JP2017214646A - 高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents
高強度鋼板およびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2017214646A JP2017214646A JP2017072109A JP2017072109A JP2017214646A JP 2017214646 A JP2017214646 A JP 2017214646A JP 2017072109 A JP2017072109 A JP 2017072109A JP 2017072109 A JP2017072109 A JP 2017072109A JP 2017214646 A JP2017214646 A JP 2017214646A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- mass
- less
- temperature
- steel sheet
- cooling
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Images
Landscapes
- Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)
Abstract
Description
引張強度、強度延性バランス、降伏比、深絞り特性および張出し成形性それぞれについて、具体的には、以下のことが求められている。
引張強度については、980MPa以上であることが求められている。さらに引張強度については、溶接部においても十分な値を有することが求められている。具体的には、スポット溶接部の十字引張強度は6kN以上であることが求められている。
使用中に負荷できる応力を高くするためには、高い引張強度(TS)に加えて高い降伏強度(YS)を有する必要がある。また、衝突安全性等を確保する観点から、鋼板の降伏強度を高めることも必要である。このため、具体的には0.70以上の降伏比(YR=YS/TS)が求められている。
C :0.15質量%〜0.35質量%、
SiとAlの合計:0.5質量%〜3.0質量%、
Mn:1.0質量%〜4.0質量%、
P :0.05質量%以下、
S :0.01質量%以下、
を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなり、
鋼組織が、
フェライト分率が5%以下であり、
焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計分率が60%以上であり、
残留オーステナイト量が10%以上であり、
MAの平均サイズが1.0μm以下であり、残留オーステナイト量と等しい量である炭素濃化領域におけるMnの濃度分布の半価幅が0.3質量%以上である高強度鋼板である。
前記圧延材をAc1点と0.2×Ac1点+0.8×Ac3点との間の温度で5秒以上保持した後、Ac3点以上の温度まで加熱し5〜600秒間保持してオーステナイト化することと、
前記オーステナイト化後、650℃から100℃〜300℃の間の冷却停止温度まで10℃/秒以上の冷却速度で冷却することと、
冷却停止温度から300〜500℃の範囲にある再加熱温度まで加熱することと、を含む高強度鋼板の製造方法である。
以下に本発明の高強度鋼板およびその製造方法の詳細を示す。
以下に本発明に係る高強度鋼板の組成について説明する。まず、基本となる元素、C、Si、Al、Mn、PおよびSについて説明し、さらに選択的に添加してよい元素について説明する。
なお、成分組成について単位の%表示は、すべて質量%を意味する。
Cは所望の組織を得て、高い(TS×EL)等の特性を確保するために必須の元素であり、このような作用を有効に発揮させるためには0.15%以上添加する必要がある。ただし、0.35%超は溶接に適さず、十分な溶接強度を得ることができない。好ましくは0.18%以上、さらに好ましくは0.20%以上である。また、好ましくは0.30%以下である。C量が0.30%以下だとより容易に溶接することができる。
SiとAlは、それぞれ、セメンタイトの析出を抑制し、残留オーステナイトの形成を促進する働きを有する。このような作用を有効に発揮させるためにはSiとAlを合計で0.5%以上添加する必要がある。ただし、Siとアルミニウムの合計が3.0%を超えると粗大なMAを形成する。好ましくは0.7%以上、さらに好ましくは1.0%以上である。また、好ましくは2.0%以下である。
なお、Alについては、脱酸元素として機能する程度の添加量、すなわち0.10質量%未満であってよく、また、例えばセメンタイトの形成を抑制し、残留オーステナイト量を増加させる目的等ために0.7質量%以上のようなより多くの量を添加してもよい。
マンガンはフェライトの形成を抑制する。また、MnはMn濃化領域を形成し、安定度の異なる残留オーステナイトを形成し、張り出し加工性を向上させるのに不可欠な元素である。このような作用を有効に発揮させるためには1.0%以上添加する必要がある。ただし、4.0%を超えると2相域加熱の温度範囲が狭く制御しにくいこと、および、温度が低くなりすぎるためにAc1点〜0.2×Ac1点+0.8×Ac3点の間の温度で所定時間保持しても変態が進まずMn濃化領域が形成できなくなる場合がある。好ましくは1.5%以上、さらに好ましくは2.0%以上である。また、好ましくは3.5%以下である。
