JP2017177490A - 金属基板 - Google Patents

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Yasuo Hirano
康雄 平野
渡瀬 岳史
Takeshi Watase
岳史 渡瀬
水野 雅夫
Masao Mizuno
雅夫 水野
陽子 志田
Yoko Shida
陽子 志田
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Abstract

【課題】金属基板の表面の平滑性に優れると共に、耐電圧性に優れた太陽電池や有機EL素子を提供することのできる素材として有用な金属基板を提供する。【解決手段】金属板の少なくとも片面に、樹脂皮膜が積層された金属基板であって、上記樹脂皮膜は、炭素数7以上のジカルボン酸及び炭素数7以上のジカルボン酸無水物の少なくとも一方(A)と、炭素数6以上のジオール(B)と、3価以上の多価カルボン酸及び3価以上の多価カルボン酸無水物の少なくとも一方(C)並びに3価以上の多価アルコール(D)の少なくとも一方と、を含む皮膜形成用組成物から形成されており、上記(A)〜(D)はいずれも芳香環を含まず、上記金属基板の3mm□における表面粗さRaが10nm未満であることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、金属基板の表面の平滑性に優れると共に、耐電圧性に優れた太陽電池や有機EL素子を提供することのできる素材として有用な金属基板に関するものである。
アモルファスシリコンや、CdS・CuInSe2等の化合物半導体を用いた、いわゆる薄膜半導体太陽電池(以下、薄膜太陽電池という。)として、スーパーストレート型薄膜太陽電池とサブストレート型薄膜太陽電池の2種類の構造が知られている。
スーパーストレート型薄膜太陽電池では、通常、基板、透明電極、光電変換層、裏面電極の順に積層された構造であり、基板側から光を入射させている。一方、サブストレート型薄膜太陽電池では、通常、基板、裏面電極、光電変換層、透明電極の順に積層された構造であり、透明電極側から光を入射させている。
従来、薄膜太陽電池の基板として、透光性のガラスやプラスチック等が用いられてきた。しかし、ガラスは、割れやすい上に加工性に乏しく、重くてコストが高い等の問題があり、また、プラスチックは透湿性があるため、ガスバリア層を設ける必要があり、コストが割高になってしまうことに加え、熱を加えずに加工することは難しい。
ところで、サブストレート型薄膜太陽電池は透明電極側から光を入射させているため、サブストレート型薄膜太陽電池の基板には透光性が求められない。そのため、ガラスやプラスチックのような基板ではなく、金属板のような透光性を有さないが加工性に優れた基板を用いることができる。ただし、薄膜太陽電池として機能するためには、基板の表面が平滑であり、かつこの表面が絶縁性を有する必要がある。しかし、金属板自身の表面は通常800nm〜1μm程度以上の凹凸を有しているため、基板表面の凹凸が原因となって、裏面電極と透明電極との間が電気的にショートし、絶縁不良を招くおそれがある。そこで、上記の条件を満たすように金属板上に平滑な樹脂皮膜を形成すれば、金属板を基板として用いることができるようになると考えられる。
また、上記のような基板は、基板を透過することなく光が取り出されるトップエミッション型有機EL素子にも用いることができる。
このような基板として、ポリエステルフィルムを金属板に積層させた金属基板を用いることが考えられる。例えば、以下の特許文献1のようなオルガノシリケート及び/又はその縮合物成分やシルセスキオキサン化合物が含まれたポリエステル樹脂からなる樹脂皮膜が金属板に積層された金属基板を太陽電池や有機EL素子などの電子デバイスに用いることが考えられる。
国際公開第2012/86723号
しかし、特許文献1に開示された金属基板は、平滑性が不十分であることがわかった。また、この金属基板を用いても、耐電圧性が不十分な太陽電池や有機EL素子しか得られなかった。
本発明は、金属基板の表面の平滑性に優れると共に、耐電圧性に優れた太陽電池や有機EL素子を提供することのできる素材として有用な金属基板を提供することを課題として掲げた。
本発明者等は、サブストレート型薄膜太陽電池又はトップエミッション型有機EL素子に用いられる金属基板であって、金属板に積層した樹脂皮膜の表面を平滑にした金属基板を完成するに至った。
すなわち、本発明の金属基板は、金属板の少なくとも片面に、樹脂皮膜が積層された金属基板であって、上記樹脂皮膜は、炭素数7以上のジカルボン酸及び炭素数7以上のジカルボン酸無水物の少なくとも一方(A)と、炭素数6以上のジオール(B)と、3価以上の多価カルボン酸及び3価以上の多価カルボン酸無水物の少なくとも一方(C)並びに3価以上の多価アルコール(D)の少なくとも一方と、を含む皮膜形成用組成物から形成されており、上記(A)〜(D)はいずれも芳香環を含まず、上記金属基板の3mm□における表面粗さRaが10nm未満であることを特徴とする。
上記樹脂皮膜は、ケイ素化合物の含有量が3質量%以下であることが好ましい。
本発明では、上記金属基板が、サブストレート型薄膜太陽電池又はトップエミッション型有機EL素子に用いられる金属基板であることが好ましい。また、本発明には、上記皮膜積層金属板を備えたサブストレート型薄膜太陽電池及びトップエミッション型有機EL素子も包含される。
加えて、本発明は、上記金属基板の製造方法も包含しており、上記製造方法は、炭素数7以上のジカルボン酸及び炭素数7以上のジカルボン酸無水物の少なくとも一方(A)と、炭素数6以上のジオール(B)と、3価以上の多価カルボン酸及び3価以上の多価カルボン酸無水物の少なくとも一方(C)並びに3価以上の多価アルコール(D)の少なくとも一方と、を含む皮膜形成用組成物を金属基板の少なくとも一方の面に塗布して樹脂皮膜を形成する工程を有し、上記(A)〜(D)はいずれも芳香環を含まないことを特徴とする。
