JP2017187420A - 音振感知装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】水などの液体を介することなく、音振を電気信号として感知することを可能にする。【解決手段】もしも音波や振動が弾性波として対象物4中を伝搬していると、弾性波は、縦波として固体媒体3中に漏洩する。縦波は、固体媒体3における縦波速度が圧電基板1におけるラム波の位相速度と等しいかそれよりも低い場合には、ラム波として圧電基板1中に効率良く漏洩する。ラム波は、すだれ状電極2で電気信号として有効に検出される。このようにして、固体媒体3として液体を使用することなく、音振を検出することが可能となる。【選択図】図1
Description
本発明は、媒体として液体を利用することなく音振を感知する音振感知装置に関するものである。
対象物中を伝搬する音波や振動を検出するためには、駆動周波数が圧電基板の厚さに依存するような厚み振動モードの圧電トランスデューサや、圧電基板にすだれ状電極を設けて成る漏洩弾性表面波トランスデューサが汎用されている。これらの従来型のトランスデューサは、特定の方向からの音振の検出に限られるだけでなく、高周波の音振の検出が難しいという問題点を有している。その上、漏洩弾性表面波トランスデューサの場合には、すだれ状電極が備えられた圧電基板面と、対象物との間に液体層を設ける必要があることから、デバイス作成上の困難を伴う。
上記の問題を解決する目的で、超音波音圧センサ(特許文献1)が公開されている。これは、圧電基板1、第1出力用すだれ状電極3、弾性膜5および貯蔵室6を含む。駆動中、弾性膜5によって反射された縦波は、貯蔵室6における液体を媒体として、第1出力用すだれ状電極3によって第1遅延電気信号として検出される。このような従来のデバイスは、弾性膜5で反射された縦波を検出するためには液体の介在を必要とする。
このようにして、対象物中の音振を検出して電気信号に変換するための従来技術では、デバイスの製造が困難であり、実用性および汎用性に欠けるという問題を有していた。
解決しようとする問題点は、音波や振動を検出するための技術は、液体の介在を必要とすることから、デバイスの製造が困難であることや実用性および汎用性に欠けるという問題を有していたことである。
本発明は、対象物が液体、ゾル、ゲルまたは固体であるかどうかにかかわらず、対象物中を伝搬する音波や振動を感知することが可能な音振感知装置を提供することを目的とする。
また本発明は、対象物を伝搬する音波や振動を感知するために、媒体として液体を介することを必要としない音振感知装置を提供することを目的とする。
また本発明は、多方向からの音波や振動を感知することが可能な音振感知装置を提供することを目的とする。
また本発明は、効率良く音波や振動を感知することが可能な音振感知装置を提供することを目的とする。
また本発明は、高感度で音波や振動を感知することが可能な音振感知装置を提供することを目的とする。
また本発明は、構造が簡単で軽量で、製造が容易で、良好な歩留まりを有し、耐久性にも優れた音振感知装置を提供することを目的とする。
また本発明は、小さな対象物にも容易に取り付けることができる音振感知装置を提供することを目的とする。
また本発明は、機械的スキャニングシステムなどに容易に支持されうる音振感知装置を提供することを目的とする。
また本発明は、ディスポーザブルな使用形態にも適した音振感知装置を提供することを目的とする。
また本発明は、対象物中を伝搬する特定の周波数の音振を感知するセンサー技術に応用可能な音振感知装置を提供することを目的とする。
また本発明は、対象物の内部欠陥を検出する非破壊検査技術に応用可能な音振感知装置を提供することを目的とする。
また本発明は、例えば、がん細胞などを検出する超音波診断技術に応用可能な音振感知装置を提供することを目的とする。
また本発明は、ドラッグデリバリーシステムや、例えば、がん細胞などを攻撃する超音波治療技術に応用可能な超音波照射装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するためになされた本発明の音振感知装置は、圧電基板と、その圧電基板上に設けられた少なくとも1つのすだれ状電極と、圧電基板の下に設けられた固体媒体とを有するものである。
