JP2017184635A - 麺類とその製造方法 - Google Patents

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康晃 石田
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真弓 黒瀬
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庄治 池上
光 渡邊
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光 渡邊
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Abstract

【課題】 茹で上げ後の食物繊維の歩留まりが向上した麺類とその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 (A)グルコースを構成糖とし、(B)α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有し、(C)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり25質量%以上50質量%以下生成し、かつ(D)高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が40質量%以上である分岐α−グルカン混合物を、無水物換算で、固形分当たり、2質量%以上10質量%未満含有してなる麺類、その製造方法、及び麺類製造用プレミックス粉を提供することによって、上記課題を解決する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、茹で上げ後の食物繊維の歩留まりが向上した麺類とその製造方法に関する。
麺類の歴史は古く、紀元前約6,000年〜紀元前5,000年頃にアジア地域で生まれ、これが西方へと伝わり、現在のイタリア地域でパスタ類(スパゲッティ、マカロニなど)に発展したと言われている。一方、麺類は、我国においても古くから食されており、日本、アジア、イタリア地域の食文化とは切っても切れない関係にある食品である。
前記麺類は、粉類に水を加え生地を調製し、これを成形して得られる食品の総称であり、パスタ類、うどん、蕎麦、中華麺、ワンタンメン、きしめん、そうめん、冷麦、海藻めん、ライスヌードル、ビーフン、春雨などを例示できる。
ところで、近年、麺類に付加価値をつける目的で、食物繊維含量を高めた所謂食物繊維強化麺類(ちなみに、我が国の栄養表示基準によれば、食物繊維強化麺類とは、麺類100g当たり、食物繊維を6g以上含有するものと規定されている。)が脚光を浴び、食物繊維含量を高めた種々の麺類が開発され市販されている。ここで、食物繊維とは、ヒトの消化酵素で殆ど消化されない食品用成分の総称であり、水に溶けない不溶性食物繊維と、水に溶ける水溶性食物繊維の2つに大別され、後者は更に、高分子の水溶性食物繊維と低分子の水溶性食物繊維とに分類される。
前記不溶性食物繊維は、例えば、いんげん豆、ひよこ豆、あずき、おから、エリンギ、えのき、切り干し大根、小麦ふすま、干し柿、アーモンドなどに含まれ、その生理学的機能としては、腸を刺激し蠕動運動を活発にし便通を促し、腸内環境を改善する作用や、生体にとって有毒なダイオキシンなどの物質を排泄するデトックス作用などがある。一方、前記水溶性食物繊維は、例えば、果物、野菜、こんぶ、わかめなど海藻類、生のこんにゃく芋、山芋、ゆりね、オクラ、あしたば、ゴボウ、納豆などに多く含まれており、それらを原料にして、食品工業において利用可能な状態にまで精製された種々の水溶性食物繊維が市場に提供されている。また、高分子の水溶性食物繊維としては、ペクチン、グアガム、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸などが、また、低分子の水溶性食物繊維としては、低分子化アルギン酸、低分子化グアガム、難消化性デキストリン、ポリデキストロースなどが挙げられる。
既述したとおり、不溶性食物繊維は水に溶けないので、自体、食感が悪く、その添加量にもよるが、食品に添加すると、その食品の食感が損なわれる場合がある。また、高分子の水溶性食物繊維は、水溶液状態では粘度が高くゲル化するものもあり、取り扱い性が劣る上、食感の点でも好ましくない。これに対し、低分子の水溶性食物繊維は、文字どおり水に溶けるので、取り扱い性が良好で、食感も良いことから、各種食品への適用が幅広くなされている。
斯かる状況下、低分子の水溶性食物繊維の食品への適用例として、食物繊維強化麺類が、近年、脚光を浴びている。しかし、通常、麺類は茹でてから食されることから、食物繊維として水溶性食物繊維を添加した麺類は、茹でると、意図して添加した食物繊維が麺類から溶け出してしまい、目論みどおりの食物繊維強化麺類が得られないという問題があった(特許文献1の段落0007、特許文献2の段落0009参照)。前記問題を回避する手段として、特許文献1には、低粘性の水溶性食物繊維とヒドロキシプロピル澱粉とを所定の配合量で用いる提案が、また、特許文献2には、水溶性食物繊維と微細セルロースとからなる微細セルロース複合体を用いる提案がなされている。しかしながら、特許文献1、2の提案は、必ずしも、前記問題を解決する手段として十分であるとは言い難いとともに、食物繊維に加えて、ヒドロキシプロピル澱粉又は微細セルロースを用いることを必須とすることから、麺類の製造工程管理が必然的に煩雑となり、製造コストも高くなるという不具合があった。
そこで、特許文献1、2のように、食物繊維と他の補助成分とを併用することなく、麺類からの食物繊維の溶出を効果的に低減し、茹で上げ後の麺類中における食物繊維の歩留まりを向上させた麺類が希求されていた。しかし、そのような麺類は未だ提供されていなかった。
特許第3918078号公報 特許第3969512号公報
本発明は、食物繊維含有食品素材以外の他の補助成分を用いることなく、茹で上げ後の麺類中における食物繊維の歩留まり(以下、単に「食物繊維の歩留まり」という場合がある。)が向上し、しかも、麺類本来の風味や食感を有している麺類と、当該麺類の製造方法を提供することを課題とする。なお、本願明細書中で言う、「茹でる」とは、特に断りがない限り、麺類を加熱水溶液中で茹でること以外に、蒸気で蒸すことも包含する。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、粉類に下記分岐α−グルカン混合物の所定量を水とともに含有させて生地を調製し、これを成形して得られる麺類は、茹で上げ後の麺類中の食物繊維含量が、茹でる前の麺類中の食物繊維含量とほぼ同レベルにあり、しかも、茹で時間が効果的に短縮され、更に、麺類本来の風味と食感とを有していることを新規に見い出し、その製造方法をも確立して本発明を完成した。
<本発明で用いる分岐α−グルカン混合物>
(A)グルコースを構成糖とし、
(B)α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有し、
(C)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり25質量%以上50質量%以下生成し、かつ
(D)高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が40質量%以上である。
すなわち、本発明は、以下に示す麺類、その製造方法、及び麺類製造用プレミックス粉を提供することによって、上記課題を解決するものである。
下記(A)乃至(D)の特性を有する分岐α−グルカン混合物を、無水物換算で、固形分当たり、2質量%以上10質量%未満含有してなる麺類;
(A)グルコースを構成糖とし、
(B)α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有し、
(C)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり25質量%以上50質量%以下生成し、かつ
(D)高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が40質量%以上である。
粉類に下記(A)乃至(D)の特性を有する分岐α−グルカン混合物とともに水を含有せしめて生地を調製し、これを成形することを特徴とする麺類の製造方法;
(A)グルコースを構成糖とし、
(B)α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有し、
