次に、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態のヒートポンプ式給湯装置100は、湯水を貯湯する貯湯タンク2を有したタンクユニット1と、前記貯湯タンク2内の湯水を加熱するヒートポンプユニット3と、を有している。
前記タンクユニット1は、冷媒を流通させる冷媒側の流路15aと水側の流路15bとを有し、高温高圧の冷媒と貯湯タンク2内の湯水とを熱交換する水冷媒熱交換器15と、加熱循環ポンプ19(給水ポンプ)と、を備えている。すなわち、前記水冷媒熱交換器15の前記水側の流路15aと前記貯湯タンク2とが湯水配管としての加熱往き管5及び加熱戻り管6によって環状に接続され、前記タンクユニット1内で湯水循環回路としての加熱循環回路4が形成されている。
加熱往き管5は、前記貯湯タンク2の下部に接続され、加熱戻り管6は、前記貯湯タンク2の上部に接続されている。前記加熱循環ポンプ19は、前記加熱往き管5の途中に設けられ、前記水側の流路15aを介し前記加熱往き管5からの湯水を前記加熱戻り管6へ流通させつつ、貯湯タンク2の湯水を循環させる。なお、前記加熱往き管5には、前記水冷媒熱交換器15の前記水側の流路15aに流入する入水温度T1(湯水の入口温度)を検出する入水温度センサ23が設けられ、前記加熱戻り管6には、前記水側の流路15aから前記貯湯タンク2に向かって流出する沸き上げ温度Tbを検出する沸き上げ温度センサ24が設けられている。
貯湯タンク2の側面には、貯湯タンク2内の湯の温度を検出する貯湯温度センサ12が上下にわたり複数設けられている。前記貯湯タンク2の下部にはまた、貯湯タンク2に水を給水する給水管7が接続され、前記貯湯タンク2の上部にはまた、貯湯されている高温水を出湯する出湯管8が接続され、給水管7からは給水バイパス管9が分岐して設けられている。さらに、出湯管8からの湯と給水バイパス管9からの水とを混合して給湯設定温度の湯とする混合弁10と、混合弁10で混合後の給湯温度を検出する給湯温度センサ11と、が設けられている。
前記ヒートポンプユニット3は、冷媒を圧縮する圧縮機14と、四方弁31と、前記水冷媒熱交換器15通過後の冷媒を減圧させる減圧器としての電子膨張弁16と、電子膨張弁16からの低温低圧の冷媒を蒸発させる蒸発器としての空気熱交換器17と、を備えている。そして、前記圧縮機14と、前記四方弁31と、前記圧縮機14から吐出された冷媒が流通する前記水冷媒熱交換器15の前記冷媒側の流路15bと、前記電子膨張弁16と、前記空気熱交換器17とが、長さL(この例では例えばLは約3[m]程度)の冷媒配管18で環状に接続されることにより、前記ヒートポンプユニット3と前記タンクユニット1とに亘る冷媒循環回路30が形成されている。
冷媒循環回路30内には、冷媒として、R32冷媒(あるいは、二酸化炭素冷媒でもよい)が用いられ、超臨界ヒートポンプサイクルを構成している。前記圧縮機14と前記水冷媒熱交換器15の冷媒側の流路15bとの間の冷媒配管18には、圧縮機14から吐出される冷媒の吐出温度Toutを検出する吐出温度センサ20が設けられ、前記冷媒側の流路15bと前記電子膨張弁16との間の冷媒配管18には、前記冷媒側の流路15bから流出し前記電子膨張弁16に向かう冷媒の流出温度T2(冷媒の出口温度)を検出する流出温度センサ21が設けられ、前記空気熱交換器17の空気入口側には、外気温度Tairを検出する外気温度センサ22が設けられ、前記空気熱交換器17と前記圧縮機14との間の冷媒配管18には、圧縮機14へ吸入される冷媒の冷媒吸入温度Tinを検出する吸入温度センサ32が設けられている。なお、前記水冷媒熱交換器15には、前記冷媒が前記冷媒側の流路15aにおいて凝縮する際の冷媒凝縮温度Tconを検出する凝縮温度センサ33が設けられている。
