位を生じさせ、この自己バイアス電位によってプラズマ中のイオン種やラジカル種を試料方向に加速して衝突させ、イオンによるスパッタリングと、エッチングガスの化学反応とを同時に生じさせることによって試料の加工をおこなう。深掘りRIE(Deep Reactive Ion Etching)は、反応性イオンエッチング(RIE)の一つであり、狭く深い範囲のエッチング加工、すなわち、アスペクト比の高いエッチング加工をおこなうことができる。この実施の形態においては、マスク331を用いた酸化膜エッチング、および、その後のデバイスエッチングをおこなう工程によって、この発明にかかるエッチング工程を実現することができる。
上記のように、マスク331における細溝パタンの幅方向の寸法は、部品パタンによって覆われていない部分(デバイスエッチングに際して除去される部分)がなす開口よりも小さいため、デバイス層313に対するデバイスエッチングは、部品パタンによるエッチングの方が細溝パタンによる部分よりも進行が早い。このため、デバイス層313のうち細溝パタンに対応する部分は、部品パタンによるエッチングがデバイス層313を貫通するまで進行した時点においてもデバイス層313を貫通しない。
これにより、デバイス層313のうち、時計部品(ひげぜんまい108)として残る部分には、細溝パタン(スリット331a)の形状に応じた細溝205が形成される。このとき、ひげぜんまい108の旋回部201となる部分は、ひげぜんまい108の直径方向において、溝351によって隣り合う旋回部201と分離される。そして、デバイスエッチングをおこなった後のSOIウエハ314から、マスク331を除去(剥離)する。マスク331は公知の各種の方法によって容易に除去可能であるため、マスク331の除去方法や除去手順などについては説明を省略する。
つぎに、図3Fに示すように、細溝205内に温度補償材料を埋め込むことによって温度補償部材204を形成する。温度補償部材204は、具体的には、細溝205にSiO2を埋め込むことによって形成することができる。細溝205へのSiO2の埋め込みは、たとえば、マスク331を除去(剥離)した後のSOIウエハ314(支持層131)を熱酸化することによって実現できる。
細溝205へのSiO2の埋め込みを熱酸化によって実現する場合、SiO2は、細溝205内のほか、Siが露出している部分にも形成される。具体的には、デバイスエッチングをおこなった後のSOIウエハ314(支持層131)の熱酸化により、デバイスエッチングにより露出した部分(溝351の側面351aや底面351b)にSiO2からなる酸化膜361が形成されたり、支持層311の裏側面などにSiO2からなる裏面酸化膜362が形成される。
つぎに、支持層311の裏側面(裏面酸化膜362の裏側面)に、図3Gに示すように、マスク371を形成する。マスク371の形成は、たとえば、上記のマスク331にかかるレジストパタニングと同様にして、支持層311の裏側面にフォトレジストを塗布し、当該フォトレジストをひげぜんまい108となる部分の裏面側を開放するパタン状に露光した後に不要なフォトレジストおよび裏面酸化膜362を除去することによっておこなうことができる。
つぎに、支持層311側からのエッチングをおこなう。支持層311側からのエッチングは、マスク371を用いた、支持層311に対するエッチング加工によって実現される。支持層311側からのエッチングは、支持層311のうちマスク371によって覆われていない部分が板厚方向に貫通し、中間層312が露出するまでおこなう。
上記のように、支持層311はデバイス層313と同様にシリコンからなるため、支持層311側からのエッチングは、デバイスエッチングと同様に、SF6(六フッ化硫黄)とC4F8(八フッ化シクロブタン)との混合ガス(SF6+C4F8)を用いた深掘りRIE技術によるドライエッチングによって実現することができる。この支持層311側からのエッチングにより、支持層311は、図3Hに示すように、マスク371の形状に応じた形状に加工される。
つぎに、支持層311側からのエッチングをおこなった後のSOIウエハ314から、酸化膜321、酸化膜361および中間層312を除去する。酸化膜321、酸化膜361および中間層312は、ウエットエッチングをおこなうことによって除去することができる。酸化膜321、酸化膜361および中間層312は、具体的には、たとえば、フッ酸を用いたウエットエッチングをおこなうことによって除去することができる。この場合、支持層311やデバイス層313がレジストとして機能する。
ウエットエッチングに際しては、支持層311側からのエッチングをおこなった後のSOIウエハ314においてSiO2からなる部分(酸化膜321、酸化膜361および中間層312)のうち、エッチング液に接触している部分から除去される。細溝205内に埋め込まれた温度補償部材204もエッチング液に接触しているため、一部がエッチングされて除去されるが、細溝205の深さに対する開口部分の面積が小さいため、温度補償部材204の厚さ(細溝205の深さ)に対してエッチング液に接触している部分の面積が小さく、細溝205内にエッチング液が回り込むことがない。
これにより、酸化膜321、酸化膜361および中間層312を除去するまでエッチングをおこなっても、図3Iに示すように、温度補償部材204を細溝205から除去することなく細溝205内に残すことができる。この実施の形態においては、熱酸化により細溝205へSiO2を埋め込む工程から、ウエットエッチングにより酸化膜321、酸化膜361および中間層312を除去するまでの一連の工程によって、この発明にかかる温度補償部材形成工程を実現することができる。
つぎに、酸化膜321、酸化膜361および中間層312を除去したSOIウエハ314の表面に、図3Jに示すように、樹脂膜206を形成する。この実施の形態においては、樹脂膜206を形成する工程によって、この発明にかかる時計部品の製造方法における被膜形成工程を実現することができる。
樹脂膜206は、ひげぜんまい108に対して外部から加えられた衝撃力を緩和し、シリコンのような脆性材料からなる母材200を破損から保護するために設けられる。このため、樹脂膜206は、母材200を構成するシリコンよりも、粘靭性の高い材料を用いる。
樹脂膜206は、たとえば、パラキシリレン系ポリマーなどの樹脂材料を用いて樹脂膜206を形成する場合、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)の一つである気相蒸着重合法を用いて形成することができる。パラキシリレン系ポリマーは、有機化合物であるパラキシリレンのポリマーであって、ひげぜんまい108の表面において重合反応を起こさせることによって薄膜状に形成することができる。
パラキシリレン系ポリマーは、コンフォーマル被覆性に優れている。パラキシリレン系ポリマーを用いることにより、たとえば、腕時計に用いられるひげぜんまい108などの時計部品のように、微細で、溝・孔・エッジ部分などにより複雑な形状であっても、ピンホールがなく均一な膜厚の樹脂膜206を形成することができる。
また、樹脂膜206は、たとえば、母材200にアクリル樹脂やエポキシ樹脂を吹き付ける手法や、液状化した樹脂を滴下する手法や、液状化した樹脂を入れた液槽に母材200を浸漬させた後に取り出して形成する手法など、公知の各種の技術を用いて容易に形成することができる。
樹脂膜206は、電着法を用いて形成することもできる。電着法を用いることにより、母材200の表面に、樹脂膜206を構成する樹脂を一定の厚みで成膜することができ、かつ、容易にパターニングすることができるようになる。電着法によって樹脂膜206を形成する際には、電着レジストと称されるアクリル樹脂を用いる。電着法とは、電気分解によって析出した物質を電圧が印加された母材200上に付着させ形成する成膜法であり、広く知られている。
具体的に、たとえば、電着法を用いて樹脂膜206を形成する場合、母材200を電着液槽中に浸漬する時間を調整したり電圧を調整したりすることによって所望の膜厚になるように調整することができる。電着レジストの膜厚は、機械式時計の仕様などに鑑みて自由に設定することができる。その後、電圧の印加を終了し、液槽から母材200を取り出す。これにより、樹脂膜206を、一定の膜厚で形成することができる。電着法を用いることにより、樹脂膜206を形成する前と後とでひげぜんまい108の形状を大きく異ならせることなく、樹脂膜206を形成することができる。
最後に、SOIウエハ314から、ひげぜんまい108として成形された部分をもぎ取って、ひげぜんまい108を製造する。ひげぜんまい108として成形された部分は、SOIウエハ314に対して、ひげ持203の先端部分で接続しているため、たとえば、ピンセット(図示を省略する)などの器具を用いて、引っ張ることによってSOIウエハ314からもぎ取ることができる。上述したような一連の製造工程を経ることによって、ひげぜんまい108を製造することができる。
上述した実施の形態においては、ひげぜんまい108の巻き方向に沿って連続した渦巻きを形成する温度補償部材204を、旋回部201の幅方向における中央に設けた例について説明したが、温度補償部材204は、上記の配置例にしたがって設けられるものに限らない。以下に、温度補償部材204の別の配置例を示す。
(温度補償部材204の配置例)
図4A〜図4Lは、温度補償部材204の配置例を示す説明図である。図4A〜図4Lの(a)においては、ひげぜんまい108の旋回部201のうちの一部を図2Bと同様に拡大して示している。図4A〜図4Lの(b)においては、各図の(a)における領域BのA−A’断面を拡大して示している。
