JP2017220372A - 検査方法、組成物、検査基板、有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法および検査装置 - Google Patents

検査方法、組成物、検査基板、有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法および検査装置 Download PDF

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Abstract

【課題】マスクによる不良を調べて有機EL素子の製造方法の蒸着工程を検査する検査方法を提供し、検査基板、検査装置およびその検査基板を製造するための組成物を提供し、有機EL素子の製造方法を提供する。【解決手段】検査方法は、蒸着工程で使用されるマスクと、酸解離性基を含む基を有する重合体および酸発生剤を含む組成物を用いて形成された有機層を有する検査基板とを用いる。そして、検査基板の有機層に放射線照射を行う放射線照射工程と、検査基板を加熱する加熱工程と、有機層に形成された放射線照射部分を観察してマスクによる不良を調べる検査工程と、マスクによる不良が許容可能か否かを判定する判定工程とを有する。検査方法で許容可能と判定されたマスクを用いて有機EL素子の製造を行う。【選択図】図1

Description

本発明は、検査方法、組成物、検査基板、有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法および検査装置に関する。
有機化合物による電界発光を利用した有機エレクトロルミネセンス(Electro Luminescence)素子(以下、「有機EL素子」ともいう。)は、ディスプレイ等の表示素子のほか、次世代の照明技術としても期待されている。
有機EL素子は、陽極(ホール注入電極)から注入された正孔(以下、「ホール」ともいう。)と陰極(電子注入電極)から注入された電子が、有機化合物である有機発光材料を含む薄膜状の有機発光部の内部で再結合し、その有機発光材料の励起状態を経て発光する現象を利用する。したがって、有機EL素子は、基本的には、強い蛍光やりん光を発する薄膜状の有機発光部を陽極と陰極で挟むことで構成される。さらに、発光の高効率化や安定駆動のために、ホール輸送層や電子輸送層等の電荷輸送層を設けることや、有機発光部へゲスト分子をドーピングすることが有効とされている。
有機EL素子を表示素子として用いた有機EL表示素子は、自発光型であってバックライトを必要とせず、広視角で高速応答のカラー表示が可能である。さらに、低消費電力であり、薄型、軽量等の優れた特徴を有する。そのため、有機EL表示素子は、マルチカラーまたはフルカラー表示の可能な、軽量薄型で低消費電力の表示素子として、近年盛んに開発が進められている。
このような有機EL表示素子は、真空薄膜成膜技術を利用した蒸着によって、薄膜状の有機発光部の形成や他の電荷輸送層の形成を行って製造するのが通常である。有機発光部を形成する発光材料や他の電荷輸送層を形成する有機材料は、耐水性が低く、ウエットプロセスを利用することができない。そのため、それらを形成するためには、蒸着工程を設け、上述したように、画素毎に、蒸着によって有機発光部や他の電荷輸送層を順に成膜して積層構造を形成するのが一般的である。
したがって、例えば、フルカラーの画像表示が可能な有機EL表示素子を製造する場合、R(赤色),G(緑色),B(青色)の各色に対応した3種類の有機発光材料からなる薄膜状の有機発光部をパターニングして、表示素子を構成する基板上のそれぞれ異なる画素位置に形成しなければならない。
そのため、例えば、フルカラーに対応する有機発光部を形成する場合、R,G,Bの各色の画素に対応する開口パターンが形成されたマスクを逐一交換する製造方法のほか、同一パターンのマスクをその都度位置合わせしつつ、真空蒸着を用いてR,G,Bの色毎にパターニングされた各有機発光部を順に形成する、といった製造方法が用いられている(例えば、特許文献1を参照のこと。)。
特開2011−241309号公報
上述したように、有機EL表示素子の製造において、有機発光部を形成するための蒸着工程では、パターン加工されて開口パターンの形成されたマスクが使用される。そして、蒸着工程では、そのマスクを基板の主面側に配置して、蒸着源から、マスクの開口パターンの開口部分を通して、基板主面の所定の画素位置に蒸着粒子(有機発光材料)が蒸着(付着)される。それによって、基板上にパターニングされた薄膜状の有機発光部が形成される。
したがって、有機EL表示素子の製造においては、蒸着工程で、マスクによる不良が生じると、所望とする画質で画像を表示する有機EL表示素子を製造することができない。例えば、蒸着工程で使用されるパターン加工されたマスクでは、異物が付着していたり、破れ等の破損が生じていることがある。また、マスクにおいて、自重撓み等による歪み変形が生じることがあり、その場合、蒸着対象となる基板との間で密着不良が生じることがある。さらに、マスクと蒸着対象となる基板との間でアライメントずれが生じることがある。
蒸着工程で上述のようなマスクによる不良が発生した場合、所望とする形状と位置精度を有するようにパターニングされた薄膜状の有機発光部を、蒸着によって形成することができなくなる。その結果、蒸着工程では、例えば、有機発光部の蒸着位置ずれや混色が発生し、製造された有機EL表示素子において、所望とする画像の表示が困難となる。
有機EL表示素子において、蒸着工程のこのようなマスクによる不良は、その蒸着工程や、その後の有機EL表示素子の製造の途中段階で検知することが難しい。そのため、従来の有機EL表示素子の製造方法では、有機EL表示素子を製造した後、製品の検査工程で不良品が発見されて、マスクによる不良が検知されることになる。その結果、不良品となる有機EL表示素子が、大量に生産されることになって、生産性を低下させる原因となっていた。
したがって、有機EL表示素子等の有機EL素子の製造方法においては、その有機EL素子を製造するための蒸着工程の前に、その蒸着工程を検査して、そこで発生するマスクによる不良を調べることができる検査方法およびその検査方法を実現する検査装置が求められている。
さらに、有機EL表示素子等の有機EL素子の製造方法について、上述のような検査方法および検査装置が実現された場合、そのような検査方法および検査装置は、有機EL素子以外の電子デバイスの製造にも応用することが可能となる。すなわち、その検査方法および検査装置は、マスクを用いて基板上に複数のパターンを形成する工程を含む電子デバイスの製造方法において、そこで発生するマスクによる不良を調べることができる。例えば、その検査方法および検査装置は、マスクを用いて蒸着により基板上に複数のパターンを形成する工程を含む電子デバイスの製造方法において、そこで発生するマスクによる不良を調べることができる。そして、その検査方法および検査装置は、有機EL素子の他、液晶素子や半導体素子等の電子デバイスの製造方法における製造効率を向上させることができる。
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、電子デバイスの製造方法におけるマスクによる不良を検査し、そのマスクを用いて製造される電子デバイスの生産性の向上に有効となる検査方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、マスクによる不良を調べて有機EL素子の製造方法の蒸着工程を検査し、そのマスクを用いて製造される有機EL素子の生産性の向上に有効となる検査方法およびその検査方法を実現する検査装置を提供することにある。
また、本発明の目的は、マスクによる不良を調べて有機EL素子の製造方法の蒸着工程を検査する検査方法で使用される検査基板およびその検査基板の製造に用いられる組成物を提供することにある。
また、本発明の目的は、マスクによる不良を調べて蒸着工程を検査し、それによって高い生産性を有する有機EL素子の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
本発明の第1の態様は、第1の基板の主面をマスクで覆って前記第1の基板上に複数のパターンを形成する工程を含む電子デバイスの製造方法の前記マスクによる不良を検査する検査方法であって、
前記マスクと、感放射線性樹脂組成物を用いて形成された有機層を第2の基板の主面上に設けて構成された検査基板とを用い、前記有機層を前記マスクで覆って、前記有機層に放射線照射を行い、前記有機層に放射線照射部分と放射線の照射されない放射線未照射部分とを形成する放射線照射工程と、
前記有機層に形成された放射線照射部分を観察して、前記マスクによる不良を調べる検査工程と、
前記マスクによる不良が許容可能か否かを判定する判定工程と
を含むことを特徴とする検査方法に関する。
本発明の第1の態様において、前記放射線照射部分の膜厚が、初期膜厚に対して、10%以上低いことが好ましい。
本発明の第1の態様において、前記放射線照射工程の後であって前記検査工程の前に、前記検査基板を加熱する加熱工程を有することが好ましい。
本発明の第2の態様は、有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法の蒸着工程を検査する検査方法であって、
前記蒸着工程が、パターン加工されたマスクを用いて第1の基板の主面を覆い、蒸着によって、前記第1の基板の主面上にマトリクス状に配列された複数の有機発光部を形成する工程を含んでなるものであり、
前記マスクと、酸解離性基を含む基を有する重合体および酸発生剤を含む組成物を用いて形成された有機層を第2の基板の主面上に設けて構成された検査基板とを用い、前記有機層を前記マスクで覆って、前記有機層に放射線照射を行う放射線照射工程と、
前記有機層に形成された放射線照射部分を観察して、前記マスクによる不良を調べる検査工程と、
前記マスクによる不良が許容可能か否かを判定する判定工程と
を含むことを特徴とする検査方法に関する。
本発明の第2の態様において、前記放射線照射工程の後であって前記検査工程の前に、前記検査基板を加熱する加熱工程を有することが好ましい。
本発明の第2の態様において、前記酸解離性基がアセタール基、フッ素原子を含む基およびケイ素原子を含む基よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の第2の態様において、前記酸解離性基を含む基が、下記式(1a−1)、下記式(1a−2)、下記式(1b−1)、下記式(1b−2)、下記式(1b−3)および下記式(1b−4)で示される基よりなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
(式(1a−1)および式(1a−2)中、R1aおよびR2aはそれぞれ独立して、水素原子またはメチル基を示し、Rfはそれぞれ独立して、炭素数1〜12の炭化水素基、フェニル基、および、フッ素原子で置換された有機基のうちのいずれかを示す。*は、結合部位を示す。)
(式(1b−1)および(1b−2)中、R1bおよびR2bはそれぞれ独立して、水素原子およびメチル基のうちのいずれかを示し、Rsはそれぞれ独立して、ケイ素原子を有する1価の有機基を示す。
式(1b−3)および(1b−4)中、R3bはそれぞれ独立して、単結合および炭素数1〜12の2価の有機基のうちのいずれかを示し、R4b、R5bおよびR6bはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、脂環式炭化水素基、アリール基、これらの基が有する水素原子の一部または全部が置換基で置換された基、および、ケイ素原子を有する1価の有機基のうちのいずれかを示す。
式(1b−1)、式(1b−2)、式(1b−3)および(1b−4)中、*は結合部位を示す。)
本発明の第2の態様において、前記放射線照射工程の後であって、前記検査工程の前に、前記放射線照射工程で前記有機層に形成された放射線照射部分を着色する着色工程を有することが好ましい。
本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様の検査方法の前記検査基板の前記有機層の形成に用いられる組成物であって、
前記酸解離性基を含む基を有する重合体および前記酸発生剤を含むことを特徴とする組成物に関する。
本発明の第4の態様は、本発明の第2の態様の検査方法に用いられ、前記第2の基板および前記第2の基板の主面上に形成された前記有機層を有する検査基板であって、
前記有機層が、前記酸解離性基を含む基を有する重合体および前記酸発生剤を含む組成物を用いて形成されたものであることを特徴とする検査基板に関する。
本発明の第5の態様は、パターン加工されたマスクを用いて、蒸着により、マトリクス状に配列された複数の有機発光部を第1の基板の主面上に形成してなる有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法であって、
前記マスクと、酸解離性基を有する重合体および酸発生剤を含む組成物を用いて形成された有機層を第2の基板の主面上に設けて構成された検査基板とを用い、前記有機層を前記マスクで覆って、前記有機層に放射線照射を行う放射線照射工程と、
前記有機層に形成された放射線照射部分を観察して、前記マスクによる不良を調べる検査工程と、
前記マスクによる不良が許容可能か否かを判定する判定工程と、
前記判定工程で許容可能と判定された前記マスクを用いて前記第1の基板の主面を覆い、蒸着によって、前記有機発光部を前記第1の基板の主面上に形成する有機発光部形成工程とを有することを特徴とする有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法に関する。
本発明の第5の態様において、前記放射線照射工程の後であって前記検査工程の前に、前記検査基板を加熱する加熱工程を有することが好ましい。
本発明の第6の態様は、本発明の第2の態様の検査方法に用いられる検査装置であって、
前記検査基板の前記有機層を前記マスクで覆って、前記有機層に放射線照射を行う放射線照射部と、
前記有機層に形成された放射線照射部分を観察して、前記マスクによる不良を調べる検査部とを有することを特徴とする検査装置に関する。
本発明の第1の態様によれば、電子デバイスの製造方法のマスクによる不良を検査し、そのマスクを用いて製造される電子デバイスの生産性の向上に有効となる検査方法が提供される。
本発明の第2の態様によれば、電子デバイスの製造方法のマスクによる不良を検査し、そのマスクを用いて製造される電子デバイスの生産性の向上に有効となる検査方法が提供される。
本発明の第3の態様によれば、マスクによる不良を調べて有機EL素子の製造方法の蒸着工程を検査し、そのマスクを用いて製造される有機EL素子の生産性の向上に有効となる検査方法が提供される。
本発明の第4の態様によれば、マスクによる不良を調べて有機EL素子の製造方法の蒸着工程を検査する検査方法で使用される検査基板の製造に用いられる組成物が提供される。
本発明の第5の態様によれば、マスクによる不良を調べて有機EL素子の製造方法の蒸着工程を検査する検査方法で使用される検査基板が提供される。
本発明の第6の態様によれば、マスクによる不良を調べて有機EL素子の製造方法の蒸着工程を検査し、そのマスクを用いて製造される有機EL素子の生産性の向上に有効となる検査装置が提供される。
本発明の第1実施形態の検査方法の第1例を示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態の検査方法の第2例を示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態の検査方法の第1例の(i)放射線照射工程を模式的に説明する断面図である。 本発明の第1実施形態である検査方法の第1例の(ii)加熱工程の後の検査基板を模式的に示す断面図である。 本発明の第1実施形態の検査方法の第3例を示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態の検査方法の第4例を示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態の検査方法の第5例を示すフローチャートである。 本発明の第2実施形態の検査基板の構造を模式的に示す断面図である。 本発明の第4実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例を示すフローチャートである。 本発明の第4実施形態である有機EL素子の製造方法の(v)有機発光部形成工程を模式的に説明する断面図である。 本発明の第4実施形態である有機EL素子の製造方法の第2例を示すフローチャートである。 本発明の第5実施形態の検査装置の一例を示す平面図である。 本実施例のP−1組成物を用いて製造された検査基板の、放射線照射後のパターニングされた状態を示す写真である。 本実施例のP−2組成物を用いて製造された検査基板の、放射線照射後のパターニングされた状態を示す写真である。 本実施例の検査基板において、ギャップが0μmの場合の放射線照射後のパターニングされた状態を示す写真である。 本実施例の検査基板において、ギャップが200μmの場合の放射線照射後のパターニングされた状態を示す写真である。
本発明者は、鋭意検討の結果、含有させる成分の最適な選択を行って感放射線性樹脂組成物を調製し、その感放射線性樹脂組成物を用いて基板の主面上に有機層を形成することにより、有機EL表示素子等の有機EL素子の製造方法における蒸着工程の検査に好適な検査基板を構成できることを見出した。
すなわち、本発明者は、上述の検査基板が、有機EL素子の製造方法における、パターン加工されたマスクを用いてマトリクス状に配列された複数の薄膜状の有機発光部を基板の主面上に形成する蒸着工程を検査するのに好適であることを見出した。
このとき、上述の検査基板を構成する基板は、有機EL素子の製造に用いられて蒸着工程で複数の薄膜状の有機発光部が形成される基板と異なる別の基板である。すなわち、有機EL素子の製造においてマトリクス状に配列された複数の前記有機発光部が形成される基板を第1の基板とすると、上述の有機層がその主面上に形成されて検査基板を構成する基板は、第2の基板であって、第1の基板とは異なる基板である。
そして、本発明者は、有機EL素子の製造方法の蒸着工程に対応して、その前に、その蒸着工程で使用が予定されるマスクと上述の検査基板とを用いて、マスクによる不良を調べ、蒸着工程の検査を行うようにする。
それによって、本発明に係る有機EL素子の製造方法では、有機EL素子を製造する蒸着工程の前に、マスクによる不良が許容可能か否かを判定することができる。そして、その有機EL素子の製造方法は、許容可能と判定されたマスクを用いて、例えば、マトリクス状に配列された複数の薄膜状の有機発光部をマスク蒸着により基板の主面上に堆積させて形成することができる。
その結果、本発明に係る有機EL素子の製造方法は、所望とする形状と位置精度を有する、パターニングされた薄膜状の有機発光部を形成することができる。そして、本発明に係る有機EL素子の製造方法は、例えば、表示素子である有機EL素子、すなわち、有機EL表示素子の生産性を向上させることができる。
さらに、上述の検査基板は、有機EL素子の製造方法における蒸着工程の検査のみに限定されて有効となるものではない。上述の検査基板は、有機EL素子以外の液晶素子や半導体素子等の多様な電子デバイスの検査や製造にも応用することができる。
すなわち、上述の検査基板は、パターン加工されたマスクを用いて複数のパターンを形成する工程を含む電子デバイスの製造方法において、マスクによる不良を検査する検査方法に好適に用いることができる。例えば、上述の検査基板は、パターン加工されたマスクを用いて、蒸着によって、複数のパターンを形成する工程を含む電子デバイスの製造方法において、マスクによる不良を検査する検査方法に好適に用いることができる。そして、上述の検査基板およびそれを用いた検査方法は、有機EL素子の他、液晶素子や半導体素子等の多様な電子デバイスの製造方法における製造効率を向上させることができる。
以下で、適宜図面を用い、本発明の実施形態について説明する。先ず初めに、本発明の実施形態である検査方法について説明するが、その場合、具体例として、上述の検査基板を用いて有機EL表示素子等の有機EL素子の製造方法の蒸着工程の検査を行う検査方法を説明する。次いで、本発明の実施形態である検査方法について、他の電子デバイスの製造方法における、マスクによる不良の検査方法への適用例を説明する。またその後、本発明の別の実施形態として、上述した検査基板や、その検査基板を製造するための組成物、有機EL素子の製造方法および上述の検査方法を実施するための検査装置について説明する。
尚、本発明において、放射線照射を「露光」ということがある。ここで、放射線照射における「放射線」とは、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等を含む概念である。
実施の形態1.
