次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態の衛生洗浄装置を設置した水洗大便器全体を示す斜視図である。図2は、衛生洗浄装置の全体構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本発明の実施形態の衛生洗浄装置1は、水洗大便器本体2の上部に配置された便座4の奥側(便座4に着座した使用者の背面側)に内蔵されている。水洗大便器2の奥側上部には、水洗大便器本体2のボウル部2aを洗浄するための洗浄水を貯留する洗浄水タンク2bが設けられている。なお、本実施形態においては、衛生洗浄装置1は、洗浄水タンク2bを有するタンク式の水洗大便器本体2に設置されているが、水道直圧式の水洗大便器に衛生洗浄装置1を設置することもできる。
また、衛生洗浄装置1はノズルアセンブリ6を備えており、このノズルアセンブリ6を、便座4の奥側から着座した使用者の局部下方に進出させることができるようになっている。進出したノズルアセンブリ6の先端部に設けられた噴射口から使用者の局部に向けて洗浄水を噴射することにより、局部の洗浄を行うことができる。このノズルアセンブリ6を駆動するための機構や、ノズルアセンブリ6に局部洗浄用の洗浄水を供給するための機構を備えた機能部9は、便座4の奥側に内蔵されている。さらに、水洗大便器本体2を設置したトイレ室の壁面Wには、操作装置であるリモコン10が設置されている。使用者がこのリモコンを操作することにより、機能部9に制御信号が送信され、ボウル部2aの洗浄や、種々の洗浄モードによる局部洗浄を行うことができる。なお、本実施形態においては、壁面Wに取り付けられたリモコン10のタッチパネル10aを操作することにより、衛生洗浄装置1の種々の機能を使用することができるが、衛生洗浄装置1の操作装置は、便座4の側部等に設けることもできる。
次に、図2を参照して、衛生洗浄装置1に備えられている機能部9の構成を説明する。
図2に示すように、機能部9には、ノズルアセンブリ6を駆動するためのノズル駆動装置12と、噴射口から噴射される洗浄水を水塊状にするための水塊生成装置14と、局部洗浄用の洗浄水を所定温度に加熱する加熱装置である温水ヒータ16と、洗浄水を噴射・停止させるための給水バルブ18と、これらの装置を作動させ、種々の洗浄を実行するための噴射制御装置である制御ユニット20が内蔵されている。
さらに、制御ユニット20には、便座4に内蔵された着座状態検出センサである着座センサ22からの検出信号、及びリモコン10から送信された制御信号も入力される。
ノズル駆動装置12は、制御ユニット20からの制御信号に基づいて、ノズルアセンブリ6を使用者の局部の下方に進出させると共に、局部洗浄後に、後退させるための駆動装置である。ノズルアセンブリ6を進出させた状態において、噴射口から洗浄水を噴射させると、便座4に着座した人体の背面側から前面側に向けて斜め上方に洗浄水が噴射され、局部が洗浄される。また、ノズル駆動装置12は、ノズル前後駆動モータ12a及びノズル左右駆動モータ12bを備えており、これらを制御ユニット20からの制御信号に基づいて作動させることにより、噴射口から噴射された洗浄水の人体への着水点を2つの方向(前後方向、左右方向)に移動させることができる。ノズル駆動装置12の具体的な構成については後述する。
水塊生成装置14は、噴射口から噴射される洗浄水の流速を脈動させることにより、洗浄水を水塊として、この水塊を所定の時間間隔で連続的に人体に着水させるように構成されている。水塊生成装置14はソレノイドバルブ14aを内蔵しており、このソレノイドバルブ14aを制御ユニット20からの制御信号に基づいて作動させることにより、種々の大きさの水塊を種々の時間間隔で形成することができるように構成されている。水塊生成装置14の具体的な構成については後述する。
温水ヒータ16は通電により加熱される電気ヒータであり、洗浄水の噴射時に制御ユニット20からの制御信号に基づいて通電され、供給された水道水を加温しながら噴射する瞬間式熱交換器を使用した加熱装置である。なお、加温した洗浄水を貯留した貯留式の温水ヒータを本発明に採用することもできる。
給水バルブ18は、制御ユニット20からの制御信号に基づいて開閉、及び開度が変更される電磁弁であり、水道から供給された洗浄水の噴射、停止を切り換えると共に、噴射口から噴射される洗浄水の水勢(流速)を変更することができるように構成されている。
制御ユニット20は、リモコン10から送信された制御信号を受信し、これに基づいてノズル駆動装置12、水塊生成装置14、温水ヒータ16、給水バルブ18等を作動させるように構成されている。即ち、制御ユニット20は、リモコン10への操作に基づいて、人体の所定の着水点に向けて洗浄水が噴射されるように、ノズル駆動装置12及び水塊生成装置14を作動させる。制御ユニット20は、具体的には、マイクロプロセッサ、メモリ、インターフェイス回路、及びこれらを作動させるソフトウェア等(以上、図示せず)により構成されている。
着座センサ22は、便座4の内部に配置された荷重センサであり、使用者が便座4に着座しているか否かを検出可能に構成されている。また、本実施形態においては、着座センサ22によって便座4に作用する荷重を検出することにより、使用者が便座4への着座位置を修正しているか否か等を検知することができる。
次に、図3乃至図6を参照して、ノズル駆動装置12の構成を説明する。
図3はノズル駆動装置12の側面断面図であり、図4は一部を破断して示したノズル駆動装置12の上面図である。また、図5はノズル駆動装置12の底面図であり、図6Aはノズルアセンブリ6の先端部を拡大して示した平面断面図であり、図6Bは先端部を拡大して示した側面断面図である。
図3に示すように、ノズル駆動装置12は、ベース部材24と、このベース部材24に取り付けられた保持シリンダ26と、保持シリンダ26内に摺動可能に配置されたノズルアセンブリ6と、ノズルアセンブリ6を前後移動させるノズル前後駆動モータ12aと、噴射口を左右方向に移動させるノズル左右駆動モータ12bと、を有する。
ベース部材24は、便座4に対して、回転軸24aを中心に回動可能に取り付けられた部材である。このベース部材24には、保持シリンダ26が前方斜め下方に向けて固定されている。保持シリンダ26は円筒状の部材であり、内部にはノズルアセンブリ6が進退可能に配置されている。
また、ベース部材24の後端部には、ノズル前後駆動モータ12aが取り付けられている。このノズル前後駆動モータ12aの出力軸には駆動側プーリ28aが取り付けられ、一方、ベース部材24の前端部には従動側プーリ28bが回転可能に取り付けられている(図4)。これら駆動側プーリ28aと従動側プーリ28bの間には、保持シリンダ26と平行に、保持シリンダ26に沿って延びるタイミングベルト28cが巻回されている。これにより、ノズル前後駆動モータ12aを作動させると、駆動側プーリ28aが回転され、タイミングベルト28cが送られる。
ノズルアセンブリ6は、保持シリンダ26内に配置された円柱状の組立体であり、その先端部上面には第1噴射口6a、第2噴射口6bが設けられ、内部には洗浄水を各噴射口に導くための給水流路が形成されている。具体的には、図4に示すように、洗浄水を第1噴射口6aに導くための第1給水流路7a、第2給水流路7b、及び洗浄水を第2噴射口6bに導くための第3給水流路7c、第4給水流路7dが夫々設けられている。本実施形態の衛生洗浄装置1は、洗浄水を供給する給水流路を切り替えることにより、様々な洗浄モードを実行することができるように構成されている。また、ノズルアセンブリ6の基端部側面には、第1乃至第4給水流路に洗浄水供給管(図示せず)を夫々接続するための第1接続部8a、第2接続部8b、第3接続部8c、及び第4接続部8dが夫々設けられている。ここで、第3接続部8cには、水塊生成装置14に接続された洗浄水供給管(図示せず)が接続されるため、第3接続部8cから第3給水流路7cに流入する洗浄水には脈動が与えられている。
また、図4に示すように、ノズルアセンブリ6の後端部側面はタイミングベルト28cに結合されており、ノズル前後駆動モータ12aを駆動することにより、ノズルアセンブリ6を保持シリンダ26から進退させることができる。
保持シリンダ26内で摺動されたノズルアセンブリ6が前方下方に進出すると、その先端部に形成された各噴射口は、便座4に着座した使用者の局部下方に位置するようになる。進出したノズルアセンブリ6に洗浄水が供給されると、着座した使用者の背面側から前面側に向けて、噴射口から斜め上方に洗浄水が噴射され使用者の局部が洗浄される。洗浄水を噴射しながら、ノズル前後駆動モータ12aの正転/逆転を繰り返すことにより、ノズルアセンブリ6を前後方向に所定距離摺動させることができ、噴射された洗浄水の、人体への着水点を前後方向に往復移動させることができる。
次に、図3に示すように、ノズル左右駆動モータ12bは、便座4の本体側に取り付けられており、その出力軸には駆動歯車30aが取り付けられている。一方、ベース部材24の後端部には、駆動歯車30aと係合するように円弧状歯車30b(図5)が設けられている。この円弧状歯車30bは、ベース部材24の回転軸24aを中心とする円弧状に形成されている。このため、ノズル左右駆動モータ12bが作動されると、駆動歯車30aにより円弧状歯車30bが送られ、ベース部材24が回転軸24aを中心に回動される。ノズルアセンブリ6が進出した状態でベース部材24が回動されると、先端部に設けられた各噴射口の位置も、回転軸24aを中心に回動される。ここで、回転軸24aから各噴射口は離間していると共に、ベース部材24が回動する角度は極めて小さいため、各噴射口は、ベース部材24の回動により、着座した使用者の概ね左右方向に移動されるということができる。本明細書において、「左右方向に移動」とは、このような左右方向成分を含む移動を意味するものとする。
次に、図6A、6Bを参照して、ノズルアセンブリ6に設けられた噴射口の構成を説明する。
図6Aに示すように、第1噴射口6aには、第1給水流路7a及び第2給水流路7bが夫々接続されている。また、第1噴射口6aへの流入部には、円環状断面の旋回室32が設けられ、第1、第2給水流路から供給された洗浄水は、夫々旋回室32を介して第1噴射口6aから噴射される。図6Bに示すように、円環状断面の旋回室32の下流側には先細になったテーパ流路32aが設けられており、このテーパ流路32aの先端が円筒形の第1噴射口6aに接続されている。さらに、この第1噴射口6aの下流側には、円筒状のスロート流路36が設けられている。
図6Aに示すように、第2給水流路7bは、旋回室32を形成する円の接線方向に接続された流路であるため、第2給水流路7bから供給された洗浄水は旋回室32内で強い旋回流となってテーパ流路32a内を上昇し、第1噴射口6aから中空円錐状の吐水として噴射される。第1噴射口6aから噴射された中空円錐状の吐水は、スロート流路36においてミスト状にされて噴射される。スロート流路36により、中空円錐状の吐水からミストが生成されるメカニズムについては後述する。一方、第1給水流路7aは、旋回室32を形成する円の半径方向に接続された流路であるため、第1給水流路7aから供給された洗浄水は強い旋回流にはならずにテーパ流路32a内を上昇して第1噴射口6aから噴射される。この際、第1噴射口6aとスロート流路36の間に設けられた空気吸入口32bから、エジェクター効果によって外気が引き込まれ、スロート流路36から噴射される洗浄水は、多数の細かい気泡を含んだ泡沫吐水となる。
