JP2017161570A - ホログラフィック光学素子の製造方法および映像表示装置の製造方法 - Google Patents

ホログラフィック光学素子の製造方法および映像表示装置の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】光学パワーを持つHOEの使用時の波長と作製時の波長とが一致していない場合でも、使用時の波長を、HOEの入射位置に関係なく一律にシフトさせて、使用時の観察画角内での色ムラを低減する。
【解決手段】作製時の二光束のうちで基準位置O側から感光材料に発散状態で入射する一方の光束に含まれる各光線の、感光材料に入射する直前の光路を、感光材料側から逆トレースして直線状に延長したときに、HOEの作製工程では、延長した各光路が基準位置Oからずれた位置で交差することによって複数の交点が生じ、かつ、複数の交点の位置が二光束の感光材料に対する入射角度の変化によって互いにずれるように、使用波長が回折ピーク波長からずれる色についての上記一方の光束が発散して感光材料に入射する。
【選択図】図12

Description

本発明は、感光材料を二光束で露光してホログラフィック光学素子を作製する、ホログラフィック光学素子の製造方法と、その製造方法を用いた映像表示装置の製造方法とに関するものである。なお、以下では、ホログラフィック光学素子のことを、HOE(Holographic Optical Element)とも称する。
従来から、HOEを用いて観察者に映像を観察させる映像表示装置が提案されている。この映像表示装置は、光源からの光を表示素子(例えば液晶表示素子)にて変調し、表示素子から出射される光(映像光)をHOEで回折反射させて光学瞳に導く。光学瞳の位置では、HOEの光学パワーにより、回折反射された映像光が集光する。したがって、光学瞳において映像光が集光する位置に観察者の瞳を位置させることにより、観察者は表示素子に表示された映像の虚像を観察することが可能となる。このとき、光学瞳において映像光が集光する位置としては、例えば光学瞳の中心を考えることができる。以下では、光学瞳において映像光が集光する位置のことを、設計位置とも称する。HOEの使用時(映像観察時)の上記光源としては、例えば発光ダイオード(LED)が用いられる。
一方、HOEは、感光材料を二光束で露光し、二光束の干渉による縞(干渉縞)を感光材料に形成することによって作製される。HOEを作製する場合の光源(上記二光束を生成するための光源)としては、例えばレーザ光源が用いられる。また、使用時のHOEに上記の光学パワーを持たせるためには、HOEの作製時に、感光材料に入射する一方の光束を、設計位置から発散して感光材料に入射させる必要がある。このため、作製時には、設計位置に、発散光を出射する点光源(例えばピンホール)が形成されるように、露光光学系を構成するのが一般的である。
ところで、HOEの作製時に使用する光源(レーザ光源)の波長と、HOEの使用時の光源(LED)の波長(強度ピーク波長)とが一致していない場合、設計位置に点光源を位置させてHOEを作製すると、HOEの使用時(映像観察時)には、LEDからの光のうち、作製時のレーザ光源の波長付近の光(例えばレーザ光源の波長±5nmの光)はHOEで回折されて設計位置に向かうが、上記範囲を外れた光はHOEで回折されずにそこを透過してしまう。作製時のレーザ光源の波長と使用時のLEDの強度ピーク波長とが大幅にずれると、LEDから出射されてHOEで回折されずにそこを透過する光(LEDの強度ピーク波長の光を含む)が大幅に増加する。その結果、設計位置に観察者の瞳を位置させて映像を観察する構成では、光源からの光の利用効率が低下し、観察する映像の明るさが大幅に低下する。
そこで、例えば特許文献1では、HOEの作製時の波長と使用時の波長が一致していない場合において、作製時の点光源の位置を、設計位置からずらして感光材料を露光することにより、使用時に、光源からの強度ピーク波長付近の光をHOEで回折反射させて設計位置に導くようにしている。つまり、使用時にHOEにて回折反射されて設計位置に入射する光の波長を、作製時の波長からずらし、これによって光利用効率の向上を図るようにしている。
特開2008−191527号公報(請求項1、段落〔0086〕、〔0090〕、〔0092〕、図1、図4等参照)
ところが、光学パワーを持つHOEでは、HOEにおける映像光の入射位置によって、設計位置に向かう映像光の回折角度が異なる。このため、作製時の点光源の位置を、設計位置からずらして感光材料を露光したときに、設計位置に向かう映像光の回折波長の変化の仕方(作製時の波長からのずれ量)が、HOEにおける映像光の入射位置によって異なる。例えば、作製時の点光源の位置を、設計位置からずらして感光材料を露光することにより、使用時に、HOEにおいて画角中心に対応する位置で回折反射されて設計位置に入射する映像光の波長(使用時の波長)が、作製時の波長から+5%だけずれるとした場合、HOEにおいて画角上端に対応する位置で回折反射されて設計位置に入射する映像光の波長や、HOEにおいて画角下端に対応する位置で回折反射されて設計位置に入射する映像光の波長が、作製時の波長から同じ比率で(+5%)ずれない。なお、使用時の波長が作製時の波長から+5%ずれるというのは、例えば作製時の波長(設計位置からずれた位置から出射される光の波長)が500nmのときに、使用時の波長(HOEで回折反射されて設計位置に入射する光の波長)が525nmに伸びることを意味する。
このように、HOEで回折反射されて設計位置に向かう映像光の波長(使用時の波長)の、作製時の波長からのずれ方が、HOEにおける映像光の入射位置によって異なると、例えば同じ緑色でも、画角上端、画角中央、画角下端で緑色の色合い(濃淡)が異なることになり、観察画角内で色ムラが生ずることになる。このような色ムラは、作製時の波長と使用時の波長とのずれ量が大きくなるほど、顕著に現れる。なお、露光時の感光材料の収縮も考慮する場合は、そのような収縮によるHOEの回折ピーク波長の変動も考慮して色ムラを低減することが必要となる。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、使用時に光学パワーを持つHOEに入射した光が回折反射されて設計位置に導かれるときに、HOEの使用時の波長と作製時の波長とが一致していない場合でも、使用時に設計位置に入射する光の波長(使用時の波長)を、HOEの入射位置に関係なく、回折ピーク波長(作製時の露光波長または感光材料の収縮後の回折ピーク波長)から、一律に(同じ比率で)シフトさせることができ、これによって使用時の観察画角内での色ムラを低減することができるホログラフィック光学素子の製造方法と、その製造方法を用いた映像表示装置の製造方法とを提供することにある。
