本発明を実施するための形態について以下に図面を参照して詳細に説明する。
なお、実施の形態は例示であり、開示の装置及び方法等は、以下の実施の形態の構成には限定されない。また、図に付した参照符号は理解を助けるための一例として便宜上付記したものであり、なんらの限定を意図するものではない。更に、図面中の矢印の向きは、一例を示すものであり、ブロック間の信号の向きを限定するものではない。
(第1の実施形態)
図1および図2を参照して第1の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るポイントツーポイント無線装置の構成を例示するブロック図である。
第1の実施形態に係るポイントツーポイント無線装置10は、マルチキャリア伝送する各サブキャリアに対応するサブキャリア生成手段11、レベル増減演算手段12、マルチキャリア合成手段13および無線送信手段14を含む構成になっている。
サブキャリア生成手段11は、マルチキャリア伝送するサブキャリア数に応じて、所定のシングルキャリア伝送の無線送信スペクトラム規定を満足して配置できる中心周波数と帯域幅を有する変調中間周波数帯の変調波に変換したサブキャリアを生成する。
レベル増減演算手段12は、サブキャリア生成手段11のそれぞれが出力するサブキャリアの信号レベルが、予め保持している所定のシングルキャリア伝送の無線送信スペクトラム規定を満足するように、サブキャリア生成手段11に変調波の信号レベルの増減を指示する。
マルチキャリア合成手段13は、サブキャリアのそれぞれの信号レベルが無線送信スペクトラム規定を満足したときに、マルチキャリアに合成して無線中間周波数帯に周波数変換して出力する。
無線送信手段14は、マルチキャリア合成手段13が出力する無線中間周波数帯のマルチキャリアを無線周波数帯の送信信号に変換して出力する。
なお、無線中間周波数帯は、IF(Intermediate Frequency)帯とも称し、無線周波数帯はRF(Radio Frequency)帯とも称する。
上記のように構成することで、各サブキャリア生成手段11が出力するサブキャリアがマルチキャリアに合成されたとき、その信号スペクトラムは、所定のシングルキャリア伝送の無線送信スペクトラム規定を満足することができる。従って、本実施形態のポイントツーポイント無線装置10は、シングルキャリア伝送時の無線送信スペクトラム規定を満足してマルチキャリア伝送することができるポイントツーポイント無線装置として機能する。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る通信制御方法の動作を例示するフロー図である。第1の実施形態に係る通信制御方法においては、ポイントツーポイント無線装置が次のように動作する。
変調中間周波数帯の変調波に変換したサブキャリアを生成する。このとき、サブキャリアには、マルチキャリア伝送するサブキャリア数に応じて、所定のシングルキャリア伝送の無線送信スペクトラム規定を満足して配置できる中心周波数と帯域幅が設定される(S101)。
マルチキャリア伝送する各サブキャリアの信号レベルが、予め保持している所定のシングルキャリア伝送の無線送信スペクトラム規定を満足するように、変調波の信号レベルの増減制御を行う(S102)。
サブキャリアのそれぞれの信号レベルが無線送信スペクトラム規定を満足したときに、マルチキャリアに合成して無線中間周波数帯に周波数変換して出力する(S103)。
無線中間周波数帯のマルチキャリアを無線周波数帯の送信信号に変換して出力する(S104)。
上記のように動作することで、サブキャリアがマルチキャリアに合成されたとき、その信号スペクトラムは、所定のシングルキャリア伝送の無線送信スペクトラム規定を満足することができる。従って、本実施形態の通信制御方法は、シングルキャリア伝送時の無線送信スペクトラム規定を満足してマルチキャリア伝送することができる通信制御方法を提供できる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態について、図3乃至図9を参照して詳細に説明する。
[構成の説明]
図3は、本発明の第2の実施形態に係るポイントツーポイント無線装置の構成を例示するブロック図である。
第2の実施形態に係るポイントツーポイント無線装置20は、マイクロ波またはミリ波を用いて、対向する無線装置との間で無線リンクを構築するマイクロ波中継装置が例示される。また、ポイントツーポイント無線装置20は、対向する無線装置との間で双方向同時通信(全二重通信)を行うために、FDD方式を用いるものとする。FDD方式では、無線周波数の送受間の回り込みによる干渉を抑制するため、無線送信周波数と無線受信周波数間で一定の周波数間隔を保持して運用される。
このポイントツーポイント無線装置20は、インタフェース部21、マルチキャリア制御部22および無線送受信機23を含んで構成される。
インタフェース部21は、図示しないユーザ側装置から入力するユーザ側装置規格のデータ形式の信号を無線装置で扱うベースバンド信号(ユニポーラ0/1データ)に変換する。また逆に、無線装置で扱うベースバンド信号をユーザ側装置に出力するユーザ側装置規格のデータ形式の信号に変換する。例えば、ユーザ側装置とポイントツーポイント無線装置20の間をLAN(Local Area Network)で接続する場合、ユーザ側装置規格のデータ形式の信号とはLAN規格の信号となる。
マルチキャリア制御部22は、送信時は、マルチキャリア伝送する各サブキャリアに対応するユーザ信号を個別に変調して変調中間周波数帯の変調信号に周波数変換し、信号増減処理を行ってサブキャリアを生成する。マルチキャリア制御部22は、生成した複数のサブキャリアをマルチキャリア伝送形態の送信信号に合成する。そして、マルチキャリア伝送形態に合成した送信信号を無線中間周波数帯(IF帯)の送信信号(Txif)に周波数変換して無線送受信機23に出力する。
また、マルチキャリア制御部22は、受信時は、無線送受信機23から入力したマルチキャリア伝送形態のIF帯の受信信号(Rxif)を復調中間周波数帯の受信信号に周波数変換する。そして、その受信信号を各サブキャリアに分離して、分離したサブキャリアを個別に復調してベースバンド帯の受信信号を出力する。
マルチキャリア制御部22は、送信時に、各サブキャリアを個別に生成する際に、合成後のマルチキャリア伝送形態の送信信号がETSI規格で規定されたスペクトラムマスクに収まるように波形整形を行う。
