本発明の一実施形態に係る重機支持機構は、少なくとも一対の梁を有する建物の解体作業において移動する重機を支えるために、一対の梁間に架け渡される桁状の重機支持機構である。重機支持機構は、間隔(第1間隔)を開けて並んだ一対の桁状形鋼と、一対の桁状鋼材間に間隔(第2間隔)を開けて架け渡された複数の根太鋼と、を備える。一対の桁状鋼材は、ウェブ同士が対向するように並んだ一対の形鋼、または幅方向に並んだ一対の鋼管である。なお、一対の鋼管は、各鋼管の長さ方向が平行となるように並んでいる。長さ方向が平行な場合とは、長さ方向が完全に平行な場合に限らず、各鋼管の長さ方向のずれが小さい場合(例えば、各鋼管の長さ方向のなす角度が10°以下である場合)も含むものとする。形鋼は、例えば、H形鋼、溝形鋼、または山形鋼である。鋼管は、例えば、角形鋼管、丸形鋼管、または異形鋼管である。
このような重機支持機構では、一対の桁状鋼材上(具体的には、形鋼のフランジ上や鋼管上)および/または複数の根太鋼上を重機が移動することになるため、比較的平坦な領域において、重機を移動させることができる。また、複数の重機支持機構を容易に連結させることができる。よって、重機の移動方向が規制され難く、移動の高い自由度を確保することができる。
また、重機の移動が特許文献1のようにウェブ上に限られないため、入手し難い、重機のサイズに合った大きな幅のウェブを有するH形鋼を用いる必要がない。本実施形態では、例えば、重機の重量や一対の梁の間隔、および/または必要とされる強度などに応じて、形鋼、鋼管や根太鋼のサイズを選択できる。そのため、市販品やリースなどで容易に入手できる形鋼、鋼管や根太鋼を利用することができる。また、根太鋼の長さを調節することで、桁状鋼材間の間隔や重機支持機構の幅を簡単に調節することができるとともに、根太鋼間の間隔も容易に調節することができる。そのため、汎用性が高く、コスト面でも有利である。桁状の重機支持機構により、重機の重量を梁間に分散させることができるため、建物のスラブや梁に多数の支保工を設置する必要がない。従って、作業工程を簡略化することができ、コストを削減することもできる。さらに、本実施形態に係る重機支持機構は、一対の桁状鋼材に複数の根太鋼が架け渡されているため、構造的な強度も高い。
以下に、本発明の実施形態に係る重機支持機構の具体例を、適宜図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る重機支持機構を梁間に架け渡した状態を説明するための平面図である。建物は、床(またはスラブ)Fと、床Fを貫通する複数の柱Pと、隣接する柱P間に架け渡された複数の梁Bとを備えており、床Fは、複数の梁Bにより支持されている。対向する一対の梁B間には、桁状の重機支持機構1が架け渡されており、重機支持機構1上を移動する重機の重量を梁Bに分散することで、重機を安全に支えることができる。
図1では、重機支持機構1の配置の仕方が異なる3例を示している。床Fの領域A1では、2つの重機支持機構1が互いに連結することなく、間隔をあけて並んで配置されている。床Fの領域A2では、複数の重機支持機構1が長さ方向に連結された状態で配置されている。領域A2では、複数の重機支持機構1のうち、一部の重機支持機構1は、別の重機支持機構1と、幅方向に連結されている。床Fの領域A3では、複数の重機支持機構1が幅方向に連結されている。
図示例では、桁状鋼材として、形鋼(具体的には、H形鋼)が用いられている。各重機支持機構1は、第1間隔を開けて並んだ一対の形鋼20a,20bと、一対の形鋼20a,20b間に、第2間隔を開けて架け渡された複数の根太鋼30と、を備えている。形鋼20a,20bは、ウェブ同士が対向するように並んでおり、ウェブの両端に存在するフランジは、それぞれ、重機支持機構1の上側および下側に配されている。
形鋼20a,20bと根太鋼30との結合状態の一例を図2に示す。より具体的には、図2は、領域A1に配置された重機支持機構1のIIの部分を概略的に示す拡大図である。図3は、図2のIII−III線による矢示断面図である。図2および図3に示されるように、一対の形鋼20aおよび20bは、所定の第1間隔を開けて、それぞれの形鋼20a,20bのウェブ21a,21b同士が対向するように並んでいる。形鋼20aは、ウェブ21aの両端に、ウェブ21aと一体化したフランジ22a,23aを備えており、形鋼20bは、ウェブ21bの両端に、ウェブ21bと一体化したフランジ22b,23bを備えている。重機支持機構1において、フランジ22a,22bは、上側に位置し、フランジ23a,23bは下側に位置する。
形鋼20aにおいて、フランジ22a,23aのそれぞれは、ウェブ21aを中心にしてウェブ21aの両面からそれぞれ外側に向かって延出している。そして、上側のフランジ22aには、ウェブ21aを中心にして両側に、形鋼20aの長さ方向に沿うように、複数のボルト孔24が一定間隔で並んで形成されている。同様に、形鋼20bにおいて、フランジ22b,23bのそれぞれは、ウェブ21bを中心にしてウェブ21bの両面から外側に向かって延出しており、上側のフランジ22bには、ウェブ21bを中心にして両側に、形鋼20bの長さ方向に沿うように、複数のボルト孔24が一定間隔で並んでいる。
図示例では、根太鋼30として角形鋼管が使用されている。根太鋼30は、長さ方向が、形鋼20a,20bの幅方向と一致するように配置されている。根太鋼30の長さ方向の一方の端部は、形鋼20aの上側のフランジ22aと下側のフランジ23aとの間の空間に収容され、他方の端部は、形鋼20bの上側のフランジ22bと下側のフランジ23bとの間の空間に収容されている。図示例では、角形鋼管である根太鋼30の長さ方向における両方の端部では、根太鋼30の上面を切り欠いた状態となっており、この切り欠き部分31の根太鋼30の上端面が、形鋼20a,20bの上側のフランジ22a,22bの底面を支持している。この切り欠き部分31を設けることで、桁状鋼材の上面(具体的には、上側フランジ22a,22bの上面)の高さと、根太鋼30の上面の高さとをほぼ同じにすることができ、重機を安定に支持することができる。
根太鋼30は、長さ方向の両方の端部のそれぞれにおいて、根太鋼30の両側面に固定された一対のナット32a,32bを備えている。ナット32a,32bは、雌ネジが上下方向に向かって開口した状態で、軸方向と平行な側面が根太鋼30の側面に固定されている。ナット32a,32bは、上側フランジ22a,22bに形成されたボルト孔24の間隔に合わせて位置合わせされる。ナット32a,32bと根太鋼30の両側面との間には、必要に応じて、鋼板33を介在させることでナット32a,32bの位置を微調節してもよい。鋼板33を用いる場合、鋼板33は根太鋼30の側面に溶接により固定され、ナット32a,32bの側面は、鋼板33に溶接により固定される。
