以下、図面を参照して本開示の細胞容器用治具、細胞容器取出方法、及び細胞取扱方法の実施形態を説明する。
[実施形態1]
図1は、本開示の実施形態1に係る細胞容器用治具100の斜視図である。図2は、図1に示す細胞容器用治具100の平面図である。図3は、図2のIII−III線に沿う細胞容器用治具100の断面図である。なお、図1及び図3では、細胞容器用治具100とともに細胞容器1を示し、図2では、細胞容器1の図示を省略している。
本実施形態の細胞容器用治具100によって取り扱われる細胞容器1は、例えば、細胞を収容して培養したり、培養した細胞を収容して一定の期間に亘って保存したり、顕微鏡観察や所定の操作を行うために細胞を一時的に収容したりするための容器である。すなわち、細胞容器1は、例えば、細胞培養容器、細胞保存容器、及び細胞観察容器として用いることができる。
細胞容器1に収容される細胞としては、例えば、受精卵、卵細胞、ES細胞(胚性幹細胞)及びiPS細胞(人工多能性幹細胞)等、哺乳動物及び鳥類の細胞を挙げることができる。ここで、哺乳動物は、温血脊椎動物を指し、例えば、ヒト及びサルなどの霊長類、マウス、ラット及びウサギ等の齧歯類、イヌ及びネコ等の愛玩動物、並びにウシ、ウマ及びブタ等の家畜が挙げられる。
細胞容器1の素材は、特に限定されず、無機材料及び有機材料のいずれも用いることができる。無機材料としては、例えば、金属、ガラス、及びシリコン等を用いることができる。有機材料としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂等のプラスチック材料を用いることができる。なお、細胞容器1に収容された細胞を観察するために、細胞容器1の素材は可視光に対する透明性、すなわち透光性を有することが好ましい。
図示の例において、細胞容器1は、短円筒形のディッシュ型であり、有底短円筒形の容器本体2と、円板形の蓋部3とを有している。
容器本体2は、側壁2aと底壁2bとを有し、側壁2aの上端部の内側に開口部2cを有している。図示は省略するが、容器本体2は、底壁2bの上面に細胞の培養に適した表面加工が施された細胞培養領域を有してもよい。また、容器本体2は、底壁2bの上面を区画する隔壁を有してもよく、当該隔壁によって区画された細胞保持領域を有してもよい。また、容器本体2は、隔壁によって区画された細胞保持領域にマイクロウェルを有してもよい。
蓋部3は、容器本体2の側壁2aの外周面に沿って容器本体2の底壁2bに向けて延伸する短円筒状の外縁部3aを有し、外縁部3aの下端が容器本体2の2aの上端部の外周面に設けられた段差部2dに係合することで、容器本体2の開口部2cを閉塞する。
本実施形態の細胞容器用治具100は、細胞容器1が載置される載置部10と、該載置部10に載置された細胞容器1の底面1bの少なくとも一部を露出させる開口部20と、載置部10に載置された細胞容器1の側面1aを支持する側面支持部30と、を備えている。詳細については後述するが、本実施形態の細胞容器用治具100は、平面視で開口部20と重なる位置に配置された押上部50を備えている。
本実施形態の細胞容器用治具100において、細胞容器1が載置される載置部10は、円環板状の形状、すなわち中央部に円形の開口部20を有する円板状の形状を有している。載置部10は、細胞容器1の底面1bを下方から支持する概ね水平な載置面11を有し、載置部10に載置された細胞容器1の底面1bの高さ位置を基準位置P0に支持し、細胞容器1を概ね水平に保持する。
開口部20は、載置部10に設けられ、載置部10に載置された細胞容器1の底面1bの一部、より具体的には、細胞容器1の底面1bの外縁部を除く中央部を露出させる。開口部20は、平面視において、細胞容器1の底壁2bの上面の細胞培養領域、細胞保持領域、及びマイクロウェル等、細胞容器1において細胞が収容される細胞収容領域に重なる位置に形成することができる。
本実施形態の細胞容器用治具100において、側面支持部30は、細胞容器1の側面1aに沿う円筒状に形成され、上端に開口部31を有し、下端が載置部10の外縁部に連結されている。側面支持部30は、細胞容器1の側面1aに対向して側面1aを支持することで、細胞容器1が側面1aに交差する方向、例えば底面1bに平行な方向に移動するのを防止している。より具体的には、載置部10の上面が水平面である場合には、側面支持部30は、細胞容器1が水平方向に移動するのを防止する。