本発明では、金属板に所定の樹脂皮膜を積層して、樹脂皮膜の表面(以下、金属基板の表面又は金属基板表面ということがある)を研磨することによって、平滑性に優れた金属基板を得ることができた。また、この金属基板を用いることによって、耐電圧性に優れた太陽電池や有機EL素子を得ることができた。
本発明の金属基板は、金属板の少なくとも片面に樹脂皮膜が積層されており、上記金属基板の3mm□における表面粗さRa(以下、単に表面粗さRaということがある)が10nm未満である。具体的には、本発明の金属基板は、金属板の少なくとも片面に樹脂皮膜を積層した後に、金属基板の表面を研磨して平滑化したものである。
[金属板]
本発明の金属基板に用いる金属板は、冷延鋼板、溶融純亜鉛めっき鋼板、または合金化溶融Zn−Feめっき鋼板、合金化溶融Zn−5%Alめっき鋼板、電気純亜鉛めっき鋼板、電気Zn−Niめっき鋼板、アルミニウム板、チタン板、ガルバリウム鋼板等であり、ノンクロメートのものが好ましいが、クロメート処理あるいは無処理のものも使用可能である。金属板の厚みは特に限定されないが、0.3〜2.0mm程度のものを適宜使用することができる。
金属板には、リン酸系化成処理を施しておいてもよく、特に、特開2005−264312号公報に示されたような、コロイダルシリカとリン酸アルミニウム塩化合物を含む酸性水溶液によって化成処理を施しておくことが好ましい。コロイダルシリカとリン酸アルミニウム塩化合物を含む酸性水性液を化成処理液として使用すると、酸性水性液によって亜鉛系めっき層の表面がエッチングされながら、亜鉛系めっき層の表面にリン酸アルミニウムの中でも難溶性(水またはアルカリ性水溶液に溶けにくい)のAlPO4やAl2(HPO43主体の反応層が形成される。この反応層にシリカ微粒子が沈着して取り込まれることでリン酸アルミニウムとシリカ微粒子が複合一体化する。また、エッチングにより粗面化された亜鉛系めっき層との間で緻密な反応層が形成され、この反応層の上に形成される樹脂皮膜との結合も緻密で強固なものとなる。また、上記酸性水溶液にポリアクリル酸等の水溶性樹脂を含有させておくと、得られる反応層中のシリカ微粒子の沈着状態を一層強固なものとすることができる。
[樹脂皮膜]
樹脂皮膜は、炭素数7以上のジカルボン酸及び炭素数7以上のジカルボン酸無水物の少なくとも一方(A)と、炭素数6以上のジオール(B)と、3価以上の多価カルボン酸及び3価以上の多価カルボン酸無水物の少なくとも一方(C)並びに3価以上の多価アルコール(D)の少なくとも一方と、を含む皮膜形成用組成物から形成されている。すなわち、樹脂皮膜はポリエステル樹脂を含んでおり、本発明で用いられるポリエステル樹脂は、炭素数7以上のジカルボン酸及び炭素数7以上のジカルボン酸無水物の少なくとも一方(A)(以下、ジカルボン酸(A)という)と、炭素数6以上のジオール(B)(以下、単にジオール(B)という)と、3価以上の多価カルボン酸及び3価以上の多価カルボン酸無水物の少なくとも一方(C)(以下、多価カルボン酸(C)という)並びに3価以上の多価アルコール(D)(以下、単に多価アルコール(D)という)の少なくとも一方とから形成されている。上記(A)〜(D)の他に後述の架橋剤を含めてポリエステル樹脂を作製してもよいが、架橋剤が含まれていない(ジカルボン酸(A)、ジオール(B)、並びに、多価カルボン酸(C)及び多価アルコール(D)の少なくとも一方のみからなるポリエステル樹脂である)ことが好ましい。なお、本明細書では「多価」は3価以上のことを指す。
<ポリエステル樹脂>
本発明者らは、ポリエステル樹脂中の酸素原子に対する炭素原子や水素原子の比率を増加させることが樹脂皮膜における比誘電率の低下につながるのを見出した。すなわち、ジカルボン酸(A)及びジオール(B)を用いてポリエステル樹脂を作製することによって、樹脂皮膜の比誘電率を低下させることができ、換言すると、金属基板の耐電圧性を向上させることができる。
一方で、ジカルボン酸(A)及びジオール(B)のみを用いてポリエステル樹脂を作製すると樹脂皮膜が軟らかくなってしまう。このような樹脂皮膜の表面を研磨すると表面が荒れてしまい、表面粗さRaが研磨前より大きくなってしまうおそれがある。そこで、ジカルボン酸(A)及びジオール(B)の他に多価カルボン酸(C)と多価アルコール(D)の少なくとも一方を含む皮膜形成用組成物とすることによって、樹脂皮膜の比誘電率の低下と樹脂皮膜の硬化とを両立することができる。このような樹脂皮膜の表面を研磨することによって、表面粗さRaが十分に小さい金属基板を得ることができる。
(ジカルボン酸(A))
本発明では、ジカルボン酸(A)として、炭素数7以上のジカルボン酸及び炭素数7以上のジカルボン酸無水物の少なくとも一方が用いられる。
炭素数7以上のジカルボン酸は、炭素数7〜12のジカルボン酸であることが好ましく、炭素数7〜10のジカルボン酸であることがより好ましい。炭素数7以上のジカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸及び脂環族ジカルボン酸の少なくとも一つであることが好ましく、脂環族ジカルボン酸であることがより好ましい。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸などの直鎖状脂肪族ジカルボン酸;2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸などの分岐鎖状脂肪族ジカルボン酸;などが挙げられ、脂環族ジカルボン酸としては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。
