多数の配送拠点から構成される物流サイクルにおいて、保冷庫は、例えば長い時間を要する、長い距離の配送に使用される場合と、短い時間で済む、短い距離の配送に使用される場合とがある。個々の配送に要する時間が考慮されていない従来の保冷庫管理システムでは、高い保冷能力を有する保冷庫が、短い距離の配送に使用された場合、配送が終わった後に保冷能力が余ってしまう事態が生じうる。このような事態が生じると、例えば高い保冷能力を有する保冷庫が配送の拠点に残され、その後使用されない場合がある。このように、従来は、保冷庫の保冷能力に無駄が生じ、保冷庫の運用効率が低下してしまっていた、あるいは、各拠点における保冷庫の保有台数に偏りが生じ易くなってしまっていたが、本開示によって、このような不都合を軽減することができる。以下、より詳細に説明する。
<第1の実施の形態>
以下、本開示の第1の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、保冷庫管理システム1の各構成の関係について説明するための概念図である。図1に示すように、保冷庫管理システム1は、複数の保冷庫100、および中央管理装置500を有する。
保冷庫100は、その一部が扉となって開閉可能に形成され、内部(庫内)に物品を収めて扉を閉めることにより密閉することができるとともに、内部に蓄冷体を有し、蓄冷体の蓄えた冷熱によって庫内の温度を低温に保つことができる容器である。保冷庫100は、例えば低温で配送すべき物品(要冷蔵物や要冷凍物等)を庫内に収容して輸送するために使用される。保冷庫100は、配送のための拠点(以下配送拠点と称する)において物品を庫内に収容した後、例えばトラック等の輸送機器に載せられて他の配送拠点等の配送先へ輸送される。なお、配送拠点とは、保冷庫管理システム1において配送する物品の一時保管や仕分け等を行うとともに、配送に使用されていない保冷庫100を保管するための施設を意味する。各配送拠点には、低温で配送するべき物品を保管するための冷蔵倉庫や冷凍倉庫等(保冷倉庫)が設けられている。
中央管理装置500は、保冷庫管理システム1における全ての保冷庫100の配送を一括管理する装置である。中央管理装置500は、例えば保冷庫管理システム1を運営する運営母体(例えば企業等)の本部施設等に備えられる。なお、中央管理装置500は、本開示の保冷庫管理装置に対応している。
中央管理装置500は、各保冷庫100と互いに通信を行うことができるように構成される。保冷庫100と中央管理装置500との間の通信は、有線、あるいは無線通信によって行われる。具体的には、保冷庫100が配送拠点内にある場合に、保冷庫100は、配送拠点に備えられた有線あるいは近距離の無線通信(無線LAN等)を介して、インターネット等の公衆ネットワークに接続し、インターネット等を介して中央管理装置500と通信を行うようにすればよい。
以下では、保冷庫100が通信装置を備えた構成として説明するが、別の構成として、保冷庫100を載せる輸送機器が通信装置を備え、輸送機器と保冷庫100、および輸送機器と中央管理装置500とがそれぞれ通信可能な構成として、中央管理装置500が輸送機器を介して保冷庫100とデータ送受を行う形態としてもよい。ただし、3以上の通信装置を用いてデータ送受を行う通信技術については公知の技術であるため、その詳細な説明は省略する。
中央管理装置500は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)やワークステーション(WS)等の汎用コンピュータで構成されてもよいし、専用の設備により構成されてもよいし、ネットワーク上のクラウドサーバ等により構成されてもよい。
図2は、第1の実施の形態における保冷庫管理システム1の各構成の機能を示すブロック図である。まず、保冷庫100の構成について説明する。図2に示すように、各保冷庫100は、識別記号保持部11、保冷能力情報検出部12、表示部13、保冷庫情報送信部14、指令情報受信部15を有する。
識別記号保持部11は、少なくとも1つの保冷庫100毎に異なる固有の識別情報(保冷庫識別記号)と、配送拠点毎に異なる固有の識別情報(拠点識別記号)とを格納する。識別記号保持部11は、ハードディスク(HDD)、フラッシュメモリ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等の記憶媒体により構成される。
保冷能力情報検出部12は、保冷庫100の保冷能力を検出し、その結果を保冷能力情報として出力する。ここで、保冷能力とは、蓄冷体の蓄えた冷熱量(蓄冷量)に基づいて算出されるものであって、保冷庫100を所定の温度帯に保つことができる能力である。保冷能力の具体例としては、例えば庫内を所定の温度帯に維持できる時間(保冷可能時間)等がある。以下では、保冷能力情報検出部12が検出する保冷能力は、一例として、保冷可能時間であるとして説明を行う。ただし、保冷能力情報検出部12は、保冷能力とともに、あるいは保冷能力の代わりに、推定保冷能力を検出しても用いてもよい。推定保冷能力とは、現在の蓄冷量から任意の所定時間だけ予冷を行ったと仮定した場合に推定される蓄冷量である。なお、予冷とは、保冷庫100の使用前に、蓄冷体に冷熱を蓄えるために蓄冷体を冷却して凍結させる行為を意味する。
温度帯とは、保冷庫100内の温度を所定の幅を有する複数段階の温度に分類したものを意味する。具体的には、例えば、庫内温度が−15℃以下の場合の温度帯は「冷凍」であり、庫内温度が−5℃以上+5℃以下の場合の温度帯は「チルド」であり、庫内温度が0℃以上10℃以下の場合の温度帯は「冷蔵」である。これらの温度帯を分類するためのしきい値はユーザ等により予め設定されればよい。
保冷能力情報検出部12は、中央管理装置500から送られた保冷能力送信指示を取得すると、保冷庫100内の蓄冷体に取り付けられた温度センサ(図示は省略)の検出した蓄冷体の温度に基づいて蓄冷量を算出し、算出した蓄冷量に対応する保冷能力(保冷可能時間)を算出する。
以下では、保冷能力情報検出部12による保冷可能時間の検出方法の一例について説明する。保冷能力情報検出部12は、保冷庫100内の温度、あるいは蓄冷体表面の温度等に基づいて、蓄冷体の蓄えている冷熱量である蓄冷量を算出し、蓄冷量に基づいて保冷可能時間を検出する。これらの温度は、例えば保冷庫100内部、あるいは蓄冷体表面に設けられた温度センサ(図示せず)によって計測されればよい。
