JP2017218622A - 摺動部材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 耐食性が高く、且つ、摺動層の多孔質部と樹脂組成物との接合が強い摺動部材の製造方法を提供する。【解決手段】 摺動層3を構成する多孔質部4は、FeまたはFe合金粉と過共晶Ni−P合金粉とNi粉とからなる混合粉をFeまたはFe合金裏金層2上に散布した後、焼結のための加熱および冷却を施すことで形成する。多孔質部4は、粒状のFeまたはFe合金相6とNi−P合金相7とからなり、Cu成分が含まれないので、有機酸や硫黄成分に対する耐食性が高い。また、焼結工程の加熱の過程では、過共晶Ni−P合金粉とNi粉との間に相互拡散現象が起こり、Ni−P合金液相の発生や流動が抑制される。このため、多孔質部4は、表面および内部に多くの空孔を有し、樹脂組成物5と多孔質部4との接合が強くなる。【選択図】 図1

Description

本発明は、耐食性が高く、且つ、摺動層の樹脂組成物と多孔質部との接合が強い摺動部材の製造方法に関する。
従来、燃料噴射ポンプ用の摺動部材には、5〜25%程度の気孔率を有する焼結銅系材料が用いられている。この摺動部材は、摺動部材の内部に存在する気孔を介して、液体燃料を円筒形状の摺動部材の外周面側から内周面(摺動面)側に供給することにより、内周面(摺動面)に液体燃料の流体潤滑膜を形成し、高速回転する軸を支承するようになっている。このような焼結銅系材料は、燃料中に含まれる有機酸、硫黄成分による銅合金の腐食が起こり、この銅系腐食生成物が燃料に混入する問題がある。このため、耐食性を高めるためにNi、Al、Znを含有させた焼結銅系摺動材料が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
また、従来、鋼裏金の表面に銅めっき層を介して銅合金からなる多孔質焼結層を設け、更に、多孔質焼結層の空孔および表面に樹脂組成物を含浸被覆した複層の摺動材料からなる摺動部材が用いられている(例えば、特許文献4,5参照)。そして、このような複層摺動材料を燃料噴射ポンプ用の摺動部材に適用したものが提案されている(例えば、特許文献6参照)。
また、腐食性環境下での耐食性の向上を目的とし、従来の鋼裏金および銅合金からなる多孔質焼結層に代えて、ステンレス鋼からなる裏金層の表面にステンレス鋼の粉を接合用ろう材を介して積み重ねて下地層を形成したものが提案されている(例えば、特許文献7参照)。
特開2002−180162号公報 特開2013−217493号公報 特開2013−237898号公報 特開2002−61653号公報 特開2001−355634号公報 特開2013−83304号公報 特開2015−200021号公報
ところで、特許文献1〜3の焼結銅系摺動材料は、Ni、Al、Znを含有させて耐食性を高めてはいるが、燃料中に含まれる有機酸、硫黄成分による銅合金の腐食を完全には防止できない。また、特許文献1〜3の焼結銅系摺動材料は、摺動部材の内部全体に気孔を形成するために強度が低く、特に特許文献6に示すようなコモンレール方式の燃料噴射ポンプ等に用いられる摺動部材としては負荷能力が不十分である。
また、特許文献4〜6の複層摺動材料では、鋼裏金の構成を有するので強度は高い。しかしながら、銅合金からなる多孔質焼結層は、燃料あるいは潤滑油中に含まれる有機酸や硫黄成分で銅合金の腐食が起こる。
