JP2017179424A - 耐摩耗鋼板及びその製造方法 - Google Patents

耐摩耗鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ブリネル硬さ(HBW10/3000)が360以上の低温靭性に優れる耐摩耗鋼板及びその製造方法を提供する。【解決手段】Si、Mn、Cr、Nb、Bを含み、質量%で、C:0.10〜0.21%、Al:0.005〜0.020%、Ca:0.0005〜0.0030%、O:0.0005〜0.0060%を含有し、鋼板に含まれる酸化物粒子の長径が1.0μm以下であり、前記酸化物粒子は、Ca、Al、Oを含み、Oを除いた組成が、質量%で、Ca:30%以上、Al:30%以上である、耐摩耗鋼板。減圧雰囲気の二次精錬工程で、溶存酸素濃度が80ppm以下の溶鋼に、順次、Al、Caを添加し、溶鋼を鋳造し、得られた鋼片を熱間圧延し、そのまま水冷して、250℃以下の温度まで焼入れるか、又は、熱間圧延して室温まで空冷した後、Ac3点以上の温度に加熱して焼入れる製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、ブリネル硬さ(HBW10/3000)が360以上の耐摩耗鋼鋼板及びその製造方法に関し、特に、鋼板の中でも3mm以上の板厚を有する厚鋼板に適用して好適なものである。
鉱山、土木、農業、建設等は、素材が摩耗し易い環境であり、使用される鋼板には耐摩耗性が求められる。近年、例えば、鉱山で使用される産業機械の素材である鋼板には、耐摩耗性を高めて鉱石粉砕処理能力を長寿命化させるために、高硬度化が求められている。
また、産業機械等が使用される環境は多岐に亘り、寒冷地では鋼板に低温靭性も求められる。しかし、一般に、鋼材の硬度を高めると低温靭性が低下し、使用中に鋼材に割れが発生する可能性がある。特に、ブリネル硬さ(HBW10/3000)が360以上という高硬度の耐摩耗鋼板には、低温靭性の向上が強く要望されている。
従来、低温靭性を向上させるために、Nbを利用して組織を微細化した耐摩耗鋼板が提案されている(例えば、特許文献1〜3、参照)。)しかし、これらの方法によっても、安定的に−40℃での良好なシャルピー吸収エネルギー値を有する、低温靭性に優れた耐摩耗鋼板を得ることは容易ではない。
特開2014−194042号公報 特開2014−194043号公報 特表2014−529686号公報
従来、耐摩耗鋼板の低温靭性の評価は、−40℃で3本の試料を用いて試験を行い、測定されたシャルピー吸収エネルギーの平均値によって行っていた。しかし、3本のうち、1本のシャルピー吸収エネルギーが低下することもある。このような、局所的に低温靭性が低下した部位が存在すると、そこから割れが発生する可能性がある。
本発明はこのような実情に鑑み、ブリネル硬さ(HBW10/3000)が360以上で、従来よりも安定的に低温靭性に優れた耐摩耗鋼板及びその製造方法の提供を課題とするものである。
低温靭性を阻害する主な因子として、(a)低温脆性の起点となる介在物のサイズ及び数、(b)大傾角粒界で分割される有効結晶粒径、(c)PやSなどの不純物量、の三つが挙げられる。特に、耐摩耗性の向上のために鋼材が高硬度になるほど、上記のうち、(a)の介在物の影響が顕著に表れる傾向がある。破壊が発生する起点となる介在物は、局所的な低温靭性の低下にも大きく影響を及ぼすと考えられる。
したがって、高硬度である耐摩耗鋼板の、特に局所的な低温靭性の低下を抑制するためには、介在物の微細化は極めて有効な手段である。そして、介在物のうち、精錬時に生成する酸化物は粗大なものが多いことから、酸化物を微細にすることで、局所的な低温靭性の低下を防止できると考えられる。
本発明者らは、破壊の起点となる粗大な介在物の生成を抑制するという観点で、耐摩耗鋼板の低温靭性を向上させるべく、酸化物を微細化するための検討を重ねた。その結果、酸化物の組成を適正に制御すると粗大な酸化物が減少し、優れた低温靭性を有する耐摩耗鋼板が得られることを見出した。