図3は、本第1の実施の形態における保冷可能時間の概念を説明するための図である。図3では、蓄冷量が100%であるときに、庫内温度−20℃を8時間維持することができる(保冷可能時間が8時間である)保冷庫100について例示している。蓄冷量100%で保冷時間8時間の保冷庫100を、必要保冷時間が6時間の配送に使用した場合、図3に示すように、残りの蓄冷量は25%となる。ここで、保冷庫100に対して予冷を行うことにより、蓄冷量を回復させることができる。図3に示す例では、予冷を行うことにより、蓄冷量を25%から50%まで回復させている。このように蓄冷量を回復させることにより、その後当該保冷庫100を例えば必要保冷時間が3時間の配送に使用することができるようになる。その後の蓄冷量の残量は10%前後となる。
なお、蓄冷量に基づく保冷可能時間の算出方法については、本開示では特に限定しないが、以下では、一例として、蓄冷量の算出方法を例示する。
蓄冷量は、例えば、蓄冷体の容量の全体に対する、所定のしきい値以下の温度である蓄冷体の容量が占める割合に対応する。従って、保冷能力情報検出部12は、例えば温度センサ(図示せず)によって蓄冷体表面の所定数の箇所の温度を検出し、しきい値を超える箇所の数を計数して、その割合を算出することで、蓄冷量(蓄冷量%)を算出することができる。具体的には、例えば蓄冷体表面において10箇所の温度を検出する場合、しきい値を超える箇所が4箇所あるとすると、蓄冷量は60%である。なお、所定のしきい値は、例えば、蓄冷体を構成する蓄冷体材料の融点等に基づいて予め定められればよい。
そして、例えば、保冷庫100の蓄冷量が100%であるときに、所定の温度帯の庫内温度を所定時間維持することができる時間(最大保冷時間)を予め計測しておき、その時間に現在の蓄冷量%を乗算することにより、保冷能力情報検出部12は、現在の(残りの)保冷可能時間を算出する。さらに、保冷能力情報検出部12は、保冷庫100の予冷を行う場合には、算出した保冷可能時間と、出発日時までの時間により蓄えられる冷熱量と、に基づいて推定保冷可能時間を算出する。
なお、保冷庫100の内部に収容される物品の温度によって保冷可能時間が変動することが予想されるので、保冷能力情報検出部12は、蓄冷量に基づいて保冷可能時間を検出するのではなく、例えば保冷庫100の庫内温度および温度帯等に基づく所定のテーブルを参照して保冷可能時間を検出するようにしてもよい。
表示部13は、保冷庫100の外部から視認できる位置を含む保冷庫100の外面部に設けられる。表示部13は、庫内温度、温度帯、運行計画(詳細は後述)、予冷を必要とする旨を示す情報、保冷可能時間、および、配送使用指令(詳細は後述)等の各種情報を表示し、保冷庫100の周囲に向けて報知する。なお、報知には視覚的に報知することだけではなく、聴覚的に報知することが含まれる。
保冷庫情報送信部14は、保冷庫識別記号、拠点識別記号、および保冷能力を公衆ネットワーク200を介して中央管理装置500に送信する。指令情報受信部15は、保冷可能時間送信指示および配送使用指令を公衆ネットワーク200を介して中央管理装置500から受信する。
次に、中央管理装置500の構成について説明する。図2に示すように、中央管理装置500は、運行計画保持部51、保有台数情報保持部52、使用保冷庫決定部53、保有台数調整部54、指令情報送信部55、保冷庫情報受信部56を有する。
運行計画保持部51は、少なくとも1つの保冷庫100を用いて物品を配送するための計画である運行計画を格納する。運行計画保持部51は、ハードディスク(HDD)、フラッシュメモリ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等の記憶媒体により構成される。ここで、運行計画とは、荷物や保冷庫100を配送元施設(例えばある配送拠点)から配送先施設(例えば他の配送拠点や物品の納入先等)に運ぶ計画であり、トラック等の輸送機器1台毎に作られた計画である。運行計画には、輸送機器1台に対して1つの管理番号が付される。運行計画は、例えば図示しない物品管理装置等によって計画され、所定時間後までに行われるべき運行計画に関する情報が予め運行計画保持部51に格納されている。なお、以下の説明では、簡単のため、配送元施設と配送先施設がどちらもいずれかの配送拠点であるとする。
運行計画に関する情報は、例えば運行計画番号、出発日時、到着予定日時、必要保冷時間、必要台数等である。ここで、運行計画番号とは、少なくとも1日の運行計画の中での、運行計画毎に固有の管理番号である。出発日時とは、物品を保冷庫100に収容して、配送のために配送元拠点を出発すべき予定日時である。到着予定日時とは、物品を収容した保冷庫100が、配送先に到着する予定日時である。到着予定日時は、例えば配送元施設から配送先施設までの距離と、保冷庫100を輸送する輸送機器の平均速度と、等に基づいて予め算出されればよい。また、必要保冷時間とは、配送に必要な保冷時間(所定の温度に維持する必要のある時間)である。必要台数とは、配送に必要な保冷庫100の台数である。
保有台数情報保持部52は、配送拠点のそれぞれが保有する保冷庫100の台数に関する情報である保有台数情報を格納する。保有台数情報は、例えば保有台数情報保持部52が、保冷庫100から受信した保冷庫100の識別記号を集計することによって生成される。なお、保有台数情報保持部52は、例えば配送拠点内にない保冷庫100については、その保冷庫100が所定時間内にいずれかの配送拠点に到着することが運行計画から分かっている場合には、その保冷庫100は配送先拠点に保有されるものとして保有台数情報を生成すればよい。また、保有台数情報保持部52は、例えば配送拠点内にない保冷庫100について、所定時間内にいずれかの配送拠点に到達しない場合には、その保冷庫100はいずれの配送拠点にも保有されないものとすればよい。
また、保有台数情報保持部52は、後述する使用保冷庫決定部53が行う、配送元拠点の保有台数に基づく重み付け処理において使用される基準値である保有基準台数に関する情報を格納する。保有基準台数の詳細については後述する。
使用保冷庫決定部53は、運行計画保持部51から取得した今後の運行計画と、保有台数情報保持部52から取得した、運行計画に対応する配送拠点の保有台数情報とに基づいて、今後の運行計画において使用する保冷庫100を決定し、使用を決定した保冷庫100に対して使用を通知するための配送使用指令を生成する。
なお、使用保冷庫決定部53は、使用する保冷庫を決定する際に、運行計画に対応する配送拠点が保有する全ての保冷庫100に対して重み付けを行い、重み付けの結果に基づいて使用する保冷庫100を決定する。使用保冷庫決定部53が行う重み付けは、例えば運行計画に対応する配送拠点の規模や、運行計画が実行される時期(繁忙期、閑散期等)等の情報、あるいは、保冷庫100それぞれの有する特性(保冷能力等)に基づいて行われる。使用保冷庫決定部53による使用保冷庫決定処理、および、重み付け処理の詳細については後述する。
