JP2017220825A - アレーアンテナ - Google Patents
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Abstract
【課題】アレーアンテナの指向性を制御すること。【解決手段】実施例1のアレーアンテナは、N個のアンテナ素子1が直線的に間隔dで配列されている。アンテナ素子1は、カーボンナノチューブ(CNT)10と、第1電極11と、第2電極12と、直流電源13と、電流検出器14と、よって構成されている。各アンテナ素子1のアレーファクタの振幅an、アレーファクタの位相Ψnを設定することにより、アレーファクタL(θ)を所望の値に設定することができる。アレーファクタの位相Ψnは、共振角周波数ω0によって設定することができる。また、アレーファクタの振幅anは、カーボンナノチューブ10と第2電極12との距離gによって設定することができる。【選択図】図1
Description
本発明は、アンテナ素子を配列したアレーアンテナに関する。特に、アンテナ素子が、電磁波の到来によって生じる線状導電体の振動と、その線状導電体と電極との間のトンネル電流を利用したものである。
電磁波の到来によるカーボンナノチューブの振動と、電界放出によるカーボンナノチューブと電極間のトンネル電流を利用した非常に小型のアンテナが特許文献1および非特許文献1に記載されている。
特許文献1および非特許文献1に記載のアンテナは、図10のように、カーボンナノチューブ100と、カーボンナノチューブ100の一端に接続する第1電極101と、カーボンナノチューブ100の他端に対向し、かつ空間を空けて設けられた第2電極102と、第1電極101と第2電極102間に電圧を印加する電源103と、カーボンナノチューブ100と第2電極102との間のトンネル電流を検出する電流検出器104と、によって構成されている。
このアンテナは、次のように動作する。電源103によって第1電極101と第2電極102の間に定電圧を印加すると、電界放出により第2電極102とカーボンナノチューブ100の先端との間にトンネル電流が発生する。カーボンナノチューブ100の先端には負電荷が誘導されているため、カーボンナノチューブ100に電磁波106が到来すると、その電界の変動によってカーボンナノチューブ100の先端に力が生じる。ここで、電磁波106の周波数がカーボンナノチューブ100の共振周波数である場合、カーボンナノチューブ100の先端は固有周波数で振動する。このとき、カーボンナノチューブ100の先端の振動によって、その先端と第2電極102との間隔が変動する。トンネル電流の大きさはその間隔に依存するため、カーボンナノチューブ100の先端の振動に応じてトンネル電流の大きさも変化する。このトンネル電流の大きさを電流検出器104によって検出することで、到来した電磁波106を検出することができる。すなわち、電磁場の変動をカーボンナノチューブ100の物理的な振動に変換し、その物理的な振動をさらにトンネル電流の変化に変換して検出するアンテナである。
また、非特許文献2には、上記アンテナの水平面(カーボンナノチューブ100の延伸方向に平行な面)での指向性が記載されている。
K.Jensen, J.Weldon, H.Garcia, and A.Zettl, "Nanotube Radio," Nano Letters, vol.7, no.11, pp.3508-3511, Nov.2007
H.Tanaka, Y.Ohno, and Y.tadokoro, "Angular Sensitivity of VHF-Band CNT Antenna," IEEE Trans. Nanotechnol., vol.14, no.6, pp.1112-1116, Nov.2015
特許文献1および非特許文献1に記載のアンテナは、ダイポールアンテナと似た指向性を示す。すなわち、カーボンナノチューブの延伸方向を含む面内においては、八の字指向性、カーボンナノチューブの延伸方向に垂直な面内においては、無指向性を示す。これは、カーボンナノチューブの振動方向は電磁波の到来による電界方向に依存しているが、カーボンナノチューブの先端と第2電極との間のトンネル電流の強度は、カーボンナノチューブの振動方向に依存しないためである。このように、特許文献1および非特許文献1に記載のアンテナでは、指向性制御に難がある。