無線送受信機23は、送信時は、マルチキャリア制御部22が出力するIF帯の送信信号(Txif)を、ライセンス指定されている無線周波数帯(RF帯)の無線チャンネルで送信する送信信号(Txrf)に変換する。そして、当該送信信号(Txrf)を、アンテナを介して対向無線装置に無線送信する。
一方、無線送受信機23は、受信時は、ペアでライセンス取得した受信側の無線チャンネルでRF帯の受信信号(Rxrf)を受信する。そして、無線空間変動や降雨等環境変動で生じる受信レベル変動を補正してからIF帯の受信信号(Rxif)に変換して、マルチキャリア制御部22に出力する。
上述したように、本実施形態のポイントツーポイント無線装置20は、マルチキャリア制御部22において、ベースバンド帯と変調/復調中間周波数帯との間での周波数変換と、変調/復調中間周波数帯とIF帯との間での周波数変換が行われる。そして、無線送受信機23において、IF帯とRF帯との間の周波数変換が行われる。ここで、ユーザの送信信号に対応するサブキャリアは、RF帯で送信する無線送信スペクトラムの許容範囲を規定するスペクトラムマスクに収まるように、変調中間周波数帯において波形整形されて合成される。
第1の実施形態のサブキャリア生成手段11、レベル増減演算手段12およびマルチキャリア合成手段13は、第2の実施形態のマルチキャリア制御部22に相当する。特に、後述する図4において、サブキャリア部221がサブキャリア生成手段11に相当し、共通制御部223内の基準値記憶部2231とレベル増減演算部2232がレベル増減演算手段12に相当する。そして、共通制御部223内の合成器2233とIF帯周波数変換部2234がマルチキャリア合成手段13に相当する。そして、第1の実施形態の無線送信手段14は、第2の実施形態の無線送受信機23に相当する。
図3に示したポイントツーポイント無線装置20は、ユーザAとユーザBの二つのユーザ信号をマルチキャリア伝送する場合を例示する。ここで、ユーザAの送信信号を送信信号aT、ユーザBの送信信号を送信信号bTとする。また、ユーザAの受信信号を受信信号aR、ユーザBの受信信号を受信信号bRとする。
図4と図5は、それぞれがマルチキャリア制御部22の構成を例示するブロック図で、図4はその送信側の構成を示し、図5は受信側の構成を示す。
マルチキャリア制御部22は、マルチキャリア伝送する各サブキャリアに対する処理を行うサブキャリア部と、それぞれのサブキャリア部を共通に制御する共通制御部223で構成される。
ここでは、ユーザAとユーザBの2つのユーザ信号をマルチキャリア伝送するので、ユーザAの信号を処理するサブキャリア部a221とユーザBの信号を処理するサブキャリア部b222を含む構成となっている。
つまり、図4では、サブキャリア部a221がユーザAの送信信号aTに対するサブキャリアを処理し、サブキャリア部b222がユーザBの送信信号bTに対するサブキャリアを処理する構成を示す。また、図5では、サブキャリア部a221がユーザAの受信信号aRに対するサブキャリアを処理し、サブキャリア部b222がユーザBの受信信号bRに対するサブキャリアを処理する構成を示す。
図4では、共通制御部223が、サブキャリア部a221とサブキャリア部b222がそれぞれ個別に変調したサブキャリアの信号レベル調整を行う構成と、信号レベル調整された各サブキャリアを合成して無線送受信機23に出力する構成を示す。合成されたマルチキャリア伝送形態の送信信号はIF帯の周波数に変換されて無線送受信機23に出力される。
また、図5では、共通制御部223が、IF帯の信号を無線送受信機23から入力し、復調中間周波数帯の受信信号としてサブキャリア部a221とサブキャリア部b222に分配する構成を示す。
図4と図5を参照してマルチキャリア制御部22の構成を詳細に説明する。
図4を参照すると、サブキャリア部a221はユーザAの送信信号aTを入力し、サブキャリア部b222は、ユーザBの送信信号bTを入力して、それぞれが個別に信号の変調、波形整形および信号レベル調整を行ってサブキャリアを生成する。
サブキャリア部a221を参照して、その構成を説明する。
サブキャリア部a221は、変調部2211、変調波周波数変換部2212、変調波増幅器2213および検波器2214を含んで構成される。
変調部2211は、図3に示した前段の装置であるインタフェース部21が出力するユーザAの送信信号aT(ベースバンド信号)を入力して、所定の変調方式で変調してアナログ信号として変調信号を出力する。
変調部2211は、ユーザの要望に応じた変調方式が適宜選択設定できるように構成されている。例えば、4PSK(4位相偏移変調、Quadrature Phase Shift Keying)方式やQAM(直交振幅変調、Quadrature Amplitude Modulation)方式が選択できる。QAM方式の場合、変調多値数に応じて16QAM/32QAM/64QAM/128QAM/256QAM/1024QAM/2048QAMが選択できる。更に、受信側での受信状態に応じてその情報が送信側にフィードバックされ、変調方式を適応的に変化させる適応変調が可能な構成になっていても良い。
変調波周波数変換部2212は、周波数変換回路とバンドパスフィルタで構成され、変調信号を所定の中心周波数と帯域幅を有する変調中間周波数帯の変調波に波形整形する。図4では、中心周波数としてf1に設定される。
変調波増幅器2213は、変調波周波数変換部2212が出力する波形整形された変調波の信号レベルを増減制御する。ここでは、所定の無線送信スペクトラム規定を満足するサブキャリアとなるように、後述するように、共通制御部223からの指示値に基づいて変調波増幅器2213の出力レベルの増減制御が行われる。
検波器2214は、変調波増幅器2213が出力した変調波の信号レベルを測定して共通制御部223に出力する。
以上がサブキャリア部a221の構成であるが、サブキャリア部b222も同様の構成となっている。つまり、サブキャリア部b222は、変調部2221、変調波周波数変換部2222、変調波増幅器2223および検波器2224を含む。
サブキャリア部b222は、ユーザBの送信信号bTを入力して、ユーザBに対するサブキャリアを生成する。そのため、変調部2221は、ユーザBの要望に応じた変調方式が適宜選択設定される。また、変調波周波数変換部2222では、中心周波数がf2で所定の帯域幅を有する変調波として波形整形される。