保有台数調整部54は、使用保冷庫決定部53が行う重み付けの基準となる保有基準台数が適切か否かの判定を行い、適切でないと判定した場合には、できるだけ適切となるように調整する。保有台数調整部54による保有基準台数調整処理の詳細については後述する。
指令情報送信部55は、使用保冷庫決定部53が生成した配送使用指令を、公衆ネットワーク200を介して保冷庫100に対して送信する。また、保冷庫情報受信部56は、保冷庫100の識別記号、保冷庫100が保有されている配送拠点の識別記号、および保冷庫100の保冷能力を、公衆ネットワーク200を介して保冷庫100から受信する。
<定期処理>
次に、上記説明した各構成が実行する処理の詳細について説明する。まず、中央管理装置500が定期的に行う定期処理について説明する。図4は、定期処理について説明するためのフローチャートである。
ステップS11において、中央管理装置500は、以下のステップS12を、中央管理装置500が管理する全ての配送拠点に対してループさせる。
ステップS12において、使用保冷庫決定部53は、配送拠点毎に、例えば現時刻から所定時間後までに実行されるべき運行計画を運行計画保持部51から取得し、運行計画において使用する保冷庫100を決定するための使用保冷庫決定処理を行う。使用保冷庫決定処理の詳細については後述する。
全ての配送拠点に対してステップS12の処理が完了すると、ステップS13において、中央管理装置500は、以下のステップS14を、中央管理装置500が管理する全ての配送拠点に対してループさせる。
ステップS14において、保有台数調整部54は、配送拠点毎に、各配送拠点が保有する保冷庫100の台数をできるだけ適正に調節するために使用される基準値である保有基準台数の調整処理を行う。
中央管理装置500は、図4に示すステップS11からステップS14までの処理を定期的に繰り返すことにより、運行計画に使用する保冷庫100を適切に決定することができるとともに、各配送拠点が保有する保冷庫100の台数を適切に調整することができる。
<使用保冷庫決定処理>
次に、図4に示すステップS12における使用保冷庫決定処理の詳細について説明する。図5は、使用保冷庫決定処理について説明するためのフローチャートである。
ステップS21において、使用保冷庫決定部53は、ステップS22からステップS28の処理を、取得した全ての運行計画に対してループさせる。
ステップS22において、使用保冷庫決定部53は、処理対象の運行計画(本開示の第1の運行計画に対応)を参照し、配送元拠点となる配送拠点(本開示の第1の配送元拠点に対応)に存在する保冷庫100毎に、出発日時における予想保冷可能時間を保冷庫100から取得する。そして、使用保冷庫決定部53は、予想保冷可能時間が必要保冷可能時間以上である保冷庫100があるか否かを判定する。ここで、出発日時とは、運行計画保持部51から取得した運行計画に含まれる、配送に出発する日時に関する情報である。また、必要保冷可能時間とは、運行計画に含まれる、運行計画に対応する物品の配送のために必要な保冷可能時間である。
具体的には、ステップS22において、以下のような処理が行われる。使用保冷庫決定部53は、まず指令情報送信部55を介して保冷可能時間送信指示を保冷庫100に送信する。すると、保冷庫100の指令情報受信部15が当該指示を受信し、保冷能力情報検出部12が現在の蓄冷量を算出する。また、保冷庫100に対して予冷が行われている場合には、保冷能力情報検出部12は、現在の蓄冷量に、現在時刻から出発日時までの時間予冷が行われることによる蓄冷量を加算する。出発日時に関する情報は、例えば保冷可能時間送信指示に含まれて中央管理装置500から保冷庫100へ伝達される。そして、保冷能力情報検出部12は、上記算出した蓄冷量に基づいて出発日時における(推定)保冷可能時間を検出する。検出された(推定)保冷可能時間は、保冷庫情報送信部14を介して中央管理装置500に送信され、保冷庫情報受信部56により受信されて使用保冷庫決定部53に入力される。
このようにして、使用保冷庫決定部53は、出発日時における保冷可能時間を取得する。このような保冷可能時間の取得は、使用保冷庫決定部53が備えられた配送拠点に存在する全ての保冷庫100に対して行われる。なお、以下では、簡単のため、保冷可能時間と推定保冷可能時間とをまとめて、保冷可能時間と称する。
ステップS22において、保冷可能時間が必要保冷可能時間以上である保冷庫100が存在した場合(ステップS22:Yes)、処理はステップS23に進み、そうでない場合(ステップS22:No)、ステップS28に進む。
ステップS23において、使用保冷庫決定部53は、配送元拠点において、現時刻から所定時間以内に到着可能な保冷庫100があるか否かを判定する。到着可能な保冷庫100とは、他の配送拠点から、現在処理の対象である運行計画における配送元拠点に配送途中の保冷庫100であって、配送元拠点から所定の距離内に存在する保冷庫100である。使用保冷庫決定部53は、到着可能な保冷庫100があるか否かを、他の運行計画を参照し、配送元拠点への到着予定日時に基づいて判定すればよい。なお、所定時間とは、現時刻から、処理対象の運行計画の出発日時までの時間である。特に、配送元拠点に新たに到着した保冷庫100を再使用するために準備時間(以下、再使用時間と称する)を要する場合には、現時刻から、出発日時から再使用時間を差し引いた時刻までを所定時間とすればよい。
ステップS23において、所定時間以内に到着可能な保冷庫100があると判定された場合(ステップS23:Yes)、処理はステップS24に進み、そうでない場合(ステップS23:No)、ステップS26に進む。
ステップS24において、使用保冷庫決定部53は、所定時間以内に到着可能な保冷庫100が再使用できるか否かを判定する。使用保冷庫決定部53は、新たに到着した保冷庫100を再使用できるか否かを、例えば到着後の保冷庫100に残る保冷能力等に基づいて判定すればよい。ステップS24において、再使用できると判定された場合(ステップS24:Yes)、処理はステップS25に進み、そうでない場合、ステップS26に進む。
ステップS25において、使用保冷庫決定部53は、ステップS24において再利用できると判定された保冷庫100を、現在の処理対象の運行計画に使用する保冷庫100の候補に含める。
ステップS26において、使用保冷庫決定部53は、ステップS22において条件を満たした保冷庫100に、ステップS24において再利用可能であると判定された新たに到着可能な保冷庫100を、現在の処理対象の運行計画に使用する保冷庫100の候補とし、候補となった全ての保冷庫100に対して重み付け処理を行う。重み付け処理の詳細については後述する。
