JP2017174541A - レドックスフロー電池の正・負極の過電圧測定方法およびその方法を行うための装置 - Google Patents

レドックスフロー電池の正・負極の過電圧測定方法およびその方法を行うための装置 Download PDF

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Abstract

【課題】より正確、かつより簡便に、過電圧の低減対策を講ずることのできるレドックスフロー電池の過電圧測定方法および過電圧測定装置を提供する。【解決手段】レドックスフロー電池の主セル1への電解液の入口側と電解液循環用ポンプ34,35との間に、開路電圧測定用セル40を接続する開路電圧測定用セル接続ステップと、ポンプ34,35を駆動して電解液を循環させる電解液循環ステップと、主セル1を定電流充放電させる充放電ステップと、充放電を行っている最中に、少なくとも、主セル1の第一正極11と開路電圧測定用セル40の第二正極42との間の正極過電圧と、主セル1の第一負極10と開路電圧測定用セル40の第二負極41との間の負極過電圧とを、参照電極を用いることなく測定する電位差測定ステップと、を含む正・負極過電圧測定方法。【選択図】図2

Description

本発明は、レドックスフロー電池の正極および負極の過電圧を測定する方法およびその方法を行うための装置に関する。
近年、地球温暖化対策として、低炭素社会を目指す動きが世界的に活発化している。2015年11月30日から12月12日にかけてフランスのパリで開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(通称、「COP21」)では、2020年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みとしてパリ協定が正式に採択された。パリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して2℃未満に抑制すること、21世紀後半に世界全体の温室効果ガス排出量を生態系が吸収可能な範囲に収めること、さらには各国が国連に提出している温室効果ガスの排出量の目標値を5年ごとに見直しかつ原則として5年ごとの目標値を前回目標値より高くすること、等が決まった。このような経緯も手伝って、特に、欧米、中国、韓国および日本では、政府、行政省庁、民間企業が一丸となって、再生可能エネルギーの導入をより一層推進している。
再生可能エネルギーは、主に、太陽光発電と風力発電によって電気という形で家庭・工場等に供給されるが、天候による変動が大きいという欠点を有する。この結果、これらの発電は、電圧上昇、周波数変動、さらには余剰電力の発生といった問題を生じる。この問題を解決する方法の一つとして、電気エネルギー貯蔵システムが注目を浴びている。電気エネルギー貯蔵システムとしては、古くから揚水発電が周知であり、さらに、蓄電池、超電導コイル、フライホイール、圧縮空気エネルギー貯蔵、電気二重層キャパシタなどが知られている。上記各種システムは、それぞれ一長一短があるものの、技術の完成度に起因する実用性と、都市近郊部への分散設置の容易性等の観点から、蓄電池を用いたシステムが最も有力視されている(非特許文献1を参照)。
充電と放電とを可能にする蓄電池(二次電池ともいう)には、いくつかの種類があり、その中でも、リチウムイオン電池、ナトリウム硫黄電池(NAS電池)、鉛蓄電池およびレドックスフロー電池が有名である。鉛蓄電池は、古くから自動車用および自動二輪用のバッテリとして用いられており、小型蓄電池としての実績が豊富である。リチウムイオン電池も、小型電池として多くの実績を有する。NAS電池は、極めて高いエネルギー密度を有しており、その充放電効率の高さから、変電所における電力平準化用途にて広く用いられている。レドックスフロー電池は、上記蓄電池に比べてエネルギー密度が低く、かつ高コストであるが、「長寿命」、「高い設計自由度」、「高い安全性」および「常温運転」という長所を持つ。このような長所を持つレドックスフロー電池は、現在、世界中で、再生可能エネルギーの平準化手段の一つとして有力視されている。
レドックスフロー電池は、1974年頃に、NASAが開発に成功した電池である。開発当初は、Fe/Cr系が主流であったが、正・負電解液が隔膜を通して混合することが電池の容量低下につながるという欠点を有しており、飛躍的な実用化には至っていなかった。1984年頃に、オーストラリアが正・負電解液の活物質にバナジウムイオンを用いたV/V系(バナジウム/バナジウム系)のレドックスフロー電池を発明した。これ以降、レドックスフロー電池が飛躍的に実用化され、現在に至る。V/V系のレドックスフロー電池は、炭素繊維等から成る電極を正極液および負極液に入れ、正極液および負極液をともにバナジウム系の電解液とする電池である。正極側と負極側とは、両極側の電解液を通過させずに水素イオンのみを通過させる隔膜で仕切られている。充電時および放電時、正極液は、電池外部のタンクに接続され、電池外部のポンプによって正極とタンクとをつなぐ経路を循環させられる。負極液も正極液と同様のシステムにて循環させられる(特許文献1を参照)。
レドックスフロー電池は、その運転中に、充電状態(State Of Charge: SOC)をモニタリング可能な数少ない電池である。一般的な電池の場合、運転中の電池の端子電圧が起電力と電池の内部抵抗による電圧降下の和となるため、基本的には、運転中の起電力の測定はできない。しかし、レドックスフロー電池の場合には、外部との充放電に寄与しないモニタ用の電池をつないで、運転中の電池と同じ電解液をモニタ用の電池に循環させることにより、運転中であっても起電力の測定が可能となる(非特許文献2を参照)。