変調波増幅器2223は、変調波周波数変換部2222が出力する波形整形された変調波の信号レベルを、共通制御部223からの指示値に基づいて増減制御する。
検波器2224は、変調波増幅器2223が出力した変調波の信号レベルを測定して共通制御部223に出力する。
サブキャリア部a221の変調波周波数変換部2212とサブキャリア部b222の変調波周波数変換部2222で実行される波形整形は、それぞれを合成した変調波が所定の無線送信スペクトラム規定を満足するように中心周波数と帯域幅が設定される。このことについては後述する。
なお、変調波増幅器2213、2223が出力する変調波を、以降はサブキャリアと称して説明する。
次に、共通制御部223の構成を説明する。
共通制御部223は、基準値記憶部2231、レベル増減演算部2232、合成器2233およびIF帯周波数変換部2234を含む構成になっている。
基準値記憶部2231およびレベル増減演算部2232は、各サブキャリア部の変調波増幅器の出力レベルの増減制御のための指示値を出力する構成である。つまり、サブキャリア部a221の変調波増幅器2213およびサブキャリア部b222の変調波増幅器2223のそれぞれに対して、対応するサブキャリアの信号レベルの増減制御のための指示値を出力する。
基準値記憶部2231は、所定の無線送信スペクトラム規定に関する情報やユーザとの運用契約条件に基づく変調方式に関する情報を予め記憶する。また、基準値記憶部2231は、各サブキャリア部の検波器が測定した、変調波増幅器で増減制御されたサブキャリアの信号レベルを入力する。つまり、サブキャリア部a221の検波器2214およびサブキャリア部b222の検波器2224がそれぞれ出力する、変調波増幅器2213と変調波増幅器2223の出力であるサブキャリアの信号レベルを入力する。
レベル増減演算部2232は、基準値記憶部2231が予め記憶する情報と基準値記憶部2231に入力した各サブキャリアの信号レベルとの差分検証により信号増減レベルを計算し、必要な変調波増幅器に対して出力レベルの増減指示を出す。つまり、マルチキャリアとして合成した場合に所定の無線送信スペクトラム規定を満足するように、変調波増幅器2213または変調波増幅器2223に対して所定のサブキャリアの信号レベルの増減制御の指示値が出力される。
この、各変調波増幅器、各検波器、基準値記憶部2231、レベル増減演算部2232によるサブキャリアの信号レベルの増減制御は、それぞれのサブキャリアの信号レベルがあらかじめ規定されている許容値の範囲になる適正な値になるまで繰り返される。
それぞれのサブキャリアの信号レベルがあらかじめ規定されている許容値の範囲の適正な値に達したことをレベル増減演算部2232が判別すると、各変調波増幅器が出力するサブキャリアは、合成器2233でマルチキャリアとして合成される。また、このとき、レベル増減演算部2232は、基準値記憶部2231に、適正な値に達したそれぞれのサブキャリアの信号レベルを記憶する。
合成器2234は信号レベルが所定の許容値の範囲になった各サブキャリアをマルチキャリアに合成し、IF帯周波数変換部2234は当該マルチキャリアをIF帯の周波数に変換して出力する。
合成器2234は、サブキャリア部a221とサブキャリア部b222から出力される各サブキャリアを合成し、バンドパスフィルタ(不図示)により合成後の信号帯域内のデータとして有効成分のみを抽出し不要波成分を除去する波形整形を行う。
IF帯周波数変換部2234は、合成したマルチキャリアをf3信号によりIF帯の送信信号(Txif)に周波数変換し、バンドパスフィルタ(不図示)により、送信信号(Txif)の信号帯域内の有効成分のみを抽出し不要波成分を除去する。
IF帯周波数変換部2234から出力された送信信号(Txif)は、図3に示す無線送受信機23に入力する。無線送受信機23では、入力した信号をライセンス指定されているRF帯の送信信号(Txrf)に変換し、アンテナを介して対向無線装置に無線送信する。
次に、図5を参照してマルチキャリア制御部22の受信側の構成を説明する。
マルチキャリア制御部22は、共通制御部223で、IF帯の受信信号(Rxif)を復調中間周波数帯の受信信号に変換し、マルチキャリア伝送された各サブキャリアを分波して、対応するサブキャリア部a221とサブキャリア部b222に分配する。
サブキャリア部a221とサブキャリア部b222では対応するサブキャリアを復調して、ベースバンド帯の受信信号aRと受信信号bRを図3に示すインタフェース部21に出力する。
図5を参照すると、マルチキャリア制御部22の共通制御部223は、IF帯周波数変換部2236と分波器2235を含む。
IF帯周波数変換部2236は、図3に示す無線送受信機23から受信したマルチキャリア伝送形態のIF帯の受信信号(Rxif)を入力する。このとき、図示しないバンドパスフィルタにより受信信号(Rxif)の有効成分が抽出され、不要波成分は除去される。
IF帯周波数変換部2236は、IF帯の受信信号(Rxif)をf13信号により復調中間周波数帯の受信信号に変換し、周波数変換により生じた不要波をバンドパスフィルタ(不図示)で除去する。
分波器2235は、IF帯周波数変換部2236で生成された復調中間周波数帯の受信信号を、マルチキャリア伝送された各サブキャリアに分波し、対応するサブキャリア部に分配する。
サブキャリア部a221は、BPF(バンドパスフィルタ)2218、復調波増幅器2217、復調波周波数変換部2216および復調部2215を含む。
サブキャリア部a221に入力した復調用のサブキャリア(復調波)は、BPF2218により対応する復調波の信号が抽出され、復調波増幅器2217で復調波の信号レベル増幅が行われる。
復調波周波数変換部2216は、信号レベル増幅された復調中間周波数帯の復調波を、f11信号によりベースバンド帯の復調波に変換する。復調波周波数変換部2216で周波数変換された復調波は、周波数変換で生じた不要波が図示しないバンドパスフィルタにより削除されてから復調部2215に入力する。
復調部2215は、対向無線装置の対応するサブキャリアの変調部に設定された変調方式と同じ方式の復調方式により、復調波を復調してベースバンド帯のユーザAの受信信号aRを出力する。
