従来より、発電プラントに設置されるガスタービン、蒸気タービンまたはコンバインドサイクルのタービンが安全な運転を行い、発電機にて安定した電力を発生させるために、多くの保安装置が設けられている。
保安装置の一例として、トリップ時に蒸気タービンのタービンロータの回転を停止させる機械式非常調速機が挙げられる。しかしながら、ガスタービン、蒸気タービン、発電機等を一軸上に配置した1軸形コンバインドサイクル発電プラントでは、蒸気タービンを中央に配置する方式が採用される場合がある。この場合、蒸気タービンのタービンロータの両端に大きな軸トルクが加わるため、機械式非常調速機を設置することは困難になる。また、ガスタービンの一端には高温排気口が設けられているため、作動油が供給される機械式非常調速機を設置するためには不向きな環境となっている。
そこで、機械式非常調速機の代りの保安装置として、主要蒸気弁や、再熱蒸気止め弁等の蒸気弁をトリップ時に急速閉鎖し、蒸気タービンに供給される蒸気を迅速に遮断するためのタービン非常用制御装置が用いられる場合がある。このタービン非常用制御装置は、トリップ時、タービンの回転数が定格回転数の例えば110%を超えないように、油圧機器の駆動力を利用して蒸気弁を急速閉鎖させる。このことにより、機械式非常調速機が用いられない場合であっても、タービンの安全な運転を行うことができ、十分な信頼性を確保することができる。
タービン非常用制御装置の一例を図6に示す。このタービン非常用制御装置101は、第1トリップ装置110と、第2トリップ装置120と、を備えている。このうち第1トリップ装置110は、第1マスタートリップ弁111と、第1マスタートリップ弁111の下流側に設けられた第1ロックアウト弁112と、を有している。第2トリップ装置120は、第2マスタートリップ弁121と、第2マスタートリップ弁121の下流側に設けられた第2ロックアウト弁122と、を有している。
図6に示すタービン非常用制御装置101において、タービンの通常運転時には、高圧油発生装置170から供給される油圧が、第1マスタートリップ弁111のPポート(入力ポート)に供給され、そのBポート(出力ポート)から第1ロックアウト弁112のTポートおよびBポートを介して、第2マスタートリップ弁121のPポートに供給される。そして、第2マスタートリップ弁121のBポートから第2ロックアウト弁122のTポートおよびBポートを介して被制御弁(以下、一例としての主要蒸気弁Vと記す)に供給される。このことにより、主要蒸気弁Vの油圧室が、高圧油発生装置170で発生した圧力を有する作動油(非常油とも言う)で充満し、主要蒸気弁Vが開く条件が揃う。そして、高圧油発生装置170から別系統で供給される作動油(制御油とも言う)によって主要蒸気弁Vが開き、蒸気タービンに蒸気が供給される。
一方、タービンのトリップ時にタービン停止信号が発生すると、主要蒸気弁Vに供給されていた作動油(非常油)が、第1マスタートリップ弁111および第2マスタートリップ弁121から排出(ドレン)される。より具体的には、第1マスタートリップ弁111および第2マスタートリップ弁121が動作し、主要蒸気弁Vに供給されていた作動油は、第1マスタートリップ弁111のBポートからTポートを介して排出されるとともに、第2マスタートリップ弁121のBポートからTポートを介して排出される。このことにより、主要蒸気弁Vの油圧室内の圧力が低下して主要蒸気弁Vが閉じ、蒸気タービンに供給される蒸気が遮断される。
また、図6に示すタービン非常用制御装置101では、タービンの通常運転を継続しながら第1マスタートリップ弁111および第2マスタートリップ弁121のうちの一方の動作試験を行うことができる。例えば、第1マスタートリップ弁111の動作試験を行う場合、第1ロックアウト弁112が動作し、高圧油発生装置170から第1ロックアウト弁112のPポートに供給された油圧は、第1ロックアウト弁112のBポートから第2マスタートリップ弁121のPポートに供給される。そして、第2マスタートリップ弁121のBポートから第2ロックアウト弁122のTポートおよびBポートを介して主要蒸気弁Vに供給される。このことにより、第1マスタートリップ弁111を介することなく、主要蒸気弁Vに油圧を供給することができる。このため、主要蒸気弁Vを開きながら、第1マスタートリップ弁111を試験的に動作させることができ、第1マスタートリップ弁111の動作確認を行うことができる。
第1マスタートリップ弁111の動作試験中にタービン停止信号が発生した場合には、第2マスタートリップ弁121が動作し、主要蒸気弁Vに供給されていた作動油は、第2マスタートリップ弁121のBポートからTポートを介して排出される。このため、動作試験中であっても、主要蒸気弁Vを閉じることができるようになっている。