このように構成することで、固体媒体は、音振が弾性波として伝搬する対象物に接触することにより弾性波を縦波として検出し、縦波をラム波として圧電基板に伝搬する機能を有する。また、すだれ状電極は、ラム波を電気信号として感知する機能を有する。
また、本発明の音振感知装置は、それぞれ異なった電極周期長を有する2つ以上のすだれ状電極を含む構成を有する。
このように構成することで、同じ電極周期長を有する2つ以上のすだれ状電極を使用する場合に比べ、広い領域で発生した音波や振動を検出することが可能になる。
また、本発明の音振感知装置は、それぞれ異なった電極周期長を有する2つ以上のすだれ状電極を含み、圧電基板において電極周期長の小さいものから大きいものへと順に配置される構成を有する。
このように構成することで、更に広い領域で発生した音波や振動を検出することが可能になる。
また、本発明の音振感知装置は、4つのトランスデューサグループを含む構成が可能である。各トランスデューサグループは少なくとも1つのすだれ状電極を含む。
このように構成することで、音振の強度の分布を計測することが可能となる。
また、本発明の音振感知装置は、4つのトランスデューサグループを含む構成において、2つの電極指の方向は、互いに平行であるとともに、別の2つの電極指の方向とは直交するという構成を有する。
このように構成することで、音振の強度の分布を更に精密に計測することが可能となる。
また、本発明の音振感知装置は、固体媒体中の縦波速度が、圧電基板中のラム波の位相速度と等しいかそれよりも低いという構成を有する。
このように構成することで、固体媒体中の縦波が、ラム波として効率良く圧電基板に伝搬する。
また、本発明の音振感知装置は、固体媒体が少なくとも2層で成る層状構造を有し、その層状構造の最上層部を伝搬する縦波速度は、圧電基板中のラム波の位相速度と等しいかそれよりも低いという構成を有する。
このように構成することで、固体媒体中の縦波が、ラム波として効率良く圧電基板に伝搬する。
また、本発明の音振感知装置は、固体媒体の厚さが、圧電基板を補強するのに十分にしてかつ必要な厚さを超えないという構成を有する。
このように構成することで、固体媒体中の縦波が、ラム波として効率良く圧電基板に伝搬する。
また、本発明の音振感知装置は、固体媒体の減衰定数が、縦波の圧電基板への伝搬がもはや起こらないほどの値を超えることはない。
このように構成することで、固体媒体中の縦波が、ラム波として効率良く圧電基板に伝搬する。
また、本発明の音振感知装置は、圧電基板が圧電セラミックで成り、その圧電セラミックの分極軸の方向は厚さ方向と平行である。
このように構成することで、固体媒体中の縦波が、ラム波として効率良く圧電基板に伝搬し、すだれ状電極で電気信号として効率良くに検出される。
また、本発明の音振感知装置は、圧電基板が、圧電性を有する単結晶や圧電性高分子フィルムで成る。
このように構成することで、固体媒体中の縦波が、ラム波として効率良く圧電基板に伝搬し、すだれ状電極で電気信号として効率良くに検出される。
また、本発明の音波感知装置は、すだれ状電極が、圧電基板の厚さ以上の値の電極周期長を有する。
このように構成することで、ラム波がすだれ状電極で電気信号として効率良く検出される。
また、本発明の音振感知装置は、すだれ状電極が、少なくとも2つの電極周期長を有する分散型の電極構造で成る。
このように構成することで、更に多方向からの音波や振動を検出することが可能になる。
また、本発明の音振感知装置は、すだれ状電極が円弧状の電極パターンを有する。
このように構成することで、すだれ状電極での電気信号の検出感度を増大させることが可能になる。
また、本発明の音振感知装置は、すだれ状電極が円弧状の電極パターンを有するとともに、少なくとも2つの電極周期長を有する分散型の電極構造で成る。
このように構成することで、更に多方向からの音波や振動を高感度で検出することが可能になる。