(C)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり25質量%以上50質量%以下生成し、かつ
(D)高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が40質量%以上である。
粉類に下記(A)乃至(D)の特性を有する分岐α−グルカン混合物を無水物換算で、固形分当たり、2質量%以上10質量%未満含有してなる麺類製造用プレミックス粉;
(A)グルコースを構成糖とし、
(B)α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有し、
(C)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり25質量%以上50質量%以下生成し、かつ
(D)高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が40質量%以上である。
本発明によれば、食物繊維含量が高められた麺類、すなわち、自体、食物繊維含量が高く、茹で上げ後の麺類中の食物繊維含量が茹でる前の麺類中の食物繊維含量とほぼ同レベルであり(食物繊維の歩留まりが高い)、しかも、麺類本来の風味や食感を有している高品質の麺類が提供される。本発明の麺類は、茹で上げ前後で麺類中の食物繊維含量に顕著な変動がないことから、茹で上げ後の麺類中には設計どおりに高められた食物繊維が含まれるので、食物繊維を必要としているヒトが、その所望量を確実かつ効率的に摂取することができる。すなわち、本発明の麺類は、食物繊維含量が高められた麺類であることから、当該麺類をヒトが日常的に摂取することにより、食物繊維が奏するコレステロール低下作用、インスリン分泌抑制作用、血糖値上昇抑制作用、整腸作用などの有用な各種生理作用が奏せられ、体調を良好な状態に保てるとともに、生活習慣病などの予防もできる上、食物繊維による体内の有害物質の排泄作用なども期待される。また、本発明の麺類の製造方法によれば、斯くも有用な麺類を工業的に容易かつ大量、安価に安定して供給することができる。
本願明細書で言う麺類とは、粉類に水を加え生地を調製し、これを成形して得られる食品全般を意味し、具体的には、うどん、そば、切麦、中華麺、ワンタンメン、きしめん、そうめん、冷麦、海藻めん、ライスヌードル、ビーフン、春雨、パスタ類(スパゲッティ、マカロニなど)などの他、餃子の皮なども包含する。当該麺類の形態としては、生麺、半生麺、蒸麺、茹麺、冷麺、冷凍麺、干麺、即席麺、生皮、半生皮、蒸し皮、半生生地、蒸し生地、乾燥生地などを例示できる。
また、本願明細書で言う粉類とは、斯界において公知の麺類製造用の、例えば、小麦粉、大麦粉、米粉、とうもろこし粉、そば粉、澱粉、蛋白粉などを意味し、本発明においては、それら粉類の1種又は2種以上の適量を適宜組み合わせて用いることができる。
更に、本発明で用いる分岐α−グルカン混合物としては、例えば、本願と同じ出願人が、国際公開第WO2008/136331号パンフレットなどにおいて開示した分岐α−グルカン混合物(以下、単に「分岐α−グルカン混合物」と言う。)を例示できる。当該分岐α−グルカン混合物は、澱粉を原料とし、これに種々の酵素を作用させて得られ、通常、様々な分岐構造とグルコース重合度を有する複数種の分岐α−グルカンを主体とする混合物の形態にある。当該分岐α−グルカン混合物の製造方法としては、前記国際公開第WO2008/136331号パンフレットに開示されているα−グルコシル転移酵素を澱粉質に作用させるか、前記α−グルコシル転移酵素に加え、マルトテトラオース生成アミラーゼ(EC 3.2.1.60)などのアミラーゼ、イソアミラーゼ(EC 3.2.1.68)などの澱粉枝切り酵素、更には、シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.19)、澱粉枝作り酵素(EC 2.4.1.18)、或いは特開2014−054221号公報などに開示されている重合度2以上のα−1,4グルカンを澱粉質内部のグルコース残基にα−1,6転移する活性を有する酵素などの1又は複数を併用して澱粉質に作用させる方法を例示できる。本発明を実施するに際しては、前記国際公開第WO2008/136331号パンフレットに開示された分岐α−グルカン混合物の中でも、バチルス・サーキュランス PP710(FERM BP−10771)由来及び/又はアルスロバクター・グロビホルミス PP349(FERM BP−10770)由来のα−グルコシル転移酵素単独、又は、前記α−グルコシル転移酵素と、プルラナーゼ(EC 3.2.1.41)及び/又はイソアミラーゼ(EC 3.2.1.68)などの澱粉枝切酵素、及び/又はシクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.19)(CGTase)とを澱粉原料に作用させて得られる分岐α−グルカン混合物であって、その水溶性食物繊維含量が無水物換算で、固形分当たり、約75質量%以上、好適には約80質量%以上にまで達している分岐α−グルカン混合物が、本発明を実施する上で取分け好適に用いることができる。また、前記バチルス・サーキュランス PP710(FERM BP−10771)の培養物由来の、α−グルコシル転移酵素とアミラーゼとを含む酵素は、マルトース及び/又はグルコース重合度が3以上のα−1,4グルカンに作用させると、前記水溶性食物繊維含量の高い分岐α−グルカン混合物を安定して生成することから、本発明を実施する上で最も好適に用いることができる。なお、分岐α−グルカン混合物は、通常、様々な分岐構造並びにグルコース重合度(分子量)を有する多数の分岐α−グルカンの混合物の形態にあることから、現行の技術では、個々の分岐α−グルカンを単離し定量することは技術的に不可能である。しかし、前記個々の分岐α−グルカンの構造、つまり、それらの構成単位であるグルコース残基の結合様式及び結合順序は今日の技術によっても決定しきれないとしても、分岐α−グルカン混合物は、斯界で一般に用いられている種々の物理的手法、化学的手法、又は酵素的手法により求められる種々の特性により、混合物全体として特徴付けることができる。
すなわち、本発明で用いる分岐α−グルカン混合物は、グルコースを唯一の構成糖とするグルカンであり[特性(A)]、α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有している[特性(B)]。斯かる分岐α−グルカン混合物の内、α−1,4グルカンの非還元末端グルコース残基においてα−1,6結合のみを介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有するものは、通常、澱粉が有さない構造を有するグルカンであることから、ヒトの消化酵素では分解されにくい分岐α−グルカン混合物である。なお、非還元末端グルコース残基とは、α−1,4結合を介して連結したグルカン鎖の内、還元性を示さない末端に位置するグルコース残基を意味し、α−1,4結合以外の結合とは、文字どおり、α−1,4結合以外の結合を意味し、例えば、α−1,2結合、α−1,3結合、及びα−1,6結合などを意味する。また、本発明で用いる分岐α−グルカン混合物は、イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり、25質量%以上50質量%以下生成する特徴[特性(C)]を備えており、更に、後述の高速液体クロマトグラフ法により求めた水溶性食物繊維含量が40質量%以上である特徴[特性(D)]を備えている。
このように、本発明で用いる分岐α−グルカン混合物は、前記特性(A)乃至(D)により特徴付けられるグルカン混合物である。そして、それら特性の内、特性(C)及び(D)について補足すれば以下に述べるとおりである。
本発明で用いる分岐α−グルカン混合物を特徴づける前記特性(C)に関し、そこで言うイソマルトデキストラナーゼ消化とは、グルンカンにおけるイソマルトース構造の還元末端側に隣接するα−1,2、α−1,3、α−1,4、及びα−1,6結合のいずれをも加水分解する作用を有するイソマルトデキストラナーゼを、分岐α−グルカン混合物に作用させ加水分解する操作を意味する。なお、前記イソマルトデキストラナーゼは、国際生化学・分子生物学連合(旧国際生化学連合)により酵素番号EC 3.2.1.94が付与されている酵素であり、本発明を実施するに際しては、アルスロバクター・グロビホルミス由来のイソマルトデキストラナーゼ[例えば、サワイ(Sawai)ら、『アグリカルチャラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agricultural and Biological Chemistry)』、第52巻、第2号、495乃至501頁(1988年)参照]が好適に用いられる。
