JP6406759B6 - ナノカプセル、組成物、ポリヌクレオチド、組換えベクター及び形質転換体 - Google Patents

ナノカプセル、組成物、ポリヌクレオチド、組換えベクター及び形質転換体 Download PDF

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Description

本発明は、ナノカプセル、組成物、ポリヌクレオチド、組換えベクター及び形質転換体に関する。
薬物輸送システム(DDS)として、ポリ乳酸及びキトサン等の生体親和性の高分子材料が用いられている。高分子材料は、工業的な大量生産が可能であり、DDSの材料として期待されているが、内包する薬物の送達部位における薬効及び送達部位の特異性を向上させることは難しい。一方、遺伝子を送達する方法として、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターを用いる方法が検討されているが、染色体異常、遺伝子の発現効率の低さ等の問題が指摘されている。
新たなDDSの材料として、タンパク質をベースにしたナノカプセルが検討されている。例えば、特許文献1には、表面に外来ペプチドを挿入したパホバウイルスのカプシドタンパク質が開示されている。外来ペプチドをカプシドタンパク質に導入することで、当該ウイルスカプシドタンパク質で形成されるウイルス様粒子の細胞指向性を制御できるので、送達部位の特異性を向上させることができる。
非特許文献1には、所定の細胞に特異的に送達されるように改変された古細菌メタノコッカス・ジャナシ(Methanococcus jannaschii)に由来する熱ショックタンパク質(HSP)で形成された構造体が開示されている。HSPの表面には、ターゲッティングペプチド又は抗体が組み込まれている。ターゲッティングペプチド又は抗体と所定の細胞に発現している標的分子との結合を介して、HSPで形成された構造体は所定の細胞に特異的に送達される。
国際公開第2006/088229号
Michelle L. Flenniken et al.,Melanoma and Lymphocyte Cell−Specific Targeting Incorporated into a Heat Shock Protein Cage Architecture,Chemistry & Biology 13,161−170,2006
しかし、上記特許文献1に記載のウイルス様粒子及び上記非特許文献1に記載のHSPで形成された構造体では、送達部位の特異性に関しては改良されているが、送達部位において内包する薬物の薬効が十分に発揮されているとは言い難い。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、送達部位において内包する薬物の薬効をより発揮させることができるナノカプセル、組成物、ポリヌクレオチド、組換えベクター及び形質転換体を提供することを目的とする。
本発明の第1の観点に係るナノカプセルは、
下記(a)〜(d)からなる群から選択されるアミノ酸配列からなるタンパク質を含み、
該タンパク質の自己組織化によって形成された構造体である。
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列のN末端に、前記アミノ酸配列のN末端から32残基又は33残基までのアミノ酸配列から構成される疎水性ヘリックス領域が1個以上付加されたアミノ酸配列、
(b)前記(a)のアミノ酸配列に、ユビキチン化されうる部位を構成するアミノ酸配列が前記構造体において外部に提示される位置にさらに付加されたアミノ酸配列、
(c)前記(a)又は(b)のアミノ酸配列のC末端に、iRGDペプチドに対応するアミノ酸配列がさらに付加されたアミノ酸配列、及び
(d)前記(a)、(b)又は(c)のアミノ酸配列に、10個以下のアミノ酸の置換、欠失及び付加の少なくとも1つの改変がさらに加えられたアミノ酸配列
また、前記ユビキチン化されうる部位を構成するアミノ酸配列は、
低酸素誘導因子−1のアミノ酸配列に含まれる配列番号8に示すアミノ酸配列である、
こととしてもよい。
本発明の第2の観点に係る組成物は、
上記本発明の第1の観点に係るナノカプセルと、
前記ナノカプセルに内包される薬物と、
を含む。
この場合、前記薬物は、
造影剤である、
こととしてもよい。
また、前記薬物は、
抗がん剤である、
こととしてもよい。
本発明の第3の観点に係るポリヌクレオチドは、
下記(a)〜(d)からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなり、
該アミノ酸配列からなるタンパク質は、自己組織化によって構造体を形成する。
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列のN末端に、前記アミノ酸配列のN末端から32残基又は33残基までのアミノ酸配列から構成される疎水性ヘリックス領域が1個以上付加されたアミノ酸配列、
(b)前記(a)のアミノ酸配列に、ユビキチン化されうる部位を構成するアミノ酸配列が前記構造体において外部に提示される位置にさらに付加されたアミノ酸配列、
(c)前記(a)又は(b)のアミノ酸配列のC末端に、iRGDペプチドに対応するアミノ酸配列がさらに付加されたアミノ酸配列、及び
(d)前記(a)、(b)又は(c)のアミノ酸配列に、10個以下のアミノ酸の置換、欠失及び付加の少なくとも1つの改変がさらに加えられたアミノ酸配列
本発明の第4の観点に係る組換えベクターは、
上記本発明の第3の観点に係るポリヌクレオチドを含む。
本発明の第5の観点に係る形質転換体は、
上記本発明の第4の観点に係る組換えベクターを含む。
本発明によれば、送達部位において内包する薬物の薬効をより発揮させることができる。
動的光散乱法で測定したナノカプセルの粒径を示す図である。 ナノカプセルに内包された蛍光標識したsiRNAの蛍光強度を示す図である。 ナノカプセル内に固定化されたガドリウム(Gd)の割合を示す図である。 核磁気共鳴画像装置で撮像したナノカプセルに内包された造影剤のT1強調画像を示す図である。 ナノカプセルに内包された造影剤の投与前及び投与後における担癌マウスの癌部付近のT1強調画像を示す図である。 細胞内でのナノカプセルのユビキチン化を示す図である。 ナノカプセルの細胞内での分解を示す図である。 ナノカプセルを作用させた細胞の生存率を示す図である。
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1について説明する。本実施の形態に係るナノカプセルは、古細菌メタノコッカス・ジャナシに由来するスモール熱ショックタンパク質Hsp16.5(以下、単に「HSP」とする)を改変したタンパク質で形成される。HSPは、種を超えて普遍的に存在するタンパク質である。野生型のHSPのアミノ酸配列を配列番号1に示す。HSPは、自己組織化による構造形成が可能であり、通常は、オリゴマー構造で存在する。熱ストレス等の環境変化に応じてHSPのオリゴマー構造が解離し、分子シャペロン機能を発現する。
HSPは、24量体からなるナノサイズの球状構造体であるナノカプセルを形成する。ナノカプセルは、熱的及び化学的に極めて安定である。ナノカプセルの内部には空洞がある。内部の空洞は、中空であってもよく、水、脂質、イオン等を含んでもよい。内部の空洞には、配列番号1に示すアミノ酸配列のN末端から始まる疎水性ヘリックス領域(以下、単に「Nヘリックス領域」とする)が配向する。当該Nヘリックス領域は、N末端から32番目又は33番目までのアミノ酸配列に対応し、ナノカプセルの形成と安定化に寄与する。
