JP2017174390A - 予測テーブル設計装置、方法及びプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】過学習を引き起こしにくく、さらには適切な予測精度及びサイズの予測テーブルを設計できるようにする。【解決手段】予測テーブル初期値生成部103は、離散値配列の初期値を定め、各説明変数の代表値を用いて予測モデルf(x)により各メッシュの値を計算して予測テーブルの初期値を生成する。離散値配列候補作成部104は、対象の離散値配列から離散値を削除した複数の離散値配列候補を作成する。評価部105は、実績データを用いて、離散値配列候補作成部104で作成した各離散値配列候補から生成される予測テーブルを評価し、離散値配列候補を選択する。判定部106は、評価部105で選択した離散値配列候補から生成される予測テーブルが所定の条件を満たすか否かを判定し、終了条件を満たしていなければ、評価部105で選択した離散値配列候補を対象の離散値配列として、離散値配列候補作成部104及び評価部105による処理を繰り返す。【選択図】図1

Description

本発明は、予測対象の予測値を求めるのに利用される予測テーブルを設計する予測テーブル設計装置、方法及びプログラムに関する。
予測対象の予測値を求めるために、様々な予測モデルが利用されている。例えば生産プロセスでは、所望の特性(品質や寸法等)を有する製品を製造する必要があるが、原材料の特性や温度等に依存して製品の特性も変わってしまう。そこで、製品の特性yを予測する式(1)の予測モデルを過去の操業データから作成し、製品の特性yが所望の仕様を満たすように生産プロセスの運転条件を変更することが行われている。式(1)において、変数y’は製品の特性yの予測値であり、目的変数と呼ばれる。また、変数x(=[x12・・・xMT)は製品の特性yを変化させる原因となる因子であり、説明変数と呼ばれる(Mは説明変数の個数である)。また、関数f(x)は、説明変数から目的変数を算出する関数であり、予測モデルと呼ばれる。
y’=f(x) ・・・(1)
予測モデルの代表例として、式(2)のような重回帰モデルがある。これは、予測値y’を説明変数xの線形式で表わす予測モデルであり、係数θ0〜θMは過去の操業データから算出することができる。
y’=θ0+θ11+θ22+・・・+θMM ・・・(2)
このような重回帰モデルは計算が容易であることから、幅広いプロセスで利用されている。
目的変数と説明変数が線形関係にある場合は予測精度の良い予測モデルとなるが、目的変数と説明変数との間に強い非線形性がある場合には予測精度の悪い予測モデルとなってしまう。
そこで、様々な非線形予測モデルが提案されている。例えば特許文献1では、複数の領域毎に重回帰モデルを構築し、それぞれの予測値にファジー関数値を乗じた値を足し合わせ、最終的な予測値を算出する手法であり、云わば、区分線形型の予測モデルを過去操業データから自動的に構築する手法が開示されている。特許文献1以外にも、ニューラルネットワークや決定木、ランダムフォレスト等、様々な非線形予測モデルが提案されている。
しかしながら、これらの非線形予測モデルは実産業界ではあまり普及しておらず、予測テーブルが多く利用されている。図3に予測テーブルの例を示す。図3の予測テーブルは、温度及び厚みを説明変数として、ある目的変数を予測するテーブルであり、温度及び厚みを離散化して形成される各区分(メッシュ)に予測値が記述される。図3(a)は温度及び厚みが共に階段形式で離散化される予測テーブルであり、例えば温度が700〜720℃、厚みが5〜10mmの範囲に含まれる場合、予測値は1.3であることを表わす。また、図3(b)は温度が折れ線形式、厚みが階段形式で離散化される予測テーブルであり、例えば温度x1が700〜720℃、厚みが5〜10mmの範囲に含まれる場合、予測値は式(3)の線形式で表わされる。
y’=1.3+(x1−700)×(1.4−1.3)/(720−700) ・・・(3)
このような予測テーブルが広く普及している理由は、予測値を算出するための計算手順が単純であり、予測対象の挙動が理解し易く、予測精度の管理が容易なためである。
予測モデル(特に非線形予測モデル)では、入力変数を見ただけでは目的変数の予測値を人の頭の中で算出することは容易ではない。それに対して、予測テーブルでは、入力変数を見ただけで、予測値を容易に知ることができ、ユーザにとって非常に判り易いという利点がある。また、実操業で得られた目的変数の実績値とそれに対する予測値との誤差をメッシュ毎に集計することで、精度の悪いメッシュを容易に知ることができ、他のメッシュの精度に影響を与えることなく、精度の悪いメッシュのみ予測値を更新することでそのメッシュの精度を向上させることができる(折れ線形式の場合は隣のメッシュにも影響を与えるが、影響範囲は判り易く限定的である)。非線形予測モデルの場合、予測モデルの係数を変えると全ての製品の予測精度が変わってしまい、予測モデルの精度管理が難しいという問題がある。
特開2009−151383号公報 特開2012−93314号公報 特開平6−259107号公報
上述したように実産業界では予測テーブルが広く普及しているが、予測精度の良い予測テーブルを設計するためには、メッシュの区分数や離散値、各メッシュの値(予測値)を適切に定める必要がある。離散値は、説明変数の離散化が階段形式である場合は、メッシュ間の境界値を表わし、折れ線形式である場合は、折れ線の頂点の値を表わす。例えば図3(a)、(b)の厚みの離散値は5、10、15、・・・、40となり、図3(a)、(b)の温度の離散値は700、720、・・・、860となる。
従来、予測テーブルを設計するに際して、メッシュの値を定めるには、メッシュに属する実績データを取得して、予測対象の実績値の平均を用いることが一般的である。メッシュに属する実績データの個数が少ない場合には、特許文献3のように、他のメッシュの実績データを参考にメッシュの値を決定する手法も開示されている。
しかしながら、実績データからメッシュの値を算出する手法は簡便ではあるが、メッシュに属する(もしくはその周辺のメッシュに属する)少ない実績データからメッシュの値を算出することになり、過学習を引き起こしやすいという問題がある。過学習とは、過去の実績データに対しては予測精度が良いが、将来の未知のデータに対しては予測精度が悪くなる現象である。
また、メッシュの区分数や離散値の定め方に特定の手法はなく、例えば特許文献2のように、説明変数の値域を等間隔で区切ったり、既に別の管理で用いている区分を使用したりする等している。
このように、メッシュの区分数や離散値に関しては、区分数を適当に決めた後、説明変数の値域を等間隔で区切ったり、予測値の変化が大きいところを細かく、変化が小さいところを粗く区切ったり、予測精度が悪ければ区分数を増やしたりする等、試行錯誤で定めることが一般的である。