<検査方法>
本発明の第1実施形態の検査方法は、上述したように、検査基板を用い、有機EL表示素子等の有機EL素子の製造方法の蒸着工程の検査を行う検査方法である。
そして、本実施形態の検査方法は、上述したように、検査基板と、有機EL素子の製造での使用が予定されたマスクとを用いて行われる。その検査基板は、上述したように、基板と、その基板の主面上に感放射線性樹脂組成物を用いて形成された有機層とを有して構成されるものである。
尚、本実施形態の検査方法で使用される検査基板については、後に、本発明の第2実施形態として、その構成や製造方法を詳しく説明する。また、その検査基板の製造に用いられる感放射線性樹脂組成物については、酸解離性基を含む基を有する重合体および酸発生剤を含む組成物が好ましいが、本発明の第3実施形態の組成物として、後に詳しく説明する。
本発明の第1実施形態の検査方法において、検査基板とともに蒸着工程の検査に用いられるマスクは、その検査の後に、有機EL素子の製造に使用されることが予定されたマスクであり、特に、パターニングされた薄膜状の有機発光部を形成するための蒸着工程で使用されることが予定されたマスクである。すなわち、そのマスクは、パターン加工されたマスクであり、より具体的には、蒸着用にパターン加工されて、開口パターンを構成する開口部の形成されたマスクとなる。したがって、上述の検査に用いられるマスクには、例えば、メタルマスク、シャドーマスク、ファインメタルマスクまたはファインハイブリッドマスク等と称されるものが含まれる。
そして、上述した有機EL素子の製造には、上述のパターン加工されたマスクを用いて基板の主面を覆い、蒸着によって、その基板の主面上にマトリクス状に配列された複数の薄膜状の有機発光部を堆積させる蒸着工程が含まれる。
本実施形態の検査方法は、下記の(i)の工程と、(ii)の工程と、(iii)の工程と、(iv)の工程とをこの順で含むことができる。そして、本実施形態の検査方法は、現像工程を含まないことを特徴とする。
(i)パターン加工されたマスクと、上述の感放射線性樹脂組成物を用いて形成された有機層を基板の主面上に設けて構成された検査基板とを用い、検査基板の主面上の有機層をそのマスクで覆って、有機層に放射線照射を行う工程(以下、「(i)放射線照射工程」ということがある。)
(ii)検査基板を加熱する工程(以下、「(ii)加熱工程」ということがある。)
(iii)検査基板の有機層に形成された放射線照射部分を観察して、マスクによる不良を調べる工程(以下、「(iii)検査工程」ということがある。)
(iv)マスクによる不良が許容可能か否かを判定する工程(以下、「(iv)判定工程」ということがある。)
ここで、(ii)加熱工程は、本実施形態の検査方法において、設けることが任意の工程であり、本実施形態の検査方法は、(ii)加熱工程を含まない構成とすることも可能である。本実施形態の検査方法においては、(ii)加熱工程を設けることにより、(iii)検査工程をより容易なものとし、一方で、(iv)判定工程(S104)をより確実に実施できるようにする場合がある。そのような場合には、本実施形態の検査方法は、(ii)加熱工程を含むことが好ましい。
図1は、本発明の第1実施形態の検査方法の第1例を示すフローチャートである。
本発明の第1実施形態の検査方法の第1例は、図1に示すように、上記の(i)放射線照射工程(S101)と、(ii)加熱工程(S102)と、(iii)検査工程(S103)と、(iv)判定工程(S104)とを含み、現像工程を含むことなく、簡便に、有機EL素子の製造方法の蒸着工程を検査することができる。
また、本発明の第1実施形態の検査方法は、第2例として、上述の加熱工程の後に、放射線照射部分を選択的に着色するための工程を、下記の(iii)の工程として、含むことができる。
(iii)放射線照射工程で有機層に形成された放射線照射部分を着色する工程(以下、「着色工程」ということがある。)
図2は、本発明の第1実施形態の検査方法の第2例を示すフローチャートである。
本発明の第1実施形態の検査方法は、第2例として、着色工程を含む場合、図2に示すように、(i)放射線照射工程(S201)の後であって、(ii)加熱工程(S202)の後に、(iii)着色工程(S203)を設け、その後、(iv)検査工程(S204)および(v)判定工程(S205)を設けることが好ましい。
したがって、本発明の第1実施形態の検査方法の第2例は、図2に示すように(i)放射線照射工程(S201)と、(ii)加熱工程(S202)と、(iii)着色工程(S203)と、(iv)検査工程(S204)と、(v)判定工程(S205)とをこの順で含んで構成される。
このとき、本発明の第1実施形態の検査方法の第2例において、(i)放射線照射工程(S201)は、上述した図1の本発明の第1実施形態の検査方法の第1例における(i)放射線照射工程(S101)と同様の共通する工程である。また、(ii)加熱工程(S202)も上述した図1の(ii)加熱工程(S102)と同様の共通する工程である。そして、本発明の第1実施形態の検査方法の第2例において、(iv)検査工程(S204)は、観察する放射線照射部分が着色されていること以外は、上述した図1の(iii)検査工程(S103)と同様の工程である。また、(v)判定工程(S205)は、上述した図1の(iv)判定工程(S104)と同様の工程となる。
本発明の第1実施形態の検査方法の第2例では、(iii)着色工程(S203)により、放射線照射工程(S201)および加熱工程(S202)の後の検査基板において、有機層に形成された放射線照射部分を選択的に着色することができる。その結果、本発明の第1実施形態の検査方法の第2例は、(iii)着色工程(S203)後の(iv)検査工程(S204)をより容易なものとし、(v)判定工程(S205)をより確実に実施することができる。
ここで、本実施形態の検査方法において、放射線照射工程(S101,S201)等で使用される検査基板は、上述したように、基板の主面上に、感放射線性樹脂組成物を用いて形成された有機層を有している。
そして、本実施形態の検査方法において、検査基板の有機層を形成する感放射線性樹脂組成物は、上述したように、酸解離性基を有する重合体および酸発生剤を含む組成物であることが好ましい。
検査基板の有機層を形成する組成物が、酸解離性基を有する重合体および酸発生剤を含むことにより、放射線照射工程(S101,S201)および加熱工程(S102,S202)の後、検査基板の有機層に形成された放射線照射部分が、他の放射線未照射部分に比べて薄い膜厚となって凹み、凹部を形成するようになる。そして、放射線未照射部分が凸部となって、検査基板の有機層に凹パターンが形成される。例えば、凹部を形成する放射線照射部分の膜厚は、放射線照射前の初期状態の膜厚である初期膜厚に対して、10%以上低くすることができる。
また併せて、その有機層に形成された放射線照射部分では、他の未露光部分に比べて、屈折率の値が変化し、例えば、放射線照射部分と放射線未照射部分の波長633nmにおける屈折率差が、0.04以上あるようにすることができる。
そのため、本実施形態の検査方法では、放射線照射工程(S101,S201)および加熱工程(S102,S202)の後、検査基板の有機層に形成された放射線照射部分を、例えば、目視や顕微鏡の利用により、簡便に観察することができる。すなわち、本実施形態の検査方法では、従来のフォトリソグラフィ技術によるパターニングで必要とされる現像工程を用いることなく、検査基板の有機層に形成された放射線照射部分を観察することができる。
以下、放射線照射工程(S101,S201)等で使用される検査基板の有機層を形成する感放射線性樹脂組成物として、酸解離性基を有する重合体および酸発生剤を含む組成物を用いる場合を例とし、本実施形態の検査方法の各工程を説明する。
また、本発明の第1実施形態の検査方法において、図1に示された検査方法の第1例と図2に示された検査方法の第2例とを比べた場合、上述のように、図2の第2例の(i)放射線照射工程(S201)、(ii)加熱工程(S202)、(iv)検査工程(S204)、および、(v)判定工程(S205)は、図1の検査方法の第1例のそれぞれ対応する(i)放射線照射工程(S101)、(ii)加熱工程(S102)、(iii)検査工程(S103)、および、(iv)判定工程(S104)と同様の工程となる。図2に示された検査方法の第2例においては、特に、(iii)着色工程が特徴的な工程となる。
したがって、以下の本実施形態の検査方法の第1例および第2例の各工程の説明では、重複する説明を省略するようにする。具体的には、まず、図1に示す本発明の第1実施形態の検査方法の第1例の(i)放射線照射工程(S101)、(ii)加熱工程(S102)、(iii)検査工程(S103)および(iv)判定工程(S104)を説明する。その後、本発明の第1実施形態の検査方法の第2例について、その(iii)着色工程を説明する。
[(i)放射線照射工程]
(i)放射線照射工程では、パターン加工されて開口パターンの形成されたマスクと、上述した感放射線性樹脂組成物を用いて形成された有機層が基板の主面上に配置されるようにして構成された検査基板とを用い、有機層をマスクで覆って、有機層の少なくとも一部に放射線照射を行う。
図3は、本発明の第1実施形態の検査方法の第1例の(i)放射線照射工程を模式的に説明する断面図である。
(i)放射線照射工程では、図3に示すように、基板1および上述の感放射線性樹脂組成物を用いて基板1の主面上に形成された有機層2−1を有する検査基板10−1、並びに、パターン加工されて、開口パターンを構成する開口部4の形成されたマスク3とを用いる。このマスク3は、有機EL素子の製造における、パターニングされた薄膜状の有機発光部を形成するための蒸着工程で使用されることが予定されたマスクである。
(i)放射線照射工程では、図3に示すように、基板1の主面上の有機層2−1の一部に、マスク3を介して放射線が照射され、有機層2−1に、放射線照射部分である放射線照射部2a−1と、放射線照射のされない部分である放射線未照射部2b−1とが形成される。
図3に示すように、マスク3は、検査基板10−1の有機層2−1と離間するように配置されているが、その場合のマスク3と検査基板10−1との間の距離は、このマスク3が有機EL素子の製造における蒸着工程で使用されるときの蒸着対象となる基板との間の距離と同様とすることが好ましい。例えば、マスク3と検査基板10−1とが離間して配置される場合、それらの間の距離は、制御可能な範囲とされることが好ましく、具体的には、40μm以上1mm以下、すなわち40μm〜1mmの範囲内とすることが好ましく、より好ましくは100μm〜200μmの範囲である。また、マスク3を、有機層2−1の基板1と反対側となる面に密着させるようにして配置すること、すなわち、コンタクト状態でマスク3および検査基板10−1を配置することも可能である。
(i)放射線照射工程により、図3の有機層2−1中に存在する酸解離性基が酸発生剤の効果により脱離し揮発する。その結果、放射線照射部2a−1の膜厚が放射線未照射部2b−1の膜厚に比べ薄くなって凹み、放射線照射部2a−1が凹部となり放射線未照射部2b−1が凸部となって、有機層2−1に凹パターンが形成される。そして、有機層2−1では、後の工程で、凹パターンの目視が容易に行えるように、放射線照射部2a−1の膜厚が低くなることが好ましい。例えば、放射線照射部2a−1の膜厚は、本工程での放射線照射前の初期状態の膜厚である初期膜厚に対して、10%以上低くなることが好ましい。そして併せて、有機層2−1に形成された放射線照射部2a−1では、放射線未照射部2b−1に比べて、屈折率の値が大きくなるように変化する。例えば、放射線照射部2a−1と放射線未照射部2b−1の波長633nmにおける屈折率差は、0.04以上あることが好ましい。
尚、このとき、酸解離性基の脱離により、(i)放射線照射工程後の有機層2−1の放射線未照射部2b−1は撥液性を示すが、放射線照射部2a−1は酸解離性基の消失に伴い、放射線未照射部2b−1に比べて親液性となる。
したがって、(i)放射線照射工程においては、検査基板10−1の有機層2−1が上述の感放射線性樹脂組成物を用いて形成されているため、マスク3を介した放射線照射によって、基板1の主面上に、撥液性の放射線未照射部2b−1と、放射線未照射部2b−1より膜厚が薄く、高屈折率で、親液性の放射線照射部2a−1とを有する有機層2−1が形成される。
(i)放射線照射工程において、放射線照射(露光)に使用される放射線としては、上述したように、可視光線、紫外線、遠紫外線、荷電粒子線、X線等を使用できる。これらの放射線の中でも、波長が190nm〜450nmの範囲にある放射線が好ましく、特に365nmの紫外線を含む放射線が好ましい。
(i)放射線照射工程における放射線照射量(露光量)は、後の(iii)検査工程で容易に放射線照射部2a−1の観察が実施できる量とすることが望ましい。具体的には、放射線の波長365nmにおける強度を照度計(OAI model356、OAI Optical Associates Inc.製)により測定した値として、好ましくは10mJ/cm〜1000mJ/cm、より好ましくは20mJ/cm〜500mJ/cmである。
[(ii)加熱工程]
以下、(ii)加熱工程を説明するが、それは、上述した図3および後述する図4等を適宜参照して行うことにする。尚、この(ii)加熱工程は、上述したように、必須の工程ではなく、後の必須の工程である(iii)検査工程での観察を考慮して、設けることが好ましい工程となる。
(ii)加熱工程では、図3に示した(i)放射線照射工程後の検査基板10−1を加熱することによって、検査基板10−1が有する、放射線照射部2a−1の形成された有機層2−1を加熱する。
図4は、本発明の第1実施形態である検査方法の第1例の(ii)加熱工程の後の検査基板を模式的に示す断面図である。
図3に示した検査基板10−1を加熱することにより、(ii)加熱工程では、図4に示すように、加熱後の検査基板10−1に対応する検査基板10−2が得られる。検査基板10−2においては、図4に示すように、基板1の主面上に、加熱後の有機層2−1に対応する有機層2−2が形成される。検査基板10−2の有機層2−2は、図4に示すように、加熱後の放射線照射部2a−1に対応する放射線照射部2a−2、および、加熱後の放射線未照射部2b−1に対応する放射線未照射部2b−2が含まれる。
(ii)加熱工程では、図3で示した(i)放射線照射工程での放射線照射部2a−1において生じた揮発性の成分をさらに揮発させることができる。この揮発性の成分は、図3の有機層2−1中の酸解離性基が、酸発生剤の効果によって脱離することによって生成された成分である。その結果、(ii)加熱工程では、図3の検査基板10−1の有機層2−1の放射線照射部2a−1における凹状のくぼみがさらに深化して、放射線照射部2a−1の膜厚がさらに薄くなり、図4に示す放射線照射部2a−2を形成してその目視がより容易となる。例えば、放射線照射部2a−2の膜厚は、加熱工程により、放射線未照射部2b−2の膜厚に対して10%以上薄くなる。また併せて、放射線照射部2a−2の屈折率は、(ii)加熱工程により、放射線未照射部2b−2と比べて、より高い値となり、その目視がより容易に行えるようになる。例えば、放射線照射部2a−2と放射線未照射部2b−2の波長633nmにおける屈折率差が0.04以上あることが好ましい。
本発明の第1実施形態の検査方法の第1例では、図3に示した検査基板10−1の有機層2−1を形成するのに用いられる感放射線性樹脂組成物が、上述したように、酸解離性基を有する重合体を含んでおり、(i)放射線照射工程の放射線照射により、酸解離性基が脱離することになる。この脱離する酸解離性基に由来する成分は、比較的揮発し易いため、(ii)加熱工程により、簡便に、図3に示した有機層2−1の放射線照射部2a−1における凹状のくぼみをさらに深化させることができ、図4に示す有機層2−2の放射線照射部2a−2を形成することができる。そして、有機層2−2に、凹部である放射線照射部2a−2と、凸部である放射線未照射部2b−2とからなる凹パターンが形成される。
(ii)加熱工程では上述したように、図3に示した(i)放射線照射工程後の検査基板10−1を加熱するが、その加熱方法としては、例えば、検査基板10−1を、ホットプレート、バッチ式オーブンまたはコンベア式オーブンを用いて加熱する方法、ドライヤー等を用いて熱風乾燥する方法、真空ベークする方法が挙げられる。尚、本発明の第1実施形態の検査方法の第1例では、(ii)加熱工程に代えて、放射線照射工程後の検査基板10−1を真空乾燥(バキュームドライ)する工程を設けることも可能である。
(ii)加熱工程における加熱の条件は、図3に示した検査基板10−1の有機層2−1を形成する組成物の組成や有機層2−1の厚さ等によっても異なるが、好ましくは、加熱温度が60℃〜150℃で、加熱時間が3分間〜30分間程度である。
(ii)加熱工程では、加熱によって、図4に示した有機層2−2の放射線照射部2a−2の膜厚が、放射線未照射部2b−2の膜厚に対して、好ましくは10%以上薄く、より好ましくは11%以上薄く、さらに好ましくは12%〜70%薄くなることが望ましい。有機層2−2の放射線照射部2a−2の膜厚がこのようになることで、後の(iii)検査工程で、検査基板10−2の有機層2−2に形成された放射線照射部2a−2を観察して、マスク3による不良を調べるのが容易となる。
また、放射線照射部2a−2の屈折率は、上述したように、放射線未照射部2b−2と比べてより高い値となっており、屈折率の差の点からも、後の(iii)検査工程で、検査基板10−2の有機層2−2に形成された放射線照射部2a−2を観察して、マスク3による不良を調べるのがより容易となる。
[(iii)検査工程]
(iii)検査工程では、(ii)加熱工程の後、図4に示した検査基板10−2の有機層2−2に形成された放射線照射部2a−2を観察する。そして、(iii)検査工程では、図3に示すマスク3による不良、すなわち、(i)放射線照射工程で用いられた、パターン加工されたマスク3による不良を調べる。
図3に示した(i)放射線照射工程で使用のマスク3は、上述したように、有機EL素子の製造において実際の使用が予定されるものであり、基板の主面を覆い、蒸着によって、その基板の主面上にマトリクス状に配列された複数の薄膜状の有機発光部を堆積させるように使用される。
上述したように、マスク3は、例えば、金属製のメタルマスクの他、シャドーマスク、ファインメタルマスクまたはファインハイブリッドマスク等と称されるものである。したがって、マスク3は、例えば、解像度200PPI(Pixel Per Inch)〜500PPI程度の非常に高い解像度のパターン形成を実現するようにパターン加工がされている場合がある。
そのような場合、マスク3に形成された開口パターンの開口部4は、平面視で矩形状の形状を有する場合、その一辺が30μm〜60μm程度の極小さな寸法となる。そして、マスク3では、そのような微細な開口部4が、平面視で縦横に、数μm〜数十μm程度の間隔で等間隔に配置され、マトリクス状に配列された複数の開口部4からなる開口パターンが形成されている。
以上のようなマスク3を用い、有機EL素子の製造で、蒸着によって、基板上にマトリクス状に配列された複数の薄膜状の有機発光部を堆積させようとする場合、マスク3の洗浄や交換の時に、アライメントのずれや、マスク3の破損や、歪み変形や、異物の付着等のマスク3による不良が発生することがある。
そのようなマスク3による不良は、本実施形態の検査方法を用いない従来の有機EL素子の製造方法では、実際に有機EL素子を製造した後の製品検査等で知られるものであって、有機EL素子を実際に製造する前に検知することが困難なものである。
本発明の第1実施形態の検査方法は、有機EL素子を製造する前の実施が可能である。したがって、本実施形態の検査方法の第1例の(iii)検査工程によって、(ii)加熱工程の後、図4に示した検査基板10−2の有機層2−2に形成された放射線照射部2a−2を観察し、上述したようなマスク3による不良を調べることができる。
上述したように、図3に示す(i)放射線照射工程後の有機層2−1の放射線照射部2a−1は、放射線未照射部2b−1と比較して異なる膜厚や屈折率の値を有している。また、図4に示す(ii)加熱工程の後の放射線照射部2a−2は、放射線未照射部2b−2と比較して、異なる膜厚や屈折率の値を有している。したがって、検査基板10−2の放射線照射部2a−2のそれぞれの形状や配列構造を、現像工程を用いることなく、例えば、目視等により、容易に観察することができる。
このとき、図4に示す(ii)加熱工程の後の放射線照射部2a−2において、平面視でのそれぞれの形状や寸法や配列構造は、マスク3に形成された開口パターンの開口部4の平面視でのそれぞれの形状や寸法や配列構造に基づくものとなる。したがって、放射線照射部2a−2の平面視でのそれぞれの形状や寸法や配列構造は、有機EL素子の製造でマスク3を用いた蒸着によって基板上に形成された、マトリクス状に配列された複数の有機発光部と同様のものとなる。
したがって、(iii)検査工程では、図4に示す(ii)加熱工程の後の放射線照射部2a−2を観察して、平面視でのそれぞれの形状や寸法や配列構造を調べることにより、(i)放射線照射工程で生じたマスク3による不良を調べることができる。またその結果、有機EL素子の製造方法のマスク3を用いた蒸着工程における、マスク3による不良を調べることができる。そして、マスク3による不良を調べて有機EL素子の製造方法の蒸着工程を検査することができる。