側面支持部30と細胞容器1の側面1aとは、隙間なく接していてもよいが、僅かな隙間を有して対向していてもよい。側面支持部30と細胞容器1の側面1aとの間に適切な隙間を設けることで、細胞容器1の移動を防止しつつ、側面支持部30の内側への細胞容器1の配置や、側面支持部30の内側に配置された細胞容器1の取出しを容易にすることができる。例えば、細胞容器1が直径35mmの円筒状のディッシュである場合には、側面支持部30と細胞容器1の側面1aとの間に、0.1mmから10mm程度、より好ましくは1mmから3mm程度の隙間を形成することができる。
載置部10及び側面支持部30は、例えば顕微鏡等の装置において細胞容器1を載置する載置台の一部として構成することができる。また、載置部10及び側面支持部30は、例えば顕微鏡等の装置の載置台に着脱自在に設けられた細胞容器収容部40として構成することもできる。
すなわち、細胞容器用治具100は、細胞容器1の少なくとも一部を収容する細胞容器収容部40を備えることができる。細胞容器収容部40は、載置部10と側面支持部30とを有する有底円筒状のケース状の部材であり、底部の載置部10に細胞容器1の底面1bの一部を露出させる開口部20を有している。細胞容器収容部40は、例えば顕微鏡等の装置の載置台に取り付け及び取外しが可能な取付構造を有することができる。
細胞容器収容部40の素材は、特に限定されず、無機材料及び有機材料のいずれも用いることができる。無機材料としては、例えば、金属、ガラス、及びシリコン等を用いることができる。有機材料としては、例えば、細胞容器1と同様にプラスチック材料を用いることができる。なお、細胞容器1に収容された細胞の観察を容易にするために、細胞容器収容部40の素材は、可視光に対する透明性すなわち透光性を有してもよい。
図4は、図3に示す押上部50が押上位置P1にある細胞容器用治具100及び細胞容器1の断面図である。
押上部50は、図2に示すように、平面視で開口部20と重なる位置に凸部51が配置されている。また、押上部50は、例えば載置部10と押上部50とを相対的に移動させる駆動機構によって、載置部10に対して移動可能に設けられている。すなわち、載置部10を押上部50に対して移動可能に設けてもよく、押上部50を載置部10に対して移動可能に設けてもよい。
より詳細には、押上部50は、図3に示す載置部10に載置された細胞容器1の底面1bの高さ位置である基準位置P0又は該基準位置P0より下方の下方位置と、図4に示す基準位置P0より上方の押上位置P1との間で、載置部10と相対移動可能に設けられている。押上部50は、載置部10と相対的に移動して、基準位置P0又は下方位置から押上位置P1へ移動することで、細胞容器1の底面1bを基準位置P0から押上位置P1に押し上げる。
押上部50の素材は、特に限定されず、無機材料及び有機材料のいずれも用いることができる。無機材料としては、例えば、金属、ガラス、及びシリコン等を用いることができる。有機材料としては、例えば、細胞容器1と同様のプラスチック材料を用いることができる。なお、細胞容器1に収容された細胞の観察を容易にするために、押上部50の素材は、可視光に対する透明性すなわち透光性を有してもよい。
本実施形態の細胞容器用治具100において、押上部50は、凸部51と、ガイド部52と、連結部53とを有している。凸部51は、連結部53の上面から上方に突出し、図4に示すように、押上部50が押上位置P1にあるときに、開口部20に挿通され、頂部が細胞容器1の底面1bに当接して細胞容器1を下方から支持する。これにより、凸部51は、細胞容器1の底面1bの高さ位置を、基準位置P0よりも上方の押上位置P1に配置する。
押上部50は、細胞容器1の底面1bを支持する頂部、すなわち凸部51の頂部に、緩衝部材54を有してもよい。緩衝部材54の素材としては、例えば、天然ゴム、合成天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレン・酢酸ビニルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多流化ゴム等の各種のゴムを用いることができる。