一方、第2マスタートリップ弁121の動作試験を行う場合、第2ロックアウト弁122が動作する。このことにより、高圧油発生装置170から第1マスタートリップ弁111のPポートに供給された油圧は、第1マスタートリップ弁111のBポートを介して第2ロックアウト弁122のPポートに供給され、第2ロックアウト弁122のBポートから主要蒸気弁Vに供給される。このことにより、第2マスタートリップ弁121を介することなく、主要蒸気弁Vに油圧を供給することができる。このため、主要蒸気弁Vを開きながら、第2マスタートリップ弁121を試験的に動作させることができ、第2マスタートリップ弁121の動作確認を行うことができる。
第2マスタートリップ弁121の動作試験中にタービン停止信号が発生した場合には、第1マスタートリップ弁111が動作し、主要蒸気弁Vに供給されていた作動油は、第1マスタートリップ弁111のBポートからTポートを介して排出される。このため、動作試験中であっても、主要蒸気弁Vを閉じることができるようになっている。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態によるタービン非常用制御装置は、高圧油発生装置から供給される作動油を用いて、非常時にタービン制御用の被制御弁を制御するためのものである。タービンの例としては、ガスタービン、蒸気タービン、コンバインドサイクルのタービンなどが挙げられ、被制御弁の例としては、燃料弁、主要蒸気弁、再熱蒸気止め弁などの弁が挙げられる。例えば、蒸気タービンプラントでは、タービン非常用制御装置は、被制御弁(以下、一例としての主要蒸気弁と記す)を制御しており、通常運転時には主要蒸気弁の油圧室内に、所定の圧力を有する作動油(圧油、非常油とも言う)によって油圧を供給する。このことにより、当該油圧室内の圧力を高めて主要蒸気弁を開く条件が揃い、高圧油発生装置から別系統で供給される作動油(圧油、制御油とも言う)によって主要蒸気弁が開き、蒸気タービンに蒸気が供給される。一方、タービン停止時には主要蒸気弁の油圧室内の作動油(非常油)を排出する。このことにより、当該油圧室内の圧力を急速に低下させて主要蒸気弁を閉じ、蒸気タービンへの蒸気を急速に遮断して、蒸気タービンを停止させる。
(第1の実施の形態)
図1乃至図3を用いて、第1の実施の形態におけるタービン非常用制御装置について説明する。
図1に示すように、タービン非常用制御装置1は、第1トリップ装置10と、第2トリップ装置20と、を備えている。このうち第1トリップ装置10は、第1マスタートリップ弁11と、第1マスタートリップ弁11の下流側に設けられた第1ロックアウト弁12と、を有している。第2トリップ装置20は、第2マスタートリップ弁21と、第2マスタートリップ弁21の下流側に設けられた第2ロックアウト弁22と、を有している。
第1マスタートリップ弁11は、高圧油発生装置70から油圧が供給されるPポート(入力ポート)と、第1ロックアウト弁12および第2ロックアウト弁22に連通したBポート(出力ポート)と、タービン停止時に作動油(非常油)を排出するTポートと、を含んでいる。また、第1マスタートリップ弁11は、電磁弁11aと、スプリング11bと、を更に含んでいる。このうち電磁弁11aは、常時励磁形電磁弁となっており、図1においては、電磁弁11aの励磁状態が示されている。この場合、第1マスタートリップ弁11のPポートとBポートとが連通する。第1マスタートリップ弁11が動作して電磁弁11aが無励磁となると、スプリング11bの付勢力によって、第1マスタートリップ弁11のTポートとBポートとが連通する。
第1ロックアウト弁12は、第1マスタートリップ弁11のBポートに第1給油配管31を介して連通したTポートと、第2マスタートリップ弁21に連通したBポートと、高圧油発生装置70から油圧が供給されるPポートと、第1ロックアウト弁12内の作動油を排出するYポートと、を含んでいる。また、第1ロックアウト弁12は、電磁弁12aと、スプリング12bと、を更に含んでいる。このうち電磁弁12aは、常時無励磁形電磁弁となっており、図1においては、電磁弁12aの無励磁状態が示されている。この場合、第1ロックアウト弁のTポートとBポートとが連通する。第1ロックアウト弁12が動作して電磁弁12aが励磁されると、第1ロックアウト弁のPポートとBポートとが連通する。