また、特許文献7の製造方法による摺動部材は、耐食性は向上するが、下地層と該下地層の表面に被覆した樹脂組成物との接合が弱くなることが判明した。まず、特許文献7の製造方法では、Niろう材等の接合用ろう材粉とステンレス鋼粉との混合粉をステンレス鋼からなる裏金層の表面に散布し、接合用ろう材が溶融する温度に加熱した後に冷却して下地層を形成する。なお、このNiろう材を含めて従来公知である接合用ろう材は、共晶点に近い組成の共晶合金である。この理由は、共晶点に近い組成の共晶合金は、液相温度が低く、且つ、固相温度と液相温度との差が少ないので、接合のための加熱温度を低くでき、また、急速に液相化することで接合用ろう材が流動しやすく、被接合物の表面に容易に広がるからである。すなわち、特許文献7の製造方法では、接合用ろう材を用いるため、焼結の加熱の過程で接合用ろう材が固相温度に達すると同時に急速に液相化し、重力の影響で混合粉と裏金層との界面側へ流動し、混合粉と裏金層との界面側付近では、ステンレス鋼粉どうしの間の隙間が、液相化した接合用ろう材により充填されやすい。
しかしながら、上記の混合粉中で液相化した接合用ろう材の裏金層との界面側への流動により、下地層の表面側ではステンレス鋼粉どうしを接合するための接合用ろう材が不足して、ステンレス鋼粉どうしの接合がなされないことがある。これを防ぐため、混合粉中の接合用ろう材の割合を多く(混合粉中の接合用ろう材が47質量%以上)すると、下地層の表面には微小な凹凸部が形成されるだけで、下地層の内部の空孔が少なく、その空孔のサイズも小さくなる。さらに、下地層の内部の空孔は、下地層の表面における微小な凹部と連通していない閉空孔(独立空孔)であるものが多い。このような下地層の表面に樹脂組成物を被覆した場合、樹脂組成物は、単に下地層の表面における凹凸部と接して保持されるだけであり、下地層の表面に被覆される樹脂組成物が、下地層の内部に三次元ネットワーク的に形成された空孔部にも含浸された場合と比べて、下地層と樹脂組成物との接合が弱くなる。
本発明は、上記した事情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、耐食性が高く、且つ、摺動層の多孔質部と樹脂組成物との接合が強い摺動部材の製造方法を提供することにある。
上記した目的を達成するために、請求項1に係る発明においては、FeまたはFe合金裏金層上に多孔質部と樹脂組成物とからなる摺動層が設けられた摺動部材の製造方法において、FeまたはFe合金粉と、過共晶Ni−P合金粉と、Ni粉と、からなる混合粉を準備する粉末混合工程と、前記混合粉を前記FeまたはFe合金裏金層上に散布して散布層を形成する散布工程と、前記散布層および前記FeまたはFe合金裏金層を前記過共晶Ni−P合金粉の液相温度以上、前記過共晶Ni−P合金粉の液相温度+20℃以下の焼結温度で焼結した後に冷却し、粒状のFeまたはFe合金相と、前記粒状のFeまたはFe合金相どうし及び前記粒状のFeまたはFe合金相と前記FeまたはFe合金裏金層とをつなぐバインダとして機能するNi−P合金相と、からなる前記多孔質部を形成する焼結工程と、前記多孔質部の内部の空孔および表面に前記樹脂組成物を含浸被覆した後に該樹脂組成物を焼成して前記摺動層を形成する樹脂焼成工程と、からなることを特徴とする。
請求項2に係る発明においては、請求項1記載の摺動部材の製造方法において、前記過共晶Ni−P合金粉の組成は、13〜16質量%のPと残部Niおよび不可避不純物からなることを特徴とする。
請求項3に係る発明においては、請求項1又は請求項2記載の摺動部材の製造方法において、前記多孔質部における前記Ni−P合金相の組成は、10〜12質量%のPと残部Niおよび不可避不純物からなることを特徴とする。
請求項4に係る発明においては、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の摺動部材の製造方法において、前記多孔質部における前記Ni−P合金相の割合は、前記多孔質部の100質量部に対して前記Ni−P合金相が5〜45質量部であることを特徴とする。
請求項5に係る発明においては、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の摺動部材の製造方法において、前記多孔質部の空孔率は、15〜60%であることを特徴とする。
