JP2017180204A - 排熱回収装置 - Google Patents

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Kohei Umezu
康平 梅津
浩平 高野
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Abstract

【課題】車両の姿勢が変化しても安定した動作性能を得られる排熱回収装置を提供する。
【解決手段】排熱回収装置1は、内管11と気泡生成部121,122,123,124と外管13と蒸発部10Aとシャッタ14と切換手段15とを備える。内管11は、排気管路102の一部に設置される。気泡生成部121,122,123,124は、内管11の下部から内側へ凹み、上流側から下流側へ間隔を空けて配置される。外管13は、内管11の外周を覆う。シャッタ14は、内管11に対して回動可能に外嵌し、複数の窓141,142,143,144を有している。切換手段15は、蒸発部10Aに連通された上流側の気泡生成部121(122,123)が液面から露出する場合に、下流側の気泡生成部122(123,124)を蒸発部10Aに連通させる位置に対応させて窓142(143,144)を配置するようシャッタ14を回動させる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、内燃機関の排気ガスから熱を回収する排熱回収装置に関する。
内燃機関のエネルギー効率を向上させるために、内燃機関から排出される排気ガスの熱を回収し、その熱を再利用する排熱回収装置がある。排熱回収装置は、排気管の途中に設置された熱交換器において冷却水等の作動流体と熱交換を行うことで、排気ガスの熱を回収する。しかし、冷却水を循環させる経路が全体的に温まるまでに時間が掛り、排熱回収装置として機能するまでの応答性が悪い。
特許文献1に記載された内燃機関の廃熱回収装置は、二重管ヒートパイプであって、内管と外管の間の空間に作動流体が封入されており、外管から鉛直上方へ延びた放熱管を有している。この廃熱回収装置は、オートバイの排気管に内管が接続されている。作動流体は、内管を流れる排気ガスの熱で蒸気になり、放熱管の先端部で液相に戻る。液相に戻った作動流体は、重力で放熱管の内面を伝って内管と外管の空間に還流する。
また、特許文献2に記載されたループ型ヒートパイプは、蒸発した気泡とともに作動流体が流れる上昇管部と、液相に戻った作動流体が流れる下降管部とを有しており、作動流体が一方向に循環する経路を有している。このヒートパイプは、上昇管部と下降管部とを接続する受熱管部において内壁上面の一部が上方へ膨出した蒸気膨張室を有しており、内部に設置される沸騰石で気泡を発生させている。そして、気泡の上昇力によって作動流体が上昇管部を流れることで作動流体全体を循環させている。
実開平7−004857号公報 特許第4771964号公報
ところで、これらの排熱回収装置を実際の車両に採用しようとすると、排気管に配置される受熱部に対して高い位置に放熱部を配置できるとも限らない。特に、特許文献1の構造では、作動流体の循環流量が少なく熱の回収が十分とは言えないだけでなく、走行中の車両の姿勢によって作動流体の液面が変化するため、動作が安定しにくい。また、特許文献2の構造では、作動流体の液相の量が多いため暖まるまでに時間を要するだけでなく、特許文献1の場合と同様に、車両の姿勢によって動作が安定しづらい。
そこで、本発明は、車両の姿勢が変化しても安定した動作性能を得られる排熱回収装置を提供する。
本発明の一実施形態に係る排熱回収装置は、内燃機関を有した車両の排気管路を流れる排気ガスから熱エネルギーを回収する排熱回収装置であって、内管と気泡生成部と外管と蒸発部とシャッタと切換手段とを備える。内管は、車両の進行方向に沿う排気管路の一部に設置される。気泡生成部は、内管の下部から内側へ凹み、排気ガスの流れに沿って上流側から下流側へ間隔を空けて複数配置されている。外管は、気泡生成部が少なくとも設けられた範囲を含む内管の外周を覆う。蒸発部は、内管が水平な状態で気泡生成部が沈む高さに液面が位置するように内管と外管との間に伝熱媒体を封入している。シャッタは、内管に対して回動可能に外嵌し、気泡生成部を個別に蒸発部に連通させる複数の窓を周方向にそれぞれオフセットされた位置に有している。切換手段は、車両の前部が後部よりも高くなり窓の1つを介して蒸発部に連通された上流側の気泡生成部が液面から露出する場合に、下流側の気泡生成部の1つを蒸発部に連通させる位置に対応させて窓の他の1つを配置するようシャッタを回動させる。
