JP2017179290A - ポリビニルエステルの製造方法およびポリビニルアルコールの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】分子量分布の狭いポリビニルエステルが短時間で得られるポリビニルエステルの製造方法を提供する。【解決手段】重合開始剤(A)および有機コバルト錯体(B)の存在下に制御ラジカル重合によってビニルエステル単量体を重合するポリビニルエステルの製造方法であって、重合開始剤(A)が、重合開始剤(a1)および重合開始剤(a2)を含み、重合開始剤(a1)の10時間半減期温度T1が25〜55℃であり、重合開始剤(a2)の10時間半減期温度T2がT1よりも3〜35℃低く、かつ前記ポリビニルエステルの分子量分布(Mw/Mn)が1.05〜1.70である、ポリビニルエステルの製造方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、分子量分布の狭いポリビニルエステルが短時間で得られるポリビニルエステルの製造方法および当該ポリビニルエステルを用いたポリビニルアルコールの製造方法に関する。
ポリビニルエステルは、ポリビニルアルコールの原料等として広く使用されている。ポリビニルアルコールはポリビニルエステルをけん化することで得られる結晶性の水溶性高分子材料であり、その優れた水溶性や皮膜特性(強度、耐油性、造膜性、酸素ガスバリア性等)を利用して、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、繊維加工剤、各種バインダー、紙加工剤、接着剤、フィルム等に使用されている。
ポリビニルエステルは、工業的にはビニルエステルをラジカル重合することによって生産されている。ビニルエステルのラジカル重合反応では、重合中に連鎖移動反応や再結合停止反応等種々の副反応が併発するため、得られるポリビニルエステルの分子量分布等を精密に制御することは一般に困難とされている。低分子量の重合体の含有量が多く、分子量分布が広いポリビニルエステルを用いて得られるポリビニルアルコールは、熱安定性や機械的物性が不十分である場合があった。
近年、いわゆるリビングラジカル重合技術の進歩により、酢酸ビニル等のビニルエステルのラジカル重合反応を制御する方法がいくつか提案されてきた。例えば、ラジカル重合開始剤と特定の制御剤の存在下でビニルエステルのラジカル重合反応を行うことによって、分子量分布が狭いポリビニルエステルを得る方法が提案されている。このような重合反応においては、ポリビニルエステルの分子鎖の成長ラジカル末端が制御剤と共有結合してドーマント種を形成し、当該ドーマント種とそれが解離して生じるラジカル種との間で平衡を形成しながら重合が進行する。このような重合反応は制御ラジカル重合と呼ばれる。
最近、有機コバルト錯体を制御剤とする制御ラジカル重合によって、分子量分布が狭く、かつ高分子量のポリ酢酸ビニルを合成する手法が提案されている。この重合反応においては、ポリ酢酸ビニルの分子鎖の成長ラジカル末端が有機コバルト錯体のコバルト原子と共有結合してドーマント種を形成し、当該ドーマント種とそれが解離して生じるラジカル種との間で平衡を形成しながら重合が進行する。例えば非特許文献1には、コバルト(II)アセチルアセトナートの存在下に酢酸ビニルを24時間重合させることによって、数平均分子量(Mn)が25,400で、分子量分布(Mw/Mn)が1.21のポリ酢酸ビニルを合成した例が報告されている。しかしながら、非特許文献1に記載された方法では、重合時間が長く問題であった。重合時間を短縮するため、重合温度を上げたり、半減期の短い重合開始剤を用いたりした場合には、反応の制御性の悪化や反応速度の急上昇がみられ、制御性・安全性を維持したまま重合時間を短縮するのは困難であった。
Highly Efficient Cobalt-Mediated Radical Polymerization of Vinyl Acetate, Angewandte Chemie International Edition, 2005, vol.44, p1101-1104
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、分子量分布の狭いポリビニルエステルが短時間で得られるポリビニルエステルの製造方法および当該ポリビニルエステルを用いたポリビニルアルコールの製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題は、重合開始剤(A)および有機コバルト錯体(B)の存在下に制御ラジカル重合によってビニルエステル単量体を重合するポリビニルエステルの製造方法であって、重合開始剤(A)が、重合開始剤(a1)および重合開始剤(a2)を含み、重合開始剤(a1)の10時間半減期温度T1が25〜55℃であり、重合開始剤(a2)の10時間半減期温度T2がT1よりも3〜35℃低く、かつ前記ポリビニルエステルの分子量分布(Mw/Mn)が1.05〜1.70である、ポリビニルエステルの製造方法を提供することによって解決される。
このとき、重合温度が55℃以下であることが好ましい。有機コバルト錯体(B)に対する重合開始剤(a1)のモル比(a1/B)が0.5〜3.5であり、有機コバルト錯体(B)に対する重合開始剤(a2)のモル比(a2/B)が1〜3であることも好ましい。
