以下、本発明の電子機器を適用した実施の形態について説明する。
<実施の形態>
本発明の電子機器を適用した実施の形態について説明する前に、図1を用いて、実施の形態の電子機器に含まれる受電器と、受電器を用いた電力伝送システムとの前提技術について説明する。
図1は、電力伝送システム50を示す図である。
図1に示すように、電力伝送システム50は、交流電源1、一次側(送電側)の送電器10、及び二次側(受電側)の受電器20を含む。電力伝送システム50は、送電器10及び受電器20を複数含んでもよい。
送電器10は、一次側コイル11と一次側共振コイル12を有する。受電器20は、二次側共振コイル21と二次側コイル22を有する。二次側コイル22には負荷装置30が接続される。
図1に示すように、送電器10及び受電器20は、一次側共振コイル(LC共振器)12と二次側共振コイル(LC共振器)21の間の磁界共鳴(磁界共振)により、送電器10から受電器20へエネルギー(電力)の伝送を行う。ここで、一次側共振コイル12から二次側共振コイル21への電力伝送は、磁界共鳴だけでなく電界共鳴(電界共振)等も可能であるが、以下の説明では、主として磁界共鳴を例として説明する。
また、実施の形態1では、一例として、交流電源1が出力する交流電圧の周波数が6.78MHzであり、一次側共振コイル12と二次側共振コイル21の共振周波数が6.78MHzである場合について説明する。
なお、一次側コイル11から一次側共振コイル12への電力伝送は電磁誘導を利用して行われ、また、二次側共振コイル21から二次側コイル22への電力伝送も電磁誘導を利用して行われる。
また、図1には、電力伝送システム50が一次側共振コイル12を含む形態を示すが、電力伝送システム50は一次側共振コイル12を含まなくてもよく、この場合には、一次側コイル11から二次側共振コイル21にエネルギーが伝送される。 また、図1には、電力伝送システム50が二次側コイル22を含む形態を示すが、電力伝送システム50は二次側コイル22を含まなくてもよく、この場合には、二次側共振コイル21に負荷装置30を直接的に接続すればよい。
次に、図2を用いて、実施の形態1の受電器、及び、電力伝送システムについて説明する。
図2は、実施の形態1の受電器60と送電装置80を示す図である。送電装置80は、交流電源1と送電器10を含む。交流電源1と送電器10は、図1に示すものと同様であるが、図2では、より具体的な構成を示す。
送電装置80は、交流電源1と送電器10を含む。
送電器10は、一次側コイル11、一次側共振コイル12、整合回路13、キャパシタ14、制御部15を有する。
受電器60は、二次側共振コイル21、キャパシタ21B、二次側コイル22、整流回路61、平滑キャパシタ62、及び出力端子63A、63Bを含む。出力端子63A、63Bには、DC−DCコンバータ210が接続されており、DC−DCコンバータ210の出力側にはバッテリ220が接続されている。
まず、送電器10について説明する。図2に示すように、一次側コイル11は、ループ状のコイルであり、両端間に整合回路13を介して交流電源1に接続されている。一次側コイル11は、一次側共振コイル12と非接触で近接して配置されており、一次側共振コイル12と電磁界結合される。一次側コイル11は、自己の中心軸が一次側共振コイル12の中心軸と一致するように配設される。中心軸を一致させるのは、一次側コイル11と一次側共振コイル12との結合強度を向上させるとともに、磁束の漏れを抑制して、不必要な電磁界が一次側コイル11及び一次側共振コイル12の周囲に発生することを抑制するためである。
一次側コイル11は、交流電源1から整合回路13を経て供給される交流電力によって磁界を発生し、電磁誘導(相互誘導)により電力を一次側共振コイル12に送電する。
図2に示すように、一次側共振コイル12は、一次側コイル11と非接触で近接して配置されて一次側コイル11と電磁界結合されている。また、一次側共振コイル12は、所定の共振周波数を有し、高いQ値を有するように設計されている。一次側共振コイル12の共振周波数は、二次側共振コイル21の共振周波数と同一又はほぼ等しくなるように設定されている。一次側共振コイル12の両端の間に、共振周波数を調整するためのキャパシタ14が直列に接続される。
一次側共振コイル12の共振周波数は、交流電源1が出力する交流電力の周波数と同一の周波数になるように設定されている。一次側共振コイル12の共振周波数は、一次側共振コイル12のインダクタンスと、キャパシタ14の静電容量によって決まる。このため、一次側共振コイル12のインダクタンスと、キャパシタ14の静電容量は、一次側共振コイル12の共振周波数が、交流電源1から出力される交流電力の周波数と同一又はほぼ等しい周波数になるように設定されている。
整合回路13は、一次側コイル11と交流電源1とのインピーダンス整合を取るために挿入されており、インダクタLとキャパシタCを含む。