一方、図6Aに示すように、第2噴射口6bには、第3給水流路7c及び第4給水流路7dが夫々接続されている。また、第2噴射口6bへの流入部には、円環状断面の旋回室34が設けられ、第3、第4給水流路から供給された洗浄水は、夫々旋回室34を介して第2噴射口6bから噴射される。図6Bに示すように、円環状断面の旋回室34の下流側には先細になったテーパ流路34aが設けられており、このテーパ流路34aの先端が第2噴射口6bに接続されている。さらに、この第2噴射口6bの下流側には、先細の円錐状のスロート流路38が設けられている。
図6Aに示すように、第4給水流路7dは、旋回室34を形成する円の概ね接線方向に接続された流路であるため、第4給水流路7dから供給された洗浄水は旋回室34内で弱い旋回流となってテーパ流路34a内を上昇し、第2噴射口6bから噴射される。この際、第2噴射口6bとスロート流路38の間に設けられた空気吸入口(図示せず)から、エジェクター効果によって外気が引き込まれ、第2噴射口6bから噴射される洗浄水は、多数の細かい気泡を含んだ泡沫吐水となる。一方、第3給水流路7cは、旋回室34を形成する円の半径方向に接続された流路であるため、第3給水流路7cから供給された洗浄水は、旋回流を形成せずにテーパ流路34a内を上昇して第2噴射口6bから噴射される。ここで、第3給水流路7cに供給される洗浄水には、水塊生成装置14により流速に脈動が与えられているため、第2噴射口6bから噴射される洗浄水は、水塊となって人体に着水する。脈動により水塊が形成されるメカニズムについては後述する。
次に、図7及び図8を参照して、機能部9に内蔵されている水塊生成装置14の構成及び動作原理を説明する。図7は、水塊生成装置14に備えられているソレノイドバルブ14aを模式的に示す断面図であり、図8は第2噴射口6bから噴射された洗浄水の状態を模式的に示す図である。
水塊生成装置14は、ノズルアセンブリ6の上流側に設けられており、水道から供給され、流入した洗浄水の流速を所定の周期で変動させ、第2噴射口6bから噴射される洗浄水に脈動を与えるように構成されている。
図7に示すように、水塊生成装置14に備えられたソレノイドバルブ14aは、シリンダ50と、このシリンダ50内に摺動可能に配置されたプランジャ52と、このプランジャ52に取り付けられた逆止弁54と、プランジャ52に所定の付勢力を与える復帰スプリング56及び緩衝スプリング58と、プランジャ52に電磁力を付与する脈動発生コイル60と、を有する。
シリンダ50は円筒形の部材であり、内部にはプランジャ52が摺動可能に配置され、シリンダ50内でプランジャ52が往復振動されるようになっている。シリンダ50の一端に設けられた流入口50aには、水道から供給され、給水バルブ18(図2)等を通過した洗浄水が流入する。シリンダ50他端の流出口50bはノズルアセンブリ6の接続部6c(図4)に接続されており、水塊生成装置14において脈動が与えられた洗浄水がノズルアセンブリ6に供給されるようになっている。
プランジャ52は円筒形の金属部材であり、脈動発生コイル60に励磁電流が流れることにより電磁力が作用して、シリンダ50内で下流側(図7において右側)に引き寄せられるようになっている。また、プランジャ52の下流側には復帰スプリング56が、上流側には緩衝スプリング58が夫々配置され、プランジャ52に所定の付勢力を付与している。これにより、脈動発生コイル60に励磁電流が流れると、プランジャ52は復帰スプリング56の付勢力に抗して下流側に移動し、励磁電流が停止されると、復帰スプリング56の付勢力により上流側に押し戻される。また、緩衝スプリング58は、プランジャ52が上流側に押し戻される際に、シリンダ50の端面にプランジャ52が衝突するのを緩衝している。
一方、プランジャ52の内周には、ダックビル式の逆止弁54が取り付けられている。この逆止弁54により、シリンダ50内における、プランジャ52の下流側から上流側への洗浄水の逆流が抑制される。
脈動発生コイル60は、シリンダ50の周囲を取り囲むように配置されたソレノイドコイルである。脈動発生コイル60に通電されることにより、プランジャ52に電磁力が付与され、プランジャ52は下流側に移動される。本実施形態においては、脈動発生コイル60には所定周波数のパルス状の電流が流され、この電流による電磁力と、復帰スプリング56の付勢力により、プランジャ52はシリンダ50内で往復運動される。
この往復運動により、プランジャ52が下流側へ向けて移動されたときは、プランジャ52の下流側から上流側への逆流が逆止弁54により抑制されているので、シリンダ50の下流側の圧力が、シリンダ50上流側の洗浄水の供給圧力よりも高くなり、シリンダ50から流出する洗浄水の流速が速くなる。逆に、プランジャ52が上流側に押し戻される際には、シリンダ50の下流側の圧力は供給圧力よりも低下し、流出する洗浄水の流速は遅くなるが、プランジャ52の上流側の洗浄水は逆止弁54を通って下流側へ流れることができるので、下流側が負圧となって洗浄水が逆流することはない。このように、プランジャ52により逆止弁54を往復運動させることにより、シリンダ50から流出する洗浄水の流速は所定の周期で変動する脈動流となる。
次に、図8を参照して、ソレノイドバルブ14aにより脈動が与えられた洗浄水により水塊が形成される原理を説明する。
図8は、第2噴射口6bから噴射された洗浄水の状態を模式的に示す図であり、流速が周期的に変化する脈動流の各瞬間における洗浄水の状態を示したものである。各図の上段は第2噴射口6bからの噴射直後の状態を示し、下段は噴射された洗浄水が人体の局部に到達する直前の状態を示している。
図8の(i)欄は、流速が低下している期間(プランジャ52が上流側に押し戻されている期間)に第2噴射口6bから噴射される洗浄水の状態を示したものである。この状態では、流速は低下傾向にあるため、先に噴射された洗浄水aは、後から噴射された洗浄水bよりも噴射速度が速く、人体に到達するまでの間に、先に噴射された洗浄水aが後から噴射された洗浄水bを引き離し、連続的に噴射されている洗浄水が分断された状態で人体に到達する((i)欄下段)。
一方、図8の(ii)欄は、流速が上昇している期間(プランジャ52が上流端から下流側に向けて加速している期間)を示したものである。この状態では、この期間の最初に噴射される洗浄水aの流速は極めて遅く、その後噴射される洗浄水bの流速が次第に高まるため、人体に到達するまでの間に、先に噴射された洗浄水aが後から噴射された洗浄水bに追いつかれ、大きな水塊(水のかたまり、水滴)となった状態で人体に到達する((ii)欄下段)。このように、第2噴射口6bから噴射される洗浄水の流速に脈動を与えることにより、洗浄水の追いつき現象が発生し、洗浄水は水塊となって、所定の時間間隔で連続的に人体に着水する。
なお、追いつき現象により大きな水塊となった洗浄水は、水塊が形成された直後に人体等に着水せず、そのまま飛翔していると、小さな飛沫に分解されてしまう。本実施形態においては、洗浄時に人体の局部が位置していることが想定されている、ノズルアセンブリ6(噴射口)から約6cm離れた点で大きな水塊が形成されるように、水塊生成装置14による脈動が設定されている。また、本明細書において言及されている「水塊の大きさ」は、洗浄時に人体の局部が位置していることが想定される距離における「水塊の大きさ」に関するものであり、この距離以外では、必ずしも水塊が形成されておらず、或いは、異なる大きさの水塊となっている。
また、本実施形態においては、70〜100Hzのパルス状の電圧が脈動発生コイル60に印加され、プランジャ52は、この周波数で往復運動する。このため、本実施形態においては、第2噴射口6bから噴射される洗浄水は、1秒間に70〜100個の水塊として連続的に人体に到達する。ここで、追いつき現象により大きな水塊となった洗浄水が人体に着水するため、水塊にされていない同一流量の洗浄水が連続的に着水した場合よりも、人体の皮膚に与える刺激が強く、また、洗浄水の十分な量感を感じることができるので、使用者には小流量でも十分な洗浄感を与えることができる。また、水塊は、1秒間に70〜100個程度の頻度で連続的に人体に着水するため、使用者は、個々の水塊の着水を明確に感じ取ることができず、概ね連続的に洗浄水が当たっている感覚を受ける。
また、水塊生成装置14によって生成される水塊の大きさ、生成される水塊の時間間隔、及び人体に着水する水塊の速度(流速)は、ソレノイドバルブ14aの脈動発生コイル60に印加する電圧パルスの周波数、振幅、デューティ比、及びシリンダ50への給水圧等を適宜変更することにより設定することができる。また、脈動発生コイル60に印加する電圧パルスのパルス幅を周期的に変化させることにより、生成される水塊の大きさを周期的に変化させることもできる。
なお、本実施形態においては、ソレノイドバルブを使用して脈動流を生成しているが、他の装置により脈動流を発生させることもできる。例えば、1つ又は複数のピストン及びシリンダを備えたピストンポンプ等により洗浄水を周期的に加圧して脈動流を形成することができる。或いは、通水路内で周期的に気泡を発生させ、この気泡により通水抵抗を周期的に変化させることにより、流速を脈動させるバルーンジェット式の流体素子により脈動流を形成することもできる。
次に、図9乃至図27を参照して、本発明の実施形態の衛生洗浄装置1により実行される各洗浄モードを説明する。
図9は、リモコン10のタッチパネル10a上に表示される画面の一例を示す図である。
以下に説明する各洗浄モードは、リモコン10からの制御信号に基づいて、機能部9に内蔵された制御ユニット20が、ノズル駆動装置12、水塊生成装置14、及びノズルアセンブリ6に洗浄水を供給する給水バルブ18を作動させることにより実行される。
図9に示すように、タッチパネル10a上には、大洗浄ボタン62a、小洗浄ボタン62b、乾燥ボタン62c、脱臭ボタン62dが表示されている。大洗浄ボタン62a及び小洗浄ボタン62bは、水洗大便器本体2のボウル部2aに便器洗浄用の洗浄水を流し、ボウル部2aの洗浄を行うためのボタンである。乾燥ボタン62cは、使用者の局部に向けて温風を吹き付け、局部洗浄により濡れた局部を乾燥させるためのボタンである。脱臭ボタン62dは、機能部9に内蔵された脱臭装置(図示せず)を作動させ、ボウル部2a内等の脱臭を行うためのボタンである。
