JP2017193994A - 対向ピストン型エンジン - Google Patents

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Abstract

【課題】主燃焼室の容積空間に連通した吸排気用バルブがそれぞれ並列してシリンダ外に配設されて混合気体の吸気、排気を行うものであり、2個のバルブを連通する容積空間は二個のバルブの二個のポペットが横並びに位置するだけの幅員を有していなければならない。勢い容積空間が大容積となり、エンジン圧縮比は低下して効率的な圧縮比の9を得ることが困難となっていた。【解決手段】左右のピストンヘッドを左右のエンジンブロックの合体により形成したシリンダ内で対峙させた対向ピストン型エンジンにおいて、両ピストンヘッド端面に形成した扁平凹部により構成した接合空間と、接合空間と連通した状態でシリンダの中途部側壁の周方向外側にシリンダ軸線方向に直交して略扁平状に膨出した容積空間と、容積空間の両側面にそれぞれ下方傾斜状に対向して連通した吸気用バルブ及び排気用バルブと、により構成した。【選択図】図1

Description

この発明は、水平シリンダ中に対向した2個のピストンを摺動自在に収納し、シリンダの外側壁にシリンダ内のピストン対向空間と連通した主燃焼室の容積空間を膨出させた対向ピストン型エンジンに関する。
従来、対向ピストン型エンジンは、例えば、下記の特許文献1や特許文献2に開示されているように、いずれも水平横向きの一個のシリンダ内の左右側にピストンをヘッドが互いに対峙した状態でピストンを直線的に往復動するように構成されている。そして、シリンダ内においてピストンヘッドの対峙した中間部が燃焼室となり、燃料と空気の混合ガス(以下、単に混合ガスという)の点火爆発によりピストンを作動させて出力し発電機等の外部アクチュエータの動力源とするものである。
特開2007−46534号公報 特開平8−93498号公報 特開2008−280988号公報
かかる構造の先行技術は多数見受けられるが、一部を除いて主に、水平の一個のシリンダであること、ピストンが互いに対向して離反、近接するものであること、対峙したピストンヘッドの間の空間を燃焼室として燃焼室側面に吸排気口を形成するものであること等において共通した典型的な水平の対向型ピストンエンジンであった。
ユンカース社の様な2ストロークサイクルエンジンの場合は、シリンダ内周部に設けた掃気排気口とピストンによる適切なポートタイミングを得るためにストローク方向の往復動による吸気排気行程制御の燃焼を行うものであるが、オイル消費や燃焼制御の課題があり、従って、4ストロークサイクルの吸気弁、排気弁を用いた駆動制御をする方がその課題解決の対応としては有効である。しかし、かかる4ストロークサイクルのエンジンを示す特許文献1,2,3の構造事例では、燃焼室容積が小さくならないため、高圧縮比化が望めなく、エンジンの熱効率向上化には難しいものである。
また、一般的に知られている1クランク軸で駆動する水平対向エンジンの場合は、シリンダをオフセットする必要があり、偶力の発生に課題がある。また熱効率向上の一つとして燃焼室の断熱化を図るには、両端にシリンダヘッドが存在するため、それぞれに断熱化を施す必要があり、エンジンのサイズ及び重量が増加する。
これらは、水平対向エンジンにおいてエンジンの高圧縮比化や断熱化等による熱効率向上及び低振動化を両立させてよりコンパクトな構成にするという技術的思想は全く開示も示唆もされていなかった。
しかも、これらのシリンダに連通する吸排気用バルブはシリンダ内の燃焼室に直接に開放されて先端ポペット部の開閉作動により混合ガスの吸気、燃焼ガスの排気を行うものであった。
従って、吸排気用バルブの先端ポペット部を燃焼室に連通するための場所取りを行うためにシリンダ側壁に複数のポートを形成しなければならない。その分、燃焼室の容積は必然的に大きくなり圧縮比が劣ることになる。
そこで、本発明者はこれらの欠点をなくし、エンジンの高圧縮比を構造的変更により達成できる対向ピストン型エンジンを開発し、特許第5508604号として特許を取得した。
