以下、本発明による双方向無線通信システムおよび双方向無線通信方法の好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、本発明による双方向無線通信方法をコンピュータにより実行可能な双方向無線通信プログラムとして実施するようにしても良いし、あるいは、双方向無線通信プログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録するようにしても良いことは言うまでもない。また、以下の各図面に付した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではないことも言うまでもない。
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、通信衛星を介した双方向無線通信が可能なVSAT(Very Small Aperture Terminal:超小型地球局)システムに関し、1つのマルチキャスト送信局と複数のマルチキャスト受信局との間で双方向の無線通信を行う双方向無線通信システムにおいて、
マルチキャスト送信局から各マルチキャスト受信局への回線を1回線、各マルチキャスト受信局からマルチキャスト送信局への回線を1回線とし、
マルチキャスト送信局は、
マルチキャストパケット毎にシーケンス番号を付与する手段と、
複数のマルチキャストパケットを一度に各マルチキャスト受信局に向けて送信する手段と、
マルチキャスト受信局からの応答信号内のシーケンス番号を確認して、更新があらかじめ定めた一定期間の間なかった場合またはシーケンス番号抜けが発生した場合が確認されると、パケットの再送を行う手段と、
応答信号内のシーケンス番号の更新具合により、パケットの送信周期を変更する手段と、
応答信号内の受信状態情報を監視し、該受信状態情報が受信劣化状態を示す場合は、該当するマルチキャスト受信局への回線切断制御、および、パケット送信対象のマルチキャスト受信局から除外する手段と、
データ送信端末と1対1通信のTCP等のコネクション型通信方式を前提とした通信を行う手段と、
を備え、
一方、各マルチキャスト受信局は、
マルチキャスト送信局への1回線を時分割により共用する手段と、
データ受信端末から受信した応答パケットに対応するマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号を、また、パケットロス検知時はさらにパケットロスに該当するシーケンス番号を、応答信号に格納してマルチキャスト送信局へ送信する手段と、
マルチキャスト送信局との通信における自局の受信レベルまたはBER(Bit Error Rate)を監視し、受信レベルまたBERが、あらかじめ設定された受信許容閾値よりも低下した場合に、受信劣化状態をマルチキャスト送信局へ送信するとともに、自局の回線を切断する手段と、
データ受信端末と1対1通信のTCP等のコネクション型通信方式を前提とした通信を行う手段と、
を備えることを主要な特徴としている。
(効果をもたらす手段の働き)
本発明による双方向無線通信システムにおいて前述のような各手段を備えることにより、次のような効果が得られる。
すなわち、マルチキャスト送信局は、1対1通信のTCP等のコネクション型通信方式を前提とした通信を利用して、データ送信端末からのデータを全て引き取り、当該マルチキャスト送信局内の記憶装置に保存する。そして、マルチキャスト送信局は、引き取ったデータのマルチキャストパケットを作成し、マルチキャストパケット毎にシーケンス番号を付与して、誤り検出機能を有する無線フレームに多重化する。しかる後、シーケンス番号が付与されたマルチキャストパケットを、1もしくは複数のセットとして、マルチキャスト対象局として登録されている複数の各マルチキャスト受信局へ送信する。
各マルチキャストパケット受信局は、マルチキャスト送信局から受信したマルチキャストパケットを各データ受信端末に1対1通信のTCP等のコネクション型通信方式を前提とした通信を利用して送信する。マルチキャストパケットを受信した各データ受信端末は受信したマルチキャストパケットに対する応答パケットを各マルチキャストパケット受信局に送信する。しかる後、各データ受信端末からの応答パケットを受信した各マルチキャスト受信局は、マルチキャスト送信局に対する応答用に保持しているマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号をデータ受信端末から受信確認した旨の応答パケットがあったマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号に更新し、マルチキャスト送信局への回線に対して、各マルチキャスト受信局毎にあらかじめ割り当てられた送信スロットタイミングで、更新したマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号を付した応答信号を送信する。また、該応答信号には、パケット途中抜けのシーケンス番号や、自マルチキャスト受信局の受信劣化状態発生の旨を示す情報および該受信劣化状態から復旧した旨を示す情報も格納する。
マルチキャスト送信局は、各マルチキャスト受信局からの応答信号の受信タイミングの如何に関わらず、マルチキャストパケット送信周期としてあらかじめ決められたタイミングで各マルチキャスト受信局へのマルチキャストパケットの送信動作を行う。これにより、通信衛星回線における遅延の影響を減らし、スループットの低下を抑えている。
また、パケットロスの発生に関しては、マルチキャスト送信局は、各マルチキャストパケット受信局からの応答信号において、受信済みを示す最老番シーケンス番号が、1回も更新されていないか、または、送信マルチキャストパケット数によりあらかじめ決められた一定回数(1回を含め任意の回数に可変に設定することが可能な回数)更新されていないか、あるいは、パケット途中抜けのシーケンス番号が存在しているか否かによって判断する。これにより、パケットロス発生を検知した場合は、マルチキャスト送信局は、マルチキャストパケットの再送処理を行う。
さらに、応答信号の受信済みシーケンス番号の更新間隔が、マルチキャストパケットの送信周期と比較して長くなっている場合は、マルチキャスト送信局は、マルチキャストパケットの送信周期を変更するか否かの判断を行う。また、マルチキャスト送信局は、応答信号の受信具合や、応答信号内の受信状態を監視し、再送処理を繰り返す、もしくは、品質劣化の恐れのあるマルチキャスト受信局に対しては、他のマルチキャスパケット受信局における通信効率の低下を防ぐために、回線切断制御を行い、マルチキャスト対象の受信局を登録している登録リストから除外する処理を実行する。
なお、以上のようなマルチキャストパケットの再送処理やマルチキャスト受信局への回線切断制御の判断基準は、マルチキャスト送信局内の設定により、任意に変更して設定することが可能であり、マルチキャスト送信局は、設定した判断基準に従って、マルチキャストパケットの再送処理やマルチキャスト受信局への回線切断制御を行う。全てのマルチキャストパケットを送信した後、必要であれば、前述した再送処理、回線切断の判断基準を変更して、マルチキャスト対象の受信局を登録している登録リストから除外したマルチキャスト受信局が発生している場合には、当該マルチキャスト受信局宛てに、再度、マルチキャストパケットの送信をやり直す。
(本発明の実施形態の構成例)
次に、本発明によるマルチキャスト通信システムの構成について、その一例を、図1を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明によるマルチキャスト通信システムの全体構成の一例を説明するための全体構成図であり、通信衛星を介したマルチキャスト通信システムの構成例として、通信衛星を介した双方向無線通信が可能なVSAT(Very Small Aperture Terminal:超小型地球局)システムを構成している場合を示している。
図1のマルチキャスト通信システムにおいて、符号1は、マルチキャスト送信局となる地球局(以降、送信局と表記する)であり、符号2A、2B、2Cは、複数のマルチキャスト受信局となる各地球局(以降、受信局と表記する)であり、符号3は、通信衛星である。また、符号4は、データ送信端末であり、符号5A、5B、5Cは、複数の各データ受信端末であり、符号6は、送信局1内に備えられた記憶装置である。また、符号11は、送信局1とデータ送信端末4とを接続する通信ケーブルであり、符号12A、12B、12Cは、それぞれ、受信局2A、2B、2Cとデータ受信端末5A、5B、5Cとを接続する通信ケーブルである。
データ送信端末4は、通信ケーブル11により、送信局1と接続され、通信ケーブル11を介して、データ送信端末4からのデータD7を送信局1に送信する。
また、各データ受信端末5A、5B、5Cは、それぞれ、各通信ケーブル12A、12B、12Cにより、各受信局2A、2B、2Cと接続され、それぞれ、各通信ケーブル12A、12B、12Cを介して、各受信局2A、2B、2CそれぞれからのデータパケットD8a、D8b、D8cを受信し、各受信局2A、2B、2Cそれぞれに対するそれぞれの応答パケットD9a、D9b、D9cを返送する。
送信局1と各受信局2A、2B、2Cとは、DAMA(Demand Assign Multiple Access)方式を用いて割り当てられた通信衛星3を介した通信衛星回線によって無線接続され、送信局1からは、各受信局2A、2B、2Cへ向かう1本の下り回線を用いて、あらかじめ定めたマルチキャストパケット送信周期毎に、各受信局2A、2B、2Cへの複数のマルチキャスト用の下り回線無線フレームD1a、D1b、D1c、D1d、D1e、D1f、D1g、D1h、D1i、D1j、D1k、D1lを、各受信局2A、2B、2Cに向けて一度に連続して送信し、一方、各受信局2A、2B、2Cからは、送信局1へ向かう1本の上り回線上にスロット周期T1毎に1スロット単位にあらかじめ割り付けられたスロットタイミングta、tb、tcを用いて、時分割した状態で、送信局1への上り回線無線フレームD2a、D3a、D4a、D2b、D3b、D4bを順次送信する。
なお、図1に示す例においては、受信局数は、受信局2A、2B、2Cの3局の場合を示しているが、本発明においては、受信局数は、かかる場合に限定されるものではなく、N局(N:任意の自然数)、設置されていても構わない。また、以下の説明においては、説明の都合上、マルチキャスト送信を行う地球局を送信局、マルチキャスト受信を行う地球局を受信局としているが、本発明の地球局においては、マルチキャスト送受信の両方の機能を有しており、どの地球局においても、送信局もしくは受信局のいずれかになり得ることは言うまでもない。
(実施形態の動作の説明)
次に、図1の全体構成図を参照し、図1に示したマルチキャスト通信システム全体の動作の流れについて詳細に説明する。
データ送信端末4は、通信ケーブル11を経由して、1対1のTCP等のコネクション型通信方式を用いて、データD7を送信局1に対して送信する。送信局1は、データ送信端末4から受信したデータD7を、一旦、自局内の記憶装置6に全て保存する。なお、データD7は、データ送信端末4と送信局1との間で送受信した際のパケット単位で自局内の記憶装置6に保存される。
送信局1は、データ送信端末4からのデータD7を全て自局内の記憶装置6に保存した後、DAMA(Demand Assign Multiple Access)方式により、送信局1から受信局2A、2B、2Cへの1本の回線(以降、下り回線と表記する)と、受信局2A、2B、2Cから送信局1への1本の回線(以降、上り回線と表記する)の割当て要求を行う。要求した回線割当てが終了すると、送信局1は、自局内の記憶装置6に保存されたデータD7のパケット毎の送信順序を示すシーケンス番号を生成する。なお、保存されたデータD7のパケットについては、送信局1は、パケット内データの変更等は特に加えることはないが、以下の説明を簡単にするために、以降、本パケットを‘マルチキャストパケット’と記載することにする。
送信局1は、マルチキャストパケットと、シーケンス番号データとを、それぞれ、誤り検出機能を有する送信フレームに格納した後、1組にして、現在送信しようとしている下り回線無線フレーム(図1において最初の送信時であればマルチキャスト用の下り回線無線フレームD1a)のデータ部に格納する。
なお、該送信フレーム1組のフレーム長が、下り回線無線フレームの1フレーム内のデータ部の長さより長い場合は、1組の送信フレームを分割して、複数の下り回線無線フレーム(例えば、マルチキャスト用の複数の下り回線無線フレームD1a〜D1d)のデータ部に跨って格納する。また、マルチキャストパケット送信がない期間であっても、あらかじめ定めたマルチキャストパケット送信周期毎に、空データとして定義された値(例えば、HDLCフォーマットではALL1)をデータ部に格納し、その空データとして定義された値をデータ部に格納した下り回線無線フレームを送信し続ける。
送信局1から下り回線を介して送信されたマルチキャストパケット、シーケンス番号を格納した下り回線無線フレームD1a〜D1lすなわち下り回線方向のマルチキャスト用の下り回線無線フレームD1a〜D1lは、通信衛星3を経由して、各受信局2A、2B、2Cによって受信される。なお、下り回線無線フレームの要素および動作の詳細については後述の図2において説明する。