サブキャリア部b222も上記と同様の構成である、BPF2228、復調波増幅器2227、復調波周波数変換部2226および復調部2225を含む。復調波周波数変換部2226ではf12信号が用いられる点と、復調部2225の復調方式が、対向無線装置の対応するサブキャリアの変調部に設定された変調方式と同じ方式の復調方式であり、ユーザBの受信信号bRを出力する点が異なる程度である。
また、サブキャリア部a221とサブキャリア部b222の受信側の構成では、サブキャリアの信号レベルを増減制御する機能は保有していない代わりに復調器の信号レベルを一定にするための自動レベル制御機能を有している。
以上が、本実施形態に係るポイントツーポイント無線装置の構成である。
[シングルキャリア伝送とマルチキャリア伝送]
次に、シングルキャリア伝送とマルチキャリア伝送の相違について触れておく。
図6は、シングルキャリア伝送とマルチキャリア伝送の相違を説明するための無線送信スペクトラムを例示する図である。
図6の(a)は、シングルキャリア伝送形態での送信信号(Txif)の無線送信スペクトラムを例示し、(b)はマルチキャリア伝送形態での送信信号(Txif)の無線送信スペクトラムを例示する。
図6の(a)に示すように、シングルキャリア伝送形態での送信信号(Txif)には、ユーザAの送信信号aTとユーザBの送信信号bTが多重された多重信号(aT+bT)が含まれる。シングルキャリア伝送形態のポイントツーポイント無線装置は、送信信号aTと送信信号bTをインタフェース部で多重し、その多重信号を変調したシングルキャリアを送信する構成になっている。もちろん、受信時にはシングルキャリアを復調し、多重されている二つの信号を分離してそれぞれのユーザに分配する構成になっている。
そのため、複数の信号が多重化されたシングルキャリア伝送形態では、使用するチャンネルに対するユーザ毎の異なる要望をかなえることができない。例えば、あるユーザは使用する無線回線の伝送容量が大きいことを望む場合がある。また、逆に、あるユーザは、伝送容量よりも伝送品質の確保を望む場合がある。
一方、マルチキャリア伝送形態では、図6の(b)に示すように、使用無線周波数帯をユーザ毎に分割し、この無線帯域を分割した周波数帯域毎にユーザのデータをサブキャリアとして無線伝送する。そのため、マルチキャリア伝送形態では、マルチキャリアを構成するサブキャリア毎に、異なる個別要求に対応する無線回線を構築することができる。
本実施形態のポイントツーポイント無線装置は、無線回線の伝送容量が大きいことを優先する条件(パラメータ1)と、フェージングや周波数干渉等による伝送品質劣化に対する耐力を優先する条件(パラメータ2)を個別に実現する構成を備える。
また、パラメータが混在する場合に、どちらのパラメータを優先させたサブキャリア伝送を構築するのかという設定を可能にする。パラメータ1>2を優先条件とするユーザに対しては、伝送容量の確保が可能な無線伝送を実現する設定のサブキャリア伝送を構築する。逆に、パラメータ1<2を優先条件とするユーザに対しては、伝送容量より伝送品質の確保が可能な無線伝送を実現する設定のサブキャリア伝送を構築する。
[サブキャリアの中心周波数、帯域幅および変調方式の設定]
以降の説明において、キャリアの無線送信スペクトラムの許容範囲を規定するスペクトラムマスクを、無線送信スペクトラム規定またはスペクトラムマスクと称して説明する。
ETSI EN302 217−2−2規格では、図6(a)に示したシングルキャリア伝送形態の無線送信スペクトラムと図6(b)に示したマルチキャリア伝送形態の無線送信スペクトラムは同じスペクトラムマスクが用いられる。言い換えれば、マルチキャリア伝送としてシングルキャリアを合成した信号はETSI EN302 217−2−2規格のシングルキャリア伝送の無線送信スペクトラム規定を満足する必要がある。
図6(b)に示した無線送信スペクトラムは、図4のサブキャリア部a221とサブキャリア部b222がそれぞれ波形整形して出力した二つのサブキャリアを合成したマルチキャリア伝送時の送信信号(Txif)を示している。
マルチキャリア伝送では、規定されたスペクトルマスクの中に、合成した互いに隣接するサブキャリアが重ならないようにサブキャリア間に干渉ガード周波数帯を設けてそれぞれのサブキャリアの中心周波数と帯域幅を設定する必要がある。
この中心周波数と帯域幅は、図4に示した変調波周波数変換部2212と変調波周波数変換部2222の周波数変換回路とバンドパスフィルタにより設定される。
つまり、図6(b)に示した信号aTのサブキャリアは変調波周波数変換部2212の周波数変換回路に入力するf1信号で中心周波数が設定され、バンドパスフィルタで帯域幅faが設定される。また、図6(b)に示した信号bTのサブキャリアは変調波周波数変換部2222の周波数変換回路に入力するf2信号で中心周波数が設定され、バンドパスフィルタで帯域幅fbが設定される。
そして、変調波増幅器2213と変調波増幅器2223でそれぞれの信号レベル調整を行う増減制御が完了したサブキャリアがマルチキャリアに合成され、IF帯周波数変換部2234で送信信号(Txif)に変換される。
また、変調部2211と変調部2221は、ユーザの要望に応じた変調方式が適宜選択設定できるように構成されており、ユーザが要望する伝送環境に関する優先条件(パラメータ1/パラメータ2)に応じた変調方式が選択設定される。
パラメータ1の伝送容量の確保を優先するユーザに対しては、変調多値数が大きくて伝送効率の高い、例えば、2048QAMを変調方式として選択する。つまり、伝送容量の確保を優先する設定の運用では、降雨時のデータエラーは許容する代わりに、晴れの日には最大の伝送容量を確保できる変調方式を変調部に設定する。
一方、パラメータ2の伝送品質の確保を優先するユーザに対しては、伝搬条件の悪化時においても伝送品質劣化耐力のある、例えば、4PSKを変調方式として選択して変調部に設定する。
なお、対向無線装置の受信部でも、それぞれユーザが個別に希望する無線伝送を実現するため、ユーザが要望する伝送環境に関する優先条件のパラメータ1/パラメータ2に応じて予め復調方式と帯域幅を設定しておく。
以上の中心周波数、帯域幅および変調方式の設定は、対向する無線装置とともに運用開始前に事前設定する。
[パラメータに応じたサブキャリアの中心周波数と帯域幅の設定]
次に、前述したパラメータ1/パラメータ2に応じたサブキャリアの中心周波数と帯域幅の設定について説明する。