炭素数7以上のジカルボン酸無水物は、炭素数7〜12のジカルボン酸無水物であることが好ましく、炭素数7〜10のジカルボン酸無水物であることがより好ましい。炭素数7以上のジカルボン酸無水物は、脂肪族ジカルボン酸無水物及び脂環族ジカルボン酸無水物の少なくとも一つであることが好ましく、脂環族ジカルボン酸無水物であることがより好ましい。ジカルボン酸無水物としては、上記炭素数7以上のジカルボン酸を無水物としたものを用いることができる。ジカルボン酸無水物は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(ジオール(B))
本発明では、ジオール(B)が用いられ、炭素数6〜12のジオールであることが好ましく、炭素数6〜10のジオールであることが好ましい。本発明で用いられるジオール(B)としては、脂肪族ジオール及び脂環族ジオールの少なくとも一つであることが好ましく、脂肪族ジオールであることがより好ましい。脂肪族ジオールとしては、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール及び1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどの直鎖状脂肪族ジオール;3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3− プロパンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどの分岐鎖状脂肪族ジオールが挙げられ、脂環族ジオールとしては、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジエタノール、1,3−シクロヘキサンジエタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノールなどが挙げられる。ジオール(B)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(多価カルボン酸(C))
本発明では、多価カルボン酸(C)として、多価カルボン酸及び多価カルボン酸無水物の少なくとも一方が用いられる。
多価カルボン酸に関しては、特に限定されないが、脂肪族多価カルボン酸及び脂環族多価カルボン酸の少なくとも一つであることが好ましく、脂環族多価カルボン酸であることがより好ましい。脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸などが挙げられ、脂環族多価カルボン酸としては、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸などが挙げられる。多価カルボン酸は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。多価カルボン酸の炭素数は特に限定されないが、炭素数6〜12であることが好ましく、炭素数8〜10であることがより好ましい。
多価カルボン酸無水物の炭素数は特に限定されないが、炭素数6〜12であることが好ましく、炭素数8〜10であることがより好ましい。多価カルボン酸無水物は、脂肪族多価カルボン酸無水物及び脂環族多価カルボン酸無水物の少なくとも一つであることが好ましく、脂環族多価カルボン酸無水物であることがより好ましい。多価カルボン酸無水物としては、上記多価カルボン酸を無水物としたものを用いることができる。多価カルボン酸無水物は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(多価アルコール(D))
多価アルコール(D)に関しては、特に限定されないが、脂肪族多価アルコール及び脂環族多価アルコールの少なくとも一つであることが好ましく、脂肪族多価アルコールであることがより好ましい。脂肪族多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,1,1−トリス(ビスヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタノール−3などの3価のアルコール;ペンタエリトリトール、ジグリセロール、ジメチロールプロパンなどの4価のアルコール;アラビット、リビトール、キシリトールなどの5価のアルコール;ソルビット、マンニット、ガラクチトール、アロズルシット、ジペンタエリトリトールなどの6価のアルコール;などが挙げられる。脂環族多価アルコールとしては、例えば、1,2,3−シクロヘキサントリオール、1,3,5−シクロヘキサントリオールなどが挙げられる。多価アルコール(D)は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。多価アルコール(D)の炭素数は特に限定されないが、炭素数3〜10であることが好ましく、炭素数4〜8であることがより好ましく、炭素数5〜6であることがさらに好ましい。
上記ジカルボン酸(A)、ジオール(B)、多価カルボン酸(C)、及び多価アルコール(D)はいずれも芳香環を含まない。芳香環を含むと樹脂皮膜の比誘電率が上昇し、耐電圧が不十分となるおそれがある。
皮膜形成用組成物において、ジカルボン酸(A)及びジオール(B)の合計モル数を100モル%としたときに、ジカルボン酸(A)が20〜80モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、40〜60モル%であることがさらに好ましい。