本実施形態の細胞容器用治具100において、基準位置P0から押上位置P1までの高さH1と、基準位置P0からの側面支持部30の高さH2とは、図4に示すように、細胞容器1の底面1bが押上位置P1にあるときの細胞容器1の上端部が側面支持部30から細胞容器1を把持するための把持高さH3で露出する寸法関係に設定されている。
より具体的には、本実施形態の細胞容器用治具100において、基準位置P0から押上位置P1までの高さH1と、基準位置P0から側面支持部30の上端までの高さH2とは、図4に示すように、細胞容器1の底面1bが押上位置P1にあるときの細胞容器1の上端部が側面支持部30の上端から細胞容器1を把持するための把持高さH3で突出する寸法関係に設定されている。ここで、把持高さH3とは、細胞容器1の大きさによって異なるが、例えば人の手指によって細胞容器1の容器本体2の上端部の側面を安定して把持可能な高さ、例えば5mm以上かつ30mm以下の高さである。
このような寸法関係は、例えば、図4に示すように、開口部20に挿入されて載置部10の載置面11から上方に突出する押上部50の凸部51の高さH1と、載置部10の載置面11から側面支持部30の上端までの高さH2とを適切に設定することで満足することができる。より具体的には、細胞容器1の高さH0から側面支持部30の高さH2を引いた値と、押上部50の載置面11から突出する高さH1との和が、把持高さH3以上になるように、すなわち、(容器の高さH0−側面支持部30の高さH2+押上部50の突出する高さH1)≧(把持高さH3)の関係を満たすように、側面支持部30の高さH2と押上部50の突出高さH1を設定することができる。
細胞容器1の高さH0、基準位置P0から押上位置P1までの高さH1、基準位置P0からの側面支持部30の高さH2、及び、把持高さH3は、例えば、接触式又は非接触式の変位計によって測定することができる。より具体的には、高さH0及び高さH2は、例えば、接触式変位計としてノギスやデジタルマイクロメータを用い、測定対象物としての細胞容器1又は細胞容器収容部40の両端を規定して計測することができる。また、高さH0及び高さH2は、接触式変位計として接触式デジタルセンサを用い、平面上に配置した測定対象物の片方の端部を規定して計測してもよい。また、高さH0及び高さH2は、非接触式変位計としてレーザー変位計を用いて計測してもよい。
また、高さH2は、接触式又は非接触式変位計を用い、細胞容器収容部40の高さと載置部10の厚さを測定し、これらの差を算出することによって求めることもできる。また、高さH0及び高さH2は、細胞容器1及び細胞容器収容部40の1個所ずつを代表点として測定することによって計測してもよいし、これら測定対象物の複数の個所を計測して得られた複数の測定結果の平均値、最大値又は最小値等を、高さH0又は高さH2としても良い。
また、高さH1や把持高さH3のように、載置部10と押上部50との相対的な移動によって変化する高さは、例えば、押上部50を載せる台に設置されている接触式の変位計によって計測することができる。また、高さH1及び高さH3は、例えば載置部10と押上部50とを相対的に移動させる手動式の回転駆動機構の回転数に比例した変位を算出することによって計測したり、駆動機構のモータードライブの回転数に比例した変位を算出することによって計測したりすることができる。
また、高さH1及び把持高さH3は、非接触式のレーザー変位計によって細胞容器1の上面や押上部50の上面の変位を計測することによって、各部の寸法関係に基づいて算出してもよい。この場合、より確実な計測のために、上記駆動機構の回転数に基づく計測方法を併用してもよい。また、高さH1及び把持高さH3は、細胞容器1及び細胞容器収容部40の1個所ずつを代表点として測定することによって計測してもよいし、これら測定対象物の複数の個所を複数のレーザー変位計によって計測して得られた複数の測定結果の平均値、最大値又は最小値等を、高さH1又は把持高さH3としても良い。