そして、前記タンクユニット1には、前記した各センサ23,24,12,11及び各センサ21,33の検出結果が入力される貯湯制御装置40が設けられている。同様に、前記ヒートポンプユニット3には、前記した各センサ20,22,32の検出結果が入力される加熱制御装置50が設けられている。制御手段としてのこれら加熱制御装置50及び貯湯制御装置40は、互いに通信可能に接続されており、前記各センサ23,24,12,11,20,22,32の検出結果に基づき、相互に連携しつつ、前記タンクユニット1及び前記ヒートポンプユニット3内の各機器の動作を制御する。
次に、前記ヒートポンプユニット3を制御して前記貯湯タンク2内の湯水を加熱するために、前記加熱制御装置50及び貯湯制御装置40が実行する制御の概略について説明する。
例えば深夜時間帯となると、貯湯制御装置40は、貯湯タンク2内の湯水が所定の目標沸き上げ温度Tbmになるように沸き上げ運転を開始するよう、加熱制御装置50へ沸き上げ開始命令を指示する。そして、加熱制御装置50は、沸き上げ運転において、前記外気温度センサ22で検出した外気温度Tairと前記目標沸き上げ温度Tbmとに応じて設定される運転周波数で動作するように前記圧縮機14を制御すると共に、前記貯湯制御装置40を介して、前記沸き上げ温度センサ24で検出する水冷媒熱交換器15で加熱された湯の前記沸き上げ温度Tbが前記目標沸き上げ温度Tbmになるように、前記加熱循環ポンプ19の回転数をフィードバック制御する。
上述のような加熱制御装置50による制御が行われながら、沸き上げ運転が進行していくと、貯湯タンク2の下部の水がヒートポンプユニット3へ循環され、貯湯タンク2の上部から、前記目標沸き上げ温度Tbmに加熱された湯が積層状態に貯湯される。貯湯タンク2内に必要な湯量が沸き上げられたことが前記貯湯温度センサ12で検出されるか、若しくは、前記入水温度センサ23で検出される前記入水温度T1が沸き上げし難い所定の高温度以上となるか、若しくは、電力料金単価の安い深夜時間帯が終了した時点で、貯湯制御装置40は沸き上げ運転を停止するべく加熱制御装置50に停止指示を出す。これに応じて、加熱制御装置50は圧縮機14と加熱循環ポンプ19の運転を停止し、沸き上げ運転が終了される。なお、この沸き上げ運転の終了直前の沸き終い時においては、貯湯タンク2内の湯層と水層との間の混合層の湯水が水冷媒熱交換器15の水側の流路15bへ流入する結果、前記入水温度T1が徐々に上昇していく。
以上の基本構成及び作動である本実施形態のヒートポンプ式給湯装置100において、前記水冷媒熱交換器15がタンクユニット1内に配置されていることから、前記加熱循環回路4はタンクユニット1内に設けられる一方、前記冷媒循環回路30はヒートポンプユニット3からタンクユニット1に亘って設けられる。この結果、冷媒循環回路30の前記冷媒配管18は、ヒートポンプユニット3とタンクユニット1との間をつなぐように、長さL(前述の例ではL≒3[m])に亘って延設されることとなる。この結果、ユーザが必要とする設置態様(例えばヒートポンプユニット3の設置箇所とタンクユニット1の設置箇所とを離したい場合)に応じて、冷媒配管18の長さL(以下適宜、単に「管路長L」という)が長・短さまざまに変わりうることとなる。
本願発明者等は、前記のように冷媒配管18の管路長Lが種々変化する場合に前記給湯装置100において生じうる技術的課題を検証するために、本実施形態に対する比較例として、前記沸き上げ運転時の前記ヒートポンプユニット3の制御として、前記圧縮機14からの冷媒の吐出温度を一定にする吐出温度一定制御を行い、各種温度・圧力値等を実測した。その結果を図4(a)により説明する。