マルチキャリア伝送では、規定されたスペクトルマスクの中に、互いに隣接するサブキャリアが重ならないようにサブキャリア間に干渉ガード周波数帯を設けてそれぞれのサブキャリアの中心周波数と帯域幅を設定することは前述のとおりである。これは、干渉ガード周波数帯を設けることでサブキャリア間の隣接干渉を防止し、マルチキャリア伝送における伝送品質を確保するためである。この伝送品質は、C/N(搬送波対干渉雑音比、Carrier-Noise ratio)で評価される。
ユーザAとユーザBが使用するそれぞれのサブキャリアを、ライセンス取得した無線周波数チャンネルの同一の周波数帯内に割り当てる場合、通常、干渉ガード周波数帯は、当該周波数帯を均等に分割した周波数の中心に設ければ良い。
しかし、ユーザが求めるパラメータ1/パラメータ2の伝送環境に関する優先条件が異なる場合には、ユーザ間で適用する変調方式が異なる。前述のとおり、パラメータ1を優先条件として伝送容量を確保したいユーザに対しては、例えば、伝送効率の高い2048QAMを適用する。そして、パラメータ2を優先条件として伝送品質の確保を優先したいユーザに対しては、例えば、伝送品質劣化耐力のある4PSKを適用する。
変調方式が高多値化するにしたがって、その変調方式で変調された変調波における所要のC/Nを確保するために必要な干渉ガード周波数帯幅は増えることになる。逆に、低多値化の変調方式で変調された変調波における所要C/Nは少ないので、必要な干渉ガード周波数帯幅は少なくて済む。このように、同一の無線送信スペクトラム内に、異なる変調方式で変調されたサブキャリアが混在する場合、変調方式に応じた余裕のある干渉ガード周波数帯域を確保しておく必要がある。
例えば、干渉ガード周波数帯域の設定が、ある変調方式の所要C/Nしか確保できない設定になっている場合には、その変調方式より多値数が多い変調方式は使用できない。そのため、このような場合は、その変調方式より少ない多値数の変調方式を適用しなければならない。このことは、高多値化の変調方式によるサブキャリアに対する所要C/Nが優先的に確保できるように干渉ガード周波数帯幅を確保する必要があることを意味する。このような場合、例えば、最大多値数を用いる2048QAM変調方式で必要とされるC/Nが確保できる干渉ガード周波数帯を予め設定しておくことでも良い。
このようなパラメータに応じたサブキャリアの中心周波数と帯域幅は、サブキャリア部a221の変調波周波数変換部2212とサブキャリア部b222の変調波周波数変換部2222で割りつけられる。
つまり、ユーザAとユーザBとの運用契約に基づく要求に適した変調方式を変調部2211と変調部2221に設定する。そして、それぞれの変調方式で必要とされるC/Nが確保できる干渉ガード周波数帯幅を求める。より条件が厳しい干渉ガード周波数帯が設定できるように、変調波周波数変換部2212と変調波周波数変換部2222において中心周波数と帯域幅を割り当てる。中心周波数はf1信号とf2信号により設定され、帯域幅はバンドパスフィルタの特性により設定することができる。これらは、当該無線装置の運用条件に基づいて初期設定時に設定される。
また、適応変調方式を利用する場合にも、適応的に変化する変調方式に対応できるように、各変調方式のC/N確保要件に基づいて干渉ガード周波数帯幅を設定しておく必要がある。例えば、受信側の状態に応じて4PSK、16/32/64/128/256/1024/2048QAMと適応変調できる場合、最大多値数の2048QAM変調方式で必要とされるC/Nが確保できる干渉ガード周波数帯を予め設定しておけば良い。
言うまでも無く、対向する無線装置で復調するに当たり、f11信号およびf12信号も上記と同様に干渉ガード周波数帯を考慮した周波数に設定する。
以上の変調方式に応じて必要とされる干渉ガード周波数帯を考慮した中心周波数、帯域幅の設定は、対向する無線装置とともに運用開始前に事前設定する。
[変調波増幅器の出力レベルの増減制御]
次に、図4に示した変調波増幅器2213、2223、検波器2214、2224、基準値記憶部2231およびレベル増減演算部2232によるサブキャリアの信号レベルの増減制御について詳細に説明する。
前述したように、図4のレベル増減演算部2232は、基準値記憶部2231が予め記憶する情報と基準値記憶部2231に入力した各サブキャリアの信号レベルとの差分検証により信号増減レベルを計算する。そして、レベル増減演算部2232は、変調波増幅器2213または変調増幅器2223に対して出力レベルの増減指示を出す。この増減制御は、合成したサブキャリアの信号レベルが所定のスペクトラムマスクであらかじめ規定されている許容値の範囲の適正な値になるまで繰り返される。
ポイントツーポイント無線装置の無線送信スペクトラムの許容値は、ETSI EN302 217−2−2規格の4.2.4項で規定されている。
図7は、ETSI規格による無線送信スペクトラムにおけるサブキャリア間の送信レベル偏差を説明する図である。ETSI規格では、マルチキャリアを構成するサブキャリア間の送信レベル偏差を所定値のk1(dB)以内に調整制御することが求められている。
変調波増幅器に対する出力レベルの増減制御とは、サブキャリア間の送信レベル偏差が許容値範囲の適正な値になるように、対応する変調波増幅器から出力されるサブキャリアの信号レベルを制御することである。つまり、ポイントツーポイント無線装置のシングルキャリア伝送で規定されたスペクトラムマスクをマルチキャリア伝送にも適用するにあたって実行すべき制御である。
この変調波増幅器に対する出力レベルの増減制御は、制御の基準とするサブキャリアである基準サブキャリアを決定し、その基準サブキャリアの信号レベルに基づいて他のサブキャリアの信号レベルに対して送信レベル偏差を調整する制御を行う。
なお、この無線送信スペクトラム規定は、無線周波数帯(RF帯)での規定である。つまり、アンテナから放射されるRF帯の無線信号において、基準サブキャリアとそれ以外のサブキャリア間の送信信号レベルが所定の偏差以内に収まるように制御する必要がある。
本実施形態のポイントツーポイント無線装置は、このRF帯で満足すべき無線送信スペクトラム規定のマルチキャリアを、変調中間周波数帯で生成することを特徴とする。つまり、サブキャリア間の信号レベルの調整は、マルチキャリア制御部22の変調波増幅器の出力レベルの増減制御で実行される。