この特許発明は基本的にシリンダ外に主燃焼室を形成し、シリンダ内のピストン対峙空間を副燃焼室として両燃焼室を連通したことに特徴を有し、従来の対向ピストン型の水平シリンダに比し、エンジンの高圧縮比を得ることができるものであったが、主燃焼室の容積空間に連通した吸排気用バルブがそれぞれ並列してシリンダ外に配設されて混合気体の吸気、排気を行うものであった。
従って、2個のバルブを連通する容積空間は二個のバルブの二個のポペットが横並びに位置するだけの幅員を有していなければならない。
従って、勢い容積空間が大容積となり、容積空間の肉厚(吸気口高さ)を約8mmとして混合気体を吸入しやすくするとエンジン圧縮比は低下して効率的な圧縮比の9を得ることが困難となっていた。
そこで、本発明では上記課題を解決すべく、主燃焼室としての容積空間の吸気終端部の肉厚(吸気口高さ)を約8mmとしながらも、二個の吸排気用バルブを対向状態で容積空間の両側面に連通配設することにした。このように構成することにより容積空間の扁平幅員を吸排気用バルブの外径と同等か或いはそれよりやや大きい幅員としてその分容積空間の容積を可及的に小さくすることができ、その効果として、エンジンの高圧縮比を得ることができるようにした対向ピストン型エンジンを提供せんとする。
この発明は、左右のピストンヘッドを左右のエンジンブロックの合体により形成したシリンダ内で対峙させた対向ピストン型エンジンにおいて、両ピストンヘッド端面に形成した扁平凹部により構成した接合空間と、接合空間と連通した状態でシリンダの中途部側壁の周方向外側にシリンダ軸線方向に直交して略扁平状に膨出した容積空間と、容積空間の両側面にそれぞれ下方傾斜状に対向して連通した吸気用バルブ及び排気用バルブと、により構成したことを特徴とする対向ピストン型エンジンを提供するものである。
また、略扁平状に膨出して形成した容積空間の吸気口高さを約7〜9mmとすると共に、容積空間の幅員を吸排気用バルブのポペット部の径と略同一かやや大きく形成することによりエンジン圧縮比を略9以上としたことを特徴とする。
また、容積空間は外形略放物線状の頂部に向って容積空間の両外側面が漸次薄くなる断面テーパー形状とし、かかる容積空間の傾斜外側面に吸排気用バルブのポペット部をそれぞれ連通当接したことを特徴とする。
本発明によれば、容積空間が主燃焼室としてシリンダ外に配設されているため吸排気用バルブを対向状態で配設しやすくなり、特に容積空間の燃焼効率を向上すべく吸気口高さを7〜9mmとし、外形放物線状の頂部に向って容積空間の外側面を漸次薄くした場合に容積空間の両側面に対向して傾斜状に吸排気用バルブを連通することができることになる。
従って、容積空間の幅員は吸排気用バルブを連通当接することができる長さ(すなわち、バルブ先端外径)だけ確保すればよいため、その分幅員を可及的に短くして容積空間の内容積を小さくして圧縮比を向上することができる効果がある。
対向ピストン型エンジンの内部構成を示す断面図。 対向ピストン型エンジンの燃焼室の形状の概略を示す拡大図。 対向ピストン型エンジンの燃焼室の形状の概略を示す断面図。 対向ピストン型エンジンの燃焼室の形状の概略を示す断面図。 対向ピストン型エンジンの燃焼室の形状の概略を示す断面図。 対向ピストン型エンジンの燃焼室の形状の概略を示す断面図。 対向ピストン型エンジンの燃焼室の形状の概略を示す断面図。 対向ピストン型エンジンの2軸出力型の構成を示す斜視図。 対向ピストン型エンジンの構成を示す外観図。 対向ピストン型エンジンの構成を示す外観図。 対向ピストン型エンジンの構成を示す外観図。 対向ピストン型エンジンの構成を示す外観図。 対向ピストン型エンジンの構成を示す外観図。 対向ピストン型エンジンの構成を示す外観図。 対向ピストン型エンジンの構成を示す外観図。 対向ピストン型エンジンの構成を示す外観図。 対向ピストン型エンジンの構成を示す外観図。 マルチコプターの構成を示す斜視図。 燃焼室の構成を示す概略図。 対向ピストンの燃焼室の構成を示す概略図。