図4(a)は、前記給湯装置100の前記管路長Lを約3[m]と想定し前記吐出温度一定制御が行われる前記比較例において、実際の前記管路長Lが約1.5[m]から約8[m]まで種々変化したときの、(前記沸き上げ運転が安定状態で前記入水温度T1が例えば約10[℃]で一定である場合の)各部の温度挙動(上段)、圧縮機14の吐出圧挙動(中段)、給湯装置100全体の加熱能力挙動(下段)の各実測値を示している。横軸には前記管路長L[m]の値をとり、縦軸には、温度[℃]、圧力[MPa]、加熱能力[kW]をそれぞれとって示している。
図4(a)上段に示すように、前記比較例では、圧縮機14からの前記冷媒吐出温度Toutは、前記吐出温度一定制御により管路長L≒1.5〜8[m]の間で約100[℃]でほぼ一定である。一方、前記管路長Lが長くなるほど冷媒配管18内の冷媒の密度が低下して冷媒循環量が低下し、水冷媒熱交換器15における冷媒側の流路15bから水側の流路15aへの伝熱量が小さくなることから、前記冷媒流出温度T2は、管路長Lの増大にしたがって増大していく。この例では、管路長L≒1.5[m]で前記冷媒流出温度T2は約11[℃]であり、管路長L≒3[m]では約12[℃]に増大する。その後、前記冷媒流出温度T2は、管路長Lが当該3[m]より長くなると急激に増大する挙動となり、管路長L≒8[m]では約40[℃]に達する。その一方で、前記吸入温度Tinは、管路長L≒1.5〜8[m]の間で約3[℃]でほぼ一定となる。
また、前記挙動の結果、図4(a)の中段に示すように、圧縮機14からの前記冷媒吐出圧Poutは、前記想定された管路長L(この例では3[m])よりも実際の管路長Lが長くなると標準値(この例では約3.85[MPa])よりも過小となる。一方、前記想定された管路長L(この例では3[m])よりも実際の管路長Lが短くなると前記冷媒吐出圧Poutは前記標準値よりも過大となり、前記冷媒配管18の耐久性や前記圧縮機14の信頼性が低下する可能性がある。
さらに、図4(a)の下段に示すように、給湯装置100全体の加熱能力Wについても、前記想定された管路長L(この例では3[m])よりも実際の管路長Lが短くなると標準値(この例では約4.2[kW])よりも過大となる。一方、前記想定された管路長L(この例では3[m])よりも実際の管路長Lが長くなると前記加熱能力Wは前記標準値よりも過小となり、前記ヒートポンプユニット3による加熱能力が低下し、タンクユニット1においていわゆる湯切れが生じる懸念がある。
これに対して、本実施形態では、加熱制御装置50が、(前記吐出温度一定制御ではなく)前記吐出温度センサ20の検出する冷媒吐出温度Toutと前記流出温度センサ21の検出する冷媒流出温度T2との温度差△Hが、所定の目標温度差△Hmとなるように、前記電子膨張弁16の開度を所定の周期でフィードバック制御する(=目標温度差制御)。具体的には、加熱制御装置50は、△H<△Hmの場合は、電子膨張弁16の開度を閉じる方向に制御し、△H>△Hmの場合は、電子膨張弁16の開度を開く方向に制御する(△H=△Hmの場合は、電子膨張弁16の開度を現状のまま維持する)。なお、前記目標沸き上げ温度Tbmは、過去の給湯量の最大値や平均値等の給湯実績から、翌日の給湯量の予測量を確保できるように貯湯制御装置40によって算出されるもので、例えば65℃から90℃の範囲で決定されるものである。
また、加熱制御装置50は、前記目標温度差△Hmを、前記外気温度センサ22が検出する外気温度Tairと、前記入水温度センサ23の検出する入水温度T1と、前記目標沸き上げ温度Tbmとに基づいて、次式により算出する。
△Hm=Tair×A+T1×B+Tbm×C+D ・・・ (1)
