JP2017179483A - 高温耐食材の作製方法,高温耐食材及び燃焼装置の製造方法 - Google Patents

高温耐食材の作製方法,高温耐食材及び燃焼装置の製造方法 Download PDF

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哲也 園田
光男 新里
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光男 新里
川村 浩
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浩 川村
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Abstract

【課題】 高温に晒されても損傷しにくい皮膜を有した高温耐食材の作製方法,高温耐食材及びこれを用いた燃焼装置の製造方法を提供する。【解決手段】 金属製の基材Bに対してAl及びNiの粉末材料を主とした皮膜材料Hを溶射して、基材Bに溶射皮膜を形成した高温耐食材KAであって650℃以上の高温下に晒される高温耐食材KAを作製する方法であり、基材に対して皮膜材料Hを高速フレーム溶射法によって溶射する溶射工程(1)を備え、溶射工程で用いる皮膜材料中のAlの含有量を65at%〜75at%にし、皮膜材料Hを、Al及びNiの粉末材料を非化合物化及び非合金化の状態で密着させてなる粉末状の複合体Fを含んで構成し、複合体Fの平均粒径を、100〜150μmにした。【選択図】 図1

Description

本発明は、金属製の基材に対してAl及びNiの粉末材料を溶射して作製される高温耐食材の作製方法,高温耐食材及びこれを用いた燃焼装置の製造方法に関する。
従来、この種の高温耐食材の作製方法及び高温耐食材としては、例えば、特許第3030927号公報(特許文献1)に記載の技術が知られている。これは、図13に示すように、Ni合金の基材に対しAlまたはAl合金をプラズマ溶射などにより被覆し、得られた被覆材に対して熱処理を行なって、基材の上にNi3AlおよびNiAlの混在する層を形成するとともに、表面にAl23を生成させて被覆層を形成している。
特許第3030927号公報
しかしながら、上記従来の高温耐食材にあっては、表面にAl23の被覆層が生じるので、例えば、これを高温の燃焼炉の炉材として用いた場合、高温に晒されると脆く割れ易く、損傷を生じやすいという問題がある。また、金属製の基材として、Ni合金の基材を用いなければならないので、それだけ汎用性にも劣る。
本発明は上記の点に鑑みて為されたもので、高温に晒されても損傷しにくい皮膜を有した高温耐食材の作製方法,高温耐食材及びこれを用いた燃焼装置の製造方法を提供することを目的とする。
このような目的を達成するための本発明の高温耐食材の作製方法は、金属製の基材に対してAl及びNiの粉末材料を主とした皮膜材料を溶射して該基材に溶射皮膜を形成した高温耐食材であって650℃以上の高温下に晒される高温耐食材を作製する高温耐食材の作製方法において、
上記基材に対して上記皮膜材料を高速フレーム溶射法によって溶射する溶射工程を備え、該溶射工程で用いる皮膜材料中のAlの含有量を65at%〜75at%にした構成としている。
皮膜材料は、チタン,鉄,シリコン,マグネシウム等の金属が、許容される範囲で例えば1at%以下程度混在しても良いが、Alの残部がNiで構成されることが有効である。不純物がなくなる。Alの含有量は、望ましくは、70at%±2at%である。
基材としては、例えば、鉄,鋳鉄,ステンレス,銅,黄銅,ニッケル,錫,鉛,コバルト,チタン,アルミニウム,クロム,金,銀,白金,パラジウム,マグネシウム,マンガン,亜鉛の何れかの金属,あるいはこれらの合金,金属の酸化物等、適宜のものを選択することができる。金属材料が鉄系金属である場合は、純鉄の他、JIS表示で示すと、例えば、SS,SC,SPC,SPCC等の普通鋼、SUS,SMn,SCr,SCM,SNCM,SWRH,SUH,SK,SKH,SKS,SKD,SKC,SUP,SWRS,SUJ等の特殊鋼等が挙げられる。