次に、各受信局2A、2B、2Cそれぞれは、下り回線を介して受信したマルチキャストパケットを、それぞれ、データ受信端末5A、5B、5Cに送信可能な形式のデータパケットD8a、D8b、D8cに変換して、通信ケーブル12A、12B、12Cそれぞれを介して、1対1のTCP等のコネクション型通信方式を用いて、データ受信端末5A、5B、5Cそれぞれに送信する。しかる後、各受信局2A、2B、2Cそれぞれは、データ受信端末5A、5B、5Cにおいて正常にパケットを受信したことを示す応答パケットD9a、D9b、D9cが、データ受信端末5A、5B、5Cそれぞれから返送されてくることを待ち合わせる。ここで、応答パケットD9a、D9b、D9cそれぞれについても、受信局2A、2B、2Cとデータ受信端末5A、5B、5Cとのそれぞれの間で使用されている通信方式における応答パケットである。
上り回線の通信については、本発明においては、TDMA(Time Division Multiple Access)方式を採用して、上り回線1回線を、複数の受信局2A、2B、2Cで時分割して共用しており、各受信局2A、2B、2Cは、各受信局2A、2B、2Cそれぞれにあらかじめ設定されたスロット番号のスロットタイミングta、tb、tcにおいて、一定周期(スロット周期T1)毎に、送信局1へ送信しようとする上り回線無線フレームを、上り回線を介して、通信衛星3に向けて、送信し続ける。
図1に示す例の場合は、受信局2Aは上り回線無線フレームD2a、D2bを、受信局2Bは上り回線無線フレームD3a、D3bを、受信局2Cは上り回線無線フレームD4a、D4bを、図1に記載したそれぞれのスロットタイミングta、tb、tcで、通信衛星3に向けて送出している。この時、各受信局2A、2B、2Cは、それぞれ、上り回線無線フレームD2a、D2b、上り回線無線フレームD3a、D3b、上り回線無線フレームD4a、D4bのそれぞれに、データ受信端末5A、5B、5Cそれぞれから受信した応答パケットD9a、D9b、D9cに対応するマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号等を、応答信号として格納する。
また、各受信局2A、2B、2Cにおける上り回線無線フレームの送信周期を、前述のように、スロット周期T1として定義しており、各受信局2A、2B、2Cに統一した値としてあらかじめ設定している。なお、スロット周期T1の設定値は可変である。また、次の各受信局2A、2B、2Cにおける上り回線用のスロットタイミングta、tb、tcの位置は、下り回線無線フレームD1a〜D1lに格納されている情報を参照することにより識別される。受信スロット番号に関する詳細な動作は、後述の図2において説明する。また、1スロット長は、下り回線無線フレーム2フレーム分以上であり、任意に変更することが可能である。ここで、1スロット長の長さについては、送信局1、受信局2A、2B、2Cそれぞれに対してあらかじめ設定しているものとする。
次に、下り回線無線フレーム、上り回線無線フレームの要素および動作の詳細について、その一例を、図2を参照しながら詳細に説明する。図2は、図1に示したマルチキャスト通信システムにおける下り回線無線フレーム、上り回線無線フレームおよび下り回線無線フレームのデータ部それぞれのフレームフォーマットの一例を示す模式図であり、図2(A)に下り回線無線フレームフォーマットを、図2(B)に下り回線無線フレームのデータ部のフレームフォーマットを、また、図2(C)に上り回線無線フレームフォーマットを、それぞれ示している。
図1に示すように、受信局2A、2B、2Cそれぞれから通信衛星3を経由して送信されてきた上り回線無線フレームD2a、D3a、D4a、D2b、D3b、D4bは、1スロット周期T1内のスロットタイミングta、tb、tcそれぞれにおいて、時系列で、送信局1によって順次受信される。送信局1は、受信局2A、2B、2Cそれぞれからの上り回線無線フレームD2a、D3a、D4a、D2b、D3b、D4b内の応答信号情報を確認し、必要に応じて、マルチキャストパケットの再送や、該当する受信局への回線切断制御を行う。パケットの再送や回線切断制御に関する詳細な動作については、後述の図3〜図7において説明する。
図2(A)に示す下り回線無線フレームフォーマット、図2(C)に示す上り回線無線フレームフォーマットは、従来の無線通信システムにおいて一般的に使用されているTDMA方式の無線フレームフォーマットと類似したフォーマットになっている。ただし、本発明においては、TDMA方式を使い、上り回線の周波数チャンネルを1つにして、使用CH(チャンネル)数をできるだけ減らしているという点が重要であり、かかる点が実現されている限り、下り回線無線フレームフォーマット、上り回線無線フレームフォーマットの細かい構成については、図2の通りでなくても良い。
まず、図2(A)に示す下り回線無線フレームフォーマットの構成について説明する。図2(A)に示すように、下り回線無線フレームD1aは、UW(Unique Word)D11a、フレーム情報部D12、制御信号部D13、データ部D14aの各要素から構成されている。後続の下り回線無線フレームD1b、D1c、D1dにおいても、D1aのフレーム構成と同様であり、UW D11b、D11c、D11dおよびデータ部D14b、D14c、D14dは、それぞれ、UW D11bおよびデータ部D14aと同一の要素である。なお、後続の下り回線無線フレームD1b、D1c、D1dそれぞれにおける前述した構成要素以外の構成要素については、本発明においては重要なものではないので、記載を省略している。
下り回線無線フレームは、2フレーム以上の纏まり毎に1組にして1スロット単位となる。図2(A)に示す例においては、下り回線無線フレームD1a、D1bの2フレームの纏まりで1スロット単位を構成している例を示しているが、1スロット内の下り回線の無線フレーム数は、2フレーム以上であれば、何フレームであっても構わない。ちなみに、1スロット内の下り回線無線フレームのフレーム数を増やせば増やすほど、上り回線無線フレームサイズを大きくすることができるため、上り回線送信時に、一度に送信することが可能なデータ量を増加させることができる。ただし、各受信局2A、2B、2Cの上り回線無線フレームの送信周期は長くなる。
次に、図2(A)の下り回線無線フレームD1a、D1b、D1c、D1dを例にとって、下り回線無線フレームの各要素についてさらに説明する。
図2(A)のUW D11a、UW D11b、UW D11c、UW D11dは、全ての下り回線無線フレームにおいて、一意に定められた値が格納されており、下り回線無線フレームを受信する各受信局2A、2B、2C側において、下り回線無線フレームの先頭の識別や、フレーム同期のために使用される。また、上り回線無線フレーム送信時において、図2(C)に示す上り回線無線フレームのUW D22を、図2(A)の下り回線無線フレームにおける同一スロット内の第2フレーム目(すなわち、先頭のマルチキャストパケットをデータ部に格納しているフレーム)のUW(図2(A)の例においてはUW D11b)に同期させるように、上り回線送信時のタイミング調整を図るためにも使用される。
また、図2(A)のフレーム情報部D12には、上り回線無線フレームの送信周期における最若番スロットの先頭フレームにおいて、該先頭フレームの送信タイミングと分かる特定の値が格納されており、各受信局2A、2B、2Cにおいて、上り回線送信時における自局スロット番号のスロットタイミングta、tb、tcを識別のために使用される。つまり、各受信局2A、2B、2Cは、それぞれ、最若番スロットの先頭フレームの検知から受信フレーム数をカウントすることによって、上り回線無線フレームを送信する自局スロット番号のスロットタイミングta、tb、tcを識別することができる。
また、図2(A)の制御信号部D13は、送信局1と各受信局2A、2B、2Cとの間の無線区間内でやり取りされる制御信号を格納するために使用される。また、図2(A)のデータ部D14aは、マルチキャストパケットまたはシーケンス番号を格納するために使用される。図2(B)に示す例においては、図2(A)のデータ部D14aにはシーケンス番号D53が、図2(A)のデータ部D14bにはマルチキャストパケットD63がそれぞれ格納されている。マルチキャストパケット、シーケンス番号は、いずれも、誤り検出機能を有するフレームに格納される。なお、1つのデータがデータ部D14aに収まり切らない場合は、例えば、図2(A)に示すように、後続する下り回線無線フレームD1b、D1c、D1dそれぞれのデータ部D14b、D14c、D14dに跨って格納される。
次に、図2(C)に示す上り回線無線フレームフォーマットの構成について説明する。図2(C)に示すように、受信局2Aが送信する上り回線無線フレームD2aは、プリアンブルD21、UW(Unique Word)D22、応答信号D23によって構成され、フレーム前方と後方とには、前方ガードタイムD24と後方ガードタイムD25とが挿入される。
受信局2Bが送信する後続の上り回線無線フレームD3aの構成についても、上り回線無線フレームD2aの構成と同様であり、プリアンブルD31、UW D32、応答信号D33によって構成され、かつ、上り回線無線フレームD2aと同じく、前方ガードタイムD34、後方ガードタイムD35が挿入される。各受信局2A、2B、2Cは、それぞれ、図1に示したように、自局のスロット番号のスロットタイミングta、tb、tcで、上り回線無線フレームD2a、D3a、…を送信する。
次に、図2(C)に示す上り回線無線フレームD2aを例にとって、上り回線無線フレームの各要素すなわちプリアンブルD21、UW D22、応答信号D23および前方ガードタイムD24、後方ガードタイムD25について説明する。
図2(C)のプリアンブルD21は、2進数の‘1’と‘0’とが交互に続くようなデータであり、上り回線無線フレームを受信する送信局1に対して同期を取るタイミングを与えるために使用される。また、図2(C)のUW D22は、上り回線無線フレームにおいて一意に定められた値が格納されており、上り回線無線フレームを受信する送信局1側において、プリアンブルD21を除くフレームの先頭の識別、および、フレーム同期のために使用される。
また、図2(C)の応答信号D23は、受信局2A側から送信局1側へ送信される応答信号を格納するために使用される。応答信号には、受信局2Aを識別する番号、データ受信端末5Aから受信した応答パケットに対応するマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号、途中抜けのシーケンス番号があった場合には、途中抜けに該当するシーケンス番号、および、受信状態が良好か否かを表す値が格納されている。また、1スロット長の範囲を超えなければ、応答信号の後方に、IP(Internet Protocol)パケット等の任意のデータを連結しても良い。
また、図2(C)の前方ガードタイムD24、後方ガードタイムD25は、それぞれ、任意の無信号時間であり、上り回線無線フレームにおける送信タイミングの揺らぎを吸収し、前方スロット、または、後方スロットにおいて、他の受信局2B、2Cが送信する上り回線無線フレームD2b、…との衝突を防ぐために使用される。なお、図2(C)の上り回線無線フレームD2aは、1スロット内において、図2(A)に示す2つの下り回線無線フレームD1a、D1bと同期させるようにして、同じタイミングで送信される。
次に、図2(B)に示す下り回線無線フレームのデータ部のフレームフォーマットの構成について説明する。図2(B)に示すように、例えば、下り回線無線フレームD1a、D1bの場合は、データ部フレームは、下り回線無線フレームD1a内のデータ部D14aを形成するHDLC(High level Data Link Control)フレームD5aと下り回線無線フレームD1b内のデータ部D14bを形成するPPP(Point to Point Protocol)フレームD6aとの1組によって構成される。
従来のVSATシステムにおいては、本実施形態の場合とは異なり、シーケンス番号データの付与がないため、データ部フレームは、PPPフレームのみとなっている。本実施形態においては、図2(B)に示すように、PPPフレームD6aに加え、誤り検出機能を有するHDLCフレームD5aにシーケンス番号D53を格納して、PPPフレームD6aの前段に配置して、互いに連結させて、1組の構成としている。
シーケンス番号D53を、誤り検出機能を有するHDLCフレームD5aに格納する理由は、マルチキャストパケットと同様、シーケンス番号D53についても、受信側において誤り検知を行う必要があるためであり、仮に、誤り検知機能がない場合には、たとえ、シーケンス番号D53に誤りが発生しても、受信側では正常受信してしまうことになり、パケット順序の確実性が失われてしまうからである。そして、マルチキャストパケットの順序とデータとの両方の確実性を確保するために、受信側で、1組のシーケンス番号D53およびマルチキャストパケットD63の両方において、誤りがなかった場合にのみ、正常受信とする。いずれか片方にでも誤りが発生していた場合は、正常に受信したシーケンス番号D53またはマルチキャストパケットD63についても、異常データとして破棄する。
なお、HDLCフレームD5aについては、従来システムにおいて普及しているフレームフォーマットと同じものを、本実施形態においても一例として使用しているだけであり、誤り検出機能を有するフレームであれば、その他のフレームフォーマットを使用しても良いことは言うまでもない。
