JP2017222641A - シアリダーゼ阻害活性を有する化合物を含むインスリン分泌促進剤、血糖値上昇抑制剤及び糖尿病治療剤、並びにそれらの剤のスクリーニング方法 - Google Patents
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Abstract
Description
糖尿病は、炭水化物・脂質代謝の恒常性においてインスリンによる調節が不適切な状態と定義されており、主に空腹時/摂食後血糖値の上昇を招く。仮に、この不均衡な恒常性が正常に戻らず、長期間持続する場合、それはやがて糖尿病となる。
糖尿病は、世界で最も頻度の高い代謝系の異常であり、血管疾患に起因する合併症のリスク増大に加えて、高血糖症、脂質、炭水化物、タンパク質の代謝変化を特徴とする症候群の一群と定義できる。現在、全世界において数億人以上の人々が糖尿病で苦しんでいると推定されているため大きな問題となっている。
糖尿病の治療では、完治するということはないと言われている。
シアリダーゼは、ノイラミニダーゼとしても知られており、N−アセチルノイラミン酸を糖鎖から切断する能力を有する酵素である。シアリダーゼは、バクテリア、ウイルス、原生動物、脊椎動物を含む種々の生物に見出され、ウイルスシアリダーゼ、細菌シアリダーゼおよび哺乳類シアリダーゼの3種類に大別される。
これらノイラミニダーゼ産生病原体はヒト、その他の動物の主要な感染症に関わっており、特に、インフルエンザウイルスで問題になっている。
よって、シアリダーゼ活性の阻害剤(シアリダーゼ阻害活性を有する化合物を有効成分として含有する剤)は、シアリダーゼを有するウイルスによる感染治療のために研究が盛んにされている。
特許文献1は、「シアリダーゼ阻害活性を有する化合物の薬理上許容されるエステル誘導体を有効成分として含有するインフルエンザ予防剤」を開示している。しかしながら、シアリダーゼ阻害活性を有する化合物が、インスリン分泌促進効果、血糖値抑制効果及び糖尿病治療効果を有することは開示又は示唆がされていない。
特許文献2は、「シアリダーゼ阻害活性を有する2本鎖RNA」を開示している。しかしながら、実施例においては、シアリダーゼ阻害活性を有する2本鎖RNAは癌についてのみ効果が開示されている。さらに、シアリダーゼ阻害活性を有する化合物が、インスリン分泌促進効果を有することは開示又は示唆がされていない。
すなわち、本発明は下記の〔1〕〜〔8〕である。
〔2〕前記シアリダーゼ阻害活性を有する化合物が、N-アセチル-2,3-ジデヒドロ-2-デオキシノイラミン酸、その塩、その溶媒和物、又はその水和物である請求項1に記載の剤。
〔3〕インスリン分泌促進剤である前記の〔1〕又は〔2〕に記載の剤。
〔4〕血糖値上昇抑制剤である前記の〔1〕又は〔2〕に記載の剤。
〔5〕糖尿病治療剤である前記の〔1〕又は〔2〕に記載の剤。
〔6〕高濃度グルコース状態で血糖値上昇抑制作用及びインスリン分泌量増加作用を有し、低濃度グルコース状態で血糖値上昇抑制作用及びインスリン分泌量増加作用を有さないことを特徴とする前項〔1〕〜〔5〕のいずれか1に記載の剤。
〔7〕シアリダーゼのグルコシダーゼ活性を阻害する試験化合物を選択することを特徴とするインスリン分泌促進剤、血糖値上昇抑制剤、又は糖尿病治療剤の有効成分のスクリーニング方法。
〔8〕以下の工程を含む前記の〔7〕に記載のスクリーニング方法。
(1)試験化合物を、シアリダーゼ及び基質を含む系に添加する工程
(2)シアリダーゼ活性を測定する工程
〔9〕前記基質は、不溶性蛍光物質が付加したシアル酸である前記の〔8〕に記載のスクリーニング方法。
〔10〕前記シアリダーゼがNEU1、NEU2、NEU3及び/又はNEU4である前項〔1〕〜〔5〕のいずれか1に記載の剤。
〔11〕前記シアリダーゼがNEU1、NEU2、NEU3及び/又はNEU4である前項〔6〕〜〔9〕のいずれか1に記載のスクリーニング方法。
本発明の対象は、シアリダーゼ阻害活性を有する化合物を含むインスリン分泌促進剤、血糖値上昇抑制剤及び糖尿病治療剤、並びにそれらの剤のスクリーニング方法に関する。
本発明の「シアリダーゼ阻害活性を有する化合物」は、シアリダーゼ阻害活性を有すれば特に限定されない。