このような特性を利用して、従来から、レドックスフロー電池の充放電状況のモニタリングのみならず(特許文献2を参照)、過電圧の測定を通じて、電池のさらなる高性能化を図る試みがなされてきた。例えば、M.J. Watt−Smithらは、V/V系レドックスフロー電池の電解液の出口からタンクまでの経路に、開路電圧(OCV)を測定するためのOCV測定用セルをつなぎ、電池の過電圧を測定して、自身の校正用プログラムが正しいことを報告している(非特許文献3を参照)。また、上記と同様の位置にOCV測定用セルをつないで、電池容量の低下を検出する方法についての発明も公開されている(例えば、特許文献3を参照)。さらに、本発明者らの研究グループでも、従来から、電解液のタンク内に参照極(標準電極あるいは基準電極ともいう)を入れ、電池とタンクとの間、あるいはタンクとポンプとの間に、OCV測定用セルをつなぎ、電池の過電圧を測定してきた(例えば、非特許文献4および5を参照)。
重松敏夫,SEIテクニカルレビュー・第179号,p.7(2011) 柴田俊和ら,SEIテクニカルレビュー・第182号,p.10(2013) M.J. Watt−Smith et al., J.Chem Technol Biotechnol,88, p.126−138(2013) 金子祐司ら,電気化学会第82回大会, 1D33(2015) 金子祐司ら,電気化学会第83回大会, 1H27(2015)
米国特許第4786567号公報 特表2014−514704号公報 特開2003−173812号公報
しかし、レドックスフロー電池の従来から行われている過電圧測定方法には、次のような問題がある。従来からの過電圧の測定には、必ず、参照極(基準電極または標準電極ともいう)が用いられている。レドックスフロー電池は、一般的に、正・負両極において、電解液がセル本体(「主セル」ともいう)、電解液貯蔵タンク(単に、「タンク」という)、ポンプ、セル本体の順に循環する循環経路を有する。この循環経路内に、参照極とOCV測定用セルとを導入する場合、最も容易な導入位置は、非特許文献3に開示される位置、すなわち、セル本体の出口とタンクとの間である。しかし、セル本体の下流側の電解液の組成は、セル本体内の電解液の組成と大きく異なるため、過電圧の測定には向かない。M.J. Watt−Smithらは、その点を理解しており、校正プログラムを用いている。別の導入位置として、タンクとポンプとの間も考えらえる。しかし、この位置は、ポンプの上流位置であり、電解液が滞留しやすい。このため、OCV測定用セルの導入位置としては、不向きである。最後に、ポンプとセル本体との間は、セル本体に電解液が入る上流位置にあたり、前二者に比べて、OCV測定用セルの導入位置としては適している。しかし、参照極をこの位置に導入すると、ポンプの圧力がかかって参照極が劣化しやすいため、長時間の測定ができない。このような理由から、結局、タンク内に参照極を入れて、M.J. Watt−Smithらと同様に、セル本体の出口とタンクとの間にOCV測定用セルを繋ぐしかなかった。一方、最近では、レドックスフロー電池のさらなる性能向上を目指す必要性が高まっている。従来のようにセル本体の過電圧を測定するだけでは、過電圧を低減するための対策を講じることは難しい。このような理由から、より正確、かつより簡便に、過電圧の低減対策を講ずる方法が要望されている。
本発明は、上記要望に応えること、すなわち、より正確、かつより簡便に、過電圧の低減対策を講ずることのできるレドックスフロー電池の過電圧測定方法およびその方法を行うための装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意努力してきた結果、ポンプとセル本体との間にOCV測定用セルをつなぎ、参照極を用いることなく、正極および負極の各過電圧を測定することにより、正・負極の各不活電極および隔膜のそれぞれの問題に対処できるという知見を得て、本発明を完成するに至った。具体的な解決手段は、次のとおりである。
上記目的を達成するための一実施の形態に係るレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定方法は、レドックスフロー電池の正極および負極の各過電圧を測定する方法であって、レドックスフロー電池の主セルへの電解液の入口側と電解液循環用ポンプとの間に、開路電圧測定用セルを接続する開路電圧測定用セル接続ステップと、電解液循環用ポンプを駆動して電解液を循環させる電解液循環ステップと、主セルを定電流充放電させる充放電ステップと、充放電を行っている最中に、少なくとも、主セルの第一正極と開路電圧測定用セルの第二正極との間の第一電位差としての正極過電圧と、主セルの第一負極と開路電圧測定用セルの第二負極との間の第二電位差としての負極過電圧とを、参照電極を用いることなく測定する電位差測定ステップと、を含む。
本発明の別の実施の形態に係るレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定方法は、電位差測定ステップにおいて、第一正極と第一負極との間の第三電位差と、第二正極と第二負極との間の第四電位差とを、さらに測定するようにしても良い。
本発明の別の実施の形態に係るレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定方法は、第三電位差から、第四電位差、および正極過電圧と負極過電圧との和、をそれぞれ差し引いて、主セルの隔膜過電圧を求める隔膜過電圧算出ステップを、さらに含んでも良い。
本発明の別の実施の形態に係るレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定方法は、隔膜過電圧を充放電の電流密度で除して膜面積当たりの膜抵抗を算出する膜抵抗算出ステップを、さらに含んでも良い。
