以下、図を参照しつつ、アンテナ装置及びアンテナ装置を搭載した通信装置について説明する。このアンテナ装置は、共通電極を介して接続された第1アンテナ素子と、第2アンテナ素子とを有する。第1アンテナ素子及び第2アンテナ素子のそれぞれは、周波数に応じて信号を通す経路を切り換える切替回路として機能する回路素子を有する。実施形態に係るアンテナ装置は、周波数に応じて信号を通す経路を切り換えることで、放射電極を伸長したときに、比較的低い周波数を有する信号を第1アンテナ素子が送受信し、比較的高い周波数を有する信号を第2アンテナ素子が送受信することができる。
図1は第1実施形態に係るアンテナ装置の概略構成図であり、図1(a)は第1放射電極が伸長された状態を示す図であり、図1(b)は第1放射電極が収納された状態を示す図である。
アンテナ装置1は、第1アンテナ素子10と、第2アンテナ素子20と、共通電極40と、接地電極50とを有する。第1アンテナ素子10は、第1給電点11と、第1放射電極12と、第1回路素子13とを有する。第1アンテナ素子10は、一例では、ロッドアンテナである。また、第1周波数は、一例では、地上デジタルテレビ放送の周波数であり、400[MHz]〜700[MHz]の周波数帯である。第2アンテナ素子20は、第2給電点21と、第2放射電極22と、第2回路素子23とを有する。第2アンテナ素子20は、第1放射電極12が伸長されたかまたは第2放射電極が収納されたかにかかわらず、共通電極40と共にループアンテナを形成し、第1周波数よりも高い第2周波数を有する第2信号を空中へ送信または空中から受信する。第2アンテナ素子20は、第2放射電極22が共通電極40及び第1回路素子13を介して接地されることで、共通電極と共にループアンテナを形成する。第2周波数は、一例では、Wi−Fi(登録商標)の周波数帯であり、2.4[GHz]及び5.1[GHz]である。第1放射電極12と第2放射電極22とは、共通電極40を介して接続される。
第1放射電極12は、第1回路素子13及び共通電極40を介して、第1給電点11に接続される。第1放射電極12は、伸縮可能であり、伸長したときに第1周波数を有する第1信号を空中へ送信または空中から受信する。第1回路素子13は、第1インダクタ16と、第1キャパシタ17とを有する。第1インダクタ16は、比較的高い周波数を有する第2信号よりも比較的低い第1周波数を有する第1信号を通す。一方、第1キャパシタ17は、比較的低い第1周波数を有する第1信号よりも比較的高い周波数を有する第2信号を通す。第1インダクタ16の一端は第1給電点11に接続され、第1キャパシタ17の一端は接地電極50に接続される。第1インダクタ16及び第1キャパシタ17の他端は、共通電極40を介して第1放射電極12の一端に接続される。第1回路素子13は、第2信号よりも第1信号を第1放射電極12と第1給電点11との間に通し、第1信号よりも第2信号を第1放射電極12と接地電極50との間に通す。
第2放射電極22は、一端が第2回路素子23を介して第2給電点21に接続され、他端が共通電極40及び第1回路素子13を介して接地電極50に接続される。
第2回路素子23は、第2インダクタ26と、第2キャパシタ27とを有する。第2インダクタ26は、比較的高い周波数を有する第2信号よりも比較的低い第1周波数を有する第1信号を通す。一方、第2キャパシタ27は、比較的低い第1周波数を有する第1信号よりも比較的高い周波数を有する第2信号を通す。第2回路素子23は、第2信号よりも第1信号を第2放射電極22と接地電極50との間に通し、第1信号よりも第2信号を第2放射電極22と第2給電点21との間に通す。第2インダクタ26の一端は接地電極50に接続され、第2キャパシタ27の一端は第2給電点21に接続される。第2インダクタ26及び第2キャパシタ27の他端は、第2放射電極22の一端に接続される。
第2インダクタ26及び第2キャパシタ27の接続関係は、第1インダクタ16及び第1キャパシタ17の接続関係と反対である。第1インダクタ16は第1給電点11に接続されるのに対し、第2インダクタ26は接地電極50に接続される。また、第1キャパシタ17は接地電極50に接続されるのに対し、第2キャパシタ27は第2給電点21に接続される。