前記イソマルトデキストラナーゼ消化により生成するイソマルトースの、消化物の固形分当たりの割合は、分岐α−グルカンの構造において、イソマルトデキストラナーゼの作用により遊離するイソマルトース構造の割合を示すもので、分岐α−グルカン混合物を、混合物全体として、酵素的手法により特徴付ける指標の一つとして用いることができる。本発明で用いる分岐α−グルカン混合物の内、イソマルトデキストラナーゼ消化により生成するイソマルトースの割合が、消化物の固形分当たり、通常、25乃至50質量%、好ましくは30乃至50質量%、より好ましくは35乃至45質量%である分岐α−グルカン混合物は、そのメカニズムは定かでないものの、茹で上げ後の麺類中の歩留まりが高く、しかも、従来の麺類と同等以上の、麺類本来の風味と食感とを有していること、しかも茹で上がり時間を短縮できることから、本発明を実施する上でより好適に用いられる。
次に、本発明で用いる分岐α−グルカン混合物を特徴づける前記特性(D)に関し、当該分岐α−グルカン混合物中の水溶性食物繊維含量は、前記国際公開第WO2008/136331号パンフレットの13乃至14頁の段落0022に開示されている、平成8年5月20日付の厚生省告示第146号の栄養表示基準、『栄養成分等の分析方法等(栄養表示基準別表第1の第3欄に掲げる方法)』における第8項の「食物繊維」に記載されている高速液体クロマトグラフ法(以下、本願明細書においては、「酵素−HPLC法」と言う。)により求めることができる。なお、本願明細書を通じて、当該分岐α−グルカン混合物の水溶性食物繊維含量は、特に断りがない限り、前記「酵素−HPLC法」で求められる値を意味する。
本発明で用いる分岐α−グルカン混合物の内、前記酵素−HPLC法により求めた水溶性食物繊維含量が、通常、40質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更には80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である分岐α−グルカン混合物は、そのメカニズムは定かでないものの、麺類の茹で上がり時間を短縮する効果が高く、しかも、麺類本来の風味と食感とを有していることから、本発明を実施する上でより好適に用いることができる。なお、水溶性食物繊維含量の上限に制限は特にないけれども、経済性の面から、通常、水溶性食物繊維含量が100質量%未満、好適には95質量%未満、更に好適には85質量%程度に留めた分岐α−グルカン混合物が、本発明を実施する上でより好適に用いられる。
更に、本発明でより好適に用いられる分岐α−グルカン混合物としては、前記特性(A)乃至(D)に加え、下記特性(E)及び(F)、更には下記特性(G)及び(H)を有する分岐α−グルカン混合物が挙げられる。
(E)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基の比が1:0.6乃至1:4の範囲にあり、かつ
(F)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基との合計が全グルコース残基の60%以上を占める。
(G)α−1,3結合したグルコース残基が全グルコース残基の0.5%以上10%未満である;及び
(H)α−1,3,6結合したグルコース残基が全グルコース残基の0.5%以上である。
なお、前記特性(E)乃至(H)は、分岐α−グルカン混合物をメチル化分析に供して確認することができる。
ここで言うメチル化分析とは、周知のとおり、多糖又はオリゴ糖において、それらを構成する単糖の結合様式を決定する方法として、斯界において一般的に汎用されている方法である[シューカヌ(Ciucanu)ら、『カーボハイドレート・リサーチ(Carbohydrate Research)』、第131巻、第2号、209乃至217頁(1984年)参照]。当該メチル化分析をグルカンにおけるグルコースの結合様式の分析に適用する場合、まず、グルカンを構成するグルコース残基における全ての遊離の水酸基をメチル化し、次いで、完全メチル化したグルカンを加水分解する。次いで、加水分解により得られたメチル化グルコースを還元してアノマー型を消去したメチル化グルシトールとし、更に、このメチル化グルシトールにおける遊離の水酸基をアセチル化することにより部分メチル化グルシトールアセテート(なお、「部分メチル化グルシトールアセテート」におけるアセチル化された部位と「グルシトールアセテート」の表記を省略して、「部分メチル化物」と略記する場合がある。)を得る。得られる部分メチル化物をガスクロマトグラフィーで分析することにより、グルカンにおいて結合様式がそれぞれ異なるグルコース残基に由来する各種部分メチル化物は、ガスクロマトグラムにおける全ての部分メチル化物のピーク面積に占めるピーク面積の百分率(%)で表すことができる。そして、このピーク面積%から当該グルカンにおける結合様式の異なるグルコース残基の存在比、すなわち、各グルコシド結合の存在比率を決定できる。部分メチル化物についての「比」は、メチル化分析のガスクロマトグラムにおけるピーク面積の「比」を意味し、部分メチル化物についての「%」はメチル化分析のガスクロマトグラムにおける「面積%」を意味する。
メチル化分析により得られる、α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基の比率、及び、α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基の全グルコース残基に対する割合は、本分岐α−グルカン混合物を、混合物全体として、化学的手法により構造を特徴付ける指標の一つとして用いることができる。
上記特性(E)及び(F)における「α−1,4結合したグルコース残基」とは、C−1位の水酸基とC−4位の水酸基のみを介して他のグルコース残基に結合したグルコース残基を意味し、メチル化分析において、2,3,6−トリメチル−1,4,5−トリアセチルグルシトールとして検出される。また、上記特性(E)及び(F)における「α−1,6結合したグルコース残基」とは、C−1位の水酸基とC−6位の水酸基のみを介して他のグルコース残基に結合したグルコース残基を意味し、メチル化分析において、2,3,4−トリメチル−1,5,6−トリアセチルグルシトールとして検出される。
上記特性(E)が規定する「α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基の比が1:0.6乃至1:4の範囲にある」の要件は、分岐α−グルカン混合物が、メチル化分析において、2,3,6−トリメチル−1,4,5−トリアセチルグルシトールと2,3,4−トリメチル−1,5,6−トリアセチルグルシトールとの比が1:0.6乃至1:4の範囲にあることに基づく。その内、前記比が、1:1乃至1:3の範囲にある分岐α−グルカン混合物は、本発明を実施する上で、より好適に用いられる。また、上記特性(F)が規定する「α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基との合計が全グルコース残基の60%以上を占める」の要件は、分岐α−グルカン混合物が、メチル化分析において、2,3,6−トリメチル−1,4,5−トリアセチルグルシトールと2,3,4−トリメチル−1,5,6−トリアセチルグルシトールとの合計が部分メチル化グルシトールアセテートの60%以上を占めることに基づく。その内、前記比率が、通常、60乃至90%、好適には60乃至80%の範囲にある分岐α−グルカン混合物は、本発明を実施する上で、より好適に用いられる。
同様に、上記特性(G)における、「α−1,3結合したグルコース残基が全グルコース残基の0.5%以上10%未満である」とは、本発明の分岐α−グルカンは、C−1位の水酸基とC−3位の水酸基のみを介して他のグルコースと結合したグルコース残基が、グルカンを構成する全グルコース残基の0.5%以上10%未満存在することを意味する。また、上記特性(G)における、α−1,3結合したグルコース残基が全グルコース残基の1乃至3%の範囲にある分岐α−グルカン混合物は、本発明を実施する上でより好適に用いられる。なお、前記α−1,3結合したグルコース残基は、メチル化分析において検出される、「2,4,6−トリメチル−1,3,5−トリアセチルグルシトール」に基づいて解析できる。