(ここで、A、Bは負の係数、Cは正の係数、Dは固定値である。)
前記所定の目標温度差△Hmは、前記式(1)より、外気温度Tairが高くなる程、値が小さくなっていき、入水温度T1が高くなる程、値が小さくなっていき、目標沸き上げ温度Tbmが高くなる程、値が大きくなる。すなわち、外気温度Tairや入水温度T1といった条件が刻々と変化する沸き上げ運転中において、前記式(1)により、その時その時でヒートポンプユニット3の運転効率が最大効率となる所定の目標温度差△Hmを確実に求めることができ、ヒートポンプユニット3を高効率で運転させることができる。なお、前記所定の目標温度差△Hmの算出は沸き上げ運転中常時行われるものであってもよく、電子膨張弁16の開度をフィードバック制御する所定の周期にあわせて行ってもよいものである。
以上のようにして、本実施形態では、前記温度差△Hが前記目標温度差△Hmとなるように前記電子膨張弁16の開度を制御する、前記目標温度差制御を行うことにより、沸き上げ中、運転効率が高効率となる比エンタルピー差を保ちながらヒートポンプユニット3を運転することができる。このことを図2により説明する。
図2において、本実施形態での前記沸き上げ運転における前記ヒートポンプサイクルの状態は、図2中の破線で示した安定時の状態から、図2中の実線で示した沸き終い時の状態となる。なお、図2中の一点鎖線は、前記目標温度差制御を行わない通常の場合(従来手法の場合)を比較のために示したものである。図2に示すように、本実施形態では、前記した目標温度差制御により、吐出温度センサ20の検出する前記冷媒吐出温度Toutと流出温度センサ21の検出する前記冷媒温度との温度差△Hが、前記目標温度差△Hmとなるように電子膨張弁16の開度が制御される。これにより、水冷媒熱交換器15の前記水側の流路15aに流入する湯水の前記入水温度T1が高くなっても、それに応じて最適な目標温度差△Hmを算出することができ、前記温度差△Hを、算出した最適な目標温度差△Hmに保つことができる。この結果、沸き上げ運転中、特に、水冷媒熱交換器15の水側の流路15aに流入する入水温度T1が高くなる前記沸き終い時においても、運転効率が最大となる比エンタルピー差を保ちながらヒートポンプユニット3を運転させることができるものである。
また、本実施形態では特に、前記電子膨張弁16の開度を制御して前記目標温度差制御を行うことにより、前記圧縮機14から吐出される冷媒吐出温度Tout及び前記水冷媒熱交換器15から流出する冷媒流出温度T2の双方が変化する結果、電子膨張弁16の開度変化に対する前記冷媒吐出温度Toutと前記冷媒流出温度T2との温度差の温度変化量が大きく、冷媒吐出温度Toutと冷媒流出温度T2との温度差を所定の目標温度差△Hmとするまでの制御速度が速く、すばやく高効率で運転させることができる。このことを図3により説明する。
図3は、前記沸き上げ運転中のある一定条件下での電子膨張弁16の開度に対する制御パラメータの関係を表す。横軸は電子膨張弁16の開度、縦軸は電子膨張弁16の開度制御によって制御される制御パラメータ(ここでは圧縮機14からの冷媒吐出温度Tout、水冷媒熱交換器15からの冷媒流出温度T2、及びそれらの温度差△H)である。
図3に示すように、本実施形態では、電子膨張弁16の開度を変化させると、圧縮機14から吐出される冷媒吐出温度Toutと水冷媒熱交換器15から流出する冷媒流出温度T2との双方が変化する。これにより、図3中の太実線で示されるように、電子膨張弁16の開度変化1パルス当たりの温度変化量が大きくなるので、冷媒吐出温度Toutと冷媒流出温度T2との温度差△Hを所定の目標温度差△Hmとするまでの制御速度を速くすることができ、制御性が良く、ヒートポンプユニット3をすばやく最大効率で運転させることができるものである。