交流電源1は、磁界共鳴に必要な周波数の交流電力を出力する電源であり、出力電力を増幅するアンプを内蔵する。交流電源1は、例えば、数百kHzから数十MHz程度の高周波の交流電力を出力する。
キャパシタ14は、一次側共振コイル12の両端の間に、直列に挿入される可変容量型のキャパシタである。キャパシタ14は、一次側共振コイル12の共振周波数を調整するために設けられており、静電容量は制御部15によって設定される。
制御部15は、交流電源1の出力電圧及び出力周波数の制御、キャパシタ14の静電容量の制御等を行う。
以上のような送電装置80は、交流電源1から一次側コイル11に供給される交流電力を磁気誘導により一次側共振コイル12に送電し、一次側共振コイル12から磁界共鳴により電力を受電器60の二次側共振コイル21に送電する。
次に、受電器60に含まれる二次側共振コイル21について説明する。ここでは、一例として、共振周波数が6.78MHzである形態について説明する。
二次側共振コイル21は、一次側共振コイル12と同一又はほぼ等しい共振周波数を有し、高いQ値を有するように設計されている。二次側共振コイル21は、共振コイル部21Aを有する。共振コイル部21Aには、共振周波数を調整するためのキャパシタ21Bが直列に挿入されている。また、二次側コイル22は、整流回路61に接続されている。
ここで、二次側共振コイル21と一次側共振コイル12の共振周波数が同一とは、二次側共振コイル21の共振周波数と一次側共振コイル12の共振周波数とが一致する(等しい)ことをいう。
また、二次側共振コイル21と一次側共振コイル12の共振周波数がほぼ等しいとは、二次側共振コイル21の共振周波数と一次側共振コイル12の共振周波数とが完全に一致せず、殆ど同一であるが、少し異なることをいう。この場合でも二次側共振コイル21と一次側共振コイル12の間では、磁界共鳴が成り立っている。
例えば、二次側に接続される負荷等の影響により、一次側共振コイル12の効率が最大になる場合の共振周波数と、二次側共振コイル21の効率が最大になる場合の共振周波数とが完全に一致せず、ほぼ等しくなる場合がある。
このため、二次側共振コイル21は、一次側共振コイル12と同一又はほぼ等しい共振周波数を有し、高いQ値を有するように設計される。 整流回路61は、4つのダイオード61A〜61Dを有する。ダイオード61A〜61Dは、ブリッジ状に接続されており、二次側共振コイル21から入力される電力を全波整流して出力する。
平滑キャパシタ62は、整流回路61の出力側に接続されており、整流回路61で全波整流された電力を平滑化して直流電力として出力する。平滑キャパシタ62の出力側には、出力端子63A、63Bが接続される。整流回路61で全波整流された電力は、交流電力の負成分を正成分に反転させてあるため、略直流電力として取り扱うことができるが、平滑キャパシタ62を用いることにより、全波整流された電力にリップルが含まれるような場合でも、安定した直流電力を得ることができる。
なお、平滑キャパシタ62の上側の端子と出力端子63Aとを結ぶ線路は、高電圧側の線路であり、平滑キャパシタ62の下側の端子と出力端子63Bとを結ぶ線路は、低電圧側の線路である。
DC−DCコンバータ210は、出力端子63A、63Bに接続されており、受電器60から出力される直流電力の電圧をバッテリ220の定格電圧に変換して出力する。DC−DCコンバータ210は、整流回路61の出力電圧の方がバッテリ220の定格電圧よりも高い場合は、整流回路61の出力電圧をバッテリ220の定格電圧まで降圧する。また、DC−DCコンバータ210は、整流回路61の出力電圧の方がバッテリ220の定格電圧よりも低い場合は、整流回路61の出力電圧をバッテリ220の定格電圧まで昇圧する。
バッテリ220は、繰り返し充電が可能な二次電池であればよく、例えば、リチウムイオン電池を用いることができる。例えば、受電器60がタブレットコンピュータ又はスマートフォン等の電子機器に内蔵される場合は、バッテリ220は、このような電子機器のメインのバッテリである。
なお、一次側コイル11、一次側共振コイル12、二次側共振コイル21は、例えば、銅線を巻回することによって作製される。しかしながら、一次側コイル11、一次側共振コイル12、二次側共振コイル21の材質は、銅以外の金属(例えば、金、アルミニウム等)であってもよい。また、一次側コイル11、一次側共振コイル12、二次側共振コイル21の材質は異なっていてもよい。
このような構成において、一次側コイル11及び一次側共振コイル12が電力の送電側であり、二次側共振コイル21が電力の受電側である。
磁界共鳴方式によって、一次側共振コイル12と二次側共振コイル21との間で生じる磁界共鳴を利用して送電側から受電側に電力を伝送するため、送電側から受電側に電磁誘導で電力を伝送する電磁誘導方式よりも長距離での電力の伝送が可能である。