このとき、シャッタは非磁性体であり、切換手段は、被吸引部と複数の電磁コイルと傾斜センサと制御部とを含む。被吸引部は、磁性体であり、シャッタの外周壁に固定されている。複数の電磁コイルは、複数の窓をそれぞれ個別に気泡生成部に対応させて被吸引部を磁力で引き付けてシャッタを保持する位置に、それぞれ周方向に並べて外管の外周部に配置される。傾斜センサは、車両の前部が後部よりも高くなる仰角を検出し角度情報を出力する。制御部は、角度情報を基に被吸引部を引き付ける電磁コイルを選択し、磁力を発生させる。
切換手段は、被吸引部及び複数の電磁コイルをシャッタの回動中心線に対して対称の位置に一対に配置していることも好ましい。また、複数の電磁コイルは、複数の気泡生成部に対応して窓を個別に合わせる位置以外に、複数の気泡生成部のいずれにも窓を合わせない閉塞位置にシャッタを位置決めするように被吸引部を引き付ける閉塞用電磁コイルを含んでいてもよい。
または、切換手段は、シャッタの外周壁に取り付けられて内管と外管との間を周方向へ移動可能に伝熱媒体の液面に浮かぶフロートを含み、シャッタは、車両の前部が後部よりも高くなった場合にフロートで回動された状態で液面から露出しない気泡生成部を蒸発部に連通させる位置に窓を有していてもよい。
そして、排気ガスの流れの上流側で伝熱媒体の液面よりも高い位置の蒸発部に連通した出口管台と、排気ガスの流れの下流側で伝熱媒体の液面よりも低い位置の蒸発部に連通した入口管台と、シャッタの外面又は外管の内面に取り付けられて内管及び外管の間を入口管台側から出口管台側へ延びたスロープと、をさらに備えることも好ましい。
本発明に係る一実施形態の排熱回収装置によれば、車両の前部が後部よりも高くなり、伝熱媒体の液面が変位しても、切換手段がシャッタを回動させ、複数の気泡生成部のうち水面下に没している気泡生成部を蒸発部に連通させるので、蒸発部において安定して気泡を発生させることができる。その結果、継続的に上り坂を運転される場合であっても、排熱回収装置は、安定した性能を確保することができるため、内燃機関の暖機性能や車室内の暖房性能を向上させることができる。
本発明の第1の実施形態の排熱回収装置を搭載した車両の冷却水循環経路を模式的見示す図。 図1の受熱部の鉛直面に沿う断面を示す斜視図。 図2の受熱部の外管を透明にして上流側下方から見上げた斜視図。 図2の受熱部の断面図。 図4中のF5−F5線に沿う受熱部の断面図。 図4の状態から上り勾配を検出しシャッタを回動させた受熱部の断面図。 図6の状態より大きい上り勾配を検出しさらにシャッタを回動させた受熱部の断面図。 本発明の第2の実施形態の排熱回収装置の一部を断面にした斜視図。 図8の排熱回収装置の受熱部の断面図。 図9の状態から液面が変化してシャッタを回動させた受熱部の断面図。 図10の状態より大きく液面が変化してシャッタを回動させた受熱部の断面図。
本発明に係る第1の実施形態の排熱回収装置1について、内燃機関101を有した車両に採用した場合を例に図1から図7を参照して説明する。この排熱回収装置1は、内燃機関101の排気管路102を流れる排気ガスGから熱エネルギーを回収する排熱回収装置1である。以下の説明において、車両の進行方向を基準に「前」、「後」をそれぞれ定義する。また重力の作用する方向を基準に「上」、「下」を定義する。また、排気ガスGが流れる方向を基準に「上流」、「下流」と呼ぶ。
