(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について、図1を用いて説明する。図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の全体構成を説明するための図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波プローブ11と、入力装置12と、モニタ13と、装置本体100とを有する。
超音波プローブ11は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体100が有する送受信部110から供給される駆動信号に基づき超音波を発生し、さらに、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ11は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材などを有する。
超音波プローブ11から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ11が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
なお、本実施形態は、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブである超音波プローブ11により、被検体Pを2次元でスキャンする場合であっても、1次元超音波プローブの複数の圧電振動子を機械的に揺動する超音波プローブ11や複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブである超音波プローブ11により、被検体Pを3次元でスキャンする場合であっても、適用可能である。
入力装置12は、トラックボール、スイッチ、ボタン、タッチコマンドスクリーンなどを有し、超音波診断装置1の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体100に対して受け付けた各種設定要求を転送する。例えば、入力装置12は、超音波画像に対する計測操作を実行するための計測項目の選択操作などを受付けて装置本体100に転送する。ここで、計測項目とは、画像に描出された関心領域に係る任意の値を計測するための項目であり、モニタ13にGUI(Graphical User Interface)として表示され、入力装置12を介した操作で選択される。
モニタ13は、超音波診断装置1の操作者が入力装置12を用いて各種設定要求を入力するためのGUIを表示したり、装置本体100において生成された超音波画像などを表示したりする。例えば、モニタ13は、計測操作を実行するための計測項目のGUIを表示する。
装置本体100は、超音波プローブ11が受信した反射波に基づいて超音波画像を生成する装置であり、図1に示すように、送受信部110と、Bモード処理部120と、ドプラ処理部130と、画像生成部140と、画像メモリ150と、制御部160と、内部記憶部170とを有する。
送受信部110は、トリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路などを有し、超音波プローブ11に駆動信号を供給する。パルサ回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、遅延回路は、超音波プローブ11から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルサ回路が発生する各レートパルスに対し与える。また、トリガ発生回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ11に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向を任意に調整する。
また、送受信部110は、アンプ回路、A/D変換器、加算器などを有し、超音波プローブ11が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行ない、A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換して受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、加算器は、A/D変換器によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