本発明の一側面に係るホログラフィック光学素子の製造方法は、少なくとも1色に対応する二光束を感光材料の表裏からそれぞれ入射させて、前記二光束の干渉による縞を前記感光材料に形成することにより、光学パワーを有する反射型のホログラフィック光学素子を作製する作製工程を含む、ホログラフィック光学素子の製造方法であって、作製時に用いる前記二光束の波長は、前記ホログラフィック光学素子の使用時の波長とは異なっており、使用時に、前記ホログラフィック光学素子に入射した光が回折反射されて一点またはほぼ一点に集光する設計時の位置を、基準位置としたとき、前記作製工程では、前記少なくとも1色について、前記二光束の前記感光材料に対する入射角度をそれぞれ変化させることによって、使用時の前記縞の法線方向を設計した方向に維持しつつ、使用時に前記ホログラフィック光学素子にて回折反射されて前記基準位置に向かう光の使用波長を、前記ホログラフィック光学素子の回折ピーク波長からずらし、使用時に表示面から出射された光が前記ホログラフィック光学素子で回折反射されて前記基準位置に導かれるときに、前記表示面の中心と前記基準位置とを光学的に結ぶ光路上を進行する、前記ホログラフィック光学素子に対する入射光線および出射光線を含む平面内において、作製時の前記二光束のうちで前記基準位置側から前記感光材料に発散状態で入射する一方の光束に含まれる各光線の、前記感光材料に入射する直前の光路を、前記感光材料側から逆トレースして直線状に延長したときに、延長した各光路が前記基準位置からずれた位置で交差することによって複数の交点が生じ、かつ、前記複数の交点の位置が前記二光束の前記感光材料に対する入射角度の変化によって互いにずれるように、前記使用波長が前記回折ピーク波長からずれる色についての前記一方の光束が発散して前記感光材料に入射し、前記平面内において、前記一方の光束に含まれる画角両端の2つの光線の、前記逆トレースして延長した各光路上での交点を第1の交点とし、前記2つの光線のうち、前記第1の交点と前記感光材料との間の光路中で、前記基準位置により近い側の光線を第1の光線とし、前記基準位置からより遠い側の光線を第2の光線とし、前記一方の光束に含まれる前記第1および前記第2の光線以外の光線を第3の光線とし、前記第1の光線と前記第3の光線との、前記逆トレースして延長した各光路上での交点を第2の交点とし、前記第2の光線と前記第3の光線との、前記逆トレースして延長した各光路上での交点を第3の交点としたとき、前記平面内で、前記第3の光線が前記第1の光線側に近づくにつれて、前記第2の交点の位置が、前記第1の交点側から前記感光材料側に近づく一方、前記第3の光線が前記第2の光線側に近づくにつれて、前記第3の交点の位置が、前記第1の交点側から前記感光材料とは反対側に遠ざかるように、前記第1、前記第2および前記第3の交点を含む前記複数の交点の位置がずれていることを特徴としている。
前記作製工程では、複数の色に対応する二光束を感光材料の表裏からそれぞれ入射させて、カラーの前記ホログラフィック光学素子を作製し、1色または2色について、前記感光材料の同じ位置に入射する光線の入射角度が、他の色と異なっており、前記感光材料に対して前記基準位置側に、前記複数の色に対応する複数の点光源を位置させるとともに、前記複数の点光源のうち、前記入射角度が前記他の色と異なる光を出射する点光源と、前記感光材料との間の光路中に光学素子を配置し、前記点光源から出射される光のみを、前記光学素子によって、前記平面内で前記複数の交点の位置がずれるような発散光に変換して、前記感光材料に入射させてもよい。
前記光学素子は、前記光を透過させることによって前記発散光に変換する光学部材を含んでいてもよい。
前記光学部材は、前記光を出射する前記点光源とは異なる点光源から出射される前記他の色の光を反射させて、前記感光材料に入射させてもよい。
前記光学部材は、平板状のダイクロイックミラーであってもよい。
前記光学素子は、前記光を反射させることによって前記発散光に変換する自由曲面ミラーを含んでいてもよい。
前記作製工程では、前記感光材料および前記光学素子を静止させた状態で、前記二光束を前記感光材料に入射させてもよい。
本発明の他の側面に係る映像表示装置の製造方法は、照明光学系からの光を変調して映像を表示する表示素子と、前記表示素子からの映像光を、観察者の瞳が位置する設計時の基準位置に導く接眼光学系とを有し、前記接眼光学系は、前記映像光を内部で導光する接眼プリズムと、前記接眼プリズムに接して設けられ、前記接眼プリズム内部で導光された前記映像光を回折反射する体積位相型で反射型のホログラフィック光学素子とを有する映像表示装置の製造方法であって、前記接眼プリズムに感光材料を貼り付ける貼付工程と、前記感光材料を二光束で露光することにより、前記ホログラフィック光学素子を作製する露光工程とを有しており、前記露光工程では、上述した製造方法を用いて、前記ホログラフィック光学素子を作製する。
上記の製造方法によれば、使用時に、光学パワーを持つホログラフィック光学素子に入射した光が回折反射されて設計時の位置(基準位置)に導かれるときに、ホログラフィック光学素子の使用時の波長と作製時の波長とが一致していない場合でも、使用時に基準位置に入射する光の波長(使用時の波長)を、ホログラフィック光学素子での入射位置に関係なく、回折ピーク波長(作製時に用いるレーザ光源の波長または露光時の感光材料の収縮後の回折ピーク波長)から同じ比率でシフトさせることができる。これにより、使用時に観察画角内で色ムラが生じるのを低減することができる。
本発明の実施の形態に係る映像表示装置の概略の構成を示す断面図である。 上記映像表示装置に用いられるHOEの斜視図である。 上記映像表示装置を備えたHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の上面図である。 上記HMDの正面図である。 上記HMDの下面図である。 上記HMDの正面側からの斜視図である。 上記映像表示装置の製造方法の流れを示すフローチャートである。 上記映像表示装置に用いられるHOEの作製時に、感光材料に照射される光線の入射角度を変更する前の光路の一例を示す説明図である。 上記HOEの作製時に、上記感光材料に照射される光線の入射角度を変更した後の光路の一例を示す説明図である。 上記HOE上の位置と角度変更量との関係を示すグラフである。 一般的なcosθのグラフである。 図7において実線で示した光線が集まる位置の付近を拡大して示す説明図である。 図6の発散光が一点に集まる基準位置付近を拡大して示す説明図である。 図10における上記光線が集まる位置付近をさらに拡大して示す説明図である。 図7において発散光の光路中に平板を加えたときの光線の光路を示す説明図である。 図13において上記平板を透過する側の発散光が交わる位置を拡大して示す説明図である。 上記HOEを製造する露光光学系の概略の構成および光路を示す説明図である。 上記露光光学系の他の構成および光路を示す説明図である。
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本明細書において、数値範囲をa〜bと表記した場合、その数値範囲に下限aおよび上限bの値は含まれるものとする。また、本発明は、以下の内容に限定されるものではない。なお、以下での説明において、「使用時」とは、映像を観察すべく、HOEおよび映像表示装置を使用する場合のことを指し、「作製時」とは、HOEを作製すべく、感光材料を二光束で露光する場合のことを指す。
(映像表示装置について)
図1は、本実施形態の映像表示装置1の概略の構成を示す断面図である。映像表示装置1は、照明光学系2と、偏光板3と、偏光ビームスプリッタ(PBS)4と、表示素子5と、接眼光学系6とを有している。
なお、説明の便宜上、方向を以下のように定義しておく。まず、表示素子5の表示面から出射された光が後述するHOE23で回折反射されて基準位置Oに導かれるときに、上記表示面の中心と基準位置Oとを光学的に結ぶ光路上を進行する、HOE23に対する入射光線および出射光線を含む平面を、基準平面とする。そして、基準平面に垂直な方向をX方向とする。また、各光学部材の上記光路との交点における、面法線と垂直な面内で、X方向に垂直な方向をY方向とする。そして、X方向およびY方向に垂直な方向をZ方向とする。このような定義を用いると、上記基準平面は、YZ面となる。なお、上記の基準位置Oとは、HOE23の使用時に、HOE23に入射した光(映像光)が回折反射されて一点またはほぼ一点に集光する設計時の位置(観察者の瞳が位置すると考えられる位置)のことであり、例えば接眼光学系6によって形成される光学瞳Pの中心を考えることができる。
照明光学系2は、表示素子5を照明するものであり、光源11と、照明ミラー12と、拡散板13とを有している。