磁界共鳴方式は、共振コイル同士の間の距離又は位置ずれについて、電磁誘導方式よりも自由度が高く、ポジションフリーというメリットがある。
図3は、実施の形態の電子機器100を示す斜視図である。
電子機器100は、一例として、タッチパネルを入力操作部とする、スマートフォン端末機、又は、タブレット型コンピュータのような携帯型の電子機器である。また、電子機器100は、ノート型のPC(Personal Computer)、携帯電話端末機、携帯型のゲーム機、デジタルカメラ、ビデオカメラ等の携帯型の電子機器であってもよい。
電子機器100の入力操作部101は、タッチパネルの下にディスプレイパネルが配設されており、ディスプレイパネルにGUI(Graphic User Interface)による様々なボタン102A、又は、スライダー102B等(以下、GUI操作部102と称す)が表示される。電子機器100の利用者は、通常、GUI操作部102を操作するために、指先で入力操作部101に触れる。
次に、図4を用いて、電子機器100の具体的な構成について説明する。
図4は、実施の形態の電子機器100を示す平面図であり、図5は、図4に示す電子機器100のA−A矢視断面を示す図である。なお、図4及び図5では、図示するように直交座標系であるXYZ座標系を定義する。また、以下、XY平面視で見ることを平面視と称す。
電子機器100は、筐体110、トップパネル120、両面テープ130、二次側共振コイル140、タッチパネル150、ディスプレイパネル160、及び基板170を含む。電子機器100は、図2に示す受電器60を含む。ここでは、受電器60のうちの二次側共振コイル21を二次側共振コイル140として示す。図4及び図5では、受電器60のキャパシタ21B、二次側コイル22、整流回路61、平滑キャパシタ62、出力端子63A、63Bを省略する。
筐体110は、金属製であり、図5に示すように凹部110Aに基板170、ディスプレイパネル160、及びタッチパネル150が配設されるとともに、両面テープ130によってトップパネル120が接着されている。
ここでは、凹部110Aの底に位置する部分を底板部111と称し、底板部111からZ軸方向に起立して凹部110Aを囲っている部分を側壁部112と称す。凹部110Aは、底板部111と側壁部112によって囲まれている凹状の部分である。なお、底板部111は壁部の一例である。
筐体110は、例えば、アルミニウム、又は、その他の比較的軽量な金属製である。図3乃至図5では、筐体110を厚く記載するが、筐体110の厚さは、例えば、1mm以下であってもよい。
筐体110には、二次側共振コイル140の受電効率を改善するために、開口部が形成されるが、開口部については、図6以降で示すシミュレーション結果を用いて説明する。このため、図3乃至図5では、筐体110に設ける開口部を省略する。
トップパネル120は、平面視で長方形の薄い平板状の部材であり、透明なガラス、又は、ポリカーボネートのような強化プラスティックで作製される。トップパネル120の表面(Z軸正方向側の面)は、電子機器100の利用者が操作入力を行う操作面の一例である。
トップパネル120は、平面視における四辺が両面テープ130によって筐体110に接着されている。なお、両面テープ130は、トップパネル120の四辺を筐体110に接着できればよく、図5に示すように矩形環状である必要はない。
トップパネル120のZ軸負方向側にはタッチパネル150が配設される。トップパネル120は、タッチパネル150の表面を保護するために設けられている。なお、トップパネル120の表面に、さらに別なパネル又は保護膜等が設けられていてもよい。
二次側共振コイル140は、一次側共振コイル12と同一又はほぼ等しい共振周波数を有し、高いQ値を有するように設計されている。二次側共振コイル140の一対の端子は、整流回路61に接続されている。
二次側共振コイル140は、送電器10の一次側共振コイル12から磁界共鳴によって送電される交流電力を電磁誘導で二次側コイル22に伝送する。二次側コイル22は、伝送された電力を整流回路61に出力する。
二次側共振コイル140は、基板170のZ軸正方向側の面(表面)に配設されている。例えば、基板170がFR(Flame Retardant type)4規格のプリント基板である場合には、基板170の表面にある銅箔等の金属層をパターニングすることによって、二次側共振コイル140を作製すればよい。また、図5では図示を省略するが、キャパシタ21B、二次側コイル22、平滑キャパシタ62も同様に、基板170の表面にある銅箔等の金属層をパターニングすることによって作製すればよい。二次側共振コイル140(二次側共振コイル21)、キャパシタ21B、二次側コイル22、平滑キャパシタ62の接続は、例えば、基板170の内層の配線層と基板170を厚さ方向(Z軸方向)に貫通するビアとを用いて接続すればよい。