このように、送受信部110は、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。なお、送受信部110は、後述する制御部160の制御により、遅延情報、送信周波数、送信駆動電圧、開口素子数などを瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更においては、瞬時に値を切り替えることが可能であるリニアアンプ型の発振回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。また、送受信部110は、1フレームもしくはレートごとに、異なる波形を送信して受信することも可能である。
Bモード処理部120は、送受信部110からゲイン補正処理、A/D変換処理および加算処理が行なわれた処理済み反射波信号である反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理などを行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
ここで、Bモード処理部120は、検波周波数を変化させることで、映像化する周波数帯域を変えることができる。また、Bモード処理部120は、1つの受信データに対して、2つの検波周波数による検波処理を並列して行うことができる。
このBモード処理部120の機能を用いることにより、超音波造影剤が注入された被検体Pの関心領域における1つの受信データから、関心領域を流動する超音波造影剤(微小気泡、バブル)を反射源とする反射波データと、関心領域に存在する組織を反射源とする反射波データとを分離することができ、後述する画像生成部140は、流動するバブルを高感度に映像化した造影像および形態を観察するために組織を映像化した組織像を生成することができる。
ドプラ処理部130は、送受信部110から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワーなどの移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
画像生成部140は、Bモード処理部120が生成したBモードデータや、ドプラ処理部130が生成したドプラデータから、超音波画像を生成する。具体的には、画像生成部140は、超音波スキャンの走査線信号列を、テレビなどに代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)することで、Bモードデータやドプラデータから表示用の超音波画像(Bモード画像やドプラ画像)を生成する。
画像メモリ150は、画像生成部140によって生成された超音波画像の画像データを記憶する。また、画像メモリ150は、後述する画像生成部140による処理結果を記憶する。さらに、画像メモリ150は、送受信部110を経た直後の出力信号(RF:Radio Frequency)や画像の輝度信号、種々の生データ、ネットワークを介して取得した画像データなどを必要に応じて記憶する。画像メモリ150が記憶する画像データのデータ形式は、後述する制御部160によりモニタ13に表示されるビデオフォーマット変換後のデータ形式であっても、Bモード処理部120及びドプラ処理部130によって生成されたRawデータである座標変換前のデータ形式でもよい。
制御部160は、超音波診断装置1における処理全体を制御する。具体的には、制御部160は、入力装置12を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部170から読込んだ各種制御プログラムおよび各種設定情報に基づき、送受信部110、Bモード処理部120、ドプラ処理部130および画像生成部140の処理を制御したり、画像メモリ150が記憶する超音波画像などをモニタ13にて表示するように制御したりする。また、制御部160は、超音波画像に対する計測処理を実行するための計測項目をモニタ13に表示するように制御する。
内部記憶部170は、超音波送受信、画像処理および表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見など)や、診断プロトコルや、診断部位ごとに仕分けられた計測項目などの各種データを記憶する。また、内部記憶部170は、モニタ13における計測項目の表示状態を切り替えるための各種情報を記憶する。なお、内部記憶部170は、必要に応じて、画像メモリ150が記憶する画像の保管などにも使用される。
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、以下、詳細に説明する制御部160の制御により、計測時の集中力の低下を抑止させることが可能となるように構成されている。
