JP2017211323A - 検出用基板 - Google Patents

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金市 森田
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幸司 山田
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Abstract

【課題】測定光のノイズ成分を除去することが可能な検出用基板を提供する。【解決手段】検出用基板は、基板本体と、測定光の照射に対する光学的反応がターゲット分子との結合の有無で変化するプローブ分子が前記基板本体の表面に固定されている検出部と、前記検出部に隣接した前記表面からなる参照部と、を備える。【選択図】 図1

Description

本発明は、例えば生化学反応の定量評価等に用いられる検出用基板に関する。
バイオチップは、プローブとターゲット分子との相互作用を用いてターゲット分子を検出・解析するためのデバイス(検出用基板)である。従来のバイオチップとしては、光の透過性が高い高分子材料やガラスを平板に成形した基板であるチップの上に、プローブを高密度に固定化したものが知られている。ここでプローブとは、特定のターゲット分子と特異的に相互作用(生化学反応)する物質であり、たとえば、核酸やタンパク質などのバイオ分子がプローブとして用いられる。
マイクロ流路を用いた分析システム(ラボオンチップ)もバイオチップの一つの態様である。
バイオチップは、チップ上に固定されるプローブの種類により、例えば、DNAチップ、タンパク質チップ、糖鎖チップなどと呼称される。これらバイオチップは、主に、ポストゲノムの研究や医療診断に利用されている。また、バイオチップの上での生化学反応を利用してターゲットを計測・判定する場合、事前に蛍光色素をプローブもしくはターゲットに固定化し、蛍光色素とプローブもしくはターゲットとを生化学反応させる手法が用いられている。生化学反応の結果、蛍光色素による蛍光の光量が変化するので、この光量の変化を観測することで生化学反応の反応量が計測・判定できる。以下では、ターゲットを計測・判定するためにバイオチップに照射される光を「照射光」と称し、照射光の照射に応答して蛍光色素などから得られる光を「測定光」と称する。
上記したように、バイオチップの基板材料としては、光の透過性が高いガラスや高分子材料が用いられることが多い。これは、上記した蛍光等の測定光を、基板を介して計測することが可能であるためである。このような基板は、例えばバイオチップの裏側などから、蛍光標識から生じた光を読み取る検出機を用いる場合に採用される。
なお、バイオチップ上へのプローブの固定化には、シランカプリング反応やチオールの吸着反応などが利用されている。これは、プローブに用いる分子の配向を制御する目的のほか、高密度にプローブを固定するためである。
光の透過性の高いガラス基板や高分子材料を用いたバイオチップでは、当該バイオチップの基板により、蛍光標識に照射する励起光(照射光)と蛍光標識が発する蛍光(測定光)との双方で散乱が生じる。そして、このような散乱に起因してバックグラウンドノイズが生じてしまい、蛍光検出によってターゲット分子の定量測定を行うことが難しくなる。
すなわち、光−電流信号変換を行う蛍光読み取り装置におけるCCDや光電子倍増管などの光検出部は、光路中に透明性の高い材料(例えばバイオチップ基板)を挟むことで生じる散乱光などのバックグラウンドノイズの影響を受けてしまう。このバックグラウンドノイズはバイオチップ毎に異なっているため、ターゲット分子の量が同一であってもバイオチップが異なると、光検出部による検出値の再現性を高くすることは難しい。
このような事情により、従来のバイオチップは、主としてその表面にターゲット分子が存在しているかどうかの判定をするのに使われている。
また、光学検出の精度を向上するため、光反射が少ない炭素基板を用いたバイオチップも提案されている(例えば特許文献1参照。)。
特開2003−121438号公報
しかしながら、炭素基板を用いる場合でも、炭素基板表面の凹凸に起因する光散乱などの影響により、プローブ分子から放出される蛍光(測定光)の強度はバイオチップ毎に相違する。このため、炭素基板からなるバイオチップを用いるとバックグラウンドノイズは抑制されるものの、測定結果はバイオチップ毎に異なる結果を示すことになる。従って、炭素基板を用いる場合であっても、ノイズの影響により、ターゲット分子(例えば、生体物質)の実用的な検出(例えば、ターゲット分子の定量)を実施することは難しい。