図4A〜図4Lは、温度補償部材204の配置例を示す説明図である。図4A〜図4Lの(a)においては、ひげぜんまい108の旋回部201のうちの一部を図2Bと同様に拡大して示している。図4A〜図4Lの(b)においては、各図の(a)における領域BのA−A’断面を拡大して示している。
温度補償部材204は、たとえば、旋回部201の幅方向の中央に設けた図2Bの例に代えて、旋回部201の幅方向における内周側あるいは外周側に片寄せして設けてもよい(図4Aおよび図4Bを参照)。あるいは、たとえば、ひげぜんまい108の巻き方向に沿った形状で連続した渦巻きを形成する温度補償部材204を、旋回部201の幅方向に沿って複数設けてもよい(図4Cを参照)。
また、温度補償部材204は、ひげぜんまい108の巻き方向に沿った形状で連続した渦巻きを形成する配置パタンに限るものではなく、たとえば、ひげぜんまい108の巻き方向に沿って断続的に連なった列を形成するように複数設けてもよい(図4Dを参照)。あるいは、たとえば、ひげぜんまい108の巻き方向に沿って断続的に連なる複数の温度補償部材204からなる列を、旋回部201の幅方向に沿って複数千鳥状に設けてもよい(図4Eを参照)。
また、温度補償部材204は、ひげぜんまい108の巻き方向に沿った形状の略直線ないし曲線形状(略円弧形状)に限るものではない。たとえば、ひげぜんまい108の巻き方向(略円弧形状)に対して湾曲あるいは屈曲した波形をなす温度補償部材204が、ひげぜんまい108の巻き方向に沿って連続するように設けてもよい(図4Fおよび図4Gを参照)。さらに、たとえば、略「コ」の字のような矩形状(あるいは略「U」字形状)の温度補償部材204を、開口部分が対向あるいは斜向かいに対向するように配置し、かつ、対向あるいは斜向かいに対向する温度補償部材204の組が、ひげぜんまい108の長さ方向に沿って連なるように配置してもよい。
また、温度補償部材204は、ひげぜんまい108の表面において交差するように複数設けられていてもよい(図4Hおよび図4Iを参照)。さらに、温度補償部材204は、ひげぜんまい108の幅方向を長手方向として、ひげぜんまい108の巻き方向に沿って複数設けられていてもよい。この場合、複数の温度補償部材204は、直線状であってもよく(図4Jを参照)、屈曲あるいは湾曲した形状であってもよい(図4Kを参照)。
また、温度補償部材204は、ひげぜんまい108の一面(表側面あるいは裏側面)に設けられているものに限るものではない。たとえば、ひげぜんまい108の表側面および裏側面に設けられていてもよい。温度補償部材204をひげぜんまい108の表側面および裏側面に設ける場合、表側面における温度補償部材204の位置と裏側面における温度補償部材204の位置とは、重複していてもよく(図4Lを参照)、異なる位置に設けられていてもよい。
ひげぜんまい108の表側面に温度補償部材204を設ける場合にも、ひげぜんまい108の裏側面に温度補償部材204を設ける場合にも、温度補償部材204が形成される細溝205の深さ方向は、SOIウエハ314の厚さ方向と平行であってもよく、当該厚さ方向に対して傾斜していてもよい。深さ方向が、SOIウエハ314の厚さ方向に対して傾斜した溝205は、たとえば、異方性エッチングなど公知の技術を用いて形成することができる。ひげぜんまい108の裏側面に温度補償部材204を設ける場合、SOIウエハ314のデバイス層313の表側面に細溝205を形成する上記の方法と同様に、デバイス層313の裏側面にデバイスエッチングをおこなう。
(実施の形態2)
(時計部品の製造方法)
つぎに、この発明にかかる実施の形態2の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品の製造方法について説明する。実施の形態2においては、上述した実施の形態と同一部分については同一符号で示し、説明を省略する。図5A〜図5Eは、この発明にかかる実施の形態2の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品(ひげぜんまい108)の製造方法を示す説明図である。
(時計部品の製造方法)
つぎに、この発明にかかる実施の形態2の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品の製造方法について説明する。実施の形態2においては、上述した実施の形態と同一部分については同一符号で示し、説明を省略する。図5A〜図5Eは、この発明にかかる実施の形態2の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品(ひげぜんまい108)の製造方法を示す説明図である。
実施の形態2の製造方法においては、まず、上述した実施の形態の製造方法における図3A〜図3Eと同様の工程をおこなって、デバイス層313を、酸化膜321およびマスク331の形状(ひげぜんまい108の形状)に応じた形状に加工する。そして、デバイスエッチングをおこなった後のSOIウエハ314から、酸化膜321およびマスク331を除去(剥離)する。酸化膜321およびマスク331は公知の各種の方法によって容易に除去可能であるため、マスク321の除去方法や除去手順などについては説明を省略する。
つぎに、酸化膜321およびマスク331を除去したSOIウエハ314の表側面に対して、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長法、化学蒸着法)によりSiO2を堆積させる。CVDによるSiO2の堆積は、SOIウエハ314を加熱し、SiO2をガスにした状態で、加熱されたSOIウエハ314の表面において化学反応を生じさせることによっておこなう。
ガスの状態にされたSiO2は分子が細かくなるため、細溝205内にも入り込む。これにより、図5Aに示すように、細溝205内を含むSOIウエハ314の表側面の全体にSiO2を堆積させることができ、細溝205内にSiO2を埋め込むことができる。堆積させたSiO2による層511は、SOIウエハ314の表側面の全体、すなわち、デバイスエッチングにより露出した部分(溝651の側面651aや底面651b)を覆うように設けられる。
つぎに、支持層311の裏側面に、図5Bに示すように、マスク521を形成する。マスク521の形成は、たとえば、上述した実施の形態におけるマスク371の形成と同様にして、支持層311の裏側面にフォトレジストを塗布し、当該フォトレジストをひげぜんまい108の裏面側を開放するパタン状に露光した後に不要なフォトレジストを除去することによっておこなうことができる。
つぎに、マスク521を用いた支持層311側からのエッチングをおこなう。支持層311側からのエッチングは、支持層311のうちマスク371によって覆われていない部分が板厚方向に貫通し、中間層312が露出するまでおこなう。支持層311側からのエッチングは、上述した実施の形態における支持層311側からのエッチングと同様に、SF6(六フッ化硫黄)とC4F8(八フッ化シクロブタン)との混合ガス(SF6+C4F8)を用いた深掘りRIE技術によるドライエッチングによって実現することができる。この支持層311側からのエッチングにより、支持層311は、図5Cに示すように、マスク521の形状に応じた形状に加工される。
つぎに、支持層311側からのエッチングをおこなった後のSOIウエハ314から、堆積させたSiO2による層511および中間層312を除去する。堆積させたSiO2による層511および中間層312は、上述した実施の形態における酸化膜321、酸化膜361および中間層312の除去と同様にして、フッ酸を用いたウエットエッチングをおこなうことによって除去することができる。
ウエットエッチングに際しては、支持層311側からのエッチングをおこなった後のSOIウエハ314においてSiO2からなる部分(堆積させたSiO2による層511および中間層312)のうち、エッチング液に接触している部分から除去される。このため、エッチング液に浸漬させる時間を調整するなどして、デバイス層313の表側面が露出するタイミングでウエットエッチングを停止することにより、図5Dに示すように、温度補償部材204を細溝205から除去することなく細溝205内に残した状態で、堆積させたSiO2のうち、細溝205内のSiO2(温度補償部材204)以外を除去することができる。
さらに、細溝205の深さに対する開口部分の面積が小さいため、デバイス層313の表側面が露出するまでウエットエッチングをおこなった場合にも、温度補償部材204の厚さ(細溝205の深さ)に対してエッチング液に接触している部分の面積が小さく、細溝205内にエッチング液が回り込むことがない。
これにより、堆積させたSiO2による層511および中間層312を除去するまでエッチングをおこなっても、温度補償部材204は細溝205から除去されることなく細溝205内に残る。この実施の形態2においては、CVDにより細溝205へSiO2を堆積させる工程から、堆積させたSiO2による層511および中間層312をウエットエッチングにより除去するまでの一連の工程によって、この発明にかかる温度補償部材形成工程を実現することができる。
つぎに、堆積させたSiO2による層511および中間層312をウエットエッチングにより除去したSOIウエハ314の表面に、図5Eに示すように、樹脂膜206を形成する。樹脂膜206は、上述した実施の形態1と同様にして形成することができる。この実施の形態2においては、樹脂膜206を形成する工程によって、この発明にかかる時計部品の製造方法における被膜形成工程を実現することができる。最後に、SOIウエハ314から、ピンセット(図示を省略する)などの器具を用いてひげぜんまい108として成形された部分をもぎ取って、ひげぜんまい108を製造する。
(実施の形態3)
(時計部品の製造方法)