本発明は、このような知見に基づき、更に検討を加えてなされたものであって、その要旨は以下のとおりである。
[1]質量%で、
C:0.10〜0.21%、
Si:0.05〜0.70%、
Mn:0.50〜2.00%、
Cr:0.05〜1.20%、
Nb:0.01〜0.08%、
B:0.0005〜0.0030%、
Al:0.005〜0.020%、
Ca:0.0005〜0.0030%、
O:0.0005〜0.0060%
を含有し、
P:0.015%以下、
S:0.010%以下、
N:0.006%以下
に制限し、残部がFe及び不純物からなり、
鋼板に含まれる酸化物粒子の長径が1.0μm以下であり、
前記酸化物粒子は、Ca、Al、Oを含み、Oを除いた組成が、質量%で、Ca:30%以上、Al:30%以上であり、
鋼のブリネル硬さ(HBW10/3000)が360以上である
ことを特徴とする耐摩耗鋼板。
[2]更に、質量%で、
Cu:1%以下、
Ni:1%以下、
Mo:0.6%以下、
V:0.2%以下、
Ti:0.05%以下
の一種又は二種以上を含有することを特徴とする上記[1]に記載の耐摩耗鋼板。
[3]減圧雰囲気の二次精錬工程で、溶存酸素濃度が80ppm以下の溶鋼に、順次、Al、Caを添加し、溶鋼を鋳造して、上記[1]又は[2]に記載の化学成分及び酸化物粒子を有する鋼片とし、前記鋼片を熱間圧延し、そのまま水冷して、250℃以下の温度まで焼入れることを特徴とする耐摩耗鋼板の製造方法。
[4]減圧雰囲気の二次精錬工程で、溶存酸素濃度が80ppm以下の溶鋼に、順次、Al、Caを添加し、溶鋼を鋳造して、上記[1]又は[2]に記載の化学成分及び酸化物粒子を有する鋼片とし、前記鋼片を熱間圧延し、室温まで空冷した後、Ac3点以上の温度に加熱して焼入れることを特徴とする耐摩耗鋼板の製造方法。
本発明によれば、ブリネル硬さが360(HBW10/3000)以上で、安定的に優れた低温靭性を有する耐摩耗鋼板及びその製造方法を提供することができる。したがって、本発明は、寒冷地で使用される産業機械の耐摩耗部材の長寿命化を図ることができるなど、産業上の貢献が極めて顕著である。
耐摩耗鋼板に含まれる酸化物粒子の長径の最大値と、Ca、Alの濃度との関係を説明する図である。
鋼板に必然的に含まれる酸化物粒子は硬質であり、脆性破壊の起点となりやすく低温靭性を低下させる原因となる。酸化物粒子が脆性破壊の起点になるか否かは、酸化物粒子の大きさに依存する。本発明者らによる検討の結果、耐摩耗鋼板の低温靭性をシャルピー衝撃試験で評価する場合は、酸化物粒子の長径の最大値がシャルピー吸収エネルギーの最低値を決定する要因となることがわかった。
酸化物粒子の長径の最大値は、抽出レプリカ法で作製した試料を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、写真撮影を行って、20点以上の酸化物粒子の長径を測定し、極値統計法によって求めた。そして、本発明者らは、酸化物粒子の長径が1.0μm以下であれば、ブリネル硬さ(HBW10/3000)が360以上の耐摩耗鋼板の−40℃のシャルピー吸収エネルギーの最低値が100J以上になることを知見した。
次に、酸化物粒子の長径と、酸化物の組成との関係について検討を行った。酸化物を生成する元素はMn、Si、Ti、Al、Caなどがある。これらを脱酸元素と称することがあるが、その脱酸力、酸素との結合しやすさには順位があり、Mn、Si、Ti、Al、Caの順に脱酸力は強くなる。
本発明者らの検討により、脱酸力の強い元素で生成する酸化物粒子は微細になり、例えば、Mn酸化物、Si酸化物に比べて、Al酸化物、Ca酸化物の方が、粒子径が小さくなるという傾向が認められた。これは、脱酸力の弱い元素の酸化物は溶鋼中で液相となりやすく、合体して粗大化しやすいが、一方、脱酸力の強い元素の酸化物は溶鋼中で固相となりやすく粗大化しにくいためであると考えられる。