タッチパネル150は、ディスプレイパネル160の上(Z軸正方向側)で、トップパネル120の下(Z軸負方向側)に配設されている。タッチパネル150は、電子機器100の利用者がトップパネル120に触れる位置(以下、操作入力の位置と称す)を検出する座標検出部の一例である。
タッチパネル150の下にあるディスプレイパネル160には、GUIによる様々なボタン等(以下、GUI操作部と称す)が表示される。このため、電子機器100の利用者は、通常、GUI操作部を操作するために、指先でトップパネル120に触れる。
タッチパネル150は、利用者のトップパネル120への操作入力の位置を検出できる座標検出部であればよく、例えば、静電容量型又は抵抗膜型の座標検出部であればよい。ここでは、タッチパネル150が静電容量型の座標検出部である形態について説明する。タッチパネル150とトップパネル120との間に隙間があっても、静電容量型のタッチパネル150は、トップパネル120への操作入力を検出できる。
また、ここでは、タッチパネル150の入力面側にトップパネル120が配設される形態について説明するが、トップパネル120はタッチパネル150と一体的であってもよい。この場合、タッチパネル150の表面が図4及び図5に示すトップパネル120の表面になり、操作面を構築する。また、図4及び図5に示すトップパネル120を省いた構成であってもよい。この場合も、タッチパネル150の表面が操作面を構築する。
また、タッチパネル150が静電容量型の場合は、トップパネル120の上にタッチパネル150が配設されていてもよい。この場合も、タッチパネル150の表面が操作面を構築する。また、タッチパネル150が静電容量型の場合は、図4及び図5に示すトップパネル120を省いた構成であってもよい。この場合も、タッチパネル150の表面が操作面を構築する。
ディスプレイパネル160は、例えば、液晶ディスプレイパネル又は有機EL(Electroluminescence)パネル等の画像を表示できる表示部であればよい。ディスプレイパネル160は、筐体110の凹部110Aの内部で、図示を省略するホルダ等によって基板170の上(Z軸正方向側)に設置される。
ディスプレイパネル160は、後述するドライバIC(Integrated Circuit)によって駆動制御が行われ、電子機器100の動作状況に応じて、GUI操作部、画像、文字、記号、図形等を表示する。ディスプレイパネル160とタッチパネル150は、筐体110の底板部111とは反対側の開口部(凹部110Aの開口部)に設けられている。
基板170は、筐体110の凹部110Aの内部に配設される。基板170の上には、ディスプレイパネル160及びタッチパネル150が配設される。ディスプレイパネル160及びタッチパネル150は、図示を省略するホルダ等によって基板170及び筐体110に固定されている。
基板170には、電子機器100の駆動に必要な種々の回路又は電子部品等が実装される。図5では図示を省略するが、基板170の表面には、二次側共振コイル140(二次側共振コイル21)、キャパシタ21B、二次側コイル22、平滑キャパシタ62が配設され、基板170の内層の配線層と基板170を厚さ方向(Z軸方向)に貫通するビアとを介して接続される。また、基板170には、受電器60の整流回路61及びDC−DCコンバータ210が実装される。また、バッテリ220は、基板170の周りの空間に配置される。
ここで、図6を用いて、二次側共振コイル140の出力側にある二次側コイル22(図1参照)の受電効率について説明する。二次側コイル22の受電効率とは、一次側コイル11に入力される電力が、二次側コイル22で受電される割合を表す。
図6は、電子機器100の二次側共振コイル140が一次側共振コイル12から受電する様子を示す図である。図6には、一次側共振コイル12と、筐体110と、二次側共振コイル140との位置関係を示す。また、図6(A)では、筐体110に開口部が形成されていないが、図6(B)、(C)では、筐体110に開口部111A1、111A2が形成されている。
図6(B)に示すように、開口部111A1は、筐体110のY軸方向における長さの中央部において、X軸方向にわたって底板部111に形成されている。このため、平面視において、二次側共振コイル140の一部は、開口部111A1と重複しており、開口部111A1から二次側共振コイル140の一部が覗いていることになる。なお、開口部111A1は、例えば、絶縁性がある非磁性材料製の部材で蓋がされることにより、閉じられる。
また、図6(C)に示すように、開口部111A2は、筐体110のY軸方向における長さの中央部で、かつX軸方向の幅の中央部において、底板部111に形成されている。開口部111A2は平面視で略正方形であり、X軸方向の幅は、筐体110のX軸方向の幅の約半分である。