本実施の形態に係るナノカプセルは、配列番号1に示されるアミノ酸配列に、Nヘリックス領域を改変するアミノ酸配列(第1のアミノ酸配列)が付加されたアミノ酸配列からなる改変型のHSPを含む。
Nヘリックス領域を改変するアミノ酸配列は、例えば複数個のアミノ酸からなるリンカー配列である。ここで、アミノ酸配列が付加されるとは、1個又は複数個のアミノ酸に対応するアミノ酸配列が配列番号1に示されるアミノ酸配列の任意の部位に挿入されることを含む。リンカー配列は、Nヘリックス領域の終端付近に挿入されることで配列番号1に示されるアミノ酸配列に付加されてもよい。特に、リンカー配列は、Nヘリックス領域の終端、すなわちN末端から33番目のスレオニンと34番目のグリシンとの間に付加されるのが好ましい。リンカー配列を構成するアミノ酸の個数は、リンカー配列を付加した改変型のHSPが自己組織化による構造形成が可能な範囲であれば特に限定されない。リンカー配列を構成するアミノ酸の個数は、例えば、1個以上50個以下、好ましくは5個以上40個以下、より好ましくは11個以上30個以下である。
リンカー配列は、例えば11個のアミノ酸から構成され、リンカー配列が付加された改変型のHSPのアミノ酸配列は、例えば配列番号2に示すアミノ酸配列である。また、改変型のHSPのアミノ酸配列は、20個のアミノ酸から構成されるリンカー配列を付加した配列番号3に示すアミノ酸配列であってもよい。この他、30個のアミノ酸から構成されるリンカー配列を付加してもよい。この場合の改変型のHSPのアミノ酸配列は、例えば配列番号4に示すアミノ酸配列である。
配列番号2乃至4に示すアミノ酸配列からなる改変型のHSPは、自己組織化による構造形成が可能であり、24量体となってナノカプセルを形成する。リンカー配列は、ナノカプセル形成時に内部の空洞に配向するNヘリックス領域の内側に付加されることで、Nヘリックス領域の柔軟性を向上させる。Nヘリックス領域は、カプセルの形成に寄与する領域であるため、柔軟性の向上によりナノカプセルの粒径が増大する。
当該ナノカプセルは、内部の空洞に種々の薬物を内包できる。薬物は、例えば、抗がん剤、免疫抑制剤及び抗炎症剤等の治療薬、蛍光物質、放射性物質及び磁性物質等の標識物質、造影剤等の診断薬、DNA、RNA、PNA等の核酸、インスリン等のペプチド、アミノ酸、ビタミン類等である。なお、ここでいう内包とは、ナノカプセルの内部に薬物分子の全体が完全に包み込まれている必要はなく、薬物分子の一部がナノカプセルの外部に突出していてもよい。
野生型のHSPで形成されるナノカプセルの粒径は、約12nmである。これに対し、本実施の形態に係る改変型のHSPで形成されるナノカプセルの粒径は、配列番号2に示すアミノ酸配列の場合は14〜15nmである。配列番号3に示すアミノ酸配列の場合、ナノカプセルの粒径は22〜23nmである。また、配列番号4に示すアミノ酸配列の場合、ナノカプセルの粒径は32〜33nmである。
次に、本実施の形態に係るナノカプセルの製造方法について説明する。改変型のHSPで形成されるナノカプセルは、遺伝子工学及び分子生物学を利用した公知の方法により製造できる。
まず、配列番号2乃至4に示すアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの塩基配列を決定する。塩基配列は、アミノ酸に対応するコドンによって決定される。アミノ酸とコドンとの対応関係に基づいて、1つのアミノ酸配列から、そのアミノ酸配列をコードする多数の塩基配列が決定される。塩基配列の決定ではコンピュータを用いてもよい。当該アミノ酸配列をコードする遺伝子を発現させる際に用いる宿主に応じてコドン頻度を考慮すれば、配列番号2乃至4に示すアミノ酸配列をコードする好適な塩基配列を決定することができる。
次に、配列番号2乃至4に示すアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターを調製する。組換えベクターは、配列番号1に示す野生型のHSP又は所定の変異の入ったHSPをコードするベクターをテンプレートとして、インバースPCR(Polymerase Chain Reaction)等により調製できる。PCR反応では、下記実施例のように、目的とするアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドが得られるプライマーを用いればよい。
組換えベクターを宿主に導入することによって、配列番号2乃至4に示すアミノ酸配列をコードする遺伝子を宿主において発現させることができる。宿主は、特に限定はされないが、原核細胞であることが好ましい。具体的には、大腸菌、枯草菌、乳酸菌等が挙げられるが上述のポリヌクレオチドを効率的に発現させることを勘案すれば、大腸菌であることが好ましい。
宿主として用いる大腸菌は、公知のものを採用すればよく、特に限定はされない。組換えベクターは、IPTG、ラムノース等の存在下において、上述のポリヌクレオチドの発現を誘導することができるのが好ましい。組換えベクターは、例えば、pETベクター及びpGEXベクター等である。
続いて、上記で調製した組換えベクターを宿主に導入した形質転換体を調製する。組換えベクターを宿主に導入する方法は特には限定されず、塩化カルシウム法及び塩化ルビジウム法で調製したコンピテントセルを用いる方法、エレクトロポーレーション法、ならびにプロトプラスト法等がある。
なお、上述の組換えベクターがpET21の場合、大腸菌株XL10又はBL21(DE3)を形質転換体として用いるのが好ましい。形質転換体のコロニーを、ダイレクトPCRにより、又はそのDNAの塩基配列を決定して確認することで目的とする形質転換体を得ることができる。
次に、上記で調製した形質転換体を培養する。形質転換体の培養方法は、形質転換体に適合した公知の培養方法を採用すればよい。形質転換体として大腸菌を用いる場合、例えば、2×YT培地等において、37℃で振とう培養すればよい。
続いて、得られた形質転換体から改変型のHSPを回収する。回収の方法は特に限定されず、Triton−X、Tween、NP40等の公知の界面活性剤を用いる方法、超音波処理によって破砕する方法、液体窒素等の冷媒及び特定の機器を用いて細胞膜、細胞壁等を破砕する凍結融解法、ガラスビーズ法、ザイモリエース等のような細胞壁を消化する酵素を用いたスフェロプラスト法、高圧化にて処理を行うフレンチプレス法等の公知の方法を採用した後に、遠心分離処理で得られる液相分画を回収すればよい。なお、これらの回収の方法は、単独であっても、2種類以上を組み合わせてもよい。
回収した液相分画から改変型のHSPを精製する方法は、特に限定されることはなく、公知のタンパク質の精製法を用いればよい。タンパク質の精製法は、例えば、塩化セシウム、スクロース、グリセロール、OptiPrep、Percol等の成分を各種濃度又は線形グラジエント濃度勾配にて含有する緩衝液に上述の液相分画を加え、超遠心分離処理を行う密度勾配遠心分離法、上述の液相分画に熱処理を与えて、夾雑タンパク質等を変性させて改変型のHSP以外の成分を除去する方法等である。また、タンパク質の精製法は、上述の液相分画に硫酸アンモニウム、エタノール酢酸、アセトン等を作用させて、夾雑タンパク質等を変性させることにより、改変型のHSP以外の成分を除去する方法、上述の液相分画に対して硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、ポリエチレングリコールを加えて沈殿させることで、改変型のHSP以外の成分を除去する方法がある。また、上述の液相分画に対してクロマトグラフィー用いて、改変型のHSP以外の成分を除去することで改変型のHSPを精製してもよい。これら精製方法は、単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のクロマトグラフィーの種類は、特に限定されないが、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、サイズ排除ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー等である。これらクロマトグラフィーは単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上述のように、改変型のHSPは、自己組織化によるナノカプセルを形成する。ナノカプセルを形成するのは、宿主内、試験管内、培養容器内等の当該改変型のHSPの合成の際か、HSPの合成の終了後における精製、回収、保存等のときであり、特に限定はされない。