図2(B)に示すように、HDLCフレームD5aは、前方フラグD51、識別情報D52、シーケンス番号D53、FCS(Frame Check Sequence)D54、後方フラグD55によって構成され、フレームの最後にマークD56が挿入される。下り回線無線フレームD1c内のデータ部D14cを形成するHDLCフレームD5bにおいても、HDLCフレームD5aの構成と同様であり、HDLCフレームD5aの場合と同じく、HDLCフレームD5bの最後にはマークが挿入される。
また、図2(B)に示すように、PPPフレームD6aは、前方フラグD61、PPPヘッダD62、マルチキャストパケットD63、FCS D64、後方フラグD65で構成され、フレームの最後にマークD66が挿入される。下り回線無線フレームD1d内のデータ部D14dを形成するPPPフレームD6bにおいても、PPPフレームD6aの構成と同様であり、PPPフレームD6aの場合と同じく、PPPフレームD6bの最後にはマークが挿入される。
HDLCフレームD5aの構成要素である前方フラグD51、FCS D54、後方フラグD55、マークD56については、HDLCフレームにおける一般的な規格であるので、ここでの説明は割愛する。また、PPPフレームD6aの構成要素である前方フラグD61、PPPヘッダD62、FCS D64、後方フラグD65、マークD66についても、PPPフレームにおける一般的な規格のであるので、ここでの説明は割愛する。
次に、図2(B)に示す下り回線無線フレームD1aのデータ部D14aを形成するHDLCフレームD5a、下り回線無線フレームD1bのデータ部D14bを形成するPPPフレームD6aを例にとって、HDLCフレームD5a、PPPフレームD6aのそれぞれを構成する要素のうち、説明を省略した前記各要素以外の各要素について説明する。
図2(B)のHDLCフレームD5a内の識別情報D52は、HDLCフレームの種別識別に使用される。識別情報D52は、受信局2A、2B、2CにおいてPPPフレームD6aとの区別に使用する他、次のような用途も想定される。
図2(B)においては、HDLCフレームD5aとPPPフレームD6aとのように、下り回線無線フレームのデータ部に関し、HDLCフレームとPPPフレームとの1対1の構成を基本構成として説明しているが、例えば、伝送効率を向上させるために、1対複数の構成として、HDLCフレーム1フレームに対してPPPフレーム複数フレームといった構成も許容しており、識別情報D52を、このようなフレーム構成の識別に使用することも可能である。
また、図2(B)においては、HDLCフレームD5aは、シーケンス番号D53を格納することを基本として説明しているが、HDLCフレームD5aは、その他の用途で使用することも可能であり、識別情報D52を、かくのごときHDLCフレーム用途の識別にも使用することが可能である。
図2(B)のHDLCフレームD5a内のシーケンス番号D53は、図2(B)のPPPフレームD6a内のマルチキャストパケットD63のシーケンス番号等が格納される。なお、マルチキャストパケットD63は、送信局1側のネットワークから、受信局2A、2B、2C側のネットワークへ送信されるパケットのことである。
次に、図2(B)の下り回線無線フレームD1a、D1bのデータ部D14a、D14bそれぞれを形成するHDLCフレームD5a、PPPフレームD6aに関するフレームフォーマットすなわちデータ部フレームフォーマット生成時の動作について詳細に説明する。
送信局1側のネットワークから、受信局2A、2B、2C側のネットワーク宛てに送信しようとするマルチキャストパケットD63は、送信局1内にて、誤り検出機能を有するPPPフレームD6aに格納される。しかる後、送信局1は、当該マルチキャストパケットD63に付与するシーケンス番号D53および識別情報D52を誤り検出機能を有するHDLCフレームD5aに格納し、HDLCフレームD5aとPPPフレームD6aとをマークD56を介して一組にして連結する。以降に後続するマルチキャストパケットについても同様の操作を行い、HDLCフレームD5b、PPPフレームD6bの後方にさらに連結していく。なお、連結するHDLCフレームとPPPフレームとの組数については可変である。
次に、送信局1と受信局2A、2B、2Cとの間の通信方法の詳細について、図3〜図7に示すシーケンスチャートを参照しながら説明する。なお、図3〜図7に示すシーケンスチャートにおいては、図1に示した通信衛星3、データ送信端末4、データ受信端末5A、5B、5Cの記載は省略している。また、図6のシーケンスチャートにおいては、受信局2A、2Bについても記載を省略している。なお、図3〜図7の各シーケンス開始までに、送信局1におけるデータ送信端末4からのデータの保存、回線割当て要求、回線割当ては既に実施済みであるものと仮定している。さらに、図3〜図5のシーケンスチャートにおいては、シーケンス番号1〜5の各マルチキャストパケットの送信局1から受信局2A、2B、2Cへの送信は終了していて、データ受信端末5A、5B、5Cから正常に受信した旨を示す応答パケットを受信局2A、2B、2Cは受信済みになっているものと仮定する。
(マルチキャストパケット送受信動作の一例)
まず、図3のシーケンスチャートを用いて、送信局1から受信局2A、2B、2Cにマルチキャストパケットを送信した際の動作の一例について説明する。
図3は、図1に示したマルチキャスト通信システムにおいて送信局1から受信局2A、2B、2Cへのマルチキャストパケット送信を実施した場合の動作の一例を示すシーケンスチャートである。なお、図3のシーケンスチャートにおいては、前述したように、シーケンス番号1〜5の各マルチキャストパケットに関しては、送信局1から受信局2A、2B、2Cに対する送信動作が既に終了した状態になっていて、シーケンス番号6以降のマルチキャストパケットを送信する動作について示している。
図3のシーケンスチャートにおいて、送信局1は、データ送信端末4から受け取って、記憶装置6に保存している送信データに関して、シーケンス番号6〜10の5個のマルチキャストパケットCS1を生成して、受信局2A、2B、2Cに向けて、マルチキャストパケット送信周期T2に合わせて、下り回線無線フレームとして連続して送信する(ステップS1)。なお、送信局1から一度に送信するマルチキャストパケットのパケット数は可変である。
各受信局2A、2B、2Cは、送信局1からのシーケンス番号6〜10のマルチキャストパケットCS1を受け取ると、それぞれ、データ受信端末5A、5B、5C向けのパケットに編集して、データ受信端末5A、5B、5Cに対して送信し、それぞれ、データ受信端末5A、5B、5Cからの応答パケット待ちの状態になる。
各受信局2A、2B、2Cは、それぞれ、データ受信端末5A、5B、5Cからの応答パケットを受け取ると、該応答パケットに対応するマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号を格納した応答信号を生成して、各受信局2A、2B、2Cに割り当てられているスロットタイミングta、tb、tcにおいて、送信局1に向けて、上り回線無線フレームとして送信する。
図3のシーケンスチャートに示す例においては、受信局2Aに関しては、上り回線への送信を行うスロットタイミングtaの時点では、送信局1からのシーケンス番号6〜10のマルチキャストパケットCS1を未受信であるので、データ受信端末5Aから既に受信済みである旨の応答パケットを受信しているマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号に相当するシーケンス番号5を格納した応答信号CS2aを送信局1向けに送信する(ステップS2a)。
また、受信局2Bに関しても、上り回線への送信を行うスロットタイミングtbの時点では、受信局2Aの場合と同様、送信局1からのシーケンス番号6〜10のマルチキャストパケットCS1を未受信であり、データ受信端末5Bから既に受信済みである旨の応答パケットを受信しているマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号に相当するシーケンス番号5を格納した応答信号CS2bを送信局1向けに送信する(ステップS2b)。
一方、受信局2Cに関しては、上り回線への送信を行うスロットタイミングtcの時点では、送信局1からのシーケンス番号6〜10のマルチキャストパケットCS1を受信しており、かつ、データ受信端末5Cに送信して、データ受信端末5Cからは既に受信済みである旨の応答パケットを受信しているので、マルチキャストパケットの最老番シーケンス番号に相当するシーケンス番号10を格納した応答信号CS2cを送信局1向けに送信する(ステップS2c)。
送信局1は、各受信局2A、2B、2Cから返送されてくる応答信号を常時監視していて、それぞれの応答信号に格納されている最老番のシーケンス番号が、前スロット周期における応答信号から更新されているか否かを確認している。送信局1は、受信局2A、2B、2Cそれぞれからの応答信号CS2a、CS2b、CS2cの最老番のシーケンス番号に関し、いずれも、前スロット周期における応答信号の最老番のシーケンス番号から更新されていることを確認すると、受信局2A、2B、2Cそれぞれとの間で、正常にパケット送受信動作が実施されているものと判断する。
また、送信局1は、管理局において割り当てられた回線が確保されている限り、先に送信したマルチキャストパケットに対する各受信局2A、2B、2Cからの応答信号が受信されたか否かに関わらず、あらかじめ設定されているマルチキャストパケット送信周期T2毎に、受信局2A、2B、2Cに向けてマルチキャストパケット(送信すべきデータがない場合は空のマルチキャストパケット)を送信する動作を行っている。したがって、シーケンス番号6〜10のマルチキャストパケットCS1の送信後、マルチキャストパケット送信周期T2が経過すると、送信局1は、次に送信すべきシーケンス番号11〜15の5個のマルチキャストパケットCS3を生成して、受信局2A、2B、2Cに向けて、下り回線無線フレームとして連続して送信する(ステップS3)。
なお、マルチキャストパケット送信周期T2は可変であり、各受信局2A、2B、2Cから受信した応答信号のシーケンス番号の更新具合に合わせて変化させる。例えば、各受信局2A、2B、2Cからの応答信号内の最老番のシーケンス番号の値と送信局1から送信するマルチキャストパケットのシーケンス番号の値との差が拡大していかないように(場合によっては、逆に、縮んでいかないように)、マルチキャストパケット送信周期T2を変化させるなどの制御を行う。例えば、各受信局2A、2B、2Cからの応答信号内の最老番のシーケンス番号と、送信局1から送信する送信マルチキャストパケットのシーケンス番号との差があらかじめ定めた閾値以上に拡大していることを検知した場合、マルチキャストパケット送信周期T2をあらかじめ定めた長さだけ長くするように制御する。また、この時、参照する応答信号は、受信局2A、2B、2C全ての応答信号であっても良いし、任意に選択した受信局の応答信号であっても良い。
各受信局2A、2B、2Cは、送信局1からのシーケンス番号11〜15のマルチキャストパケットCS3を受け取ると、それぞれ、データ受信端末5A、5B、5C向けのパケットに編集して、データ受信端末5A、5B、5Cに対して送信し、データ受信端末5A、5B、5Cからの応答パケットを受け取ると、該応答パケットに対応するマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号を格納した応答信号を生成して、あらかじめ設定されているスロット周期T1毎に、各受信局2A、2B、2Cそれぞれに割り当てられているスロットタイミングta、tb、tcにおいて、送信局1に向けて、上り回線無線フレームとして送信する。
図3のシーケンスチャートに示す例においては、受信局2Aに関しては、先にシーケンス番号5を格納した応答信号CS2aを送信してからスロット周期T1が経過した時点すなわち次の上り回線への送信を行うスロットタイミングtaの時点で、データ受信端末5Aから既に受信済みである旨の応答パケットを受信しているマルチキャストパケットCS1の最老番シーケンス番号に相当するシーケンス番号10を格納した応答信号CS4aを送信局1向けに送信する(ステップS4a)。
また、受信局2Bに関しても、受信局2Aと同様、先にシーケンス番号5を格納した応答信号CS2bを送信してからスロット周期T1が経過した時点すなわち次の上り回線への送信を行うスロットタイミングtbの時点で、データ受信端末5Bから既に受信済みである旨の応答パケットを受信しているマルチキャストパケットCS1の最老番シーケンス番号に相当するシーケンス番号10を格納した応答信号CS4bを送信局1向けに送信する(ステップS4b)。
一方、受信局2Cに関しては、上り回線への送信を行うスロットタイミングtcの時点で、送信局1からのシーケンス番号11〜15のマルチキャストパケットCS3を受信しており、かつ、データ受信端末5Cに送信して、データ受信端末5Cからは既に受信済みである旨の応答パケットを受信しているので、マルチキャストパケットCS3の最老番シーケンス番号に相当するシーケンス番号15を格納した応答信号CS4cを送信局1向けに送信する(ステップS4c)。
以降も、前述と同様のマルチキャストパケットと応答信号との送受信動作を繰り返し、最終的に、データ送信端末4から送信されてきた送信データの最後のデータに関するマルチキャストパケット送信動作にまで達すると、送信局1は、先のマルチキャストパケット送信からマルチキャストパケット送信周期T2が経過した時点で、シーケンス番号(n−4)〜n(n:最後のマルチキャストパケットのシーケンス番号)を格納したマルチキャストパケットCS5を、受信局2A、2B、2Cに向けて送信する(ステップS5)。しかる後、送信局1が、各受信局2A、2B、2Cそれぞれから最後のシーケンス番号nを格納した応答信号CS6a、CS6b、CS6cを受信すると(ステップS6a、S6b、S6c)、送信局1と受信局2A、2B、2Cとの間のマルチキャストパケットの送受信動作を終了する。