このため、平面視において、二次側共振コイル140は、開口部111A2とは重複しておらず、開口部111A2から二次側共振コイル140は覗いていないことになる。なお、開口部111A2は、例えば、絶縁性がある非磁性材料製の部材で蓋がされることにより、閉じられる。
なお、図6には二次側コイル22を示さないが、例えば、二次側コイル22は、平面視で、二次側共振コイル140の外側にループ状に設けることができる。ここでは、シミュレーションのモデルに、このような
図6(A)〜(C)のような電子機器100のモデルを用いて、二次側共振コイル140の受電効率のシミュレーションを行った。図7は、シミュレーション結果を示す図である。
図7には、図6(A)〜(C)に示す、開口部なしの筐体110、開口部111A1を有する筐体110、開口部111A2を有する筐体110を用いた場合の二次側コイル22の受電効率に加えて、筐体110を用いない場合の二次側コイル22の受電効率を示す。
なお、一次側共振コイル12としては、A4WPのclass3の規格に適合するものを用いた。図6に示す一次側共振コイル12は、2つの電子機器100を横に並べて配置できるようなサイズである。
また、二次側共振コイル140は、Y軸方向の長さが133mmでX軸方向の長さが60mmのループコイルであり、巻数は4巻とした。また、シミュレーションにおいて二次側共振コイル140に接続する二次側コイル22として、Y軸方向の長さが133mmでX軸方向の長さが60mmで巻数が1巻のループコイルを接続した。
また、筐体110のサイズは、Y軸方向の長さを145mm、X軸方向の長さを72mm、Z軸方向の厚さを8mmに設定した。また、底板部111の厚さを1mmに設定した。また、底板部111と二次側共振コイル140とのZ軸方向の間隔を1mmに設定した。
また、二次側共振コイル140と一次側共振コイル12とのZ軸方向の距離(伝送距離)を12mmに設定してシミュレーションを行った。
まず、筐体110を用いない場合の二次側コイル22の受電効率は、0.96であった。ここでは、この値を基準として、金属製の筐体110の存在による効率の変化を探ることとする。
開口部なしの筐体110を用いた場合の二次側コイル22の受電効率は、0.01であった。この結果から、開口部が設けられていない金属製の筐体110を用いると、一次側共振コイル12から伝送される電力を二次側共振コイル140で殆ど受電できないことが分かった。なお、受電効率が0(ゼロ)にならなかったのは、一次側共振コイル12が筐体110よりも大きいため、筐体110の上側から回り込んだ磁界によって二次側共振コイル140が微弱な電力を受電したためと考えられる。
また、開口部111A1を有する筐体110を用いた場合の二次側コイル22の受電効率は、0.77であった。また、開口部111A2を有する筐体110を用いた場合の二次側コイル22の受電効率は、0.19であった。
これらの結果から、開口部111A1又は開口部111A2を金属製の筐体110に設けると、開口部なしの筐体110を用いた場合の二次側コイル22の受電効率(0.01)に比べて、受電効率が改善される(増大する)ことが分かった。
また、平面視で二次側共振コイル140と重複する開口部111A1を設けた筐体110を用いると、平面視で二次側共振コイル140と重複しない開口部111A2を設けた筐体110を用いる場合に比べて、受電効率が約4倍に増大することが分かった。
次に、開口部の形状を様々な形状に設定して行ったシミュレーションの結果について説明する。
図8は、電子機器100の二次側共振コイル140が一次側共振コイル12から受電する様子を示す図である。図8には、図6と同様に、一次側共振コイル12と、筐体110と、二次側共振コイル140との位置関係を示す。
また、一次側共振コイル12は、図6と同様に、A4WPのclass3の規格に適合するものを用いた。
図8(A)には、図6(C)と同様の筐体110を示す。開口部111A2の平面視でのサイズは、30mm(Y軸方向)×30mm(X軸方向)である。
図8(B)には、筐体110のY軸方向における長さの中央部において、X軸負方向側において、二次側共振コイル140の一部を露出するように底板部111に形成される開口部111A3を示す。平面視において、二次側共振コイル140の一部は、開口部111A3と重複しており、開口部111A3から二次側共振コイル140の一部が覗いていることになる。開口部111A3の平面視でのサイズは、30mm(Y軸方向)×30mm(X軸方向)である。
図8(C)には、筐体110のY軸正方向側でX軸方向に延在する端辺110B1、X軸負方向側でY軸方向に延在する端辺110B2、Y軸負方向側でX軸方向に延在する端辺110B3に沿って、コの字型に形成される開口部111A4を示す。開口部111A4は、端辺110B1、110B2、及び110B3の近傍において、コの字型に形成されている。