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係るナノカプセルは、HSPのNヘリックス領域にリンカー配列を付加したアミノ酸配列からなる改変型のHSPで形成される。リンカー配列は、ナノカプセル形成時に内部の空洞に配向するNヘリックス領域の柔軟性を高めるため、ナノカプセルの粒径が増大する。これにより、当該ナノカプセルが内包できる薬物の量を増加させることができるため、送達部位において内包する薬物の薬効をより発揮させることができる。
また、ナノカプセルの粒径が増大することで、分子量の比較的大きい核酸医薬等を効率よく、ナノカプセルに内包させることができる。
なお、上記のようなリンカー配列を付加したアミノ酸配列に、1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失及び付加の少なくとも1つの改変がさらに加えられてもよい。置換、欠失及び付加されるアミノ酸の数は、改変型のHSPが、自己組織化による構造形成が可能な範囲とすればよく、特には限定されないが、通常は20個以下、より好ましくは10個以下、さらに好ましくは5個以下であり、最も好ましくは3個以下である。例えば、このような改変として、配列番号2乃至4にアミノ酸配列を示す改変型のHSPのように、配列番号1に示されるアミノ酸配列のN末端から41番目のグリシン残基をシステイン残基に置換してもよい。こうすることで、マレイミド化した薬物とシステイン残基とを結合させることができるので、ナノカプセル内部に薬物を固定できる。これにより、送達部位に薬物をより確実に送達することができる。
なお、リンカー配列は、Nヘリックス領域に対応するアミノ酸配列の終端に限らず、終端からN末端側に1〜数残基の位置に付加されてもよい。
また、改変型のHSPには、各種タグポリペプチドが付加されてもよい。具体的なタグポリペプチドとして、Hisタグ、FLAGタグ、HAタグ、mycタグ、MBPタグ、GSTタグ、GFPタグ、Zタグ、ストレプタグ等が挙げられる。これらのタグポリペプチドは、単独で付加されていても、2種以上を組み合わせて付加されていてもよい。改変型のHSPにタグポリペプチドが付加された場合、当該タグポリペプチドとの相互作用に基づいたアフィニティクロマトグラフィーによって改変型のHSPを精製することが好ましい。
本実施の形態で用いる様々な技術は、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。例えば、遺伝子工学及び分子生物学的技術であれば、Sambrook and Russell,「Molecular Cloning A LABORATORY MANUAL」,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,2001;Ausubel,F.M.et al.「Current Protocols in Molecular Biology」,John Wiley & Sons,New York,N.Y等の文献を参照すればよい。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2について説明する。
本実施の形態に係るナノカプセルでは、付加される第1のアミノ酸配列が上記実施の形態1と異なる。以下では、本実施の形態に係るナノカプセルについて上記実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
本実施の形態におけるNヘリックス領域を改変するアミノ酸配列は、Nヘリックス領域に対応するアミノ酸配列を少なくとも1つ含むアミノ酸配列である。Nヘリックス領域に対応するアミノ酸配列1つを含むアミノ酸配列を付加することで、改変型のHSPは、本来有しているNヘリックス領域と合わせて2箇所のNヘリックス領域に対応するアミノ酸配列を有することになる。当該改変型のHSPのアミノ酸配列は、例えば配列番号5に示すアミノ酸配列である。
Nヘリックス領域を改変するアミノ酸配列は、Nヘリックス領域に対応するアミノ酸配列を複数含むアミノ酸配列であってもよい。Nヘリックス領域に対応するアミノ酸配列の数は、改変型のHSPが、自己組織化による構造形成が可能な範囲とすればよい。Nヘリックス領域に対応するアミノ酸配列の数は、例えば2つ以上10つ以下で、好ましくは2つ以上5つ以下、より好ましくは2つ以上3つ以下である。配列番号6に示すアミノ酸配列は、Nヘリックス領域に対応するアミノ酸配列を2つ含むアミノ酸配列を付加した改変型のHSPのアミノ酸配列を示す。すなわち、配列番号6に示す改変型のHSPのアミノ酸配列は、3箇所のNヘリックス領域に対応するアミノ酸配列を有する。
より好ましくは、配列番号7に示すように、Nヘリックス領域に対応するアミノ酸配列を3つ含むアミノ酸配列を付加してもよい。この場合、配列番号7に示す改変型のHSPのアミノ酸配列は、4箇所のNヘリックス領域に対応するアミノ酸配列を有する。
なお、Nヘリックス領域に対応するアミノ酸配列を少なくとも1つ含むアミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列のN末端から33番目のスレオニンと34番目のグリシンとの間に挿入されることによって付加されてもよいし、当該N末端に付加されてもよい。
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係るナノカプセルは、配列番号1に示されるアミノ酸配列に、Nヘリックス領域に対応するアミノ酸配列を少なくとも1つ含むアミノ酸配列が付加された改変型のHSPで形成される。付加されたNヘリックス領域に対応するアミノ酸配列はナノカプセル形成時に内部の空洞の疎水性を高め、複数のNヘリックス領域の相互作用によってナノカプセルの構造的な剛直さと安定性とが向上する。これにより、当該ナノカプセルは内包する薬物をより安定に保持し、より確実に送達部位に送達することができる。このため、当該ナノカプセルによれば、送達部位において内包する薬物の薬効をより発揮させることができる。
また、Nヘリックス領域に対応するアミノ酸配列を付加することで、ナノカプセルの粒径が増大する。このため、分子量の比較的大きい核酸医薬等を効率よく、ナノカプセルに内包させることができる。