つぎに、この発明にかかる実施の形態3の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品の製造方法について説明する。実施の形態3においては、上述した各実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明を省略する。図6A〜図6Jは、この発明にかかる実施の形態3の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品(ひげぜんまい108)の製造方法を示す説明図である。
(時計部品の製造方法)
つぎに、この発明にかかる実施の形態3の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品の製造方法について説明する。実施の形態3においては、上述した各実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明を省略する。図6A〜図6Jは、この発明にかかる実施の形態3の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品(ひげぜんまい108)の製造方法を示す説明図である。
実施の形態3の製造方法においては、図6Aに示すシリコン製のシリコン単結晶基板(Siウエハ)611を用いて、当該Siウエハ611の表側面に、図6Bに示すように、マスク用の表面酸化膜621を形成する。表面酸化膜621は、たとえば、Siウエハ611の表側面を熱酸化することによって形成することができる。
つぎに、表面酸化膜621の表側面に、レジストパタニングをおこなって、図6Cに示すように、マスク631を形成する。マスク631は、上述した各実施の形態と同様にして、表面酸化膜621の表側面に塗布したフォトレジストを、ひげぜんまい108の形状に基づいたパタン状に露光した後、当該露光をおこなった後のSiウエハ611を現像液によって処理して不要なフォトレジストを除去することによって形成することができる。
この実施の形態3においては、マスク631によって、この発明にかかる「エッチング加工に用いるマスク」を実現することができる。また、この実施の形態3においては、表面酸化膜621の表側面にマスク631を形成するレジストパタニングによって、この発明にかかる時計部品の製造方法におけるマスク形成工程を実現することができる。
つぎに、酸化膜エッチングをおこなう。酸化膜エッチングは、マスク631を用いた、表面酸化膜621に対するエッチング加工によって実現される。この酸化膜エッチングは、上述した各実施の形態における酸化膜エッチングと同様にしておこなう。
これにより、図6Dに示すように、表面酸化膜621のうちマスク631によって覆われていない部分が除去され、表面酸化膜621の一部がマスク631の形状に応じた形状に加工される。すなわち、表面酸化膜621は、部品パタンと細溝パタンとからなるマスク631と同じ形状に加工される。
つぎに、デバイスエッチングをおこなう。デバイスエッチングは、マスク631の形状に応じた形状に加工された表面酸化膜621および当該表面酸化膜621に積層されたマスク631を用いた、深掘りRIE技術によるSiウエハ611のエッチング加工によって実現することができる。この実施の形態3においては、マスク631を用いた酸化膜エッチング、および、その後の酸化膜エッチングおよびデバイスエッチングをおこなう工程によって、この発明にかかるエッチング工程を実現することができる。
マスク631において、細溝パタンがなすスリットの幅方向の寸法は、マスクにおける部品パタンによって覆われていない部分がなす開口よりも小さいため、デバイスエッチングに際しては、マスク631における部品パタンによって覆われていない部分の方が、細溝パタンの部分よりもエッチングが進行し、細溝パタンの部分よりも深くエッチングされる。
このデバイスエッチングにより、ひげぜんまい108の旋回部201となる部分は、図6Eに示すように、ひげぜんまい108の直径方向において、溝651によって隣り合う旋回部201と分離される。また、このデバイスエッチングにより、図6Eに示すように、デバイス層313のうち、時計部品(ひげぜんまい108)として残る部分には、細溝パタンの形状に応じた細溝205が形成される。
つぎに、デバイスエッチングをおこなった後のSiウエハ611から、上述した各実施の形態と同様にして、マスク631を除去(剥離)する。マスク631は公知の各種の方法によって容易に除去可能であるため、マスク631の除去方法や除去手順などについては説明を省略する。
その後、図6Fに示すように、細溝205内に温度補償材料を埋め込むことによって温度補償部材204を形成する。温度補償部材204は、具体的には、細溝205にSiO2を埋め込むことによって形成することができる。細溝205へのSiO2の埋め込みは、たとえば、上述した実施の形態と同様にして、マスク631を除去(剥離)した後のSiウエハ611を熱酸化することによって実現できる。
細溝205へのSiO2の埋め込みを熱酸化によって実現する場合、SiO2は、細溝205内のほか、Siが露出している部分にも形成される。具体的には、デバイスエッチングをおこなった後のSiウエハ611の熱酸化により、デバイスエッチングにより露出した部分(溝651の側面651aや底面651b)にSiO2からなる酸化膜661が形成されたり、Siウエハ611の裏側面などにSiO2からなる裏面酸化膜662が形成される。
つぎに、Siウエハ611の裏側面(裏面酸化膜662の裏側面)に、図6Gに示すように、マスク671を形成する。マスク671は、上述した実施の形態と同様にして形成することができる。そして、マスク671を用いてSiウエハ611の裏側面からのエッチングをおこなう。Siウエハ611の裏側面からのエッチングは、マスク671を用いた、Siウエハ611の裏側面に対するエッチング加工によって実現される。
具体的に、Siウエハ611の裏側面からのエッチングは、上述した実施の形態と同様に、SF6(六フッ化硫黄)とC4F8(八フッ化シクロブタン)との混合ガス(SF6+C4F8)を用いた深掘りRIE技術によるドライエッチングによって実現することができる。Siウエハ611の裏側面からのエッチングは、Siウエハ611のうちマスク671によって覆われていない部分が板厚方向に貫通し、酸化膜661が露出するまでおこなう。このSiウエハ611の裏側面からのエッチングにより、Siウエハ611は、図6Hに示すように、マスク671の形状に応じた形状に加工される。
つぎに、Siウエハ611の裏側面からのエッチングをおこなった後のSiウエハ611から、酸化膜321および酸化膜661を除去する。酸化膜321および酸化膜661は、上述した実施の形態と同様に、フッ酸を用いたウエットエッチングをおこなうことによって除去することができる。
ウエットエッチングに際しては、SiO2からなる部分(酸化膜321および酸化膜661)のうち、エッチング液に接触している部分から除去される。このため、細溝205内に埋め込まれた温度補償部材204も、エッチング液に接触している部分がエッチングされて一部が除去されるが、細溝205の深さに対する開口部分の面積が小さいため、温度補償部材204の厚さ(細溝205の深さ)に対してエッチング液に接触している部分の面積が小さく、細溝205内にエッチング液が回り込むことがない。
これにより、酸化膜321および酸化膜661を除去するまでエッチングをおこなっても、図6Iに示すように、温度補償部材204は細溝205から除去されることなく細溝205内に残る。この実施の形態3においては、熱酸化により細溝205へSiO2を埋め込む工程から、ウエットエッチングにより酸化膜321、酸化膜321および酸化膜661を除去するまでの一連の工程によって、この発明にかかる温度補償部材形成工程を実現することができる。
つぎに、堆積させたSiO2による層511および中間層312をウエットエッチングにより除去したSOIウエハ314の表面に、図6Jに示すように、樹脂膜206を形成する。樹脂膜206は、上述した各実施の形態と同様にして形成することができる。この実施の形態3においては、樹脂膜206を形成する工程によって、この発明にかかる時計部品の製造方法における被膜形成工程を実現することができる。最後に、Siウエハ611から、ピンセット(図示を省略する)などの器具を用いてひげぜんまい108として成形された部分をもぎ取って、ひげぜんまい108を製造する。
(実施の形態4)
(時計部品の製造方法)
つぎに、この発明にかかる実施の形態4の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品の製造方法について説明する。実施の形態4においては、上述した各実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明を省略する。
(時計部品の製造方法)
つぎに、この発明にかかる実施の形態4の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品の製造方法について説明する。実施の形態4においては、上述した各実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明を省略する。
図7A〜図7Eは、この発明にかかる実施の形態4の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品(ひげぜんまい108)の製造方法を示す説明図である。実施の形態4の製造方法においては、まず、上述した実施の形態3の製造方法における図6A〜図6Eと同様の工程をおこなって、部分パタンと細溝パタンとに応じた深さにエッチングされるように、Siウエハ611に対してデバイスエッチングをおこなう。