そして、本実施形態においては、前記のような目標温度差制御を行うことにより、前記図4(a)において説明したような、前記冷媒吐出圧Pout及び前記加熱能力Wの過小・過大による弊害や懸念を解消することができる。このことを図4(b)により説明する。
すなわち、図4(b)は、予め前記管路長Lを前記の約3[m]と想定して上記△Hmを設定した(言い換えれば前記係数A,B,Cの値及び固定値Dの値を設定した)場合において、実際の管路長Lが約1[m]から約8[m]まで種々変化したときの、図4(a)と同様の、(前記沸き上げ運転が安定状態で前記入水温度T1が例えば約10[℃]で一定である場合の)各部の温度挙動(上段)、圧縮機14の吐出圧挙動(中段)、給湯装置100全体の加熱能力挙動(下段)について、本願発明者等が行ったシミュレーション結果を示している。
図4(b)上段に示すように、この例では、圧縮機14からの前記冷媒吐出温度Toutは、管路長L≒1[m]で約100[℃]であり、管路長Lの増大にしたがって緩やかに増大し、管路長L≒3[m]で約101[℃]、管路長L≒4.5[m]で約103[℃]、管路長L≒8[m]で約125[℃]となる。このとき、前記したようにして前記目標温度差制御が行われ、前記冷媒吐出温度Toutと前記水冷媒熱交換器15の冷媒側の流路15bからの前記冷媒流出温度T2との差△Hが、前記式(1)で算出される(すなわち管路長Lに関しては無関係な一定値となる)目標温度差△Hmとされる結果、前記冷媒流出温度T2についても、前記冷媒吐出温度Toutと略同一の増大挙動となる。すなわち、冷媒流出温度T2は、管路長L≒1[m]で約11[℃]であり、管路長Lの増大にしたがって緩やかに増大し、管路長L≒3[m]で約12[℃]、管路長L≒4.5[m]で約15[℃]、管路長L≒8[m]で約30[℃]となる。また、前記吸入温度Tinも同様の挙動となり、管路長L≒1[m]で約3[℃]であり、管路長Lの増大にしたがって緩やかに増大し、管路長L≒3[m]で約4.5[℃]、管路長L≒4.5[m]で約8[℃]、管路長L≒8[m]で約28[℃]となる。なお、図4(b)上段中には、前記水冷媒熱交換器15の前記冷媒側の流路15bにおける冷媒蒸発温度Teva(前記外気温度センサ22により検出される前記外気温度Taに略等しい)の挙動についても併せて示している(前記図4(a)も同様)。
このような挙動の結果、図4(b)の中段に示すように、前記冷媒吐出圧Poutは、実際の管路長Lが前記想定された管路長L(この例では3[m])よりも短い場合(以下適宜、単に「短管路長側」という)において値の増大が抑制されて図4(a)中段に示した値よりも標準値(この例では約3.85[MPa])に近づき、実際の管路長Lが前記想定された管路長L(この例では3[m])よりも長い場合(以下適宜、単に「長管路長側」という)においても値が底上げされて前記標準値に近づき、なるべく広い管路長Lの範囲にわたって標準値に近い値とすることができる。これにより、短管路長側において冷媒吐出圧Poutが高くなり過ぎるのを防止し、前記冷媒配管18の耐久性や前記圧縮機14の信頼性を確保することができるものである。
同様に、図4(b)の下段に示すように、給湯装置100全体の加熱能力Wについても、前記長管路長側において値が底上げされて前記標準値(この例では約4.2[kW]に近づき、なるべく広い管路長Lの範囲にわたって標準値に近い値とすることができる。これにより、短管路長側において前記吐出温度一定制御に比べて加熱能力Wが過大となるのを抑制し、効率の良い運転を行うことができる。また長管路長側においても、前記吐出温度一定制御に比べて前記水冷媒熱交換器15において熱を多く交換し効率のよい運転を行うことができるので、前記加熱能力Wが過小となるのを抑制し、タンクユニット1において前記湯切れが生じるのを防止することができるものである。