また、上記のようなNヘリックス領域に対応するアミノ酸配列を付加したアミノ酸配列に、1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失及び付加の少なくとも1つの改変がさらに加えられてもよい。なお、配列番号5乃至7に示したアミノ酸配列は、Nヘリックス領域に対応するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を付加したのに加えて、iRGD(internalized RGD)ペプチドに対応するアミノ酸配列がC末端に付加されている。ナノカプセルを形成した際に、HSPのC末端側は、ナノカプセルの外殻を構成する。このため、HSPのC末端にアミノ酸配列を付加することで、所定の分子と相互作用するペプチド及び抗体等をナノカプセルの表面に付加することができる。これにより、ナノカプセルの種々の機能をもたせることができる。iRGDペプチドは、Neuropilin−1(NRP−1)受容体に親和性が高いため、C末端にiRGDペプチドに対応するアミノ酸配列を付加することで、ナノカプセルの外殻にiRGDペプチドを呈示させることができる。これにより、腫瘍内の細胞等、NRP−1を発現している細胞にナノカプセルをさらに効率よく送達することができる。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3について説明する。
本実施の形態に係るナノカプセルでは、配列番号1に示されるアミノ酸配列に付加されるアミノ酸配列が上記各実施の形態と異なる。以下では、本実施の形態に係るナノカプセルについて上記実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
本実施の形態に係るナノカプセルは、配列番号1に示されるアミノ酸配列に、ユビキチン化されうる部位に対応するアミノ酸配列(第2のアミノ酸配列)が付加されたアミノ酸配列からなる改変型のHSPを含む。
一般に、タンパク質は、ユビキチン化されて、細胞内に普遍的に存在するユビキチン−プロテアソーム系で分解される。タンパク質のユビキチン化されうる部位がユビキチン転移酵素に認識され、タンパク質のリシン残基の側鎖のアミノ基とユビキチンのC末端のグリシンがアミド結合することでユビキチンがタンパク質に結合する。さらにタンパク質に結合したユビキチンのリシン残基の側鎖に次のユビキチンが結合し、複数のユビキチンが結合していく(ポリユビキチン化)。ポリユビキチン化されたタンパク質はプロテアソームによって分解される。
ユビキチン化されうる部位に対応するアミノ酸配列は、例えば、低酸素誘導因子−1(「Hypoxia−Inducible Factor−1」又は「HIF−1」ともいう)のアミノ酸配列に含まれる配列番号8に示すアミノ酸配列である。低酸素誘導因子−1は、ユビキチン−プロテアソーム系による分解によって機能が負に制御されている。ユビキチン化されうる部位に対応するアミノ酸配列は、改変型のHSPがナノカプセルを形成した際、外部に提示されうる位置に付加すればよいが、好ましくは、配列番号1に示されるアミノ酸配列のC末端に付加される。この場合、ユビキチン化されうる部位に対応するアミノ酸配列は、複数個のアミノ酸を介してC末端に付加されてもよいし、ユビキチン化されうる部位に対応するアミノ酸配列のC末端にさらに複数個のアミノ酸が付加されてもよい。配列番号8に示すアミノ酸配列を付加した改変型のHSPのアミノ酸配列は、例えば、配列番号9に示すアミノ酸配列である。
C末端に第2のアミノ酸配列を付加することで、改変型のHSPで形成されたナノカプセルは、ユビキチン化されうる部位を外部に提示するため、ユビキチン転移酵素に認識さる。これにより、細胞内でのナノカプセルのプロテアソームによる分解が促進される。
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係るナノカプセルは、送達部位での分解がより促進される。このため、内包する薬物を効率よく放出することができる。こうすることで、送達部位において内包する薬物の薬効をより発揮させることができる。
なお、本実施の形態では、ユビキチン化されうる部位に対応するアミノ酸配列を、低酸素誘導因子−1由来のアミノ酸配列としたがこれに限らない。例えば、ユビキチン化されうる部位に対応するアミノ酸配列は、分解促進シグナルとして知られているPEST配列(配列番号10)等でもよい。配列番号10に示すアミノ酸配列を付加した改変型のHSPのアミノ酸配列は、例えば、配列番号11に示すアミノ酸配列である。
なお、上記ユビキチン化されうる部位に対応するアミノ酸配列を付加したアミノ酸配列に、1個又は数個のアミノ酸の置換、欠失及び付加の少なくとも1つの改変がさらに加えられてもよい。また、第2のアミノ酸配列に、リンカー配列等その他のアミノ酸配列が含まれるようにしてもよい。
なお、本実施の形態に係る改変型のHSPは、上記実施の形態1のリンカー配列及び実施の形態2のNヘリックス領域に対応するアミノ酸配列の少なくとも一方がさらに付加されてもよい。
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4について説明する。本実施の形態に係る組成物は、上記各実施の形態に記載されたナノカプセルと、ナノカプセルに内包される薬物とを含む。ナノカプセルに内包される薬物は、例えば造影剤である。造影剤は、例えば、Gdイオンとジエチレントリアミン5酢酸(以下、単に「DTPA」とする)とを錯化させたGd−DTPA及び酸化鉄等である。
ナノカプセルに内包される薬物は、抗がん剤であってもよい。抗がん剤は、特に限定されないが、ゲムシタビン、ドキソルビシン等である。
ナノカプセル内部の空洞に薬物を内包させるには、ナノカプセルと薬物とを混在させ、所定の温度、例えば35〜70℃、好ましくは40〜60℃で1〜2時間程度加熱しながら撹拌し、放冷させればよい。ナノカプセルに内包されなかった薬物は、放冷後、限外濾過等により除去するのが好ましい。
また、ナノカプセルに内包させる薬物としてGd−DTPAを用いる場合、マレイミド化したDTPAとGdイオンとを錯化させて得られたマレイミド化Gd−DTPAをナノカプセル内部の空洞のシステイン残基に固定化するようにしてもよい。DTPAに限らず、抗がん剤等をマレイミド化することで、抗がん剤等をナノカプセル内部の空洞に同様に固定化できる。
この他、ナノカプセル内部の空洞に薬物を内包させる方法には、界面活性剤やその他の方法でナノカプセルの構造を破壊し、内包させる薬物と混和した後に、再度、ナノカプセルを形成させて薬物を内包させる方法がある。
本実施の形態に係る組成物は、有効成分として約0.1%〜99%、約1%〜約50%、好ましくは1〜20%(%は重量%)のナノカプセルを含む。
本実施の形態に係る組成物は、医薬用途においては、注射剤、直腸坐剤、膣坐剤、経鼻吸収剤、経皮吸収剤、経肺吸収剤及び口腔内吸収剤等として用いることができる。当該組成物は、例えば、薬理的に許容される担体と配合された合剤であってもよい。薬理的に許容される担体は、製剤材料として用いられる各種の有機担体物質又は無機担体物質である。薬理的に許容される担体は、例えば、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、又は液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等として配合される。また、必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を用いることもできる。
本実施の形態に係る組成物は、下記実施例4、5及び9に示すように、造影剤又は抗がん剤に使用されるのが好適である。また、当該組成物は、蛍光物質を内包させて、スクリーニング用試薬、診断薬等としても使用できる。