本発明は、上記したような事情を鑑みなされたものであり、その課題は、測定光のノイズ成分を除去することが可能な検出用基板を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明に係る検出用基板の一態様は、基板本体と、測定光の照射に対する光学的反応がターゲット分子との結合の有無で変化するプローブ分子が前記基板本体の表面に固定されている検出部と、前記検出部と並んでいて前記表面が露出した参照部と、を備える。
このような検出用基板によれば、参照部に照射光が入射することでバックグラウンドノイズに相当する反射・散乱光を生じるので、検出部から得られる測定光の光量と参照部から得られる反射・散乱光の光量との演算によって測定光のノイズ成分を除去することができる。その結果、測定光の絶対量を検出用基板相互で比較することが可能となり、再現性の高い測定を行うことが可能となる。
なお、除去されるノイズ成分は、照射光の光源に給電される電流のゆらぎや、光軸のずれなどに伴う、照射光の出力変動(変動要因1)によるノイズ成分、および基板の凹凸に依存する散乱光強度の検出用基板毎の個体差(変動要因2)によるノイズ成分を含む。
前記検出用基板において、前記表面が炭素材料からなることが好ましい。前記表面が炭素材料により形成されると、当該表面に到達した照射光は炭素材料によって大部分が吸収されるのでバックグラウンドノイズは著しく低減される。
また、前記検出用基板において、前記プローブ分子が、前記表面上に形成された有機分子の単分子膜によって当該表面に固定されていることが好ましい。プローブ分子自身が有機分子として単分子膜を形成していてもよいし、プローブ分子が単分子膜の上面に固定されることで前記表面に固定されていてもよい。単分子膜を成した有機分子は高配向で規則的に配列しているので、単分子膜はプローブ分子を検出用基板の表面に固定する手段として有効である。
また、前記検出用基板において、前記プローブ分子および前記ターゲット分子のいずれか一方が、蛍光標識を有する蛍光標識分子であって、当該プローブ分子と当該ターゲット分子との結合の有無で蛍光の発光量が変化することが好ましい。このような検出用基板によれば、蛍光の発光量の測定によってターゲット分子の定量測定が可能となる。
前記検出用基板は、前記検出部を前記表面上の複数箇所に備え、前記複数箇所それぞれの検出部が前記参照部と並んでいるものであってもよく、あるいは、前記検出部と前記参照部とを交互に縞状に備えたものであってもよい。
これらの検出用基板によれば、各検出部に対して試料との反応時間を変えた測定などを行うことができる。
本発明の検出用基板によれば、測定光のノイズ成分を除去することができる。
本発明の検出用基板の一実施形態であるバイオチップの構成例を示す図である。 図1に示すバイオチップがターゲット分子と反応する様子を示す図である。 蛍光測定の様子を示す図である。 本実施形態のバイオチップの製造方法の例を示す図である。 真空紫外光が照射された後の炭素基板を示す図である。 走査型トンネル顕微鏡の観察結果(原子像)を示す図である。 亜鉛イオンとBODIPYとの反応量を評価する測定の手順における蛍光測定工程を示す図である。 亜鉛イオンとBODIPYとの反応量を評価する測定の手順における浸漬工程を示す図である。 測定で採取された蛍光強度と蛍光波長との関係を示す図である。 炭素基板表面に検出部およびリファランス部が複数箇所設けられたバイオチップの例を示す図である。 ストライプ状の構造を有するバイオチップの製造方法を示す図である。 図10に示すようなストライプ構造を有するバイオチップを用いたターゲット分子の計測例を示す図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の検出用基板の一実施形態であるバイオチップ1の構成例を示す図である。
本実施形態のバイオチップ1は、炭素基板10を備えている。このバイオチップ1には、プローブ分子11が炭素基板10の表面に固定されている検出部12と、プローブ分子11が固定されないで炭素基板10の表面が露出したリファランス部13が設けられている。
発明者らは、炭素の光学特性に注目した。炭素からなる炭素基板10は、光の多くを吸収し、かつ、自家蛍光などの形で光を放出しない。そこで、本実施形態では、炭素基板10をバイオチップ1の基板として採用した。