また、耐摩耗鋼板に含まれる、ほとんどの酸化物粒子は複数の脱酸元素を含んでいることがわかった。本発明者らは、抽出レプリカ法で作製した試料をTEMで観察し、酸化物の組成をTEMに付属するエネルギー分散型X線分光分析装置(EDS)を用いて解析し、酸化物粒子の組成と長径との関係を詳細に調査した。その結果、Ca、Alを多く含む酸化物は長径が小さくなることをつきとめた。
図1は、耐摩耗鋼板に含まれる酸化物粒子の長径の最大値と、Ca、Alの濃度との関係を示した図である。図1に示すように、酸素を除く酸化物粒子の組成において、Caが30質量%以上、Alが30質量%以上のとき、酸化物粒子の長径の最大値が1.0μm以下になる。そして、このような組成を有し、長径の最大径が1.0μm以下の酸化物粒子を含む、ブリネル硬さ(HBW10/3000)が360以上の耐摩耗鋼板は、−40℃のシャルピー吸収エネルギーの最低値が100J以上になることを確認した。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明における鋼成分組成の限定理由について述べる。成分組成を示す%は、何れも質量%である。
(C:0.10〜0.21%)
Cは、鋼の硬化に有効な元素であり、耐摩耗鋼板のブリネル硬さを確保するために、C含有量を0.10%以上とする。好ましくは0.13%以上とする。一方、C含有量が過剰であると低温靭性が低下するため、上限を0.21%とする。好ましくは0.18%以下、より好ましくは0.16%以下とする。
(Si:0.05〜0.70%)
Siは、脱酸剤であり、鋼の硬化にも有効な元素である。効果を得るために、Si含有量を0.05%以上とする。好ましくは0.10%以上、より好ましくは0.20%以上とする。一方、Si含有量が過剰であると低温靭性が低下するので、上限を0.70%とする。好ましくは0.60%以下、より好ましくは0.40%以下とする。
(Mn:0.50〜2.00%)
Mnは、焼入れ性を高め、鋼の硬化に寄与する元素である。マルテンサイトの生成を促進し、耐摩耗鋼板のブリネル硬さを確保するために、Mn含有量を0.50%以上とする。好ましくは1.00%以上、より好ましくは1.30%以上とする。一方、Mn含有量が過剰であると、過度の硬さの上昇や介在物に起因して低温靭性が低下するため、上限を2.00%とする。好ましくは1.80%以下、より好ましくは1.60%以下とする。
(Cr:0.05〜1.20%)
Crは、焼入れ性を高め、鋼の硬化に寄与する元素である。マルテンサイトの生成を促進し、耐摩耗鋼板のブリネル硬さを高めるために、Cr含有量を0.05%以上とする。好ましくは0.10%以上、より好ましくは0.20%以上とする。一方、Cr含有量が過剰であると溶接性が劣化するため、上限を1.20%とする。好ましくは1.00%以下、より好ましくは0.80%以下とする。
(Nb:0.01〜0.08%)
Nbは、焼入れ性を高め、また、組織を微細化して、ブリネル硬さ及び低温靭性の向上に寄与する元素であり、Nb含有量を0.01%以上とする。一方、Nb含有量が過剰であると溶接部の靭性が劣化するため、0.08%を上限とする。好ましくは0.07%以下、より好ましくは0.06%以下とする。
(B:0.0005〜0.0030%)
Bは、焼入れ性の向上に有効な元素である。マルテンサイトの生成を促進し、耐摩耗鋼板のブリネル硬さを高めるために、B含有量を0.0005%以上とする。好ましくは0.0007%以上、より好ましくは0.0010%以上とする。一方、B含有量が過剰であると溶接部の靭性が劣化するため、0.0030%を上限とする。好ましくは0.0020%以下、より好ましくは0.0015%以下とする。
(Al:0.005〜0.020%)