Pは不純物元素として不可避的に存在する。0.05%を超えたPが存在するとELおよびλが劣化する。このため、Pの含有量は0.05%以下(0%を含む)とする。好ましくは、0.03%(0%を含む)以下である。
Sは不純物元素として不可避的に存在する。0.01%を超えたSが存在するとMnS等の硫化物系介在物を形成し、割れの起点となってλを低下させる。このため、Sの含有量は0.01%以下(0%を含む)とする。好ましくは、0.005%(0%を含む)以下である。
好ましい1つの実施形態では、残部は、鉄および不可避不純物である。不可避不純物としては、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる微量元素(例えば、As、Sb、Snなど)の混入が許容される。なお、例えば、PおよびSのように、通常、含有量が少ないほど好ましく、従って不可避不純物であるが、その組成範囲について上記のように別途規定している元素がある。このため、本明細書において、残部を構成する「不可避不純物」という場合は、別途その組成範囲が規定されている元素を除いた概念である。
Cu:0.50質量%以下、Ni:0.50質量%以下、Cr:0.50質量%以下、Mo:0.50質量%以下、B:0.01質量%以下、V:0.05質量%以下、Nb:0.05質量%以下、Ti:0.05質量%以下、Ca:0.05質量%以下、REM:0.01質量%以下、の1種または2種以上
Cu、Ni、Cr、MoおよびBは、焼き入れ性を高めることで、フェライトの形成を防止し、かつ、オーステナイトの安定化やベイナイトの微細化に寄与することで強度−延性バランスを向上する。
V、NbおよびTiは、母相を析出強化することで、延性を大きく劣化させずに強度を高めることで、強度−延性バランスを向上させる。
CaおよびREMは、MnSに代表される介在物を微細に分散させることで、強度−延性バランスおよび穴広げ性の改善に寄与する。ここで、本発明に用いられるREM(希土類元素)としては、Sc、Y、ランタノイド等が挙げられる。
ただし、これらの元素を過剰に含有させても、上記それぞれの効果が飽和してしまい経済的に無駄であるので、これらの元素は上記各上限値以下の量とするのが好ましい。
以下に本発明の高強度鋼板の鋼組織の詳細を説明する。
以下の鋼組織の説明では、そのような組織を有することにより各種の特性を向上できるメカニズムについて説明している場合がある。これらは本発明者らが現時点で得られている知見により考えたメカニズムであるが、本発明の技術的範囲を限定するものではないことに留意されたい。
フェライトは、一般的に加工性に優れるものの、強度が低いという問題を有する。その結果、フェライト量が多いと降伏比が低下する。このため、フェライト分率を5%以下(5体積%以下)とした。
フェライト分率は好ましくは3%以下である。
フェライト分率は光学顕微鏡で観察し、白い領域を点算法で測定することにより求めることができる。すなわち、このような方法により、フェライト分率を面積比(面積%)で求めることができる。そして、面積比で求めた値をそのまま体積比(体積%)の値として用いてよい。
焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計分率を60%以上(60体積%以上)とすることで高強度と高い穴広げ性を両立できる。焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計分率は好ましくは70%以上である。
焼戻しマルテンサイトおよび焼戻しベイナイト量(合計分率)は、ナイタール腐食を行った断面のSEM観察を行い、MA(すなわち、残留オーステナイトと焼入れたままのマルテンサイトの合計)の分率を測定し、鋼組織全体から上述のフェライト分率とMA分率を引くことにより求めることができる。
残留オーステナイトは、プレス加工等の加工中に加工誘起変態により、マルテサイトに変態するTRIP現象を生じ、大きな伸びを得ることができる。また、形成されるマルテンサイトは高い硬度を有する。このため、優れた強度−延性バランスを得ることができる。残留オーステナイト量を10%以上(10体積%以上)とすることでTS×ELが21000MPa%以上と優れた強度−延性バランスを実現できる。
残留オーステナイト量は好ましくは15%以上である。
残留オーステナイト量は、X線回折によりフェライト(X線回折では焼戻しマルテンサイトおよび未焼戻しのマルテンサイトを含むとオーステナイトの回折強度比を求めて算出することにより得ることができる。X線源としてはCo−Kα線を用いることができる。
MAは硬質相であり、変形時に母相/硬質相界面近傍がボイド形成サイトとして働く。MAサイズが粗大になるほど、母相/硬質相界面への歪集中が起こり、母相/硬質相界面近傍に形成されたボイドを起点とした破壊を生じ易くなる。
このため、MAサイズ、とりわけMA平均サイズを1.0μm以下と微細にし、破壊を抑制することで穴広げ率λを向上させることができる。