第2マスタートリップ弁21は、第1ロックアウト弁のBポートに第2給油配管32を介して連通したPポートと、第2ロックアウト弁22に連通したBポートと、タービン停止時に作動油を排出するTポートと、を含んでいる。また、第2マスタートリップ弁21は、電磁弁21aと、スプリング21bと、を更に含んでいる。このうち電磁弁21aは、常時励磁形電磁弁となっており、図1においては、電磁弁21aの励磁状態が示されている。この場合、第2マスタートリップ弁21のPポートとBポートとが連通する。第2マスタートリップ弁21が動作して電磁弁21aが無励磁となると、スプリング21bの付勢力によって、第2マスタートリップ弁21のTポートとBポートとが連通する。
第2ロックアウト弁22は、第2マスタートリップ弁21のBポートに第3給油配管33を介して連通したTポートと、主要蒸気弁Vに連通したBポートと、第1マスタートリップ弁11のBポートにバイパス配管34を介して連通したPポートと、第2ロックアウト弁22内の作動油を排出するYポートと、を含んでいる。また、第2ロックアウト弁22は、電磁弁22aと、スプリング22bと、を更に含んでいる。このうち電磁弁22aは、常時無励磁形電磁弁となっており、図1においては、電磁弁22aの無励磁状態が示されている。この場合、第2ロックアウト弁22のTポートとBポートとが連通する。第2ロックアウト弁22が動作して電磁弁22aが励磁されると、第2ロックアウト弁22のPポートとBポートとが連通する。
上述した第1マスタートリップ弁11のTポートおよび第2マスタートリップ弁21のTポートは、共通ドレン配管40に連結されている。この共通ドレン配管40には、第1ロックアウト弁12のYポートおよび第2ロックアウト弁22のYポートも連結されている。より詳細には、第1マスタートリップ弁11のTポートは、第1個別ドレン配管41を介して共通ドレン配管40に連結され、第1ロックアウト弁12のYポートは、第2個別ドレン配管42を介して共通ドレン配管40に連結されている。また、第2マスタートリップ弁21のTポートは、第3個別ドレン配管43を介して共通ドレン配管40に連結され、第2ロックアウト弁22のYポートは、第4個別ドレン配管44を介して共通ドレン配管40に連結されている。このようにして、各マスタートリップ弁11、21のTポートから排出される作動油と、各ロックアウト弁12、22のYポートから排出される作動油とが、共通ドレン配管40に集約されるようになっている。
共通ドレン配管40に集約された作動油は、ドレンボックス50に排出される。このようにして、第1マスタートリップ弁11、第1ロックアウト弁12、第2マスタートリップ弁21および第2ロックアウト弁22から、共通ドレン配管40を介してドレンボックス50に作動油が排出されるようになっている。ドレンボックス50に排出された作動油は、高圧油発生装置70に排出(ドレン)されて戻される。
ところで、上述した第1トリップ弁10と第2トリップ弁20は、図2に示すように、単一のマニホールドブロック60内に設けられている。このマニホールドブロック60内には、上述した各給油配管31〜33、バイパス配管34、各個別ドレン配管41〜44および共通ドレン配管40の一部も設けられている。マニホールドブロック60内において、各個別ドレン配管41〜44は共通ドレン配管40に連通している。このマニホールドブロック60の下面60aには、上述したドレンボックス50が取り付けられている。例えば、ドレンボックス50は、溶接によってマニホールドブロック60の下面60aに取り付けることができるが、これに限られることはない。
図2に示すように、ドレンボックス50は、共通ドレン配管40から排出され作動油を貯留する貯留堰51を有している。この貯留堰51は、ドレンボックス50の底面から上方に延び、作動油を貯留するように形成されている。共通ドレン配管40は、貯留堰51の内部に設けられた配管出口40aを有しており、この配管出口40aが、貯留堰51の上端51aよりも低い位置に配置されている。より具体的には、貯留堰51は、共通ドレン配管40の配管出口40aを取り囲むように形成されており、共通ドレン配管40は、マニホールドブロック60の下面60aから下方に延びて、共通ドレン配管40の配管出口40aが貯留堰51の内部に配置されている。このようにして、貯留堰51の上端51aが、配管出口40aよりも高い位置に配置されている。配管出口40aから排出された作動油は、貯留堰51に貯留される。貯留された作動油は、高圧油発生装置70において発生する圧力から開放される。貯留堰51に貯留された作動油の油面は貯留堰51の上端51aに達し、共通ドレン配管40の配管出口40aは、貯留堰51に貯留された作動油に浸漬される。
ドレンボックス50は、ドレンボックス50の下部に設けられたボックス排出口52を更に有している。このボックス排出口52は、貯留堰51から越流した作動油を、高圧油発生装置70に排出する。