光源11は、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色に対応する光を出射するRGB一体型のLEDで構成されている。複数の発光点(RGBの各発光点)は、水平方向(X方向)に略直線状に並んでいる。光源11から出射される光の波長は、例えば、光強度のピーク波長および光強度半値の波長幅で、457±12nm(B光)、516±17nm(G光)、636±11nm(R光)である。
本実施形態では、光源11は、RGB一体型のLEDを2対備えている。そして、RGBのそれぞれについて、HOE23の基準平面に対して各発光点が対称に位置するように、各発光点が略直線状に並んでいる(例えばBGRRGBの順に発光点がX方向に並んでいる)。これにより、RGBの光強度の分布をX方向で対称にすることができる。
照明ミラー12は、光源11から出射された光(照明光)を拡散板13に向けて反射させるとともに、Y方向に関して、光学瞳Pと光源11とが略共役となるように、照明光を曲げる光学素子である。
拡散板13は、光源11の複数の発光点が並ぶX方向に入射光を例えば40°拡散し、Y方向には入射光を拡散しない一方向拡散板である。拡散板13は、偏光板3の表面に保持されている。
偏光板3は、拡散板13を介して入射する光のうち、所定の偏光方向の光を透過させてPBS4に導く。
PBS4は、偏光板3を透過した光を反射型の表示素子5の方向に反射させる一方、表示素子5にて反射された光のうち、画像信号オンに対応する光(偏光板3を透過した光とは偏光方向が直交する光)を透過させる平板状の偏光分離素子であり、接眼光学系6の後述する接眼プリズム21の光入射面21aに貼り付けられている。
PBS4を光入射面21aに貼り付けることにより、PBS4の光入射側および光出射側に各光学部材をバランスよく配置することができる。これにより、各光学部材の保持姿勢が安定する。また、接眼光学系6の上方の空いたスペースに表示素子5を配置した設計が可能となり、空間を有効利用することができ、小型化にも有利となる。また、PBS4の接眼プリズム21への貼り付けにより、接眼プリズム21における空気との界面(空気と直接接触する面)が減るため、上記界面における表面反射を低減して光利用効率を向上させるとともに、表面反射によるゴーストの発生を低減できる。
表示素子5は、照明光学系2からの光を変調して映像を表示する表示素子であり、本実施形態では、反射型の液晶表示素子で構成されている。表示素子5はカラーフィルタを有する構成であってもよいし、光源11のRGBごとの時分割発光に同期して、発光色に対応するRGBの画像が表示されるように、時分割で駆動される構成であってもよい。
表示素子5は、PBS4からほぼ垂直に入射する光がほぼ垂直に反射されてPBS4に向かうように配置されている。これにより、反射型の表示素子に対して大きな入射角で光を入射させる構成に比べて、解像度を増大させるような光学設計が容易となる。表示素子5の表示面は長方形となっており、表示面の長手方向がX方向となり、短手方向がY方向となるように配置されている。
また、表示素子5は、照明ミラー12からPBS4に向かう光路に対して光源11と同じ側に配置されている。これにより、照明光学系2から表示素子5までの光学系全体をコンパクトに構成することができる。表示素子5は、光源11と同一の基板で支持されていてもよいし、別々の基板で支持されていてもよい(図1では、光源11および表示素子5の支持基板は省略している)。なお、表示素子5は、透過型の液晶表示素子であってもよい。
接眼光学系6は、表示素子5からの映像光を観察者の瞳(光学瞳P)に導くための光学系であり、非軸対称(非回転対称)な正の光学パワーを有している。この接眼光学系6は、接眼プリズム21と、偏向プリズム22と、HOE23とを有している。
接眼プリズム21は、表示素子5からPBS4を介して入射する映像光を内部で導光する一方、外界像の光(外光)を透過させるものであり、平行平板の上端部を上端に向かうほど厚くし、下端部を下端に向かうほど薄くした形状で構成されている。
接眼プリズム21において、PBS4が貼り付けられる面は、表示素子5からの映像光が入射する光入射面21aであり、光学瞳Pとほぼ平行に位置して互いに対向する2つの面21b・21cは、映像光を全反射によって導光する全反射面となっている。そのうち、光学瞳P側の面21bは、HOE23で回折反射される映像光の出射面を兼ねている。
接眼プリズム21は、その下端部に配置されるHOE23を挟むように偏向プリズム22と接着剤で接合されている。本実施形態では、接眼プリズム21を構成する面のうち、HOE23が接する面21d以外で映像光が透過する面(光入射面21a、面21b)は、平面となっている。なお、接眼プリズム21において、HOE23が接する面21dの形状については後述する。
偏向プリズム22は、接眼プリズム21とHOE23を介して貼り合わされて略平行平板を形成している。偏向プリズム22を接眼プリズム21と貼り合わせることで、外光が接眼プリズム21の楔状の下端部を透過するときの屈折を偏向プリズム22でキャンセルすることができ、観察される外界像に歪みが生じるのを防止することができる。
HOE23は、接眼プリズム21に接して設けられ、接眼プリズム21内部で導光された映像光を回折反射する体積位相型で反射型のホログラフィック光学素子である。HOE23は、回折効率のピーク波長(回折ピーク波長)および回折効率半値の波長幅で、例えば、465±5nm(B光)、520±5nm(G光)、632±5nm(R光)の3つの波長域の光を回折(反射)させる。なお、HOE23を作製するときに用いるレーザ光源の波長(露光波長)は、例えば、476nm(B光)、532nm(G光)、647nm(R光)であるが、露光時に感光材料が2.3%収縮するため、回折ピーク波長も、露光波長から2.3%だけ短波長側にシフトした値となっている。
上記の構成において、照明光学系2の光源11から出射された光は、照明ミラー12で反射され、拡散板13にてX方向にのみ拡散された後、所定の偏光方向の光のみが偏光板3を透過する。そして、偏光板3を透過した光は、PBS4で反射され、表示素子5に入射する。
表示素子5では、入射光が画像信号に応じて変調される。このとき、画像信号オンに対応する映像光は、表示素子5にて入射光とは偏光方向が直交する光に変換されて出射されるため、PBS4を透過して接眼プリズム21の内部に光入射面21aから入射する。一方、画像信号オフに対応する映像光は、表示素子5にて偏光方向が変換されずに出射されるため、PBS4で遮断され、接眼プリズム21の内部に入射しない。
接眼プリズム21では、入射した映像光が接眼プリズム21の対向する2つの面21c・21bでそれぞれ1回ずつ全反射された後、HOE23に入射し、そこで回折反射されて面21bから出射され、光学瞳Pに達する。したがって、この光学瞳Pの位置では、観察者は、表示素子5に表示された映像を虚像として観察することができる。
一方、接眼プリズム21、偏向プリズム22およびHOE23は、外光をほとんど全て透過させるので、観察者は外界像をシースルーで観察することができる。したがって、表示素子5に表示された映像の虚像は、外界像の一部に重なって観察されることになる。
(HOE貼り付け面の形状およびHOEの回折パワーについて)
本実施形態では、接眼プリズム21においてHOE23が接する面21dは、一方向であるY方向において曲率が0であり、一方向と垂直な方向であるX方向において0でない曲率を有する面としている。したがって、図2に示すように、HOE23において、面21dに貼り付けられる側の面23aは、面21dに沿った曲面、すなわち、Y方向において曲率が0であり、X方向において0でない曲率を有する面となっている。また、HOE23の回折パワー(光学パワー)は、Y方向において0ではなく(例えば正の回折パワー)、X方向において0となっている。