高速フレーム溶射法とは、周知の高速フレーム溶射装置により、皮膜材料を1000℃〜3000℃の超音速のジェットフレームにより加速して、溶融あるいは半溶融状態で基材に衝突させ、基材表面に皮膜材料の皮膜を形成する周知の方法である。
これにより、溶射工程で用いる皮膜材料中のAlの含有量を65at%〜75at%にすると、Ni―Al系の金属間化合物,未反応のNi及び未反応のAlが混在した皮膜が形成された高温耐食材が作製される(図7(a)に示す電子顕微鏡写真参照)。Ni―Al系の金属間化合物においては、NiAl、Ni3Al、NiAl3、Ni2Al3の少なくとも何れか一つの金属間化合物が含まれる。そして、この高温耐食材を、650℃以上の高温下に晒すと、この高温環境下で皮膜の合成反応が進み、最終的に、基材に形成された皮膜が、NiAl金属間化合物及びAl23の2種類の組成が混在する形態になる(図7(b)に示す電子顕微鏡写真参照)。その結果、高温に晒されても損傷しにくい皮膜を有した高温耐食材を提供することができる。
溶射工程で用いる皮膜材料中のNiの含有量が多くなると、高速フレーム溶射による皮膜の最終組成は、AlNi3となるNiリッチな金属間化合物となる。後掲の実験例からも分かるように、Niリッチな金属間化合物ではその性能に劣り、最終組成がNiAlになることで、高温に晒されても損傷しにくい皮膜にすることができる。
そして、必要に応じ、上記皮膜材料を、上記Al及びNiの粉末材料を非化合物化及び非合金化の状態で密着させてなる粉末状の複合体を含んで構成している。
ここで、非化合物化及び非合金化の状態で密着とは、例えば、Al及びNiの粉末同士が加圧により接合して圧潰して細長状になって隣接する金属の境界に隙間なく接合する状態をいう(図9(b)及び図10に示す電子顕微鏡写真参照)。
これにより、皮膜材料を構成する複合体は、AlとNiの異種金属の粉末材料同士が非化合物化及び非合金化の状態で密着させて形成されているので、AlとNiを予め互いに分散化させて集合させておくことができ、そのため、異種金属同士がノズルから噴射して基材に到達してから互いに密着して被覆される場合と比較して、ノズルからの噴射時に各々の粉末の付着特性や粒子径の違いに起因して偏ることがなく、基材に到達しても互いの分散状態を保持して基材に接合することから、分散性を向上させることができるようになる。特に、熱処理した場合には、皮膜組織に欠陥が多く発生したり、未反応部分が生じてしまうという事態が防止される。その結果、高温耐食材の品質の向上が図られる。更に、複合体は、AlとNiの粉末材料同士が密着しているので、AlとNiの粉末が微細化されていても複合体にして粉末の粒子を大きくすることができ、そのため、溶射工程において重要となる、粉末の流動性が向上し、微細な複合組織で形成された皮膜を形成できるようになり、この点でも、高温耐食材の品質の向上が図られる。
この場合、上記Al及びNiの粉末材料の平均粒径を50μm未満にした構成としている。Al及びNiの粉末が微細化され、それだけ、微細な複合組織で形成された皮膜を形成できるようになり、より一層、高温耐食材の品質の向上が図られる。また、金属の粉末が微細化されても、複合体にして粉末の粒子を大きくすることができ、分散性を損なうことがなく、粉末の安定供給も確保される。
そして、必要に応じ、上記皮膜材料の複合体の平均粒径を、100μm〜150μmにした構成としている。
複合体の粒子が微細になることがなく、流動性が低下する事態が防止され、複合体の安定供給を可能にし、ノズル閉塞も抑制される。また、分散性も向上させられ、微細な複合組織で形成された皮膜を形成できるようになる。
更に、必要に応じ、上記複合体を含む皮膜材料を、篩分級により粒径が25μm以下の粉末を除外した構成としている。複合化に至っていない微粉末が殆ど含まれない皮膜材料にすることができる(図9(b)及び図10の電子顕微鏡写真参照)。粉末材料の流動性がより一層良好になる。
そして、必要に応じ、上記溶射工程後に、上記皮膜材料が溶射された基材を、650℃以上の温度で熱処理する熱処理工程を備えた構成としている。650℃以上の高温下に晒すと、この高温環境下で皮膜の合成反応が進み、最終的に、基材に形成された皮膜が、NiAl金属間化合物及びAl23の2種類の組成が混在する形態になる(図7(b)に示す電子顕微鏡写真参照)。その結果、高温に晒されても損傷しにくい皮膜を有した高温耐食材を提供することができる。
