JP2017212882A - アセチルエステラーゼ及びその利用 - Google Patents
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Abstract
【課題】マンナンの利用性を向上させることができるアセチルエステラーゼを提供し、その利用も併せて提供する。【解決手段】特定のアミノ酸配列を有するポリペプチドの有するアセチルエステラーゼ活性を用いて、マンナンの水和物の低粘性化を引き起こし、マンナナーゼと併用するときには、マンナンの分解効率を高めることができる。【選択図】なし
Description
本明細書は、アセチルエステラーゼ及びその利用に関する。
マンナンはマンノースを主成分とする多糖の総称であり、自然界に広く分布している。マンナンには、針葉樹の細胞壁やコンニャクに含まれるマンノース及びグルコースを主鎖とするグルコマンナンや、コーヒー豆や果実中に含まれるマンノース及びガラクトースを主鎖とするガラクトマンナンがある。これらはゲル状で存在するため、食品の増粘剤や安定剤として用いられている。また、その特性からコーヒーの抽出を妨げるため、マンナナーゼ(マンナン分解酵素)を加えることによってコーヒーの抽出効率を高めている。
カビやキノコは菌体外にマンナナーゼを分泌し、マンナンを低分子化した後、菌体内に取り込み資化している。これまで多種多様のマンナナーゼが見出されており、それらは食品の製造に利用されている。
また、マンナンは未利用のバイオマスの一つとされている。現在バイオマスとしての利用が注目される、グルコースを主成分とする多糖のセルロースについては、分解に主にセルラーゼが用いられており、その分解を増強する物質についてはすでに報告されている(特許文献1、特許文献2)。
マンナンは多くの植物に含有されているが、その粘性の高さが工業的利用の障害となっている。そこで、効率の良いマンナン分解が可能となることで、マンナンを含む食品の製造やバイオマス利用において技術移転の可能性が見込まれる。しかし、マンナンについては、上述のセルロースのような分解増強物質が未だ発見されていない。また、マンナンの利用性向上にあたっては、低分子化以外の方法も未だ発見されていない。
また、アセチルキシランエステラーゼは各種知られているが、各種マンナンからの脱アセチルに用いられているに過ぎない。
本明細書は、マンナンの利用性を向上させることができるアセチルエステラーゼを提供し、その利用も併せて提供することを目的とする。
本発明者らは、マンナンの粘度低下に関する研究において、マンナンの主鎖を加水分解せずにマンナンの粘度低下を引き起こす、A. nidulans由来のタンパク質を見出した。また、そのタンパク質について種々検討したところ、アセチルエステラーゼであることがわかった。また、このタンパク質がマンナンに作用することで、マンナンの水和物の低粘性化を引き起こし、マンナナーゼと併用するときには、マンナンの分解効率を高めることも明らかにした。こうした知見に基づき、本明細書の開示は、以下の手段を提供する。
(1)以下の(a)〜(f)からなる群から選択されるポリペプチドを有する、アセチルエステラーゼ。
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド。
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列と70%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド。
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド。
(d)配列番号2で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列又はその相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるポリペプチド。
(e)配列番号1で表される塩基配列と70%以上の同一性を有する塩基配列によってコードされるポリペプチド。
(f)配列番号2で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列又はその相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるポリペプチド。
(2)前記アセチルエステラーゼはAspergillus nidulans由来であることを特徴とする、(1)に記載のアセチルエステラーゼ。
(3)(1)又は(2)に記載のアセチルエステラーゼをコードするポリヌクレオチドと、1又は2以上の前記ポリヌクレオチドを発現させるための要素と、を含む発現ベクター。
(4)(3)に記載の発現ベクターを含有する、形質転換細胞。
(5)前記形質転換細胞は大腸菌である、(4)に記載の形質転換細胞。
(6)(1)又は(2)に記載のアセチルエステラーゼを生産する方法であって、
(4)又は(5)に記載の形質転換細胞を培養する工程と、
前記培養物からポリペプチドを回収する工程と、
を備える、方法。
(7)(1)又は(2)に記載のアセチルエステラーゼを生産する方法であって、
前記アセチルエステラーゼを産生する条件下で(4)又は(5)に記載の形質転換細胞を培養する工程と、
前記培養物から前記アセチルエステラーゼを回収する工程と、
を備える、方法。
(8)マンナンの分解産物の生産方法であって、
アセチルエステラーゼ及びマンナナーゼを用いてマンナン含有材料を分解する工程、を備える、方法。
(9)アセチルエステラーゼを含有する、マンナナーゼ分解効率増強剤。
(10)マンナンの粘性低下産物の生産方法であって、
アセチルエステラーゼを用いてマンナンの粘性を低下させる工程、
を備える、方法。
(11)アセチルエステラーゼを含有する、マンナンの粘性低下剤。
(12)食品を製造する方法であって、
アセチルエステラーゼを用いてマンナンの粘性を低下させる工程、を備える、方法。
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド。
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列と70%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド。
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド。
(d)配列番号2で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列又はその相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるポリペプチド。
(e)配列番号1で表される塩基配列と70%以上の同一性を有する塩基配列によってコードされるポリペプチド。
(f)配列番号2で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列又はその相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるポリペプチド。
(2)前記アセチルエステラーゼはAspergillus nidulans由来であることを特徴とする、(1)に記載のアセチルエステラーゼ。
(3)(1)又は(2)に記載のアセチルエステラーゼをコードするポリヌクレオチドと、1又は2以上の前記ポリヌクレオチドを発現させるための要素と、を含む発現ベクター。
(4)(3)に記載の発現ベクターを含有する、形質転換細胞。
(5)前記形質転換細胞は大腸菌である、(4)に記載の形質転換細胞。
(6)(1)又は(2)に記載のアセチルエステラーゼを生産する方法であって、
(4)又は(5)に記載の形質転換細胞を培養する工程と、
前記培養物からポリペプチドを回収する工程と、
を備える、方法。
(7)(1)又は(2)に記載のアセチルエステラーゼを生産する方法であって、
前記アセチルエステラーゼを産生する条件下で(4)又は(5)に記載の形質転換細胞を培養する工程と、
前記培養物から前記アセチルエステラーゼを回収する工程と、
を備える、方法。
(8)マンナンの分解産物の生産方法であって、
アセチルエステラーゼ及びマンナナーゼを用いてマンナン含有材料を分解する工程、を備える、方法。
(9)アセチルエステラーゼを含有する、マンナナーゼ分解効率増強剤。
(10)マンナンの粘性低下産物の生産方法であって、
アセチルエステラーゼを用いてマンナンの粘性を低下させる工程、
を備える、方法。
(11)アセチルエステラーゼを含有する、マンナンの粘性低下剤。