図1に示すバイオチップ1は、プローブ分子11の一例として例えば生体物質認識分子を有するものとする。また、このバイオチップ1が用いられて、例えば蛍光測定により、例えば蛍光標識を内包するターゲット分子の判別・定量が行われるものとする。
図2は、図1に示すバイオチップ1がターゲット分子20と反応する様子を示す図である。
ターゲット分子20を含む試薬がバイオチップ1上に例えば滴下等で供給されると、図2に示すように、ターゲット分子20の少なくとも一部は、プローブ分子11と結合する。
図3は、蛍光測定の様子を示す図である。
蛍光測定では、蛍光読み取り機30より、上記蛍光標識の励起波長を有する励起光31がバイオチップ1に照射される。上記蛍光標識を含むターゲット分子20と結合しているプローブ分子11がバイオチップ1に存在していると、上記蛍光標識は励起されて蛍光光21を放出する。そしてこの蛍光光21の強度等が上記蛍光読み取り機30によって測定される。
ここで、バイオチップ1の基板は炭素基板10であるので、蛍光標識に吸収されずに炭素基板10に到達した励起光31や外部からの漏れ光は、炭素基板10により大部分が吸収される。このため、励起光31や漏れ光の散乱光によるバックグラウンドノイズは著しく低減され、バイオチップ1毎の測定において再現性の高い測定を実現することが可能となる。
なお、炭素基板10に入射する励起光31は、上記したように大部分が炭素基板10により吸収されるが、当該励起光31の一部は、炭素基板10表面により反射・散乱される。
本実施形態では、バイオチップ1にプローブ分子11が固定されないリファランス部13が設けられているので、リファランス部13に入射した励起光31の一部は、プローブ分子11の影響を受けることなく反射・散乱され、この反射・散乱光32も蛍光読み取り機30により検出される。
この反射・散乱光32は、バックグラウンドノイズに相当する。そして、このリファランス部13からのバックグラウンドノイズは、以下の2つの変動要因を反映したものとなる。
変動要因1:蛍光読み取り機30の光源に給電される電流のゆらぎや、光軸のずれなどに伴う、バイオチップ1に照射される励起光31の出力変動。
変動要因2:炭素基板10の凹凸に依存する散乱光強度のバイオチップ1毎の個体差。
このリファランス部13からのバックグラウンドノイズは、蛍光標識からの蛍光に含まれる励起光の変動に起因する蛍光強度の変動、炭素基板の表面状態に依存する蛍光強度のバイオチップ毎の個体差に対して、線形に対応する。
すなわち、リファランス部13からのバックグラウンドノイズを測定し、ノイズの測定結果データと、検出した蛍光強度データを演算することで、蛍光標識からの蛍光強度を絶対量として評価することが可能となる。よって、バイオチップ毎の表面状態の個体差、光源状態や光路状態にともなう励起光の変動によらず、再現性の高い測定を行うことが可能となる。
図4は、本実施形態のバイオチップ1の製造方法の例を示す図である。
まず、炭素基板10の表面にプローブ分子を固定するために、有機アミノ分子による単分子膜14を炭素基板10の表面上に形成した。これは、単分子膜14によってプローブ分子を固定すると、認識部位を高配向化させることができるためである。すなわち、高分子やタンパク質などを用いてプローブ分子を固定化する場合よりも、高感度かつ高選択的に生体物質を認識することが可能になる。
炭素基板10としては、Patterning of Alkylamine Molecules on Highly Oriented Pyrolytic Graphite Surfaces via Deep UV Light Irradiation(Chemistry Letters Vol. 43 (2014) No. 10 P 1542-1544)に示すように、例えば気相成長黒鉛(HOPG:highly oriented pyrolytic graphite)基板を用いた。この基板を作用電極とし、例えば白金黒付き白金電極(platinized platinum electrode)を対極、例えば飽和KCl銀・塩化銀参照電極(Ag/AgCl(saturated KCl)electrode)を参照電極として三極セルを構成した。そして電解溶液として、例えば0.1mMから10mMの濃度範囲の有機アミノ分子を含む例えば0.1Mから1.0Mの濃度範囲の過塩素酸ナトリウムもしくは過塩素酸リチウム水溶液を用いて、HOPG基板を酸化することにより、上記HOPG基板上に有機アミノ分子(例えばカルボキシ基もしくはアミノ基を有するアルキルアミン)による単分子膜14を形成した。