デバイスエッチングに際しては、マスク631における部品パタンによって覆われていない部分の方が、細溝パタンの部分よりもエッチングが進行し、細溝パタンの部分よりも深くエッチングされる。ひげぜんまい108の旋回部201となる部分は、ひげぜんまい108の直径方向において、溝651によって隣り合う旋回部201と分離される。
また、デバイスエッチングにより、デバイス層313のうち、時計部品(ひげぜんまい108)として残る部分には、細溝パタンの形状に応じた細溝205が形成される。そして、デバイスエッチングをおこなった後のSiウエハ611から、上述した各実施の形態と同様にして、マスク631を除去(剥離)する。
つぎに、マスク631を除去したSiウエハ611の表側面に対して、上述した実施の形態2と同様にして、CVDによりSiO2を堆積させる。ガスの状態にされたSiO2は、分子が細かくなるため、細溝205内にも入り込む。これにより、図7Aに示すように、細溝205内を含むSiウエハ611の表側面の全体にSiO2を堆積させることができ、細溝205内にSiO2を埋め込み、温度補償部材204を設けることができる。堆積させたSiO2による層711は、Siウエハ611の表側面の全体、すなわち、デバイスエッチングにより露出した部分(溝651の側面651aや底面651b)を覆うように設けられる。
つぎに、Siウエハ611の裏側面に、図7Bに示すように、マスク721を形成する。マスク721の形成は、たとえば、上述した各実施の形態におけるマスク(マスク371など)の形成と同様にして、Siウエハ611の裏側面にフォトレジストを塗布し、当該フォトレジストをひげぜんまい108の裏面側を開放するパタン状に露光した後に不要なフォトレジストを除去することによっておこなうことができる。
つぎに、マスク721を用いたSiウエハ611の裏側面からのエッチングをおこなう。Siウエハ611の裏側面からのエッチングは、Siウエハ611の裏側面のうちマスク721によって覆われていない部分が板厚方向に貫通し、中間層312が露出するまでおこなう。Siウエハ611の裏側面からのエッチングは、上述した実施の形態における支持層311側からのエッチングと同様に、SF6(六フッ化硫黄)とC4F8(八フッ化シクロブタン)との混合ガス(SF6+C4F8)を用いた深掘りRIE技術によるドライエッチングによって実現することができる。このSiウエハ611の裏側面からのエッチングにより、Siウエハ611は、図7Cに示すように、マスク721の形状に応じた形状に加工される。
つぎに、Siウエハ611の裏側面からのエッチングをおこなった後のSiウエハ611から、堆積させたSiO2による層711を除去する。堆積させたSiO2による層711は、上述した実施の形態における酸化膜321、酸化膜361および中間層312の除去と同様にして、フッ酸を用いたウエットエッチングをおこなうことによって除去することができる。
ウエットエッチングに際しては、Siウエハ611の裏側面からのエッチングをおこなった後のSiウエハ611においてSiO2からなる部分(堆積させたSiO2による層711および中間層312)のうち、エッチング液に接触している部分から除去される。このため、エッチング液に浸漬させる時間を調整するなどして、デバイス層313の表側面が露出するタイミングでウエットエッチングを停止することにより、図7Dに示すように、温度補償部材204を細溝205から除去することなく細溝205内に残した状態で、堆積させたSiO2のうち、細溝205内のSiO2(温度補償部材204)以外を除去することができる。
この実施の形態4においては、CVDにより細溝205へSiO2を堆積させる工程から、ウエットエッチングにより堆積させたSiO2による層711および中間層312を除去するまでの一連の工程によって、この発明にかかる温度補償部材形成工程を実現することができる。
つぎに、堆積させたSiO2による層711および中間層312をウエットエッチングにより除去したSOIウエハ314の表面に、図7Eに示すように、樹脂膜206を形成する。樹脂膜206は、上述した各実施の形態と同様にして形成することができる。この実施の形態4においては、樹脂膜206を形成する工程によって、この発明にかかる時計部品の製造方法における被膜形成工程を実現することができる。最後に、Siウエハ611から、ピンセット(図示を省略する)などの器具を用いてひげぜんまい108として成形された部分をもぎ取って、ひげぜんまい108を製造する。
(実施の形態5)
(時計部品の製造方法)
つぎに、この発明にかかる実施の形態5の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品の製造方法について説明する。実施の形態5においては、上述した各実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明を省略する。図8A〜図8Fは、この発明にかかる実施の形態5の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品(ひげぜんまい108)の製造方法を示す説明図である。
(時計部品の製造方法)
つぎに、この発明にかかる実施の形態5の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品の製造方法について説明する。実施の形態5においては、上述した各実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明を省略する。図8A〜図8Fは、この発明にかかる実施の形態5の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品(ひげぜんまい108)の製造方法を示す説明図である。
実施の形態5の製造方法においては、まず、上述した実施の形態3の製造方法における図6A〜図6Dと同様の工程をおこなって、表面酸化膜621のうちマスク631によって覆われていない部分を除去し、表面酸化膜621の一部をマスク631の形状に応じた形状に加工する。そして、マスク631の形状に応じた形状に加工された表面酸化膜621から、マスク631を除去する。
つぎに、図8Aに示すように、マスク631が除去されたSiウエハ611の裏側面のザグリをおこなう。Siウエハ611の裏側面のザグリは、Siウエハ611の裏側面を部分的に研磨することによって実現できる。Siウエハ611の裏側面のザグリに際しては、Siウエハ611のうち、ひげぜんまい108となる部分をSiウエハ611の裏面側から研磨する。
Siウエハ611の裏側面のザグリにより、エッチングをおこなった場合と同様に、Siウエハ611を裏側面から任意の形状に加工することができる。Siウエハ611の裏側面のザグリは、ザグリによって残る部分が、製造対象とするひげぜんまい108の厚さと同じになるまでおこなう。
つぎに、ザグリによって裏側面から加工されたSiウエハ611に対して、図8Bに示すように、裏側面全体に裏面SiO2層821を形成する。裏面SiO2層821は、Siウエハ611の裏側面に、上述した実施の形態2と同様にして、CVDによりSiO2を堆積させることによって形成することができる。
つぎに、マスク631の形状に応じた形状に加工された表面酸化膜621をマスクとして、図8Cに示すように、深掘りRIE技術によるデバイスエッチングをおこない、Siウエハ611を、表面酸化膜621の形状に応じた形状に加工する。そして、図8Dに示すように、細溝205内に温度補償材料を埋め込むことによって温度補償部材204を形成する。温度補償部材204は、具体的には、たとえば、上述した実施の形態と同様にして、熱酸化により細溝205にSiO2を埋め込むことによって形成することができる。
つぎに、細溝205にSiO2を埋め込んだ後のSiウエハ611から、酸化膜321および裏面SiO2層821を除去する。酸化膜321および裏面SiO2層821は、上述した実施の形態と同様に、フッ酸を用いたウエットエッチングをおこなうことによって除去することができる。
ウエットエッチングに際しては、SiO2からなる部分(酸化膜321および裏面SiO2層821)のうち、エッチング液に接触している部分から除去される。このため、細溝205内に埋め込まれた温度補償部材204も、エッチング液に接触している部分がエッチングされて一部が除去されるが、細溝205内に設けられた温度補償部材204については、細溝205の深さに対する開口部分の面積が小さいため、温度補償部材204の厚さ(細溝205の深さ)に対してエッチング液に接触している部分の面積が小さく、細溝205内にエッチング液が回り込むことがない。
これにより、酸化膜321および裏面SiO2層821を除去するまでエッチングをおこなっても、図8Eに示すように、温度補償部材204を細溝205から除去することなく細溝205内に残すことができる。この実施の形態5においては、熱酸化により細溝205へSiO2を堆積させる工程から、酸化膜321および裏面SiO2層821をウエットエッチングにより除去するまでの一連の工程によって、この発明にかかる温度補償部材形成工程を実現することができる。
つぎに、酸化膜321および裏面SiO2層821をウエットエッチングにより除去したSOIウエハ314の表面に、図8Fに示すように、樹脂膜206を形成する。樹脂膜206は、上述した各実施の形態と同様にして形成することができる。この実施の形態5においては、樹脂膜206を形成する工程によって、この発明にかかる時計部品の製造方法における被膜形成工程を実現することができる。最後に、Siウエハ611から、ピンセット(図示を省略する)などの器具を用いてひげぜんまい108として成形された部分をもぎ取って、ひげぜんまい108を製造する。
(実施の形態6)
(時計部品の製造方法)