本実施の形態に係る組成物の投与量は、被験体の性別、年齢、体重、症状等によって適宜決定される。当該組成物は、内包する薬物が有効量となるように投与される。有効量とは、所望の結果を得るために必要な薬物の量であり、治療又は処置する状態の進行の遅延、阻害、予防、逆転又は治癒をもたらすのに必要な量、あるいは、診断に必要な量である。当該組成物の投与量は、典型的には、約0.01mg/kg〜約1,000mg/kg、好ましくは約0.1mg/kg〜約200mg/kg、より好ましくは約0.2mg/kg〜約20mg/kgであり、1日に1回、又はそれ以上に分割して投与することができる。当該組成物を分割して投与する場合、当該組成物は、好ましくは1日に1〜4回投与される。また、当該組成物は、毎日、隔日、1週間に1回、隔週、1ヶ月に1回等の様々な投与頻度で投与してもよい。好ましくは、投与頻度は、医師等により容易に決定される。なお、必要に応じて、上記の範囲外の量を用いることもできる。
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る製剤によれば、上記実施の形態1乃至3に記載されたナノカプセルに薬剤が内包されているので、薬剤がより確実に送達部位に送達される。また、送達部位での当該カプセルの分解をより促進させ、薬物を効率よく放出させることもできる。こうすることで、送達部位において内包する薬物の薬効をより発揮させることができる。
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5について説明する。本実施の形態に係るポリヌクレオチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列に、Nヘリックス領域を改変するアミノ酸配列が付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる。例えば、ポリヌクレオチドは、配列番号2乃至7のいずれか1つの改変型のHSPのアミノ酸配列をコードする。
また、本実施の形態に係るポリヌクレオチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列に、ユビキチン化されうる部位に対応するアミノ酸配列が付加されたアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる。例えば、ポリヌクレオチドは、配列番号9又は11の改変型のHSPのアミノ酸配列をコードする。
当該塩基配列は、コードするアミノ酸配列を基にコンピュータを利用して決定することができる。ポリヌクレオチドは、決定した塩基配列に基づいて、HSPを組み込んだ公知のベクターを利用したPCR等の方法で合成できる。配列番号2乃至7、9、11の改変型のHSPのアミノ酸配列それぞれをコードするポリヌクレオチドの塩基配列は、例えば、配列番号12乃至17、18、19に示す塩基配列である。
また、本実施の形態に係る組換えベクターは、上述したポリヌクレオチドを含む。組換えベクターとは生物宿主に導入することによって、特定の遺伝子を発現するものである。本実施の形態に係る組換えベクターは、上記ポリヌクレオチドを発現する。目的のポリヌクレオチドの塩基配列は、制限酵素及びDNAリガーゼ等を用いて各種ベクターに導入することができる。
また、本実施の形態に係る形質転換体は、上述した組換えベクターを含む。当該形質転換体は、上述した組換えベクターによって生物宿主が形質転換されたものである。形質転換する方法は特には限定されず、上記のように公知の塩化カルシウム法等が挙げられる。
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係るポリヌクレオチド、組換えベクター又は形質転換体は、上記実施の形態1乃至4に記載されたナノカプセルを形成する改変型のHSPを安定して供給できるため、当該ナノカプゼルの製造に好適である。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
(実施例1:リンカー配列を付加したHSPの遺伝子クローニング、発現及び精製)
11残基、20残基又は30残基のアミノ酸からなるリンカー配列を付加した改変型のHSPを発現するクローンを作製した。
配列番号1に示す野生型のHSPのN末端から41残基目のグリシンをシステインに置換したHSP−G41Cをコードするベクター(pET21−HSP16.5−G41C;Sao K et al.,Molecular design of protein−based nanocapsules for stimulus−responsive characteristics,Bioorg.Med.Chem.17,85−93,2009)をテンプレートとして、インバースPCRを行った。インバースPCRは、配列番号20に示すフォワードプライマー及び配列番号21に示すリバースプライマーを用いて、標準的なプロトコールで行った。PCR反応では、DNAポリメラーゼとして、極めて正確性の高いPfuUltra II fusion HS DNA ポリメラーゼを使用した。反応終了後、テンプレートとして使用したpET21−HSP16.5−G41CをDpnIで分解した後、反応生成物をアガロースゲル電気泳動によって分離し、約6000bpのPCR産物をゲルから回収した。DNAリガーゼを用いて、回収したPCR産物をセルフライゲーションし、大腸菌株XL10に形質転換後、LBアガープレートに播種した。プレートを37℃で一晩培養した後、ダイレクトPCR及びDNA配列を決定することでコロニーをチェックし、11残基のアミノ酸からなるリンカー配列が付加された改変型のHSPを発現するクローン(pET21−L11−G41C)を得た。
pET21−L11−G41Cと同様に、20残基のアミノ酸からなるリンカー配列が付加された改変型のHSPを発現するクローン(pET21−L20−G41C)を得た。インバースPCRでは、配列番号22に示すフォワードプライマー及び配列番号23に示すリバースプライマーを用いた。
pET21−L11−G41Cと同様に、30残基のアミノ酸からなるリンカー配列が付加された改変型のHSPを発現するクローン(pET21−L30−G41C)を得た。インバースPCRでは、上記で得られたpET21−L20−G41Cをテンプレートとして、配列番号24に示すフォワードプライマー及び配列番号25に示すリバースプライマーを用いた。
pET21−L11−G41C、pET21−L20−G41C及びpET21−L30−G41Cが発現する改変型のHSPのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号2、配列番号3及び配列番号4に示される。
改変型のHSPの発現及び精製は、次のように行った。pET21−L11−G41C、pET21−L20−G41C及びpET21−L30−G41Cを、それぞれ100mg/mlのアンピシリンを含む2×YT培地に接種し、37℃で振とう培養した。OD600の値が0.5に達した際に、終濃度1mMのIPTGを加えて改変型のHSPの発現を誘導し、そのまま4時間培養を続けた。
培養終了後、培地を遠心分離し、得られたペレットに1mMのEDTA及び1mMのDTTを含む25mMのリン酸緩衝液(pH7.0)を加えて十分に懸濁した。これを氷冷下において密閉式超音波細胞破砕装置BIORUPTOR(登録商標)(コスモバイオ社製)で破砕した(200W、20秒破砕、20秒休止を12回繰り返した)。続いて、4℃で遠心分離(20000g、20分間)した後、不溶性分画を除去した。