本発明の実施の形態は、水平シリンダ内に独立した左右ピストンを互いにヘッドが対峙した状態で収納すると共に、主燃焼室を左右ピストンヘッド間に連通して水平シリンダ外に形成し、燃焼室内における点火爆発による左右ピストンの近接、離反作動を介して出力を取出すように構成した対向ピストン型エンジンに関する。
そして、水平シリンダは、左右シリンダ単体を接合することにより構成すると共に、左右シリンダ単体の接合部はガスケット等のシール構成部材でシーリングし、しかも、水平シリンダ内に連通して形成した燃焼室は断熱材で形成している。
そして、水平シリンダの両側方には吸排気用バルブを対峙して配設すると共に、吸排気用バルブのバルブ作動軸芯は水平シリンダの水平軸芯に対して下向きに傾斜するように構成し、しかも、吸排気用バルブ及び混合ガス点火用のスパークプラグは燃焼室内に配置し可及的に燃焼室容積が小さくなるように構成している。
このように、吸気用バルブと排気用バルブは互いに対峙した状態で配置され、従って、各バルブの作動軸芯も互いに対峙して配置されている。
そして、左右ピストンのボトム部にそれぞれ左右クランク機構を連動連設し、左右ピストンからの出力を左右クランク機構における左右クランク出力軸から、または左右クランク出力軸にそれぞれ隣接する左右隣接軸から2軸で取出し、各2軸のそれぞれに外部アクチュエータ、例えば発電機などを独立して連動連設すると共に各2軸はそれぞれ反対方向に回転するように構成することにより各2軸の回転反力を互いに打ち消して低振動化を図る様に構成している。
そして、左右ピストンのボトム部にそれぞれ左右クランク機構を連動連設し、左右クランク機構の間に連動ギヤ群を介設することにより左右クランク機構からのそれぞれのクランク出力を連動ギヤ群に設けた出力軸に合流して取出すべく構成し、しかも、連動ギヤ群のギヤ出力軸は、左右ピストンの対峙中心軸からオフセットして配置している。
以下、本発明の実施例を図1〜図17を用いて具体的に詳説する。
本発明の実施例の対向ピストン型エンジンAは、図5に示すように、エンジンブロック151を主体に、横方向の内収容シリンダの左右側方にはギヤボックス152を、その下方にオイルパン150をそれぞれ積層して配置することにより構成している。エンジンブロック151の外周面には放熱冷却効率を向上するために多数のフィンを突設した空冷式エンジンとしている。
図1に示すように、エンジンブロック151は、左右に分割した左右エンジンブロック151−1,2、及び左右エンジンブロック151−1,2より構成している。左右エンジンブロック151−1,2は、鋳造によりそれぞれ一体成形するものであり、内部の中心部には、それぞれ左右シリンダ(左右シリンダブロック)単体148,149を形成し、その周辺に後述する燃焼室Sや、燃焼室Sに連通する吸排気用バルブ107,135を取付けるためのバルブ設置孔135a,107aや、スパークプラグ106を取付けるためのプラグ設置孔106aや、左右ピストン102,103に連動連設した左右クランク機構117,118等を構成している。
このように鋳造成形した左右エンジンブロック151−1,2をガスケットを介在して一体に接合することにより水平シリンダ101や燃焼室Sを形成すると共に、左右エンジンブロック151−1,2のそれぞれの外端部に左右クランク機構117,118を連動配設するように構成する。
また、左シリンダ(左シリンダブロック)単体148と右シリンダ(右シリンダブロック)単体149とは接合して一つの水平シリンダ101を形成している。水平に形成された水平シリンダ101内には、独立して左右ピストン102,103を互いに左右ピストンヘッド104,105が対峙した状態で摺動自在に収納している。
このように、左右シリンダ単体148,149を接合して一つの水平シリンダ101を形成する分割構造とすることにより、水平シリンダ101の加工組立てが容易となり、水平シリンダ101の外に燃焼室Sを形成する場合の加工(例えば、燃焼室Sに付設される後述の吸気用バルブ107及び排気用バルブ135周辺の加工)が容易となり、一本のシリンダで形成した場合と比べて左右シリンダ単体148,149の鋳造効率化が良好となる等の各種の効果がある。