図4に示すように、上記した有機アミノ分子による単分子膜14(図4に示す例では、アミノ基を有するアルキルアミンの単分子膜)が形成された炭素基板10に、開口パターンを有する金属製のマスク40を介して、例えば波長172nmの真空紫外光(VUV光)41を照射した。図4では、マスク40と炭素基板10との間にはある程度の距離があるように描画されているが、実際は、単分子膜14が形成された炭素基板10の表面にマスク10を置いてVUV光41を照射した。金属製のマスク40としては、例えば、銅やステンレス等から構成されるマスクを採用可能であり、今回は、ステンレス製のマスク40を用いた。
図4に示す例では、VUV光41の光源として、中心波長172nmのVUV光41を放出するXeエキシマランプ42を使用した。また、Xeエキシマランプ42、マスク40、および炭素基板10は、窒素(例えば99.999%以上の高純度窒素)を充填したパージボックス中に設置した。これにより、VUV光41の炭素基板10への照射雰囲気は、酸素が殆ど存在しない高純度窒素雰囲気となるので、酸素による吸収に伴うVUV光41の減衰は殆ど発生しない。
ここで、炭素基板10上のVUV光41の放射照度は例えば20mW/cmであり、波長172nmのVUV光41を30分間以上、望ましくは60分間以上、照射し続けた。このような照射の結果、VUV光41が照射された位置は、未修飾の炭素基板10表面となった。
図5は、VUV光が照射された後の炭素基板10を示す図である。
図5に示すように、VUV光が照射された箇所はC−N結合が切断され、未修飾の炭素基板10の表面が露出したリファランス部13となる。すなわち、VUV光の照射により、有機アミノ分子による単分子膜14の一部が炭素基板10の表面から除去され、当該炭素基板10上にリファランス部13が構築された。当該リファランス部13は、単分子膜が除去されているので、プローブ分子は固定されない。一方、VUV光が照射されなかった箇所は単分子膜14が残っているので、単分子膜14上にプローブ分子が固定されることで検出部12となる。
なお、有機アミノ分子による単分子膜が形成された炭素基板10へのVUV光41の照射を上記したパージボックス中ではなく、通常の大気雰囲気下で実施しても、酸素によるVUV光41の吸収を考慮してVUV光源と炭素基板10との距離を適宜設定することにより、高純度窒素雰囲気のときと同様の結果が得られた。
このように製造されたバイオチップ1を用いて、ターゲット分子の定量を実施した。
図4に示された製造方法と同じ方法を用いて、HOPG基板上にアミノ基を有するアルキルアミンによる単分子膜を形成し、開口を有する金属製マスクを介して波長172nm光を上記単分子膜に照射し、HOPG基板上にリファランス部を形成した。波長172nmの照射条件、照射雰囲気も先に記載の条件と同じである。
そして、上記単分子膜に、重金属イオン(亜鉛)に応答する蛍光色素であるボロンジピロメテン(BODIPY)骨格を有するプローブ分子を、アドミカプリング反応を用いて、HOPG基板上に固定されているカルボキシ基へ固定した。ここで、プローブ分子内のピリジニウム基と亜鉛とが会合すると、蛍光強度が減少する。この減少量は結合する亜鉛の濃度に依存することから、定量測定に用いることが可能になる。
ここで、蛍光測定に先立ち、HOPG基板上のリファランス部と、BODIPYを有するプローブ分子(以下、蛍光標識分子と称する)が固定された検出部の原子像を走査型トンネル顕微鏡により観察した。走査型トンネル顕微鏡としては、日本ビーコ社製NANOSCOPE IIIを使用した。
図6は、走査型トンネル顕微鏡の観察結果(原子像)を示す図である。
図6には、リファランス部と、蛍光標識分子が固定された検出部の観察結果が示されている。
図6において、明るいスポットは電子密度が高いところを示しており、リファランス部では、グラファイトが規則的にハニカム構造をとっているのがわかる。一方、蛍光標識分子が固定された検出部では、π電子による電子雲の像が得られており、蛍光標識分子(BODIPY)が規則的に配列している様子がわかる。
すなわち、蛍光標識分子の固定に単分子膜を使用することにより、反応分子であるプローブ分子を高配向でバイオチップの表面に固定できることがわかった。
なお、高分子材料基板、ガラス基板、金属基板を用いた場合には、高価な単結晶基板を用いない限りは、このような規則的な構造を得ることはできない。
上記した蛍光標識BODIPYを検出部に固定したバイオチップを用いて、亜鉛イオンとBODIPYとの反応量を評価する測定を行った。