さらに、タッチパネル10a上には、認証ボタン64が表示されている。この認証ボタン64は、衛生洗浄装置1の使用者を特定し、その使用者に対して設定されている衛生洗浄装置1の洗浄水の温度、水勢、着水位置等の各種設定を呼び出すためのボタンである。認証ボタン64により呼び出された各種設定は、認証ボタン64の下側の表示部76に表示される。この表示部76には、各種設定値の他、実行された各洗浄モードのイメージがアイコンで表示され、自己が選択した洗浄モードを一目で認識できるようになっている。また、各使用者に対する各種設定は、タッチパネル10a下端の個人設定ボタン74dを操作することにより行うことができる。これにより、住宅に設置された、複数人が使用する衛生洗浄装置1の各人に対する個別の設定を行うことができる。
また、タッチパネル10a上には、スポット洗浄を行うための、スポットボタン66a、スッキリスポットボタン66b、及びやわらかボタン66cが表示されている。これらのスポット洗浄モードは、洗浄水を噴射する第1噴射口6a又は第2噴射口6bを、人体の局部の下方で静止させた状態で実行される洗浄モードであり、このため、この洗浄モードでは、洗浄水の人体への着水点は実質的に移動しない。上記各ボタンの操作により実行される具体的な洗浄については後述する。
さらに、タッチパネル10a上には、ムーブ洗浄を行うための、前後ボタン68a、水膜ワイドボタン68b、ミストワイドボタン68c、及び旋回ワイドボタン68dが表示されている。これらのムーブ洗浄モードは、洗浄水を噴射する第1噴射口6a又は第2噴射口6bを、ノズル駆動装置12により人体の局部の下方で移動させながら実行される洗浄モードである。このため、ムーブ洗浄モードにおいては、洗浄水の人体への着水点は、着座した人体の前後方向のみ、又は、着座した人体の前後方向及び左右方向に移動する。なお、ノズル駆動装置12による第1噴射口6a及び第2噴射口6bの移動は、厳密には回転軸24a(図5)を中心とする円の半径方向及び円周方向であるが、本明細書においてはこれらを、夫々「前後方向」、「左右方向」と記載する。上記各ボタンの操作により実行される具体的な洗浄については後述する。
また、タッチパネル10a上には、排便促進を行うための、排便促進スポットボタン70a、及びマッサージボタン70bが表示されている。これらの排便促進洗浄モードは、人体の局部に所定の刺激を与え、排便を促進する洗浄モードである。上記各ボタンの操作により実行される具体的な洗浄については後述する。
これら「スポット洗浄」、「ムーブ洗浄」及び「排便促進」の何れかのボタンを使用者が操作することにより、噴射口からの洗浄水の噴射が開始される。
さらに、タッチパネル10a上には、停止操作を行うための、止ボタン72a、及び仕上げ停止ボタン72bが表示されている。止ボタン72aは、衛生洗浄装置1により実行されている乾燥、脱臭、及び各種洗浄モードを停止させるためのボタンである。仕上げ停止ボタン72bは、これを操作すると、予め設定されている所定の停止シーケンスの洗浄モードを実行した後、自動的に洗浄モードが停止する。なお、衛生洗浄装置1による洗浄モードが実行されていない状態で仕上げ停止ボタン72bが操作された場合においても、所定の停止シーケンスが実行され、自動的に停止する。
また、タッチパネル10aの下端には、設定温度ボタン74a、水勢ボタン74b、及び着水位置ボタン74cが表示されている。設定温度ボタン74aは、第1噴射口6a又は第2噴射口6bから噴射される洗浄水の温度を設定するためのボタンであり、水勢ボタン74bは第1噴射口6a又は第2噴射口6bから噴射される洗浄水の水勢(流速)を設定するためのボタンである。また、着水位置ボタン74cは、洗浄水を人体に着水させる基準位置を、前後方向及び左右方向に移動させるためのボタンである。
次に、図10乃至図16を参照して、ムーブ洗浄モードを説明する。ムーブ洗浄モードは、前後ボタン68a、水膜ワイドボタン68b、ミストワイドボタン68c、又は旋回ワイドボタン68dが操作されたときに実行される洗浄モードである。
まず、図10Aを参照して、前後ボタン68aが操作された場合における洗浄を説明する。図10Aにおいては、洗浄水の着水点を「●」印で示している。また、図10Aの「×」印の点は人体局部の中心位置である。
前後ボタン68aが操作されると、制御ユニット20は、水塊生成装置14及びノズル駆動装置12を作動させると共に、供給された水道水が、水塊生成装置14を通って、第3接続部8cからノズルアセンブリ6に流入し、第3給水流路7cを介して第2噴射口6bから洗浄水が噴射されるように水路を切り替える。これにより、第2噴射口6bから噴射された洗浄水は、水塊となって連続的に人体に着水する。
また、図10Aに示すように、前後ボタン68aが操作された場合には、制御ユニット20は、ノズル駆動装置12のノズル前後駆動モータ12aのみを作動させ、ノズルアセンブリ6を前後方向に往復運動させる。これにより、第2噴射口6bは所定の局部基準位置を中心に前後方向に往復運動され、洗浄水の人体への着水点も人体の局部を中心に前後方向に往復運動される。なお、噴射口が局部基準位置に位置する状態では、噴射される洗浄水は、便座4に着座した人体の局部(肛門)が位置することが想定される図10Aの「×」印の点に向けられ、局部の中心が洗浄される。また、着水位置ボタン74cにより着水位置が変更された場合には、噴射口は、変更された局部基準位置を中心に往復運動される。
次に、図10Bを参照して、旋回ワイドボタン68dが操作された場合における洗浄を説明する。
旋回ワイドボタン68dが操作された場合には、洗浄水は、水塊生成装置14、第3接続部8c、第3給水流路7cを通って第2噴射口6bから噴射される。また、図10Bに示すように、旋回ワイドボタン68dが操作された場合には、旋回ワイド洗浄モードが実行され、制御ユニット20は、第2噴射口6bが円形又は楕円形軌道を描いて局部基準位置の周囲を周回するように、ノズル駆動装置12のノズル前後駆動モータ12a及びノズル左右駆動モータ12bを同期して作動させる。これにより、第2噴射口6bから噴射された洗浄水の着水点は、図10Bに「×」印で示す局部の中心の周囲を周回するように移動される。
次に、図10C乃至図14を参照して、水膜ワイドボタン68bが操作された場合に実行される水膜ワイド洗浄モードにおける洗浄を説明する。
図10Cは、衛生洗浄装置1によって洗浄される人体の洗浄領域80を模式的に表したものである。図10Dは、洗浄中における各装置の作動状況を示すタイムチャートである。
図10Cにおいては、着水点を「●」印で、着水点の移動を破線の矢印で示している。また、図10Cの「×」印の点は人体局部の中心位置であり、噴射口が局部基準位置に位置する状態において、洗浄水は「×」印の点に着水する。さらに、図10Cにおいて、上方は便座4に着座した人体の背中側に、下方は人体の前面側(腹部側)に夫々対応し、右下方には左足が、左下方には右足が位置する。また、本明細書において、洗浄領域80のうち、人体の前後方向に延びる、局部を含む領域を中央領域80a、この中央領域80aの両側の領域を側部領域80bという。なお、図10Cにおける着水点の位置、数、大きさ、及び着水点の移動経路は、説明のために模式的に示したものである。
水膜ワイドボタン68bが操作された場合には、制御ユニット20はノズル駆動装置12を制御して、人体の概ね左右方向の着水点の移動を伴いながら、人体の概ね前後方向に着水点を繰り返し往復移動させて洗浄領域内を走査する。即ち、本実施形態においては、図10Cに示すように、人体の概ね前後方向の移動と、この前後方向の移動距離よりも短い概ね左右方向の移動を交互に繰り返すように、ノズル駆動装置12を作動させる。このようにノズル駆動装置12を作動させることにより、洗浄水の着水点は、前後方向、左右方向の2つの方向に移動して、図10Cに示すような移動パターン82で洗浄領域80内を走査する。即ち、図10Cに示すように、着水点は、一定の移動速度で前方から後方に移動した後、僅かに左方向に移動し、更に、後方から前方に移動した後、僅かに左方向に移動する。このような移動を繰り返すことにより、図10Cに示す1回の移動パターン82が形成され、この移動パターン82が繰り返される。なお、図10Cに示す移動パターンでは、前後方向の移動と左右方向の移動が交互に繰り返されているが、前後方向の移動と左右方向の移動を同時に行い、着水点が斜め方向に移動する移動パターンを使用することもできる。このように着水点を前後方向に往復移動させながら、左右方向にも少しずつ移動させることにより、ジグザグの移動パターンが形成される。
また、図10Dに示すように、制御ユニット20は、ノズル駆動装置12の作動と同期するように水塊生成装置14を作動させる。即ち、制御ユニット20は、着水点が側部領域80b内にある期間は水塊生成装置14のソレノイドバルブ14aの駆動周波数(プランジャ52の往復移動の周波数)を低く、中央領域80a内にある期間は駆動周波数を高く設定する。これにより、水塊が着水する時間間隔が中央領域80aと側部領域80bで異なるものとなると共に、洗浄領域80内の中央領域80aに着水する水塊は、側部領域80bに着水する水塊よりも小さくなる。この結果、中央領域80aにおける単位面積あたりの洗浄水の着水量が、側部領域80bにおける着水量よりも多くなる。
なお、図10Dに破線で示すソレノイドバルブ14aの駆動周波数は、第2噴射口6bを静止させた状態で行うスポット洗浄中(スポットボタン66aを操作することにより実行される)における駆動周波数である。ムーブ洗浄モードにおいては、側部領域80bを洗浄している期間のソレノイドバルブ14aの駆動周波数は、スポット洗浄における駆動周波数よりも低く、中央領域80aを洗浄している期間の駆動周波数は、スポット洗浄における駆動周波数よりも高く設定されている。
一方、図10Dに示すように、第2噴射口6bの移動速度、第2噴射口6bから噴射される洗浄水の流量(給水量)、洗浄水の温度(給水温度)、及び洗浄水の流速(水勢)は、常に一定に維持される。なお、第2噴射口6bの移動速度を一定とすることにより、洗浄領域80内における着水点の移動速度も一定となる。
また、図10Dに一点鎖線で示すように、給水バルブ18(図2)の開度を変更することにより、側部領域80bを洗浄している期間の給水量を、中央領域80aを洗浄している期間の給水量よりも少なく設定することもできる。側部領域80bにおける給水量を低下させることにより、ソレノイドバルブ14aの駆動周波数を低下させている側部領域80bにおいても、中央領域80aとほぼ同じ大きさの水塊が形成される。
このように、中央領域80aにおける水塊の着水点の間隔を、側部領域80bにおける水塊の着水点の間隔よりも密にすることにより、中央領域80aにおける着水点の数が、側部領域80bにおける着水点の数よりも多くなる。この結果、単位面積あたりの洗浄水の着水量が、中央領域80aでは側部領域80bよりも多くなり、洗浄したい部分は全てカバーされると同時に、最も洗浄したい部分は確実に洗浄されているという印象を使用者に与えることができ、使用者に満足感を与えることができる。また、着水点の移動速度をほぼ一定にしているので、使用者の予想と異なる位置が洗浄され、使用者に不要な不安感を与えることがない。また、中央領域80aに着水する水塊が小さくされているので、肛門を強い洗浄力で洗浄することができる。一方、側部領域80bは着水点までの距離が長いため、着水する水塊の速度が低下するが、着水する水塊を大きくすることにより使用者に十分な刺激及び量感を与え、側部領域80bに対しても使用者に十分な洗浄感を与えることができる。