根太鋼30の切り欠き部分31には、鋼板34が嵌め込まれ、鋼板34の一対の端面と、鋼板34を挟み込む根太鋼30の内側の壁面とは溶接により固定されている。鋼板34の、ナット32aとナット32bとの間の中心付近には、シノ孔34aを形成してもよい。この場合、シノ孔34aと位置合わせ用のシノを用いて、ナット32a,32bの位置と2つのボルト孔24の位置とが位置合わせされる。これにより、ボルト40の締結に先立って、ナット32a,32bとボルト孔24との位置合わせを容易に行なうことができる。そして、ナット32a,32bに対して、上側フランジ22aおよび22bに形成されたボルト孔24に貫通させたボルト40が締結され、これにより、根太鋼30の長さ方向の両方の端部が、それぞれ、形鋼20a,20bに固定される。
根太鋼30の切り欠き部分31のサイズ(具体的には、根太鋼30の長さ方向に沿う切り欠き部分31の長さ)は、形鋼20a,20bのサイズに合わせて調節してもよい。図2および図3には、幅方向の断面の外形サイズが250mm×250mmのH形鋼を形鋼20a,20bとして用い、幅150mm×高さ200mmの角形鋼管を根太鋼30として用いた場合を示したが、同じ角形鋼管を根太鋼30として用い、さらに大きなサイズのH形鋼を用いてもよい。例えば、幅方向の断面の外形サイズが400mm×400mmのH形鋼を用いた場合を図4に示す。図4は、他の実施形態に係る重機支持機構の概略断面図である。
図4では、H形鋼である形鋼120a,120bの幅方向の断面の外形サイズが、図3の形鋼20a,20bとは異なるだけで、その他は図3と同じである。図4において、重機支持機構は、間隔を開けてウェブ121a,121bが対向するように並んだ一対の形鋼120a,120bと、この間に架け渡された根太鋼30とを備えている。根太鋼30の長さ方向の両端部は、それぞれ、形鋼120a,120bの上側フランジ122a,122bと、下側フランジ123a,123bとの間の空間に収容されている。上側フランジ122a,122bに形成されたボルト孔124を貫通するボルト40は、根太鋼30の両端部において両側面に固定されたナット32a,32bに締結され、これにより、根太鋼30の長さ方向の両端部は、形鋼120a,120bに固定されている。
図4では、形鋼120a,120bのサイズが大きいため、根太鋼30の切り欠き部分31のほぼ全体が、上側フランジ122a,122bで覆われている。このように、根太鋼30の切り欠き部分31を、サイズの大きな桁状鋼材に合わせて作製しておけば、サイズの小さな桁状鋼材にも対応することができる。また、一対の桁状鋼材間の第1間隔を調節する場合にも対応することができる。なお、切り欠き部分は必ずしも形成する必要はなく、上側フランジの底面に根太鋼の上面が接触するように配置してもよい。この場合には、桁状鋼材のサイズを変更したり、第1間隔を調節したりする場合にもさらに対応し易くなる。
形鋼と根太鋼との結合状態の他の例を図5に示す。図5は、断面の外径サイズが300mm×300mmのH形鋼を形鋼として用い、幅125mm×高さ125mmの角形鋼管を根太鋼として用いた場合の重機支持機構の一部を示す平面図である。図6は、図5のVI−VI線による矢示断面図である。図5および図6の例は、図2および図3と、形鋼および根太鋼のサイズ、根太鋼と形鋼との結合状態が異なるだけで、その他は同じであり、同じ部分については図2および図3の説明を参照できる。
図5および図6では、根太鋼230は、長さ方向の両方の端部のそれぞれにおいて、根太鋼230の両側面に固定された山形鋼である一対の保持部材233a,233bを備えている。保持部材233a,233bは、山形鋼の一方の外壁面が根太鋼230の側面に接触し、他方の外壁面が、一方の外壁面の端部から根太鋼230とは反対側(外側)に垂直に延出した状態で配され、一方の外壁面を根太鋼230の側面に溶接することで固定されている。根太鋼230の長さ方向の両端部には、図2の場合と同様に、切り欠き部分231が形成されている。この切り欠き部分231の上端面と、山形鋼の他方の外壁面とが、おおよそ同じ高さとなるように、保持部材233a,233bが配されている。
保持部材233a,233bの、根太鋼230から外側に向かって延出する部分(つまり、上記の他方の外壁面を備える部分)には、ボルト孔235が形成されている。保持部材233a,233bのボルト孔235は、形鋼220aの上側フランジ222a,222bに形成されたボルト孔224の間隔に合わせて位置合わせされる。そして、形鋼220aの上側フランジ222a,222bに形成されたボルト孔224、および保持部材233a,233bに形成されたボルト孔235に貫通させたボルト(TCボルト)240の雄ネジに対して、ナット232を締め付けることで、根太鋼230の長さ方向の両端部が、それぞれ、形鋼220a,220bに固定される。
形鋼と根太鋼との結合状態のさらに他の例を図7aに示す。図7aは、図5と同じく、断面の外径サイズが300mm×300mmのH形鋼を形鋼として用い、幅125mm×高さ125mmの角形鋼管を根太鋼として用いた場合の重機支持機構の一部を示す平面図である。図7bは、図7aのVIIb−VIIb線による矢示断面図である。図7aおよび図7bの例は、根太鋼と形鋼との結合状態と、根太鋼の上面に補強プレートが設けられている点が異なるだけで、その他は図2および図3の例と同じであり、同じ部分については図2および図3の説明を参照できる。また、図7aおよび図7bの例は、図5および図6と、形鋼および根太鋼のサイズは同じである。
図7aおよび図7bでは、図2および図3の場合と異なり、根太鋼430の長さ方向の両端部において、切り欠き部分を設けていない。そのため、根太鋼430の両端部において、根太鋼430の上面が、形鋼220a,220bの上側のフランジ222a,222bの底面を支持している。従って、桁状鋼材の上面(具体的には、上側フランジ222a,222bの上面)の高さに比べて、上側フランジ222a,222bの厚みの分だけ、根太鋼430の上面の高さが低くなっている。重機支持機構上の重機の移動をよりスムーズにするとともに、根太鋼430を補強する目的で、形鋼220a,220b間において、根太鋼430の上面には、補強プレート436が固定されている。補強プレート436の厚みは、上側フランジ222a,222bの厚みとおおよそ同じにされている。図示例では、補強プレート436は、根太鋼430の長さ方向の中心よりも、形鋼220a,220b寄りに1個ずつ、合計2個設けられている。