このとき、マルチキャリア制御部22で生成された中間周波数帯の信号が無線送受信機23でRF帯の信号に変換される過程で、マルチキャリア制御部22が出力した信号に対するレベル誤差が生じる。つまり、マルチキャリア制御部22の後段には無線送受信機23があり、その周波数変換回路や無線周波数帯の増幅回路を通過する過程で、無線送受信機毎の偏差、使用する周波数帯の偏差、環境偏差等に起因する誤差が生じる。しかし、この誤差の発生原因は明確であり、一意に決まるものなので、本実施形態のポイントツーポイント無線装置は、この一意に決まる誤差を予め補正値として基準値記憶部2231に記憶しておく。そして、マルチキャリア制御部22の変調波増幅器2213、2223の出力レベルの増減制御を行うに際して、この補正値で換算した値を用いて増減制御を行う。そのため、この補正値換算による増減制御が行われた変調波増幅器2213、2223から出力されるサブキャリアの信号レベルは、無線送受信機23で変換されたRF帯の無線信号において、規定の無線送信スペクトラムの送信レベル偏差内に収まる。
言い換えれば、本実施形態のポイントツーポイント無線装置は、RF帯で求められる送信レベル偏差を、前述のように一意に決まる補正値を用いて、変調中間周波数帯の信号レベル調整で補正を行う構成になっている。
[パラメータの優先条件に応じた変調波増幅器の出力レベルの増減制御]
前述のように、変調波増幅器の出力レベルの増減制御は、制御の基準とするサブキャリアである基準サブキャリアを決定し、その基準サブキャリアの信号レベルに基づいて他のサブキャリアの信号レベルに対して送信レベル偏差を調整する制御を行う。
無線装置は、最大となる無線送信レベルで運用することで、対向の受信品質を確保する。そのため、通常は、マルチキャリアを構成する各サブキャリアの内、最大の無線出力が可能なサブキャリアを基準サブキャリアとする。そして、他のサブキャリアの信号レベルを基準サブキャリアに近づけるように制御する。
また、一方で、前述した、ユーザが無線装置に要求する伝送環境に関する優先条件である「伝送容量の確保を優先する(パラメータ1)/伝送品質劣化耐力確保を優先する(パラメータ2)」で指定したサブキャリアを基準とすることもできる。
ユーザが無線装置に要求する伝送環境に関する優先条件で指定したサブキャリアを基準とするとは、パラメータ1とパラメータ2のどちらを優先させた無線伝送を実現する設定にするのかと云うことである。
伝送品質の劣化耐力を確保するより、干渉が生じていない状況下での伝送容量の確保を優先する条件(パラメータ1)の場合は、変調多値数が多い高多値化の変調方式(例えば、2048QAM)が無線装置の変調部に設定される。一方、伝送品質劣化耐力確保を優先する条件(パラメータ2)の場合、無線装置の変調部には変調多値数が少ない低多値化の変調方式(例えば、4PSK)が設定される。このように、ユーザ要望に対応するパラメータ1/パラメータ2により基準とする変調方式が決まり、それが変調部に設定されることになることは前述したとおりである。
ETSI規格では、変調方式に応じて隣接チャンネル間との所要C/Nを確保すべき値が考慮され、変調方式毎に送信レベルと範囲(サイドマスク)が異なるスペクトラムマスクが規定されている。例えば、4PSKのスペクトラムマスクの規定は緩く、最大の送信レベルが規定されている。一方、2048QAMのように高多値化になるにつれてスペクトラムマスクの規定が厳しくなり、送信レベルは低く、サイドマスクも高多値化によりだんだん厳しい規格になっている。
そのため、パラメータ1の条件のサブキャリアとパラメータ2の条件のサブキャリアが混在する場合、優先させるパラメータに応じたスペクトラムマスクを適用し、それを満足するように変調波増幅器の出力レベルの増減制御を行う必要がある。言い換えれば、パラメータ1の条件のサブキャリアとパラメータ2の条件のサブキャリアのどちらを優先させた無線伝送を実現する設定にするのかと云うことである。
パラメータ2の伝送品質劣化耐力確保を優先する場合には、低多値化の変調方式を選定することになる。この場合、送信レベルが高いスペクトラムマスクが適用されるので、信号レベルが高いサブキャリアを基準にした増減制御を行う(ケース1と称する)。
一方、パラメータ1のデータ容量の確保を優先する場合には、高多値化の変調方式を選定することになる。この場合、送信レベルが低いスペクトラムマスクが適用されるので、信号レベルが低いサブキャリアを基準にした増減制御を行う(ケース2と称する)。
そして、マルチキャリアの無線送信スペクトラムが、基準サブキャリアとして選んだ変調方式に対応するスペクトラムマスクを満足するように、基準サブキャリアの信号レベルを基準として、他方のサブキャリアの信号レベルを増減制御する。これは、制御対象とするサブキャリア部の変調波増幅器の出力レベルを増減する制御指示を出すことで実現できる。
[変調波増幅器の出力レベルの増減制御動作の説明]
図8と図9を参照して変調波増幅器に対する信号レベルの増減制御の動作を説明する。
図8は、マルチキャリア伝送するサブキャリアの信号レベルの増減制御の全体の動作を説明するフロー図である。また、図9は、図8の動作の中の、基準とする無線送信スペクトラム規定を満足するように変調波増幅器の出力レベルを増減制御する動作を説明するフロー図である。
この変調波増幅器の出力レベルの増減制御は、ユーザが要望する優先条件に適合する無線回線を構築するために、当該無線装置が運用に入る前に実行される初期設定動作である。
前述のように、ユーザが要望する伝送環境に関する優先条件(伝送容量優先:パラメータ1/伝送品質優先:パラメータ2)に応じて、対応するサブキャリア部が生成するサブキャリアの変調方式、中心周波数、帯域幅が予め設定される(S201)。
例えば、ユーザ要望に応じた最適な変調多値数を用いた変調方式が変調部に設定され、各サブキャリアの変調方式に求められるC/Nを確保するための干渉ガード周波数帯に応じた中心周波数および帯域幅が変調波周波数変換部に設定される。
また、どのサブキャリアの信号レベルを基準として無線送信スペクトラム規定を満足するように制御するのかという優先条件に関する設定情報と、増減制御する送信レベルの許容範囲値の設定情報を基準値記憶部2231に予め保持する(S202)。
つまり、当該無線装置がパラメータ1を優先とした制御を行うのか、パラメータ2を優先とした制御を行うのかを設定した情報と、優先とする変調方式に対応する無線送信スペクトラム規定における送信レベル増減制御の許容範囲値を保持する。