しかしながら、試行錯誤でメッシュの区分数や離散値を定めるのでは、時間が掛るとともに、適切な数値を定めることは難しい。メッシュが粗いと、予測テーブルのサイズを小さくすることができるが、説明変数の値の細かな差異を反映させることができないため、予測精度が悪くなってしまう。一方、メッシュが細か過ぎると、予測テーブルのサイズが大きくなるばかりでなく、1つのメッシュに含まれる実績データの数が少なくなるため、メッシュの値を高精度に定めることが難しくなり、予測精度の管理も複雑化してしまう。
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、過学習を引き起こしにくく、さらには適切な予測精度及びサイズの予測テーブルを設計できるようにすることを目的とする。
上記の課題を解決するための本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] 説明変数を離散化して形成される各区分に予測対象の予測値が記述される予測テーブルを設計する予測テーブル設計装置であって、
説明変数から目的変数である前記予測対象の予測値を算出する予測モデルに、各区分の説明変数の代表値を入力して予測値を算出して、予測テーブルを生成することを特徴とする予測テーブル設計装置。
[2] 説明変数を離散化して形成される各区分に予測対象の予測値が記述される予測テーブルを設計する予測テーブル設計装置であって、
説明変数から目的変数である前記予測対象の予測値を算出する予測モデルを記憶する記憶手段と、
説明変数の実績値及び目的変数の実績値を格納する格納手段と、
説明変数を離散化する離散値配列の複数の候補について、前記予測モデルに各区分の説明変数の代表値を入力して予測値を算出して生成される予測テーブルを、前記格納手段に格納する説明変数の実績値及び目的変数の実績値を用いて評価して、前記離散値配列の複数の候補から離散値配列を選択する評価手段とを備えたことを特徴とする予測テーブル設計装置。
[3] 離散値配列の初期値を定め、前記予測モデルに各区分の説明変数の代表値を入力して予測値を算出して、予測テーブルの初期値を生成する予測テーブル初期値生成手段と、
前記離散値配列の初期値から一又は複数の離散値を削除した離散値配列の複数の候補を作成する離散値配列候補作成手段とを備え、
前記評価手段は、前記離散値配列候補作成手段で作成した離散値配列の複数の候補について、評価を行い、離散値配列を選択することを特徴とする[2]に記載の予測テーブル設計装置。
[4] 前記評価手段で選択した離散値配列から生成される予測テーブルが、所定の条件を満たすか否かを判定する判定手段を備え、
前記判定手段で前記所定の条件を満たさないと判定した場合、
前記離散値配列候補作成手段は、前記評価手段で選択した離散値配列から一又は複数の離散値を削除した離散値配列の複数の候補を作成し、
前記評価手段は、前記離散値配列候補作成手段で作成した離散値配列の複数の候補について、評価を行い、離散値配列を選択し、
これを前記所定の条件を満たすまで繰り返すことを特徴とする[3]に記載の予測テーブル設計装置。
[5] 前記所定の条件として、予測テーブルのサイズに対する目標サイズ、又は、前記評価手段での評価結果に対する目標値が設定されることを特徴とする[4]に記載の予測テーブル設計装置。
[6] 前記評価手段で選択した離散値配列から一又は複数の離散値を削除し、かつ、前記評価手段で前記離散値配列を選択するまでに削除済みの離散値の中から、当該削除した離散値と同じ数の離散値を復活させて、改善用離散値配列候補を作成する改善用離散値配列候補作成手段と、
前記改善用離散値配列候補作成手段で作成した改善用離散値配列候補について、評価を行い、前記評価手段で選択した離散値配列よりも評価の良い改善用離散値配列候補があれば、それを前記評価手段で選択した離散値配列と置き換える改善用評価手段とを備えたことを特徴とする[4]又は[5]に記載の予測テーブル設計装置。
[7] 前記評価手段で離散値配列を選択した後、所定の実施条件を満たすときに、前記改善用離散値配列候補作成手段及び前記改善用評価手段による処理を実施することを特徴とする[6]に記載の予測テーブル設計装置。
[8] 前記所定の実施条件として、予測テーブルのサイズに対する条件、又は前記評価手段での評価結果に対する条件が設定されることを特徴とする[7]に記載の予測テーブル設計装置。
[9] 前記離散値配列候補作成手段は、削除する離散値を乱数を用いて決めることを特徴とする[3]乃至[8]のいずれか一つに記載の予測テーブル設計装置。
[10] 前記改善用離散値配列候補作成手段は、削除する離散値を乱数を用いて決めることを特徴とする[6]乃至[8]のいずれか一つに記載の予測テーブル設計装置。
[11] 説明変数の離散化形式は、離散値と離散値の間の予測値は一定値とする形式、及び、離散値と離散値の間の予測値はこれら離散値に対応する予測値を結ぶ直線で表わす形式のうち少なくともいずれか一方であることを特徴とする[2]乃至[10]のいずれか一つに記載の予測テーブル設計装置。
[12] 前記評価手段は、予測テーブルの予測値と、目的変数の実績値との誤差を評価することを特徴とする[2]乃至[11]のいずれか一つに記載の予測テーブル設計装置。
[13] 前記評価手段は、前記誤差の平方和を評価値とする、又は、前記誤差の絶対値和を評価値とすることを特徴とする[12]に記載の予測テーブル設計装置。
[14] 前記改善用評価手段は、予測テーブルの予測値と、目的変数の実績値との誤差を評価することを特徴とする[6]乃至[8]のいずれか一つに記載の予測テーブル設計装置。
[15] 前記改善用評価手段は、前記誤差の平方和を評価値とする、又は、前記誤差の絶対値和を評価値とすることを特徴とする[14]に記載の予測テーブル設計装置。
[16] 説明変数を離散化して形成される各区分に予測対象の予測値が記述される予測テーブルを設計する予測テーブル設計方法であって、
説明変数から目的変数である前記予測対象の予測値を算出する予測モデルに、各区分の説明変数の代表値を入力して予測値を算出して、予測テーブルを生成することを特徴とする予測テーブル設計方法。
[17] 説明変数を離散化して形成される各区分に予測対象の予測値が記述される予測テーブルを設計する予測テーブル設計方法であって、
説明変数から目的変数である前記予測対象の予測値を算出する予測モデルを記憶する記憶手段と、説明変数の実績値及び目的変数の実績値を格納する格納手段とを用いて、
説明変数を離散化する離散値配列の複数の候補について、前記予測モデルに各区分の説明変数の代表値を入力して予測値を算出して生成される予測テーブルを、前記格納手段に格納する説明変数の実績値及び目的変数の実績値を用いて評価して、前記離散値配列の複数の候補から離散値配列を選択することを特徴とする予測テーブル設計方法。
[18] 説明変数を離散化して形成される各区分に予測対象の予測値が記述される予測テーブルを設計するためのプログラムであって、
説明変数から目的変数である前記予測対象の予測値を算出する予測モデルに、各区分の説明変数の代表値を入力して予測値を算出して、予測テーブルを生成するためのプログラム。
[19] 説明変数を離散化して形成される各区分に予測対象の予測値が記述される予測テーブルを設計するためのプログラムであって、
