JP2017181085A - コンクリート内鉄筋腐食環境測定方法及びシステム - Google Patents

コンクリート内鉄筋腐食環境測定方法及びシステム Download PDF

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【課題】コンクリートの鉄筋腐食環境を長期にわたって計測し、その経時変化を精度良く判定できるコンクリート内鉄筋腐食環境測定方法及びシステムを提供する。【解決手段】判定対象となる鉄筋コンクリートの内部にコンクリート表面及び鉄筋から所定以上の距離をおいて配置された、一対の電極に、コンクリート内でのイオン電導性の時定数と、鉄筋/コンクリート界面での電荷移動の時定数を分離することができる周波数範囲の中の任意の周波数の交流電圧を印加し、インピーダンスを計測する。【選択図】図1

Description

本発明は、コンクリート内に配置された鉄筋の腐食環境を測定する方法及びシステムに関する。
鉄筋コンクリートが用いられた橋梁等のコンクリート構造体は、安全確保のため、周期的に点検が行われている。しかし、コンクリート構造体の劣化は、必ずしも一定速度で起きるわけではなく、施工時の品質、コンクリート構造体が設置されている設置場所の環境に大きく影響される。
例えば、寒冷地に設置された橋梁には、凍結防止のために凍結防止剤が散布される。散布された凍結防止剤には、塩化物イオンが含まれ、塩化物イオンが橋梁を構成する鉄筋コンクリート内部に浸透し、鉄筋を腐食させる。特に、桁端など溶解した凍結防止剤により、塩化物の供給が多い箇所は、鉄筋の腐食が早い。そして、腐食により膨張した鉄筋により、コンクリートにクラックが発生し、クラックから塩化物イオンが浸透し、さらに腐食が加速される。
また、鉄筋が腐食する原因の一つに、中性化がある。通常コンクリートは高アルカリ性(pH12以上)であるため、コンクリート内部の鉄筋は腐食しない。しかし、大気中の二酸化炭素がコンクリート中の空隙に侵入し、内部へ拡散すると、コンクリート中のpHを低下させる。pHが低下すると、鉄筋の不働被膜が破壊され、鉄筋が腐食する。腐食により膨張した鉄筋により、コンクリートにクラックが発生し、クラックから二酸化炭素が浸透し、さらに腐食が加速される。
このように、鉄筋が腐食し始めると、腐食が加速度的に早くなることがあるので、鉄筋腐食の早期検知は重要である。したがって、橋梁をはじめとするコンクリート構造体の内部状態の検出方法は、種々検討されている。
例えば、特開2000−28567には、所定の測定電極及び照合電極を測定対象コンクリート構造体中に埋設するコンクリート構造体の中性化検出センサが提案されている。
また、特開2004−177124には、コンクリート母材内に埋設されている鉄筋と、コンクリート表面に設置した対極との間に所定交流電圧を印加し、鉄筋と対極間に流れる電流の位相角を所定の周波数において測定し、位相角の大小から計測部位の鉄筋の腐食度を判定することが提案されている。
特開2000−28567 特開2004−177124
特許文献1に開示されている手法のように、電極間或いは電極と鉄筋の間の腐食電流(直流電流)を直接的に測定する手法は、自然電位法と呼ばれている。この手法は、容易に測定できる利点があるものの、センサ電極や鉄筋が早く腐食してしまうため、長期計測には不向きであるという問題があった。
特許文献2に開示されている手法のように、交流電圧を印加したときに計測されるインピーダンスに基づき鉄の腐食し易さを測定する手法は、インピーダンス法と呼ばれている。この手法では、大きな電流を必要とすることなく、また電極等の腐食も少ないため、長期間の測定に向いている。しかしながら、判定の精度を高めるためには、低周波数から高周波数まで、広い範囲の周波数についての測定が必要となり、1回の測定に長い時間を要していた。そのため、判定対象となるコンクリートの鉄筋腐食環境の経時変化がわかりにくいという問題があった。
そこで、本発明は、コンクリートの鉄筋腐食環境を長期にわたって計測し、その経時変化を精度良く判定できるコンクリート内鉄筋腐食環境測定方法及びシステムを提供することを目的とする。
本発明に係るコンクリート内鉄筋腐食環境測定方法では、判定対象となる鉄筋コンクリートの内部にコンクリート表面及び鉄筋から所定以上の距離をおいて配置された、一対の電極に、コンクリート内でのイオン電導性の時定数と、鉄筋/コンクリート界面での電荷移動の時定数を分離することができる周波数範囲の中の任意の周波数の交流電圧を印加し、インピーダンスを計測する。
