JP4167011B2 - 低融点物質を含有する非鉄金属合金と鋼からなる複合材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐食性、熱伝導性、耐焼付性および耐なじみ性を必要とする部位に用いられる非鉄金属合金と鋼との複合材に関する。
【0002】
【従来の技術】
非鉄金属合金と鋼からなる複合材は、耐食性、熱伝導性、耐焼付性および耐なじみ性をもつスズまたは鉛を含む非鉄金属合金の特性と、高強度という鋼の特性を複合したすべり軸受および電気接点材料として使用されてきた。
【0003】
係る複合材料の製造法としては、例えば、特開平6−192774号公報、特許第2551981号公報、特許第2756407号公報等には、銅合金粉末を銅裏金上に散布して焼結圧延を繰り返すことが、特開平8−165530号公報には、Al−Sn−Cuアトマイズ粉末とCuまたはCu−Pbアトマイズ粉末を均一に混合し通電焼結することが、さらに、特開平9−38785号公報には、鉄系材料と摺動材料としての銅合金との間に低融点フラックスを介在させ、低融点フラックスの融点よりも高く、銅合金の融点以下の温度に加熱保持しながら、固体あるいは半融合接合することが開示されている。
【0004】
このような複合材料の製造法は、一般的には、肉盛溶接法、鋳込み、鋳かけなどの溶融接合法、圧延接合、爆着接合などの非溶融接合法、そして焼結、ろう付け、溶射などの半溶融接合法に分けられ、それぞれに、製造面からの利点を有するものではあるが、以下のような欠点もある。
【0005】
溶融接合法である肉盛溶接の場合には、単位時間当たりの溶着金属量が制限され、広い面積を持つ製品では製造効率が低く、溶接施行に伴う技能が必要となる。また、鋳込み、鋳かけは高温である金属溶湯の保持、運搬を伴う作業のため、製造装置設備が特別仕様なものとなり製造コストも高くなる。かつ、湯流れ性および濡れ性促進のために母材を予熱することが必要で、さらに、接合界面を均一な温度分布とするための制御が困難であるため界面性能が不均一となることがある。
【0006】
また、低融点であるスズまたは鉛は、銅合金およびアルミ合金の基質の加熱および溶解時に溶解または蒸発し、銅合金およびアルミ合金の組織および特性変化を伴ってしまう。
【0007】
非溶融接合法においては、圧延接合の場合は、原料の組み合わせが煩雑で、形状の自由度が低く、軸受製品の場合母材の形状、寸法および材質にも制限が多い。
【0008】
さらに、爆着接合の場合には、衝撃を伴う接合方式のため適用できる材質組み合わせが狭く、厚さの薄い製品への適用が困難であるなどの寸法の自由度に制限があり、同バッチ内でも均一な界面性能を得ることが困難である。その上、爆着接合は方向性のある圧力負荷により接合を行うため形状変化を起こしやすく、機械強度の高い合金鋼の場合には接合後の形状矯正が炭素鋼の場合より困難となる。
【0009】
そして、半溶融接合法である焼結による複合材の製造、とくに軸受の製造は、連続的な生産方式で行われているが、比較的寸法の小さい製品で、母材板厚が薄いものおよび母材が軟質のものが主流であり、圧延工程を伴うため形状的な自由度が乏しく、焼結前にめっき等の前処理を母材接合面に行う必要もあり、焼結工程では雰囲気制御を行うための特殊な設備を必要とする。かつ、焼結および溶射の場合、母材との接合強度は低い傾向があり、合金鋼の場合は、さらに低くなる等の問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記従来の非鉄金属合金と鋼母材からなる複合材のそれぞれの製造法における問題点を解消するもので、基本的に、非鉄金属合金および鋼母材の双方とも材質、寸法および形状の制限がない、とともに接合強度において優れた複合材の製造法を提供する。
【0011】
【発明を解決するための手段】