次に、以上の手法を実現するために、前記加熱制御装置50及び前記貯湯制御装置40(以下適宜、単に「制御装置50,40」という)が協働して実行する制御手順を図5のフローチャートにより説明する。図5において、まずステップS10で、制御装置50,40は、給湯装置100が運転開始状態となったか否かを判定する。具体的には、運転開始状態とは、例えば、設置業者等のユーザ(操作者)による適宜の給湯装置100の沸き上げ運転の開始操作がなされることで停止状態から起動される場合、若しくは、後述の待機状態から復帰して給湯装置100の運転が再び開始される場合(詳細は後述)、である。運転開始状態となるまではステップS10の判定が満たされず(S10:No)ループ待機し、運転開始状態となるとステップS10の判定が満たされ(S10:Yes)、ステップS20に移る。
ステップS20では、制御装置50,40は、前記外気温度センサ22が検出する外気温度Tairと、前記入水温度センサ23が検出する入水温度T1と、前記目標沸き上げ温度Tbmとに基づき、前記式(1)により、対応する前記目標温度差△Hmを決定する。その後、ステップS30に移る。
ステップS30では、制御装置50,40は、前記ステップS10により開始された沸き上げ運転が安定状態となったか否か、を判定する。具体的には、前記沸き上げ温度センサ24により検出される前記沸き上げ温度Tbが(前記運転開始よりも前に予め算出されている)前記目標沸き上げ温度Tbmに到達して30分以上が経過し、かつ、前記吐出温度センサ20が検出する冷媒吐出温度Toutと前記流出温度センサ21が検出する冷媒流出温度T2との前記温度差△Hが前記ステップS20で決定された前記目標温度差△Hmに到達して30分以上が経過したか否か、が判定される。このような安定状態になるまではステップS30の判定が満たされず(S30:No)ループ待機し、安定状態になったらステップS30の判定が満たされ(S30:Yes)、ステップS40に移る。
ステップS40では、制御装置50,40は、前記ステップS20で決定された前記目標温度差△Hmに基づき、前記吐出温度センサ20の検出する冷媒吐出温度Toutと前記流出温度センサ21の検出する冷媒流出温度T2との温度差△Hが当該目標温度差△Hmとなるように、前記電子膨張弁16の開度を制御する。その後、ステップS50に移る。
ステップS50では、制御装置50,40は、給湯装置100が運転終了状態となったか否かを判定する。すなわち、既に述べたように、(貯湯タンク2内に必要な湯量が沸き上げられたことが前記貯湯温度センサ12で検出されるか、若しくは、前記入水温度センサ23で検出される前記入水温度T1が沸き上げし難い所定の高温度以上となるか、若しくは、電力料金単価の安い深夜時間帯が終了したことで)前記貯湯制御装置40から停止指示が加熱制御装置50に出力された場合、給湯装置100の運転が自動停止され、待機状態となる(すなわち、いったん給湯装置100の運転が終了される)。ステップS50では、制御装置50,40は、給湯装置100がこの待機状態となったか否かを判定するものである。運転終了状態(すなわち待機状態)となっていない間はステップS50の判定が満たされず(S50:No)、前記ステップS20に戻り、前記したステップS20→ステップS30→ステップS40→・・の流れを繰り返す。