このようなシリンダ構造とすることにより、1個の水平シリンダ101に対して左右ピストン102,103を備えるため、水平シリンダ101内で左右ピストン102,103のストロークを分割することができ、通常のエンジンに比べて、燃焼室S内で点火された混合ガスの高膨張比を取ることができる。
左右ピストンヘッド104,105間の接合空間を含む燃焼室Sは、混合ガスを充填してその中で点火爆発させることにより左右ピストン102,103を互いに離反近接する方向に摺動させ、かかるピストン作動から後述するクランク機構を介してピストン出力を取出すように構成している。
燃焼室Sは、具体的には図2に示すように、一部左右ピストンヘッド104,105の近接部分にそれぞれ形成した傾斜面104a,105aからなる接合空間S−1(副燃焼室)と、水平シリンダ101の中途部側壁を膨出して接合空間S−1に連通して形成した容積空間S−2(主燃焼室)とから構成されている。
ここで、容積空間S−2とは、燃焼室Sを構成する空間から対向する左右ピストンヘッド104,105間のクリアランス(例えば、構成部品精度公差、熱膨張、ピストンヘッドの挙動を考慮した空間等)と上述した接合空間S−1と、後述のスパークプラグ106、吸気用バルブ107及び排気用バルブ135等の占有空間とを除いた空間である。このように容積空間S−2は、水平シリンダ101の側壁外方に水平シリンダ101の断面方向に形成されている。
図4A、図4B及び図4Cに示すように、燃焼室Sは、左右ピストンヘッド104,105が近接した状態で、両ピストンヘッド端面に下縁部から中心部上方にかけて略放物線形状の扁平凹部104a’,105a’を形成し、両ピストンヘッドの近接状態において、この扁平凹部104a’,105a’により形成される空間を接合空間S−1(副燃焼室)としている。
接合空間S−1は、水平シリンダ101の中途部側壁を水平シリンダ101の断面方向に沿った略扁平状に膨出して水平シリンダ1本体の外方に形成した容積空間S−2に連通している。
容積空間S−2(主燃焼室)の形状は、先端に向って幅員が漸次小さくなる放物線形状の平坦面外形とすると共に、この肉厚空間の基部は、左右ピストンヘッド104,105の対峙間隔空間たる接合空間S−1と連通しており、その連通部分、すなわち、容積空間の吸気口高さは全体約8mmとしている。
換言すれば、容積空間の吸気終端部の空間肉厚を吸気口高さとして約7mm〜9mmの範囲で設定する。
すなわち、左右ピストンヘッド104,105の対峙面は、図16に示すように、当接時に容積空間と連通する過半部分を容積空間の吸気口高さの約8mmと略同じ空間肉厚となるような副燃焼凹部としており、他残部分は、対峙面を当接した場合に約1mmのクリアランスとなる接合凹部としている。
このように、容積空間S−2は上記のように形成されているものであり、特に本発明では、燃焼効率化、高圧縮比化等の要請により、燃焼室Sの容積空間S−2を可及的に小さくするために、水平シリンダ101の外周壁から突出した略扁平形状の容積空間S−2を外形放物線形状とし、しかも、外形放物線の頂部に向って空間外側面が漸次薄くなるように構成しており、従って、容積空間の両側外面はテーパー形状の傾斜面としている。この頂部両側面に吸排気用バルブのポペット部を当接連通して、組付け外形も可及的に小さくすることができるように構成している。
特に、容積空間S−2のケース外側面は、吸気用バルブを連通する側面を円形に膨出形状として、この膨出円形部は容積空間の先端に向って下り傾斜状としている。従って、吸気用バルブのステム方向を下り傾斜状に配設することにより正確に容積空間に連通密着させることができる。また、その反対側面は、やや傾斜状の平坦面とし、その平坦面に円形のバルブ当接面を形成して排気用バルブの連通側面としている。従って、容積空間の両側面に形成したバルブ当接連通面は円形とすると共に、その円形面は双方とも傾斜面として容積空間先端に向ったテーパー面としていることに特徴を有する。