請求項1に係る発明においては、摺動層を構成する多孔質部は、FeまたはFe合金粉と、過共晶Ni−P合金粉と、Ni粉と、からなる混合粉をFeまたはFe合金裏金層上に散布した後、焼結のための加熱および冷却を施すことで形成する。また、多孔質部は、粒状のFeまたはFe合金相と、Ni−P合金相と、からなるが、Ni−P合金相は、混合粉の過共晶Ni−P合金粉と、Ni粉と、を反応させて形成する。
焼結工程の加熱の過程では、散布層中の過共晶Ni−P合金粉が固相温度に達すると、各過共晶Ni−P合金粉の一部(主に粉の表面)が液相化するが、このNi−P合金液相(液相化したNi−P合金)のP成分がNi−P合金液相と接するNi粉の表面へ拡散し、且つ、Ni−P合金液相と接するNi粉の表面のNi成分がNi−P合金液相へ拡散することで、Ni−P合金液相の融点が上昇し、Ni−P合金液相の一部が再度、凝固して固相となる。このNi−P合金液相は、一部、固相となったNi−P合金を含むため、流動が抑制される。そして、焼結工程の加熱の過程では、混合粉が過共晶Ni−P合金粉の固相温度から焼結温度(最高温度)に達するまでの間、Ni−P合金液相とNi粉の表面での相互拡散現象が繰り返し起こり、Ni−P合金液相の発生や流動が抑制される。このため、粒状のFeまたはFe合金相どうしの間の隙間に多量のNi−P合金液相が流れ込み、焼結後の多孔質部の空孔のサイズが小さくなることや、空孔率が低くなることが防がれる。
なお、上記の相互拡散現象を起こさせるには、原材料として過共晶Ni−P合金粉及びNi粉を使用する必要がある。過共晶Ni−P合金は、固相温度と液相温度との差が大きいので、焼結工程の加熱の過程で過共晶Ni−P合金粉が固相温度に達しても、一部が液相化するだけであり、その後も加熱温度の上昇に応じて、徐々に液相の割合が増加するので、上記の相互拡散現象によるNi−P合金液相の発生や流動を抑制する効果が得られる。本発明とは異なり、過共晶Ni−P合金粉及びNi粉に代えて、共晶組成(Ni−11質量%P)あるいは共晶組成付近の組成(Ni−9〜12質量%P)のNi−P合金粉のみを用いた場合には、固相温度と液相温度との差が無い、あるいは差が小さいため、焼結工程の加熱の過程で共晶Ni−P合金粉が固相温度に達すると同時に、各共晶Ni−P合金粉の全て、あるいは大部分が液相化してしまい、上記の相互拡散現象によるNi−P合金液相の発生や流動を抑制する効果が得られない。
また、本発明の製造方法による多孔質部のNi−P合金相は、組織中のP成分の濃度が均一になる。詳しくは、上記のNi−P合金液相とNi粉の表面での相互拡散現象が起きている間、過共晶Ni−P合金粉は、粒子の内部と表面付近でのP成分、Ni成分の濃度差が無くなるようにP成分およびNi成分の拡散現象が起こり、同じく、Ni粉は、粒子の内部と表面付近でのP成分、Ni成分の濃度差が無くなるようにP成分およびNi成分の拡散現象が起こるからである。
また、多孔質部のNi−P合金相は、組織を均一にするために焼結工程での焼結温度(最高温度)を、原材料である過共晶Ni−P合金粉の液相温度以上の温度とする必要がある。本発明の製造方法とは異なり、焼結温度を、原材料である過共晶Ni-P合金粉の液相温度未満の温度とした場合には、焼結後の多孔質部のNi−P合金相の組織中に、P成分を含まないNi相部が残留することがある。Ni−P合金相の組織中にP成分を含まないNi相部が形成されると、多孔質部の強度が低くなる。
また、焼結工程での焼結温度は、過共晶Ni−P合金粉の液相温度+20℃以下の温度とする必要があるが、これは、過共晶Ni−P合金粉の液相温度+20℃を超える温度で焼結を行うと、焼結中にNi−P合金液相の量が多くなり、焼結後の多孔質部の空孔率が小さくなるからである。より好ましい焼結温度は、過共晶Ni−P合金粉の液相温度+10℃以下の温度である。