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
図1に示すようなタービンの通常運転時には、第1マスタートリップ弁11の電磁弁11aおよび第2マスタートリップ弁21の電磁弁21aは、励磁状態となっている。このことにより、第1マスタートリップ弁11および第2マスタートリップ弁21のPポートとBポートとがそれぞれ連通する。また、第1ロックアウト弁12および第2ロックアウト弁22の電磁弁12a、22aは、無励磁状態となっている。このことにより、第1ロックアウト弁12および第2ロックアウト弁22のTポートとBポートとがそれぞれ連通する。このため、高圧油発生装置70から第1マスタートリップ弁11のPポートに供給される油圧は、第1マスタートリップ弁11のBポートから第1ロックアウト弁12のTポートおよびBポートを介して、第2マスタートリップ弁21のPポートに供給される。そして、第2マスタートリップ弁21のBポートから第2ロックアウト弁22のTポートおよびBポートを介して主要蒸気弁Vに油圧が供給される。このようにして、主要蒸気弁Vの油圧室が、高圧油発生装置70で発生した圧力を有する作動油(非常油とも言う)で充満し、主要蒸気弁Vが開く条件が揃う。そして、高圧油発生装置70から別系統で供給される作動油(制御油とも言う)によって主要蒸気弁Vが開き、蒸気タービンに蒸気が供給される。
一方、タービンのトリップ時にタービン停止信号が発生すると、第1マスタートリップ弁11および第2マスタートリップ弁21が動作する。このことにより、各マスタートリップ弁11、21の電磁弁11a、21aが無励磁状態となり、第1マスタートリップ弁11および第2マスタートリップ弁21のTポートとBポートとがそれぞれ連通する。このため、主要蒸気弁Vに供給されていた作動油(非常油)が、第1マスタートリップ弁11および第2マスタートリップ弁21のBポートからTポートを介してそれぞれ排出される。このようにして、主要蒸気弁Vの油圧室内の圧力が低下して主要蒸気弁Vが閉じ、蒸気タービンに供給される蒸気が遮断される。なお、第1マスタートリップ弁11と第2マスタートリップ弁21の両方から作動油を排出することができるように構成されているため、第1マスタートリップ弁11および第2マスタートリップ弁21の一方が動作しない場合であっても、主要蒸気弁Vに供給されていた作動油を排出することができ、信頼性の確保を図っている。
第1マスタートリップ弁11のTポートから排出された作動油は、第1個別ドレン配管41および共通ドレン配管40を介して、図2に示すドレンボックス50内の貯留堰51に排出される。また、第2マスタートリップ弁21のTポートから排出された作動油は、第2個別ドレン配管42および共通ドレン配管40を介してドレンボックス50内の貯留槽に排出される。排出される作動油は、高圧油発生装置70で発生する圧力から開放されて、貯留堰51に貯留される。貯留堰51に貯留された作動油の油面が貯留堰51の上端51aに達すると、貯留堰51から作動油が越流する。越流した作動油はドレンボックス50の下部に設けられボックス排出口52から排出されて、高圧油発生装置70に戻される。
作動油が排出されている間、共通ドレン配管40の配管出口40aは、貯留堰51の上端51aより低い位置に配置されているため、貯留堰51に貯留された作動油に浸漬される。このことにより、作動油の排出時に、配管出口40aから共通ドレン配管40内に空気が吸い込まれることを防止できる。このため、第1マスタートリップ弁11内の油路および第2マスタートリップ弁21内の油路に空気が吸い込まれて、油路に充満されていた作動油が空気に置換されることを防止できる。
また、タービンの通常運転を継続しながら第1マスタートリップ弁11の動作試験を行う場合、第1ロックアウト弁12が動作する。このことにより、第1ロックアウト弁12の電磁弁12aが励磁状態となり、第1ロックアウト弁12のPポートとBポートとが連通する。このため、高圧油発生装置70から第1ロックアウト弁12のPポートに供給された油圧は、第1ロックアウト弁12のBポートから第2マスタートリップ弁21のPポートに供給される。そして、第2マスタートリップ弁21のBポートから第2ロックアウト弁22のTポートおよびBポートを介して主要蒸気弁Vに供給される。このようにして、第1マスタートリップ弁11を介することなく、主要蒸気弁Vに油圧を供給することができる。この結果、主要蒸気弁Vを開きながら、第1マスタートリップ弁11を試験的に動作させることができ、第1マスタートリップ弁11の動作確認を行うことができる。