ここで、まず、計測時に用いられる計測項目の例について説明し、計測時の集中力が低下する場合について説明する。上述したように、超音波診断装置における計測項目は、単純な計測を行なう計測項目と、複雑な計測を行なう計測項目とがある。図2は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1が備える計測機能に含まれる計測項目の一例を説明するための図である。例えば、図2の(A)に示すように、超音波診断装置1が備える計測機能は、「Dist:距離」、「Area:面積」、「Volume:体積」、「Angle:角度」及び「Velocity:流速」などの基本計測項目を含む。なお、計測機能「Velocity:流速」は、例えば、ドプラ画像に描出された心臓弁などに設定された関心領域における血流の平均速度の計測に用いられる。また、ドプラ画像を用いて行なわれる計測としては、血流速度の計測の他に、血流の分散の計測、パワーの計測などがある。
これらの基本計測項目が利用される場合、操作者は、一般的に1つの計測項目を連続して使い続ける場合が多い。例えば、操作者は、入力装置12を介してモニタ13に表示された「Dist」を選択し、計測対象となる超音波画像に描出された関心領域について各種距離の計測操作を実行する。基本計測項目においては、その他の基本計測項目においても同様に、1つの計測項目が連続して使い続けられる場合が多い。
ここで、超音波診断装置1においては、より集中して診断が可能となるように、超音波画像が観察しやすいようにモニタ13の表示状態が設定されている。例えば、モニタ13における各種情報のレイアウトや、画面の輝度などが超音波画像の観察の邪魔にならないように設定される。これにより、操作者は、超音波画像の観察に集中することができる。従って、上記した基本計測項目のように、1度選択されたのち操作されることのない計測項目は、モニタ13の画面上で非表示になったほうが操作者をより超音波画像に集中させることができる。
一方、超音波診断装置1が備える計測機能は、例えば、図2の(B)に示すように、「4CH Diast」、「4CH Syst」、「2CH Diast」及び「2CH Syst」などの複合計測項目を含む。ここで、図2の(B)に示す計測項目は、心臓の左心室の容積を計測するための計測項目であり、「4CH Diast」及び「4CH Syst」は、例えば、心尖部四腔断面などの四腔が描出された超音波画像を用いて、心臓の拡張期(Diast:diastole)の左心室の容積と、収縮期(Syst:systole)の左心室の容積とを計測する際にそれぞれ選択される計測項目である。また、「2CH Diast」及び「2CH Syst」は、例えば、心尖部二腔断面などの二腔が描出された超音波画像を用いて、心臓の拡張期及び収縮期の左心室の容積を計測する際にそれぞれ選択される計測項目である。これら複合計測項目は、各計測項目の計測結果から1つの診断を行なう場合に用いられる。例えば、四腔が描出された超音波画像を用いた心臓の拡張期の左心室の容積の計測結果と、収縮期の左心室の容積の計測結果とを用いて心臓の機能の状態などが診断される。
図3は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の複合計測項目を用いた計測操作の一例を説明するための図である。図3においては、四腔が描出された超音波画像を用いた心臓の機能の状態を診断する場合の例について示す。例えば、操作者は、図3の(A)に示すように、「LV:Left Ventricle(左心室)」、「LA:Left Atrium(左心房)」、「RV:Right Ventricle(右心室)」、「RA:Right Atrium(右心房)」が描出された超音波画像(心尖部四腔画像)を経時的に収集する。
そして、操作者は、収集した心尖部四腔画像群のなかから、心臓の拡張期の心尖部四腔画像を特定して、図3の(A)に示すように、計測項目「4CH Diast」を選択する。そして、操作者は、図3の(B)に示すように、「LV」の内壁の一点を選択することで点21を表示させ、トラックボールを操作して「LV」の内壁をトレースする。例えば、操作者は、図3の(C)に示すように、トラックボールを操作して点21を移動させることで、「LV」の内壁22をトレースする。そして、操作者は内壁22の略中心に中心線23を設定する。これにより、超音波診断装置1は、拡張期のLVの容積を算出する。
次に操作者は、収集した心尖部四腔画像群のなかから、心臓の収縮期の心尖部四腔画像を特定して、計測項目のなかから計測項目「4CH Syst」を選択し、図3の(B)及び(C)と同様の操作を実行する。そして、操作者は、拡張期の計測結果と収縮期の計測結果との比から心臓の機能の状態などを診断する。ここで、上述した心臓の機能の状態の診断では、心尖部四腔画像だけではなく、二腔画像をさらに用いられる場合もある。また、患者によっては心尖部四腔画像を収集しにくい場合があり、二腔画像のみが用いられる場合もある。このように、複合計測項目は、1つの診断において何度も選択しなおされる場合がある。すなわち、複合計測項目は、基本計測項目のように、1度選択されたのちに非表示になると、再表示させる操作をしなくてはならなくなるため、操作者の集中力を低下させてしまう場合がある。従って、複合計測項目は、1度選択された後も継続して表示されている方が、操作者をより超音波画像に集中させることができる。