第1放射電極12が伸長され且つ周波数が比較的低い第1信号を送受信するとき、第1信号は第1インダクタ16及び第2インダクタ26を通るので、第1放射電極12、第2放射電極22及び共通電極40は、逆Fアンテナを形成する。第1放射電極12が伸長され且つ周波数が比較的高い第2信号を送受信するとき、第2信号は第1キャパシタ17及び第2キャパシタ27を通るので、第2放射電極22と共通電極40とは、ループアンテナを形成する。第1放射電極12が収納され且つ周波数が比較的高い第2信号を送受信するとき、第2信号は第1キャパシタ17及び第2キャパシタ27を通るので、収納された第1放射電極12及び第2放射電極は、共通電極40と共に単一のループアンテナを形成する。第2アンテナ素子20は、第1放射電極12が収納されたときに、第1放射電極12の一端に接触する。なお、第1放射電極12が収納されたときに、第1放射電極12は、第1放射電極12の長手方向は第2放射電極22の長手方向が近接するように配置される。
図2(a)は、第1放射電極12が伸長された状態で第1周波数を有する第1信号を受信するときのアンテナ装置1の状態を示す図である。図2(b)は、第1放射電極12が伸長された状態で第2周波数を有する第2信号を受信するときのアンテナ装置1の状態を示す図である。図2(c)は、第1放射電極12が収納された状態で第1周波数を有する第1信号を受信するときのアンテナ装置1の状態を示す図である。図2(d)は第1放射電極12が収納された状態で第2周波数を有する第2信号を受信するときのアンテナ装置1の状態を示す図である。
第1放射電極12が伸長された状態で、比較的低い第1周波数を有する第1信号をアンテナ装置1が受信すると、第1インダクタ16及び第2インダクタ26は受信した第1信号を通し、第1キャパシタ17及び第2キャパシタ27は第1インダクタ16及び第2インダクタ26よりも受信した第1信号を通さない。第1インダクタ16及び第2インダクタ26が第1周波数を有する第1信号を通すので、第1アンテナ素子10は、図2(a)に示すように、逆Fアンテナとして機能する。一方、第2アンテナ素子20は、第2キャパシタ27が第1周波数を有する第1信号をほとんど通さないので、第2給電点21と第2放射電極22との間が遮断されてアンテナ装置として機能しない。
第1放射電極12が伸長された状態で、比較的高い第2周波数を有する第2信号をアンテナ装置1が受信すると、第1インダクタ16及び第2インダクタ26は受信した第2信号をほとんど通さず、第1キャパシタ17及び第2キャパシタ27は受信した第2信号を通す。第1アンテナ素子10は、第1キャパシタ17が第2周波数を有する第2信号をほとんど通さないので、第1給電点11と第1放射電極12との間が遮断されてアンテナ装置として機能しない。一方、第2アンテナ素子20は、第1キャパシタ17及び第2キャパシタ27が第2周波数を有する第2信号を通すので、図2(b)に示すように、共通電極40と共にループアンテナを形成する。
第1放射電極12が収納された状態で、比較的低い第1周波数を有する第1信号をアンテナ装置1が受信すると、第1放射電極12が収納されているので、第1アンテナ素子10は、図2(c)に示すように、アンテナ装置として機能機しない。また、第2アンテナ素子20は、第2キャパシタ27によって第2給電点21と第2放射電極22との間が遮断されてアンテナ装置として機能しない。
第1放射電極12が収納された状態で、比較的高い第2周波数を有する第2信号をアンテナ装置1が受信すると、第1インダクタ16及び第2インダクタ26は受信した第2信号をほとんど通さず、第1キャパシタ17及び第2キャパシタ27は受信した第2信号を通す。第1アンテナ素子10は、第1放射電極12が収納されているので、アンテナ装置として機能しない。第2アンテナ素子20は、図2(d)に示すように、共通電極40と共にループアンテナを形成する。
図3(a)は第1放射電極12が伸長された状態のアンテナ装置1の平面図であり、図3(b)は第1放射電極12が収納された状態のアンテナ装置1の平面図である。図3(c)は図3(a)に対応する部分拡大斜視図であり、図3(d)は図3(b)に対応する部分拡大斜視図である。
第1アンテナ素子10は、第1給電点11を介して、第1送受信回路18に接続される。第1送受信回路18は、第1放射電極12が伸長されたときに受信される第1周波数を有する第1受信信号を受信し、所定の処理を実行し、第1周波数を有し且つ処理の実行結果を示す第1送信信号を、第1放射電極12を介して送信する。一方、第2アンテナ素子20は、第2給電点21を介して、第2送受信回路28に接続される。第1送受信回路18は、第2放射電極22を介して受信される第2周波数を有する第2受信信号を受信し、所定の処理を実行し、第2周波数を有し且つ処理の実行結果を示す第2送信信号を、第2放射電極22を介して送信する。