このように接眼プリズム21の面21dの形状およびHOE23の回折パワーを設定することにより、X方向においては、表示素子5から出射されてHOE23に入射する映像光を正反射に近い角度で反射させて光学瞳Pに導くとともに、HOE23の波長依存性(回折パワー)による波長分散を防止できる。一方、Y方向においては、表示素子5から出射されてHOE23に入射する映像光を、HOE23の回折パワーによって反射させて光学瞳Pに導くため、HOE23での回折による波長分散が生じる。このように、波長分散はX方向では生じず、Y方向のみで生じるため、映像観察時に、画面中心以外の位置に表示された点が伸びる方向がY方向のみとなる。
ここで、例えば、接眼プリズムにおけるHOE貼り付け面で映像光が反射する方向と、HOEで映像光が回折する方向とが、画面中心(映像観察時の画角中心)において略一致する構成で、平面状のHOEを用いると、画面中心から放射状の方向に映像光の波長が分散され、その結果、画像が放射状に伸びる。しかし、本実施形態では、上記のように、HOE23の波長依存性によって画像が引き伸ばされる方向が、Y方向のみに制限されるため、放射状に画像が伸びる構成よりも画像品位の劣化を抑えることができる。しかも、HOE23の回折パワーは、X方向において0であるので、HOE23の回折パワーに起因する収差の発生を抑えることができる。
また、接眼プリズム21の面21dが、一方向(X方向)にのみ曲率を有しているため、面21dに貼り付ける感光材料として、フィルム状のものを用いることが可能となり、面21dへの感光材料の貼り付けが容易となる。
また、本実施形態では、接眼プリズム21のHOE23が接する面21dで映像光が反射する方向と、HOE23で映像光が回折する方向とを、HOE23における画面中心(表示映像の中心)と対応する位置で略一致させている。この場合、上述したように接眼プリズム21の面21dの形状およびHOE23の回折パワーを設定することにより、画面中心からX方向にずれた位置でも、面21dで映像光が反射する方向と、HOE23で映像光が回折する方向とが略一致する。したがって、画面中心およびそこからX方向にずれた位置においては、表示される点(画像)はどちらに伸びることもない。また、画面中心およびそこからX方向にずれた位置から、Y方向にずれた位置では、Y方向に点が伸びるが、点が伸びる量は、画面中心からのY方向の位置ずれ量に依存して大きくなる。
また、画像が引き伸ばされる方向がY方向となる場合、このY方向を画角の狭い方向と一致させれば、画像の劣化を最小限にできる。本実施形態では、表示素子5は、矩形の表示面の短手方向がY方向となるように配置されており、表示面の短手方向(画角の狭い方向)と、面21dの曲率が0となる方向とが、ともにY方向で一致しているので、HOE23の波長依存性による画像の劣化を最小限に止めることができる。
接眼プリズム21において、映像光の透過面(例えば光入射面21a、面21b)に光学パワーを持たせて光を曲げるようにすることも可能である。この場合、透過面での屈折により倍率色収差が発生し、上述のHOE23による点の伸びと同様の現象が起こるが、通常は、回折に比べて屈折の波長依存性は小さいので、回折パワーのみ(回折による波長依存性)を考えておけば十分である。
本実施形態では、接眼プリズム21を構成する面のうち、HOE23が接する面21d以外で映像光が透過する面(光入射面21a、面21b)は平面であるため、上記した屈折の波長依存性の影響をほとんど無視することができる。
本実施形態では、面21dは、X方向において光学瞳P側に凹となる曲率を有しているが、接眼プリズム21において映像光の透過面に光学パワーを持たせるのであれば、面21dは、X方向において光学瞳P側に凸となる曲率を有していてもよい。この場合でも、HOE23において、面21dに貼り付けられる側の面23aは、面21dに沿った曲面、すなわち、Y方向において曲率が0であり、X方向において0でない曲率を有する面となる。
(ヘッドマウントディスプレイについて)
次に、本実施形態の映像表示装置の応用例であるヘッドマウントディスプレイ(HMD;head-mounted display、本明細書ではHMDと略称する場合もある)について説明する。図3A、図3Bおよび図3Cは、本実施形態のHMD40の上面図、正面図、下面図であり、図4は、HMD40の正面側からの斜視図である。HMD40は、上述した映像表示装置1と、フレーム42と、レンズ43と、鼻当て44と、位置調整機構45とを有している。
映像表示装置1は、筐体1a内に、上述した照明光学系2、偏光板3、PBS4および表示素子5を有しており、接眼光学系6の上端部も筐体1a内に位置している。接眼光学系6は、接眼プリズム21および偏向プリズム22の貼り合わせによって構成されており、右眼用レンズ43Rの前方(観察者とは反対側の外界側)に位置している。筐体1a内の光源11および表示素子5は、筐体1aを貫通して設けられるケーブル(図示せず)を介して、図示しない回路基板と接続されており、回路基板から光源11および表示素子5に駆動電力や映像信号が供給される。
なお、映像表示装置1は、静止画や動画を撮影する撮像装置、マイク、スピーカー、イヤホンなどをさらに備え、外部のサーバーや端末とインターネット等の通信回線を介して、撮像画像および表示画像の情報や音声情報をやりとり(送受信)する構成であってもよい。
フレーム42は、観察者の頭部に装着され、映像表示装置1を観察者の眼前で支持する支持部材である。このフレーム42は、観察者の左右の側頭部に当接するテンプルを含んでいる。
レンズ43は、観察者の右眼および左眼の眼前に配置される右眼用レンズ43Rおよび左眼用レンズ43Lを含んでいる。右眼用レンズ43Rおよび左眼用レンズ43Lは、右連結部46Rおよび左連結部46Lを介して、位置調整機構45と連結されている。右眼用レンズ43Rおよび左眼用レンズ43Lは、視力矯正用のレンズであってもよいし、視力矯正を行わない単なるダミーレンズであってもよい。
鼻当て44は、観察者の鼻と当接する右鼻当て44Rおよび左鼻当て44Lを含んでいる。右鼻当て44Rおよび左鼻当て44Lは、右連結部47Rおよび左連結部47Lを介して、位置調整機構45と連結されている。
位置調整機構45は、フレーム42に対して鼻当て44を観察者の眼幅方向に垂直な上下方向に相対的に移動させることにより、フレーム42で支持された映像表示装置1の上下方向の位置を調整する機構である。なお、位置調整機構45を設けることなく、レンズ43および鼻当て44をフレーム42に直接固定した構成としてもよい。
HMD40を観察者の頭部に装着し、表示素子5に映像を表示すると、その映像光が接眼光学系6を介して光学瞳に導かれる。したがって、光学瞳の位置に観察者の瞳を合わせることにより、観察者は、映像表示装置1の表示映像の拡大虚像を観察することができる。また、これと同時に、観察者は接眼光学系6を介して、外界像をシースルーで観察することができる。
このように、映像表示装置1が支持部材としてのフレーム42で支持されることにより、観察者は映像表示装置1から提供される映像をハンズフリーで長時間安定して観察することができる。
なお、図3A等では、映像表示装置1の接眼光学系6と、レンズ43とを別体で構成しているが、接眼光学系6をレンズ43と一体化した構成とすることも可能である。また、映像表示装置1を2つ用いて両眼で映像を観察できるようにしてもよい。
(HOEの製造方法)
次に、上述した映像表示装置1に用いられるHOE23の製造方法について説明する。
《基本的な流れ》
図5は、本実施形態の映像表示装置1の製造方法の流れを示すフローチャートである。映像表示装置1の製造方法は、貼付工程(S1)と、露光工程(S2)とを有している。貼付工程では、接眼プリズム21の面21dに感光材料50(図6参照)を貼り付ける。感光材料50としては、例えばフォトポリマーを用いることができる。露光工程は、貼付工程の後に、感光材料50を二光束で露光することにより、HOE23を作製する作製工程(S2’)を含む。この作製工程では、少なくとも1色に対応する二光束を感光材料50の表裏からそれぞれ入射させて、二光束の干渉による縞を感光材料50に形成することにより、光学パワーを有する反射型のHOE23を作製する。