(12)食品を製造する方法であって、
アセチルエステラーゼを用いてマンナンの粘性を低下させる工程、を備える、方法。
本明細書の開示は、新規なアセチルエステラーゼ及びその利用に関し、特に、アセチルエステラーゼを利用したマンナン分解産物の生産方法、さらに、マンナナーゼによるマンナン分解増強剤、マンナン含有材料の粘度低下剤及びマンナン含有食品の加工剤としての利用に関する。本タンパク質は、Aspergillus nidulansをグルコマンナン培地で培養した培養上清から取得したものであり、本発明者らによって、アセチルエステラーゼ活性を有するという新たな機能が発見された。
本明細書の開示は、また、本発明者らが見出した新規なアセチルエステラーゼを含むアセチルエステラーゼが、マンナンの水和物の粘着性を低下することを見出したことに基づく。マンナンは水溶性の食物繊維で、水和物となることで粘性を持つ。その粘性の程度は含有するマンナンの種類や水分量等によって異なるが、ゲル状で存在することも多いため、高粘度であることを利用して、増粘剤や安定剤として広く用いられている。また一方で、その粘度の高さが食品への利用及び工業用途への利用の障害となることも少なくない。マンナンの粘性を低下させる方法は、現在は、マンナナーゼを用いたマンナンの低分子化が主流となっている。
本明細書の開示によれば、アセチルエステラーゼをマンナンに作用させることで、その水和物の粘性を低下させることができる。本明細書の開示を拘束するものではないが、マンナンが有しうるアセチル基をアセチルエステラーゼが加水分解することで、マンナンの粘性低下を引き起こすと推測することができる。さらに、こうしたアセチルエステラーゼの作用を用いることで、アセチルエステラーゼと共にマンナナーゼを用いることで、マンナナーゼによるマンナンの分解効率を向上させることができる。
以下、本明細書に開示される各種実施形態について詳細に説明する。
(アセチルエステラーゼ)
アセチルエステラーゼは、アセチルエステル及び水を基質として、アルコール及び酢酸に分解する酵素である。この酵素は加水分解酵素に分類され、特にカルボキシエステル結合に作用する。系統名はアセチルエステルアセチルヒドロラーゼである。また、EC酵素分類ではEC3.1.1.6に分類することができ、CAZy(Carbohydrate-Active enZYmes)のホームページ(http://www.cazy.org/)において提供される分類ではCE4、CE16に分類することができる。ここで、CEとはCarbohydrate Esterase familyを表している。アセチルエステラーゼの基質としては、マンナンやキシラン等が知られている。
アセチルエステラーゼは、アセチルエステル及び水を基質として、アルコール及び酢酸に分解する酵素である。この酵素は加水分解酵素に分類され、特にカルボキシエステル結合に作用する。系統名はアセチルエステルアセチルヒドロラーゼである。また、EC酵素分類ではEC3.1.1.6に分類することができ、CAZy(Carbohydrate-Active enZYmes)のホームページ(http://www.cazy.org/)において提供される分類ではCE4、CE16に分類することができる。ここで、CEとはCarbohydrate Esterase familyを表している。アセチルエステラーゼの基質としては、マンナンやキシラン等が知られている。
(マンナン)
マンナンは、マンノースを主成分とする多糖類の総称をいう。マンナンは、一般に、酵母、カビ、植物の種子や果実、針葉樹の木質部に多く存在する、ヘミセルロースの一種である。
マンナンは、マンノースを主成分とする多糖類の総称をいう。マンナンは、一般に、酵母、カビ、植物の種子や果実、針葉樹の木質部に多く存在する、ヘミセルロースの一種である。
マンナンには、グルコマンナン、ガラクトグルコマンナン、ガラクトマンナン等が知られている。グルコマンナンは、グルコースとマンノースがβ−1,4結合したものであり、例えば、グルコースとマンノースが約2:3の割合で結合したグルコマンナンが針葉樹やコンニャクイモに多く含まれている。グルコマンナンの側鎖にはガラクトースがα−1,6結合しており、その比率が高いものはガラクトグルコマンナンと呼ばれる。また、ガラクトマンナンはβ−1,4結合したマンノースに、側鎖としてガラクトースがα−1,6結合したものであり、ガラクトースの比率はガラクトマンナンを含有する植物によって異なる。グアガム、コーヒー豆に多く含まれている。
マンナンは、アセチル基を含んでいることが好ましく、アセチル基の分布は規則的であってもよいし、不規則であってもよい。さらに、マンナンが含有するアセチル基の程度も問わない。例えば、グルコマンナンは、平均で糖単位9〜19個ごとにアセチル基を含むことができる。
(キシラン)
キシランは、D−キシロースがβ−1,4結合した多糖類をいう。天然には、キシロースの主鎖に、様々な側鎖が結合したヘテロ糖として存在している。植物の細胞壁に存在するヘミセルロースの一種として知られている。
キシランは、D−キシロースがβ−1,4結合した多糖類をいう。天然には、キシロースの主鎖に、様々な側鎖が結合したヘテロ糖として存在している。植物の細胞壁に存在するヘミセルロースの一種として知られている。
キシランは、例えば、シラカバなどから採取することができる。キシランは、キシロースに分解され、還元されてキシリトールに変換され、食品添加物として使われうる。キシランには、アラビノキシランやグルクロノキシラン等が知られている。アラビノキシランは、β−1,4結合したキシロースの主鎖に、α−1,3結合のL−アラビノースとα−1,2結合の4−O−メチルグルクロン酸が側鎖として結合しており、その比率は約10:1:2である。アラビノキシランは、トウモロコシの穂軸及びコムギやカラスムギのわら等のイネ科植物並びに針葉樹に多く含まれている。針葉樹ヘミセルロースとしてはグルコマンナンの次に多く含まれ、含有率は10%程度であり、アセチル基を持たない。
グルクロノキシランは、β−1,4結合したキシロースの主鎖に、α−1,2結合の4−O−メチルグルクロン酸が側鎖として結合しており、その比率は約5:1である。広葉樹に多く含まれており、平均で、キシロース10個に対して5〜7個の比率でC2位及びC3位にアセチル基を持つ。
(アセチルエステラーゼ活性を有するポリペプチド)
本明細書で開示されるアセチルエステラーゼは、配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドであってもよい。こうしたポリペプチドが有しうるアミノ酸配列の他の態様は、配列番号2で表されるアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸変異を有することができる。アミノ酸変異の個数は特に限定されないが、例えば、1〜50個、好ましくは1〜40個、より好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜2個程度を意味する。また、アミノ酸変異は、置換、欠失及び付加のいずれであってもよく、2種類以上の変異態様を同時に含んでいてもよい。アミノ酸置換の例としては、保存的置換が好ましく、具体的には以下のグループ内での置換があげられる。(グリシン、アラニン)(バリン、イソロイシン、ロイシン)(アスパラギン酸、グルタミン酸)(アスパラギン、グルタミン)(セリン、トレオニン)(リジン、アルギニン)(フェニルアラニン、チロシン)である。
本明細書で開示されるアセチルエステラーゼは、配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドであってもよい。こうしたポリペプチドが有しうるアミノ酸配列の他の態様は、配列番号2で表されるアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸変異を有することができる。アミノ酸変異の個数は特に限定されないが、例えば、1〜50個、好ましくは1〜40個、より好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個、特に好ましくは1〜2個程度を意味する。また、アミノ酸変異は、置換、欠失及び付加のいずれであってもよく、2種類以上の変異態様を同時に含んでいてもよい。アミノ酸置換の例としては、保存的置換が好ましく、具体的には以下のグループ内での置換があげられる。(グリシン、アラニン)(バリン、イソロイシン、ロイシン)(アスパラギン酸、グルタミン酸)(アスパラギン、グルタミン)(セリン、トレオニン)(リジン、アルギニン)(フェニルアラニン、チロシン)である。