図1は、内燃機関101とその冷却水循環流路200及び排熱回収装置1を示す。冷却水循環流路200は、内燃機関101とラジエータ201の間で冷却水Wを循環させる第1の流路200Aと、内燃機関101と車室内暖房器のヒータコア202との間で冷却水を循環させる第2の流路200Bとを有している。内燃機関101の暖機運転中は、冷却水Wを循環させないために、サーモスタット203が第1の流路200Aの途中に設置されている。
排熱回収装置1は、図1に示すように内燃機関101の排気管路102と第2の流路200Bにまたがって設置される。内燃機関101から延びた排気管路102は、触媒103とマフラー104を経由して排気ガスGを排出する。排熱回収装置1は、排気ガスGから熱エネルギーを回収する受熱部1Aを触媒103とマフラー104の間に有し、回収した熱エネルギーを提供する放熱部1Bを第2の流路200Bの内燃機関101からヒータコア202に向かう区間に有している。排気ガスGから回収された熱エネルギーは、冷却水Wの昇温に利用され、暖機運転中の冷却水温を短時間で上昇させることで暖機運転時間を短縮するとともに、車室内の暖房の熱源として利用される。
この排熱回収装置1において、受熱部1Aは伝熱媒体Qを液相から気相へ相転移させる蒸発部10Aであり、放熱部1Bは伝熱媒体Qを気相から液相に相転移させる凝縮部10Bである。つまり、排熱回収装置1は、いわゆる「ヒートパイプ」を構成しており、伝熱媒体Qが蒸発と凝縮によって自然に一方向へ循環するループ式ヒートパイプである。この排熱回収装置1は、受熱部1Aと放熱部1Bとの間で伝熱媒体Qを循環させるための駆動機構を備えていないので、メンテナンスに手間がほとんどかからない。
排熱回収装置1の受熱部1Aの構造について図2から図5を参照してさらに詳述する。図2及び図3に示すように、排熱回収装置1の受熱部1Aは、内管11と気泡生成部121,122,123,124と外管13と蒸発部10Aとシャッタ14と切換手段15とを備える。図2は、排気ガスGの流れの中心に沿う鉛直面で断面にした受熱部1Aの斜視図である。図3は、受熱部1Aの外管13を透明にして上流側下方から見上げた斜視図である。
内管11は、車両の進行方向に沿う排気管路102の一部に設置される。排気管路102に対してほぼ同じ内径を有し、フランジ継手、差込継手、ネジ式継手などによって、排気ガスGの流れの上流側及び下流側の排気管路102にそれぞれ接続される。
複数の気泡生成部121,122,123,124は、内管11の下部から内側へ凹んだ凹部であり、排気ガスGの流れに沿って上流側から下流側へ間隔を空けて配置されている。気泡生成部121,122,123,124は、排気ガスGの熱によって伝熱媒体Qが加熱され沸騰するときの気泡を発生させる起点となる。気泡生成部121,122,123,124にはポーラスメタルや沸騰石のようなものが嵌め込まれてもよいが、本実施形態では、ブラスト処理などによって凹部の内面を梨地状に面粗度を粗くすることで気泡の発生を促進させる。
外管13は、図2及び図3に示すように、気泡生成部121,122,123,124が少なくとも設けられた範囲を含む内管11の外周を覆っている。外管13の上流側及び下流側の端部は、それぞれ内管11の外周面に接するようにテーパ状に絞られており、全周にわたってシール溶接されている。
蒸発部10Aは、内管11と外管13の間に作られた空間によって構成され、図4及び図5に示すように内管11が水平に保たれている状態で気泡生成部121,122,123,124が沈む高さに伝熱媒体Qの液面Qsが位置するように内管11と外管13との間に伝熱媒体Qを封入している。伝熱媒体Qは、例えば純水であって、排熱回収装置1の蒸発部10Aと凝縮部10Bとを循環する伝熱流路10を大気圧よりも低い圧力に減圧した状態に封入されることで、沸騰を促進される。伝熱媒体Qは、純水の代わりに、低沸点の液体や不燃性の液化ガスを利用してもよい。
また、蒸発部10Aで液相から気相に相転移して蒸気になった伝熱媒体Qを取り出す出口管台131は、図4に示すように排気ガスGの流れの上流側で伝熱媒体Qの液面Qsよりも高い位置の蒸発部10Aに連通するように、外管13の上流側の上部に接続されている。また、図1に示す凝縮部10Bにおいて気相から液相に相転移して液体に戻った伝熱媒体Qを蒸発部へ戻す入口管台132は、図4に示すように排気ガスGの流れの下流側で伝熱媒体Qの液面Qsよりも低い位置の蒸発部10Aに連通するように、外管13の下流側の下部に接続されている。