一方、ステップS50において、給湯装置100が運転終了状態(すなわち待機状態)となっていた場合は判定が満たされ(ステップS50:YES)、前記ステップS10に戻る。このときのステップS10における前記運転開始状態となったか否かの判定は、前記待機状態が解除されたか否かの判定となる。すなわち、前記のようにして待機状態となった後、再び、貯湯タンク2内の沸き上げ湯量が必要な量に対し足りなくなったことが前記貯湯温度センサ12で検出されたり、若しくは、前記入水温度センサ23で検出される前記入水温度T1が前記所定の高温度未満となったり、若しくは、次の日の深夜時間帯に突入したり、等になると、公知の制御により給湯装置100の運転が再び開始される。したがってこのときのステップS10では、制御装置50,40は、給湯装置100がこのようにして待機状態から復帰して運転再開されたか否かを判定するものである。運転が再開されてステップS10の判定が満たされると前記したステップS20→ステップS30→ステップS40→ステップS50・・の流れを繰り返す。
なお、図示を省略しているが、以上の各手順における任意のタイミングでユーザ(操作者)による適宜の運転終了操作がなされた場合には、このフローは終了され、給湯装置100が停止する。
以上説明したように、本実施形態のヒートポンプ式給湯装置100によれば、R32冷媒(あるいは、二酸化炭素冷媒でもよい)が用いられる冷媒配管18がヒートポンプユニット3とタンクユニット1との間をつなぐように管路長Lで延設される構成において、冷媒吐出温度Toutと冷媒流出温度T2との温度差△Hが所定の目標温度差△Hmとなるように前記電子膨張弁16の開度を制御する、目標温度差制御が行われる。これにより、図4(b)を用いて前述したように、前記冷媒配管18の管路長Lが比較的短い場合であっても、前記吐出温度一定制御に比べて前記加熱能力Wを抑制し効率の良い運転を行うことができるとともに、前記冷媒吐出圧Poutを低減して高くなり過ぎるのを防止し前記冷媒配管18の耐久性や前記圧縮機14の信頼性を確保することができる。同様に、前記冷媒配管18の管路長Lが比較的長い場合であっても、前記吐出温度一定制御に比べて、前記水冷媒熱交換器15において熱を多く交換し効率のよい運転を行うことができるとともに、前記加熱能力Wが過小となるのを抑制し、タンクユニット1において前記湯切れが生じるのを防止することができるものである。
また、本実施形態では特に、前記外気温度Tairが高くなると前記目標温度差△Hmを小さく、前記入水温度T1が高くなると前記目標温度差△Hmを小さく、前記目標沸き上げ温度Tbmが高くなると前記目標温度差△Hmを大きくする。これにより、運転効率が高効率となる前記目標温度差△hmを確実に求めることができ、前記ヒートポンプユニット3を確実に高効率で運転させることができるものである。
なお、本発明は以上の態様に限定されることなく、その趣旨を変更しない範囲で適用可能なもので、例えば、前記電子膨張弁16は、タンクユニット1内の冷媒配管18の流出温度センサ21の下流側に設けた構成としてもよく、また、前記ヒートポンプサイクルとしては、減圧器としてエジェクターを用いたエジェクターサイクルでもよいものである。
また、前記ヒートポンプサイクルでは、水冷媒熱交換器15を通過した後の高圧冷媒と圧縮機14の吸入側の低圧冷媒との間で熱交換を行う内部熱交換器(図示せず)を備えた構成としてもよい。この場合、前記流出温度センサ21は、水冷媒熱交換器15より下流側で、高圧冷媒が通過する前記内部熱交換器より上流側の冷媒温度を検出する位置に配設され、前記吐出温度センサ20の検出する冷媒吐出温度Toutと前記流出温度センサ21の検出する冷媒温度との温度差△Hが所定の目標温度差△Hmとなるように電子膨張弁16の開度が制御され、これによって、前記と同様の効果を得られるものである。