MAの平均サイズは好ましくは0.8μm以下である。
上述のように残留オーステナイトの多くは、MAの形態で存在しており、光学顕微鏡またはSEMにより残留オーステナイトだけを識別するのは困難である。残留オーステナイは、炭素の固溶限がフェライト等と比べて大きいため、後述する熱処理を行うことで、残留オーステナイトに炭素が濃化する。従って、EPMAを用いて、炭素の元素マッピングを行い、炭素濃度の高い測定点から順に上述のX線回折により求めた残留オーステナイト量と等しい量の測定点を炭素濃化領域とし、この炭素濃化領域を残留オーステナイトと判断することができる。すなわち、例えば、残留オーステナイト量が15体積%であった場合、元素マッピングにより炭素量を測定した測定点について炭素濃度の高い方から15%を選ぶことでこれらの炭素濃度の高い測定点(炭素濃化領域)が残留オーステナイトであると判断できる。
よって「残留オーステナイト量と等しい量である炭素濃化領域」は、残留オーステナイトに相当する(対応する)領域を意味している。
本明細書においては、前記したフェライト、焼戻しマルテンサイト、焼戻しベイナイトおよび残留オーステナイト以外の鋼組織は特に規定していない。しかしながら、フェライト等の鋼組織以外にも、パーライト、焼き戻されていないベイナイトおよび焼き戻されていないマルテンサイトなどが存在することがある。フェライト等の鋼組織が、前述した組織条件を満たしていれば、パーライト等が存在しても、本発明の効果は発揮される。
上述のように本発明の高強度鋼板は、TS、YR、TS×EL、穴広げ率(λ)、スポット溶接部の十字引張強度(SW十字引張)および限界張出し高さが何れも高いレベルにある。本発明の高強度鋼板のこれらの特性について以下に詳述する。
980MPa以上のTSを有する。これにより十分な強度を確保できる。
0.70以上の降伏比を有する。これにより上述の高い引張強度と相まって高い降伏強度を実現でき、深絞り加工等の加工により得た最終製品を高い応力下で使用することができる。好ましくは、0.75以上の降伏比を有する。
TS×ELが21000MPa%以上である。21000MPa%以上のTS×ELを有することで、高い強度と高い延性とを同時に有する、高いレベルの強度延性バランスを得ることができる。好ましくは、TS×ELは23000MPa%以上である。
限界張出し高さは、張り出し成形性の評価に用いられている指標である。限界張出し高さは、荷重−ストローク線図において荷重が急激に減少する破断発生時のパンチストロークとする。
より詳細には、Φ120mmの試験片を用い、Φ53.6mmで肩半径8mmのダイとΦ50mmの球頭ポンチを用いて、ポンチと鋼板の間には潤滑用のポリシートをはさみ、ブランクホールド力1000kgfとして張出成形を行い、破断時の高さ(パンチストローク)を測定することにより限界張出し高さ求める。
穴広げ率λは、JIS Z 2256に従って求める。試験片に直径d0(d0=10mm)の打ち抜き穴を空け、先端角度が60°のポンチをこの打ち抜き穴に押し込み、発生した亀裂が試験片の板厚を貫通した時点の打ち抜き穴の直径dを測定し、下記の式より求める。
λ(%)={(d−d0)/d0}×100
スポット溶接部の十字引張強度はJIS Z 3137に則って評価する。スポット溶接の条件は鋼板(後述の実施例では厚さ1.4mmの鋼板)を2枚重ねたものを用い、ドームラジアス型の電極で加圧力4kN、電流を6kAから12kAまで0.5kAピッチでスポット溶接を実施する。これにより、ちりが発生する最低電流を求める。そして。ちりが発生した最低電流よりも0.5kA低い電流でスポット溶接した継ぎ手の十字引張強度を測定する。
次に本発明に係る高強度鋼板の製造方法について説明する。
本発明者らは、所定の組成を有する圧延材に、以下に説明する熱処理(オーステンパー処理)を行うことにより、上述の所望の鋼組織を有し、その結果、上述の所望の特性を有する高強度鋼板を得ること見いだしたのである。
以下にその詳細を説明する。
熱処理を施す圧延材は、通常、熱間圧延後、冷間圧延を行って製造する。しかし、これに限定されるものでなく熱間圧延および冷間圧延のいずれか一方を行って製造してもよい。また、熱間圧延および冷間圧延の条件は特に限定されるものではない。
オーステナイト化工程は、図1の[2]に示すように、Ac1点とAc3点の中間の2相共存領域、より詳細にはAc1点と0.2×Ac1点+0.8×Ac3点との間の温度T1(Ac1≦T1≦0.2×Ac1点+0.8×Ac3)で5秒以上保持した後、さらに図1の[3]、[4]に示すようにAc3点以上の温度T2(Ac3≦T2)まで加熱温度T2で5〜600秒保持してオーステナイト化する。
温度T1が0.2×Ac1点+0.8×Ac3点より高いと、オーステナイトのMn濃度が低くなり、残留オーステナイト(炭素濃化領域)中のMn濃度のばらつきが小さくなり、十分な張出し成形性を得ることができない。
温度T1での保持時間が5秒より時間が短いと、Mnが拡散する時間が不足し、オーステナイトへのMn濃化が不十分となり、残留オーステナイト(炭素濃化領域)中のMnのばらつきが小さくなり、十分な張出し成形性を得ることができない。