図7aおよび図7bでは、図5および図6の保持部材233a,233bと同じものが保持部材433a,433bとして使用され、根太鋼430と形鋼220a,220bとを固定している。ただし、保持部材433a,433bの根太鋼430への固定状態が、図5および図6の場合とは異なり、保持部材433a,433bとして使用される山形鋼の断面L字状の一方の端面を根太鋼430の側面に溶接することで固定されている。保持部材233a,233bでは、山形鋼の一方の外壁面が形鋼220a,220bのウェブ221a,221bに対向し、他方の外壁面が形鋼220a,220bの上側フランジ222a,222bを底面から支えている。そして、図5および6の場合と同様に、上側フランジ222a,222bに形成されたボルト孔224と保持部材433a,433bのボルト孔435とを利用して、TCボルト240とナット232とにより根太鋼430が形鋼220a,220bに固定される。角形鋼管である根太鋼430を補強する目的で、根太鋼430の両端部において、根太鋼430内には、根太鋼430の小口端部が変形するのを防止するために、角形の補強プレート437が配置されている。補強プレート437は、補強プレート437の三方の端面を根太鋼430の内側の上面および両方の内側面に溶接することにより、根太鋼430内に固定されている。
重機支持機構において、桁状鋼材としては、形鋼や鋼管が使用できる。形鋼としては、H形鋼のほか、溝形鋼や山形鋼などが挙げられる。溝形鋼としては、例えば、チャンネル鋼やC形鋼と呼ばれるものが挙げられる。なお、根太鋼により上側フランジの底面を安定に支え易い観点からは、溝形鋼は、フランジの端部にリップ部を有さないものが好ましい。溝形鋼を用いる場合には、一対の溝形鋼は、ウェブから延びるフランジ部が互いに対向するように配置することが好ましい。なお、形鋼は、傾斜フランジを有するものであってもよいが、少なくとも上側フランジは、底面を根太鋼の上面で支え易いように、底面が平坦であるものを用いることが好ましい。鋼管としては、角形鋼管、丸形鋼管、および異形鋼管などが挙げられ、中でも角形鋼管や丸形鋼管が好ましい。
桁状鋼材のサイズも特に制限されず、重機の種類やサイズなどに応じて決定すればよい。桁状鋼材の高さ(例えば、形鋼では、上側フランジの上面から下側フランジの底面までの長さ)は、例えば、200〜600mmであり、250〜500mmであることが好ましい。桁状鋼材の幅(例えば、形鋼では、フランジの両方の端面間の長さ)は、例えば、200〜600mmであり、250〜500mmであることが好ましい。
桁状鋼材の長さは、一対の梁間に架け渡すのに十分な長さであればよい。桁状鋼材の長さは、例えば、2〜10mであり、3〜9mであることが好ましい。
一対の桁状鋼材間の第1間隔は、特に制限されず、重機の種類やサイズ、根太鋼の長さに応じて適宜決定すればよい。第1間隔は、例えば、600mm〜2000mmの範囲から選択でき、800mm〜1500mmであってもよい。なお、第1間隔とは、桁状鋼材の幅方向における中心間の長さ(例えば、形鋼では、一対の形鋼のウェブの中心間の長さ)とする。
桁状鋼材は、例えば、鉄鋼などで形成できる。
根太鋼を形鋼に固定するために形成されるボルト孔は、少なくとも形鋼の上側フランジに形成されていればよく、下側フランジにも形成されていてもよい。ボルト孔の間隔は特に制限されず、根太鋼を配置する第2間隔を考慮して適宜決定してもよい。市販やリースの形鋼にボルト孔が形成されている場合には、このボルト孔を利用して、根太鋼を配置する第2間隔を決定してもよい。鋼管を桁状鋼材として用いる場合、鋼管と根太鋼との連結には、根太鋼の形状や種類に応じて、公知の連結部材を利用できる。
根太鋼としては、特に制限されず、例えば、形鋼(H形鋼、I形鋼、T形鋼、溝形鋼など)を利用してもよいが、切り欠き部分を形成して重機支持機構の上面の高さを調節し易い観点からは、平形鋼、丸形鋼、角形鋼、その他の異形鋼などの他、鋼管を用いることが好ましい。中でも、軽量化の観点からは、鋼管を用いることが好ましい。鋼管の形状は特に制限されず、丸形鋼管、角形鋼管、異形鋼管などのいずれであってもよいが、重機を安定して支持することができるとともに、形鋼と結合させやすい観点からは、角形鋼管を用いることが好ましい。なお、根太鋼として形鋼を用いる場合には、根太鋼である形鋼のフランジの上面が重機を支えるように配置することが望ましい。根太鋼は、例えば、鉄鋼などにより形成できる。
根太鋼の長さは、両方の端部を、一対の桁状鋼材に固定できればよい。根太鋼の長さは、例えば、500mm〜1800mmの範囲から選択でき、600mm〜1300mmであってもよい。
根太鋼の高さは、桁状鋼材のサイズに応じて決定できる。形鋼を用いる場合には、根太鋼の端部を上側フランジおよび下側フランジの間の空間に収容できるように根太鋼の高さを選択してもよい。根太鋼の高さは、例えば、100〜500mmであり、100〜300mmまたは150〜300mmであることが好ましい。根太鋼の幅は、例えば、100〜500mmであり、100〜200mmであることが好ましい。
隣接する根太鋼間の第2間隔は、重機の種類やサイズに応じて適宜決定すればよい。第2間隔は、例えば、200mm〜1500mmの範囲から選択でき、300mm〜1000mmであってもよい。なお、第2間隔とは、隣接する根太鋼の幅方向における中心間の距離とする。
根太鋼の長さ方向の両端部に切り欠き部分を形成する場合、切り欠き部分の長さは、例えば、100〜300mmであり、150〜250mmであることが好ましい。根太鋼の長さ方向に沿う切り欠き部分の長さは、一対の形鋼のうち一方の形鋼の上側フランジの、ウェブから他方の形鋼に向けて延出する部分の長さよりも大きくすることが好ましい。
切り欠き部分を形成する場合、桁状鋼材の上面の高さ(例えば、形鋼では、上側フランジの上面)の高さ(高さ位置)と、根太鋼の上面(または上端)の高さ(高さ位置)とをほぼ同じにすることができる。なお、桁状鋼材の上面の高さと、根太鋼の上面(または上端)の高さが同じとは、これらの高さが完全に同じである場合に限らず、高さの差が小さい場合、例えば、高さの差が、根太鋼の高さの20%以内である場合も含むものとする。
保持部材は、山形鋼に限らず、根太鋼と形鋼とを固定できる形状であればよい。山形鋼の具体例としては、等辺山形鋼、不等辺山形鋼、不等辺不等厚山形鋼が挙げられる。保持部材のサイズは特に制限されないが、根太鋼と形鋼との固定を妨げないように調整することが好ましい。山形鋼の場合、山形鋼の幅(根太鋼の幅方向に平行な方向の長さ)は、例えば、75〜275mmであり、75〜175mmが好ましい。山形鋼の高さ(根太鋼の高さ方向に平行な方向の長さ)は、例えば、75〜125mmであり、75〜100mmが好ましい。山形鋼の長さ(根太鋼の長さ方向に平行な方向の長さ)は、例えば、75〜250mmであり、75〜125mmが好ましい。なお、図示例では、TCボルトを用いたが、保持部材の形状に合わせて、保持部材と形鋼とを固定するボルトやナットの種類は適宜選択すればよい。
根太鋼の上面や内部に配置する補強プレートの形状、サイズ、および個数は特に制限されない。根太鋼の上面に配置する補強プレートの厚みは、形鋼のフランジの厚みや、形鋼の上面と根太鋼の上面との高さの差異を考慮して、決定すればよい。