上述したように、超音波診断装置1における計測項目は、基本計測項目と複合計測項目とがあり、それぞれ利用される状況が異なり、操作者によって望まれる選択後の表示状態がそれぞれ異なる。しかしながら、従来の超音波診断装置においては、表示・非表示のどちらか一方しかできず、計測時に操作者の集中力を低下させる場合があった。
そこで、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、後述する制御部160の制御によって、計測項目の種類や、診断状況に応じて、計測項目の表示・非表示を切り替えることにより、計測時の操作者の集中力の低下を抑止する。以下、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の制御部160の詳細な制御について説明する。
図4は、第1の実施形態に係る制御部160の構成の一例を示す図である。図4に示すように、制御部160は、計測項目表示制御部161と、計測項目表示状態制御部162とを有する。
計測項目表示制御部161は、超音波画像に対する計測操作を実行するための計測項目をモニタ13にて表示させるように制御する。具体的には、計測項目表示制御部161は、入力装置12を介して操作者から受け付けた診断項目に応じた計測項目を内部記憶部170から読み出し、モニタ13にて表示させる。例えば、計測項目表示制御部161は、診断部位に応じた計測項目を内部記憶部170から読み出し、モニタ13にて表示させる。
一例を挙げると、計測項目表示制御部161は、診断部位が単純な計測が実行される腹部などの場合、図2の(A)に示すように、モニタ13に単純計測項目を表示させる。一方、診断部位が複雑な計測が行なわれる心臓などの場合、計測項目表示制御部161は、図2の(B)に示すように、モニタ13に複合計測項目を表示させる。ここで、診断部位に応じて表示される計測項目は、予め診断部位ごとに対応付けられて内部記憶部170に記憶される。
計測項目表示状態制御部162は、モニタ13にて表示される計測項目の種類及び超音波画像を用いた診断の状況のうち少なくとも一方に基づいて、計測項目が選択された後に、モニタ13にて計測項目を表示状態のまま維持するか、又は、非表示状態に切り替えるかを制御する。具体的には、計測項目表示状態制御部162は、計測項目の種類として、距離、面積、体積、角度、流速のうち少なくとも1つからなる基本計測項目と、基本計測項目を組み合わせた複合計測項目とを用い、計測項目が選択された後に、選択された計測項目が基本計測項目と複合計測項目のどちらであるかに基づいて、モニタ13にて計測項目を表示状態にするか、又は、非表示状態にするかを制御する。
例えば、計測項目表示状態制御部162は、計測項目の種類が基本計測項目である場合に、計測項目が選択された後、モニタ13にて計測項目を非表示状態に切り替えるように制御し、計測項目の種類が複合計測項目である場合に、計測項目が選択された後、モニタ13にて計測項目の表示状態を維持するように制御する。図5は、第1の実施形態に係る計測項目表示状態制御部162による制御の一例を示す図である。
例えば、図5の(A)の左側の図に示すように、基本計測項目である「Dist」が選択された場合に、計測項目表示状態制御部162は、図5の(A)の右側の図に示すように、計測項目を非表示にするように制御する。これにより、例えば、操作者は距離の計測を集中して行なうことができる。ここで、計測項目を非表示にするための制御は、計測項目表示制御部161を制御して、計測項目を表示させないように制御してもよく、或いは、計測項目を隠すように計測項目の表示領域上に表示領域と同一の大きさの面を重畳表示させる場合であってもよい。なお、図5の(A)では、計測項目の表示領域をグレーで示すことで、計測項目の非表示を示しているが、実際には、超音波画像の観察の邪魔にならないような表示状態となる。
また、例えば、図5の(B)の左側の図に示すように、複合計測項目である「4CH Diast」が選択された場合に、計測項目表示状態制御部162は、図5の(B)の右側の図に示すように、計測項目を継続して表示するように制御する。これにより、例えば、操作者は、LVをトレースして、容量を計測した後に、すぐに「4CH Syst」を選択することができ、操作者は複合計測項目を用いた計測を集中して行なうことができる。
なお、各計測項目が基本計測項目であるか、或いは、複合計測項目であるかは、予め設定され、内部記憶部170に記憶される。すなわち、計測項目表示状態制御部162は、内部記憶部170に記憶された情報に基づいて、選択された計測項目が基本計測項目であるか、或いは、複合計測項目であるかを判定する。