また、本発明の一実施の形態に係るレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定装置は、レドックスフロー電池の正極および負極の各過電圧を測定するための装置であって、レドックスフロー電池の主セルの第一正極および第一負極と、主セルへの電解液の入口側と電解液循環用ポンプとの間に接続される開路電圧測定用セルの第二正極および第二負極とにそれぞれ電気的に接続可能であって、主セルを定電流充放電させている最中に、少なくとも、第一正極と第二正極との間の第一電位差としての正極過電圧と、第一負極と第二負極との間の第二電位差としての負極過電圧とを、参照電極を用いることなく測定する電位差測定手段を備える。
本発明の別の実施の形態に係るレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定装置では、電位差測定手段は、第一正極と第一負極との間の第三電位差と、第二正極と第二負極との間の第四電位差とを、さらに測定しても良い。
本発明の別の実施の形態に係るレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定装置は、第三電位差から、第四電位差、および正極過電圧と負極過電圧との和、をそれぞれ差し引いて、主セルの隔膜過電圧を求める隔膜過電圧算出手段を、さらに備えても良い。
本発明の別の実施の形態に係るレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定装置は、隔膜過電圧を充放電の電流密度で除して膜面積当たりの膜抵抗を算出する膜抵抗算出手段を、さらに備えても良い。
本発明の別の実施の形態に係るレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定装置は、主セルを定電流充放電させるための電源をさらに備えても良い。
本発明の別の実施の形態に係るレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定装置は、開路電圧測定用セルを、さらに備えても良い。
本発明の別の実施の形態に係るレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定装置は、少なくとも正極過電圧および負極過電圧を、充電状態(SOC)に対応させてプロット表示する表示手段を、さらに備えても良い。
本発明によれば、より正確、かつより簡便に、過電圧の低減対策を講ずることができる。
図1は、本実施の形態に係る正・負極過電圧測定装置によって測定対象となる主セル(1A)および開路電圧(Open Current Voltage: OCV)を測定するためのOCV測定用セル(1B)の各簡易断面図をそれぞれ示す。 図2は、図1の主セルを含むレドックスフロー電池に、OCV測定用セル(「OCVセル」とも称する)を接続して、第一正極および第一負極の各過電圧を少なくとも測定するためのシステム全体の概略構成を示す。 図3は、図2の測定装置を構成する制御部、記憶部および表示部の間の情報処理を示す。 図4は、本発明の実施の形態に係るレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定方法の一例の処理の流れを示す。 図5は、図2のレドックスフロー電池を簡略化して、OCV測定用セルの3種類の接続位置を示す。 図6は、V3+を負極液、V4+を正極液にとした小型フローセルの充放電結果を示すグラフ(6A)および残余過電圧の推移を示すグラフ(6B)である。
次に、本発明に係るレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定装置(以後、適宜、「正・負極過電圧測定装置」あるいは単に「測定装置」ともいう)およびレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定方法の各実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施の形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施の形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
<1.主セルおよび開路電圧測定用セルの各構成>
図1は、本実施の形態に係る正・負極過電圧測定装置によって測定対象となる主セル(1A)および開路電圧(Open Current Voltage: OCV)を測定するためのOCV測定用セル(1B)の各簡易断面図をそれぞれ示す。
主セル1は、レドックスフロー電池の主要部である。主セル1は、その略中央部において、カーボンフェルト製の負極(以後、適宜、「第一負極」と称する)10とカーボンフェルト製の正極(以後、適宜、「第一正極」と称する)11とを、陽イオン交換膜(以後、「隔膜」若しくは単に「膜」と称する)12を挟んで対向配置させた構造を有する。第一負極10は、その外側に樹脂とグラファイトを複合させて成るグラファイト複合集電板13を、そのさらに外側に第一負極端子17をそれぞれ配置する。同様に、第一正極11は、その外側に樹脂とグラファイトを複合させて成るグラファイト複合集電板14を、そのさらに外側に第一正極端子18をそれぞれ配置する。第一負極10、グラファイト複合集電板13および第一負極端子17は、互いに電気的に導通可能に接触している。同様に、第一正極11、グラファイト複合集電板14および第一正極端子18も、互いに電気的に導通可能に接触している。このため、第一負極端子17と第一正極端子18との間の電位差を測定することは、第一負極10と第一正極11との間の電位差を測定することと同一視できる。
グラファイト複合集電板13と隔膜12との間、およびグラファイト複合集電板14と隔膜12との間には、ガスケット15およびガスケット16が配置されている。第一負極10はガスケット15の内方に配置されている。同様に、第一正極11はガスケット16の内方に配置されている。ガスケット15,16は、第一負極10および第一正極11にしみ込んだ各電解液が主セル1から外部へと漏れるのを有効に防止する機能を有する。第一負極端子17のさらに外側には、バックプレート19が配置されている。同様に、第一正極端子18のさらに外側には、バックプレート20が配置されている。バックプレート19とバックプレート20とは、例えばボルトとナット(不図示)とを用いて、両者の間隔を狭くする方向に型締めされている。