本発明に係るコンクリート内鉄筋腐食環境測定システムは、測定対象となる鉄筋コンクリートの内部にコンクリート表面及び鉄筋から所定以上の距離をおいて配置された、一対の電極と、前記電極に交流電圧を印加しインピーダンスを計測する計測装置を備える。前記計測装置は、前記交流電圧を、コンクリート内でのイオン電導性の時定数と、鉄筋/コンクリート界面での電荷移動の時定数を分離することができる周波数範囲の中の任意の周波数で印加する。
前記交流電圧を、1Hz以下の第一検査周波数と、1kHz以上の第二検査周波数で印加してもよい。
前記交流電圧を、所定のタイミングで、所定の期間、複数回印加し、前記インピーダンスの経時変化を計測してもよい。
前記インピーダンスの計測と併せて、前記鉄筋コンクリートの周囲の空間の温度及び湿度を計測してもよい。
静電容量が既知のコンデンサと、抵抗値が既知の抵抗器とで構成される校正用回路に、前記交流電圧を前記所定の周波数で印加して計測されるインピーダンスと、前記校正用回路のインピーダンス理論値との比較に基づき、計測値の校正を行ってもよい。
本発明によれば、交流電極が、測定対象となる鉄筋コンクリートの内部に配置された電極に印加されるため、コンクリート内でのイオン電導性の時定数と、鉄筋/コンクリート界面での電荷移動の時定数を分離することができる周波数範囲の中の任意の周波数のときに計測されるインピーダンスは、腐食環境と相関性の高いものとなる。すなわち、電荷移動抵抗とコンクリート抵抗の何れか、又は、双方と、骨材の抵抗が支配的要因となる。従って、計測されたインピーダンスに基づき、腐食環境の状態を把握することができる。
また、任意の周波数の交流電圧を印加するのみであることから、大きな電流を必要とすることなく、また電極等の腐食も少なく、更に、1回の測定に要する時間が短くなる。従って、コンクリートの鉄筋腐食環境を長期にわたって計測し、その経時変化を精度良く判定できる。
本発明に係るコンクリート内鉄筋腐食環境測定方法で計測されるインピーダンスのナイキスト線図である。 本発明に係るコンクリート内鉄筋腐食環境測定システムの実施形態の構成を模式的に示す図である。 本発明に係るコンクリート内鉄筋腐食環境測定方法の原理となる等価電気回路である。 公正用回路の実施形態を示す電気回路である。 電荷移動抵抗Rctの経時変化を示すグラフである。 コンクリート抵抗Rsolの経時変化を示すグラフである。
本発明に係るコンクリート内鉄筋腐食環境測定方法の実施形態を、図面に基づいて説明する。
本実施形態は、測定対象となる鉄筋コンクリートのコンクリートに埋め込み配置された電極10と、電極10に交流電圧を印加するとともにインピーダンスを計測する計測装置50で構成される。
電極10は、コンクリートにドリル等で形成した設置孔30に挿入設置する。設置深さは、実際に鉄筋が埋まっている深さの3cm〜7cm程度に適宜決めることができる。なお、この実施形態では、電極間の距離として5cm程度を想定しているが、電極10を浅い場所に設置する場合は、電流がコンクリート表面に付着した水分に流れることによる、インピーダンスの計測への影響が生じないようにするために電極間を短くすればよい。
また、電流がコンクリート内部に配置された鉄筋を流れることによる、インピーダンスの計測への影響が生じることを防止するために、鉄筋から所定の間隔をおいて設置する。鉄筋からの間隔は測定状況に応じて適宜決めることができるが、例えば、3cm程度とすることができる。
更に、電極10の外表面と設置孔30の内面との間に、設置孔30の開口の閉塞材31などの異物が介在することによる、インピーダンスの計測への影響が生じることを防ぐために、電極10の外表面は、設置孔30の内面に密着した状態とする。
電極10がコンクリート内に配置されていることから、電極10に交流電圧を印加する場合の等価電気回路は、図3に示すように、鉄筋とコンクリート間の電荷移動抵抗Rctと電気二重層容量Cdl、骨材の抵抗Rgbと誘電性容量Cgb、及び、コンクリート抵抗Rsolで表されるものとなる。
そして、電極10に交流電圧を印加したときに測定されるインピーダンスは、図1のナイキスト線図で示すように、コンクリート内でのイオン電導性の時定数と、鉄筋/コンクリート界面での電荷移動の時定数を分離することができる周波数範囲の中の任意の周波数においては、電荷移動抵抗Rctとコンクリート抵抗Rsolの何れか、又は、双方と、骨材の抵抗Rgbが支配的要因となる。