説明変数から目的変数である前記予測対象の予測値を算出する予測モデルを記憶する記憶手段と、
説明変数の実績値及び目的変数の実績値を格納する格納手段と、
説明変数を離散化する離散値配列の複数の候補について、前記予測モデルに各区分の説明変数の代表値を入力して予測値を算出して生成される予測テーブルを、前記格納手段に格納する説明変数の実績値及び目的変数の実績値を用いて評価して、前記離散値配列の複数の候補から離散値配列を選択する評価手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
本発明によれば、予測モデルから予測値を算出して予測テーブルを生成するようにしたので、過学習を引き起こしにくい予測テーブルを設計することができる。さらに、離散値配列の複数の候補について、評価を行い、離散値配列を選択するようにしたので、適切な予測精度及びサイズの予測テーブルを設計することができる。
第1の実施形態に係る予測テーブル設計装置の機能構成を示す図である。 第1の実施形態に係る予測テーブル設計装置による予測テーブル設計方法を示すフローチャートである。 予測テーブルの例を示す図であり、(a)は温度及び厚みが共に階段形式で離散化された予測テーブルを示す図、(b)は温度が折れ線形式、厚みが階段形式で離散化された予測テーブルを示す図である。 説明変数の離散値配列を説明するための図である。 図3の予測テーブルにおける説明変数の離散値配列を示す図である。 説明変数の代表値配列を説明するための図である。 図3の予測テーブルにおける説明変数の代表値配列を示す図であり、(a)は図3(a)の予測テーブルにおける説明変数の代表値配列を示す図、(b)は図3(b)の予測テーブルにおける説明変数の代表値配列を示す図である。 メッシュの区分数及び離散値を定め、メッシュの値を予測モデルから計算して設計する予測テーブルの例を示す図であり、(a)は図3(a)の予測テーブルに対応する予測テーブルを示す図、(b)は図3(b)の予測テーブルに対応する予測テーブルを示す図である。 予測テーブルの例を示す図である。 説明変数の離散化形式を説明するための図であり、(a)は階段形式を説明するための図、(b)は折れ線形式を説明するための図である。 階段形式及び折れ線形式の説明変数が混在する場合を説明するための図である。 第2の実施形態に係る予測テーブル設計装置の機能構成を示す図である。 第2の実施形態に係る予測テーブル設計装置による予測テーブル設計方法を示すフローチャートである。 第2の実施形態における予測テーブル設計方法の概要を説明するための図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
[第1の実施形態]
まず、本実施形態における予測テーブルのメッシュの区分数及び離散値、メッシュの値(予測値)の基本的な考え方について説明する。
予測テーブルを設計する際には、説明変数毎にメッシュの区分数及び離散値を定める必要がある。これは、図4に示すように、各説明変数の一次元配列(本願においては、離散値配列と呼ぶ)の要素数Tmと要素の値tm (i)を定めることに相当する。なお、mは説明変数の番号(m:1〜M)、iは離散値の番号(i:1〜Tm)である。
説明変数の離散化形式には、階段形式と折れ線形式の2つがある。階段形式とは、図10(a)に示すように、離散値と離散値の間の予測値は一定値とする形式である。また、折れ線形式とは、図10(b)に示すように、離散値と離散値の間の予測値は直線で表わされる形式である。なお、全ての説明変数が階段形式で離散化されていても、全ての説明変数が折れ線形式で離散化されていても良く、また、これらの形式が説明変数毎に混在していても構わない。
図4の説明変数の離散値配列の各要素の値tm (i)は、階段形式であればメッシュ間の境界値を意味し、折れ線形式であれば折れ線の頂点の値を意味する。この離散値配列が決まれば、予測テーブルは一義的に定まる。
図5には、図3(a)、(b)の予測テーブルにおける説明変数の離散値配列を示す。
また、本実施形態では、過学習を防ぐことを目的として、式(1)の予測モデルを構築した後、その予測モデルをテーブル形式に変換する。自由度調整済み決定係数や、AIC(赤池情報量基準)、クロスバリデーション等の基準に基づき予測モデル選択することで、過学習を起こし難い予測モデルを構築することができる。
メッシュの区分数及び離散値を定めた後、各説明変数の代表値を予測モデルf(x)に代入して、その結果得られる予測値を各メッシュの値にする。
図6には、図4の離散値配列から得られる説明変数の代表値配列を示す。階段形式の場合は、図10(a)に示すように、各メッシュの代表値は離散値の中央値とし、式(4)により計算される。階段形式では、式(5)のように、代表値配列の数Rmは離散値配列の数Tmより1つ少なくなる。一方、折れ線形式の場合は、図10(b)に示すように、各メッシュの代表値配列は離散値配列と同じになる。
m (i)=(tm (i)+tm (i+1))/2 ・・・(4)
m=Tm−1 ・・・(5)
例えば図3(a)の予測テーブルでいえば、左上のメッシュは厚みが5〜10mm、温度が700〜720℃の範囲であるので、代表値は厚み7.5mm、温度710℃となる。また、図3(b)の予測テーブルでいえば、折れ線の頂点(離散値)が代表値となり、左上のメッシュの代表値は厚み7.5mm、温度700℃となる。図7(a)は、図3(a)の予測テーブルにおける説明変数の代表値配列を示し、図7(b)は、図3(b)の予測テーブルにおける説明変数の代表値配列を示す。
以上のように、メッシュの区分数及び離散値が定まれば、各説明変数の代表値を用いて予測モデルにより各メッシュの値を計算することができる。図3(a)の予測テーブルを例にすれば、図7(a)の説明変数の代表値配列から、図8(a)のように予測テーブルが設計される。また、図3(b)の予測テーブルを例にすれば、図7(b)の説明変数の代表値配列から、図8(b)のように予測テーブルが設計される。
以下、本実施形態における予測テーブル設計の詳細について説明する。本実施形態では、過学習を引き起こしにくく、さらには適切な予測精度及びサイズの予測テーブルを設計することを目的として、以下に詳述するようにして予測テーブルを設計する。
図1に、第1の実施形態に係る予測テーブル設計装置1200の機能構成を示す。
101は記憶手段として機能する予測モデル記憶部であり、式(1)のように、既に構築されている予測モデルf(x)を記憶する。
102は格納手段として機能する実績データ格納部であり、過去の操業で得られた実績データ{x(n),y(n)}を格納する。x(n)=[x1 (n),x2 (n),・・・xM (n)Tはn番目の実績データの説明変数、y(n)はn番目の実績データの目的変数であり、実績データはN個の説明変数と目的変数の組み合せから構成される。
103は予測テーブル初期値生成手段として機能する予測テーブル初期値生成部であり、予め設定された区分数で各説明変数を分割することにより離散値配列の初期値を定め、各説明変数の代表値を用いて予測モデルf(x)により各メッシュの値を計算して予測テーブルの初期値を生成する。