なお、シアリダーゼ阻害活性は、ウイルスシアリダーゼ阻害活性、細菌シアリダーゼ阻害活性、および/または哺乳類シアリダーゼ阻害活性のいずれでも良いが哺乳類シアリダーゼ阻害活性が好ましい。
シアリダーゼ阻害活性を有する化合物は、本発明のインスリン分泌促進剤、血糖値上昇抑制剤及び糖尿病治療剤の有効成分となる。
本発明の「シアリダーゼ阻害活性を有する化合物」において、好ましい化合物は、N-アセチル-2,3-ジデヒドロ-2-デオキシノイラミン酸(別和名:2,3-デヒドロ-2-デオキシ-N-アセチルノイラミン酸、英語表記:2,3-Dehydro-2-deoxy-N-acetylneuraminic Acid、以後、「DANA」と称する場合がある)、その塩(特に、薬理上許容される塩)、その溶媒和物、その水和物等を例示することができる。
本発明における塩としては、通常知られているアミノ基等の部分が塩酸、硫酸、硝酸及び燐酸等の無機酸の塩、トリフルオロ酢酸等の有機カルボン酸の塩、ベンゼンスルホン酸及びメタンスルホン酸等の有機スルホン酸の塩となったもの、並びにカルボン酸部分がナトリウム、カリウム、カルシウム等の金属塩、アンモニア、トリエチルアミン等の有機塩基の塩となった化合物が挙げられるが特に限定されない。
特に、本発明の化合物の塩としては、ナトリウム塩が好ましい。
本発明における薬理上許容される塩としては、カルボキシ基等の酸性基を有する場合、一般的に薬理上許容される塩基付加塩を形成することが可能である。そのような塩基付加塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、ジベンジルアミン塩、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、テトラエチルアンモニウム、グアニジン、エタノールアミン、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、モルホリン塩、N−メチルグルカミン塩、ジエチルアミン塩、リジン、アルギニン、オルニチン、トリエチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン塩、ジエタノールアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩等を挙げることができる。
例えば、N-アセチル-2,3-ジデヒドロ-2-デオキシノイラミン酸の薬学上許容される塩とは、1位のカルボン酸がイオン化することにより形成される塩であり、例えば、無機塩基又は有機塩基と塩であってもよい。
本発明における溶媒和物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、ベンゼン等が付加した有機溶媒和物が挙げられるが特に限定されない。
また、本発明の各化合物の水和物としては、空気中の水分を吸収して生成したものも含む。
本発明のシアリダーゼ阻害活性を有する化合物には、薬理学的に許容されるプロドラックも含まれる。例えば、加水分解、加溶媒分解により又は生理学的条件下で水酸基(水酸基のプロドラッグ)、カルボン酸(カルボン酸のプロドラッグ)、アセトアミド基(アセトアミド基のプロドラッグ)等に変換できる。
本発明のインスリン分泌促進剤は、下記の実施例により、単にインスリン分泌量増加作用を有するだけでなく、高濃度グルコース状態でのインスリン分泌量増加作用を有する。より詳しくは、本発明のインスリン分泌促進剤は、低濃度グルコース状態でのインスリン分泌量増加作用を有さない。
本発明において、「高濃度グルコース状態」とは、正常より高い血中グルコース濃度であれば特に限定されないが、ヒトの場合、例えば120 mg/dL以上、好ましくは130 mg/dL以上、より好ましくは140 mg/dL以上の血中グルコース濃度が該当する。「低濃度グルコース状態」とは、正常より低い血中グルコース濃度であれば特に限定されないが、ヒトの場合、例えば100 mg/dL以下、好ましくは90 mg/dL以下、より好ましくは80 mg/dL以下の血中グルコース濃度が該当する。
本発明の血糖値上昇抑制剤は、下記の実施例により、単に血糖値上昇抑制作用を有するだけでなく、特に高濃度グルコース状態での血糖値上昇抑制作用を有する。