ここで、計測項目表示状態制御部162は、複合計測項目の表示を継続する場合の表示状態を変化させることも可能である。図6は、第1の実施形態に係る計測項目表示状態制御部162による複合計測項目の表示状態制御の一例を示す図である。例えば、図6の左側の図に示すように、複合計測項目である「4CH Diast」が選択された場合に、計測項目表示状態制御部162は、図6の右側の図に示すように、計測項目が選択された後に、計測項目の表示領域の輝度を低下させるように制御する。これにより、計測項目の表示を継続させつつ、より目立たないようにすることができ、操作者の集中力の低下をより抑止することができる。
また、計測項目表示状態制御部162は、計測項目を非表示にしている場合、或いは、計測項目の表示領域の輝度を低下させている場合に、カーソルの位置に応じて、計測項目を再表示させたり、輝度を上げたりするように制御することも可能である。図7は、第1の実施形態に係る計測項目表示状態制御部162による制御の一例を示す図である。
例えば、図7の(A)の左側の図に示すように、計測項目が非表示となるように制御している状態で、図7の(A)の右側の図に示すように、カーソルの位置が計測項目の表示領域に移動した場合に、計測項目表示状態制御部162は、図7の(A)の右側の図に示すように、計測項目を再表示させるように制御する。
また、図7の(B)の左側の図に示すように、計測項目の表示領域の輝度を低下させるように制御している状態で、図7の(B)の右側の図に示すように、カーソルの位置が計測項目の表示領域に移動した場合に、計測項目表示状態制御部162は、図7の(B)の右側の図に示すように、計測項目の表示領域の輝度を上げるように制御する。これにより、計測項目の再選択時に計測項目を自動で見やすい状態にすることができる。なお、計測項目を再表示したり、計測項目の表示領域の輝度を上げたりする際のカーソルの位置は、任意に設定することができる。
次に、図8を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の処理について説明する。図8は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1による処理の手順を示すフローチャートである。図8に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1においては、計測項目の表示指示を受け付けると(ステップS101肯定)、計測項目表示制御部161は、モニタ13の表示領域に計測項目を表示するように制御する(ステップS102)。なお、計測項目の表示指示を受け付けるまで、計測項目表示制御部161は、待機状態である(ステップS101否定)。
そして、入力装置12を介して計測項目が選択されると(ステップS103肯定)、計測項目表示状態制御部162は、選択された計測項目が複合計測項目であるか否かを判定する(ステップS104)。ここで、選択された計測項目が複合計測項目である場合には(ステップS104肯定)、計測項目表示状態制御部162は、計測項目を継続して表示させる、又は、計測項目の表示領域の輝度を低下させるように制御する(ステップS105)。
一方、選択された計測項目が複合計測項目ではない場合(選択された計測項目が基本計測項目である場合)には(ステップS104否定)、計測項目表示状態制御手段は、計測項目を隠すように制御する(ステップS106)。その後、計測項目表示状態制御部162は、計測項目の表示領域にカーソルが入ったか否かを判定する(ステップS107)。ここで、計測項目の表示領域にカーソルが入った場合には(ステップS107肯定)、計測項目表示状態制御部162は、ステップS102に戻って、計測項目を表示するように制御する。
一方、計測項目の表示領域にカーソルが入っていない場合には(ステップS107否定)、計測項目表示状態制御部162は、計測終了の指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS108)。ここで、計測終了の指示を受け付けていない場合には(ステップS108否定)、計測項目表示状態制御部162は、ステップS107に戻って、計測項目の表示領域にカーソルが入ったか否かを判定する。一方、計測終了の指示を受け付けた場合には(ステップS108肯定)、計測項目表示状態制御部162は処理を終了する。
上述したように、第1の実施形態によれば、計測項目表示制御部161は、超音波画像に対する計測操作を実行するための計測項目をモニタ13にて表示させるように制御する。