上記方法によって得られたポリビニルエステルをけん化するポリビニルアルコールの製造方法が本発明の好適な実施態様である。
本発明のポリビニルエステルの製造方法によれば、反応の制御性・安全性を維持しつつ、重合時間を短縮できるため、分子量分布の狭いポリビニルエステルが短時間で得られる。こうして得られるポリビニルエステルを用いる本発明のポリビニルアルコールの製造方法によれば、分子量分布の狭いポリビニルアルコールが得られる。
本発明は、重合開始剤(A)および有機コバルト錯体(B)の存在下に制御ラジカル重合によってビニルエステル単量体を重合するポリビニルエステルの製造方法であって、重合開始剤(A)が、重合開始剤(a1)および重合開始剤(a2)を含み、重合開始剤(a1)の10時間半減期温度T1が25〜55℃であり、重合開始剤(a2)の10時間半減期温度T2がT1よりも3〜35℃低く、かつ前記ポリビニルエステルの分子量分布(Mw/Mn)が1.05〜1.70である、ポリビニルエステルの製造方法である。
従来のポリビニルエステルの製造方法では、反応の制御性を維持しつつ、重合時間を短縮するのは困難であった。本発明者らは、10時間半減期温度が所定の関係を満足する重合開始剤(a1)および重合開始剤(a2)を含む重合開始剤(A)、および有機コバルト錯体(B)の存在下に制御ラジカル重合によってビニルエステル単量体を重合することによって、反応の制御性・安全性を維持しつつ、重合時間を短縮することに初めて成功した。この方法により、分子量分布の狭いポリビニルエステルを短時間で製造することができる。
制御ラジカル重合とは、成長ラジカル末端(活性種)が制御剤と結合した共有結合種(ドーマント種)との平衡状態におかれて反応が進行する重合反応のことである。本発明では、制御剤として有機コバルト錯体(B)が用いられる。
本発明で用いられるビニルエステル単量体としては、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられるが、経済的観点から酢酸ビニルが好ましく用いられる。
本発明で製造されるポリビニルエステルは、本発明の効果を損なわない範囲で、共重合可能なエチレン性不飽和単量体が共重合されたものでもよい。エチレン性不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和カルボン酸、その塩、そのモノまたはジアルキル(炭素数1〜18)エステルまたはその無水物;アクリルアミド、N−アルキル(炭素数1〜18)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド;メタクリルアミド、N−アルキル(炭素数1〜18)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;アルキル(炭素数1〜18)ビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
ビニルエステル単量体の重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法が挙げられる。その中でも、無溶媒で重合する塊状重合法あるいは種々の有機溶媒中で重合する溶液重合法が通常採用される。分子量分布の狭い重合体を得るためには、連鎖移動等の副反応を起こすおそれのある溶媒や分散媒を使用しない塊状重合法が好ましい。一方、反応液の粘度調整や、重合速度の制御等の面からは、溶液重合が好ましい場合もある。溶液重合時に溶媒として使用される有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール等の低級アルコール等が挙げられる。これらのうち、連鎖移動を防ぐためには、エステルや芳香族炭化水素が好ましく用いられる。溶媒の使用量は、目的とするポリビニルエステルの数平均分子量に合わせ、反応溶液の粘度を考慮して決定すればよい。例えば、質量比(溶媒/単量体)が0.01〜10の範囲から選択される。質量比(溶媒/単量体)は好適には0.1以上であり、好適には5以下である。
重合開始剤(A)に含有される重合開始剤(a1)の10時間半減期温度T1は25〜55℃である必要がある。従来公知のアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤等のうち、10時間半減期温度が25〜55℃であるものを重合開始剤(a1)として使用できる。本発明において、重合開始剤の10時間半減期温度は以下の方法で求めることができる。ラジカルに対して不活性な溶剤を使用して重合開始剤の希薄溶液を調製した後、一定の温度にて熱分解させることを複数の温度で行うことにより、10時間半減期温度を求めることができる。アゾ系重合開始剤溶液の調製にはトルエンを溶剤として用いることができ、過酸化物系開始剤の調製にはモノクロロベンゼンを溶剤として用いることができる。極性が高くてこれらの溶剤に対する溶解性が低い(0.1mol/L以下)重合開始剤の溶液の調製には水を溶剤として用いることもできる。
重合開始剤(a1)の10時間半減期温度T1が25℃未満の場合、反応の制御性が低下して、得られるポリビニルエステルの分子量分布が広がってしまう。この点からはT1は、27℃以上が好適である。一方、T1が55℃を超える場合、重合時間が長くなり、生産性が低下する。この点からはT1は、40℃以下がより好ましい。