温度T1での保持時間は長い方が好ましいが、生産性の観点から900秒以下が好ましい。
なお、図1に[1]として示した、温度T1までの加熱速度は、好ましくは5〜20℃/秒である。
温度T2が高すぎると、先に形成したMn濃化領域のMnが拡散し、Mn濃度のばらつきが小さくなり過ぎる虞がある。このため、温度T2はAc3点+50℃以下であることが好ましい。
温度T2での保持時間が600秒より長いと、拡散によりMn濃化領域のMn濃度が低くなり、残留オーステナイト中のMn濃度のばらつきが小さくなり、張出し成形性が低下する。
図1の[3]に示す、温度T1から温度T2への加熱は、0.1℃/秒以上、10℃/秒未満の加熱速度で行うことが好ましい。
なお、Ac1点およびAc3点については、測定により求めてもよいが、その組成を用いて一般的に知られている計算式により算出してよい。
例えば、下記の(1)式および2(式)を用いることにより、Ac1点およびAc3点を算出できる(例えば、「レスリー鉄鋼材料学」丸善,(1985)参照)。
Ac1点(℃)=723+29.1×[Si]−10.7×[Mn]+16.9×[Cr]−16.9×[Ni] (1)
Ac3点(℃)=910−203×[C]1/2+44.7×[Si]−30×[Mn]+700×[P]+400×[Al]+400×[Ti]+104×[V]−11×[Cr]+31.5×[Mo]−20×[Cu]−15.2×[Ni](2)
ここで、[ ]は、その中に記載された元素の質量%で示される含有量を示す。
上述のオーステナイト化の後、図1の[7]に示すように、100℃〜300℃の間の冷却停止温度T3まで冷却する。この冷却により、一部のオーステナイトを残したまま、マルテンサイト変態を起こさせる。冷却停止温度T3を100℃以上、300℃未満の温度範囲内で制御することで、マルテンサイトに変態せずに残存するオーステナイトの量を調整して、最終的な残留オーステナイト量を制御する。図1の[7]に示すように、冷却停止温度T3で保持してもよい。保持する場合の好ましい保持時間として、1〜600秒を挙げることができる。保持時間が長くなっても特性上の影響はほとんどないが、600秒を超える保持時間は生産性を低下させる。
そして、図1の[6]に示す、急冷開始温度T4から冷却停止温度T3までの冷却は、平均冷却速度10℃/秒以上で冷却する。冷却中のフェライトの形成を抑制できるからである
冷却停止温度T3が300℃より高いと、粗大な未変態オーステナイトが増え、その後の冷却でも残存することで、最終的にMAサイズが粗大になり、穴広げ率低くなる。
140℃以上、260℃以下である。
また、急冷開始温度T4から冷却停止温度T3までの平均冷却速度は、好ましくは15℃/s以上であり、より好ましくは20℃/s以上である。
図1の[8]に示すように、上述の冷却停止温度T3から300〜500℃の範囲にある再加熱温度T5まで加熱する。加熱速度は特に制限されない。再加熱温度T5に到達した後は、図1の[9]に示すようにその温度で保持することが好ましい。好ましい保持時間として50〜1200秒を挙げることができる。
再加熱温度T5が300℃より低いと、炭素の拡散が不足して十分な残留オーステナイト量が得られずTS×ELが低下する。また、保持を行わないまたは保持時間が50秒より短いと、同様に炭素の拡散が不足する虞がある。このため、再加熱温度で50秒以上の保持を行うのが好ましい。
再加熱温度T5が500℃より高いと炭素がセメンタイトとして析出し、十分な量の残留オーステナイトが得られなくなるため、TS×ELが低下する。また保持時間が1200秒より長いと、同様に、炭素がセメンタイトとして析出する虞がある。このため、保持時間は1200秒以下であることが好ましい。
好ましい再加熱温度T5は、320〜480℃であり、この場合、保持時間の上限は900秒以下であることが好ましい。更に好ましい再加熱温度は、340〜460℃であり、この場合、保持時間の上限は600秒以下であることが好ましい。
以上の熱処理により本発明の高強度鋼板を得ることができる。
表1に記載した化学組成を有する鋳造材を真空溶製で製造した後、この鋳造材を熱間鍛造で板厚30mmの鋼板にし、熱間圧延を施した。なお、表1には、上述の(1)式および(2)式を用いて計算したAc1点およびAc3点も記載した。また、このようにして求めたAc1点およびAc3点より計算した、0.2×Ac1点+0.8×Ac3点の値も記載した。
熱間圧延の条件は本特許の最終組織・特性に本質的な影響を施さないが、1200℃に加熱した後、多段圧延で板厚2.5mmとした。この時、熱間圧延の終了温度は880℃とした。その後、600℃まで30℃/秒で冷却し、冷却を停止し、600℃に加熱した炉に挿入後、30分保持し、その後、炉冷し、熱延鋼板とした。
この熱延鋼板に酸洗を施して表面のスケールを除去した後、1.4mmまで冷間圧延を施した。この冷間圧延板に熱処理を行い、サンプルを得た。熱処理条件を表2に示した。なお、表2中の例えば、[2]のように[ ]を内に示した番号は、図1中に[ ]内に示した同じ番号のプロセスに対応する。
サンプルNo.9は、100℃以上、300℃未満の間の冷却停止温度まで冷却する代わりに、再加熱温度まで冷却した後にその温度で保持したサンプル(図1で[7]〜[8]に相当する工程をスキップしたサンプル)である。