かかる容積空間の外形側面形状は吸排気用バルブの下り傾斜配設を可能とし、エンジン周りの関連部材占拠空間を可及的に小さくしている。
なお、接合空間S−1から容積空間S−2に連通する開口部面積S−4は、吸気用バルブ7及び排気用バルブ35による混合ガスの吸排気抵抗にならないように設定されている。
さらに、図4Dの部分拡大図に示すように、左右ピストンヘッド104,105が最接近した状態の、左右ピストンヘッド104,105間のクリアランスxは、シール構成部材としての後述のガスケット141を介して接合された左右シリンダ単体148,149の接合面のクリアランスyよりも狭くなるようにして、燃焼室Sの接合空間S−1を可及的に小さくすることができるように構成している。
特に本発明においては、上記したエンジン1の基本的構成に対して可及的に軽量で、かつ出力パワーを最大限に生起することができる機能を有するエンジン1としたことに特徴を有する。
すなわち、前述のとおり1気筒シリンダ内に2個のピストンヘッドが互いに対向して摺動する2気筒エンジンとすると共に、シリンダの中途部側壁を外部に略扁平の放物線形状に膨出してシリンダ内の左右ピストンヘッドの接合空間に連通した略扁平状の容積空間を設けた。
しかも、吸気用バルブと排気用バルブとの吸排気開口部をシリンダ外部膨出部分の略扁平状の容積空間両側面に互いに対向して配設した。
次に、本発明のように吸排気用バルブを対向バルブとして配設した場合に、吸気開口部の開口高さ(以下、吸気口高さという)、すなわちシリンダ外側膨出の容積空間(主燃焼室)の吸気終端部の空間肉厚を約8mmとした場合に圧縮比9以上を得ることができる理由について説明する。
なお、説明中においては、吸排気バルブが図6から図14に示すように従前の並列配置されたエンジン構造である場合と対比して説明している。
(1)一般的に燃料としての混合ガスの吸気に際して吸気用バルブのバルブ設置孔から充分燃料を効率的に吸気可能とするためには少なくとも吸気口高さ約8mm以上を必要とすることを基本構成とする。
(2)吸排気用バルブを従前の並列配置した場合に対向するピストンヘッド間の距離を約1mmとして吸気口高さを4、5、6、7、8mmの5段階に区分した各段階での燃焼室容積、吸気口断面積、圧縮比、流速、速度比をそれぞれ対比して一覧表とした。
この一覧表を見ると、吸気口高さを8mmとした場合に圧縮比は「7.13」であり、圧縮比「9.0」を達成することはできなかった。
この知見を基礎として、前提条件の吸排気バルブを並列配置ではなく、バルブ開口端を対向させて容積空間の両側面に当接連通する対向配置とした。
(3)次に示すのは、並列の吸排気用バルブとして並列したバルブの占拠場所を左右に拡大する、すなわち、容積空間の主燃焼室を左右に拡大し、吸気口高さ8mmとした場合における圧縮比、流速等の数値を示す一覧表であり、(2)で上記したように圧縮比9を満たすのは困難であることが判明する。
この状態での接合空間外形と容積空間外形とバルブポペット部当接位置外形の関係を示す図を図16に示す。
(4)次に示すのは、吸排気バルブの開口端を容積空間両側面で対向させた場合、容積空間は対向したバルブの開口端外径の大きさだけ幅員を形成しておけばよく、従って、容積空間を可及的に小さくすることができ、この幅員において吸気口高さ8mmとした場合の圧縮比、流速等の数値を示す。
この状態での接合空間外形と容積空間外形とポペット部当接位置外形の関係を示す図を図16に示す。
この数値から両バルブの対向配置と吸気口高さの選択により燃焼室容積を大幅にダウンして圧縮比、流速共に所定の条件をクリアしていることが判明する。
すなわち、上記した対向バルブの条件のもとでボア径φ40×ストローク行程36mm、排気量45cc、吸気用バルブ径φ24、排気用バルブ径φ21、吸気口断面積39×8とすることにより、圧縮比9を確保でき、流速は音速の半分以下とすることができ、エンジン容積を可及的に小さくして効果的に最大の燃焼効率を得ることができる。