皮膜形成用組成物において、ジカルボン酸(A)、ジオール(B)、多価カルボン酸(C)、及び多価アルコール(D)の合計モル数を100モル%としたときに、多価カルボン酸(C)及び多価アルコール(D)の合計が3〜30モル%であることが好ましく、5〜20モル%であることがより好ましい。多価カルボン酸(C)及び多価アルコール(D)の合計モル数が3モル%未満であると、樹脂皮膜の硬化が不十分であり、研磨により表面が荒れてしまい、表面粗さRaが研磨前より大きくなってしまうおそれがある。一方、多価カルボン酸(C)及び多価アルコール(D)の合計が30モル%を超えると、ジカルボン酸(A)、ジオール(B)のモル比率が相対的に低くなってしまうので、樹脂皮膜の比誘電率が高くなってしまうおそれがある。
前記樹脂皮膜は、上記ポリエステル樹脂以外の熱硬化性樹脂は含まない方が好ましいが、本発明の効果を損なわない程度であれば上記ポリエステル樹脂以外の他の熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。他の熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。
前記樹脂皮膜に含まれる全樹脂100質量%中、本発明で用いられる上記ポリエステル樹脂の含有量が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、99.91質量%以上であることがさらに好ましく、99.95質量%以上であることが特に好ましく、100質量%(樹脂皮膜に含まれる樹脂は、上記ポリエステル樹脂のみ)であることが最も好ましい。
<架橋剤>
架橋剤としては、特に限定されるものではないが、ポリエステル樹脂との相溶性がよく、ポリエステル樹脂を架橋させることができ、更に、液安定性のよいものが好ましい。具体的には、ブロックイソシアネート組成物が挙げられる。ブロックイソシアネート組成物は上記イソシアネート化合物とブロック剤とを反応することで得られる。ブロック剤の例としては活性メチレン系ブロック剤、オキシム系ブロック剤、ピラゾール系ブロック剤などが挙げられる。活性メチレン系ブロック剤としては、イソブタノイル酢酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンなどがある。オキシム系ブロック剤としては、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどが挙げられる。ピラゾール系ブロック剤としては、ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾールなどが挙げられる。
また、このような架橋剤としては、種々の市販品を好適に用いることができ、例えばバーノックD−550、バーノックD−500、バーノックDB−980K(以上、DIC株式会社製)コロネート(登録商標)2503、2515、2507、2513、AP−M、ミリオネート(登録商標)MS−50(以上、日本ポリウレタン工業製)、デュラネート(登録商標)17B−60PX、TPA−B80E、MF−B60X、MF−K60X、デュラネート(登録商標)E402−B80T(以上、旭化成ケミカルズ社製)、BI−7950、7951、7960、7961、7963、7981、7982、7984(以上、Baxenden製)等を挙げることができる。
皮膜形成用組成物中における架橋剤の含有量は30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。架橋剤の含有量が30質量%を超えると相対的にポリエステル樹脂の含有量が少なくなってしまい、耐電圧性や平滑性が劣るおそれがある。また、上述のとおり、架橋剤は含まれていなくてもよいので、下限は0質量%である。
<ケイ素化合物>
表面粗さRaを10nm未満とするためには、樹脂皮膜においてケイ素化合物が少量であるか、又はケイ素化合物を全く含まないことが好ましい。具体的には、上記樹脂皮膜は、ケイ素化合物の含有量が3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%(樹脂皮膜にはケイ素化合物が含まれていない)であることが最も好ましい。ケイ素化合物を含む皮膜形成用組成物を用いると、皮膜内に樹脂が均一に分散されず、皮膜の表面にケイ素化合物が多く存在してしまう。そのため、皮膜形成用組成物を硬化させたときに皮膜表面が収縮しやすく、表面粗さRaを10nm未満とするのが困難になる。
ケイ素化合物は、例えば、Si−O結合を有する化合物であり、ポリシロキサン、オルガノシリケート及び/又はその縮合物、シルセスキオキサンなどが挙げられる。
<固体顔料>
表面粗さRaを10nm未満とするためには、皮膜形成用組成物中の固体顔料が少量であるか、又は顔料を全く含まないことが好ましい。具体的には、樹脂皮膜中における固体顔料の体積分率が1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0%(樹脂皮膜には固体顔料が含有されていない)であることがさらに好ましい。固体顔料の粒径は10nmよりも遙かに大きく、概ね100nm以上であるため、皮膜形成用組成物中の固体顔料の体積分率が1%を超えると、表面粗さRaを10nm未満とするのが困難になる。また、樹脂皮膜に固体状の物質である顔料粒子が含有されていると、樹脂皮膜から顔料粒子が剥離してしまうおそれがあり、剥離した部分は凹部となってしまうことからも、皮膜形成用組成物中の顔料が少量であるか、又は顔料を全く含まないことが好ましい。
<溶媒>