本発明によれば、媒体として液体を利用することなく音振を効率良く感知することができる。
製造が容易で、しかも、効率良く音振を感知するという目的を、液体に代わる固体媒体を利用することにより達成した。
図1は、本発明の音振感知装置の第1の実施例を示す概略図である。本実施例は圧電基板1、すだれ状電極2および固体媒体3から成る。圧電基板1は、たとえば230 μmの厚さ(t)を有する圧電セラミックで成り、その分極軸の方向は、両端面に垂直な方向、つまり厚さ(t)方向と平行である。このとき、圧電基板1として、圧電性を有する単結晶や圧電性高分子フィルムなどの圧電性部材を用いることも可能である。すだれ状電極2は、たとえばアルミニウム薄膜で成り、圧電基板1の上端面に設けられている。圧電基板1は固体媒体3上に設けられている。固体媒体3はアクリル樹脂などで成り、低減衰定数を有し、たとえば1 mmの厚さを有する。この厚さは、固体媒体3が圧電基板1を補強し得るのに十分な厚さである。図1の音振感知装置を用いて対象物4中を伝搬する音波や振動を検出する場合には、固体媒体3の下端面に対象物4を接触させる必要がある。このようにして、図1の音振感知装置は小型軽量で構造も簡単であり、小さな対象物にも容易に取り付けることができ、ディスポーザブルな使用形態にも適している。また、製造が容易である上、良好な歩留まりを有し、耐久性にも優れている。図1の圧電基板1、固体媒体3および対象物4の中に描かれた矢印は、駆動中にそれらの中を伝搬する波の方向を示すものである。
図2は、図1のすだれ状電極2を上方から見たときの平面図である。すだれ状電極2は、圧電基板1の厚さ(t)と同じかそれよりも大きい値の電極周期長(p)を有する。
図1の音振感知装置において、もしも音波や振動が、周波数fi (i=1,2,……, またはn)を有する弾性波として対象物4中を伝搬していると、弾性波は、同じ周波数を有する縦波として固体媒体3中に漏洩する。このとき、対象物4における弾性波速度VOb、固体媒体3における縦波速度VMe、弾性波の入射角θObi (i=1,2,……, またはn)、縦波の屈折角θMei (i=1,2,……, またはn)については、sinθMei/sinθObi = VMe/VObという関係が成立する。図1は、VMeがVObより高い場合には、θMeiがθObiより大きいことを示す。
固体媒体3中の縦波は、VMeが圧電基板1におけるラム波モードの位相速度VLami (i=1,2,……, またはn)と等しいかそれよりも低い場合には、ラム波として圧電基板1中に効率良く漏洩する。ラム波モードは、固体媒体3における縦波と同じ周波数fiを有し、すだれ状電極2の電極周期長(p)にほぼ対応する波長を有する。換言すると、VMe≦VLamiという条件の下では、固体媒体3と圧電基板1との界面において縦波からラム波へのモード変換が起こる。ラム波モードは、圧電基板1中をその両端面に平行な方向に沿って伝搬する。従って、ラム波モードが圧電基板1中を伝搬する角度θLamについては、θLam = π/2という関係が成立する。このようにして、sinθLam/sinθMei = VLami/VMe、すなわちθMei = sin-1(VMe/VLami)という関係が成立する。
固体媒体3の厚さは、固体媒体3中の縦波の減衰を最小限にとどめるものでなくてはならない。従って、圧電基板1の強さを補強する為に必要にして十分な厚さ以上には厚過ぎないことが要求される。また、縦波の圧電基板1への伝搬が効率良く起こるためには、固体媒体3の減衰定数はなるべく低いことが望まれる。少なくとも、縦波の圧電基板1への伝搬がもはや起こらないほど高いものであってはならない。