そこで本発明の目的は、線状導電体の振動と、線状導電体と電極との間のトンネル電流を利用したアンテナ素子を用いて指向性を制御することである。
本発明は、複数のアンテナ素子が配列されたアレーアンテナであって、アンテナ素子は、第1電極と、一端が第1電極と接続し、所定周波数の電磁波に対して力を受けて、一端とは反対側の端部である先端が曲がり、共振する線状導電体と、線状導電体の先端に空間を空けて対向して設けられた第2電極と、第1電極と第2電極との間に定電圧を印加し、線状導電体の先端と第2電極との間でトンネル電流を生じさせる電源と、トンネル電流の強度を検出する電流検出器と、を有する、ことを特徴とするアレーアンテナである。
線状導電体について線状とは、たとえばチューブ状、棒状、針状、ワイヤー状などのあらゆる細長い形状を含むものである。導電体とは導体のみならず半導体も含む。線状導電体の延伸方向に垂直な断面での形状は、対称性の高い形状が望ましく、正方形、正六角形などの正多角形や円形などの形状がより望ましく、円形が最も望ましい。対称性が低いと線状導電体の物理的な振動方向に偏りが生じ、指向性の制御が難しくなる。チューブ状の導電体としては、単層または多層のカーボンナノチューブやSi、BNからなるナノチューブを用いることができ、金属型でも半導体型でもよい。また、ワイヤー状の導電体としては、Au、Ag、Cu、などの金属ワイヤーを用いることができる。また、線状導電体は1本である必要はなく、2本以上の線状導電体をより合わせたり束にしたものであってもよい。
本発明のアレーアンテナでは、各アンテナ素子の位相と振幅を制御することで、アレーアンテナの指向性を制御することができる。アンテナ素子の振幅は、第2電極と線状導電体の先端との距離、電源が第1電極と第2電極間に印加する電圧値などによって設定することができる。また、アンテナ素子の位相は、線状導電体の共振角周波数によって設定することができる。これらの設定により、所望の角度において各アンテナ素子からの電流が同位相、同一振幅となるように制御すれば、所望の角度で最大利得となる指向性を実現することができる。また、チェビシェフ指向性、またはテイラー指向性となるように制御することも可能である。
また、電源を可変電圧源として、各アンテナ素子の第1電極と第2電極間に印加する電圧値を変化することにより、指向性を可変とすることも可能である。
本発明のアレーアンテナによると、振幅調整器や移相器を別途設けて振幅や位相を制御することなく、アンテナ素子の物理的、化学的な構成の制御によって振幅や位相を制御することができ、アレーアンテナの指向性を所望のパターンに制御することができる。また、本発明のアレーアンテナの各アンテナ素子は非常に小型であるため、アレーアンテナ全体も小型にすることができる。
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
図1は、実施例1のアレーアンテナの構成を示した図である。図1のように、実施例1のアレーアンテナは、N個のアンテナ素子1が直線的に間隔dで配列されている。また、各アンテナ素子1はBPF(バンドパスフィルタ)2に接続されている。BPF2は、アンテナ素子1からの電流のうち、直流成分を遮断して交流成分のみを透過させるものである。各BPF2からの出力は、合成器3によって合成されて出力される。
図2は、アンテナ素子1の構成を示した図である。図2のように、アンテナ素子1は、 カーボンナノチューブ(CNT)10と、第1電極(カソード電極)11と、第2電極(アノード電極)12と、直流電源13と、電流検出器14と、よって構成されている。
カーボンナノチューブ10は、一方の端部10aで第1電極11と接続している。カーボンナノチューブ10は、細長いチューブ状であり、第1電極11の主面に垂直な方向に延伸している。カーボンナノチューブの成長方法としてCVD法などを用いれば、第1電極11上に垂直配向でカーボンナノチューブ10を直接成長させることができる。また、図2のように、カーボンナノチューブ10は複数本設けられている。これによりアンテナ感度の向上を図っている。