図示例では、桁状鋼材と根太鋼が、ボルトとナットにより固定される場合や山形鋼などの保持部材を用いて固定される場合を示したが、根太鋼の長さ方向の両端部を、一対の桁状鋼材のそれぞれに固定できる限り、その固定手段は特に制限されず、公知の固定手段を採用することができる。
なお、隣接する根太鋼間には、必要に応じて、根太鋼間に架け渡される小梁を設けてもよい。小梁は、例えば、小梁の長さ方向が、桁状鋼材の長さ方向と平行になるように、隣接する根太鋼間に架け渡してもよい。
重機支持機構1は、対向する一対の梁B間に架け渡されるが、梁Bの下部には、梁Bを支える支保工50を配置してもよい。従来の解体方法では、床上を重機が移動するために、床や梁を支える支保工を多数設置していたが、本実施形態では、梁Bの一部の領域に少数の支保工50を設けるだけでも、重機支持機構1や重機の重力を支えることができる。よって、作業工程を簡略化できる。支保工50を配置する位置は、特に制限されず、梁B全体に複数の支保工50を所定間隔で配置してもよい。中でも、重機支持機構1を支える梁Bにおいて、梁の長さ方向の中央付近が、柱Pから遠く、しなり易いため、この中央付近に支保工50を配置することが好ましい。梁Bの中央付近とは、梁の長さ方向における中央を中心とする、梁Bの長さの、例えば、1/4〜1/2の長さの領域である。
重機支持機構1は、上面が比較的平滑であるため、重機支持機構1の上面において重機を安定して移動させることができる。重機は、重機支持機構1の長さ方向に沿って、重機支持機構1上を移動させることができるが、図1の床Fの領域A1における配置のように複数の重機支持機構1を並べたり、領域A2や領域A3における配置のように連結したりすることで、重機の移動の自由度をさらに高めることができる。
複数の重機支持機構を並べて配置する場合、隣接する重機支持機構間の隙間に、重機のタイヤやキャタピラが入り込まずに、安定して重機を支持できるような間隔で配置することが望ましい。重機を安定に支持しやすい観点からは、隣接する重機支持機構間の間隔(具体的には、隣接する重機支持機構の対向する桁状鋼材の側端(または側面)間の距離)は、例えば、重機支持機構の幅よりも小さいことが好ましい。このような重機支持機構間の間隔は、移動させる重機の種類などに応じて適宜決定すればよい。
複数の重機支持機構1は、図1の床Fの領域A2に配置されるように、重機支持機構1の長さ方向に連結してもよい。これにより、桁状鋼材の長さがそれほど長くなくても、重機を移動させるのに通路となる重機支持機構を長く形成することができる。桁状鋼材や重機支持機構の搬入や搬出が容易であるとともに、市販やリースの桁状鋼材を利用し易くなる。複数の重機支持機構1を長さ方向に連結する場合には、領域A2におけるように、連結された重機支持機構1は、領域A2に複数対の梁B間に架け渡してもよい。これにより、連結された重機支持機構1の重量を複数の梁Bに分散させることができる。
また、長さ方向において連結された重機支持機構1は、必要に応じて、幅方向にも別の重機支持機構1と連結されていてもよい。この場合、重機が移動できる領域(通路)の幅を大きくすることができる。また、複数の重機支持機構1は、図1の床Fの領域A3に配置されるように、重機支持機構1の幅方向に連結してもよい。領域A3に配置されるように、床F上の多くの領域を覆うように重機支持機構1を連結すると、複数の重機を用いて作業を行なう場合に、重機を入れ替えたり、重機を待機させたりする場所として利用することができる。
領域A2における重機支持機構1と領域A1における重機支持機構1との間、領域A2において、2組の、長さ方向に連結された複数の重機支持機構1間の間、領域A2における重機支持機構1と領域A3における重機支持機構1との間は、連結されておらず、隙間が存在する。重機がこのような隙間上も移動する場合には、隙間の幅は、重機のタイヤやキャタピラが入り込まずに、安定して重機を支持できるような幅とすることが望ましい。このような重機支持機構間の隙間の幅は、移動させる重機の種類などに応じて適宜決定すればよい。
複数の重機支持機構1を長さ方向に連結する場合、図1の領域A2に示すように、重機支持機構1の長さ方向の一方の端部において、形鋼20a,20b間に、形鋼20bと側面同士が接触するように、連結する別の重機支持機構1の一方の形鋼20bの長さ方向の一方の端部が配置される。そして、重機支持機構1の形鋼20aと、別の重機支持機構1の他方の形鋼20aの長さ方向の一方の端部とは、側面同士が接触するように配置される。このような状態で、重機支持機構1の形鋼20aと、別の重機支持機構1の形鋼20aとが、連結金具60により固定される。
連結金具60による形鋼20a,20a間の連結状態を、図8aおよび図8bを用いてより詳細に説明する。図8aは、図1の領域VIIIaを模式的に示す拡大平面図である。図8bは、図8aのVIIIb−VIIIb線による矢示断面図である。連結される2つの重機支持機構1は、図8aに示すように、形鋼20aの一方の端部同士の側面が接触するように配置されている。
細長い板状の連結金具60は、2つの形鋼20aを連結するのに十分な長さを有するとともに、ボルトを締結可能な幅を有する。連結金具60は、長さ方向の一方の端部に形成された円形のボルト孔61aと、長さ方向における中央付近から他方の端部にかけて形成された長孔61bとを有している。接触する形鋼20a間に架け渡された連結金具60の一方の端部は、ボルト孔61aと、ボルト孔61aと重なる一方の重機支持機構の形鋼20aのフランジ22aに形成されたボルト孔24とを貫通させたボルト62aを、フランジ22aの底面側に配置したナット63aに締結させることにより固定されている。また、連結金具60の長孔61b側では、長孔61bと、長孔61bと重なる他方の重機支持機構の形鋼20aのフランジ22aに形成されたボルト孔24とを貫通させたボルト62bを、フランジ22aの底面に接触するように配置されたナット63bに締結させることにより、形鋼20aに対して固定されている。なお、連結金具などの連結部としては、図8a、図8bの例に限らず、隣接する形鋼間を連結できる限り、公知のものが利用できる。
なお、H形鋼である形鋼20aの長さ方向の端面には、エンドプレート(または小口プレート)25が溶接により固定されている。これにより、形鋼20aの端部が補強される。エンドプレート25には、エンドプレート25の高さ方向の中央において、エンドプレート25を幅方向に横切るように並んだ一対の板状部25aが固定されている。各板状部25aは、エンドプレート25から形鋼20aの長さ方向に沿って延びており、エンドプレート25およびウェブ21aに溶接されている。各板状部25aの平面形状は、矩形の1つの角部を切り欠いた形状を有している。なお、この切り欠き部分は、板状部25aのエンドプレート25とは反対側で、かつウェブ21aとは反対側に形成されている。エンドプレート25は、板状部25aよりも上側に2つ、下側に2つの合計4つのボルト孔25bを有しており、上側のボルト孔25bと下側のボルト孔25bとは板状部25aを中心に上下対称の位置に形成されている。このようなボルト孔25bを有するエンドプレート25を用いる場合、例えば、後述のスロープ機構と連結する場合など、形鋼の端面同士を連結する際(形鋼を直線的に連結する際)にボルト孔25bを連結に利用することができる。なお、図8a、図8bには、形鋼20aの端部のエンドプレート25について示したが、図1における形鋼20bの端部にも同様のエンドプレート25が固定されており、形鋼20aの端部と同じような構造となっている。