第2放射電極22は、接続部221と、接触部223と、長手部224と、を有する。接続部221は、一端が配線パターン226を介して第2回路素子23に接続され且つ他端が長手部224の一端に接続された導電部材である。接触部223は、一端が長手部224の一端に接続された導電部材であり、第1放射電極12が収納されたときに、第1放射電極12の一端に接触する。第1放射電極12が収納されたときに、接触部223と第1放射電極12とが接触することで、収納された第1放射電極12と第2放射電極22とは、単一のループアンテナを形成する。長手部224は、導電部材であり、一端に接続部221及び接触部223が接続され、他端に共通電極40が接続される。また、長手部224の他端は、共通電極40を介して第1放射電極12が接続される共に、配線パターン227を介して第1回路素子13と接続される。共通電極40は、第1放射電極12が伸長された状態では、第1放射電極12の第2放射電極22側の端面を支持し、第1放射電極12が収納された状態では、第1放射電極12の第2放射電極22の反対側の端面を支持する。
図4(a)は第2放射電極22のより具体的な構成の一例の第1の斜視図であり、図4(b)は図4(a)に示す例の第2の斜視図である。
図4(a)に示す例において、共通電極40は、長手部224に接合されることで、第2放射電極22と一体化される。接続部221及び共通電極40は、貫通孔が形成された導電部材であり、貫通孔を貫通するビス及びネジ等の不図示の接合部材を介してアンテナ装置1が搭載される基板に接合される。
接触部223は、1つの面に接続部221が接合され且つ接続部221が接合された面に隣接する面に長手部224が接合され長方体形状の部材である。また、接触部223の共通電極40と対向する面には、円柱状の凸部228が形成される。接触部223の共通電極40と対向する面は、第1放射電極12が収納されたときに第1放射電極12の端部が接触する接触面であり、接触面に凸部228が形成されることで、第1放射電極12と第2放射電極22とを安定的に接触させることができる。例えば、第1放射電極12が内部に円形状の空洞が形成されるロッドアンテナ装置であり、凸部228が第1放射電極12の内部に形成される空洞の径と一致するとき、凸部228が第1放射電極12の内部の空洞に嵌合されて、第1放射電極12は固定される。なお、接触部223の接触面には凸部228の代わりに、第1放射電極12の外形と形状が一致する凹部が形成されてもよい。
長手部224は、長手方向の一端に接触部223が接合され且つ長手方向の他端に共通電極40が接合された導電部材である。
共通電極40は、貫通孔に第1放射電極12が挿入可能な導電部材であり、側壁の端部に長手部224が接合される。
図5(a)は第1放射電極12が伸長された状態のトータル効率の一例を示す図であり、図5(b)は第1放射電極12が収納された状態のトータル効率の一例を示す図である。図5(a)及び5(b)において、横軸は信号の周波数[GHz]を示し、縦軸はトータル効率[dB]を示す。トータル効率は、波源からの全入力電力とアンテナ装置からの放射電力との比である。図5(a)において、波形501は第1アンテナ素子10のトータル効率を示し、波形502は第2アンテナ素子20のトータル効率を示す。図5(b)において、波形503は第2アンテナ素子20のトータル効率を示す。図5(a)及び5(b)に示す例では、第1アンテナ素子10は400[MHz]〜700[MHz]の周波数帯を有する信号を送受信するように設計され、第2アンテナ素子20は2.4[GHz]及び5.1[GHz]の周波数を有する信号を送受信するように設計された。
波形501に示されるように、第1放射電極12が伸長された状態では、第1アンテナ素子10のトータル効率は、400[MHz]〜700[MHz]の周波数帯では非常に高くなっている。一方、第1放射電極12が収納された状態では、第1アンテナ素子10は機能しないため、図5(b)には、第1放射電極12のトータル効率は現れない。
波形502に示されるように、第1放射電極12が伸長された状態では、第2アンテナ素子20のトータル効率は、2.4GHz及び5.1GHzの周波数では非常に高くなっている。また、波形503に示されるように、第1放射電極12が収納された状態でも、第2アンテナ素子20のトータル効率は、2.4[GHz]及び5.1[GHz]の周波数では非常に高くなっている。