さらに同様に、上記特性(H)における、「α−1,3,6結合したグルコース残基が全グルコース残基の0.5%以上である」とは、本発明の分岐α−グルカンは、C−1位の水酸基以外に、C−3位の水酸基とC−6位の水酸基を介して他のグルコースと結合したグルコース残基が、グルカンを構成する全グルコース残基の0.5%以上存在することを意味する。また、上記特性(H)における、α−1,3,6結合したグルコース残基が、グルカンを構成する全グルコース残基の1乃至10%である分岐α−グルカン、好適には、1乃至7%の範囲にある分岐α−グルカンは、本発明を実施する上でより好適に用いられる。なお、前記α−1,3,6結合したグルコース残基は、メチル化分析において検出される、「2,4−ジメチル−1,3,5,6−テトラアセチルグルシトール」に基づいて解析できる。
なお、通常、澱粉はC−1位の水酸基とC−6位の水酸基のみを介して他のグルコースと結合したグルコース残基を有しておらず、かつα−1,4結合したグルコース残基が全グルコース残基中の大半を占めていることから、上記特性(E)乃至(H)の要件は、分岐α−グルカン混合物が澱粉とは全く異なる構造を有することを如実に示すものである。
更に、本発明でより更に好適に用いられる分岐α−グルカン混合物として、上記特性(A)乃至(H)に加えて更に下記特性(I)及び(J)を有する分岐α−グルカン混合物が挙げられる。
(I)ゲル濾過高速液体クロマトグラムに基づく分子量分布分析による重量平均分子量(Mw)が約1,600乃至約81,000ダルトンであり、かつ
(J)重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)が20未満である。
上記特性(I)及び(J)の要件に関し、本発明で用いられる分岐α−グルカン混合物の平均グルコース重合度は、通常、10乃至500(Mw約1,600乃至約81,000)の範囲にあり、その内、平均グルコース重合度が10乃至300(Mw約1,600乃至約49,000)、好ましくは12乃至100(Mw約2,000乃至約16,000)、より好ましくは15乃至60(Mw約2,400乃至約14,000)、更により好ましくは20乃至40(Mw約4,000乃至約11,000)の範囲にあるものは、Mw/Mn値の限定と同様、分岐α−グルカン混合物の均質性の観点から、本発明を実施する上でより好適に用いられる。
MwびMnは、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー等を用いて求めることができ、平均グルコース重合度は、Mwから18を減じ、162で除して求めることができる。なお、分岐α−グルカン混合物は、平均グルコース重合度が大きいものほど粘度が増し、平均グルコース重合度が小さいものほど甘味度が増す点で、通常のグルカンと同様の性質を示す。Mw/Mn値は、1に近いものほど分岐α−グルカン混合物を構成する分岐α−グルカン分子のグルコース重合度のばらつきが小さいことを意味し、通常、20以下、好ましくは15以下、より好ましくは1乃至10、更に好ましくは1乃至5、更により好ましくは2乃至3のものは、分岐α−グルカン混合物の均質性の観点から、本発明を実施する上でより好適に用いられる。
更に、本発明で用いる分岐α−グルカン混合物のデキストロース・エクイバレント(DE)は、粘度及び甘味度と関連し、通常、10以下、好ましくは9以下、より好ましくは6乃至8、更に好ましくは6.5乃至7.5である。
また、本発明用いる分岐α−グルカン混合物として、DEが4乃至10、好ましくは5乃至9、より好ましくは6乃至8、更に好ましくは6.5乃至7.5、更に好ましくは約7であり、Mw/Mn値が5以下、好ましくは1乃至3の範囲にあり、かつ、平均グルコース重合度が15乃至60、より好ましくは20乃至40の範囲にあるものは、分岐α−グルカン混合物の均質性の観点から、本発明を実施する上でより一層好適に用いることができる。
更に、本発明を実施する上でより好適な分岐α−グルカン混合物としては、グルコース重合度(DP)9以上のグルカンの無水物換算での合計量が、固形分当たり、80質量%以上、好ましくは85乃至95質量%である分岐α-グルカン混合物、換言すれば、DP8以下のグルカンの無水物換算での合計量が、固形分当たり、20質量%以下、好ましくは5乃至15質量%である分岐α−グルカン混合物は、分岐α−グルカン混合物の均質性が高く優れており、本発明を実施する上でより好適に用いられる。また、本発明で用いる分岐α−グルカン混合物としては、取り扱い性の観点から、通常、水分含量が約10質量%以下、好ましくは5質量%以下である粉末状の分岐α−グルカン混合物は、保存時の安定性の点で優れていることから、より好適に用いることができる。
また、斯くして得られた分岐α−グルカン混合物にグルコアミラーゼ等の糖質加水分解酵素やグリコシルトレハロース生成酵素(EC 5.4.99.15)を作用させたり、水素添加等による還元処理やサイズ排除クロマトグラフィー等による分画を行って、分岐α−グルカン混合物の分子量や分子量分布を低減ないしは調節したり、分岐α−グルカンの分子末端の構造をα,α−トレハロース構造としたり、或いは分岐α−グルカン混合物全体の還元力を低減することも随意である。
本発明で用いる分岐α−グルカン混合物は、以上に述べたとおりのものであるが、株式会社林原から商品名『ファイバリクサ(登録商標)』として販売されている分岐α−グルカン混合物は、本発明を実施する上で、最適な分岐α−グルカン混合物として用いることができる。
次に、本発明の麺類に配合される分岐α−グルカン混合物の配合量について述べると、分岐α−グルカン混合物は、無水物換算で、本発明の麺類質量(固形分)に対し、通常、2質量%以上10質量%未満、好適には2質量%以上8質量%未満、より好適には2質量%以上乃至6質量%未満配合される。分岐α-グルカン混合物を前記数値範囲で含む麺類は、麺を茹でる前後で、麺類固形分当たりの食物繊維含量に顕著な変動がなく、茹で上げ後の食物繊維の歩留まりは、後述する実験1に示す、食物繊維の歩留まり計算式によれば、通常、60%超、好適には70%以上、より好適には80%以上、更に好適には90%以上にも達する。しかも、本発明の麺類は、従来の麺類と比べ、茹で上がる時間が短かいという特徴をも有している。なお、分岐α−グルカン混合物の配合量が、2質量%未満である場合には、得られる麺類の食物繊維含量が低過ぎ、麺類の早茹で効果が期待できなくなるので好ましくない。逆に、分岐α−グルカン混合物の配合量が10質量%以上の場合、食物繊維含量が高められた麺類は得られるものの、茹で上げたとき、麺が柔らかくなり、麺類本来の食感が著しく低下する場合があるので好ましくない。
このように、本発明の麺類は、食物繊維として所定量の分岐α−グルカン混合物を配合することにより、茹で上げ後の食物繊維の歩留まりが効果的に向上した、食物繊維含量が高められた麺類である。なお、本発明の麺類が有する特性を妨げない範囲で、当該麺類には、分岐α−グルカン混合物以外の他の成分の適量を配合することも随意である。他の成分としては、例えば、従来公知の麺用副原料、具体的には、保存剤、着色剤、安定剤、麺質改良剤、栄養剤、呈味剤などを例示でき、それらの1種又は2種以上の適量を適宜組み合わせて用いることができる。前記他の成分の配合量は、その種類及びそれを配合する麺類の種類によって適宜設定すればよいが、通常、各成分につき、無水物換算で、麺類質量(固形分)に対し、0.0001質量%以上、好適には0.001乃至30質量%、より好適には0.01乃至20質量%、更に好適には0.01乃至10質量%の範囲から選ばれる量を例示できる。また、前記他の成分は、本発明の麺類が完成するまでの1又は複数の工程でその必要量を適宜配合すればよい。
前記保存剤としては、例えば、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、フマール酸、乳酸などの可食性有機酸類;エチルアルコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのアルコール類;グリシン、アラニンなどのアミノ酸類、食塩、酢酸塩、クエン酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三カリウムなどの塩類;及びにんにく汁、梅肉エキス、醗酵乳、卵白リゾチームなどの天然型保存剤などを例示できる。
前記着色剤としては、例えば、赤麹、カニ殻粉末、アスタキサンチン、野菜色素、紅麹色素、濃縮ファフィア色素油、クチナシエロー、抹茶色、コチニール色素、クチナシ黄色素、クチナシ青色素、フラボノイド色素、カラメル色素、β−カロテン、カロテノイド系色素、木炭などの天然色素;及び赤色2号、赤色3号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、青色1号、二酸化チタンなどの合成着色料を例示できる。
