JP2017215321A - 油入機器の異常診断における過熱温度推定方法 - Google Patents

油入機器の異常診断における過熱温度推定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は油入機器の過熱温度を推定する技術の提供を目的とする。【解決手段】本発明は、油入機器に収容されている検査対象エステル系絶縁油の油中ガスを分析することにより油入機器の過熱温度を推定する方法であり、予め未使用のエステル系絶縁油を不活性ガス雰囲気中で局所加熱して測定温度毎に検出した複数のガスの内、ガスA/ガスB=b・ea・t…(1)の関係式(但し、ガスAはCH4ガスとC2H6ガスとC2H4ガスとC3H6ガスとC3H8ガスとC2ガスとC3ガスの内、1つ又は2つの特定のガスの量、ガスBは他の1つ又は複数の特定のガスの量、aは定数、bは定数、tは過熱温度(℃)を示す。)を策定し、局所加熱した温度を前記(1)式の過熱温度と仮定して予め定数a、bを計算により求めておき、検査対象油入機器から採取した絶縁油の油中ガス分析によりガスA/ガスBの値を求め、検査対象油入機器の過熱温度を算出する。【選択図】図1

Description

本発明はエステル系絶縁油を使った油入変圧器などの油入機器の過熱温度を推定する方法に関する。
従来から変圧器の絶縁と冷却のために電気絶縁油が使用されており、その多くが石油を原料とした鉱油を用いている。鉱油は化学的に安定で安価であり、長年の使用実績がある反面、生分解性に乏しく、環境中に漏出した場合、容易に分解されないため環境を汚染する恐れがある。
エステル系絶縁油は、生分解性が高く、自然環境に漏れ出た場合でも環境への負荷が少ないため、ヨーロッパなどで風力発電向けの変圧器などで採用される例が増えている。
また、エステル系絶縁油の中でも植物油など天然エステルや植物油由来の脂肪酸を原料にしたエステル系絶縁油は、廃却時に焼却した場合でもカーボンニュートラルによってCO排出量の削減効果も期待できる。エステル系絶縁油は使用が広がっており、これらを使った変圧器の異常診断技術への要望が高まっている。
油入変圧器は、電力設備の中で重要な役割を担っておりその保守管理のための異常診断技術が重要となっている。変圧器の内部異常は主に過熱と放電であり、過熱と判断された場合、過熱部位の温度(過熱温度)を推定し、異常の進展具合などの判断を行う。このため、過熱温度の推定は、変圧器の内部異常診断において重要である。
従来から、鉱油を絶縁油に用いたこれら変圧器の異常を外部から診断する方法として、絶縁油中のガス成分を分析し、異常を診断する方法が用いられている。(非特許文献1参照)
また、鉱油が加熱された際に発生するガス組成は、温度によって変化し、鉱油の場合、飽和炭化水素と不飽和炭化水素の分子組成の比率が変わるため、これらの比と温度の関係から過熱温度を推定することができ(非特許文献2参照)、この方法は従来から広く用いられている。
電気協同研究第65巻第1号 社団法人電気協同研究会 月岡淑郎、菅原捷夫、大江悦男「絶縁油の局部加熱による分解ガスの挙動」電気学会論文誌A98巻 p.381
油入変圧器の絶縁油中ガス分析による異常診断は従来から行われており、この異常診断は機器内の絶縁油が放電や過熱によって分解された際のガス成分を検出するものである。従来技術における絶縁油中ガス分析による油入変圧器の過熱温度推定方法は、鉱油を絶縁油として用いている機器を対象としている。
しかし、前記従来の推定方法は、鉱油が加熱された際に発生する分解ガスを調査した結果に基づいた方法である。エステル系絶縁油はエステル基を有しており化学構造が鉱油とは異なっているため、分解生成物やその発生挙動は鉱油で用いられている過熱温度推定方法を適用することができない。
また、油入変圧器に限らず、油入リアクトル、油入コンデンサー、油入ケーブル、冷凍機油などの油入機器においても機器の過熱温度推定方法が求められている。
本発明の目的は、エステル系絶縁油を用いた変圧器などの油入機器の異常診断における過熱温度を推定する技術の提供にある。
(1)本発明の過熱温度推定方法は、エステル系絶縁油を用いた油入機器の内部異常を診断するにあたり、前記油入機器に収容されている検査対象エステル系絶縁油の油中ガスを分析することにより前記油入機器の過熱温度を推定する方法であって、予めエステル系絶縁油を不活性ガス雰囲気中で局所加熱して温度に応じて発生するガス量を求め、測定温度毎に検出した複数のガスの内、ガスAとガスBの発生量比に着目し、ガスA/ガスB=b・ea・t…(1)の関係式(但し、(1)式において、ガスAはCHガスとCガスとCガスとCガスとCガスとCガス(油中ガス分析で測定する炭素数2の炭化水素の合計ガス量でC+C+Cを指す)とCガス(油中ガス分析で測定する炭素数3の炭化水素の合計発生量でC+Cを指す)の量の内、1つの特定ガスの量または2つの特定のガスの合計発生量、ガスBは他の1つの特定ガスの量または複数の特定のガスの合計量、aは定数、bは定数、tは過熱温度(℃)を示す。)を策定し、前記局所加熱した温度を前記(1)式の過熱温度と仮定して予め定数a、bを計算により求めておき、検査対象油入機器から採取したエステル系絶縁油の油中ガス分析により前記ガスA/ガスBの値を求め、この値を前記(1)式に代入して検査対象油入機器の過熱温度を算出することを特徴とする。
(2)本発明において、前記定数a、bを定める場合、ガスA/ガスBの値の増減の変曲点を境界として境界値未満の場合と境界値以上の場合で場合分けを行い、場合分けに応じた定数aと定数bの値を選択することができる。
(3)本発明において、前記検査対象エステル系絶縁油が植物油由来の飽和脂肪酸と分岐及び脂肪族アルコールからなるエステルを主体とする植物油由来脂肪酸エステル系絶縁油の場合、第1のケースとして前記ガスAをCガス量に前記ガスBをCHガス量に設定するか、第2のケースとして前記ガスAをCガス量+Cガス量に前記ガスBをCHガス量+Cガス量に設定するか、第3のケースとして前記ガスAをCガス量+Cガス量に前記ガスBをCHガス量+Cガス量に設定するか、第4のケースとして前記ガスAをCガス量+Cガス量に前記ガスBをCHガス量+Cガス量に設定するかのいずれかを選択することができる。
(4)本発明において、前記検査対象エステル系絶縁油がグリセリンと脂肪酸のエステルでトリグリセリド構造を有し、脂肪酸のうち少なくとも1種は不飽和脂肪酸である植物系天然エステルを主体とする天然エステル系絶縁油の場合、第1のケースとして前記ガスAをCガス量に前記ガスBをCガス量+Cガス量に設定するか、第2のケースとして前記ガスAをCガス量+Cガス量に前記ガスBをCガス量+Cガス量に設定するか、第3のケースとして前記ガスAをCガス量+Cガス量に前記ガスBをCガス量に設定するか、第4のケースとして前記ガスAをCガス量に前記ガスBをCガス量+Cガス量に設定するか、第5のケースとして前記ガスAをCガス量に前記ガスBをCHガス量+Cガス量に設定するかのいずれかを選択することができる。
(5)本発明において、前記検査対象エステル系絶縁油がネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールの少なくとも1種以上からなるポリオールエステルと、直鎖及び分岐の飽和脂肪酸との合成エステルを主体とする合成エステル系絶縁油の場合、第1のケースとして前記ガスAをCガス量に前記ガスBをCガス量に設定するか、第2のケースとして前記ガスAをCガス量に前記ガスBをCガス量+Cガス量に設定するか、第3のケースとして前記ガスAをCガス量に前記ガスBをCHガス量+Cガス量+Cガス量に設定するかのいずれかを選択することができる。
(6)本発明において、前記近似曲線に対し2σ(σは標準偏差)+10%の範囲を誤差範囲として前記定数a、bの取り得る範囲を定めることができる。
(7)本発明において、(1)、(2)、(3)、(6)のいずれかに一項に記載の過熱温度推定方法を実施するにあたり、植物油由来の飽和脂肪酸と分岐及び脂肪族アルコールからなるエステルを主体とする植物油由来脂肪酸エステル系絶縁油であって、前記油入機器に収容されている検査対象植物油由来脂肪酸エステル系絶縁油中のH、CH、C、C、C、Cガスを油中ガス分析で測定し、その発生量の多い順に並べた際の第1番目のガス種と第2番目のガス種を求め、第1番目のガスがHガス、第2番目のガスがCHガスであるか、第1番目のガスがCHガス、第2番目のガスがH又はCである場合、局所過熱温度を300℃と推定し、第1番目のガスがHガス、第2番目のガスがCガスであるか、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがH又はC又はCガスである場合、局所過熱温度を400℃と推定し、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスであるか、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスである場合、局所過熱温度を500℃と推定し、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスであるか、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCHガスであるかCガスである場合、局所過熱温度を600〜700℃と推定した上で、前記(1)式に従い過熱温度を推定することができる。
(8)本発明において、(1)、(2)、(3)、(6)のいずれかに一項に記載の過熱温度推定方法を実施するにあたり、植物油由来の飽和脂肪酸と分岐及び脂肪族アルコールからなるエステルを主体とする植物油由来脂肪酸エステル系絶縁油であって、前記油入機器に収容されている検査対象植物油由来脂肪酸エステル系絶縁油中のH、CH、C、C、C、Cガスを油中ガス分析で測定し、その発生量の多い順に並べた際の第1番目のガス種と第2番目のガス種を求め、第1番目のガスがHガス、第2番目のガスがCHガスであるか、第1番目のガスがCHガス、第2番目のガスがH又はCである場合、局所過熱温度を300℃と推定し、第1番目のガスがHガス、第2番目のガスがCガスであるか、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがH又はC又はCガスである場合、局所過熱温度を400℃と推定し、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスであるか、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスである場合、局所過熱温度を500℃と推定し、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスであるか、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCHガスであるかCガスである場合、局所過熱温度を600〜700℃と推定した上で、推定過熱温度が500℃未満であった場合、前記ガスAをC、ガスBをCHガスと設定し、推定過熱温度が500℃以上であった場合、第1のケースとして前記ガスAをCガスに前記ガスBをCガスに設定するか、第2のケースとして前記ガスAをCガス+Cガスに前記ガスBをCガスに設定するか、第3のケースとして前記ガスAをCガスに前記ガスBをCガス+Cガスに設定するかのいずれかを選択することができる。
(9)本発明において、(4)、(7)(8)のいずれか一項に記載の植物油由来脂肪酸エステル絶縁油としてパームヤシ脂肪酸エステル絶縁油またはパステルNEO(ライオン株式社商品名)を用いることができる。