重合開始剤(a1)として用いられるアゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(「V−70」、トルエン中での10時間半減期温度:30℃)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(「V−65」、トルエン中での10時間半減期温度:51℃)等が挙げられ、過酸化物系開始剤としては、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(モノクロロベンゼン中での10時間半減期温度:47℃)、クミルパーオキシネオデカノエート(モノクロロベンゼン中での10時間半減期温度:38℃)等が挙げられる。上記の過酸化物系開始剤と亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガリット等の還元剤とを組み合わせて使用しても構わない。
重合開始剤(A)に含有される重合開始剤(a2)の10時間半減期温度T2は重合開始剤(a1)の10時間半減期温度T1よりも3〜35℃低い必要がある。T1とT2がこの関係を満足しない場合、本発明の効果が奏されない。この点からはT2がT1よりも5℃以上低いことが好ましい。従来公知のアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤等のうち、併用する重合開始剤(a1)の10時間半減期温度T1よりも3〜35℃低い10時間半減期温度T2を有するものを重合開始剤(a2)として使用できる。重合開始剤(a2)としては、重合開始剤(a1)として用いられる重合開始剤として上述したもののうち、10時間半減期温度が25〜52℃のものや、後述する10時間半減期温度が25℃未満のものが挙げられる。重合開始剤(a2)として用いられる10時間半減期温度が25℃未満の過酸化物系開始剤としては、ジイソブチリルパーオキシド(モノクロロベンゼン中での10時間半減期温度:23℃)等が挙げられる。重合開始剤(A)が3種類以上の開始剤を含む場合、重合開始剤(a1)および重合開始剤(a2)として、任意の2種類を選択すればよい。
重合開始剤(A)中の重合開始剤(a1)に対する重合開始剤(a2)のモル比(a2/a1)が1/9〜9/1であることが好ましい。モル比(a2/a1)が1/9未満の場合には、重合開始剤(a2)の添加効果が得られず、生産性の悪化を招くおそれがある。この点からはモル比(a2/a1)は3/7以上がより好ましい。一方、モル比(a2/a1)が9/1を超えると重合開始剤(a1)の添加効果が得られず、反応の制御性の悪化や反応速度の急上昇を招くおそれがある。この点からはモル比(a2/a1)は8.5/1.5以下がより好ましい。
重合開始剤(A)中の重合開始剤(a1)および重合開始剤(a2)の合計量が50mol%以上であることが好ましい。当該合計量が50mol%未満の場合には、本発明の効果が奏されないおそれがある。この点からは前記合計量は70mol%以上であることがより好ましく、90mol%以上であることがさらに好ましく、95mol%以上であることが特に好ましく、重合開始剤(A)が実質的に重合開始剤(a1)および重合開始剤(a2)からなるものであることが最も好ましい。
本発明で用いられる有機コバルト錯体(B)は、2価のコバルト原子と有機配位子を含むものであればよい。有機コバルト錯体(B)としては、コバルト(II)アセチルアセトナート[Co(acac)]、コバルト(II)ポルフィリン錯体等が好適である。中でも、製造コストの観点からコバルト(II)アセチルアセトナートがより好適である。
本発明で用いられる制御ラジカル重合では、まず、重合開始剤(A)が分解して発生したラジカルが少数のビニルエステルと結合して生じた短鎖の重合体の成長末端のラジカルが有機コバルト(II)錯体である有機コバルト錯体(B)と結合して、有機コバルト(III)錯体が重合体末端との共有結合によって結合されたドーマント種が生成する。反応開始後の一定期間は、短鎖の重合体が生成してはドーマント種に変換されるだけで、高重合度化は実質的に進行しない。この期間を誘導期という。本発明では、誘導期において、10時間半減期温度T2が低い重合開始剤(a2)が分解することにより多量のラジカルが短時間で発生する。このラジカルによって有機コバルト錯体(B)が短時間で消費されるため、高重合度化が進行する成長期へ早期に移行するものと考えられる。そして、成長期においては、主として10時間半減期温度T1が高い重合開始剤(a1)が分解することによりラジカルが少しずつ発生するため、反応系内のほとんどの分子鎖の分子量が重合時間に比例して同じように増加する。これによって、分子量分布の狭いポリビニルエステルを得ることができる。以上のように、10時間半減期温度が所定の関係を満足する重合開始剤(a1)および重合開始剤(a2)を含む重合開始剤(A)を用いることによって、反応の制御性を維持しつつ、誘導期を短縮して重合時間を短縮できるものと考えられる。
上記のように、本発明の制御ラジカル重合では、理論上は、添加する有機コバルト錯体(B)一分子から一つのポリビニルエステル鎖が生成する。したがって、反応液に添加される有機コバルト錯体(B)の量は、目的とする数平均分子量と重合率とを考慮して決定される。通常、ビニルエステル単量体100molに対して、0.001〜1molの有機コバルト錯体(B)を使用することが好ましい。