Alは、脱酸元素であり、酸化物の組成を制御するために重量な元素である。酸化物粒子のAl濃度を確保し、微細化するために、Al含有量を0.005%以上にすることが必要である。好ましくは0.006%以上、より好ましくは0.007%以上とする。一方、酸化物粒子のCa濃度を確保するために、Al含有量を0.020%以下にすることが必要である。好ましくは0.018%以下、より好ましくは0.015%以下とする。
(Ca:0.0005〜0.0030%)
Caは、脱酸元素であり、Alと同様、酸化物の組成を制御するために重量な元素である。酸化物粒子のCa濃度を確保し、微細化するために、Ca含有量を0.0005%以上にすることが必要である。好ましくは0.0006%以上、より好ましくは0.0008%以上とする。一方、Caは硫化物を形成する元素であり、Ca含有量が過剰であると粗大なCa硫化物の生成によって低温靭性が低下するので、0.0030%以下とする。好ましくは0.0025%以下、より好ましくは0.0020%以下とする。
(O:0.0005〜0.0060%)
Oは、酸化物粒子を形成する元素であり、少ないほど好ましいが、製造コストの観点から、O含有量の下限を0.0005%とする。一方、O含有量が過剰であると粗大な酸化物が増加し、低温靭性を低下させることから、上限を0.0060%とする。好ましくは0.0030%以下、より好ましくは0.0025%以下とする。
(P:0.015%以下)
(S:0.010%以下)
P、Sは、不純物であり、低温靭性を確保するため、P含有量を0.015%以下、S含有量を0.010%以下に制限する。好ましくはP含有量を0.010%以下、S含有量を0.006%以下に制限する。P及びSは低温靭性を低下させるため含有量は少ないほど好ましい。P含有量及びS含有量の下限は0%が好ましいが、製造コストの観点から、P含有量及びS含有量の下限は0.0001%であってもよい。
(N:0.006%以下)
Nは、不純物であり、Bを含む窒化物の生成による焼入れ性の低下を抑制するため、N含有量を0.006%以下に制限する。N含有量は0.005%以下が好ましく、より好ましくは0.004%以下とする。ただし、微細な窒化物の形成は組織の微細化に寄与するため、N含有量は0.001%以上であってもよい。
本発明では、必要に応じて、Cu、Ni、Mo、V、Tiの一種又は二種以上含有することができる。
(Cu:1%以下)
(Ni:1%以下)
(Mo:0.6%以下)
Cu、Ni、Moは焼入れ性を向上させる元素であり、マルテンサイトの生成を促進し、耐摩耗鋼板のブリネル硬さを高めるために、0.1%以上を含有させてもよい。ただし、Cu、Ni、Moは高価な元素であり、Cu含有量及びNi含有量は1%以下が好ましく、Mo含有量は0.6%以下が好ましい。より好ましくはCu含有量及びNi含有量を0.5%以下、Mo含有量を0.3%以下とする。
(V:0.2%以下)
(Ti:0.05%以下)
V、Tiは、炭化物や窒化物を形成する元素であり、微細な析出物の生成による硬さの上昇や、組織の微細化による低温靭性の向上を目的として含有させてもよい。好ましくはV含有量及びTi含有量を0.01%以上とする。ただし、V、Tiの含有量が過剰になると、低温靭性が低下することがあるので、V含有量は0.2%以下、Ti含有量は0.05%以下が好ましい。より好ましくはV含有量を0.05%以下、Ti含有量を0.03%以下とする。更に好ましくはV含有量及びTi含有量を0.02%以下とする。
上記成分の残部は、鉄及び不純物である。ここで、不純物とは、鋼を工業的に製造する際に、鉱石やスクラップ等のような原料を始めとして、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。ただし、本発明においては、不純物のうち、P、S及びNについては、上述のように、上限を規定する必要がある。