また、上記目的を達成するための高温耐食材は、上記の高温耐食材の作製方法によって作製される溶射工程後の高温耐食材であって、上記基材に形成された皮膜が、Ni―Al系の金属間化合物,未反応のNi及び未反応のAlが混在して形成され、Ni―Al系の金属間化合物を10Vol%〜60Vol%有する構成としている。上記と同様の作用,効果を奏する。
また、上記目的を達成するための高温耐食材は、上記の高温耐食材の作製方法によって作製される熱処理工程後の高温耐食材であって、上記基材に形成された皮膜が、NiAlの金属間化合物及びAl23が混在して形成された構成としている。上記と同様の作用,効果を奏する。
また、上記目的を達成するための燃焼装置の製造方法は、運転時に650℃以上の高温に晒される燃焼炉を炉材で形成した燃焼装置の製造方法において、上記燃焼炉の炉材の全部若しくは一部を上記の高温耐食材の作製方法によって作製される溶射工程後の高温耐食材を用いて形成し、その後、実際の運転により上記炉材を加熱して上記熱処理工程後の高温耐食材に変化せしめる構成としている。上記と同様の作用,効果を奏するとともに、熱処理工程を、燃焼装置の実際の運転により行うことになるので、予め熱処理した高温耐食材を用いる場合に比較して、熱処理用の大型装置が不要になり、また熱処理の工数を減らすことができ、それだけ安価に燃焼装置を製造することができる。即ち、炉材を部品段階で熱処理する場合、それが大きいものである場合には、熱処理用の電気炉も大型のものを用いなければならないが、熱処理をすることなく装置を完成させ、熱処理は実際の運転により行うので、大型の電気炉を用意しなくても良く、それだけ、安価に製造できるのである。
本発明によれば、溶射工程で用いる皮膜材料中のAlの含有量を65at%〜75at%にしたので、高温環境下では、基材に形成された皮膜が、NiAl金属間化合物及びAl23の2種類の組成が混在する形態にすることができることから、高温に晒されても損傷しにくくすることができ、耐久性を向上させることができる。
本発明の実施の形態に係る高温耐食材の作製方法及び高温耐食材を示す図である。 本発明の実施の形態に係る高温耐食材の作製方法において用いられる皮膜材料において、これを製造する際に用いられるボールミルを模式的に示す図である。 本発明の実施の形態に係る燃焼装置の製造方法に係る燃焼装置を示す図である。 本発明の実験例に係り、高温燃焼灰耐食試験の状態を示す図(写真)である。 本発明の実験例に係り、高温燃焼灰耐食試験後の試料のX線回折パターンの測定結果を示し、(a)はコールドスプレー試料の結果を示す表図、(b)は高速フレーム溶射試料の結果を示す表図である。 本発明の実験例に係り、異なるAl成分比毎の高速フレーム溶射の試料において高温燃焼灰耐食試験結果を示す図(写真)である。 本発明の実験例に係り、高速フレーム溶射皮膜の断面の電子顕微鏡写真であり、(a)は70at%Alを溶射した試料の皮膜断面の電子顕微鏡写真、(b)はその耐食試験後の皮膜断面の電子顕微鏡写真である。 本発明の実験例に係り、70at%Alを高速フレーム溶射した試料のX線回折パターンの測定結果を示し、(a)は高温燃焼灰耐食試験前の結果を示す表図、(b)は高温燃焼灰耐食試験後の結果を示す表図である。 本発明の実験例に係り、皮膜材料の外観を示す電子顕微鏡写真であり、(a)は粒径の改良前の電子顕微鏡写真、(b)は粒径の改良後の電子顕微鏡写真である。 本発明の実験例に係り、皮膜材料の断面を示す電子顕微鏡写真である。 本発明の実験例に係り、皮膜材料を溶射した燃焼炉の炉材であるプッシャを示す図(写真)である。 本発明の実験例に係り、皮膜材料を溶射した燃焼炉の炉材であるプッシャを示し、(a)は炉内設置状態を示す図(写真)、(b)は30時間燃焼後の状態を示す図(写真)、(c)は700時間燃焼後の状態を示す図(写真)である。 従来の高温耐食材の皮膜を示す断面図である。