かかるポリペプチドの他の一態様としては、配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつアセチルエステラーゼ活性を有するポリペプチドが挙げられる。同一性は好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、一層好ましくは95%以上である。より一層好ましくは98%以上であり、最も好ましくは99%以上である。
本明細書において同一性又は類似性とは、当該技術分野で知られているとおり、配列を比較することにより決定される、2以上のタンパク質あるいは2以上のポリヌクレオチドの間の関係である。当該技術で“同一性”とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアライメントによって、あるいは場合によっては、一続きのそのような配列間のアライメントによって決定されるような、タンパク質又はポリヌクレオチド配列の間の配列不変性の程度を意味する。また、類似性とは、タンパク質又はポリヌクレオチド配列の間のアライメントによって、あるいは場合によっては、一続きの部分的な配列の間の相関性の程度を意味する。より具体的には、配列の同一性と保持性(配列中の特定アミノ酸又は配列における物理化学特性を維持する置換)によって決定される。なお、類似性は、後述するBLASTの相同性検索結果においてSimilarityと称される。同一性及び類似性を決定する方法は、対比する配列間で最も長くアライメントするように設計される方法であることが好ましい。同一性及び類似性を決定するための方法は、公衆に利用可能なプログラムとして提供されている。例えば、AltschulらによるBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)プログラム(例えば、Altschul SF, Gish W, Miller W, Myers EW, Lipman DJ., J. Mol. Biol., 215 : p403-410(1990), Altschul SF, Madden TL, Schaffer AA, Zhang Z, Miller W, Lipman DJ., Nucleic Acid Res. 25 : p3398-3402(1997))を利用し決定することができる。BLASTのようなソフトウェアを用いる場合の条件は、特に限定するものではないが、デフォルト値を用いるのが好ましい。
かかるポリペプチドのさらに他の一態様として、配列番号2で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるDNA(若しくはその一部)又は当該DNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAによってコードされるアミノ酸配列を有し、アセチルエステラーゼ活性を有するポリペプチドが挙げられる。配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列として、配列番号1で表され塩基配列が挙げられる。
ここで「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。このようなストリンジェントな条件は当業者に公知であって、例えばMolecular Cloning(Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)やCurrent protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987)を参照にして設定することができる。例えば、塩基配列の同一性が高い核酸、すなわち、配列番号1で表される塩基配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、一層好ましくは95%以上である。より一層好ましくは98%以上であり、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNA又はその相補鎖がハイブリダイズし、それより相同性が低い核酸の相補鎖がハイブリダイズしない条件が挙げられる。より具体的には、ナトリウム塩濃度が15〜750mM、好ましくは50〜750mM、より好ましくは300〜750mM、温度が25〜70℃、好ましくは50〜70℃、より好ましくは55〜65℃、ホルムアミド濃度が0〜50%、好ましくは20〜50%、より好ましくは35〜45%での条件をいう。さらに、ストリンジェントな条件では、ハイブリダイゼーション後のフィルターの洗浄条件が、通常はナトリウム塩濃度15〜600mM、好ましくは50〜600mM、より好ましくは300〜600mM、温度が50〜70℃、好ましくは55〜70℃、より好ましくは60〜65℃である。
ストリンジェントな条件として例えば、ハイブリダイゼーション液(50%ホルムアミド、10×SSC(0.15M NaCl, 15mM sodium citrate, pH 7.0)、5×Denhardt溶液、1% SDS、10% デキストラン硫酸、10μg/mlの変性サケ精子DNA、50mMリン酸バッファー(pH7.5))を用いて約42℃〜約50℃でインキュベーションし、その後0.1×SSC、0.1% SDSを用いて約65℃〜約70℃で洗浄する条件を挙げることができる。更に好ましいストリンジェントな条件として例えば、ハイブリダイゼーション液として50%ホルムアミド、5×SSC(0.15M NaCl, 15mM sodium citrate, pH 7.0)、1×Denhardt溶液、1%SDS、10%デキストラン硫酸、10μg/mlの変性サケ精子DNA、50mMリン酸バッファー(pH7.5))を用いる条件を挙げることができる。
かかるポリペプチドのさらに他の一態様としては、配列番号1で表される塩基配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、一層好ましくは95%以上、より一層好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAにコードされ、アセチルエステラーゼ活性を有するポリペプチドが挙げられる。配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列として、配列番号1で表される塩基配列が挙げられる。
こうした各種態様のポリペプチドは、アセチルエステラーゼ活性を有していればよく、その程度は問わない。好ましくは、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの有するアセチルエステラーゼ活性の20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上、一層好ましくは60%以上、より一層好ましくは70%以上、さらに一層好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上であり、さらに最も好ましくは100%以上である。
本明細書で開示するポリペプチド(以下、単に本ポリペプチドという。)は、ゲル電気泳動等の分離手段で精製された状態であってもよいし、他のタンパク質等が併存した未精製あるいは粗精製のものであってもよい。未精製又は粗精製の本ポリペプチドとして、後述する本ポリペプチドを分泌生産する形質転換体の培養上清又はその粗精製物が挙げられる。本ポリペプチドの製造方法は特に限定されない。本ポリペプチドの製造方法については後段で詳述する。
本ポリペプチドは、アセチルエステラーゼ活性を有しており、アセチル基を有する各種の基質に用いることができる。アセチル基を有する基質としては、特にマンナン及びキシランが挙げられるが、本発明はこれに限定されない。
本ポリペプチドは、マンナン及びキシランのアセチルエステラーゼとして用いることができる。使用の態様としては、特に限定しないが、例えば、本ポリペプチドを単独で用いることもできるし、後述する公知のアセチルキシランエステラーゼと混合して用いることもできる。
また、本ポリペプチドは、アセチルエステラーゼ製剤として用いることもできる。アセチルエステラーゼ製剤として使用する場合にも、上述と同様に、製造方法は特に限定されず、各種分離手段によって精製したものであってもよいし、未精製又は粗精製のものであってもよい。
(本ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)