本発明の耐摩耗鋼板に含まれる酸化物粒子について説明する。
ブリネル硬さ(HBW10/3000)が360以上である本発明の耐摩耗鋼板に含まれる酸化物粒子の長径は、−40℃のシャルピー吸収エネルギーの最低値を100J以上にするため、1.0μm以下とする。酸化物粒子の長径の最大値は、抽出レプリカ法で試料を作製し、TEMによって撮影した写真を用いて20点以上の酸化物粒子の長径を測定し、極値統計法によって求める。
また、酸化物粒子は、Ca、Al、Oを含み、Oを除いた組成が、質量%で、Ca:30%以上、Al:30%以上である。Ca、Alの何れかの組成が30質量%未満であると、酸化物粒子の長径の最大値が1.0μmを超えて粗大になる。酸化物粒子の組成は、TEMに付属するEDSを用いて求める。本発明の耐摩耗鋼板の金属組織は、特に規定しないが、マルテンサイトの面積率が90%以上であることが好ましい。
本発明の耐摩耗鋼板の製造方法について説明する。本発明の耐摩耗鋼板は、熱間圧延によって製造される鋼板であり、好ましくは板厚が3mm以上、より好ましくは6mm以上の耐摩耗厚鋼板である。本発明では、酸化物の組成を制御するため、製鋼工程が重要である。成分の調整後、鋳造して得られた鋼片を熱間圧延し、そのまま水冷するか、又は空冷した後、再加熱して焼入れて、耐摩耗性鋼板を製造する。本発明の耐摩耗鋼板には、厚板圧延によって製造される鋼板だけでなく、熱間圧延後にコイルに巻き取って製造した鋼帯を切断した鋼板も含まれる。
まず、酸化物の組成を、酸素を除いて、Caが30%以上、Alが30%以上とする製鋼工程について説明する。酸化物の組成の制御は、転炉での精錬後、真空精練装置や不活性ガス中での精練装置によって行われる二次精錬工程で行う。二次精錬工程では、脱酸開始前の溶鋼に含まれる溶存酸素濃度を80ppm以下に抑え、脱酸元素をAl、Caの順に添加することが重要である。
転炉での精錬後、溶鋼の溶存酸素濃度が80ppmより多い場合には、減圧雰囲気で脱酸力の弱い元素、Mn、Siなど、を添加して溶存酸素濃度を80ppm以下とする。Alを添加する前の溶鋼の溶存酸素濃度が80ppmを超えていると、酸化物が粗大になる。また、脱酸開始前の溶鋼の溶存酸素濃度が80ppm以下であっても、Alを添加する前にCaを添加すると、酸化物にAl濃度が低下し、酸化物が粗大になる。
鋳造後、そのまま熱間圧延を行ってもよいが、鋼片を、一旦、室温まで冷却し、Ac3以上の温度に再加熱して、熱間圧延を行ってもよい。Ac3は鋼の組織がオーステナイトになる温度である。熱間圧延の加熱温度は、変形抵抗を低下させるために、好ましくは900℃以上、より好ましくは1000℃以上とする。一方、加熱温度が高過ぎると組織が粗大になり、低温靭性が低下する場合があるため、1200℃以下が好ましい。より好ましくは1150℃以下とする。
熱間圧延は、フェライト変態が開始する温度であるAr3以上で終了することが好ましい。Ac3及びAr3は、鋼片から試験片を採取し、加熱時及び冷却時の熱膨張挙動から求めることができる。熱間圧延後、そのまま水冷する場合は、250℃以下の温度まで焼入れる。鋼帯を製造する場合は、熱間圧延後、水冷して250℃以下で巻取る。熱間圧延後、空冷してAc3以上の温度に再加熱し、焼入れてもよい。焼入れにより、ラスマルテンサイト組織が生成し、耐摩耗性を有するブリネル硬さ(HBW10/3000)が360以上で、低温靭性に優れた鋼板を得ることができる。
表1に示す成分組成の鋼を溶製して得られた鋼片を、表2に示す製造条件にて板厚30mmの鋼板とした。得られた鋼板から試料を採取し、抽出レプリカを作製して、TEM及びEDSにより、酸化物粒子の組成、長径を測定した。酸化物粒子の長径の最大は極値統計法によって求めた。また、鋼板の表面のブリネル硬さ(HBW10/3000)をJIS Z 2243に準拠して測定した。板厚1/4位置から圧延方向に直角な方向にVノッチ試験片を採取し、JIS Z 2242に規定の方法で−40℃でのシャルピー吸収エネルギー値(vE-40)を求めた。シャルピー吸収エネルギー値は、3本の試験片の測定結果の最小値である。