樹脂皮膜を形成するに当たっては、金属板表面に皮膜形成用組成物を塗布する塗布法により積層するのが好ましいため、皮膜形成用組成物は液状であることが望ましい。よって、皮膜形成用組成物は溶媒も含むことが推奨される。皮膜形成用組成物に用いる溶媒は、皮膜形成用組成物が含有すべき各成分を溶解または分散させ得るものであれば、特に制限はない。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、ベンゼン、キシレン、ソルベッソ(登録商標)100(エクソンモービル社製)、ソルベッソ(登録商標)150(エクソンモービル社製)等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;等が挙げられる。皮膜形成用組成物は、こういった溶媒を用いて、固形分を調整することができ、皮膜形成用組成物中における溶媒の含有量は、好ましくは20〜80質量%であり、より好ましくは30〜70質量%であり、特に好ましくは40〜65質量%である。溶媒が80質量%を超える場合、焼付け時に有機溶媒が大量に蒸発し、その結果、金属板表面近傍において気化した溶媒による対流が発生しやすくなり、金属基板表面の平滑性が損なわれるおそれがある。
<樹脂皮膜の膜厚>
樹脂皮膜の膜厚は5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。膜厚が5μm未満であると、耐電圧が不十分となるおそれがある。また、膜厚は100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。膜厚が100μmを超えると、樹脂皮膜が金属板から剥離するおそれが生じる。
なお、樹脂皮膜は1層のみからなることが好ましいが、複数層を積層したものであってもよい。複数層積層する場合には、樹脂皮膜の膜厚は全部の層の合計膜厚のことである。また、複数層積層する場合は、最表層(金属板から最も離れた樹脂皮膜)が上述した樹脂皮膜の特徴を有していればよいが、全ての層において、上述した樹脂皮膜の特徴を有していることが好ましい。
<樹脂皮膜の製造方法>
皮膜形成用組成物の塗布、乾燥方法は、特に制限されず、既知の方法を適宜採用することができる。本発明に係る金属基板を作製する際の皮膜形成用組成物の塗布方法としては、上記ジカルボン酸(A)と、ジオール(B)と、多価カルボン酸(C)及び及び多価アルコール(D)の少なくとも一方と、を含む皮膜形成用組成物を金属基板の少なくとも一方の面に塗布して樹脂皮膜を形成すればよく、例えばバーコーター法、ロールコーター法、カーテンフローコーター法、スプレー法、スプレーリンガー法等によるプレコート法を挙げることができ、これらの中でも、コスト等の観点からバーコーター法、ロールコーター法、スプレーリンガー法が好ましい。また、上記以外の組成物の塗布方法として、静電塗装法、スピンコート法等によるポストコート法を用いることもできる。
焼付け温度としては、特に限定されるものではなく、皮膜に用いる樹脂の硬化特性に応じて調整すればよいが、例えば、190℃以上250℃以下であり、好ましくは200℃以上240℃以下である。焼付け温度を上記の範囲内にして、有機溶媒を激しく蒸発させないようにすることによって、金属板表面近傍において気化した有機溶媒による対流が発生しにくくなり、樹脂皮膜の表面をより平滑にすることができる。また、乾燥温度としては、樹脂皮膜が熱により劣化しない程度であればよく、例えば、190〜250℃程度が好ましく、より好ましくは200〜240℃程度である。なお、焼付け・乾燥温度は、到達板温(Peak Metal Temperature:PMT)である。
<金属基板表面(樹脂皮膜の表面)の研磨>
本発明の金属基板は、上述のように樹脂皮膜を金属板の上に形成した後、化学機械研磨(CMP)を行うことによって、金属基板表面を平滑にしている。研磨方法は特に限定されておらず、研磨剤自体が有する表面化学作用や研磨液に含まれる化学成分の作用によって研磨される公知の研磨方法を用いればよい。研磨剤も特に限定されておらず、例えば、シリカ、アルミナ、セリア、チタニア、ジルコニア、ゲルマニア等を用いることができる。研磨剤の粒径は特に限定されておらず、例えば、10〜500nmであり、好ましくは50〜200nmである。
<3mm□における研磨後の表面粗さRa>
サブストレート型薄膜太陽電池又はトップエミッション型有機EL素子を作製するときに金属基板上に積層される電極などの薄膜層は、数nm〜数十nm程度の厚さである。よって、耐電圧性に優れた太陽電池又は有機EL素子とするためには、薄膜層を積層する前に金属板に積層された樹脂皮膜の表面を研磨することによって、表面粗さRaをできるだけ小さくしておく必要がある。具体的には、表面粗さRaが10nm未満であり、より好ましくは8nm以下であり、さらに好ましくは5nm以下であり、特に好ましくは3nm以下である。金属基板表面にはうねりができており、うねりの山と谷との距離は3mm程度である。そのため、表面粗さRaを10nm未満にしておけば、10μm□程度の狭い範囲でRaが小さいことに加えて、うねりの山谷のいずれの位置においてもRaが小さくなっていることもわかる。
表面粗さRaが10nm以上になると、金属基板に電極などの薄膜層を積層して太陽電池又は有機EL素子とするときに、金属基板上に樹脂皮膜が形成されない箇所が発生したり、金属基板上に電極などの薄膜層を形成した際に、金属基板における表面凹凸の凹部にピンホールが発生したりするおそれがある。ピンホール等の欠陥が存在すると、短絡状態が生ずるおそれがある。また、表面粗さRaが10nm以上になると、電極などの薄膜層を金属基板上に形成する際に、表面凹凸の凹部に薄膜層形成用組成物が集中してしまうことがあり、その場合には、金属基板上に薄膜層が形成されない箇所が発生し、短絡状態が生ずるおそれがある。なお、ほこりやゴミ等の粒子が付着することによって生じた表面の凹凸については、ほこりやゴミ等の粒子は30nm程度より遙かに大きいため、研磨等の平滑化によって容易に除去できる。そのため、ほこりやゴミ等の粒子による凹凸が絶縁不良につながるおそれは極めて低い。表面粗さRaについては、後述の測定方法により測定することができる。
<研磨前の表面粗さRa’>