第1マスタートリップ弁11の動作試験中にタービン停止信号が発生した場合には、第2マスタートリップ弁21が動作する。このことにより、第2マスタートリップ弁21の電磁弁21aが無励磁状態となり、第2マスタートリップ弁21のTポートとBポートとが連通する。このため、主要蒸気弁Vに供給されていた作動油が、第2マスタートリップ弁21のBポートからTポートを介して排出される。このようにして、第1マスタートリップ弁11が動作試験中であっても、主要蒸気弁Vを閉じることができる。
第2マスタートリップ弁21のTポートから作動油が排出される場合においても、上述したように、共通ドレン配管40の配管出口40aが、貯留堰51に貯留された作動油に浸漬されるため、配管出口40aから共通ドレン配管40内に空気が吸い込まれることを防止できる。このため、第2マスタートリップ弁21内の油路に空気が吸い込まれて、油路に充満されていた作動油が空気に置換されることを防止できる。
また、タービンの通常運転を継続しながら第2マスタートリップ弁21の動作試験を行う場合、第2ロックアウト弁22が動作する。このことにより、第2ロックアウト弁22の電磁弁22aが励磁状態となり、第2ロックアウト弁22のPポートとBポートとが連通する。このため、高圧油発生装置70から第1マスタートリップ弁11のPポートに供給された油圧は、第1マスタートリップ弁11のBポートから、バイパス配管34を介して第2ロックアウト弁22のPポートに供給される。そして、第2ロックアウト弁22のBポートから主要蒸気弁Vに供給される。このようにして、第2マスタートリップ弁21を介することなく、主要蒸気弁Vに油圧を供給することができる。この結果、主要蒸気弁Vを開きながら、第2マスタートリップ弁21を試験的に動作させることができ、第2マスタートリップ弁21の動作確認を行うことができる。
第2マスタートリップ弁21の動作試験中にタービン停止信号が発生した場合には、第1マスタートリップ弁11が動作する。このことにより、第1マスタートリップ弁11の電磁弁11aが無励磁状態となり、第1マスタートリップ弁11のTポートとBポートとが連通する。このため、主要蒸気弁Vに供給されていた作動油が、第1マスタートリップ弁11のBポートからTポートを介して排出される。このようにして、第2マスタートリップ弁21が動作試験中であっても、主要蒸気弁Vを閉じることができる。
第1マスタートリップ弁11のTポートから作動油が排出される場合においても、上述したように、共通ドレン配管40の配管出口40aが、貯留堰51に貯留された作動油に浸漬されるため、配管出口40aから共通ドレン配管40内に空気が吸い込まれることを防止できる。このため、第1マスタートリップ弁11内の油路に空気が吸い込まれて、油路に充満されていた作動油が空気に置換されることを防止できる。
タービン停止信号が発生した後に蒸気タービンへ蒸気を供給可能な状態にする場合(タービンリセット)、第1マスタートリップ弁11および第2マスタートリップ弁21の電磁弁21aが、それぞれ励磁状態とされ、第1ロックアウト弁12および第2ロックアウト弁22の電磁弁22aが、それぞれ無励磁状態とされる。このことにより、高圧油発生装置70からの作動油は、第1マスタートリップ弁11、第1ロックアウト弁12,第2マスタートリップ弁21および第2ロックアウト弁22を介して主要蒸気弁Vに供給される。このようにして、主要蒸気弁Vを開く条件が揃う。
作動油が排出される際には、上述したように第1マスタートリップ弁11、第1ロックアウト弁12、第2マスタートリップ弁21および第2ロックアウト弁22の油路に空気が吸い込まれることが防止されている。このことにより、タービンリセット後に、各弁11、12、21、22の油路に供給された作動油中に気泡が混入することを防止でき、供給された作動油の圧力が低下することを防止できる。このため、一時的な油圧低下に伴う警報や信号の発生を防止できる。また、タービンリセット後にマスタートリップ弁11、21の動作試験を行う場合においても、動作試験によって、作動油の圧力が低下することを効果的に防止することができる。
このように本実施の形態によれば、第1マスタートリップ弁11、第1ロックアウト弁12、第2マスタートリップ弁21および第2ロックアウト弁22からドレンボックス50に作動油を排出する共通ドレン配管40の配管出口40aが、ドレンボックス50の貯留堰51の内部に設けられるとともに、貯留堰51の上端51aよりも低い位置に配置されている。このことにより、共通ドレン配管40の配管出口40aを、貯留堰51に貯留された作動油に浸漬させることができる。このため、作動油の排出時に、配管出口40aから共通ドレン配管40を介して、第1マスタートリップ弁11および第2マスタートリップ弁21内に空気が吸い込まれることを防止でき、信頼性を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、ドレンボックス50の下部に、貯留堰51から越流する作動油を排出するボックス排出口52が設けられている。このことにより、越流した作動油をドレンボックス50からスムースに排出することができ、ドレンボックス50内に貯留することを防止できる。