シャッタ14は、図4及び図5に示すように、蒸発部10A内において内管11に対して回動可能に外嵌しており、半径方向に貫通した複数の窓141,142,143,144を有している。これらの窓141,142,143,144は、図2に示すように上流から下流へ間隔を空けて配置された気泡生成部121,122,123,124に対応してこれらを個別に蒸発部10Aに連通させるように周方向にそれぞれオフセットされた位置に配置されている。
切換手段15は、車両の前部が後部よりも高くなり窓141,142,143の1つを介して蒸発部10Aに連通された上流側の気泡生成部121,122,123が液面Qsから露出する場合に、下流側の気泡生成部122,123,124の1つを蒸発部10Aに連通させる位置に対応させて窓142,143,144の1つを配置するようにシャッタ14を回動させる。
具体的には、図3及び図5に示すように、第1の実施形態における切換手段15は、被吸引部150と、複数の電磁コイル151,152,153,154と、傾斜センサ156と、制御部157とを含む。傾斜センサ156及び制御部157は、車両の他の機能においても使用される。制御部157は、車両の運転制御を行うECUであってもよい。シャッタ14は、非磁性体で造られており、被吸引部150は、磁性体で造られている。
被吸引部150は、蒸発部10A内において外管13の内面に接触しない隙間を有してシャッタ14の外周壁に固定されている。被吸引部150は、周方向の寸法よりも排気ガスGの流れに沿う方向へ長く形成されている。この被吸引部150は、シャッタ14の回動中心線Cに対して対称となる位置に一対に配置されている。
複数の電磁コイル151〜154は、排気ガスGの流れ方向に対して被吸引部150の外周に位置しており、周方向に並べて配置され外管13の外周部に固定されている。これらの電磁コイル151〜154は、いずれも回動中心線Cに対して半径方向に磁力線を発生させる向きにコイルが捲回されている。電磁コイル151〜154は、回動中心線Cに対して対称となる位置に一対に配置されている。図3及び図5において対称の位置関係にある電磁コイル151〜154どうしは同じ符号を付している。
制御部157は、これらの電磁コイル151〜154の一組に磁力を発生させることで、被吸引部150を磁力で引き付けてシャッタ14を回動させ、回動中心線Cに対して直径方向へ被吸引部150と磁力を発生させている電磁コイル151〜154の一組(図2においては電磁コイル151)が一列に並ぶ状態で、シャッタ14を保持する。電磁コイル151〜154は、それぞれ複数の窓141〜144をそれぞれ個別に気泡生成部121〜124に対応させてシャッタ14を位置決めできる位置に配置されている。
気泡生成部121〜124は、個々に対応する窓141〜144を介して蒸発部10Aに連通する場合に、気泡を発生することになる。つまり、気泡生成部121に窓141が合致する状態で気泡生成部121から気泡が発生し、気泡生成部122に窓142が合致する状態で気泡生成部122から気泡が発生し、気泡生成部123に窓143が合致する状態で気泡生成部123から気泡が発生し、気泡生成部124に窓144が合致する状態で気泡生成部124から気泡が発生する。そして、窓141〜144によって蒸発部10Aに連通されない気泡生成部121〜124は、気泡をほとんど発生させることはない。
また、第1の実施形態では、さらに気泡生成部121〜124のいずれにも窓141〜144を合わせない閉塞位置にシャッタ14を位置決めできるように被吸引部150を引き付ける閉塞用電磁コイル155を有している。図5に示すように、この閉塞用電磁コイル155も他の電磁コイル151〜154と同様に、回動中心線Cに対して対称となる一対に設けられている。なお、電磁コイル151〜154及び閉塞用電磁コイル155は、ベアリングを介して取り付けられているなど、シャッタ14が内管11に対して滑らかに回動するように構成されている場合には、回動中心線Cに対して対称となる一対に設けられている必要はない。