この発明の非鉄金属合金と鋼母材からなる複合材の製造法は、非鉄金属合金よりもその融点が低い低融点物質を含有する非鉄金属合金を複合材の鋼基材の少なくとも一部を構成する容器中に装入し、非酸化雰囲気を維持しながら、前記低融点金属の融点以上ではあるが、非鉄金属合金の融点以下の温度に加熱保持するとともに等方圧力を容器に加えて、高融点非鉄金属合金と容器の一部を構成する鋼を接合して一体化する。
【0012】
鋼と複合する非鉄金属合金としては、銅合金、アルミ合金、銀およびスズ合金等が好適に使用でき、また、低融点物質としては、前記非鉄金属合金とは基本的に固溶せず、且つ、融点が前記非鉄金属合金よりも低い融点を持つスズ(融点:232℃)、鉛(融点:327℃)、ビスマス(融点:271℃)あるいはそれらの合金、さらには、合成樹脂等が使用できる。
本発明の場合、非鉄金属合金に含まれる低融点物質は、例えば、複合材が摺動材の場合、使用される温度、圧力および潤滑材との反応など使用雰囲気条件において摺動界面に流動または拡散して、液体または固体状態で摩擦、磨耗および潤滑のトライボロジー作用を持たせるために使用されるもので、低融点物質の相が非鉄金属合金の母相と共存している必要がある。そのため、本発明においては、使用される低融点物質が金属である場合、非鉄金属合金中に固溶せず、非鉄金属合金中にそれぞれ単体に近い組織および組成で存在することが必要である。そのため、非鉄金属合金と低融点金属との組み合わせにおいて、銅合金とスズとの組み合わせ、銀合金とスズの組み合わせは本発明の対象とはならない。
【0013】
容器内に装入される非鉄金属合金は、所定の合金組成となる粉粒体、バルク体、および、数種類の粉粒体混合物の形での装入が可能であるが、複雑な形状の製品への適用の面からは、粉粒体の装入に際しての充填性の点から粉粒体による装入の方が好適である。
【0014】
容器の一部を構成し、複合体の基部を構成する鋼は、鉄を主成分としその他の合金成分を適量含むものであり、炭素鋼およびステンレス鋼をその代表とするものである。
【0015】
そして、この容器は、低融点物質を所定の位置に滞留または集中させ、そしてその位置からの流出を防止するために、容器内の所定の位置に低融点物質を捕捉するための空間を設けた容器とすることが健全な複合材の製造に有効である。
【0016】
また、容器内の一部に流入した低融点物質を保持させるための空間に、複合材としての対象となる非鉄金属合金より融点の高い粉末、例えば、鉄系合金またはニッケル系合金を装入しておくことで、複合材としての対象となる非鉄金属合金と反応することもなく安定して低融点物質を捕捉することができる。
【0017】
この低融点物質を滞留または集中させる空間を、容器外に位置せしめることで、製品の仕上げのために、機械加工によって、低融点金属を滞留または集中した箇所を簡単に除去することができ、製品歩留とコスト面からさらに有効となる。
【0018】
製品形状に対応した容器は、複合材を形成する非鉄金属合金より融点の高い材料、例えば複合体を構成する鋼と溶接および機械加工が可能な鋼製であれば良く、さらに言えば複合体を構成する鋼を容器の一部としても利用できる。
【0019】
製品の製造に際しての非酸化性の維持は、製品形状に対応した容器を組み立てたのち、容器内部に複合体を構成する非鉄金属合金を装入配置し、容器内部を真空、または、雰囲気を不活性とする非酸化雰囲気ガスを封入する。容器への非酸化雰囲気ガスの封入は、後工程における複合材の若干の変形および加熱保持状態でも連続して雰囲気保持できる方法であれば良く、真空雰囲気を採用する場合は、真空排気ポンプを用いた加熱脱気後における鍛接封入、または、真空チャンバー中での溶接である電子ビーム溶接が好適である。
【0020】