複数の重機支持機構1を幅方向に連結する場合、別々に作製した重機支持機構1を幅方向に並べて、連結金具などで連結させてもよい。この場合、例えば、隣接する重機支持機構の桁状鋼材間を連結させてもよい。また、互いに隣接する重機支持機構の一方に含まれる一対の桁状鋼材の一方と他方に含まれる一対の桁状鋼材の一方とが共通であってもよい。つまり、一方の重機支持機構の一方の桁状鋼材を、他方の重機支持機構の一対の桁状鋼材のうちの一方として利用してもよい。特に、H形鋼は、ウェブを中心にウェブの両方の面から外側に向かってそれぞれフランジが延びているため、一方のフランジに、一方の重機支持機構1の根太鋼30を固定し、他方のフランジに、他方の重機支持機構1の根太鋼30を固定すれば、隣接する2つの重機支持機構1を幅方向に連結することができる。このような連結形態では、連結金具が重機支持機構の上面に配置されることもないため、重機の重量が連結金具に加わることを抑制できるとともに、構造的にも高い強度を得ることができる。なお、図1の領域A2や領域A3では、幅方向に連結された複数の重機支持機構1は、長さ方向の端部が互いに揃った状態となっているが、この場合に限らず、端部をずらした状態で連結されていてもよい。
組み立てた重機支持機構を移動させる際に、クレーンなどの重機による移動が容易になるように、重機支持機構には、吊り部材を設けてもよい。図9aおよび図9bに、根太鋼に吊り部材を設けた例を示す。図9aは、吊り部材を設けた根太鋼の概略側面図である。図9bは、図9aのIXb−IXb線による矢示断面図である。
図9aおよび図9bは、図5および図6の根太鋼230と同じ根太鋼に吊り部材300を設けた例である。図示例では、吊り部材300は、間隔を開けて、根太鋼230の両側面および底面に接するように配された一対の吊りピース301と、一対の吊りピース301間を連結する第1補強部材302a,302bと第2補強部材303とを備えている。第1補強部材302a,302bは、根太鋼230の両側面から、第2補強部材303は、根太鋼230の底面から、それぞれ、根太鋼230および吊りピース301を補強している。
図9cは、吊りピース301の概略平面図である。吊りピース301は、根太鋼230の底面側から吊りピース301を嵌め込むための切り欠き部301bを備えている。吊りピース301は、鋼板で形成され、吊りピース301の、切り欠き部301bの両側に位置する領域には、切り欠き部301bを挟んで、一対の吊りピース孔301aが形成されている。吊りピース孔301aは、重機などにより上方から吊り易いように、各吊りピース301において、根太鋼230の上面側に設けられている。
一対の吊りピース301は、間隔を開けて、鋼板の主面同士が対向するように配されるとともに、吊りピース301の、切り欠き部301bを囲む端面が、それぞれ根太鋼230の両側面および底面を三方から取り囲むように配される。そして、切り欠き部301bを囲む端面は、根太鋼230の両側面および底面に対して溶接され、これにより、吊りピース301は、根太鋼230に対して固定される。
図示例において、一対の吊りピース301を連結する第1補強部材302a,302bおよび第2補強部材303は、いずれも断面がコ字状の溝形鋼で構成されている。第2補強部材303を構成する溝形鋼のウェブの背面は、根太鋼230の底面に固定され、第2補強部材303の長さ方向の両端面は、一対の吊りピース301の対向する主面にそれぞれ固定されている。補強効果を高める目的で、第2補強部材303の内側には、第2補強部材303の幅方向に沿って、スチフナー304が設けられている。スチフナー304は溶接により第2補強部材303の内側の壁面に固定されている。
第1補強部材302a,302bは、それぞれの溝形鋼のウェブの背面により、それぞれ、根太鋼230の両側面を挟むとともに、根太鋼230の底面に固定された第2補強部材303を、両方のフランジを外側から挟むように配されている。そして、第1補強部材302a,302bのウェブの背面は、それぞれ、根太鋼230の両側面および第2補強部材303の両方のフランジの外側の面に対して、溶接により固定されている。また、第1補強部材302a,302bの長さ方向の両端面は、一対の吊りピース301の対向する主面にそれぞれ固定されている。
図9d〜図9fは、図9aおよび図9bの吊り部材300を利用して、重機支持機構を持ち上げたり、移動させたりする場合を説明するための模式図である。
図9dは、根太鋼に吊り部材を設けた重機支持機構をワイヤで吊った状態を、根太鋼の幅方向の断面から見た場合の模式図である。図9eは、根太鋼に吊り部材を設けた重機支持機構をワイヤで吊った状態を、根太鋼の側面側から見た場合の模式図である。
図9dおよび図9eは、クレーン等の重機でワイヤを用いて、重機支持機構を吊る場合の例を示している。これらの図において、吊り部材300は、重機支持機構の形鋼220a,220b間に架け渡された複数の根太鋼230のうち、一部の根太鋼230に取り付けられている。図9dに示す根太鋼230は、図5および図6の場合と同様に、形鋼220a,220bに固定されている。吊り部材300の吊りピース孔301aには、シャックル305を介して、ワイヤWが取り付けられている。そして、重機でワイヤWを引張ることで、重機支持機構を吊ることができる。
このように、図9aおよび図9bに示す吊り部材300を用いる場合、吊り部材300を介して重機支持機構を吊る際も、根太鋼の底面および側面から重機支持機構を支えることができるため、重機支持機構を安定に持ち上げたり、移動させたりすることができる。
吊り部材300では、第1補強部材302a,302bである溝形鋼のフランジが、根太鋼230の両側面から外方に延出しており、フランジと溝形鋼のウェブとで囲まれる空間により根太鋼230の両側面に凹部302cが形成された状態となっている。そのため、この凹部302cを利用して、重機支持機構を吊る(または掴む)こともできる。このような実施形態を図9fに示す。図9fは、図9dと同様に、根太鋼に吊り部材を設けた重機支持機構を、根太鋼の幅方向の断面から見た場合の模式図である。この例では、根太鋼230の両側面に固定した、吊り部材300の第1補強部材である溝形鋼において、フランジとウェブとの間に形成される凹部302cに、圧砕機のはさみ状のビームの先端を差し込んで、根太鋼230の両側面側からビームで挟むことができる。このようにして圧砕機などの重機により、吊り部材300を介して、重機支持機構を吊る(または掴む)ことができる。