図6(a)は第1放射電極12が伸長された状態のSパラメータの一例を示す図であり、図6(b)は第1放射電極12が収納された状態のSパラメータの一例を示す図である。図6(c)は、図6(a)及び6(b)に示すSパラメータ測定した回路を示す図である。図6(a)及び6(b)において、横軸は信号の周波数[GHz]を示し、縦軸はSパラメータ[dB]を示す。図6(a)において、波形601は第1アンテナ素子10のSパラメータ(S22)を示し、波形602は第2アンテナ素子20のSパラメータ(S11)を示し、波形603は第1アンテナ素子10と第2アンテナ素子20との結合のSパラメータ(S21)を示す。波形603は第2アンテナ素子20から第1アンテナ素子10に流れる電流の大きさに対応する。図6(b)において、波形604は第1アンテナ素子10のSパラメータ(S22)を示し、波形605は第2アンテナ素子20を示すSパラメータ(S11)を示し、波形606は第1アンテナ素子10と第2アンテナ素子20との結合を示すSパラメータを(S21)示す。波形606は第2アンテナ素子20から第1アンテナ素子10に流れる電流の大きさに対応する。図6(a)及び6(b)に示す例では、第1アンテナ素子10は400[MHz]〜700[MHz]の周波数帯を有する信号を送受信するように設計され、第2アンテナ素子20は2.4[GHz]及び5.1[GHz]の周波数を有する信号を送受信するように設計された。また、図6(c)に示すように、第1インダクタ16のインダクタンスは26[nH]であり、第1キャパシタ17のキャパシタンスは3[pF]であり、第2インダクタ26のインダクタンスは5.2[nH]であり、第1キャパシタ17のキャパシタンスは0.6[pF]である。
波形601に示されるように、第1放射電極12が伸長された状態では、第1アンテナ素子10のSパラメータ(S22)は、400[MHz]〜700[MHz]の周波数帯では良好である。一方、第1放射電極12が収納された状態では、第1アンテナ素子10は機能しないため、波形604に示されるように、第1放射電極12のSパラメータ(S22)は0[dB]から変化しない。
波形602に示されるように、第1放射電極12が伸長された状態では、第2アンテナ素子20のSパラメータ(S11)は、2.4[GHz]及び5.1[GHz]の周波数では良好である。また、波形605に示されるように、第1放射電極12が収納された状態でも、第2アンテナ素子20のSパラメータ(S11)は、2.4[GHz]及び5.1[GHz]の周波数では良好である。
波形603に示されるように、第1放射電極12が伸長された状態では、第1アンテナ素子10と第2アンテナ素子20との結合を示すSパラメータ(S21)は、−20[dB]以下であり良好である。また、波形606に示されるように、第1放射電極12が収納された状態でも、第1アンテナ素子10と第2アンテナ素子20との結合を示すSパラメータ(S21)は、略−20[dB]以下であり良好である。
図7(a)は第1回路素子を装荷せず第2回路素子側を接地した場合の第1アンテナ素子10のインピーダンスを示すスミスチャートであり、図7(b)は第1回路素子側を接地し第2回路素子を装荷していない場合の第2アンテナ素子20のインピーダンスを示すスミスチャートである。図7(a)及び7(b)において、周波数は0.4[GHz]から6[GHz]まで変化する。図7(a)において、矢印1は470[MHz]を示し、矢印2は700[MHz]を示す。図7(b)において、矢印1は2.4[GHz]を示し、矢印2は5.0[GHz]を示す。
第1アンテナ素子10では、第1給電点11に並列接続される第1キャパシタ17により右下方向に回転させ、第1給電点11に直列接続される第1インダクタ16により左上方向に回転させる。一方、第2アンテナ素子20は、第2放射電極22と共通電極40とで形成されるループアンテナ単体で、2.0[GHz]及び5.0[GHz]の近傍に共振点が配置される。第2アンテナ素子20では、第2給電点21に並列接続される第2インダクタ26により右上方向に回転させ、第2給電点21に直列接続される第2キャパシタ27により左下方向に回転させる。