容器に装入された低融点物質を含む非鉄合金は、低融点物質の融点以上、非鉄金属合金の融点以下の温度、例えば、低融点金属として鉛を含む銅合金の場合には、600〜1000℃、また、低融点金属としてスズまたは鉛を含むアルミニウム合金の場合には、400〜600℃の温度範囲に、それぞれ、加熱保持することによって、非鉄金属合金と鋼とは、焼結あるいは拡散接合の過程を経て接合し、複合材を形成する。
【0021】
そして、非鉄合金に含まれる低融点物質は、液状となって、非鉄合金内に存在する連続した空間を流動する。この非鉄合金における連続した空間とは、非鉄合金が粉粒体の形態であれば、粉粒体同士の境界部(粒界)および界面部であり、また、バルクの形態であれば表面部および界面部である。また、非鉄金属合金が粉粒体で装入されたものであれば、液状の低融点物質は、粉粒体間の間隙の流動は、粉粒体の粉粒径および形状によって大きく影響され、粉粒体の粒径が細粒よりも粗粒のほうが、また、粉粒体の形状は球状よりも不定形状のほうがより流動し易い。
【0022】
ただし、この流動した低融点物質が非鉄合金と鋼との接合界面に滞留または集中すると複合体としての接合強度は低下する。このため、接合界面に存在する低融点金属は接合界面以外の部分へ流動させなくてはならない。本発明で適用する等方圧力の付加は、この接合界面に存在する低融点金属の流動を促進させるためのもので、液体状態の低融点物質が流動するために必要な値以上の等方圧力を加えると、低融点金属は非鉄合金の連続した空間内をさらに流動しやすくなり、連続した空間の分布、大きさおよび容器形状などの適正な調整によって流動した低融点金属を接合界面以外の部分へ滞留または集中させることが可能となる。つまり、非鉄金属合金が粉末形態の場合、粗粒であるほど、異形粉末であるほど、単純な内部形状容器であるほど低融点金属は流動しやすく、逆に細粒であるほど、球状粉末であるほど、複雑な内部形状容器であるほど流動しにくく、例えば接合界面に滞留または集中してしまうことがある。とくに、非鉄金属合金と鋼との接合界面を平滑単純形状とすれば、等方圧力を作用させることによって流動した低融点物質を接合界面外へさらに押し出すことが容易になる。
【0023】
さらに、等方圧力を付加することによって均一な圧力を接合界面に作用させることが可能となり、例えば、ジャーナル軸受のように、非鉄金属合金が接合する鋼基材の面が曲面であり、円筒形状の内径が細く、さらに長い穴がある場合でも、鋼基材内面に等方圧力を作用させて焼結成形および拡散接合を促進させることだけではなく、流動する低融点物質を接合面とは無関係の所定位置に滞留または集中させることが可能となる。この加熱状態で等方圧力を容器に加えるためには、加熱と加圧を同時に行なう熱間等方圧加圧法(HIP)の適用がもっとも好適である。
【0024】
もちろん、HIP法では一般にアルゴンガスを加圧媒体として用いているため、HIP処理装置内に装入可能な寸法形状であれば、円筒形状の容器内径が細くさらに穴が長い場合でも均一な内面圧力を作用させることが可能なため、1バッチ当たりでの複数処理および1容器当たりでの複数製品処理の採用によってコスト的には有利となる。
【0025】
そして、低融点金属を容器内の所定部に滞留または集中させ、所定部からのさらなる流出を防止するために、容器内の所定部に低融点金属を捕捉するための空間を設けた構造をもつ容器とすることも健全な複合材の製造においては有効である。例えば、容器が円筒であれば両端隅角部は一般的に低融点物質が滞留しやすく、さらに容器内面端部に円周溝を加工してもさらなる流出を防止できる。
【0026】