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る高温耐食材の作製方法,高温耐食材及び燃焼装置の製造方法について詳細に説明する。
図1には、実施の形態に係る高温耐食材の作製方法及びこれによって作製される高温耐食材KA,KBを示している。
実施の形態に係る高温耐食材の作製方法は、金属製の基材Bに対してAl及びNiの粉末材料を主とした皮膜材料Hを溶射して基材Bに溶射皮膜を形成した高温耐食材であって650℃以上の高温に晒される高温耐食材を作製するものである。本作製方法は、基材Bに対して皮膜材料Hを高速フレーム溶射法によって溶射する溶射工程(1)と、この溶射工程後に皮膜材料Hが溶射された基材Bを、650℃以上の温度で熱処理する熱処理工程(2)とを備えている。溶射工程において高温耐食材KAが作製され、熱処理工程により高温耐食材KBが作製される。
基材Bとしては、例えば、鉄,鋳鉄,ステンレス,銅,黄銅,ニッケル,錫,鉛,コバルト,チタン,アルミニウム,クロム,金,銀,白金,パラジウム,マグネシウム,マンガン,亜鉛の何れかの金属,あるいはこれらの合金,金属の酸化物等、適宜のものを選択することができる。金属材料が鉄系金属である場合は、純鉄の他、JIS表示で示すと、例えば、SS,SC,SPC,SPCC等の普通鋼、SUS,SMn,SCr,SCM,SNCM,SWRH,SUH,SK,SKH,SKS,SKD,SKC,SUP,SWRS,SUJ等の特殊鋼等が挙げられる。
本実施の形態では、溶射工程で用いる皮膜材料H中のAlの含有量を65at%〜75at%にした構成としている。皮膜材料Hは、チタン,鉄,シリコン,マグネシウム等の金属が、許容される範囲で例えば1at%以下程度混在しても良いが、実施の形態では、Alの残部を全てNiで構成している。Alの含有量は、望ましくは、70at%±2at%である。また、Al及びNiの粉末材料は、その平均粒径が50μm未満のものが用意される。実施の形態では、アルミニウムの粒径は25μm以下に設定され、ニッケルの粒径は10μm以下に設定されている。
皮膜材料Hは、Al及びNiの粉末材料を非化合物化及び非合金化の状態で密着させてなる粉末状の複合体Fを含んで構成されている。図9(b)及び図10に示す電子顕微鏡写真も参照し、ここで、非化合物化及び非合金化の状態で密着とは、例えば、Al及びNiの粉末同士が加圧により接合して圧潰して細長状になって隣接する金属の境界に隙間なく接合する状態をいう。
次に、複合体Fの製造方法について説明する。製造に用いる製造機器は、粉末材料同士を加圧により接合して密着できる装置であればよく、特に限定するものではないが、ボールやロッド等のメディアを使用する装置が使用できる。例えば、図2に示すように、硬質のボールが適量入れられたポットを備えた振動型のボールミルが用いられる。このボールミルには、振動機により振動が付与される。一般に、ボールミルは、金属やセラミックなどの硬質のボールと、材料をポットに入れて回転若しくは振動させることによって、材料を粉砕または混合する装置であるが、適切な処理条件において本発明のような複合化にも利用できる装置である。ポットは、鋼,ステンレスなどのもの、不純物の混入防止や対摩耗性付与のために、内張り(ライナー)としてアルミナ,ゴム,ウレタン等を設けたものが使用できる。ボールは、例えば、鉄,ステンレス,超硬合金,またはアルミナ,ジルコニア,窒化珪素等のセラミックスを用いることができる。
そして、AlとNiの粉末材料を、ボールミルのポット内に入れ、ポットを回転あるいは振動させることにより、ボールの衝突エネルギーにより粉末材料同士を密着させて複合化し、複合体Fを生成する。ポット内においては、粉末材料同士は、ボールに接触しボールによる加圧により接合して密着させられ、圧潰して細長状になって隣接する金属の境界に隙間なく接合する。この場合、ポットの回転数若しくは振動数及び運転時間を調整することにより、複合体Fの平均粒径が、100〜150μmになるようにする。また、実施の形態では、粉末材料の複合化において、複合化に至らない金属粉末や、複合化には至るものの粒子径が小さい粉末は、粉末材料の流動性を悪化させる要因となるため、必要に応じ所定の篩にて分級を行い、粒子径が25μm以下の粉末を除去している。