104は離散値配列候補作成手段として機能する離散値配列候補作成部であり、対象の離散値配列から離散値を削除した離散値配列の複数の候補(以下、複数の離散値配列候補と記す)を作成する。対象の離散値配列とは、第一段階(後述の繰り返し計算の1回目)では、予測テーブル初期値生成部103で定めた離散値配列の初期値が、それ以降の段階では、評価部105で選択した離散値配列候補が該当する。
105は評価手段として機能する評価部であり、実績データ格納部102に格納する実績データを用いて、離散値配列候補作成部104で作成した各離散値配列候補から生成される予測テーブルを評価し、その評価に基づいて離散値配列候補を選択する。
106は判定手段として機能する判定部であり、評価部105で選択した離散値配列候補から生成される予測テーブルが所定の条件である終了条件を満たすか否かを判定する。終了条件は、後述するように予測テーブルの予測精度及びサイズの観点から予め設定されている。終了条件を満たしていなければ、評価部105で選択した離散値配列候補を対象の離散値配列として、離散値配列候補作成部104及び評価部105による処理を行い、これを終了条件を満たすまで繰り返す。
107は出力部であり、判定部106で終了条件を満たしていれば、予測テーブルを出力する。例えば予測テーブルそのもの、又は予測テーブルに関する情報を表示装置に表示したり、ネットワークを介して外部機器に送信したりすることをいう。
図2は、第1の実施形態に係る予測テーブル設計装置100による予測テーブル設計方法を示すフローチャートである。
ステップS1で、予測テーブル初期値生成部103は、予め設定された十分に大きな区分数で各説明変数を分割することにより離散値配列の初期値を定め、各説明変数の代表値を用いて予測モデルf(x)により各メッシュの値を計算して予測テーブルの初期値を生成する。
ここで、十分に大きな区分数で各説明変数を分割するとは、予測モデルf(x)をテーブル化したときに予測精度が落ちないと考えられる細かさで各説明変数を分割するという意味である。例えば技術的・経験的見地から、説明変数は0.5%の精度で計算すれば十分な予測精度が得られるということがわかっている場合、各説明変数の最小値と最大値を等間隔に200個に分割して離散値を設定すれば良い。また、説明変数の変化に対して、予測値の変化が小さい領域がある場合、その変化の傾きに応じて離散値と離散値の間隔を調整しても良い。すなわち、傾きの大きい部分では区分を細かくし、傾きの小さい部分では区分を粗くする。
離散値配列の初期値を定めた後、前記(4)式又は(5)式を用いてメッシュ毎に各説明変数の代表値を求め、それら代表値用いて予測モデルf(x)により各メッシュの値を計算して予測テーブルの初期値を生成する。図9に、予測テーブルの例を示す。
ステップS2で、離散値配列候補作成部104は、対象の離散値配列から1つの離散値(m番目の説明変数のi番目の離散値)を削除した複数の離散値配列候補を作成する。対象の離散値配列は、初回のループでは、ステップS1で定めた離散値配列の初期値が該当する。
この場合に、説明変数の個数と区分数が少ない場合、説明変数1の1番目の離散値から順番に全数探索(離散値配列候補数=R1+R2+・・・+RM)を行っても良いが、全数探索に時間が掛る場合には、削除する離散値を乱数で決めて複数の離散値配列候補を作成するようにしても良い。
また、本実施形態では、離散値配列から1つの離散値を削除するようにしたが、複数の離散値を一度に削除するようにしても良い。
ステップS3で、評価部105は、実績データ格納部102に格納する実績データを用いて、ステップS2で作成した各離散値配列候補から生成される予測テーブルを評価し、その評価に基づいて離散値配列候補を選択する。
予測テーブルの評価は、次のように行う。
実績データ格納部102に格納する実績データ{x(n),y(n)}のそれぞれの説明変数xm (n)に対して、式(6)を満たす離散値の番号imを求める。
m (im)≦xm (n)<tm (im+1) ・・・(6)
簡単のため、説明変数が1つのみの場合で説明すると、階段形式であれば、図10(a)に示すように、離散値番号im(代表値がrm (im))の予測値を図9の予測テーブルから求め、目的変数の予測値y’(n)とする。また、折れ線形式であれば、代表値rm (im)とrm (im+1)の予測値を図9の予測テーブルからそれぞれ求め(それら予測値をy1(n),y2(n)とする)、図10(b)に示すように、それらを案分して予測値y’(n)を求める。この計算式は、式(7)となる。
y’(n)=y1(n)+(xm (n)−rm (im))×(y2(n)−y1(n))/(rm (im+1)−rm (im)) ・・・(7)
説明変数が複数の場合も同様であり、例えば図11は、説明変数1が階段形式、説明変数2が折れ線形式の場合に予測値y’(n)を算出する例を説明するためのである。式(6)により、説明変数1と説明変数2が属する離散値番号i1、i2を求め、y1(n)=f(r1 (i1),r2 (i2)),y2(n)=f(r1 (i1),r2 (i2+1))を案分する点を式(7)により求めて予測値とすれば良い。2つの説明変数が共に折れ線形式である場合には、4つの点f(r1 (i1),r2 (i2)),f(r1 (i1+1),r2 (i2)),f(r1 (i1),r2 (i2+1)),f(r1 (i1+1),r2 (i2+1))を案分する点が予測値となる。
このようにして、実績データ{x(n),y(n)}に対応する予測値y1(n)を求め、式(8)のように、予測テーブルの予測精度を評価する評価値Jを計算する。なお、ΣN n=1の表記はΣの上にNが、Σの下にn=1が付されているものとする。
J=ΣN n=1(y’(n)−y(n)2 ・・・(8)
なお、式(8)は予測値と実績値の誤差平方和を評価値とする式であるが、式(9)のように予測値と実績値の誤差絶対値和を評価値とする式としても良い。
J=ΣN n=1|y’(n)−y(n)| ・・・(9)
以上のように、複数の離散値配列候補から生成される予測テーブルを評価し、評価値Jが最小となる、すなわち予測テーブルの予測精度が最も良い離散値配列候補を選択する。
なお、ステップS2で複数(例えば2つ)の離散値を一度に削除する場合、全ての説明変数の全ての離散値のうち、2つの離散値を削除した離散値配列候補を、全ての離散値の組み合せに対して作成し、最も予測精度の良い離散値配列候補を求めるようにしても良い。また、離散値の組み合わせの数が多い時には、乱数で選んだ2つの離散値を削除するようにしても良い。
ステップS4で、判定部106は、ステップS3で選択した離散値配列候補から生成される予測テーブルが終了条件を満たすか否かを判定する。終了条件を満たしていれば、ステップS5に進み、得られた離散値配列と、その離散値配列から生成される予測テーブルを出力して終了する。一方、終了条件を満たしていなければ、ステップS3で選択した離散値配列候補を対象の離散値配列として、ステップS2及びS3を行い、これを終了条件を満たすまで繰り返す。