ステップS27において、使用保冷庫決定部53は、ステップS26における重み付け処理の結果に基づいて、運行計画に使用する保冷庫100を決定する。具体的には、使用保冷庫決定部53は、重みが大きい保冷庫100から優先して必要台数だけ運行計画に使用することを決定する。これにより、所定期間内の運行計画に必要な保冷庫100を効率よく決定することができる。
一方、ステップS28において、使用保冷庫決定部53は、ステップS22にて条件を満たす保冷庫100が存在しない場合には、対象なしとして次の運行計画に進む。全ての運行計画に対して処理が完了した場合、処理は図4のステップS13に進む。
<重み付け処理>
次に、図5に示すステップS26における重み付け処理の詳細について説明する。図6は、重み付け処理について説明するためのフローチャートである。
ステップS31において、使用保冷庫決定部53は、運行計画において保冷庫100が出発する側の配送拠点である配送元拠点の保有する保冷庫100の台数(以下、第1保有台数と称する)に基づいて、配送元拠点の保有する保冷庫100のそれぞれに対して重み付け処理を行う。第1保有台数に基づく重み付け処理の詳細については後述する。
ステップS32において、使用保冷庫決定部53は、以下のステップS33からステップS36までを、ステップS31において第1保有台数に基づく重み付け処理がなされた全ての保冷庫100に対してループさせる。
ステップS33において、使用保冷庫決定部53は、運行計画において保冷庫100が到着する側の配送拠点である配送先拠点において、所定時刻以後に新たな運行計画が存在するか否かを判定する。当該判定は、例えば使用保冷庫決定部53が、運行計画保持部51に対して配送先拠点の運行計画の有無を問い合わせることによって行えばよい。
なお、ステップS33における所定時刻とは、例えば運行計画に含まれる到着予定日時から、配送先拠点に到着した保冷庫100を再度利用するために必要な時間を加えた時刻である。すなわち、ステップS33では、使用保冷庫決定部53は、配送先拠点に到着した保冷庫100を再使用できる運行計画があるか否かを判定している。
ステップS33において、配送先拠点において、所定時刻以後に新たな運行計画(以下、配送先拠点運行計画と称する)が存在すると判定された場合(ステップS33:Yes)、処理はステップS34に進み、そうでない場合(ステップS33:No)、次の保冷庫100に対する処理に進む。
ステップS34において、使用保冷庫決定部53は、以下のステップS35とステップS36とを、全ての配送先拠点運行計画に対してループさせる。
ステップS35において、使用保冷庫決定部53は、配送先拠点運行計画の出発日時における保冷可能時間(推定保冷可能時間を含む)を保冷庫100から取得し、保冷可能時間が必要保冷可能時間以上であるか否かを判定する。ステップS35において、保冷可能時間が必要保冷可能時間以上であると判定された場合(ステップS35:Yes)、処理はステップS36に進み、そうでない場合(ステップS35:No)、次の配送先拠点運行計画に対する処理に進む。
ステップS36において、使用保冷庫決定部53は、配送先拠点の保有する保冷庫100の台数(以下、第2保有台数と称する)に基づいて、配送先拠点運行計画のそれぞれに対して重み付け処理を行う。第2保有台数に基づく重み付け処理の詳細については後述する。
全ての配送先拠点運行計画に対するステップS35およびステップS36の処理が完了し、全ての保冷庫100に対してステップS33からステップS36までの処理が完了すると、ステップS37において、使用保冷庫決定部53は、ステップS36における、第2保有台数に基づく重み付け処理の結果に基づいて、全ての保冷庫100の中から使用する保冷庫100を選択する。具体的には、使用保冷庫決定部53は、最も重みが大きい保冷庫100を選択する。
ステップS38において、使用保冷庫決定部53は、全ての保冷庫100に対して、各保冷庫100の特性に基づく重み付け処理を行う。保冷庫100の特性に基づく重み付け処理の詳細については後述する。
ステップS39において、使用保冷庫決定部53は、ステップS38における重み付け処理の結果に基づいて、使用する保冷庫100を決定する。具体的には、使用保冷庫決定部53は、重みが大きい保冷庫100から優先して必要台数だけ運行計画に使用することを決定する。
図6に示す処理により、配送元拠点から配送先拠点に保冷庫100が配送された後に、配送先拠点においてその保冷庫100を再度使用することを考慮して重み付けを行うことができる。
[配送元拠点の保有台数に基づく重み付け処理]
次に、図6に示すステップS31における、配送元拠点の保有台数に基づく重み付け処理の詳細について説明する。図7は、配送元拠点の保有台数に基づく重み付け処理のフローチャートである。
ステップS41において、使用保冷庫決定部53は、配送元拠点に存在する保冷庫100の総台数(以下、第1総台数と称する)と、所定の第1下限台数とを比較し、第1総台数の方が第1下限台数より多いか否かを判定する。なお、第1下限台数とは、例えば配送元拠点の規模等に応じて予め設定される、配送元拠点に最低限残っているべき保冷庫100の台数である。ステップS41において、第1総台数の方が第1下限台数より多いと判定された場合(ステップS41:Yes)、処理はステップS42に進み、そうでない場合(ステップS41:No)、処理はステップS45に進む
ステップS42において、使用保冷庫決定部53は、第1総台数と、所定の第1上限台数とを比較し、第1総台数の方が第1上限台数より多いか否かを判定する。なお、第1上限台数とは、例えば配送元拠点の規模に応じて予め設定される、配送元拠点に残っていることが望ましい保冷庫100の台数の上限値である。ステップS42において、第1総台数の方が第1上限台数より多い場合(ステップS42:Yes)、処理はステップS43に進み、そうでない場合(ステップS42:No)、処理はステップS44に進む。
ステップS43において、使用保冷庫決定部53は、第1上限台数を越えている保冷庫100の全てに対して、重みを30付加する。
ステップS44において、使用保冷庫決定部53は、第1上限台数以下で第1下限台数を超える保冷庫100の全てに対して、重みを10付加する。
ステップS45において、使用保冷庫決定部53は、第1下限台数以下の台数の保冷庫100の全てに対して、重みを1付加する。
このような処理によって、配送元拠点にとって必要な台数の(第1下限台数以下の)保冷庫100を確保しつつ、余分な(第1上限台数を超える)保冷庫100から優先的に使用するようにできる。