次に、実施の形態に係る高温耐食材の作製方法について詳しく説明する。
(1)溶射工程
基材Bに対して皮膜材料Hを高速フレーム溶射法によって溶射する。高速フレーム溶射法とは、周知の高速フレーム溶射装置により、皮膜材料Hを1000℃〜3000℃の超音速のジェットフレームにより加速して、溶融あるいは半溶融状態で基材Bに衝突させ、基材B表面に皮膜材料Hの皮膜を形成する周知の方法である。
溶射皮膜の厚さtは50μm≦t≦500μmにする。
これにより、高温耐食材KAが作製される。
この溶射工程においては、皮膜材料Hを構成する複合体Fは、AlとNiの異種金属の粉末材料同士が非化合物化及び非合金化の状態で密着させて形成されているので、AlとNiを予め互いに分散化させて集合させておくことができ、そのため、異種金属同士がノズルから噴射して基材Bに到達してから互いに密着して被覆される場合と比較して、ノズルからの噴射時に各々の粉末の付着特性や粒子径の違いに起因して偏ることがなく、基材Bに到達しても互いの分散状態を保持して基材Bに接合することから、分散性を向上させることができるようになる。特に、その後、熱処理した場合には、皮膜組織に欠陥が多く発生したり、未反応部分が生じてしまうという事態が防止される。その結果、高温耐食材の品質の向上が図られる。更に、複合体Fは、AlとNiの粉末材料同士が密着しているので、AlとNiの粉末が微細化されていても複合体Fにして粉末の粒子を大きくすることができ、そのため、溶射工程において重要となる、粉末の流動性が向上し、微細な複合組織で形成された皮膜を形成できるようになり、この点でも、高温耐食材の品質の向上が図られる。
また、Al及びNiの粉末材料の平均粒径を50μm未満にしたので、Al及びNiの粉末が微細化され、それだけ、微細な複合組織で形成された皮膜を形成できるようになり、より一層、高温耐食材の品質の向上が図られる。また、金属の粉末が微細化されても、複合体Fにして粉末の粒子を大きくすることができ、分散性を損なうことがなく、粉末の安定供給も確保される。更に、皮膜材料Hの複合体Fの平均粒径を、100〜150μmにしたので、複合体Fの粒子が微細になることがなく、流動性が低下する事態が防止され、複合体Fの安定供給を可能にし、ノズル閉塞も抑制される。また、分散性も向上させられ、微細な複合組織で形成された皮膜を形成できるようになる。皮膜材料は、篩分級により粒径が25μm以下の粉末を除外してあるので、複合化に至っていない微粉末が殆ど含まれないことから、流動性がより一層良好になる。
(2)熱処理工程
溶射工程後に、皮膜材料Hが溶射された基材B(高温耐食材KA)を、650℃以上の温度で熱処理する。熱処理温度は、例えば、650℃〜900℃に設定される。熱処理雰囲気は、大気、真空中あるいは、不活性ガス雰囲気中のうち適宜選択し、この温度雰囲気で0.5〜3時間処理する。これにより、皮膜の合成反応が進み、最終的に、基材Bに形成された皮膜が、NiAl金属間化合物及びAl23の2種類の組成が混在する形態になる。この場合、基材Bに被覆された皮膜材料Hは、熱処理前の皮膜組織が、緻密且つ微細で分散性が極めて良いので、熱処理後に形成される皮膜においても、皮膜組織に欠陥が多く発生したり、未反応部分が生じてしまうという事態が防止され、均質な皮膜が形成される。その結果、高温に晒されても損傷しにくい皮膜を有した高品質の高温耐食材KBが得られる。
次に、このようにして製造された高温耐食材について説明する。
<高温耐食材KA>
溶射工程において作製された高温耐食材KAである。これは、図7(a)に示す電子顕微鏡写真も参照し、基材Bに形成された皮膜が、Ni―Al系の金属間化合物,未反応のNi及び未反応のAlが混在して形成され、Ni―Al系の金属間化合物を10Vol%〜60Vol%有する構成となっている。そして、この高温耐食材を、650℃以上の高温下に晒すと、この高温環境下で皮膜の合成反応が進み、図7(b)に示す電子顕微鏡写真も参照し、最終的に、基材Bに形成された皮膜が、NiAl金属間化合物及びAl23の2種類の組成が混在する形態になる。その結果、高温に晒されても損傷しにくくなる。
<高温耐食材KB>