なお、細胞容器1の底面1bが押上位置P1にあるときに、細胞容器1の上端部は、必ずしも側面支持部30の上端から突出している必要はなく、側面支持部30から把持高さH3で露出していればよい。例えば、側面支持部30の上端部に単数又は複数の切欠きを設け、細胞容器1の底面1bが押上位置P1にあるときに、細胞容器1の上端部を側面支持部30の切欠きから把持高さH3で露出させてもよい。この場合、基準位置P0から側面支持部30の上端部までの高さに関係なく、基準位置P0から側面支持部30の上端部の切欠きの底部までの高さを高さH2にすればよい。
ガイド部52は、連結部53の上面から上方に突出し、細胞容器収容部40の側面支持部30の外側面に沿って上下に延伸する板状の部材である。本実施形態の細胞容器用治具100では、図1及び図2に示すように、概ね円筒形の細胞容器収容部40の側面支持部30の外周に沿って、一対の円弧状のガイド部52が、細胞容器収容部40の一側と他側に対向して配置されている。なお、連結部53の上面からガイド部52の上端までの高さは、載置部10の底面12から側面支持部30の上端までの高さ以下であることが好ましい。
連結部53は、凸部51とガイド部52を連結する板状の部材であり、細胞容器収容部40の載置部10の底面12に概ね平行で、載置部10の底面12に対向して配置されている。図示の例において、ガイド部52は、連結部53と一体に設けられているが、ガイド部52と連結部53とを着脱自在に構成してもよい。図示は省略するが、例えば、連結部53の上面にガイド部52の下端部を係合させる凹部を設けることで、ガイド部52と連結部53とを着脱自在に構成することができる。
図5は、本実施形態の細胞容器用治具100を用いた細胞容器取出方法S100及び細胞取扱方法S200のフロー図である。図5に示すように、本実施形態の細胞容器取出方法S100は、載置工程S20と、押上工程S30と、取出工程S40とを有している。本実施形態の細胞取扱方法S200は、細胞容器取出方法S100を含み、細胞容器取出方法S100の前に、さらに収容工程S10を有している。
収容工程S10では、細胞容器1に細胞を収容して培養したり、細胞容器1に培養した細胞を収容して一定の期間に亘って保存したり、顕微鏡観察や所定の操作を行うために細胞容器1に細胞を一時的に収容したりする。
載置工程S20では、例えば顕微鏡等の装置の載置台の一部である載置部10に細胞容器1を載置し、開口部20によって細胞容器1の底面1bの少なくとも一部を露出させ、側面支持部30によって細胞容器1の側面を支持する。その後、例えば、顕微鏡によって細胞容器1に収容された細胞を観察する観察工程を実施したり、細胞容器1に収容された細胞を培養する培養工程を実施したり、細胞に所定の操作を行う操作工程を実施したりしてもよい。このとき、押上部50を移動させる移動機構により、押上部50を平面視で開口部20に重ならない位置に退避させてもよい。
押上工程S30では、図4に示すように、押上部50を基準位置P0から押上位置P1に移動させ、細胞容器1の底面1bを基準位置P0から押上位置P1に押し上げて、細胞容器1の上端部を側面支持部30の上端よりも上方へ突出させる。
ここで、本実施形態の細胞容器用治具100において、押上部50は、側面支持部30の外側面に沿って上下に延伸するガイド部52を有している。これにより、細胞容器1の底面1bを基準位置P0から押上位置P1に押し上げるときの押上部50の水平方向の移動や傾きを防止し、細胞容器1の水平方向の振動や傾きを防止して、押上部50によって細胞容器1を安定して押し上げることができる。これにより、細胞容器1内の細胞が不意に移動して観察や所定の操作が困難になるのを防止することができる。
また、本実施形態の細胞容器用治具100において、基準位置P0から押上位置P1までの高さH1と、基準位置P0から側面支持部30の上端までの高さH2とは、細胞容器1の底面1bが押上位置P1にあるときの細胞容器1の上端部が側面支持部30の上端から細胞容器1を把持するための把持高さH3で突出する寸法関係に設定されている。これにより、細胞容器1の上端部を、側面支持部30の上端から、人の手指Fによって安定して把持可能な把持高さH3で突出させることができる。