本発明の製造方法による多孔質部は、粒状のFeまたはFe合金相とNi−P合金相とからなり、Cu成分が含まれないので、有機酸や硫黄成分に対する耐食性が高い。多孔質部のNi−P合金相は、粒状のFeまたはFe合金相どうしをつなぐバインダとして機能している。また、多孔質部は、表面および内部に多くの空孔を有し、これら空孔は、多孔質部の内部で三次元的なネットワークを形成する。そして、樹脂組成物は、多孔質部の内部の空孔および表面に含浸被覆されるため、樹脂組成物と多孔質部との接合が強くなる。
また、請求項2に係る発明のように、過共晶Ni−P合金粉の組成は、13〜16質量%のPと残部Niおよび不可避不純物からなることで、過共晶Ni−P合金粉の液相温度と固相温度との差が大きくなり、焼結工程でのNi−P合金液相の発生や流動を抑制しやすくなる。
また、請求項3に係る発明のように、多孔質部におけるNi−P合金相の組成は、10〜12質量%のPと残部Niおよび不可避不純物からなることで、多孔質部の組織が共晶組織を主体とするようになり、多孔質部の強度が強くなる。多孔質部におけるNi−P合金相のP成分の含有量が10質量%未満の場合には、Ni−P合金相中のα相(P成分を固溶したNi相)の割合が多くなり、多孔質部の強度が低くなる。一方、多孔質部におけるNi−P合金相のP成分が12質量%を超える場合には、Ni−P合金相が硬くなりすぎて、多孔質部が脆くなる。
また、請求項4に係る発明のように、多孔質部におけるNi−P合金相の割合は、多孔質部の100質量部に対してNi−P合金相が5〜45質量部であると、多孔質部の強度が強く、且つ、多孔質部の内部に十分な量の空孔が形成されやすくなる。多孔質部におけるNi−P合金相の割合は、多孔質部の100質量部に対してNi−P合金相が5質量部未満であると、多孔質部の強度が低くなり、多孔質部の100質量部に対してNi−P合金相が45質量部を超えると、多孔質部の内部の空孔の量が少なくなり、樹脂組成物と多孔質部との接合が弱くなる。
また、請求項5に係る発明のように、多孔質部の空孔率は、15〜60%であることで、多孔質部と樹脂組成物との接合が特に強くなる。
本発明の製造方法による摺動部材の断面を示す模式図である。 散布層の断面を示す模式図である。
本実施形態に係る製造方法によるFeまたはFe合金裏金層2上に多孔質部4と樹脂組成物5とからなる摺動層3が設けられた摺動部材1について、図1を参照して説明する。図1は、FeまたはFe合金裏金層2の表面に多孔質部4と樹脂組成物5とからなる摺動層3が設けられた摺動部材1の断面を示す模式図である。
図1に示すように、摺動部材1は、FeまたはFe合金裏金層2と摺動層3とからなり、摺動層3は、FeまたはFe合金裏金層2上に形成された多孔質部4と樹脂組成物5とからなる。また、多孔質部4は、粒状のFeまたはFe合金相6とNi−P合金相7とからなる。このNi−P合金相7は、FeまたはFe合金相6の粒どうし、あるいは、FeまたはFe合金相6の粒とFeまたはFe合金裏金層2の表面とをつなぐバインダとなっている。また、図1に示すように、FeまたはFe合金相6の粒どうし、あるいは、FeまたはFe合金相6の粒とFeまたはFe合金裏金層2の表面とは、Ni−P合金相7を介して接合している。なお、FeまたはFe合金相6の粒どうし、あるいは、FeまたはFe合金相6の粒とFeまたはFe合金裏金層2の表面とは、直接、接触、あるいは、焼結により接合している部分が形成されていてもよい。また、FeまたはFe合金相6の粒は、表面の一部がNi−P合金相7により覆われていない部分が形成されていてもよい。また、多孔質部4は、樹脂組成物5を含浸させるための空孔を有し、その空孔率は10〜60%である。より好ましくは、空孔率は15〜45%である。
Ni−P合金相7の組成は、9.5〜12.5質量%のPと残部Niおよび不可避不純物からなる。このNi−P合金相7の組成は、Ni−P合金相7の強度が高くなる組成範囲である。なお、Ni−P合金相7の組成は、10〜12質量%のPと残部Niおよび不可避不純物からなることがより望ましい。