本発明の糖尿病治療剤は、血中グルコース濃度依存的なインスリン分泌量増加作用を有する。より詳しくは、本発明の糖尿病治療剤は、高濃度グルコース状態において、インスリン分泌量増加作用を有する。すなわち、本発明の糖尿病治療剤は、低血糖発症の可能性が低く安全に使用することができる。
また、本発明の糖尿病治療剤は、I型糖尿病及び/又はII型糖尿病に効果を有する。
本発明のインスリン分泌促進剤、血糖値上昇抑制剤及び糖尿病治療剤の有効成分のスクリーニング方法は、シアリダーゼのグルコシダーゼ活性を阻害する試験化合物を選択することを特徴とする。
本発明のスクリーニング方法における工程は、本スクリーニングの目的を達することができれば特に限定されない。
(1)試験化合物を、シアリダーゼ及び基質を含む系に添加する工程
(2)シアリダーゼ活性を測定する工程
より詳しくは、以下の工程を有する。
(1)試験化合物を、シアリダーゼ及びグリコシド結合を有する基質を含む系に添加する工程
(2)シアリダーゼのグルコシダーゼ活性を測定する工程
あるいは、試験化合物は、化合物ライブラリー、ファージディスプレイライブラリーもしくはコンビナトリアルライブラリーでもよい。試験化合物は、好ましくは低分子化合物であり、低分子化合物の化合物ライブラリーが好ましい。化合物ライブラリーの構築は当業者に公知であり、また市販の化合物ライブラリーを使用することもできる。
基質は、シアリダーゼに分解される物質であれば特に限定されないが、シアリダーゼがグリコシダーゼ(ノイラミン酸のグリコシド結合を切断する酵素)であることを考慮すれば、グリコシド結合を有する基質(例、N−アセチルノイラミン酸やN−グリコリルノイラミン酸、KDNなどの各種シアル酸の分子種等を含む)が好ましい。
「系」とは、in vivo、in vitroのいずれの場合でも良い。
シアリダーゼ活性は、コントロール(試験化合物を添加しない系)と比較して低ければ、試験化合物はシアリダーゼ阻害活性を有する化合物と判定できる。
1)比色法
2)蛍光法
3)染色法
本発明の剤には、疾患の発症を抑えることおよび遅延させることが含まれ、疾患になる前の予防だけではなく、治療後の疾患の再発に対する予防も含まれる。本発明の剤には、疾患を治癒すること、症状を改善することおよび症状の進行を抑えることが包含される。
本発明の剤の投与対象は、好ましくは、哺乳動物である。本明細書において哺乳動物は、温血脊椎動物をさし、例えば、ヒトおよびサルなどの霊長類、マウス、ラットおよびウサギなどの齧歯類、イヌおよびネコなどの愛玩動物、ならびにウシ、ウマおよびブタなどの家畜が挙げられる。本発明の剤は、霊長類、特にヒトへの投与に好適である。
本発明の剤の有効量は、例えば、患者の年齢、体重、重症度、製剤の性質、および投与経路に依存する。哺乳動物、特にヒトの治療のためのシアリダーゼ阻害活性を有する化合物の有効量は、通常、0.01〜1000 mg/kg/日、例えば0.1〜100 mg/kg/日の範囲である。
本発明の剤は、シアリダーゼ阻害活性を有する化合物と、1以上の製薬上許容される担体を含む。製薬上許容される担体とは、一般的に、本発明の有効成分とは反応しない、不活性の、無毒の、固体または液体の、増量剤、希釈剤またはカプセル化材料等をいい、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、適切なそれらの混合物、植物性油などの溶媒または分散媒体などが挙げられる。
本発明の剤は、経口により、非経口により、例えば、皮膚に、皮下に、粘膜に、静脈内に、動脈内に、筋肉内に、腹腔内に、膣内に、肺に、脳内に、眼に、および鼻腔内に投与される。経口投与製剤としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、チュアブル剤、ペレット剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤および吸入剤などが挙げられる。非経口投与製剤としては、坐剤、保持型浣腸剤、点滴剤、点眼剤、点鼻剤、ペッサリー剤、注射剤、口腔洗浄剤ならびに軟膏、クリーム剤、ゲル剤、制御放出パッチ剤および貼付剤などの皮膚外用剤などが挙げられる。本発明の剤は、徐放性皮下インプラントの形態で、または標的送達系(例えば、モノクローナル抗体、ベクター送達、イオン注入、ポリマーマトリックス、リポソームおよびミクロスフェア)の形態で、非経口で投与してもよい。