熱処理工程において作製された高温耐食材KBである。これは、図7(b)に示す電子顕微鏡写真も参照し、基材Bに形成された皮膜が、NiAl金属間化合物及びAl23の2種類の組成が混在する形態になっている。その結果、高温に晒されても損傷しにくくなる。
次に、本発明の実施の形態に係る燃焼装置の製造方法について説明する。この燃焼装置の製造方法は、運転時に650℃以上の高温に晒される燃焼炉を炉材で形成した燃焼装置の製造方法であり、燃焼炉の炉材の全部若しくは一部を上記の溶射工程後の高温耐食材KAを用いて形成し、その後、実際の運転により炉材を加熱して熱処理工程後の高温耐食材KBに変化せしめる構成としている。
図3に示すように、燃焼装置Sは、炉壁で囲繞され木材チップなどの固形燃料2を燃焼する燃焼炉1と、燃焼炉1を構成し固形燃料2を一方向に移動可能に載置する火格子台3と、火格子台3の上流側に固形燃料2を供給する燃料供給部4と、火格子台3に供給された固形燃料2を下流側へ向けて移動させる移動機構5と、火格子台3の上方に設けられ固形燃料2の燃焼ガスと流体との熱交換を行なう熱交換部6とを備えて構成されている。移動機構5は、燃焼炉1を構成し火格子台3の載置面に沿って進退動可能に設けられ進出時に固形燃料2を押して移動させるプッシャ7(図11も参照)と、プッシャ7を進退動させるプッシャ駆動部8とを備えて構成されている。そして、少なくとも炉材としてのプッシャ7を、高温耐食材KAを用いて形成している。そして、このプッシャ7は、その後、実際の運転により加熱されて、高温耐食材KBに変化せしめられる。
これにより、従来装置に比較してプッシャ7が高温に晒されても損傷しにくくなり耐久性が大幅に向上した。また、本燃焼装置Sの製造方法によれば、熱処理工程を、燃焼装置Sの実際の運転により行うことになるので、予め熱処理した高温耐食材KBを用いる場合に比較して、熱処理用の大型装置が不要になり、また熱処理の工数を減らすことができ、それだけ安価に燃焼装置を製造することができる。即ち、炉材を部品段階で熱処理する場合、それが大きいものである場合には、熱処理用の電気炉も大型のものを用いなければならないが、熱処理をすることなく装置を完成させ、熱処理は実際の運転により行うので、大型の電気炉を用意しなくても良く、それだけ、安価に製造できるのである。
<実験例>
(A)皮膜材料Hの成分実験
(A−1)
先ず、NiとAlの粉末材料を、at%で、1:1で調整し、上記の方法で複合体Fを製造し、皮膜材料Hとした。この皮膜材料Hをコールドスプレー法により基材Bに被覆した試料(以下コールドスプレー試料という)と、上記の本発明に係る高速フレーム溶射法により基材Bに被覆した試料(以下高速フレーム溶射試料という)とを作製した。
基材BとしてはSUS304を用いた。高速フレーム溶射の条件は、酸素圧力1MPa、流量300l/min、プロピレン圧力0.6MPa、流量270l/min、圧縮空気圧力0.5MPa、流量600l/min、溶射距離250mmとした。
そして、コールドスプレー試料及び高速フレーム溶射試料について、高温燃焼灰耐食試験を行った。高温燃焼灰耐食試験は、図4に示すように、試料上面に燃焼灰を置き、電気炉で850℃24時間加熱し皮膜の損傷状態を観察した。コールドスプレー試料は大きく損傷し、高速フレーム溶射試料は損傷が少なかった。
また、高温燃焼灰耐食試験後のコールドスプレー試料及び高速フレーム溶射試料について、X線回折パターンを測定した。結果を図5に示す。この結果から、図5(a)に示すように、コールドスプレー熱処理皮膜をみると、皮膜組成はNiOとAlNiで構成されているのに対し、図5(b)に示すように、高速フレーム溶射皮膜はNiOとAlNi3の組成であることがわかる。原料粉末のNiとAlの比率はat%で1:1で調整しているため、合成反応により生じる金属間化合物の最終組成はAlNiであることが予想されるが、高速フレーム溶射皮膜は、AlNi3とNiリッチな金属間化合物となっている。この要因については明らかではないが、数千度を超える高速フレームのフレーム内で、一部Alが揮発し、原料粉末に比べ皮膜中のNi比率が高くなっていることが考えられる。この最終組成の違いが、耐食性の違いに現れると考えられるため、最終組成がNiAlとなるように、原料粉末のNi/Al組成比を調整する必要があることがわかった。