改変型のHSPの精製は、HiLoad 26/10 Q Sepharose HP(登録商標)アニオン交換カラム(GEヘルスケア社製)を用いたイオン交換クロマトグラフィーで行った。次に、塩濃度グラジェントによってタンパク質を溶解し、分取した各フラクションをSDS−PAGEで分析し、十分な量のタンパク質が可溶性タンパク質として得られたことを確認した。さらに、目的の改変型のHSPを含むフラクションは、TSKgel G3000SWカラム(東ソー社製)を用いてゲル濾過精製した。なお、ヒスチジンタグを改変型HSPの場合は、上記のアニオン交換カラムの代わりにHisTALON Superflow(登録商標)5ml金属キレートカラム(Clontech社製)を用いたアフィニティクロマトグラフィーで粗精製を行った。なお、以下では、pET21−L11−G41C、pET21−L20−G41C及びpET21−L30−G41Cが発現する改変型のHSPを、それぞれ「L11」、「L20」及び「L30」とする。また、L11、L20及びL30で形成されるナノカプセルを、それぞれ「L11ナノカプセル」、「L20ナノカプセル」及び「L30ナノカプセル」とする。また、リンカー配列を付加していないHSP−G41Cで形成されるナノカプセルを、「G41Cナノカプセル」とする。
L11、L20及びL30がカプセル構造をとっているかを確認するため、動的光散乱法(Dynamic Light Scattering;DLS)で粒径を測定した。1.0mg/mlに調製したL11ナノカプセル、L20ナノカプセル及びL30ナノカプセルの各溶液を、0.22mmスピンフィルターに通し、その溶液をZetasizer Nano(model:zen3600)にて測定した。比較のため、G41Cナノカプセルも同様に測定した。
(結果)
図1は、DLSで求めた粒径の個数分布を示す。G41Cナノカプセル、L11ナノカプセル、L20ナノカプセル及びL30ナノカプセルの平均粒径は、それぞれ12.5nm、14.4nm、22.7nm及び32.6nmであった。
上記のように、ナノカプセル形成と安定化に寄与しているHSPのN末端から始まるNヘリックス領域のC末端にリンカー配列を付加することによって、改変型のHSPで形成されるナノカプセルの粒径を拡大することができた。
(実施例2:L20ナノカプセルへのsiRNAの内包及びL20ナノカプセルの細胞への導入)
上記実施例1で調製したL20ナノカプセルにsiRNAを内包させ、細胞に導入できることを確認した。
まず、5’末端をマレイミドで修飾した配列番号26に示すセンス鎖と5’末端をAlexa Flour 488で修飾した配列番号27に示すアンチセンス鎖とを含む蛍光標識したsiRNA溶液を調製した。PBS緩衝液(pH7.4)に溶解した25μMのL20ナノカプセル溶液に、当該siRNA溶液を終濃度10μMとなるように加え、60℃で2時間加熱した後、そのまま室温まで放冷した。L20ナノカプセルに内包されなかった残余のsiRNAを限外濾過により除去した(カットオフ:100KDa)。
次に、siRNAを内包したL20ナノカプセルを10μMの濃度でPBS緩衝液中に溶解した。あらかじめ24穴プレートにMCF7−luc細胞を、5×10個/ウェルとなるように播種し、陽イオン性脂質ベースの細胞導入試薬BIOPORTER(登録商標)を用いて、MCF7−luc細胞にL20ナノカプセルを形質転換した。添付のプロトコールにしたがって処理した後、細胞内に取り込まれたsiRNA由来の蛍光をプレートリーダーにより定量した。L20ナノカプセルに内包させたものと同一のsiRNAを対照として用いた。
(結果)
図2は、siRNA又はsiRNAを内包したL20ナノカプセルを導入したMCF7−luc細胞の蛍光強度を示す。L20ナノカプセルにsiRNAを内包させることで、細胞内へのsiRNAの導入効率が約10倍に増加した。
このようにリンカー配列を付加して粒径を大きくすることで、改変型のHSPで形成されたナノカプセルは薬物ペイロードを増加させることができる。改変型のHSPは、粒径が大きくなっても細胞内に導入可能である。また、改変型のHSPは、siRNAのような比較的大きな分子も内包させることができ、内包させる薬物の選択の幅を広げることができる。
(実施例3:Nヘリックス領域を付加したHSPの遺伝子クローニング、発現及び精製)
Nヘリックス領域に対応するアミノ酸配列を1つ、2つ又は3つ含むアミノ酸配列を付加した改変型のHSPを発現するクローンを作製した。
HSP−G41CのC末端にiRGDペプチドに対応するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列が付加されたHSP−G41C−iRGDをコードするベクター(pET21−HSP16.5−G41C−iRGD)をテンプレートとして、インバースPCRを行った。インバースPCRには、配列番号28に示すフォワードプライマー及び配列番号29に示すリバースプライマーを用いた。反応生成物をアガロースゲル電気泳動によって分離し、約200bpのPCR産物をゲルから回収した。回収したPCR産物を、制限酵素NdeI及びAseIで分解し、さらにPCR Clean−Upキット(プロメガ社製)を使って精製した。
精製したDNAをNdeIで消化し、さらに脱リン酸化処理をしたpET21−HSP16.5−G41C−iRGDにライゲーションした。以降は実施例1と同様にして、1〜3つのNヘリックス領域に対応するアミノ酸配列が付加されたクローンを得た。改変型のHSPの発現及び精製は、実施例1と同様に行った。
HSPはNヘリックス領域を本来備えている。そこで、Nヘリックス領域に対応するアミノ酸配列が付加されていない改変型のHSP(HSP−G41C−iRGD)を「NHelix1」とする。Nヘリックス領域が1つ付加されると、HSPは本来備えるNヘリックス領域と合わせて2つのNヘリックス領域を有することになる。同様に、Nヘリックス領域が2つ付加されると、HSPは3つのNヘリックス領域を有し、Nヘリックス領域が3つ付加されると、HSPは4つのNヘリックス領域を有することになる。そこで、1つ、2つ及び3つのNヘリックス領域に対応するアミノ酸配列が付加された改変型のHSPを、それぞれ「NHelix2」、「NHelix3」及び「NHelix4」とする。NHelix1、NHelix2、NHelix3及びNHelix4のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号30、配列番号5、配列番号6及び配列番号7に示される。
(実施例4:Nヘリックス領域を付加した改変型のHSPで形成されたナノカプセルへの造影剤の内包及び造影剤の緩和度の測定)
まず、Gdイオンと錯化させたマレイミド化DTPAを調製した。30.9gのp−NH−Bz−DTPAと16.5gのスルホEMCSとを、100mMのHEPES緩衝液(pH8.5)0.25mlに溶解し、室温で20時間撹拌した。反応追跡は、薄層クロマトグラフィー(オクタデシルシリル(ODS)、メタノール/水=1/1)で行った。ODSカラムを用いて高速液体クロマトグラフィーにより反応溶液を精製し、マレイミド化DTPAを得た。
次に、溶液のpHを、1Mの塩酸で5付近に調整した後、1Mの塩化ガドリウム溶液48μlを加え、室温で20時間撹拌して錯化させることで、Gd−DTPA−マレイミドを得た。
Gd−DTPA−マレイミドは、改変型のHSPで形成されたナノカプセル内部の空洞表面にあるシステイン残基(野生型のN末端から41残基目のグリシンを置換)に固定化することでナノカプセルに内包した。リン酸緩衝液(pH6.0)に各ナノカプセル溶液及びGd−DTPA−マレイミドを加え、50℃で1時間加熱撹拌した。放冷後、ナノカプセルに内包されなかった残余のGd−DTPA−マレイミドを限外濾過により除去した。なお、ナノカプセルに固定化されたGdは、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)装置(7500C、アジレント・テクノロジー社製)を用いて定量した。