前記安定剤としては、例えば、プルラン、シクロデキストリン、環状四糖などを例示できる。
前記麺質改良剤としては、例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル、蛋白質、水溶性ヘミセルロース、有機酸モノグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、ステアロイル乳酸塩などを例示できる。
前記栄養剤としては、例えば、アミノ酸類、ビタミン類、香料(ハーブ抽出物を含む)などを例示できる。
前記呈味剤としては、例えば、グルコース、フラクトース、パラチノース(イソマルツロース)、マルトース、イソマルトース、マルトトリオース、イソマルトトリオース、パノース、マルトテトラオース、マルトペンタオースなどの還元性の単糖類やオリゴ糖;ソルビトール、マルチトール、イソマルチトール、トレハロース(α,α−トレハロース、α,β−トレハロース、又はβ,β−トレハロース)、ラクチトール、パニトール、スクロース、ラフィノース、エルロース、ラクトスクロース、α−グリコシルトレハロース、α−グリコシル−α−グリコシド、α−グリコシルスクロースなどの非還元性の単糖類やオリゴ糖;砂糖結合水飴、マルトース高含有シラップ、トレハロース高含有シラップ、マルトテトラオース高含有シラップ、パノース高含有シラップ、ラクトスクロース高含有シラップ、マルチトール高含有シラップなどの混合糖質含有シラップ;高甘味度甘味料(スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ステビオサイド、ステビア抽出物など)を例示できる。前記呈味剤の内、マルトースやトレハロースなどの2糖類は、分岐α−グルカン混合物との相性がよいので、それらは好適に組み合わせて用いることができる。
次に、本発明の麺類の製造方法について説明する。当該製造方法は、粉類に下記(A)乃至(D)の特性を有する分岐α−グルカン混合物の所定量とともに水を含有せしめて生地を調製し、これを成形することを特徴とする麺類の製造方法である。
(A)グルコースを構成糖とし、
(B)α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有し、
(C)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり25質量%以上50質量%以下生成し、かつ
(D)高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が40質量%以上である。
なお、本発明の麺類の製造方法において用いる分岐α−グルカン混合物としては、既述した本発明の麺類に配合される分岐α−グルカン混合物のいずれもが用いられることは言うまでもない。
本発明の麺類の製造方法は、当該麺類の生地が完成するまでの工程において、麺類の生地質量(固形分)に対し、所定量の分岐α−グルカン混合物を含有させ得る限り、斯界において汎用の麺類の製造方法のいずれも採用することができる。すなわち、斯かる粉類に水を含有せしめて生地を調製する方法は、粉類を用いて生地が調製できる方法であればよく、その目的で、特別な機械・装置は必要とせず、汎用の製麺機を用いることができる。用いる水としては、水道水、井戸水、河川水、湖水、湧水だけでなく、精製水、ミネラルウォーター、ナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター、ボトルドウォーター、炭酸水、食塩水、カン水、有機酸水、アルコール水、温泉水、海水、海洋深層水などから選ばれる1種又は2種以上の適量を適宜組み合わせて用いることができる。
更に、本発明の麺類は、後述する実験2に示すとおり、茹で上がり時間が短いという特徴を有する。そのメカニズムは定かではないけれども、その理由として、麺類の生地を調製する際、分岐α−グルカン混合物が生地中のグルテン組織形成に何らかの影響を与え、その結果、茹で上がり時間が短縮されるか、或いは、当該麺類を茹でる際、分岐α−グルカン混合物が、麺類中の粉類に含まれる澱粉のα化を促進し、麺が軟化し、その結果、茹で上がり時間が短縮されるのではないかと推測される。
また、本発明のプレミックス粉は、粉類と分岐α−グルカン混合物を含み、分岐α−グルカン混合物を、無水物換算で、固形分当たり、2質量%以上10質量%未満含む麺類製造用プレミックス粉である。当該プレミックス粉は、分岐α−グルカン混合物が前記含量となるように、粉類と分岐α−グルカン混合物とを均一に撹拌混合して調製することができる。この際、本発明の麺類に配合することのできる、既述の他の成分の1種又は2種以上の適量を適宜配合することも随意である。本発明のプレミックス粉は、これに所定量の水を加えて生地を調製し、これを成形することにより、食物繊維含量を高めた麺類を容易に調製することができる。
以下、実験に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
<実験1:うどん生麺を茹で上げたときの食物繊維の歩留まり試験>
(1)概要
水溶性食物繊維として、分岐α−グルカン混合物及び市販の水溶性食物繊維含有製品のいずれかを用いて麺類をそれぞれ調製し、それらを茹で上げたときの麺類中の食物繊維の歩留まりについて比較検討した。
(2)実験方法
<被験試料としての、うどん生麺の調製>
後述する実施例1で用いられている分岐α−グルカン混合物(無水物換算での水溶性食物繊維含量は、固形分当たり、80質量%)を、当該分岐α−グルカン混合物中に含まれる食物繊維の無水物換算で、得られる麺類の質量(固形分)当たり、5質量%(理論値)となるように添加した以外は、実施例1と同様にして、うどん生麺(被験試料A1)を調製した。また、分岐α−グルカン混合物に代えて、市販の水溶性食物繊維である、商品名『ファイバーソル2』(無水物換算での食物繊維含量は、固形分当たり、90%、松谷化学工業株式会社製)、商品名『ニュートリオース』(無水物換算での食物繊維含量は、固形分当たり、85%、ロケットジャパン株式会社製)、又は商品名『ライテスII』(無水物換算での食物繊維含量は、固形分当たり、80質量%、ダニスコジャパン株式会社製)]を用いた以外は、被験試料A1と同様にして、3種類のうどん生麺(被験試料A2乃至A4)を調製した。なお、対照として、分岐α−グルカン混合物を用いない以外は、被験試料A1と同様にして調製した、うどん生麺を用いた。
<茹で上げ前の各被験試料中の総食物繊維含量の測定>
平成8年5月20日付の厚生省告示第146号の栄養表示基準、『栄養成分等の分析方法等(栄養表示基準別表第1の第3欄に掲げる方法)』における第8項の「食物繊維」の(1)、(2)の記載内容に準じて、茹で上げ前の各被験試料中の食物繊維含量を求めた。すなわち、茹で上げ前の被験試料A1乃至A4それぞれにつき、エタノール沈澱処理し、可溶性画分と不溶性画分とに分け、それら画分に含まれる食物繊維含量を合算して、被験試料A1乃至A4中の総食物繊維含量を求めた。
詳細には、茹で上げ前の被験試料A1乃至A4のうどん生麺をそれぞれをミキサーにかけて微細化した後、それぞれサンプリングし、精秤し、それら各サンプルの乾燥固形物質量を求めた。また、前記各サンプルにつき、市販の食物繊維定量用試薬キット『TDF−100A』(シグマ社製)を用い、本キットに付属の3種類の酵素(α−アミラーゼ、プロテアーゼ、及びアミログルコシダーゼ)と、本キットに添付されたプロトコールに基づき、各試料を処理して、不溶性食物繊維、高分子食物繊維、及び低分子食物繊維を含む、各試料(うどん生麺)の固形物100g当たりの総食物繊維含量を求めた。茹で上げ前の被験試料A1乃至A4の結果は表1に示す。
<茹で上げ後の各被験試料中の総食物繊維含量の測定>
茹で上げ後の各被験試料A1乃至A4の食物繊維含量は、下記手順で茹で上げた麺を用いた以外は、前記茹で上げ前の各被験試料中の総食物繊維含量の測定と同様にして行った。
うどん生麺の茹で上げは、被験試料A1乃至A4のうどん生麺をそれぞれ、てぼに取り、沸騰水中で穏やかに撹拌しつつ、1分間かけて麺を均一にほぐし、更に、5分間茹でた後、それぞれサンプリングし、冷水で冷却し、各被験試料中に残存する総食物繊維含量を測定した。各試料に含まれる総食物繊維含量は、前記茹でる前の被験試料A1乃至A4のうどん生麺の総食物繊維含量の測定と同様にして求めた。茹で上げ後の被験試料A1乃至A4の結果は表1に示す。