傾斜センサ156は、車両の前部が後部よりも高くなる仰角を検出し、その角度情報を出力する。制御部は、この角度情報を基に被吸引部150を引き付けるべき電磁コイル151〜154を選択し磁力を発生させる。被吸引部150が選択された電磁コイル151〜154の組に引き付けられることで、シャッタ14が回動し、窓141〜144の1つが内管11の下部に設けられた気泡生成部121〜124の対応する1つを蒸発部10Aに連通させることができる。
以上のように構成された第1の実施形態の排熱回収装置1は、勾配の無い平坦な道を車両が走行している場合、図4に示すように気泡生成部121〜124は、いずれも伝熱媒体Qの液面Qsよりも低く沈んだ状態である。受熱部1Aの中でも排気ガスGが流れてくる上流側が最も温度が高くなるため、上流側に位置する気泡生成部121を利用して気泡(蒸気)を発生させることが最も効率が良い。そこで、図2〜図5に示すように、制御部157は、気泡生成部121に対応する窓141が気泡生成部121を蒸発部10Aに連通させる位置に、電磁コイル151を使ってシャッタ14を位置決めする。
車両の前部が後部よりも少し高くなる上り勾配の角度を有した道を車両が走行する場合、すなわち図6に示すような状態に排熱回収装置1の受熱部1Aが傾けられると、上流に位置する気泡生成部121は、伝熱媒体Qの液面Qsから露出した状態となる。このような状態において、伝熱媒体Qは、気泡生成部121の奥まで入っていきにくくなるため、気泡の発生量も減少するため、排熱回収装置1の熱回収効率が低下する。
そこで、制御部157は、傾斜センサ156から出力された角度情報を基に、上流側の気泡生成部121が伝熱媒体Qの液面Qsから露出する角度に車両が傾斜していることを検出すると、その時の車両の傾斜角度において伝熱媒体Qの液面Qsから露出しない最も上流側に位置する気泡生成部、図6においては気泡生成部122を使用すべき気泡生成部として選択する。そして、制御部157は、上流から2番目に位置するこの気泡生成部122が蒸発部10Aに連通するように、窓142を気泡生成部122に合わせるための電磁コイル152に磁力を発生させる。被吸引部150が電磁コイル152に引き寄せられてシャッタ14が回動することで、図6に示すように、気泡生成部122が窓142を介して蒸発部10Aに連通された状態となる。
同様に、車両が走行する道の上り勾配が図6の状態よりも大きい状態、例えば図7に示す状態になると、上流から第2番目の気泡生成部122も伝熱媒体Qの液面Qsから露出する状態になる。制御部157は、この状態において伝熱媒体Qの液面Qsよりも低く最も上流側に位置する上流から3番目の気泡生成部123を使用すべき気泡生成部として選択する。そして、制御部157は、上流側から3番目に位置するこの気泡生成部123が蒸発部10Aに連通するように、窓143を気泡生成部123に合わせるための電磁コイル153に磁力を発生させる。その結果、シャッタ14が回動され、図7に示すように気泡生成部123が窓143を介して蒸発部10Aに連通された状態となる。
車両が図7に示す状態よりもさらに急な上り勾配を走行する場合には、さらに下流側、上流側から4番目の気泡生成部124を使用するように電磁コイル154で被吸引部150を引き付けてシャッタ14を回動させ、窓144を気泡生成部124に合わせる。
第1の実施形態では、気泡生成部121〜124は4か所設けられているが、上流側と下流側にそれぞれ1か所ずつ2つの気泡生成部のみであってもよいし、上流部、中間部、下流部の3か所に気泡生成部を設けてもよいし、4か所以上に気泡生成部を設けられていてもよい。さらに、排熱回収装置1の熱回収量を増やすために、2か所の気泡生成部121〜124が同時に蒸発部10Aに連通されるように、複数ある窓141〜144のうちの2つを排気ガスの流れに沿う方向に並べて配置した部分を設け、これを気泡生成部121〜124に合うようにシャッタ14を位置決めする電磁コイルを別途配置してもよい。このとき、個別に気泡生成部121〜124を蒸発部10Aに連通させる窓141〜144とは別に、2つの気泡生成部121と122,122と123,123と124等同時に蒸発部10Aに連通させる窓を設けてもよい。また、図4の状態から図7の状態へ車両の姿勢が著しく変化する場合は、図6の状態を経て図7の状態となるように電磁コイル151〜154を切り換える。