Gd−DTPA−マレイミドを内包したナノカプセル溶液を、100mMのリン酸緩衝液(pH7.4)で希釈し、所定の濃度に調製した後、1.5T又は9.4Tの核磁気共鳴画像(MRI)装置を用いて、標準的なインバージョンリカバリー法により、T1緩和度を求めた。また、T1強調スピンエコー法によりMRI測定を行い、T1強調画像を取得した。
(結果)
図3は、ナノカプセル内に固定化されたGdの割合を示す。NHelix1で形成されたナノカプセルに対して、NHelix2及びNHelix3で形成されたナノカプセルでは、Gdの内包効率が向上した。
表1は、各ナノカプセルのT1緩和度を示す。ナノカプセルに内包されていないGd−DTPAに対して、NHelix4で形成されたナノカプセルでは、磁場1.5Tの場合で約19倍、磁場9.4Tの場合で約5倍のT1緩和度が得られた。また、Nヘリックス領域が多いほど、T1緩和度が増加した。
図4は、Gd−DTPA及び各ナノカプセルのT1強調画像を示す。ナノカプセルに内包されたGd−DTPAでは、Gd−DTPAよりも高いMRシグナルが検出された。さらに、Nヘリックス領域が多いほど、より高いMRシグナルが検出された。このため、Nヘリックス領域を付加した改変型のHSPで形成されたナノカプセルに、造影剤を内包することで、より高感度なMRI造影が可能になることが示唆された。
付加されたNヘリックス領域はナノカプセル内部の空洞表面に位置し、ナノカプセル内部の疎水性を高める。これが疎水性相互作用としてナノカプセルの形成に寄与することで、ナノカプセルの構造的な剛直さが向上し、Gdの内包効率及びT1緩和能が向上したと考えられる。
また、緩和度は、水交換率(τ)、回転相関時間(τ)が大きくなると低下する。ナノカプセルの構造的な剛直さ及び内部の疎水性の向上によって、τ及びτの少なくとも一方が小さくなることで緩和度が向上したと推察される。
(実施例5:ナノカプセルに内包した造影剤の膵癌移植マウスにおける評価)
実施例4で調製した改変型のHSPで形成されたナノカプセルに内包された造影剤の造影感度を生体内で評価した。
1×10個のヒト膵癌細胞AsPC−1(Neuropilin−1高発現株)をマトリゲルと混合し、SHOマウスの皮下に移植した。SHOマウスを2〜3週間飼育して、癌部が十分に生着及び成長した後、100μMのNHelix3で形成されたナノカプセル溶液150μlを尾静脈から投与した。そのまま12時間放置した後、9.4TのMRI装置を使用して、T1強調スピンエコー法によりMRI測定を行い、T1強調画像を取得した。対照として、野生型のHSPで形成されたナノカプセルも同様に評価した。
図5は、担癌マウスの癌部付近のT1強調画像を示す。NHelix3で形成されたナノカプセルに内包された造影剤は、野生型のHSPで形成されたナノカプセルに内包させた場合よりも癌部をより明確に描出した。NHelix3で形成されたナノカプセルは、C末端にiGRDペプチドに対応するアミノ酸配列を有している。このため、iGRDペプチドがナノカプセルの外殻に呈示されるので、iGRDペプチドに親和性の高いNeuropilin−1を高発現している癌部に、ナノカプセルが効率よく輸送されていることが示された。このように、本実施例に係る改変型のHSPで形成されたナノカプセルは、生体内においても送達部位で内包する薬物の薬効を十分に発揮させることができる。
(実施例6:分解シグナル配列を付加したHSPの遺伝子クローニング、発現及び精製)
C末端にユビキチン化されうるHIF−1由来配列又はPEST配列を含むアミノ酸配列を付加した改変型のHSPを発現するクローンを作製した。
HIF−1由来配列を含む改変型のHSPを発現するクローンの作製では、HSP−G41CのC末端に、所定残基数のリンカー配列を介して6個のヒスチジン残基が付加されたアミノ酸配列をコードするベクター(pET21−HSP16.5−G41C−L7−His)をテンプレートとしてインバースPCRを行った。インバースPCRには、リン酸化プライマーを用いた。フォワードプライマーの配列は、配列番号31に示され、リバースプライマーの配列は、配列番号32に示される。以降、実施例1と同様に目的のクローンを取得し、改変型のHSPを発現させ、精製した。HIF−1由来配列を含む改変型のHSP(ODD56)のアミノ酸配列は、配列番号9に示される。
PEST配列を含む改変型のHSPを発現するクローンの作製では、細胞接着において主要な役割を担うpreS1由来のアミノ酸配列を含むHSP−G41Cのアミノ酸配列をコードするベクター(pET21−HSP16.5−G41C−preS1)をテンプレートとしてインバースPCRを行った。インバースPCRには、配列番号33に示すフォワードプライマー及び配列番号34に示すリバースプライマーを用いた。以降、実施例1と同様に目的のクローンを取得し、改変型のHSPを発現させ、精製した。PEST配列を含む改変型のHSP(mODC)のアミノ酸配列は、配列番号11に示される。
(実施例7:ODD56で形成されたナノカプセルのユビキチン化の確認)
野生型のHSPで形成された野生型ナノカプセル及びODD56で形成されたODD56ナノカプセルをあらかじめAlexa Flour 488で標識した。次に、野生型ナノカプセル及びODD56ナノカプセルを、それぞれHela細胞ベースのキットUbiquitin Conjugation Kit(BIOMOL社製)を使用してユビキチン化した。具体的な実験手順は下記のとおりである。
S−100 HeLa細胞抽出液14ulに1μMのナノカプセル溶液17.5ulを加え、さらに7ulの10×Ubiquitinylation buffer、2.8μlの50mM DTT、7μlの5×ATP−ERS、21.7ulの滅菌水を添加して総体積70μlとした。当該溶液を37℃のインキュベーターに入れ、0分、5分、10分、20分、40分、60分及び120分後に10μlずつサンプルリングした。サンプリングした溶液に4μlのSample Buffer(4x)、2μlの滅菌水を加え、95℃で5分間加熱した。次に溶液を5000×gで1分間遠心分離し、15%ポリアクリルアミドゲルを使ったSDS−PAGEにより分析した。なお、電気泳動は遮光下で行った。電気泳動の終了後、蛍光ゲルスキャナー(Typhoon FLA9000)で撮影した。
(結果)
図6に示すように、Hela細胞中において、ODD56ナノカプセルは、時間の経過とともに高分子量化した。ユビキチン化の特徴であるラダー状のパターンが確認できるため、ODD56ナノカプセルがユビキチン化されたことが示された。一方、野生型ナノカプセルでは、分子量に変化がなく、ユビキチン化されなかった。
(実施例8:ODD56ナノカプセルの経時変化の解析)
細胞内の取り込まれたODD56ナノカプセルの経時変化を追跡した。
あらかじめ24穴プレートに5×10個/ウェルとなるようにHela細胞を播種し、チミジンブロックにより細胞周期をS期に同調させておいた。蛍光物質Alexa Flour 488でそれぞれ標識した野生型ナノカプセル及びODD56ナノカプセルを、それぞれ10μMの濃度となるようにPBS緩衝液中に溶解した。ナノカプセル溶液を陽イオン性脂質ベースの細胞導入試薬BIOPORTER(登録商標)を用いて、S期に同調させておいたHela細胞に形質転換した。キットに添付されたプロトコールにしたがってHela細胞を処理した後、形質転換直後を0時間とし、所定時間ごとに細胞をサンプリングした。サンプリングした細胞の培地を除去した後、100μlのLysis Bufferを加えて十分に細胞を懸濁し、溶液中に含まれるナノカプセルをSDS−PAGEにより分析した。ゲルへの添加量は総タンパク量をもとに調整した。なお電気泳動終了後、ナノカプセル由来の蛍光バンドを蛍光ゲルスキャナー(Typhoon FLA9000)で撮影し、さらにそのゲルを抗β−アクチン抗体で免疫染色した。
(結果)