多孔質部4におけるNi−P合金相7の割合は、多孔質部4の100質量部に対してNi−P合金相7が5〜45質量部であり、より好ましくは、10〜40質量部である。このNi−P合金相7の割合は、FeまたはFe合金相6の粒どうし、FeまたはFe合金相6の粒とFeまたはFe合金裏金層2の表面とを結びつけるバインダとなる形態の多孔質部4を形成するために好適な範囲である。Ni−P合金相7の割合が5質量部未満であると、多孔質部4の強度や、多孔質部4とFeまたはFe合金裏金層2との接合が不十分となる。一方、Ni−P合金相7の割合が45質量部を超えると、焼結時、空孔となるべき部分がNi−P合金液相(液相化したNi−P合金)で充填されてしまうので、焼結後の多孔質部4の空孔率が小さくなりすぎる。
多孔質部4における粒状のFeまたはFe合金相6は、平均粒径が45〜180μmであればよい。また、粒状のFe合金の組成は限定されない。一般市販される、純鉄、亜共析鋼、共析鋼、過共析鋼、鋳鉄、高速度鋼、工具鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼等の粒を用いることができる。いずれのFe合金を用いても、有機酸や硫黄成分に対する耐食性は、従来の銅合金を用いるよりも優れている。なお、多孔質部4を構成する粒状のFeまたはFe合金相6は、その表面(Ni−P合金相7との界面となる表面)に、Ni−P合金相7の成分との反応相が形成されていてもよい。そして、このような粒状のFeまたはFe合金相6とNi−P合金相7とから多孔質部4が構成されており、Cu成分が含まれないため、有機酸や硫黄成分に対する耐食性に優れている。
樹脂組成物5は、多孔質部4の内部の空孔および表面に含浸被覆される。樹脂組成物5としては、一般的な摺動用樹脂組成物を用いることができる。具体的には、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、 ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、エポキシ、フェノール、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイドのいずれか一種以上の樹脂に、さらに、固体潤滑剤としてグラファイト、グラフェン、フッ化黒鉛、二硫化モリブデン、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリオレフィン、窒化ホウ素、二硫化錫のいずれか一種以上を含む樹脂組成物を用いることができる。また、樹脂組成物5には、さらに充填剤として、粒状、あるいは、繊維状の金属、金属化合物、セラミック、無機化合物、有機化合物のいずれか一種以上を含有させることができる。なお、樹脂組成物5を構成する樹脂、固体潤滑剤、充填剤は、ここで例示したものに限定されない。
FeまたはFe合金裏金層2には、一般市販される、純鉄、亜共析鋼、共析鋼、過共析鋼、鋳鉄、高速度鋼、工具鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼等の板や条を用いることができる。なお、FeまたはFe合金裏金層2は、その表面(Ni−P合金相7との界面となる表面)に、Ni−P合金相7の成分との反応相が形成されていてもよい。
次に、本実施形態に係る摺動部材1の製造方法について説明する。
(粉末混合工程)
粉末混合工程では、FeまたはFe合金粉61と、過共晶Ni−P合金粉71と、Ni粉72と、を、Vブレンダ―等の混合機を用いて混合して、混合粉を準備する。FeまたはFe合金粉61の平均粒径は、45〜180μmであればよい。また、粒状のFe合金の組成は限定されない。一般市販される、純鉄、亜共析鋼、共析鋼、過共析鋼、鋳鉄、高速度鋼、工具鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼等の粒状の粉末を用いることができる。また、過共晶Ni−P合金粉71は、アトマイズ法により製造された過共晶Ni−P合金粉を用いることができる。過共晶Ni−P合金粉71の組成は、13〜16質量%のPと残部Niおよび不可避不純物であるものが好ましい。また、Ni粉72は、アトマイズ法や電解法、カルボニルニッケル法等により製造されたNiおよび不可避不純物からなるものを用いることができる。