本発明の剤はさらに医薬分野において慣用の添加剤を含んでいてもよい。そのような添加剤には、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、着色剤、矯味剤などがあり、必要に応じて使用できる。
本実施例では、膵臓におけるシアリダーゼ活性の有無を確認した。詳細は、以下の通りである。
マウス(C57BL/6J、雄、8週齢)膵臓尾部の凍結切片を作製した。本発明者らが開発したシアリダーゼ活性イメージング基質(1mM BTP3-Neu5Ac、参照:PLOS ONE January 2014Volume 9 Issue 1 e81941)により該凍結切片を室温で染色した。さらに、染色済切片を洗浄したのち、蛍光顕微鏡で観察した。続いて、該切片をH&E染色を行った。
図1の結果により、膵島において強いシアリダーゼ活性が検出されることを確認した。
本実施例では、シアリダーゼ阻害活性を有する化合物添加による膵島β細胞におけるインスリン分泌量の変化を確認した。詳細は、以下の通りである。
2.8 mM グルコース含有緩衝液中で培養したマウス膵島β細胞に、8.3 mM グルコース含有緩衝液、2.8mM グルコース含有緩衝液、10μM DANAを含む2.8 mM グルコース含有緩衝液、0.1μM DANAを含む8.3 mM グルコース含有緩衝液、1.0μM DANAを含む8.3 mM グルコース含有緩衝液、又は10μM DANAを含む8.3 mM グルコース含有緩衝液を作用させた。
その後、上清を採取し、遠心分離した後、上清を−20℃で保存した。サンプル中のインスリン量は、超高感度マウス/ラットインスリン測定キット(Morinaga,Tokyo,Japan)を用いてELISA法により測定した。
高濃度グルコース溶液(8.3 mM)をマウス膵島β細胞に作用させた結果、インスリン分泌量が有意に増加した。また、高濃度グルコース溶液におけるインスリン分泌量の増加は、シアリダーゼ阻害剤である10 μM DANAによって有意に促進した(図2A、B)。
また、低濃度グルコース溶液(2.8 mM)にDANAを作用させても、インスリン分泌量に変化はみられなかった(図2B)。
以上により、シアリダーゼ阻害活性を有する化合物は、高濃度グルコース状態のインス
リン分泌量増加作用を有することを確認した。
本実施例では、シアリダーゼ阻害活性を有する化合物添加による腹腔内糖負荷試験での血糖値及び血漿中インスリン濃度の変化を確認した。詳細は、以下の通りである。
マウスを24時間絶食させた後、リン酸緩衝液(PBS)、7 mM又は70mM DANAを体重10 gあたり0.1 mLとなるよう尾静脈投与した。30秒後に、20 %グルコース溶液を体重10gあたり0.1 mLとなるよう腹腔内投与した。グルコース投与前(0分)、投与後30分、60分、90分、120分の血糖値を、血糖測定システム(アキュチェックSTメーター、Roche diagnostics,Tokyo,Japan)で測定した。また、投与後120分後に血漿を回収し、超高感度マウス/ラットインスリン測定キット(Morinaga,Tokyo,Japan)を用いてインスリン濃度を測定した。
70 mM DANA(10 μL/g b.w.)を投与した群は、Control群と比較して、血糖値の上昇が有意に抑制された(図3A、B)。また、糖負荷120分後の血漿中インスリン濃度は、70 mM DANAを投与した群で有意に増加した(図3C)。
以上により、シアリダーゼ阻害活性を有する化合物は、高濃度グルコース状態での血糖値上昇抑効果及びインスリン分泌量増加作用を有することを確認した。
本実施例では、低血糖時におけるシアリダーゼ阻害剤投与が血糖値および血漿中インスリン濃度に与える影響を確認した。詳細は、以下の通りである。
マウスを24時間絶食させた後、リン酸緩衝液(PBS)、7 mMまたは70 mM DANAを体重10gあたり0.1 mLとなるよう尾静脈投与した。リン酸緩衝液を投与した群(コントロール群)の一部について、リン酸緩衝液を投与した後ただちに20%グルコースを腹腔内投与した。尾静脈投与前、および30分後に、血糖値、またはインスリン濃度を測定した。