次に、図11A及び図11Bを参照して、水膜ワイドボタン68bが操作された場合における別の洗浄パターンを説明する。図11Aは、衛生洗浄装置1によって洗浄される人体の洗浄領域80を模式的に表したものである。図11Bは、洗浄中における各装置の作動状況を示すタイムチャートである。なお、本実施形態の衛生洗浄装置1においては、タッチパネル10a上の個人設定ボタン74d(図9)を操作することにより詳細設定画面(図示せず)が表示され、この画面において、種々の洗浄パターンを「水膜ワイド洗浄」として選択することができる。
図11に示す例では、着水点が中央領域80aにある期間においては、第2噴射口6bの左右方向の移動速度が遅い(図11Bにおいて、移動速度が低下している部分)移動パターン84が設定されている。第2噴射口6bをこの移動パターン84で移動させることにより、図11Aに示すように、中央領域80aでは着水点の前後方向移動が、側部領域80bよりも密に(往復回数が多く)行われるので、中央領域80aにおける水塊の着水点の間隔が、側部領域80bにおける水塊の着水点の間隔よりも密になる。この結果、中央領域80aにおける洗浄水の着水点の密度が、側部領域80bにおける着水点の密度よりも高くなり、人体の局部を含む中央領域80aの洗浄力が、より強くなる。或いは、着水点を前後方向に移動させるのと同時に、着水点を左右方向にも移動させることにより、着水点を斜め方向に移動させる移動パターンを採用した場合には、中央領域80aにおいて左右方向の移動速度を低下させる。これにより、中央領域80aにおける着水点の往復回数が多くなり、中央領域80aにおける洗浄力を高くすることができる。
また、図11Aに示す例では、中央領域80aにおけるソレノイドバルブ14aの駆動周波数が、側部領域80bにおける駆動周波数よりも高く設定されているが、変形例として、ソレノイドバルブ14aの駆動周波数を一定に維持し、水塊の大きさを、中央領域80aと側部領域80bでほぼ一定にすることもできる。ソレノイドバルブ14aをこのように作動させた場合においても、中央領域80aにおける第2噴射口6bの1回の左右方向の移動距離を短くすることにより、中央領域80aにおける洗浄水の着水点の密度が、側部領域80bにおける着水点の密度よりも高くなり、この結果、中央領域80aにおける単位面積あたりの洗浄水の着水量を、側部領域80bにおける着水量よりも多くすることができる。
次に、図12を参照して、水膜ワイドボタン68bが操作された場合におけるさらに別の洗浄パターンを説明する。図12は、衛生洗浄装置1によって洗浄される人体の洗浄領域80を模式的に表したものである。
図12に示す例では、制御ユニット20は、中央領域80aにおける着水範囲が側部領域80bにおける着水範囲よりも前後方向に長くなるように、ノズル駆動装置12を作動させている。即ち、図12に示すように、着水点は、人体の概ね前後方向の着水点の移動と、この前後方向の移動距離よりも短い、人体の概ね左右方向の着水点の移動を交互に繰り返す移動パターンで移動されているが、ノズル駆動装置12は、中央領域80aにおける前後方向の移動距離が、側部領域80bにおける前後方向の移動距離よりも長くなるように作動される。
また、側部領域80bにおける着水範囲は、中央領域80aにおける着水範囲よりも前後方向に短くなるように設定されているが、衛生洗浄装置1の設計時に人体の肛門が位置すると想定している人体局部の中心位置(図12における「×」印の位置)よりも前方まで延びている。即ち、側部領域80bにおける着水範囲は、局部位置を通る左右方向の直線(図12における一点鎖線)よりも前側まで延びている。
側部領域80bの前方部分(例えば、図12に楕円で示す部分)は、この領域に洗浄水が着水すると、使用者によっては、局部洗浄とは無関係な位置に洗浄水がかかって脚が濡れてしまった、と感じる場合がある。このため、側部領域80bの前方部分を着水範囲から除外することが、使用者に好まれる場合がある。しかしながら、側部領域80bにおける着水範囲が、局部位置を通る左右方向の直線よりも前側まで延びていないと、洗浄すべき部分が十分に洗浄されていないのではないか、という不安感を使用者に与えてしまう。このため、側部領域80bにおいても、肛門位置よりも前側まで着水範囲が延びていることが好ましい。
また、図12においては、着水範囲の後端部における着水点の左右方向の移動距離が、中央領域80aと側部領域80bでほぼ同一にされているが、中央領域80aにおける左右方向の着水点の移動距離が、側部領域80bにおける左右方向の移動距離よりも短くなるように、移動パターンを設定することもできる。これにより、中央領域80aにおける着水点の前後方向の往復回数が多くなり、中央領域80aにおける洗浄水の着水点の密度を、側部領域80bにおける着水点の密度よりも高くすることができる。この結果、使用者には、人体の局部を含む中央領域80aが十分に洗浄されているという安心感が与えられる。
さらに、着水点を前後方向に移動させると同時に、左右方向にも移動させることにより、図12に示すように、前後方向の移動が、斜め前方又は斜め後方への移動となるように移動パターンを設定し、これにより、逆三角形状(人体の前面側が尖った三角形)の移動パターンを形成することもできる。このように、逆三角形状の移動パターンにより洗浄領域内を走査することにより、少ない往復回数で洗浄領域を走査することが可能になり、中央領域に対する洗浄頻度を増加させることができ、中央領域に対する十分な洗浄感を与えることができる。なお、図12においては、中央領域80aにおける逆三角形状の移動パターンは1つのみであるが、中央領域80aに複数個の逆三角形状の移動パターンが形成されるように移動パターンを設定することもできる。或いは、中央領域80aにおいて、1つ又は複数の逆台形状(人体の前面側が細くなった台形)の移動パターンが形成されるように移動パターンを設定することもできる。
また、図12においては、着水点を示す「●」印が省略されているが、図12に示す移動パターンにおいても、第2噴射口から噴射される洗浄水が水塊となって所定の時間間隔で連続的に人体に着水するように、水塊生成装置14を作動させることが好ましい。また、単位面積あたりの洗浄水の着水量が、中央領域80aでは側部領域80bよりも多くなるように、水塊の大きさ、時間間隔、及び/又は着水密度を設定しておくことが望ましい。
次に、図13A、図13Bを参照して、水膜ワイドボタン68bが操作された場合におけるさらに別の洗浄パターンを説明する。図13Aは、衛生洗浄装置1によって洗浄される人体の洗浄領域80を模式的に表したものであり、図13Bは、洗浄中における各装置の作動状況を示すタイムチャートである。
図13Aに示す例では、制御ユニット20は、洗浄領域80のうち、後方側の領域(局部位置よりも後ろ側の領域)における単位面積あたりの着水量が、前方側の領域(局部位置よりも前側の領域)における単位面積あたりの着水量よりも多くなるようにノズル駆動装置12を作動させている。
即ち、図13Aに示す例では、ノズル駆動装置12は、人体の概ね前後方向の移動と、この前後方向の移動距離よりも短い、人体の概ね左右方向の移動を交互に繰り返すことにより、洗浄領域80内を走査する移動パターン88で着水点を移動させている。さらに、図13Bに示すように、噴射制御装置12は、洗浄領域80の後方側端部88aにおける左右方向の移動速度を低下させる(図13Bにおいて、噴射口の移動速度が低下している部分)ことにより、洗浄領域80の後方側端部88aで左右方向に着水点が移動される期間に噴射される洗浄水の量を、洗浄領域80の前方側端部88bで左右方向に着水点が移動される期間に噴射される洗浄水の量よりも多くしている。
或いは、図13Bに破線で示すように、洗浄領域80の後方側の領域で噴射される洗浄水の流量が増加するように給水バルブ18(図2)を制御して、後方側の領域における単位面積あたりの着水量を、前方側の領域における単位面積あたりの着水量よりも多くすることもできる。また、移動パターン88の後方側端部88aにおける左右方向の移動距離を前方側端部88bよりも長くしたり、後方側端部88aにおける左右方向の移動速度を低下させることにより、洗浄領域80の後方側の領域に噴射される洗浄水の量を、前方側の領域に噴射される洗浄水の量よりも多くすることもできる。或いは、着水点の前後方向の移動速度をほぼ一定とし、洗浄領域80の後方側端部88aにおける左右方向の移動速度を前後方向の移動速度よりも遅くすることにより、浄領域80の後方側の領域に噴射される洗浄水の量を、前方側の領域に噴射される洗浄水の量よりも多くすることもできる。
ここで、着座した人体の背面側から前面側に向けて斜め上方に噴射され、洗浄領域80の後方側の領域に着水した洗浄水は、その後、洗浄領域80を前方側へ流れながら局部付近に水膜88cを形成する。これにより、水膜88cとなった洗浄水は、人体局部に付着した汚物を溶かし、局部から流れ落ち易い状態にする。これに対して、洗浄領域80の前方側の領域に着水した洗浄水は、局部付近に水膜を形成することなく流れ落ちる。このため、洗浄領域80の後方側の領域に着水する洗浄水は、前方側の領域に着水する洗浄水よりも高い洗浄効果を発揮する。図13Aに示す移動パターンでは、洗浄領域80の後方側の領域に噴射される洗浄水の量が、前方側の領域に噴射される洗浄水の量よりも多くされているので、少ない水量でも高い洗浄効果を発揮することができる。
次に、図14を参照して、水膜ワイドボタン68bが操作された場合におけるさらに別の洗浄パターンを説明する。図14は、衛生洗浄装置1によって洗浄される人体の洗浄領域80を模式的に表したものである。
図14に示す例においても、制御ユニット20は、洗浄領域80のうち、後方側の領域(局部位置よりも後ろ側の領域)における単位面積あたりの着水量が、前方側の領域(局部位置よりも前側の領域)における単位面積あたりの着水量よりも多くなるようにノズル駆動装置12を作動させている。
図14に示す例においも、ノズル駆動装置12は、人体の概ね前後方向の移動と、この前後方向の移動距離よりも短い、人体の概ね左右方向の移動を交互に繰り返すことにより、洗浄領域80内を走査する移動パターン90で着水点を移動させている。ここで、図14に示す例では、中央領域80aにおける左右方向の移動距離が、側部領域80bにおける左右方向の移動距離よりも長くされている。即ち、中央領域80aの後方側端部90aに着水した洗浄水は、人体の局部付近に水膜90cを形成するが、側部領域80bの後方側端部90bに着水した洗浄水による水膜90cは、人体の局部付近を通らずに流れ落ちてしまう。このため、図14に示す例では、中央領域80aの後方側端部90bにおける着水点の左右方向の移動距離を長くして、人体の局部付近に水膜を形成することができる洗浄水の割合を増加させている。一方、側部領域80bにおいては、後方側端部90b及び前方側端部90dにおける着水点の左右方向の移動距離を短くすると共に、前後方向の移動と同時に左右方向にも着水点を移動させ、三角形ないし細長い台形状の移動パターンを形成している。これにより、少ない洗浄水量で、人体の局部付近に効率的に水膜90cを形成し、効果的な洗浄を行うことを可能としている。