つぎに、この発明にかかる実施の形態6の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品の製造方法について説明する。実施の形態6においては、上述した各実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明を省略する。図9A〜図9Cは、この発明にかかる実施の形態6の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品(ひげぜんまい108)の製造方法を示す説明図である。
(時計部品の製造方法)
つぎに、この発明にかかる実施の形態6の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品の製造方法について説明する。実施の形態6においては、上述した各実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明を省略する。図9A〜図9Cは、この発明にかかる実施の形態6の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品(ひげぜんまい108)の製造方法を示す説明図である。
実施の形態5の製造方法においては、まず、上述した実施の形態3の製造方法における図6A〜図6Dと同様の工程をおこなって、表面酸化膜621のうちマスク631によって覆われていない部分を除去し、表面酸化膜621の一部をマスク631の形状に応じた形状に加工する。
つぎに、図8A〜図8Cと同様の工程をおこなって、Siウエハ611を、表面酸化膜621の形状に応じた形状に加工する。そして、表面酸化膜621の形状に応じた形状に加工されたSiウエハ611の表側面に、図9Aに示すように、CVDによりSiO2を堆積させる。CVDによるSiO2の堆積は、上述した実施の形態2と同様にして、CVDによりSiO2を堆積させることによっておこなうことができる。
このとき、Siウエハ611の裏側面には、既に、裏面SiO2層821が形成されているため、表面酸化膜621の形状に応じた形状に加工されたSiウエハ611に対してCVDをおこなうと、当該加工によって形成された溝651の側面651aや底面651bにSiO2が堆積し、堆積させたSiO2による層911が形成される。さらに、細溝205内にもSiO2が入り込み、温度補償部材204を形成することができる。
つぎに、上述した各実施の形態と同様に、フッ酸を用いたウエットエッチングをおこない、Siウエハ611においてSiO2からなる部分(堆積させたSiO2による層911および裏面SiO2層821)を除去する。フッ酸を用いたウエットエッチングに際しては、エッチング液に接触している部分が除去されるが、細溝205内に設けられた温度補償部材204については、細溝205の深さに対する開口部分の面積が小さいため、温度補償部材204の厚さ(細溝205の深さ)に対してエッチング液に接触している部分の面積が小さく、細溝205内にエッチング液が回り込むことがない。
これにより、堆積させたSiO2による層911および裏面SiO2層821を除去するまでエッチングをおこなっても、図9Bに示すように、温度補償部材204を細溝205から除去することなく細溝205内に残すことができる。この実施の形態6においては、CVDにより細溝205へSiO2を堆積させる工程から、ウエットエッチングにより酸化膜321および裏面SiO2層821を除去するまでの一連の工程によって、この発明にかかる温度補償部材形成工程を実現することができる。
つぎに、酸化膜321および裏面SiO2層821をウエットエッチングにより除去したSOIウエハ314の表面に、図9Cに示すように、樹脂膜206を形成する。樹脂膜206は、上述した各実施の形態と同様にして形成することができる。この実施の形態6においては、樹脂膜206を形成する工程によって、この発明にかかる時計部品の製造方法における被膜形成工程を実現することができる。最後に、Siウエハ611から、ピンセット(図示を省略する)などの器具を用いてひげぜんまい108として成形された部分をもぎ取って、ひげぜんまい108を製造する。
(実施の形態7)
(ひげぜんまい108の構造)
つぎに、この発明にかかる実施の形態7の、ひげぜんまい108の構造について説明する。実施の形態7においては、上述した各実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明を省略する。
(ひげぜんまい108の構造)
つぎに、この発明にかかる実施の形態7の、ひげぜんまい108の構造について説明する。実施の形態7においては、上述した各実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明を省略する。
図10は、この発明にかかる実施の形態7のひげぜんまい108の一部を拡大して示す説明図である。図10においては、図2Aにおいて点線で囲まれた領域Bを拡大して示している。図10において、ひげぜんまい108は、温度補償部材204を備えている。温度補償部材204は、母材200に形成された細溝205に埋め込まれている。
実施の形態7におけるひげぜんまい108が備える細溝205は、母材200の板厚(厚さ)方向に沿って母材200を貫通している。温度補償部材204は、母材200の外表面と面一になるように、細溝205の内部全体に埋め込まれている。ひげぜんまい108は、温度補償部材204が埋め込まれた母材200の表面全体を被覆する樹脂膜206を備えている。樹脂膜206は、母材200の表面全体を一定(均一)の膜厚で被覆している。
温度補償部材204は、上述した図2Bや図4A〜図4Lの(b)と同様にひげぜんまい108を切断した断面において、厚さ方向および幅方向のいずれにおいても均等になるように設けられている。すなわち、ひげぜんまい108の断面を厚さ方向に沿って二等分した場合、一方の部分に設けられた温度補償部材204と他方の部分に設けられた温度補償部材204とは線対照な位置関係にある。また、ひげぜんまい108の断面を幅方向に沿って二等分した場合も、一方の部分に設けられた温度補償部材204と他方の部分に設けられた温度補償部材204とは線対照な位置関係にある。
このように、温度補償部材204を、ひげぜんまい108を切断した断面において、厚さ方向および幅方向のいずれにおいても均等になるように設けることにより、ひげぜんまい108に作用する応力に偏りが生じることを確実に防止することができる。これにより、温度補償部材204を設けることによってひげぜんまい108に反りなどの変形が発生することを防止できる。
母材200の板厚方向に貫通した状態で設けられる温度補償部材204は、図10に示した配置例にしたがって設けられるものに限らない。たとえば、上述した図4D(a)に示したように、ひげぜんまい108の巻き方向に沿って断続的に連なった列を形成するように複数設けてもよい。この場合、断続する温度補償部材204の長さや幅は、適宜調整することができる。
また、たとえば、図4C(a)に示すように、母材200の板厚方向に貫通した状態で設けられる温度補償部材204を、たとえば、ひげぜんまい108の巻き方向に沿った形状で連続した渦巻きを形成するように、かつ、旋回部201の幅方向に沿って複数設けてもよい。その他、上述した配置例において示した各種のパタンで配置してもよい。
温度補償部材204は、すべてが母材200の板厚方向に貫通した状態で設けられるものに限らない。ひげぜんまい108は、たとえば、一部の温度補償部材204を母材200の板厚方向に貫通する細溝205内に設け、別の温度補償部材204を母材を貫通しない有底の細溝205内に設けることにより、母材200の板厚方向に貫通する温度補償部材204と有底の細溝205内に設けられた温度補償部材204とが混在する構造であってもよい。
(時計部品の製造方法)
つぎに、この発明にかかる実施の形態7の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品の製造方法について説明する。実施の形態7の製造方法においては、まず、上述した各実施の形態1の製造方法における図3A〜図3Dと同様の工程をおこなって、酸化膜321のうちマスク331によって覆われていない部分を除去し、酸化膜321の一部をマスク331の形状に応じた形状に加工する。
つぎに、この発明にかかる実施の形態7の、機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品の製造方法について説明する。実施の形態7の製造方法においては、まず、上述した各実施の形態1の製造方法における図3A〜図3Dと同様の工程をおこなって、酸化膜321のうちマスク331によって覆われていない部分を除去し、酸化膜321の一部をマスク331の形状に応じた形状に加工する。
つぎに、デバイスエッチングをおこなう。デバイスエッチングは、マスク331の形状に応じた形状に加工された酸化膜321および当該酸化膜321に積層されたマスク331を用いた、デバイス層313に対するエッチング加工によって実現される。マスク331における細溝パタンの幅方向の寸法は、部品パタンによって覆われていない部分(デバイスエッチングに際して除去される部分)がなす開口よりも小さいため、デバイス層313に対するデバイスエッチングは、細溝パタンによる部分よりも、部品パタンによる部分のエッチング(すなわち母材200の形成にかかるエッチング)の方が進行が遅い。デバイス層313のエッチングは、細溝パタンによる部分がデバイス層313を貫通するまでおこなう。