また、本実施形態の細胞容器用治具100において、押上部50は、細胞容器1の底面1bを支持する頂部に緩衝部材54を有している。これにより、押上部50から細胞容器1の底面1bに作用する振動や衝撃を緩衝部材54によって緩和し、細胞容器1の底面1bを押上部50によって安定して支持することができる。また、緩衝部材54の素材がゴムである場合には、緩衝部材54が滑り止めとして機能し、細胞容器1が緩衝部材54上で水平方向に移動することが防止され、押上部50によってより安定して細胞容器1を支持することができる。
取出工程S40では、側面支持部30の上端よりも上方に突出した細胞容器1の上端部を把持して細胞容器1を載置部10から取り出す。このとき、細胞容器1は、押上部50によって側面支持部30の上端よりも上方に、例えば前述の把持高さH3で突出している。そのため、細胞容器1の上端部を人の手指Fによって安定して把持することができる。また、細胞容器1が容器本体2と蓋部3とを有する場合に、容器本体2の側面の上端部を把持することができ、蓋部3のみが外れて容器本体2が載置部10から取り出せなくなるのを防止できる。
したがって、本実施形態の細胞容器用治具100並びにそれを用いた細胞容器取出方法S100及び細胞取扱方法S200によれば、載置部10に載置され、周囲に側面支持部30等の構造体が配置された細胞容器1を安定して容易に取り出すことができる。これにより、細胞容器1を載置部10から取り出すときに、細胞容器1が傾斜するのを防止できる。また、細胞容器1が側面支持部30やガイド部52に衝突するのを防止でき、さらには、細胞容器1が落下するのを防止できる。よって、細胞容器1を載置部10から取り出すときに、細胞容器1内の細胞が不意に移動して観察や操作が困難になるのを防止することができる。
また、本実施形態の細胞容器用治具100は、載置部10と側面支持部30とを有して細胞容器1の概ね全体を収容する細胞容器収容部40を備えている。これにより、細胞容器収容部40によって細胞容器1を確実に保持し、細胞容器1内の細胞の観察や操作を容易にすることができる。
また、細胞容器収容部40が顕微鏡等の装置の載置台に着脱自在に設けられている場合には、細胞容器1を細胞容器収容部40に収容した状態で取り扱うことができる。これにより、細胞容器収容部40によって細胞容器1を保護し、細胞容器1内の細胞の観察に支障を来す細胞容器1の損傷や汚染を防止することができる。また、細胞容器収容部40に、細胞容器1内の細胞の情報を表示する表示部を設けることで、細胞容器1に対する印字やシール貼付等の必要性を回避し、インクや粘着剤成分による細胞容器1内の細胞に対する悪影響を低減することができる。
図6は、図3に示す押上部50の変形例1を示す断面図である。図7は、図3に示す押上部50の変形例2を示す断面図である。
本実施形態の細胞容器用治具100において、押上部50は、細胞容器1の底面1bを支持する凸部51の頂部に単数又は複数の凹部55を有してもよい。押上部50は、例えば、細胞容器1の容器本体2の単数又は複数の細胞培養領域、細胞保持領域、又はマイクロウェルと、平面視で重なる位置に凹部55を有することができる。これにより、細胞容器1の容器本体2の細胞培養領域、細胞保持領域、又はマイクロウェルと平面視で重なる位置に、押上部50との接触による損傷や汚染が発生するのを防止して、細胞の観察をより確実に行うことができる。
[実施形態2]
図8は、本開示の実施形態2に係る細胞容器用治具100Aの平面図である。図9は、図8に示すIX−IX線に沿う押上部50A及び細胞容器1の拡大断面図である。
本実施形態の細胞容器用治具100A並びにそれを用いた細胞容器取出方法及び細胞取扱方法は、前述の実施形態1で説明した細胞容器用治具100並びにそれを用いた細胞容器取出方法S100及び細胞取扱方法S200と次の点が相違している。第1に、載置部10Aが複数の開口部20Aを有する点であり、第2に、押上部50Aが複数のピン状の凸部51Aを有する点であり、第3に押上部50Aが細胞容器収容部40の片側に複数のガイド部52Aを有する点である。