図8(C)では二次側共振コイル140を省略するが、開口部111A4は、矩形ループ状の二次側共振コイル140のうち、端辺110B1、110B2、及び110B3に沿ったコの字型の部分と重複するように形成されている。なお、筐体110のX軸正方向側でY軸方向に延在する端辺110B4の近傍には、開口部111A4は形成されていない。
図8(D)には、端辺110B2に沿って形成される開口部111A5、111A6を示す。開口部111A5は、端辺110B2の近傍において、直線状に形成されている。また、開口部111A6は、開口部111A5よりもX軸正方向側において、開口部111A5と平行になるように、端辺110B2の近傍において、直線状に形成されている。
開口部111A5、111A6は、二次側共振コイル140と重複しない位置に設けられている。二次側共振コイル140は、開口部111A5、111A6の間に位置しており、開口部111A5、111A6とは平面視で重複していない。
なお、開口部111A2、111A3、111A4、111A5、111A6は、絶縁性がある非磁性材料製の部材で蓋がされることにより、閉じられる。
図8(A)〜(D)のような電子機器100のモデルを用いて、二次側共振コイル140の受電効率のシミュレーションを行った。図9は、シミュレーション結果を示す図である。
図9には、図8(A)〜(D)に示す、開口部111A2、111A3、111A4、111A5、111A6を有する筐体110を用いた場合の二次側共振コイル140の受電効率を示す。なお、二次側共振コイル140のサイズ、巻数、二次側共振コイル140と一次側共振コイル12とのZ軸方向の距離(伝送距離)は、図7に示すシミュレーション結果を得たシミュレーションと同様である。
また、筐体110のサイズ、底板部111と二次側共振コイル140とのZ軸方向の間隔は、図7に示すシミュレーション結果を得たシミュレーションと同様である。
まず、開口部111A2を有する筐体110を用いた場合の二次側コイル22の受電効率は、0.19である。これは、図7の一番右に示す受電効率と同じ値である。
開口部111A3を有する筐体110を用いた場合の二次側コイル22の受電効率は、0.75であった。平面視で二次側共振コイル140と重複する開口部111A3を設けた筐体110を用いると、平面視で二次側共振コイル140と重複しない開口部111A2を設けた筐体110を用いる場合に比べて、受電効率が約4倍に増大することが確認できた。
開口部111A4を有する筐体110を用いた場合の二次側コイル22の受電効率は、0.77であった。平面視で二次側共振コイル140に沿ってコの字型に重複する開口部111A4を設けた筐体110を用いると、平面視で二次側共振コイル140と重複しない開口部111A2を設けた筐体110を用いる場合に比べて、受電効率が約4倍に増大することが確認できた。なお、開口部111A3を有する筐体110を用いた場合と略同様の値であり、形状の違いによる影響が比較的少ないことが分かった。
開口部111A5、111A6を有する筐体110を用いた場合の二次側コイル22の受電効率は、0.12であった。二次側共振コイル140は、平面視で開口部111A5、111A6とは重複していないため、開口部111A5、111A6が二次側共振コイル140の近傍で開口部111A5、111A6に沿って配置されていても、二次側共振コイル140と重複していない場合には、受電効率が改善されないことが分かった。
以上のシミュレーション結果より、実施の形態の電子機器100の筐体110は、二次側共振コイル140と平面視で重複する開口部を有するものである。ここで、開口部は、一部が二次側共振コイル140と重複していればよいが、二次側共振コイル140の幅が開口部に含まれるような形態であることがより好ましい。
図10は、電子機器100の筐体110と二次側共振コイル140を示す図である。図11は、図10におけるA−A矢視断面を示す図である。
図10には、図6、8と同様に、一次側共振コイル12と、筐体110と、二次側共振コイル140との位置関係を示す。また、一次側共振コイル12は、図6と同様に、A4WPのclass3の規格に適合するものを用いた。また、二次側共振コイル140の巻数は、一例として4巻であるが、図10では二次側共振コイル140を矩形環状のループとして示す。図11の断面図では、二次側共振コイル140を4巻のコイルとして示す。また、筐体110は、底板部111及び側壁112の厚さが非常に薄くされている形態のものを示す。厚さは、一例として、1mmである。
筐体110の端辺110B2の近傍には、二次側共振コイル140の一部を露出するように、X軸方向に延在して底板部111に形成される4つの開口部111A7が設けられている。