圧電基板1が圧電セラミックで成り、その分極軸の方向が厚さ(t)方向と平行であることから、圧電基板1中のラム波モードは、すだれ状電極2で電気信号として効率良く検出される。電気信号は、弾性波と同じ周波数fiを有するとともに、すだれ状電極2の電極周期長(p)にほぼ対応する波長を有する。すだれ状電極2は、固体媒体3として液体の存在を介することなく、屈折角θMeiの縦波、すなわち入射角θObiの弾性波を検出する能力を有する。このようにして、図1で示されるような、全てが固体で成るデバイスは、対象物4を通じて音波や振動を感知するのに有効である。対象物4が液体、ゾル、ゲルまたは固体、たとえば、水、溶液、細胞質、セメント、ガラス、金属、合金、コンクリート、石などであるかどうかは問題とならない。このようにして図1のデバイスは、たとえば、手首の脈拍を測定する技術として有望である。なお、すだれ状電極2で受波可能な音振の周波数は、すだれ状電極2の電極周期長(p)に依存することから、すだれ状電極2の電極周期長(p)を、音振の周波数に応じて予め設定しておくことが必要である。逆に、すだれ状電極2の電極周期長(p)に対応する周波数の音振を検出することが可能であることから、対象物4中に特定の周波数の音振が伝搬しているかどうかのセンサーとしての機能を果たすことも可能である。たとえば図1のデバイスは、社会インフラにおける非破壊検査技術のためのセンサーとしても有望である。
図3は、図1の音振感知装置を上方から見たときの平面図であり、機械的スキャニングシステムを用いて駆動した場合の図である。機械的スキャニングシステムは図3では描かれていないが、たとえば、互いに直交する2本のレールから成り、その2本のレールに沿って図1のデバイス自体を動かすものである。この際、図1のデバイスは容易に支持されることが必要である。このようにして、デバイスは、対象物4の表面すべてをスキャンすることが可能となる。図3における矢印は、デバイスの動作方向を示す。もちろん、手動でデバイスを全ての方向に動かすことも可能である。対象物4の表面をスキャンすることにより、多方向からの音波や振動を感知することが更に容易になる。このようにして図1のデバイスにより、たとえば、海中の魚群の声を聞く技術として有望である。
図4は、圧電基板1およびに固体媒体3から成る2層体に励振される各ラム波モードの位相速度(VLami)のft依存性を示す特性図であり、圧電基板1が圧電セラミックで成り、固体媒体3がアクリル樹脂で成る場合についてのものである。ft値はラム波モードの周波数(fi)と圧電基板1の厚さ(t)との積を示す。速度分散曲線と黒丸は、それぞれ計算値と実測値を示す。全ての値は、圧電基板1の上端面と固体媒体3の下端面が、それぞれ電気的に短絡および開放状態にある時のものである。速度分散曲線は、圧電基板1単体の場合、または固体媒体3の代わりに水から成る2層体における場合とほとんど違いは見られなかった。速度分散曲線の側に記されている数字は、個々のラム波モードの通し番号である。3本の斜めの直線状の破線は、それぞれすだれ状電極2が400 μm、500μm、600 μmの3つの電極周期長(p)を有する場合の動作特性を表すもの(動作直線)である。それらの斜線と速度分散曲線との交点は、すだれ状電極2が各電極周期長(p)を有する場合における最適な動作条件に相当する。2本の水平な直線状の破線LaおよびLwは、それぞれ固体媒体3単体および水単体中を伝搬する縦波速度の軌跡である。水は、圧電基板と対象物を媒介する固体媒体3として、一般的に広く用いられているものである。たとえば、14.2 MHz (fi)の周波数を有する弾性波が対象物4から固体媒体3へ縦波として伝搬し、その縦波が圧電基板1に遭遇すると、230 μmの厚さ(t)を有する圧電基板1と固体媒体3との界面において、縦波から約5.7 km/s (VLami)の位相速度および約400 μmの波長を有する第5次モードのラム波へのモード変換が起こる。VMe = 2.7 km/sであることから、前述の式θMei = sin-1(VMe/VLami)によれば、約29度の入射角(θMeiと同等)を有する縦波のみが第5次モードのラム波にモード変換される。第5次モードのラム波は、400 μmの電極周期長(p)を有するすだれ状電極2において、14.2 MHz (fi)の周波数を有する電気信号として検出される。図4は、どのモードのラム波がすだれ状電極2で検出されるかは、圧電基板1の厚さ(t)およびすだれ状電極2の電極周期長(p)が不変であるという条件の下では、弾性波の周波数fiに依存するということを示す。