本明細書に開示されるポリヌクレオチド(以下、本ポリヌクレオチドという。)は、本ポリペプチドをコードしている。本ポリヌクレオチドとしては、本ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、アセチルエステラーゼ活性を有するものが挙げられる。本ポリヌクレオチドは、一つのアミノ酸に対応して、遺伝コードの縮重により発生する複数の態様の塩基配列を包含している。ポリヌクレオチドは、DNA(一重鎖及び二重鎖)、RNA(一重鎖)、DNA/RNAハイブリッド(DNA一重鎖とRNA一重鎖のハイブリッド)、DNAとRNAのキメラであってもよい。また、本ポリヌクレオチドは、cDNA等、本ポリペプチドをコードするコード化配列のみを有するものであってもよいし、ゲノム等、所定の宿主で対応する本ポリペプチドに翻訳される限り、1又は2以上のイントロンを含んでいてもよい。
本明細書に開示されるポリヌクレオチド(以下、本ポリヌクレオチドという。)は、本ポリペプチドをコードしている。本ポリヌクレオチドとしては、本ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、アセチルエステラーゼ活性を有するものが挙げられる。本ポリヌクレオチドは、一つのアミノ酸に対応して、遺伝コードの縮重により発生する複数の態様の塩基配列を包含している。ポリヌクレオチドは、DNA(一重鎖及び二重鎖)、RNA(一重鎖)、DNA/RNAハイブリッド(DNA一重鎖とRNA一重鎖のハイブリッド)、DNAとRNAのキメラであってもよい。また、本ポリヌクレオチドは、cDNA等、本ポリペプチドをコードするコード化配列のみを有するものであってもよいし、ゲノム等、所定の宿主で対応する本ポリペプチドに翻訳される限り、1又は2以上のイントロンを含んでいてもよい。
本ポリヌクレオチドは、例えば、本ポリヌクレオチドをコードする塩基配列に基づいて設計したプライマーを用いて、本ポリペプチドの天然の取得源であるA. nidulansから抽出したDNA、他各種生物のcDNAライブラリー又はゲノムDNAライブラリー等由来のポリヌクレオチドを鋳型としたPCR増幅を行うことにより、ポリヌクレオチドを断片として得ることができる。また、上記ライブラリー等由来のポリヌクレオチドを鋳型とし、本ポリペプチドをコードするDNAの一部であるDNA断片をプローブとしてはハイブリダイゼーションを行うことにより、ポリヌクレオチド断片として得ることができる。あるいは本ポリヌクレオチドは、化学合成法等の当技術分野で公知の各種の核酸配列合成法によって、DNA断片等として合成してもよい。さらにまた、配列番号2で表されるアミノ酸配列に変異を導入した態様のポリペプチドをコードするDNA等の本ポリペプチドは、公知のアミノ酸配列における変異導入法において取得される。変異導入法については後段で説明する。そのほか、当業者であれば、既出のMolecular CloningやCurrent protocols in Molecular Biology等を参照することにより、本ポリペプチドについて開示される塩基配列等に基づいて、各種態様の本ポリヌクレオチドを取得することができる。
(発現ベクター及び形質転換体)
本明細書に開示されるポリヌクレオチド構築物は、本ポリヌクレオチドを含み、好ましくは、さらに、本ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを宿主細胞で発現させるための1又は2以上の要素を含むことができる。こうした要素としては、公知技術に基づき適宜選択されるが、例えば、プロモーター、ターミネーター、ポリA配列、シグナルペプチド配列、宿主ゲノム等との相同組み換えによるゲノム導入のための相同配列等が挙げられる。また、ポリヌクレオチド構築物は、形質転換された宿主細胞を選択するためのマーカーを含むことができる。ポリヌクレオチド構築物は、環状あるいは線状のDNA分子することができるほか、典型的には発現ベクターの形態をとりうる。発現ベクター及びその構築方法は、既出のMolecular CloningやCurrent protocols in Molecular Biology等に記載されるほか、当業者において周知である。なお、ベクターの形態は、使用形態に応じて様々な形態を採ることができる。
本明細書に開示されるポリヌクレオチド構築物は、本ポリヌクレオチドを含み、好ましくは、さらに、本ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを宿主細胞で発現させるための1又は2以上の要素を含むことができる。こうした要素としては、公知技術に基づき適宜選択されるが、例えば、プロモーター、ターミネーター、ポリA配列、シグナルペプチド配列、宿主ゲノム等との相同組み換えによるゲノム導入のための相同配列等が挙げられる。また、ポリヌクレオチド構築物は、形質転換された宿主細胞を選択するためのマーカーを含むことができる。ポリヌクレオチド構築物は、環状あるいは線状のDNA分子することができるほか、典型的には発現ベクターの形態をとりうる。発現ベクター及びその構築方法は、既出のMolecular CloningやCurrent protocols in Molecular Biology等に記載されるほか、当業者において周知である。なお、ベクターの形態は、使用形態に応じて様々な形態を採ることができる。
ポリヌクレオチド構築物の宿主細胞への導入にあたっては、既出のMolecular CloningやCurrent protocols in Molecular Biology等に記載されている方法を適宜参照し、従来公知の各種方法、例えば、トランスフォーメーション法、トランスフェクション法、接合法、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、酢酸リチウム法等を用いることができる。
また、本ポリペプチドであって、配列番号2で表されるアミノ酸配列に点変異等を導入した態様のポリペプチドは、慣用の突然変異誘発法、部位特異的変異法、エラープローンPCRを用いた分子進化的手法等によって改変することによって取得することができる。このような手法としては、Kunkel法又はGapped duplex法等の公知手法又はこれに準ずる方法が挙げられ、例えば、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-K(タカラバイオ社製)やMutant-G(TAKARA社製))などを用いて、あるいは、TAKARA社のLA PCR in vitro Mutagenesisシリーズキットを用いて変異が導入される。
上記形質転換体の宿主は、特に限定しないで、各種原核微生物や真核微生物を用いることができる。原核微生物や真核微生物は特にその種類を限定しないが、遺伝子組み換え系技術の確立した微生物を用いることが好ましく、特に酵母及び大腸菌が好ましい。
(マンナンの分解産物の生産方法)
本明細書に開示のマンナンの分解産物の生産方法は、アセチルエステラーゼ及びマンナナーゼを用いてマンナンを分解する工程を、備えることができる。アセチルエステラーゼを用いることで、マンナナーゼによるマンナンの分解効率を向上させることができる。その結果、マンナンの分解産物を効率的に得ることができる。
本明細書に開示のマンナンの分解産物の生産方法は、アセチルエステラーゼ及びマンナナーゼを用いてマンナンを分解する工程を、備えることができる。アセチルエステラーゼを用いることで、マンナナーゼによるマンナンの分解効率を向上させることができる。その結果、マンナンの分解産物を効率的に得ることができる。
本方法において分解対象とするマンナンの形態は特に限定しない。マンナンを含みうるリグノセルロース系あるいはその他のバイオマス材料(非可食材料)であってもよい。また、これらのバイオマス材料から分離されたヘミセルロース材料であってもよい。さらには、ある程度精製された又は精製されたマンナンであってもよい。また、マンナンを含む可食性材料であってもよい。こうした可食性材料としては、各種の果実、コーヒー豆、芋又は各種こんにゃくやゼリーなどの芋加工食品等が挙げられる。
アセチルエステラーゼとしては、本ポリペプチドを用いることができる。また、公知のアセチルキシランエステラーゼなどのアセチルエステラーゼを用いることもできる。アセチルキシランエステラーゼとしては、例えば、上述のアセチルキシランエステラーゼ(Meiji Seikaファルマ株式会社)を用いることができる。
本明細書において、マンナナーゼとは、マンナンのβ−1,4結合を加水分解するエンド型の酵素で、β−マンナナーゼ、β−マンノシダーゼとも呼ばれている。EC酵素分類ではEC3.2.1.25に分類され、CAZyではGH1、GH2、GH5に分類されうる。GHとは、Glycoside Hydrolase Familyを表している。