図7および図8は、亜鉛イオンとBODIPYとの反応量を評価する測定の手順を示す図である。
まず、亜鉛イオンとBODIPYを反応させる前の、BODIPYを固定した検出部12と上記したリファランス部13とを有するバイオチップ1を、蛍光読み取り機30に設置した。この蛍光読み取り機30は、日本分光株式会社製の分光蛍光光度計FP-8000をバイオチップ計測用に改造したものであり、図7には、理解を容易にするよう簡略化した構成が示されている。
蛍光読み取り機30の励起用光源部33からバイオチップ1に照射される励起光31の波長は365nmである。
波長365nmの励起光31が上記したバイオチップ1に照射されると、バイオチップ1の検出部12に固定されているBODIPYが励起され、蛍光光21が得られる。この蛍光光21の中心波長は、550nmであった。
ここで本実施形態のバイオチップ1は、検出部12に有機アミノ分子による単分子膜を形成し当該単分子膜に蛍光標識BODIPYを含むプローブ分子(蛍光標識分子)を固定したものである。この蛍光標識分子は、高配向で検出部12に固定されている。そのため、励起光31により励起されたBODIPYから放出される蛍光光21は、ある一定の方向に対して良好な指向性を有することになる。すなわち、図7に示すように、励起光31の光軸に対して、ある一定の角度θの方向に、蛍光光21が進行する。この角度θは、所謂、マジックアングルに相当し、具体的には40°から50°の範囲内の角度であり、1つの測定例においては角度θは48°であった。
バイオチップ1からの光を測定する蛍光読み取り機30のセンサ34は、このマジックアングルを考慮した位置・姿勢で設置されている。
センサ34は、BOSIPYからの蛍光光21(中心波長550nm)を測定する。また、センサ34は、上記蛍光のみならず、リファランス部13から反射・散乱される励起光(波長365nm)の反射・散乱光32のバックグラウンドノイズも測定する。なお、蛍光光21と反射・散乱光32は、波長範囲が互いに相違しているので、一つのセンサで両者を同時に測定することが可能となる。
センサ34で受光された蛍光光21と反射・散乱光32のバックグラウンドノイズとのそれぞれに相当する信号は、センサ34より蛍光読み取り機30の制御部35へと送出される。
次に、蛍光読み取り機30よりバイオチップ1を外して、図8に示すように、例えば亜鉛イオンを有する試料溶液22にバイオチップ1を10分間浸漬した。試料溶液22は、例えばリン酸緩衝溶液を用いた亜鉛の標準溶液であり、今回使用した試料溶液中の亜鉛の濃度は、0.03mg/L(環境基準値)である。
バイオチップ1を試料溶液22に10分間浸漬することより、検出部12に固定されたプローブ分子のBODIPYと試料溶液22中の亜鉛イオンとが反応して両者が入れ替わる。
10分後、バイオチップ1を試料溶液22から引き揚げ、直ちに図7に示すように蛍光読み取り機30にセッティングし、蛍光およびバックグラウンドノイズを測定した。
以下、この手順を数回繰り返し、測定を計5回行った。すなわち、(累計)浸漬時間が0分、10分、30分、300分、および12時間のデータを採取した。
図9は、測定で採取されたデータを示す図である。
図9のグラフの横軸は蛍光波長を表し、縦軸は蛍光強度を表している。また、グラフ中に示された複数の曲線は、太さが細い程、累計浸漬時間が長いときのデータを表している。
図9に示すように、蛍光標識であるBODIPYとターゲットである亜鉛イオンとの反応時間が進行するにつれて、BPDIPYが亜鉛イオンと置換されてその数が減少し、蛍光強度が減少していくことが観測された。
ここで、各蛍光の測定結果は、励起光のバックグラウンドノイズに相当する信号情報を基に演算され補正された結果である。すなわち、各測定において、励起光源に給電される電流のゆらぎや、光軸のずれ(蛍光読み取り機にバイオチップを設置した際に生じる光学系の僅かなずれなど)などに伴うバイオチップ基板に照射される励起光出力の変動の影響(上記した変動要因1)は除去されている。これは、図9のグラフにおいて、矢印で示された波長555nmの部分が、累積浸漬時間の増加に伴い亜鉛の反応量も増加するのに対して減少していることから明らかである。
また、同様の実験を、別のバイオチップを用いて実施したが、図9とほぼ同等お結果を得た。すなわち、上記した補正により、炭素基板の凹凸に依存する散乱光強度のバイオチップ毎の個体差(変動要因2)の影響も除去することができた。