(A−2)
以上の知見から、高速フレーム溶射皮膜において、最終組成をAlNiとするためには、原料粉末段階で、Alリッチな組成比とする必要があるため、Al混合比率を60at%、70at%、75at%、80at%とした皮膜材料Hを試作し、上記と同様の高温耐食試験を行った。結果を図6に示す。この結果、図6(a)に示すように、60at%Alの皮膜は、皮膜中央部に剥離が見られ、また剥離部以外も、燃焼灰による皮膜の損傷が確認できる。図6(d)に示すように、80at%Alの皮膜も同様に皮膜の剥離が確認できるが、燃焼灰との接触部分ではなく、外周の広い範囲で剥離が生じていることがわかる。これは燃焼灰による腐食の影響で剥離したのではなく、高温環境下での基材Bの熱膨張に皮膜が追従できず、界面で皮膜が剥離したものと考えられる。図6(a)(b)に示すように、70at%及び75at%Alの皮膜はどちらも剥離の発生は認められなかった。以上の結果から、Al含有量が低い場合は、燃焼灰に対する耐食性が低下し、Al含有量が高い場合には、皮膜と基材Bとの密着力が低下する傾向があると考えられる。また、皮膜剥離が生じない70at%Alの皮膜と75at%Alの皮膜を比較すると70at%Alの皮膜のほうが、燃焼灰との接触部分の損傷程度が小さいことがわかった。よって、皮膜材料H中のAlの含有量を65at%〜75at%に設定し、望ましくは、70at%±2at%に設定することが最適であることが分かった。
図7(a)に70at%Alの溶射後における皮膜断面の電子顕微鏡写真を示し、図7(b)に耐食試験後の皮膜断面の電子顕微鏡写真を示す。図7(a)に示すように、溶射後の組織を見ると、概ね3種類の組成コントラストで構成されていることがわかる。原料粉末はNiとAlのみの組成であるため、3つの組成は、Ni、Al、及びNiとAlの化合物と考えられ、溶射による製膜プロセスで第一段階の合成反応が生じていることがわかる。即ち、基材Bに形成された皮膜が、NiAlの金属間化合物,未反応のNi及び未反応のAlが混在して形成され、NiAlの金属間化合物を10Vol%〜60Vol%有する。
次に、図7(b)に示すように、耐久試験後の皮膜を見ると、2種類の組成コントラストとなっていることがわかる。これは耐食試験時の高温環境下で皮膜の合成反応が進み最終的に2種類の組成となったと考えられる。この組成を特定するために、耐食試験前と耐食試験後の皮膜のX線回折パターンを測定した。結果を図8(a)(b)に示す。これらのX線回折パターンから、耐食試験後の組成はNiAlとAl23のピークが検出されていることがわかり、目的としていた、NiAlが主組成となる皮膜であることを確認した。即ち、基材Bに形成された皮膜は、NiAlの金属間化合物及びAl23が混在して形成されている。
(B)皮膜材料Hの大きさ実験
上記のボールミル(図2)を用い、ボールの衝突エネルギーを利用して異種粉末を複合化し、大きさの異なる複合体Fを作製して比較した。当初、使用する原料粉末はNi、Alともに10μm以下の微細紛を使用し、コールドスプレー処理に適するような1時間程度の処理時間としていた。図9(a)に皮膜材料の写真を示す。しかしながら、この条件で作製した皮膜材料では、高速フレーム溶射での製膜時にノズル詰まりが発生するという問題が生じた。これは、コールドスプレーで使用する粉末は、材料によっても異なるが、製膜時の粒子速度を重視するため、10〜30μmほど度の細かい粉末を用いるのが一般的であることによる。そのため、溶射で使用する複合体の粉末として、数十μm〜数百μmのものを使用するが、それでも、粉末供給装置が微細紛の供給に適した構造にはなっていないので、対応が不十分になる。そこで、平均粒子径が約100μmで、篩分級により25μm以下の粉末を除去した皮膜材料Hを作製した。
図9(b)及び図10に改良後の皮膜材料Hの写真を示す。図9(a)に示す改良前の粉末外観を見ると、数ミクロンの非常に細かい粒子が点在していることがわかる。これはミリング工程で複合化されずに残存した一次粒子である。図9(b)及び図10に示す改良後のSEM写真を見ると、このような微粒子は殆どなく、100μm程度の大きさの粒子が主体となっていることがわかる。この改良により、粉末の流動性が著しく改善し、ノズル詰まりを解消することができた。