サンプル15および31〜36は、加熱温度T2と急冷開始温度T4を同じにしたサンプルである。すなわち、オーステナイト化後、冷却停止温度T3まで1段階で冷却したサンプルである。
なお,表1〜表4において、下線を伏した数値は、本発明の範囲から外れていることを示している。ただし、「−」については、本発明の範囲から外れていても下線を付していないことに留意されたい。
それぞれのサンプルについて上述した方法により、フェライト分率、焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計分率(表3には「焼戻しM/B」と記載)、残留オーステナイト量(残留γ量)、MAの平均サイズ、炭素濃化領域のMn濃度分布の半価幅を求めた。残留オーステナイト量の測定には、株式会社リガク製2次元微小部X線回折装置(RINT−RAPIDII)を用いた。得られた結果を表3に示す。
得られたサンプルについて、引張試験機を用いて、YS、TS、ELを測定し、YRおよびTS×ELを算出した。また、上述の方法により穴拡げ率λと、限界張出し高さと、スポット溶接部の十字引張強度(SW十字引張)を求めた。得られた結果を表4に示す。
本発明の条件を満たす実施例サンプルである、サンプルNo.11〜15、17、18、21および28〜46は、いずれも引張強度(TS)が980MPa以上、降伏比(YR)が0.70以上、(TS)と全伸び(EL)との積(TS×EL)が21000MPa%以上、穴広げ率(λ)が20%以上、限界張出し高さが16mm以上およびSW十字引張が6kN以上を達成している。
サンプルNo.2は、保持温度T1が低いため、炭素濃化領域におけるMnの濃度分布の半価幅の値が小さく、限界張出し高さが低くなっている。
サンプルNo.3は、保持温度T1が高いため、炭素濃化領域におけるMnの濃度分布の半価幅の値が小さく、限界張出し高さが低くなっている。
サンプルNo.7は、冷却停止温度T3が高いため、焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計分率が0%となっており、かつMAの平均サイズが大きくなっている。この結果、降伏比と穴広げ率が低くなっている。
サンプルNo.8は、加熱温度T1での保持時間が短いため、炭素濃化領域におけるMnの濃度分布の半価幅の値が小さく、この結果、限界張出し高さが低くなっている。
サンプルNo.10は、冷却停止温度T3が低く、残留オーステナイト量が少なく、この結果、TS×ELの値および限界張出し高さが低くなっている。
サンプルNo.19は、再加熱温度T5が高く、残留オーステナイト量が少なくなっている。この結果、引張強さ、TS×ELの値および限界張出し高さが低くなっている。
サンプルNo.20は、再加熱温度T5が低く、残留オーステナイト量が少なくなっている。この結果、TS×ELの値および限界張出し高さが低くなっている。
サンプルNo.23は、Mn量が多く、焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計分率が低く、かつMAの平均サイズが大きくなっている。この結果、穴広げ率が低くなっている。
サンプルNo.25は、Si+Al量が低く、焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計分率および残留オーステナイト量が低く、MA平均のサイズが大きくなっている。この結果、TS×ELの値、穴広げ率および限界張出し高さが低くなっている。
サンプルNo.27は、Si+Al量が多く、MAの平均サイズが大きく、この結果、TS×ELの値、穴広げ率および限界張出し高さが低くなっている。
Claims (6)
- C :0.15質量%〜0.35質量%、
SiとAlの合計:0.5質量%〜3.0質量%、
Mn:1.0質量%〜4.0質量%、
P :0.05質量%以下、
S :0.01質量%以下、
を含み、残部がFeおよび不可避不純物からなり、
鋼組織が、
フェライト分率が5%以下であり、
焼戻しマルテンサイトと焼戻しベイナイトの合計分率が60%以上であり、
残留オーステナイト量が10%以上であり、
MAの平均サイズが1.0μm以下であり、
残留オーステナイト量と等しい量である炭素濃化領域におけるMnの濃度分布の半価幅が0.3質量%以上である高強度鋼板。 - C量が0.30質量%以下である請求項1に記載の高強度鋼板。
- Al量が0.10質量%未満である請求項1または2に記載の高強度鋼板。
- Cu :0.50質量%以下、
Ni :0.50質量%以下、
Cr :0.50質量%以下、
Mo :0.50質量%以下、
B :0.01質量%以下、
V :0.05質量%以下、
Nb :0.05質量%以下、
Ti :0.05質量%以下、
Ca :0.05質量%以下、
REM:0.01質量%以下、
の1種または2種以上を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の高強度鋼板。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の成分組成を有する圧延材を用意することと、