本実施形態の細胞容器用治具100A並びにそれを用いた細胞容器取出方法及び細胞取扱方法のその他の点は、前述の実施形態1の細胞容器用治具100並びにそれを用いた細胞容器取出方法S100及び細胞取扱方法S200と同一であるので、同一の部分は同一の符号を付して説明を省略する。
図8に示すように、本実施形態の細胞容器用治具100Aは、載置部10Aに載置される細胞容器1の容器本体2の細胞培養領域、細胞保持領域、又はマイクロウェルと平面視で重なる位置に、3つの円形の開口部20Aを有している。
押上部50Aは、3つの円形の開口部20Aと平面視で重なる位置に、3つのピン状の凸部51Aを有している。押上部50Aの3つの凸部51Aは、例えば、平面視で細胞容器1の重心位置Gを中心とする三角形の頂点に配置されている。押上部50Aは、図9に示すように、細胞容器1の底面1bを支持する頂部、すなわちピン状の凸部51Aの先端部に、球面状の緩衝部材54Aを有している。
押上部50Aは、円筒形の細胞容器収容部40Aの中心線Cの片側に、側面支持部30に沿う円弧状の3つのガイド部52Aを有している。図3に示す前述の実施形態1の細胞容器用治具100の押上部50における凸部51とガイド部52との関係と同様に、本実施形態の細胞容器用治具100Aの押上部50Aにおいても、連結部53の上面からガイド部52Aの上端までの高さは、連結部53の上面から押上部50Aの凸部51Aの頂点までの高さよりも高くなっている。
本実施形態の細胞容器用治具100Aは、前述の実施形態1の細胞容器用治具100と同様に、細胞容器1が載置される載置部10Aと、該載置部10Aに載置された細胞容器1の底面1bの一部を露出させる開口部20Aと、載置部10Aに載置された細胞容器1の側面1aを支持する側面支持部30と、を備える。また、本実施形態の細胞容器用治具100Aは、前述の実施形態1の細胞容器用治具100と同様に、押上部50Aを備えている。
押上部50Aは、前述の実施形態1の細胞容器用治具100と同様に、平面視で開口部20Aと重なる位置に凸部51Aが配置されている。また、押上部50Aは、前述の実施形態1の細胞容器用治具100と同様に、基準位置P0又はそれより下方の位置と、基準位置P0より上方の押上位置P1との間で載置部10Aと相対移動可能に設けられ、細胞容器1の底面1bを基準位置P0から押上位置P1に押し上げる。
したがって、本実施形態の細胞容器用治具100A並びにそれを用いた細胞容器取出方法及び細胞取扱方法によれば、前述の実施形態1の細胞容器用治具100並びにそれを用いた細胞容器取出方法S100及び細胞取扱方法S200と同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態の細胞容器用治具100Aは、実施形態1の細胞容器用治具100と比較して、載置部10Aの開口部20Aの開口面積を減少させることができる。これにより、細胞容器収容部40Aによって細胞容器1の底面1bのより広い範囲を保護して、開口部20Aから露出した細胞容器1の底面1bに損傷や汚染が発生するのをより確実に防止することができる。
また、押上部50Aの凸部51Aをピン状の形状にすることで、押上部50Aと細胞容器1の底面1bとの接触面積を減少させ、開口部20Aから露出した細胞容器1の底面1bに損傷や汚染が発生する可能性を低減することができる。ここで、例えば、押上部50Aの複数の凸部51Aを、細胞容器1の重心位置Gを中心とする三角形の頂点に配置することで、押上部50Aによって細胞容器1をより安定して支持することができる。
また、押上部50Aが細胞容器1の底面1bを支持する頂部に、球面状の緩衝部材54Aを有することで、押上部50Aから細胞容器1の底面1bに作用する振動や衝撃を緩和することができる。加えて、押上部50Aと細胞容器1の底面1bとの接触が点接触になり、押上部50Aと細胞容器1の底面1bとの接触面積をさらに減少させ、開口部20から露出した細胞容器1の底面1bに損傷や汚染が発生する可能性をさらに低減することができる。