計測項目表示状態制御部162は、モニタ13にて表示される計測項目の種類及び超音波画像を用いた診断の状況のうち少なくとも一方に基づいて、計測項目が選択された後に、モニタ13にて計測項目を表示状態のまま維持するか、又は、非表示状態に切り替えるかを制御する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、計測項目の種類に応じて計測項目の表示・非表示を切り替えることができ、計測時の操作者の集中力の低下を抑止することを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、計測項目表示状態制御部162は、計測項目の種類として、距離、面積、体積、角度、流速のうち少なくとも1つからなる基本計測項目と、基本計測項目を組み合わせた複合計測項目とを用い、計測項目が選択された後に、選択された計測項目が基本計測項目と複合計測項目のどちらであるかに基づいて、モニタ13にて計測項目を表示状態にするか、又は、非表示状態にするかを制御する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、基本計測項目と、複合計測項目とで計測項目の表示・非表示を切り替えることを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、計測項目表示状態制御部162は、計測項目の種類が基本計測項目である場合に、計測項目が選択された後、モニタ13にて計測項目を非表示状態に切り替えるように制御し、計測項目の種類が複合計測項目である場合に、計測項目が選択された後、モニタ13にて計測項目の表示状態を維持するように制御する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、基本計測項目と複合計測項目とを備える超音波診断装置1による計測時に、操作者が所望するように計測項目の表示・非表示を切り替えることを可能にする。
また、第1の実施形態によれば、計測項目表示状態制御部162は、計測項目の種類が複合計測項目である場合、計測項目が選択された後に、計測項目の表示領域の輝度を低下させるように制御する。従って、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、複合計測項目の場合であっても、計測項目を表示しつつ、極力目立たないように制御することができ、操作者の集中力の低下をより抑止することを可能にする。
(第2の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上述した第1の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
上述した第1の実施形態では、計測項目の種類に応じて、計測項目の表示・非表示を制御する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、診断状況に応じて表示・非表示を制御する場合であってもよい。かかる場合には、例えば、計測項目表示状態制御部162は、超音波画像を用いた診断の状況として、診断部位、モニタ13にて表示された超音波画像がフリーズ状態であるか否か、又は、超音波画像が印刷されたか否かに基づいて、モニタ13にて計測項目を表示状態にするか、又は、非表示状態にするかを制御する。
例えば、診断部位に応じて、計測項目の表示・非表示を制御する場合、計測項目表示状態制御部162は、予め診断部位ごとに対応付けられた情報に基づいて、表示・非表示を制御する。一例を挙げると、超音波診断装置1を用いて診断を行なう際に、最初に選択されるアプリケーションごとに予め計測項目の表示・非表示を対応付けて内部記憶部170に記憶させる。計測項目表示状態制御部162は、操作者によってアプリケーションが選択された場合に、対応する情報を内部記憶部170から読み出して制御する。
また、例えば、モニタ13にて表示された超音波画像がフリーズ状態であるか否かによって計測項目の表示・非表示を制御する場合、計測項目表示状態制御部162は、超音波画像がフリーズ状態にされると、計測項目を表示させるように制御し、超音波画像がライブ状態であると、計測項目を非表示にするように制御する。すなわち、計測が行なわれる場合超音波画像がフリーズ状態にされるため、計測項目表示状態制御部162は、計測項目を自動で表示状態にすることで、操作者が容易に計測を行なえるようにする。一方、超音波画像がライブ状態の場合は、超音波画像を集中して観察させるために、計測項目表示状態制御部162は、計測項目を非表示となるように制御する。
また、例えば、超音波画像が印刷されたか否かに基づいて計測項目の表示・非表示を制御する場合、計測項目表示状態制御部162は、印刷が開始されると、計測項目が非表示となるように制御する。すなわち、一般的に、診断が終了する際に超音波画像が印刷されることが多いことから、計測項目表示状態制御部162は、印刷の開始を診断の終了として、計測項目が非表示となるように制御する。一例を挙げると、複合計測項目を表示させた状態で、印刷が開始された場合に、計測項目表示状態制御部162は、表示されている複合計測項目が非表示となるように制御する。
なお、上述した例は、あくまでも一例であって、診断状況に基づく計測項目の表示・非表示の制御の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、診断状況に基づく計測項目の表示・非表示の制御は、操作者によって任意に設定することができる。例えば、計測項目が選択されたのち、一定時間が経過した際に、計測項目が非表示となるように制御する場合であってもよい。また、例えば、複合計測項目が表示されている状態で、モード遷移が実行された場合に、表示されている複合計測項目が非表示となるように制御する場合であってもよい。