Figure 2017184635
表1中、茹でる前の対照の試料と比べ、茹で上げ後の対照の試料中の総食物繊維含量が若干高かったのは、うどん生麺を茹でることにより食物繊維が新たに生成したのではなく、うどん生麺を茹でる際、麺中に含まれる、蛋白質、脂質、灰分、食塩などの食物繊維以外の成分が相当量、麺から溶出し、その結果、茹で上げ後のうどん固形分当たりの総食物繊維含量が相対的に高まったためではないかと考えられる。
ここで、対照における前記挙動を考慮して、被験試料A1乃至A4の麺につき、茹で上げ後の食物繊維の歩留まりを正確に解析するために、茹で上げ前後の被験試料A1乃至A4の麺が対照の麺と比べどの程度食物繊維含量が高いのかを指標にして調べた。
まず、茹でる前の対照及び被験試料A1乃至A4の麺100g当たりの総食物繊維含量は、表1に示すとおり、それぞれ、13.30g、17.87g、18.65g、18.44g、及び17.69gであり、茹でる前の被験試料A1乃至A4の麺100g当たりの総食物繊維含量は、対照と比べ、それぞれ、4.57g、5.35g、5.14g、及び4.39g高かった(表1中の差分a参照)。
一方、茹で上げ後の対照及び被験試料A1乃至A4の麺100g当たりの総食物繊維含量は、表1に示すとおり、それぞれ、14.47g、18.85g、17.09g、16.79g、及び16.09gであり、茹で上げ後の被験試料A1乃至A4の麺100g当たりの総食物繊維含量は、対照と比べ、それぞれ、4.38g、2.62g、2.32g、及び1.62g高かった(表1中の差分b参照)。
前記測定結果に基づいて、被験試料A1乃至A4の茹で上げ後の食物繊維の歩留まりを下記のとおり求めた。すなわち、前記表1に示す差分a及び差分bに基づき、被験試料A1乃至A4それぞれにつき、茹で上げ後の麺中の食物繊維の歩留まり(%)({[(差分b)/(差分a)]×100}])を求めたところ、それぞれ、約96%、約49%、約45%、及び約37%と、被験試料A2乃至A4の麺の食物繊維の歩留まりは50%以下にまで低下していたのに対し、被験試料A1における食物繊維の歩留まり(%)は、約96%と、麺を茹でる前後で食物繊維含量と同レベルにあり、顕著な変動はなかった。なお、うどん生麺中には、食物繊維として、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維とが含まれているが、被験試料A1乃至A4のうどん生麺に補足された食物繊維は全て水溶性食物繊維であったことから、表1中の差分a及び差分bは、対照のうどん生麺に補足された水溶性食物繊維含量を意味している。
本実験結果から、被験試料A1乃至A4のうどん生麺に配合された食物繊維は、全て水溶性食物繊維であったことを勘案すると、分岐α-グルカン混合物は、『ファイバーソル2』、『ニュートリオース』、又は『ライテスII』と比べ、これを配合した麺類を茹で上げても麺類から溶出し難い水溶性食物繊維であると判断される。なお、具体的なデータは割愛するが、分岐α−グルカン混合物を配合したパスタ生麺においても、うどん生麺と同様の結果が得られた。また、分岐α−グルカン混合物は、うどん、パスタ以外の他の麺類に配合した場合においても、前記したと同様の結果が得られる。
<実験2:分岐α−グルカン混合物が麺類の茹で上げ時間に及ぼす影響>
(1)概要
実験1において、分岐α−グルカン混合物を用いて調製した食物繊維含量を高めた麺類にあっては、他の食物繊維を用いて調製した麺類と比べ、茹で上がり時間が短縮される傾向にあることが観察されたことから、本実験では、分岐α−グルカン混合物が麺類の茹で上がり時間に及ぼす影響について詳細に調べた。
(2)実験方法
<被験試料の調製>
食物繊維として、実験1で用いたと同じ分岐α−グルカン混合物を用い、最終的に得られる麺類の質量(固形分)当たりの、当該分岐α−グルカン混合物を、無水物換算で、固形分当たり、0.5、1、2、3、5又は10質量%となるように配合した以外は実施例1と同様にして生地を調製し、成形(厚さ3×幅4mm)し、6種類のうどん生麺(被験試料B1乃至B6)を得た。対照として、分岐α−グルカン混合物を添加しない以外は、前記被験試料と同様にして調製した、うどん生麺を用いた。
<うどん生麺の茹で上げ試験>
被験試料B1乃至B6と対照のうどん生麺をそれぞれ、てぼに取り、沸騰水中で穏やかに撹拌しつつ、麺を茹でながら、茹で麺を経時的にサンプリングし、その都度試食し、うどん生麺を沸騰水中に投入してから麺が茹で上がるまでに要する時間を計測した。結果は表2に示す。
Figure 2017184635
表2に示すとおり、被験試料B1及び被験試料B2の麺の茹で上がり時間は対照と比べ大差なかったが、被験試料B3乃至B6の麺の茹で上がり時間は、分岐α−グルカン混合物の添加量に依存して顕著に短縮され、被験試料B6の麺にあっては、対照と比べ約1/2にまで短縮された。しかしながら、被験試料B6の麺は、他の試料の麺と比べ、麺が柔らかくなり過ぎ、うどん本来の食感が損なわれていた。これに対し、被験試料B3乃至B5の麺はそれぞれ、対照の麺の茹で上がり時間約8分に対し、約7.5分、約7分、及び約6.5分と顕著に短縮され、しかも、うどん本来の風味と食感を有していた。
本実験結果から、うどん生麺に分岐α−グルカン混合物を、無水物換算で、固形分当たり、2質量%以上10質量%未満配合すると、麺の茹で上がり時間が効果的に短縮され、しかも、うどん本来の風味と食感が保持されていることが判明した。また、分岐α−グルカン混合物による、麺の茹で上がり時間短縮効果は、うどん以外の他の麺類においても同様に発揮される。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するけれども、本発明はそれら実施例により何ら限定されるものではない。
<食物繊維高含有うどん生麺>
小麦粉(中力粉)315質量部、化工澱粉135質量部、グルテン13.5質量部、及び濃度10質量%の食塩水202.5質量部を汎用のうどん混合機にて混練し、更に、国際公開第WO2008/136331号パンフレットの実施例5に開示された方法に準じて得た、下記(ア)乃至(セ)の特性を有する分岐α−グルカン混合物を25質量部添加し、混練し、生地を調製した。得られた生地を汎用の製麺機に移し、成形(厚さ3×幅4mm)し、本発明の食物繊維含量を高めたうどん生麺を得た。
<分岐α−グルカン混合物の特性>
(ア)グルコースを構成糖とする。
(イ)α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有する。
(ウ)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり約40質量%生成する。
(エ)高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が約80質量%である。
(オ)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基の比が約1:2.6である。
(カ)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基との合計が全グルコース残基の約69%を占める。
(キ)α−1,3結合したグルコース残基が全グルコース残基の2.5%である。
(ク)α−1,3,6結合したグルコース残基が全グルコース残基の6.3%である。
(ケ)ゲル濾過高速液体クロマトグラムに基づく分子量分布分析による重量平均分子量(Mw)が約4,700ダルトンであり、かつ
(コ)重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)が2.1である。
(サ)固形分当たり、グルコース重合度(DP)9以上の分岐α−グルカン含量が約90質量%である。
(シ)DP1乃至8の単糖乃至オリゴ糖の合計含量が約10質量%である。
(ス)DEが約7である。
(セ)水分含量が約8質量%である。
本品は、食物繊維含量が高められた食物繊維高含有うどん生麺であり、茹で上げ後の食物繊維の歩留まりは、90%以上であった。また、本品は、製麺性、保存安定性のいずれの点においても優れているとともに、茹で上がり時間が約7分と、本品と同等の麺の太さの、従来のうどん生麺の茹で上がり時間である約10分と比べ顕著に短縮されており、しかも、うどん本来の風味と食感とを有していた。また、本品は、必要に応じて、常法に従い、半生麺、干麺にすることも随意である。
<食物繊維高含有うどん生麺>