(5)上記の検討の結果、次のように結論することができる。
吸気用バルブをφ24とした場合の開口面積3.2cmに対して対向するピストンヘッド間の距離を約8mmとした場合(すなわち、容積空間の最大肉厚を約8mmとした場合)、吸気口断面積は3.16cmであり、3.16/3.2=0.98となり、約98%をカバーしている。
次にバルブの作動機構について具体的に説明する。すなわち、シリンダの外部膨出部たる容積空間S−2(主燃焼室)には互いに対向状態で連通した吸排気用バルブ313,314が配設されている。
左右ピストンヘッド304,305の先端部にはクランク機構308L,308Rの左右クランク出力軸308L’,308R’を介して発電機7の回転子軸7a’が連動連設されており、回転子軸7a’は、その伸延軸に左右駆動ギヤ315L,315Rを設け、左右駆動ギヤ315L,315Rにはそれぞれ左右従動ギヤ316L,316Rを噛合し、左右従動ギヤ316L,316Rの各ギヤ軸はカムシャフト318,318となりバルブ駆動用カム319,319を設けている。
バルブ駆動用カム319,319は、対向配設したポペットバルブ機構の吸排気用バルブ313,314を進退作動して吸排気口の開閉を行い混合ガスの吸気と燃焼ガスの排気を行う。
すなわち、エンジン1の左右ピストンヘッド304,305のストローク作動に応じて左右クランク機構308L,308Rを介して、駆動ギヤ315L,315R、従動ギヤ316L,316R、カムシャフト318,318を連動し、最終的にバルブ駆動用カム319,319のカム作動により吸排気用バルブ313,314による混合ガスの吸排気作動を行う。
なお、シリンダ外壁の容積空間Sはエンジンの上方向に突出して設けられており、外形略放物線形状とした容積空間の燃焼ケース321には左右側扁平面にバルブ設置孔322,322を設けバルブ設置孔322,322に吸排気用バルブ313,314のポペット部323,323が弁機構として設けられている。
すなわち、当該バルブ313,314は、ステムとキノコ型のバルブ本体と、バルブシートと閉塞用の付勢スプリングより構成され、バルブ全体がステムの軸方向に摺動することによりバルブシートとバルブ本体との間隔が変化してバルブ設置孔322への混合ガスの流量を制御するように構成されている。
容積空間Sを形成する燃焼ケース321は、左右側扁平面であるが、外形放物線形状の頂部方向に向かって外側面が薄くなるテーパー形状の傾斜面としている。なお、容積空間の外形放物線形状の本体部分外側面は吸気用バルブ連通側を大きく膨出させて円形のバルブ連通部とし、反対側の排気用バルブ連通側はやや小さく膨出させて円形のバルブ連通部とし、両膨出面はテーパー状の傾斜面として各バルブを先端下り傾斜姿勢に配設可能としている。
従って、図14に示すように、吸排気用バルブ313,314のポペット部323,323が互いに対向してこの傾斜したテーパー扁平面に当接するため吸排気用バルブ313,314のステムをやや下方傾斜して配設することにより、その先端部のポペット部323を燃焼ケース321に開口したバルブ設置孔322に当接密着するように構成することができる。
ピストンヘッドや容積空間や吸排気用バルブのポペット部等に関連する位置空間の大きさの数値は次の通りである。
すなわち、図17に示すようにポペット部323,323のバルブ設置孔開閉のための摺動範囲、すなわちバルブリフト長は約6mmとしており、吸気用バルブ313のバルブ本体は約φ24とし、排気用バルブ314のバルブ本体は約φ21とし、左右ピストンヘッド304,305の対向端面に形成したスキッシュ部(突面部)の間隔は約1mmとし、シリンダ外側壁に膨出した主燃焼室としての容積空間Sの吸気口高さ(膨出空間の肉厚)は約8mmとし、ピストンヘッドの外周から吸排気用バルブのポペット部323に至る間隔は約3mmとしている。