図8は、第1回路素子13及び第2回路素子23のフィルタリング特性を示す図である。図8(a)は、直列接続される第1インダクタ16及び第2キャパシタ27が配置され、第1キャパシタ17及び第2インダクタ26が配置されないときの特性を示す。図8(b)は、直列接続される第1インダクタ16及び第2キャパシタ27に加えて、並列接続される第1キャパシタ17及び第2インダクタ26が配置されたときの特性を示す。図8(a)及び8(b)において、横軸は信号の周波数[GHz]を示し、縦軸はSパラメータ[dB]を示す。図8(a)において、波形801は、第1インダクタ16が配置され且つ第1キャパシタ17が配置されないときの第1アンテナ素子10のフィルタリング特性を示す。また、波形802は、第2キャパシタ27が配置され且つ第2インダクタ26が配置されないときの第2アンテナ素子20のフィルタリング特性を示す。図8(b)において、波形803は第1アンテナ素子10のフィルタリング特性を示し、波形804は第2アンテナ素子20のフィルタリング特性を示す。
第1回路素子13は高域阻止フィルタとして機能し、第2回路素子23は低域素子フィルタとして機能する。
図9は第2実施形態に係るアンテナ装置の概略構成図であり、図9(a)は第1放射電極が伸長された状態を示す図であり、図9(b)は第1放射電極が収納された状態を示す図であり、図9(c)は第1放射電極と第2放射電極との接続関係を示す図である。
第2実施形態に係るアンテナ装置2は、第1アンテナ素子10の代わりに第1アンテナ素子210が配置され且つ第2アンテナ素子20の代わりに第2アンテナ素子220が配置されることが第1実施形態に係るアンテナ装置1と相違する。第1アンテナ素子210は、第1放射電極12の代わりに第1放射電極212が配置されることが第1アンテナ素子10と相違する。第2アンテナ素子220は、第2放射電極22の代わりに第2放射電極222が配置されることが第2アンテナ素子20と相違する。第1放射電極212及び第2放射電極222以外のアンテナ装置2の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付されたアンテナ装置1の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
第1放射電極212は、伸縮可能な導電部材である。第2放射電極222は、第1放射電極212が収納されるときに第1放射電極212を収納可能な筒状の形状を有する導電部材である。すなわち、第2放射電極222は、内壁が第1放射電極212の側壁と接触するように第1放射電極212を収納する収納部200を有する。第1放射電極212は、収納時に第2放射電極222の内部に格納される。第1放射電極212の側壁と第2放射電極222の内壁とが接触することにより、第1放射電極212と第2放射電極222とは電気的に接続される。
図10は第3実施形態に係るアンテナ装置の概略構成図であり、図10(a)は第1放射電極が伸長された状態を示す図であり、図10(b)は第1放射電極が収納された状態を示す図であり、図10(c)は第1放射電極と第2放射電極との接続関係を示す図である。
第3実施形態に係るアンテナ装置3は、第1アンテナ素子10の代わりに第1アンテナ素子310が配置され且つ第2アンテナ素子20の代わりに第2アンテナ素子320が配置されることが第1実施形態に係るアンテナ装置1と相違する。第1アンテナ素子310は、第1放射電極12の代わりに第1放射電極312が配置されることが第1アンテナ素子10と相違する。第2アンテナ素子320は、第2放射電極22の代わりに第2放射電極322が配置されることが第2アンテナ素子20と相違する。第1放射電極312及び第2放射電極322以外のアンテナ装置2の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付されたアンテナ装置1の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
第1放射電極312は、第2放射電極322を収納可能な筒状の形状を有する伸縮可能な導電部材である。すなわち、第1放射電極312は、内壁が第2放射電極322の側壁と接触するように第2放射電極322を収納する収納部300を有する。第2放射電極222は、円柱状の導電部材である。第1放射電極212は、収納時に第2放射電極222を内部に収納する。第1放射電極212の内壁と第2放射電極222の側壁とが接触することにより、第1放射電極212と第2放射電極222とは電気的に接続される。