このように、構成された排熱回収装置1は、気泡生成部121〜124によって常に安定した気泡が発生されることで、伝熱媒体Qの蒸発量(液相から気相へ相転移する量)が安定するため、排熱回収性能が安定する。
また、排気ガスGから回収される熱エネルギー量が必要量を超える場合や、排気ガスGから熱エネルギーを回収する必要が無い場合、例えば車室内の暖房を使用しない場合や、暖機運転が完了した場合など、冷却水Wの温度が必要以上に高くならないようにするために、排熱回収装置1による熱エネルギーの回収を停止させる。熱エネルギーの量が必要量を超えたか否かの判断は、冷却水Wの温度を検出している温度センサによって確認することができる。回収される熱エネルギーを制限する場合、図3及び図5に示す閉塞用電磁コイル155に磁場を発生させて、気泡生成部121〜124のいずれも窓141〜144を介して蒸発部10Aに連通されない位置にシャッタ14を回動させる。これにより、気泡生成部121〜124から気泡の発生を抑制し、すなわち蒸気発生量を減らすことで、排気ガスGから冷却水Wへ伝達される熱エネルギー量を減らし、内燃機関のオーバーヒートが防止される。
また、第1の実施形態における排熱回収装置1の切換手段15の一例として示した磁性体の被吸引部150と電磁コイル151〜154及び閉塞用電磁コイル155に代えて、シール性を有した軸受を介して外部からシャッタ14を回動させるサーボモータや、外管13の内面に振動子を露出させてシャッタ14を振動で駆動する超音波モータのようなもので駆動してもよい。また、排熱回収装置1の伝熱流路10の内圧を安定させるために、伝熱流路10にアキュムレータを接続してもよい。
次に、本発明に係る第2の実施形態の排熱回収装置1について、図8から図11を参照して説明する。第2の実施形態において、第1の実施形態の排熱回収装置1と同じ機能を有する構成は、第1の実施形態における各構成の符号と同じ符号を付し、その詳細な説明は、第1の実施形態の記載及び図面を参酌することとする。
第2の実施形態の排熱回収装置1は、シャッタ14を回転させるための切換手段15が第1の実施形態の切換手段15と異なっている。その他の構成は、第1の実施形態と同じである。図8から図11では、排熱回収装置1の受熱部1Aを示し、これらの図に表示されない内燃機関101、排気管路102、触媒103、マフラー104、冷却水循環流路200、ラジエータ201、ヒータコア202、サーモスタット203、及び排熱回収装置1の放熱部1B(凝縮部10B)、傾斜センサ156、制御部157等は、第1の実施形態の図1と同様に構成されているものとする。
第2の実施形態において、切換手段15は、図8に示すように、下流側のシャッタ14の外周壁に取り付けられて内管11と外管13との間を周方向へ移動可能に伝熱媒体Qの液面Qsに浮かぶフロート158を含んでいる。また、第2の実施形態では、図8〜図11に示すように、シャッタの外周面に取り付けられて、内管11及び外管13の間の蒸発部10Aにおいて入口管台132側から出口管台131側へ延びたスロープ16をさらに備えている。
なお、図8は、排気ガスGの流れの上流の上方から受熱部1Aを見下ろした斜視図であり、内管11、外管13、シャッタ14の手前側、及び切換手段15となるフロート158を二点鎖線で示すとともに、内管11に隠れるシャッタ14の窓141〜144を実線で示している。図9は、車両が平坦な道を走行している状態の受熱部1Aの断面を示し、図10は、車両の前方が後方よりも少し高くなる上り勾配の道を車両が走行している状態の受熱部1Aの断面を示し、図11は、図10の場合よりもさらに角度の急な上り勾配の道を車両が走行している状態の受熱部1Aの断面を示している。