各サブキャリア部の変調波増幅器が出力するサブキャリアの信号レベルは、対応するサブキャリア部の検波器で測定され、基準値記憶部2231に通知される(S203)。
基準値記憶部2231は、各サブキャリア部の検波器で測定した対応する変調波増幅器が出力するサブキャリアの信号レベルの情報とともに、ステップS202で予め保持している設定情報をレベル増減演算部2232に出力する。
レベル増減演算部2232では、基準値記憶部2231が予め保持している、ユーザが要望する優先条件に関する設定情報に基づいて、以降の変調波増幅器に対する出力レベルの増減制御を行う。そのため、レベル増減演算部2232は、ユーザ要望に対応する優先条件のパラメータが、パラメータ1なのか、それともパラメータ2なのかを判定する(S204)。
伝送容量を優先させるパラメータ1が設定されている場合(S204、パラメータ1)、変調多値数が大きい変調方式で運用され、それに対応した無線送信スペクトラム規定を満足させる必要がある。そのため、この場合、レベル増減演算部2232は、該当変調方式の無線出力レベル値を考慮して、信号レベルが低いサブキャリアを基準サブキャリアに設定する(ケース2)(S205)。
また、伝送品質を優先させるパラメータ2が設定されている場合(S204、パラメータ2)、変調多値数が小さい変調方式で運用され、それに対応した無線送信スペクトラム規定を満足させる必要がある。そのため、この場合、レベル増減演算部2232は、該当変調方式の無線出力レベル値を考慮して、信号レベルが高いサブキャリアを基準サブキャリアに設定する(ケース1)(S206)。
レベル増減演算部2232は、変調波増幅器から出力されるサブキャリアの信号レベルが、基準とする無線送信スペクトラム規定を満足するように変調波増幅器の出力レベルの増減制御を行う(S207)。
つまり、レベル増減演算部2232は、設定した基準サブキャリアの信号レベルを基準として、他のサブキャリアの信号レベルが設定すべき許容範囲を満足しているか否かを計算し、その結果に基づく変調波増幅器の出力レベルの増減制御を行う。
例えば、基準サブキャリアの変調方式が低多値化変調方式の4PSKの場合、対応する無線送信スペクトラム規定も4PSKに準じる必要があり、レベル増減演算部2232は、被制御側のサブキャリアの信号レベルを増加させるように制御する。
一方、基準サブキャリアが高多値化変調方式2048QAMの時は、無線送信スペクトラム規定によるサイドマスクも厳しくなる。被制御側のサブキャリアが4PSK変調の場合、レベル増減演算部2232は、その信号レベルを2048QAMに合わせるために減少制御する。この場合、サイドマスクの規定を満足させるために、被制御側のサブキャリアの信号レベルの減少制御がさらに必要になるかもしれない。
このように、レベル増減演算部2232は、ユーザが要望するデータ伝送の優先条件に関する設定情報に基づいて変調波増幅器の出力レベルの増減制御を行う。
続いて、図8のステップS207の動作について図9を参照して説明する。
前述のように、変調波増幅器の出力レベルの増減制御は、基準サブキャリアの変調方式に対応する無線送信スペクトラム規定を満足するように制御する。そのため、レベル増減演算部2232は、基準で無い方のサブキャリアの信号レベルを増減制御し、基準とする無線出力スペクトラムマスク規格を満足させるように制御する。
レベル増減演算部2232は、変調波増幅器が出力する各サブキャリアの信号レベルを取得する(S211)。これは、各サブキャリア部の検波器で測定され、基準値記憶部2231に通知されたものである(図8のステップS203)。
レベル増減演算部2232は、基準値記憶部2231の格納情報と測定された各サブキャリアの信号レベルに基づいて、それぞれのサブキャリアの信号レベルが設定すべき無線送信スペクトラム規定の範囲を満足しているか否かを計算する(S212)。
規定された許容範囲を満足していない場合(S212、No)、レベル増減演算部2232は、無線送信スペクトラム規定を満足させるために必要な、対象となる変調波増幅器の出力レベルを増減制御するための増減値を算出する(S213)。
これは、基準サブキャリアの信号レベルと他方のサブキャリアの信号レベルの差が、基準値記憶部2231の設定情報で予め規定されている許容値の範囲に近づくように、制御対象側の変調波増幅器の出力レベルの増減値を算出する。
レベル増減演算部2232は、算出した増減値を制御対象の側の変調波増幅器に送信し、当該変調波増幅器における出力レベルの増減制御を指示する(S214)。
この増減制御指示を受けて出力レベルの増減制御を行った変調波増幅器から出力されるサブキャリアの信号レベルが、対応する検波器で測定されて基準値記憶部2231に通知される。これにより、再度、ステップS211に処理が戻る。
このステップS211からステップS214の処理は、ステップS212の判断結果が「Yes」になるまで繰り返される。つまり、それぞれのサブキャリアの信号レベルが設定すべき無線送信スペクトラム規定の範囲を満足すると判断された時点で変調波増幅器に対する信号レベルの増減制御は終了する(S212、Yes)。
この増減制御の結果に基づく最終データである各サブキャリアの信号レベルは、基準値記憶部2231の不揮発性メモリに書き込まれる。
これは、当該無線装置がなんらかの理由で再起動される場合に、この不揮発性メモリに格納されているデータを用いて装置の再起動を行うことで、無線回線の再構築の時間を短縮させるためである。
また、上記の変調波増幅器の出力レベルの増減制御が終了した段階で、各サブキャリア部から出力される変調波は合成器でマルチキャリア伝送形態の信号に合成される。マルチキャリア伝送形態の信号に合成された後、IF帯周波数変換部でIF帯の送信信号に変換され、無線送受信機に送られる。
上述した変調波増幅器の出力レベルの増減制御は、運用開始前の装置初期設定の段階で実施される。そのため、運用開始後にユーザ要望によるマルチキャリア伝送の優先条件等の初期設定条件を変更する場合には、再び変調波増幅器の出力レベルの増減制御を行うことから開始する。なお、初期設定条件を変更する場合、適用する変調方式の変更に伴って干渉波ガード周波数帯が変わる可能性もある。そのため、前述したように、干渉波ガード周波数帯を4PSKから2048QAMまでを想定して帯域確保することで、運用開始後に個別に優先条件を変えても、ユーザ間で影響を与えないようにすることもできる。