しかる後、送信局1は、各受信局2A、2B、2Cそれぞれから最後のシーケンス番号nを格納した応答信号CS6a、CS6b、CS6cを受信してから、無通信時間T3としてあらかじめ定めた時間が経過するまでの間に、新たにマルチキャストパケットとして送信すべきデータをデータ送信端末4から受信しなかった場合には、送信局1は、無通信時間T3に相当する時間が経過した時点で、全受信局2A、2B、2Cを指定した切断信号CS7を、あらかじめ定めた切断信号連送時間T4が満了するまで、連続的に、全受信局2A、2B、2Cに対して連送する(ステップS7)。
送信局1からの切断信号CS7を受信した各受信局2A、2B、2Cそれぞれは、自局の回線を切断する(ステップS8a、S8b、S8c)。さらに、切断信号連送時間T4が満了すると、送信局1も、自局の回線を切断する(ステップS9)。この結果、送信局1、受信局2A、2B、2Cそれぞれに対して管理局によってマルチキャスト用の回線として割り当てられていた通信衛星回線が解放される。
(マルチキャストパケット再送動作の一例)
次に、図4A,Bのシーケンスチャートを用いて、送信局1から受信局2A、2B、2Cにマルチキャストパケットを送信した際に、いずれかの受信局側の受信不良が発生したために、マルチキャストパケットを再送するマルチキャストパケット再送動作の一例について説明する。
図4A,Bは、図1に示したマルチキャスト通信システムにおいて送信局1から受信局2A、2B、2Cへのマルチキャストパケット送信時に発生したいずれかの受信局側の受信不良によるマルチキャストパケット再送動作の一例を示すシーケンスチャートである。図4Aの下部に図4Bが連続しており、図4Aおよび図4Bのシーケンスチャートは1つの紙面に描くのが好ましいが、紙面のサイズの都合上、マルチキャストパケット再送動作の前半部分を図4Aに示し、そのマルチキャストパケット再送動作の後半部分を図4Bに示してある。なお、図4A,Bのシーケンスチャートにおいては、受信局2A、2B、2Cのうち、受信局2Cにおいて受信不良が発生した場合について示している。なお、図4A,Bのシーケンスチャートにおいても、図3の場合と同様、シーケンス番号1〜5の各マルチキャストパケットに関しては、送信局1から受信局2A、2B、2Cに対する送信動作が既に終了した状態になっていて、シーケンス番号6以降のマルチキャストパケットを送信する動作について示している。
図4A,Bのシーケンスチャートにおいて、送信局1は、データ送信端末4から受け取って、記憶装置6に保存している送信データに関して、シーケンス番号6〜10の5個のマルチキャストパケットCS10を生成して、受信局2A、2B、2Cに向けて、マルチキャストパケット送信周期T2に合わせて、下り回線無線フレームとして連続して送信する(ステップS10)。この時、受信局2Cにおいて、何かの要因により、マルチキャストパケットCS10を受信することができなかったものとする(ステップS11)。
受信局2A、2Bは、図3の場合と同様、送信局1からのシーケンス番号6〜10のマルチキャストパケットCS10を受け取ると、それぞれ、データ受信端末5A、5B向けのパケットに編集して、データ受信端末5A、5Bに対して送信し、データ受信端末5A、5Bからの応答パケット待ちの状態になる。しかし、受信局2Cは、図3の場合とは異なり、マルチキャストパケットCS10を受信していないので、データ受信端末5Cへの送信動作は行わない。
なお、各受信局2A、2B、2Cは、それぞれ、データ受信端末5A、5B、5Cからの応答パケットを受け取ると、該応答パケットに対応するマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号を格納した応答信号を生成して、各受信局2A、2B、2Cに割り当てられているスロットタイミングta、tb、tcにおいて、上り回線無線フレームとして送信する。
図4A,Bのシーケンスチャートに示す例においては、受信局2Aに関しては、図3の場合と同様、上り回線への送信を行うスロットタイミングtaの時点では、送信局1からのシーケンス番号6〜10のマルチキャストパケットCS10を未受信であるので、データ受信端末5Aから既に受信済みである旨の応答パケットを受信しているマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号に相当するシーケンス番号5を格納した応答信号CS12aを送信局1向けに送信する(ステップS12a)。
また、受信局2Bに関しても、図3の場合と同様、上り回線への送信を行うスロットタイミングtbの時点では、受信局2Aの場合と同様、送信局1からのシーケンス番号6〜10のマルチキャストパケットCS10を未受信であり、データ受信端末5Bから既に受信済みである旨の応答パケットを受信しているマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号に相当するシーケンス番号5を格納した応答信号CS12bを送信局1向けに送信する(ステップS12b)。
また、受信局2Cに関しては、図3の場合とは異なり、送信局1からのシーケンス番号6〜10のマルチキャストパケットCS10の受信に失敗しているので、上り回線への送信を行うスロットタイミングtcの時点では、データ受信端末5Cから既に受信済みである旨の応答パケットを受信しているマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号に相当するシーケンス番号5を格納した応答信号CS12cを送信局1向けに送信する(ステップS12c)。
送信局1は、前述のように、各受信局2A、2B、2Cから返送されてくる応答信号を常時監視していて、それぞれの応答信号に格納されている最老番のシーケンス番号が、前スロット周期における応答信号から更新されているか否かを確認している。送信局1は、ステップS12a、S12b、S12cの段階では、受信局2A、2B、2Cそれぞれからの応答信号CS12a、CS12b、CS12c内の最老番のシーケンス番号に関し、いずれも、前スロット周期における応答信号内の最老番のシーケンス番号から更新されていることを確認する。したがって、受信局2A、2B、2Cそれぞれとの間で、正常にパケット送受信動作が実施されているものと判断する。
送信局1は、管理局によって割り当てられた回線が確保されている限り、あらかじめ設定されているマルチキャストパケット送信周期T2毎に、定期的に、受信局2A、2B、2Cに向けてマルチキャストパケットを送信する動作を行っている。したがって、シーケンス番号6〜10のマルチキャストパケットCS10の送信後、マルチキャストパケット送信周期T2が経過すると、送信局1は、シーケンス番号11〜15の5個のマルチキャストパケットCS13を生成して、受信局2A、2B、2Cに向けて、下り回線無線フレームとして連続して送信する(ステップS13)。
受信局2A、2Bは、図3の場合と同様、送信局1からのシーケンス番号11〜15のマルチキャストパケットCS13を受け取るが、受信局2Cは、再度、何かの要因により、マルチキャストパケットCS13を受信することができなかったものとする(ステップS14)。
マルチキャストパケットCS13を受け取った受信局2A、2Bは、図3の場合と同様、それぞれ、データ受信端末5A、5B向けのパケットに編集して、データ受信端末5A、5Bに対して送信し、データ受信端末5A、5Bからの応答パケット待ちの状態になる。しかし、受信局2Cは、図3の場合とは異なり、マルチキャストパケットCS1を受信していないので、データ受信端末5Cへの送信動作は行わない。
前述のように、各受信局2A、2B、2Cは、それぞれ、データ受信端末5A、5B、5Cからの応答パケットを受け取ると、該応答パケットに対応するマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号を格納した応答信号を生成して、あらかじめ設定されているスロット周期T1毎に、各受信局2A、2B、2Cに割り当てられているスロットタイミングta、tb、tcにおいて、送信局1に向けて、上り回線無線フレームとして送信する。
図4A,Bのシーケンスチャートに示す例においては、受信局2Aに関しては、先にシーケンス番号5を格納した応答信号CS12aを送信してからスロット周期T1が経過した時点すなわち次の上り回線への送信を行うスロットタイミングtaの時点で、データ受信端末5Aから既に受信済みである旨の応答パケットを受信しているマルチキャストパケットCS10の最老番シーケンス番号に相当するシーケンス番号10を格納した応答信号CS15aを送信局1向けに送信する(ステップS15a)。
また、受信局2Bに関しても、受信局2Aと同様、先に最老番のシーケンス番号5を格納した応答信号CS12bを送信してからスロット周期T1が経過した時点すなわち次の上り回線への送信を行うスロットタイミングtbの時点で、データ受信端末5Bから既に受信済みである旨の応答パケットを受信しているマルチキャストパケットCS10の最老番シーケンス番号に相当するシーケンス番号10を格納した応答信号CS15bを送信局1向けに送信する(ステップS15b)。
しかし、受信局2Cに関しては、送信局1からのシーケンス番号6〜10のマルチキャストパケットCS10のみならず、シーケンス番号11〜15のマルチキャストパケットCS13の受信にも失敗しているので、先に最老番のシーケンス番号5を格納した応答信号CS12cを送信してからスロット周期T1が経過した時点すなわち次の上り回線への送信を行うスロットタイミングtcの時点では、データ受信端末5Cから既に受信済みである旨の応答パケットを受信しているマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号に相当するシーケンス番号5を格納した応答信号CS15cを送信局1向けに送信する(ステップS15c)。
送信局1は、各受信局2A、2B、2Cから返送されてくる応答信号を常時監視していて、それぞれの応答信号に格納されている最老番のシーケンス番号が、前スロット周期における応答信号から更新されているか否かを確認している。送信局1は、前述のように、受信局2A、2Bそれぞれからの応答信号CS15a、CS15b内の最老番のシーケンス番号に関しては、前スロット周期における応答信号CS12a、CS12bから更新されているので、正常にパケット送受信動作が実施されているものと判断する。しかし、受信局2Cからの応答信号CS15c内の最老番のシーケンス番号に関しては、前スロット周期における応答信号CS12cと同じであり、更新されていないので、パケット送受信動作に何らかの異常が発生しているものと判断する。
送信局1は、受信局2A、2B、2C向けの回線が1本だけであるので、マルチキャストパケットの送信相手である受信局2A、2B、2Cのいずれかに受信不良が発生していると判断した場合には、全ての受信局2A、2B、2Cに対してマルチキャストパケットの再送動作に移行する。なお、ここでは、受信局2A、2B、2Cのいずれかから最老番のシーケンス番号未更新の応答信号を1回でも受信すると、直ちに再送動作に移行する場合について説明するが、最老番のシーケンス番号未更新の応答信号を、1回ではなく、回数閾値(回数閾値は1回の場合を含め可変とする)としてあらかじめ定めた一定回数に達するまで連続して受信した場合を契機にして、再送動作に移行するようにしても良い。
したがって、送信局1は、シーケンス番号11〜15のマルチキャストパケットCS13の送信後、あらかじめ定めたマルチキャストパケット送信周期T2が経過すると、第1回目の再送動作として、パケット送受信動作が不良であると判断した受信局2Cからの応答信号に未更新状態で格納されていた最老番のシーケンス番号5に該当するマルチキャストパケットの次に送信していたマルチキャストパケットCS10を再送するために、シーケンス番号6〜10の再送マルチキャストパケットCS16を生成して、受信局2A、2B、2Cに向けて再送する(ステップS16)。
第1回目の再送動作においても、受信局2A、2Bは、送信局1からのシーケンス番号6〜10の再送マルチキャストパケットCS16を受け取るが、受信局2Cは、再度、何かの要因により、再送マルチキャストパケットCS16を受信することができなかったものとする(ステップS17)。
再送マルチキャストパケットCS16を受け取った受信局2A、2Bは、いずれも、再送マルチキャストパケットCS16のシーケンス番号6〜10に該当するマルチキャストパケットCS10を既に受信済みであって、データ受信端末5A、5Bに対して送信済みであるので、データ受信端末5A、5Bに対してシーケンス番号6〜10の再送マルチキャストパケットCS16を再度送信する動作は行わない。一方、受信局2Cは、再送マルチキャストパケットCS16を受信していないので、データ受信端末5Cへの送信動作は行わない。
前述のように、各受信局2A、2B、2Cは、それぞれ、データ受信端末5A、5B、5Cからの応答パケットに対応するマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号を格納した応答信号を生成して、あらかじめ設定されているスロット周期T1毎に、各受信局2A、2B、2Cに割り当てられているスロットタイミングta、tb、tcにおいて、送信局1に向けて、上り回線無線フレームとして送信する。