また、容器内の一部に低融点金属を流入保持させるための空間として、複合させる対象の非鉄金属合金より融点の高い粉末、例えば、対象の非鉄金属合金が銅合金またはアルミニウム合金の場合には、鉄系合金またはニッケル系合金粉粒体を容器内の捕捉するための空間に装入しておけば、非鉄金属合金と反応することもなく安定的に低融点物質を捕捉する効果を上げることが可能となる。そして、低融点物質を容器内の所定部に滞留または集中させ、所定部からのさらなる流出を防止するために、容器内の所定部に低融点物質を捕捉するための空間を設けた構造をもつ容器とすることも健全な複合材の製造においては有効である。例えば、容器が円筒であれば両端隅角部は一般的に低融点金属が滞留しやすく、さらに容器内面端部に円周溝を加工してもさらなる流出を防止できる。
【0027】
また、容器内の一部に低融点金属を流入保持させるための空間として、複合させる対象の非鉄金属合金より融点の高い粉末、例えば、対象の非鉄金属合金が銅合金またはアルミニウム合金の場合には、鉄系合金またはニッケル系合金粉粒体を容器内の捕捉するための空間に装入しておけば、非鉄金属合金と反応することもなく安定的に低融点金属を捕捉する効果を上げることが可能となる。捕捉空間に装入するものとしては、粉粒体の他には鉄系合金またはニッケル系合金製の網や多孔体などが考えられるが、狭い空間に少量装入するため作業性およびコスト的観点からは粉粒体が好適である。この際、低融点金属を流入保持させる空間が製品外の容器の所定の位置になるように容器寸法および形状を工夫をすれば、歩留およびコスト的にはさらに有効となる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施の形態を低融点金属として鉛を含む銅合金を鋼基体に接合して各種軸受の製造に適用した実施例に基づいて説明する。
【0029】
【実施例1】
図1は、円形容器を用いて鉛を含有する銅合金と炭素鋼からなるスラスト軸受を製造する要領を示す。同図に示す円形容器は、それぞれ接合すべき鋼母材を兼ねる容器本体2と蓋3からなり、溶接部4によって組み立てられており、内部雰囲気を保持している。鋼母材を兼ねる容器本体2は機械構造用炭素鋼S25C、蓋は冷間圧延鋼板SPCCを用いて、容器本体2が外径350mm、高さ60mm、底厚45mmで、蓋3が厚さ3mm、外径300mmの所定の寸法および形状に機械加工した。容器内部には銅合金1として粒度分布が100メッシュ以下の鉛青銅粉末LBC3(Cu−10重量%Sn−10重量%Pb)の水アトマイズ粉2kgが、ほぼ容器の内容積を満たすように充填されている。この銅合金1の粉末を所定重量充填した容器を組み立てた後、10−4torr以下の真空度を保った真空雰囲気で鋼母材を兼ねる容器本体2と蓋3のシール溶接を行い、真空雰囲気を保持できる溶接部4を形成した。
【0030】
銅合金1の粉末を充填し、シール溶接を行った容器をHIP装置内の処理室に配置し、825℃×1000kgf/cm2の保持条件でHIP処理した。加熱、加圧および冷却速度は、特別な条件に制限されず、均一な温度分布と圧力作用が達成できる条件設定であれば良い。
【0031】
得られたHIP処理後の容器は、粉末充填部に相当する蓋部が銅合金1の粉末の焼結高密度化に伴った変形をしていたが、鋼母材を兼ねる容器本体2の底面はHIP処理前とほとんど変わらず平面を保っていた。
【0032】
鋼母材を兼ねる容器本体2の底面を探傷面として超音波探傷試験を実施したが、LBC3と鋼母材S25Cとの接合界面には剥離やミクロな空隙などの欠陥は発見されず、接合性が良好な接合界面であることが確認された。
【0033】
蓋3を機械加工によって除去したところ、蓋3の内面と銅合金1の境界部には部分的に薄片状をした鉛の集中域が観察された、特に溶接部に近い周辺領域でより多く観察される傾向があったが、機械加工で容易に除去できる製品外の部分にあるため品質および製品歩留上には何ら問題はなかった。
【0034】
蓋部、外径部およびφ100mmの内径部を切削除去した後、LBC3部表面および内外径部に露出したLBC3/S25C接合界面部において浸透探傷試験を行ったが、何ら欠陥指示模様は観察されず、LBC3粉末の焼結高密度化も十分に進行したことが確認された。