図5は、電気機械結合係数k2のft依存性を示す特性図である。k2値は、固体媒体3の下端面が電気的に開放状態にある場合において、圧電基板1の上端面が電気的に開放状態にある時のラム波モードのVLamiと、短絡状態にある時のVLamiとの差から計算される。速度分散曲線の側に記されている数字は、個々のラム波モードの通し番号である。図5は、たとえばft値が1.2 MHz・mmの場合には、第1次モードのラム波のk2の最大値は12.5 %であることを示す。言い換えれば、第1次モードのラム波は、ft値が1.2 MHz・mmの時に、最も効率良くすだれ状電極2において電気信号として検出される。図5のk2値は、圧電基板1単体における値とほとんど変わらない。このことは、ラム波モードから電気信号への変換効率は、圧電基板1およびに固体媒体3から成る2層体においても、圧電基板1単体における場合とほとんど変わらないことを意味する。
図6は、前述の2層体におけるラム波モードの挿入損失と、電気信号の周波数(fi)との関係を示す特性図である。但し、固体媒体3が1 mmの厚さを有し、すだれ状電極2が600 μmの電極周期長(p)を有する場合の特性図である。挿入損失の最小値は、第1次モードにおける-33.1 dBであり、このときのfi値は5.56 MHzである。この挿入損失の値は、圧電基板1単体の場合に比べると、かなり大きい。このことは、すだれ状電極2においては、5.56 MHzの周波数を有する電気信号が検出され易いことを示す。
図7は、図4と同様な特性図を示すが、図4で述べられている圧電セラミックが、圧電性を有するニオブ酸リチウム単結晶に置き換えられた2層体についてのものである。この2層体においては、圧電基板1の上端面と固体媒体3の下端面はともに電気的に開放状態にある。斜めの直線状の破線は、すだれ状電極2が300 μmの電極周期長(p)を有する場合の動作特性を表すもの(動作直線)である。たとえば、20.3 MHz (fi)の周波数を有する弾性波が対象物4から固体媒体3へ縦波として伝搬し、その縦波が圧電基板1に遭遇すると、230 μmの厚さ(t)を有する圧電基板1と固体媒体3との界面において、縦波から約6.1 km/s (VLami)の位相速度および約300 μmの波長を有する第2次モードのラム波へのモード変換が起こる。VMe = 2.7 km/sであることから、約26度の入射角(θMeiと同等)を有する縦波のみが第2次モードのラム波にモード変換される。第2次モードのラム波は、300 μmの電極周期長(p)を有するすだれ状電極2において、20.3 MHz (fi)の周波数を有する電気信号として検出される。図7は、アクリル樹脂やその他の高分子材料だけでなく、金属や合金やその他の材質も、VMe≦VLamiという関係が成立する限り固体媒体3として有効であることを示す。換言すれば、本発明の音振感知装置では、固体媒体3の材質如何により、低次モードはもちろんのこと、高次モードのラム波でもすだれ状電極2において検出されることが可能であることを示す。
図8は、すだれ状電極5の平面図である。すだれ状電極5は図2のすだれ状電極2の代わりに用いられるものであり、電極指の構成が、2以上の電極周期長を有する分散型であることを除き、すだれ状電極2と同様な構造を有する。具体的には、すだれ状電極5は、徐々に増加する電極周期長pi (i=1,2,……, および n)を有する。このようにして、すだれ状電極5はp1(400 μm) から pn(600 μm)の一連の電極周期長を有する。
周波数fi (i=1,2,……, および n)を有する弾性波が対象物4を介して固体媒体3に遭遇すると、弾性波は縦波として固体媒体3中へ漏洩した後、多モードのラム波として圧電基板1に漏洩する。多モードのラム波は、弾性波と同じ周波数fiおよび400 μmから600 μmの電極周期長piにほぼ対応する波長を有する電気信号として、すだれ状電極5において検出される。すだれ状電極5を使用することにより、すだれ状電極2を使用する場合に比べ、多モードのラム波の検出が可能になる。すなわち、すだれ状電極5は、屈折角θMei (i=1,2,……, および n)の縦波、すなわち入射角θObi (i=1,2,……, および n)の弾性波を検出する能力を有する。図4は、すだれ状電極2の電極周期長(p)が400 μmおよび600 μmに対応する2本の斜めの破線に挟まれた領域内にある速度分散曲線が、まさにすだれ状電極5の最適駆動条件に相当するということを示す。このようにして、図1のデバイスがすだれ状電極2の代わりにすだれ状電極5を含む場合には、更に多方向からの音波や振動を感知することが可能になる。