図4A,Bのシーケンスチャートに示す例においては、受信局2A、2Bに関しては、それぞれ、例えば、最老番のシーケンス番号未更新の応答信号の受信により直ちに再送動作に移行していた場合には、先に最老番のシーケンス番号10を格納した応答信号CS15a、CS15bを送信してからスロット周期T1が経過した時点すなわち次の上り回線への送信を行うスロットタイミングta、tbの時点で、データ受信端末5A、5Bから既に受信済みである旨の応答パケットを受信しているマルチキャストパケットCS13の最老番シーケンス番号に相当するシーケンス番号15を格納した応答信号CS18a、18bを、送信局1向けに送信する(ステップS18a、S18b)。
しかし、受信局2Cに関しては、送信局1からのシーケンス番号6〜10のマルチキャストパケットCS10のみならず、シーケンス番号11〜15のマルチキャストパケットCS13、シーケンス番号6〜10の再送マルチキャストパケットCS16の受信にも全て失敗しているので、上り回線への送信を行うスロットタイミングtcの時点では、データ受信端末5Cから既に受信済みである旨の応答パケットを受信しているマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号に相当するシーケンス番号5を格納した応答信号CS18cを送信局1向けに送信する(ステップS18c)。
以降も、送信局1は、前述と同様の再送マルチキャストパケットの再送動作を繰り返し実施するが、受信局2Cからの応答信号に格納されている最老番のシーケンス番号が一向に更新されていない状況が継続し、再送実施回数閾値としてあらかじめ定めた最後の第Nk回目の再送動作においても、同様に、更新されなかった場合には、受信局2Cをマルチキャストパケットの送信対象から除外する動作に移行する。
すなわち、送信局1は、最後の第Nk回目の再送動作として、シーケンス番号6〜10の再送マルチキャストパケットCS19を生成して、受信局2A、2B、2Cに向けて再送しても(ステップS19)、受信局2A、2Bは、再送マルチキャストパケットCS19を正常に受信するものの、受信局2Cにおいては、何かの要因により、再送マルチキャストパケットCS19を受信することができなかったものとする(ステップS20)。
送信局1は、第1回目の再送動作の場合と同様、受信局2A、2Bそれぞれからは、受信済みのマルチキャストパケットCS13の最老番シーケンス番号に相当するシーケンス番号15を格納した応答信号CS21a、21bを、また、受信局2Cからは、受信済みのマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号に相当するシーケンス番号5を格納した応答信号CS21cを、スロットタイミングta、tb、tcの時点で、受け取る(ステップS21a、S21b、S21c)。
送信局1は、最後の第Nk回目に至るまで繰り返し再送動作を実施しても、受信局2Cの応答信号に格納された最老番のシーケンス番号が全く更新されていないことを検知したことを契機にして、自局内に保持しているマルチキャスト対象の受信局の登録リスト(すなわち、マルチキャストパケット送信先受信局登録リスト、言い換えると、パケット再送対象局登録リスト)から受信局2Cの登録を削除する(ステップS22)。
しかる後、さらに、送信局1は、受信局2Cをマルチキャストパケット対象局から切り離すために、受信局2Cを対象とする切断信号CS23を、受信局2A、2B、2Cに対して、あらかじめ定めた切断信号連送時間T4の間、連送する(ステップS23)。受信局2A、2Bは、受け取った切断信号CS23の対象が受信局2Cであるので、該切断信号CS23を無視するが、該切断信号CS23を受信した受信局2Cは、自局の回線を切断する(ステップS24)。
また、送信局1は、受信局2Cを対象とする切断信号CS23の連送を行った後、送信すべきマルチキャストパケットがまだ残っている場合、回線切断した受信局2C以外の残りの受信局2A、2Bそれぞれに対して、残っているマルチキャストパケットの送信動作を実施する。しかる後、送信局1は、送信すべき全てのマルチキャストパケットの送信が完了し、残りの受信局2A、2Bそれぞれから、送信したマルチキャストパケットの最後のシーケンス番号を格納した応答信号を受け取った以降において、無通信時間T3としてあらかじめ定めた時間が経過するまでに、新たに送信すべきデータが発生しなかった場合には、該無通信時間T3が経過した時点で、受信局2A、2Bを対象とする切断信号を、あらかじめ定めた切断信号連送時間T4の間、連送することにより、受信局2A、2Bの回線も切断させる。
なお、ステップS15cにおいて、受信局2Cからの応答信号CS15cが送信局1に届かなかった場合には、受信局2Cからの一つ前の応答信号CS12cと比較することができないため、第1回目の再送動作を行うステップS16に移行させる契機がなくなる。したがって、再送動作を行うことなく、前述の図3のマルチキャストパケットの送受信動作を継続することになる。
その結果として、送信局1は、たまたま、受信局2Cからの応答信号を受信することができたとしても、受信した受信局2Cからの応答信号のシーケンス番号が、正常な送受信動作により最老番のシーケンス番号が次々に更新されるその他の受信局2A、2Bからの応答信号のシーケンス番号と、あらかじめ定めた一定値以上に差が拡大してしまっていた場合には、あるいは、場合によっては、受信局2Cからの応答信号をあらかじめ定めた時間継続して確認することができなかった場合には、再送動作には移行しないで、直ちに、ステップS22に移行して、受信局2Cを、マルチキャスト対象の受信局を登録しているマルチキャストパケット送信先受信局登録リストから削除して、切断することにする。
また、前述した再送実施回数閾値Nkは、任意の値であり、可変である。場合によっては、再送動作そのものを行わないようにすることも可能である。かくのごとく、再送動作を全く行わない場合には、ステップS15cの実行後に、直ちに、ステップS22に移行するように動作すれば良い。
(マルチキャストパケットロス発生時の再送動作の一例)
次に、図5のシーケンスチャートを用いて、送信局1から受信局2A、2B、2Cにマルチキャストパケットを送信した際に、いずれかの受信局において何らかの誤りのために一部のマルチキャストパケットに関するパケットロスが発生した場合のマルチキャストパケット再送動作の一例について説明する。
図5は、図1に示したマルチキャスト通信システムにおいて送信局1から受信局2A、2B、2Cへのマルチキャストパケット送信時にいずれかの受信局において発生した一部のパケットロスによるマルチキャストパケット再送動作の一例を示すシーケンスチャートである。なお、図5のシーケンスチャートにおいては、受信局2A、2B、2Cのうち、受信局2Cにおいて一部のパケットのロス(シーケンス番号6〜10の5個のマルチキャストパケットのうち、シーケンス番号8のパケットのロス)が発生した場合について示している。なお、図4A,Bのシーケンスチャートにおいても、図3の場合と同様、シーケンス番号1〜5の各マルチキャストパケットに関しては、送信局1から受信局2A、2B、2Cに対する送信動作が既に終了した状態になっていて、シーケンス番号6以降のマルチキャストパケットを送信する動作について示している。
図5のシーケンスチャートにおいて、送信局1は、データ送信端末4から受け取って、記憶装置6に保存している送信データに関して、シーケンス番号6〜10の5個のマルチキャストパケットCS30を生成して、受信局2A、2B、2Cに向けて、マルチキャストパケット送信周期T2に合わせて、下り回線無線フレームとして連続して送信する(ステップS30)。この時、受信局2Cにおいて、何かの誤りによるパケットリスが発生して、マルチキャストパケットCS30の5個のパケットのうち、シーケンス番号8のパケットを受信することができなかったものとする(ステップS31)。
受信局2A、2Bは、図3の場合と同様、送信局1からのシーケンス番号6〜10のマルチキャストパケットCS10を受け取ると、それぞれ、データ受信端末5A、5B向けのパケットに編集して、データ受信端末5A、5Bに対して送信し、データ受信端末5A、5Bからの応答パケット待ちの状態になる。しかし、受信局2Cは、図3の場合とは異なり、マルチキャストパケットCS30の5個のパケットのうち途中のシーケンス番号8のパケットを受信していないので、パケットロスが生じたシーケンス番号8以外のシーケンス番号6,7,9,10に該当するデータに関してデータ受信端末5Cへ送信する。
なお、各受信局2A、2B、2Cは、それぞれ、データ受信端末5A、5B、5Cからの応答パケットを受け取ると、該応答パケットに対応するマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号を格納した応答信号を生成して、各受信局2A、2B、2Cに割り当てられているスロットタイミングta、tb、tcにおいて、上り回線無線フレームとして送信する。
図5のシーケンスチャートに示す例においては、受信局2Aに関しては、図3の場合と同様、上り回線への送信を行うスロットタイミングtaの時点では、送信局1からのシーケンス番号6〜10のマルチキャストパケットCS30を未受信であるので、データ受信端末5Aから既に受信済みである旨の応答パケットを受信しているマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号に相当するシーケンス番号5を格納した応答信号CS32aを送信局1向けに送信する(ステップS32a)。
また、受信局2Bに関しても、図3の場合と同様、上り回線への送信を行うスロットタイミングtbの時点では、受信局2Aの場合と同様、送信局1からのシーケンス番号6〜10のマルチキャストパケットCS30を未受信であり、データ受信端末5Bから既に受信済みである旨の応答パケットを受信しているマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号に相当するシーケンス番号5を格納した応答信号CS32bを送信局1向けに送信する(ステップS32b)。
一方、受信局2Cに関しては、上り回線への送信を行うスロットタイミングtcの時点では、送信局1からのシーケンス番号6〜10のマルチキャストパケットCS1のうち、何らかの要因によりパケットロスが生じた途中のシーケンス番号8以外のパケットを受信しており、かつ、データ受信端末5Cに対して、パケットロスが生じたシーケンス番号8以外のシーケンス番号6,7,9,10に該当するデータを送信して、データ受信端末5Cからは既に受信済みである旨の応答パケットを受信している。したがって、受信局2Cは、データ受信端末5Cが受信済みになっているマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号に相当するシーケンス番号10およびパケットロス発生シーケンス番号8を格納した応答信号CS32cを送信局1向けに送信する(ステップS32c)。
なお、パケットロス発生シーケンス番号8については、例えば、最老番のシーケンス番号10からパケットロスがあったシーケンス番号8を差し引いた値‘2’をパケットロス値として格納するようにしても良い。かかる場合には、送信局1側において、受信した応答信号内の最老番のシーケンス番号10からパケットロス値‘2’を差し引く演算を行って、パケットロスが発生したシーケンス番号8を算出するようにすれば良い。
送信局1は、各受信局2A、2B、2Cから返送されてくる応答信号を常時監視していて、それぞれの応答信号に格納されている最老番のシーケンス番号が、前スロット周期における応答信号から更新されているか否か、さらには、パケットロスが発生しているか否かを確認している。送信局1は、受信局2A、2Bそれぞれからの応答信号CS32a、CS32b内の最老番のシーケンス番号に関し、いずれも、前スロット周期における応答信号内の最老番のシーケンス番号から更新されていて、かつ、パケットロス発生シーケンス番号も格納されていないことを確認すると、受信局2A、2Bそれぞれとの間では、正常にパケット送受信動作が実施されているものと判断する。
一方、送信局1は、受信局2Cからの応答信号CS32c内の最老番のシーケンス番号に関しては、前スロット周期における応答信号内の最老番のシーケンス番号から更新されているものの、パケットロス発生シーケンス番号も格納されていることを確認するので、次のマルチキャストパケット送信周期T2においては、パケットロスが発生したシーケンス番号のパケットの再送が必要であるものと判断する。
送信局1は、受信局2A、2B、2C向けの下り回線が1本だけであるので、マルチキャストパケットの送信相手である受信局2A、2B、2Cのいずれかにパケットロスが発生していると判断した場合には、全ての受信局2A、2B、2Cに対してパケットロスが生じたシーケンス番号のパケットを含むマルチキャストパケットの再送動作に移行する。
したがって、送信局1は、シーケンス番号6〜10のマルチキャストパケットCS30の送信後、あらかじめ定めたマルチキャストパケット送信周期T2が経過すると、受信局2Cにおいてパケットロスが生じたシーケンス番号8のデータを再送するために、シーケンス番号11〜14の4個のパケットの他に、パケットロスが生じたシーケンス番号8の再送用パケットを含むマルチキャストパケットCS33を生成して、受信局2A、2B、2Cに向けて送信する(ステップS33)。
(受信局の回線切断制御動作の一例)