上述したように、第2の実施形態に係る超音波診断装置1では、計測項目表示状態制御部162は、超音波画像を用いた診断の状況として、診断部位、モニタ13にて表示された超音波画像がフリーズ状態であるか否か、又は、超音波画像が印刷されたか否かに基づいて、モニタ13にて計測項目を表示状態にするか、又は、非表示状態にするかを制御する。従って、第2の実施形態に係る超音波診断装置1は、診断の状況に応じて計測項目の表示・非表示を制御させることができ、操作者の所望する計測項目の表示・非表示により柔軟に対応することを可能にする。
上述した第1の実施形態では、単一の画像が表示されている状態で適用する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、過去の画像と現時点の画像とを表示させた状態で適用する場合であってもよい。かかる場合には、計測項目表示状態制御部162は、例えば、操作者が注目している画像に応じて計測項目の表示・非表示を制御する場合であってもよい。
例えば、計測項目表示状態制御部162は、モニタ13に撮像された超音波画像をリアルタイムに表示する第1の表示モードと、過去に撮像された超音波画像を表示する第2の表示モードとを備え、第1の表示モードにおいて計測項目が選択された場合に、モニタ13にて計測項目を非表示状態に切り替えるように制御し、第2の表示モードにおいて選択項目が選択された場合に、モニタ13にて計測項目の表示状態を維持するように制御する。図9は、第2の実施形態に係る計測項目表示状態制御部162による処理の一例を説明するための図である。ここで、図9においては、複合計測項目が表示されている場合について示す。
例えば、図9の(A)に示すように現在の超音波画像と、同一患者の過去の超音波画像とが並列して表示されている状態で、図9の(B)に示すように、カーソルの位置が過去の超音波画像の表示領域にある場合、計測項目表示状態制御部162は、図9の(C)に示すように、計測項目を継続して表示させるように制御する。すなわち、計測項目表示状態制御部162は、カーソルの位置が過去の超音波画像の表示領域にあることで、操作者の焦点が過去の超音波画像に向いていると判定し、計測が実行される可能性があることから、計測項目を継続して表示させるように制御する。
一方、図9の(A)に示すように現在の超音波画像と、同一患者の過去の超音波画像とが並列して表示されている状態で、図9の(D)に示すように、カーソルの位置が現在の超音波画像の表示領域にある場合、計測項目表示状態制御部162は、図9の(E)に示すように、計測項目が非表示となるように制御する。すなわち、計測項目表示状態制御部162は、カーソルの位置が現在の超音波画像の表示領域にあることで、操作者の焦点が現在の超音波画像に向いていると判定し、操作者が超音波画像の観察に集中しており、計測が実行される可能性が低いことから、計測項目が非表示となるように制御する。
なお、図9に示す例では、複合計測項目を一例に挙げて説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、基本計測項目の表示・非表示の制御を、過去と現在の超音波画像に対する操作者の観察状態で行なう場合であってもよい。また、図9では、操作者がどちらの画像を観察しているかをカーソルの位置で判定する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、操作者の視線により判定する場合であってもよい。かかる場合には、例えば、外部に取り付けたカメラにより、操作者の視線の情報を収集し、収集した情報に基づいて、操作者がどちらの画像を観察しているかを判定する場合であってもよい。
上述した第1の実施形態では、複合計測項目の例として左心室の容積を計測する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、心臓の血流量や、心筋ごとの機能の状態を診断するための複合計測項目が用いられる場合であってもよい。また、複合計測項目は操作者によって自由に組み合わせて設定することができ、それら複合計測項目に対しても上記と同様の制御を行なうことが可能である。かかる場合には、組み合わせて設定された複合計測項目を選択後に表示状態にするか、或いは、非表示状態にするかを操作者が自由に設定することが可能である。
以上説明したとおり、第1の実施形態及び第2の実施形態によれば、本実施形態の超音波診断装置は、計測時の集中力の低下を抑止させることを可能にする。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。