このように、変動要因1及び変動要因2の影響を除去することができたので、検出部に固定化された蛍光標識(BODIPY)を用いて、試料溶液中に含まれる亜鉛イオンの反応量を定量することができた。
〔変形例〕
上記した実施形態のバイオチップ1では、炭素基板10に1か所の検出部と1か所のリファランス部を設けた構成であったが、本発明の検知用基板はこれに限るものではない。1つのバイオチップ上に検出部およびリファランス部を複数個所設けた構成にしてもよい。
図10は、炭素基板表面に検出部およびリファランス部が複数箇所設けられたバイオチップの例を示す図である。
図10に示す実施形態のバイオチップ50は、複数の検出部51と複数のリファランス部52が交互に設けられたストライプ状の構造を有している。
図11は、ストライプ状の構造を有するバイオチップ50の製造方法を示す図であり、側面図(A)と上面図(B)が示されている。
図11に示すように、炭素基板10の一方の面に有機アミノ分子による単分子膜14を設けておき、この単分子膜14面上に長方形形状の開口46がほぼ等間隔に複数設けられた金属製のマスク45を設置して、当該マスク45の設置面側に、Xeエキシマランプ42から放出される中心波長172nmのVUV光41を照射する。
VUV光41の照射条件としては、単分子膜14上の放射照度は例えば20mW/cmであり、照射時間は例えば60分間である。その結果、単分子膜領域とリファランス部がストライプ状に構築されたバイオチップの基板が得られる。当該基板の単分子膜部分にプローブ分子を固定することにより、図10に示すような、検出部51とリファランス部52とがストライプ状に構築されたバイオチップ50が得られる。
当然ながら、検出部51とリファランス部52の数や形状は、図10に示すようなストライプ状に限定されるものではない。検出部51とリファランス部52の形状や個数は、蛍光読み取り機の仕様や、検出したいターゲット分子の特性等に応じて自由に設定することが可能である。
図12は、図10に示すようなストライプ構造を有するバイオチップ50を用いたターゲット分子の計測例を示す図である。
ここでは6つの検出部51a,51b,51c,51d,51e,51fを有するバイオチップ50が用いられ、各検出部51a,……,51fには、蛍光標識BODIPYを含むプローブ分子(蛍光標識分子)が固定されている。また、ここに示す計測例では、各検出部51a,……,51fとターゲット分子との反応時間が検出部毎に異なるように反応させる。
また、ターゲット分子を含有した試薬溶液23は、例えば、リン酸緩衝溶液を用いた亜鉛の標準溶液である。
図12の(A)に示すように、まずバイオチップ50の第1の検出部51aのみを試薬溶液23中に時間T1の間浸漬する。この結果、第1の検出部51aの蛍光標識分子は、時間T1の間、試薬溶液23中のターゲットと反応する。
次に、図12の(B)に示すように、バイオチップ50の第1の検出部51aおよび第2の検出部51bを試薬溶液23中に時間T2の間浸漬する。第1の検出部51aの蛍光標識分子は時間(T1+T2)の間、第2の検出部51bの蛍光標識分子は時間T2の間、試薬溶液23中のターゲットと反応する。
次いで、図12の(C)に示すように、バイオチップ50の第1の検出部51a、第2の検出部51b、および第3の検出部51cを試薬溶液23中に時間T3の間浸漬する。第1の検出部51aの蛍光標識分子は時間(T1+T2+T3)の間、第2の検出部51bの蛍光標識分子は時間(T2+T3)の間、第3の検出部51cの蛍光標識分子は時間T3の間、試薬溶液23中のターゲットと反応する。
次いで、図12の(D)に示すように、バイオチップの第1の検出部51a、第2の検出部51b、第3の検出部51c、および第4の検出部51dを試薬溶液23中に時間T4の間浸漬する。第1の検出部51aの蛍光標識分子は時間(T1+T2+T3+T4)の間、第2の検出部51bの蛍光標識分子は時間(T2+T3+T4)の間、第3の検出部51cの蛍光標識分子は時間(T3+T4)の間、第4の検出部51dの蛍光標識分子は時間T4の間、試薬溶液23中のターゲットと反応する。
次いで、図12の(E)に示すように、バイオチップの第1の検出部51a、第2の検出部51b、第3の検出部51c、第4の検出部51d、および第5の検出部51eを試薬溶液23中に時間T5の間浸漬する。第1の検出部51aの蛍光標識分子は時間(T1+T2+T3+T4+T5)の間、第2の検出部51bの蛍光標識分子は時間(T2+T3+T4+T5)の間、第3の検出部51cの蛍光標識分子は時間(T3+T4+T5)の間、第4の検出部51dの蛍光標識分子は時間(T4+T5)の間、第5の検出部51eの蛍光標識分子は時間T5の間、試薬溶液23中のターゲットと反応する。ここで、反応プロセスを終了して、バイオチップを試薬溶液23から引き揚げれば、第6の検出部51fは未反応の参照領域とすることができる。