(iii)検査工程において、マスク3を観察する方法としては、目視による観察方法の他、検査用の光学顕微鏡を用いた観察方法を挙げることができる。
[(iv)判定工程]
(iv)判定工程では、(iii)検査工程の観察によって調べられたマスク3による不良が許容可能か否かを判定する。そして、許容可能と判定された場合、そのマスク3を用いて蒸着工程の実施を許容し、有機EL素子の製造が行われるようにする。
例えば、(iii)検査工程で調べられるマスク3による不良の中には、そのマスク3を用いて製造された有機EL素子が製造後の検査で不良品と判定されないような、軽微なものも含まれる。そうした軽微なマスク3による不良に対応して、そのマスク3を用いた蒸着工程の実施を止めて有機EL素子の製造を終了してしまうと、有機EL素子の製造効率を不必要に低下させることになる。
したがって、(iv)判定工程では、(iii)検査工程での観察の結果に基づいて、マスク3による不良が許容可能か否か、すなわち、そのマスク3を用いた蒸着工程の実施が許容可能で、有機EL素子の製造が許容可能か否かの判定を行う。
その場合、(iv)判定工程では、マスク3による不良が許容可能か否かを判定するための、判定基準を設けることが好ましい。判定基準を設けることにより、簡便かつ正確な判定が可能となる。
例えば、図3に示した検査基板10の放射線照射部2a−1に対応し、(ii)加熱工程の加熱によって形成された放射線照射部2a−2に対して、(iii)検査工程では、観察の結果からマスク3による不良が検出される。このマスクによる不良には、放射線照射部2a−2における、設計値からの寸法のずれや位置ずれが含まれる。
その場合、(iv)判定工程では、放射線照射部2a−2の設計値からの寸法のずれや位置ずれについて、許容範囲を示す閾値を定める。
そして、(iv)判定工程では、その閾値を判定基準とし、寸法のずれや位置ずれがその閾値を超えた場合に、許容不可能と判定し、そのマスク3を用いた蒸着工程の実施を止めて有機EL素子の製造を止めるようにする。一方、マスク3による不良である寸法のずれや位置ずれについて、その閾値を超えない場合には、許容可能と判定し、そのマスク3を用いた蒸着工程の実施を許容して、有機EL素子の製造が行われるようにする。
このような(iv)判定工程により、本実施形態の検査方法は、マスク3による不良が許容可能か否かを簡便かつ正確に判定することができる。
[(iii)着色工程]
上述したように、本発明の第1実施形態の検査方法は、第2例として、図2に示したように、図1の(i)放射線照射工程(S101)と同様の放射線照射工程(S201)、図1の(ii)加熱工程(S102)と同様の加熱工程(S202)、(iii)着色工程(S203)、図1の(iii)検査工程(S103)と同様の検査工程(S204)、および、図1の(iv)判定工程(S104)と同様の判定工程(S205)をこの順で含む構成とすることができる。
すなわち、本発明の第1実施形態の検査方法は、第2例として、図2に示したように、(iii)着色工程(S203)を含むことができる。
本実施形態の検査方法の第2例において、(iii)着色工程(S203)は、(ii)加熱工程(S202)の後であって(iv)検査工程(S204)の前に設けられることが好ましい。そして、(iii)着色工程(S203)は、(i)放射線照射工程で検査基板の有機層に形成された放射線照射部分を着色する工程である。
すなわち、(iii)着色工程(S203)は、(i)放射線照射工程(S201)および(ii)加熱工程(S202)により形成された放射線照射部分、すなわち、図4に示した検査基板10−2の有機層2−2の放射線照射部2a−2のような放射線照射部分を選択的に着色するための工程となる。
本実施形態の検査方法の第2例は、(iii)着色工程(S203)を設けることにより、その後の(iv)検査工程(S204)をより容易なものとし、(v)判定工程(S205)をより確実に実施することができる。
以下、本実施形態の検査方法の第2例の(iii)着色工程(S203)について、さらに説明するが、適宜、図3および図4を参照するようにする。
ここで、図3は、上述したように、本実施形態の検査方法の第1例の(i)放射線照射工程を説明するものであり、図4は、上述したように、本実施形態の検査方法の第1例の(ii)加熱工程の後の検査基板10−2の状態を模式的に説明するものである。
しかし、本実施形態の検査方法の第2例において、(iii)着色工程(S203)の前に設けられる放射線照射工程(S201)は上述した図1の(i)放射線照射工程(S101)と同様の共通する工程であり、(ii)加熱工程(S202)もまた、上述した図1の(ii)加熱工程(S102)と同様の共通する工程である。そのため、(iii)着色工程(S203)で着色の対象となるのは、図4に示された検査基板10−2と同様のものであり、また、図4に示された検査基板10−2は、図3に示された検査基板10−1の加熱後に対応するものである。
したがって、図3および図4は、本実施形態の検査方法の第2例における(iii)着色工程(S203)を説明するのに用いることができる。その場合、(iii)着色工程(S203)の説明では、図3および図4を参照し、図4に示された検査基板10−2を着色の対象として説明を行うことにする。
したがって、本実施形態の検査方法の第2例においては、(iii)着色工程(S203)で、図4に示された加熱後の検査基板10−2を用い、検査基板10−2の有機層2−2上に、着色用のインク液を供給し、有機層2−2に形成された放射線照射部2a−2を選択的に着色する。
本実施形態の検査方法の第2例において、(iii)着色工程(S203)で着色の対象となる検査基板10−2は、上述したように、図4に示された検査基板10−2と同様であり、図3に示された検査基板10−1の加熱後に対応するものである。
したがって、(iii)着色工程(S203)で着色される検査基板10−2の有機層2−2は、上述したように、図3に示された検査基板10−1の有機層2−1の加熱後に対応している。
検査基板10−1の有機層2−1は、上述したように、基板1の主面上に、感放射線性樹脂組成物を用いて形成される。ここで、検査基板10−1の有機層2−1を形成する感放射線性樹脂組成物は、上述したように、酸解離性基を有する重合体と酸発生剤とを含む組成物である。
(i)放射線照射工程(S201)で用いられる検査基板10−1の有機層2−1を形成する感放射線性樹脂組成物は、酸解離性基を有する重合体および酸発生剤を含む。それにより、(i)放射線照射工程(S201)および(ii)加熱工程(S202)の後、検査基板10−2の有機層2−2に形成された放射線照射部2a−2は、他の放射線未照射部2b−2に比べて薄い膜厚となって、有機層2−2が凹むようになる。また併せて、放射線未照射部2b−2は撥液性を示すが、放射線照射部2a−2は酸解離性基の消失に伴い、放射線未照射部2b−2に比べて親液性となる。
(iii)着色工程(S203)においては、このような検査基板10−2上に、着色用のインク液を供給する。
検査基板10−2では、放射線照射部2a−2と放射線未照射部2b−2との間に膜厚差があるため、有機層2−2の主面に凹凸が形成されている。したがって、検査基板10−2上に供給されたインク液は、有機層2−2の主面に形成された凹部を構成する放射線照射部2a−2上に集まりやすくなる。
このとき、上述したように、放射線未照射部2b−2は撥液性を示すが、放射線照射部2a−2は放射線未照射部2b−2に比べて親液性である。したがって、放射線照射部2a−2と放射線未照射部2b−2との間の膜厚差の効果に加えて、放射線照射部2a−2が放射線未照射部2b−2に比べて親液性であることの効果が発揮される。そのため、(iii)着色工程(S203)で検査基板10−2上に供給されたインク液は、有機層2−2の放射線照射部2a−2上のみに集まりやすくなる。
その結果、(iii)着色工程(S203)においては、(i)放射線照射工程(S201)および(ii)加熱工程(S202)により形成された、検査基板10−2の有機層2−2の放射線照射部2a−2を選択的に着色することができる。そして、本実施形態の検査方法の第2例において、(iii)着色工程(S203)は、その後の(iv)検査工程(S204)をより容易なものとし、(v)判定工程(S205)をより確実に実施できるようにする。
(iii)着色工程(S203)で、放射線照射部2a−2の選択的な着色に使用されるインク液については、特に限定はされない。例えば、赤色や青色の染料や顔料を用い、水や有機層2−2を溶解しない有機溶剤に溶解または分散させて調整されたものを用いることができる。
また、(iii)着色工程(S203)で検査基板10−2上にインク液を供給する方法としては、特に限定されないが、基板上の試料に液状物を塗布するための方法として知られた従来の塗布方法を用いることができる。
そのような塗布方法としては、例えば、はけやブラシを用いた塗布法、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法、スキージ法、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、ディスペンス法等の適宜の方法を採用することができる。この中でも特にディッピング法、スプレー法、スピンコート法、スリットダイ塗布法、オフセット印刷、インクジェット印刷、ディスペンス法を挙げることができる。
以上のように、本発明の第1実施形態の検査方法の第1例および第2例は、マスクによる不良を調べて有機EL素子の製造方法の蒸着工程を検査することができる。
次に、本発明の第1実施形態の検査方法は、(i)放射線照射工程と、(ii)加熱工程と、(iii)検査工程と、(iv)判定工程とをこの順で含むことができるが、上述したように、(i)放射線照射工程の後、(iii)検査工程の前に、必須の工程ではない(ii)加熱工程を含まない構成とすることも可能である。
上述したように、本発明の第1実施形態の検査方法の第1例および第2例においては、(i)放射線照射工程により、図3の検査基板10−1の有機層2−1中に存在する酸解離性基が酸発生剤の効果により脱離し揮発する。その結果、放射線照射部2a−1の膜厚が放射線未照射部2b−1の膜厚に比べ薄くなって凹み、放射線照射部2a−1を凹部とする凹パターンが形成される。そして、有機層2−1に形成された放射線照射部2a−1では、放射線未照射部2b−1に比べて、屈折率の値が大きくなるように変化する。
したがって、(i)放射線照射工程においては、マスク3を介した放射線照射によって、基板1の主面上に、撥液性の放射線未照射部2b−1と、放射線未照射部2b−1より膜厚が薄く、高屈折率で、親液性の放射線照射部2a−1とを有する有機層2−1が形成される。
このような有機層2−1の放射線照射部2a−1は、この後に(ii)加熱工程を設けることがなくても、目視による観察が可能である。したがって、本発明の第1実施形態の検査方法では、それを実施するにあたり、(i)放射線照射工程の後に、(ii)加熱工程を設けることなしに、(iii)検査工程を容易に実施することができ、(iv)判定工程を確実に実施できる場合がある。そのような場合には、本発明の第1実施形態の検査方法は、第3例として、(ii)加熱工程を含まずに構成されることが好ましい。本発明の第1実施形態の検査方法の第3例は、(ii)加熱工程を含まない構成とされて、上述したように、マスクによる不良をより簡便に調べることができる。
その場合、本発明の第1実施形態の検査方法の第3例は、(ii)加熱工程を含まないように構成されること以外は、上述した第1例と同様の検査方法とすることができる。
図5は、本発明の第1実施形態の検査方法の第3例を示すフローチャートである。
本発明の第1実施形態の検査方法の第3例は、図5に示すように(i)放射線照射工程(S301)と、(ii)検査工程(S302)と、(iii)判定工程(S303)とをこの順で含んで構成される。
このとき、本発明の第1実施形態の検査方法の第3例において、(i)放射線照射工程(S301)は、上述した図1の本発明の第1実施形態の検査方法の第1例における(i)放射線照射工程(S101)と同様の共通する工程である。
また、本発明の第1実施形態の検査方法の第3例において、(ii)検査工程(S302)は、(i)放射線照射工程(S301)後の検査基板を観察の対象とすること以外は、上述した図1の第1例の(iii)検査工程(S103)と同様の工程である。本発明の第1実施形態の検査方法の第3例において、(ii)検査工程(S302)は、図4に示した検査基板10−2の有機層2−2に形成された放射線照射部2a−2を観察するのではなく、図3に示した検査基板10−1の有機層2−1に形成された放射線照射部2a−1を、図1の第1例の(iii)検査工程(S103)と同様の方法で観察する。そして、(ii)検査工程(S302)では、図3に示すマスク3による不良、すなわち、(i)放射線照射工程で用いられた、パターン加工されたマスク3による不良を調べる。
また、本発明の第1実施形態の検査方法の第3例において、(iii)判定工程(S303)は、上述した図1の第1例の(iv)判定工程(S104)と同様の工程となる。
以上により、本発明の第1実施形態の検査方法の第3例は、マスク3による不良をより簡便に調べて有機EL素子の製造方法の蒸着工程を検査することができる。
また、本発明の第1実施形態の検査方法は、第4例として、(ii)加熱工程を含まないこと以外は、上述した、検査基板の着色の工程を含む第2例と同様の検査方法を構成することができる。
図6は、本発明の第1実施形態の検査方法の第4例を示すフローチャートである。
本発明の第1実施形態の検査方法の第4例は、図6に示すように(i)放射線照射工程(S401)と、(ii)着色工程(S402)と、(iii)検査工程(S403)と、(iv)判定工程(S404)とをこの順で含んで構成される。
このとき、本発明の第1実施形態の検査方法の第4例において、(i)放射線照射工程(S401)は、上述した図2の本発明の第1実施形態の検査方法の第2例における(i)放射線照射工程(S201)と同様の共通する工程である。
また、本発明の第1実施形態の検査方法の第4例において、(ii)着色工程(S402)は、(i)放射線照射工程(S401)で検査基板の有機層に形成された放射線照射部分を着色する工程である。そして、(ii)着色工程(S402)は、上述した図2の第2例の(ii)加熱工程(S202)のような加熱の工程を経ていない検査基板を着色の対象とする。本実施形態の検査方法の第4例において、それ以外は、図2の第2例の(iii)着色工程(S203)と同様の工程である。
本発明の第1実施形態の検査方法の第4例において、その(ii)着色工程(S402)は、図3に示した検査基板10−1の有機層2−1に形成された放射線照射部2a−1を、その親液性にしたがい、上述した第2例の(iii)着色工程(S203)と同様の方法で選択的に着色する。
すなわち、(ii)着色工程(S402)は、(i)放射線照射工程(S401)により形成された放射線照射部分、すなわち、図3に示した検査基板10−1の有機層2−1の放射線照射部2a−1のような放射線照射部分を選択的に着色するための工程となる。
そして、本実施形態の検査方法の第4例は、(ii)着色工程(S402)を設けることにより、上述した第2例と同様に、その後の(iii)検査工程(S403)をより容易なものとし、(iv)判定工程(S404)をより確実に実施することができる。その結果、本発明の第1実施形態の検査方法の第4例は、マスクによる不良をより簡便に調べることができる。
以上のように、本発明の第1実施形態の検査方法は、その第1例〜第4例が示すように、マスクによる不良を調べて有機EL素子の製造方法の蒸着工程を検査することができる。そして、本発明の第1実施形態の検査方法は、そのマスクを用いて有機EL素子を製造する有機EL素子の製造方法に適用されて、有機EL素子の生産性の向上に有効となる。
上述したように、本発明の第1実施形態の検査方法は、有機EL素子の製造方法における蒸着工程の検査に限定されて、それのみに適用されるものではない。本発明の第1実施形態の検査方法は、有機EL素子以外の液晶素子や半導体素子等の多様な電子デバイスの検査や製造に応用することができる。
すなわち、本発明の第1実施形態の検査方法は、パターン加工されたマスクを用いて複数のパターンを形成する工程を含む電子デバイスの製造方法において、そのマスクによる不良を検査する検査方法に好適に適用することができる。例えば、本発明の第1実施形態の検査方法は、パターン加工されたマスクを用いて、蒸着によって、複数のパターンを形成する工程を含む電子デバイスの製造方法において、そのマスクによる不良を検査する検査方法に好適に適用することができる。
そして、上述の検査基板およびそれを用いた検査方法は、有機EL素子の他、液晶素子や半導体素子等の多様な電子デバイスの製造方法における製造効率を向上させることができる。
以下で、適宜図面を用い、本発明の第1実施形態の検査方法を電子デバイスの検査や製造に適用する例について、本発明の第1実施形態の検査方法の第5例として説明する。
図7は、本発明の第1実施形態の検査方法の第5例を示すフローチャートである。
本発明の第1実施形態の検査方法の第5例は、上述した第1例〜第4例と同様の検査基板を用い、マスクを用いて行う多様な電子デバイスの製造方法のそのマスクによる不良を検査する検査方法である。
本実施形態の検査方法の第5例は、上述した検査基板と、電子デバイスの製造での使用が予定されたマスクとを用いて行われる。その検査基板は、上述したように、基板と、その基板の主面上に感放射線性樹脂組成物を用いて形成された有機層とを有して構成されるものである。
本実施形態の検査方法の第5例において、検査基板とともに検査に用いられるマスクは、その検査の後に、電子デバイスの製造に使用されることが予定されたマスクである。そして、本実施形態の検査方法の第5例においてそのマスクは、具体的に、薄膜状のパターンを形成するための蒸着工程で使用されることが予定されたマスクである。すなわち、そのマスクは、パターン加工されたマスクであり、より具体的には、蒸着用にパターン加工されて、開口パターンを構成する開口部の形成されたマスクとなる。したがって、上述の検査に用いられるマスクには、例えば、メタルマスク、シャドーマスク、ファインメタルマスクまたはファインハイブリッドマスク等と称されるものが含まれる。
そして、上述した電子デバイスの製造には、上述のパターン加工されたマスクを用いて基板の主面を覆い、蒸着によって、その基板の主面上にマトリクス状に配列された複数の薄膜状のパターンを堆積させる工程が含まれる。
これに対し、本実施形態の検査方法の第5例は、上述した第1例〜第4例と同様の検査基板を用い、図7に示すように(i)放射線照射工程(S501)と、(ii)加熱工程(S502)と、(iii)検査工程(S503)と、(iv)判定工程(S504)とをこの順で含んで構成される。
本実施形態の検査方法の第5例において、(i)放射線照射工程(S501)は、上述した図1の本発明の第1実施形態の検査方法の第1例における(i)放射線照射工程(S101)と同様の共通する工程である。また、(ii)加熱工程(S502)も上述した図1の(ii)加熱工程(S102)と同様の共通する工程である。
したがって、(i)放射線照射工程(S501)後の検査基板において、または、任意工程である(ii)加熱工程(S502)後の検査基板において、その有機層に形成された放射線照射部分は、他の放射線未照射部分に比べて凹むようになる。検査基板の有機層には、放射線照射部分が凹部となり、放射線未照射部分が凸部となって、凹パターンが形成される。そのとき、凹部を構成する有機層の放射線照射部分は、屈折率の値が、放射線未照射部分に比べて、大きくなっている。例えば、放射線照射部分と放射線未照射部分の波長633nmにおける屈折率差は0.04以上になっている。そのため、その検査基板において、有機層に形成された放射線照射部分は、目視等による観察が容易になっている。
そしてまた、本実施形態の検査方法の第5例において、(iii)検査工程(S503)は、上述した図1の(iii)検査工程(S103)と同様の工程である。また、(v)判定工程(S504)は、上述した図1の(iv)判定工程(S104)と同様の工程となる。
したがって、本実施形態の検査方法の第5例は、現像工程を含むことなく、簡便に、マスクを用いて行われる電子デバイスの製造方法の、そのマスクによる不良を検査することができる。
尚、本発明の第1実施形態の検査方法の第5例では、別の具体例として、(ii)加熱工程の後に、検査基板の放射線照射部分を選択的に着色するための着色工程を含む構成とすることができる。
また、本発明の第1実施形態の検査方法の第5例では、さらに別の具体例として、(ii)加熱工程を含まない構成とすることができる。
さらに、本発明の第1実施形態の検査方法の第5例では、またさらに別の具体例として、(ii)加熱工程を含まない構成であって、(i)放射線照射工程の後に、検査基板の放射線照射部分を選択的に着色するための着色工程を含む構成とすることもできる。
実施の形態2.