小麦粉(中力粉)330質量部、化工澱粉125質量部、グルテン10.5質量部、及び濃度10質量%の食塩水200質量部を汎用のうどん混合機にて混練し、更に、国際公開第WO2008/136331号パンフレットの実施例3に開示された方法に準じて得た、下記(ア)乃至(セ)の特性を有する分岐α−グルカン混合物を22質量部添加し、混練し、生地を調製した。得られた生地を汎用の製麺機に移し、成形(厚さ3×幅4mm)し、本発明の食物繊維含量を高めたうどん生麺を得た。
<分岐α−グルカン混合物の特性>
(ア)グルコースを構成糖とする。
(イ)α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有する。
(ウ)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり約35質量%生成する。
(エ)高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が約76質量%である。
(オ)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基の比が約1:1.3である。
(カ)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基との合計が全グルコース残基の約70%を占める。
(キ)α−1,3結合したグルコース残基が全グルコース残基の3.0%である。
(ク)α−1,3,6結合したグルコース残基が全グルコース残基の4.8%である。
(ケ)ゲル濾過高速液体クロマトグラムに基づく分子量分布分析による重量平均分子量(Mw)が約6,200ダルトンであり、かつ
(コ)重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)が2.2である。
(サ)固形分当たり、グルコース重合度(DP)9以上の分岐α−グルカン含量が約91質量%である。
(シ)DP1乃至8の単糖乃至オリゴ糖の合計含量が約9質量%である。
(ス)DEが約7.5である。
(セ)水分含量が約8質量%である。
本品は、食物繊維含量が高められた食物繊維高含有うどん生麺であり、茹で上げ後の食物繊維の歩留まりは、90%以上であった。また、本品は、製麺性、保存安定性のいずれの点においても優れているとともに、茹で上がり時間が約7分と、本品と同等の麺の太さの、従来のうどん生麺の茹で上がり時間である約10分と比べ顕著に短縮されており、しかも、うどん本来の風味と食感とを有していた。また、本品は、必要に応じて、常法に従い、半生麺、干麺にすることも随意である。
<食物繊維高含有パスタ生麺>
国際公開第WO2008/136331号パンフレットの実施例4に開示された方法に準じて得た下記(ア)乃至(セ)の特性を有する分岐α−グルカン混合物を50質量部、食塩5質量部とアルコール製剤20質量部とを精製水290質量部に添加し、湯煎して溶解し、得られる水溶液にセモリナ粉500質量部と準強力粉500質量部とを添加し、次いで、オリーブオイル40質量部を添加し、汎用の撹拌機にて15分間混練し、得られた生地を真空容器に入れ、容器内を真空にし、室温で一夜静置した後、圧延し、汎用の製麺機に移し、成形し(直径2mm)、本発明の食物繊維含量を高めたパスタ生麺を製造した。
<分岐α−グルカン混合物の特性>
(ア)グルコースを構成糖とする。
(イ)α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有する。
(ウ)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形物当たり約45質量%生成する。
(エ)高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が約85質量%である。
(オ)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基の比が約1:2である。
(カ)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基との合計が全グルコース残基の約80%を占める。
(キ)α−1,3結合したグルコース残基が全グルコース残基の1.4%である。
(ク)α−1,3,6結合したグルコース残基が全グルコース残基の1.7%である。
(ケ)ゲル濾過高速液体クロマトグラムに基づく分子量分布分析による重量平均分子量(Mw)が約10,000ダルトンであり、かつ
(コ)重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)が2.9である。
(サ)固形分当たり、グルコース重合度(DP)9以上の分岐α−グルカン含量が約92質量%である。
(シ)DP1乃至8の単糖乃至オリゴ糖の合計含量が約8質量%である。
(ス)DEが約6である。
(セ)水分含量が約7質量%である。
本品は、食物繊維含量が高められたパスタ生麺であり、茹で上げ後の食物繊維の歩留まりは、90%以上であった。また、本品は、製麺性、保存安定性のいずれの点においても優れているとともに、茹で上がり時間が約2分と、本品と同等の麺の太さを有する、従来のパスタ生麺の茹で上がり時間である約3分と比べ顕著に短縮されており、しかも、パスタ本来の風味と食感とを有していた。また、本品は、必要に応じて、常法に従って、半生麺、干麺にすることも随意である。
<食物繊維高含有中華生麺>
汎用のうどん混合機に小麦粉(準強力粉)450質量部、食塩4.5質量部、かんすい4.5質量部、及び精製水147.6質量部を加えて混練し、これに実施例1乃至3のいずれかにおいて用いたと同じ分岐α−グルカン混合物を26質量部加え、更に混練し、生地を調製し、これを汎用の製麺機に移し、成形(直径1mm)し、3種類の本発明の食物繊維含量を高めた中華生麺を製造した。
本品は、食物繊維含量が高められた中華生麺であり、茹で上げ後の食物繊維の歩留まりは、60%超であった。また、本品は、製麺性、保存安定性のいずれの点においても優れているとともに、茹で上がり時間が約30秒と、本品と同等の麺の太さを有する、従来の中華生麺の茹で上がり時間である約40秒と比べ顕著に短縮されており、中華生麺本来の風味と食感とを有していた。また、本品は、必要に応じて、常法に従って、半生麺、干麺にすることも随意である。
<うどん生麺用プレミッスク粉>
粉類として、小麦粉(中力粉)300質量部及び化工(加工)澱粉120質量部と、更にグルテン12質量部、食塩18質量部、及び実施例1乃至3のいずれかにおいて用いたと同じ分岐α−グルカン混合物を28質量部を均一に撹拌混合し、乾燥し、容器に充填し、3種類の本発明の食物繊維含量を高めたうどん生麺用プレミッスク粉を得た。
本品は、適量の水と混練し、製麺することにより、食物繊維含量が高められたうどん生麺を容易に製造することができる。
<中華生麺用プレミックス粉>
粉類として、小麦粉(準強力粉)400質量部と、食塩4質量部と、商品名『ファイバリクサ(登録商標)』(分岐α−グルカン混合物、株式会社林原販売)を23質量部を均一に撹拌混合し、乾燥し、本発明の食物繊維含量を高めた中華生麺用プレミックス粉を製造した。
本品は、適量の水及びかん水と混練し、製麺することにより、食物繊維含量が高められた中華生麺を容易に製造することができる。
以上述べたとおり、本発明の麺類は、茹で上げ後の食物繊維の歩留まりが向上した麺類であることから、茹で上げて食するとき、麺類調製時に設定されたと同レベルの食物繊維を含有していることから、食物繊維を必要としているヒトがその必要量を確実かつ容易に摂取することができる。しかも、本発明の麺類は、茹で上がり時間が効果的に短縮されており、ファストフードの分野はもとより、各種食堂、レストラン、ホテル、立ち食い形式の飲食店、一般家庭で調理する際、短時間、低エネルギーコストで調理できる優れた利点を有している。また、本発明の麺類は、麺類本来の風味と食感とを有している高品質の麺類である。更に、本発明の麺類の製造方法によれば、斯くも優れた麺類を工業的に容易かつ安価に安定して供給することができる。このように、本発明が斯界に及ぼす影響は斯くも甚大であり、本発明の産業上の有用性は計り知れない。

Claims (24)

  1. 下記(A)乃至(D)の特性を有する分岐α−グルカン混合物を、無水物換算で、固形分当たり、2質量%以上10質量%未満含有してなる麺類;
    (A)グルコースを構成糖とし、
    (B)α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有し、
    (C)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり25質量%以上50質量%以下生成し、かつ