発生するラジカルのモル数が有機コバルト錯体(B)のモル数よりも多くなければ、重合反応はドーマント種からCo錯体が熱的に解離する機構のみによって進行するため、反応温度によっては重合速度が極めて小さくなってしまう。したがって、重合開始剤が2個のラジカルを発生することを考慮すれば、有機コバルト錯体(B)に対する重合開始剤(A)のモル比(A/B)は1/2を超える必要がある。一般に重合開始剤から供給される活性ラジカル量は開始剤効率に依存するので、実際はドーマントの形成に用いられずに失活する重合開始剤がある。したがって、本発明の製造方法において、有機コバルト錯体(B)に対する重合開始剤(A)のモル比(A/B)は1以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2.5以上であることがさらに好ましい。一方、発生するラジカルのモル数が有機コバルト錯体(B)のモル数よりも多くなりすぎると、制御されないラジカル重合の割合が増えるので分子量分布が広がってしまうおそれがある。モル比(A/B)は7以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、4以下であることがさらに好ましい。本発明の製造方法において、誘導期を短縮するために、重合開始剤(a2)および有機コバルト錯体(B)の存在下にビニルエステル単量体の重合を開始する必要がある。重合開始剤(a1)は重合開始前に添加してもよいし、重合開始剤(a2)と同時に添加してもよいし、重合開始後、誘導期が終了するまでの間に添加してもよい。
本発明の製造方法において、有機コバルト錯体(B)に対する重合開始剤(a1)のモル比(a1/B)が0.5〜3.5であることが好ましい。モル比(a1/B)が0.5未満の場合、重合開始剤(a1)の添加効果が得られず、反応の制御性が低下して、得られるポリビニルエステルの分子量分布の広がってしまうおそれがある。一方、モル比(a1/B)が3.5を超える場合、反応の制御性が低下して、得られるポリビニルエステルの分子量分布が広がってしまうおそれや、反応速度が急上昇するため、安全性を維持したまま重合が行えないおそれがある。この点からはモル比(a1/B)は2以下がより好ましい。また、有機コバルト錯体(B)に対する重合開始剤(a2)のモル比(a2/B)が1〜3であることも好ましい。モル比(a2/B)が1未満の場合、重合時間が長くなるおそれがある。一方、モル比(a2/B)が3を超える場合、反応の制御性が低下して、得られるポリビニルエステルの分子量分布が広がってしまうおそれや、反応速度が急上昇するため、安全性を維持したまま重合が行えないおそれがある。
重合温度については、55℃以下であることが好ましい。重合温度が55℃を超えると得られるポリビニルエステルの分子量分布が広くなってしまうおそれや、Head−to−Head結合(酢酸ビニルのアセチル基同士が隣接する結合)が生成する確率が増加するおそれがある。Head−to−Head結合が多く含まれるポリビニルエステルを用いて得られるポリビニルアルコールは、1,2−グリコール結合の含有量が多いため、結晶性が低下するおそれがある。これらの点からは重合温度は45℃以下であることがより好ましい。一方、重合温度は0℃以上が好ましい。重合温度が0℃未満の場合は重合速度が不十分となり、生産性が低下するおそれがある。この点からは重合温度は10℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることがさらに好ましい。
本発明の製造方法において、目的とする重合率になったところで、重合停止剤を添加することによって重合反応を停止させることが好ましい。中でも、ポリマー鎖の末端ラジカルにプロトンを提供できる重合停止剤が好ましく、このような重合停止剤としては、後述する実施例で用いられるソルビン酸等が挙げられる。また、金属−水素結合を有する有機金属化合物等を用いることもできる。こうして得られたポリビニルエステルをポリビニルアルコールの製造に用いた場合、色相が良好なポリビニルアルコールが得られる。添加される重合停止剤のモル数は、添加された有機コバルト錯体(B)のモル数の1〜100倍であることが好ましい。重合停止剤のモル数が少なすぎると、ポリマー末端のラジカルを十分に捕捉できず、得られるポリビニルアルコールの色調が悪化するおそれがある。そのため、重合停止剤のモル数は、有機コバルト錯体(B)のモル数の5倍以上であることがより好ましい。一方、重合停止剤のモル数が多すぎると生産コストが上昇するおそれがある。重合停止剤のモル数は、有機コバルト錯体(B)のモル数の50倍以下であることがより好ましい。
本発明の製造方法において、ビニルエステルの重合に要する時間は、誘導期と成長期を合わせて、通常3〜40時間である。上述したように、本発明の製造方法を用いることにより、反応の制御性を維持しつつ、誘導期を短縮して重合時間を短縮できる。したがって、分子量分布の狭いポリビニルエステルを生産性よく製造できる。誘導期は、0.5〜20時間が好ましい。誘導期は、10時間以下がより好ましい。なお、成長期モノマー消費速度は、生産時の安全性の確保の観点から、15%/時間未満が好ましく、10%/時間未満であることがより好ましい。