<検査基板>
本発明の第2実施形態の検査基板は、上述した本発明の第1実施形態の検査方法において使用される検査基板である。本実施形態の検査基板は、例えば、パターン加工されたマスクとともに用いられ、そのマスクによる不良を調べ、そのマスクを用いた製造の工程を検査するためのものである。より具体的には、本実施形態の検査基板は、パターン加工されたマスクとともに用いられ、そのマスクによる不良を調べ、そのマスクを用いた蒸着工程を検査するためのものである。
そして、本実施形態の検査基板は、本発明の第1実施形態の検査方法の第1例〜第4例で使用された場合、マスクによる不良を調べて有機EL素子の製造方法の蒸着工程を検査することができる。
図8は、本発明の第2実施形態の検査基板の構造を模式的に示す断面図である。
図8に示すように、本実施形態の検査基板10は、基板1と、基板1の主面上に感放射線性樹脂組成物を用いて形成された有機層2とを有して構成される。そして、検査基板10の有機層2を形成する感放射線性樹脂組成物は、酸解離性基を有する重合体および酸発生剤を含む組成物であることが好ましい。
尚、本実施形態の検査基板10の有機層2の形成に用いられる感放射線性樹脂組成物については、本発明の第3実施形態の組成物として、後に詳述する。
検査基板10の有機層2を形成する感放射線性樹脂組成物が、酸解離性基を有する重合体および酸発生剤を含むことにより、その検査基板10を、上述した本発明の第1実施形態の検査方法に、より好適に適用することができる。
そして、上述の検査基板10は、上述した本発明の第1実施形態の検査方法の第1例〜第4例に用いられる。その場合、検査基板10では、上述した図1、図2、図5および図6の(i)放射線照射工程(S101,S201,S301,S401)の後に、有機層2に形成された放射線照射部分が、他の放射線未照射部分に比べて薄い膜厚となって凹み、凹パターンが形成される。そして、(i)放射線照射工程(S101,S201)後に(ii)加熱工程(S102,S202)が設けられた場合、有機層2に形成された放射線照射部分は、他の放射線未照射部分に比べてさらに薄い膜厚となって、さらに凹むようになる。
また併せて、検査基板10の有機層2に形成された放射線照射部分では、他の放射線未照射部分に比べて、屈折率の値が変化する。例えば、有機層2に形成された放射線照射部分は、他の未露光部分に比べて、屈折率の値が大きくなる。そして、放射線照射部分と放射線未照射部分の波長633nmにおける屈折率差を大きくすることができる。具体的には、検査基板10では、放射線照射により、放射線照射部分と放射線未照射部分の波長633nmにおける屈折率差を0.04以上にすることも可能であり、屈折率差が0.04以上となると、凹パターンの認識がしやすくなる点で好ましい。
例えば、本実施形態の検査基板10は、上述した図1の本発明の第1実施形態の検査方法の第1例に用いられ、その(i)放射線照射工程(S101)に適用されて、図3の検査基板10−1となる。その場合、検査基板10の有機層2は、放射線照射部2a−1および放射線未照射部2b−1の形成された検査基板10−1の有機層2−1となる。
また、本実施形態の検査基板10は、上述した本発明の第1実施形態の検査方法の第1例に用いられ、その(i)放射線照射工程(S101)に適用され、さらに、その(ii)加熱工程(S102)に適用されて、図4の検査基板10−2となる。その場合、検査基板10の有機層2は、放射線照射部2a−2および放射線未照射部2b−2の形成された検査基板10−2の有機層2−2となる。
その結果、本実施形態の検査基板10は、本発明の第1実施形態の検査方法の第1例に用いられ、その(i)放射線照射工程(S101)の後、その有機層2に形成された放射線照射部分を、例えば、目視や顕微鏡の利用により、簡便に観察することができる。また、本実施形態の検査基板10は、同様に、本発明の第1実施形態の検査方法の第1例に用いられ、その(i)放射線照射工程(S101)および(ii)加熱工程(S102)の後、その有機層2に形成された放射線照射部分を、例えば、目視や顕微鏡の利用により、より簡便に観察することができる。
すなわち、本実施形態の検査基板10において、有機層2に形成された放射線照射部分は、他の放射線未照射部分に比べて、凹み、また、屈折率の値が大きくなっている。例えば、放射線照射部分と放射線未照射部分の波長633nmにおける屈折率差が大きくなる。そのため、本実施形態の検査基板10において、有機層2に形成された放射線照射部分は、目視等による観察が容易になっている。
したがって、本実施形態の検査基板10では、従来のフォトリソグラフィ技術によるパターニングで必要とされる現像工程を用いることなく、その有機層2に形成された放射線照射部分を容易に観察することができる。
その結果、本実施形態の検査基板10は、本発明の第1実施形態の検査方法の第1例の(iii)検査工程を簡便なものとすることができる。
また、本実施形態の検査基板10は、本発明の第1実施形態の検査方法の第3例にも好適に用いることができる。本発明の第1実施形態の検査方法の第3例は、図5に示したように、(i)放射線照射工程(S301)の後に、図1の第1例の(ii)加熱工程のような、加熱工程を有していない。しかし、その(i)放射線照射工程(S301)の後、その有機層2に形成された放射線照射部分を、その屈折率の差の効果や、他の放射線未照射部分に比べて凹むことによる形状の効果により、(ii)検査工程で、例えば、目視や顕微鏡の利用により、簡便に観察することができる。
したがって、本実施形態の検査基板10は、本発明の第1実施形態の検査方法の第3例の(ii)検査工程を簡便なものとすることができる。
さらに、検査基板10は、上述した本発明の第1実施形態の検査方法の第1例〜第4例に用いられた場合、有機層2に形成された放射線照射部分が、他の照射線未照射部分に比べて親液性となる。
したがって、検査基板10は、上述のように、本発明の第1実施形態の検査方法の第1例および第2例の(i)放射線照射工程(S101,S201)および(ii)加熱工程(S102,S202)によって、図4の検査基板10−2となり、その後、図2に示した本発明の第1実施形態の検査方法の第2例の(iii)着色工程(S203)に適用される。(iii)着色工程(S203)では、検査基板10−2の有機層2−2上に、着色用のインク液が供給される。
このとき、供給されたインク液は、図8の検査基板10の有機層2の放射線照射部分に対応する、図4の検査基板10−2の有機層2−2の放射線照射部2a−2に集まって、その放射線照射部2a−2を選択的に着色する。すなわち、図4に示すように、検査基板10−2の有機層2−2の放射線照射部2a−2は、有機層2−2の主面で凹部を構成して他の照射線未照射部2b−2に比べて親液性となっている。したがって、有機層2−2の供給されたインク液は、その放射線照射部2a−2に集まって、その放射線照射部2a−2を選択的に着色することができる。
その結果、本実施形態の検査基板10は、図2に示した本発明の第1実施形態の検査方法の第2例に用いられ、その(i)放射線照射工程(S201)、(ii)加熱工程(S202)および(iii)着色工程(S203)の後、選択的に着色された有機層2の放射線照射部分が、例えば、目視や顕微鏡の利用により、より簡便に観察可能となる。
したがって、本実施形態の検査基板10は、本発明の第1実施形態の検査方法の第2例の(iv)検査工程を簡便なものとすることができる。
また、本実施形態の検査基板10は、本発明の第1実施形態の検査方法の第4例にも好適に用いることができる。本発明の第1実施形態の検査方法の第4例は、図6に示したように、(i)放射線照射工程(S401)の後に、図1の第1例の(ii)加熱工程のような加熱工程を有していない。しかし、その(i)放射線照射工程(S401)の後、その有機層2に形成された放射線照射部分を、その親液性の効果と、他の放射線未照射部分に比べて凹むことによる形状の効果によって、(ii)着色工程(S402)で選択的に着色することができる。その結果、その有機層2に形成された放射線照射部分を、例えば、目視や顕微鏡の利用により、簡便に観察することができる。
したがって、本実施形態の検査基板10は、本発明の第1実施形態の検査方法の第4例の(iii)検査工程(S403)を簡便なものとすることができる。
以上のように、本実施形態の検査基板10は、本発明の第1実施形態の検査方法の第1例〜第4例で使用され、マスクによる不良を調べて有機EL素子の製造方法の蒸着工程を検査することができる。
そしてさらに、本実施形態の検査基板10は、上述した本発明の第1実施形態の検査方法の第5例においても、使用が可能である。すなわち、本実施形態の検査基板は、基板の主面をマスクで覆ってその基板上に複数のパターンを形成する工程を含む電子デバイスの製造方法の、そのマスクによる不良を検査する検査方法に用いることができる。例えば、本実施形態の検査基板は、基板の主面をマスクで覆って、蒸着により、その基板上に複数のパターンを形成する工程を含む電子デバイスの製造方法の、そのマスクによる不良を検査する検査方法に用いることができる。
以上のような本実施形態の検査基板10は、次のようにして製造することができる。
例えば、基板1上に、酸解離性基を有する重合体と酸発生剤とを含む組成物を塗布する。その後、好ましくは組成物の塗膜を加熱することにより、基板1の主面上に有機層2を形成して、検査基板10を得ることができる。
検査基板10の基板1を構成する材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、樹脂等を挙げることができる。樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、環状オレフィンの開環重合体(ROMPポリマー)およびその水素添加物が挙げられる。
尚、基板1に組成物を塗布する前に、必要に応じて基板表面を洗浄、粗面化、微少な凹凸面の付与等の前処理を施しておいてもよい。
基板1に組成物を塗布する塗布方法としては特に限定されず、はけやブラシを用いた塗布法、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、ディスペンス法等の適宜の方法を採用することができる。これらの塗布方法の中でも、特にスリットダイ塗布法またはスピンコート法が好ましい。
検査基板10における有機層2の厚みは、所望の用途に応じ適宜調整することができるが、好ましくは0.1μm〜20μm、より好ましくは0.2μm〜10μmである。
基板1上で組成物の塗膜を加熱する条件は、使用する組成物の組成等によっても異なるが、好ましくは60℃〜140℃で1分間〜10分間程度である。
以上のようにして、マスクによる不良を調べて、例えば、有機EL素子の製造方法の蒸着工程を検査する本発明の第1実施形態の検査方法に用いられる、本実施形態の検査基板10を得ることができる。
ここで、検査基板10の基板1については、その構成に用いる材料が上記のように例示されるが、基板1としては、ガラス基板や樹脂基板と称されるような、上述の材料からなる単層構造等の単純な構造の基板のみが含まれるわけではない。すなわち、基板1は、均質な材料からなる単純な構造の基板のみではなく、薄膜トランジスタ(TFT)を含む駆動用回路が形成され、その上に平坦化膜等も形成されたような複雑な構造のものも含まれる。
すなわち、検査基板10の基板1には、駆動用回路等の構成も含まれる場合がある。
したがって、検査基板10を構成するための基板1には、例えば、有機EL素子を製造するための基板、すなわち、TFTを含む駆動用回路や平坦化膜等が形成され、有機EL素子を製造するための蒸着工程に投入される基板と同じ構造のものを用いることができる。
その場合、例えば、基板1には、ガラス基板、石英基板、シリコン基板または樹脂基板上に駆動用回路や平坦化膜等が形成され、さらに、電極や電荷輸送層の形成されたものを用いることもできる。
検査基板10の構成に、上述のような有機EL素子を製造するための基板を用いることにより、検査基板10を用いた本発明の第1実施形態の検査方法の第1例〜第4例では、有機EL素子を製造するための蒸着工程をより高い精度で検査することができる。
尚、本実施形態の検査基板10は、その有機層2が後述する本発明の第3実施形態の組成物を用いて基板1の主面上に形成されている。したがって、検査基板10では、有機層2の特性にしたがい、適当な溶剤を用いて、例えば、適当な剥離処理を施すことにより、有機層2を基板1から容易に剥離させることができる。そして、検査基板10では、有機層2の剥離によって、基板1を、有機層2が形成される前の元の状態で、回収することができる。
このようなことは、本発明の第1実施形態の検査方法における図4の検査基板10−2についても同様である。したがって、本発明の第1実施形態の検査方法の第1例においては、上述したように、(ii)加熱工程により検査基板10−2を得て、それに続く(iii)検査工程で、検査基板10−2の有機層2−2に形成された放射線照射部2a−2を観察することができる。その後、本発明の第1実施形態の検査方法においては、例えば、適当な溶剤を用いた適当な剥離処理等の処理によって、検査基板10−2から有機層2−2を剥離させることができ、基板1を回収することができる。本発明の第1実施形態の検査方法において、回収された検査基板10の基板1は、再び、同様の構造の検査基板10の製造に使用することができる。
実施の形態3.