4つの開口部111A7は、Y軸方向において、均等に配置されている。平面視において、二次側共振コイル140の一部は、4つの開口部111A7と重複しており、開口部111A7から二次側共振コイル140の一部が覗いていることになる。開口部111A7の平面視でのサイズは、2mm(Y軸方向)×13.5mm(X軸方向)である。このため、4つの開口部111A7の開口面積(合計値)は、108mm2である。4つの開口部111A7の開口面積(合計値)は、二次側共振コイル140の平面視での面積よりも小さく、例えば、50%以下であることが好ましい。
なお、筐体110のサイズは、Y軸方向の長さが145mm、X軸方向の長さが72mm、Z軸方向の厚さが8mmである。また、底板部111の厚さは1mmであり、底板部111と二次側共振コイル140とのZ軸方向の間隔は1mmである。
図12は、図10及び図11に示す、4つの開口部111A7を有する筐体110を用いた場合の二次側コイル22の受電効率を示す図である。なお、二次側共振コイル140のサイズ、巻数、二次側共振コイル140と一次側共振コイル12とのZ軸方向の距離(伝送距離)は、図7及び図9に示すシミュレーション結果を得たシミュレーションと同様である。
開口部111A7を有する筐体110を用いた場合の二次側コイル22の受電効率は、0.69であった。
また、図12には、比較用に、筐体110を用いない場合と、開口部なしの筐体110を用いた場合の二次側コイル22の受電効率を示す。筐体110を用いない場合と、開口部なしの筐体110を用いた場合の二次側コイル22の受電効率は、それぞれ、0.89、0.01であった。
従って、平面視で二次側共振コイル140と重複する開口部111A7を設けた筐体110を用いると、受電効率が大幅に増大することが確認できた。
なお、筐体110を用いない場合の二次側コイル22の受電効率(0.89)が図6に示す同様の場合の受電効率(0.96)と異なるのは、シミュレーション条件の違いによるものである。
図13は、電子機器100の筐体110と二次側共振コイル140を示す図である。図14は、図13におけるB−B矢視断面を示す図である。
図13には、図10と同様に、一次側共振コイル12と、筐体110と、二次側共振コイル140との位置関係を示す。また、一次側共振コイル12は、図6と同様に、A4WPのclass3の規格に適合するものを用いた。
筐体110の端辺110B2の近傍には、二次側共振コイル140の一部を露出するように、X軸方向に延在して底板部111に形成される4つの開口部111A8が設けられている。
4つの開口部111A8は、Y軸方向において、均等に配置されている。平面視において、二次側共振コイル140の一部は、4つの開口部111A8と重複しており、開口部111A8から二次側共振コイル140の一部が覗いていることになる。開口部111A8の平面視でのサイズは、7.7mm(Y軸方向)×3.5mm(X軸方向)である。このため、4つの開口部111A8の開口面積(合計値)は、約108mm2である。4つの開口部111A7の開口面積(合計値)は、二次側共振コイル140の平面視での面積よりも小さく、例えば、50%以下であることが好ましい。
なお、筐体110のサイズは、Y軸方向の長さが145mm、X軸方向の長さが72mm、Z軸方向の厚さが8mmである。また、底板部111の厚さは1mmであり、底板部111と二次側共振コイル140とのZ軸方向の間隔は1mmである。
図15は、図13及び図14に示す4つの開口部111A8を有する筐体110を用いた場合の二次側コイル22の受電効率を示す図である。なお、二次側共振コイル140のサイズ、巻数、二次側共振コイル140と一次側共振コイル12とのZ軸方向の距離(伝送距離)は、図7及び図9に示すシミュレーション結果を得たシミュレーションと同様である。
開口部111A8を有する筐体110を用いた場合の二次側コイル22の受電効率は、0.67であった。
また、図15には、比較用に、筐体110を用いない場合と、開口部なしの筐体110を用いた場合の二次側コイル22の受電効率を示す。筐体110を用いない場合と、開口部なしの筐体110を用いた場合の二次側コイル22の受電効率(0.89、0.01)を示す。
従って、平面視で二次側共振コイル140と重複する開口部111A8を設けた筐体110を用いると、受電効率が大幅に増大することが確認できた。
図16は、電子機器100の筐体110Cと二次側共振コイル140を示す図である。図16には、図10と同様に、一次側共振コイル12と、筐体110Cと、二次側共振コイル140との位置関係を示す。また、一次側共振コイル12は、図6と同様に、A4WPのclass3の規格に適合するものを用いた。
筐体110Cは、筐体部110C1と110C2とに2分割されている。これは、図6に示す筐体110をY軸方向において2等分した構成である。筐体部110C1及び110C2は、それぞれ、底板部111C1及び111C2を有する。また、筐体部110C1及び110C2は、それぞれ、側壁部112C1及び111C2を有する。