上記したような方法により、各検出部51a,……,51f毎に、上記ターゲットと検出部との反応時間を相違させることができる。このように反応されたバイオチップ50を用いれば、図7〜図9で説明したような測定を、蛍光測定工程とバイオチップの試薬溶液への浸漬工程を繰り返すことなく実施することができる。すなわち、浸漬工程については図12に示すような手順で集中的に実行する事ができる。また、蛍光測定工程については、図7には不図示の遮光手段を用いて各検出部51a,……,51fとその隣のリファランス部52との各ペアを順次に選びながら集中的に実行する事ができる。このような集中的な実行により、測定に要する合計時間を短縮することができる。
このような時間短縮は、バイオチップ50において、検出部51a,……,51fとリファランス部52とがストライプ状に構成されているので実現できるものである。
なお、上記したストライプ状に構成されたバイオチップ50は、ターゲットと蛍光標識分子との反応時間が各検出部において相違するような測定に用いられているが、ストライプ状に構成されたバイオチップ50の用途はこれに限るものではない。例えば、各検出部に互いに相違する蛍光標識分子を固定し、各領域において、互いに相違するターゲット分子との反応を定量するようにしてもよい。
また、上記実施形態の説明では、炭素基板を有するバイオチップが好適な例として示されているが、本発明の検知用基板は、炭素以外の材料からなる基板を有するものであってもよい。また、炭素基板である場合でも、基板の表面がカーボンナノチューブやフラーレン、グラフェンシートなどといった炭素材料で形成されていればよい。
また、上記実施形態の説明では、好適な例として、蛍光標識を用いるバイオチップが示されているが、本発明の検知用基板は、蛍光標識以外の標識を用いるものであってもよいし、蛍光でなくて反射光などの測定でターゲットとの反応を計測するものであってもよい。
また、上記実施形態の説明では、好適な例として、単分子膜によってプローブ分子が表面に固定されたバイオチップが示されているが、本発明にいうプローブ分子は、単分子膜以外の手段でプローブ分子が表面に固定されたものであってもよい。
1…バイオチップ、 10…炭素基板、 11…プローブ分子、 12…検出部、
13…リファランス部、 20…ターゲット分子

Claims (6)

  1. 基板本体と、
    測定光の照射に対する光学的反応がターゲット分子との結合の有無で変化するプローブ分子が前記基板本体の表面に固定されている検出部と、
    前記検出部と並んでいて前記表面が露出した参照部と、
    を備えたことを特徴とする検出用基板。
  2. 前記表面が炭素材料からなることを特徴とする請求項1記載の検出用基板。
  3. 前記プローブ分子が、前記表面上に形成された有機分子の単分子膜によって前記表面に固定されていることを特徴とする請求項1または2記載の検出用基板。
  4. 前記プローブ分子および前記ターゲット分子のいずれか一方が、蛍光標識を有する蛍光標識分子であって、前記プローブ分子と前記ターゲット分子との結合の有無で蛍光の発光量が変化することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の検出用基板。
  5. 前記検出部を前記表面上の複数箇所に備え、
    前記複数箇所それぞれの検出部が前記参照部と並んでいることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の検出用基板。
  6. 前記検出部と前記参照部とを交互に縞状に備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の検出用基板。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2022163124A1 (ja) * 2021-01-29 2022-08-04 東洋濾紙株式会社 イムノクロマトアッセイ用メンブレン、イムノクロマトアッセイ用テストストリップ、および検査方法

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