次に、図6のシーケンスチャートを用いて、受信局2A、2B、2Cが、それぞれ、受信局側の独自の判断によって、受信劣化状態に陥っているか否かを判断し、受信劣化状態に陥っているものと判断した場合には、その旨を応答信号に含めて送信局1に通報するとともに、受信劣化状態が継続している場合には、受信局側が、自律的に、自局の回線を切断する場合の制御動作の一例について説明する。なお、図4A,Bにおいて前述した例においては、受信局2A、2B、2Cのいずれかが、何らかの要因により、送信局1が、再送実施回数閾値としてあらかじめ定めた回数、再送動作を繰り返しても、正常にマルチキャストパケットを受信することができなかった場合に、送信局1側から切断信号を連送して、強制的に、該当する受信局の回線を切断させる場合について説明した。これに対して、図6のシーケンスチャートの場合は、受信劣化状態が継続している場合には、受信局側の自律的な制御により自局の回線を切断するとともに、より確実に回線の切断制御を行うために、受信局側からの受信劣化状態発生の通報を受け取った送信局1からの制御によっても、該当する受信局の回線を強制的に切断させる場合について説明している。
図6は、図1に示したマルチキャスト通信システムにおいて送信局1から受信局2A、2B、2Cへのマルチキャストパケット送信時にいずれかの受信局において受信劣化状態が発生した場合に該当する受信局の回線切断を制御する動作の一例を示すシーケンスチャートである。なお、受信局2A、2B、2Cは、それぞれ、自局の受信状態を示す受信レベルまたはBER(Bit Error Rate)を常時監視しているが、図6のシーケンスチャートにおいては、受信局2A、2B、2Cのうち、受信局2Cにおいて、送信局1側からの信号の受信レベルまたはBERが受信可能な限界値としてあらかじめ定めた受信可能閾値よりも低下したことを検出して、受信劣化状態の発生を検知した場合について示している。
図6のシーケンスチャートにおいて、受信局2Cは、前述のように、自局の受信状態を示す受信レベルまたはBERを常時監視しているが、送信局1からの衛星回線を介して送信されてきた信号の受信レベルまたはBERが、あらかじめ定めた受信可能閾値よりも低下した状態になっていることを検出した場合(ステップS41)、自局において受信劣化状態が発生したものと判断して、受信局2Cに割り当てられたスロットタイミングtaの時点で、受信済みのマルチキャストパケットの最老番シーケンス番号に相当するシーケンス番号の他に、自局(受信局2C)の受信劣化状態を示す値を受信劣化状態発生情報として格納した応答信号CS42を生成して、送信局1向けに送信する(ステップS42)。
さらに、受信劣化状態の発生を検知した受信局2Cにおいては、自局における受信劣化状態の発生を検知した時点で、タイマを起動して、引き続き、受信劣化状態があらかじめ定めた受信劣化状態監視時間T5の間継続して発生しているか否かを監視する。受信劣化状態が受信劣化状態監視時間T5の間継続して発生していた場合には、受信局2Cは、自律的に、自局の回線の切断を実施する(ステップS44)。なお、受信劣化状態監視時間T5まで経過する前に、自局の受信劣化状態が改善されて、良好な受信状態に復旧した場合には、受信局2Cに割り当てられたスロットタイミングtaの時点で、受信済みのマルチキャストパケットの最老番のシーケンス番号に相当するシーケンス番号の他に、受信劣化状態からの復旧を示す受信劣化状態復旧情報を示す値を格納した応答信号を生成して、送信局1向けに送信するとともに、タイマの計時動作を停止させ、自局の回線の切断動作には移行しないように制御する。
一方、送信局1は、受信局2Cから受信した応答信号CS42に、受信局2Cに受信劣化状態の発生を示す受信劣化状態発生情報が格納されていることを確認すると(ステップS43)、受信局2Cからの応答信号に良好な受信状態に復旧したことを示す受信劣化状態復旧情報が格納されているか否かを、あらかじめ定めた受信局受信状態復旧待ち時間T6の間、継続して監視するために、タイマを起動する。
送信局1は、受信局受信状態復旧待ち時間T6まで経過する前に、受信局2Cから、良好な受信状態に復旧したことを示す受信劣化状態復旧情報が格納されている応答信号を受信すると、タイマの経時動作を停止し、図3に示したような通常のパケット送受信動作に復旧する。一方、受信局受信状態復旧待ち時間T6が経過しても、受信局2Cから、良好な受信状態に復旧したことを示す受信劣化状態復旧情報が格納されている応答信号を受信することができなかった場合には、送信局1は、自局内に保持しているマルチキャストパケット送信先受信局登録リスト(言い換えると、パケット再送対象局の登録リスト)から受信局2Cの登録を削除する(ステップS45)。
さらに、送信局1は、受信局2Cをマルチキャストパケット対象局から切り離すために、受信局2Cを対象とする切断信号CS46を、受信局2Cのみならず、受信局2A、2B、2Cに対しても、あらかじめ定めた切断信号連送時間T4の間、連送する(ステップS46)。受信局2A、2Bは、受け取った切断信号CS46の対象が受信局2Cであるので、該切断信号CS46を無視するが、該切断信号CS46を受信した受信局2Cは、まだ、自局の回線を自律的に切断していなかった場合には、該切断信号CS46に基づいて、自局の回線を強制的に切断する。
なお、一般的には、送信局1側における受信局受信状態復旧待ち時間T6は、受信局2C側の受信劣化状態監視時間T5よりも長い時間として設定されるので、図6に示すように、通常であれば、送信局1からの切断信号CS46を受信局2Cが受信した時点では、受信局2Cは、受信劣化状態から良好な状態に一度も復旧することができなかった場合には、既に、自律的に回線を切断している状態になっている。
また、送信局1は、受信局2Cを対象とする切断信号CS46の連送を行った後、送信すべきマルチキャストパケットがまだ残っている場合、回線切断した受信局2C以外の残りの受信局2A、2Bそれぞれに対して、残っているマルチキャストパケットの送信動作を実施する。しかる後、送信局1は、送信すべき全てのマルチキャストパケットの送信が完了し、残りの受信局2A、2Bそれぞれから、送信したマルチキャストパケットの最後のシーケンス番号を格納した応答信号を受け取った以降において、無通信時間T3としてあらかじめ定めた時間が経過するまでに、新たに送信すべきデータが発生しなかった場合には、該無通信時間T3が経過した時点で、受信局2A、2Bを対象とする切断信号を、あらかじめ定めた切断信号連送時間T4の間、連送することにより、受信局2A、2Bの回線も切断させる。
(受信局の回線切断制御動作の一例)
次に、図7のシーケンスチャートを用いて、マルチキャスト対象局の受信局2A、2B、2Cのうち、マルチキャストパケットの送受信動作中に送信局1に保持されているマルチキャストパケット送信先受信局登録リスト(言い換えると、パケット再送対象局の登録リスト)から登録を削除された受信局に対して、当該受信局以外の受信局に対して送信済みになっていたマルチキャストパケットを再送する動作の一例について説明する。
図4A,Bのシーケンスチャートにおいて説明したように、マルチキャストパケットの送受信動作中に、受信局2A、2B、2Cのいずれかの受信局(図4A,Bの例においては受信局2C)に、何らかの要因で、受信不良状態が発生し、当該受信局からの応答信号に格納されて返送されてくる最老番のシーケンス番号の更新がされない事態を検知すると、送信局1は、マルチキャストパケットの再送動作を起動する。しかし、再送実施回数閾値としてあらかじめ定めた第Nk回目に至るまで、マルチキャストパケットの再送動作を繰り返しても、当該受信局からの応答信号に格納された最老番のシーケンス番号の更新がなされていない状態が継続した場合には、送信局1は、マルチキャストパケット送信先受信局登録リスト(言い換えると、パケット再送対象局の登録リスト)から当該受信局の登録を削除するとともに、回線切断の指示を、当該受信局に対して送信する。
また、図6のシーケンスチャートにおいて説明したように、マルチキャストパケットの送受信動作中に、受信局2A、2B、2Cのいずれかの受信局(図4A,Bの例においては受信局2C)に受信劣化状態が発生し、受信レベルまたはBERがあらかじめ定めた受信許容閾値よりも低下した状態が発生した場合には、送信局1にその旨を示す情報が格納された応答信号が返送されてくる。該応答信号を受け取った送信局1は、受信局受信状態復旧待ち時間T6に達するまで、当該受信局から良好な受信状態に復旧した旨を示す情報が格納された応答信号を受信することができなかった場合には、マルチキャスト対象の受信局を登録しているマルチキャストパケット送信先受信局登録リスト(言い換えると、パケット再送対象局の登録リスト)から当該受信局の登録を削除するとともに、回線切断の指示を、当該受信局に対して送信する。
なお、図6のシーケンスチャートにおいて説明したように、当該受信局は、受信レベルまたはBERがあらかじめ定めた受信許容閾値よりも低下した受信劣化状態が発生してから、受信劣化状態監視時間T5としてあらかじめ定めた時間に達するまで受信劣化状態が継続していることを検知した場合には、当該受信局は自律的に回線を切断している。
図7は、図1に示したマルチキャスト通信システムにおいてマルチキャストパケットの送受信動作中に送信局1に保持されているマルチキャストパケット送信先受信局登録リスト(言い換えると、パケット再送対象局の登録リスト)から登録削除された受信局に対して、当該受信局以外の受信局に対しては送信済みになっているマルチキャストパケットを再送する動作の一例を示すシーケンスチャートである。図7のシーケンスチャートにおいては、マルチキャスト対象局である受信局2A、2B、2Cのうち、受信局2Cが、マルチキャスト対象の受信局を登録しているマルチキャストパケット送信先受信局登録リスト(言い換えると、パケット再送対象局の登録リスト)から登録削除されていた場合について示している。
なお、図7のシーケンスチャートには示していないが、送信局1は、登録削除された受信局2Cを除く他の受信局2A、2B、すなわち、マルチキャストパケット送信先受信局登録リスト(言い換えると、パケット再送対象局の登録リスト)に登録されているマルチキャスト対象局の受信局2A、2Bに対するマルチキャストパケットを全て送信すると、受信局2A、2Bの回線も切断した状態に移行している。
しかる後、送信局1は、登録が削除された受信局2Cに対して、受信局2C以外の受信局2A、2Bに対しては送信済みになっているマルチキャストパケットを再送する動作を開始する。しかし、登録が削除された受信局2Cについても、既に回線が切断された状態になっているので、送信局1は、管制局に対して、受信局2A、2B、2Cとの間の回線を再設定するために、1対N通信回線の割当て要求を再度行う。背景技術において説明したように、VSATシステムにおいては、1対N通信においてどの地球局に回線を割り当てるかという回線の管理は、管制局が行っている。
つまり、管制局は、送信局1とマルチキャスト対象局の受信局2A、2B、2Cとの間のマルチキャスト用の回線として管理しているので、送信局1からの1対N通信回線の割当て要求を受け取っても、受信局2Cの回線のみを設定することはできなく、マルチキャスト対象局の受信局2A、2B、2C全ての回線を設定することになる。したがって、登録が削除された受信局2Cのみではなく、マルチキャストパケット全ての送信が既に完了している受信局2A、2Bについても回線が再度設定された状態になる。
そこで、図7のシーケンスチャートにおいては、まず、マルチキャストパケット全ての送信が既に完了している受信局2A、2Bに再度設定された回線を切断するために、受信局2A、2Bを対象とする切断信号CS51を、受信局2A,2Bのみならず、受信局2Cに対しても、あらかじめ定めた切断信号連送時間T4の間、連送する(ステップS51)。該切断信号CS51を受け取った受信局2A、2B、2Cは、それぞれ、対象局として自局が指定されている切断信号であるか否かを確認し、切断信号CS51の対象局が自局であった受信局2A、2Bにおいては、それぞれ、自局の回線を切断する(ステップS52a、S52b)。
受信局2Cについては、切断信号CS51の対象局が自局ではないので、回線の設定状態は、そのまま継続する。したがって、送信局1は、受信局2Cから今までに受け取っていた最新の応答信号を取り出して、既に受信済みであることを示すマルチキャストパケットの最老番のシーケンス番号を確認し、該再老番のシーケンス番号の次のシーケンス番号に相当するデータから、受信局2Cに対して再送する動作を開始する。ここでは、受信局2Cの回線を再度設定し直しているので、再送マルチキャストパケットのシーケンス番号も最初の‘1’から開始することになる。
したがって、送信局1は、図7のシーケンスチャートに示すように、送信局1は、受信局2Cに対して最初に再送するデータに関して、例えば、シーケンス番号1〜3の3個のマルチキャストパケットCS53を生成して、受信局2Cに向けて、下り回線無線フレームとして連続して送信する(ステップS53)。しかる後、まだ、受信局2Cに対して再送すべきデータが残っている場合には、あらかじめ設定されているマルチキャストパケット送信周期T2毎に、次のシーケンス番号4以降の連続番号を付したマルチキャストパケットを順次生成して、受信局2Cに向けて、下り回線無線フレームとして連続して送信する動作を繰り返す。