混合粉におけるFeまたはFe合金粉61の割合は、混合粉の100質量部に対して55〜95質量部であり、より好ましくは、60〜90質量部である。また、混合粉における過共晶Ni−P合金粉71とNi粉72とは、後述する焼結工程においてP成分、Ni成分が相互拡散して多孔質部4のNi−P合金相7を形成する。混合粉における過共晶Ni−P合金粉71の割合およびNi粉72の割合は、過共晶Ni−P合金粉71とNi粉72とからなる100質量部に対して、過共晶Ni−P合金粉71に含まれるP成分が9.5〜12.5質量%、より好ましくは、10〜12質量%となるように決められる。
過共晶Ni−P合金粉71は、平均粒径がFeまたはFe合金粉61の平均粒径よりも小さいものを用い、Ni粉72は、平均粒径が過共晶Ni−P合金粉71の平均粒径よりも小さいものを用いる。なお、過共晶Ni−P合金粉71は、FeまたはFe合金粉61の平均粒径に対して10〜30%の平均粒径であるものを用い、Ni粉72は、過共晶Ni−P合金粉71の平均粒径に対して10〜50%の平均粒径であるものを用いることが好ましい。
(散布工程)
散布工程では、室温で、準備した混合粉をFeまたはFe合金裏金層2の表面に散布して散布層を形成する。図2は、FeまたはFe合金裏金層2上の散布層の断面を示す模式図である。図2に示すように、過共晶Ni−P合金粉71およびNi粉72は、FeまたはFe合金粉61の平均粒径よりも小さい平均粒径を有するので、主にFeまたはFe合金粉61どうしの間の隙間に共存する状態にある。なお、FeまたはFe合金裏金層2には、一般市販される、純鉄、亜共析鋼、共析鋼、過共析鋼、鋳鉄、高速度鋼、工具鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼等の板や条を用いることができる。
(焼結工程)
焼結工程では、散布層およびFeまたはFe合金裏金層2を、焼結炉を用いて還元性雰囲気中、又は、不活性雰囲気中で加熱して焼結した後に冷却し、FeまたはFe合金裏金層2の表面上に多孔質部4を形成する。焼結温度(最高温度)は、過共晶Ni−P合金粉71の液相温度以上、過共晶Ni−P合金粉71の液相温度+20℃以下の範囲内の温度である。液相温度は、原料として用いる過共晶Ni−P合金粉71のP成分の含有量により異なるが、一般的な示差熱分析法により液相温度を測定したり、又は、公知のNi−P合金二元状態図の液相温度を参照して、焼結温度(最高温度)を設定することができる。例えば、過共晶Ni−P合金粉71として組成がNi−15質量%Pであるものを用いる場合、焼結温度(最高温度)は、1065〜1085℃である。
上記したように、散布層(混合粉)は、固相温度と液相温度との差が大きい過共晶Ni−P合金粉71とNi粉72とを含み、これら粉末は、FeまたはFe合金粉61の間の隙間に共存するため、焼結工程の加熱の過程では、過共晶Ni−P合金粉71とNi粉72との間に相互拡散現象が起こり、Ni−P合金液相の発生や流動が抑制される。このため、FeまたはFe合金粒61どうしの間の隙間に多量のNi−P合金液相が流れ込み、焼結工程後の多孔質部4の空孔のサイズが小さくなることや、空孔率が低くなることが防がれる。また、Ni粉72の平均粒径は、過共晶Ni−P合金粉71の平均粒径よりも小さくすることで、焼結工程での加熱の過程では、Ni−P合金液相と接するNi粉72の表面積が大きくなり、上記の相互拡散現象が促進される。このため、焼結工程後の多孔質部4のNi−P合金相7は、均一な組織となり、Ni−P合金相7の組成は、9.5〜12.5質量%のPと残部Niおよび不可避不純物からなるようになる。このNi−P合金相7の組成は、Ni−P合金相7の強度が高くなる組成範囲である。なお、Ni−P合金相7の組成は、10〜12質量%のPと残部Niおよび不可避不純物からなることがより望ましい。