図10aおよび図10bに、根太鋼に吊り部材を設けた他の例を示す。図10aは、他の吊り部材を設けた根太鋼の概略側面図である。図10bは、図10aのXb−Xb線による矢示断面図である。これらの例では、図7aおよび図7bの根太鋼430と同じ根太鋼に吊り部材500を設けた例である。
吊り部材500は、一対の吊りピース301間に、リブが設けられている以外は、図9aおよび図9bの場合と同じである。吊り部材500では、一対の吊りピース301間に、2つのリブ505が間隔を開けて配置されている。各リブ505は、厚みを有する直角三角形状であり、直角を挟む2つの端面を、それぞれ、根太鋼430の側面と、第1補強部材302a,302bを構成する溝形鋼の、上側に配置されたフランジの外側の面とに、溶接することにより固定されている。このようなリブを設けることで、特に、第1補強部材である溝形鋼において、フランジとウェブとの間に形成される凹部302cを利用して重機支持機構を吊ったり、移動させたりする場合の安定性を高めることができる。
吊り部材の各構成部材は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板などで形成できる。
吊り部材の構造は、根太鋼および/または形鋼に固定して、重機等により、重機支持機構を、安定に持ち上げたり、移動させたりすることができればよく、図9a、図9b、図10a、および図10bに示す構造に限らない。図示例では、一対の吊りピースを固定して用いたが、この場合に限らず、根太鋼や形鋼に安定に固定できる限り、1つの吊りピースを用いてもよい。また、一対の吊りピースの代わりに、第1補強部材および第2補強部材の長さ方向の両端面に一対の鋼板をそれぞれ固定させたものを吊り部材として利用してもよい。この場合には、図9fの場合に準じて第1補強部材に形成される凹部を利用して重機で重機支持機構を吊る(または掴む)ことができる。図9aのように、一対の吊りピースを根太鋼に固定する場合には、吊る際のバランスがとり易いように、根太鋼の長さ方向の中心を境に等間隔で一対の吊りピースを設けることが好ましい。
なお、吊り部材を用いて重機支持機構を吊る場合には、例えば、重機支持機構を吊り上げたり、重機支持機構を吊った(または掴んだ)状態で上下方向や水平方向などの様々な方向に移動させたりする場合が含まれる。
第1補強部材および第2補強部材として、溝形鋼を用いた場合を図示したが、この場合に限らず、吊り部材を固定する根太鋼や形鋼の形状やサイズなどに応じて、適宜選択すればよい。例えば、図9a、図9b、図10a、および図10bのように、根太鋼として角形鋼管を用いる場合には、例えば、補強部材として所定の長さの角形鋼管を長さ方向に沿って半分にカットしたものを溝形鋼の代わりに用いてもよい。また、例えば、根太鋼を底面側から補強する第2補強部材には、溝形鋼や角形鋼管を長さ方向に沿って半分にカットしたものを用い、根太鋼を両側面側から補強する第1補強部材として、山形鋼を用いてもよい。
また、リブの形状や個数も上記の場合に限らず、重機支持機構を吊ったり、移動させたりする際の安定性などを考慮して決定すればよい。
本発明の一実施形態では、複数の重機支持機構を、上層階と下層階とに設置して、上層階の重機支持機構と下層階の重機支持機構とをスロープ状の重機支持機構(スロープ機構)とで連結してもよい。このような構造とすることで、上層階と下層階との間の重機の移動を容易に行なうことができる。このような例を、図11に示す。
図11は、上層階の重機支持機構と下層階の重機支持機構とを連結させた状態を説明するための概略側面図である。図12は、図11における上層階の重機支持機構とスロープ機構との連結部およびその周辺を拡大した概略平面図を示す。
建物の上層階Uおよび下層階Dには、それぞれ、重機支持機構1が配置されており、上層階Uの重機支持機構1と下層階Dの重機支持機構1とは、上層階Uの重機支持機構1の長さ方向の一方の端部から斜め下方に延びるスロープ機構71により連結されている。スロープ機構71は、重機支持機構1と類似の形状を有している。つまり、スロープ機構71は、第1間隔を開けてウェブ同士が対向するように並んだ一対の形鋼20a,20bと、一対の形鋼20a,20b間に第2間隔を開けて架け渡された複数の根太鋼130と、を備えている。
スロープ機構71は、重機支持機構1とは根太鋼の構造が異なるだけで、その他は重機支持機構1と同じである。よって、上述の重機支持機構1についての説明を参照できる。なお、スロープ機構71における第1間隔や第2間隔は、スロープ機構71上を移動する重機の重量などを考慮して、適宜決定すればよく、重機支持機構1における第1間隔や第2間隔とそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
スロープ機構71は、重機の滑りを抑制する突起部を備えている。より具体的には、スロープ機構71において、一対の形鋼20a,20bに架け渡される根太鋼130は、突起部130aを備えている。図示例では、突起部130aは、根太鋼130の上面から上側に突出している。図13は、根太鋼130を模式的に示す側面図である。図示例では、根太鋼130の上面に根太鋼130の幅よりも小さい幅で根太鋼130の長さよりも短い角形鋼が、溶接により固定されている。この角形鋼が突起部130aを構成している。突起部130aは、重機がスロープ機構71を移動する際の滑り止めとして機能する。なお、根太鋼130は、突起部130aを有する点で、根太鋼30とは異なるだけで、根太鋼130のサイズ、材質、形状などは、根太鋼30についての説明を参照できる。
図示例では、突起部130aとして、角形鋼を溶接した場合を示したが、突起部130aを重機の滑り止めとして機能させることができる限り、突起部130aの形状、サイズ、個数、材質などは適宜選択できる。突起部130aは、スロープ機構71の根太鋼130の少なくとも一部に形成すればよく、全ての根太鋼130に形成してもよい。滑り止めの効果を有効に発揮させる観点からは、突起部130aの高さは、例えば、10〜50mmであり、20〜40mmであることが好ましい。
図14は、図12のXIV−XIV線による矢示断面図である。スロープ機構71の上層階U側の端面には、重機支持機構1の場合と同様に、エンドプレート25が固定されており、エンドプレート25には、連結部材80aが固定されている。同様に、上層階U側の重機支持機構1のスロープ機構71側の端面に固定されたエンドプレート25には、連結部材80bが固定されている。