グラファイト複合集電板13、第一負極端子17およびバックプレート19は、それらを連通する2つの貫通孔を備える。1つの貫通孔にはチューブ21が挿入されている。もう1つの貫通孔には、チューブ22が挿入されている。チューブ21およびチューブ22は、グラファイト複合集電板13、第一負極端子17およびバックプレート19を連通する貫通孔と隙間のない状態にて、それぞれ第一負極10の外側表面に達している。また、グラファイト複合集電板14、第一正極端子18およびバックプレート20は、それらを連通する2つの貫通孔を備える。1つの貫通孔にはチューブ23が挿入されている。もう1つの貫通孔には、チューブ24が挿入されている。チューブ23およびチューブ24は、グラファイト複合集電板14、第一正極端子18およびバックプレート20を連通する貫通孔と隙間のない状態にて、それぞれ第一正極11の外側表面に達している。
この実施の形態に係るレドックスフロー電池は、正極電解液および負極電解液の各種類を限定するものではないが、好ましくは、正極電解液および負極電解液ともにバナジウム系電解液を用いる電池である。正極電解液および負極電解液ともにバナジウム系電解液を用いる場合には、正極電解液は、より好ましくは、5価および4価のバナジウムイオンを含む硫酸水溶液である。負極電解液は、より好ましくは、2価および3価のバナジウムイオンを含む硫酸水溶液である。負極電解液は、チューブ21から第一負極10の表面を経てチューブ22へと流れる。正極電解液は、チューブ23から第一正極11の表面を経てチューブ24へと流れる。主セル1の充電時に、第一負極10では、バナジウムイオンが3価から2価へと変化し、第一正極11では、バナジウムイオンが4価から5価へと変化する。隔膜12は、負極電解液および正極電解液を通さずに、第一正極11側から第一負極10側に向かって水素イオンのみを通す。一方、主セル1の放電時に、第一負極10では、バナジウムイオンが2価から3価へと変化し、第一正極11では、バナジウムイオンが5価から4価へと変化する。隔膜12は、負極電解液および正極電解液を通さずに、第一負極10側から第一正極11側に向かって水素イオンのみを通す。主セル1は、このようなバナジウムイオンの電子放出および電子獲得によって、二次電池として機能する。
OCV測定用セル40は、基本的に、上記の主セル1と同様の構成を有する。OCV測定用セル40は、その略中央部において、カーボンフェルト製の負極(以後、適宜、「第二負極」と称する)41とカーボンフェルト製の正極(以後、適宜、「第二正極」と称する)42とを、隔膜を挟んで対向配置させた構造を有する。第二負極41は、その外側に樹脂とグラファイトを複合させて成るグラファイト複合集電板を、そのさらに外側に第二負極端子43をそれぞれ配置する。同様に、第二正極42は、その外側に樹脂とグラファイトを複合させて成るグラファイト複合集電板を、そのさらに外側に第二正極端子44をそれぞれ配置する。このため、第二負極端子43と第二正極端子44との間の電位差を測定することは、第二負極41と第二正極42との間の電位差を測定することと同一視できる。各グラファイト複合集電板と隔膜との間には、ガスケットが配置されている。第二負極41および第二正極42は、それぞれ各ガスケットの内方に配置されている。第二負極端子43および第二正極端子44のそれぞれのさらに外側にはバックプレートが配置されている。両バックプレートは、例えばボルトとナット(不図示)とを用いて、それらの間隔を狭くする方向に型締めされている。
OCV測定用セル40は、第一負極41および第二正極42の各表面に接触する各電解液の種類を限定するものではないが、主セル1内をフローする負極電解液および正極電解液が循環する構造を有する。このため、主セル1に流れる正極電解液および負極電解液をともにバナジウム系電解液とする場合には、OCV測定用セル40に流れる正極電解液および負極電解液も、上記と同じバナジウム系電解液である。負極電解液は、チューブ36から第二負極41の表面を経てチューブ21へと流れる。正極電解液は、チューブ37から第二正極42の表面を経てチューブ23へと流れる。
<2.レドックスフロー電池および正・負極過電圧測定装置の構成>
図2は、図1の主セルを含むレドックスフロー電池に、OCV測定用セル(「OCVセル」とも称する)を接続して、第一正極および第一負極の各過電圧を少なくとも測定するためのシステム全体の概略構成を示す。
レドックスフロー電池の第一正極11および第一負極10の各過電圧を測定する場合には、レドックスフロー電池に対して、主セル1の第一負極10から、チューブ22、負極電解液用タンク(単に、「タンク」ともいう)30、チューブ32、電解液循環用ポンプ(単に、「ポンプ」という)34、チューブ36を順に経て、OCV測定用セル40の第二負極41側に入り、チューブ21から主セル1の第一負極10に戻る負極側循環経路と、主セル1の第一正極11から、チューブ24、正極電解液用タンク(単に、「タンク」ともいう)31、チューブ33、電解液循環用ポンプ(単に、「ポンプ」という)35、チューブ37を順に経て、OCV測定用セル40の第二正極42側に入り、チューブ23から主セル1の第一正極11に戻る正極側循環経路と、を構築する。負極電解液は、ポンプ34の駆動により、負極側循環経路を太矢印の方向に循環する。同様に、正極電解液は、ポンプ35の駆動により、正極側循環経路を太矢印の方向に循環する。
OCV測定用セル40は、正極電解液および負極電解液の流れる方向を基準に入口と出口を定義した場合において、ポンプ34,35の出口側と主セル1の入口側との間に接続される。OCV測定用セル40は、負極電解液および正極電解液を主セル1と共有するように、主セル1と直列に接続される。この結果、負極電解液は、ポンプ34からチューブ36を通り、第二負極41の表面を経て、チューブ21を通り、第一負極10の表面を経て、チューブ22を通る。また、正極電解液は、ポンプ35からチューブ37を通り、第二正極42の表面を経て、チューブ23を通り、第一正極11の表面を経て、チューブ24を通る。