図11は第4実施形態に係るアンテナ装置の概略構成図であり、図11(a)は放射電極が伸長された状態を示す図であり、図11(b)は放射電極が収納された状態を示す図である。
第4実施形態に係るアンテナ装置4は、第3アンテナ素子30と、第2共通電極41とを更に有することが、第1実施形態に係るアンテナ装置1と相違する。第3アンテナ素子30及び第2共通電極41以外のアンテナ装置4の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付されたアンテナ装置1の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
第3アンテナ素子30は、第3給電点31と、第3放射電極32と、第3回路素子33とを有する。第3アンテナ素子30は、一例では、ロッドアンテナ装置である。また、第3周波数は、第1周波数よりも低く、一例では、防災無線の周波数であり、260[MHz]の周波数帯である。
第3放射電極32は、第3回路素子33を介して、第3給電点31に接続される。第3放射電極32は、伸縮可能であり、伸長したときに第3周波数を有する第3信号を空中へ送信または空中から受信する。第3回路素子33は、第3インダクタ36と、第3キャパシタ37とを有する。第3インダクタ36は、第1周波数よりも低い第3周波数を有する第3信号を通すが、第1周波数よりも高い周波数を有する第2信号はほとんど通さない。一方、第3キャパシタ37は、第1周波数よりも低い第3周波数を有する第3信号をほとんど通さないが、第1周波数よりも高い周波数を有する第2信号は通す。第3インダクタ36の一端は第3給電点31に接続され、第3キャパシタ37の一端は接地電極50に接続される。第3インダクタ36及び第3キャパシタ37の他端は、第3放射電極32の一端に接続される。
第2共通電極41は、導電部材であり、一端が第2放射電極22に接続され、他端が第3放射電極32に接続される。
図12(a)は第1周波数を有する第1信号を受信するときのアンテナ装置4の状態を示す図であり、図12(b)は第2周波数を有する第2信号を受信するときのアンテナ装置4の状態を示す図である。図12(c)は、第3周波数を有する第3信号を受信するときのアンテナ装置4の状態を示す図である。図12(a)〜12(c)において、第1放射電極12及び第3放射電極32の双方は伸長された状態である。しかしながら、図12(a)において第3放射電極32は収納されてもよく、図12(b)において第1放射電極12及び第3放射電極32の双方は収納されてもよく、図12(c)において第1放射電極12は収納されてもよい。
第1放射電極12が伸長された状態で、比較的低い第1周波数を有する第1信号をアンテナ装置4が受信すると、第1インダクタ16、第2インダクタ26及び第3インダクタ36は、受信した第1信号を通す。一方、第1キャパシタ17、第2キャパシタ27及び第3キャパシタ37は第1インダクタ16、第2インダクタ26及び第3インダクタ36よりも受信した第1信号を通さない。第1インダクタ16及び第2インダクタ26が第1周波数を有する第1信号を通すので、第1アンテナ素子10は、図12(a)に示すように、逆Fアンテナとして機能する。第2アンテナ素子20は、第2キャパシタ27が第1周波数を有する第1信号をほとんど通さないので、第2給電点21と第2放射電極22との間が遮断されてアンテナ装置として機能しない。第3アンテナ素子30は、アンテナ装置として機能する可能性はあるが、第1アンテナ素子10と第3アンテナ素子30とは、第2インダクタ26を介して第1放射電極12が接地電極50に接続されるため、互いに干渉するおそれはない。
比較的高い第2周波数を有する第2信号をアンテナ装置4が受信すると、第1キャパシタ17、第2キャパシタ27及び第3キャパシタ37は第1インダクタ16、第2インダクタ26及び第3インダクタ36よりも受信した第2信号を通す。第1アンテナ素子10は、第1キャパシタ17が第2周波数を有する第2信号をほとんど通さないので、第1給電点11と第1放射電極12との間が遮断されてアンテナ装置として機能しない。第3アンテナ素子30は、第3キャパシタ37が第2周波数を有する第2信号をほとんど通さないので、第3給電点31と第3放射電極32との間が遮断されてアンテナ装置として機能しない。第2アンテナ素子20は、図12(b)に示すように、共通電極40と共にループアンテナを形成する。