マンナナーゼは天然由来のものであっても人工的に改変されたものであってもよい。天然由来のものとしては、Aspergillus nigerをはじめとするAspergillus属やTrichoderma reeseiなどの糸状菌、Bacillus属細菌等に由来のマンナナーゼが知られている。本発明においては、マンナナーゼを1種類又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。2種類以上のマンナナーゼを組み合わせる場合、異種生物由来のマンナナーゼのみならず、同種生物由来のマンナナーゼを2種類以上組み合わせて用いることもできる。また、マンナナーゼとして作用する限りにおいて基質特異性が互いに異なるマンナナーゼを組み合わせて用いることもできる。
本生産方法における分解工程において、アセチルエステラーゼとマンナナーゼとマンナン含有材料との接触形態は特に限定されない。例えば、予め、アセチルエステラーゼとマンナンとを接触させた後、マンナナーゼとマンナンとを接触させてもよいし、マンナナーゼとマンナンとを接触させた後、アセチルエステラーゼとマンナンとを接触させてもよい。また、アセチルエステラーゼ及びマンナナーゼとマンナンとを同時に接触させてもよい。アセチルエステラーゼとマンナンとを予め接触させた後、マンナンとマンナナーゼとを接触させることが好ましい。こうすることで、マンナンの粘性低下によりマンナナーゼのアクセシビリティが向上し、効率的にマンナンが分解されるからである。
分解対象を非可食性のバイオマス材料又はそれに由来する材料とするときには、本方法の分解工程を実施することで、バイオマス由来の各種有機化合物の生産方法に供するバイオマス原料の生産方法を提供することができる。ヘミセルロース中のマンナン分子の水和性を高めることで、各種酵素によるヘミセルロースの分解効率を向上させることができる。併存するヘミセルロースが緩くなったバイオマス原料や、ヘミセルロースと分離されたセルロースを含むバイオマス原料を用いてセルラーゼによる分解工程では、セルロースに対するセルラーゼのアクセシビリティが向上され、グルコースなどの構成単糖も効率的に得ることができるバイオマス材料の分解産物の生産方法を提供することもできる。
(マンナンの粘性低下産物の生産方法)
本明細書に開示のマンナンの粘性低下産物の生産方法は、アセチルエステラーゼを用いてマンナンの水和物の粘性を低下させる工程を、備えることができる。アセチルエステラーゼを用いることで、マンナンの水和物の粘性をマンナンを分解することなく効果的に低下させることができる。
本明細書に開示のマンナンの粘性低下産物の生産方法は、アセチルエステラーゼを用いてマンナンの水和物の粘性を低下させる工程を、備えることができる。アセチルエステラーゼを用いることで、マンナンの水和物の粘性をマンナンを分解することなく効果的に低下させることができる。
また、本方法において、アセチルエステラーゼと共にマンナナーゼを用いてもよい。アセチルエステラーゼと共にマンナナーゼを用いることで、マンナナーゼのマンナン分解効率を増強することができ、マンナナーゼの使用を低減できる。
本方法においては、マンナンの分解産物の生産方法と同様、既に説明した、本明細書に開示されるアセチルエステラーゼ及びマンナナーゼの各種実施態様を適用することができる。また、マンナンに対する接触態様も既述の各種実施態様を適用することができる。また、本方法においても、マンナンの分解産物の生産方法と同様、各種態様のマンナンを粘性低下対象とすることができる。
例えば、本方法において、粘性低下対象を非可食性のバイオマス材料又はそれに由来する材料とするときには、本方法の粘性低下工程を実施することで、バイオマス由来の各種有機化合物の生産方法の前処理方法を提供することができる。ヘミセルロース中のマンナン分子の水和性を高めることで、各種酵素によるヘミセルロースの分解効率を向上させることができる。また、セルロースからヘミセルロースを分離除去することができる。さらに、マンノースのほか、グルコースなどの構成単糖も効率的に得ることができるバイオマス材料の分解産物の生産方法を提供することができる。同時に、セルロースの利用性も高めることができる。
また、例えば、本方法において粘性低下対象をコーヒー豆等、抽出(加工)工程における粘性が問題となっている可食性材料とした場合には、本方法の粘性低下工程を実施することで、効率的な抽出(加工)方法を提供することができる。特に、マンナンの分解を伴わないために、マンナンとしても利用することができる。
さらに、例えば、本方法において、マンナンを含有するこんにゃくやゼリー等の食品を粘性低下対象をとした場合には、本方法の粘性低下工程を実施することで、この種の食品の粘性や弾性を適度に低下させることができて、食品の嚥下性を改善したり新たな食感を有する食品を生産する方法を提供できる。この場合、対象食品に対するアセチルエステラーゼの作用部位を食品内部、あるいは表面近傍等と適宜選択することで、種々の食感や弾性等の特性を有する食品を製造することができる。
(食品の加工方法及び食品の製造方法)
マンナン分解産物の生産方法及びマンナンの粘性低下物の生産方法は、これらの方法に含まれる工程を含む食品の加工方法又は食品の製造方法としても実施できる。これらの方法における食品は特に限定しないで、アセチルエステラーゼを利用したマンナンの分解やマンナンの粘性低下が有効ないかなる食品も対象とすることができる。
マンナン分解産物の生産方法及びマンナンの粘性低下物の生産方法は、これらの方法に含まれる工程を含む食品の加工方法又は食品の製造方法としても実施できる。これらの方法における食品は特に限定しないで、アセチルエステラーゼを利用したマンナンの分解やマンナンの粘性低下が有効ないかなる食品も対象とすることができる。
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
(機能未知タンパク質HPの同定)
本実施例では、グルコマンナン培地で生育させたA. nidulansの培養ろ液から、マンナンのアセチルエステラーゼ活性を有するタンパク質の取得を試みた。まず、500mlの三角フラスコに終濃度1.0%になるようにグルコマンナンを加えた液体培地(グルコマンナンを唯一の炭素源とした最少培地:グルコマンナン培地)を調製し、そこにカウンティングチェンバーを用いて胞子数を合わせた(1μlあたり2,000個の胞子数)野生株(WT株)の胞子懸濁液を500μl接種した。30℃で24 時間振とう培養し(100rpm)、菌体と培養液をブフナーの漏斗を用いて分離した。回収した培養ろ液を、ビバスピンを用いて25mlまで濃縮し、さらにそのうちの1mlをTCA沈殿した。沈殿したタンパク質をアセトンで洗浄後、サンプルバッファーに溶解して、SDS−PAGE(アクリルアミドゲルの濃度15%)に供し、一定電流条件下(20mA)で泳動した後に、クマシー染色を行った。SDS−PAGEの結果を図1に示す。染色後、各バンドを切り出してタンパク質をトリプシンで処理後MALDI−TOF/TOF−MSを用いて解析した。得られたデータ(ペプチドフィンガープリントおよびMS/MSスペクトル)を用いてMASCOTサーチすることで、各タンパク質を同定したところ、endo−1,4−β−マンナナーゼやマンノシダーゼと同様に、図1の表中のNo.5に示す、細胞外に大量に分泌される機能未知タンパク質(HP)が同定された。このタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号2で示されるものであった。
本実施例では、グルコマンナン培地で生育させたA. nidulansの培養ろ液から、マンナンのアセチルエステラーゼ活性を有するタンパク質の取得を試みた。まず、500mlの三角フラスコに終濃度1.0%になるようにグルコマンナンを加えた液体培地(グルコマンナンを唯一の炭素源とした最少培地:グルコマンナン培地)を調製し、そこにカウンティングチェンバーを用いて胞子数を合わせた(1μlあたり2,000個の胞子数)野生株(WT株)の胞子懸濁液を500μl接種した。30℃で24 時間振とう培養し(100rpm)、菌体と培養液をブフナーの漏斗を用いて分離した。回収した培養ろ液を、ビバスピンを用いて25mlまで濃縮し、さらにそのうちの1mlをTCA沈殿した。沈殿したタンパク質をアセトンで洗浄後、サンプルバッファーに溶解して、SDS−PAGE(アクリルアミドゲルの濃度15%)に供し、一定電流条件下(20mA)で泳動した後に、クマシー染色を行った。SDS−PAGEの結果を図1に示す。染色後、各バンドを切り出してタンパク質をトリプシンで処理後MALDI−TOF/TOF−MSを用いて解析した。得られたデータ(ペプチドフィンガープリントおよびMS/MSスペクトル)を用いてMASCOTサーチすることで、各タンパク質を同定したところ、endo−1,4−β−マンナナーゼやマンノシダーゼと同様に、図1の表中のNo.5に示す、細胞外に大量に分泌される機能未知タンパク質(HP)が同定された。このタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号2で示されるものであった。