主セル1は、第一負極端子17と第一正極端子18との間に接続される電源装置(電源に相当)50を通じて充電可能である。電源装置50は、抵抗回路を有している。このため、主セル1は、放電可能でもある。このように、主セル1は、電源装置50との接続により、充電および放電が可能となる。
図2のシステムは、正・負極過電圧測定装置55の一部を構成する電圧測定部60を備える。電圧測定部60は、主セル1の第一負極端子17と第一正極端子18との間(図2中のa−b間)の電位差を測定可能な電圧計61; OCV測定用セル40の第二負極端子43と第二正極端子44との間(図2中のc−d間)の電位差を測定可能な電圧計62; 第一負極端子17と第二負極端子43との間(図2中のa−c間)の電位差を測定可能な電圧計63; および第一正極端子18と第二正極端子44との間(図2中のb−d間)の電位差を測定可能な電圧計64を好適に備える。電圧測定部60は、最低限、電圧計63と電圧計64とを備える。このため、電圧測定部60は、主セル1の第一正極11の過電圧と、第一負極10の過電圧と、を測定可能である。
正・負極過電圧測定装置55は、レドックスフロー電池の第一正極11および第一負極10の各過電圧を測定するための装置であって、第一正極11および第一負極10と、主セル1への電解液の入口側とポンプ34,35との間に接続されるOCV測定用セル40の第二正極42および第二負極41とにそれぞれ電気的に接続可能であって、主セル1を定電流充放電させている最中に、少なくとも、第一正極11と第二正極42との間の第一電位差(正極過電圧)と、第一負極11と第二負極41との間の第二電位差(負極過電圧)とを、参照電極を用いることなく測定する電位差測定手段としての電圧測定部60(少なくとも、電圧計63,64を含む)を備える。電圧測定部60は、第一正極11と第一負極10との間の第三電位差と、第二正極42と第二負極41との間の第四電位差とを、さらに測定することもできる。
制御装置70は、好ましくは、正・負極過電圧測定装置55の一部を構成し、電圧測定部60と電気的に接続され、さらに好ましくは電源装置50とも電気的に接続される。この実施の形態では、制御装置70は、好ましくは、制御部71と、記憶部72と、表示部73とを備える。制御部71は、例えば、CPUそのもの、あるいはCPUを含む電子回路である。記憶部72は、例えば、RAM、ROM、ハードディスク、EEPROM等の読み書き両方向可能なメモリ、あるいは読み出しのみ可能なメモリである。記憶部72は、当該メモリを含む電子回路でも良い。表示部73は、過電圧の測定結果等を表示させる部分であり、例えば、液晶表示部(LCD)を好適に例示できる。表示部73は、少なくとも第一正極11の過電圧(正極過電圧)および第一負極10の過電圧(負極過電圧)を、充電状態(SOC)に対応させてプロット表示する表示手段の一部若しくは全部として機能する。制御部71は、記憶部72内のコンピュータプログラムを読みながら、記憶部72の情報に基づき種々の計算処理を行うことができる。また、制御部71は、電源装置50のオン・オフの他、給電量のコントロールを行うことができる。制御部71は、電圧測定部60の制御をも行うことができる。例えば、制御部71は、主セル1の充電・放電中に、所定時間おきに、各種電位差を計測するように、電圧測定部60を制御することができる。
ここで、第一正極11の過電圧、第一負極10の過電圧および隔膜12の抵抗率を求める方法について、簡単に説明する。
OCV測定用セル40の開路電圧(OCV: ΔEocv±)は、(式1)に示すとおりである。
ΔEocv±=Eocv−Eocv+EMFm・・・(式1)
ここで、ΔEocv±は、OCV測定用セル40の第二負極41と第二正極42との電位差、すなわち、EMF(起電力)である。Eocvは、OCV測定用セル40の第二正極42の電位(vs. SHE)である。Eocvは、第二負極41の電位(vs. SHE)である。SHEは、標準水素電極のことで、電位がSHEを基準として定義されていることを表す。EMFmは、OCV測定用セル40の隔膜の起電力である。
電流i=0の時の主セル1の第一正極11と第一負極10との電位差Δ(Ecell±,0)は、(式2)に示すとおりである。
Δ(Ecell±,0)=(Ecell,0)−(Ecell,0)+EMFm・・・(式2)
ここで、(Ecell,0)は、i=0の時の第一正極11の電位である。(Ecell,0)は、i=0の時の第一負極10の電位である。EMFmは、主セル1の隔膜12の起電力である。
また、電流iで電解時の主セル1の第一正極11と第一負極10との電位差Δ(Ecell±,i)は、(式3)に示すとおりである。
Δ(Ecell±,i)=(Ecell,i)−(Ecell,i)+EMFm+ΔEr・・・(式3)
ここで、(Ecell,i)と(Ecell,i)は、それぞれ、電流iで電解時の主セル1の第一正極11の電位(vs.SHE)と第一負極10の電位(vs.SHE)である。ΔErは残余過電圧といい、電解液の抵抗率をRs、正・負極の乾燥時の電気抵抗率をRe、電解液を含浸させた隔膜の抵抗率をRmとすれば、ΔEr=i×(Rs+Re+Rm)であり、多くの場合、Rs+ReはRmに比べて十分に小さいので、ΔEr≒i×Rmと近似できる。
電流iで電解時の主セル1の過電圧ηcell(i)、第一正極11の過電圧η(i)および第一負極10の過電圧η(i)は、それぞれ、(式4)、(式5)および(式6)のように定義できる。
ηcell(i)=Δ(Ecell±,i)−Δ(Ecell±,0)・・・(式4)
η(i)=(Ecell,i)−(Ecell,0)・・・(式5)
η(i)=(Ecell,i)−(Ecell, 0)・・・(式6)