停止工程における反応液の温度は、重合停止剤がポリビニルエステル鎖の末端のラジカルを捕捉できる温度であればよく、0℃〜80℃であることが好ましい。反応液の温度が0℃未満の場合は停止工程に時間がかかり過ぎて生産性が低下する。この点からは温度は10℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることがさらに好ましい。一方、反応液の温度が80℃を超えると、不必要なビニルエステルの重合が進行して分子量分布(Mw/Mn)が広くなるおそれがある。この点からは温度は70℃以下であることがより好ましく、60℃以下であることがさらに好ましい。停止工程に要する時間は、10分〜5時間である。
停止工程の後、得られたポリビニルエステル溶液を、水溶性配位子を含む水溶液に接触させて、前記ポリビニルエステル溶液からコバルト錯体を抽出除去する抽出工程を行なうことが好ましい。このように、ポリビニルエステル溶液中に含まるコバルト錯体を除去してからけん化工程を行うことによって、色相がよく、ゲル化しにくいポリビニルアルコールを得ることができる。具体的には、相互に溶解しない前記水溶液と前記ポリビニルエステル溶液とを、両者の界面の面積が大きくなるように激しく撹拌してから静置し、油層と水層に分離した後で水層を除く操作を行えばよい。この操作は複数回繰り返してもよい。
抽出工程に用いられる水溶性配位子は、25℃におけるpKaが0〜12の酸であることが好ましい。pKaが0未満の強酸を用いた場合、コバルト錯体を効率的に抽出することが困難であり、pKaは2以上であることが好ましい。またpKaが12を超える弱酸を用いた場合にもコバルト錯体を効率的に抽出することが困難であり、pKaは7以下であることが好ましい。前記酸が多価の酸である場合には、第一解離定数(pKa1)が上記範囲であることが必要である。pKaが0〜12の酸がカルボン酸またはリン酸(pKa1は2.1)であることが好ましく、カルボン酸であることがより好ましい。中でも酢酸(pKaは4.76)であることが特に好ましい。
水溶性配位子を含む水溶液のpHは、0〜5であることが好ましい。pHはより好適には1以上であり、さらに好適には1.5以上である。pHはより好適には4以下であり、さらに好適には3以下である。
本発明のポリビニルエステルの数平均分子量(Mn)は8,600〜860,000であることが好ましい。制御剤として有機コバルト錯体(B)を使用することによって、分子量分布が狭く、数平均分子量(Mn)の高いポリビニルエステルを得ることができる。ポリビニルエステルをポリビニルアルコールの製造に用いた場合に、ポリビニルアルコールからなる成形品の強度が向上する点からは、前記ポリビニルエステルの数平均分子量(Mn)は好適には21,000以上である。一方、数平均分子量(Mn)が高すぎると、溶液の粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難になる場合や、溶解速度が低下する場合があるため、数平均分子量(Mn)は430,000以下であることが好ましく、380,000以下であることがより好ましい。本発明において、ポリビニルエステルの数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準物質にポリメチルメタクリレートを用い、HFIP系カラムで測定した値である。測定方法は実施例に記載した通りである。
本発明の製造方法によって得られるポリビニルエステルの分子量分布(Mw/Mn)は、1.05〜1.70である必要がある。本発明の製造方法によれば、このように分子量分布の狭いポリビニルエステルを短時間で得ることができる。分子量分布は好適には1.60以下であり、より好適には1.55以下である。分子量分布が上記範囲であると、ポリビニルエステルを用いて得られるポリビニルアルコールの結晶性が高まり、その成形品はガスバリア性に優れる。また、分子量分布が上記範囲であり、かつ数平均分子量が上記範囲であることで、高弾性率かつ高強度の成形品を得ることができる。
本発明の製造方法によって得られたポリビニルエステルをけん化するポリビニルアルコールの製造方法が本発明の好適な実施態様である。けん化工程では、停止工程で得られたポリビニルエステルをけん化してポリビニルアルコールを得る。このとき、停止工程の後に抽出工程を行ってから、けん化工程を行ってもよい。
けん化工程では、前述の方法で製造されたポリビニルエステルをアルコールまたは含水アルコールに溶解した状態でけん化してポリビニルアルコールを得る。けん化反応に使用されるアルコールとしては、メタノール、エタノール等の低級アルコールが挙げられ、メタノールが特に好適に使用される。けん化反応に使用されるアルコールは、アセトン、酢酸メチルや酢酸エチル等のエステル、トルエン等の溶剤を含有していてもよい。けん化反応に用いられる触媒としては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物、ナトリウムメチラート等のアルカリ触媒、あるいは鉱酸等の酸触媒が挙げられる。けん化反応の温度については、例えば20〜60℃の範囲が適当である。けん化反応の進行に伴って、ゲル状生成物が析出してくる場合には、その時点で生成物を粉砕し、洗浄後、乾燥することにより、ポリビニルアルコールが得られる。
こうして得られるポリビニルアルコールのけん化度は80〜99.99mol%であることが好ましい。けん化度が80mol%未満の場合、ポリビニルアルコールの結晶性が低下し、成形体の機械的強度やバリア性等の物性が低下するおそれがある。この点からはけん化度は、より好適には85mol%以上であり、さらに好適には90mol%以上である。一方、けん化度が99.99mol%を超えると、ポリビニルアルコールの製造が困難となり、成形性も劣るおそれがある。この点からはけん化度は、より好適には99.95mol%以下である。