また、本実施の形態によれば、第1トリップ装置10と第2トリップ装置20は、マニホールドブロック60内に設けられており、ドレンボックス50は、マニホールドブロック60の下面60aに取り付けられている。このことにより、タービン非常用制御装置1のスペース効率を向上させることができ、設置スペースを低減することができる。また、ドレンボックス50が、マニホールドブロック60の下面60aに取り付けられることにより、ドレンボックス50内に貯留された作動油が、外部に流出することを防止でき、タービン非常用制御装置1の周囲での油の汚損を防止できる。
なお、上述した本実施の形態において、例えば、図3に示すように、ドレンボックス50は、マニホールドブロック60に取り付けられたフランジ53を有していてもよい。このフランジ53は、ボルト54によってマニホールドブロック60に取り付けることができる。この場合、既設のマニホールドブロック60に、ボルト54用の孔を加工することによって、ドレンボックス50を取り付けることができ、既設のタービン非常用制御装置に容易に取り付けることができる。
また、上述した本実施の形態においては、ドレンボックス50の下部に、貯留堰51から越流した作動油を排出するボックス排出口52が設けられている例について説明した。しかしながら、越流した作動油をドレンボックス50から排出することができれば、ボックス排出口52は、ドレンボックス50の下部に配置されることに限られない。
さらに、上述した本実施の形態においては、ドレンボックス50は、マニホールドブロック60の下面60aに取り付けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、共通ドレン配管40の配管出口40aがドレンボックス50の貯留堰51の内部に設けられるとともに貯留堰51の上端51aよりも低い位置に配置することができれば、ドレンボックス50は、マニホールドブロック60の下面60aに取り付けられていなくてもよい。
(第2の実施の形態)
次に、図4および図5を用いて、本発明の第2の実施の形態におけるタービン非常用制御装置について説明する。
図4および図5に示す第2の実施の形態においては、共通ドレン配管の配管出口が、ドレンボックスのボックス排出口よりも低い位置に配置されている点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図3に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図4および図5において、図1乃至図3に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図4に示すように、本実施の形態においては、共通ドレン配管40の配管出口40aが、ドレンボックス50の内部に設けられている。ドレンボックス50は、ドレンボックス50に貯留された作動油を排出するボックス排出口52を有しており、このボックス排出口52は、ドレンボックス50の中間高さ付近に設けられている。そして、共通ドレン配管40の配管出口40aは、ドレンボックス50のボックス排出口52よりも低い位置に配置されている。なお、ドレンボックス50内には、図2に示すような貯留堰51は設けられていない。
より具体的には、共通ドレン配管40は、マニホールドブロック60内に設けられた配管本体部40bと、配管本体部40bより配管出口40aの側に設けられた配管出口側部40cと、を有している。このうち配管出口側部40cは、マニホールドブロック60の下面60aから配管出口40aまで延びている。配管出口40aは、ドレンボックス50の底面から離間しており、配管出口40aから排出される作動油がドレンボックス50内に貯留されるようになっている。一方、配管本体部40bは、マニホールドブロック60の下面60aからマニホールドブロック60の内部に延びており、図1に示す各個別ドレン配管41〜44に連結されている。
配管出口側部40cは、配管本体部40bの断面積よりも大きな断面積を有している。ここでいう断面積とは、共通ドレン配管40が延びる方向に直交する方向における作動油が流れる(あるいは充満され得る)面積を意味する。