(C)燃焼装置での実験
図3に示す燃焼装置Sにおいて、図11に示すように、燃焼炉の炉材であるプッシャの先端に溶射皮膜を形成した。この部品は、固形燃料としてのチップが燃焼する火格子(ロストル)上にチップを供給する部品であり、先端部は常に高温環境下で燃料及び燃焼灰と接触することから、燃焼炉内の中で最も損傷が激しい部位である。ここでは、プッシャの山形の先端のうち、片側のみ皮膜を施工した。高速フレーム溶射による製膜は、部材を脱脂した後、溶射面に#24のアルミナグリッドにてブラスト処理を行い、基材表面を約150℃に予熱し行った。高速フレーム溶射装置の溶射ガンを6軸の多関節ロボットに保持し、皮膜厚さが約220μmとなるようPass数を調整した。図12(a)にプッシャの炉内設置状況を示す。図12(b)に稼働時間30時間のプッシャの先端の状態を示す。図12(c)に稼動時間700時間のプッシャ先端の状態を示す。700時間経過後も、燃焼開始初期の30時間と同様に皮膜の剥離や損傷は発生していないことがわかる。
本発明によれば、燃焼装置の耐熱部分に用いることが有効である。本発明に係る高温耐食材を、燃焼装置の耐熱部分に用いると、皮膜は極めて高い耐熱性,耐食性の皮膜であることから、剥離しにくく、そのため、環境負荷の小さいバイオマス燃料の安全性を確保し、バイオマスエネルギーの普及拡大に貢献する材料となるのである。
KA 高温耐食材
KB 高温耐食材
B 基材
H 皮膜材料
(1)溶射工程
(2)熱処理工程
F 複合体
S 燃焼装置
1 燃焼炉
2 固形燃料
3 火格子台
4 燃料供給部
5 移動機構
6 熱交換部
7 プッシャ
8 プッシャ駆動部

Claims (9)

  1. 金属製の基材に対してAl及びNiの粉末材料を主とした皮膜材料を溶射して該基材に溶射皮膜を形成した高温耐食材であって650℃以上の高温に晒される高温耐食材を作製する高温耐食材の作製方法において、
    上記基材に対して上記皮膜材料を高速フレーム溶射法によって溶射する溶射工程を備え、該溶射工程で用いる皮膜材料中のAlの含有量を65at%〜75at%にしたことを特徴とする高温耐食材の作製方法。
  2. 上記皮膜材料を、上記Al及びNiの粉末材料を非化合物化及び非合金化の状態で密着させてなる粉末状の複合体を含んで構成したことを特徴とする請求項1記載の高温耐食材の作製方法。
  3. 上記Al及びNiの粉末材料の平均粒径を50μm未満にしたことを特徴とする請求項2記載の高温耐食材の作製方法。
  4. 上記皮膜材料の複合体の平均粒径を、100μm〜150μmにしたことを特徴とする請求項3記載の高温耐食材の作製方法。
  5. 上記複合体を含む皮膜材料を、篩分級により粒径が25μm以下の粉末を除外したことを特徴とする請求項4記載の高温耐食材の作製方法。
  6. 上記溶射工程後に、上記皮膜材料が溶射された基材を、650℃以上の温度で熱処理する熱処理工程を備えたことを特徴とする請求項1乃至5何れかに記載の高温耐食材の作製方法。
  7. 上記請求項1乃至5何れかに記載の高温耐食材の作製方法によって作製される高温耐食材であって、上記基材に形成された皮膜が、Ni―Al系の金属間化合物,未反応のNi及び未反応のAlが混在して形成され、Ni―Al系の金属間化合物を10Vol%〜60Vol%有することを特徴とする高温耐食材。
  8. 上記請求項6記載の高温耐食材の作製方法によって作製される高温耐食材であって、上記基材に形成された皮膜が、NiAlの金属間化合物及びAl23が混在して形成されたことを特徴とする高温耐食材。
  9. 運転時に650℃以上の高温に晒される燃焼炉を炉材で形成した燃焼装置の製造方法において、上記燃焼炉の炉材の全部若しくは一部を上記請求項7記載の高温耐食材を用いて形成し、その後、実際の運転により上記炉材を上記請求項8記載の高温耐食材に変化せしめることを特徴とする燃焼装置の製造方法。
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