前記ポリビニルアルコールの数平均分子量(Mn)は4,400〜440,000であることが好ましい。前記数平均分子量(Mn)は高強度の成形品を得る観点からより好適には11,000以上である。一方、前記数平均分子量(Mn)が高すぎると、溶液の粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難になる場合や、溶解速度が低下する場合があるため、前記数平均分子量(Mn)は220,000以下であることがより好ましく、190,000以下であることがさらに好ましい。前記ポリビニルアルコールの数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、前記ポリビニルエステルと同様の方法により測定される。
前記ポリビニルアルコールの分子量分布(Mw/Mn)は、1.05〜1.70であることが好ましい。原料として上述した分子量分布が狭いポリビニルエステルを使用することによって、このようなポリビニルアルコールを得ることができる。前記分子量分布は好適には1.60以下であり、より好適には1.55以下である。前記分子量分布が上記範囲であると、ポリビニルアルコールの結晶性が高まり、その成形品はガスバリア性に優れる。また、ポリビニルアルコールの分子量分布が上記範囲であり、かつ数平均分子量が上記範囲であることで、高弾性率かつ高強度の成形品を得ることができる。
前記ポリビニルアルコールの1,2−グリコール結合の含有量が0.7〜1.5mol%であることが好ましい。原料として上述したポリビニルエステルを使用することによって、このようなポリビニルアルコールを得ることができる。1,2−グリコール結合の含有量が1.5mol%以下であることによって、ポリビニルアルコールが高い結晶性を有することができる。分子量分布(Mw/Mn)が低いことと合わせて、より高い結晶性を有することが可能である。1,2−グリコール結合の含有量は、1.4mol%以下であることがより好ましく、1.3mol%以下であることがさらに好ましい。一方、1,2−グリコール結合の含有量が0.7mol%未満の場合には、水溶性が悪化する等、取扱い性が低下する。1,2−グリコール結合の含有量は、0.9mol%以上であることがより好ましく、1.1mol%以上であることがさらに好ましい。
前記ポリビニルアルコールの成形方法としては、例えば水またはジメチルスルホキシド等の溶液の形態から成形する方法、加熱によりポリビニルアルコールを可塑化して成形する方法、例えば押出成形法、射出成形法、インフレ成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられる。これらの方法により、フィルム、シート、チューブ、ボトル等の任意形状の成形品が得られる。
前記ポリビニルアルコールは、その特性を利用して各種用途に使用することができる。例えば、界面活性剤、紙用コーティング剤、紙用内添剤、顔料バインダー、接着剤、不織布バインダー、塗料、繊維加工剤、繊維糊剤、フィルム、シート、ボトル、繊維、増粘剤、凝集剤、土壌改質剤等に使用できる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何
ら限定されるものではない。ポリビニルエステルおよびポリビニルアルコールの測定および評価の方法は以下のとおりである。
[誘導期、成長期および成長期モノマー消費速度]
本発明における「誘導期」とは、反応液の加温を開始してから酢酸ビニルの消費が開始されるまでの期間を意味し、「成長期」とは、酢酸ビニルの消費が開始されてから目標の転化率に到達するまでの期間を意味する。これらの期間は、例えば、酢酸ビニルの消費が開始されてから任意の時間でサンプリングを行い、その固形分濃度から酢酸ビニルの消費率を算出して時間−酢酸ビニル消費率の相関をプロットし、少なくとも3点で近似直線を引いた場合の酢酸ビニル消費率が0%となる時間を「誘導期」と「成長期」の境界とすることによって算出できる。また、「成長期モノマー消費速度」とは成長期に入ってからの1時間あたりの酢酸ビニルの消費率の変化を意味し、上記近似直線の傾きから算出できる。
[数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)の測定]
東ソー株式会社製サイズ排除高速液体クロマトグラフィー装置「HLC−8320GPC」を用い、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。測定条件は以下の通りである。
カラム:東ソー株式会社製HFIP系カラム「GMHHR−H(S)」2本直列接続
標準試料:ポリメチルメタクリレート
溶媒および移動相:トリフルオロ酢酸ナトリウム−HFIP溶液(濃度20mM)
流量:0.2mL/min
温度:40℃
試料溶液濃度:0.1wt%(開口径0.45μmフィルターでろ過)
注入量:10μL
検出器:RI
[1,2−グリコール結合量(mol%)の測定]