なお、上述した第1下限台数および第1上限台数は、後述する保有基準台数調整処理において調整される保有基準台数に相当する。後述する保有基準台数調整処理において第1下限台数および第1上限台数が調整されることにより、各配送拠点が保有する保冷庫100の台数が、配送拠点の規模等に応じた適切な台数に近づくことが期待できる。
[配送先拠点の保有台数に基づく重み付け処理]
次に、図6に示すステップS36における、配送先拠点の保有台数に基づく重み付け処理の詳細について説明する。図8は、配送先拠点の保有台数に基づく重み付け処理のフローチャートである。
ステップS51において、使用保冷庫決定部53は、配送先拠点に存在する保冷庫100の台数(以下、第2総台数と称する)と、所定の第2下限台数とを比較し、第2下限台数の方が第2総台数より多いか否かを判定する。なお、第2下限台数とは、例えば配送先拠点の規模に応じて予め設定される、配送先拠点に最低限残っているべき保冷庫100の台数である。ステップS51において、第2下限台数の方が第2総台数より多い場合(ステップS51:Yes)、処理はステップS53に進み、そうでない場合(ステップS51:No)、処理はステップS52に進む。
ステップS52において、使用保冷庫決定部53は、第2総台数と、所定の第2上限台数とを比較し、第2上限台数の方がより第2総台数より大きいか否かを判定する。第2上限台数とは、例えば配送拠点の規模に応じて予め設定される、配送拠点に残っていることが望ましい保冷庫100の台数である。ステップS52において、第2下限台数の方が第2総台数より多い場合(ステップS52:Yes)、処理はステップS54に進み、そうでない場合(ステップS52:No)、処理はステップS55に進む。
ステップS53において、使用保冷庫決定部53は、第2下限台数未満の配送元拠点の保冷庫100の全てに対して、重みを20付加する。
ステップS54において、使用保冷庫決定部53は、第2下限台数以上で第2上限台数未満の配送元拠点の保冷庫100の全てに対して、重みを5付加する。
ステップS55において、使用保冷庫決定部53は、第2上限台数以上の台数の配送元拠点の保冷庫100の全てに対して、重みを3付加する。
このような処理によって、配送元拠点から配送された保冷庫100のために配送先拠点の保冷庫100が増大することを予め想定して重み付け処理を行うので、配送先拠点において保冷庫100が過剰となってしまう事態を防止することができる。
[保冷庫の特性に基づく重み付け処理]
次に、図6に示すステップS38における、保冷庫の特性に基づく重み付け処理の詳細について説明する。図9は、保冷庫の特性に基づく重み付け処理のフローチャートである。
ステップS61において、使用保冷庫決定部53は、ステップS62からステップS72の処理を、重み付け処理の対象となる保冷庫100毎にループする。以下の説明においては、重み付け処理の対象となる保冷庫100を単に保冷庫100と称する。
ステップS62からステップS64において、使用保冷庫決定部53は、保冷庫100が対応している温度帯に基づいて重み付けを行う。
以下具体例を挙げて説明する。保冷庫100は、それぞれ対応している温度帯を有する。具体的には、例えば「冷蔵」および「チルド」の2つの温度帯に対応している保冷庫100もあれば、例えば「冷凍」の1つの温度帯にしか対応していない保冷庫100もある。また、例えば「冷蔵」、「チルド」、および「冷凍」の3つの温度帯に対応している保冷庫100もある。保冷庫100がいずれの温度帯に対応しているかは、例えば保冷庫100が有する蓄冷体の量や材質等によって決まる。ステップS62において、使用保冷庫決定部53は、保冷庫100が対応している温度帯の数に基づいて重み付けを行う。
ステップS62において、使用保冷庫決定部53は、保冷庫100が、上記3つの温度帯のうちのいくつの温度帯に対応しているかを判定し、3つの温度帯に対応している場合(ステップS62:3温度帯)、ステップS65に進み、2つの温度帯に対応している場合(ステップS62:2温度帯)、ステップS63に進み、1つの温度帯にのみ対応している場合(ステップS62:1温度帯)、ステップS64に進む。
保冷庫100が2温度帯に対応している場合、ステップS63において、使用保冷庫決定部53は、保冷庫100に対して重みを1付加する。また、保冷庫100が1温度帯にのみ対応している場合、ステップS64において、使用保冷庫決定部53は、保冷庫100に対して重みを2付加する。
次に、ステップS65からステップS68において、使用保冷庫決定部53は、保冷庫100の定格保冷時間に基づいて重み付けを行う。定格保冷時間とは、保冷庫100毎に予め定められた保冷可能時間の最大値である。定格保冷時間は、例えば蓄冷体の量や材質等によって決まる。
より詳細には、ステップS65において、使用保冷庫決定部53は、保冷庫100の定格保冷時間が第3所定時間以上(例えば18時間以上)である場合(ステップS65:第3所定時間以上)、処理はステップS69に進む。また、使用保冷庫決定部53は、保冷庫100の定格保冷時間が第2所定時間以上第3所定時間未満(例えば12時間以上18時間未満)である場合(ステップS65:第2所定時間〜第3所定時間)、処理はステップS66に進む。また、使用保冷庫決定部53は、保冷庫100の定格保冷時間が第1所定時間以上第2所定時間未満(例えば7時間以上12時間未満)である場合(ステップS65:第1所定時間〜第2所定時間)、ステップS67に進み、定格保冷時間が第1所定時間未満(例えば7時間未満)である場合(ステップS65:第1所定時間未満)、ステップS68に進む。
定格保冷時間が第3所定時間以上であった場合、すなわち、十分な定格保冷時間が確保されている場合、使用保冷庫決定部53は、当該保冷庫100に重みを付加しない。そして、定格保冷時間が第2所定時間以上第3所定時間未満であった場合、ステップS66において、使用保冷庫決定部53は、当該保冷庫100に対して重みを1付加する。定格保冷時間が第1所定時間以上第2所定時間未満であった場合、ステップS67において、使用保冷庫決定部53は、当該保冷庫100に対して重みを2付加する。定格保冷時間が第1の所定時間未満であった場合、ステップS68において、使用保冷庫決定部53は、当該保冷庫100に対して重みを3付加する。
次に、ステップS69からステップS72において、使用保冷庫決定部53は、保冷庫100の累計使用回数に基づいて重み付けを行う。より詳細には、使用保冷庫決定部53は、保冷庫100に対して累積使用回数を通知する指示を送信し、保冷庫100から受信した累積使用回数が第3所定回数(例えば1000回)以上である場合(ステップS69:第3所定回数以上)、次の保冷庫に対する重み付け処理に移行する。また、累積使用回数が第2所定回数(例えば500回)以上第3所定回数未満である場合、処理はステップS72に進む。また、累積使用回数が第1所定回数(例えば100回)以上第2所定回数未満である場合、処理はステップS71に進む。また、累積使用回数が第1所定回数未満である場合、処理はステップS70に進む。