カーボンナノチューブ10は、一方の端部10aは第1電極11に固定され、端部10aとは反対側の他方の端部(以下、先端10bと呼ぶ)は開放されており、その先端10bは固有の共振周波数で振動する。その共振周波数は、カーボンナノチューブ10の長さや剛性などによって決まる。カーボンナノチューブ10の長さは、たとえば1nm〜100μmであり、この長さによってカーボンナノチューブ10の共振周波数を設定することができる。その共振周波数は、たとえば数kHzから数百MHzの範囲で設計することができる。
なお、カーボンナノチューブ10は単層でも多層でもよく、半導体型でも金属型でもよい。さらには、カーボンナノチューブ10に限らず、チューブ状、棒状、ワイヤー状、針状などの任意の細長い形状の線状導電体を用いてもよい。また、そのような細長い線状導電体を束ねたものや、より合わせたものであってもよい。また、延伸方向に垂直な断面は対称性の高い形状がよく、正方形、六角形などの多角形や円などである。特に円が望ましい。平板状などの対称性の低い形状は、剛性が方向によって異なるため線状導電体の物理的な振動方向に偏りが生じ、指向性の制御が難しくなる。また、線状導電体の材料は、導体、半導体であれば任意の材料でよく、カーボンナノチューブ意外に、BNナノチューブ、シリコンナノチューブなどのチューブ状の構造を取る物質や、Au、Cu、Agなどの金属ワイヤーを用いることができる。
第1電極11は平板状であり、その一方の表面において、カーボンナノチューブ10の一端10aが接続されていて、第1電極11の主面に垂直な方向にカーボンナノチューブ10は延伸している。また、第1電極11は直流電源13の負極側に接続している。第1電極11の材料は任意の導電性材料でよい。
第2電極12は、カーボンナノチューブ10の延伸方向に空間を空けて対向して設けられている。カーボンナノチューブ10の先端10bと、第2電極12との間隔はgである。第2電極12の主面に垂直な方向がカーボンナノチューブ10の延伸方向となるように、第2電極12は配置されている。また、第2電極12は、直流電源13の正極側に接続されている。第2電極12の材料は任意の導電性材料でよく、第1電極11と同一材料でもよい。第2電極12の主面の面積は、カーボンナノチューブ10の最大振幅時においてもトンネル電流を検出できる程度に広ければよい。たとえば、カーボンナノチューブ10の長さの1/5を半径とする円よりも広く取ればよい。なお、カーボンナノチューブ10の先端10bの振動に対して、その先端10bと第2電極12との間隔が変動するのであれば、第2電極12主面に垂直な方向とカーボンナノチューブ10の延伸方向とを一致させなくともよく、第2電極12主面が平坦ではなく湾曲していてもよい。
カーボンナノチューブ10、第1電極11、および第2電極12は、真空管(図示しない)の中に封入されていることが望ましい。カーボンナノチューブ10に大気中の分子や原子が付着し、あるいは湿度の変化など大気の組成が変化することで、アンテナの共振周波数やQ値、指向性などに影響を与えてしまうのを抑制するためである。真空管内部の圧力はなるべく低い方が望ましく、たとえば1Pa以下とすることが望ましい。より望ましくは10-3Paである。
直流電源13は、負極側が第1電極11、正極側が第2電極12に接続され、第1電極11と第2電極12間に定電圧を印加する。この電圧印加により、カーボンナノチューブ10の先端10bから電子を放出させ、第2電極12とカーボンナノチューブ10の先端10bとの間にトンネル電流を生じさせる。
電流検出器14は、第1電極11と直流電源13の負極側との間に挿入されている。この電流検出器14によって、トンネル電流の強度を検出する。トンネル電流の強度は、カーボンナノチューブ10の先端10bと第2電極12との間隔に依存し、その間隔は電磁波の到来に由来する電界強度に依存するため、トンネル電流の強度が分かれば電磁波を検出することができる。