図9は、本発明の音振感知装置の第2の実施例を上方から見たときの平面図である。本実施例は、すだれ状電極2の代わりにすだれ状電極6が用いられていることを除いて、図1と同様な構造を有する。固体媒体3および対象物4は図9では描かれていない。すだれ状電極6は、開口角が60度で、電極周期長(p)が300 μmの円弧状の電極パターンを有する。図9における矢印は、駆動中に圧電基板1を伝搬する波の方向を示す。
図9の音振感知装置においては、図1における場合と同様にして、対象物4を伝搬する弾性波が縦波として固体媒体3に伝搬し、ラム波モードとして圧電基板1に伝搬する。ラム波モードは、電気信号としてすだれ状電極6において検出される。すだれ状電極6を使用することにより、すだれ状電極2を使用する場合に比べ、検出感度を増大することが可能となる。すだれ状電極6の電極周期長(p)、圧電基板1の厚さ(t)および固体媒体3の厚さの最適値を総合的に調整することにより、すだれ状電極6は、更に優れた効果を発揮する。
図10は、すだれ状電極7の平面図である。すだれ状電極7は図9のすだれ状電極6の代わりに用いられるものであり、電極指の構成が、2以上の電極周期長を有する分散型であることを除き、すだれ状電極6と同様な構造を有する。具体的には、すだれ状電極7は、徐々に増加する電極周期長pi (i=1,2,……, および n)を有する。このようにして、すだれ状電極7はp1(400 μm) から pn(600 μm)の一連の電極周期長を有する。
すだれ状電極7を使用することにより、圧電基板1と固体媒体3との界面において縦波からモード変換された多モードのラム波を電気信号として高感度で検出することが可能となる。すだれ状電極7の電極周期長(pi)、圧電基板1の厚さ(t)および固体媒体3の厚さの最適値を総合的に調整することにより、すだれ状電極7は、多方向からの音波や振動を高感度で感知することが可能になる。
図11は、本発明の音振感知装置の第3の実施例を示す概略図である。本実施例は、圧電基板1、圧電基板1の上端面に設けられた3つのすだれ状電極2および固体媒体3から成る。駆動中は、固体媒体3の下端面に対象物8を接触させる必要がある。図11における矢印は、駆動中に伝搬する波の方向を示す。
図11の音振感知装置においては、各すだれ状電極2は、図1におけるすだれ状電極2と同様な機能を果たす。少なくとも2つのすだれ状電極2を使用することにより、1つを使用する場合よりも、更に広い領域で発生した音波や振動を検出することが可能になる。すなわち、Z軸方向およびX軸方向からの音波や振動を効果的に感知することが可能となる。図11は、VMeがVOb より低い場合には、θMeiがθObiより小さいことを示す。図11のデバイスは、少なくとも2つのすだれ状電極2の代わりに、それぞれ、少なくとも2つのすだれ状電極5、少なくとも2つのすだれ状電極6または少なくとも2つのすだれ状電極7で成ることが可能である。
図12は、本発明の音振感知装置の第4の実施例を上方から見たときの平面図である。本実施例は、3つのすだれ状電極2の代わりに、それぞれすだれ状電極21、22、23が用いられていることを除いて、図11と同様な構造を有する。固体媒体8、対象物9は図12では描かれていない。すだれ状電極21、22、23は互いに異なった電極周期長を有し、電極周期長の小さいものから大きいものへと順に配置されている。すだれ状電極21、22、23を使用することにより、3つのすだれ状電極2を使用する場合に比べ、更に広い領域で発生した音波や振動を検出することが可能になる。すだれ状電極21、22、23は、すだれ状電極6と同様な円弧状の電極パターンや、すだれ状電極5や7のような分散型の電極構造を有することが可能である。すだれ状電極21、22、23が分散型の電極構造を有する場合には、それらは、電極周期長の領域が小さいものから大きいものへと順に配置される。