<組成物>
本発明の第3実施形態の組成物(以下、単に、「組成物」ということがある。)は、酸解離性基を含む基を有する重合体と酸発生剤とを成分として含有する。本実施形態の組成物は、上述した感放射線性樹脂組成物として、本発明の第1実施形態の検査方法で用いる検査基板、すなわち、本発明の第2実施形態の検査基板の製造に用いることができる。本発明の第2実施形態の検査基板は、基板と、その基板の主面上に形成された有機層とを有して構成される。したがって、本実施形態の組成物は、本発明の第2実施形態の検査基板の有機層を形成するのに用いられる。
すなわち、本発明の第2実施形態の検査基板は、従来のフォトリソグラフィ法を利用したパターニングに必要とされた現像工程を用いることなく、放射線照射部分の観察が可能となるよう構成されており、本実施形態の組成物は、その製造に用いることができる。
本実施形態の組成物の酸解離性基を含む基を有する重合体において、その酸解離性基は、アセタール基、フッ素原子を含む基およびケイ素原子を含む基よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。すなわち、本実施形態の組成物は、酸解離性基を含む基を有する重合体として、アセタール基、フッ素原子を含む基およびケイ素原子を含む基よりなる群から選択される少なくとも1種である酸解離性基を含む基を有する重合体を含有することが好ましい。
本実施形態の組成物が酸解離性基を含む基を有する重合体を含有する場合、その組成物を用いて製造された本発明の第2実施形態の検査基板は、上述した本発明の第1実施形態の検査方法の第1例〜第5例に、特に、それらの(i)放射線照射工程、および任意工程である(ii)加熱工程に、より好適に適用される。
すなわち、本実施形態の組成物を用いて製造された本発明の第2実施形態の検査基板は、パターン加工されたマスクを用いた放射線照射により、基板の主面上の有機層の放射線照射部分がその他の放射線未照射部分に比べて薄い膜厚となって、その放射線照射部分が凹むように構成される。その結果、放射線照射部分の膜厚が放射線未照射部分の膜厚に比べ薄くなり、凹パターンが形成される。凹パターンを形成する放射線照射部分は、放射線照射前の初期膜厚に比べて10%以上膜厚が低くなることで、凹パターンの認識が容易に行えるようになる。
また、その検査基板において、その放射線照射部分は、他の放射線未照射部分に比べて、屈折率の値が大きくなる。そのような検査基板において、放射線照射部分と放射線未照射部分の波長633nmにおける屈折率差が大きくなると、上述の凹パターンのようなパターンを認識することが容易にできるようになる。
したがって、本実施形態の組成物を用いて製造された本発明の第2実施形態の検査基板は、パターン加工されたマスクとともに、本発明の第1実施形態の検査方法に適用され、従来のフォトリソグラフィ技術によるパターニングで必要とされる現像工程を用いることなく、その有機層に形成された放射線照射部分を観察することができる。またその場合、本発明の第2実施形態の検査基板では、その放射線照射部分の選択的な着色が容易であり、そのような着色によって、放射線照射部分をより簡便に観察することができる。
以下、本発明の第3実施形態の組成物について、さらに詳しく説明する。尚、以下の説明では、酸解離性基を含む基を有する重合体を、単に、「[A]重合体」ということがある。
本実施形態の組成物は、[A]重合体の他、溶剤を含有することができる。また、本実施形態の組成物は、酸発生剤を含むことができる。さらに、本実施形態の組成物は、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物を含むことができ、また、感放射線性重合開始剤を含むことができる。
本実施形態の組成物は、溶剤(以下、「[B]溶剤」ということがある。)を含有することで液状を呈し、塗布によって塗膜を形成し、容易に検査基板の有機層の形成を行うことができる。
また、本実施形態の組成物は、酸発生剤(以下、「[C]酸発生剤」ということがある。)を含有することで、所望とする高感度の感放射性を有することができる。また、酸発生剤の補助材料としてさらに増感剤(以下、「[D]増感剤」ということがある。)を含んでもよい。さらに、酸発生剤からの酸の拡散抑制材としてクエンチャー(以下、「[E]クエンチャー」ということがある。)を含むことができる。
さらに、本実施形態の組成物は、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物(以下、「[F]重合性化合物」ということがある。)を含有することができる。またさらに、本実施形態の組成物は、感放射線性重合開始剤(以下、「[G]感放射線性重合開始剤」ということがある。)を含有することができる。
そしてさらに、本実施形態の組成物は、本発明の効果を損なわない限り、その他の任意成分を含有することができる。
本実施形態の組成物の粘度(温度:20℃、剪断速度:10sec−1)は、有機層を形成するための所望の塗布方法および形成したい有機層の膜厚等によって調節すればよい。例えば、膜厚0.5μm〜2μmの有機層を形成する場合であって、塗布方法としてスピンコート法を用いる場合、好ましくは5cP(0.003Pa・s)〜20cP(0.02Pa・s)を例示できる。また、塗布方法としてスリットダイ塗布法を用いる場合、好ましくは1cP(0.001Pa・s)〜20cP(0.01Pa・s)を例示できる。
以下、本実施形態の組成物として用いることができる各成分について説明する。
[[A]重合体]
本実施形態の組成物の成分となる[A]重合体は、酸解離性基を含む基を有する重合体であり、その酸解離性基がアセタール基、フッ素原子を含む基およびケイ素原子を含む基よりなる群から選択される少なくとも1種である重合体である。
まず、酸解離性基を含む基の酸解離性基がアセタール基である重合体について、すなわち、アセタール基を酸解離性基として含んでなる基を有する重合体について説明する。このとき、アセタール基を酸解離性基として含んでなる基を有する重合体について、「アセタール結合を有する基を有する重合体」として説明する。
アセタール結合を有する基を有する重合体において、アセタール結合を有する基は、アセタール結合およびヘミアセタールエステル結合よりなる群から選択される少なくとも1つの構造単位を含む基である。より具体的に、アセタール結合を有する基は、下記式(1a−1)もしくは(1a−2)で示される構造単位から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
(式(1a−1)および式(1a−2)中、R1aおよびR2aはそれぞれ独立して、水素原子またはメチル基を示し、Rfは独立して、フッ素原子で置換された有機基を示す。*は、結合部位を示す。)
アセタール結合を有する基を有する重合体およびその重合体を得るためのアセタール結合を有する基を有するモノマー(以下、「アセタール結合を有する基を有する化合物」と総称する。)は、それらの前駆体であるアルコールと、(CH=C(R1a)−O−)基(R1aは上記式(1a−1)および式(1a−2)中のR1aと同義である。)を有する化合物とを反応させることで得ることができる。また、ヘミアセタールエステル結合を有する基を有する重合体およびその重合体を得るためのヘミアセタールエステル結合を有する基を有するモノマー(上述のように、「アセタール結合を有する基を有する化合物」と総称する。)は、それらの前駆体であるカルボン酸と、(CH=C(R1a)−O−)基(R1aは上記式(1a−1)および式(1a−2)中のR1aと同義である。)を有する化合物とを反応させることで得ることができる。
上記式(1a−1)および式(1a−2)中のRfとしては、上記のように、フッ素原子を有する有機基が挙げられる。そして、Rfとしては、下記式(1−1−1)〜(1−1−33)で示す基が好ましい。
[A]重合体は、前駆体である水酸基を有する化合物(アルコール)の水酸基に、下記式(1D)で示されるビニルエーテル化合物(以下、「化合物(1D)」ということがある。)に由来する保護基が導入されてなる構造を有することが好ましい。また、[A]重合体は、前駆体であるカルボキシル基を有する化合物(カルボン酸)のカルボキシル基に、化合物(1D)に由来する保護基が導入されてなる構造を有していてもよい。
上記式(1D)中、Rは、水素原子またはメチル基を示す。上記式(1D)中、Rは独立して、メチレン基、炭素数2〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、炭素数6〜13の置換または非置換の芳香族炭化水素基、炭素数4〜12の置換または非置換の脂環式炭化水素基、または、これらの基の1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換された基を示す。
上記式(1D)のRにおける炭素数2〜12のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基等が挙げられる。
上記式(1D)のRにおける炭素数2〜12のアルケニレン基としては、ビニレン基、エテン−1,2−ジイル基、2−ブテン−1,4−ジイル等が挙げられる。
上記式(1D)のRにおける炭素数6〜13の置換または非置換の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、トリレン基、メシチレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基が挙げられる。
上記式(1D)のRにおける炭素数4〜12の置換または非置換の脂環式炭化水素基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、ビシクロへキシル基が挙げられる。
上記式(1D)のRにおける、メチレン基、炭素数2〜12のアルキレン基、炭素数6〜13の置換または非置換の芳香族炭化水素基または炭素数4〜12の置換または非置換の脂環式炭化水素基の1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換された基としては、前記で例示した基の1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換された基等が挙げられる。
上記式(1D)のRとしては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基(ペンタメチレン基)、ヘキシレン基(ヘキサメチレン基)、フェニレン基、ビニレン基が好ましい。これら基のうち、特に現像性の観点から、フェニレン基が好ましい。
上記式(1D)中、Rは、炭化水素基の1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換された基を示す。その結果、例えば、[A]重合体は、フッ素原子を含む基である酸解離性基を含んでなる基を有する重合体となる。
上記式(1D)中、Rとしては、例えば、上述した式(1a−1)および式(1a−2)中のRfにおける上記式(1−1−1)〜(1−1−33)で示す基、2,2,2−トリフルオロエチル基、4,4,5,5,6,6,6,−ヘプタフルオロへキシル基、1,2,2−トリフルオロビニル基が挙げられ、2,2,2−トリフルオロエチル基、前記式(1−1−1)の3,3,3−トリフルオロプロピル基、式(1−1−2)の4,4,4−トリフルオロブチル基、式(1−1−4)の3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル基、4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロヘキシル基、式(1−1−8)の3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル基、1,2,2−トリフルオロビニル基、式(1−1−29)の2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基が好ましい。
アセタール結合を有する基を有する重合体としては、WO2014/178279号公報に記載の重合体を用いることもできる。
次に、ケイ素原子を含む基を酸解離性基として含んでなる基を有する重合体について説明する。
ケイ素原子を含む基を酸解離性基として含んでなる基を有する重合体の、ケイ素原子を含む基を含んでなる基は、下記式(1b−1)、下記式(1b−2)、下記式(1b−3)および下記式(1b−4)で示される基よりなる群から選ばれる少なくとも1つの基を有する。
(式(1b−1)および(1b−2)中、R1bおよびR2bはそれぞれ独立して、水素原子およびメチル基のうちのいずれかを示し、Rsはそれぞれ独立して、ケイ素原子を有する1価の有機基を示す。
式(1b−3)および(1b−4)中、R3bはそれぞれ独立して、単結合および炭素数1〜12の2価の有機基のうちのいずれかを示し、R4b、R5bおよびR6bはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、脂環式炭化水素基、アリール基、これらの基が有する水素原子の一部または全部が置換基で置換された基、および、ケイ素原子を有する1価の有機基のうちのいずれかを示す。
式(1b−1)、式(1b−2)、式(1b−3)および(1b−4)中、*は結合部位を示す。)
上記式(1b−1)および上記式(1b−2)における好ましいRsの具体例としては、次の各式で示される基を挙げることができる。尚、各式中、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示し、*は結合部位を示す。
次に、上記式(1b−3)および上記式(1b−4)で示される基については、上述したように、上記式(1−3)および上記式(1−4)中、R3bはそれぞれ独立して、単結合および炭素数1〜12の2価の有機基のうちのいずれかを示し、R4b、R5bおよびR6bはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、脂環式炭化水素基、アリール基、これらの基が有する水素原子の一部または全部が置換基で置換された基、および、ケイ素原子を有する1価の有機基のうちのいずれかを示す。
そして、R6bは、上記式(1b−1)および式(1b−2)における好ましいRsの具体例と同様な基を用いることができる。
以上のようなケイ素原子を含む基は、アセタール結合を有する基を有する重合体と同様に、前駆体となる水酸基を有する化合物(アルコール)にケイ素原子を含むビニル化合物を反応させて得ることができる。このようなケイ素原子を含む基は、特願2014−157156号(特開2016−033628号公報)に記載の基を用いることができる。
[A]重合体である、ケイ素原子を含む基を含んでなる基を有する重合体としては、前駆体である水酸基を有する化合物(アルコール)の水酸基に、ケイ素原子を含むビニルエーテル化合物に由来する保護基が導入されてなる構造を有することが好ましい。また、[A]重合体である、ケイ素原子を含む基を含んでなる基を有する重合体としては、前駆体であるカルボキシル基を有する化合物(カルボン酸)のカルボキシル基に、ケイ素原子を含むビニルエーテル化合物に由来する保護基が導入されてなる構造を有していてもよい。
次に、上述した化合物(1D)を用いて、[A]重合体を得るための方法について説明する。
[A]重合体を得るための方法としては、前駆体となる化合物として重合体を用いる方法がある。また別の方法としては、前駆体となる化合物にモノマーを用い、その後そのモノマーを重合させて[A]重合体を得る方法も可能である。
前駆体となる化合物として重合体を用いる方法では、前駆体となる重合体が水酸基またはカルボキシル基を分子内に含有し、前駆体となる重合体の水酸基に上述した化合物(1D)を反応させることで[A]重合体を得ることができる。
また、前駆体となる化合物としてモノマーを用いる方法では、前駆体となるモノマーが分子内に水酸基またはカルボキシル基を含有し、前駆体となるモノマーの水酸基またはカルボキシル基に前記化合物(1D)を反応させた後、得られたモノマーを重合させることで[A]重合体を得ることができる。
[A]重合体を得る方法としては、WO2014/178279号公報、特願2014−157156号(特開2016−033628号公報)に記載の重合体の合成方法と同様にして、重合体を得ることができる。[A]重合体の好ましい例としては、下記式(1−2−1)〜(1−2−5)で示される構成単位よりなる群から選ばれる少なくとも1つを有する重合体を挙げることができる。
上記式(1−2−1)〜上記式(1−2−5)中、R13は独立して、水素原子またはメチル基を示す。R14は独立して、メチレン基、炭素数2〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、炭素数6〜13の置換または非置換の芳香族炭化水素基、炭素数4〜12の置換または非置換の脂環式炭化水素基、または、これらの基の1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換された基を示す。R15は独立して、炭化水素基の1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換された基を示す。mは0または1を示す。nは独立して0〜12の整数を示す。
そして、上記式(1−2−1)〜上記式(1−2−5)中、R14としては、上記式1D中のRで例示された基と同様の基等が挙げられる。また、R15としては、上記式1D中のRで例示された基と同様の基等が挙げられる。そして、上記式(1−2−1)〜上記式(1−2−5)中で、nとしては、0〜9の整数が好ましい。
上述した[A]重合体の前駆体となる化合物、特に前駆体として水酸基を有する化合物は、熱による保護基の脱離が生じ難いという性質を備え、一方で、放射線照射による保護基の脱離の制御ができるという性質を備えるため、[A]重合体を得るのに好適に使用できる。さらに、[A]重合体は、後述する[C]酸発生剤との組み合わせによって、放射線照射による、より高精度の保護基の脱離の制御が可能となるため好ましい。
本実施形態の組成物は、以上の構造を備えた[A]重合体を含有し、上述した本発明の第2実施形態の検査基板の製造に用いることができる。その場合、本実施形態の組成物は、基板上に塗膜を形成し、検査基板の有機層を形成することができる。
そして、本実施形態の組成物を用いて基板上に形成された塗膜は、形成の直後、[A]重合体の有する上記式(1a−1)、上記式(1a−2)、上記式(1b−1)、上記式(1b−2)、上記式(1b−3)および上記式(1b−4)で示される基に由来する特性を示す。
より具体的には、本実施形態の組成物を用いて、本発明の第2実施形態の検査基板を製造する場合、基板の主面上に、炭化水素基やフッ素原子やケイ素原子に由来する撥液性を備えた有機層が塗膜として形成される。
そして、本実施形態の組成物を用いて形成された塗膜は、放射線の照射を受けて、放射線照射部分では、上記式(1a−1)、上記式(1a−2)、上記式(1b−1)、上記式(1b−2)、上記式(1b−3)および上記式(1b−4)のいずれかで示される基であってそこに含まれるものが分解し、水酸基やカルボキシル基に対する保護基が脱離した状態が形成される。
その結果、本実施形態の組成物を用いた塗膜において、露光によって水酸基等の保護基が脱離した状態となった部分では、水酸基等が残されて、保護基に起因した撥液性が失われる。特に、保護基が脱離した際に、フェノール性水酸基、カルボキシル基が生じることが好ましい。
より具体的には、本実施形態の組成物を用いて製造された、本発明の第2実施形態の検査基板が、本発明の第1実施形態の検査方法の(i)放射線照射工程に適用された場合、パターン加工されたマスクを用いて、検査基板の有機層に対して放射線が照射される。その結果、放射線照射部分では、上記式(1a−1)、上記式(1a−2)、上記式(1b−1)、上記式(1b−2)、上記式(1b−3)および上記式(1b−4)のいずれかで示される基であってそこに含まれるものが分解し、水酸基やカルボキシル基に対する保護基が脱離した状態が形成される。
そして、本実施形態の組成物を用いて製造された検査基板の有機層において、放射線照射によって水酸基等の保護基が脱離した状態となった部分では、水酸基等が残されて、保護基に起因した撥液性が失われる。その結果、検査基板においては、放射線照射部分が、放射線未照射部分に比べて、親水性となる。
本実施形態の組成物において、[A]重合体は、1種を単独で使用してもよいし、または2種以上を混合して使用してもよい。
[[B]溶剤]
[B]溶剤としては特に限定されないが、[A]重合体のほか、後述する[C]酸発生剤および[F]重合性化合物等の各成分を均一に溶解または分散することができる溶剤が好ましい。
好適な[B]溶剤としては、アルコール系溶剤、エーテル類、ジエチレングリコールアルキルエーテル類、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類およびエステル類等を挙げることができる。
上述のアルコール系溶剤としては、1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−ドデカノール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール等の長鎖アルキルアルコール類;
ベンジルアルコール等の芳香族アルコール類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類等を挙げることができる。
これらのアルコール系溶剤は、単独でまたは2種以上併用して使用することができる。
これらアルコール系溶剤のうち、特に塗工性向上の観点から、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルが好ましい。
上述のエーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン、ヘキシルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、1,4−ジオキサンを挙げることができる。
上述のジエチレングリコールアルキルエーテル類としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等を挙げることができる。
上述のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類としては、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテー等を挙げることができる。
上述のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートを挙げることができる。
上述のプロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート類としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノブチルエーテルプロピオネートを挙げることができる。
上述の脂肪族炭化水素類としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、シクロヘキサン、デカリンを挙げることができる。
上述の芳香族炭化水素類としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンを挙げることができる。
上述のケトン類としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンを挙げることができる。
上述のエステル類としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、3−ヒドロキシプロピオン酸メチル、3−ヒドロキシプロピオン酸エチル、3−ヒドロキシプロピオン酸プロピル、3−ヒドロキシプロピオン酸ブチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸プロピル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸プロピル、エトキシ酢酸ブチル、プロポキシ酢酸メチル、プロポキシ酢酸エチル、プロポキシ酢酸プロピル、プロポキシ酢酸ブチル、ブトキシ酢酸メチル、ブトキシ酢酸エチル、ブトキシ酢酸プロピル、ブトキシ酢酸ブチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸ブチル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル等を挙げることができる。
以上で挙げた[B]溶剤は、1種を単独で使用してもよいし、または2種以上を混合して使用してもよい。
[B]溶剤の使用量は、本実施形態の組成物の[B]溶剤を除く成分100質量部に対して、好ましくは200質量部〜1600質量部、より好ましくは400質量部〜1000質量部である。[B]溶剤の使用量を上述の範囲内とすることによって、本実施形態の組成物のガラス基板等に対する塗布性を向上し、さらに塗布ムラ(筋状ムラ、ピン跡ムラ、モヤムラ等)の発生を抑制し、膜厚均一性の向上した塗膜を得ることができる。
[[C]酸発生剤]
[C]酸発生剤は、少なくとも放射線の照射によって酸を発生する化合物である。本実施形態の組成物は、[C]酸発生剤を含有することで、[A]重合体から酸解離性基を脱離させることができる。
[C]酸発生剤としては、例えば、オキシムスルホネート化合物、オニウム塩、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物等が挙げられる。
本実施形態の組成物において、[C]酸発生剤は、1種を単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(オキシムスルホネート化合物)
上述のオキシムスルホネート化合物としては、下記式(2)で表されるオキシムスルホネート基を含む化合物が好ましい。
前記式(2)中、R21は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のフルオロアルキル基、炭素数4〜12の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20のアリール基、あるいはこれらのアルキル基、脂環式炭化水素基およびアリール基が有する水素原子の一部または全部が置換基で置換された基である。
上述のR21で表されるアルキル基としては、炭素数1〜12の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。この炭素数1〜12の直鎖状または分岐状のアルキル基は置換基により置換されていてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1〜10のアルコキシ基、7,7−ジメチル−2−オキソノルボルニル基等の橋かけ環式脂環基を含む脂環式基等が挙げられる。炭素数1〜12のフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプチルフルオロプロピル基等が挙げられる。
上述のR21で表される炭素数4〜12の脂環式炭化水素基は置換基により置換されていてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。
上述のR21で表される炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基が好ましい。上述のアリール基は置換基により置換されていてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。
前記式(2)で表されるオキシムスルホネート基を含有する化合物としては、例えば、下記式(2−1)、下記式(2−2)、下記式(2−3)で表されるオキシムスルホネート化合物が挙げられる。
前記式(2−1)、前記式(2−2)および前記式(2−3)中、R21は、上述した式(2)と同義である。前記式(2−1)および前記式(2−2)中、R25は、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のフルオロアルキル基である。前記式(2−3)中、Yは、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子である。mは、0〜3の整数である。但し、Yが複数の場合、複数のYは同一であっても異なっていてもよい。
前記式(2−3)のYで表されるアルキル基としては、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。上述のXで表されるアルコキシ基としては、炭素数1〜4の直鎖状または分岐状のアルコキシ基が好ましい。上述のXで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子が好ましい。mとしては、0または1が好ましい。前記式(2−3)においては、mが1であり、Yがメチル基であり、Yの置換位置がオルト位である化合物が特に好ましい。
前記(2−3)で表されるオキシムスルホネート化合物としては、例えば、下記式(2−3−1)〜下記式(2−3−5)で表される化合物等が挙げられる。
前記式(2−3−1)〜前記式(2−3−5)で表される化合物は、それぞれ(5−プロピルスルフォニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、(5−オクチルスルフォニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、(カンファースルフォニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、(5−p−トルエンスルフォニルオキシイミノ−5H−チオフェン−2−イリデン)−(2−メチルフェニル)アセトニトリル、(5−オクチルスルフォニルオキシイミノ)−(4−メトキシフェニル)アセトニトリルであり、市販品として入手できる。