以上のように構成された第2の実施形態の排熱回収装置1は、勾配の無いほぼ平坦な道を車両が走行している場合、図9に示すように気泡生成部121〜124は、いずれも伝熱媒体Qの液面Qsよりも低く沈んだ状態である。この状態では、受熱部1Aの中でも排気ガスGが流れてくる上流側が最も温度が高くなるため、上流側に位置する気泡生成部121を利用して気泡(蒸気)を発生させることが最も効率がよい。したがって、図9に示すように、最上流に位置する気泡生成部121が蒸発部10Aに連通するようにフロート158が配置されている。
上り坂などで車両の前部が後部よりも高くなり、図10や図11に示すように下流側の液面Qsが上がると、フロート158によってシャッタ14が回動される。図10では、最上流に位置する気泡生成部121が液面Qsに露出する状態であり、このときの液面Qsの位置が変化したことに伴いシャッタ14がフロート158によって回動された状態で、上流から2番目の気泡生成部122を蒸発部10Aに連通させるように窓142がシャッタ14に設けられている。
同様に、図11はさらに車両が傾き、2番目の気泡生成部122も液面Qsから露出した状態であり、このときフロート158によって回動されたシャッタ14に対して、液面Qsに没している最上流に位置している気泡生成部123が蒸発部10Aに連通するように、窓143が設けられている。
なお、車両が再び平坦な道に戻り、液面Qsが下がった場合にシャッタ14が元に戻るようにスプリング取り付けたり、シャッタ14の基準位置となる状態で最下部となる部分にフロート158の浮力よりも軽いバラストを取り付けておいたり、フロート158の浮力よりも小さい浮力を有したか復元浮を回動中心線Cに対してフロート158と対称の位置に配置してもよい。
シャッタ14は、車両の前部が後部よりも高くなり、伝熱媒体Qの液面Qsが変化することに伴いフロート158で回動されることで、液面Qsから露出しない気泡生成部121,122,123,124を蒸発部10Aにそれぞれ連通させるちょうどその位置に窓141,142,143,144を配置している。したがって、車両の姿勢が変化することで液面Qsが変化すると、それに伴い液面Qsから露出する気泡生成部121,122,123に代えてその下流に位置し液面Qsよりも低い気泡生成部122,123,124を蒸発部10Aに連通するようにシャッタ14をフロート158で回動させ、気泡を発生させるために適さなくなった気泡生成部121,122,123を、気泡を発生させるのに適した位置の気泡生成部122,123,124に自動的に切り換える。
また、本実施形態の排熱回収装置1は、出口管台131に近い気泡生成部121に対して、下流側に離れた気泡生成部122,123,124で発生した蒸気も、スロープ16によって出口管台131へ案内することで、排熱回収装置1の熱回収効率を安定させることができる。
さらに、蒸発部10A内において、気泡生成部121,122,123,124から発生するほどではないが、そのほかの部分からも気泡は発生する。スロープ16は、蒸発部10A内で発生したこれらの小さい気泡(蒸気)を出口管台131側へ案内することで、熱回収効率を向上させることができる。なお、スロープ16は、フロート158と干渉しない範囲で、外管13の内面に取り付けられていてもよい。また排気ガスGが流れる方向に沿って受熱部1Aを鉛直に横切る面を中心に鏡像の配置にスロープ16を有していてもよい。
以上、本発明について第1及び第2の実施形態を基に説明した。これらの実施形態は、本発明を実施するにあたって理解しやすくするための一例に過ぎない。したがって、本発明を実施するにあたってその趣旨を逸脱しない範囲で、各構成を同等の機能を有するものに置き換えて実施することも可能であり、それらもまた本発明に含まれる。また、各実施形態で説明した構成のいくつかを互いに組み合わせて、あるいは置き換えて実施されることも本発明に含まれる。例えば第2の実施形態の排熱回収装置1において設けられたスロープ16を第1の実施形態の排熱回収装置1に適用してもよい。このときシャッタ14の外面にスロープ16が取り付けられていてもよいし、外管13の内面にスロープ16が取り付けられていてもよい。その時スロープ16は、被吸引部150に干渉しない位置に配置される。