電荷移動抵抗Rctは鉄筋の被膜の腐食状態を、コンクリート抵抗Rsolはかぶりコンクリートの導電性を示し、また、骨材の抵抗Rgbはコンクリート内の状態によらず安定している。従って、コンクリート内でのイオン電導性の時定数と、鉄筋/コンクリート界面での電荷移動の時定数を分離することができる周波数範囲の中の任意の周波数(以下、検査周波数という)の交流電圧を印加したときに計測されるインピーダンスは、腐食環境に応じて変化する。すなわち、このインピーダンスに基づき、腐食環境の状態を把握することができる。
検査周波数は、測定対象となる鉄筋コンクリートの材質や電極の配置状態などに応じて適宜決めることができるが、10kHz以上の周波数から10mHz以下の周波数まで、周波数を走査して、ナイキスト線図やボード線図を作成し分析したうえで決めることが好ましい。また、ナイキスト線図において縦軸の値が小さくなる周波数であれば、電荷移動抵抗Rct及びコンクリート抵抗Rsolがより支配的となるため好ましい。
本実施形態では、図1における点P1の周波数(以下、第一検査周波数とする)と、点P2の周波数(以下、第二検査周波数とする)を検査周波数としているが、図1において、インダクタンス(横軸)の大きい側に位置する点の周波数は低く、小さい側に位置する点の周波数は高くなる。従って、第一検査周波数は低く、第二検査周波数は高くなる。例えば、第一検査周波数は1Hz以下、第二検査周波数は1kHz以上となる。ただし、第一検査周波数及び第二検査周波数は、測定対象となる鉄筋コンクリートの材質や電極の配置状態などにより異なるものとなる。
なお、低い周波数での計測には時間を要するため、第一検査周波数は、計測時間を考慮して決めることが好ましい。
ナイキスト線図において、曲率が変化する点があれば、その点における周波数を検査周波数としてもよい。例えば、図1において、曲率の変化する点P3の周波数(以下、第三検査周波数とする)としてもよい。
本実施形態における第一検査周波数のインピーダンス(点P1の実数値)は、電荷移動抵抗Rctと骨材の抵抗Rgbとコンクリート抵抗Rsolを合わせた抵抗値を示すものとなる。また、第二検査周波数のインピーダンス(点P2の実数値)は、コンクリート抵抗Rsolの抵抗値を示すものとなる。更に、第三検査周波数のインピーダンス(点P3の実数値は、骨材の抵抗Rgbとコンクリート抵抗Rsolを合わせた抵抗値を示すものとなる。
第一検査周波数、第二検査周波数及び第三検査周波数のいずれにおいても、交流電圧を、所定のタイミングで、所定の期間、複数回印加することにより、インピーダンスの経時変化を計測することができる。そして、その経時変化により、腐食環境の変化を把握することができる。例えば、12時間に1回の印加を一年間継続することにより、一年間の経時変化を把握することができる。
計測装置50は、また、温湿度計を備えている。そして、インピーダンスの計測と併せて、測定対象となる鉄筋コンクリートの周囲の空間の温度及び湿度を計測する。電気化学反応である鉄筋腐食は、温度の影響や、コンクリート表面に結露し付着或いは浸透した水分の影響を受けるため、インピーダンスの経時変化とともに、温湿度の経時変化を計測することで、腐食環境をより精度良く把握することができる。
計測装置50は、更に、静電容量が既知のコンデンサと、抵抗値が既知の抵抗器とで構成される校正用回路を備えている。そして、校正用回路に、検査周波数で交流電圧を印加して計測されるインピーダンスと、校正用回路のインピーダンス理論値との比較に基づき計測値の校正を行う。
使用する校正用回路に制限はないが、1kΩの抵抗器を電荷移動抵抗Rctに、10μFのコンデンサを電気二重層容量Cdlに、10Ωの抵抗器をコンクリート抵抗Rsolに模した場合、すなわち、図4に示す等価電気回路を校正用回路とした場合について説明する。なお、計測は、第一検査周波数を10mHz、第二検査周波数を10kHzとして行う場合を想定する。
まず、周波数10kHzの交流電圧を印加した場合のインピーダンス理論値Z’10kHzは、以下の数式(1)により求めることができる。
従って、校正用回路に第二検査周波数で交流電圧を印加して計測されるインピーダンスが10.0025Ωから乖離している場合は、計測値に校正値を加減し一致させる校正を行う。