また、押上部50Aが、円筒形の細胞容器収容部40の中心線Cの片側にガイド部52Aを有している。これにより、例えば顕微鏡等の載置台から細胞容器収容部40Aを取り外すときに、細胞容器収容部40Aを中心線Cに垂直な横方向にガイド部52Aから離すように押上部50Aに対して相対的に移動させて取り外すことができる。また、例えば顕微鏡等の載置台に細胞容器収容部40Aを取り付けるときに、細胞容器収容部40Aを中心線Cに垂直な横方向にガイド部52Aに近付けるように押上部50Aに対して相対的に移動させて取り付けることができる。
また、押上部50Aに間隔をあけて複数のガイド部52Aを設けることで、ガイド部52Aを細胞容器収容部40Aの側面支持部30に沿って連続的に形成する場合と比較して、ガイド部52Aと側面支持部30との接触面積を減少させ、摩擦を低減させ、摩耗を低減させることができる。
[実施形態3]
図10は、本開示の実施形態3に係る細胞容器用治具100Bの斜視図である。図11は、図10に示す細胞容器用治具100Bにおけるガイド部52Bの配置例を示す平面図である。
本実施形態の細胞容器用治具100B並びにそれを用いた細胞容器取出方法及び細胞取扱方法は、前述の実施形態1で説明した細胞容器用治具100並びにそれを用いた細胞容器取出方法S100及び細胞取扱方法S200と次の点が相違している。第1に、取扱対象の細胞容器1Bが矩形であり、細胞容器収容部40B、開口部20B、及び押上部50Bの凸部51Bが細胞容器1Bの形状に対応する矩形である点である。第2に、細胞容器収容部40Bの側面支持部30Bに沿って配置されたガイド部52Bの配置や形状である。
本実施形態の細胞容器用治具100B並びにそれを用いた細胞容器取出方法及び細胞取扱方法のその他の点は、前述の実施形態1の細胞容器用治具100並びにそれを用いた細胞容器取出方法S100及び細胞取扱方法S200と同一であるので、同一の部分は同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の細胞容器用治具100Bは、前述の実施形態1の細胞容器用治具100と同様に、細胞容器1Bが載置される載置部10Bと、該載置部10Bに載置された細胞容器1Bの底面1bの少なくとも一部を露出させる開口部20Bと、載置部10Bに載置された細胞容器1Bの側面1aを支持する側面支持部30Bと、を備える。また、本実施形態の細胞容器用治具100Bは、前述の実施形態1の細胞容器用治具100と同様に、押上部50Bを備えている。
押上部50Bは、前述の実施形態1の細胞容器用治具100と同様に、平面視で開口部20Bと重なる位置に配置されている。また、押上部50Bは、前述の実施形態1の細胞容器用治具100と同様に、基準位置P0又はそれより下方の位置と、基準位置P0より上方の押上位置P1との間で載置部10Bと相対移動可能に設けられ、細胞容器1Bの底面1bを基準位置P0から押上位置P1に押し上げる。
したがって、本実施形態の細胞容器用治具100B並びにそれを用いた細胞容器取出方法及び細胞取扱方法によれば、前述の実施形態1の細胞容器用治具100並びにそれを用いた細胞容器取出方法S100及び細胞取扱方法S200と同様の効果を得ることができる。
また、図11(a)に示すように、ガイド部52Bが、矩形の細胞容器収容部40Bの側面支持部30Bの各辺に沿って設けられている場合には、細胞容器収容部40B及び細胞容器1Bの水平方向の振動や移動をより確実に防止し、押上部50Bによって細胞容器1Bを安定して水平に維持して押し上げることができる。
また、図11(b)に示すように、ガイド部52Bが、矩形の細胞容器収容部40Bの側面支持部30Bの三辺に沿って設けられている場合には、細胞容器収容部40Bをガイド部52Bが配置されていない方向へ押上部50Bに対して相対的に移動させることができる。これにより、例えば顕微鏡等の装置の載置台への細胞容器収容部40Bの取り付け、取外しを容易にすることができる。
また、図11(c)に示すように、ガイド部52Bが、矩形の細胞容器収容部40Bの側面支持部30Bの対角に沿ってL字状に設けられている場合には、細胞容器収容部40B及び細胞容器1Bの水平方向の振動や移動を確実に防止するだけでなく、細胞容器収容部40Bとガイド部52Bとの接触面積を減少させ、摩擦を低減させ、摩耗を低減させることができる。