本実施の形態において、共通ドレン配管40からドレンボックス50に作動油が排出されると、作動油は高圧油発生装置70で発生する圧力から開放されて、ドレンボックス50内に貯留される。ドレンボックス50内に貯留された作動油の油面は、ボックス排出口52の高さに達すると、ボックス排出口52から排出されて、高圧油発生装置70に戻される。一方、共通ドレン配管40の配管出口40aは、ボックス排出口52よりも低い位置に配置されているため、ドレンボックス50に貯留された作動油に浸漬される。このことにより、作動油の排出時に、配管出口40aから共通ドレン配管40内に空気が吸い込まれることを防止できる。このため、第1マスタートリップ弁11内の油路および第2マスタートリップ弁21内の油路に空気が吸い込まれて、油路に充満されていた作動油が空気に置換されることを防止できる。従って、タービンリセット後に、各弁11、12、21、22の油路に供給された作動油中に気泡が混入することを防止でき、供給された作動油の圧力が低下することを防止できる。
また、図4に示す形態においては、共通ドレン配管40の配管出口側部40cの断面積が、ドレンボックス50のうち配管出口側部40cを除く水平面積よりも小さくなっている。この場合、配管出口側部40c内にドレンボックス50に貯留された作動油が進入し、進入した作動油の油面を、配管出口側部40cの周囲における作動油の油面よりも高くすることができる。このため、配管出口40aから共通ドレン配管40内に空気が吸い込まれることを効果的に防止できる。なお、図4においては、配管出口側部40c内の油面が、マニホールドブロック60の下面60aに達している例を示しており、配管出口側部40c内が作動油で充満されている例が示されている。
このように本実施の形態によれば、第1マスタートリップ弁11、第1ロックアウト弁12、第2マスタートリップ弁21および第2ロックアウト弁22からドレンボックス50に作動油を排出する共通ドレン配管40の配管出口40aが、ドレンボックス50の内部に設けられるとともに、ドレンボックス50のボックス排出口52よりも低い位置に配置されている。このことにより、共通ドレン配管40の配管出口40aを、ドレンボックス50に貯留された作動油に浸漬させることができる。このため、作動油の排出時に、配管出口40aから共通ドレン配管40を介して、第1マスタートリップ弁11および第2マスタートリップ弁21内に空気が吸い込まれることを防止でき、信頼性を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、第1トリップ装置10と第2トリップ装置20は、マニホールドブロック60内に設けられており、ドレンボックス50は、マニホールドブロック60の下面60aに取り付けられている。このことにより、タービン非常用制御装置1のスペース効率を向上させることができ、設置スペースを低減することができる。また、ドレンボックス50が、マニホールドブロック60の下面60aに取り付けられることにより、ドレンボックス50内に貯留された作動油が、外部に流出することを防止でき、タービン非常用制御装置1の周囲での油の汚損を防止できる。
また、本実施の形態によれば、共通ドレン配管40の配管出口側部40cの断面積が、配管本体部40bの断面積よりも大きくなっている。このことにより、配管出口側部40c内に進入して貯留される作動油の量を増大させることができ、配管出口40aが大気に露出されることを効果的に防止できる。
なお、上述した本実施の形態において、例えば、図5に示すように、ドレンボックス50は、マニホールドブロック60に取り付けられたフランジ53を有していてもよい。このフランジ53は、ボルト54によってマニホールドブロック60に取り付けることができる。この場合、既設のマニホールドブロック60に、ボルト54用の孔を加工することによって、ドレンボックス50を取り付けることができ、既設のタービン非常用制御装置に容易に取り付けることができる。
また、上述した本実施の形態においては、ドレンボックス50の中間高さに、ドレンボックス50に貯留された作動油を排出するボックス排出口52が設けられている例について説明した。しかしながら、共通ドレン配管40の配管出口40aを、ドレンボックス50のボックス排出口52よりも低い位置に配置することができれば、ボックス排出口52は、ドレンボックス50の中間高さに配置されることに限られない。
以上述べた実施の形態によれば、油排出時に空気を吸い込むことを防止し、信頼性を向上させることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。