図13は、本発明の音振感知装置の第5の実施例を上方から見たときの平面図である。本実施例は、圧電基板9、固体媒体10、4つのトランスデューサグループから成る。固体媒体10は固体媒体3と同様な材質から成る。各トランスデューサグループはすだれ状電極24、25、26から成る。各すだれ状電極は、電極指の長さを除いてすだれ状電極2と同様な構造を有する。固体媒体10は図13では描かれていない。4つのトランスデューサグループは、圧電基板9上において、4つのうち2つのグループの電極指の方向が、互いに平行になるように、しかも、別の2つのグループの電極指の方向と直交するように配置されている。
図14は、図13の音振感知装置の側面図である。圧電基板9は230 μmの厚さ(t)を有する圧電セラミックで成り、その分極軸の方向は、厚さ(t)方向と平行である。
図13の音振感知装置においては、固体媒体10を介してラム波モードとして圧電基板9中に伝搬した音振は、各トランスデューサグループの各すだれ状電極において電気信号として検出される。4つのトランスデューサグループを使用することにより、1つを使用する場合に比べてZ軸、X軸およびY軸方向からの音波や振動を効果的に感知することが可能となる。すなわち、音振の強度の分布を精密に計測することが可能となる。
すだれ状電極21、22、23をすだれ状電極24、25、26の代わりに使用することが可能である。すだれ状電極21、22、23を使用することにより、すだれ状電極24、25、26を使用する場合に比べて音振の強度の分布を更に精密に計測することが可能となる。
図15は、本発明の音振感知装置の第6の実施例を示す概略図である。本実施例は、固体媒体3の代わりに固体媒体11および12が用いられていることを除いて、図1と同様な構造を有する。固体媒体11は固体媒体3と同様な材質で成り、固体媒体12は固体媒体11とは異なった材質で成る。固体媒体11および12は層状構造を形成する。駆動中、層状構造の上層部に該当する固体媒体11は圧電基板1と接触し、固体媒体12の下端面は対象物13の上に設置される。
図15において、対象物13を伝搬する弾性波は、対象物13と固体媒体12との界面で縦波へモード変換される。縦波は、それらの界面で屈折した後、固体媒体12と11との界面で再び屈折する。固体媒体11と圧電基板1との界面においては、固体媒体11における縦波速度V11および圧電基板1におけるラム波モードの位相速度VLamiについてV11≦VLamiという関係が成立する場合には、縦波からラム波へのモード変換が起こる。弾性波の入射角θ13、縦波の屈折角θ11およびθ12、固体媒体12における縦波速度V12、対象物13における縦波速度V13については、θ11 = sin-1(V11/VLam)、sinθ11/sinθ12 = V11/V12、sinθ12/sinθ13 = V12/V13という関係が成立する。図15は、V11がV12より高い場合には、θ11がθ12より大きいことを示し、V12がV13より高い場合には、θ12がθ13より大きいことを示す。すなわち、固体媒体11および12の材質として、互いに異なる縦波伝搬速度を有するものを選択することが、より多方向からの音波や振動を感知することにつながる。図15のデバイスは、入力用トランスデューサとして、すだれ状電極2の代わりに、すだれ状電極5、6または7で成ることが可能である。また、図15における固体媒体11および12から成る層状媒体を、固体媒体3または10のような単層媒体の代わりに用いることも可能である。
1 圧電基板
2 すだれ状電極
3 固体媒体
4 対象物
5 すだれ状電極
6 すだれ状電極
7 すだれ状電極
8 対象物
9 圧電基板
10 固体媒体
11 固体媒体
12 固体媒体
13 対象物
21 すだれ状電極
22 すだれ状電極
23 すだれ状電極
24 すだれ状電極
25 すだれ状電極
26 すだれ状電極
2 すだれ状電極
3 固体媒体