(10)本発明において、(1)、(2)、(4)、(6)のいずれか一項に記載の過熱温度推定方法を実施するにあたり、グリセリンと脂肪酸のエステルでトリグリセリド構造を有し、脂肪酸のうち少なくとも1種は不飽和脂肪酸である植物系天然エステルを主体とする天然エステル系絶縁油であって、前記油入機器に収容されている検査対象天然エステル系絶縁油中のH、CH、C、C、C、C、Cガスを油中ガス分析で測定し、その発生量の多い順に並べた際の第1番目のガス種と第2番目のガス種を求め、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスが他のいずれかのガスの場合であり、Cガス発生量/Cガス発生量の比率が0.5未満の場合に局所過熱温度を300〜400℃と推定し、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスであり、Cガス発生量/Cガス発生量の比率が0.5以上の場合に、局所過熱温度を500℃と推定し、第1番目のガスがCガスである場合、局所過熱温度を600〜700℃と推定した上で、前記(1)式に従い過熱温度を推定することができる。
(11)本発明において、(1)、(2)、(4)、(6)のいずれかに一項に記載の過熱温度推定方法を実施するにあたり、グリセリンと脂肪酸のエステルでトリグリセリド構造を有し、脂肪酸のうち少なくとも1種は不飽和脂肪酸である植物系天然エステルを主体とする天然エステル系絶縁油であって、前記油入機器に収容されている検査対象天然エステル系絶縁油中のH、CH、C、C、C、C、Cガスを油中ガス分析で測定し、その発生量の多い順に並べた際の第1番目のガス種と第2番目のガス種を求め、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスが他のいずれかのガスの場合であり、Cガス発生量/Cの比率が0.5未満の場合に局所過熱温度を300〜400℃と推定し、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスであり、Cガス発生量/Cガス発生量の比率が0.5以上の場合に、局所過熱温度を500℃と推定し、第1番目のガスがCガスである場合、局所過熱温度を600〜700℃と推定した上で、推定過熱温度が500℃未満であった場合、第1のケースとして前記ガスAをCガスに前記ガスBをCガスに設定するか、第2のケースとして前記ガスAをCガスに前記ガスBをCガス+Cガスに設定するか、第3のケースとして前記ガスAをCガスに前記ガスBをCHガス+Cガスに設定するかのいずれかを選択し、推定過熱温度が500℃以上であった場合、前記ガスAをCガスに前記ガスBをC+Cガスに設定することができる。
(12)本発明において、(4)、(10)、(11)のいずれか一項に記載の天然エステル系絶縁油として大豆油またはEnvirotemp FR3(カーギル社商品名)、または菜種油を用いることができる。
(13)本発明において、(1)、(2)、(5)、(6)のいずれか一項に記載の過熱温度推定方法を実施するにあたり、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールの少なくとも1種以上からなるポリオールエステルと、直鎖及び分岐の飽和脂肪酸との合成エステルを主体とする合成エステル系絶縁油であって、前記油入機器に収容されている検査対象合成エステル系絶縁油中のH、CH、C、C、Cガスを油中ガス分析で測定し、その発生量の多い順に並べた際の第1番目のガス種と第2番目のガス種を求め、第1番目のガスがHガス、第2番目のガスがCガスか、CHガスか、Cガスのいずれかであり、あるいは、第1番目のガスがCガスであるか、CHガスであるか、Cガスである場合、局所過熱温度を300℃と推定し、第1番目のガスがCガスである場合、局所過熱温度を300〜500℃と推定し、第1番目のガスがCガスである場合、局所過熱温度を600〜700℃と推定した上で、前記(1)式に従い過熱温度を推定することができる。
(14)本発明において、(1)、(2)、(5)、(6)のいずれかに一項に記載の過熱温度推定方法を実施するにあたり、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールの少なくとも1種以上からなるポリオールエステルと、直鎖及び分岐の飽和脂肪酸との合成エステルを主体とする合成エステル系絶縁油中のH、CH、C、C、Cガスを油中ガス分析で測定し、その発生量の多い順に並べた際の第1番目のガス種と第2番目のガス種を求め、第1番目のガスがHガス、第2番目のガスがCガスか、CHガスか、Cガスのいずれかであり、あるいは、第1番目のガスがCガスであるか、CHガスであるか、Cガスである場合、局所過熱温度を300℃と推定し、第1番目のガスがCガスである場合、局所過熱温度を300〜500℃と推定し、第1番目のガスがCガスである場合、局所過熱温度を600〜700℃と推定した上で、推定過熱温度が500℃未満であった場合、前記ガスAをCガスに前記ガスBをC+Cガスに設定し、推定過熱温度が500℃以上であった場合、第1のケースとして前記ガスAをCガスに前記ガスBをCガスに設定するか、第2のケースとして前記ガスAをCガス+Cガスに前記ガスBをCガスに設定することができる。
(15)本発明において、(5)、(13)、(14)のいずれか一項に記載の合成エステルを主体とするエステル系絶縁油としてポリオールエステル油またはMIDEL7131(M&I Materials社商品名)を用いることができる。
本発明によれば、エステル系絶縁油を用いた変圧器などの油入機器における異常過熱時温度を推定できることから、過熱事故のレベルと、その後の修理法の判断ができるようになり、油入機器の迅速な復旧に繋がる効果を奏する。
本発明による推定方法では、植物油由来エステル系絶縁油、トリグリセリドを主体とする植物系天然エステルを主体とする絶縁油、合成エステルを主体とするエステル系絶縁油のいずれかについて±50℃以内の精度でいずれかの温度域に対応する異常過熱がなされたのか推定できる。
本発明に係る過熱温度推定方法に使用する基礎データを取得するための試験装置の一例を示す断面図。 パームヤシ脂肪酸エステル油の構造式を示す図。 大豆油の構造式を示す図。 合成エステル油の構造式を示す図。 実施例において得られた鉱油とパームヤシ脂肪酸エステル系絶縁油と大豆油と合成エステル油の試験ガス分析結果を示す図。 実施例において得られた温度毎の(Cガス+Cガス)/(CHガス+Cガス)の比と関係式および定数a、bの関係を説明するためのグラフ。
<第1実施形態>
以下、本発明に係る過熱温度推定方法の一実施形態について図面に基づき説明する。
「実施の前工程」
本実施形態は、エステル系絶縁油を使った変圧器内部で過熱があったと判断される場合に適用する。実施に先立って以下に示す、油種の特定、絶縁油中ガス分析、異常の有無判断、過熱・放電の判断を行う。
(油種の特定)
エステル系電気絶縁油は油種によって発生するガス挙動が大きく異なるため、まず油種の特定を行う。油種の特定は、事前の情報による他、赤外線分光分析やガスクロマトグラフ、ガスクロマトグラフ質量分析など各種分析手段によって特定してもよい。
(絶縁油中ガス分析)
エステル系絶縁油中に含まれるHガス、CHガス、Cガス、Cガス、Cガス、Cガス、Cガス、Cガス(油中ガス分析で測定する炭素数2の炭化水素の合計でC+C+Cを指す)、Cガス(油中ガス分析で測定する炭素数3の炭化水素の合計でC+Cを指す)のうち少なくとも2種類を分析する。絶縁油中のガスを分析する方法は、限定せず、公知の分析方法を用いる。使用する分析装置もエステル系絶縁油中のガス成分を分析できる装置であればよく、例えばガスクロマトグラフが挙げられる。
(異常の有無判断)
前記、絶縁油中ガス分析の結果から、内部異常の有無を判断する。例えば、鉱油を用いた変圧器で行われているように、実器変圧器の分析データを多数収取し、統計学的な処理によって閾値を決定する方法や、定期的なガス分析の実施により、ガス増加量の変化によって判断する方法などが考えられる。
(放電・過熱の判断工程)
内部異常ありと判断された場合、放電の有無を判断し、放電がなければ、過熱であると推定できる。放電特有の分解成分の検出によって放電に有無を判断する方法などが考えられる。エステル系絶縁油においても鉱油同様、放電が発生した場合、Cガスが発生することが知られており、本発明者らの実験によって過熱ではほとんど発生しないことが分かっている。このことからCガスの分析によって放電の有無を判断できる可能性がある。また、微小放電の場合は絶縁油から水素ガスが出てくることもある。
<エステル系絶縁油の局所加熱実験>
本発明者らは、エステル系絶縁油中で過熱があった際、どのようなガスが発生するかを調査する目的で局所加熱実験を行った。
図1は油入変圧器の局所過熱温度を推定するための基礎データを得るために用いる加熱試験装置の一実施形態を示す。この形態の加熱試験装置1は、ステンレス鋼から構成された中空の容器2と、その上部に接続された円筒ガラスからなる収容部3と、その上端部に取り付けられたステンレス鋼製の上蓋5を備えた概略構造を有している。
容器2の相対向する側壁を貫通するように電極導体6、6が設けられ、容器2の中央側で相対向する電極導体6の先端部にL字型の電極7が取り付けられ、これら電極7、7の間に金属製の短冊状の加熱導体8が水平に支持されている。容器2の側壁を電極導体6が貫通する部分に絶縁部材6aが挿通されて電極導体6が側壁2と絶縁分離されている。
電極導体6の外部には電源Pに接続された電源線4が接続され、電極導体6と電極7を介し電源Pから加熱導体8に通電できる。加熱導体8は、一例として、幅20mm、長さ80mm、厚さ0.35mm程度の薄板状の金属板からなる。
図1では加熱導体8の外形は略されているが、加熱導体8の両端部に着脱用の係止孔が形成され、これらの係止孔を介しボルト等の固定具を電極支持板7に形成されているネジ孔に螺合することで電極7、7の間に加熱導体8を橋渡し状に着脱自在に固定することができる。
収容部3は容器2の天井部に接続されているが、容器2の天井部に収容部3より若干内径の小さな貫通孔2aが形成され、この貫通孔2aにより収容部3の内部空間と容器2の内部空間が連通されている。本実施形態では、容器2と収容部3の内部に検査対象となる絶縁油Lが収容されている。なお、図1の例では収容部3の4/5程度を占めるように絶縁油Lが収容され、収容部3の上端側内部に空間部Sが設けられている。
容器2の底部側には容器2を水平支持するためのステンレス鋼板製の基台9が取り付けられ、この基台9の中央下部側に攪拌用のマグネチックスターラー本体10が設置され、容器2の底板上面側にマグネチックスターラーの攪拌子11が設置されている。なお、図1では略されているが、容器2の背面側に窒素ガス供給源に接続された窒素ガス注入管が接続され、容器2の内部側に窒素ガスを供給することができる。
収容部3の上蓋5に螺旋往復管からなる冷却管12が収容部3の底部側まで延在するように吊下されている。冷却管12の内部に水などの冷媒を循環することで収容部3内の絶縁油Lを冷却することができる。上蓋5の一部を貫通するように一対の熱電対線13が設けられ、熱電対線13の下端部が加熱導体8の中央部に接続され、熱電対線13の反対側は別途外部に配置された温度計測器15に接続されている。熱電対線13は温度計測器15によって加熱導体8の上面温度を計測するために設けられている。なお、上蓋15を熱電対線13が貫通する部分には気密用のシールキャップ14が取り付けられている。
また、上蓋5の他の一部分を貫通するように排気管16が上下方向に設けられ、排気管16の上部側に圧力ゲージ17が接続され、排気管16の途中部分に分岐管16aを介し別途外部に配置されている真空ポンプ18が接続されている。この真空ポンプ18の動作によって収容部3内の空間部Sから脱気することができる。なお、空間Sを真空ポンプPで脱気しながら収容した絶縁油Lを攪拌子11で撹拌することで油中の不要ガスを取り除くことができる。
前記熱電対線13の一方はクロメル線からなり、他方はステンレス鋼線からなる。加熱導体8が例えばSUS304製の金属板からなり、熱電対線13の他方の線がSUS304製のステンレス線からなる場合、加熱導体8の一部にクロメル線とステンレス線をコンデンサスポット溶接することで、加熱導体8をそのまま熱電対の一部として使用することができ、ステンレス線とクロメル線間の熱起電力から加熱導体表面の温度を測定することができる。
なお、加熱導体8がむき出しの状態では高温加熱に問題を生じるため、加熱導体中央から左右に10mmの範囲をガラステープで保温した。ガラステープは、使用前に加熱処理しテープからガスが発生しないように配慮することが好ましい。
加熱導体の温度計測と温度調整