また、図11(d)に示すように、ガイド部52Bが、矩形の細胞容器収容部40Bの側面支持部30Bの各辺に沿って間隔をあけて配置されたピン状、円柱状、又は棒状の形状を有する場合には、細胞容器収容部40B及び細胞容器1Bの水平方向の振動や移動を確実に防止するだけでなく、細胞容器収容部40Bとガイド部52Bとの接触面積をより減少させ、摩擦をより低減させ、摩耗をより低減させることができる。
図12は、図10に示す細胞容器収容部40Bの変形例を示す断面図である。
細胞容器収容部40Bは、側面支持部30Bの上方の開口部31Bを閉塞する蓋部材60を有してもよい。蓋部材60は、例えば、矩形の細胞容器収容部40Bの側面支持部30Bの上端の一辺にヒンジ部61を介して連結することができる。このように、細胞容器収容部40Bに蓋部材60を開閉可能に設けることで、細胞容器収容部40Bに収容された細胞容器1Bをより確実に保護し、細胞容器1Bの損傷や汚染をより確実に防止することができる。蓋部材60を備える細胞容器収容部40Bは、顕微鏡等の装置の載置台に対して細胞容器収容部40Bを取り付け及び取り外し可能に設ける場合に特に有効である。
なお、開口部20B及び押上部50Bの凸部51Bの形状は、細胞容器1Bの形状に対応する矩形に限定されず、例えば図2に示す開口部20及び押上部50の凸部51と同様の円形やその他の任意の形状に形成することができる。
[実施形態4]
図13は、本開示の実施形態4に係る細胞容器用治具100C及び細胞容器1の断面図である。
本実施形態の細胞容器用治具100C並びにそれを用いた細胞容器取出方法及び細胞取扱方法は、前述の実施形態1で説明した細胞容器用治具100並びにそれを用いた細胞容器取出方法S100及び細胞取扱方法S200と次の点が相違している。第1に、細胞容器収容部40を有しない点である。第2に、押上部50Cの凸部51Cの径が開口部20Cの径よりも大きい点である。第3に、押上部50Cがガイド部52を有しない点である。第4に、押上部50Cが緩衝部材54を有しない点である。
本実施形態の細胞容器用治具100C並びにそれを用いた細胞容器取出方法及び細胞取扱方法のその他の点は、前述の実施形態1の細胞容器用治具100並びにそれを用いた細胞容器取出方法S100及び細胞取扱方法S200と同一であるので、同一の部分は同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の細胞容器用治具100Cは、前述の実施形態1の細胞容器用治具100と同様に、細胞容器1が載置される載置部10Cと、載置部10Cに載置された細胞容器1の底面1bの全体を露出させる開口部20Cと、載置部10に載置された細胞容器1の側面1aを支持する側面支持部30Cと、を備えている。側面支持部30Cは、載置部10Cの開口部20Cに設けられた傾斜面である。
なお、本実施形態の細胞容器用治具100Cにおいて、細胞容器1を載置部10Cに載置するには、載置部10Cの上方側に保持した細胞容器1を、底面1b側から開口部20Cの内側に嵌め込む。これにより、細胞容器1の側面1aが載置部10に設けられた側面支持部30Cによって支持され、細胞容器1が載置部10Cに載置される。
また、本実施形態の細胞容器用治具100Cは、前述の実施形態1の細胞容器用治具100と同様に、押上部50Cを備えている。押上部50Cは、平面視で開口部20Cと重なる位置に配置されている。押上部50Cは、載置部10Cに載置された細胞容器1の底面1bの高さ位置である基準位置P0又は該基準位置P0より下方の位置と該基準位置P0より上方の押上位置P1との間で載置部10Cと相対移動可能に設けられ、細胞容器1の底面1bを基準位置P0から押上位置P1に押し上げる。
したがって、本実施形態の細胞容器用治具100C並びにそれを用いた細胞容器取出方法及び細胞取扱方法によれば、前述の実施形態1の細胞容器用治具100並びにそれを用いた細胞容器取出方法S100及び細胞取扱方法S200と同様の効果を得ることができる。
以上、図面を用いて本開示の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。