ここで、予測テーブルは、主として次の2つの考え方に基づいて設計される。予測テーブルのサイズの上限値(以下、目標サイズと記載する)がメモリ制約や管理上の制約等で予め決まっている場合は、目標サイズに収まる予測テーブルの中で、最も予測精度の良い予測テーブルを設計することが望まれる。また、テーブルサイズに制限がなく、目標の予測精度が与えられている場合は、目標の予測精度を満足する予測テーブルの中で、最もサイズの小さい予測テーブルを設計することが望まれる。テーブルは小さい方が管理し易いからである。
このように、終了条件には、目標サイズを設定する場合と、目標精度を設定する場合とがある。
目標サイズを設定する場合、この目標サイズ以下になるまで、ステップS2及びS3を繰り返す。予測テーブルの初期値を出発点として離散値を削除していくことで、予測テーブルのメッシュが粗くなり、予測テーブルのサイズは小さくなる。そこで、ステップS3で選択した離散値配列候補から生成される予測テーブルのサイズが目標サイズ以下になったならば、そこからさらにサイズを小さくする必要はないので、ステップS2及びS3を終了する。目標サイズは、説明変数毎の区分数の目標値でも、それらを乗じた値の目標値でも良く、それらの組合せでも構わない。
例えば目標サイズとして、条件1〜条件3が設定されたとする。
(条件1)説明変数1区分数≦20、説明変数2区分数≦10、説明変数3区分数≦10
(条件2)説明変数1区分数≦20、説明変数2区分数×説明変数3区分数≦50
(条件3)説明変数1区分数×説明変数2区分数×説明変数3区分数≦200
条件1では、全ての説明変数の区分数が目標値となったら終了する。この場合に、繰り返しの途中で目標値に到達した説明変数の離散値は削除しないようにする。また、条件2では、説明変数1の区分数が20、説明変数2と説明変数3の区分数を乗じた値が50以下になったら終了する。また、条件3では、3つの説明変数の区分数を乗じた値が200以下になったら終了する。
このように目標サイズを設定することにより、目標サイズ以内で最も予測精度の良い予測テーブルを設計することができる。
一方、目標精度を設定する場合、評価値Jに対する目標値を設定し、予測テーブルの評価値Jが目標値を上回るまで、ステップS2及びS3を繰り返す。予測テーブルの初期値を出発点として離散値を削除していくことで、予測テーブルのメッシュが粗くなり、予測値と実績値の誤差平方和或いは誤差絶対値和等、予測値と実績値との誤差で表わされる評価値Jは大きく、すなわち予測精度は悪くなる傾向となる。そこで、ステップS3で選択した離散値配列候補から生成される予測テーブルの評価値Jが目標値を上回ると、そこからさらに予測テーブルのメッシュを粗くすると目標精度から大きく劣ることになるので、ステップS2及びS3を終了する。この場合、最後の離散値配列から生成される予測テーブルは目標精度より劣るため、1回前の離散値配列及び予測テーブルを出力する。
このように目標精度を設定することにより、目標精度を満足する最もサイズの小さい予測テーブルを設計することができる。
厚板の製造プロセスでは、γ線厚み計を用いて鋼板の板厚を測定する。γ線厚み計は、鋼板を透過するγ線の減衰率を板厚に換算する方式であるが、鋼板の温度や材質等に依存して同じ厚みでも減衰率が異なることから、γ線の標準減衰率(温度や材質等に依存しない固定値)から計算した標準的な板厚であるγ線標準板厚を測定板厚にすることはできず、式(10)のように、鋼板の温度や材質等から計算される補正係数Ctを乗じて、最終的な測定値であるγ線測定板厚を算出する。
γ線測定板厚=(1+Ct)×γ線標準板厚 ・・・(10)
この補正係数Ctを、検査工程にあるレーザ式板厚計の測定値(板厚の真値とみなす)とγ線測定板厚が一致するように、特許文献1の手法を用いて非線形予測モデルを設計して計算したところ、予測モデルの予測精度は表1のようになった。なお、説明変数は鋼板温度、変態温度、狙い厚の3つとし、29058個の実績データを用いて非線形モデルを設計、得られた予測モデルの予測精度はそれとは異なる19497個の実績データを用いて評価した。表1は既設テーブルからの改善度を示している。この既設テーブルは、鋼板温度20区分(ほぼ等間隔)、鋼種100区分のテーブルであり、テーブル管理者は定期的に予測精度をメッシュ毎に確認し、精度の悪いメッシュの値の修正や、鋼種の区分を見直しを手作業で行っていた。表1のCt精度改善度の誤差、σ、RMSE(Root mean square error; 平均2乗誤差)はそれぞれ、レーザ板厚計の測定値から計算したCtの真値と既設テーブルに設定されているCtとの誤差の平均値,標準偏差、RMSEと、前記Ctの真値と本発明を適用して計算したCtとの誤差の平均値、標準偏差、RMSEとの差異(既設の値−本発明を適用した値)を表わしている。板厚精度改善度の誤差、σ、RMSEも同様である。また、以降で説明する表2〜表6についても表1と同様である。本発明を適用した予測テーブル設計手法により、補正係数CtのRMSEは既設テーブルと比べて0.009%改善し、板厚測定精度もRMSEが35μm改善した。
Figure 2017174390
この非線形予測モデルを手動でテーブル化した場合の予測精度を表2に示す。予測テーブルは、鋼板温度は折れ線形式、変態温度及び狙い厚は階段形式とした。手動での予測テーブル設計においては、各説明変数の区分数を予測テーブルの予測誤差を見ながら調整し、離散値配列は各説明変数の最小と最大の範囲を等間隔に区切った。試行錯誤の結果、鋼板温度は20区分、変態温度は11区分、狙い厚は6区分に分割する予測テーブルが得られた。表2のように、予測テーブルを手動で設計すると、補正係数CtのRMSE改善度は0.009%から0.004%に、板厚測定精度のRMSE改善度も35μmから29μmに減少してしまった。
Figure 2017174390
そこで、本発明を適用した予測テーブル設計手法を利用して、目標サイズを「鋼板温度区分数≦20、変態温度区分数×狙い厚区分数≦68」の条件で予測テーブルを設計した。これは、手動での設計とほぼ同じサイズの予測テーブルを求める条件である。その結果、鋼板温度を20区分、変態温度を7区分、狙い厚を9区分する予測テーブルが得られ、予測テーブルの予測精度(既設テーブルからの改善度)は表3のようになった。表3のように、補正係数CtのRMSE改善度は0.013%、板厚測定精度のRMSE改善度は38μmとなり、手動でテーブル化した場合と比較して大きな改善が得られたのみならず、もともとの非線形予測モデルより高精度の予測テーブルを設計することができた。元々の非線形予測モデルは、実績データの目的変数の値を完全に予測できるモデルではないため、このようにテーブル化することによってたまたま予測精度が向上する場合もある。
Figure 2017174390