第3放射電極32が伸長された状態で、第1周波数よりも低い第3周波数を有する第3信号をアンテナ装置4が受信すると、第1インダクタ16、第2インダクタ26及び第3インダクタ36は、第1キャパシタ17、第2キャパシタ27及び第3キャパシタ37よりも受信した第1信号を通す。第3回路素子33は、第2信号よりも第3信号を第3放射電極32と第3給電点31との間に通し、第3信号よりも第2信号を第3放射電極32と接地電極50との間に通す。第3インダクタ36及び第2インダクタ26が第3周波数を有する第3信号を通すので、第3アンテナ素子30は、図12(c)に示すように、逆Fアンテナとして機能する。第1アンテナ素子10は、アンテナ装置として機能する可能性はあるが、第1アンテナ素子10と第3アンテナ素子30とは、第2インダクタ26を介して第3放射電極32が接地電極50に接続されるため、互いに干渉するおそれはない。第2アンテナ素子20は、第2キャパシタ27が第1周波数を有する第1信号をほとんど通さないので、第2給電点21と第2放射電極22との間が遮断されてアンテナ装置として機能しない。
図13は、実施形態によるアンテナ装置を有する通信装置の概略構成図である。
通信装置100は、無線処理部101と、アンテナ102と、記憶部103と、制御部104とを有する。このうち、無線処理部101、記憶部103及び制御部104は、それぞれ別個の回路として形成される。あるいはこれらの各部は、その各部に対応する回路が集積された一つの集積回路として通信装置100に実装されてもよい。
無線処理部101は、制御部104から受信した送信すべき信号を所定の方式に従って変調し、且つ多重化する。なお、所定の変調・多重化方式は、例えば、シングルキャリア周波数分割多重方式(Single Carrier Frequency Division Multiple Access、SC-FDMA)とすることができる。無線処理部101は、多重化し、変調された信号を、制御部104により指定された無線周波数を有する搬送波に重畳する。そして無線処理部101は、搬送波に重畳された信号を、不図示のハイパワーアンプにより所望のレベルに増幅し、その信号をアンテナ102へ伝達する。
また、無線処理部101は、アンテナ102から受信した信号を、不図示の低ノイズアンプにより増幅する。無線処理部101は、増幅された受信信号のうち、制御部104により指定された無線周波数を有する信号に、中間周波数を有する周期信号を乗じることにより、受信信号の周波数を無線周波数からベースバンド周波数に変換する。そして無線処理部101は、受信信号を所定の多重化方式に従って分離し、分離した信号をそれぞれ復調する。そして無線処理部101は、復調された信号を制御部104に出力する。なお、受信信号に対する多重化方式は、例えば、直交周波数分割多重方式(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing、OFDM)とすることができる。
アンテナ102は、上記の実施形態の何れかのアンテナ装置である。そしてアンテナ102は、無線処理部101から伝達された信号を放射する。また、アンテナ102は、他の通信装置から送信された信号を受信し、その受信信号を無線処理部101に伝達する。アンテナ102は、例えば、上記の第1〜第3の実施形態によるアンテナ装置のように、共通電極により一端が接続された第1放射電極及び第2放射電極と、第1放射電極の他端に接続された第1回路素子と、第2放射電極の他端に接続された第2回路素子とを有する。また、アンテナ102は、例えば、上記の第4の実施形態によるアンテナ装置のように、第2共通電極を介して一端が第2放射電極に接続された第3放射電極と、第3放射電極の他端に接続された第3回路素子を更に有してもよい。
記憶部103は、例えば、書き換え可能な不揮発性半導体メモリを有し、他の通信装置と通信するための制御に利用される各種の情報を記憶する。
制御部104は、通信装置100を他の通信装置と無線接続するための処理を実行する。例えば、通信装置100が携帯電話機のような、移動体通信システムの移動局装置である場合、制御部104は、位置登録、呼制御処理、ハンドオーバ処理または送信電力制御などの処理を実行する。また制御部104は、他の通信装置から受信した制御信号に応じた処理を実行する。制御部104は、一例では、CPUまたはDSP等のプロセッサであってもよい。