(オニウム塩)
[C]酸発生剤として好ましいオニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、アルキルスルホニウム塩、ベンジルスルホニウム塩、ジベンジルスルホニウム塩、置換ベンジルスルホニウム塩、ベンゾチアゾニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩が挙げられる。
上述したジフェニルヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、ジフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホナート、ジフェニルヨードニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロアセテート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム−p−トルエンスルホナート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホン酸が挙げられる。
上述したトリフェニルスルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホン酸、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホナート、トリフェニルスルホニウムブチルトリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
上述したアルキルスルホニウム塩としては、例えば、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ジメチル−4−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル−4−(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル−4−(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ジメチル−3−クロロ−4−アセトキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートが挙げられる。
上述したベンジルスルホニウム塩としては、例えば、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−2−メチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。
上述したジベンジルスルホニウム塩としては、例えば、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−アセトキシフェニルジベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−メトキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ジベンジル−3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−メトキシベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートが挙げられる。
上述した置換ベンジルスルホニウム塩としては、例えば、p−クロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−ニトロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−クロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、p−ニトロベンジル−3−メチル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、3,5−ジクロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、o−クロロベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートが挙げられる。
上述したベンゾチアゾニウム塩としては、例えば、3−ベンジルベンゾチアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジルベンゾチアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、3−ベンジルベンゾチアゾニウムテトラフルオロボレート、3−(p−メトキシベンジル)ベンゾチアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジル−2−メチルチオベンゾチアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジル−5−クロロベンゾチアゾニウムヘキサフルオロアンチモネートが挙げられる。
上述したテトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば、4,7−ジ−n−ブトキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム−1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(ノルボルナン−2−イル)エタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム−2−(5−t−ブトキシカルボニルオキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム−2−(6−t−ブトキシカルボニルオキシビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネートが挙げられる。
(スルホンイミド化合物)
[C]酸発生剤として好ましいスルホンイミド化合物としては、例えば、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(2−フルオロフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(フェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−5,6−オキシ−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N−(フェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N−(ペンタフルオロエチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N−(ヘプタフルオロプロピルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N−(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N−(エチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N−(プロピルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N−(ブチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N−(ペンチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N−(ヘキシルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N−(ヘプチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N−(オクチルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド、N−(ノニルスルホニルオキシ)ナフチルジカルボキシイミド等が挙げられる
(ハロゲン含有化合物)
[C]酸発生剤として好ましいハロゲン含有化合物としては、例えば、ハロアルキル基含有炭化水素化合物、ハロアルキル基含有ヘテロ環状化合物が挙げられる。
(ジアゾメタン化合物)
[C]酸発生剤として好ましいジアゾメタン化合物としては、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−キシリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル−p−トルエンスルホニルジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニル(ベンゾイル)ジアゾメタン等が挙げられる。
(スルホン化合物)
[C]酸発生剤として好ましいスルホン化合物としては、例えば、β−ケトスルホン化合物、β−スルホニルスルホン化合物、ジアリールジスルホン化合物が挙げられる。
(スルホン酸エステル化合物)
[C]酸発生剤として好ましいスルホン酸エステル化合物としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネートが挙げられる。
(カルボン酸エステル化合物)
[C]酸発生剤として好ましいカルボン酸エステル化合物としては、例えば、カルボン酸o−ニトロベンジルエステルが挙げられる。
[C]酸発生剤としては、オキシムスルホネート化合物、オニウム塩、スルホン酸エステル化合物が好ましく、オキシムスルホネート化合物がより好ましい。上述したオキシムスルホネート化合物としては、前記式(2−3−1)〜(2−3−5)で表されるオキシムスルホネート基を含む化合物が好ましく、前記式(2−3−5)で表される化合物がより好ましい。
また、上述したオニウム塩としては、テトラヒドロチオフェニウム塩、ベンジルスルホニウム塩が好ましく、4,7−ジ−n−ブトキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートがより好ましく、4,7−ジ−n−ブトキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネートがさらに好ましい。上述したスルホン酸エステル化合物としては、ハロアルキルスルホン酸エステルが好ましく、N−ヒドロキシナフタルイミド−トリフルオロメタンスルホン酸エステルがより好ましい。[C]酸発生剤を上述の化合物とすることで、本実施形態の組成物は感度を向上させることができ、さらに溶解性を向上させることができる。
本実施形態の組成物において、[C]酸発生剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部が好ましく、1質量部〜5質量部がより好ましい。[C]酸発生剤の含有量を上述の範囲とすることで、本実施形態の組成物の感度を最適化することができる。
[[D]増感剤]
本実施形態の組成物は、[D]増感剤を含有することができる。
本実施形態の組成物が、[D]増感剤をさらに含有することで、その組成物の放射線感度をより向上することができる。[D]増感剤は、活性光線または放射線を吸収して電子励起状態となる化合物であることが好ましい。電子励起状態となった[D]増感剤は、[C]酸発生剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱等が生じ、これにより[C]酸発生剤は化学変化を起こして分解し酸を生成する。
[D]増感剤としては、以下の化合物類に属しており、且つ350nm〜450nmの領域に吸収波長を有する化合物等が挙げられる。
[D]増感剤としては、例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、アントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン,3,7−ジメトキシアントラセン、9,10−ジプロピルオキシアントラセン等の多核芳香族類;
フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル等のキサンテン類;
キサントン、チオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン等のキサントン類;
チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン等のシアニン類;
メロシアニン、カルボメロシアニン等のメロシアニン類;
ローダシアニン類;
オキソノール類;
チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー等のチアジン類;
アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン等のアクリジン類;
アクリドン、10−ブチル−2−クロロアクリドン等のアクリドン類;
アントラキノン等のアントラキノン類;
スクアリウム等のスクアリウム類;
スチリル類;
2−[2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル]ベンゾオキサゾール等のベーススチリル類;
7−ジエチルアミノ4−メチルクマリン、7−ヒドロキシ4−メチルクマリン、2,3,6,7−テトラヒドロ−9−メチル−1H,5H,11H[l]ベンゾピラノ[6,7,8−ij]キノリジン−11−ノン等のクマリン類等が挙げられる。
これらの[D]増感剤のうち、多核芳香族類、アクリドン類、スチリル類、ベーススチリル類、クマリン類、キサントン類が好ましく、キサントン類がより好ましい。キサントン類の中でもジエチルチオキサントンおよびイソプロピルチオキサントンが特に好ましい。
本実施形態の組成物において、[D]増感剤は、1種を単独で使用してもよいし、または2種以上を混合して使用してもよい。
本実施形態の組成物において、[D]増感剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部〜8質量部が好ましく、1質量部〜4質量部がより好ましい。[D]増感剤の含有量を上述の範囲とすることで、本実施形態の組成物は、感放射線性組成物としての感度を最適化することができる。
[[E]クエンチャー]
本実施形態の組成物は、上述した[A]重合体、[C]酸発生剤、[D]増感剤の他、[E]クエンチャーを含有することができる。
[E]クエンチャーは、[C]酸発生剤からの酸の拡散を防止する酸拡散抑制材として機能する。[E]クエンチャーとしては、露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基を用いることができる。光崩壊性塩基は、露光部においては酸を発生する一方、未露光部ではアニオンによる高い酸捕捉機能が発揮されて、[C]酸発生剤からの酸を補足し、露光部から未露光部拡散する酸を失活させる。すなわち、未露光部のみにおいて酸を失活させるため、保護基の脱離反応のコントラストが向上し、結果として解像性をより向上させることができる。光崩壊性塩基の一例として、露光により分解して酸拡散制御性を失うオニウム塩化合物がある。
本実施形態の組成物において、[E]クエンチャーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
本実施形態の組成物において、[E]クエンチャーの含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、0.001質量部〜5質量部が好ましく、0.005質量部〜3質量部がより好ましい。[E]クエンチャーの含有量を上述の範囲とすることで、本実施形態の組成物の反応性を最適化することができる。
[[F]重合性化合物]
本実施形態の組成物は、[F]重合性化合物を含有することで、その組成物の硬化を行うことができる。
[F]重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物である。但し、[A]重合体以外の化合物である。
このような[F]重合性化合物としては、重合性が良好であり、本実施形態の組成物から得られる膜の強度が向上するという観点から、単官能、2官能または3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
尚、単官能化合物とは、(メタ)アクリロイル基を1つ有する化合物のことをいい、2官能または3官能以上の化合物とは、それぞれ、(メタ)アクリロイル基を2つまたは3つ以上有する化合物のことをいう。
上述した単官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、(2−アクリロイルオキシエチル)(2−ヒドロキシプロピル)フタレート、(2−メタクリロイルオキシエチル)(2−ヒドロキシプロピル)フタレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレートが挙げられる。市販品としては、例えば、アロニックス(登録商標)M−101、同M−111、同M−114、同M−5300(以上、東亞合成社);KAYARAD(登録商標)TC−110S、同TC−120S(以上、日本化薬社);ビスコート158、同2311(以上、大阪有機化学工業社)が挙げられる。
上述した2官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレートが挙げられる。市販品としては、例えば、アロニックス(登録商標)M−210、同M−240、同M−6200(以上、東亞合成社);KAYARAD(登録商標) HDDA、同HX−220、同R−604(以上、日本化薬社);ビスコート260、同312、同335HP(以上、大阪有機化学工業社);ライトアクリレート1,9−NDA(共栄社化学社)が挙げられる。
上述した3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリ(2−アクリロイルオキシエチル)フォスフェート、トリ(2−メタクリロイルオキシエチル)フォスフェート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートの他、直鎖アルキレン基および脂環式構造を有し、かつ2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、分子内に1個以上の水酸基とを有し、かつ3個、4個または5個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物と反応させて得られる多官能ウレタンアクリレート系化合物が挙げられる。市販品としては、例えば、アロニックス(登録商標)M−309、同M−315、同M−400、同M−405、同M−450、同M−7100、同M−8030、同M−8060、同TO−1450(以上、東亞合成社);KAYARAD(登録商標) TMPTA、同DPHA、同DPCA−20、同DPCA−30、同DPCA−60、同DPCA−120、同DPEA−12(以上、日本化薬社);ビスコート295、同300、同360、同GPT、同3PA、同400(以上、大阪有機化学工業社);多官能ウレタンアクリレート系化合物を含有する市販品としては、ニューフロンティア(登録商標)R−1150(第一工業製薬社)、KAYARAD(登録商標)DPHA−40H(日本化薬社)等が挙げられる。
これらの[F]重合性化合物のうち、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、多官能ウレタンアクリレート系化合物を含有する市販品等が好ましい。中でも、3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物が特に好ましい。
本実施形態の組成物において、[F]重合性化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
本実施形態の組成物において、[F]重合性化合物の使用量は、[A]重合体100質量部に対して、1質量部〜300質量部が好ましく、3質量部〜200質量部がより好ましく、5質量部〜100質量部がさらに好ましい。[F]重合性化合物の使用量を上述の範囲内とすることで、本実施形態の組成物から得られる塗膜の高度を高め、耐熱性をより良好とすることができる。
[[G]感放射線性重合開始剤]
[G]感放射線性重合開始剤は、放射線の照射を受けて、[F]重合性化合物の重合を促進する化合物である。したがって、本実施形態の組成物が[F]重合性化合物を含有する場合、[G]感放射線性重合開始剤を用いることが好ましい。
[G]感放射線性重合開始剤としては、O−アシルオキシム化合物、アセトフェノン化合物、ビイミダゾール化合物等を挙げることができる。
上述したO−アシルオキシム化合物の具体例としては、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、1−〔9−エチル−6−ベンゾイル−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−オクタン−1−オンオキシム−O−アセテート、1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、1−〔9−n−ブチル−6−(2−エチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロピラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)が挙げられる。
これらのO−アシルオキシム化合物は、1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
これらのうちで、好ましいO−アシルオキシム化合物としては、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)を挙げることができる。
上述したアセトフェノン化合物としては、例えば、α−アミノケトン化合物、α−ヒドロキシケトン化合物を挙げることができる。
上述のα−アミノケトン化合物の具体例としては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンを挙げることができる。
上述のα−ヒドロキシケトン化合物の具体例としては、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを挙げることができる。
以上のアセトフェノン化合物は、1種を単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
これらのアセトフェノン化合物のうちα−アミノケトン化合物が好ましく、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンが特に好ましい。
上述したビイミダゾール化合物の具体例としては、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールを挙げることができる。これらのビイミダゾール化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
これらのビイミダゾール化合物のうち、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールが好ましく、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールが特に好ましい。
本実施形態の組成物において、[G]感放射線性重合開始剤としてビイミダゾール化合物を使用する場合、これを増感するために、ジアルキルアミノ基を有する脂肪族または芳香族化合物(以下、「アミノ系増感剤」という。)を添加することができる。
このようなアミノ系増感剤としては、例えば、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを挙げることができる。これらのアミノ系増感剤のうち、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが特に好ましい。これらのアミノ系増感剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
さらに、ビイミダゾール化合物とアミノ系増感剤とを併用する場合、水素ラジカル供与剤としてチオール化合物を添加することができる。ビイミダゾール化合物は、アミノ系増感剤によって増感されて開裂し、イミダゾールラジカルを発生するが、そのままでは高い重合開始能が発現しない場合がある。しかし、ビイミダゾール化合物とアミノ系増感剤とが共存する系に、チオール化合物を添加することにより、イミダゾールラジカルにチオール化合物から水素ラジカルが供与される。その結果、イミダゾールラジカルが中性のイミダゾールに変換されるとともに、重合開始能の高い硫黄ラジカルを有する成分が発生する。このため、本実施形態の組成物に、ビイミダゾール化合物、アミノ系増感剤およびチオール化合物を添加する場合、低放射線照射量であっても硬度の高い膜を形成することができる。
そのようなチオール化合物の具体例としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾール等の芳香族チオール化合物;
3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸メチル等の脂肪族モノチオール化合物;
ペンタエリストールテトラ(メルカプトアセテート)、ペンタエリストールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)等の2官能以上の脂肪族チオール化合物を挙げることができる。
これらのチオール化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
これらのチオール化合物の中でも、2−メルカプトベンゾチアゾールが特に好ましい。
ビイミダゾール化合物とアミノ系増感剤とを併用する場合、アミノ系増感剤の使用量としては、ビイミダゾール化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜50質量部であり、より好ましくは1質量部〜20質量部である。アミノ系増感剤の使用量を上述の範囲内とすることによって、放射線照射時の反応性を向上させることができる。
また、ビイミダゾール化合物、アミノ系増感剤およびチオール化合物を併用する場合、チオール化合物の使用量としては、ビイミダゾール化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部〜50質量部であり、より好ましくは1質量部〜20質量部である。チオール化合物の使用量を上述の範囲内とすることによって、放射線照射時の反応性をより向上させることができる。
本実施形態の組成物は、[G]感放射線性重合開始剤を含有する場合、O−アシルオキシム化合物およびアセトフェノン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、さらにビイミダゾール化合物を含有してもよい。
[G]感放射線性重合開始剤は、1種を単独で使用してもよいし、または2種以上を混合して使用してもよい。
本実施形態の組成物において、[G]感放射線性重合開始剤の使用量は、[A]重合体100質量部に対して、好ましくは0.05質量部〜30質量部、より好ましくは0.1質量部〜15質量部である。[G]感放射線性重合開始剤の使用量を上述の範囲内とすることによって、本実施形態の組成物は、低露光量でも、高い放射線感度で有機層の硬化を行うことができる。
[その他の任意成分]
本実施形態の組成物は、さらに、本発明の効果を損なわない限りその他の任意成分を含有することができる。
本実施形態の組成物において、その他の任意成分としては、例えば、密着助剤を挙げることができる。
上述の密着助剤としては、官能性シランカップリング剤が好ましく使用される。官能性シランカップリング剤としては、例えば、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基(好ましくはオキシラニル基)、チオール基等の反応性置換基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
官能性シランカップリング剤としては、例えば、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ−クロロプロピルトリアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
これらの官能性シランカップリング剤のうち、γ−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
密着助剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、0.5質量部〜20質量部が好ましく、1質量部〜10質量部がより好ましい。密着助剤の使用量を上記特定範囲とすることで、形成される本実施形態の組成物の塗膜と基板との密着性が改善される。
本実施形態の組成物において、その他の任意成分としては、界面活性剤、保存安定剤、熱性向上剤等を挙げることができる。
本実施形態の組成物において、その他の任意成分は、1種を単独で使用してもよいし、または2種以上を混合して使用してもよい。
実施の形態4.