保冷庫100の累計使用回数が第1所定回数未満であった場合、すなわち、保冷庫100があまり使用されておらず、保冷能力の劣化が少ないことが見込まれる場合、使用保冷庫決定部53は、ステップS70において、保冷庫100に対して重みを3付加する。保冷庫100の累計使用回数が第1所定回数以上第2所定回数未満であった場合、ステップS71において、使用保冷庫決定部53は、保冷庫100に対して重みを2付加する。また、保冷庫100の累計使用回数が第2所定回数以上第3所定回数未満であった場合、ステップS72において、使用保冷庫決定部53は、保冷庫100に対して重みを1付加する。また、保冷庫100の累計使用回数が第3所定回数以上であった場合、使用保冷庫決定部53は、保冷庫100に対して重みを付加しない。
以上、図9に示す重み付け処理では、運行計画に適した保冷庫100の中で、より汎用性が低い保冷庫100に対してより大きな重みを付与する。使用保冷庫決定部53が、重みの大きい保冷庫100から優先して使用を決定する場合、より汎用性の低い保冷庫100が優先的に使用される。これにより、保冷庫100の運用における無駄を低減することができ、効率的な保冷庫100の運用を行うことができるようになる。
なお、図9に示すフローチャートにおいて例示した温度帯、定格保冷時間、累積使用回数は一例であって、本開示はこれには限定されない。例えば保冷庫100の使用条件等に応じて、温度帯、定格保冷時間、累積使用回数は任意の値に変更されてもよい。また、図9に示すフローチャートでは、温度帯について3段階、定格保冷時間、累積使用回数のそれぞれについて4段階の重み付けを行っていたが、本開示はこれには限定されない。例えば、2段階、あるいは5段階以上の段階に分類して重み付けを行ってもよい。
[保有基準台数調整処理]
次に、図4のステップS14における保有基準台数調整処理の詳細について説明する。図10は、保有基準台数調整処理について説明するためのフローチャートである。
ステップS81において、保有台数情報保持部52は、ステップS13において処理対象となっている配送拠点の、所定の時刻における保冷庫100の推定保有台数を算出する。なお、所定の時刻とは、現時刻より後の任意の時刻である。また、推定保有台数を算出する方法としては、本開示では特に限定しないが、例えば、処理対象の配送拠点に今後所定の時刻までに到着する可能な保冷庫100を、他の運行計画を参照し、処理対象の配送拠点への到着予定日時に基づいて抽出して計数し、現時点の保有台数に計数結果を加算することで算出すればよい。
ステップS82において、保有台数情報保持部52は、ステップS81で算出した推定保有台数に基づいて、処理対象の配送拠点の保有台数情報を更新する。
ステップS83において、保有台数調整部54は、所定の保有台数調整タイミングが到来したか否かを判定する。保有台数調整タイミングとは、例えば、予め保冷庫管理システム1の管理者等によって定められた、保有台数を調整すべきタイミングであって、例えば1日に1回や1週間に1回等、また、業務開始時や業務終了時等のタイミングである。
ステップS83において、保有台数調整タイミングが到来したと判定された場合、処理はステップS84に進み、そうでない場合、保有基準台数調整処理を終了する。
ステップS84において、保有台数調整部54は、過去所定の期間の保有台数情報に基づいて、保有台数状況を求める。所定の期間とは、例えば1ヶ月や1年等、任意の期間である。また、保有台数状況とは、配送拠点における保有台数が適正台数からどの程度離れているかを示す情報である。保有台数調整部54が求めた保有台数状況は、過去の保有台数状況を時系列に沿って含む履歴情報として、例えば保有台数情報保持部52に格納されればよい。
図11は、保有台数状況について説明するための図である。図11において、第1上限台数および第1下限台数は、図7および図8における、配送拠点の保有台数に基づく重み付け処理において使用される保有基準台数である。
図11に示すように、配送拠点の保有する保冷庫100の台数が、第1上限台数より多い場合、保有台数状況は「余りすぎ」となる。また、図11に示すように、配送拠点の保有する保冷庫100の台数が、第1上限台数付近であって第1上限台数より小さい場合、保有台数状況は「余り気味」となる。また、図11に示すように、配送拠点の保有する保冷庫100の台数が、第1上限台数と第1下限台数との中間付近である場合、保有台数状況は「適正」となる。また、図11に示すように、配送拠点の保有する保冷庫100の台数が、第1下限台数付近であって第1下限台数より大きい場合、保有台数状況は「不足気味」となる。また、図11に示すように、配送拠点の保有する保冷庫100の台数が、第1下限台数より少ない場合、保有台数状況は「不足すぎ」となる。
保有台数調整部54は、上述した保有基準台数、すなわち第1上限台数および第1下限台数を、以下のように調整する。
ステップS85において、保有台数調整部54は、保有台数状況がどのような状況であるかを判定する。ステップS85において、保有台数状況が「不足すぎ」であると判定された場合、処理はステップS86に進む。また、ステップS85において、保有台数状況が「余りすぎ」であると判定された場合、処理はステップS87に進む。
また、ステップS85において、過去の保有台数状況が「不足すぎ」であって、直近の保有台数状況が「不足気味」であると判定された場合、処理はステップS88に進む。また、ステップS85において、過去の保有台数状況が「余りすぎ」であって、直近の保有台数状況が「余り気味」であると判定された場合、処理はステップS89に進む。なお、保有台数調整部54は、過去の保有台数状況を、保有台数情報保持部52に格納される保有台数状況の履歴を参照して取得すればよい。
また、ステップS85において、過去の保有台数状況が「不足気味」であって、直近の保有台数状況も「不足気味」であると判定された場合、処理はステップS90に進む。また、ステップS85において、過去の保有台数状況が「余り気味」であって、直近の保有台数状況も「余り気味」であると判定された場合、処理はステップS91に進む。そして、保有台数状況が「それ以外」であった場合、保有基準台数の調整処理を終了する。
ステップS86、ステップS88、およびステップS90において、保有台数調整部54は、第1下限台数を増加する。増加させる台数は、例えば保有台数状況に合わせて決定すればよい。
また、ステップS87、ステップS89、およびステップS91において、保有台数調整部54は、第1上限台数を減少させる。減少させる台数は、例えば保有台数状況に合わせて決定すればよい。