さらに、制御部104は、例えば、不図示のマイクロホンまたはキーパッドなどの不図示のユーザインターフェースを介して取得された音声信号あるいはデータ信号を含む、送信データを作成する。そして制御部104は、送信データに対して情報源符号化処理を行う。また制御部104は送信データ及び制御信号を含む送信信号を生成し、その送信信号に対して、誤り訂正用符号化処理などの送信処理を実行する。そして、制御部104は、その送信処理が施された送信信号を無線処理部101へ出力する。また制御部104は、無線接続されている他の通信装置から受信し、無線処理部101により復調された信号を受信し、その信号に対して誤り訂正復号処理及び情報源復号処理などの受信処理を実行する。そして制御部104は、復号された信号から、音声信号あるいはデータ信号を取り出す。制御部104は、取り出された音声信号を不図示のスピーカ(により再生しまたはデータ信号を不図示のディスプレイに表示させる。
実施形態に係るアンテナ装置は、周波数に応じて信号を通す経路を切り換える切替回路として機能する回路素子を有するので、第1放射電極が伸長されたときに、第1周波数を有する第1信号及び第2周波数を有する第2信号の双方を送受信することができる。
また、実施形態に係るアンテナ装置では、回路素子に含まれるインダクタのインダクタンス及びキャパシタのキャパシタンスを調整することで、切替回路として機能する回路素子を整合回路として利用することができる。
また、実施形態に係るアンテナ装置は、第1放射電極が収納されたときに、第1放射電極の端部に接触する接触部を有するので、第1放射電極が収納されたときに第1放射電極は、第2放射電極と共にループアンテナを形成することができる。
また、実施形態に係るアンテナ装置は、接触部が凹部または凸部の少なくとも1つが形成されるので、第1放射電極が収納されたときに第1放射電極と第2放射電極とをより確実に接触させることができる。
また、第1実施形態に係るアンテナ装置は、収納された第1放射電極に近接して配置される長手部を有するので、第1放射電極が伸長されたときと収納されたときの第2アンテナ素子の特性の変化を最小限にすることができる。
図14は、第1放射電極が収納されたときに、長手部と第1放射電極とが離隔して配置される場合の問題点を説明するための図であり、図14(a)は第1放射電極が収納された状態を示し、図14(b)は第1放射電極が伸長された状態を示す。
アンテナ装置900は、伸縮可能な第1放射電極901と、第2放射電極902と、給電点903と、接地電極904とを有する。第1放射電極901は、収納されたときに、両端が第2放射電極902と接続される。第2放射電極は、第1放射電極901が伸長されたときに、単独でループアンテナを形成し、第1放射電極901が収納されたときに、第1放射電極と共にループアンテナを形成する。
第1放射電極901が伸長されたときに第2放射電極902により形成されるループアンテナの電流経路1の長さLgは、
Lg = L1+ L2 + L3
で示される。一方、第1放射電極901が収納されたときに第1放射電極901及び第2放射電極902により形成されるループアンテナの電流経路2の長さLpは、
Lp = L1´+ L2 + L3´
で示される。
長さがL2である第2放射電極902の長手部と第1放射電極901とが離隔して配置されると、L1とL1´及びL2とL2´の差が大きくなり、電流経路1の長さLgと電流経路2の長さLpとの差が大きくなる。アンテナの特性は電流経路の長さに依存するので、第1放射電極901が伸長されたときと第1放射電極901が収納されたときとで、電流経路の長さが相違すると、第1放射電極901の状態に応じてアンテナ特性が相違することになり、好ましくない。第1実施形態に係るアンテナ装置では、収納された第1放射電極に近接して配置されるので、第1放射電極が伸長されたときと収納されたときの第2アンテナ素子の特性の変化を最小限にすることができる。
アンテナ装置1〜4では、第1回路素子13及び第2回路素子23は、集中定数素子である第1インダクタ16及び第1キャパシタ17と、第2インダクタ26及び第2キャパシタ27とをそれぞれ有する。しかしながら、実施形態に係るアンテナ装置では、第1インダクタ16、第1キャパシタ17は分布定数素子により形成されてもよい。
また、アンテナ装置1〜4では、第2放射電極22、222及び322のそれぞれは、成型された導電部材により形成される。しかしながら、実施形態に係るアンテナ装置では、第1放射電極は、一例では通信装置のカバーである誘電体上に蒸着された導電層として形成されてもよい。