1…排熱回収装置、10…伝熱流路、10A…蒸発部、11…内管、13…外管、14…シャッタ、15…切換手段、150…被吸引部、151〜154…電磁コイル、155…閉塞用電磁コイル、156…傾斜センサ、157…制御部、158…フロート、16…スロープ、101…内燃機関、102…排気管、121〜124…気泡生成部、131…出口管台、132…入口管台、141〜144…窓、200…冷却水循環流路、G…排気ガス、Q…伝熱媒体、Qs…液面。

Claims (6)

  1. 内燃機関を有した車両の排気管路を流れる排気ガスから熱エネルギーを回収する排熱回収装置であって、
    前記車両の進行方向に沿う前記排気管路の一部に設置された内管と、
    前記内管の下部から内側へ凹み前記排気ガスの流れに沿って上流側から下流側へ間隔を空けて複数配置された気泡生成部と、
    前記気泡生成部が少なくとも設けられた範囲を含む前記内管の外周を覆う外管と、
    前記内管が水平な状態で前記気泡生成部が沈む高さに液面が位置するように前記内管と前記外管との間に伝熱媒体を封入した蒸発部と、
    前記内管に対して回動可能に外嵌し前記気泡生成部を個別に前記蒸発部に連通させる複数の窓を周方向にそれぞれオフセットされた位置に有したシャッタと、
    前記車両の前部が後部よりも高くなり前記窓の1つを介して前記蒸発部に連通された上流側の前記気泡生成部が前記液面から露出する場合に下流側の前記気泡生成部の1つを前記蒸発部に連通させる位置に対応させて前記窓の他の1つを配置するよう前記シャッタを回動させる切換手段と、
    を備えることを特徴とする排熱回収装置。
  2. 前記シャッタは、非磁性体であり、
    前記切換手段は、
    前記シャッタの外周壁に固定された磁性体の被吸引部と、
    複数の前記窓をそれぞれ個別に前記気泡生成部に対応させて前記被吸引部を磁力で引き付けて前記シャッタを保持する位置に周方向に並べて前記外管の外周部に配置された複数の電磁コイルと、
    前記車両の前部が後部よりも高くなる仰角を検出し角度情報を出力する傾斜センサと、
    前記角度情報を基に前記被吸引部を引き付ける前記電磁コイルを選択し磁力を発生させる制御部と、を含む
    ことを特徴とする請求項1に記載された排熱回収装置。
  3. 前記切換手段は、前記被吸引部及び複数の前記電磁コイルを前記シャッタの回動中心線に対して対称の位置に一対に配置している
    ことを特徴とする請求項2に記載された排熱回収装置。
  4. 複数の前記電磁コイルは、複数の前記気泡生成部のいずれにも前記窓を合わせない閉塞位置に前記シャッタを位置決めするように前記被吸引部を引き付ける閉塞用電磁コイルを含む
    ことを特徴とする請求項2に記載された排熱回収装置。
  5. 前記切換手段は、前記シャッタの外周壁に取り付けられて前記内管と前記外管との間を周方向へ移動可能に前記伝熱媒体の前記液面に浮かぶフロート、を含み、
    前記シャッタは、前記車両の前部が後部よりも高くなった場合に前記フロートで回動された状態で前記液面から露出しない前記気泡生成部を前記蒸発部に連通させる位置に前記窓を有している
    ことを特徴とする請求項1に記載された排熱回収装置。
  6. 前記排気ガスの流れの上流側で前記伝熱媒体の前記液面よりも高い位置の前記蒸発部に連通した出口管台と、
    前記排気ガスの流れの下流側で前記伝熱媒体の前記液面よりも低い位置の前記蒸発部に連通した入口管台と、
    前記シャッタの外面又は前記外管の内面に取り付けられて、前記内管及び前記外管の間を前記入口管台側から前記出口管台側へ延びたスロープと、をさらに備える
    ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載された排熱回収装置。
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