図7に示すように、ODD56ナノカプセルは、時間の経過とともに消失し、24時間後には、ほぼ完全に消失した。一方、野生型のナノカプセルでは、24時間後でも残存していた。ODD56ナノカプセルは、細胞内でより確実に分解され、消失することが示された。
(実施例9:ODD56ナノカプセルの薬物放出の評価)
まず、アポトーシス誘導剤RO31−8220を野生型のナノカプセル及びODD56ナノカプセル各々に内包させた。20μMの濃度で野生型のナノカプセル及びODD56ナノカプセルをそれぞれ含む200μlのPBS緩衝液(pH7.4)に、10μMのアポトーシス誘導剤RO31−8220メタンスルホン酸塩を添加し、60℃で2時間、加熱攪拌した。その後、室温まで放冷し、残余のRO31−8220を限外濾過によって除去した。
続いて、24穴プレートに5×10個/ウェルのHela細胞を播種し、10%FCSを含む1000μlのDMEM培地をウェルに加えて、37℃、5%CO条件下で一晩培養した。ウェル内の培地を200ulのDMEM培地に交換し、適量のBIOPORTER(登録商標)を含む10μMのナノカプセル溶液(RO31−8220を内包)を25ulと等量のDMEM培地とを混合し、混合溶液をウェルに加えた。4時間培養した後、10%FCSを含む1000μlのDMEM培地にウェル内の培地を交換した。さらに48時間培養した後、トリパンブルー染色により細胞の生存率を計測した。
(結果)
図8に示すように、RO31−8220を内包したODD56ナノカプセルは、Hela細胞のアポトーシスを誘導した。野生型のナノカプセルにRO31−8220を内包した場合は、Hela細胞のアポトーシスは誘導されなかった。上記実施例8に示したように、ODD56ナノカプセルは細胞内で分解されて消失するため、内包されたRO31−8220が細胞内で効率よく放出されたことが示された。
(実施例10:G41Cナノカプセルの安全性評価)
6週齢のICRマウス(雄)に、生理食塩水に溶解した100μMのG41Cナノカプセルを100μl投与し、24時間後及び48時間後に尾部から血液を採取した。採取した血液を1時間、室温でインキュベートし、4℃で一晩、静置した。その後、4℃で15分間、1700×gで遠心分離し、上清を回収し、血清を得た。こうすることで、250μlの血液から約100μlの血清が得られた。
得られた血清の生化学パラメータを、JSCC標準化対応法で測定した。測定した生化学パラメータは、腎機能障害の指標となるクレアチニン(CRE)、肝臓、心筋及び骨格筋の障害の指標となるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、肝細胞、心筋及び骨格筋の障害の指標となるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、種々の細胞障害の指標となる乳酸脱水素酵素(LDH)、及び筋肉の障害の指標となるクレアチンキナーゼ(CK)である。
(結果)
表2は、G41Cナノカプセルの投与から24時間後の生化学パラメータを示す。コントロール群及び生理食塩水のみを投与した群と比較して、G41Cナノカプセルを投与したマウスの生化学パラメータに大きな違いはなかった。
表3は、G41Cナノカプセルの投与から48時間後の生化学パラメータを示す。24時間後の結果と同様に、コントロール群及び生理食塩水のみを投与した群と比較して、G41Cナノカプセルを投与したマウスの生化学パラメータに大きな違いはなかった。
これらの結果により、G41Cナノカプセルを投与しても、ほとんど毒性がないことが分かった。G41Cナノカプセルと同様に、上記各実施例で検討した改変型のHSPで形成されたナノカプセルにも顕著な毒性はないと考えられる。このため、当該改変型のHSPで形成されたナノカプセルは、内包した薬物を、安全に、かつ効率よく標的部位に送達することができる。
本出願は、2013年3月27日に出願された日本国特許出願2013−065627号に基づく。本明細書中に日本国特許出願2013−065627号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
本発明に係る改変型のHSPで形成されたナノカプセルの内部の空洞には、抗癌剤、核酸医薬、遺伝子、造影剤及び蛍光プローブ等の多様な薬物を、十分なペイロードを確保しながら安定して内包させることが可能である。また、当該ナノカプセルは、細胞内で分解されて、内包した薬物を送達部位で効率よく放出することができる。このため、特定部位に効率的に薬物を送達でき、かつ、送達部位において内包する薬物の薬効をより発揮させることができる。従って、癌等の疾患の診断、副作用を抑えた予防及び薬物治療、さらには特定の分子を標的とする分子イメージング等に利用できる。

Claims (8)

  1. 下記(a)〜(d)からなる群から選択されるアミノ酸配列からなるタンパク質を含み、
    該タンパク質の自己組織化によって形成された構造体である、
    ナノカプセル。
    (a)配列番号1に示されるアミノ酸配列のN末端に、前記アミノ酸配列のN末端から32残基又は33残基までのアミノ酸配列から構成される疎水性ヘリックス領域が1個以上付加されたアミノ酸配列、
    (b)前記(a)のアミノ酸配列に、ユビキチン化されうる部位を構成するアミノ酸配列が前記構造体において外部に提示される位置にさらに付加されたアミノ酸配列、
    (c)前記(a)又は(b)のアミノ酸配列のC末端に、iRGDペプチドに対応するアミノ酸配列がさらに付加されたアミノ酸配列、及び
    (d)前記(a)、(b)又は(c)のアミノ酸配列に、10個以下のアミノ酸の置換、欠失及び付加の少なくとも1つの改変がさらに加えられたアミノ酸配列
  2. 前記ユビキチン化されうる部位を構成するアミノ酸配列は、
    低酸素誘導因子−1のアミノ酸配列に含まれる配列番号8に示すアミノ酸配列である、
    ことを特徴とする請求項に記載のナノカプセル。
  3. 請求項1又は2に記載されたナノカプセルと、
    前記ナノカプセルに内包される薬物と、
    を含む組成物。
  4. 前記薬物は、
    造影剤である、
    ことを特徴とする請求項に記載の組成物。
  5. 前記薬物は、
    抗がん剤である、
    ことを特徴とする請求項に記載の組成物。
  6. 下記(a)〜(d)からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなり、
    該アミノ酸配列からなるタンパク質は、自己組織化によって構造体を形成する、
    ポリヌクレオチド。
    (a)配列番号1に示されるアミノ酸配列のN末端に、前記アミノ酸配列のN末端から32残基又は33残基までのアミノ酸配列から構成される疎水性ヘリックス領域が1個以上付加されたアミノ酸配列、
    (b)前記(a)のアミノ酸配列に、ユビキチン化されうる部位を構成するアミノ酸配列が前記構造体において外部に提示される位置にさらに付加されたアミノ酸配列、
    (c)前記(a)又は(b)のアミノ酸配列のC末端に、iRGDペプチドに対応するアミノ酸配列がさらに付加されたアミノ酸配列、及び
    (d)前記(a)、(b)又は(c)のアミノ酸配列に、10個以下のアミノ酸の置換、欠失及び付加の少なくとも1つの改変がさらに加えられたアミノ酸配列
  7. 請求項に記載のポリヌクレオチドを含む組換えベクター。
  8. 請求項に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
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