《基本的な考え方》
反射型のHOEは、内部で、屈折率分布が周期的に変動する構造を持つ。屈折率分布は、HOEの作製時に、レーザ光を二つの光路に分岐して感光材料に表と裏から当て、二光束の干渉により感光材料の内部にできた干渉縞の明暗に対応している。HOEにおいて、必要な光学性能を維持しつつ、使用時の波長を、HOEの回折ピーク波長からずらすには、干渉縞の角度を維持しつつ、干渉縞の間隔を変えればよい。具体的には、感光材料のそれぞれの位置で、表と裏から入射する二光線を考え、その二光線と縞の法線とを含む面内で、光線と縞の法線との角度について、感光材料の表側と裏側とで、絶対値は同じで、方向が反対となるように、二光線の角度を変えればよい。
HOEが、二つの平行光の干渉によって作製されたものであれば、上述の角度変化は感光材料に対する光線の入射位置によらずに一律の変化となる(全ての入射位置で同じ角度変化となる)。しかし、光学パワーを持つHOEを作製する場合、角度変化は一律とはならない。縞の法線と感光材料内での光線との角度をθとすれば、縞の間隔は、cosθに反比例して変化し、例えばcosθを大きくすると(角度θを小さくすると)、干渉縞の周期は短くなる。光学パワーを持つHOEを作製する場合、使用時の波長をずらす前の角度θが感光材料の入射位置によって異なるため、感光材料の入射位置によらずにcosθを一定の比率で変えるためには(感光材料のどの位置でもcosθの値を一定量だけ変化させるためには)、角度θの変化量が一律でない(光線の入射位置によって角度θが変化する)ことになる。この点について、図面を用いてより詳細に説明する。
ここで、光学パワーを持つHOEの作製(感光材料の露光)に用いる二光束として、一方が平行光であり、もう一方が、一点から発散する発散光である場合を考える。なお、現実的には、平行光や発散光は空気中を飛んでいて、感光材料に入射する際に空気との界面で屈折が起こるが、ここでは説明を簡単にするために、感光材料の内部の平均の屈折率が空気に等しく、感光材料と空気との界面での屈折が起こらない場合を例として説明する。
図6は、HOEの作製時に、縞の法線を維持したまま感光材料50に対する光線の入射角度を変える前の光路を示している。なお、同図において、感光材料50に対して右側(裏側)から入射する光束は平行光であり、左側(表側)から入射する光束は一点から発散する発散光である。上記一点は、基準位置O、すなわち、使用時の光学瞳Pにおいて観察者の瞳が位置することが想定される設計時の位置である。
一方、図7は、波長を5%伸ばすために光線の入射角度を変更した場合の光路(実線参照)を示している。なお、図7において、破線で示した光線の光路は、図6の実線で示した光線の光路(角度変更前の光路)に対応している。また、光線の入射角度の変更に伴って基準位置Oからずれた発散点の位置を、便宜的に位置O1とする。ここで、波長を5%伸ばすというのは、HOEの回折ピーク波長が例えば500nmだったとすれば、使用時にHOEで回折されて基準位置Oに入射する映像光の波長(使用時の波長)を525nmにする、ということである。なお、上記HOEの回折ピーク波長は、露光時の感光材料50の収縮を考慮しない場合は、HOEを作製するレーザ光源の波長(作製時の波長)であり、露光時の感光材料50の収縮を考慮する場合は、露光による感光材料50の収縮後にHOE23の回折効率が最大となる波長である。
波長を5%伸ばすためには、cosθを5%小さくする必要がある。図8は、HOE上の位置と角度変更量との関係を示したものである。なお、図8の横軸は、基準平面内(基準位置Oを含むYZ面内)でHOEの面に沿う方向であり、図6および図7の上下方向に対応している(図8の横軸でマイナスからプラスに向かう方向が、図6および図7で下から上に向かう方向である)。図6および図7で上側ほど、感光材料50に入射する光線と縞の法線とのなす角度の絶対値が大きいため、cosθを5%小さくするための角度変化量が小さくなる。
このことは、以下の考察からも明らかである。図9は、一般的なcosθのグラフを示している。ただし、0°≦θ≦90°とする。θが大きい角度範囲において、cosθの値を一定量だけ(例えばΔcosθ=5%)変化させるための角度θの変化量をΔθaと
し、θが小さい角度範囲において、cosθの値を同じ量(Δcosθ=5%)だけ変化
させるための角度θの変化量をΔθbとしたとき、同図より、Δθa<Δθbであること
がわかる。すなわち、角度θが大きいほど、cosθを一定量だけ変化させる場合に、小さい角度変化量で済むことになる。
図10は、図7において実線で示した光線が集まる位置O1付近を拡大して示したものである。参考のため、図11に、図6の発散光が一点に集まる基準位置O付近を拡大して示す。図11では、光線が一点(基準位置O)に集まっているのに対して、図10では、光線が最も集まったところでも幅があり、一点に集まっていない状態となっている。
図12は、図10において、位置O1付近をさらに拡大して示したものである。各光線の集光付近を詳しく見ると、基準平面内において、各光線の光路が基準位置Oからずれた位置で交差することによって、複数の交点が生じていることがわかる。つまり、発散光に含まれる各光線のうち、基準位置Oに近い側の光線ほど、より感光材料に近い側で集光する(他の光線と交わる)。このような挙動は、上述のように角度変化量が一律でないことに起因する。ここでは、感光材料に対して入射角度の変化を与えた光線を、感光材料側から逆向きにトレースして示しているが、実際にHOEを作製する場合には、図12等で示したような分布を持つ光を作製して感光材料に照射すればよいことになる。
図13は、図7において、発散光の光路中に平板55を加えたときの光線の光路を示している。平板55と感光材料50との間の光路は、図7で示したものと同じである(平板55で光路を折り曲げているだけである)。また、図14は、図13において平板55を透過する側の発散光が集光して交わる位置(便宜的に、位置O2とする)を拡大したものである。図14は、図10とほぼ同じ縮尺で示しているが、図14の位置O2は、図10の位置O1よりも一点に集まっていることがわかる。すなわち、一点(位置O2)から発散する発散光の光路中に平板55を斜めに入れることにより、感光材料50に照射される光の集光状態(光束に含まれる各光線の分布)を、図10および図12で示したような分布に変化させて感光材料50を露光することができる。これにより、作製されたHOEにおいて、光線の入射位置に関係なく、基準位置Oに入射する光の波長(使用波長)を、HOE23の回折ピーク波長から一律に変化させることが可能となる。なお、位置O2(点光源の位置)や、平板55の角度、厚みおよび屈折率が変わると、感光材料50を露光する光束の分布が変化するが、これらのパラメータは、使用波長の回折ピーク波長からの変化量に応じて適切に設定されればよい。
以上のように、図13で示した光学系によって、図12で示した光路分布が生成されることから、図12で示した光路中に含まれる各光線の交点の分布については、以下のように考えることができる。
まず、基準平面内において、二光束L1・L2のうち、発散光である一方の光束L1が感光材料50(図13参照)に入射するときの直前の光路を、感光材料50側から逆トレースして直線状に延長したときに、図12で示したような光路分布が得られるものとする。この光路分布において、光束L1に含まれる画角両端の2つの光線A・Bの交点を、交点T1(第1の交点)とする。このとき、光線Aは、交点T1と感光材料50との間の光路中で、基準位置Oにより近い側の光線(第1の光線)とし、光線Bは、基準位置Oからより遠い側の光線(第2の光線)とする。また、光束L1に含まれる光線A・B以外の光線を、光線C(第3の光線)とする。そして、光線Aと光線Cとの、上記逆トレースして延長した各光路上での交点を、交点T2(第2の交点)とし、光線Bと光線Cとの、上記逆トレースして延長した各光路上での交点を、交点T3(第3の交点)とする。このとき、基準平面内で、光線Cが光線A側(基準位置O側)に近づくにつれて、交点T2の位置が交点T1側から感光材料50側に近づく一方、光線Cが光線B側に近づくにつれて(基準位置Oとは反対側に向かうにつれて)、交点T3の位置が交点T1側から感光材料50とは反対側に遠ざかるように、交点T1〜T3を含む複数の交点の位置が連続的にずれている。