(HPをコードする遺伝子破壊株のグルコマンナン培地での生育)
HPについて、hp遺伝子破壊株(ΔHP株)のグルコマンナン培地での生育に関して調べた。0.05%グルコマンナン寒天培地にカウンティングチェンバーを用いて胞子数を合わせた(1μlあたり1,000個の胞子数)WT株とΔHP株を1μlずつスポットした。左から胞子数を合わせたサンプルを1倍、10倍、100倍、1,000倍希釈したものをスポットした(図2)。さらに、500mlの三角フラスコに入った100mlの1.0%グルコマンナン液体最少培地に、カウンティングチェンバーを用いて胞子数を合わせた(1μlあたり2,000個の胞子数)WT株とΔHP株の胞子懸濁液を各500μlずつ加えて振とう培養した(100rpm)。その後、ブフナーの漏斗を用いて菌体と培養液を分離し、得られた菌体をろ紙に乗せて50℃で2日間乾燥させ、菌体の重量を測定した(図3)。その結果、WT株と比較してΔHP株の生育が抑制されたことから、HPはマンナンの分解に関与すると考えられた。
HPについて、hp遺伝子破壊株(ΔHP株)のグルコマンナン培地での生育に関して調べた。0.05%グルコマンナン寒天培地にカウンティングチェンバーを用いて胞子数を合わせた(1μlあたり1,000個の胞子数)WT株とΔHP株を1μlずつスポットした。左から胞子数を合わせたサンプルを1倍、10倍、100倍、1,000倍希釈したものをスポットした(図2)。さらに、500mlの三角フラスコに入った100mlの1.0%グルコマンナン液体最少培地に、カウンティングチェンバーを用いて胞子数を合わせた(1μlあたり2,000個の胞子数)WT株とΔHP株の胞子懸濁液を各500μlずつ加えて振とう培養した(100rpm)。その後、ブフナーの漏斗を用いて菌体と培養液を分離し、得られた菌体をろ紙に乗せて50℃で2日間乾燥させ、菌体の重量を測定した(図3)。その結果、WT株と比較してΔHP株の生育が抑制されたことから、HPはマンナンの分解に関与すると考えられた。
(リコンビナントHPの精製)
RNeasy Plant Mini Kit (QIAGEN) により、WT株からRNAを抽出し、PrimeScriptTM 1st cDNA Synthesis Kit (TaKaRa) によりRNAを逆転写することでcDNAを得た。合成したcDNAを鋳型として、プライマーA(CCCAAGCTTcg GCCCCCACGACGGACATGACCA)(配列番号3)、 プライマーB(CCG CTC GA G GAT AGC CTG GAC ATC AAC CCA AAA GCG)(配列番号4)を用いてPCRすることで、HP遺伝子を増幅した。アガロースゲル電気泳動により、PCR産物を泳動後、目的遺伝子断片を切り出し、UltraClean(R) 15 DNA Purification Kit (MO BIO) により、アガロースゲルからDNAを抽出、精製した。制限酵素処理後、pET21aに連結し、HP発現用プラスミドを構築した。これを大腸菌BL21 CodonPlus株に形質転換することで、HP発現大腸菌とした。
5mlのLB培地(アンピシリン、クロラムフェニコール入り)が入った試験管でHP発現大腸菌を3時間前培養(100rpm)後、培養液50μlを新しい50μlのLB培地(アンピシリン、クロラムフェニコール、0.25mM IPTG入り)が入った300mlの三角フラスコに移して8時間本培養した。大腸菌を50mlのファルコンチューブに回収し、遠心分離によって菌体を集めた。それを25mlのバッファーA(50mM Tris−HCl pH8.0,50mM NaCl)に懸濁し、ソニケーションすることで菌体を破砕した。破砕後、サンプルを遠心分離しフィルター(0.22μl)に通すことで、不溶性のものを除去した。その後Ni−アフィニティーカラムにサンプルを通し、リコンビナントHP(rHP)をカラムに吸着させ、バッファーAで三回洗浄し、300mMのイミダゾールを含むバッファーAで溶出することでrHPを精製した(図4)。酵素活性の測定などに使用する際は透析し、脱塩して使用した。
RNeasy Plant Mini Kit (QIAGEN) により、WT株からRNAを抽出し、PrimeScriptTM 1st cDNA Synthesis Kit (TaKaRa) によりRNAを逆転写することでcDNAを得た。合成したcDNAを鋳型として、プライマーA(CCCAAGCTTcg GCCCCCACGACGGACATGACCA)(配列番号3)、 プライマーB(CCG CTC GA G GAT AGC CTG GAC ATC AAC CCA AAA GCG)(配列番号4)を用いてPCRすることで、HP遺伝子を増幅した。アガロースゲル電気泳動により、PCR産物を泳動後、目的遺伝子断片を切り出し、UltraClean(R) 15 DNA Purification Kit (MO BIO) により、アガロースゲルからDNAを抽出、精製した。制限酵素処理後、pET21aに連結し、HP発現用プラスミドを構築した。これを大腸菌BL21 CodonPlus株に形質転換することで、HP発現大腸菌とした。
5mlのLB培地(アンピシリン、クロラムフェニコール入り)が入った試験管でHP発現大腸菌を3時間前培養(100rpm)後、培養液50μlを新しい50μlのLB培地(アンピシリン、クロラムフェニコール、0.25mM IPTG入り)が入った300mlの三角フラスコに移して8時間本培養した。大腸菌を50mlのファルコンチューブに回収し、遠心分離によって菌体を集めた。それを25mlのバッファーA(50mM Tris−HCl pH8.0,50mM NaCl)に懸濁し、ソニケーションすることで菌体を破砕した。破砕後、サンプルを遠心分離しフィルター(0.22μl)に通すことで、不溶性のものを除去した。その後Ni−アフィニティーカラムにサンプルを通し、リコンビナントHP(rHP)をカラムに吸着させ、バッファーAで三回洗浄し、300mMのイミダゾールを含むバッファーAで溶出することでrHPを精製した(図4)。酵素活性の測定などに使用する際は透析し、脱塩して使用した。
(エステラーゼ活性の測定)
精製したrHPを用いて、エステラーゼ活性について調べた。低温で10mMになるように4-nitorophenyl acetate(4−NPA)を水に溶かした。キュベットに0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を250μl、rHP(1.2mg/ml)を10μl、10mM 4−NPA溶液を200μl(終濃度4mM)添加し、全量が500μlになるようにMilliQ水を加え、分光吸光度計を用いて吸光度405nmを2分間隔で測定した。またコントロールとして、rHPの代わりに同濃度のβ-マンナナーゼまたはBSAを加えて同様に吸光度を測定した。その結果、図5に示すように、rHPはエステラーゼ活性を示すことがわかった。
精製したrHPを用いて、エステラーゼ活性について調べた。低温で10mMになるように4-nitorophenyl acetate(4−NPA)を水に溶かした。キュベットに0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を250μl、rHP(1.2mg/ml)を10μl、10mM 4−NPA溶液を200μl(終濃度4mM)添加し、全量が500μlになるようにMilliQ水を加え、分光吸光度計を用いて吸光度405nmを2分間隔で測定した。またコントロールとして、rHPの代わりに同濃度のβ-マンナナーゼまたはBSAを加えて同様に吸光度を測定した。その結果、図5に示すように、rHPはエステラーゼ活性を示すことがわかった。
(4−NPAを基質とした場合のHPの至適pHの測定)
次に、HPのエステラーゼ活性の至適pHについて調べた。低温で10mMになるように4-nitorophenyl acetate(4−NPA)を水に溶かした。エッペンドルフチューブに0.1Mリン酸緩衝液を250μl、rHP(1.2mg/ml)を10μl、10mM 4−NPA溶液を200μl(終濃度4mM)添加し、全量が500μlになるようにMilliQ水を加えた。ブランクとして、別のエッペンドルフチューブに、rHPの代わりに10mMリン酸緩衝液(pH7.0)を10μl添加したものを調製した。よく撹拌後、37℃で15分間反応させ、マイクロプレートリーダーを用いて405nmで吸光度を測定することで、エステラーゼ活性を求めた。図6に示すように、HPの至適pHは7.5であることがわかった。