結果を表2に示す。ブリネル硬さは360以上、シャルピー吸収エネルギー値(vE-40)が100J以上を良好と評価した。
Figure 2017179424
Figure 2017179424
製造No.1〜11は、いずれも硬さが360以上、シャルピー吸収エネルギー値(vE-40)が100J以上であり、目標値を満足した。これに対して、以下の比較例は硬さ、靭性の一つ以上が不足する。
製造No.12はAl、Caを添加する前の溶鋼の溶存酸素量が多く、酸化物粒子が粗大になり靭性が低下した例である。製造No.21は水冷停止温度が高いため、硬さが不足した例である。製造No.13はC含有量が少なく、硬さが不足した例である。一方、製造No.14はC含有量が多く、硬さが高くなりすぎ、靭性が低下した例である。製造No.15はAl含有量が少なく、製造No.18はCa含有量が多く、酸化物粒子のAl濃度が低く、粗大になり、靱性が低下した例である。
製造No.16はAl含有量が多く、製造No.17はCa含有量が少なく、酸化物粒子のCa濃度が低く、粗大になり、靱性が低下した例である。製造No.19はO含有量が過剰であり、酸化物粒子が粗大になり、靱性が低下した例である。製造No.20はAl及びCaの含有量が少なく、酸化物粒子のAl及びCaの濃度が低く、粗大になり、靭性が低下した例である。
本発明の耐摩耗鋼板は、土木や鉱山用の建設機械及び大型の産業機械の部材などに好適に使用される。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.10〜0.21%、
    Si:0.05〜0.70%、
    Mn:0.50〜2.00%、
    Cr:0.05〜1.20%、
    Nb:0.01〜0.08%、
    B:0.0005〜0.0030%、
    Al:0.005〜0.020%、
    Ca:0.0005〜0.0030%、
    O:0.0005〜0.0060%
    を含有し、
    P:0.015%以下、
    S:0.010%以下、
    N:0.006%以下
    に制限し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    鋼板に含まれる酸化物粒子の長径が1.0μm以下であり、
    前記酸化物粒子は、Ca、Al、Oを含み、Oを除いた組成が、質量%で、Ca:30%以上、Al:30%以上であり、
    鋼のブリネル硬さ(HBW10/3000)が360以上である
    ことを特徴とする耐摩耗鋼板。
  2. 更に、質量%で、
    Cu:1%以下、
    Ni:1%以下、
    Mo:0.6%以下、
    V:0.2%以下、
    Ti:0.05%以下
    の一種又は二種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐摩耗鋼板。
  3. 減圧雰囲気の二次精錬工程で、溶存酸素濃度が80ppm以下の溶鋼に、順次、Al、Caを添加し、溶鋼を鋳造して、請求項1又は2に記載の化学成分及び酸化物粒子を有する鋼片とし、前記鋼片を熱間圧延し、そのまま水冷して、250℃以下の温度まで焼入れることを特徴とする耐摩耗鋼板の製造方法。
  4. 減圧雰囲気の二次精錬工程で、溶存酸素濃度が80ppm以下の溶鋼に、順次、Al、Caを添加し、溶鋼を鋳造して、請求項1又は2に記載の化学成分及び酸化物粒子を有する鋼片とし、前記鋼片を熱間圧延し、室温まで空冷した後、Ac3点以上の温度に加熱して焼入れることを特徴とする耐摩耗鋼板の製造方法。
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