次に、実施例1のアレーアンテナの動作について、数式を用いて詳細に説明する。解析の簡単のため、1本のカーボンナノチューブ10を、図3に示すように、先端に半径ρの金属球が接続された長さhの片持ち梁としてモデル化して説明する。図3のように片持ち梁の延伸方向にz軸を取り、これに垂直にx軸を取る。平衡位置Pe (片持ち梁が曲げられずにz軸に垂直な状態)において、金属球の中心から第2電極12までの距離はgとする。
電磁波が到来すると、電荷qを帯びた金属球は、電磁波との相互作用により生じる力Fを受けて振動する。F=q・E0 ・cosθ・exp(jω)である。θは到来する電磁波の方向(z軸方向に対する角度)、ωは到来する電磁波の角周波数、E0 は到来する電磁波の振幅である。このとき、金属球のx軸方向の運動は、次の式(1)で表される。ここで、mは金属球の質量、Q0 はクオリティファクタ、ω0 は共振角周波数である。
金属球が振動すると、金属球の先端と電極との距離gが変化するため、その間に流れるトンネル電流が変化する。トンネル電流は、金属球の表面電界Esを用いて次の式(4)で表される。c1 、c2 は定数であり、c1 =3.4×10-5A/V2 、c2 =7.0×1010V/m、Sは金属球の面積πρ2 である。
距離gが、金属球の振動によるz軸方向の変位Δzよりも十分に大きく、かつトンネル電流は金属球の先端と電極間にのみ流れると仮定すると、金属球の振動によるトンネル電流は以下の式(5)、(6)で表される。なお、導出にあたって、Δz=A2 /(2h)を用いた。
ここで、トンネル電流の直流成分はBPF2を介して除去され、交流成分のみが取り出される。そのため、各アンテナ素子1からの信号sn は、下記式(7)となる。ここで、nは左から数えてn番目(nは0からN−1までの整数)のアンテナ素子1であることを示す。また、各アンテナ素子1間の経路差に起因する移相量としてξn を導入した。実施例1のアレーアンテナでは、アンテナ素子1は間隔dで等間隔に直線状に配列されているため、ξn =(ω/c)・n・d・sinθ、cは光速、である。
アレーアンテナの指向性のパターンP(θ)は、各アンテナ素子1の指向性のパターンをK(θ)、アレーファクタをL(θ)として、P(θ)=K(θ)・L(θ)と表される。ここで式(7)、(8)からK(θ)=cos2 θであり、L(θ)は、アレーファクタの振幅an 、アレーファクタの位相Ψn を用いて、上記式(9)〜(11)によって与えられる。なお、式(10)において、任意のθ、nにおいて最大となるIrfをI0 として、アレーファクタの振幅の最大値が1になるように正規化した。
式(9)〜(11)から、各アンテナ素子1のアレーファクタの振幅an 、アレーファクタの位相Ψn を設定することにより、アレーファクタL(θ)を所望の値に設定することで、実施例1のアレーアンテナの指向性P(θ)を所望の指向性に設定可能であることがわかる。たとえば、θ0 方向に最大の識別度を持つ特性としたり、特定の方向にヌル点を有する特性としたりすることができる。
まず、アレーファクタの位相Ψn の設定について述べる。式(11)から明らかなように、アレーファクタの位相Ψn は、カーボンナノチューブの共振角周波数ω0 を変化させることにより設定することができる。
図4は、カーボンナノチューブの共振角周波数ω0 に対するアレーファクタの位相Ψnの変化を示したグラフである。図4のように、共振角周波数ω0 を変化させることで−0.92πから+0.92πまでの移相が可能であることがわかる。共振角周波数ω0 は(k/m)1/2 であるから、カーボンナノチューブ10の質量mやばね定数kを調節することにより、移相量の調整が可能である。
また、式(11)から、アレーファクタの位相Ψn は、クオリティファクタQ0 を変化させることによっても設定可能である。クオリティファクタQ0 は、機械的抵抗Rとして、Q0 =(k・m)1/2 /Rであるから、カーボンナノチューブ10の質量mやばね定数k、機械的抵抗Rを調整することによって移相量の調整が可能である。