また、図14においては、後方側端部及び前方側端部における着水点の左右方向の移動距離はほぼ同一であるが、後方側端部における左右方向の移動距離が、前方側端部における左右方向の移動距離よりも長くなるように移動パターンを形成することもできる。
次に、図15及び図16を参照して、ミストワイドボタン68cが操作された場合における洗浄パターンを説明する。図15は、噴射された洗浄水がミストにされる原理を説明するための図である。図16Aは、衛生洗浄装置1によって洗浄される人体の洗浄領域80を模式的に表したものである。図16Bは、洗浄中における各装置の作動状況を示すタイムチャートである。
ミストワイドボタン68cが操作されると、制御ユニット20は、ノズル駆動装置12を作動させると共に、供給された水道水が、水塊生成装置14を迂回して第2接続部8bからノズルアセンブリ6に流入し、第2給水流路7bを介して第1噴射口6aから洗浄水が噴射されるように水路を切り替える。これにより、第1噴射口6aから噴射された洗浄水は、スロート流路36によってミスト状にされて人体に着水する。なお、洗浄水は、水塊生成装置14を迂回して供給されるので、脈動を与えられることなく第2給水流路7bに供給される。
第2給水流路7bに供給された洗浄水は、図15に示す旋回室32に流入し、ここで強い旋回流となって第1噴射口6aから噴射される。第1噴射口6aから噴射される洗浄水は旋回流であるため、中央部に中空部分を有する液膜として中空円錐状になる。この中空円錐状の洗浄水はスロート流路36に流入し、旋回力を維持しつつスロート流路36の内壁面に沿って流れ、スロート流路36の出口に向かう。即ち、スロート流路36を通過する洗浄水は、その内壁面に付着するように流れて内壁面からの摩擦力による抵抗を受け、洗浄水の流速はスロート流路36の出口に向かうにつれて遅くなる。このため、図15に示すように、スロート流路36の内壁面に付着している液膜の厚さは、その出口に向かうにつれて厚くなる。
一方、スロート流路36内を流れる洗浄水の流速は、境界層となる内壁面の近傍よりも、中心部の方が速くなる。このため、液膜の内部には、図15に矢印A1として示す液膜を横断する方向の渦流が発生する。さらに、スロート流路36の出口端には、下流側に向けて流路が拡大するテーパ部36aが形成されており、洗浄水がこのテーパ部36aに沿って流れることにより、液膜の内部には、より渦流が発生しやすくなる。このように渦流を伴ってスロート流路36の出口から噴射された洗浄水は、スロート流路36から出た直後は中空円錐状の形態をなしているが、所定距離離れた位置において粒化水流92に遷移する。
具体的には、スロート流路36の出口から噴射された中空円錐状の洗浄水の内部には、液膜を横断する方向に渦流が発生しているため、出口からある程度離れた位置で、隣接する渦流同士の間に亀裂が生じる。この亀裂により中空円錐状の洗浄水は、ミスト状の洗浄水の粒に破砕(ホロコーン破砕)され、粒化水流92に遷移する。このように、ノズルアセンブリ6に設けられた旋回室32及びスロート流路36は、第1噴射口6aから噴射される洗浄水を粒状(ミスト状)にするホロコーン破砕式のミスト生成装置として機能する。また、中空円錐状の洗浄水の中空部分は、外側の圧力よりも低くなっており、これによりスロート流路36から出た中空円錐状の洗浄水の拡径が抑制され、噴射された洗浄水は、所定直径の概ね円形の着水範囲に全体に広がる粒状となって人体に着水する。また、中空円錐状の洗浄水は、粒化水流92に遷移する際、概ね円形の範囲全体にほぼ均一に分布するようになり、人体に着水する洗浄水のミストは、中実の円形に分布する。
次に、図16A、図16Bを参照して、ミストワイドボタン68c(図9)が操作された場合に実行されるミスト洗浄モードを説明する。
図16Aに示すように、ミスト洗浄モードにおいては、第1噴射口6aから噴射され、ミスト状にされた洗浄水は、スポットボタン66aを操作することにより実行されるスポット洗浄モードよりも広い所定のほぼ円形の着水範囲93に着水する。また、ミスト洗浄モードにおいて制御ユニット20は、第1噴射口6aから噴射される洗浄水の流量及び着水範囲93をほぼ一定に維持しながら、着水範囲93の中心点Oが、人体局部の中心位置(図16Aの「×」印の点)の周囲を、図16Aに破線で示す円弧状の軌跡を描いて移動するように、ノズル駆動装置12を作動させる。即ち、制御ユニット20は、ノズル駆動装置12のノズル前後駆動モータ12a及びノズル左右駆動モータ12bを同期して作動させ、ノズルアセンブリ6の第1噴射口6aが円弧状の軌跡を描いて移動するように、第1噴射口6aを前後方向及び左右方向の2方向に移動させる。この際、ノズル駆動装置12は、円弧状の軌跡を描いて移動する着水範囲93が常に所定の固定点を含むようにノズルアセンブリ6を駆動する。なお、着水範囲93の中心点が楕円弧状の軌跡を描いて移動するように、本発明を構成することもできる。
上記所定の固定点は、衛生洗浄装置1の設計上、便座4に着座した人体の局部の中心(図16Aの「×」印の点)が位置することが想定されている点である。このように、移動する着水範囲93には常に人体の局部位置が含まれているため、ミスト洗浄を行っている使用者の局部には、洗浄中、常にミスト状の洗浄水が着水しており、使用者には、洗浄すべき局部が洗浄されているという安心感が与えられる。逆に、局部が着水範囲93から外れると、使用者は、洗浄すべき部分に着水していないという不安感を覚え、局部に着水するように着座位置を修正する。この修正後にも着水範囲93が移動して局部から外れると、使用者は、さらに着座位置を修正する必要を感じてしまい、落ち着いて洗浄できないという苛立ちを使用者に与えてしまうことになる。
また、ミスト洗浄モードにおいては、着水範囲93が局部位置を含む所定の広さを有する領域を常に含みながら移動するようにノズルアセンブリ6を駆動するのが良い。これにより、使用者の局部に確実に洗浄水を着水させることができる。
また、図16Bに示すように、噴射制御装置12は、第1噴射口6aの移動速度が一定となるように、ノズルアセンブリ6を駆動する。即ち、噴射制御装置12は、第1噴射口6aが局部基準位置を中心とする所定の円周上をほぼ一定の速度で移動するようにノズル前後駆動モータ12a及びノズル左右駆動モータ12bを作動させる。同様に、制御ユニット20は、第1噴射口6aから噴射される洗浄水の流量及び水勢(流速)もほぼ一定となるように給水バルブ18を制御する。これにより、第1噴射口6aから噴射される洗浄水の着水範囲も、ほぼ一定にされる。これに対して、制御ユニット20は、第1噴射口6aから噴射される洗浄水の温度が変動するように温水ヒータ16を作動させる。ここで、温水ヒータ16は、ミスト洗浄モードにおいて噴射される洗浄水を、スポット洗浄モードにおいて噴射される洗浄水よりも強く加熱して、高い温度にするように作動される。温水ヒータ16は、このように高い温度に設定された温度を中心として、洗浄水の温度を変動させるように加熱量を変動させると共に、洗浄水の温度の変動周期、及び変動振幅はランダムに変化される。
ミスト洗浄モードにおいては、噴射される洗浄水が細かいミスト状にされているため、着水により使用者に与えられる刺激がスポット洗浄モード等よりも少なくなる。このため、局部が十分に洗浄されていないのではないか、という不安感を使用者に与える場合がある。そこで、噴射される洗浄水の温度を高く設定することにより、使用者に与える刺激を強くして、使用者に十分な洗浄感を与えている。また、人間には、同一の刺激が継続すると、その刺激に慣れてしまい、刺激を感じにくくなる「順化」という特性がある。そこで、洗浄水の温度をランダムに変化させることにより「順化」を抑制して、使用者に十分な洗浄感を与えている。
なお、本実施形態においては、ミスト洗浄モードは肛門の洗浄に使用されているが、ミスト洗浄モードを女性局部のビデ洗浄に使用することもできる。この場合においては、上記の説明における「局部」は「女性局部」を意味するものとする。
次に、図17及び図18を参照して、スポット洗浄モードを説明する。スポット洗浄モードは、スポットボタン66a、スッキリスポットボタン66b又はやわらかボタン66cが操作されたときに実行される洗浄モードである。
まず、図17を参照して、スポットボタン66aが操作された場合における洗浄を説明する。図17においては、洗浄水の着水点を「●」印で示し、人体局部(肛門)の中心位置を「×」印で示している。
スポットボタン66aが操作されると、制御ユニット20は、スポット洗浄モードのうちの固定スポット洗浄モードを実行する。固定スポット洗浄モードにおいて、制御ユニット20は、水塊生成装置14及びノズル駆動装置12を作動させると共に、供給された水道水が、水塊生成装置14を通って、第3接続部8cからノズルアセンブリ6に流入し、第3給水流路7cを介して第2噴射口6bから洗浄水が噴射されるように水路を切り替える。これにより、第2噴射口6bから噴射された洗浄水は、水塊となって連続的に人体に着水する。
また、図17に示すように、スポットボタン66aが操作された場合には、制御ユニット20は、ノズル駆動装置12により、第2噴射口6bを局部基準位置に移動させる。これにより、第2噴射口6bは局部基準位置に静止した状態で洗浄水を噴射する。上記のように、噴射口が局部基準位置に位置する状態では、噴射される洗浄水は、便座4に着座した人体の局部(肛門)が位置することが想定される図17の「×」印の点に向けられ、局部の中心が洗浄される。
一方、やわらかボタン66cが操作されると、制御ユニット20は、ノズル駆動装置12を作動させると共に、供給された水道水が、水塊生成装置14を迂回して、第4接続部8dからノズルアセンブリ6に流入し、第4給水流路7dを介して第2噴射口6bから洗浄水が噴射されるように水路を切り替える。これにより、第2噴射口6bから噴射される洗浄水は、エジェクター効果によって外気を引き込み、多数の細かい気泡を含んだ泡沫吐水となる。
また、やわらかボタン66cが操作された場合には、制御ユニット20は、ノズル駆動装置12により、第2噴射口6bを局部基準位置に移動させる。これにより、第2噴射口6bは局部基準位置に静止した状態で泡沫を含んだ洗浄水を噴射し、局部の中心が洗浄される。泡沫を含んだ洗浄水は、着水したとき人体に与える刺激が少なく、使用者にやわらかな印象を与える。
次に、図18を参照して、スッキリスポットボタン66bが操作された場合における洗浄を説明する。図18においては、洗浄水の着水点の移動を線で示し、人体局部の中心位置を「×」印で示している。また、水塊の着水点を示す「●」印は省略されている。