<有機エレクトロルミネセンス(EL)素子の製造方法>
本発明の第4実施形態の有機EL素子の製造方法は、パターン加工されたマスクを用いて、蒸着により、マトリクス状に配列された複数の有機発光部を基板の主面上に形成して、有機EL素子を製造するものである。
そして、本発明の第4実施形態の有機EL素子の製造方法では、それに含まれる蒸着工程に対応して、その前に、上述した本発明の第1実施形態の検査方法を実施し、蒸着工程の検査を行うようにする。本発明の第4実施形態の有機EL素子の製造方法は、例えば、図1に示した本発明の第1実施形態の検査方法の第1例、図2に示した本発明の第1実施形態の検査方法の第2例、図5に示した本発明の第1実施形態の検査方法の第3例、および、図6に示した本発明の第1実施形態の検査方法の第4例を実施し、蒸着工程を検査することができる。
すなわち、本発明の第4実施形態の有機EL素子の製造方法は、その蒸着工程で使用が予定されるパターン加工されたマスクと、上述した本発明の第2実施形態の検査基板とを用いて、そのマスクによる不良を調べ、蒸着工程の前に、その蒸着工程の検査を行う。
その結果、本実施形態の有機EL素子の製造方法では、有機EL素子を製造するための蒸着工程の前に、マスクによる不良が許容可能か否かを判定することができる。そして、本実施形態の有機EL素子の製造方法は、許容可能と判定されたマスクを用いて、例えば、マトリクス状に配列された複数の薄膜状の有機発光部を蒸着により基板の主面上に堆積させて形成することができる。
したがって、本実施形態の有機EL素子の製造方法は、所望とする形状と位置精度を有する、パターニングされた薄膜状の有機発光部を形成することができる。そして、本実施形態の有機EL素子の製造方法は、例えば、表示素子である有機EL素子、すなわち、有機EL表示素子の生産性を向上させることができる。
以下、本発明の第4実施形態の有機EL素子の製造方法について、図1に示した本発明の第1実施形態の検査方法の第1例と同様の検査方法、および、図2に示した本発明の第1実施形態の検査方法の第2例と同様の検査方法を実施する例を、本発明の第4実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例、および、第2例として説明する。すなわち、図1の検査方法の第1例と同様の検査方法、および、図2の検査方法の第2例と同様の検査方法を実施して、蒸着工程の検査を行い、その後、許容可能と判定されたマスクを用いて、後述する有機発光部の蒸着工程である(v)有機発光部形成工程を行う有機EL素子の製造方法を、それぞれ第1例および第2例として説明する。
本発明の第4実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例は、下記の(i)の工程と、(ii)の工程と、(iii)の工程と、(iv)の工程と、(v)の工程とをこの順で含む。
(i)パターン加工されたマスクと、ケイ素原子を含む基を有する重合体および酸発生剤を含む組成物を用いて形成された有機層を基板の主面上に設けて構成された検査基板とを用い、検査基板の主面上の有機層をそのマスクで覆って、有機層に放射線照射を行う工程(以下、「(i)放射線照射工程」ということがある。)
(ii)検査基板を加熱する工程(以下、「(ii)加熱工程」ということがある。)
(iii)検査基板の有機層に形成された放射線照射部分を観察して、マスクによる不良を調べる工程(以下、「(iii)検査工程」ということがある。)
(iv)マスクによる不良が許容可能か否かを判定する工程(以下、「(iv)判定工程」ということがある。)
(v)(iv)判定工程で許容可能と判定されたマスクを用いて基板の主面を覆い、蒸着によって、有機発光部をその基板の主面上に堆積させて形成する工程(以下、「(v)有機発光部形成工程」ということがある。)
本実施形態の有機EL素子の製造方法において、その(i)放射線照射工程は、図1の本発明の第1実施形態の検査方法の第1例に含まれる(i)放射線照射工程と同様の工程である。また、本実施形態の有機EL素子の製造方法において、その(ii)加熱工程は、図1の本発明の第1実施形態の検査方法の第1例に含まれる(ii)加熱工程と同様の工程である。また、本実施形態の有機EL素子の製造方法において、その(iii)検査工程は、図1の本発明の第1実施形態の検査方法の第1例に含まれる(iii)検査工程と同様の工程である。また、本実施形態の有機EL素子の製造方法において、その(iv)判定工程は、図1の本発明の第1実施形態の検査方法の第1例に含まれる(iv)判定工程と同様の工程である。
したがって、本実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例は、有機発光部の蒸着工程である(v)有機発光部形成工程の前に、本発明の第1実施形態の検査方法と同様の、蒸着工程の検査を行うための検査工程を有することになる。
図9は、本発明の第4実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例を示すフローチャートである。
本発明の第4実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例は、図9に示すように、上述の(i)放射線照射工程(S601)と、(ii)加熱工程(S602)と、(iii)検査工程(S603)と、(iv)判定工程(S604)とを含み、現像工程を含むことなく、簡便に、有機EL素子の製造方法の蒸着工程を検査することができる。尚、図9では、(iv)判定工程(S604)について、その判定内容の概要を示し、「(iv)判定工程」という記載は省略している。
そして、本実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例は、(iv)判定工程(S604)の後に、(v)有機発光部形成工程(S605)を有して構成される。
すなわち、図9に示す本発明の第4実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例では、(iv)判定工程(S604)において、(iii)検査工程で調べられたマスクによる不良が許容可能か否かの判定がなされ、許容可能と判定された場合に、(v)有機発光部形成工程(S605)に進む。そして、(v)有機発光部形成工程(S605)では、(iv)判定工程(S604)で許容可能と判定されたマスクを用いて基板の主面を覆い、蒸着によって、有機発光部をその基板の主面上に堆積させて形成する。
これによって、本実施形態の有機EL素子の製造方法では、有機EL素子が製造される。
尚、本発明の第4実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例では、上述の(iv)判定工程(S604)において、マスクによる不良が許容不可能と判定された場合、(v)有機発光部形成工程(S605)に進むことなく、有機EL素子の製造を一端終了するようにする。
その場合、本発明の第4実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例では、図9には示されないが、許容不可能と判定されたマスクの洗浄や交換等のメンテナンス作業が行われる。次いで、そのメンテナンス作業を終了した後、再び、上述の(i)放射線照射工程(S601)と、(ii)加熱工程(S602)と、(iii)検査工程(S603)と、(iv)判定工程(S604)とが実施される。そして、その(iv)判定工程(S604)において、マスクによる不良が許容可能と判定された場合に、(v)有機発光部形成工程(S605)に進み、許容可能と判定されたマスクを用いて蒸着が行われるようにし、有機EL素子の製造が行われる。
以下、本実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例の各工程について説明するが、上述のように、その(i)放射線照射工程(S601)は、図1の本発明の第1実施形態の検査方法の第1例に含まれる(i)放射線照射工程(S101)と、また、その(ii)加熱工程(S602)は、図1の本発明の第1実施形態の検査方法の第1例に含まれる(ii)加熱工程(S102)と、また、その(iii)検査工程(S603)は、図1の本発明の第1実施形態の検査方法の第1例に含まれる(iii)検査工程(S103)と、また、その(iv)判定工程(S604)は、図1の本発明の第1実施形態の検査方法の第1例に含まれる(iv)判定工程(S104)とそれぞれ同様の工程である。
したがって、本実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例の説明では、上述したのと重複する説明は省略し、主に、(v)有機発光部形成工程(S605)について説明する。
図10は、本発明の第4実施形態である有機EL素子の製造方法の(v)有機発光部形成工程を模式的に説明する断面図である。
本発明の第4実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例において、(v)有機発光部形成工程(S605)は、(iv)判定工程(S604)で許容可能と判定されたマスク3を用いて、蒸着によって、基板101の主面103上に有機発光部102を形成する工程である。
図10に示すように、(v)有機発光部形成工程(S605)では、パターン加工されて、開口部4の形成されたマスク3を用いる。このマスク3は、(iv)判定工程(S604)で許容可能と判定されたマスクであり、図3に示された、本発明の第1実施形態の検査方法の第1例の(i)放射線照射工程(S101)で使用されたマスク3と同様のものである。したがって、図3のマスク3と共通する構成要素については、同じ符号が付されている。
また、基板101としては、ガラス基板、石英基板、シリコン基板または樹脂基板上に駆動用回路や平坦化膜等が形成され、さらに、電極や電荷輸送層の形成されたものが例示される。すなわち、基板101には、TFTや駆動用回路等の構成も含まれる。
そして、(v)有機発光部形成工程(S605)では、マスク3を用いて基板101の主面103を覆い、蒸着源105を用いた蒸着を行う。そして、マトリクス状に配列された複数の有機発光部102を基板101の主面103上の所定の位置に堆積させて、有機発光部102を形成する。
より具体的には、図10に示すように、マスク3を、必要な場合にマスクホルダー(図示されない)に固定し、所望の位置に固定できるように設置する。マスク3は、例えば、有機発光部102の蒸着を行うための蒸着装置(図示されない)の真空チャンバ(図示されない)内に設置される。
次に、有機発光部102の蒸着の対象となる基板101を、必要な場合に基板ホルダー(図示されない)に固定し、マスク3と離間するようにして配置する。図10に示す例では、蒸着対象となる基板101の蒸着面となる主面103が、下方側に配置されたマスク3と対向するように、図10の下方側に向けて配置されている。このとき、マスク3が上述の蒸着装置の真空チャンバ内に設置されている場合、基板101もマスク3とともにその真空チャンバ内に配置される。
基板101とマスク3との間の距離は、それらを互いに離間するように配置する場合、40μm以上1mm以下、すなわち40μm〜1mmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは100μm〜200μmの範囲である。尚、マスク3を、基板101の蒸着面となる主面103に密着させるようにして、基板101とマスク3とを配置することも可能である。すなわち、基板101とマスク3とがコンタクトする状態とすることも可能である。
マスク3と基板101との間のアライメントであって、マスク3の主面103における横方向と縦方向の位置合わせは、例えば、マスク3に設けられた位置合わせ用のマーカー(図示されない)と、基板101に設けられた位置合わせ用のマーカー(図示されない)とを用いて行うことができる。このとき、マスク3に設けられた位置合わせ用のマーカーは、例えば、マスク3の4隅の所定位置に設けられた開口パターンとすることができる。一方、基板101に設けられた位置合わせ用のマーカーは、マスク3の4隅に設けられたマーカーと同じ形状を有し、基板101の蒸着面となる主面103上のそれらと対応する位置に設けられたものとすることが好ましい。
そして、マスク3と基板101との間のアライメントは、モニターと連動するように構成された顕微鏡を用い、モニター上で監視しながらマーカー合わせをして行うことができる。このようなアライメントを行う場合、基板101の移動は、マイクロメーターによる粗動機構(図示されない)を用いて行うことができる。また、マスク3の微動には、パルスモーターによる微動制御機構(図示されない)を用いることができる。
次に、(v)有機発光部形成工程(S605)では、マスク3と基板101との間のアライメントの後、マスク3が基板101の主面103を覆った状態で、蒸着源105を用いた蒸着を行う。
蒸着源105は、内部に蒸着材料となる有機発光材料を収容する、例えば、モリブデン製の容器であり、図10に示すように、マスク3との間で、一定距離離間して対向配置されている。図10に示す例では、蒸着源105は、マスク3を挟んで、基板101の蒸着面となる主面103と対向するように、マスク3の下方側に配置されている。
尚、蒸着源105は、容器内部に有機発光材料を直接収容する容器であってもよく、ロードロック式の配管を有する容器であってもよい。
そして、蒸着源105は、基板101の蒸着面となる主面103に向けて蒸着粒子を射出する機構を有している。例えば、図10に示す例では、蒸着源105は、上方にある基板101の主面103に向けて蒸着粒子を射出する機構を有している。
(v)有機発光部形成工程(S605)では、例えば、1.0×10−4Pa程度の減圧下、蒸着源105の有機発光材料を、0.2nm/s〜0.5nm/sの堆積速度で蒸着し、マトリクス状に配列された複数の有機発光部102を基板101の蒸着面となる主面103上に堆積して形成する。このとき、有機発光材料は、基板101の主面103の中心と蒸着源105の蒸着の中心との間の角度が0度となるように、蒸着されることが好ましい。その場合、図10に示す例では、有機発光材料は、基板101の主面103の真下から、基板101の蒸着面となる主面103上に蒸着されることになる。
(v)有機発光部形成工程(S605)において、有機発光部102を構成する有機発光材料としては、例えば、アントラセン、ナフタレン、インデン、フェナントレン、ピレン、ナフタセン、トリフェニレン、アントラセン、ペリレン、ピセン、フルオランテン、アセフェナントリレン、ペンタフェン、ペンタセン、コロネン、ブタジエン、クマリン、アクリジン、スチルベン、およびこれらの誘導体;トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体;ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体;トリ(ジベンゾイルメチル)フェナントロリンユーロピウム錯体;ジトルイルビニルビフェニル;等が挙げられる。
また、形成される有機発光部102の膜厚としては、例えば、10nm〜100nmが好ましい。
以上のようにして、本実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例において、(v)有機発光部形成工程(S605)では、パターン加工されたマスク3を用いて、蒸着により、マトリクス状に配列された複数の有機発光部102を基板101の主面103上に堆積して形成してすることができる。
そして、、本実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例は、図9に示したように、(i)放射線照射工程(S601)と、(ii)加熱工程(S602)、(iii)検査工程(S603)と、(iv)判定工程(S604)と、(v)有機発光部形成工程(S605)とを含み、有機EL素子を製造することができる。
そして、本実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例は、蒸着工程である(v)有機発光部形成工程(S605)に対応して、その前に、マスクによる不良を調べて蒸着工程である(v)有機発光部形成工程(S605)を検査することができる。したがって、本実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例は、所望とする形状と位置精度を有する、パターニングされた薄膜状の有機発光部を形成することができる。そして、本実施形態の有機EL素子の製造方法は、例えば、表示素子である有機EL素子、すなわち、有機EL表示素子の生産性を向上させることができる。
尚、本実施形態の有機EL素子の製造方法は、第2例として、上述の(ii)加熱工程(S602)の後に、放射線照射部分を選択的に着色するための、(iii)着色工程を設けることができる。
図11は、本発明の第4実施形態である有機EL素子の製造方法の第2例を示すフローチャートである。
本発明の第4実施形態の有機EL素子の製造方法の第2例では、図11に示したように、(i)放射線照射工程(S701)と、(ii)加熱工程(S702)、(iii)着色工程(S703)と、(iv)検査工程(S704)と、(v)判定工程(S705)と、(vi)有機発光部形成工程(S706)とを含み、有機EL素子を製造することができる。尚、図11では、(v)判定工程(S705)について、その判定内容の概要を示し、「(v)判定工程」という記載は省略している。
図11に示す本実施形態の有機EL素子の製造方法の第2例において、(i)放射線照射工程(S701)は、上述した図9の本実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例の(i)放射線照射工程(S601)と同様の工程となる。また、(ii)加熱工程(S702)は、上述した図9の本実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例の(ii)加熱工程(S602)と同様の工程となる。また、(iv)検査工程(S704)は、上述した図9の本実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例の(iii)検査工程(S603)と同様の工程となる。また、(v)判定工程(S705)は、上述した図9の本実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例の(iv)判定工程(S604)と同様の工程となる。また、(vi)有機発光部形成工程(S706)は、上述した図9の本実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例の(v)有機発光部形成工程(S605)と同様の工程となる。
そして、図11に示す本実施形態の有機EL素子の製造方法の第2例において、(iii)着色工程(S703)は、上述した図2の本発明の第1実施形態の検査方法の第2例の(iii)着色工程(S203)と同様の工程となる。
したがって、本実施形態の有機EL素子の製造方法の第2例は、蒸着工程である(vi)有機発光部形成工程(S706)に対応して、その前に、マスクによる不良を調べて、その(vi)有機発光部形成工程(S706)を検査することができる。特に、その(iii)着色工程(S703)は、マスクの不良を調べるために用いられる検査基板の放射線照射部分を選択的に着色する工程であり、その後の(iv)検査工程(S704)をより容易なものとし、(v)判定工程(S705)をより確実に実施できるようにする。
したがって、本実施形態の有機EL素子の製造方法の第2例は、所望とする形状と位置精度を有する、パターニングされた薄膜状の有機発光部を形成することができる。そして、本実施形態の有機EL素子の製造方法の第2例は、例えば、表示素子である有機EL素子、すなわち、有機EL表示素子の生産性をより向上させることができる。
尚、本実施形態の有機EL素子の製造方法は、さらに別の第3例として、図9に示した本実施形態の有機EL素子の製造方法の第1例について、任意工程である(ii)加熱工程(S602)を含まないようにし、それ以外の工程は図9の第1例と同様にして構成することも可能である。
また、本実施形態の有機EL素子の製造方法は、またさらに別の第4例として、図11に示した本実施形態の有機EL素子の製造方法の第2例について、任意工程である(ii)加熱工程(S702)を含まないようにし、それ以外の工程は図11の第2例と同様にして構成することも可能である。
実施の形態5.