なお、上記した数値は、一定の圧縮比9を得るための許容範囲を有しており吸気用バルブリフト長は5〜7mm、バルブはφ22〜φ26、排気用バルブはφ20〜φ23、スキッシュ部の間隔は約0.5mm〜1.5mm、容積空間の吸気口高さは約7〜9mm、ピストンヘッド外周から吸排気用バルブポペット部の間隔は2.5mm〜3.5mmとすることが可能である。
図中、106はスパークプラグを示し、容積空間Sの一側壁に形成されている。
次に、本発明のエンジン1を中心としてエンジン1からの出力を受けて稼働する外部アクチュエーターとしての発電機7及びエンジン1の主燃焼室S−2に連通する吸排気用バルブ313,314に関連する連動機構について説明する。
左右シリンダ301L,301Rは水平左右に伸延して配設されており、左右シリンダ301L,301Rの左右ピストン302L,302R基部にはクランク機構308L,308Rを連動連設しており、クランクシャフト309,309の先端には左右発電機7,7が連結されている。このようにクランク機構308L,308Rの機械エネルギーを発電機7の電気エネルギーに変換してエンジン1の周辺に配したローター4に通電して伝動モータ5を介してサイドファン4−1を駆動するように構成することによりマルチコプターAを構成して遠隔操作によるエンジン搭載型の無人飛行(図15参照)を可能としている。
クランクシャフト309の先端回転軸310には、発電機7のマグネット回転子7aが一体に連動されている。
図中、7は発電機,7bはコイル部、7cは発電機ケースを示す。
左右発電機7,7において各マグネット回転子7a,7aはそれぞれ反対方向に回転するようにクランク機構308L,308Rを調整しており、互いに回転トルクの反動を打ち消して気体の飛行時の偏奇荷重が生起しないように構成し振動や騒音を可及的に小さくしている。
また、図中、311は反転ベルト、312はプーリーを示しており、左右クランク機構308L,308Rの左右クランク出力軸308L’,308R’の回転出力を反対方向に回転するように構成して、反転ベルト311とプーリー312により回転方向を反転させるカウンタローテーションを実現することで左右クランク出力軸308L’,308R’からの回転反力を互いに打ち消して低振動化を図っている。図中、331はオイルタンクである。
また、発電機7の前方には発電機7の回転子軸7a’に連動した冷却ファン330,3330がそれぞれ設けられている。
なお、エンジンの冷却は基本的には空冷式としている。
以上、実施例や変形例を説明したが、本発明の具体的な構成は上述した実施例や変形例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
A マルチコプター
a 機体フレーム

1 エンジン
2 燃料タンク
3 ペイロード積載部
4 ロータ
4−1 サイドファン
5 電動モータ
6 制御部
7 発電機

Claims (3)

  1. 左右のピストンヘッドを左右のエンジンブロックの合体により形成したシリンダ内で対峙させた対向ピストン型エンジンにおいて、両ピストンヘッド端面に形成した扁平凹部により構成した接合空間と、接合空間と連通した状態でシリンダの中途部側壁の周方向外側にシリンダ軸線方向に直交して略扁平状に膨出した容積空間と、容積空間の両側面にそれぞれ下方傾斜状に対向して連通した吸気用バルブ及び排気用バルブと、により構成したことを特徴とする対向ピストン型エンジン。
  2. 略扁平状に膨出して形成した容積空間の吸気口高さを約7〜9mmとすると共に、容積空間の幅員を吸排気用バルブのポペット部の径と略同一かやや大きく形成することによりエンジン圧縮比を略9以上とした
    ことを特徴とする請求項1に記載の対向ピストン型エンジン。
  3. 容積空間は外形略放物線状の頂部に向って容積空間の両外側面が漸次薄くなる断面テーパー形状とし、かかる容積空間の傾斜外側面に吸排気用バルブのポペット部をそれぞれ連通当接した
    ことを特徴とする請求項1に記載の対向ピストン型エンジン。
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