次に、アレーファクタの振幅an の設定について述べる。アレーファクタの振幅an 、すなわち、トンネル電流の交流成分Irfは、カーボンナノチューブ10と第2電極12間の距離gによって設定することができる。距離gによってアレーファクタの振幅an を変化させることができる理由は、トンネル電流Irf、および振幅Aは表面電界Es の関数となっており、表面電界Es は、カーボンナノチューブ10と第2電極12間の距離gに依存しているためである。式(6)において、I(g)のzによる偏微分の成分が、距離gに依存する成分である。
なお、式(10)のように、アレーファクタの振幅an は共振角周波数ω0 に依存している。そのため、アレーファクタの位相Ψn を所望の値に設定するために共振角周波数ω0 を変化させると、アレーファクタの振幅an も変化する点に留意する。
図5は、距離gと振動の振幅Aの関係を示したグラフである。また、図6は、距離gとトンネル電流の交流成分の値Irfを示したグラフである。図5のように、距離gがある一定の値以上では振幅Aはおよそ一定となっている。また、共振角周波数ω0 を変えると、振幅Aの値も変化することがわかり、共振角周波数ω0 が大きくなるにつれて振幅Aが小さくなることがわかる。また、図6のように、距離gが大きくなるにつれてIrfは小さくなることがわかり、共振角周波数ω0 が大きくなるにつれて振幅Aが小さくなることがわかる。
また、式(10)から、アレーファクタの振幅an は、カーボンナノチューブ10の長さh、質量m、共振角周波数ω0 、クオリティファクタQ0 によっても調整可能であることがわかる。また、電源10による印加電圧値によっても、アレーファクタの振幅an を設定することができる。表面電界Es は、印加電圧値にも依存しているためである。
次に、より具体的なアレーファクタL(θ)の設定について説明する。アレーファクタL(θ)がθ0 方向に最大の識別度を持つ特性とするためには、全てのnについてan (θ0 )=1、Ψn (θ0 )=−2ξn を満たすように設定すればよい。つまり、各アンテナ素子からの信号sn が、合成器3によって等位相、等振幅で合成されるようにすればよい。このようにΨn 、an を設定すれば、到来角θ0 からの電磁波は等振幅、等位相で合成され、アレーファクタL(θ)はθ0 方向に最大の識別度を持つ。
全てのnについてan (θ0 )=1、Ψn (θ0 )=−2ξn を満たすように設定するためには、たとえば以下のようにすればよい。まず、Ψn (θ0 )=−2ξn を満たすように各アンテナ素子1の共振角周波数ω0 を設定する。次に、その共振角周波数ω0 においてan (θ0 )=1を満たすように、距離gを設定する。図7は、an (θ0 )=1を満たすときの、アレーファクタの位相Ψと距離gとの関係を示したグラフである。図7では、図6においてIrf=0.2mAとなる距離gを示している。この図7のグラフから、アレーファクタの位相Ψがある値を取るときに、an (θ0 )=1を満たすような距離gを求めることができる。
図8は、実施例1のアレーアンテナのアンテナ素子1の数N=9とし、θ=π/4方向に最大の識別度を有するように、各アンテナ素子1の共振角周波数ω0 および距離gを設定したときの、アレーファクタL(θ)を示したグラフである。図9は、各アンテナ素子1の共振角周波数ω0 および距離gの設定値を示している。図9において、横軸はアンテナ素子1のナンバー、○は距離gを示し、×はω0 /ωを示している。これらアンテナ素子1の共振角周波数ω0 および距離gの値は、an (θ0 =π/4)=1、Ψn (θ0 =π/4)=−2ξn を満たすように設定したものである。
図8のように、各アンテナ素子1の共振角周波数ω0 および距離gが、図9に示す所定の値を満たすようにすることで、θ=π/4方向に最大の識別度を有するようなアレーファクタL(θ)を設定できることがわかった。
アレーアンテナの指向性は、アンテナ素子1のアレーファクタの振幅an の分布を制御することにより、チェビシェフ指向性、またはテイラー指向性などの指向性に制御することが好ましい。これらの指向性では、メインローブのレベルをそれほど落とさずに、サイドローブのレベルを落とすことができる。
以上のように、実施例1のアレーアンテナは、各アンテナ素子1に振幅調整器や移相器を別途設けて振幅や位相を制御することなく、アンテナ素子1の物理的、化学的な特性の制御によって振幅や位相を制御することができ、アレーアンテナの指向性を所望のパターンに制御することができる。また、各アンテナ素子1は非常に小型であるため、アレーアンテナ全体も非常に小型にすることができる。