また、目標精度を設定して、サイズの小さい予測テーブルを求めた。目標精度は、補正係数CtのRMSE改善度が0.007%となるように設定し、予測テーブルを設計した(非線形予測モデルの補正係数CtのRMSEよりも0.002%悪いRMSEを目標精度とした)。その結果、鋼板温度を4区分、変態温度を4区分、狙い厚を4区分する予測テーブルが得られ、その予測テーブルの予測精度は表4のようになった。目標精度は学習データに対する条件のため、評価データの補正係数CtのRMSE改善度は目標精度と一致しないが、表1と比べると、板厚測定精度のRMSE改善度は非線形予測モデルよりも若干悪い程度(改善度35μm→33μm)であり、手動で設計したときよりも圧倒的に小さい予測テーブルで(テーブルサイズ20×11×6=1320→4×4×4=64)、高精度(板厚RMSE改善度29μm→33μm)の予測テーブルを設計することができた。
Figure 2017174390
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態を説明する。以下では、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態との共通点についてはその詳細な説明を省略する。
第1の実施形態では、離散値配列の初期値を出発点として、離散値を削除して複数の離散値配列候補を作成し、その中から離散値配列を選択することを繰り返す。このように離散値を段階的に少なくしていき、目標サイズ又は目標精度に達した離散値配列を求めるのであるが、そのときに、離散値配列に含まれる離散値を、削除済みの離散値と置換することにより、離散値配列の要素数は変えずに、予測精度を向上させられる可能性があることを見出した。
そこで、第2の実施形態では、離散値配列に含まれる離散値を、削除済みの離散値と置換するアルゴリズムを取り入れた形態を説明する。
図12に、第2の実施形態に係る予測テーブル設計装置1200の機能構成を示す。なお、第1の実施形態に係る予測テーブル設計装置100と同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
予測テーブル設計装置1200において、予測モデル記憶部101、実績データ格納部102、予測テーブル初期値生成部103、離散値配列候補作成部104、評価部105、判定部106、出力部107は第1の実施形態と同様であり、精度改善部108を追加している。
精度改善部108は、改善用離散値配列候補作成手段として機能する改善用離散値配列候補作成部109と、改善用評価手段として機能する改善用評価部110とを備える。
改善用離散値配列候補作成部109は、評価部105で選択した離散値配列候補(以下、現在の離散値配列候補と呼ぶ)に含まれる離散値を、削除済みの離散値と置換する。詳しくは、改善用離散値配列候補作成部109は、現在の離散値配列候補から離散値を削除し、かつ、現在の離散値配列候補を選択するまでに削除済みの離散値の中から、当該削除した離散値と同数の離散値を復活させて、改善用離散値配列候補を作成する。同数の離散値を置換するので、改善用離散値配列候補は、現在の離散値配列候補と要素数が同じで、予測テーブルのサイズが変わらない離散値配列となる。
改善用評価部110は、改善用離散値配列候補作成部109で作成した各改善用離散値配列候補について、評価部105で行った評価と同様の評価を行う。詳しくは、改善用評価部110は、実績データ格納部102に格納する実績データを用いて、改善用離散値配列候補作成部109で作成した各改善用離散値配列候補から生成される予測テーブルを評価する。その結果、現在の離散値配列候補よりも評価の良い改善用離散値配列候補がなければ、現在の離散値配列候補のままとする。それに対して、現在の離散値配列候補よりも評価の良い改善用離散値配列候補があれば、それを現在の離散値配列候補と置き換える。すなわち、現在の離散値配列候補ではなく、現在の離散値配列候補よりも評価の良い改善用離散値配列候補を採用する。なお、現在の離散値配列候補よりも評価の良い改善用離散値配列候補が複数あれば、その中で最も評価の良いものを選んで、それを現在の離散値配列候補と置き換えれば良い。
本実施形態では、改善用評価部110が評価部105で行った評価と同様の評価を行うとしたが、改善用評価部110と評価部105とで評価の方式を異ならせても良い。例えば、評価部105で使用した式(式(8)や式(9)等)を用いて計算した評価値Jに所定の定数値を加えた値を改善用評価部110の評価値としても良い。これにより、一度削除した離散値を復活させるためには、現在の離散値配列候補の評価値よりも、前記所定の定数値の分だけ評価値が良くならなくてはならず、一度削除した離散値は復活し難くなり、ある離散値が削除と復活を繰り返すことを防止することができる。
図13は、第2の実施形態に係る予測テーブル設計装置100による予測テーブル設計方法を示すフローチャートである。
ステップS1〜S5は第1の実施形態と同様であり、本実施形態では、ステップS3とステップS4との間にステップS6〜S8を追加している。
ステップS6で、精度改善部108は、所定の実施条件を満たすか否かを判定することにより、ステップS7及びS8の精度改善処理を実施するか否かを判定する。精度改善処理を実施する場合、ステップS7に進み、実施しない場合、ステップS4に進む。
所定の実施条件としては、例えばステップS3で選択した離散値配列候補(現在の離散値配列候補)から生成される予測テーブルのサイズが所定のサイズ(改善実施サイズと呼ぶ)や所定の予測精度(改善実施精度と呼ぶ)を満たすときに精度改善処理を実施するようにしても良い。改善実施サイズは、既述した目標サイズと同じでも良い。この場合、現在の離散値配列候補から生成される予測テーブルのサイズが目標サイズに達したときに、精度改善処理が実施される。改善実施サイズが目標サイズよりも大きい場合には、予測テーブルのサイズが目標サイズになるまで、ステップS4を経て、ステップS2〜S8が繰り返されることになる。同様に、改善実施精度は、既述した目標精度と同じでも良いし、目標精度よりも高い予測精度でも良い。
なお、ステップS6の判定を行わずに、毎回のループにおいて常に精度改善処理を実施するようにしても良い。
ステップS7で、改善用離散値配列作成部109は、現在の離散値配列候補から1つの離散値(m番目の説明変数のi番目の離散値)を削除し、かつ、削除済みの離散値の中から、1つの離散値を復活させて、改善用離散値配列候補を作成する。
ここで、削除済みの離散値とは、評価部105で現在の離散値配列候補を選択するまでに削除された離散値のことである。換言すれば、ステップS1で定めた離散値配列の初期値のうち、今回のループのステップS3で選択した離散値配列候補に含まれていない離散値である。
また、予測テーブルのサイズが変わることを防ぐため、削除する離散値の説明変数と復活させる離散値の説明変数とは同じ(説明変数の番号mが同じ)とした方が良い。例えば厚みの離散値を削除するのであれば、厚みの離散値を復活させ、温度の離散値を削除するのであれば、温度の離散値を復活させる。
また、改善用離散値配列候補を作成する際、説明変数の個数と区分数が少ない場合、説明変数1の現在の離散値配列候補の1番目の離散値から順番に削除する離散値を選択し、説明変数1の離散値配列の初期値の1番目の離散値から順番に、評価部105で現在の離散値配列候補を選択するまでに削除された離散値を探索するような全数探索を行っても良い。また、削除する離散値を乱数で決めて改善用離散値配列候補を作成するようにしても良い。