実験する場合の温度調整は、ガラステープで保温してある領域について5点の温度を測定し、この中で最も温度が高い部分を試験温度に調整するという方法を採用する。
図1に示す構造の加熱試験装置1を用い、収容部3に図2に示す構造式で示されるパームヤシ脂肪酸エステル油(PFAE)か、図3に示す構造式で示される大豆油(FR3)か、図4に示す構造式で示される合成エステル油(MIDEL)のいずれかの絶縁油を収容して基礎データを得るための加熱試験ができる。ここで用いるエステル系絶縁油は300℃以上熱履歴がない絶縁油で検査対象の絶縁油と同種で劣化していないものを用いることが好ましい。
エステル系絶縁油としてのパームヤシ脂肪酸エステルは植物油由来脂肪酸エステルに分類できるので、植物油由来エステルとしては、他にステアリン酸エステルやパルミチン酸エステルなどの飽和脂肪酸とアルコール(任意)のエステルを用いることができる。
大豆油は天然エステルに分類できるので、他に菜種油、サンフラワー油、ひまわり油など不飽和脂肪酸を含むトリグリセリドの油を用いることができる。
ポリオールエステルは合成エステルに分類でき、MIDELはペンタエリスリトール脂肪酸エステルであるので、他にポリオールエステルは、ネオペンチルグリコールやトリメチロールプロパンなどが考えられ、これらのアルキル基の部分は任意のエステルを用いることができる。
これら各種のエステル系絶縁油について以下に詳述する。
植物油由来の飽和脂肪酸と分岐及び脂肪族アルコールからなるエステルを主体とする植物油由来エステル系絶縁油は、換言すると植物油由来脂肪酸エステル(飽和脂肪酸)系絶縁油と称することができる。この植物油由来エステル系絶縁油は、化学構造が植物油由来の飽和脂肪酸と分岐及び脂肪族アルコールからなるエステル化物か、あるいは、前記エステル化物100質量部に対し5質量部以下の添加剤(酸化防止剤、流動点降下剤、流動帯電防止剤等)を配合した絶縁油として定義できる。従って、植物油由来脂肪酸エステル系絶縁油は、化学構造が植物油由来の飽和脂肪酸と分岐及び脂肪族アルコールからなるエステル化物を主体とした絶縁油と定義できる。また、より具体的に前記エステル化物は、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸から選ばれる1種または2種以上の脂肪酸と、炭素数6〜14の分岐脂肪族1価アルコールとのエステル化物とも表記できる。
上記脂肪酸は、ヤシ油、パーム核油、大豆油、パーム油などの植物油由来のものである。また、脂肪酸は、化学的に安定な飽和脂肪酸である。
炭素数6〜14の分岐脂肪族1価アルコールとしては、例えば、2−エチルブチルアルコール、2−エチルペンチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、2−エチルオクチルアルコール、2−エチルラウリルアルコール、2−ブチルブチルアルコール、2−ブチルオクチルアルコール、2−ヘキシルヘキシルアルコール、2−ヘキシルオクチルアルコール、3−エチルヘキシルアルコール、3―エチルオクチルアルコール、3−エチルラウリルアルコール、イソデシルアルコール、イソトリデシルアルコール等が挙げられ、これらは1種単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
脂肪酸と炭素数6〜14の分岐脂肪族1価アルコールとのエステル化物は、これらの脂肪酸とアルコールとのエステル化物であれば、特に限定されるものではないが、カプリル酸イソトリデシル、カプリン酸イソトリデシル、ラウリン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸イソトリデシル、ミリスチン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸イソトリデシル、およびこれらの2種以上の混合物等を用いることで、電気絶縁油としての電気特性に優れたものとなる。
大豆油などの植物油は、グリセリンと脂肪酸のエステルでトリグリセリド構造を有し、脂肪酸のうち少なくとも1種は不飽和脂肪酸である植物系天然エステルを主体とするエステル系絶縁油である。植物油はグリセリンに化学結合した3つの脂肪酸を有するもので、一例として図3に示す一般式で表される。
脂肪酸は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、エルカ酸、パルミチオル酸、ドコサジエン酸、リグノセリン酸、テトラコセン酸、マルガリン酸、マルガロレン酸、ガドレイン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ペンタデカン酸及びヘプタデカン酸等の幾つかの異なる脂肪酸がある。脂肪酸と、結果として得られる植物油とは、それらの飽和度が異なる場合がある。トリグリセリド分子上の3つの脂肪酸は、全て同じ種類のものであっても、2種又は3種の異なる脂肪酸からなっていてもよい。トリグリセリドの組成は、化学種ごとに変わり、また、さほどではないが個々の化学種の系統ごとに変わるが、1つの系統から誘導される植物油は本質的に同じ脂肪酸組成を有する。
植物油として、前述の油の他に、ヒマワリ油、菜種油(カノーラ油)、綿実油、オリーブ油、ベニバナ油、ホホバ油、レスケレラ油、及びベロニア油なども適用できる。
ここで用いる植物油は、これら天然エステルからなるか、これら天然エステル100質量部に対し5質量部以下の添加剤(酸化防止剤、流動点降下剤、流動帯電防止剤等)を配合した絶縁油として定義できる。
合成エステルは、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールの少なくとも1種以上からなるポリオールエステルと、直鎖及び分岐の飽和脂肪酸とのエステル化物を主体としてなる。
ここで用いる合成エステルを主体とするエステル系絶縁油は、これら合成エステルからなるか、あるいはこれら合成エステル100質量部に対し5質量部以下の添加剤(酸化防止剤、流動点降下剤、流動帯電防止剤等)を配合した絶縁油として定義できる。
合成エステルは、一例として図4に示す一般式で示されるが、図4の一般式において末端の3つのRは同一であっても異なっていても良く、C〜C22の炭素鎖を有し、0〜3の不飽和度を有することができる。
合成エステルの一例として、ネオペンチルグリコールとトリメチロールプロパン及び/又はペンタエリスリトールとのアルコールと、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸から選定された2種以上のカルボン酸とからなるエステル化物を50質量%以上含有する絶縁油とすることができる。前記混合カルボン酸が、n-ペンタン酸、n-ヘキサン酸、n-ヘプタン酸、n-オクタン酸、n-ノナン酸、n-デカン酸から2種以上を選定できる。
本実施形態の後の説明ではエステル系絶縁油について、植物油由来脂肪酸エステルを主体する植物由来脂肪酸エステル系絶縁油、グリセリンと脂肪酸のエステルでトリグリセリド構造を有する植物系天然エステル主体のエステル系絶縁油、合成エステルを主体とするエステル系絶縁油の3種類に分類して説明する。
しかし、本発明を適用可能なエステル系絶縁油において、植物油由来脂肪酸エステルとして不飽和脂肪酸を主体とするエステル系絶縁油も例示できる。これは植物油由来の不飽和脂肪酸と炭素数6〜14の分岐及び脂肪族1価アルコールからなるエステルおよびそれに添加剤(酸化防止剤、流動点降下剤、流動帯電防止剤等)を配合した絶縁油であると定義できる。また、より詳しくは、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸と炭素数6〜14の分岐及び脂肪族1価アルコールからなるエステルと定義できる。
この不飽和脂肪酸を主体とする植物油由来脂肪酸エステルは、菜種油、トウモロコシ油などの植物油と低級アルコールによるエステル化物を主体とする電気絶縁油である。
菜種油とエステル交換反応に用いるアルコールは、一般工業用のイソブチルアルコールの他、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール類、ブチルアルコール類、アミルアルコール類、n−ヘキシルアルコール、n−ヘブチルアルコール、オクチルアルコール類とベンジルアルコールでも、菜種油とのエステル交換反応により、脂肪酸エステルを得ることが可能である。
不飽和脂肪酸を主体とする植物油由来脂肪酸エステルとして他に、とうもろこし油、紅花油と低級アルコールによるエステル化物を用いることもできる。低級アルコールとして、アルキルアルコール、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール類、ブチルアルコール類、アミルアルコール類、ペンチルアルコール類、ヘキシルアルコール類、ヘプチルアルコール類、オクチルアルコール類とベンジルアルコール類が挙げられる。
植物油由来脂肪酸エステルとして不飽和脂肪酸を主体とするエステル系絶縁油に対し本発明を適用する場合、不飽和脂肪酸を主体とするエステル系絶縁油は化学構造からみて、植物系天然エステルを主体とするエステル系絶縁油と同等の傾向と示すと思われる。
このため、不飽和脂肪酸を主体とするエステル系絶縁油は、後に説明する植物系天然エステルを主体とするエステル系絶縁油と同等の方法により過熱温度の推定ができる。
以上説明した各種のエステル系絶縁油を用いる加熱試験は以下に説明する手順で行うことができる。
前記のいずれかの絶縁油をJIS5種Cのろ紙でろ過しながら容器2と収容部3に注入する。容器2と収容部3の合計容量の80%程度まで絶縁油を注入した後、真空ポンプ18にて空間部Sを脱気し、マグネチックスターラーの攪拌子11で絶縁油を攪拌しながら減圧する。この操作で絶縁油中の不要ガスを窒素で飽和して除去することができる。
減圧終了後、容器2に接続されている窒素ガス供給管から容器内部に窒素ガスをバブリングにより吹き込み、空間部Sを窒素で置換する。また、内部の絶縁油中のガスを窒素で飽和することによって追い出す効果も得ることができる。
冷却管12に5℃一定にした冷却水を流してから加熱導体8に通電し、絶縁油を加熱する。加熱温度の制御は熱電対線13による温度測定値を確認しながら電源装置Pの電圧・電流を制御し、加熱導体8の温度を300℃、400℃、500℃、600℃、700℃のいずれかの温度になるように調整し、各温度での試験を行うことができる。
加熱試験を開始してから所定時間過後、空間部Sにおける空間ガスと装置内部の絶縁油を採取し、油面上ガスと油中ガスをガスクロマトグラフにより分析し、それらの合計から以下の7種類のガスの比率を求める。
ガスクロマトグラフによるガス分析では、Hガスと、CHガスと、Cガスと、Cガスと、Cガスと、Cガスと、Cガスのそれぞれの量を計測してそれらのガス発生量を求め、発生量の大きいガスから順に第1番目のガスと第2番目のガスを特定する。
なお、加熱試験に際し、植物油由来エステル系絶縁油(パームヤシ脂肪酸エステル油:PFAE)の場合、植物系天然エステルを主体とするエステル系絶縁油(大豆油:FR3)の場合、合成エステルを主体とするエステル系絶縁油(MIDEL)の場合、各温度毎に以下に記載する時間でガスクロマトグラフによる分析を行うことができる。
「PFAE」
300℃ 0、6、12、24、48時間
400℃ 0、3、6、9、12時間
500℃ 0、3、6、9、12時間
600℃ 0、1、2、3、6時間
700℃ 0、20、40、60分
「FR3・MIDEL」
300℃ 0、4、8、12、15時間
400℃ 0、3、6、9、12時間
500℃ 0、3、6、9、12時間
600℃ 0、1、2、3、6時間
700℃ 0、20、40、60分
「菜種油」
300℃ 0、4、8、12、15時間
400℃ 0、3、6、9、12時間
500℃ 0、3、6、9、12時間
600℃ 0、1、2、3、6時間
700℃ 0、15、30、45分
上述の如く加熱する場合、低い温度においてガスの発生量が少なく、分析できる濃度に達するまでに時間がかかるとともに、高い温度ではガス発生量が多いため装置の内圧が直ぐに上昇してしまい、長時間の試験ができない問題がある。また、加熱開始直後はガスの発生挙動が安定していないため、ある程度安定した状態でのサンプリングが必要となる。