スッキリスポットボタン66bが操作されると、制御ユニット20は、スポット洗浄モードのうちの振動スポット洗浄モードを実行する。振動スポット洗浄モードにおいて、制御ユニット20は、水塊生成装置14及びノズル駆動装置12を作動させると共に、供給された水道水が、水塊生成装置14を通って、第3接続部8cからノズルアセンブリ6に流入し、第3給水流路7cを介して第2噴射口6bから洗浄水が噴射されるように水路を切り替える。これにより、第2噴射口6bから噴射された洗浄水は、水塊となって連続的に人体に着水する。
また、図18に示すように、スッキリスポットボタン66bが操作された場合には、制御ユニット20は、第2噴射口6bが局部基準位置近傍で往復移動されるように、ノズル駆動装置12を作動させる。これにより、振動スポット洗浄モードにおいては、ムーブ洗浄モードよりも短いストロークで着水点が往復移動される。具体的には、振動スポット洗浄モードにおいては、第2噴射口6bは、短いストロークで前後方向に往復移動されながら、左右方向にも少しずつ移動されるジグザグの移動パターンを繰り返す。ここで、水膜ワイドボタン68bが操作された際の洗浄領域(着水範囲)は、着座した人体の前後方向に約30mm、左右方向に約20mmであるのに対し、スッキリスポットボタン66bが操作された場合に洗浄されるスポット洗浄領域94は、着座した人体の前後方向に約2〜3mm、左右方向に約2〜3mmである。このように、振動スポット洗浄モードにおける着水点の移動ストロークは、前後方向においても、左右方向においてもムーブ洗浄モードよりも短く設定されている。
本実施形態においては、制御ユニット20は、人体の概ね左右方向の着水点の移動を伴いながら、人体の概ね前後方向に着水点が繰り返し往復移動される移動パターンで、着水点がスポット洗浄領域内を走査するようにノズル駆動装置12を作動させる。また、本実施形態においては、スポット洗浄領域は、固定スポット洗浄モードにおける着水点を略中心とする略正方形の領域として設定されている。或いは、スポット洗浄領域を、固定スポット洗浄モードにおける着水点を略中心とする前後方向に長い略長方形に設定することもできる。
なお、前後方向のみに着水点が往復移動されるように、振動スポット洗浄モードを設定することもできる。
ここで、スポットボタン66aを操作することにより実行される固定スポット洗浄モードは、噴射口を局部基準位置に静止させた状態で、洗浄水を局部に向けて噴射する洗浄モードである。この固定スポット洗浄モードは着水点が移動しないため、長時間局部の中心位置に着水させていると、着水した洗浄水の一部が肛門から直腸内に逆流してしまい、使用者が新たな便意を催したり、使用者に残便感を与えてしまう場合がある。この現象は、使用者が排便後にリラックスして肛門括約筋を緩めた際、特に生じやすく、これを極めて不快に感じる使用者もある。これに対して、スッキリスポットボタン66bを操作することにより実行される振動スポット洗浄モードは、局部基準位置近傍において噴射口を微小なストロークで往復移動させながら洗浄水を噴射するものであり、着水点は局部の中心位置近傍で常に移動している。このような洗浄状態では、使用者には、固定スポット洗浄モードと殆ど区別することができない洗浄感が与えられるので、使用者に局部が十分に洗浄されているという感覚を与えることができると共に、洗浄水の直腸への逆流を抑制することができ、使用者に不快な残便感を与えにくい。
次に、図19A及び19Bを参照して、洗浄モードの切り替え時において実行される移行モードを説明する。
図19Aは、一例として、固定スポット洗浄モードから、ムーブ洗浄モードの1つである旋回ワイド洗浄モードに移行する際の着水点を示す図である。図19Bは、移行モードにおける各装置の作動状況を示すタイムチャートである。
図19Aに示すように、固定スポット洗浄モードの実行中において、旋回ワイドボタン68dが操作されると、着水点は、即座に旋回ワイド洗浄モード(図10B)における楕円形の軌道に移行するのではなく、前後方向に長い細長の楕円から螺旋形を描きながら少しずつ楕円の軌道を左右方向に拡張し、最終的に旋回ワイド洗浄モードにおける楕円形の軌道に到達する。ここで、本明細書においては、ムーブ洗浄モードのうち、着水点が人体の概ね左右方向にも移動する洗浄モードを「ワイドムーブ洗浄モード」と呼んでいる。即ち、制御ユニット20は、ワイドムーブ洗浄モードである旋回ワイド洗浄モード開始後、着水範囲が段階的に左右方向に拡張されるようにノズル駆動装置12を作動させる。
図19Bは、固定スポット洗浄モードから旋回ワイド洗浄モードへの移行時における各装置の作動状況を示すタイムチャートである。
図19Bの時刻t1において旋回ワイドボタン68dが操作されると、制御ユニット20は、温水ヒータ16に制御信号を送り、噴射される洗浄水の温度を上昇させる。また、制御ユニット20は、給水バルブ18に制御信号を送り、その開度を小さくすることにより、噴射される洗浄水の水勢(流速)を低下させる。このように、ワイドムーブ洗浄モード(旋回ワイド洗浄モード)を開始する際に、第2噴射口6bから噴射される洗浄水の流速は、固定スポット洗浄モードにおける洗浄水の流速よりも低くする。制御ユニット20は、旋回ワイド洗浄モードへの所定の移行条件が満足されるまで、この状態を維持する。本実施形態においては、移行条件として、使用者が洗浄モードを切り替える操作を行った後の着座センサ22(図2)の検出信号の変化(着座状態の変化)、及び切り替え操作からの所定時間の経過が設定されている。
着座している使用者が便座4の上で着座位置を変更すると、着座センサ22がこれに反応し、検出信号が変化する。制御ユニット20は、このような検出信号の変化が検知されると、移行条件が満足されたと判断して、旋回ワイド洗浄モードへ移行する。また、制御ユニット20は、旋回ワイドボタン68dが操作された後、4秒経過した場合にも、移行条件が満足されたと判断して、旋回ワイド洗浄モードへ移行して、着水点の移動を開始させる。即ち、使用者が旋回ワイドボタン68dを操作した後、適正な位置に洗浄水が着水するように着座位置を微修正していれば、変更後の洗浄モードを開始する準備ができていると考えられるので、洗浄モードを変更しても使用者に違和感を与えることはない。或いは、旋回ワイドボタン68dが操作された後、4秒経過した場合にも、変更後の洗浄モードを開始する準備ができていると考えられるので、洗浄モードを変更しても使用者に違和感を与えることはない。
図19Bの時刻t2において移行条件が満足されると、制御ユニット20は、ノズル駆動装置12に信号を送り、ノズルアセンブリ6の駆動を開始する。この際、ノズルアセンブリ6の第2噴射口6bは、局部基準位置を基点として、段階的に人体の左右方向に移動範囲を拡張し、これにより、図19Aに示すように、着水範囲も左右方向に段階的に拡張される。さらに、制御ユニット20は給水バルブ18に制御信号を送り、給水バルブ18の開度を段階的に大きくする。これにより、着水範囲の拡張と共に、第2噴射口6bから噴射される洗浄水の水勢(流速)が強くなる。なお、本実施形態においては、給水バルブ18の開度を変更することにより噴射口から噴射される洗浄水の流速を変化させているので、給水バルブ18は流速変更装置として機能している。衛生洗浄装置が、洗浄水を加圧するポンプを備えている場合には、これを流速変更装置として利用することもできる。
このように、局部基準位置を基点としてワイドムーブ洗浄モードを開始することにより、使用者は、開始されるムーブ洗浄がどの位置を中心に実行されるものであるかを容易に認識することができる。これにより、使用者は便座4への着座位置を微修正したり、着水位置ボタン74cを使用して局部基準位置を適正な位置に修正することができる。また、着水範囲を左右方向に段階的に拡張させているため、洗浄水が局部から離れた位置にいきなり着水して、着座位置がずれていると勘違いしたり、洗浄したくない位置が濡れてしまったという不快感を使用者に与えることがない。また、着水範囲が拡張されると、人体の局部の中心に着水する着水量は減少する。しかしながら、着水範囲の拡張と共に洗浄水の温度を上昇させ、洗浄水の流速を速くして、使用者に与える刺激を増大させることにより、着水量の減少による洗浄不足感を緩和することができる。
また、図19に示す例では、洗浄モードを固定スポット洗浄モードからワイドムーブ洗浄モード(旋回ワイド洗浄モード)に切り替えていたが、第1のワイドムーブ洗浄モードから第2のワイドムーブ洗浄モードへ、例えば、旋回ワイド洗浄モードから水膜ワイド洗浄モードに切り替えた場合においても、同様の移行モードが実行される。即ち、旋回ワイド洗浄モードの実行中、水膜ワイドボタン68bが操作されると、移行モードが実行され、ノズル駆動装置12は、第2噴射口6bを局部基準位置に移動させ、固定スポット洗浄モードを所定期間実行する。この状態において上記の移行条件が満足されると、ノズル駆動装置12は、ワイドムーブ洗浄モードを開始して、着水点の移動を開始させる。また、水膜ワイド洗浄モードを開始する場合においても、着水点の移動パターンが繰り返される毎に左右方向に着水範囲が拡張され、最終的に所定の移動パターン(例えば、図10C)に到達する。また、本実施形態においては、固定スポット洗浄モードにおいて噴射口から噴射される洗浄水の流速として高流速及び低流速の2段階が設定されている。ここで、「スポットボタン66a」を操作することにより実行される固定スポット洗浄モードにおいては高流速により洗浄水が噴射される。一方、移行モードにおいて、第1のワイドムーブ洗浄モードと第2のワイドムーブ洗浄モードの間で経由する固定スポット洗浄モードは、低流速により洗浄水が噴射される。
また、図19に示す例では、噴射される洗浄水の流速は、着水範囲の拡張と共に速くなり、洗浄モードの移行が完了した後は一定となっているが、1回の移動パターンの中で流速を変化させることもできる。例えば、噴射口の位置が局部基準位置から人体の左右方向に離れている時は、近いときよりも速い流速で洗浄水を噴射しても良い。これにより、着水点が局部から左右方向に離れるほど水勢が強くなるので、感覚の鈍い側部領域に対しても十分な洗浄感を与えることができる。
さらに、洗浄モードがミスト洗浄モード(図16)に切り替えられた場合においても、移行モードを実行した後、ミスト洗浄モードを開始することが望ましい。また、振動スポット洗浄モード(図18)においても第2噴射口6bは左右方向にも移動されるので、振動スポット洗浄モードもワイドムーブ洗浄モードの1つということができる。しかしながら、振動スポット洗浄モードは、他のワイドムーブ洗浄モードよりも短いストロークで着水点が往復移動される洗浄モードであるため、噴射口を局部基準位置に移動させて固定スポット洗浄モードを経由することなく、直接、開始させたとしても、使用者に強い違和感を与えることはない。このため、他のワイドムーブ洗浄モードから振動スポット洗浄モードに移行する際には、必ずしも固定スポット洗浄モードを経由する移行モードを実行する必要はない。
次に、図20乃至図24を参照して、排便促進洗浄モードを説明する。
まず、図20乃至図22を参照して、排便促進洗浄モードのうちの、マッサージボタン70bを操作することにより実行されるマッサージ洗浄モードを説明する。このマッサージ洗浄モードは、排便後の局部を洗浄することを主目的としているスポットボタン66a等とは別の操作部であるマッサージボタン70bを操作することにより実行される、排便促進を主目的とした洗浄モードである。