ステップS8で、改善用評価部110は、実績データ格納部102に格納する実績データを用いて、ステップS7で作成した各改善用離散値配列候補から生成される予測テーブルを評価する。ここでの評価方法はステップS3と同じであり、各改善用離散値配列候補から生成される予測テーブルを用いて実績データに対応する予測値を求め、式(8)や式(9)で得られる評価値Jを計算する。そして、現在の離散値配列候補よりも評価の良い改善用離散値配列候補があれば、それを現在の離散値配列候補と置き換える。
なお、離散値配列の要素数をTm(mは説明変数の番号)、離散値配列の初期値の要素数をTmSとすると、全数探索で求められる改善用離散値配列候補の数は、T1×(T1S−T1)+T2×(T2S−T2)+・・・+TM×(TMS−TM)となる。このため、Tm(もしくはTmS−Tm)が小さいときには、全数探索を行っても改善用離散値配列候補の数はそれほど多くならない。したがって、Tm(もしくはTmS−Tm)が小さいときのみステップS7及びS8の精度改善処理を全数探索によって実施することで、常に全数探索を行う場合と比較すると、予測テーブルの予測精度が多少悪くなる可能性があるものの、演算時間及び必要メモリを小さくすることができる。経験上、離散値配列の要素数Tmが小さいときのみ精度改善処理を実施することが効果的であるが、TmS−Tmが小さいとき(離散値配列の要素数と初期の要素数が大きく変わらないとき)にも精度改善処理を実施しても良い。
また、1つの離散値を削除して、1つの離散値を復活させたが、削除する個数と復活させる個数が同じであれば良く、複数の離散値を一度に削除して、同数の離散値を復活させた改善用離散値配列候補を作成するようにしても良い。
図14を参照して、第2の実施形態における予測テーブル設計方法の概要を説明する。ここでは、説明の簡略化のため、単一の説明変数で、1つの離散値を削除していく例とする。
ステップS1で定めた離散値配列の初期値が、図14の上段に示すように、[t(1)(2)(3)(4)]であるとする。
初回のループのステップS2で、図14の中段に示すように、4つの離散値配列候補が作成され、ステップS3で、星印で示すように、離散値t(3)を削除した離散値配列候補[t(1)(2)(4)]が選択されたとする。
次に、ステップS6及びS4を経て、ステップS2に戻ったとする。この2回目のループのステップS2で、図14の下段に示すように、3つの離散値配列候補が作成され、ステップS3で、星印で示すように、離散値t(2)を削除した離散値配列候補[t(1)(4)]が選択されたとする。
次に、ステップS6を経て精度改善処理を実施するとしてステップS7に進んだとする。ステップS7で、現在の離散値配列候補[t(1)(4)]から1つの離散値を削除し、かつ、削除済みの離散値の中から、1つの離散値を復活させて、改善用離散値配列候補を作成する。この場合に、削除済みの離散値とは、現在の離散値配列候補を選択するまでに削除した離散値であり、離散値配列初期値[t(1)(2)(3)(4)]のうち、ステップS3で選択した離散値配列候補[t(1)(4)]に含まれていない離散値t(2)、t(3)となる。そして、図14に示す4つの改善用離散値配列候補について評価を行い、現在の離散値配列候補[t(1)(4)]よりも評価の良い改善用離散値配列候補があれば、それを現在の離散値配列候補[t(1)(4)]と置き換える。
図14に示す4つの改善用離散値配列候補について評価を行っても良いが、図14から分るように、改善用離散値配列候補の[t(1)(2)][t(2)(4)]は、今回のループのステップS3で既に評価した離散値配列候補と同じである。従って、前記2つの改善用離散値配列候補は、現在の離散値配列候補[t(1)(4)]よりも評価は良くないことが明らかであるため、これらは改善用離散値配列候補から除外しても良い。すなわち、改善用離散値配列候補を作成する際、ステップS2で求めた離散値配列候補と重複するものは、改善用離散値配列候補から除外しても良い。
表4で説明したケースのように、目標精度を設定して、サイズの小さい予測テーブルを求めるケースに対して、第2の実施形態の手法で全数探索により予測テーブルを作成した。目標精度は、表4で説明したケースと同じく、補正係数CtのRMSE改善度が0.007%となるように設定した。
まず、常に精度改善処理を実施する予測テーブルを作成した。その結果、鋼板温度を4区分、変態温度を3区分、狙い厚を3区分する予測テーブルが得られ、その予測テーブルの予測精度は表5のようになった。表4と比べると、予測テーブルのサイズが64から36(4×3×3=36)に小さくなったにも関わらず、板厚測定精度のRMSE改善度は33μmであり、表4と同じ値となった。
Figure 2017174390
ただし、ステップS6の判定を行わずに常に精度改善処理を実施する場合、計算時間が約12時間も掛ってしまった。そこで、ステップS6において所定の実施条件として改善実施精度を目標精度と同じ値に設定し、予測テーブルの予測精度が改善実施精度よりも悪化すれば、精度改善処理を実施するようにした。その結果、表5の予測テーブルと変わらないサイズの予測テーブル(4×3×3=36)が得られ、その予測精度は表6のようになった。表6の予測テーブルは30分で計算でき、板厚測定精度のRMSE改善度もほぼ変わらない良好な結果が得られた。
Figure 2017174390
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、発明の範囲内で変更等が可能である。例えば図1、図12では、予測モデル記憶部101及び実績データ格納部102を予測テーブル設計装置100、1200の外部機器として示したが、内部に含むようにしても良い。また、予測テーブル設計装置100、1200が、予測モデルや実績データを、ネットワークを介して外部の予測モデル記憶部及び実績データ格納部から取得するような構成としても良い。
本発明を適用した予測テーブル設計装置は、例えばCPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータ装置により実現される。
また、本発明は、本発明の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。
100、1200:予測テーブル設計装置、101:予測モデル記憶部、102:実績データ格納部、103:予測テーブル初期値生成部、104:離散値配列候補作成部、105:評価部、106:判定部、107:出力部、108:精度改善部、109:改善用離散値配列候補作成部、110:改善用評価部

Claims (19)

  1. 説明変数を離散化して形成される各区分に予測対象の予測値が記述される予測テーブルを設計する予測テーブル設計装置であって、
    説明変数から目的変数である前記予測対象の予測値を算出する予測モデルに、各区分の説明変数の代表値を入力して予測値を算出して、予測テーブルを生成することを特徴とする予測テーブル設計装置。