また加熱試験において、試験温度が変わる場合は、全ての絶縁油を入れ替え、その都度真空脱気、窒素ガスバブリングを行い、絶縁油中のガスがない状態にしてから試験を行う必要がある。
試験開始からガス発生挙動が安定した時点以降の各プロットにおけるガスの量を求め、その量が多い順に並べた際の順番を把握する。
具体的には後述する実施例の如く以下の通りの条件を選定することができる。
「PFAE」
300℃ 12、24、48時間の各時点のガスの量
400℃ 6、9、12時間の各時点のガスの量
500℃ 6、9、12時間の各時点のガスの量
600℃ 2、3、6時間の各時点のガスの量
700℃ 40、60分の各時点のガスの量
「FR3・MIDEL」
300℃ 8、12、15時間の各時点のガスの量
400℃ 6、9、12時間の各時点のガスの量
500℃ 6、9、12時間の各時点のガスの量
600℃ 2、3、6時間の各時点のガスの量
700℃ 40、60分の各時点のガスの量
「菜種油」
300℃ 8、12、15時間の各時点のガスの量
400℃ 6、9、12時間の各時点のガスの量
500℃ 6、9、12時間の各時点のガスの量
600℃ 2、3、6時間の各時点のガスの量
700℃ 30、45分の各時点のガスの量
実際に、後述する実施例において得られたこれら7種類のガス分析結果を一番多いガスの量1として他のガスを規格化すると図5が得られる。図5において、第1番目のガスと第2番目のガスの種類を特定してまとめた結果、以下の表1のように試験加熱温度と発生した第1番目のガス、第2番目のガスに相関関係があることがわかった。
以下の表1において、(1)、(2)などの表記は、分析したガスの量の多いものから並べた場合の順序を示す。
Figure 2017215321
表1に示す関係を列挙すると以下の通りとなる。
検査対象油が植物油由来脂肪酸エステル系絶縁油(パームヤシ脂肪酸エステル系絶縁油:パステルNEO:ライオン株式会社商品名)の場合、
300℃に加熱すると、第1番目のガスがHガス、第2番目のガスがCHガスであるか第1番目のガスがCHガス、第2番目のガスがH又はCガスであった。
400℃に加熱すると、第1番目のガスがHガス、第2番目のガスがCガスであるか第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがH又はC又はCガスであった。
500℃に加熱すると、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスであるか、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスであった。
600〜700℃に加熱すると、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスであるか、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCHガスであるかCガスであった。
検査対象油が大豆油:トリグリセリドを主体とするエステル系絶縁油(FR3)の場合、
300〜400℃に加熱すると、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCHガスであるかHガスであった。
500℃に加熱すると、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスであった。
600〜700℃に加熱すると、第1番目のガスがCガスであった。
検査対象油が菜種油:トリグリセリドを主体とするエステル系絶縁油(サンオームECO:株式会社かんでんエンジニアリング商品名)の場合、300℃〜400℃に過熱すると、第一番目のガスがCガス、第2番目のガスがCか、Hガスか、Cガスか、CHガスか、Cガスであった。なお、これら第2番目のガスはいずれも発生量が少なく、対比は難しいとも考えられるので、第2番目のガスは、上述のガスに加えてCガスとなる場合も考えられ、結果として第2番目のガスは、Cガス以外の残りのガスのいずれかと判断できる。
500℃に加熱すると、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスであった。
600〜700℃に加熱すると、第1番目のガスがCガスであった。
検査対象油が合成エステルを主体とするエステル系絶縁油(MIDEL)の場合、
300℃に加熱すると、第1番目のガスがHガス、第2番目のガスがCガスか、CHガスか、Cガスのいずれかであり、あるいは、第1番目のガスがCガスであるか、CHガスであるか、Cガスであった。
400〜500℃に加熱すると、第1番目のガスがCガスであった。
600℃〜700℃に加熱すると、第1番目のガスがCガスであった。
以上説明のようにパームヤシ脂肪酸エステル系絶縁油、大豆油、菜種油、合成エステル系絶縁油において、300〜700℃のいずれかの温度に局部加熱された場合、表1と上述した関係に示すガスが発生することがわかった。
このため、実際にパームヤシ脂肪酸エステル系絶縁油、大豆油、菜種油、合成エステル系絶縁油のいずれかが使用されている油入機器に対し、使用中の絶縁油を採取し、使用中の絶縁油の油中ガス分析を行い、ガスの量を多い順から並べた第1番目のガスと第2番目のガスの特定を行えば、上述と表1に示す関係から油入機器の過熱温度を推定できる。
即ち、使用中の絶縁油の油中ガスのうち、Hガスと、CHガスと、Cガスと、Cガスと、Cガスと、Cガスと、Cガスの量を測定し、量が多い順に並べた場合の第1番目のガスと第2番目のガスの特定を行い、表1に示す関係に当てはめるならば、表1に示す加熱温度を油入機器の過熱温度と推定できる。
なお、表1の分類においては、例えば300℃過熱は低温過熱、400〜500℃は中温過熱、600〜700℃は高温過熱であるとする段階的な概略判断ができる。
パームヤシ脂肪酸エステル系絶縁油、大豆油、合成エステル系絶縁油などのエステル系絶縁油を使用している油入機器において、このような過熱温度の概略判断ができること自体、有用であり、この概略判断の結果を基に、必要があれば、更に精密な検査を実施するなどの手段を講じることができる。これによって油入機器の安全運転に寄与する。
なお、絶縁油中のガス分析法については、非特許文献1(電協研65巻)の鉱油変圧器の油中ガス分析による保守管理法の中に記載されている。今回の加熱試験に先立ち、電協研法同等の分析法にて検証を行った結果、問題なく分析できることを確認した。それぞれの油種や分析装置によって条件は異なるため、個々の条件で確認は必要であるが、エステル系絶縁油の油中ガス分析についても電協研法と同様な方法が利用できると考えられる。
前述の実施形態においては、油入変圧器の場合を想定して過熱温度の推定を行う方法について説明したが、本実施形態の過熱温度推定方法は、油入リアクトル、油入コンデンサー、油入ケーブル、冷凍機油などの油入機器における過熱温度の推定方法に適用できるのは勿論である。
表1に示す結果が示すように、エステル系絶縁油のガス発生挙動と鉱油のガス発生挙動は異なっており、エステル系絶縁油でも油種によってその特徴が違っていることが分かった。温度毎に発生ガス量の比率のパターンに大きな差があり、その特徴から温度推定が可能であることがわかる。本実施形態では、ガスの量を大きい順に並べ、その1番目と2番目が、どの成分であるかによって温度推定を行う。推定に用いる分類は表1に示す通りである。なお、Hガスについては、変圧器内の発生原因が様々であることが知られており、条件によって全体のガスの発生量に対するHガス比率が変化することが考えられる。このためHガスについては、その次の順位以降のものと逆転することも考慮した。
第1実施例の推定方法では特定の温度あるいは特定の温度範囲について過熱温度を推定する方法であるが、より詳細な過熱温度推定を行うために、以下の第2実施形態の推定方法を実施するか、以下の第2実施形態の推定方法と第1実施形態の推定方法を併用して過熱温度を推定することができる。以下に第2実施形態について説明する。
<第2実施形態>
第2実施形態では、ガスの量の比率と過熱温度の関係を式で表すことにより、より詳細に過熱温度の推定を可能とする。鉱油を使った変圧器では、発生する飽和炭化水素と不飽和炭化水素の比と過熱温度の関係式によって過熱温度の推定を行っている。推定に使うガス比率の代表的なものはC/Cであり、日本国内で広く用いられている。
これは、飽和炭化水素と不飽和炭化水素の結合エネルギーの差によるもので不飽和の方が生成するのにより多くのエネルギーを必要とするため、分解温度が高くなると不飽和炭化水素の比率が高くなる。
エステル系絶縁油においても同様のことが言えるが、本発明者らの実験によってこれらの炭化水素の発生挙動は鉱油とエステル系絶縁油ではかなり異なっていることが判明した。したがって指標に用いるガス成分の組み合わせや関係式は、鉱油のものとは異なると考えられる。
そこで上述した局所加熱実験の結果から様々なガス発生量(又は複数の発生ガス量の合計)の比と加熱温度の関係を式に表し、エステル系絶縁油の過熱温度推定に適したものを選定した。
温度推定に適したガス成分の組み合わせと温度の関係式の条件として以下の3つを挙げることができる。
1)300℃〜700℃の温度範囲で相関性がある。
横軸に温度、縦軸に指標をとって図示した場合、右肩上がりの関係となり、全ての温度範囲でその関係が逆転しない。
2)関係式の相関係数(r)が0.8以上である。
3)温度推定精度は±50℃以内である。
実験のばらつきを考慮した場合でも、±50℃以内の精度で温度推定が可能なものとする。実験のばらつきは、測定毎のガス比率のばらつき(標準偏差の2倍=2σ)とする。
ガスの比率と温度の関係式を以下の(1)式に示す。前記条件にあてはまるガス成分の組み合わせと温度推定式の定数を以下の表2に示す。なお、変曲点があるものについては、温度範囲ごとに分けて記載した。
ガスA/ガスB=b・ea・t …(1)式
但し(1)式において、ガスA:特定の1種または複数(例えば2種)のガスの合計量、ガスB:分析したガスのうち残った特定の1種のガス量または複数(例えば2種や3種)のガスの合計量、a:定数、b:定数、t:過熱温度(℃)を示す。
なお、ここで求めた(1)式は、実験式であるため、実験や測定などのばらつきから、ある幅を持っていると考えられる。そこで実験のばらつきの範囲を算出し、関係式がとりうる範囲について検討した。実験のばらつきから各プロットが取りうる範囲を求め、このすべてが入る範囲が関係式の取りうる範囲であると考えた。
まず、実験のばらつきについて検討した。本実施形態では、加熱開始から時間経過毎にサンプリングを行いガスの増加量から発生ガス量の比率を算出している。この際、時間経過毎の発生ガス量の比率のばらつきを実験のばらつきと考えることができる。そこで実験条件ごとのばらつきを標準偏差の2倍(2σ)として計算し、これを実験のばらつきと定めた。尚、実験開始直後のデータについては、装置の状態などの影響で不安定であるため除外した。
前述の(1)式の取りうる範囲の推定は、各プロットの2σの範囲が全て入る直線(2σの10%外側)で囲まれた範囲と考えた。表2にはこの範囲に入る関係式の定数の範囲を併せて記載している。
図6に(1)式の定数a、bを求めるための手順の一例を示す。
測定対象の油入機器内のエステル系絶縁油と同種のエステル系絶縁油を用い、先の第1実施形態において用いた加熱試験装置1を用い、温度毎のガス発生量を測定する。図6に示す例では、300℃加熱、400℃加熱、500℃加熱、600℃加熱、700℃加熱の場合のガスA/ガスBの比率を求めている。
図6の例では、ガスAをCガス+Cガスに設定し、前記ガスBをCHガス+Cガスに設定した場合の結果を示している。図6の横軸を分析した際の測定対象エステル系絶縁油の温度(℃)、縦軸にガスAとガスBの比率、ガスA/ガスB=(Cガス量+Cガス量)/(CHガス量+Cガス量)を示している。