(実施例)
《映像表示装置》
以下、図1で示した映像表示装置1の数値実施例について、コンストラクションデータ等を挙げてさらに具体的に説明する。
表1に、実施例の映像表示装置1のコンストラクションデータ等を示す。表1に示す面データ中、Si(i=1、2、3、・・・)は、光源11から光学瞳P(基準位置O)に至る光路中で、光学瞳P側から数えてi番目の面を示しており、面データは面Siの配置データを示している。
実施例では、S1は接眼プリズム21の映像光出射面、S2は接眼プリズム21の面21d(HOE貼り付け面)、S3は面21b(全反射面(S1と同一平面))、S4は面21c(全反射面)、S5は面21a(PBS貼り付け面)、S6はPBS4の透過面、S7は表示素子5のカバーガラス表面、S8は表示素子5の液晶面、S9は表示素子5のカバーガラス表面、S10はPBS4の反射面、S11は偏光板3の出射面、S12は偏光板3と拡散板13との境界面、S13は拡散板13の入射面、S14は照明ミラー12の反射面、S15は光源11のLED発光面、である。
各面Siの配置は、面データ中の基準点座標(x,y,z)と回転角度(ADE)の各面データでそれぞれ特定される。面Siの基準点座標は、その基準点をローカルな直交座標系(X,Y,Z)の原点として、グローバルな直交座標系(x,y,z)におけるローカルな直交座標系(X,Y,Z)の原点の座標(x,y,z)で表されており(単位:mm)、その基準点を中心とするX軸回りの回転角度ADEで面Siの傾きが表されている(単位:°;X軸の正方向に対して反時計回りがX回転の回転角度の正方向である。)。ただし、座標系はすべて右手系で定義されており、グローバルな直交座標系(x,y,z)は出射面S1のローカルな直交座標系(X,Y,Z)と一致した絶対座標系になっている。したがって、X方向,Y方向は、面Siの基準点を原点とし、かつ、基準点での法線をZ軸とする直交座標系(X,Y,Z)における座標軸方向である。図1において、面S1では、X方向は紙面に垂直方向(画角の左右方向)、Y方向は紙面の上下方向(画角の上下方向)である。
HOEの基準波長、つまりHOEを作製する際の製造波長(規格化波長)および再生波長はともに532nmであり、回折光の使用次数は1次である。HOEの回折構造を有する面Si(HOE面)は、その基準点を原点とするローカルな直交座標系(X,Y,Z)を用いた以下の式(DS)で定義される。式(DS)に示すように、位相関数φはHOEの位置(X,Y)による生成多項式(二元多項式)であり、表2に示す回折面データは、位相関数φの位相係数A(j,k)をXの次数とYの次数とに対応させて示している(1行目:Xの次数、1列目:Yの次数)。なお、回折面データにおいて表記の無い項の係数は0であり、すべてのデータに関してE−n=×10-nである。
φ=ΣΣ{A(j,k)・Xj・Yk} ・・・(DS)
ただし、
φ:位相関数、
A(j,k):Xのj次、Yのk次の位相係数(HOE係数)、
である。
表3および表4は、HOE面(HOE貼り付け面)の形状式係数、および照明ミラーの形状式係数をそれぞれ示している。HOE面および照明ミラーは、自由曲面で形成されている。自由曲面データに関し、自由曲面(XY多項式面)からなる面Siは、その基準点を原点とするローカルな直交座標系(X,Y,Z)を用いた以下の式(FS)で定義される(球面項を示す部分は存在していない)。表3および表4に示す自由曲面データは、その自由曲面係数B(j,k)をXの次数とYの次数とに対応させて示している(1行目:Xの次数、1列目:Yの次数)。なお、表3および表4の自由曲面データにおいて、表記の無い項の係数は0であり、すべてのデータに関してE−n=×10-nである。
Z=ΣΣ{B(j,k)・Xj・Yk} ・・・(FS)
ただし、
Z:座標(X,Y)の位置でのZ方向(光軸方向)のサグ量(mm)、
B(j,k):Xのj次、Yのk次の多項式自由曲面係数、
である。
Figure 2017161570
Figure 2017161570
Figure 2017161570
Figure 2017161570
本実施例では、表2に示すように、HOE係数がY0次の全ての項で0であり、また、式(FS)に球面項を示す部分が存在しないことで、HOEのX方向の回折パワーを0にしている。また、表3に示すように、HOE面の形状式係数が、Y0次X偶数次(範囲は2〜10)の項で0でなく、Y0次で無い項で全て0であることにより、HOE面がX方向に曲率を有しており、Y方向には曲率を有していないことがわかる。このように構成したことで、HOEの波長依存性(回折パワー)によって点が延びる方向が、上下方向のみとなり、それゆえ、放射状に画像が伸びる構成よりも、画像品位の劣化を抑えることができる。
《第1の露光光学系》
次に、HOEを作製する露光光学系の一実施例について説明する。図15は、HOEを製造する露光光学系60(第1の露光光学系)の概略の構成および光路を示す説明図である。HOEの作製時には、図示しないレーザ光源からの光が、平行光として伝播されて二光束に分岐され、その後、レンズでそれぞれ集光されて点光源(ピンホール)とみなせる状態にされている。図15では、各点光源からの光を感光材料50の表裏に導く部分のみを示している。また、接眼光学系6の接眼プリズム21は、使用時に映像光が入射する側である上部の構造を省略し、感光材料50が貼り付けられる斜面の近傍のみを図示している。
感光材料50の両側からレーザ光が入射しているが、図15において、感光材料50の右側の光路においても左側の光路においても、感光材料50のある点には、2つの異なる角度で各光線が入射しており、計4本の光線(左側の光路で2本の光線、右側の光路で2本の光線)が入射している。感光材料50のある点に入射する右側2本の光線および左側2本の光線のうち、上側の光線は、入射角度の変化による回折波長の操作を行わない光線、つまり、使用時の波長を回折ピーク波長からずらさない光線を示し、下側の光線は、回折波長の操作を行う光線、具体的には、使用時の波長を回折ピーク波長から+5%伸ばす光線を示している。ここでは、例として、RGBのうちでいずれか一色についてのみ波長を+5%伸ばし、残る二つの色については、回折波長の操作を行わない状態を示している。
感光材料50に対して左側(例えば表側)の光路中には、点光源61・62と、ダイクロイックミラー63とが配置されており、右側(例えば裏側)の光路中には、点光源64・65と、自由曲面ミラー66・67と、ダイクロイックミラー68と、色補正プリズム69とが配置されている。
点光源61から出射されたレーザ光(例えばRおよびGのレーザ光)は、ダイクロイックミラー63の表面で反射された後、接眼プリズム21を介して感光材料50に入射する。また、点光源62から出射されたレーザ光(例えばBのレーザ光)は、ダイクロイックミラー63に入射し、ダイクロイックミラー63の入射面および出射面で屈折した後、接眼プリズム21を介して感光材料50に入射する。すなわち、RGBのうちで回折波長の操作を行わない色のレーザ光がダイクロイックミラー63で反射し、波長を伸ばす色についてのレーザ光が、ダイクロイックミラー63を透過して、感光材料50に入射する。