ここで、Δ(Ecell±,0)≒ΔEocv±、(Ecell,0)≒Eocv、(Ecell,0)≒Eocvとそれぞれ近似すれば、(式7)、(式8)および(式9)が成立する。
ηcell(i)≒Δ(Ecell±,i)−ΔEocv±・・・(式7)
η(i)≒(Ecell,i)−Eocv・・・(式8)
η(i)≒(Ecell,i)−Eocv・・・(式9)
これにより、主セル1の端子電圧とOCV測定用セル40の端子電圧から、主セル1の過電圧が、主セル1の第一正極11とOCV測定用セル40の第二正極42の電位差、および主セル1の第一負極10とOCV測定用セル40の第二負極41の電位差から、それぞれ、正極過電圧と負極過電圧とを求めることができる。
上記の近似、すなわち、Δ(Ecell±,0)≒ΔEocv±、(Ecell,0)≒Eocvおよび(Ecell,0)≒Eocvが、どのような条件で成り立つかを理論的および実験的に確かめておく必要がある。まず、Δ(Ecell±,0)≒ΔEocv±の近似は、定期的に電流i=0の時間を設定して両者が一致することを確認することで可能である。例えば、充放電の切り替え時に5分間の待ち時間を設定してΔ(Ecell±,0)≒ΔEocv±であることを確認するのが好ましい。次に、(Ecell,0)≒Eocvおよび(Ecell,0)≒Eocvの各近似は、上述のΔ(Ecell±,0)≒ΔEocv±の近似が成立すれば、これらも同時に成り立つと考えられる。
次に、残余過電圧ΔErについて考える。主セル1の過電圧ηcell(i)は、第一正極11の過電圧、第一負極10の過電圧および残余過電圧ΔErの和であり、先に述べたようにΔEr≒i×Rmであるから、(式10)が成立する。
ηcell(i)≒ η(i)+η(i)+(i×Rm)・・・(式10)
これにより、膜抵抗Rmが(式11)のように求められる。
Rm≒{ηcell(i)−(η(i)+η(i))}/i・・・(式11)
図3は、図2の測定装置を構成する制御部、記憶部および表示部の間の情報処理を示す。
制御部71は、充放電制御回路81と、電位差測定用制御回路82と、隔膜過電圧算出部83と、膜抵抗算出部84と、表示処理用回路85とを備える。充放電制御回路81は、少なくともCPUを備え、充電条件、充電と放電との切り替え条件等のプログラムに基づき電源装置50を制御する回路である。当該プログラムは、例えば、記憶部72内に少なくとも読み出し可能に格納されている。電位差測定用制御回路82は、少なくともCPUを備え、電圧測定部60への信号送出および/または電圧測定部60からの信号受信可能な回路である。電位差測定用制御回路82は、主セル1の充放電の最中に、電圧計61〜64により継続的若しくは断続的に電圧を測定させ、あるいは電圧計61〜64の内の1若しくは2以上のみにより継続的若しくは断続的に電圧を測定させることができる。測定された各電圧値は、電位差測定用制御回路82によって受信され、それ以後の計算に用いられる。
隔膜過電圧算出部83は、第一正極11と第一負極10との間の第三電位差から、第二正極42と第二負極41との間の第四電位差、および正極過電圧と負極過電圧との和、をそれぞれ差し引いて、主セル1の隔膜過電圧を求める隔膜過電圧算出手段である。当該隔膜過電圧(i×Rm)は、上述の(式10)を用いて算出される。(式10)は、例えば、記憶部72内に格納されている。隔膜過電圧算出部83は、記憶部72から、(式10)を読み出して、隔膜過電圧を算出することができる。この計算に必要な(式7)、(式8)および(式9)は、例えば、記憶部72内に格納される。さらに、前述の(式1)から(式6)の一部若しくは全部を記憶部72から読み出し可能に格納していても良い。
膜抵抗算出部84は、隔膜過電圧を充放電の電流密度で除して膜面積当たりの膜抵抗を算出する膜抵抗算出手段である。当該膜抵抗Rmは、上述の(式11)を用いて算出される。(式11)は、例えば、記憶部72内に格納されている。膜抵抗算出部84は、記憶部72から、(式11)を読み出して、膜抵抗Rmを算出することができる。
表示処理用回路85は、少なくともCPUを備え、表示部73を制御する回路である。表示処理用回路85は、正極過電圧および負極過電圧を、充電状態(SOC)に対応させてプロット表示する表示手段の一部でもあり、表示部73にグラフ等の形式にて上記各過電圧を表示させる機能を有する。
正・負極過電圧測定装置55は、この実施の形態では、電圧測定部60と、制御装置70とを備える。正・負極過電圧測定装置55は、電源装置50および/またはOCV測定用セル40を備えることもできる。表示部73は、この実施の形態では、制御装置70に備えられているが、制御装置70とは別に備えられても良く、あるいは図2のシステムにおいて備えられていなくても良い。また、正・負極過電圧測定装置55は、制御回路を備えた電圧測定部60のみ、あるいは電圧計63,64のみであっても良い。
また、正・負極過電圧測定装置55は、図2に示すシステムから主セル1を除く他の構成を全て備えた装置でも良い。そのような装置の場合、当該装置に、主セル1をセットして、ポンプ34,35を駆動して電解液を循環させ、電圧測定部60を通じて各電圧を測定し、その測定値および計算結果をリアルタイム若しくは測定終了後に表示部73に表示させることができる。制御部71は、必要に応じて、測定者の操作を受け付けて、若しくは一部を予めプログラムされた内容に基づいて自動にて、上記全ての処理を行うことができる。
<3.レドックスフロー電池の正・負極過電圧測定方法>
次に、本発明に係るレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定方法の実施の形態について説明する。
図4は、本発明の実施の形態に係るレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定方法の一例の処理の流れを示す。