つぎに、細溝205の内部に温度補償材料を埋め込むことによって温度補償部材204を形成する。温度補償部材204は、具体的には、たとえば、マスク331を除去(剥離)した後のSOIウエハ314(支持層131)を熱酸化することにより、細溝205の内部にSiO2を埋め込むことによって形成することができる。また、温度補償部材204は、具体的には、たとえば、酸化膜321およびマスク331を除去したSOIウエハ314の表側面に対して、CVDによりSiO2を堆積させることによって形成してもよい。
以降、上述した各実施の形態と同様に、支持層311側からのエッチングや、酸化膜321、酸化膜361および中間層312の除去をおこなう。酸化膜321、酸化膜361および中間層312は、フッ酸を用いたウエットエッチングにより除去する。フッ酸を用いたウエットエッチングに際しては、エッチング液に接触している部分が除去されるが、細溝205内に設けられた温度補償部材204については、細溝205の深さに対する開口部分の面積が小さいため、細溝205が、母材200の板厚方向に貫通している場合にも、細溝205内にエッチング液が回り込むことがない。これにより、温度補償部材204を細溝205から除去することなく細溝205内に残すことができる。
その後、酸化膜361および中間層312を除去したSOIウエハ314の表面に、樹脂膜206を形成する。樹脂膜206は、上述した各実施の形態と同様にして形成することができる。最後に、SOIウエハ314から、ひげぜんまい108として成形された部分をもぎ取って、ひげぜんまい108を製造する。
上述した製造方法においては、実施の形態7のひげぜんまい108の製造に際して、部品パタンによる部分のエッチングと細溝パタンによる部分のエッチングとを、1回のデバイスエッチングでおこなうようにしたが、これに限るものではない。部品パタンによる部分のエッチングと、細溝パタンによる部分のエッチングと、をそれぞれ別の工程においておこなってもよい。
この場合、たとえば、まず、細溝パタンのない部品パタンによるエッチングがデバイス層313を貫通するまでおこなう。これにより、ひげぜんまい108の旋回部201となる部分が、ひげぜんまい108の直径方向において溝351によって隣り合う旋回部201と分離される。つぎに、細溝パタンによる部分のエッチングをおこなって、細溝205を形成する。
実施の形態7においては、SOIウエハ314を用いたひげぜんまい108の製造方法について説明したが、実施の形態7のひげぜんまい108は、SOIウエハ314を用い製造するものに限らない。上述した実施の形態3〜6と同様に、シリコン製のシリコン単結晶基板(Siウエハ)611を用いて、実施の形態7のひげぜんまい108を製造してもよい。
(ひげぜんまい108の温度特性)
つぎに、温度補償部材204の有無および樹脂膜206の有無の違いによるひげぜんまい108の温度特性の相違について説明する。図11は、温度補償部材204を備えていないひげぜんまい108に、樹脂膜206を成膜した場合の温度特性、および、樹脂膜206を成膜した場合の温度特性を示す説明図である。
つぎに、温度補償部材204の有無および樹脂膜206の有無の違いによるひげぜんまい108の温度特性の相違について説明する。図11は、温度補償部材204を備えていないひげぜんまい108に、樹脂膜206を成膜した場合の温度特性、および、樹脂膜206を成膜した場合の温度特性を示す説明図である。
図11に示すように、樹脂膜206を成膜したひげぜんまい108の温度特性は、樹脂膜206を成膜していないひげぜんまい108の温度特性よりも、温度と歩度との関係を示す一次関数における傾きが大きい。また、樹脂膜206を成膜したひげぜんまい108の温度特性は、成膜した樹脂膜206の膜厚が厚いほど、温度と歩度との関係を示す一次関数における傾きが大きい。このように、ひげぜんまい108の温度特性は、樹脂膜206を成膜することによって低下する傾向にある。
図12は、樹脂膜206を備えていないひげぜんまい108に、温度補償部材204を設けた場合の温度特性、および、温度補償部材204を設けていない場合の温度特性を示す説明図である。図12に示すように、樹脂膜206を備えていないひげぜんまい108においては、温度補償部材204を設けた方が、温度補償部材204を設けていないよりも、温度と歩度との関係を示す一次関数における傾きが小さい。
また、樹脂膜206を備えていないひげぜんまい108においては、温度補償部材204を多く設けた方が、温度補償部材204が少ない場合よりも、温度と歩度との関係を示す一次関数における傾きが小さい。このように、ひげぜんまい108の温度特性は、温度補償部材204を設けることによって向上し、さらに温度補償部材204が多いほど向上する傾向にある。
また、図示を省略するが、実験により、温度補償部材204を備えていないひげぜんまい108においては、樹脂膜206がある場合の方が、樹脂膜206がない場合よりも耐衝撃性に優れていることが検証された。一方、温度特性に関しては、温度補償部材204を備えていないひげぜんまい108においては、樹脂膜206がない場合の方が、樹脂膜206がある場合よりも若干優れていることが検証された。
図13は、温度補償部材204を備えたひげぜんまい108に、樹脂膜206を成膜した場合の温度特性、および、樹脂膜206を成膜した場合の温度特性を示す説明図である。図13に示すように、温度補償部材204を備えたひげぜんまい108においては、樹脂膜206を成膜した場合であっても、温度と歩度との関係を示す一次関数における傾きが小さく、温度特性が向上することがわかる。
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法は、SOI基板314におけるデバイス層313またはSiウエハ611にマスク331、631を形成し、当該マスク331、631を用いてデバイス層313またはSiウエハ611に対するエッチング加工をおこない、このエッチング加工によりエッチングされたデバイス層313またはSiウエハ611に形成された細溝205内に、シリコン(Si)の温度特性とは異なる温度特性を有する温度補償材料を用いて温度補償部材204を形成し、当該温度補償部材204を形成した母材200の表面を当該温度補償部材204とともにシリコンよりも粘靱性の高い材料を用いて形成された樹脂膜206によって被覆するようにしたことを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法によれば、シリコンよりも粘靱性の高い材料を用いて形成された樹脂膜206がクッションの役割を果たすので、ひげぜんまい108に対する外部からの衝撃を緩和してひびや欠けを防止することができ、破損し難い時計部品を実現することができる。また、この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法によれば、Siの温度特性とは異なる温度特性を有する温度補償部材204を設けることにより、強度向上と温度補償性能の確保とを両立させたひげぜんまい108を製造することができる。
このように、この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法によれば、強度向上と温度補償性能の確保とを両立させた時計部品を製造することができる。
また、この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法は、樹脂を用いて、母材200の表面を、温度補償部材204とともに被覆するようにしたことを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法によれば、金属よりも軽量な樹脂を用いてひげぜんまい108を製造することにより、ひげぜんまい108の重量を大きく増加させることなく、ひげぜんまい108の耐衝撃性を高めることができる。また、金属のように酸化して錆びることがない樹脂を用いてひげぜんまい108を製造することにより、ひげぜんまい108の経年劣化を防ぐことができる。
特に、有機化合物であるパラキシリレン系ポリマーなどの樹脂材料を用いて、ひげぜんまい108の表面において重合反応を起こさせることにより、ひげぜんまい108の表面にピンホールがなく均一な膜厚の薄膜状の樹脂膜206を形成することができる。これにより、腕時計に用いられるひげぜんまい108などのように、微細で、溝・孔・エッジ部分などにより複雑な形状の時計部品であっても、当該時計部品の表面全体をピンホールを生じさせずに均一な膜厚で被覆することができる。
また、この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法は、二酸化ケイ素(SiO2)を用いて温度補償部材204を形成するようにしたことを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法によれば、Siのヤング率の温度特性とは逆のヤング率の温度特性を示すSiO2を用いて温度補償部材204を形成することにより、SiO2の温度特性によってSiの温度特性を打ち消し、Siの温度特性を補償することができる。これにより、温度特性に優れ、耐久性に優れたひげぜんまい108を製造することができる。
また、この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法は、マスク331と母材200との積層方向に沿って当該母材200を貫通しない、有底の細溝205を形成するようにしたことを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法によれば、温度補償部材204を埋め込む細溝205を有底とすることにより、細溝パタンによる部分のエッチングを母材200の形成にかかるエッチングと同じ工程においておこなう場合に、母材200の形成にかかるエッチングに要する時間で細溝205を形成することができる。これにより、母材200の形成にかかるエッチングと細溝205の形成にかかるエッチングとを1回のデバイスエッチングでおこなうことができ、作業効率の向上を図ることができる。