次に、HPのエステラーゼ活性の至適pHについて調べた。低温で10mMになるように4-nitorophenyl acetate(4−NPA)を水に溶かした。エッペンドルフチューブに0.1Mリン酸緩衝液を250μl、rHP(1.2mg/ml)を10μl、10mM 4−NPA溶液を200μl(終濃度4mM)添加し、全量が500μlになるようにMilliQ水を加えた。ブランクとして、別のエッペンドルフチューブに、rHPの代わりに10mMリン酸緩衝液(pH7.0)を10μl添加したものを調製した。よく撹拌後、37℃で15分間反応させ、マイクロプレートリーダーを用いて405nmで吸光度を測定することで、エステラーゼ活性を求めた。図6に示すように、HPの至適pHは7.5であることがわかった。
(HPのグルコマンナンに対するエステラーゼ活性の測定)
続いて、HPのグルコマンナンに対するエステラーゼ活性を測定した。エッペンドルフチューブに1%、0.5%、0.25%、0.125%のグルコマンナン溶液をそれぞれ400μl取り、rHP100μlを加えよく撹拌した後、37℃で30分間インキュベートした。その後、グルコマンナン溶液を撹拌し、15,000rpmで10分間遠心分離して液体と固体を分離させ、液体100μlを回収した。50ml三角フラスコにサンプル100μlを取り、F−キット 酢酸 (Roche Diagnostics GmbH) のプロトコルに従って試薬を添加し吸光度340nmを測定した。図7に示すように、HPはグルコマンナンに対してエステラーゼ活性を有することがわかった。
続いて、HPのグルコマンナンに対するエステラーゼ活性を測定した。エッペンドルフチューブに1%、0.5%、0.25%、0.125%のグルコマンナン溶液をそれぞれ400μl取り、rHP100μlを加えよく撹拌した後、37℃で30分間インキュベートした。その後、グルコマンナン溶液を撹拌し、15,000rpmで10分間遠心分離して液体と固体を分離させ、液体100μlを回収した。50ml三角フラスコにサンプル100μlを取り、F−キット 酢酸 (Roche Diagnostics GmbH) のプロトコルに従って試薬を添加し吸光度340nmを測定した。図7に示すように、HPはグルコマンナンに対してエステラーゼ活性を有することがわかった。
(HPのマンナナーゼに対する影響)
rHPがマンナナーゼ活性を有するのか、さらにrHPはマンナナーゼによるマンナン分解にどのような影響を与えるのかを調べた。カウンティングチェンバーを用いて胞子数を合わせた(1μlあたり2,000個の胞子数)WT株とΔHP株の胞子懸濁液を各500μlずつ1.0%グルコマンナン液体最少培地に加えて24時間振とう培養した(100rpm)。その後、ブフナーの漏斗を用いて菌体と培養液を分離し、培養ろ液を回収した。WT株の培養ろ液とΔHP株の培養ろ液のタンパク質濃度を合わせた後に、それぞれ培養ろ液と終濃度0.5%グルコマンナンを37℃で30分間反応させ、β-マンナナーゼ活性(終濃度0.5%グルコマンナンを基質にした時に生成した還元糖の量)をDNS法によって測定した。ΔHP株の培養液には図8に示した濃度になるようにrHPを加えた。その結果、図8に示すように、rHP自身はマンナナーゼ活性を有しないが、ΔHP株に加えるrHP濃度が高くなると、マンナナーゼ活性が高くなることがわかった。これは、ΔHP株内在性のマンナナーゼの活性を促進していることを示している。
rHPがマンナナーゼ活性を有するのか、さらにrHPはマンナナーゼによるマンナン分解にどのような影響を与えるのかを調べた。カウンティングチェンバーを用いて胞子数を合わせた(1μlあたり2,000個の胞子数)WT株とΔHP株の胞子懸濁液を各500μlずつ1.0%グルコマンナン液体最少培地に加えて24時間振とう培養した(100rpm)。その後、ブフナーの漏斗を用いて菌体と培養液を分離し、培養ろ液を回収した。WT株の培養ろ液とΔHP株の培養ろ液のタンパク質濃度を合わせた後に、それぞれ培養ろ液と終濃度0.5%グルコマンナンを37℃で30分間反応させ、β-マンナナーゼ活性(終濃度0.5%グルコマンナンを基質にした時に生成した還元糖の量)をDNS法によって測定した。ΔHP株の培養液には図8に示した濃度になるようにrHPを加えた。その結果、図8に示すように、rHP自身はマンナナーゼ活性を有しないが、ΔHP株に加えるrHP濃度が高くなると、マンナナーゼ活性が高くなることがわかった。これは、ΔHP株内在性のマンナナーゼの活性を促進していることを示している。
(A. nidulans培養ろ液からのHPの精製)
A. nidulans内で生産されるHPについても、rHPと同様の活性を示すかどうかを調べるため、A. nidulansの培養ろ液からHPを精製した。カウンティングチェンバーを用いて胞子数を合わせた(1μlあたり2,000個の胞子数)WT株の胞子懸濁液を500μlずつ500mlの三角フラスコに入った100mlの1.0%グルコマンナン液体最少培地(×30本)に加えて24時間振とう培養した(100rpm)。それをブフナーの漏斗を用いて菌体と培養ろ液に分け、得られた培養ろ液を50mM Tris−HCl pH8.0のバッファーで一晩4℃にて透析した。その後DEAEカラムにタンパク質を吸着させ、塩濃度(0〜0.5M NaCl)を徐々に上げていくことでタンパク質を溶出し、分画した。次に溶出したサンプルを再度Tris−HCl pH8.0のバッファーで透析し、ビバスピンで1mlまで濃縮した後に、アクタプライム(GEヘルスケア)を用いてHi−trapQカラムにてそれぞれのタンパク質を精製した(図9、図10)。
A. nidulans内で生産されるHPについても、rHPと同様の活性を示すかどうかを調べるため、A. nidulansの培養ろ液からHPを精製した。カウンティングチェンバーを用いて胞子数を合わせた(1μlあたり2,000個の胞子数)WT株の胞子懸濁液を500μlずつ500mlの三角フラスコに入った100mlの1.0%グルコマンナン液体最少培地(×30本)に加えて24時間振とう培養した(100rpm)。それをブフナーの漏斗を用いて菌体と培養ろ液に分け、得られた培養ろ液を50mM Tris−HCl pH8.0のバッファーで一晩4℃にて透析した。その後DEAEカラムにタンパク質を吸着させ、塩濃度(0〜0.5M NaCl)を徐々に上げていくことでタンパク質を溶出し、分画した。次に溶出したサンプルを再度Tris−HCl pH8.0のバッファーで透析し、ビバスピンで1mlまで濃縮した後に、アクタプライム(GEヘルスケア)を用いてHi−trapQカラムにてそれぞれのタンパク質を精製した(図9、図10)。
(A. nidulans培養ろ液から精製したHPのマンナナーゼ活性への影響)
A. nidulansの培養ろ液から精製したHPについて、マンナナーゼによるマンナン分解に対する影響を調べた。精製したβ-マンナナーゼと終濃度0.5%になるようにグルコマンナンを混合したもの、精製したβ-マンナナーゼ、HPと終濃度0.5%になるようにグルコマンナンを混合したもの、HPと終濃度0.5%になるようにグルコマンナンを混合したものを37℃で30,60,90分間反応させた後、生成した還元糖の量をDNS法によって定量した(図11)。
また、他のAspergillus属のβ-マンナナーゼでもHPによるグルコマンナンの分解促進が引き起こされるか調べるために、精製したマンナナーゼの代わりに、市販されているA. niger 由来のβ-マンナナーゼ(アマノエンザイム)を使用して同様に解析した(図12)。その結果、図11に示すように、rHPだけでなく、A. nidulansの培養ろ液から精製したHPも、内在性のマンナナーゼによるマンナン分解を増強することがわかった。さらに、図12に示すように、内在性マンナナーゼだけでなく、A. niger由来のマンナナーゼについてもHPによってマンナン分解が増強されることがわかった。
A. nidulansの培養ろ液から精製したHPについて、マンナナーゼによるマンナン分解に対する影響を調べた。精製したβ-マンナナーゼと終濃度0.5%になるようにグルコマンナンを混合したもの、精製したβ-マンナナーゼ、HPと終濃度0.5%になるようにグルコマンナンを混合したもの、HPと終濃度0.5%になるようにグルコマンナンを混合したものを37℃で30,60,90分間反応させた後、生成した還元糖の量をDNS法によって定量した(図11)。