本発明においては、研磨後の金属基板の表面が平滑であるためには、研磨前の状態で、金属基板の表面がある程度平滑であることが好ましい。具体的には、研磨前の金属基板の3mm□におけるRa’が30nm以下であることが好ましく、より好ましくは20nm以下である。研磨前の金属基板の3mm□におけるRa’が30nmを超えると、金属基板表面を研磨したにもかかわらず、研磨後の表面粗さRaが10nmを超えるおそれがある。研磨前の金属基板の3mm□におけるRa’については、研磨後の表面粗さRaと同様の測定方法により測定することができる。研磨前の表面粗さRa’の具体的な測定方法については後述する。
<樹脂皮膜の比誘電率>
樹脂皮膜の比誘電率は後述の方法で測定でき、3.4以下が好ましく、3.2以下がより好ましい。樹脂皮膜の比誘電率を小さくすることで、耐電圧性に優れた太陽電池又は有機EL素子とすることができる。樹脂皮膜の比誘電率の下限は特に限定されないが、例えば2以上であり、好ましくは2.5以上である。
<金属基板の耐電圧>
耐電圧は後述の方法で測定でき、4V以上であることが好ましく、5V以上であることがより好ましい。耐電圧が4V未満であると、電極間のショートによる絶縁不良を招くおそれがある。
<樹脂皮膜の被覆率>
金属基板上に樹脂皮膜が形成されない箇所が発生すると、金属基板に電極などの薄膜層を積層して太陽電池又は有機EL素子としたときに、薄膜層と金属板との間で短絡状態が生ずるおそれがある。そのため、研磨後の樹脂皮膜の被覆率は、99%以上であることが好ましく、99.9%以上であることがより好ましく、100%であることが最も好ましい。
[サブストレート型薄膜太陽電池]
本発明には、上記金属基板を備えたサブストレート型薄膜太陽電池も包含されている。以下、本発明に係る金属基板を備えたサブストレート型薄膜太陽電池について説明する。サブストレート型太陽電池は、本発明に係る金属基板を備えたものであれば、公知のいずれの構造でもよく、例えば、基本的には本発明に係る金属基板の樹脂皮膜上に、裏面電極、光電変換層、透明電極がこの順で積層された構造である。光電変換層は、透明電極を通過して到達した光を吸収して電流を発生させる層であり、裏面電極および透明電極は、いずれも光電変換層で発生した電流を取り出すためのものであり、いずれも導電性材料からなる。光入射側の透明電極は透光性を有する必要がある。裏面電極、光電変換層、透明電極については、公知のサブストレート型薄膜太陽電池と同様の材料を用いることができる。
裏面電極は、特に制限されるものではなく、例えば、Mo、Cr、W等の金属、およびこれらの金属を組み合わせたものを用いることができる。裏面電極は、単層構造でもよいし、2層構造等の積層構造でもよい。裏面電極の厚さは、特に制限されるものではないが、厚さが0.1μm以上であることが好ましく、0.45〜1.0μmであることがより好ましい。
光電変換層の構成は、特に制限されるものではなく、例えば、少なくとも1種のカルコパイライト構造の化合物半導体である。また、光電変換層は、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であってもよい。
さらに光吸収率が高く、高い光電変換効率が得られることから、光電変換層は、CuおよびAgからなる群より選択された少なくとも1種のIb族元素と、Al、GaおよびInからなる群より選択された少なくとも1種のIIIb族元素と、S、Se、およびTeからなる群から選択された少なくとも1種のVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることが好ましい。この化合物半導体としては、CuAlS2、CuGaS2、CuInS2、CuAlSe2、CuGaSe2、CuInSe2(CIS)、AgAlS2、AgGaS2、AgInS2、AgAlSe2、AgGaSe2、AgInSe2、AgAlTe2、AgGaTe2、AgInTe2、Cu(In1-xGax)Se2(CIGS)、Cu(In1-xAlx)Se2、Cu(In1-xGax)(S、Se)2、Ag(In1-xGax)Se2、およびAg(In1-xGax)(S、Se)2等が挙げられる。
透明電極は、例えば、Al、B、Ga、Sb等が添加されたZnO、ITO(インジウム−錫酸化物)、またはSnO2およびこれらを組み合わせたものにより構成される。透明電極は、単層構造でもよいし、2層構造等の積層構造でもよい。また、透明電極の厚さは、特に制限されるものではないが、0.3〜1μmが好ましい。
サブストレート型薄膜太陽電池は公知の方法で作製することができ、例えば、以下の製造方法でサブストレート型薄膜太陽電池を作製することができる。まず、本発明に係る金属基板の上に、スパッタ法、真空蒸着法、熱CVD法、湿式塗工法等の従来から知られている方法により裏面電極を形成する。次いで、裏面電極の上にスパッタ法、真空蒸着法、熱CVD法、湿式塗工法等の従来から知られている方法により光電変換層を形成する。続いて、光電変換層の上にスパッタ法、真空蒸着法、熱CVD法、湿式塗工法等の従来から知られている方法により透明電極を形成する。
なお、透明電極の形成時に光電変換層を保護するために、光電変換層と透明電極との間にバッファ層を設けてもよい。また、透明電極の上に封止材を設けてもよい。
[トップエミッション型有機EL素子]
本発明には、上記金属基板を備えたトップエミッション型有機EL素子も包含されている。以下、本発明に係る金属基板を備えたトップエミッション型有機EL素子について説明する。このようなトップエミッション型有機EL素子は、本発明に係る金属基板を備えたものであれば、公知のいずれの構造でもよく、例えば、基本的には本発明に係る金属基板の樹脂皮膜上に、電極、有機層、透明導電膜がこの順に積層されたものである。電極、有機層、透明導電膜については、公知のトップエミッション型薄膜太陽電池と同様の材料を用いることができる。トップエミッション型有機EL素子では、光は透明導電膜を透過して(基板を透過することなく)取り出されるため、基板として透明でない金属板を用いることができる。