このように、第1下限台数および第1上限台数(保有基準台数)の調整を所定のタイミングで定期的に行うことにより、保有台数状況が「適正」となるように保有基準台数が調整される。このため、図7における保有基準台数に基づく配送元拠点の重み付け処理により、配送元拠点の保有台数が次第に適正になることが期待される。
また、過去所定の期間の保有台数情報に基づいて求めた保有台数状況によって保有基準台数の調整を行うことで、例えば時期(繁忙期、閑散期等)を考慮した適切な保有基準台数の調整を行うことができる。
なお、図10に示す保有基準台数調整処理では、配送元拠点の過去の保有台数状況に基づいて保有基準台数の調整を行っていたが、本開示はこれには限定されない。例えば、同規模、あるいは同時期の他の配送拠点における保有台数状況に基づいて保有基準台数の調整を行うようにしてもよい。
また、図2に示される各機能ブロックは、必要に応じて適宜1つまたは複数のマイコンを用いて実現可能である。その場合、マイコンは例えばCPU、ROM及びRAMを含む構成を備え、CPUは、ROMに格納されたコンピュータプログラムを、RAMを作業領域として使いながら実行し上記に説明した処理を実行する。したがって、説明の便宜上、中央管理装置500と保冷庫100とを図2に示す機能ブロックに分けて実施の形態の説明を行ったが、必要に応じて中央管理装置500が備える機能の一部を保冷庫100が備えてもよく、その逆も可能である。
以上説明したように、本開示の実施の形態に係る保冷庫管理システム1では、中央管理装置500は、運行計画と、前記受信した保冷能力に関する情報と、に基づいて、第1の配送元拠点から配送が行われる第1の運行計画に使用する保冷庫を前記複数の保冷庫の中から選択する場合に、他の配送拠点から前記第1の配送元拠点に所定時間以内に到着可能な保冷庫を、当該保冷庫の位置情報に基づいて抽出し他の運行計画を参照し、到着予定日時に基づいて抽出し、当該到着可能な保冷庫と、前記第1の配送元拠点が保有する保冷庫とを、前記第1の運行計画に使用する保冷庫の候補とし、当該候補の中から前記第1の運行計画に使用する保冷庫を決定する。
このような構成により、配送拠点に保有される保冷庫だけでなく、第1の配送元拠点に到着可能な保冷庫も、今後の第1の運行計画に使用される保冷庫の候補とすることができるので、各拠点における保冷庫の保有台数に偏りが生じることを低減することができるようになる。
また、保冷庫管理システム1では、中央管理装置500が、保冷庫100が有する保冷能力に基づいて、運行計画毎に、運行計画に適した保冷能力を有する複数の保冷庫100に対して、少なくとも配送元拠点の台数に基づく重み付け処理を行い、重み付け処理の結果に基づいて使用する保冷庫100を決定する使用保冷庫決定部53と、配送元拠点の台数に基づく重み付け処理に使用される基準値である保有基準台数を、配送元拠点の過去の保冷庫100の保有台数状況と、直近の保有台数状況と、を比較することで適正な値に調節する保有台数調整部54と、を有する。
すなわち、保冷庫管理システム1によれば、重み付け処理の基準値である保有基準台数が、配送元拠点における保有台数に基づいて調整されるので、重み付け処理の結果、使用が決定される保冷庫100の台数も保有基準台数に合わせて調整される。これにより、配送元拠点の保有台数が、配送元拠点の規模や時期的要素(繁忙期、閑散期等)等に応じて適正に調整されることが期待される。
また、保冷庫の蓄冷体を冷却するための時間を適正化することができ、複数台の保冷庫を適切に運用することができるようになる。また、運行計画に必要な保冷能力を有した保冷庫が優先的に使用されるので、余分な保冷庫の冷却を行わなくて済み、省エネルギーを達成することができる。さらに、保冷庫毎に有する保冷能力が様々である場合でも、適切な保冷庫を使用できるので、種々の保冷能力を有する保冷庫を統一的に運用することができる。
また、保有台数調整部54は、過去所定の期間内の前記配送元拠点の保有台数に基づいて、当該配送元拠点において保冷庫100が不足していた場合には保有基準台数の下限値(第1下限台数)を増加させ、当該配送元拠点において保冷庫100が過剰であった場合には保有基準台数の上限値(第1上限台数)を減少させる。これにより、配送元拠点の保有台数が、配送元拠点の規模等に応じて適正に調整されることが期待される。
<第2の実施の形態>
以下説明する第2の実施の形態では、中央管理装置500が、保冷庫100内に収容された物品(以下、荷物と称する)を好適に管理するために、保冷庫100内の温度に関する情報を監視する構成について説明する。
図12は、第2の実施の形態における荷物の配送について説明するための概念図である。図12では、配送元拠点である配送拠点Aの倉庫(以下保冷倉庫700と称する)に保管されていた荷物を、保冷庫100に収容し、輸送機器の一例としてのトラックによって保冷庫100を配送拠点Bまで配送し、配送拠点Bの保冷倉庫700に荷物を下ろす様子を示している。そして、配送拠点Bの保冷倉庫700にて下ろされた荷物は、他の保冷庫100に収容され、他の配送拠点へと配送されている。
このように、保冷庫管理システム1において、荷物は常に保冷された環境下にあるものの、例えば保冷庫100の故障等により、荷物を適切に保冷できない事態が生じると、低温で配送されるべき荷物の品質に異常が生じてしまう場合がある。このようなことが無いように、第2の実施の形態では、保冷庫100の庫内温度を中央管理装置500が常に監視するものである。
図13は、第2の実施の形態における保冷庫管理システム1の各構成の機能を示すブロック図である。図13において、上述した第1の実施の形態において説明した各構成と同様の機能を有する構成には同一の符号を付している。同一の符号を付した構成の動作は、上述した第1の実施の形態とほぼ同様であるため、以下では詳細な説明は省略する。
図13に示すように、保冷庫100は、庫内温度検出部16を有する点で第1の実施の形態と異なる。庫内温度検出部16は、例えば保冷庫100の庫内に取り付けられた温度センサによって庫内温度を検出し、庫内温度に関する情報を保冷庫情報送信部14に対して出力する。庫内温度検出部16は、例えば庫内に複数箇所取り付けられた温度センサの平均値を算出することで庫内温度を精度よく検出するようにしてもよい。
庫内温度検出部16によって検出された庫内温度に関する情報は、保冷庫情報送信部14によって、保冷庫識別記号および保冷可能時間とともに中央管理装置500へと送信される。
図13に示すように、配送拠点毎に備えられた保冷倉庫700は、識別記号保持部71、庫内温度検出部72、表示部73、および、保冷庫情報送信部74を有する。