筐体部110C1と110C2は、隙間110C3を隔てて配置されている。隙間110C3のY軸方向の長さは2mmである。筐体部110C1と110C2は分離されており、隙間110C3を挟んだ状態で配置されるため、隙間110Cは、筐体部110C1と110C2のX軸方向にわたって延在している。
このため、隙間110Cからは、二次側共振コイル140の一部を露出している。また、筐体部110C1と110C2が隙間110C3を隔てて配置されている状態で、底板部111C1及び111C2は、図10に示す底板部111を2分割した構成であり、側壁部112C1及び111C2は、図10に示す側壁部112を2分割した構成である。
図17には、図16に示す隙間110C3で分断された筐体110Cを用いた場合の二次側共振コイル140の受電効率を示す。なお、二次側共振コイル140のサイズ、巻数、二次側共振コイル140と一次側共振コイル12とのZ軸方向の距離(伝送距離)は、図7及び図9に示すシミュレーション結果を得たシミュレーションと同様である。
隙間110C3で分断された筐体110Cを用いた場合の二次側共振コイル140の受電効率は、0.76であった。
また、図17には、比較用に、筐体110Cを用いない場合と、開口部なしの筐体110Cを用いた場合の二次側コイル22の受電効率(0.89、0.01)を示す。
従って、平面視で二次側共振コイル140と重複する隙間110C3で分断された筐体110Cを用いると、受電効率が大幅に増大することが確認できた。
以上、実施の形態によれば、筐体110に二次側共振コイル140の一部を露出させる開口部111A1、111A3、111A4、111A7、及び111A8を用いることにより、金属製の筐体110を用いる電子機器100において、二次側共振コイル140の受電効率を改善することができる。
また、二次側共振コイル140の一部を露出させる筐体110Cの隙間110C3を用いることにより、金属製の筐体110Cを用いる電子機器100において、二次側共振コイル140の受電効率を改善することができる。
従って、受電効率を改善した電子機器100を提供することができる。
なお、以上では、二次側共振コイル140が基板170の表面に配置される形態について説明したが、二次側共振コイル140は基板170のいずれかの内層又は底面に配置されていてもよい。
また、二次側共振コイル140は、基板170に配置されるのではなく、筐体110の内部で絶縁された状態で配置されてもよい。
以上、本発明の例示的な実施の形態の電子機器について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
以上の実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
平面視で矩形状の壁部と、前記壁部に配設される開口部とを有する導体製の筐体であって、内部に電子部品が配置される筐体と、
平面視で、前記開口部と重複する部分を有するように、前記筐体の内部に配設され、一次側共振コイルから磁界共鳴又は電界共鳴によって電力を受電する二次側共振コイルと
を含む、電子機器。
(付記2)
前記二次側共振コイルは、平面視で前記筐体の外周に沿って配置される矩形環状のコイルであり、
前記開口部は、前記二次側共振コイルと平面視で重複するように前記壁部に配設される、請求項1記載の電子機器。
(付記3)
前記開口部の開口幅は、前記二次側共振コイルの幅よりも広く、
前記二次側共振コイルは、前記幅が平面視で前記開口幅に収まるように配設される、請求項1又は2記載の電子機器。
(付記4)
導体製の第1筐体部及び第2筐体部を有する筐体であって、所定間隔の隙間を隔てて前記第1筐体部及び前記第2筐体部が配置された状態で、平面視で矩形状をなす筐体であって、内部に電子部品が配置される筐体と、
平面視で、前記隙間と重複する部分を有するように前記筐体の内部に配設され、一次側共振コイルから磁界共鳴又は電界共鳴によって電力を受電する二次側共振コイルと
を含む、電子機器。
(付記5)
前記二次側共振コイルは、平面視で前記筐体の外周に沿って配置される矩形環状のコイルであり、
前記第1筐体部及び前記第2筐体部は、前記隙間が前記二次側共振コイルと平面視で重複するように配置される、請求項4記載の電子機器。
(付記6)
前記二次側共振コイルは、前記二次側共振コイルの幅が平面視で前記隙間に収まるように配設される、請求項4又は5記載の電子機器。
(付記7)
前記筐体の前記開口部が形成される部分とは反対側に第2開口部を有し、
前記第2開口部の内部に配設されるディスプレイパネルをさらに含む、付記1乃至3のいずれか一項記載の電子機器。
(付記8)
前記筐体の前記隙間が配置される部分とは反対側に第2開口部を有し、
前記第2開口部の内部に配設されるディスプレイパネルをさらに含む、付記4乃至6のいずれか一項記載の電子機器。