電極は、例えば、インジウム−錫酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、錫酸化物、Au等の金属の極薄膜、導電性高分子、導電性の有機材料、ドーパント(ドナー又はアクセプタ)含有有機層、導電体と導電性有機材料(高分子含む)の混合物、又はこれらの積層体等が材料として用いられる。電極は、これら材料をスパッタ法やイオンプレーティング法等の気相成長法を用いて成膜することができる。
有機層の有機発光層は、例えば、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、ピラン、キナクリドン、ルブレン、及びこれらの誘導体、あるいは、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、スチリルアリーレン誘導体、スチリルアミン誘導体、及びこれらの発光性化合物からなる基を分子の一部分に有する化合物あるいは高分子等が材料として用いられる。さらに、上記化合物に代表される蛍光色素由来の化合物のみならず、いわゆる燐光発光材料、例えば、Ir錯体、Os錯体、Pt錯体、ユーロピウム錯体等の発光材料、若しくはそれらを分子内に有する化合物又は高分子も用いられる。有機層は、スパッタ法、真空蒸着法等の従来から知られている方法により形成することができる。なお、有機層は、有機発光層の他にも正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層等を含んでいてもよい。
透明導電膜は、Alや銀等の単体、又はAlや銀等と他の電極材料を組み合わせて積層構造に構成されたものが材料として用いられる。電極材料の組み合わせは、アルカリ金属とAlの積層体、アルカリ金属と銀の積層体、アルカリ金属のハロゲン化物とAlの積層体、アルカリ金属の酸化物とAlの積層体、アルカリ土類金属や希土類金属とAlの積層体、これらの金属種と他の金属の合金等が挙げられる。具体的には、例えば、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム、マグネシウム等とAlの積層体、マグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金、LiFとAlの混合物、AlとAl23の混合物等が挙げられる。透明導電膜は、スパッタ法、真空蒸着法等の従来から知られている方法により形成することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。また、実施例で用いた評価方法は、以下の通りである。なお、評価方法について、金属基板表面の研磨前後のいずれの供試材を用いたのかを特に記載していない場合は、金属基板表面を研磨した後の供試材を用いた。
<樹脂皮膜の比誘電率>
後述の作製方法で得られるポリエステル樹脂をフィルム状に成形し、LCRメーター(三和電気計器社製LCR700)にて、周波数1kHzでの静電容量を測定した。ポリエステル樹脂の膜厚とポリエステル樹脂の静電容量から比誘電率を算出し、樹脂皮膜の比誘電率とした。
<簡易素子の耐電圧>
後述の作製方法で得られる供試材を寸法50mm×50mm×0.8mmに切断した後、供試材上にアルミニウム電極と有機半導体材料(銅フタロシアニン)とを積層して有機デバイスを模擬した簡易素子を作成した。上記簡易素子の電流電圧特性を測定し、絶縁破壊電圧(耐電圧)を求めた。
<研磨前の金属基板の3mm□における表面粗さRa’>
後述の作製方法で得られる供試材の研磨前の状態で表面粗さを測定した。具体的には、JIS B 0601に規定される粗さの定義に基づき、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope、AFM)(セイコー電子工業製SPI3800N)を用いて、3mm×3mmのエリアの四隅及び中央部の5箇所において、10μm×10μmのエリア内の一方向の表面粗さRa1’及びそれに垂直な方向の表面粗さRa2’を測定し、Ra1’とRa2’の平均値を10μm×10μmのエリアの表面粗さとした。そして、上記5箇所の10μm×10μmのエリアの表面粗さの平均値を研磨前の金属基板の3mm□における表面粗さRa’とした。
<研磨後の金属基板の3mm□における表面粗さRa>
研磨後の供試材を用いた以外は、研磨前の金属基板の3mm□における表面粗さRa’と同様の方法で表面粗さRaを算出した。
[実施例1]
(塗料の作製方法)
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,4−シクロヘキサンジオール、及びペンタエリトリトールを1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物:1,4−シクロヘキサンジオール:ペンタエリトリトール=1:0.7:0.2(モル比)となるようにそれぞれ154.2g、81.3g、27.2gを、縮合水放散用開口部を有するフラスコに入れ、攪拌しながら240℃まで5時間かけて昇温し、反応させた。その後、丸善石油化学社製高沸点溶剤スワゾール(登録商標)1500を加えて希釈し、ポリエステル樹脂含有溶液を得た。
キシレン(沸点:140℃)とシクロヘキサノン(沸点:156℃)とを等量ずつ混合した溶媒に、上記ポリエステル樹脂含有溶液を加えて、塗料を得た。なお、ポリエステル樹脂の固形分が40質量%となるようにキシレンとシクロヘキサノンとの混合溶媒の量を調整した。
(金属基板の作製方法)