また、周波数10mHzの交流電圧を印加した場合のインピーダンス理論値Z’10mHzは、以下の数式(2)により求めることができる。
従って、校正用回路に第一検査周波数で交流電圧を印加して計測されるインピーダンスが999.997Ωから乖離している場合は、計測値に校正値を加減し一致させる校正を行う。
「実施例」
以下の条件で、腐食環境の経時変化の計測を行った。結果を図5及び図6に示す。
<供試体>
蒸留水にCa(OH)を溶かしてpH12.05とし、コンクリートのアルカリ環境を模したCa(OH)水溶液に、鉄筋と同材質で制作した電極を浸漬させた。そして、実際のコンクリートの中性化反応と同様に、空気中の二酸化炭素が溶液に溶け込んで、Ca(OH)と反応してCaCOとなり中性化する過程を測定した。
<計測条件>
第一検査周波数を10mHzとし、第二検査周波数を10kHzとし、電圧10mV、測定間隔10分、測定期間2880分のインピーダンス計測を行った。
図5では、当初からRctが増加しており、これは電極に不働態皮膜が形成されて、電荷移動の抵抗値が上がっていることを示している。また、約1300分後には、急激にRctが低下しているが、このときのpHは10.9であり、中性化によって不働態皮膜が破壊される様子を定量的に経時的に把握できたものである。
10 電極
30 設置孔
31 閉塞材
50 計測装置

Claims (10)

  1. 測定対象となる鉄筋コンクリートの内部にコンクリート表面及び鉄筋から所定以上の距離をおいて配置された、一対の電極に、コンクリート内でのイオン電導性の時定数と、鉄筋/コンクリート界面での電荷移動の時定数を分離することができる周波数範囲の中の任意の周波数の交流電圧を印加し、インピーダンスを計測することを特徴とするコンクリート内鉄筋腐食環境測定方法。
  2. 前記交流電圧を、1Hz以下の第一検査周波数と、1kHz以上の第二検査周波数で印加する請求項1に記載のコンクリート内鉄筋腐食環境測定方法。
  3. 前記交流電圧を、所定のタイミングで、所定の期間、複数回印加し、前記インピーダンスの経時変化を計測する請求項1又は2に記載のコンクリート内鉄筋腐食環境測定方法。
  4. 前記インピーダンスの計測と併せて、前記鉄筋コンクリートの周囲の空間の温度及び湿度を計測する請求項1、2又は3に記載のコンクリート内鉄筋腐食環境測定方法。
  5. 静電容量が既知のコンデンサと、抵抗値が既知の抵抗器とで構成される校正用回路に、前記交流電圧を前記所定の周波数で印加して計測されるインピーダンスと、前記校正用回路のインピーダンス理論値との比較に基づき、計測値の校正を行う請求項1、2、3又は4に記載のコンクリート内鉄筋腐食環境測定方法。
  6. 測定対象となる鉄筋コンクリートの内部にコンクリート表面及び鉄筋から所定以上の距離をおいて配置された、一対の電極と、
    前記電極に交流電圧を印加しインピーダンスを計測する計測装置を備え、
    前記計測装置は、前記交流電圧を、コンクリート内でのイオン電導性の時定数と、鉄筋/コンクリート界面での電荷移動の時定数を分離することができる周波数範囲の中の任意の周波数で印加することを特徴とするコンクリート内鉄筋腐食環境測定システム。
  7. 前記交流電圧を、1Hz以下の第一検査周波数と、1kHz以上の第二検査周波数で印加する請求項6に記載のコンクリート内鉄筋腐食環境測定システム。
  8. 前記交流電圧を、所定のタイミングで、所定の期間、複数回印加し、前記インピーダンスの経時変化を計測する請求項6又は7に記載のコンクリート内鉄筋腐食環境測定システム。
  9. 前記計測装置は温湿度計を備え、前記インピーダンスの計測と併せて、前記鉄筋コンクリートの周囲の空間の温度及び湿度を計測する請求項6、7又は8に記載のコンクリート内鉄筋腐食環境測定システム。
  10. 前記計測装置は、静電容量が既知のコンデンサと、抵抗値が既知の抵抗器とで構成される校正用回路を備え、前記校正用回路に前記交流電圧を前記所定の周波数で印加して計測されるインピーダンスと、前記校正用回路のインピーダンス理論値との比較に基づき計測値の校正を行う請求項6、7、8又は9に記載のコンクリート内鉄筋腐食環境測定システム。
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