図6の例ではエステル系絶縁油300℃の場合の発生ガス量の比率と、エステル系絶縁油400℃の場合の発生ガス量の比率と、エステル系絶縁油500℃の場合の発生ガス量の比率と、エステル系絶縁油600℃の場合の発生ガス量の比率と、エステル系絶縁油700℃の場合の発生ガス量の比率をグラフ内にプロットしている。これらのプロットした位置を近似曲線で結ぶと図6の実線となり、この実線は500℃を変曲点として500℃未満の温度領域と500℃以上の温度領域で異なる傾きの実線となる。
300℃以上、500℃未満の領域の実線はy=0.0645e0.0057x,R=0.9977の関係式で示され、500℃以上700℃以下の領域の実線はy=0.2128e0.0032x,R=0.9829の関係式で示される。そして、これらの各プロット位置に実験の誤差(2σ)+10%を加えた範囲を鎖線のように上方と下方に書き込み、これらの鎖線で挟まれる範囲を誤差範囲と推定する。
図6に示すグラフから、300℃以上、500℃未満の領域の実線の傾きが判り、加熱試験装置1で加熱した場合の加熱温度が判っているのでガスA/ガスB=b・ea・t …(1)式の300℃以上、500℃未満の領域における定数aと定数bを求めることができる。同様に500℃以上700℃以下の領域における定数aと定数bを求めることができる。
このため、油入機器に収容されている測定対象のエステル系絶縁油の油中分析を行い、得られた結果のガスAとガスBの比率(図6のケースの場合、ガスAをCガス+Cガス、ガスBをCHガス+Cガスとする)から、油入機器の過熱温度を計算で推定することができる。
図6に示す例では、ガスAをCガス+Cガス、ガスBをCHガス+Cガスとしたが、その他複数種類のガスAとガスBの組み合わせを用いることができる。
ここで用いるガスAとガスBの組み合わせについて、以下の表2にまとめて示す。
また、表2には、後述する実施例において得られた結果に基づき得られた定数aの値、定数bの値とそれらの範囲についても併記している。表2に示す結果は、図1に示す加熱試験装置1に繰り返し異なる種類のエステル系絶縁油を収容して温度毎に加熱試験を繰り返し、ガスAとガスBの組み合わせのそれぞれについて図6に示すグラフを描いて定数aと定数bを求めた結果をまとめて示している。
表2に示す結果は、図6に示すガスAをCガス+Cガス、ガスBをCHガス+Cガスに設定して各温度におけるガスA/ガスBの値と(1)式の定数a、bを算出した場合と同様に、ガスAとガスBを別のガス種の組み合わせに替え、その場合の定数a、bを算出した結果をまとめて示している。
Figure 2017215321
表2に示すそれぞれの結果の関係式を傾きの大きさから評価し、最適のものを選出することができる。
表2の評価の欄には、それぞれの傾きの順位を示している。求めた関係式は500℃で変曲点を有しているものが多かったため、500℃未満と500℃以上で場合分けし、それぞれの範囲における傾きを求め、この平均から総合的に判断した。なお、表2において500℃を変曲点とする場合のように温度によって近似曲線に変曲点が存在する場合は、変曲点におけるガスA/ガスBの値を算出してそれぞれ記入した。
これらの結果から、パームヤシ脂肪酸エステル油(パステルNEO)では、C/CH、(C+C)/(CH+C)及び(C+C)/(CH+C)を指標に用いる場合が最も傾きが大きく温度推定の精度が高いと考えられる。これらは表2の総合評価2と2.5のケースである。
大豆油(FR3)では、C/(C+C)及び(C+C)/(C+C)を指標に用いる場合が最も傾きが大きく温度推定の精度が高いと考えられる。これらは表2の総合評価3のケースである。
合成エステル油(MIDEL7131:M&I Material社製、M&I Material社商品名)では、C/C、C/(C+C)及びC/(CH+C+C)を指標に用いる場合が最も傾きが大きく温度推定の精度が高いと考えられる。これは表2の総合評価2のケースである。
これら温度推定の精度が高いと思われる指標を選択することでより高精度で過熱温度の推定ができる。
なお、表2の多くの試料においては変曲点を有していたが、変曲点を有しておらず、1つの直線で近似できるものがあった。パームヤシ脂肪酸エステル油(パステルNEO)の場合、変曲点を有しないガスA/ガスBの組み合わせは、(C+C)/(CH+C)の組み合わせの場合であるが、この組み合わせの評価は低かった。大豆油(FR3)では3つの組み合わせにおいて変曲点を有していなかったが、これらの場合はいずれも組み合わせの評価は低かった。
合成エステル油(MIDEL7131)の場合、ガスA/ガスBの組み合わせC/(CH+C+C)の場合に変曲点を有していなかったが、組み合わせの評価は高くなった。
なお、表2に示す結果を把握した上で油入機器から採取した測定対象のエステル系絶縁油に対し電協研法などで油中ガス分析を行い、表2に示す組み合わせで高精度の過熱温度推定が可能なガスAとガスBの組み合わせを選択し、油中ガス分析の結果によりその比率を求める。
この場合、ガスA/ガスB=b・ea・t …(1)式において、ガスA/ガスBは油中ガス分析の結果から算出でき、表2に示すようにガスAとガスBの組み合わせによる定数a、bが判るので、(1)式を方程式としてその解を求めると、過熱温度t(℃)を計算で求めることができる。これにより測定対象のエステル絶縁油の過熱温度を推定することができる。
<第3実施形態>
なお、各エステル系絶縁油の加熱温度とガス発生率の関係を調査した結果、関係式の傾きが大きく、高精度な温度推定を見込めるが、ある温度を境に温度とガス比率の関係が逆転するものがあることが分かった。これをこのまま利用した場合、温度の推定を誤ることとなる。
一方、先の表1に記載の方法によれば、温度推定精度は高くないが、過熱温度の範囲を推定できる。したがって、まず、先の表1に記載の方法で温度推定を行い、温度範囲を絞った上でその温度範囲で精度が高いガスの組み合わせを指標とした前記(1)式を選択すれば、温度範囲毎に適した指標を組み合わせて使用することができるため、精度を向上させることができる。
この方法によって先の第2実施形態よりも精度が向上する指標と関係式の組み合わせを選定することができる。
その関係を以下の表3に示した。表3は後述する実施例において第2実施形態の場合と同様、実験のばらつきと曲線の取り得る範囲を求め、定数の範囲を求めた結果を記載したものである。
また、表3には、後述する実施例において得られた結果に基づき得られた定数aの値、定数bの値とそれらの範囲についても併記した。
Figure 2017215321
表3は、先に表2を基に説明し、加熱試験装置1を用いて表2に示すように(1)式の定数a、bを求めた方法と同じ方法を表3に示すガスA、ガスBの組み合わせで実験し、(1)式の定数a、bを算出した結果である。
例えば、パームヤシ脂肪酸エステル油については、表3に示すように、500℃未満の場合、ガスAをCガスにガスBをCHガスに設定する。
500℃以上の場合、第1のケースとしてガスAをCガスにガスBをCガスに設定する。また、第2のケースとしてガスAをCガス+CガスにガスBをCガスに設定し、第3のケースとしてガスAをCガスにガスBをCガスに設定し、第4のケースとしてガスAをCガスにガスBをCガスに設定し、第5のケースとしてガスAをCガス+CガスにガスBをCガスに設定する。第6のケースとしてガスAをCガスにガスBをCHガス+Cガスに設定し、第7のケースとしてガスAをCガスにガスBをCガス+Cガスに設定し、第8のケースとしてガスAをCガス+CガスにガスBをCガス+Cガスに設定し、第9のケースとしてガスAをCガスにガスBをCHガス+Cガスに設定し、第10のケースとしてガスAをCガスにガスBをCHガス+Cガスに設定する。
図6を基に先に説明した手順に従い、(1)式の定数aと定数bを求め、それらの誤差範囲(2σ+10%の範囲)を求める。その結果を表3に併記した。表3に示す通り、(1)式の定数a、bと誤差範囲を求めることができる。
次に、油入変圧器から採取した測定対象のパームヤシ脂肪酸エステル油(パステルNEO:ライオン株式会社商品名)について、油中分析を行う。油中分析は、非特許文献1(電協研65巻)に記載されている電協研法に従って実施できる。
この油中分析によりガスA/ガスBの比率を求めることができるので、表3のガスA、ガスBに当てはめ、(1)式を方程式として解を求めることにより、測定対象のパームヤシ脂肪酸エステル油の過熱温度を推定できる。
次に、大豆油(Envirotemp FR3)と合成エステル油(MIDEL7131:M&I Material社製、M&I Material社商品名)のそれぞれについて、同様の手法により定数aと定数bを求め、それらの誤差範囲を求めた結果を表3に併記する。
表3に示す如くそれぞれ定数a、bと誤差範囲を求めることができる。
表3には、傾きが大きかったものの順位を評価の欄に示している。これによれば、パステルNEOでは500℃未満の範囲では前記ガスAをC、ガスBをCH、500℃以上の範囲では、ガスAをC、ガスBをCに用いた関係式の組み合わせを用いるのが最も精度よく温度推定ができる第1のケースと考えられる。また、表2において評価2のケースとして前記ガスAをCガス+Cガスに前記ガスBをCガスに設定する第2のケースとして適用することもでき、評価3のケースとして前記ガスAをCガスに前記ガスBをCガス+Cガスに設定する第3のケースを適用することもできる。
また、大豆油(FR3)では500℃未満の範囲では前記ガスAをC、ガスBをCを第1のケースとして用い、500℃以上の範囲では、ガスAをC、ガスBを(C+C)を指標に用いた関係式の組み合わせを用いるのが最も精度よく温度推定ができると考えられる。
なお、500℃未満の範囲では第2のケースとして前記ガスAをCガス、前記ガスBをCガス+Cガスに設定するか、第3のケースとして前記ガスAをCガスに前記ガスBをCHガス+Cガスに設定するかのいずれかを選択することもできる。
合成エステル油(MIDEL7131:M&I Material社製、M&I Material社商品名)では500℃未満ではガスAをC、ガスBをC+Cを第1のケースとして用い、500℃以上の範囲では、ガスAをCに、ガスBをCに用いた関係式の組み合わせを用いるのが最も精度よく温度推定ができると考えられる。
なお、500℃以上の範囲では第2のケースとして前記ガスAをC+Cガスに前記ガスBをCガスに設定することができると考えられる。
「実施例1」
図1に示す構成の加熱試験装置を用い、パームヤシ脂肪酸エステル油(パステルNEO:ライオン株式会社商品名)と大豆油(Envirotemp FR3:カーギル社商品名)と菜種油(サンオームECO:株式会社かんでんエンジニアリング商品名)と合成エステル油(MIDEL7131:M&I Material社製、M&I Material社商品名)と鉱油を用いて過熱温度の推定方法に用いる基礎データの収集を行った。
上述の複数のエステル系絶縁油を1つずつ選択し、図1に示す加熱試験装置1により加熱試験を行った。
前記絶縁油をJIS5種Cのろ紙でろ過しながら容器2と収容部3に注入した。容器2と収容部3の内部全容積の80%程度まで絶縁油を注入した後、真空ポンプ18にて空間部Sを減圧・脱気し、マグネチックスターラーの攪拌子11で絶縁油を攪拌しながら脱気した。
減圧・脱気終了後、容器2に接続されている窒素ガス供給管から容器内部に窒素ガスをバブリングにより1時間吹き込み、空間部Sの内部を窒素で飽和した。
その後、冷却管12に5℃一定にした冷却水を流してから、加熱導体8に通電し、絶縁油を加熱した。加熱温度の制御は熱電対線13による温度測定値を確認しながら電源Pの電圧を制御し、加熱導体8の温度が300℃、400℃、500℃、600℃、700℃のいずれかの温度になるように調整した。
加熱開始後、空間部Sにおけるガスを採取し、ガスクロマトグラフにより分析した。ガスクロマトグラフの分析により、HガスとCHガスとCガスとCガスとCガスとCガスとCガスの発生量を測定した。
試験開始からガス発生挙動が安定した時点以降の各プロットにおけるガス量を求め、最も多いガスの量を1として他のガスの量を規格化したものの平均から図5に示す結果を得ることができた。
平均を求める場合の時間設定は以下の通りとした。
「PFAE」
300℃:12、24、48時間の各時点のガスの量
400℃:6、9、12時間の各時点のガスの量
500℃:6、9、12時間の各時点のガスの量
600℃:2、3、6時間の各時点のガスの量