一方、点光源64から出射されたレーザ光(例えばRおよびGのレーザ光)は、自由曲面ミラー66で反射された後、ダイクロイックミラー68の表面で反射され、色補正プリズム69を介して、感光材料50に接眼プリズム21とは反対側から入射する。また、点光源65から出射されたレーザ光(例えばBのレーザ光)は、自由曲面ミラー67で反射された後、ダイクロイックミラー68に入射し、ダイクロイックミラー68の入射面および出射面で屈折した後、色補正プリズム69を介して、感光材料50に接眼プリズム21とは反対側から入射する。すなわち、RGBのうちで回折波長の操作を行わない色のレーザ光がダイクロイックミラー68で反射し、波長を伸ばす色についてのレーザ光が、ダイクロイックミラー68を透過して、感光材料50に入射する。
このように、二光束を感光材料50の表裏からそれぞれ入射させることにより、二光束の干渉による縞が感光材料50に形成され、その結果、反射型のHOEが作製される。
図15において、感光材料50に対して左側の光路では、点光源62の位置、ダイクロイックミラー63の角度、厚みおよび屈折率を適切に選択することにより、感光材料50に対する入射角度の変更に伴う不均一な波長シフト、つまり、入射位置によって波長シフト量が変動する上述の問題を解消することができる。感光材料50に対して右側の光路では、レーザ光が平行光に近い状態であるために、平板(ダイクロイックミラー68)を透過しても、不均一な波長シフトの補正にならないため、自由曲面ミラー67によって補正を行っている。
なお、ここでは、ダイクロイックミラー68で反射する光の波長が二種類あり、これら二種類の波長については、同一の自由曲面ミラー66によって波面を変換している。画像観察時、接眼光学系6の接眼プリズム21において、波長によって光学面での屈折角度に差が生じることで、二波長間で画像の縦方向のずれが生じるため、それを補正する目的で、光路中に色補正プリズム69が配置されている。残る一波長については、自由曲面ミラー67によって上記の縦ずれを補正できるので、色補正プリズム69を透過する必要はない。したがって、色補正プリズム69の位置は、図15のように、ダイクロイックミラー68の下流側(ダイクロイックミラー68と感光材料50との間)であってもよいし、ダイクロイックミラー68の上流側(ダイクロイックミラー68と自由曲面ミラー66との間)であってもよい。
ここでは、RGBの3色のレーザ光で感光材料50を露光する場合について説明したが、RGBのうちのいずれか2色または1色のレーザ光で感光材料50を露光する場合についても、上述の露光光学系60を用いて感光材料50を露光することができる。このとき、どの色の点光源を、点光源61〜62、点光源64〜65の位置に配置するかは、使用時に用いる光源(回折ピーク波長からずらしたい使用波長)によって決めればよい。なお、単色で感光材料50を露光する場合は(モノクロのHOEを作製する場合は)、点光源61・64の位置から露光すると使用波長をずらすことができないため、点光源62・65の位置から露光することになる。また、RGBの3色とも、使用波長を回折ピーク波長からずらすことも可能であり、この場合は、点光源62の位置にRGBの3色の点光源を位置させればよい。
表5〜表10は、露光光学系60のコンストラクションデータおよび自由曲面ミラーの形状式係数を、波長ずらしなしおよび波長ずらし+5%のそれぞれの場合について示したものである。なお、コンストラクションデータにおけるx、y、zの各座標は、面における代表点の座標で示している。
Figure 2017161570
Figure 2017161570
Figure 2017161570
Figure 2017161570
Figure 2017161570
Figure 2017161570
なお、上記した露光光学系でHOEを作製する場合の作製波長(作製時のレーザ波長)、露光時の感光材料の収縮(例えば2.3%)を考慮したHOEの回折ピーク波長、使用時の光源の強度ピーク波長の一例は、以下の通りである。すなわち、作製波長は、476nm(B光)、532nm(G光)、647nm(R光)であり、HOEの回折ピーク波長は、465nm(B光)、520nm(G光)、632nm(R光)であり、使用時の光源の強度ピーク波長は、488nm(B光)、520nm(G光)、632nm(R光)である。つまり、この例は、G光およびR光については、使用時に設計位置(基準位置)に入射する光の波長(使用波長)が回折ピーク波長からずれず(使用時の光源の強度ピーク波長のままであり)、B光についてのみ使用波長が回折ピーク波長から+5%だけずれるように、感光材料を露光してHOEを作製するときの例である。
《第2の露光光学系》
次に、HOEを作製する露光光学系の他の実施例について説明する。図16は、HOEを製造する露光光学系70(第2の露光光学系)の概略の構成および光路を示す説明図である。なお、図16においても、図示しないレーザ光源からの光が二光束に分岐されて集光され、点光源となった状態から感光材料50の表裏に入射する部分のみを示している。
この例では、RGBのうちの一つの色(例えばG)については、光線の入射角度の変化による回折波長の操作を行わず、他の一つの色(例えばR)については、使用波長を5%伸ばし(+5%)、残る一つの色(例えばB)については、使用波長を5%縮める(−5%)場合について説明する。
感光材料50に対して左側(例えば表側)の光路中には、点光源71〜73と、ダイクロイックミラー74と、自由曲面ミラー75とが配置されており、右側(例えば裏側)の光路中には、点光源76〜78と、自由曲面ミラー79〜81とが配置されている。
左側の光路において、点光源71から出射されたレーザ光(例えばGのレーザ光)は、ダイクロイックミラー74の表面で反射された後、接眼プリズム21を介して感光材料50に入射する。また、点光源72から出射されたレーザ光(例えばRのレーザ光)は、ダイクロイックミラー74に入射し、ダイクロイックミラー74の入射面および出射面で屈折した後、接眼プリズム21を介して感光材料50に入射する。また、点光源73から出射されたレーザ光(例えばBのレーザ光)は、自由曲面ミラー75で反射した後、接眼プリズム21を介して感光材料50に入射する。すなわち、RGBのうちで回折波長の操作を行わない色のレーザ光がダイクロイックミラー74で反射し、回折波長を操作する色についてのレーザ光が、ダイクロイックミラー74を透過する、または自由曲面ミラー75で反射して、感光材料50に入射する。
一方、右側の光路において、点光源76から出射されたレーザ光(例えばGのレーザ光)は、自由曲面ミラー79で反射した後、感光材料50に接眼プリズム21とは反対側から入射する。また、点光源77から出射されたレーザ光(例えばRのレーザ光)は、自由曲面ミラー80で反射した後、感光材料50に接眼プリズム21とは反対側から入射する。また、点光源78から出射されたレーザ光(例えばBのレーザ光)は、自由曲面ミラー81で反射した後、感光材料50に接眼プリズム21とは反対側から入射する。
図16の例では、感光材料50に対して左側の光路においても、右側の光路においても、図15と比較して、感光材料50のある位置において、入射する他の2本の光線に対して入射角度の異なる光線が上側に一つ追加されており、これが波長を縮めるためのレーザ光の光路である。また、感光材料50の左側の光路については、上記上側の光線(レーザ光)を通すために、ダイクロイックミラー74の位置をずらし、また、断面台形状にカットしている。なお、ダイクロイックミラー74の角度や厚みについては、図15の場合と同じである。また、感光材料50の異なる位置に入射する上記上側の各光線は、自由曲面ミラー75によって一旦交わった後で、感光材料50に入射するように構成されている。自由曲面ミラー75と感光材料50との間で光路が交わっている部分を見れば、自由曲面ミラー75で反射した各光線が一点に集光せずに、ずれていることがわかる。