この実施の形態に係るレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定方法(以後、適宜、「正・負極過電圧測定方法」という)は、好ましくは、図4に示すように、OCV測定用セル40を主セル1に接続するステップ(S101)、正極電解液および負極電解液を循環させるステップ(S102)、主セル1の充放電を開始するステップ(S103)、各種電位差を測定するステップ(S104)、隔膜過電圧を算出するステップ(S105)、膜抵抗を算出するステップ(S106)を含む。以下、各ステップについて説明する。
(1)S101
このステップは、レドックスフロー電池の主セル1への電解液の入口側とポンプ34,35との間に、OCV測定用セル40を接続する開路電圧測定用セル接続ステップである。
(2)S102
このステップは、ポンプ34,35を駆動して電解液を循環させる電解液循環ステップである。これによって、正極電解液および負極電解液は、主セル1→タンク30,31→ポンプ34,35→OCV測定用セル40→主セル1へと循環する。
(3)S103
このステップは、主セル1を定電流充放電させる充放電ステップである。具体的には、主セル1に接続される電源装置50を用いて、定電流充放電が実行される。
(4)S104
このステップは、充放電を行っている最中に、少なくとも、主セル1の第一正極11とOCV測定用セル40の第二正極42との間の第一電位差(正極過電圧)と、主セル1の第一負極10とOCV測定用セル40の第二負極41との間の第二電位差(負極過電圧)とを、参照電極を用いることなく測定する電位差測定ステップである。このステップでは、さらに好ましくは、第一正極11と第一負極10との間の第三電位差と、第二正極42と第二負極41との間の第四電位差とが測定される。
(5)S105
このステップは、上記第三電位差から、上記第四電位差、および正極過電圧と負極過電圧との和、をそれぞれ差し引いて、主セル1の隔膜過電圧を求める隔膜過電圧算出ステップである。このステップは、例えば、制御装置70の隔膜過電圧算出部83により実行可能である。
(6)S106
このステップは、上記隔膜過電圧を充放電の電流密度で除して膜面積当たりの膜抵抗を算出する膜抵抗算出ステップである。このステップは、例えば、制御装置70の膜抵抗算出部84により実行可能である。
主セル1の第一正極11の過電圧と第一負極10の過電圧とを測定するだけであれば、上記S101〜S104の各ステップを実行し、さらにステップS104において、電圧計63,64のみを用いて、図2中のa−c間の電位差とb−d間の電位差とを測定すれば良く、必ずしもa−b間の電位差およびb−d間の電位差を測定することを要しない。しかし、主セル1の隔膜12の抵抗に起因する電位差をも把握するには、ステップS104において、電圧計61,62を加えて、a−b間の電位差およびb−d間の電位差を測定するのが好ましい。かかる観点から、S105、さらには、S106は、必須のステップではなく、追加するとより好ましいステップとして位置づけられる。
また、S104〜S106は、制御装置70の各構成部を用いて実行することもできるが、必ずしも制御装置70を用いることを要しない。例えば、電圧計61〜64は、制御装置70に接続されていなくとも良い。電力さえ確保できれば、電圧計61〜64を用いて、第一〜第四の各電位差を測定することができる。また、制御装置70を用いずに、S105およびS106を計算機あるいは手計算にて算出することもできる。
<4.過電圧の測定例>
次に、本発明者らによるレドックスフロー電池の正・負極過電圧の測定実験の方法およびその結果について紹介する。
図5は、図2のレドックスフロー電池を簡略化して、OCV測定用セルの3種類の接続位置を示す。
以下に説明するレドックスフロー電池の正・負極過電圧の測定実験方法では、図5中のA、BおよびCの3箇所にOCV測定用セル40を接続した。過去、レドックスフロー電池の充放電時の開路電圧(OCV)と充電状態(SOC)の関係、およびレドックスフロー電池の正・負極液の参照極(Ag−AgCl)電位とSOCの関係について調べた。今回の測定は、充放電実験用の主セル(=小型フローセル)1とOCV測定用セル(=OCV測定用フローセル若しくはOCVセル、電極直径:1.0cm)40を用いて、レドックスフロー電池の正・負極それぞれの過電圧を測定し、これらより、正・負極の各抵抗率を求め、電池のSOCと電池性能の関係について検討した。
(1) 実験方法
小型フローセル1の電極(第一正極11および第一負極10)および隔膜12には、それぞれ、炭素繊維フェルト(東洋紡製、AAF304ZS)およびイオン交換膜(DuPont製、Nafion(登録商標) NR212)を用いた。さらに、OCV測定用セル40にも同種の電極と隔膜を使用した。メタバナジン酸(V4+)3.5M硫酸溶液を電解還元した負極電解液(負極液とも称する)(V3+)、およびメタバナジン酸3.0M硫酸溶液を正極電解液(正極液とも称する)(V4+)として、電流密度70mA/cmで、充放電試験装置(アスカ電子製、ACD−01)により充放電した。なお、タンク30,31とポンプ34,35(EYELA製、MP−4000)の間(図5中のA)、ポンプ34,35と小型フローセル1の入口の間(図5中のB)、小型フローセル1の出口とタンク30,31の間(図5中のC)に、それぞれ、OCV測定用セル40を、1個ずつ計3個を配置した。電解液の流量は3.0ml/minとした。
(2)結果および考察
図6は、V3+を負極液、V4+を正極液にとした小型フローセルの充放電結果を示すグラフ(6A)および残余過電圧の推移を示すグラフ(6B)である。