また、この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法は、マスク331と母材200との積層方向に沿って当該母材200を貫通する細溝205を形成するようにしたことを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法によれば、温度補償部材204を埋め込む細溝205が、マスク331と母材200との積層方向、すなわち、母材200の厚さ方向に沿って母材200を貫通しているため、温度補償部材204を設けることによって母材200の厚さ方向においてひげぜんまい108に作用する応力に偏りが生じることを防止することができる。これにより、応力の偏りによるひげぜんまい108の変形を抑制することができる。
また、この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法によれば、母材200の厚さ方向に沿って母材200を貫通する細溝205を形成することにより、細溝205の深さを管理する煩雑な工程をなくし、細溝205を高精度に製造することができる。これによって、母材200における所望の位置に温度補償部材204を設けることができ、温度補償部材204を設けるによってひげぜんまい108に作用する応力に偏りが生じることを防止することができ、応力の偏りによるひげぜんまい108の変形を抑制することができる。
また、この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法は、母材200の厚さ方向に沿って母材200を貫通する細溝205と、母材200を貫通しない有底の細溝205と、を混在させて形成するようにしたことを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法によれば、母材200を貫通する細溝205と母材200を貫通しない有底の細溝205とを混在させることにより、細溝205を設けることによって、ひげぜんまい108の製造途中で母材200が変形することを防止することができ、強度向上と温度補償性能の確保とを両立させたひげぜんまい108を高精度に製造することができる。
また、この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法は、母材200の形成と細溝205の形成とを同時におこなうエッチング加工をおこなうようにしたことを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態の時計部品の製造方法によれば、母材200の形成にかかるエッチングと細溝205の形成にかかるエッチングとを1回のデバイスエッチングでおこなうことにより、ひげぜんまい108の製造時間の短縮を図り、作業効率の向上を図ることができる。
また、この発明にかかる実施の形態の時計部品は、時計の駆動機構101を構成する時計部品であって、シリコンによって形成され、外表面から内側に凹む細溝205を備えた母材200と、細溝205内に設けられて、シリコンの温度特性とは異なる温度特性を有する温度補償部材204と、シリコンよりも粘靱性の高い材料を用いて形成され、母材200および温度補償部材204を被覆する樹脂膜206と、を備えたことを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態の時計部品(ひげぜんまい108)によれば、シリコンよりも粘靱性の高い材料を用いて形成された樹脂膜206がクッションの役割を果たすので、ひげぜんまい108に対する外部からの衝撃を緩和してひびや欠けを防止することができ、破損し難い時計部品を実現することができる。
また、この発明にかかる実施の形態の時計部品(ひげぜんまい108)によれば、Siの温度特性とは異なる温度特性を有する温度補償部材204を設けることにより、強度向上と温度補償性能の確保とを両立させたひげぜんまい108を製造することができる。
また、この発明にかかる実施の形態の時計部品(ひげぜんまい108)は、樹脂を用いて形成された樹脂膜206を備えていることを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態の時計部品(ひげぜんまい108)によれば、金属よりも軽量な樹脂を用いて形成された樹脂膜206によって母材200が被覆されているため、樹脂膜206を備えることによる重量の増加を抑えた、耐衝撃性の高いひげぜんまい108を提供することができる。また、金属のように酸化して錆びることがない樹脂を用いて形成された樹脂膜206によって母材200が被覆されているため、ひげぜんまい108の経年劣化を防ぐことができる。
特に、有機化合物であるパラキシリレン系ポリマーなどの樹脂材料を用いて形成される樹脂膜206は、母材200の表面において重合反応を起こさせることにより形成されるため、表面にピンホールがなく均一な膜厚の薄膜状の樹脂膜206を備えたひげぜんまい108を提供することができる。
また、有機化合物であるパラキシリレン系ポリマーなどの樹脂材料を用いて形成される樹脂膜206は、ひげぜんまい108に限らず、腕時計に用いられる時計部品などのように、微細で、溝・孔・エッジ部分などにより複雑な形状の時計部品であっても、当該時計部品の表面全体をピンホールを生じさせずに均一な膜厚で被覆することができる。
また、この発明にかかる実施の形態の時計部品は、樹脂膜206が、母材200および温度補償部材204を連続して被覆することを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態の時計部品(ひげぜんまい108)によれば、母材200および温度補償部材204が樹脂膜206によって連続して被覆されているため、ひげぜんまい108が動作することによって、それぞれ別部材によって形成されている母材200と温度補償部材204とに異なる応力が生じた場合にも、母材200と温度補償部材204とが分離してしまうことを防止できる。
また、この発明にかかる実施の形態の時計部品は、細溝205が、母材200の表側面および裏側面の少なくとも一方に設けられていることを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態の時計部品(ひげぜんまい108)によれば、他方の面から視認できないように、母材200の表側面および裏側面の一方に温度補償部材204を設けることができ、これにより、当該時計部品(ひげぜんまい108)の美観を確保することができる。また、母材200の表側面および裏側面の両面に温度補償部材204を設けた場合は、時計部品(ひげぜんまい108)の温度特性および耐久性の一層の向上を図ることができる。
また、この発明にかかる実施の形態の時計部品(ひげぜんまい108)は、細溝205が、有底形状をなし、母材200の表側面および裏側面の少なくとも一方に設けられていることを特徴としている。この発明にかかる実施の形態の時計部品(ひげぜんまい108)によれば、ひげぜんまい108強度向上と温度補償性能の確保とを両立させることができる。
また、この発明にかかる実施の形態の時計部品(ひげぜんまい108)は、細溝205が、母材200を当該母材200の表側面から裏側面へ貫通していることを特徴としている。この発明にかかる実施の形態の時計部品(ひげぜんまい108)によれば、細溝205が母材200の厚さ方向に沿って母材200を貫通しているため、高精度に製造された細溝205に温度補償部材204が設けられたひげぜんまい108を得ることができる。これにより、ひげぜんまい108強度向上と温度補償性能の確保との両立を確実に実現することができる。
また、この発明にかかる実施の形態の時計部品(ひげぜんまい108)によれば、細溝205が母材200の厚さ方向に沿って母材200を貫通しているため、母材200の厚さ方向における応力の偏りが防止され、応力の偏りに起因する変形のない、高精度に製造されたひげぜんまい108を得ることができる。
また、この発明にかかる実施の形態の時計部品(ひげぜんまい108)は、母材200が当該母材200の表側面から裏側面へ貫通している細溝205と、母材200の表側面および裏側面の少なくとも一方に設けられた有底形状をなす細溝205と、が混在していることを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態の時計部品(ひげぜんまい108)によれば、細溝205を設けることに起因する母材200の変形を防止することができるので、高精度に製造されたひげぜんまい108を得ることができる。
上述した実施の形態においては、フォトレジストを用いて第1のマスク315や第2のマスク316を形成したが、第1のマスク315や第2のマスク316はフォトレジストに限るものではない。第1のマスク315や第2のマスク316はフォトレジストに代えて、たとえば、メタルマスクを用いてもよい。メタルマスクを用いたエッチング加工については、公知の技術を用いて実現可能であるため説明を省略する。
上述した実施の形態においては、支持層311のおもて面側に酸化膜312およびデバイス層313を順次形成した積層基板(SOI基板)314を用いてひげぜんまい108を製造する例について説明したが、SOIウエハ314を実現するSOI基板の製造方法はこれに限るものではない。
この発明にかかる実施の形態の機械式時計の駆動機構101を構成する時計部品(ひげぜんまい108)は、2枚のシリコン基板(片方は表面にSiO2膜を形成済)を貼り合わせるウェハ貼り合わせ法(Wafer Bondingやスマートカット法)、まずシリコン薄膜を構成した後その表面にSiO2を形成してから、それをシリコン基板に貼り合わせるSeed Method方法などのいずれの製造方法によって製造されたSOI基板を積層基板として用いてもよい。