マッサージ洗浄モードにおいて、制御ユニット20は、水塊生成装置14及びノズル駆動装置12を作動させると共に、供給された水道水が、水塊生成装置14を通って、第3接続部8cからノズルアセンブリ6に流入し、第3給水流路7cを介して第2噴射口6bから洗浄水が噴射されるように水路を切り替える。これにより、第2噴射口6bから噴射された洗浄水は、水塊となって連続的に人体に着水する。
図20においては、便座4に着座した人体局部(肛門)の中心位置を「×」印で示し、洗浄水の着水点の移動経路を矢印で示している。図20に示すように、マッサージボタン70bが操作されると、まず、着水点が人体の局部位置の周辺で時計回りに2回旋回される旋回移動パターンが実行される。次いで、人体の概ね前後方向に人体の局部位置を通るように着水点を移動させる前後移動パターンが実行され、更に、人体の局部位置の周辺で反時計回りに着水点を2回旋回させる旋回移動パターンが実行され、再び前後移動パターンが実行される。マッサージ洗浄モードでは、これらの時計回りの旋回移動パターン、前後移動パターン、反時計回りの旋回移動パターン、及び前後移動パターンを1サイクルとするマッサージ移動サイクルが止ボタン72aが操作されるまで、繰り返し実行される。
なお、「着水点を人体の局部位置の周辺で旋回させる」とは、衛生洗浄装置1の設計上、着座した人体の局部(肛門)が位置すると想定されている所定の位置の周辺を着水点が移動するように噴射口を移動させることを意味している。上記のように、噴射口を局部基準位置に位置させた状態で洗浄水を噴射すると、洗浄水は人体の局部が位置すると想定されている位置に着水するので、この局部基準位置の周囲で噴射口を移動させることにより、着水点を人体の局部位置の周辺で旋回させることができる。
また、本実施形態においては、旋回移動パターンが行われている期間は、前後移動パターンが行われている期間よりも長く設定され、旋回移動パターン中に噴射される洗浄水の量は、前後移動パターン中に噴射される洗浄水の量よりも多くなる。さらに、マッサージ移動サイクルに含まれる前後移動パターンは、人体の背面側から前面側に着水点を移動させた後、前面側から背面側に着水点を移動させる1往復の直線移動であり、常に同一の移動パターンとして設定されている。
このように、マッサージ洗浄モードでは、旋回移動パターンの洗浄を行うことにより、人体局部周囲の肛門括約筋がマッサージされるため、使用者への排便促進効果が期待される。即ち、マッサージ洗浄モードにより、人体局部は感覚器上部の表皮が薄く、粘膜で覆われている部分に、流体等の自由表面物質が適確に、かつ適切な強度で当たることによる心地良さを使用者に提供することができる。また、旋回移動パターンの間に人体局部を通る前後移動パターンが実行されるため、使用者は、着水位置がずれていないことを認識することができ、使用者に安心感が与えられる。また、旋回移動パターンとして時計回りの旋回と反時計回りの旋回が実行されるので、肛門括約筋に対する刺激の順化が防止され、マッサージ効果を高めることができる。
次に、図21A及び図21Bを参照して、マッサージボタン70bが操作された場合における別のマッサージ洗浄サイクルを説明する。図21Aは、衛生洗浄装置1によって実行されるマッサージ洗浄サイクルを示したものである。図21Bは、このマッサージ洗浄サイクルにおける各装置の作動状況を示すタイムチャートである。なお、本実施形態の衛生洗浄装置1においては、タッチパネル10a上の個人設定ボタン74d(図9)を操作することにより詳細設定画面(図示せず)が表示され、この画面において、種々のマッサージ洗浄サイクルを「マッサージ洗浄モード」として選択することができる。
図21Aに示すマッサージ洗浄サイクルは、時計回りの旋回移動パターン、前後移動パターン、振動スポット移動パターン、反時計回りの旋回移動パターン、及び前後移動パターンを、この順序で実行する洗浄サイクルである。各旋回移動パターン及び前後移動パターンは、図20に示したマッサージ洗浄サイクルに含まれているものと同一である。また、振動スポット移動パターンは、スッキリスポットボタン66bを操作したときに実行される振動スポット洗浄モードにおける洗浄と同様に、第2噴射口6bを局部基準位置近傍において微小なストロークで往復移動させるものである。なお、振動スポット移動パターンは、前後移動パターンよりも短いストロークで前後方向のみに着水点を往復移動させるものでも良く、また、左右方向の横移動を伴いながら、前後移動パターンよりも短いストロークで前後方向に着水点を往復移動させるものでも良い。
さらに、図21Bに示すように、マッサージ洗浄サイクル中においては、第2噴射口6bの移動速度は、旋回移動パターン、前後移動パターン、及び振動スポット移動パターンの実行時において、常に一定にされている。また、噴射口から噴射される洗浄水の温度も常に一定にされている。これに対して、第2噴射口6bから噴射される洗浄水の水勢(流速)は、前後移動パターン、及び振動スポット移動パターンの実行中において、旋回移動パターンの実行中よりも低く設定されている。即ち、制御ユニット20は、給水バルブ18に制御信号を送り、前後移動パターン、及び振動スポット移動パターンの実行中における流速を低く設定する。
図21に示したマッサージ洗浄サイクルによれば、サイクル中に、短いストロークで着水点を往復移動させる振動スポット移動パターンが含まれているので、局部の中心に、より強い刺激を与え、一層の排便促進効果を得ることができる。また、このマッサージ洗浄サイクルによれば、前後移動パターン、及び振動スポット移動パターンの実行中における洗浄水の水勢が、旋回移動パターンの実行中よりも低くされるので、肛門括約筋のマッサージにより多くの洗浄水を振り向けることができ、少ない洗浄水で高い排便促進効果を得ることができる。
次に、図22を参照して、マッサージボタン70bが操作された場合における更に別のマッサージ洗浄サイクルを説明する。
図22に示すマッサージ洗浄サイクルは、時計回りの旋回移動パターン、8の字型の前後移動パターン、反時計回りの旋回移動パターン、及び8の字型の前後移動パターンを、この順序で実行する洗浄サイクルである。各旋回移動パターンは、図20に示したマッサージ洗浄サイクルに含まれているものと同一である。
また、図22に示すマッサージ洗浄サイクルにおいては、前後移動パターンは、着水点が8の字型に移動されるものである。この移動パターンにおいては、まず、人体の背面側から前面側に向けて一方向に、概ね前後方向に人体局部を通るように着水点が移動される。次いで、着水点は、前面側から背面側に向けて、人体局部周辺を円弧を描くように時計回りに半周旋回移動し、さらに、背面側から前面側に向けて概ね前後方向に人体局部を通るように移動し、最後に、前面側から背面側に向けて、人体局部周辺を円弧を描くように反時計回りに半周旋回移動するものである。この結果、着水点は、人体局部を概ね前後方向に2回通過する横向きの8の字の軌道を描いて移動する。
図22に示すマッサージ洗浄サイクルによれば、旋回移動パターンの間に実行される前後移動パターン中にも半周旋回移動が含まれているので、肛門括約筋マッサージが途切れる時間が短く、より効果的に排便を促進することができる。
次に、図23及び図24を参照して、排便促進洗浄モードのうちの、排便促進スポットボタン70aを操作することにより実行される排便促進スポット洗浄モードを説明する。この排便促進スポット洗浄モードは、排便後の局部を洗浄することを主目的としているスポットボタン66a等とは別の操作部である排便促進スポットボタン70aを操作することにより実行される、排便促進を主目的とした洗浄モードである。
排便促進スポット洗浄モードにおいて、制御ユニット20は、水塊生成装置14及びノズル駆動装置12を作動させると共に、供給された水道水が、水塊生成装置14を通って、第3接続部8cからノズルアセンブリ6に流入し、第3給水流路7cを介して第2噴射口6bから洗浄水が噴射されるように水路を切り替える。これにより、第2噴射口6bから噴射された洗浄水は、水塊となって連続的に人体に着水する。
図23Aにおいては、便座4に着座した人体局部(肛門)の中心位置を「×」印で示し、洗浄水の着水点の移動経路を矢印で示している。図23Aに示すように、排便促進スポットボタン70aが操作されると、まず、着水点が人体局部の周辺で時計回りに旋回される旋回移動パターンが実行される。次いで、第2噴射口6bを局部基準位置に静止させた状態で洗浄水が噴射される、固定スポット洗浄が所定時間実行される。さらに、着水点が人体局部の周辺で反時計回りに旋回される旋回移動パターンが実行された後、再び固定スポット洗浄が所定時間実行され、1回の排便促進サイクルが完了する。この排便促進サイクルが、止ボタン72aが操作されるまで、繰り返し実行される。
ここで、1回の排便促進サイクルにおいて、旋回移動パターンが行われている期間は、固定スポット洗浄が行われている期間よりも長く設定されており、旋回移動パターンは、噴射された洗浄水が人体局部の中心点(肛門位置)に直接着水しないように設定されている。また、排便促進サイクルは、実行される毎に異なった旋回移動パターンが含まれるように設定される。即ち、各旋回移動パターンにおける旋回回数又は旋回角度はランダムに設定される。
また、図23Bに示すように、排便促進サイクルにおいて、旋回移動パターンの実行期間中における第2の噴射口6bの移動速度は一定に維持され、固定スポット洗浄に移行すると第2の噴射口6bは局部基準位置で停止される。なお、旋回移動パターンにおける着水点の旋回回数又は旋回角度は、実行される毎にランダムに設定されるため、旋回移動パターンが実行される期間は不定期間である。さらに、噴射される洗浄水の温度は、排便促進サイクルの全期間において一定に維持されるが、この温度は、スポットボタン66aを操作することにより実行される固定スポット洗浄モードにおける洗浄水の設定温度よりも高い温度に設定される。即ち、制御ユニット20は、排便促進スポット洗浄モードが開始されると、温水ヒータ16に制御信号を送り、噴射される洗浄水の温度を高くする。また、制御ユニット20は、旋回移動パターンから固定スポット洗浄に移行する際、給水バルブ18に制御信号を送り、噴射される洗浄水の流速(水勢)を速くする。
さらに、図24に示すように、変形例として、排便促進サイクルにおける旋回移動パターンは、着水点が人体の前後方向に長い楕円軌道を描くように設定することもできる。このような楕円軌道は、人体の肛門括約筋の形態に即したものであり、より強いマッサージ効果を得ることができる。なお、図24には時計回りの楕円軌道が示されているが、反時計回りの旋回移動パターンも楕円軌道にできることは勿論である。また、上述したマッサージ洗浄サイクル(図20乃至図22)中の旋回移動パターンを楕円軌道にすることもできる。