90℃減圧乾燥を2日間行ったポリビニルアルコールを、DMSO−dに溶解し、トリフルオロ酢酸を数滴加えた試料を調製し測定に供した。日本電子株式会社製核磁気共鳴装置「LAMBDA 500」を用い、80℃でH−NMR測定を行った。このとき、けん化度が99.9mol%未満の試料の場合には、99.9mol%以上までけん化した後に測定に供した。ビニルアルコール単位のメチン由来のピークは3.2〜4.0ppm(積分値A)、1,2−グリコール結合の1つのメチン由来のピークは3.25ppm(積分値B)に帰属され、次式で1,2−グリコール結合含有量を算出できる。
1,2−グリコール結合量(mol%)=(B/A)×100
[実施例1]
攪拌機、還流冷却管、開始剤の添加口を備えた反応器に、コバルト(II)アセチルアセトナートを0.24質量部、重合開始剤a1としてV−70(10時間半減期温度30℃)を0.29質量部(コバルト(II)アセチルアセトナートに対するモル比1.0)、重合開始剤a2としてIBP[ジイソブチリルパーオキサイド](10時間半減期温度23℃)を0.32質量部(コバルト(II)アセチルアセトナートに対するモル比2.0)添加し、反応器内を真空にした後窒素を導入する不活性ガス置換を3回行った。その後単蒸留精製した酢酸ビニル40質量部を添加してから、反応器を水浴に浸漬し、内温が30℃になるように加熱し撹拌した。適宜サンプリングを行い、その固形分濃度から重合の進行を確認し、酢酸ビニルの転化率が20%に到達したところで水浴を氷水に置換し、内温を10℃以下まで急冷した。ここに重合停止剤としてソルビン酸のメタノール溶液20.8質量部(濃度10質量%、ソルビン酸として2.08質量部)を添加した。重合反応における誘導期は9.0時間であり、成長期は4時間であり、成長期モノマー消費速度は5.0%/時間であった。
重合停止剤を添加してから、真空ラインに接続し、残留する酢酸ビニルを15℃で減圧留去した。反応器内を目視で確認しながら、粘度が上昇したところで適宜メタノールを添加しながら留去を続け、さらに内温を50℃に昇温して1時間加熱撹拌した。その後30℃まで冷却し、酢酸エチルを添加しながらメタノールを35℃で減圧留去し、ポリ酢酸ビニルの酢酸エチル溶液を得た。ここに濃度25質量%の酢酸水溶液(pH2.0)600質量部を添加し、5分攪拌した後、30分静置し二層に分離した。水層をシリンジで抜き取った後、再び真空ラインに接続し、残留する酢酸エチルを30℃で減圧留去した。酢酸エチルを留去したところでメタノールを添加してポリ酢酸ビニルを溶解し、当該溶液を脱イオン水に滴下してポリ酢酸ビニルを析出させた。ろ過操作でポリ酢酸ビニルを回収し、40℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、ポリ酢酸ビニルを得た。
得られたポリ酢酸ビニルの各種物性を測定した。数平均分子量(Mn)は8700であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.22であった。以上の結果を表1にまとめて示す。
次に、上記と同様の反応器に、得られたポリ酢酸ビニル25質量部とメタノール100質量部を添加し溶解した(濃度20質量%)後、水浴を加熱して内温が40℃になるまで加熱撹拌した。ここに水酸化ナトリウムのメタノール溶液(濃度14質量%)2.5質量部を添加して、40℃でけん化を行った(水酸化ナトリウムとして0.35質量部)。生成したゲル化物を粉砕機にて粉砕し、さらに40℃で放置して1時間けん化させた後、酢酸メチル100質量部を加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別することによって固体を得て、これにメタノール250質量部を加えて1時間加熱還流した。その後、遠心脱水して得られた固体を真空乾燥機にて、40℃で24時間乾燥させ、目的のポリビニルアルコールを得た。
得られたポリビニルアルコールの各種物性を測定した。けん化度は98.4mol%であり、数平均分子量(Mn)は4400であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.24であった。1,2−グリコール結合の含有量は1.26mol%であった。以上の結果を表1にまとめて示す。
[実施例2]
重合開始剤a1および重合開始剤a2の使用量、重合温度を表1に示すとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして酢酸ビニルの重合を行い、酢酸ビニルの転化率が45%に到達したところで水浴を氷水に置換し、内温を10℃以下まで急冷した。ここに重合停止剤としてソルビン酸のメタノール溶液15.9質量部(濃度10質量%、ソルビン酸として1.59質量部)を添加し、以降の操作は実施例1に記載の方法と同様の操作を行い、ポリ酢酸ビニルおよびポリビニルアルコールを得た後、それらの各種物性を測定した。その結果を表1にまとめて示す。
[実施例3]
重合開始剤a1および重合開始剤a2の使用量を表1に示すとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして酢酸ビニルの重合を行い、酢酸ビニルの転化率が44%に到達したところで水浴を氷水に置換し、内温を10℃以下まで急冷した。ここに重合停止剤としてソルビン酸のメタノール溶液34.6質量部(濃度10質量%、ソルビン酸として3.46質量部)を添加し、以降の操作は実施例1に記載の方法と同様の操作を行い、ポリ酢酸ビニルを得た後、得られたポリ酢酸ビニルの各種物性を測定した。その結果を表1にまとめて示す。