図6(6A)に示す小型フローセル1の充放電結果によると、充電電圧は電解還元電圧と大差なく、過電圧は電解還元時より低い。これは、電解還元時の大きな過電圧は、V4+からV2+を経由してV3+が生成するためと考えるとよく説明できる。なお、過電圧は、Bの位置に接続したOCV測定用セル40と小型フローセル1の端子電圧の差から求めた。小型フローセル1の抵抗率は、充電開始時と充電終了時(または放電開始時と放電終了時)に大きく変化し、よく知られている湾曲型を示した。図6(6B)に示す小型フローセル1の測定結果は、過度的信号を除くとノイズレベルとあまり変わらないが、信号の変化は捉えられているので、さらなる信号処理によって残余過電圧から膜抵抗を測定する見通しを得た。以上より、小型フローセル1とBの位置に接続したOCV測定用セル40との組み合わせは、小型フローセル1の正・負極過電圧の分離測定を可能とし、レドックスフロー電池材料の探索評価に非常に有効であると結論された。
本発明は、レドックスフロー電池の正・負極過電圧の測定に用いることができる。
1 主セル
10 第一負極(レドックスフロー電池の負極)
11 第一正極(レドックスフロー電池の正極)
12 隔膜
34,35 ポンプ(電解液循環用ポンプ)
40 OCV測定用セル(開路電圧測定用セル)
41 第二負極(開路電圧測定用セルの負極)
42 第二正極(開路電圧測定用セルの正極)
50 電源装置(電源)
55 正・負極過電圧測定装置(レドックスフロー電池の正・負極過電圧測定装置)
60 電圧測定部(電位差測定手段)
73 表示部(表示手段)
82 電位差測定用制御回路(電位差測定手段)
83 隔膜過電圧算出部(隔膜過電圧算出手段)
84 膜抵抗算出部(膜抵抗算出手段)
85 表示処理用回路(表示手段)

Claims (11)

  1. レドックスフロー電池の正極および負極の各過電圧を測定する方法であって、
    前記レドックスフロー電池の主セルへの電解液の入口側と電解液循環用ポンプとの間に、開路電圧測定用セルを接続する開路電圧測定用セル接続ステップと、
    前記電解液循環用ポンプを駆動して前記電解液を循環させる電解液循環ステップと、
    前記主セルを定電流充放電させる充放電ステップと、
    前記充放電を行っている最中に、少なくとも、前記主セルの第一正極と前記開路電圧測定用セルの第二正極との間の第一電位差としての正極過電圧と、前記主セルの第一負極と前記開路電圧測定用セルの第二負極との間の第二電位差としての負極過電圧とを、参照電極を用いることなく測定する電位差測定ステップと、
    を含むレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定方法。
  2. 前記電位差測定ステップにおいて、前記第一正極と前記第一負極との間の第三電位差と、前記第二正極と前記第二負極との間の第四電位差とを、さらに測定する請求項1に記載のレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定方法。
  3. 前記第三電位差から、前記第四電位差、および前記正極過電圧と前記負極過電圧との和、をそれぞれ差し引いて、前記主セルの隔膜過電圧を求める隔膜過電圧算出ステップを、さらに含む請求項2に記載のレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定方法。
  4. 前記隔膜過電圧を充放電の電流密度で除して膜面積当たりの膜抵抗を算出する膜抵抗算出ステップを、さらに含む請求項3に記載のレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定方法。
  5. レドックスフロー電池の正極および負極の各過電圧を測定するための装置であって、
    前記レドックスフロー電池の主セルの第一正極および第一負極と、前記主セルへの電解液の入口側と電解液循環用ポンプとの間に接続される開路電圧測定用セルの第二正極および第二負極とにそれぞれ電気的に接続可能であって、
    前記主セルを定電流充放電させている最中に、少なくとも、前記第一正極と前記第二正極との間の第一電位差としての正極過電圧と、前記第一負極と前記第二負極との間の第二電位差としての負極過電圧とを、参照電極を用いることなく測定する電位差測定手段を備えるレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定装置。
  6. 前記電位差測定手段は、前記第一正極と前記第一負極との間の第三電位差と、前記第二正極と前記第二負極との間の第四電位差とを、さらに測定する請求項5に記載のレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定装置。
  7. 前記第三電位差から、前記第四電位差、および前記正極過電圧と前記負極過電圧との和、をそれぞれ差し引いて、前記主セルの隔膜過電圧を求める隔膜過電圧算出手段を、さらに備える請求項6に記載のレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定装置。
  8. 前記隔膜過電圧を充放電の電流密度で除して膜面積当たりの膜抵抗を算出する膜抵抗算出手段を、さらに備える請求項7に記載のレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定装置。
  9. 前記主セルを定電流充放電させるための電源をさらに備える請求項5から請求項8のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定装置。
  10. 前記開路電圧測定用セルを、さらに備える請求項5から請求項9のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定装置。
  11. 少なくとも前記正極過電圧および前記負極過電圧を、充電状態(SOC)に対応させてプロット表示する表示手段を、さらに備える請求項5から請求項10のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池の正・負極過電圧測定装置。
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