連結部材80a、80bは、それぞれ、平板状の支持板81aと、支持板81aの端部から支持板81aに対して垂直な方向に延びる平板状の端板81bとを備える断面L字状の支持部材81と、端板81bから端板81bに対して垂直な方向に延びる平板状の接続部82とを備えている。重機支持機構1側の連結部材80aでは、支持部材81は、支持板81aが形鋼20bの上面に沿うとともに、端板81bがエンドプレート25全体を覆うように配置されている。スロープ機構71側の連結部材80bでは、支持部材81は、支持板81aが形鋼20bの底面に沿うとともに、端板81bがエンドプレート25全体を覆うように配置されている。
スロープ機構71側の支持板81aには、スロープ機構71の形鋼20bの下側フランジ23bに形成されたボルト孔24と重なる位置にボルト孔83が形成されており、これらのボルト孔を支持板81a側から貫通するボルト86は、下側フランジ23bの上面側に配置したナット88に締結されている。これに対して、重機支持機構1側の支持板81aには、重機支持機構1の形鋼20bの上側フランジ22bに形成されたボルト孔24と重なる位置にボルト孔83が形成されており、これらのボルト孔を支持板81a側から貫通するボルト86は、上側フランジ22bの底面側に配置したナット88に締結されている。
スロープ機構71側および重機支持機構1側の連結部材80a、80bの双方において、端板81bには、エンドプレート25のボルト孔25bと重なる位置にボルト孔84が形成されている。ボルト孔84およびボルト孔25bを端板81b側から貫通するボルト86は、エンドプレート25の内側に配置されたナット88に締結されている。
スロープ機構71側および重機支持機構1側の連結部材80a、80bの双方において、接続部82は、端板81bの幅方向の中央において、端板81bの高さ方向に沿って配置されている。そして、接続部82は、端板81bに対して溶接により強固に接合されている。重機支持機構1の端部からスロープ機構71側に向かって延出される接続部(第1接続部)82と、スロープ機構71の端部から重機支持機構1側に向かって延出される接続部(第2接続部)82とは、互いに対向する側面が接触した状態で重ねられ、連結される。双方の接続部82には、面方向の中心付近にボルト孔85が形成されており、双方の接続部82のボルト孔85を貫通するボルト87は、ボルト87の脚部側に配置されたナット89に締結される。この締結により、接続部82同士が連結される。このように、接続部の中心付近をボルト87で固定することで、このボルト87を中心軸として周方向にスロープ機構71を動かすことができるため、スロープ機構71の設置や固定が容易になる。
なお、スロープ機構71および重機支持機構1の形鋼20bの端部に配置された連結部材80a,80bについて説明したが、形鋼20aの端部にも、形鋼20bの場合と同様に、連結部材80a,80bが設けられている。そして、スロープ機構71と重機支持機構1の形鋼20a間も、連結部材80a,80bにより連結されている。
連結部材80a,80bのそれぞれの構成部材は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板などで形成できる。
接続部82の厚みは、例えば、10〜25mmであり、15〜20mmであることが好ましい。支持板81aおよび端板81bの厚みも、接続部82の厚みと同様の範囲から選択できる。
上層階Uの重機支持機構1と下層階Dの重機支持機構1との間の重機移動をできるだけスムーズに行う観点から、スロープ機構71の下層階D側の端部は、下層階Dの重機支持機構1上に配置することが好ましい。このとき、重機支持機構1にストッパを設けて、スロープ機構71の、下層階Dの重機支持機構1側の端部をストッパにより支えることが好ましい。これにより、スロープ機構71のずれを規制することができる。
図15aに、図11におけるスロープ機構の下層階側の端部およびその周辺を拡大した概略側面図を示す。図15bは、図15aにおいて形鋼上にストッパを配置した状態を模式的に示す平面図である。
下層階Dに設置された重機支持機構1は、スロープ機構71の端部を支えるストッパ90を備えている。図示例では、ストッパ90は、上側フランジ22bの上面から上側に突出した形状を有している。ストッパ90は、底板91と、底板91の一方の端部(スロープ機構71側に配置される端部)から、底板91に対して垂直上方に延びる矩形の壁部92とを備えている。壁部92の幅方向の両端部には、壁部92および底板91の壁部92側の幅方向の両端部と一体化し、壁部92を支える一対のリブ93が形成されている。底板91には、形鋼20bの長さ方向に沿う長孔91aが形成されており、長孔91aを上側フランジ22bに形成されたボルト孔24と重ねた状態で、ボルト94をこれらの孔に貫通させて、上側フランジ22bの底面側に配置したナット95に締結することで、ストッパ90は形鋼20bに固定されている。同様のストッパ90は、下層階Dに設置された重機支持機構1の形鋼20a上にも形成されている。形鋼20aおよび20b上の一対のストッパ90は、壁部92が同一直線上になるように配置されており、これらの一対のストッパ90により、スロープ機構71の下層階D側の端部が支えられている。
なお、ウェブから延びる片側のフランジにストッパ90が固定されている例を説明したが、2つのストッパ90をウェブから延びる両方のフランジにそれぞれ固定してもよい。なお、また、ウェブから延びる両方のフランジにまたがるように形成したストッパを、両方のフランジに固定してもよい。ストッパ90の底板91には、1つの長孔91aを形成したが、この場合に限らず、円形のボルト孔を形成してもよい。底板91に形成されるボルト孔や長孔の個数は制限されず、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。
ストッパ90は、スロープ機構71の長さや下層階Dの高さなどに応じて、スロープ機構71の下層階D側の端部を支えることができる、下層階Dの重機支持機構1の適当な位置に設ければよい。
ストッパ90の各部材は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板などで形成できる。
なお、接続部の構造は図11および図14に示した例に限らず、重機支持機構とスロープ機構とを連結できればよい。できるだけ重機の移動の妨げや重機支持機構の設置の妨げにならないように、接続部は、重機支持機構の端部とスロープ機構との端部との間や、重機支持機構およびスロープ機構の側面に設けることが好ましい。