700℃:40、60分の各時点のガスの量
「FR3・MIDEL」
300℃:8、12、15時間の各時点のガスの量
400℃:6、9、12時間の各時点のガスの量
500℃:6、9、12時間の各時点のガスの量
600℃:2、3、6時間の各時点のガスの量
700℃:40、60分の各時点のガスの量
「菜種油」
300℃ 8、12、15時間の各時点のガスの量
400℃ 6、9、12時間の各時点のガスの量
500℃ 6、9、12時間の各時点のガスの量
600℃ 2、3、6時間の各時点のガスの量
700℃ 30、45分の各時点のガスの量
加熱温度に応じてその都度測定する絶縁油は全て入れ替え、真空脱気、窒素ガスバブリングによる窒素置換を繰り返し、温度毎の測定初期条件を一致させた。
前述の4種、合計数20種類の試験用エステル系絶縁油に対し、全て同様の加熱試験を繰り返した。その結果を図5にまとめて示す。また、従来から変圧器用に用いられている鉱油についても同等の加熱試験を行い、その結果を図5に併記した。
図5は分析したHガスとCHガスとCガスとCガスとCガスとCガスとCガスのそれぞれの量比において最大のガス量に対する他の各ガスの量比で示したグラフをまとめたものである。
パームヤシ脂肪酸エステル油(パステルNEO)の試験結果において、図5(A)〜(E)に示す5つのパターンが得られた。
図5(A)に示すように加熱温度300℃の場合、第1番目のガスがHガス、第2番目のガスがCHガスであった。
図5(B)に示すように加熱温度400℃の場合、第1番目のガスがHガス、第2番目のガスがCガスであった。
図5(C)に示すように加熱温度500℃の場合、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスであった。ただし実験ばらつきを考慮すると、第1番目のガスがCで第2番目のガスがCである場合も考えられる。
図5(D)に示すように加熱温度600℃の場合、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスあるいはCHガスであった。
図5(E)に示すように加熱温度700℃の場合、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCHガスであった。ただし実験のばらつきを考慮すると第2番目のガスはCまたはCの場合も考えられる。
なお、Hガスが発生する場合、過去の鉱油変圧器に対する(非特許文献1、p34参照及び非特許文献2参照)知見から発生原因は多種あると推定できるので、加熱の状態が少しでも変化するとHガスが必ずしも1番目のガスになるとは限らないと推定できる。このため、300℃加熱でCHガスを1番目とするパターン、400℃でCガスが1番目となるパターンを考慮し、表1には記載している。
大豆油(Envirotemp FR3)の試験結果において、図5(G)〜(K)に示す5つのパターンが得られた。
図5(G)に示すように加熱温度300℃の場合、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがHガスであった。
図5(H)に示すように加熱温度400℃の場合、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがHガスであった。
なお、Hについては、前述のとおり発生原因が多種あるため加熱温度を示す特徴的なガスとならない場合が考えられる。したがって表1のFR3の300℃と400℃の第2番目のガスはHを除いたCHとなるパターンも記載している。
図5(I)に示すように加熱温度500℃の場合、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスであった。
よって、これらから第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCH又はHガスである場合、過熱温度を300〜400℃と推定できる。ただし、加熱温度300℃及び400℃の場合のC以外のガス発生量は非常に少なく、その差を判断することは困難であるとも考えられる。加熱温度300℃、400℃、500℃の第一番目の発生ガスはいずれもCであるため、第2番目の発生ガス量の比較が明確でないと過熱温度の推定を誤る可能性がある。
加熱温度500℃と400℃以下では、CガスとCガスの比率に大きな差があることが図5(I)と図5(G)と図5(H)の対比からわかる。
したがって、Cガス発生量/Cガス発生量の比率が0.5以上であれば500℃と判断し、0.5以下であれば300℃〜400℃と判断することでより正確に推定できる。
図5(J)に示すように加熱温度600℃の場合、第1番目のガスがCガスであった。ただし実験のばらつきを考慮すると第2番目のガスがC又はC又はCHである場合も考えられる。
図5(K)に示すように加熱温度700℃の場合、第1番目のガスがCガスであった。ただし実験のばらつきを考慮すると第2番目のガスがCH又はC又はCである場合も考えられる。
菜種油(サンオームECO)の試験結果において、図5(L)〜(P)に示す5つのパターンが得られた。
図5(L)に示すように加熱温度300℃の場合、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスであった。なお、C以外のガスについては発生量が非常に少なかったため、測定のばらつきや各変圧器の部材構成の違いなどによって発生量の差が明確に表れないことも考えられる。第2番目のガスはH、CH、C、Cのいずれかである場合も考えられる。
図5(M)に示すように加熱温度400℃の場合、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスが、Hであった。
図5(N)に示すように加熱温度500℃の場合、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスであった。
よって、これらから第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガス、Hガス、CHガス、Cガス、Cガスのいずれかである場合、過熱温度を300〜400℃と推定できる。
しかし、菜種油の場合、加熱温度300℃及び400℃の場合のC以外のガス発生量は非常に少なくその差を判断することは困難であるとも考えられる。
加熱温度300℃、400℃、500℃の第一番目の発生ガスはいずれもCであるため、第2番目の発生ガス量の比較が明確でないと過熱温度の推定を誤る可能性がある。
加熱温度500℃と400℃以下では、CガスとCガスの比率に大きな差があることが図5(N)と図5(L)と図5(M)の対比からわかる。
したがって、Cガス発生量/Cガス発生量の比率が0.5以上であれば500℃と判断し、0.5以下であれば300℃〜400℃と判断することでより正確に推定できる。
図5(O)に示すように加熱温度600℃の場合、第1番目のガスがCガスであった。ただし実験のばらつきを考慮すると第2番目のガスがC又はC又はCHである場合も考えられる。
図5(P)に示すように加熱温度700℃の場合、第1番目のガスがCガスであった。ただし実験のばらつきを考慮すると第2番目のガスがCH又はC又はCである場合も考えられる。
合成エステル油(MIDEL7131)の試験結果において、図5(Q)〜(U)に示す5つのパターンが得られた。
図5(Q)に示すように加熱温度300℃の場合、第1番目のガスがHガス、第2番目のガスがCガスであった。ただし実験のばらつきを考慮すると第2番目のガスはCHまたはCである場合もあり得る。
図5(R)に示すように加熱温度400℃の場合、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスであった。
図5(S)に示すように加熱温度500℃の場合、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがC又はCガスであった。
図5(T)に示すように加熱温度600℃の場合、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCHガスであった。ただし実験のばらつきを考慮すると、第2番目のガスはCであることもありうる。
図5(U)に示すように加熱温度700℃の場合、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCHガスであった。
このため、第1番目のガスがC、第2番目のガスがCHまたはCの場合過熱温度600〜700℃と推定できる。
以上のように図5(A)〜(U)に示す結果が得られた。これらの結果をまとめると、表1の関係となり、油入機器に使用されている絶縁油の油中ガス分析結果を利用し、量比第1番目のガスと量比第2番目のガスの特定により、エステル系絶縁油を用いた油入機器の過熱温度の推定を実現できることがわかった。
なお、図1に示す加熱試験装置と鉱油を用いて前述のエステル系絶縁油の場合と同等の加熱試験を行った結果を図5(V)〜(Z)に示す。
図5(V)〜(Z)に示す鉱油の場合の試験結果では、エステル系絶縁油の場合と傾向が全く異なることが判明した。このことからも、エステル系絶縁油の過熱温度推定には特別な推定方法を実施することが必要であると判る。
また、エステル系絶縁油でも油種によって特性が異なるため、油種毎の推定方法が必要であることが判る。
「実施例2」
実施例1で用いた加熱試験装置1を用い、測定対象の油入機器内のエステル系絶縁油と同種の新品(未使用)のエステル系絶縁油を用い、温度毎のガス発生量を測定する。本実施例2では、300℃加熱、400℃加熱、500℃加熱、600℃加熱、700℃加熱の場合のガスA/ガスBの発生量比率を求めた。
先に第2実施形態で説明した如く図6では、ガスAをCガス+Cガスに設定し、前記ガスBをCHガス+Cガスに設定した場合の結果を示している。図6の横軸を分析した際の測定対象エステル系絶縁油の温度(℃)、縦軸にガスAとガスBの発生量比率、ガスA/ガスB=(Cガス+Cガス)/(CHガス+Cガス)を示している。
300℃加熱、400℃加熱、500℃加熱、600℃加熱、700℃加熱の場合のガスA/ガスBの比率を図6のようにグラフにプロットすると500℃が変曲点となり、500℃未満の各温度における関係式は定数a、bが特定の値に決定された1つの式で示され、500℃以上の各温度における関係式は定数a、bが決定された他の1つの式で示される。
図6に示す関係をパームヤシ脂肪酸エステル油(パステルNEO:ライオン株式会社商品名)と大豆油(Envirotemp FR3)と合成エステル油(MIDEL7131:M&I Material社製、M&I Material社商品名)のそれぞれについて、表2に示す各比率のガス種の組み合わせについて試験を繰り返し、それぞれのケースについて、ガスA/ガスBの比率を求め、図6に示すグラフの場合と同様に(1)式を求めた。その結果を表2に記載した。
パームヤシ脂肪酸エステル油(パステルNEO:ライオン株式会社商品名)と大豆油(Envirotemp FR3)と合成エステル油(MIDEL7131:M&I Material社製、M&I Material社商品名)のそれぞれについて、図1に示す加熱試験装置1を用いて300℃、400℃、500℃、600℃、700℃に加熱した場合のガスAとガスBの組み合わせの種別と得られた結果、求めた定数a、bの値、それらの値に関連してこれらの各プロット位置に実験の誤差(2σ)+10%を加えた範囲を求めた結果を表2に併せて示した。
パームヤシ脂肪酸エステル油については、表2に示すように、第1のケースとしてガスAをCガスにガスBをCHガスに設定した。また、第2のケースとしてガスAをCガス+CガスにガスBをCHガス+Cガスに設定し、第3のケースとしてガスAをCガス+CガスにガスBをCHガス+Cガスに設定し、比較第1のケースとしてガスAをCガス+CガスにガスBをCHガス+Cガスに設定し、第4のケースとしてガスAをCガス+CガスにガスBをCHガス+Cガスに設定した。
それぞれにおいて、図6を基に先に説明した手順に従い、(1)式の定数aと定数bを求め、それらの誤差範囲(2σ+10%の範囲)も求めた。