排便促進スポット洗浄モードは、より強力な排便促進効果を得ることを目的としている。上記のように、固定スポット洗浄モードにおいて、人体局部(肛門)の中心に洗浄水が着水していると、洗浄水が肛門から逆流して直腸内に侵入し、使用者が強い便意を催すことがある。しかしながら、使用者が肛門括約筋を緊張させ、肛門を締めてしまうと洗浄水はあまり侵入せず、排便促進効果を得ることができない。排便促進スポット洗浄モードにおいては、まず、温度の高い洗浄水で旋回移動パターンが実行され、これにより肛門括約筋がマッサージされて使用者は肛門括約筋を緩める。この旋回移動パターンの後、水勢を強めると共に固定スポット洗浄が実行されるので、肛門括約筋が緩められた状態で人体局部の中心に洗浄水が着水するため、直腸内に洗浄水が侵入しやすく、より強い排便促進効果を得ることができる。加えて、旋回移動パターンは、排便促進サイクルの実行毎に異なる期間(異なる旋回角)実行されるので、使用者は、固定スポット洗浄の開始時期を予測することができず、固定スポット洗浄の開始時に意図的に肛門括約筋を緊張させることも困難である。このため、直腸内に効果的に洗浄水を侵入させることが可能となり、強い排便促進効果を得ることができる。
次に、図25乃至図27を参照して、停止シーケンスを説明する。
停止シーケンスは、仕上げ停止ボタン72b(図9)を操作することにより実行される洗浄モードのシーケンスであり、予め設定された一連の洗浄モードを実行した後、洗浄水の噴射が自動的に停止されるものである。本実施形態の衛生洗浄装置1においては、この停止シーケンスを実行するための操作部である仕上げ停止ボタン72bとは別に、停止シーケンスを実行せずに洗浄水の噴射を直ちに停止させる操作部である止ボタン72aも設けられている。
出願人が行った調査によれば、衛生洗浄装置の使用者は、必ずしも排便により汚れた局部の洗浄のみを目的として衛生洗浄装置を使用しているのではなく、排便促進や、排便後にリラックスした満足感を得るため等の目的で衛生洗浄装置を使用していることが明らかとなっている。このため、使用者は、排便後、局部が十分に洗浄された後も衛生洗浄装置を使用し続け、一定の満足感を得てから使用を終了している場合がある。停止シーケンスは、使用者にこのような一定の満足感を与えるために使用されることを意図したものである。
図25は停止シーケンスの一例を示すものであり、便座4に着座した人体局部(肛門)の中心位置を「×」印で示し、洗浄水の着水点の移動経路を矢印で示している。この停止シーケンスにおいては、着水点が人体局部の周辺で時計回りに旋回されるムーブ洗浄モードである旋回ワイド洗浄モード(図10B)を所定時間実行した後、自動的に洗浄水の噴射が停止される。使用者は、固定スポット洗浄モード等を使用して局部を十分に洗浄した後、仕上げ停止ボタン72bを操作することにより、所定時間旋回移動パターンの仕上げ停止を行って用便を終了する。これにより、排便によって鬱血した肛門括約筋を十分にマッサージした後、用便を終了することができる。
図26は停止シーケンスの別の一例を示すものである。なお、本実施形態の衛生洗浄装置1においては、タッチパネル10a上の個人設定ボタン74d(図9)を操作することにより詳細設定画面(図示せず)が表示され、この画面において、使用者の好みに応じて停止シーケンスを設定することができる。
図26に示す例においては、振動スポット洗浄モードが所定時間実行された後、旋回移動パターンが所定時間実行され、自動的に洗浄水の噴射が停止される。上述したように、振動スポット洗浄モードは、ムーブ洗浄モードよりも短いストロークで着水点を往復移動させる洗浄モードであり、洗浄水の直腸への逆流が発生しにくく、使用者に残便感を与えにくいので、停止シーケンスにおいて実行するには好適である。即ち、停止シーケンスにおいては、洗浄水が人体に着水する範囲が固定スポット洗浄モードよりも広くなるように設定された洗浄モードが実行されることが好ましく、従って、着水点が移動する洗浄モードが実行されることが好ましい。なお、振動スポット洗浄モードは、着水点の左右方向の移動を伴わず、前後方向のみに着水点が移動するものであっても良い。
このように、停止シーケンスに含まれる洗浄モードは、固定スポット洗浄モードのように洗浄水により直腸に与える刺激が強いものではなく、直腸に与える刺激が少ない洗浄モードであることが好ましい。従って、固定スポット洗浄モードを停止シーケンスとして設定することができないように本発明を構成することもできる。或いは、噴射口から噴射された洗浄水の着水点を、着座した人体の局部位置の周辺で旋回させる旋回移動パターンと、人体の前後方向に局部位置を通るように着水点を移動させる前後移動パターンを含むマッサージ洗浄モード(図20)を停止シーケンスとして設定することもできる。さらに、着座した人体の概ね前後方向に着水点が移動するムーブ洗浄モードと、人体の概ね左右方向の移動を伴いながらムーブ洗浄モードにおける移動距離よりも短いストロークで着水点を前後方向に往復移動する振動スポット洗浄モードが含まれるように停止シーケンスとして設定することもできる。
また、上述したように、停止シーケンスにおいて実行される洗浄モードの種類は使用者の好みにより種々選択可能であるが、本実施形態の衛生洗浄装置1においては、洗浄モードの種類の他、噴射される洗浄水の温度、噴射される洗浄水の流速、及び停止シーケンスを実行する時間等の、洗浄モードに関するパラメータの設定をリモコン10上のタッチパネル10aで設定することができる。従って、タッチパネル10aは、洗浄モード設定装置として機能する。
さらに、停止シーケンスにおける洗浄モードに関するパラメータの他、上述したように、停止シーケンス以外で実行される洗浄モードに関する洗浄水の温度、流速等のパラメータについてもタッチパネル10aで設定することが可能である。ここで、停止シーケンスにおいて実行される洗浄モードに対する設定は、停止シーケンス以外で実行される洗浄モードに対する設定よりも、設定可能なパラメータの範囲が狭くされている。これは、停止シーケンスにおける洗浄モードについて、洗浄水の温度や流速等が、誤操作や悪戯によって極端な値に設定されてしまうと、リラックスするために実行された停止シーケンスによって、使用者に強い不快感を与えてしまうからである。
また、上述したように、仕上げ停止ボタン72bは、固定スポット洗浄等により局部洗浄を行っている状態で操作され、これにより所定の停止シーケンスを実行した後、洗浄水の噴射を停止させることを意図して用意されたものである。しかしながら、洗浄水が噴射されていない状態で仕上げ停止ボタン72bが操作された場合においても停止シーケンスが実行された後、噴射が停止されるように構成されている。従って、局部の洗浄を目的とした洗浄モードを含めて停止シーケンスに設定しておくことにより、仕上げ停止ボタン72bを、洗浄から停止までを1回の操作で実行する自動洗浄用の操作部として使用することもできる。
図27は、このような自動洗浄を目的とした自動洗浄用の停止シーケンス設定の一例である。
図27に示す例では、自動洗浄用の停止シーケンスとして、まず、局部洗浄用に固定スポット洗浄モード又は振動スポット洗浄モードが所定時間実行され、次に、局部の周辺洗浄用に旋回ワイド洗浄モード又は水膜ワイド洗浄モードが所定時間実行され、最後に一定の満足感を得るためのマッサージ用にマッサージ洗浄モードが所定時間実行された後、自動的に洗浄水の噴射が停止する。このように停止シーケンスを設定しておくことにより、排便後、使用者が仕上げ停止ボタン72bを操作するだけで、全自動で局部洗浄及びマッサージが実行された後、洗浄水の噴射が自動停止する。
或いは、変形例として、局部洗浄を含む一連のシーケンスを実行し、自動停止させるための操作部を、仕上げ停止ボタン72bとは別に、又は仕上げ停止ボタン72bに代えて「全自動ボタン」(図示せず)として設けることもできる。
本発明の実施形態の衛生洗浄装置1によれば、人体の前後方向に延びる中央領域80aと、その両側の側部領域80bからなる洗浄領域80に対し、制御ユニット20は、中央領域80aにおける着水範囲が側部領域80bにおける着水範囲よりも前後方向に長くなるようにノズル駆動装置12を作動させる(図12)。この結果、使用者に十分な洗浄感を与えることができると共に、洗浄不要な領域(図12に楕円で示す領域)に洗浄水が着水して大腿部が濡れてしまったという印象を与えにくくすることができる。これにより、洗浄水量を減少させた場合でも、使用者に優れた使用感と、満足感を提供することができる。
また、本実施形態の衛生洗浄装置1によれば、着水点の移動パターンを、人体の概ね左右方向の着水点の移動を伴いながら、人体の概ね前後方向に着水点を繰り返し往復移動させ(図12)、洗浄領域80内を走査するものとしている。これにより、使用者に違和感を与えることなく、容易に、中央領域80aにおける着水範囲を側部領域80bにおける着水範囲よりも前後方向に長くすることができる。
さらに、本実施形態の衛生洗浄装置1によれば、側部領域80bにおける着水範囲が、局部位置を通る左右方向の直線(図12における一点鎖線)よりも前側まで延びているので、不要な部分への着水との印象を回避しながら、使用者に十分な洗浄感を与えることができる。
また、本実施形態の衛生洗浄装置1において、着水点を、中央領域80aにおいて側部領域80bよりも高い密度で前後方向に往復移動させることにより、十分に広い着水範囲を確保しながら、特に洗浄が必要な中央領域に対しても十分な洗浄感を与えることができる。
さらに、本実施形態の衛生洗浄装置1によれば、逆三角形状の移動パターン(図12)により洗浄領域80内が走査されるので、少ない往復回数で洗浄領域80を走査することが可能になり、中央領域80aに対する洗浄頻度を増加させることができ、中央領域80aに対する十分な洗浄感を与えることができる。
また、本実施形態の衛生洗浄装置1によれば、噴射口から噴射される洗浄水を水塊として、この水塊を所定の時間間隔で連続的に人体に着水させるので、少ない洗浄水量(流量)であっても、使用者の局部に与える刺激を強くすることができ、十分な洗浄感を与えることができる。また、単位面積あたりの洗浄水の着水量が、中央領域80aでは側部領域80bよりも多くされるので、十分に広い着水範囲を確保しながら、中央領域80aを十分に洗浄することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、ノズル駆動装置12は、ノズルアセンブリ6を回転軸24a(図5)を中心に回動させることにより、着水点を人体の左右方向に移動させていたが、他の機構により着水点を左右方向に移動させることもできる。例えば、ノズル駆動装置として、ノズルアセンブリを左右方向に平行移動させる装置を設けることにより、着水点を左右方向に移動させることもできる。或いは、ノズルアセンブリを、その長手方向軸線を中心に回動させる機構を設けることにより噴射口の角度を変えて、着水点が左右方向に移動するように本発明を構成することもできる。
また、上述した実施形態では、ムーブ洗浄モードにおいて、水塊生成装置14により噴射される洗浄水を水塊として、この水塊を人体に着水させていたが、水塊生成装置14を使用せずに、噴射される洗浄水を線状の連続的な吐水としても良い。