図16aは、上層階の重機支持機構とスロープ機構との連結部の他の実施形態を説明するための概略平面図である。図16bは、図16aのXVIb−XVIb線による矢示断面図である。図16aおよび図16bでは、一部の根太鋼に吊り部材が装着されており、連結部の構造および形鋼と根太鋼との結合状態が異なる以外は、図12および図14の例と同じであり、これらの図の説明を参照できる。根太鋼230に対する吊り部材300の装着の状態は、図9aおよび図9b、並びにその説明を参照できる。また、形鋼220a,220bと根太鋼230との結合状態は、図5および図6、並びにその説明を参照できる。スロープ機構271の根太鋼230は、図12および図14の場合と同様に、重機がスロープ機構271を移動する際の滑り止めとして機能する突起部230aを備えている。突起部230aについては、図12および図14、並びに突起部130aの説明を参照できる。
スロープ機構271の上層階U側の端面および上層階U側の重機支持機構201のスロープ機構271側の端面には、それぞれ、図14の場合と同様にエンドプレート25が固定されている。そして、スロープ機構271の上層階U側のエンドプレート25には、連結部材280が固定され、重機支持機構201のスロープ機構271側のエンドプレート25には、連結部材380が固定されている。
重機支持機構201の端面にエンドプレート25を介して固定された連結部材280は、平板状の支持板281aと、支持板281aの端部から支持板281aに対して垂直な方向に延びる平板状の端板281bとを備える断面L字状の支持部材281、および端板281bから端板281bに対して垂直な方向に延びる一対の板状の接続部282a,282bを備える。連結部材280では、支持部材281は、支持板281aが形鋼220bの上面に沿うとともに、端板281bがエンドプレート25全体を覆うように配置されている。
一方、スロープ機構271の端面にエンドプレート25を介して固定された連結部材380は、平板状の支持板381aと、支持板381aの端部から支持板381aに対して垂直な方向に延びる平板状の端板381bとを備える断面L字上の支持部材381、および端板381bから端板381bに対して垂直な方向に延びるかぎ状の接続部382とを備えている。連結部材380では、支持部材381は、支持板381aが形鋼220bの底面に沿うとともに、端板381bがエンドプレート25全体を覆うように配置されている。
一対の板状の接続部282a,282bには、それぞれ、面方向の中心付近にボルト孔285が設けられている。双方の接続部282a,282bを貫通する丸鋼287は、双方の端部がそれぞれ接続部282a,282bに対して溶接され、接続部282a,282bに対して固定される。このようにして、丸鋼287は、一対の対向する接続部282a,282b間に架け渡された状態となる。そして、この丸鋼287に、スロープ機構271の端面に配された連結部材380の接続部382のかぎ状の部分を架けることで、重機支持機構201に、スロープ機構271を容易に連結させることができる。
図16cは、図16aのXVIc−XVIc線による矢示断面図である。かぎ状の接続部382を、丸鋼287に安定かつ容易に架けられるように、一対の接続部282a、282b間の距離は、丸鋼287の上部付近から接続部282a,282bの上端にかけて大きくなっている。この接続部282a,282bの上側から下側に向かって、かぎ状の接続部382を、接続部282a,282b間のスペースに挿入して、丸鋼287に接続部382のかぎの部分を架けることで、重機支持機構201とスロープ機構271とが連結される。これらの機構を連結する際には、重機支持機構201やスロープ機構271に設けた吊り部材300を利用して各機構を吊り上げたり、移動させたりすればよい。
図16a,図16bに示されるように、重機支持機構201のスロープ機構271側の端部には、重機支持機構201およびスロープ機構271間を重機が移動する際に、滑り止めとなるように、金属部材383が設けられている。金属部材383は、重機支持機構201の端面に配された連結部材280の平板状の支持板281aに沿うように配された第1プレート部分383aと、第1プレート部分383aの短手方向の一方の端部から第1プレート部分383aに対して垂直に延びる第2プレート部分383bと、第2プレート部分383aとは反対側に延びる第3プレート部分383cとを備える。金属部材383は、第1プレート部分383aの長手方向が、一対の形鋼220a,220b間に架け渡されるように配される。第1プレート部分383aの長手方向の両端部は、それぞれ、形鋼220a,220bのスロープ機構271側の端部において、形鋼220a,220bと、第1プレート部分383aと形鋼220a,220bとの間に介在する支持板281aとともに、これらを貫通するTCボルト284aとTCボルト284aの脚部側から装着されたナット284bとにより固定されている。金属部材383において、第1プレート部分383aと支持板281aとを面接触した状態で重ねられるように、第2プレート部分383bとは反対側(つまり、重機支持機構201の下方)に延びる第3プレート部分383cは、一対の形鋼220a,220b間に形成される空間に挿入した状態となるように形成されている。
一般に、建物の解体作業では、上層階の一部の床(スラブ)を取り外して開口を形成し、この開口より、上層階で解体された床(スラブ)、梁、柱、壁などを、必要に応じてクレーンなどを用いて、運搬車両(トラックなど)が進入できる階(1階など)に下し、運搬車両に積み込んで搬出する。近年では、地下階が形成されていることが多いため、このような運搬車両が行き来する階では、床に大きな重量が加わり安全性を確保し難い。
このような運搬車両が進入する階において、本実施形態にかかる重機支持機構を、床を支える一対の梁間に架け渡すように敷設してもよい。この場合、重機支持機構に加わる重力を床だけでなく、梁に分散させることができ、高い安全性を確保し易くなる。従来、このような用途では、補強用コンクリートを利用したり、下層階に支保工を設置したりしている。本実施形態では、このような補強用コンクリートや支保工に代えて重機支持機構を利用することができるため、作業効率を高めることができる。
図17は、地下階を有する建物の1階の床に、重機支持機構を敷設した状態を模式的に示す平面図である。重機支持機構1は、図1の領域A3に配置された重機支持機構1のように、幅方向に連結されており、床Fを覆うように敷設されている。そして、根太鋼30間や形鋼20a,20b間の隙間には、床Fを覆うように、砕石101が敷き込まれている。砕石101を敷き込むことで、重機支持機構1を配置した領域と、重機支持機構1が配置されていない領域とで、運搬車両を含む重機を支える面の段差を小さくすることができ、床全体における運搬車両を含む重機の移動が容易になる。必要に応じて、重機支持機構1が配置されていない領域に形鋼102を配置してもよい。このとき、形鋼102は、一対の梁間に架け渡すように配置することが好ましい。また、重機支持機構1上と建物外との間で、運搬車両を含む重機の進入および退出を容易にするために、鉄板や砕石などで形成されたスロープ103を配置してもよい。