識別記号保持部71は、保冷倉庫700毎に異なる固有の識別情報(保冷倉庫識別記号)を格納する。識別記号保持部11は、ハードディスク(HDD)、フラッシュメモリ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等の記憶媒体により構成される。
庫内温度検出部72は、例えば保冷倉庫700の庫内に取り付けられた温度センサによって庫内温度を検出し、庫内温度に関する情報を保冷庫情報送信部74に対して出力する。庫内温度検出部72は、例えば庫内に複数箇所取り付けられた温度センサの平均値を算出することで庫内温度を精度よく検出するようにしてもよい。
表示部73は、保冷倉庫の外部から視認できる位置を含む保冷倉庫700の外面部に設けられる。表示部73は、庫内温度や、庫内に収容された荷物に関する情報等の各種情報を表示する。
保冷庫情報送信部74は、公衆ネットワーク200を介して、中央管理装置500に対して保冷倉庫識別記号および庫内温度を送信する。ただし、保冷庫100と保冷倉庫700との間における通信および央管理装置500と保冷倉庫700との間における通信の少なくともいずれか一方の通信(情報の送受)は、有線による通信が行われてもよい。
また、図13に示すように、中央管理装置500は、荷物情報管理部57、保冷庫温度履歴保持部58、荷物温度履歴情報生成部59を有する点で第1の実施の形態と異なる。荷物情報管理部57は、例えば荷物毎に固有の識別情報を割り当て、荷物毎に、移動した経路や移動時間等の荷物の移動履歴に関する情報を生成する。
保冷庫温度履歴保持部58は、保冷庫100から取得した保冷庫100の庫内温度、および保冷倉庫700から取得した保冷倉庫700の庫内温度に関する情報を保冷庫100毎に蓄積し、保冷庫100毎、あるいは保冷倉庫700毎に、庫内温度の履歴情報を生成して保持する。
荷物温度履歴情報生成部59は、荷物移動履歴情報と、保冷庫100あるいは保冷倉庫700毎の庫内温度履歴情報と、に基づいて、荷物毎に荷物の周囲の温度の履歴情報である荷物温度履歴情報を生成する。荷物の周囲の温度とは、例えば荷物が保冷庫100に収容されているときは、保冷庫100の庫内温度であり、荷物が保冷倉庫700に収容されているときは、保冷倉庫700の庫内温度である。
以上説明したように、第2の実施の形態の保冷庫管理システム1によれば、中央管理装置500において、荷物情報管理部57が、荷物がどのように移動したかを示す荷物移動履歴情報を生成する。そして、保冷庫温度履歴保持部58が、保冷庫100および保冷倉庫700の庫内温度に関する情報を収集し、保冷庫100あるいは保冷倉庫700の庫内温度履歴情報を生成する。そして、荷物温度履歴情報生成部59が、荷物移動履歴情報と、庫内温度履歴情報と、に基づいて、荷物の周囲の温度の履歴情報である荷物温度履歴情報を生成する。
このような構成により、中央管理装置500は、過去に荷物が保管あるいは配送されていたときの周囲の温度を正確に追跡することができるようになる。このため、荷物の品質管理を好適に行うことができる。
また、中央管理装置500は、保冷庫100内の温度履歴情報に基づいて、保冷庫100毎に故障しているか否かの判定を行うことができる。このため、故障した保冷庫100の使用を停止したり、保冷庫100が有する蓄冷体を取り替えたり、といった対処を好適に行うことができる。
さらに、保冷庫100内の温度履歴情報を用いて、第1の実施の形態において説明した使用保冷庫決定部53が、例えば温度変化が少ない保冷庫100に対して重み付けを行い、温度変化が少ない保冷庫100を優先して運行計画に使用することで、より効率的な保冷庫100の運用を行うことができるようになる。
また、本開示によれば、保冷庫の予冷時に蓄冷体を冷却するための時間を適正化することができるので、複数台の保冷庫を最適に運用することが可能となる。さらに、不必要に長時間の予冷を行わなくても保冷庫の運用が効率的に行われるため、物流サイクル全体として省エネ化が可能となる。換言すれば、個別の運行計画に必要な保冷時間分だけ保冷庫を予冷すれば良いため、予冷における冷却時間を必要最小限まで短縮することができ、省エネ化が可能となる。あるいは、任意の必要保冷時間に見合った分だけ予冷すれば良く、不必要に保冷庫を予冷で冷却することを防止できるため、省エネ化が可能といえる。
なお、蓄冷体の情報を収集可能な上記保冷庫管理システム1を用いて、以下のように蓄冷体そのものの劣化を監視することも可能である。
例えば、蓄冷体ごとに固有の識別情報(ID)を付与し、このIDとこのIDを持つ蓄冷体の使用状況とを情報として紐付け、紐付けられた情報をサーバ側に逐次(適宜、あるいは定期的に)送信し、紐付けられた情報を中央管理装置側で記憶し情報を蓄積することによって、同一蓄冷体に対する経時劣化を確認することができる。ここで、蓄冷体の使用状況とは、予冷時間(例えば、何時間で0%(全く冷却されていない状態)から100%(完全に凍結した状態)まで凍結できるか)、保冷時間(例えば100%凍結した状態から50%凍結した状態までの時間がどの程度か)、等で表される。
蓄冷体の劣化は、経時的な観点でみれば、蓄冷体を0%から100%まで凍結させるために必要な時間を時系列の前後で比較したり、100%まで凍結させた蓄冷体が50%まで溶けるのに要する時間を比較したりすることで予測できる。前者の比較では、時間が長くなるほど劣化したものと予測でき、後者の比較では時間が短くなるほど、新品当初から劣化したものと予測できる。
なお、本開示は、上記保冷庫100の管理方法に限らず、当該管理方法における各ステップの処理をコンピュータなどのハードウェアを用いて実行可能な中央管理装置500のプログラムであってもよい。
その他、上記実施の形態は、いずれも本開示の実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
上述した実施の形態では、抽出した全ての保冷庫に対して、配送元拠点にある保冷庫の台数、配送先拠点にある保冷庫の台数、適用可能な温度帯の数、定格保冷時間、あるいは累積使用回数等に応じて重み付けを行っていたが、本開示はこれには限定されない。例えば、これらの重み付け要素のうちの少なくともいずれかに基づいて重み付けを行ってもよい。
上述した実施の形態では、図9に示すステップS65において、定格保冷時間に基づいて重み付けを行うと説明したが、本開示はこれには限定されない。定格保冷時間の代わりに、例えば保冷庫100から取得した、出発日時における保冷可能時間に基づいて保冷庫100の重み付けを行うようにしてもよい。この場合、使用保冷庫決定部53は、例えば保冷庫100の保冷能力情報検出部12が検出した保冷可能時間を取得して重み付けを行うようにすればよい。