【0035】
φ100mmの内径部から評価試験用サンプルを採取し、ミクロ組織観察、接合強度測定および金属磨耗試験を行った。光学顕微鏡を用いて倍率×100でミクロ組織観察を行った代表的な結果を金属組織図として図2に示したが、銅−スズ固溶体の母相内に鉛の粒が分散したLBC3特有の組織を呈し、鋼母材であるS25Cとの接合界面には何ら剥離や異物の欠陥は観察されなかった。
【0036】
接合界面における接合強度を求めるため、社内試験片によるせん断強さとJIS試験片による剥離強さを測定した。因みに、せん断強さは接合界面に対し荷重を平行に、剥離強さは接合界面に対し荷重を直角に負荷して求めた接合強度である。
【0037】
本発明による試験片ではせん断強さが11.9kg/mm2、剥離強さが20.4kg/mm2という値が得られたが、これは銅合金LBC3単体の強度にほぼ近く、接合界面が良好に接合されていることが接合強度測定からも確認された。
【0038】
金属磨耗試験は社内自作の磨耗試験装置を用いて行い、相手材であるSUS304製のリング状回転試験片にブロック状の固定試験片である供試材のLBC3表面を荷重10kgfで押し付ける方法を採用した。潤滑材などは用いない乾燥磨耗の状態で、回転試験片をすべり速度0.785m/sで回転させ、すべり距離が1000mとなった時点のLBC3層の磨耗体積を求めた。
【0039】
その結果、本発明による試験片ではLBC3層の磨耗体積が7.5mm3であるのに対し、比較材として同条件で磨耗試験を実施した粉末焼結圧延法によるLBC3層の磨耗体積は27.9となり、本発明による試験片のほうが約4倍の耐磨耗性を有することが判った。
【0040】
因みに、供試材であるLBC3層の断面硬さは、本発明による試験片でHv(1)=85、比較材とした粉末焼結圧延法による試験片でHv(1)=87であり、また相手材であるSUS304はHv(5)=197であり、試験材の断面硬さには製造法による差異はなかった。
【0041】
【実施例2】
図3は円筒容器を用いて鉛を含有する銅合金と炭素鋼からなるジャーナル軸受を製造する例を示す。同図に示す円筒容器は、それぞれ接合すべき鋼母材を兼ねる容器本体2と蓋3からなり、鋼母材を兼ねる容器本体2と内管5と蓋3は溶接部4により組み立てられ、さらに内部雰囲気を保持している。図3の場合、鋼母材を兼ねる容器本体2は機械構造用炭素鋼S45C、蓋3も機械構造用炭素鋼S25Cを用いて、容器本体2の外径55mm、内管5の内径25mm、長さ450mmで、蓋3が厚さ10mm、外径45mmの所定の寸法および形状に機械加工した。 容器内部には銅合金1として粒度分布が100メッシュ以下の鉛青銅粉末LBC3(Cu−10重量%Sn−10重量%Pb)の水アトマイズ粉1kgが、ほぼ容器の内容積を満たすように充填されている。
【0042】
以降の工程であるシール溶接およびHIP処理工程では、製造に関する作業内容および条件は実施例1と同様に行った。
【0043】
得られたHIP処理後の容器は、粉末充填部に相当する内管部が銅合金1の粉末の焼結高密度化に伴った変形をしていたが、鋼母材を兼ねる容器本体の外表面はHIP処理前とほとんど変わらず真直性を保っていた。
【0044】
鋼母材を兼ねる容器本体の外表面を探傷面として超音波探傷試験を実施したが、銅合金LBC3と鋼母材S45Cとの接合界面には剥離やミクロな空隙などの欠陥は発見されず、接合性が良好な接合界面であることが確認された。
【0045】
蓋3を切断除去したところ、蓋3の近傍で鋼母材を兼ねる容器本体2と銅合金1の境界部付近には膜状をした鉛が観察されたが、内管5が非定常な変形をしている製品外の部分にあるため品質的には何ら問題はなかった。
【0046】