24時間の絶食マウスの尾静脈にシアリダーゼ阻害剤であるDANAを投与した結果、リン酸緩衝液を投与したコントロール群、7 mM または70 mM DANA(10μL/g b.w.)を投与した群において投与30分後の血糖値に有意な変化は認められなかった(図4A)。また、グルコースを投与すると血糖値が増加することを確認した。
次に、投与30分後の血漿中インスリン濃度を測定した結果、リン酸緩衝液を投与したコントロール群、7mM または70 mM DANA(10 μL/g b.w.)を投与した群において血糖値に有意な変化は認められなかった(図4B)。また、グルコースを投与すると血漿中インスリン濃度が増加することを確認した。
以上、細胞および動物実験において、DANAによるインスリンの放出促進は、低血糖時には効果を示さないことが示された。糖尿病治療薬による低血糖は、糖尿病治療薬の最も重篤な副作用の一つであることから、DANAは安全性の高い糖尿病治療薬であると考えられる。
実施例1において、膵島は、外分泌組織と比較して、シアリダーゼ活性が検出されたことから、膵島に高発現するシアリダーゼのアイソザイムの種類を調べた。詳細は、以下の通りである。
マウス膵島および外分泌組織を単離し、リアルタイムRT-PCR法により各種シアリダーゼアイソザイムmRNAの発現量を定量した。より詳しくは、Neu1(neuraminidase1)、Neu2(neuraminidase 2)、Neu3(neuraminidase 3)及びNeu4(neuraminidase 4)のmRNA発現量を定量した。
シアリダーゼのアイソザイムであるNeu1、Neu2、Neu3及びNeu4が外分泌組織と比較して膵島で高く発現していた(図5)。このことは、膵島で強いシアリダーゼ活性が検出されたことと一致した。
本実施例1〜5の結果により、シアリダーゼ阻害活性を有する化合物は、インスリン分泌促進効果、血糖値上昇抑制効果及び/又は糖尿病治療効果を有する。さらに、シアリダーゼ阻害活性を有する化合物は血中のグルコース濃度依存的なインスリン分泌量増加作用を有するために低血糖の発症がおこりにくく安全である。特に、シアリダーゼ阻害活性を有する化合物は、高濃度グルコース状態で血糖値上昇抑制作用及びインスリン分泌量増加作用を有し、低濃度グルコース状態で血糖値上昇抑制作用及びインスリン分泌量増加作用を有さないことを特徴とする。
Claims (11)
- シアリダーゼ阻害活性を有する化合物を含むインスリン分泌促進剤、血糖値上昇抑制剤、又は糖尿病治療剤。
- 前記シアリダーゼ阻害活性を有する化合物が、N-アセチル-2,3-ジデヒドロ-2-デオキシノイラミン酸、その塩、その溶媒和物、又はその水和物である請求項1に記載の剤。
- インスリン分泌促進剤である請求項1又は2に記載の剤。
- 血糖値上昇抑制剤である請求項1又は2に記載の剤。
- 糖尿病治療剤である請求項1又は2に記載の剤。
- 高濃度グルコース状態で血糖値上昇抑制作用及びインスリン分泌量増加作用を有し、低濃度グルコース状態で血糖値上昇抑制作用及びインスリン分泌量増加作用を有さないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の剤。
- シアリダーゼのグルコシダーゼ活性を阻害する試験化合物を選択することを特徴とするインスリン分泌促進剤、血糖値上昇抑制剤、又は糖尿病治療剤の有効成分のスクリーニング方法。
- 以下の工程を含む請求項7に記載のスクリーニング方法。
(1)試験化合物を、シアリダーゼ及び基質を含む系に添加する工程
(2)シアリダーゼ活性を測定する工程
- 前記基質は、不溶性蛍光物質が付加したシアル酸である請求項8に記載のスクリーニング方法。
- 前記シアリダーゼがNEU1、NEU2、NEU3及び/又はNEU4である請求項1〜5のいずれか1に記載の剤。
- 前記シアリダーゼがNEU1、NEU2、NEU3及び/又はNEU4である請求項6〜9のいずれか1に記載のスクリーニング方法。
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