また、送信局は、受信局2Cからの応答信号を常時監視しているが、図7の場合においても、図4A,Bのシーケンスチャートの場合と全く同様の動作を行い、受信局2Cから応答信号が返送されてきたとき、該応答信号に格納されている最老番のシーケンス番号が、前スロット周期における応答信号から更新されていた場合には、受信局2Cとの間のマルチキャストパケットの送受信動作が正常に復旧しているものと判断する。一方、最老番のシーケンス番号が更新されていない場合には、図4A,Bの場合と同様のマルチキャストパケットの再送動作に移行する。
なお、図7の場合においては、送信局1において、一度に送信するマルチキャストパケットの数、マルチキャストパケット送信周期T2、再送実施回数閾値Nk、受信局受信状態復旧待ち時間T6等の値を、図4A,Bや図6の場合から変更するようにしても良い。さらに、図4A,Bや図6や図7に示したようなマルチキャストパケットの再送処理や受信局2A、2B、2Cへの回線切断制御の判断基準についても、送信局1内の設定により、任意に変更して設定することが可能であり、送信局1は、変更して設定した判断基準に従って、マルチキャストパケットの再送処理や受信局2A、2B、2Cへの回線切断制御を行うように動作することができる。
(実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本発明に係る実施形態においては、以下のような効果を奏することができる。
第1の効果は、複数(例えばN)個のマルチキャスト受信局(受信局2A、2B、2C)から或る1つのマルチキャスト送信局(送信局1)方向へ向かう通信において、1回線を、複数(例えばN)個のマルチキャスト受信局(受信局2A、2B、2C)において時分割的に共用することにより、割当て回線数を、従来システムにおける複数(例えばN)回線から1回線に削減することができ、使用回線数の大幅な節約が可能になるという点である。
第2の効果は、パケットの受信状態が悪いマルチキャスト受信局(例えば受信局2C)の回線を切断し、当該マルチキャスト受信局(例えば受信局2C)へのファイル転送を後回しにすることにより、パケットの受信状態が良好なマルチキャスト受信局(例えば受信局2A、2B)の通信効率を改善することが可能になるという点である。
第3の効果は、コネクション型通信に必要なシーケンス番号の付与、応答信号の送信、また、それらを使った通信制御を、マルチキャスト送信局(送信局1)とマルチキャスト受信局(受信局2A、2B、2C)との間でも行い、かつ、データ送信端末4とのコネクション型通信は、マルチキャスト送信局(送信局1)との間の1対1で行い、データ受信端末5A、5B、5Cとのコネクション型通信は、マルチキャスト受信局(受信局2A、2B、2C)との間の1対1で行うことにより、データ送受信端末側からは通信相手が1つに見え、データ送受信端末において、TCP等の1対1通信を前提とした汎用的な通信方式を採用することができ、1対N通信用に独自の通信方式を採用した高価なデータ送受信端末を採用した場合と比較して、設備費用の削減を見込むことが可能になるという点である。
第4の効果は、応答信号を待ってから、次のマルチキャストパケットを送信するのではなく、常に、応答信号を監視し、マルチキャストパケット送信周期T2としてあらかじめ定めた周期毎に、必要であればパケットの再送を行い、必要が無ければ、次々に、マルチキャストパケットを送信する通信方式とすることにより、通信衛星回線における遅延を考慮した場合であっても、スループット低下をより改善することができ、なおかつ、パケット再送機能を保持することが可能であるという点である。
(付記)
以上に、本発明に係る実施形態について、詳細に説明したことからも明らかなように、前述の実施形態の一部または全部は、以下の各付記のようにも記載することができるが、本発明はかかる場合に限るものではないことは言うまでもない。
(付記1)通信衛星を介した双方向無線通信が可能なVSAT(Very Small Aperture Terminal)システムを構成する双方向無線通信システムであって、1つのマルチキャスト送信局とN(N:自然数)個のマルチキャスト受信局との間の1対N通信回線をDAMA((Demand Assign Multiple Access)方式によって割当てを行い、前記マルチキャスト受信局から前記マルチキャスト送信局に向かう上り方向の回線として割り当てられた1回線を、TDMA(Time Division Multiple Access)方式の無線フレームフォーマットに準拠したフレームを用いて、送信周期としてあらかじめ定めたスロット周期毎にN個の前記マルチキャスト受信局それぞれに割り当てられたスロットタイミングにおいて時分割して通信を行うことにより、共用する双方向無線通信システム。
(付記2)前記マルチキャスト送信局は、データ送信端末から送信されてきた全てのデータを、自局内に設置した記憶装置に保存した後、保存したデータを1ないし複数のマルチキャストパケットに分割し、かつ、分割した該マルチキャストパケット毎に送信順を示すシーケンス番号を生成して、さらに、分割した前記マルチキャストパケットと生成した前記シーケンス番号とのそれぞれを、誤り検出機能を有する2つの無線フレームそれぞれに格納した後、前記2つの無線フレームを一組に連結し、さらに、分割した前記マルチキャストパケットが複数存在している場合には、連結した前記2つの前記フレームを、あらかじめ定めた個数分さらに連結して、送信周期としてあらかじめ定めたマルチキャストパケット送信周期毎に、前記通信衛星を介して、下り回線無線フレームとして、マルチキャスト対象局を構成するN個の前記マルチキャスト受信局に向けて連続して送信する前記付記1に記載の双方向無線通信システム。
(付記3)各前記マルチキャスト受信局は、前記通信衛星を介して受信した前記マルチキャスト送信局からの前記下り回線無線フレーム内の前記マルチキャストパケットのデータを、データ受信端末に送信し、該データ受信端末からの受信確認済みを示す受信確認応答を受け取ると、該受信確認応答に該当するデータが格納されている前記マルチキャストパケットのうち最老番のシーケンス番号を取り出して保存し、かつ、保存した前記最老番のシーケンス番号を格納した応答信号を作成して、誤り検出機能を有するフレームに格納し、各前記マルチキャスト受信局それぞれに割り当てられた前記スロットタイミング毎に、前記通信衛星を介して、前記マルチキャスト送信局に向けて送信する前記付記2に記載の双方向無線通信システム。
(付記4)前記マルチキャスト送信局は、前記通信衛星を介して受信した各前記マルチキャスト受信局からの前記応答信号内の前記最老番のシーケンス番号を、前回の前記スロット周期において受信していた該当する前記マルチキャスト受信局からの前記応答信号内の前記最老番のシーケンス番号と比較し、比較した結果として、各前記マルチキャスト受信局のうち1ないし複数のいずれかのマルチキャスト受信局において、あらかじめ定めた一定回数、今回受信した前記応答信号内の前記最老番のシーケンス番号が、前回の前記スロット周期において受信していた前記応答信号内の前記最老番のシーケンス番号から更新されていないことを検知した場合は、当該最老番のシーケンス番号よりも後のシーケンス番号が付されていたマルチキャストパケットを、次の前記マルチキャストパケット送信周期において、前記通信衛星を介して、各前記マルチキャスト受信局それぞれに向けて再送する前記付記3に記載の双方向無線通信システム。
(付記5)前記マルチキャスト送信局は、前記マルチキャストパケットの再送を行った後、該再送の契機となった前記マルチキャスト受信局からの前記応答信号内の前記最老番のシーケンス番号を、前回の前記スロット周期において受信していた前記応答信号内の前記最老番のシーケンス番号と比較し、比較した結果、前回の前記スロット周期において受信していた前記応答信号内の前記最老番のシーケンス番号から更新されていないことを検知した場合は、再度、再送動作を起動し、再送実施回数閾値としてあらかじめ定めた回数、再送動作を繰り返しても、前回の前記スロット周期において受信していた前記応答信号内の前記最老番のシーケンス番号から更新されていないことを検知した場合は、再送の契機となった前記マルチキャスト受信局を、マルチキャスト対象の受信局を登録しているマルチキャストパケット送信先受信局登録リストから削除するとともに、当該マルチキャスト受信局に対して回線切断を指示する切断信号を、あらかじめ定めた切断信号連送時間の間、連送する前記付記4に記載の双方向無線通信システム。
(付記6)前記マルチキャスト送信局は、前記通信衛星を介して受信した各前記マルチキャスト受信局からの前記応答信号内の前記最老番のシーケンス番号を、自局から送信する送信マルチキャストパケットに付されるシーケンス番号と比較し、比較した結果として、両者のシーケンス番号の差が、あらかじめ定めた閾値以上に拡大していることを検知した場合、前記マルチキャストパケット送信周期をあらかじめ定めた長さだけ長くするように制御する前記付記3ないし5のいずれかに記載の双方向無線通信システム。
(付記7)各前記マルチキャスト受信局は、前記通信衛星を介して受信した各前記マルチキャスト受信局からの前記マルチキャストパケットに付されたシーケンス番号の連続性を監視し、該シーケンス番号の抜けが発生していることを検知した場合、当該シーケンス番号に該当する前記マルチキャストパケットのパケットロスが発生しているものと判断して、受信確認済みを示す前記最老番のシーケンス番号の他に、前記パケットロスが発生した前記マルチキャストパケットに付されていたシーケンス番号をパケットロス発生シーケンス番号として格納した前記応答信号を作成して、当該マルチキャスト受信局に割り当てられた前記スロットタイミングで、前記通信衛星を介して、前記マルチキャスト送信局に向けて送信する前記付記3ないし6のいずれかに記載の双方向無線通信システム。
(付記8)前記マルチキャスト送信局は、前記通信衛星を介して受信した各前記マルチキャスト受信局からの前記応答信号内に、受信確認済みを示す前記最老番のシーケンス番号の他に、前記パケットロス発生シーケンス番号が格納されていることを検知した場合、再送用として、該パケットロス発生シーケンス番号に該当するシーケンス番号が付されたマルチキャストパケットを、次に送信すべきマルチキャストパケットとして、受信確認済みを示す前記最老番のシーケンス番号よりも後のシーケンス番号が付されたマルチキャストパケットとともに、次の前記マルチキャストパケット送信周期において、前記通信衛星を介して、各前記マルチキャスト受信局それぞれに向けて再送する前記付記7に記載の双方向無線通信システム。
(付記9)各前記マルチキャスト受信局は、自局の受信状態を示す受信レベルまたはBER(Bit Error Rate)を監視し、該受信レベルまたはBERが受信可能な限界値としてあらかじめ定めた受信可能閾値よりも低下したことを検出した場合、自局の受信劣化状態が発生したものと判断して、受信確認済みを示す前記最老番のシーケンス番号の他に、自局の受信劣化状態の発生を示す受信劣化状態発生情報を格納した応答信号を作成して、当該マルチキャスト受信局に割り当てられた前記スロットタイミングで、前記通信衛星を介して、前記マルチキャスト送信局に向けて送信する前記付記3ないし8のいずれかに記載の双方向無線通信システム。
(付記10)各前記マルチキャスト受信局は、前記受信劣化状態が発生したものと判断した場合、タイマを起動して、引き続き、前記受信劣化状態があらかじめ定めた受信劣化状態監視時間の間継続して発生しているか否かを監視し、前記受信劣化状態が前記受信劣化状態監視時間の間継続して発生していた場合には、自律的に、自局の回線の切断を実施する前記付記9に記載の双方向無線通信システム。
(付記11)各前記マルチキャスト受信局は、前記受信劣化状態監視時間までの時間が経過する前に、自局の受信劣化状態が良好な受信状態に復旧した場合には、起動したタイマの計時動作を停止するとともに、受信確認済みを示す前記最老番のシーケンス番号の他に、受信劣化状態からの復旧を示す受信劣化状態復旧情報を格納した応答信号を作成して、当該マルチキャスト受信局に割り当てられた前記スロットタイミングで、前記通信衛星を介して、前記マルチキャスト送信局に向けて送信する前記付記10に記載の双方向無線通信システム。
(付記12)前記マルチキャスト送信局は、前記通信衛星を介して受信した各前記マルチキャスト受信局からの前記応答信号を監視し、受信した該応答信号内に、受信確認済みを示す前記最老番のシーケンス番号の他に、前記受信劣化状態発生情報が格納されていることを検知した場合、タイマを起動して、あらかじめ定めた受信局受信状態復旧待ち時間が経過するまでに、前記受信劣化状態発生情報が格納された応答信号を返送してきた前記マルチキャスト受信局から、良好な受信状態に復旧したことを示す前記受信劣化状態復旧情報が格納されている前記応答信号を受信することができなかった場合には、当該マルチキャスト受信局を、マルチキャスト対象の受信局を登録しているマルチキャストパケット送信先受信局登録リストから削除するとともに、当該マルチキャスト受信局に対して回線切断を指示する切断信号を、あらかじめ定めた切断信号連送時間の間、連送する前記付記11に記載の双方向無線通信システム。
(付記13)前記マルチキャスト送信局は、前記再送実施回数閾値に該当する回数繰り返し実施した再送動作においても前記応答信号内の前記最老番のシーケンス番号が更新されなかった前記マルチキャスト受信局を、または、前記受信局受信状態復旧待ち時間が経過するまでに、良好な受信状態に復旧したことを示す前記受信劣化状態復旧情報が格納されている前記応答信号を受信することができなかった前記マルチキャスト受信局を、前記マルチキャストパケット送信先受信局登録リストから削除するとともに、当該前記マルチキャスト受信局に対して回線切断を指示する切断信号を連送した以降において、送信すべき前記マルチキャストパケットがまだ残っている場合、回線切断した前記マルチキャスト受信局以外の残りのマルチキャスト受信局それぞれに対して、残っていた前記マルチキャストパケットの送信動作を実施する前記付記5または12に記載の双方向無線通信システム。