金属板として、板厚0.8mm、金属板両面における各面当たりの亜鉛めっき付着量20g/m2の電気純亜鉛めっき鋼板を用いた。この金属板の表面に、上記塗料を膜厚が20μmとなるようにバーコーターで塗布し、到達板温(Peak Metal Temperature:PMT)が220℃となるように2分間焼付け・乾燥させ、後述の金属基板表面の研磨を行い、金属基板を得た。得られた金属基板の物性を表1に示す。
(金属基板表面の研磨)
研磨装置の基板取り付け用の吸着パッドを貼り付けたホルダーに金属基板をセットし、樹脂皮膜を下にして研磨装置の定盤に取り付けた研磨パッド上にセットした。研磨剤として、粒径が約100nmのアルミナ粒子を用い、圧力65gf/cm2、1周当たりの回転距離を1m、基板と定盤との各回転速度50rpmで1分間化学機械(CMP)研磨を行った。実施例1、後述の実施例2〜5、及び後述の比較例1においては、研磨後における樹脂皮膜の被覆率は100%であったが、後述の比較例2においては、研磨により表面が荒れてしまった。なお、後述の比較例3については表面粗さRa’が大きすぎたため、研磨を行わなかった。
[実施例2・3及び比較例1]
表1に記載のジカルボン酸及びジオールを用いた以外は実施例1と同様に金属基板を作製した。得られた金属基板の物性を表1に示す。
[実施例4]
1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,4−シクロヘキサンジオール、及びペンタエリトリトールを添加するのに代えて、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,4−シクロヘキサンジオール、及び1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸無水物を1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物:1,4−シクロヘキサンジオール:1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸無水物=0.7:1:0.2(モル比)となるように添加した以外は実施例1と同様に金属基板を作製した。得られた金属基板の物性を表1に示す。
[実施例5]
ブロックイソシアネート(旭化成ケミカルズ社製デュラネート(登録商標)17B−60PX)をポリエステル樹脂:ブロックイソシアネート=80:20(質量比)となるように溶媒に添加した以外は実施例1と同様に金属基板を作製した。得られた金属基板の物性を表1に示す。
[比較例2]
1,4−シクロヘキサンジオールを用いなかった以外は実施例1と同様に金属基板を作製した。得られた金属基板の物性を表1に示す。
[比較例3]
シリケート(コルコート社製エチルシリケート28)をポリエステル樹脂:シリケート=80:20(質量比)となるように溶媒に添加した以外は実施例1と同様に金属基板を作製した。得られた金属基板の物性を表1に示す。
Figure 2017177490
表1より、以下のように考察することができる。
本発明の構成要件を満たす実施例1〜5の金属基板は、研磨後における金属基板の表面粗さRaが小さく、簡易素子の耐電圧性に優れていた。
これに対し、上記以外の金属基板は、下記に詳述する通り、本発明の構成要件を満たさず、所望の特性が得られなかった。
ジカルボン酸(A)を含まないポリエステル樹脂からなる比較例1の金属基板は、比誘電率が高く、簡易素子の耐電圧性が不十分であった。
また、多価カルボン酸(C)及び多価アルコール(D)を含まない比較例2では、樹脂皮膜の硬化が不十分であったため、研磨により樹脂皮膜表面が荒れてしまい、表面粗さRaが研磨前より大きく、簡易素子の耐電圧性が不十分であった。
シリケートを含む比較例3の金属基板は、研磨前の表面粗さRa’が非常に大きかった。そのため、研磨を行っても簡易素子の耐電圧性及び平滑性が不十分な金属基板しか得られない。

Claims (6)

  1. 金属板の少なくとも片面に、樹脂皮膜が積層された金属基板であって、
    上記樹脂皮膜は、炭素数7以上のジカルボン酸及び炭素数7以上のジカルボン酸無水物の少なくとも一方(A)と、炭素数6以上のジオール(B)と、3価以上の多価カルボン酸及び3価以上の多価カルボン酸無水物の少なくとも一方(C)並びに3価以上の多価アルコール(D)の少なくとも一方と、を含む皮膜形成用組成物から形成されており、
    上記(A)〜(D)はいずれも芳香環を含まず、
    上記金属基板の3mm□における表面粗さRaが10nm未満である
    ことを特徴とする金属基板。
  2. 上記樹脂皮膜は、ケイ素化合物の含有量が3質量%以下である請求項1に記載の金属基板。
  3. 上記金属基板が、サブストレート型薄膜太陽電池又はトップエミッション型有機EL素子に用いられる金属基板である請求項1又は2に記載の金属基板。
  4. 請求項1又は2に記載の金属基板を備えたサブストレート型薄膜太陽電池。
  5. 請求項1又は2に記載の金属基板を備えたトップエミッション型有機EL素子。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属基板の製造方法であって、
    炭素数7以上のジカルボン酸及び炭素数7以上のジカルボン酸無水物の少なくとも一方(A)と、炭素数6以上のジオール(B)と、3価以上の多価カルボン酸及び3価以上の多価カルボン酸無水物の少なくとも一方(C)並びに3価以上の多価アルコール(D)の少なくとも一方と、を含む皮膜形成用組成物を金属基板の少なくとも一方の面に塗布して樹脂皮膜を形成する工程を有し、
    上記(A)〜(D)はいずれも芳香環を含まない
    ことを特徴とする金属基板の製造方法。
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