前記圧延材をAc1点と0.2×Ac1点+0.8×Ac3点との間の温度で5秒以上保持した後、Ac3点以上の温度まで加熱し5〜600秒間保持してオーステナイト化することと、
前記オーステナイト化後、650℃から100℃〜300℃の間の冷却停止温度まで10℃/秒以上の冷却速度で冷却することと、
冷却停止温度から300〜500℃の範囲にある再加熱温度まで加熱することと、
を含む、高強度鋼板の製造方法。 - 前記冷却停止温度までの冷却が、650℃以上の温度である急冷開始温度まで平均冷却速度0.1℃/秒以上、10℃/秒未満で冷却することと、前記急冷開始温度から前記冷却停止温度まで平均冷却速度10℃/秒以上で冷却することを含む請求項5に記載の高強度鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
PCT/JP2017/017753 WO2017208763A1 (ja) | 2016-05-30 | 2017-05-10 | 高強度鋼板およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016107598 | 2016-05-30 | ||
JP2016107598 | 2016-05-30 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017214646A true JP2017214646A (ja) | 2017-12-07 |
JP6875914B2 JP6875914B2 (ja) | 2021-05-26 |
Family
ID=60576597
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2017072109A Active JP6875914B2 (ja) | 2016-05-30 | 2017-03-31 | 高強度鋼板およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6875914B2 (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112251679A (zh) * | 2020-09-18 | 2021-01-22 | 东南大学 | 一种双相高强钢及其制备方法 |
CN115349028A (zh) * | 2020-03-31 | 2022-11-15 | 杰富意钢铁株式会社 | 钢板、部件及其制造方法 |
Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012017500A (ja) * | 2010-07-08 | 2012-01-26 | Kobe Steel Ltd | 高強度鋼板の製造方法 |
JP2013227654A (ja) * | 2012-03-29 | 2013-11-07 | Kobe Steel Ltd | 成形性および形状凍結性に優れた、高強度冷延鋼板、高強度溶融亜鉛めっき鋼板および高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板、ならびにそれらの製造方法 |
JP2015193897A (ja) * | 2014-03-17 | 2015-11-05 | 株式会社神戸製鋼所 | 延性及び曲げ性に優れた高強度冷延鋼板および高強度溶融亜鉛めっき鋼板、並びにそれらの製造方法 |
JP2015224359A (ja) * | 2014-05-27 | 2015-12-14 | Jfeスチール株式会社 | 高強度鋼板の製造方法 |
-
2017
- 2017-03-31 JP JP2017072109A patent/JP6875914B2/ja active Active
Patent Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2012017500A (ja) * | 2010-07-08 | 2012-01-26 | Kobe Steel Ltd | 高強度鋼板の製造方法 |
JP2013227654A (ja) * | 2012-03-29 | 2013-11-07 | Kobe Steel Ltd | 成形性および形状凍結性に優れた、高強度冷延鋼板、高強度溶融亜鉛めっき鋼板および高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板、ならびにそれらの製造方法 |
JP2015193897A (ja) * | 2014-03-17 | 2015-11-05 | 株式会社神戸製鋼所 | 延性及び曲げ性に優れた高強度冷延鋼板および高強度溶融亜鉛めっき鋼板、並びにそれらの製造方法 |
JP2015224359A (ja) * | 2014-05-27 | 2015-12-14 | Jfeスチール株式会社 | 高強度鋼板の製造方法 |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN115349028A (zh) * | 2020-03-31 | 2022-11-15 | 杰富意钢铁株式会社 | 钢板、部件及其制造方法 |