(付記14)前記マルチキャスト送信局は、回線切断した前記マルチキャスト受信局以外の残りのマルチキャスト受信局それぞれに対して、送信すべき全ての前記マルチキャストパケットの送信が完了し、前記残りのマルチキャスト受信局それぞれから、送信した前記マルチキャストパケットの最後のシーケンス番号を格納した前記応答信号を受け取った以降において、無通信時間としてあらかじめ定めた時間が経過するまでに、新たに送信すべきデータが発生しなかった場合、前記無通信時間が経過した時点で、前記残りのマルチキャスト受信局に対して、回線切断を指示する切断信号を、前記切断信号連送時間の間、連送する前記付記13に記載の双方向無線通信システム。
(付記15)前記マルチキャスト送信局は、回線切断した前記マルチキャスト受信局以外の前記残りのマルチキャスト受信局それぞれに対して、前記切断信号を連送した後、回線切断した前記マルチキャスト受信局との間の前記通信衛星を介した回線を再度設定し直して、回線切断した前記マルチキャスト受信局に対して送信すべき残りの前記マルチキャストパケットの送信動作を再開する前記付記14に記載の双方向無線通信システム。
(付記16)前記マルチキャスト送信局は、データ送信端末と1対1通信のコネクション型通信方式を前提とした通信を行い、各前記マルチキャスト受信局は、データ受信端末と1対1通信のコネクション型通信方式を前提とした通信を行う前記付記1ないし15のいずれかに記載の双方向無線通信システム。
(付記17)通信衛星を介した双方向無線通信が可能なVSAT(Very Small Aperture Terminal)システムを構成する双方向無線通信システムにおける双方向無線通信方法であって、1つのマルチキャスト送信局とN(N:自然数)個のマルチキャスト受信局との間の1対N通信回線をDAMA((Demand Assign Multiple Access)方式によって割当てを行い、前記マルチキャスト受信局から前記マルチキャスト送信局に向かう上り方向の回線として割り当てられた1回線を、TDMA(Time Division Multiple Access)方式の無線フレームフォーマットに準拠したフレームを用いて、送信周期としてあらかじめ定めたスロット周期毎にN個の前記マルチキャスト受信局それぞれに割り当てられたスロットタイミングにおいて時分割して通信を行うことにより、共用する双方向無線通信方法。
(付記18)前記マルチキャスト送信局は、データ送信端末から送信されてきた全てのデータを、自局内に設置した記憶装置に保存した後、保存したデータを1ないし複数のマルチキャストパケットに分割し、かつ、分割した該マルチキャストパケット毎に送信順を示すシーケンス番号を生成して、さらに、分割した前記マルチキャストパケットと生成した前記シーケンス番号とのそれぞれを、誤り検出機能を有する2つの無線フレームそれぞれに格納した後、前記2つの無線フレームを一組に連結し、さらに、分割した前記マルチキャストパケットが複数存在している場合には、連結した前記2つの前記フレームを、あらかじめ定めた個数分さらに連結して、送信周期としてあらかじめ定めたマルチキャストパケット送信周期毎に、前記通信衛星を介して、下り回線無線フレームとして、マルチキャスト対象局を構成するN個の前記マルチキャスト受信局に向けて連続して送信する前記付記17に記載の双方向無線通信方法。
(付記19)各前記マルチキャスト受信局は、前記通信衛星を介して受信した前記マルチキャスト送信局からの前記下り回線無線フレーム内の前記マルチキャストパケットのデータを、データ受信端末に送信し、該データ受信端末からの受信確認済みを示す受信確認応答を受け取ると、該受信確認応答に該当するデータが格納されている前記マルチキャストパケットのうち最老番のシーケンス番号を取り出して保存し、かつ、保存した前記最老番のシーケンス番号を格納した応答信号を作成して、誤り検出機能を有するフレームに格納し、各前記マルチキャスト受信局それぞれに割り当てられた前記スロットタイミング毎に、前記通信衛星を介して、前記マルチキャスト送信局に向けて送信する前記付記18に記載の双方向無線通信方法。
(付記20)前記マルチキャスト送信局は、前記通信衛星を介して受信した各前記マルチキャスト受信局からの前記応答信号内の前記最老番のシーケンス番号を、前回の前記スロット周期において受信していた該当する前記マルチキャスト受信局からの前記応答信号内の前記最老番のシーケンス番号と比較し、比較した結果として、各前記マルチキャスト受信局のうち1ないし複数のいずれかのマルチキャスト受信局において、あらかじめ定めた一定回数、今回受信した前記応答信号内の前記最老番のシーケンス番号が、前回の前記スロット周期において受信していた前記応答信号内の前記最老番のシーケンス番号から更新されていないことを検知した場合は、当該最老番のシーケンス番号よりも後のシーケンス番号が付されていたマルチキャストパケットを、次の前記マルチキャストパケット送信周期において、前記通信衛星を介して、各前記マルチキャスト受信局それぞれに向けて再送する前記付記19に記載の双方向無線通信方法。
(付記21)前記マルチキャスト送信局は、前記マルチキャストパケットの再送を行った後、該再送の契機となった前記マルチキャスト受信局からの前記応答信号内の前記最老番のシーケンス番号を、前回の前記スロット周期において受信していた前記応答信号内の前記最老番のシーケンス番号と比較し、比較した結果、前回の前記スロット周期において受信していた前記応答信号内の前記最老番のシーケンス番号から更新されていないことを検知した場合は、再度、再送動作を起動し、再送実施回数閾値としてあらかじめ定めた回数、再送動作を繰り返しても、前回の前記スロット周期において受信していた前記応答信号内の前記最老番のシーケンス番号から更新されていないことを検知した場合は、再送の契機となった前記マルチキャスト受信局を、マルチキャスト対象の受信局を登録しているマルチキャストパケット送信先受信局登録リストから削除するとともに、当該マルチキャスト受信局に対して回線切断を指示する切断信号を、あらかじめ定めた切断信号連送時間の間、連送する前記付記20に記載の双方向無線通信方法。
(付記22)前記マルチキャスト送信局は、前記通信衛星を介して受信した各前記マルチキャスト受信局からの前記応答信号内の前記最老番のシーケンス番号を、自局から送信する送信マルチキャストパケットに付されるシーケンス番号と比較し、比較した結果として、両者のシーケンス番号の差が、あらかじめ定めた閾値以上に拡大していることを検知した場合、前記マルチキャストパケット送信周期をあらかじめ定めた長さだけ長くするように制御する前記付記19ないし21のいずれかに記載の双方向無線通信方法。
(付記23)各前記マルチキャスト受信局は、前記通信衛星を介して受信した各前記マルチキャスト受信局からの前記マルチキャストパケットに付されたシーケンス番号の連続性を監視し、該シーケンス番号の抜けが発生していることを検知した場合、当該シーケンス番号に該当する前記マルチキャストパケットのパケットロスが発生しているものと判断して、受信確認済みを示す前記最老番のシーケンス番号の他に、前記パケットロスが発生した前記マルチキャストパケットに付されていたシーケンス番号をパケットロス発生シーケンス番号として格納した前記応答信号を作成して、当該マルチキャスト受信局に割り当てられた前記スロットタイミングで、前記通信衛星を介して、前記マルチキャスト送信局に向けて送信する前記付記19ないし22のいずれかに記載の双方向無線通信方法。
(付記24)前記マルチキャスト送信局は、前記通信衛星を介して受信した各前記マルチキャスト受信局からの前記応答信号内に、受信確認済みを示す前記最老番のシーケンス番号の他に、前記パケットロス発生シーケンス番号が格納されていることを検知した場合、再送用として、該パケットロス発生シーケンス番号に該当するシーケンス番号が付されたマルチキャストパケットを、次に送信すべきマルチキャストパケットとして、受信確認済みを示す前記最老番のシーケンス番号よりも後のシーケンス番号が付されたマルチキャストパケットとともに、次の前記マルチキャストパケット送信周期において、前記通信衛星を介して、各前記マルチキャスト受信局それぞれに向けて再送する前記付記23に記載の双方向無線通信方法。
(付記25)各前記マルチキャスト受信局は、自局の受信状態を示す受信レベルまたはBER(Bit Error Rate)を監視し、該受信レベルまたはBERが受信可能な限界値としてあらかじめ定めた受信可能閾値よりも低下したことを検出した場合、自局の受信劣化状態が発生したものと判断して、受信確認済みを示す前記最老番のシーケンス番号の他に、自局の受信劣化状態の発生を示す受信劣化状態発生情報を格納した応答信号を作成して、当該マルチキャスト受信局に割り当てられた前記スロットタイミングで、前記通信衛星を介して、前記マルチキャスト送信局に向けて送信する前記付記19ないし24のいずれかに記載の双方向無線通信方法。
(付記26)各前記マルチキャスト受信局は、前記受信劣化状態が発生したものと判断した場合、タイマを起動して、引き続き、前記受信劣化状態があらかじめ定めた受信劣化状態監視時間の間継続して発生しているか否かを監視し、前記受信劣化状態が前記受信劣化状態監視時間の間継続して発生していた場合には、自律的に、自局の回線の切断を実施する前記付記25に記載の双方向無線通信方法。
(付記27)各前記マルチキャスト受信局は、前記受信劣化状態監視時間までの時間が経過する前に、自局の受信劣化状態が良好な受信状態に復旧した場合には、起動したタイマの計時動作を停止するとともに、受信確認済みを示す前記最老番のシーケンス番号の他に、受信劣化状態からの復旧を示す受信劣化状態復旧情報を格納した応答信号を作成して、当該マルチキャスト受信局に割り当てられた前記スロットタイミングで、前記通信衛星を介して、前記マルチキャスト送信局に向けて送信する前記付記26に記載の双方向無線通信方法。
(付記28)前記マルチキャスト送信局は、前記通信衛星を介して受信した各前記マルチキャスト受信局からの前記応答信号を監視し、受信した該応答信号内に、受信確認済みを示す前記最老番のシーケンス番号の他に、前記受信劣化状態発生情報が格納されていることを検知した場合、タイマを起動して、あらかじめ定めた受信局受信状態復旧待ち時間が経過するまでに、前記受信劣化状態発生情報が格納された応答信号を返送してきた前記マルチキャスト受信局から、良好な受信状態に復旧したことを示す前記受信劣化状態復旧情報が格納されている前記応答信号を受信することができなかった場合には、当該マルチキャスト受信局を、マルチキャスト対象の受信局を登録しているマルチキャストパケット送信先受信局登録リストから削除するとともに、当該マルチキャスト受信局に対して回線切断を指示する切断信号を、あらかじめ定めた切断信号連送時間の間、連送する前記付記27に記載の双方向無線通信方法。
(付記29)前記マルチキャスト送信局は、前記再送実施回数閾値に該当する回数繰り返し実施した再送動作においても前記応答信号内の前記最老番のシーケンス番号が更新されなかった前記マルチキャスト受信局を、または、前記受信局受信状態復旧待ち時間が経過するまでに、良好な受信状態に復旧したことを示す前記受信劣化状態復旧情報が格納されている前記応答信号を受信することができなかった前記マルチキャスト受信局を、前記マルチキャストパケット送信先受信局登録リストから削除するとともに、当該前記マルチキャスト受信局に対して回線切断を指示する切断信号を連送した以降において、送信すべき前記マルチキャストパケットがまだ残っている場合、回線切断した前記マルチキャスト受信局以外の残りのマルチキャスト受信局それぞれに対して、残っていた前記マルチキャストパケットの送信動作を実施する前記付記21または28に記載の双方向無線通信方法。
(付記30)前記マルチキャスト送信局は、回線切断した前記マルチキャスト受信局以外の残りのマルチキャスト受信局それぞれに対して、送信すべき全ての前記マルチキャストパケットの送信が完了し、前記残りのマルチキャスト受信局それぞれから、送信した前記マルチキャストパケットの最後のシーケンス番号を格納した前記応答信号を受け取った以降において、無通信時間としてあらかじめ定めた時間が経過するまでに、新たに送信すべきデータが発生しなかった場合、前記無通信時間が経過した時点で、前記残りのマルチキャスト受信局に対して、回線切断を指示する切断信号を、前記切断信号連送時間の間、連送する前記付記29に記載の双方向無線通信方法。
(付記31)前記マルチキャスト送信局は、回線切断した前記マルチキャスト受信局以外の前記残りのマルチキャスト受信局それぞれに対して、前記切断信号を連送した後、回線切断した前記マルチキャスト受信局との間の前記通信衛星を介した回線を再度設定し直して、回線切断した前記マルチキャスト受信局に対して送信すべき残りの前記マルチキャストパケットの送信動作を再開する前記付記30に記載の双方向無線通信方法。
(付記32)前記マルチキャスト送信局は、データ送信端末と1対1通信のコネクション型通信方式を前提とした通信を行い、各前記マルチキャスト受信局は、データ受信端末と1対1通信のコネクション型通信方式を前提とした通信を行う前記付記17ないし31のいずれかに記載の双方向無線通信方法。
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。