また、他のAspergillus属のβ-マンナナーゼでもHPによるグルコマンナンの分解促進が引き起こされるか調べるために、精製したマンナナーゼの代わりに、市販されているA. niger 由来のβ-マンナナーゼ(アマノエンザイム)を使用して同様に解析した(図12)。その結果、図11に示すように、rHPだけでなく、A. nidulansの培養ろ液から精製したHPも、内在性のマンナナーゼによるマンナン分解を増強することがわかった。さらに、図12に示すように、内在性マンナナーゼだけでなく、A. niger由来のマンナナーゼについてもHPによってマンナン分解が増強されることがわかった。
(グルコマンナン分解産物の検出)
精製したβ-マンナナーゼと終濃度0.5%になるようにグルコマンナンを混合したもの、精製したβ-マンナナーゼ、HPと終濃度0.5%になるようにグルコマンナンを混合したもの、HPと終濃度0.5%になるようにグルコマンナンを混合したものを37℃で90分間反応させた後、生成したグルコマンナン分解物であるマンノオリゴ糖をTLC(薄層クロマトグラフィー)にて検出した。その結果、図13に示すように、HPはマンナナーゼ活性を有さないことが確認された。さらに、グルコマンナンにマンナナーゼのみを加えた場合よりも、HPを追加した場合のほうがよりグルコマンナンを分解していることから、HPがマンナナーゼによるマンナン分解を増強する役割を果たしていることを示す結果も得られた。
精製したβ-マンナナーゼと終濃度0.5%になるようにグルコマンナンを混合したもの、精製したβ-マンナナーゼ、HPと終濃度0.5%になるようにグルコマンナンを混合したもの、HPと終濃度0.5%になるようにグルコマンナンを混合したものを37℃で90分間反応させた後、生成したグルコマンナン分解物であるマンノオリゴ糖をTLC(薄層クロマトグラフィー)にて検出した。その結果、図13に示すように、HPはマンナナーゼ活性を有さないことが確認された。さらに、グルコマンナンにマンナナーゼのみを加えた場合よりも、HPを追加した場合のほうがよりグルコマンナンを分解していることから、HPがマンナナーゼによるマンナン分解を増強する役割を果たしていることを示す結果も得られた。
あらかじめrHPとグルコマンナンを混合し、30分間37℃でインキュベートした後、β-マンナナーゼを加え37℃で30分間、60分間、90分間反応させることで、生成した還元糖の量をDNS法にて定量した(図14、上)。rHPとβ-マンナナーゼを混合し、30分間37℃でインキュベートした後、グルコマンナンを加え37℃で30分間、60分間、90分間反応させることで、生成した還元糖の量をDNS法にて定量した(図14、下)。この結果は、HPがグルコマンナンに作用することで、マンナナーゼによるマンナン分解が促進されることを示している。
(HPによるグルコマンナンの粘性低下)
粘度計(SV−10)を用いて温度一定条件下(37℃)で1%グルコマンナン溶液にHPを加えて、10秒おきに100分間溶液の粘度を測定した。図15に示すように、グルコマンナン溶液にHPを加えると、グルコマンナン溶液の粘性が時間の経過とともに低下していくことがわかった。
粘度計(SV−10)を用いて温度一定条件下(37℃)で1%グルコマンナン溶液にHPを加えて、10秒おきに100分間溶液の粘度を測定した。図15に示すように、グルコマンナン溶液にHPを加えると、グルコマンナン溶液の粘性が時間の経過とともに低下していくことがわかった。
また、2%グルコマンナン溶液にHPを加えて37℃で12時間インキュベートした。コントロールにHPを加えていないものを用いた。HPを加える前のグルコマンナン溶液は高い粘性を示しており、本実施例で用いたグルコマンナンは、液体よりも固体に近い状態であり、持ち上げると落下に時間を要する程度の高い粘性を持っていた。しかし、HPを加えて12時間経過したルコマンナン溶液は粘性が低下し(図16)、ほぼ液体に近い状態であり、持ち上げても時間を要することなく落下した。
(食品にHPを添加した際の重量変化)
グルコマンナンを含有する食品にHPを添加すると、どうような変化があるかを調べた。グルコマンナン含有食品に、rHP又は/及びβ−マンナナーゼを添加し、添加後の重量変化を測定した。グルコマンナンを多く含有する食品として、蒟蒻畑(マンナンライフ)を用いた。図17に示すように、rHPのみでは重量は変化しないが、β−マンナナーゼと共に加えることで、β−マンナナーゼの活性を増強する結果が得られた。また、重量変化後のグルコマンナン含有食品は、その触感についても変化しているという結果が得られた。
グルコマンナンを含有する食品にHPを添加すると、どうような変化があるかを調べた。グルコマンナン含有食品に、rHP又は/及びβ−マンナナーゼを添加し、添加後の重量変化を測定した。グルコマンナンを多く含有する食品として、蒟蒻畑(マンナンライフ)を用いた。図17に示すように、rHPのみでは重量は変化しないが、β−マンナナーゼと共に加えることで、β−マンナナーゼの活性を増強する結果が得られた。また、重量変化後のグルコマンナン含有食品は、その触感についても変化しているという結果が得られた。
配列番号3,4:プライマー
Claims (12)
- 以下の(a)〜(f)からなる群から選択されるポリペプチドを有する、アセチルエステラーゼ。
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド。
(b)配列番号2で表されるアミノ酸配列と70%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド。
(c)配列番号2で表されるアミノ酸配列において1又は複数個のアミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド。
(d)配列番号2で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列又はその相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるポリペプチド。
(e)配列番号1で表される塩基配列と70%以上の同一性を有する塩基配列によってコードされるポリペプチド。
(f)配列番号2で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列又はその相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるポリペプチド。 - 前記アセチルエステラーゼはAspergillus nidulans由来であることを特徴とする、請求項1に記載のアセチルエステラーゼ。
- 請求項1又は請求項2に記載のアセチルエステラーゼをコードするポリヌクレオチドと、1又は2以上の前記ポリヌクレオチドを発現させるための要素と、を含む発現ベクター。
- 請求項3に記載の発現ベクターを含有する、形質転換細胞。
- 前記形質転換細胞は大腸菌である、請求項4に記載の形質転換細胞。
- 請求項1又は請求項2に記載のアセチルエステラーゼを生産する方法であって、
請求項4又は請求項5に記載の形質転換細胞を培養する工程と、
前記培養物からポリペプチドを回収する工程と、
を備える、方法。 - 請求項1又は2に記載のアセチルエステラーゼを生産する方法であって、
前記アセチルエステラーゼを産生する条件下で請求項4又は5に記載の形質転換細胞を培養する工程と、
前記培養物から前記アセチルエステラーゼを回収する工程と、
を備える、方法。 - マンナンの分解産物の生産方法であって、
アセチルエステラーゼ及びマンナナーゼを用いてマンナン含有材料を分解する工程、を備える、方法。 - アセチルエステラーゼを含有する、マンナナーゼ分解効率増強剤。
- マンナンの粘性低下産物の生産方法であって、
アセチルエステラーゼを用いてマンナンの粘性を低下させる工程、
を備える、方法。 - アセチルエステラーゼを含有する、マンナンの粘性低下剤。
- 食品を製造する方法であって、
アセチルエステラーゼを用いてマンナンの粘性を低下させる工程、を備える、方法。
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JP6406759B6 (ja) * | 2013-03-27 | 2018-12-05 | 国立大学法人九州大学 | ナノカプセル、組成物、ポリヌクレオチド、組換えベクター及び形質転換体 |
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2014
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