両端部を切削除去後に所定長さ毎に切断して、各断面に露出したLBC3断面およびLBC3/S45C接合界面部において浸透探傷試験を行ったが、何ら欠陥指示模様は観察されず、銅合金LBC3粉末の焼結高密度化も十分に進行したことが確認された。
【0047】
任意の長さ位置から所定長さの評価試験用サンプルを採取し、ミクロ組織観察および金属磨耗試験を行った。光学顕微鏡を用いて倍率×100でミクロ組織観察を行った代表的な金属組織図は図2とほぼ同じであり、銅−スズ固溶体の母相内に鉛の粒が分散したLBC3特有の組織を呈し、鋼母材であるS45Cとの接合界面には何ら剥離や異物の欠陥は観察されなかった。
【0048】
実施例1に述べた社内自作の磨耗試験装置を用いて金属磨耗試験行い、相手材であるSCM435製のローター状回転試験片にリング状の固定試験片である供試材のLBC3表面を偏心荷重10kgfで押し付ける方法を採用した。潤滑材などは用いない乾燥磨耗の状態で、回転試験片をすべり速度0.785m/sで回転させ、すべり距離が1000mとなった時点のLBC3層の磨耗体積を求めた。
【0049】
その結果、本発明による試験片7個ではLBC3層の磨耗体積が0.11〜2.2mm3であるのに対し、比較材とした連続鋳造材である2個のリング状LBC3単体試験片の磨耗体積は24.5〜31.3となり、本発明による試験片のほうが約10倍以上の耐磨耗性を有することが判った。
【0050】
因みに、供試材であるLBC3層の断面硬さは、本発明による試験片でHv(1)=90、比較材とした連続鋳造材であるLBC3単体試験片ではHv(1)=121で、また相手材であるSCM435はHv(5)=241であり、試験材の断面硬さには製造法による差異が認められた。
【0051】
【実施例3】
図1に示す円形容器を用いて鉛を含有する銅合金と炭素鋼からなるスラスト軸受を製造する例において、鋼母材を兼ねる容器本体2の溶接部付近に図4に示すような円周角溝を加工した実施例を示す。角溝は深さおよび幅が約3mmであり、鋼母材を兼ねる容器本体2と蓋3とが接触する部位に位置すれば良く、空間であれば機能上問題がなく、寸法および形状も比較的自由に設定できる。
【0052】
得られたHIP処理後の容器は、粉末充填部に相当する蓋部が銅合金粉末の焼結高密度化に伴った変形をしていたが、鋼母材を兼ねる容器本体2の底面はHIP処理前とほとんど変わらず平面を保っていた。
【0053】
鋼母材を兼ねる容器本体2の底面を探傷面として超音波探傷試験を実施したが、銅合金LBC3と鋼母材S25Cとの接合界面には剥離やミクロな空隙などの欠陥は発見されず、接合性が良好な接合界面であることが確認された。
【0054】
蓋3を機械加工によって除去したところ、溶接部に近い周辺領域の隅角部7および新たに付与加工した溝8内で膜状の鉛が観察されたが、機械加工で容易に除去できる製品外の部分にあるため品質および製品歩留上には何ら問題はなかった。
【0055】
浸透探傷試験を含む他の評価試験も実施例1と同様に実施したが、良好な品質であることが実施例1と同様に確認された。
【0056】
【実施例4】
図3に示す円筒容器を用いて鉛を含有する銅合金と炭素鋼からなるジャーナル軸受を製造した実施例を示す。
【0057】
鋼母材を兼ねる容器本体2の両端部に図5に示す粒度分布100メッシュ以下のガスアトマイズ法による球形状のステンレス鋼SUS316Lの粉粒体8を少量充填した以外は実施例2と同じである。
【0058】
粉粒体8は長さ10mm以内であり、鋼母材を兼ねる容器本体2と内管5および蓋3とが接触する部位に充填すれば良く、粉粒体で形成される空間であれば機能上問題がなく、粒度分布および粉粒体形状も比較的自由に設定できる。
【0059】
得られたHIP処理後の容器は、粉末充填部に相当する蓋部が銅合金粉末の焼結高密度化に伴った変形をしていたが、鋼母材を兼ねる容器本体2の外表面はHIP処理前とほとんど変わらず真直度を保っていた。