    (D)高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が40質量%以上である。
  2. 前記分岐α−グルカン混合物が、更に下記(E)及び(F)の特性を有する分岐α−グルカン混合物であることを特徴とする請求項1に記載の麺類;
    (E)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基の比が1:0.6乃至1:4の範囲にある;及び
    (F)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基との合計が全グルコース残基の60%以上を占める。
  3. 前記分岐α−グルカン混合物が、更に下記(G)及び(H)の特性を有する分岐α−グルカン混合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の麺類;
    (G)α−1,3結合したグルコース残基が全グルコース残基の0.5%以上10%未満である;及び
    (H)α−1,3,6結合したグルコース残基が全グルコース残基の0.5%以上である。
  4. 前記分岐α−グルカン混合物が、更に下記(I)及び(J)の特性を有する分岐α−グルカン混合物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の麺類;
    (I)ゲル濾過高速液体クロマトグラムに基づく分子量分布分析による重量平均分子量(Mw)が約1,600乃至約81,000である;及び
    (J)重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)が20未満である。
  5. 前記分岐α−グルカン混合物のデキストロース・エクイバレント(DE)が、6乃至8であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の麺類。
  6. 前記分岐α−グルカン混合物の水溶性食物繊維含量が、75乃至85質量%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の麺類。
  7. 前記分岐α−グルカン混合物の固形分当たりのグルコース重合度(DP)9以上のグルカンの合計量が、85質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の麺類。
  8. 麺類が、生麺、半生麺、干麺、蒸麺、茹麺、又は即席麺であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の麺類。
  9. 粉類と、下記(A)乃至(D)の特性を有する分岐α−グルカン混合物と、水とを混練して生地を調製し、これを成形することを特徴とする麺類の製造方法;
    (A)グルコースを構成糖とし、
    (B)α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有し、
    (C)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり25質量%以上50質量%以下生成し、かつ
    (D)高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が40質量%以上である。
  10. 分岐α−グルカン混合物を、無水物換算で、生地固形分当たり、2質量%以上10質量%未満含むように含有させることを特徴とする請求項9に記載の麺類の製造方法。
  11. 前記分岐α−グルカン混合物が、更に下記(E)乃至(F)の特性を有する分岐α−グルカン混合物であることを特徴とする請求項9又は10に記載の麺類の製造方法;
    (E)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基の比が1:0.6乃至1:4の範囲にある;及び
    (F)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基との合計が全グルコース残基の60%以上を占める。
  12. 前記分岐α−グルカン混合物が、更に下記(G)乃至(H)の特性を有する分岐α−グルカン混合物であることを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の麺類の製造方法;
    (G)α−1,3結合したグルコース残基が全グルコース残基の0.5%以上10%未満である;及び
    (H)α−1,3,6結合したグルコース残基が全グルコース残基の0.5%以上である。
  13. 前記分岐α−グルカン混合物が、更に下記(I)及び(J)の特性を有する分岐α−グルカン混合物であることを特徴とする請求項9乃至12のいずれかに記載の麺類の製造方法;
    (I)ゲル濾過高速液体クロマトグラムに基づく分子量分布分析による重量平均分子量(Mw)が約1,600乃至約81,000である;及び
    (J)重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除した値(Mw/Mn)が20未満である。
  14. 前記分岐α−グルカン混合物のデキストロース・エクイバレント(DE)が、6乃至8であることを特徴とする請求項9乃至13のいずれかに記載の麺類の製造方法。
  15. 前記分岐α−グルカン混合物の水溶性食物繊維含量が、75乃至85質量%であることを特徴とする請求項9乃至14のいずれかに記載の麺類の製造方法。
  16. 前記分岐α−グルカン混合物の固形分当たりのグルコース重合度(DP)9以上のグルカンの合計量が、85質量%以上であることを特徴とする請求項9乃至15のいずれかに記載の麺類の製造方法。
  17. 粉類と分岐α−グルカン混合物とが予め混合されたプレミックス粉の状態にあることを特徴とする、請求項9乃至16のいずれかに記載の麺類の製造方法。
  18. 麺類が、生麺、半生麺、干麺、蒸麺、茹麺、又は即席麺であることを特徴とする請求項9乃至17のいずれかに記載の麺類の製造方法。
  19. 粉類に下記(A)乃至(D)の特性を有する分岐α−グルカン混合物を無水物換算で、固形分当たり、2質量%以上10質量%未満含有してなる麺類製造用プレミックス粉;
    (A)グルコースを構成糖とし、
    (B)α−1,4結合を介して連結したグルコース重合度3以上の直鎖状グルカンの一端に位置する非還元末端グルコース残基にα−1,4結合以外の結合を介して連結したグルコース重合度1以上の分岐構造を有し、
    (C)イソマルトデキストラナーゼ消化により、イソマルトースを消化物の固形分当たり25質量%以上50質量%以下生成し、かつ
    (D)高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)により求めた水溶性食物繊維含量が40質量%以上である。
  20. 前記分岐α−グルカン混合物が、更に下記(E)及び(F)の特性を有する分岐α−グルカン混合物であることを特徴とする請求項19に記載の麺類製造用プレミックス粉;
    (E)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基の比が1:0.6乃至1:4の範囲にある;及び
    (F)α−1,4結合したグルコース残基とα−1,6結合したグルコース残基との合計が全グルコース残基の60%以上を占める。
  21. 前記分岐α−グルカン混合物が、更に下記(G)及び(H)の特性を有する分岐α−グルカン混合物であることを特徴とする請求項19又は20に記載の麺類製造用プレミックス粉;
    (G)α−1,3結合したグルコース残基が全グルコース残基の0.5%以上10%未満である;及び
    (H)α−1,3,6結合したグルコース残基が全グルコース残基の0.5%以上である。
  22. 前記分岐α−グルカン混合物のデキストロース・エクイバレント(DE)が、6乃至8であることを特徴とする、請求項19乃至21のいずれかに記載の麺類製造用プレミックス粉。
  23. 前記分岐α−グルカン混合物の水溶性食物繊維含量が、75乃至85質量%であることを特徴とする、請求項19乃至22のいずれかに記載の麺類製造用プレミックス粉。
  24. 前記分岐α−グルカン混合物中のグルコース重合度(DP)9以上の糖質の無水物換算での合計量が、固形分当たり、85質量%以上であることを特徴とする、請求項19乃至23のいずれかに記載の麺類製造用プレミックス粉。
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