なお、実施例1のアレーアンテナでは、アンテナ素子1が直線状に1次元的に配列されているが、本発明のアレーアンテナは、1次元的な配列だけでなく、2次元的、3次元的にアンテナ素子1が配列されたアレーアンテナにも適用することができる。
また、各アンテナ素子1の間隔は、アンテナ素子1間に結合が生じない程度に空けられていればよく、必ずしも等間隔の配列である必要もない。ただし、グレーティングローブが生じないように、各アンテナ素子1の間隔は半波長以下とすることが望ましい。
また、実施例1のアレーアンテナは、所望の指向性に固定されたものであるが、指向性可変のアンテナとすることもできる。たとえば、電源10を可変電圧源とすることで、各アンテナ素子1の第1電極11と第2電極12間に印加する定電圧値を変化させ、これにより指向性を可変としてもよい。
また、実施例1のアレーアンテナでは、各アンテナ素子1の共振周波数を少しずつずらして広帯域のアンテナとすることもできる。
また、本発明のアレーアンテナは、通常は受信に用いるものであるが、カーボンナノチューブを多数設けて出力向上を図れば送信に用いることも可能となる。
本発明のアンテナは、レーダ装置などの受信アンテナとして利用することができる。
1:アンテナ素子
2:BPF
3:合成器
10:カーボンナノチューブ
11:第1電極
12:第2電極
13:直流電源
14:電流検出器
2:BPF
3:合成器
10:カーボンナノチューブ
11:第1電極
12:第2電極
13:直流電源
14:電流検出器
Claims (7)
- 複数のアンテナ素子が配列されたアレーアンテナであって、
前記アンテナ素子は、
第1電極と、
一端が前記第1電極と接続し、所定周波数の電磁波に対して力を受けて、前記一端とは反対側の端部である先端が曲がり、共振する線状導電体と、
前記線状導電体の先端に空間を空けて対向して設けられた第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に定電圧を印加し、前記線状導電体の先端と前記第2電極との間でトンネル電流を生じさせる電源と、
前記トンネル電流の強度を検出する電流検出器と、
を有する、
ことを特徴とするアレーアンテナ。 - 前記各アンテナ素子の位相と振幅が制御されていることにより、指向性が制御されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のアレーアンテナ。 - 前記アンテナ素子の振幅は、前記第2電極と前記線状導電体の先端との距離、前記電源が前記第1電極と前記第2電極間に印加する電圧値の少なくともいずれか1つによって制御されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のアレーアンテナ。 - 前記アンテナ素子の位相は、前記線状導電体の共振角周波数によって制御されている、ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のアレーアンテナ。
- 所望の角度において、各前記アンテナ素子からの電流が同位相、同一振幅となるように制御することで所望の角度で最大利得となる指向性が実現されている、
ことを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載のアレーアンテナ。 - チェビシェフ指向性、またはテイラー指向性となるように各アンテナ素子1の振幅分布が制御されている、ことを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載のアレーアンテナ。
- 前記電源は、可変電圧源であり、各前記アンテナ素子の前記第1電極と前記第2電極間に印加する電圧値を変化することにより、指向性を可変とした、ことを特徴とする請求項2ないし請求項6のいずれか1項に記載のアレーアンテナ。
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