<検査装置>
本発明の第5実施形態の検査装置は、本発明の第1実施形態の検査方法を実施する検査装置である。より具体的には、本実施形態の検査装置は、上述した本発明の第1実施形態の検査方法の第1例〜第5例を実施できるよう構成される。
以下、本実施形態の検査装置の一例であって、上述した本発明の第1実施形態の検査方法を実施できるよう構成された検査装置について説明する。したがって、図3および図8に示されたマスク3や検査基板10等と共通する構成要素については、同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
図12は、本発明の第5実施形態の検査装置の一例を示す平面図である。
本実施形態の一例である検査装置200は、図12に示すように、図8に示した本発明の第2実施形態の検査基板(図示されない)の有機層(図示されない)を、マスク3で覆って、検査基板の有機層に放射線照射を行う放射線照射部201と、検査基板の有機層に形成された放射線照射部分を観察して、マスク3による不良を調べる検査部202とを有して構成される。
放射線照射部201は、波長が190nm〜450nmの範囲にある放射線、特に365nmの紫外線を含む放射線を放射できるランプ(図示されない)と、検査基板を載置するステージ(図示されない)と、マスク3を保持するためのマスクホルダー(図示されない)を有して構成される。
検査部202は、例えば、検査用の光学顕微鏡(図示されない)を含んで構成される。
本実施形態の一例である検査装置200は、放射線照射部201および検査部202の他に、放射線照射部201で放射線の照射が行われた検査基板を加熱する加熱部(図示されない)や、放射線照射部201で放射線の照射が行われた検査基板の放射線照射部分を着色する着色部(図示されない)を有することも可能である。
以上の構成を有することにより、本実施形態の一例である検査装置100は、図1、図2、図5および図6に示された本発明の第1実施形態の検査方法の第1例〜第4例に用いることができ、本発明の第2実施形態の検査基板を用い、マスク3による不良を調べて、例えば、有機EL素子の製造方法の蒸着工程を検査することができる。また、検査装置100は、図7に示された本発明の第1実施形態の検査方法の第5例に用いることができ、本発明の第2実施形態の検査基板を用い、マスクを用いて行う多様な電子デバイスの製造方法における、そのマスクによる不良を検査することができる。
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、本発明は、この実施例に限定的して解釈されるものではない。
[GPC分析]
本実施例において、重合体の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー(株)製、商品名:HLC−8220)法を用いて、テトラヒドロフラン(THF)溶媒の条件下、ポリスチレン換算で測定した。
・測定方法:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法
・標準物質:ポリスチレン換算
・装置 :東ソー(株)製、商品名:HLC−8220
・カラム :東ソー(株)製ガードカラムHXL−H、TSK gel G7000HXL、TSK gel GMHXL 2本、TSK gel G2000HXLを順次連結したもの
・溶媒 :テトラヒドロフラン
・サンプル濃度:0.7質量%
・注入量 :70μL
・流速 :1mL/min
H−NMRの測定]
H−NMRは、核磁気共鳴装置(Bruker製 AVANCEIII AV400N)で25℃、CDCLで測定した。
本実施例では、上述した[A]重合体の例として、以下の各重合体を合成した。
<[A]重合体の合成>
[合成例1]
冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)8質量部、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン2質量部、および、ジエチレングリコールジメチルエーテル200質量部を仕込んだ。引き続きp-ヒドロキシフェニルメタクリレート56質量部、N-シクロヘキシルマレイミド28質量部、およびスチレン16質量部を仕込み、窒素置換した後、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を80℃に上昇させ、この温度を4時間保持して重合することにより、共重合体である重合体(A−1)を含有する溶液を得た。得られた溶液を大過剰のヘキサンに滴下し、沈殿物を乾燥させることで白色固体状の重合体(M−1)を得た(Mw=20500、Mw/Mn=2.0)。
次いで、重合体(M−1)10質量部をテトラヒドロフラン26質量部に溶かし、1-ビニルオキシブタン3.5質量部を加え、十分に攪拌した後にトリフルオロ酢酸0.43質量部を加え、窒素雰囲気下、60℃で8時間反応させた。続いて反応溶液を室温まで冷却し、ピリジン0.6質量部を加え反応をクエンチした。得られた反応溶液を過剰量のメタノールに滴下することにより再沈殿精製を行い、続いて沈殿物を再度20質量部のテトラヒドロフランに溶解させた後、ヘキサンに滴下することにより再沈殿精製を行い、沈殿物を乾燥させることで白色固形状の共重合体として[A]重合体(P−1) 10.9質量部を得た。得られた[A]重合体(P−1)について1H−NMRを用いて分析を行い、アセタール化が進行していることを確認した(化学シフト:5.40ppm、アセタール基C−H)。
[合成例2]
合成例1で得られた重合体(M−1)10質量部をテトラヒドロフラン45質量部に溶かし、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−ビニルオキシオクタン13.5質量部を加え、十分に攪拌した後にトリフルオロ酢酸0.079質量部を加え、窒素雰囲気下、60℃で8時間反応させた。続いて反応溶液を室温まで冷却し、ピリジン1.1質量部を加え反応をクエンチした。得られた反応溶液を過剰量のメタノールに滴下することにより再沈殿精製を行い、続いて沈殿物を再度30質量部のテトラヒドロフランに溶解させた後、ヘキサンに滴下することにより再沈殿精製を行い、沈殿物を乾燥させることで白色固形状の共重合体として[A]重合体(P−2)17.5質量部を得た。得られた[A]重合体(P−2)について1H−NMRを用いて分析を行い、アセタール化が進行していることを確認した(化学シフト:5.50ppm、アセタール基C−H)。
[合成例3]
冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル25質量部、塩化トリメチルシリル30質量部、イミダゾール1.0質量部を仕込み、窒素雰囲気下、40℃で7時間保持して反応させた。得られた反応液を水洗、分液し、ロータリーエバポレーターで溶剤を除去し、減圧蒸留により未反応成分を除去することにより化合物(M−3)を得た。化合物(M−3)を合成するための化学反応式を以下に示す。
冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)8質量部、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン2質量部、および、ジエチレングリコールジメチルエーテル200質量部を仕込んだ。引き続き上記で得られた化合物(M−3)70質量部、メタクリル酸ベンジル30質量部を仕込み、窒素置換した後、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を80℃に上昇させ、この温度を4時間保持して重合することにより、共重合体である[A]重合体(P−3)を含有する溶液を得た(Mw=18000、Mw/Mn=2.3)。
<組成物の調製>
実施例および比較例で組成物の調製に用いた各成分を以下に示す。
[[C]酸発生剤]
C−1:N−ヒドロキシナフタルイミド−トリフルオロメタンスルホン酸エステル
C−2:(2−(オクチルスルホニルオキシイミノ)−2−(4−メトキシフェニル)アセトニトリル(BASF社の「CGI−725」)
[[D]増感剤]
D−1:2−イソプロピルチオキサントン
[[E]クエンチャー]
E−1:2−フェニルベンゾイミダゾール
E−2:4−(ジメチルアミノ)ピリジン
<実施例>
〔組成物の調整〕
表1に示す種類、含有量の各成分を混合し、界面活性剤としてポリフローNo95(共栄社化学(株)製)0.1質量部を加え、固形分濃度が20質量%となるように、それぞれ[B]溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えた後、孔径0.5μmのミリポアフィルタでろ過することにより、各組成物(P−1組成物、P−2組成物、P−3組成物)を調製した。尚、表1中の「−」は該当する成分を使用しなかったことを表す。
〔検査基板の製造と評価〕
上述した実施例で調製した各組成物(P−1組成物、P−2組成物、P−3組成物)を用いて検査基板の製造を行い、得られた各検査基板を用いて以下の評価を実施した。
[パターンの評価]
(目視観察)
無アルカリガラス基板上に、実施例で調製した組成物(P−1組成物、P−2組成物、P−3組成物)をそれぞれスピンナーで塗布した後、90℃のホットプレート上で2分間プレベークすることにより0.5μm厚の塗膜として有機層を形成し、検査基板を製造した。以下、P−1組成物を用いて製造された検査基板をP−1検査基板と称し、P−2組成物を用いて製造された検査基板をP−2検査基板と称し、P−3組成物を用いて製造された検査基板をP−3検査基板と称することにする。
次いで、製造された検査基板(P−1検査基板、P−2検査基板、P−3検査基板)の各有機層に所定のマスクを介し、高圧水銀ランプを用い(露光機:大日本科研社製MA−1400)、露光量を250mJ/cmとして放射線照射を行った。
その後、検査基板を、ホットプレートを用い90℃で5分ベークすることにより、有機層の放射線照射部分の膜厚が小さくなって凹み、その結果、凹部(親液性を有する放射線照射部)を形成するとともに、放射線未照射部分が凸部(撥液性を有する放射線未照射部)となって凹パターンを形成し、パターニングされた有機層(以下、「パターニング有機層」ということがある。)を形成した。
図13は、本実施例のP−1組成物を用いて製造された検査基板の、放射線照射後のパターニングされた状態を示す写真である。
図14は、本実施例のP−2組成物を用いて製造された検査基板の、放射線照射後のパターニングされた状態を示す写真である。
図13および図14では、P−1検査基板およびP−2検査基板上に放射線照射部である凹部によってJSRの文字パターンが形成されて、目視可能となっている。
図13および図14に示すように、P−1検査基板およびP−2検査基板はいずれも、マスクを用いた放射線照射により、有機層の放射線照射部の膜厚が小さくなって凹み、いずれも現像を行うことなしに、観察可能なパターンの形成、すなわち、凹パターンの形成が可能であることがわかる。
尚、P−1検査基板およびP−2検査基板を比較すると、P−2検査基板の方がJSRの文字パターンがはっきりと見える。
(放射線照射条件の検討)
上述した目視観察のための、P−2組成物を用いて製造された検査基板(P−2検査基板)と同様の検査基板(P−2検査基板)を製造し、マスクと検査基板の有機層のマスク側の表面との間の距離(以下、「ギャップ」という。)を変えて、上述した目視観察のための放射線照射と同様の放射線照射を行った。使用したマスクには、25μm□の矩形の開口パターンが形成されている。そして、検査基板に形成されたパターニング有機層を観察して、放射線照射条件の検討、特に好ましいギャップの値の検討を行った。
図15は、本実施例の検査基板において、ギャップが0μmの場合の放射線照射後のパターニングされた状態を示す写真である。
図16は、本実施例の検査基板において、ギャップが200μmの場合の放射線照射後のパターニングされた状態を示す写真である。
図15に示すように、ギャップが0μmの場合、すなわち、マスクがP−2検査基板の有機層のマスク側の表面を覆って接触するようにして放射線照射を行った場合、マスクの矩形の開口パターンが、再現性よく、P−2検査基板の有機層に矩形の凹パターンとして形成されている。
また、図16に示すように、ギャップが200μmの場合、P−2検査基板の有機層に目視観察可能な凹パターンが形成されるものの、その形状は若干の丸みを帯びている。マスクの矩形の開口パターンの再現性は、ギャップが200μmの場合より、ギャップが0μmの場合の方が好ましいことがわかる。
以上から、マスクと検査基板を用いて、検査基板の有機層に放射線照射を行う場合、ギャップの制御が重要となり、また、ギャップは0μm等、小さく設定されることが好ましいことがわかった。
[膜厚差の評価]
上述した目視観察のためのP−1検査基板、P−2検査基板およびP−3検査基板と同様の検査基板(P−1検査基板、P−2検査基板、P−3検査基板)を製造した。
次いで製造された検査基板(P−1検査基板、P−2検査基板、P−3検査基板)の各有機層に、石英マスクを介して、コンタクトの状態で、高圧水銀ランプを用い(露光機:大日本科研社製MA−1400)、露光量を250mJ/cmとして放射線照射を行った。その後、検査基板を、ホットプレートを用い110℃で5分ベークすることにより、有機層の放射線照射部分の膜厚が小さくなって凹み、その結果、凹部(親液性を有する放射線照射部)を形成するとともに、放射線未照射部分が凸部(撥液性を有する放射線未照射部)となって凹パターンを形成し、パターニングされた有機層(以下、「パターニング有機層」ということがある。)を形成した。
次に、放射線照射部(凹部)と放射線未照射部(凸部)の膜厚を接触式膜厚計(キーエンス製:アルファステップIQ)で測定した。そして、放射線未照射部(凸部)の膜厚(放射線未照射部膜厚)と、放射線照射部(凹部)の膜厚(放射線照射部膜厚)との差を算出し、下記式からの膜厚減少率(%)を算出することによって、膜厚差を評価し、凹凸形成性能、すなわち、凹パターンの形成性能の評価を行った。
測定の結果、P−1検査基板の放射線照射部の膜厚が、初期膜厚と同様の放射線未照射部の膜厚に対して、21%低いことを確認した。
また、P−2検査基板の放射線照射部の膜厚が、初期膜厚と同様の放射線未照射部の膜厚に対して、22%低いことを確認した。また、P−3検査基板の放射線照射部の膜厚が、初期膜厚と同様の放射線未照射部の膜厚に対して、18%低いことを確認した。
[屈折率(光屈折性)の評価]
上述した目視観察のためのP−1検査基板、P−2検査基板およびP−3検査基板と同様の検査基板(P−1検査基板、P−2検査基板、P−3検査基板)を製造し、上述した目視観察のための放射線照射と同様の放射線照射を行った。そして、各検査基板(P−1検査基板、P−2検査基板、P−3検査基板)において、放射線照射部と未放射線照射部の測定波長633nmにおける屈折率を評価した。
屈折率はMetricon社の「プリズムカプラ モデル2010」にて測定した。屈折率は、633nmの波長にて測定した。
測定の結果、P−1検査基板の放射線照射部と未放射線照射部の屈折率差が、0.04以上あることを確認した。また、P−2検査基板の放射線照射部と未放射線照射部の屈折率差が、0.04以上あることを確認した。また、P−3検査基板の放射線照射部と未放射線照射部の屈折率差が、0.04以上あることを確認した。
以上の評価結果から、実施例で調製された各組成物(P−1組成物、P−2組成物、P−3組成物)を用いて製造された検査基板(P−1検査基板、P−2検査基板、P−3検査基板)では、マスクを用いた放射線照射によってパターニング有機層が形成されて良好な凹凸形成性能を有する。したがって、本実施例の検査基板(P−1検査基板、P−2検査基板、P−3検査基板)は、マスクによる不良を調べて、例えば、有機EL素子の製造方法の蒸着工程を検査するのに好適であることがわかった。
本発明の検査方法は、有機EL素子の多様な蒸着工程に適用することができる。例えば、蒸着による有機発光部形成工程の他、陽極および陰極等の電極や、ホール輸送層および電子輸送層等の電荷輸送層の形成のための蒸着工程に適用することができる。
さらに、有機EL素子以外の電子デバイスの製造における、パターン加工されたマスクを用いる蒸着工程にも適用が可能である。
1,101 基板
2,2−1,2−2 有機層
2a−1,2a−2 放射線照射部
2b−1,2b−2 放射線未照射部
3 マスク
4 開口部
10,10−1,10−2 検査基板
102 有機発光部
103 主面
105 蒸着源
200 検査装置
201 放射線照射部
202 検査部

Claims (13)

  1. 第1の基板の主面をマスクで覆って前記第1の基板上に複数のパターンを形成する工程を含む電子デバイスの製造方法の前記マスクによる不良を検査する検査方法であって、
    前記マスクと、感放射線性樹脂組成物を用いて形成された有機層を第2の基板の主面上に設けて構成された検査基板とを用い、前記有機層を前記マスクで覆って、前記有機層に放射線照射を行い、前記有機層に放射線照射部分と放射線の照射されない放射線未照射部分とを形成する放射線照射工程と、
    前記有機層に形成された放射線照射部分を観察して、前記マスクによる不良を調べる検査工程と、
    前記マスクによる不良が許容可能か否かを判定する判定工程と
    を含むことを特徴とする検査方法。
  2. 前記放射線照射部分の膜厚が、初期膜厚に対して、10%以上低いことを特徴とする請求項1に記載の検査方法。
  3. 前記放射線照射工程の後であって前記検査工程の前に、前記検査基板を加熱する加熱工程を有することを特徴とする請求項1または2に記載の検査方法。
  4. 有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法の蒸着工程を検査する検査方法であって、
    前記蒸着工程が、パターン加工されたマスクを用いて第1の基板の主面を覆い、蒸着によって、前記第1の基板の主面上にマトリクス状に配列された複数の有機発光部を形成する工程を含んでなるものであり、
    前記マスクと、酸解離性基を含む基を有する重合体および酸発生剤を含む組成物を用いて形成された有機層を第2の基板の主面上に設けて構成された検査基板とを用い、前記有機層を前記マスクで覆って、前記有機層に放射線照射を行う放射線照射工程と、
    前記有機層に形成された放射線照射部分を観察して、前記マスクによる不良を調べる検査工程と、
    前記マスクによる不良が許容可能か否かを判定する判定工程と
    を含むことを特徴とする検査方法。
  5. 前記放射線照射工程の後であって前記検査工程の前に、前記検査基板を加熱する加熱工程を有することを特徴とする請求項4に記載の検査方法。
  6. 前記酸解離性基がアセタール基、フッ素原子を含む基およびケイ素原子を含む基よりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項4または5に記載の検査方法。
  7. 前記酸解離性基を含む基が、下記式(1a−1)、下記式(1a−2)、下記式(1b−1)、下記式(1b−2)、下記式(1b−3)および下記式(1b−4)で示される基よりなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の検査方法。
    (式(1a−1)および式(1a−2)中、R1aおよびR2aはそれぞれ独立して、水素原子またはメチル基を示し、Rfはそれぞれ独立して、炭素数1〜12の炭化水素基、フェニル基、および、フッ素原子で置換された有機基のうちのいずれかを示す。*は、結合部位を示す。)
    (式(1b−1)および(1b−2)中、R1bおよびR2bはそれぞれ独立して、水素原子およびメチル基のうちのいずれかを示し、Rsはそれぞれ独立して、ケイ素原子を有する1価の有機基を示す。
    式(1b−3)および(1b−4)中、R3bはそれぞれ独立して、単結合および炭素数1〜12の2価の有機基のうちのいずれかを示し、R4b、R5bおよびR6bはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、脂環式炭化水素基、アリール基、これらの基が有する水素原子の一部または全部が置換基で置換された基、および、ケイ素原子を有する1価の有機基のうちのいずれかを示す。
    式(1b−1)、式(1b−2)、式(1b−3)および(1b−4)中、*は結合部位を示す。)
  8. 前記放射線照射工程の後であって、前記検査工程の前に、前記放射線照射工程で前記有機層に形成された放射線照射部分を着色する着色工程を有することを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の検査方法。
  9. 請求項4〜8のいずれか1項に記載の検査方法に用いられ、前記検査基板の前記有機層の形成に用いられる組成物であって、
    前記酸解離性基を含む基を有する重合体および前記酸発生剤を含むことを特徴とする組成物。
  10. 請求項4〜8のいずれか1項に記載の検査方法に用いられ、前記第2の基板および前記第2の基板の主面上に形成された前記有機層を有する検査基板であって、
    前記有機層が、前記酸解離性基を含む基を有する重合体および前記酸発生剤を含む組成物を用いて形成されたものであることを特徴とする検査基板。
  11. パターン加工されたマスクを用いて、蒸着により、マトリクス状に配列された複数の有機発光部を第1の基板の主面上に形成してなる有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法であって、
    前記マスクと、酸解離性基を含む基を有する重合体および酸発生剤を含む組成物を用いて形成された有機層を第2の基板の主面上に設けて構成された検査基板とを用い、前記有機層を前記マスクで覆って、前記有機層に放射線照射を行う放射線照射工程と、
    前記有機層に形成された放射線照射部分を観察して、前記マスクによる不良を調べる検査工程と、
    前記マスクによる不良が許容可能か否かを判定する判定工程と、
    前記判定工程で許容可能と判定された前記マスクを用いて前記第1の基板の主面を覆い、蒸着によって、前記有機発光部を前記第1の基板の主面上に形成する有機発光部形成工程とを有することを特徴とする有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法。
  12. 前記放射線照射工程の後であって前記検査工程の前に、前記検査基板を加熱する加熱工程を有することを特徴とする請求項11に記載の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法。
  13. 請求項4〜8のいずれか1項に記載の検査方法に用いられる検査装置であって、
    前記検査基板の前記有機層を前記マスクで覆って、前記有機層に放射線照射を行う放射線照射部と、
    前記有機層に形成された放射線照射部分を観察して、前記マスクによる不良を調べる検査部とを有することを特徴とする検査装置。
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WO2022191056A1 (ja) * 2021-03-09 2022-09-15 日本化薬株式会社 硬化性高分子化合物を含む樹脂組成物
WO2023073491A1 (ja) * 2021-10-29 2023-05-04 株式会社半導体エネルギー研究所 有機化合物の酸素付加体を低減する方法、電子デバイスの作製方法および表示装置の作製方法

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