次に、重合で使用したものと同様の反応器に、得られたポリ酢酸ビニル25質量部とメタノール100質量部を添加し溶解した(濃度20質量%)後、水浴を加熱して内温が40℃になるまで加熱撹拌した。ここに水酸化ナトリウムのメタノール溶液(濃度14質量%)16.6質量部を添加して、40℃でけん化を行った(水酸化ナトリウムとして2.3質量部)。生成したゲル化物を粉砕機にて粉砕し、さらに40℃で放置して1時間けん化を進行させた。得られたけん化物にさらに水酸化ナトリウムのメタノール溶液(濃度14質量%)16.6質量部を添加し、65℃の加熱還流下でさらに1時間けん化反応を追い込んだ。その後、酢酸メチル50質量部を加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別することによって固体を得て、これにメタノール125質量部を加えて1時間加熱還流した。その後、遠心脱水して得られた固体を真空乾燥機にて40℃で24時間乾燥させ、目的のポリビニルアルコールを得た。得られたポリビニルアルコールの各種物性を測定した。その結果を表1にまとめて示す。
[実施例4]
重合開始剤a1および重合開始剤a2の種類および使用量、重合温度を表1に示すとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして酢酸ビニルの重合を行い、酢酸ビニルの転化率が54%に到達したところで水浴を氷水に置換し、内温を10℃以下まで急冷した。ここに重合停止剤としてソルビン酸のメタノール溶液24.3質量部(濃度10質量%、ソルビン酸として2.43質量部)を添加し、以降の操作は実施例1に記載の方法と同様の操作を行い、ポリ酢酸ビニルおよびポリビニルアルコールを得た後、それらの各種物性を測定した。その結果を表1にまとめて示す。
[比較例1]
重合開始剤としてIBP(添加量は表1に示す)のみ用いたこと以外は実施例1と同様にして酢酸ビニルの重合を行い、酢酸ビニルの転化率が35%に到達したところで水浴を氷水に置換し、内温を10℃以下まで急冷した。以降の操作は実施例1に記載の方法と同様の操作を行い、ポリ酢酸ビニルおよびポリビニルアルコールを得た後、それらの各種物性を測定した。その結果を表1にまとめて示す。
[比較例2]
重合開始剤としてV−70(添加量は表1に示す)のみ用いたこと以外は実施例1と同様にして酢酸ビニルの重合を行い、酢酸ビニルの転化率が32%に到達したところで水浴を氷水に置換し、内温を10℃以下まで急冷した。以降の操作は実施例1に記載の方法と同様の操作を行い、ポリ酢酸ビニルを得た後、得られたポリ酢酸ビニルの各種物性を測定した。その結果を表1にまとめて示す。
次に、得られたポリ酢酸ビニルを用いたこと以外は実施例3と同様にしてポリビニルアルコールを得た後、得られたポリビニルアルコールの各種物性を測定した。その結果を表1にまとめて示す。
[比較例3]
重合温度を表1に示すとおりに変更したこと以外は比較例2と同様にして酢酸ビニルの重合を行い、酢酸ビニルの転化率が55%に到達したところで水浴を氷水に置換し、内温を10℃以下まで急冷した。以降の操作は比較例2と同様の操作を行い、ポリ酢酸ビニルおよびポリビニルアルコールを得た後、それらの各種物性を測定した。その結果を表1にまとめて示す。
[比較例4]
重合開始剤a1および重合開始剤a2の種類および使用量、重合温度を表1に示すとおりに変更したこと、酢酸ビニルの添加量を215質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして酢酸ビニルの重合を行い、酢酸ビニルの転化率が24%に到達したところで水浴を氷水に置換し、内温を10℃以下まで急冷した。ここに重合停止剤としてソルビン酸のメタノール溶液18.1質量部(濃度10質量%、ソルビン酸として1.81質量部)を添加し、以降の操作は実施例1に記載の方法と同様の操作を行い、ポリ酢酸ビニルおよびポリビニルアルコールを得た後、それらの各種物性を測定した。その結果を表1にまとめて示す。
Figure 2017179290

Claims (4)

  1. 重合開始剤(A)および有機コバルト錯体(B)の存在下に制御ラジカル重合によってビニルエステル単量体を重合するポリビニルエステルの製造方法であって、
    重合開始剤(A)が、重合開始剤(a1)および重合開始剤(a2)を含み、
    重合開始剤(a1)の10時間半減期温度T1が25〜55℃であり、
    重合開始剤(a2)の10時間半減期温度T2がT1よりも3〜35℃低く、かつ
    前記ポリビニルエステルの分子量分布(Mw/Mn)が1.05〜1.70である、ポリビニルエステルの製造方法。
  2. 重合温度が55℃以下である、請求項1に記載のポリビニルエステルの製造方法。
  3. 有機コバルト錯体(B)に対する重合開始剤(a1)のモル比(a1/B)が0.5〜3.5であり、有機コバルト錯体(B)に対する重合開始剤(a2)のモル比(a2/B)が1〜3である、請求項1または2に記載のポリビニルエステルの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の方法によって得られたポリビニルエステルをけん化するポリビニルアルコールの製造方法。
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