CN115349028B (zh) * | 2020-03-31 | 2024-03-26 | 杰富意钢铁株式会社 | 钢板、部件及其制造方法 |
CN112251679A (zh) * | 2020-09-18 | 2021-01-22 | 东南大学 | 一种双相高强钢及其制备方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP6875914B2 (ja) | 2021-05-26 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6849536B2 (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP6875916B2 (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP6860420B2 (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP6762798B2 (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法 | |
US9890437B2 (en) | High-strength steel sheet with excellent warm formability and process for manufacturing same | |
JP2017186647A (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法 | |
WO2017208759A1 (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP5667471B2 (ja) | 温間での深絞り性に優れた高強度鋼板およびその温間加工方法 | |
JP5662903B2 (ja) | 成形性に優れた高強度鋼板、温間加工方法、および温間加工された自動車部品 | |
JP6809524B2 (ja) | 超低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法 | |
JP5521444B2 (ja) | 加工性に優れた高強度冷延鋼板およびその製造方法 | |
JP6988836B2 (ja) | 超低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法 | |
JP6875915B2 (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法 | |
WO2017208762A1 (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP2018095896A (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法 | |
WO2018025674A1 (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP5632759B2 (ja) | 高強度鋼部材の成形方法 | |
JP6875914B2 (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法 | |
WO2017208763A1 (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP2018090877A (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP6348436B2 (ja) | 高強度高延性鋼板 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20191127 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20201013 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20201208 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20210112 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20210312 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20210406 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20210423 |
|
R151 | Written notification of patent or utility model registration |
Ref document number: 6875914 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151 |