4 対象物
5 すだれ状電極
6 すだれ状電極
7 すだれ状電極
8 対象物
9 圧電基板
10 固体媒体
11 固体媒体
12 固体媒体
13 対象物
21 すだれ状電極
22 すだれ状電極
23 すだれ状電極
24 すだれ状電極
25 すだれ状電極
26 すだれ状電極
Claims (16)
- 圧電基板と、少なくとも1つのすだれ状電極と、固体媒体とを有し、前記固体媒体は、音振が弾性波として伝搬する対象物に接触することにより前記弾性波を縦波として検出し、前記縦波をラム波として前記圧電基板に伝搬する機能を有し、前記少なくとも1つのすだれ状電極は、前記ラム波を電気信号として感知する機能を有する音振感知装置。
- 圧電基板と、それぞれ異なる電極周期長を有する少なくとも2つのすだれ状電極と、固体媒体とを有し、前記固体媒体は、音振が弾性波として伝搬する対象物に接触することにより前記弾性波を縦波として検出し、前記縦波をラム波として前記圧電基板に伝搬する機能を有し、前記すだれ状電極のそれぞれは、前記ラム波を電気信号として感知する機能を有する音振感知装置。
- 前記少なくとも2つのすだれ状電極は、前記圧電基板において電極周期長の小さいものから大きいものへと順に配置される請求項2に記載の音振感知装置。
- 圧電基板と、4つのトランスデューサグループと、固体媒体とを有し、前記4つのトランスデューサグループのそれぞれは少なくとも1つのすだれ状電極を含み、前記固体媒体は、音振が弾性波として伝搬する対象物に接触することにより前記弾性波を縦波として検出し、前記縦波をラム波として前記圧電基板に伝搬する機能を有し、前記少なくとも1つのすだれ状電極は、前記ラム波を電気信号として感知する機能を有する音振感知装置。
- 前記4つのトランスデューサグループの2つの電極指の方向は、互いに平行で、別の2つの電極指の方向とは直交する請求項4に記載の音振感知装置。
- 前記固体媒体中の縦波速度は、前記ラム波の位相速度と等しいかそれよりも低い請求項1〜5のいずれかにに記載の音振感知装置。
- 前記固体媒体が層状構造を有し、前記層状構造の上層部を伝搬する縦波速度は、前記ラム波の位相速度と等しいかそれよりも低い請求項1〜5のいずれかに記載の音振感知装置。
- 前記固体媒体の厚さは、前記圧電基板を補強するのに十分にしてかつ必要な厚さを超えない請求項1〜7のいずれかに記載の音振感知装置。
- 前記固体媒体の減衰定数は、前記縦波の前記圧電基板への伝搬がもはや起こらない値を超えない請求項1〜8のいずれかに記載の音振感知装置。
- 前記圧電基板が圧電セラミックで成り、前記圧電セラミックの分極軸の方向は厚さ方向と平行である請求項1〜9のいずれかに記載の音振感知装置。
- 前記圧電基板が、圧電性を有する単結晶で成る請求項1〜9のいずれかに記載の音振感知装置。
- 前記圧電基板が圧電性高分子フィルムで成る請求項1〜9のいずれかに記載の音振感知装置。
- 前記すだれ状電極の電極周期長は、前記音振の周波数に対応する値に設定されている請求項1〜12のいずれかに記載の音振感知装置。
- 前記すだれ状電極は、前記圧電基板の厚さ以上の値の電極周期長を有する請求項1〜13のいずれかに記載の音振感知装置。
- 前記すだれ状電極は、少なくとも2つの電極周期長を有する分散型の電極構造で成る請求項1〜14のいずれかに記載の音振感知装置。
- 前記すだれ状電極は、円弧状の電極パターンを有する請求項1〜15のいずれかに記載の音振感知装置。
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JP2016077342A JP2017187420A (ja) | 2016-04-07 | 2016-04-07 | 音振感知装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
2016
- 2016-04-07 JP JP2016077342A patent/JP2017187420A/ja active Pending
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