  2. 説明変数を離散化して形成される各区分に予測対象の予測値が記述される予測テーブルを設計する予測テーブル設計装置であって、
    説明変数から目的変数である前記予測対象の予測値を算出する予測モデルを記憶する記憶手段と、
    説明変数の実績値及び目的変数の実績値を格納する格納手段と、
    説明変数を離散化する離散値配列の複数の候補について、前記予測モデルに各区分の説明変数の代表値を入力して予測値を算出して生成される予測テーブルを、前記格納手段に格納する説明変数の実績値及び目的変数の実績値を用いて評価して、前記離散値配列の複数の候補から離散値配列を選択する評価手段とを備えたことを特徴とする予測テーブル設計装置。
  3. 離散値配列の初期値を定め、前記予測モデルに各区分の説明変数の代表値を入力して予測値を算出して、予測テーブルの初期値を生成する予測テーブル初期値生成手段と、
    前記離散値配列の初期値から一又は複数の離散値を削除した離散値配列の複数の候補を作成する離散値配列候補作成手段とを備え、
    前記評価手段は、前記離散値配列候補作成手段で作成した離散値配列の複数の候補について、評価を行い、離散値配列を選択することを特徴とする請求項2に記載の予測テーブル設計装置。
  4. 前記評価手段で選択した離散値配列から生成される予測テーブルが、所定の条件を満たすか否かを判定する判定手段を備え、
    前記判定手段で前記所定の条件を満たさないと判定した場合、
    前記離散値配列候補作成手段は、前記評価手段で選択した離散値配列から一又は複数の離散値を削除した離散値配列の複数の候補を作成し、
    前記評価手段は、前記離散値配列候補作成手段で作成した離散値配列の複数の候補について、評価を行い、離散値配列を選択し、
    これを前記所定の条件を満たすまで繰り返すことを特徴とする請求項3に記載の予測テーブル設計装置。
  5. 前記所定の条件として、予測テーブルのサイズに対する目標サイズ、又は、前記評価手段での評価結果に対する目標値が設定されることを特徴とする請求項4に記載の予測テーブル設計装置。
  6. 前記評価手段で選択した離散値配列から一又は複数の離散値を削除し、かつ、前記評価手段で前記離散値配列を選択するまでに削除済みの離散値の中から、当該削除した離散値と同じ数の離散値を復活させて、改善用離散値配列候補を作成する改善用離散値配列候補作成手段と、
    前記改善用離散値配列候補作成手段で作成した改善用離散値配列候補について、評価を行い、前記評価手段で選択した離散値配列よりも評価の良い改善用離散値配列候補があれば、それを前記評価手段で選択した離散値配列と置き換える改善用評価手段とを備えたことを特徴とする請求項4又は5に記載の予測テーブル設計装置。
  7. 前記評価手段で離散値配列を選択した後、所定の実施条件を満たすときに、前記改善用離散値配列候補作成手段及び前記改善用評価手段による処理を実施することを特徴とする請求項6に記載の予測テーブル設計装置。
  8. 前記所定の実施条件として、予測テーブルのサイズに対する条件、又は前記評価手段での評価結果に対する条件が設定されることを特徴とする請求項7に記載の予測テーブル設計装置。
  9. 前記離散値配列候補作成手段は、削除する離散値を乱数を用いて決めることを特徴とする請求項3乃至8のいずれか1項に記載の予測テーブル設計装置。
  10. 前記改善用離散値配列候補作成手段は、削除する離散値を乱数を用いて決めることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の予測テーブル設計装置。
  11. 説明変数の離散化形式は、離散値と離散値の間の予測値は一定値とする形式、及び、離散値と離散値の間の予測値はこれら離散値に対応する予測値を結ぶ直線で表わす形式のうち少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項2乃至10のいずれか1項に記載の予測テーブル設計装置。
  12. 前記評価手段は、予測テーブルの予測値と、目的変数の実績値との誤差を評価することを特徴とする請求項2乃至11のいずれか1項に記載の予測テーブル設計装置。
  13. 前記評価手段は、前記誤差の平方和を評価値とする、又は、前記誤差の絶対値和を評価値とすることを特徴とする請求項12に記載の予測テーブル設計装置。
  14. 前記改善用評価手段は、予測テーブルの予測値と、目的変数の実績値との誤差を評価することを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の予測テーブル設計装置。
  15. 前記改善用評価手段は、前記誤差の平方和を評価値とする、又は、前記誤差の絶対値和を評価値とすることを特徴とする請求項14に記載の予測テーブル設計装置。
  16. 説明変数を離散化して形成される各区分に予測対象の予測値が記述される予測テーブルを設計する予測テーブル設計方法であって、
    説明変数から目的変数である前記予測対象の予測値を算出する予測モデルに、各区分の説明変数の代表値を入力して予測値を算出して、予測テーブルを生成することを特徴とする予測テーブル設計方法。
  17. 説明変数を離散化して形成される各区分に予測対象の予測値が記述される予測テーブルを設計する予測テーブル設計方法であって、
    説明変数から目的変数である前記予測対象の予測値を算出する予測モデルを記憶する記憶手段と、説明変数の実績値及び目的変数の実績値を格納する格納手段とを用いて、
    説明変数を離散化する離散値配列の複数の候補について、前記予測モデルに各区分の説明変数の代表値を入力して予測値を算出して生成される予測テーブルを、前記格納手段に格納する説明変数の実績値及び目的変数の実績値を用いて評価して、前記離散値配列の複数の候補から離散値配列を選択することを特徴とする予測テーブル設計方法。
  18. 説明変数を離散化して形成される各区分に予測対象の予測値が記述される予測テーブルを設計するためのプログラムであって、
    説明変数から目的変数である前記予測対象の予測値を算出する予測モデルに、各区分の説明変数の代表値を入力して予測値を算出して、予測テーブルを生成するためのプログラム。
  19. 説明変数を離散化して形成される各区分に予測対象の予測値が記述される予測テーブルを設計するためのプログラムであって、
    説明変数から目的変数である前記予測対象の予測値を算出する予測モデルを記憶する記憶手段と、
    説明変数の実績値及び目的変数の実績値を格納する格納手段と、
    説明変数を離散化する離散値配列の複数の候補について、前記予測モデルに各区分の説明変数の代表値を入力して予測値を算出して生成される予測テーブルを、前記格納手段に格納する説明変数の実績値及び目的変数の実績値を用いて評価して、前記離散値配列の複数の候補から離散値配列を選択する評価手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
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