なお、表2に示すように、第1のケース、第2のケース、第3のケース、第4のケースはいずれも変曲点が存在したので、500℃未満と500℃以上の2つの欄に区分けし、それぞれの温度領域において、定数a、bを算出し、定数a、bの誤差範囲を求めた。しかし、比較第1のケースは400℃以上の範囲で(1)式を策定することができたため、この範囲で定数a、bを算出し、定数a、bの誤差範囲を求めた。
上述のガスA/ガスB=b・ea・t …(1)式の関係において、加熱試験装置を用いて加熱した温度をt:過熱温度(℃)として代入すれば、図6に示す場合と同様に計算することで定数a、bを求めることができる。
表2に示す通り、定数a、bの値、並びに、定数a、bと誤差範囲を求めることができた。
表2において、500℃未満の場合と500℃以上の場合に場合分けした際の個々の評価と総合評価を表2に示す。個々の評価は個々の関係式を傾きの大きさから評価し、傾きの順位を示し、総合は両方の領域の順位の平均値を採用して表記している。
表2に示す結果では、第1、第2、第3、第4のケースにおいて評価が良好で比較第1のケースは評価が低くなった。
同様に、大豆油(Envirotemp FR3)についてガスAとガスBの組み合わせの種別と得られた結果、求めた定数a、bの値、それらの値に関連してこれらの各プロット位置に実験の誤差(2σ)+10%を加えた範囲を求めた結果を表2に示す。
大豆油について、表2の第1番目の欄から第12番目の欄まで順番に示すように(第1番目の欄のケース〜第12番目の欄のケースに示すように)種々のガス種の組み合わせで加熱試験装置によりガスA/ガスBの比率を求め(1)式の定数aと定数bを求め、それらの誤差範囲(2σ+10%の範囲)を求めた。
なお、表2に示すように第1番目のケース〜第5番目のケースにはいずれも変曲点が存在したので、500℃未満と500℃以上の2つの欄に区分けして算出した。第6番目のケースは500℃以上の欄のみ求め、第7番目のケース〜第10番目のケースにはいずれも変曲点が存在したので、500℃未満と500℃以上の2つの欄に区分けして算出した。
第11番目と第12番目のケースは500℃以上の欄のみ求めた。
表2に示すように個々の評価は個々の関係式を傾きの大きさから評価し、傾きの順位を示し、総合は両方の領域の順位の平均値を採用して表記している。大豆油についてガスAとガスBの組み合わせの種別は第3番目のケースと第5番目のケースが総合評価3であり優れているため、第3番目のケース(前記ガスAをCガスに前記ガスBをCガス+Cガスに設定する第1のケースと呼称)、第5番目のケース(前記ガスAをCガス+Cガスに前記ガスBをCガス+Cガスに設定する第2のケースと呼称)を選択することが望ましいとわかる。
なお、総合評価ではなく、500℃未満の領域と500℃以上の領域の個々の領域で優れたケースもあり、これら個々の領域の場合、第2番目のケース(ガスAをCガス+CガスにガスBをCガスに設定する第3のケースと呼称)か、第4番目のケース(ガスAをCガスにガスBをC+Cガスに設定する第4のケースと呼称)か、第6番目のケース(ガスAをCガスにガスBをCH+Cガスに設定する第5のケースと呼称)のいずれかを選択することも精度が高い評価が可能となる。
同様に、合成エステル油(MIDEL7131:M&I Material社製、M&I Material社商品名)について、ガスAとガスBの組み合わせの種別と得られた結果、求めた定数a、bの値、それらの値に関連してこれらの各プロット位置に実験の誤差(2σ)+10%を加えた範囲を求めた結果を表2に示す。
合成エステル油について、表2の第1番目の欄から第4番目の欄まで順番に示すように(第1番目の欄のケース〜第12番目の欄のケースに示すように)種々のガス種の組み合わせで加熱試験装置によりガスA/ガスBの比率を求め(1)式の定数aと定数bを求め、それらの誤差範囲(2σ+10%の範囲)を求めた。また、加熱試験装置を用いた試験により発生するガスA/ガスBの比率も計算できるので、計算結果を表2に記載した。
なお、表2に示すように第3番目のケースには変曲点が存在したので、500℃未満と500℃以上の2つの欄に区分けして算出した。第1番目、第2番目のケースは400℃以上の欄のみ求め、第4番目のケースは500℃以上の欄のみ求めた。
表2に示すように個々の評価は個々の関係式を傾きの大きさから評価し、傾きの順位を示し、総合は両方の領域の順位の平均値を採用して表記している。合成エステル油についてガスAとガスBの組み合わせの種別は第3番目のケースが総合評価2であって優れていた。
なお、総合評価ではなく、400℃以上の領域で優れたケースもあり、表2の合成エステル油の第1番目の欄(ガスAをCガスにガスBをCガスに設定するケース)、500℃で優れたケースとして表2の合成エステル油の第4番目の欄(ガスAをCガスにガスBをCHガス+Cガス+Cガスに設定するケース)も領域に応じて有効であると考えられる。
このため、合成エステル油についてガスAとガスBの組み合わせの種別として、第1のケースとして前記ガスAをCガスに前記ガスBをCガスに設定するか、第2のケースとして前記ガスAをCガスに前記ガスBをCガス+Cガスに設定するか、第3のケースとして前記ガスAをCガスに前記ガスBをCHガス+Cガス+Cガスに設定するかのいずれかを選択できると判断できる。
これら表2に示す種々のパターンにてエステル系絶縁油の種類により有効なガスA/ガスBの組み合わせが判ったので、油入機器から採取したエステル系絶縁油の過熱温度を推定するには、実際の油入機器からエステル系絶縁油を採取し、採取したエステル系絶縁油の油中ガス分析を行う。油中ガス分析は、非特許文献1(電協研65巻)に記載されている電協研法により求めることができる。
電協研法による油中ガス分析により、ガスA/ガスBの値を求めることができ、エステル絶縁油の種類はわかるので、表2のいずれかのパターンに適用し、上述の(1)式を用いて温度tに対して方程式を解くと、過熱温度を計算により推定できる。
次に、大豆油(Envirotemp FR3)と合成エステル油(MIDEL7131:M&I Material社製、M&I Material社商品名)のそれぞれについて、油中分析を行い、定数aと定数bを求め、それらの誤差範囲を求めた結果を表2に併記する。
表2に示す如くそれぞれ定数a、bと誤差範囲を求めることができた。
表2に示す結果を把握した上で油入機器から採取した測定対象のエステル系絶縁油に対し電協研法により油中ガス分析を行い、表2に示す組み合わせで高精度の過熱温度推定が可能なガスAとガスBの組み合わせを選択し、油中ガス分析の結果によりその比率を求める。
この場合、ガスA/ガスB=b・ea・t …(1)式において、ガスA/ガスBは油中ガス分析の結果から算出でき、表2に示すようにガスAとガスBの組み合わせによる定数a、bが判るので、(1)式を方程式としてその解を求めると、過熱温度t(℃)を計算で求めることができる。これにより測定対象のエステル絶縁油の過熱温度を推定することができる。
「実施例3」
表1に示す判定によりそれぞれのエステル系絶縁油に対し、温度毎のおおまかな過熱温度推定ができたとして、そこから更に上述の(1)式を用いて過熱温度を推定する場合、以下に説明する方法を採用することができる。
先に表2を基に説明し、加熱試験装置1を用いて表2に示すように(1)式の定数a、bを求めた方法と同じ方法を表3に示すガスA、ガスBの組み合わせで実験し、(1)式の定数a、bを算出する。
パームヤシ脂肪酸エステル油については、表3に示すように、500℃未満の場合、ガスAをCガスにガスBをCHガスに設定する。以下、表3に示す如くガスAとガスBの組み合わせを選択し、(1)式の定数a、bを求める。
図6を基に先に説明した手順に従い、(1)式の定数aと定数bを求めた後、それらの誤差範囲(2σ+10%の範囲)を求める。その結果を表3に併記した。
表3に示す通り、定数a、bと誤差範囲を計算で求めることができる。
次に、油入変圧器から採取した測定対象のパームヤシ脂肪酸エステル油(パステルNEO:ライオン株式会社商品名)について、油中分析を行う。油中分析は、非特許文献1(電協研65巻)に記載されている電協研法に従って実施できる。
この油中分析によりガスA/ガスBの比率を求めることができるので、表3のガスA、ガスBの組み合わせに当てはめ、(1)式を方程式として解を求めることにより、測定対象のパームヤシ脂肪酸エステル油の過熱温度を推定できる。
油入機器に収容されているエステル系絶縁油が大豆油(Envirotemp FR3)あるいは合成エステル油(MIDEL7131:M&I Material社製、M&I Material社商品名)の場合も同様に測定対象油を採取し、採取した油の油中分析を行う。
この油中分析によりガスA/ガスBの発生量比率を求めることができるので、表3のガスA、ガスBの組み合わせに当てはめ、(1)式を方程式として解を求めることにより、測定対象の大豆油あるいは合成エステル油の過熱温度を推定できる。
1…加熱試験装置、2…容器、3…収容部、4…電源線、5…上蓋、6…電極導体、7…電極、8…加熱導体、10…マグネチックスターラー本体、11…攪拌子、12…冷却管、13…熱電対線、15…温度計測器、16…排気管、18…真空ポンプ、L…絶縁油、P…電源、S…空間部。

Claims (15)

  1. エステル系絶縁油を用いた油入機器の内部異常を診断するにあたり、前記油入機器に収容されている検査対象エステル系絶縁油の油中ガスを分析することにより前記油入機器の過熱温度を推定する方法であって、
    予めエステル系絶縁油を不活性ガス雰囲気中で局所加熱して温度に応じて発生するガス量を求め、測定温度毎に検出した複数のガスの内、ガスAとガスBの発生量比に着目し、ガスA/ガスB=b・ea・t…(1)の関係式(但し、(1)式において、ガスAはCHガスとCガスとCガスとCガスとCガスとCガス(油中ガス分析で測定する炭素数2の炭化水素の合計発生量でC+C+Cを指す)とCガス(油中ガス分析で測定する炭素数3の炭化水素の合計発生量でC+Cを指す)の量の内、1つの特定ガスの量または2つの特定のガスの合計量、ガスBは他の1つの特定ガスの量または複数の特定のガスの合計量、aは定数、bは定数、tは過熱温度(℃)を示す。)を策定し、前記局所加熱した温度を前記(1)式の過熱温度と仮定して予め定数a、bを計算により求めておき、
    検査対象油入機器から採取したエステル系絶縁油の油中ガス分析により前記ガスA/ガスBの値を求め、この値を前記(1)式に代入して検査対象油入機器の過熱温度を算出することを特徴とする油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。
  2. 前記定数a、bを定める場合、ガスA/ガスBの値の増減の変曲点を境界として境界値未満の場合と境界値以上の場合で場合分けを行い、場合分けに応じた定数aと定数bの値を選択することを特徴とする請求項1に記載の油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。
  3. 前記検査対象エステル系絶縁油が植物油由来の飽和脂肪酸と分岐及び脂肪族アルコールからなるエステルを主体とする植物油由来脂肪酸エステル系絶縁油の場合、
    第1のケースとして前記ガスAをCガス量に前記ガスBをCHガス量に設定するか、第2のケースとして前記ガスAをCガス量+Cガス量に前記ガスBをCHガス量+Cガス量に設定するか、第3のケースとして前記ガスAをCガス量+Cガス量に前記ガスBをCHガス量+Cガス量に設定するか、第4のケースとして前記ガスAをCガス量+Cガス量に前記ガスBをCHガス量+Cガス量に設定するかのいずれかを選択することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。
  4. 前記検査対象エステル系絶縁油がグリセリンと脂肪酸のエステルでトリグリセリド構造を有し、脂肪酸のうち少なくとも1種は不飽和脂肪酸である植物系天然エステルを主体とする天然エステル系絶縁油の場合、