以上のように、この発明にかかる時計部品の製造方法および時計部品は、時計における機械部品を構成する時計部品の製造方法および時計部品に有用であり、特に、機械式時計の駆動機構を構成する時計部品の製造方法および時計部品に適している。
108 ひげぜんまい
311 支持層
312 中間層
313 デバイス層
314 SOIウエハ
204 温度補償部材
205 細溝
206 樹脂膜
321 酸化膜
331 マスク
331a スリット
351 溝
611 Siウエハ
621 表面酸化膜
631 マスク
821 裏面酸化膜
311 支持層
312 中間層
313 デバイス層
314 SOIウエハ
204 温度補償部材
205 細溝
206 樹脂膜
321 酸化膜
331 マスク
331a スリット
351 溝
611 Siウエハ
621 表面酸化膜
631 マスク
821 裏面酸化膜
Claims (14)
- 支持層の一面側に少なくとも酸化膜を介して積層された活性層またはシリコン単結晶基板に、当該活性層または当該シリコン単結晶基板を時計の駆動機構を構成する時計部品の形状に成形するエッチング加工に用いるマスクであって当該成形にかかる第1の開口よりも小さい第2の開口が一部に形成されたマスクを形成するマスク形成工程と、
前記マスク形成工程において形成されたマスクを用いて、前記活性層または前記シリコン単結晶基板から前記第1の開口部分を除去して母材を形成するエッチング加工をおこなうエッチング工程と、
シリコンの温度特性とは異なる温度特性を有する温度補償材料を用いて、前記エッチング工程により形成された母材において前記第2の開口に対応する位置に形成される細溝内に温度補償部材を形成する温度補償部材形成工程と、
前記温度補償部材形成工程において温度補償部材が形成された母材の表面を、当該温度補償部材とともに、シリコンよりも粘靱性の高い材料を用いて被覆する被膜形成工程と、
を含んだことを特徴とする時計部品の製造方法。 - 前記被膜形成工程は、前記母材の表面を、前記温度補償部材とともに、樹脂を用いて被覆することを特徴とする請求項1に記載の時計部品の製造方法。
- 前記温度補償部材形成工程は、二酸化ケイ素を用いて前記温度補償部材を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の時計部品の製造方法。
- 前記エッチング工程は、前記マスクと前記母材との積層方向に沿って当該母材を貫通しない、有底の前記細溝を形成するエッチング加工を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の時計部品の製造方法。
- 前記エッチング工程は、前記マスクと前記母材との積層方向に沿って当該母材を貫通する前記細溝を形成するエッチング加工を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の時計部品の製造方法。
- 前記エッチング工程は、前記マスクと前記母材との積層方向に沿って当該母材を貫通する前記細溝と、当該母材を貫通しない有底の前記細溝と、を混在させて形成するエッチング加工を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の時計部品の製造方法。
- 前記エッチング工程は、前記母材の形成と前記細溝の形成とを同時におこなうエッチング加工をおこなうことを特徴とする請求項4〜6のいずれか一つに記載の時計部品の製造方法。
- 時計の駆動機構を構成する時計部品であって、
シリコンによって形成され、外表面から内側に凹む細溝を備えた母材と、
前記細溝内に設けられて、前記シリコンの温度特性とは異なる温度特性を有する温度補償部材と、
シリコンよりも粘靱性の高い材料によって形成され、前記母材および前記温度補償部材を被覆する被膜と、
を備えたことを特徴とする時計部品。 - 前記被膜は、樹脂を用いて形成されていることを特徴とする請求項8に記載の時計部品。
- 前記被膜は、前記母材および前記温度補償部材を連続して被覆することを特徴とする請求項8または9に記載の時計部品。
- 前記細溝は、有底形状をなし、前記母材の表側面および裏側面の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一つに記載の時計部品。
- 前記細溝は、前記母材を当該母材の表側面から裏側面へ貫通していることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一つに記載の時計部品。
- 前記母材を当該母材の表側面から裏側面へ貫通している前記細溝と、前記母材の表側面および裏側面の少なくとも一方に設けられた有底形状をなす前記細溝と、が混在していることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一つに記載の時計部品。
- 前記温度補償部材は、二酸化ケイ素であることを特徴とする請求項8〜13のいずれか一つに記載の時計部品。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016116665 | 2016-06-10 | ||
JP2016116665 | 2016-06-10 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017223646A true JP2017223646A (ja) | 2017-12-21 |
Family
ID=60688053
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2017034062A Pending JP2017223646A (ja) | 2016-06-10 | 2017-02-24 | 時計部品の製造方法および時計部品 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2017223646A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN110061713A (zh) * | 2019-04-02 | 2019-07-26 | 嘉兴宏蓝电子技术有限公司 | 一种薄膜体声波谐振器及通信器件 |
-
2017
- 2017-02-24 JP JP2017034062A patent/JP2017223646A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN110061713A (zh) * | 2019-04-02 | 2019-07-26 | 嘉兴宏蓝电子技术有限公司 | 一种薄膜体声波谐振器及通信器件 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
CN104007650B (zh) | 温度补偿型摆轮及其制造方法、钟表用机芯、机械式钟表 | |
EP3232277B1 (en) | Timepiece component and method for manufacturing timepiece component | |
JP5389999B2 (ja) | ひげゼンマイ付きテンプの調速機とその製造方法 | |
JP5366318B2 (ja) | デテント脱進機およびデテント脱進機の作動レバーの製造方法 | |
RU2011109457A (ru) | Система шестерен для часов | |
JP2016133495A (ja) | 時計部品の製造方法および時計部品 | |
JP5464648B2 (ja) | 機械部品、機械部品の製造方法、機械部品組立体および時計 | |
JP6736365B2 (ja) | 時計部品の製造方法 | |
JP2017044533A (ja) | 時計部品の製造方法 | |
JP5366319B2 (ja) | デテント脱進機およびそれを有する機械式時計 | |
JP2017223646A (ja) | 時計部品の製造方法および時計部品 | |
JP2011079130A (ja) | 微細加工可能な材料から作られる自由に搭載されるホイール・セットおよびそれを製作する方法 | |
JP6831025B2 (ja) | ひげぜんまい | |
JP2017044543A (ja) | シリコン加工物の製造方法およびシリコン加工物 | |
JP6532805B2 (ja) | 機械部品 | |
JP2017032321A (ja) | 時計部品および時計部品の製造方法 | |
JP6703166B2 (ja) | 時計部品のぜんまい | |
JP7087873B2 (ja) | 時計部品の製造方法 | |
JP2010183208A (ja) | ウエットエッチング方法及び音叉型圧電素子片の加工方法 | |
TWI727285B (zh) | 矽游絲的製造方法 | |
US20180088530A1 (en) | Geometries for Hairsprings for Mechanical Watches Enabled By Nanofabrication | |
JP2024519511A (ja) | 時計ムーブメント部品の製造方法 | |
WO2019103977A1 (en) | Geometries for hairsprings for mechanical watches enabled by nanofabrication | |
JP2017090065A (ja) | 時計部品および時計部品の製造方法 | |
JP2023086667A (ja) | 圧電ひげぜんまい、及びひげぜんまいを製造する方法 |