【0060】
鋼母材を兼ねる容器本体2の外表面を探傷面として超音波探傷試験を実施したが、銅合金LBC3と鋼母材S45Cとの接合界面には剥離やミクロな空隙などの欠陥は発見されず、接合性が良好な接合界面であることが確認された。
【0061】
蓋3を切断によって除去したところ、粉粒体8充填部に粉粒体8と鉛の混合物が観察されたが、機械加工で容易に除去できる製品外の部分にあるため品質および製品歩留上には何ら問題はなかった。
【0062】
浸透探傷試験を含む他の評価試験も実施例2と同様に実施したが、良好な品質であることが実施例2と同様に確認された。
【0063】
【発明の効果】
この発明によって、非鉄金属合金および鋼基材の材質、寸法および形状の制限がなく、接合性に優れた非鉄金属合金と鋼基材との複合材を得ることができる。
【0064】
この発明は、非鉄金属合金と鋼とから構成される複合材を用いたすべり軸受および電気接点材料の製造に好適に適用できる。
【0065】
とくに、鋼基材の剛性不足が原因で潤滑油の油膜破壊が発生するような厳しい条件で使用される軸受には、鋼基材の材質、寸法および形状の広い選択による剛性改善が可能であるため、本発明品による軸受の製造法はさらに好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例として円形容器を用いて鉛を含有する銅合金と炭素鋼からなるスラスト軸受を製造する例を示す。
【図2】 倍率×100でミクロ組織観察を行った結果の代表的な金属組織図を示す。
【図3】 本発明の実施例として円筒容器を用いて鉛を含有する銅合金と炭素鋼からなるジャーナル軸受を製造する例を示す。
【図4】 本発明の実施例として鋼母材を兼ねる容器本体の溶接部付近に加工した円周各溝を示す。
【図5】 本発明の実施例において、鋼母材を兼ねる容器本体の両端部に充填した粉粒体を示す。
【符号の説明】
1 銅合金またはアルミ合金
2 鋼母材および容器本体
3 蓋
4 溶接部
5 内管
6 隅角部
7 円周溝
8 粉粒体
A 銅合金またはアルミ合金
B 低融点金属としてのスズまたは鉛
C 鋼母材
Claims (5)
- 非鉄金属合金とは固溶せず、且つ、非鉄金属合金の融点より低い融点を有し、非鉄金属合金中にそれぞれ単体に近い組織および組成で存在し、低融点物質の相が非鉄金属合金の母相と共存する低融点物質を含有する非鉄金属合金を、複合材の鋼基材の少なくとも一部を構成する容器中に装入し、
その容器を、非酸化雰囲気中で、前記低融点物質の融点以上ではあるが非鉄金属合金の融点以下の温度範囲に加熱保持し、
さらに、
前記低融点物質が流動する以上の等方圧力を容器に加えて、非鉄金属合金と前記容器の一部を構成する鋼とを接合して一体化する複合材の製造方法。 - 鋼と複合する非鉄金属合金が、銅合金、アルミ合金、銀およびスズ合金から選択された何れかであり、低融点物質が前記非鉄金属合金とは固溶せず、且つ、融点が前記非鉄金属合金よりも低い融点を持ち、その低融点物質の相が前記選択された非鉄金属合金の母相と共存するスズ、鉛、ビスマス、または、それらの合金、または、合成樹脂である請求項1に記載の複合材の製造方法。
- 容器内に装入される非鉄金属合金が、所定の合金組成となる粉粒体、バルク体、および、数種類の粉粒体混合物の形での装入される請求項1または請求項2に記載の複合材の製造方法。
- 複合材の鋼基材の少なくとも一部を構成する容器が、容器内の一部に低融点物質を流入保持させる空間を設けた構造を有する請求項1から請求項3の何れかに記載の複合材の製造方法。
- 容器内の一部に低融点物質を流入保持させるための空間に、非鉄金属合金より融点の高い粉末を装入する請求項4に記載の複合材の製造方法。
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