以上に説明したように、本実施形態のポイントツーポイント無線装置は、シングルキャリア伝送の無線送信スペクトラム規定を満足するように、マルチキャリア伝送する各サブキャリアを変調中間周波数帯で生成して合成する。
そのために、シングルキャリア伝送の無線送信スペクトラム規定を基準値記憶部2231に記憶している。
そして、マルチキャリア伝送する各サブキャリアを生成するサブキャリア部において、前記無線送信スペクトラム規定を満足して各サブキャリアを配置できるように、サブキャリアの中心周波数と帯域幅を、干渉ガード周波数帯を考慮して設定する。このとき、サブキャリアに適用された変調方式が考慮される。
さらに、共通制御部223において、生成されたサブキャリア間の信号レベルの増減を行って、前記無線送信スペクトラム規定を満足する送信レベル偏差となるようにサブキャリアの増幅制御を行う。また、この増幅制御に際しては、RF帯で適合させる前記無線送信スペクトラム規定を変調中間周波数帯で設定する場合の偏差を考慮した補正値を用いて増幅制御を実行する。
また、本実施形態のポイントツーポイント無線装置は、ユーザ要望の優先条件に応じた無線回線を構築するための構成も備える。
伝送容量を優先したいユーザ要望(パラメータ1)と伝送品質を優先したいユーザ要望(パラメータ2)を個別に各サブキャリアに設定して、異なるユーザ要望に適合させることができる。例えば、伝送容量を優先したいユーザ要望に対しては高多値化の変調方式を適用した変調波のサブキャリアを生成する。そして、伝送品質を優先したいユーザ要望に対しては低多値化の変調方式を適用した変調波のサブキャリアを生成する。
さらに、パラメータ1の条件のサブキャリアとパラメータ2の条件のサブキャリアが混在する場合、優先させるパラメータに応じたスペクトラムマスクを適用し、それを満足するように変調波増幅器の出力レベルの増減制御を行うことができる。
パラメータ1の条件を優先させる無線伝送を実現する設定のサブキャリア伝送を構築するために、高多値化の変調方式に対応する無線送信スペクトラム規定に適合するように各サブキャリアの信号レベルの増減制御を行ってマルチキャリアに合成する。これは、前述したケース2に該当し、信号レベルが低いサブキャリアを基準にした増減制御が行われる。
一方、パラメータ2の条件を優先させる無線伝送を実現する設定のサブキャリア伝送を構築するために、低多値化の変調方式に対応する無線送信スペクトラム規定に適合するように各サブキャリアの信号レベルの増減制御を行ってマルチキャリアに合成する。これは、前述したケース1に該当し、信号レベルが高いサブキャリアを基準にした増減制御が行われる。
これにより、パラメータ1の条件を優先させるユーザに対しては、降雨時のデータエラーさえ許容すれば、晴天時には最大の電素容量を確保できる無線伝送を提供できる。逆に、パラメータ2の条件を優先させるユーザに対しては、伝搬路上でフェージングや隣接チャンネル干渉等が発生しても、伝送品質の低下や通信切断等が回避できる無線伝送を提供できる。
(変形例1)
第2の実施形態ではマルチキャリア伝送するサブキャリアの数を2として説明した。しかし、これに限らず、任意の複数のサブキャリアを生成してマルチキャリア伝送する構成にしても良い。
この場合は、図3乃至図5で示したマルチキャリア制御部22が、マルチキャリア伝送するサブキャリアの数に対応するサブキャリア部を備えればよい。そして、送信側では、各サブキャリア部が生成する複数のサブキャリアを共通制御部223の合成器2233でマルチキャリア伝送形態の信号に合成すれば良い。また、受信側では、共通制御部223の分波器2235でマルチキャリア伝送形態の信号を各サブキャリアに分配すればよい。
また、共通制御部223の基準値記憶部2231は各サブキャリア部が生成するサブキャリアの信号レベルを入力し、レベル増減演算部2232は、レベル増減演算の結果に基づく増減指示を、必要とするサブキャリア部に送信すれば良い。なお、マルチキャリアを構成するサブキャリアが3つ以上になる場合は、いずれかのサブキャリアを基準として、基準より高いレベルは下げて調整し、基準よりもともと低いサブキャリアは低いままで運用すれば良い。
さらに、各サブキャリア部では、マルチキャリア伝送するサブキャリアの数や変調方式に応じて、無線送信スペクトラムに配置する各サブキャリアの中心周波数、帯域幅、干渉ガード周波数帯を決める。これは、変調器、変調波周波数変換部の設定を適宜実施することで実現される。
特に、サブキャリア部をカード単位でモジュールに増設搭載できる装置構成にすることで、装置運用後もマルチキャリアを構成するサブキャリアの数を、RF帯関連の機器増設を行うことなく、容易に追加することができる。
(変形例2)
本実施形態のポイントツーポイント無線装置は、シングルキャリア伝送の無線送信スペクトラム規定を満足するようにマルチキャリア伝送する構成になっている。そのため、シングルキャリア伝送で運用していた無線装置をマルチキャリア伝送で運用する無線装置に容易に構成を変更することができる。
例えば、ユーザAのみでシングルキャリア伝送していた状態から新しいユーザBが同一無線回線上に増えた場合を想定する。このとき、ユーザAのみで運用する場合には一つのサブキャリア部と共通制御部を用いてシングルキャリア伝送すれば良い。新たにユーザBが増え、ユーザBのサブキャリアを含めたマルチキャリア伝送する場合には、ユーザB用のサブキャリア部を増設して上述したようにマルチキャリア伝送すれば良い。
また、別の例として、ユーザAとユーザBがそれぞれの信号をインタフェース部で多重化し、多重化した信号をシングルキャリア伝送していた場合を想定する。このとき、インタフェース部における信号多重の機能をバイパスさせ、それぞれのユーザに対応するサブキャリア部と共通制御部を設けた無線装置に構成変更することでマルチキャリア伝送が可能になる。
上記の変形例のように構成すれば、サブキャリア数の追加や、シングルサブキャリア伝送形態をマルチキャリア伝送形態に容易に変更が可能なポイントツーポイント無線装置を提供することができる。そのため、新たな無線回線の敷設を抑制することができ、設備構成のため費用発生を抑制することができる。
以上に説明したように、本実施形態では、シングルキャリア伝送時の無線送信スペクトラム規定を満足してマルチキャリア伝送することができるポイントツーポイント無線装置および通信制御方法を提供することができる。