    第1のケースとして前記ガスAをCガス量に前記ガスBをCガス量+Cガス量に設定するか、第2のケースとして前記ガスAをCガス量+Cガス量に前記ガスBをCガス量+Cガス量に設定するか、第3のケースとして前記ガスAをCガス量+Cガス量に前記ガスBをCガス量に設定するか、第4のケースとして前記ガスAをCガス量に前記ガスBをCガス量+Cガス量に設定するか、第5のケースとして前記ガスAをCガス量に前記ガスBをCHガス量+Cガス量に設定するかのいずれかを選択することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。
  5. 前記検査対象エステル系絶縁油がネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールの少なくとも1種以上からなるポリオールエステルと、直鎖及び分岐の飽和脂肪酸との合成エステルを主体とする合成エステル系絶縁油の場合、
    第1のケースとして前記ガスAをCガス量に前記ガスBをCガス量に設定するか、第2のケースとして前記ガスAをCガス量に前記ガスBをCガス量+Cガス量に設定するか、第3のケースとして前記ガスAをCガス量に前記ガスBをCHガス量+Cガス量+Cガス量に設定するかのいずれかを選択することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。
  6. 前記近似線に対し2σ(σは、標準偏差)+10%の範囲を誤差範囲として前記定数a、bの取り得る範囲を定めることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。
  7. 請求項1、請求項2、請求項3、請求項6のいずれかに一項に記載の過熱温度推定方法を実施するにあたり、
    植物油由来の飽和脂肪酸と分岐及び脂肪族アルコールからなるエステルを主体とする植物油由来脂肪酸エステル系絶縁油であって、前記油入機器に収容されている検査対象植物油由来脂肪酸エステル系絶縁油中のH、CH、C、C、C、Cガスを油中ガス分析で測定し、その発生量の多い順に並べた際の分析結果の第1番目のガス種と第2番目のガス種を求め、
    第1番目のガスがHガス、第2番目のガスがCHガスであるか、第1番目のガスがCHガス、第2番目のガスがH又はCガスである場合、局所過熱温度を300℃と推定し、
    第1番目のガスがHガス、第2番目のガスがCガスであるか、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがH、C、Cである場合、局所過熱温度を400℃と推定し、
    第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスであるか、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスである場合、局所過熱温度を500℃と推定し、
    第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスであるか、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCHガスであるかCガスである場合、局所過熱温度を600〜700℃と推定した上で
    前記(1)式に従い過熱温度を推定することを特徴とする油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。
  8. 請求項1、請求項2、請求項3、請求項6のいずれかに一項に記載の過熱温度推定方法を実施するにあたり、
    植物油由来の飽和脂肪酸と分岐及び脂肪族アルコールからなるエステルを主体とする植物油由来脂肪酸エステル系絶縁油であって、前記油入機器に収容されている検査対象植物油由来脂肪酸エステル系絶縁油中のH、CH、C、C、C、Cガスを油中ガス分析で測定し、その発生量の多い順に並べた際の分析結果の第1番目のガス種と第2番目のガス種を求め、
    第1番目のガスがHガス、第2番目のガスがCHガスであるか、第1番目のガスがCHガス、第2番目のガスがH又は、Cガスである場合、局所過熱温度を300℃と推定し、
    第1番目のガスがHガス、第2番目のガスがCガスであるか、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがH、C、Cガスである場合、局所過熱温度を400℃と推定し、
    第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスであるか、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスである場合、局所過熱温度を500℃と推定し、
    第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスであるか、第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCHガスであるかCガスである場合、局所過熱温度を600〜700℃と推定した上で、
    推定過熱温度が500℃未満であった場合、前記ガスAをC、ガスBをCHガスと設定し、
    推定過熱温度が500℃以上であった場合、第1のケースとして前記ガスAをCガスに前記ガスBをCガスに設定するか、第2のケースとして前記ガスAをCガス+Cガスに前記ガスBをCガスに設定するか、第3のケースとして前記ガスAをCガスに前記ガスBをCガス+Cガスに設定するかのいずれかを選択することを特徴とする油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。
  9. 請求項3、請求項7、請求項8のいずれか一項に記載の植物油由来脂肪酸エステル絶縁油としてパームヤシ脂肪酸エステル絶縁油またはパステルNEO(ライオン株式会社商品名)を用いることを特徴とする油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。
  10. 請求項1、請求項2、請求項4、請求項6のいずれか一項に記載の過熱温度推定方法を実施するにあたり、
    グリセリンと脂肪酸のエステルでトリグリセリド構造を有し、脂肪酸のうち少なくとも1種は不飽和脂肪酸である植物系天然エステルを主体とする天然エステル系絶縁油であって、前記油入機器に収容されている検査対象天然エステル系絶縁油中のH、CH、C、C、C、C、Cガスを油中ガス分析で測定し、その発生量の多い順に並べた際の分析結果の第1番目のガス種と第2番目のガス種を求め、
    第1番目のガスがCガス、第2番目のガスが他のいずれかのガスの場合であり、Cガス発生量/Cガス発生量の比率が0.5未満の場合に局所過熱温度を300〜400℃と推定し、
    第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスであり、Cガス発生量/Cガス発生量の比率が0.5以上の場合に、局所過熱温度を500℃と推定し、
    第1番目のガスがCガスである場合、局所過熱温度を600〜700℃と推定した上で、前記(1)式に従い過熱温度を推定することを特徴とする油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。
  11. 請求項1、請求項2、請求項4、請求項6のいずれかに一項に記載の過熱温度推定方法を実施するにあたり、
    グリセリンと脂肪酸のエステルでトリグリセリド構造を有し、脂肪酸のうち少なくとも1種は不飽和脂肪酸である植物系天然エステルを主体とする天然エステル系絶縁油であって、前記油入機器に収容されている検査対象天然エステル系絶縁油中のH、CH、C、C、C、C、Cを油中ガス分析で測定し、その発生量の多い順に並べた際の分析結果の第1番目のガス種と第2番目のガス種を求め、
    第1番目のガスがCガス、第2番目のガスが他のいずれかのガスの場合であり、Cガス発生量/Cガス発生量の比率が0.5未満の場合に局所過熱温度を300〜400℃と推定し、
    第1番目のガスがCガス、第2番目のガスがCガスであり、Cガス発生量/Cガス発生量の比率が0.5以上の場合に、局所過熱温度を500℃と推定し、
    第1番目のガスがCガスである場合、局所過熱温度を600〜700℃と推定した上で、
    推定過熱温度が500℃未満であった場合、第1のケースとして前記ガスAをCガスに前記ガスBをCガスに設定するか、第2のケースとして前記ガスAをCガスに前記ガスBをCガス+Cガスに設定するか、第3のケースとして前記ガスAをCガスに前記ガスBをCH+Cガスに設定するかのいずれかを選択し、
    推定過熱温度が500℃以上であった場合、前記ガスAをCガスに前記ガスBをCガス+Cガスに設定することを特徴とする油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。
  12. 請求項4、請求項10、請求項11のいずれか一項に記載の天然エステル系絶縁油として大豆油またはEnvirotemp FR3(カーギル社商品名)、または菜種油を用いることを特徴とする油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。
  13. 請求項1、請求項2、請求項5、請求項6のいずれか一項に記載の過熱温度推定方法を実施するにあたり、
    ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールの少なくとも1種以上からなるポリオールエステルと、直鎖及び分岐の飽和脂肪酸との合成エステルを主体とする合成エステル系絶縁油であって、前記油入機器に収容されている検査対象合成エステル系絶縁油中のH、CH、C、C、Cガスを油中ガス分析で測定し、その発生量の多い順に並べた際の分析結果の第1番目のガス種と第2番目のガス種を求め、
    第1番目のガスがHガス、第2番目のガスがCガスか、CHガスか、Cガスのいずれかであり、あるいは、第1番目のガスがCガスであるか、CHガスであるか、Cガスである場合、局所過熱温度を300℃と推定し、
    第1番目のガスがCガスである場合、局所過熱温度を300〜500℃と推定し、
    第1番目のガスがCガスである場合、局所過熱温度を600〜700℃と推定した上で、前記(1)式に従い過熱温度を推定することを特徴とする油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。
  14. 請求項1、請求項2、請求項5、請求項6のいずれかに一項に記載の過熱温度推定方法を実施するにあたり、
    ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールの少なくとも1種以上からなるポリオールエステルと、直鎖及び分岐の飽和脂肪酸との合成エステルを主体とする合成エステル系絶縁油であって、前記油入機器に収容されている検査対象合成エステル系絶縁油中のH、CH、C、C、Cガスを油中ガス分析で測定し、その発生量の多い順に並べた際の第1番目のガス種と第2番目のガス種を求め、
    第1番目のガスがHガス、第2番目のガスがCガスか、CHガスか、Cガスのいずれかであり、あるいは、第1番目のガスがCガスであるか、CHガスであるか、Cガスである場合、局所過熱温度を300℃と推定し、
    第1番目のガスがCガスである場合、局所過熱温度を400〜500℃と推定し、
    第1番目のガスがCガスである場合、局所過熱温度を600〜700℃と推定した上で、
    推定過熱温度が500℃未満であった場合、前記ガスAをCガスに前記ガスBをC+Cガスに設定し、
    推定過熱温度が500℃以上であった場合、第1のケースとして前記ガスAをCガスに前記ガスBをCガスに設定するか、第2のケースとして前記ガスAをCガス+Cガスに前記ガスBをCガスに設定することを特徴とする油入機器の異常診断における過熱温度推定方法。
  15. 請求項5、請求項13、請求項14のいずれか一項に記載の合成エステルを主体とするエステル系絶縁油としてポリオールエステル油またはMIDEL7131(M&I Materials社商品名)を用いることを特徴とする油入機器の異常診断における加熱温度推定方法。
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