多孔質部4は、粒状のFeまたはFe合金相6とNi−P合金相7とからなり、Ni−P合金相7は、粒状のFeまたはFe合金相6どうし、あるいは、粒状のFeまたはFe合金相6とFeまたはFe合金裏金層2の表面とをつなぐバインダとして機能している。多孔質部4におけるNi−P合金相7の割合は、多孔質部4の100質量部に対して5〜45質量部であり、より好ましくは、10〜40質量部である。また、多孔質部4は、表面および内部に多くの空孔を有し、これら空孔は、多孔質部4の内部で三次元的なネットワークを形成する。多孔質部4の空孔率は、10〜60%であり、より好ましくは、空孔率は15〜45%である。
(樹脂焼成工程)
樹脂焼成工程では、FeまたはFe合金裏金層2の表面上に多孔質部4が形成された部材に対して、予め準備された樹脂組成物5(有機溶剤にて希釈してもよい)が、多孔質部4の空孔を充填し、多孔質部4の表面を被覆するように含浸される。そして、この部材は、樹脂組成物5の乾燥、焼成のための加熱が施され、FeまたはFe合金裏金層2の表面上に多孔質部4と樹脂組成物5とからなる摺動層3が形成される。なお、樹脂組成物5としては、上記の樹脂組成物を用いることができる。また、樹脂組成物5は、多孔質部4の内部で三次元的なネットワークを形成した空孔および表面に含浸被覆されるため、樹脂焼成工程後に樹脂組成物5と多孔質部4との接合が強くなる。
本発明の製造方法による摺動部材1は、各種形状(円筒形状等)に成形して使用することができる。
1 摺動部材
2 FeまたはFe合金裏金層
3 摺動層
4 多孔質部
5 樹脂組成物
6 FeまたはFe合金相
7 Ni−P合金相
61 FeまたはFe合金粉
71 過共晶Ni−P合金粉
72 Ni粉

Claims (5)

  1. FeまたはFe合金裏金層上に多孔質部と樹脂組成物とからなる摺動層が設けられた摺動部材の製造方法において、
    FeまたはFe合金粉と、過共晶Ni−P合金粉と、Ni粉と、からなる混合粉を準備する粉末混合工程と、
    前記混合粉を前記FeまたはFe合金裏金層上に散布して散布層を形成する散布工程と、
    前記散布層および前記FeまたはFe合金裏金層を前記過共晶Ni−P合金粉の液相温度以上、前記過共晶Ni−P合金粉の液相温度+20℃以下の焼結温度で焼結した後に冷却し、粒状のFeまたはFe合金相と、前記粒状のFeまたはFe合金相どうし及び前記粒状のFeまたはFe合金相と前記FeまたはFe合金裏金層とをつなぐバインダとして機能するNi−P合金相と、からなる前記多孔質部を形成する焼結工程と、
    前記多孔質部の内部の空孔および表面に前記樹脂組成物を含浸被覆した後に該樹脂組成物を焼成して前記摺動層を形成する樹脂焼成工程と、からなることを特徴とする摺動部材の製造方法。
  2. 前記過共晶Ni−P合金粉の組成は、13〜16質量%のPと残部Niおよび不可避不純物からなることを特徴とする請求項1記載の摺動部材の製造方法。
  3. 前記多孔質部における前記Ni−P合金相の組成は、10〜12質量%のPと残部Niおよび不可避不純物からなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の摺動部材の製造方法。
  4. 前記多孔質部における前記Ni−P合金相の割合は、前記多孔質部の100質量部に対して前記Ni−P合金相が5〜45質量部であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の摺動部材の製造方法。
  5. 前記多孔質部の空孔率は、15〜60%であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の摺動部材の製造方法。
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