また、感光材料50の右側の光路については、色補正プリズムおよびダイクロイックミラーは無く、3つの自由曲面ミラー79〜81によってそれぞれ適切に波面が変換されている。ダイクロイックミラーを使用することもできるが、RGBの各レーザ光を角度差で空間的に分離できれば、ダイクロイックミラーを使用しなくてもよい。また、上述した観察時の画像の縦ずれについては、複数波長で共通に使用する光路がない場合、各自由曲面ミラー79〜81で個別に補正できるので、色補正プリズムは不要である。
表11〜表20は、露光光学系70のコンストラクションデータおよび自由曲面ミラーの形状式係数を、波長ずらしなし、波長ずらし+5%および波長ずらし−5%のそれぞれの場合について示したものである。なお、コンストラクションデータにおけるx、y、zの各座標は、面における代表点の座標で示している。
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なお、上記した露光光学系でHOEを作製する場合の作製波長(作製時のレーザ波長)、露光時の感光材料の収縮(例えば2.3%)を考慮したHOEの回折ピーク波長、使用時の光源の強度ピーク波長の一例は、以下の通りである。すなわち、作製波長は、476nm(B光)、532nm(G光)、647nm(R光)であり、HOEの回折ピーク波長は、465nm(B光)、520nm(G光)、632nm(R光)であり、使用時の光源の強度ピーク波長は、442nm(B光)、520nm(G光)、664nm(R光)である。つまり、この例は、G光については、使用時に設計位置(基準位置)に入射する光の波長(使用波長)が回折ピーク波長からずれず(使用時の光源の強度ピーク波長のままであり)、B光については使用波長が回折ピーク波長から−5%だけずれ、R光については使用波長が回折ピーク波長から+5%だけずれるように、感光材料を露光してHOEを作製するときの例である。
(まとめ)
以上のように、本実施形態のHOEの製造方法では、作製工程S2’(図5参照)において、少なくとも1色について、二光束の感光材料に対する入射角度をそれぞれ変化させることによって、使用時の縞の法線方向を設計した方向に維持しつつ、使用時にHOEにて回折反射されて基準位置に向かう光の使用波長を、HOEの回折ピーク波長からずらしている。そして、基準平面内において、作製時の二光束のうちで基準位置側から感光材料に発散状態で入射する一方の光束に含まれる各光線の、感光材料に入射する直前の光路を、感光材料側から逆トレースして直線状に延長したときに、延長した各光路が基準位置からずれた位置で交差することによって複数の交点が生じ、かつ、複数の交点の位置が二光束の感光材料に対する入射角度の変化によって互いにずれるように、使用波長が回折ピーク波長からずれる色についての一方の光束が発散して感光材料に入射している。特に、図12で示したように、基準平面内で、光線Cが光線A側に近づくにつれて、交点T2の位置が、交点T1側から感光材料側に近づく一方、光線Cが光線B側に近づくにつれて、交点T3の位置が、交点T1側から感光材料とは反対側に遠ざかるように、交点T1〜T3を含む複数の交点の位置がずれている。
使用時に、光学パワーを持つHOE23に入射した光が回折反射されて基準位置Oに導かれるときに、HOE23の使用時の波長と作製時の波長とが一致していない場合でも、作製時に用いる二光束のうちの一方(発散光)について、図10および図12で示した光路分布を作って感光材料50を露光することにより、作製されたHOE23の使用時において、光線の入射位置に関係なく、基準位置Oに入射する光の波長(使用波長)を、HOE23の回折ピーク波長(作製時のレーザ波長、または感光材料50の収縮後のHOE23の回折ピーク波長)から一律に変化させることができる(HOE23のどの入射位置でも、基準位置Oに向かう光の波長を同じ比率で回折ピーク波長からシフトさせることができる。これにより、使用時に観察画角内で色ムラが生じるのを低減することができる。
特に、RGBのうち2色(または3色)のレーザ光を用いてカラーのHOE23を作製する場合、1色(または2色)について、感光材料50の同じ位置に入射する光線の入射角度が、他の色と異なっており、感光材料50に対して基準位置O側に、複数の色に対応する複数の点光源(例えば図15では点光源61・62、図16では点光源71〜73)を位置させるとともに、複数の点光源のうち、入射角度が他の色と異なる光を出射する点光源(例えば図15では点光源62、図16では点光源72・73)と、感光材料50との間の光路中に光学素子(例えばダイクロイックミラー63、ダイクロイックミラー74、自由曲面ミラー75)を配置し、点光源62(点光源72・73)から出射される光のみを、上記光学素子によって、平面内で複数の交点の位置がずれるような発散光に変換して、感光材料50に入射させている。これにより、カラーのHOE23の作製において、使用波長をずらしたい色についてのみ、所望の光路分布を持つ発散光を生成してHOE23を作製し、HOE23の入射位置に関係なく、使用波長を一定の比率で変化させることが可能となる。
また、上記の光学素子は、(点光源62(点光源72)から出射される)光を透過させることによって上記発散光に変換する光学部材(例えば平板状のダイクロイックミラー63、ダイクロイックミラー74)を含んでいる。そのような光学部材を光路中に配置することにより、点光源を用いて上記発散光を容易に生成することが可能となる。
上記の光学部材は、(使用波長をずらしたい色の)光を出射する点光源(例えば点光源62・72)とは異なる点光源(例えば点光源61・71)から出射される他の色の光を反射させて、感光材料50に入射させてもよい。この場合、1つの光学部材を用いて、使用波長をずらす光(上記発散光)の感光材料50への入射と、使用波長をずらさない光の感光材料50への入射とを同時に実現できるため、コンパクトな構成で上述した本実施形態の効果を得ることができる。
特に、上記光学部材が、平板状のダイクロイックミラー63・64であれば、上記コンパクトな構成を確実に実現することができる。
また、上記した光学素子は、光(使用波長をずらしたい色の光)を反射させることによって上記発散光に変換する自由曲面ミラー75を含んでいてもよい。上記光学素子として、平板状のダイクロイックミラーを用いる場合は、上記ダイクロイックミラーの配置角度、厚さ、屈折率の3つの要因が、使用波長のずれ方に影響するため、使用波長を精度よくずらすためには、これら3つの要因を精度よく管理することが必要となる。これに対して、上記光学素子として、自由曲面ミラー75を用いる場合は、使用波長のずれ方は、反射面の面形状のみによって決まるため、面形状だけを管理することによって、使用波長を精度よくずらすことが可能となる。
上述したHOEの作製工程においては、感光材料50および上記光学素子を静止させた状態で、二光束を感光材料50に入射させている。このようにすることで、感光材料50等を移動させながらHOE23を作製する場合に比べて、安定した光学性能のHOE23を作製することが可能となる。特に、RGBの露光ごとに感光材料50等を移動させると、作製されたHOE23にRGB間での色ずれが生じることが懸念されるが、静止状態での露光により、このような懸念が全くなくなる。
また、本実施形態の映像表示装置1の製造方法は、映像表示装置1のHOE23を作製する際に、上述した本実施形態の製造方法を用いる。これにより、使用時に観察画角内での色ムラが低減された映像を観察者に観察させることができ、観察される映像の品位を向上させることができる。
なお、本実施形態では、一方向(Y方向)にのみ光学パワーを有するHOE23の製造方法について説明したが、X方向およびY方向の両方向に光学パワーを有するHOEを製造する場合でも、本実施形態のHOE23の製造方法を適用することは可能である。また、本実施形態では、HOE23が曲面形状である場合について説明したが、HOE23が平板状で形成される場合でも、本実施形態のHOE23の製造方法を適用することは可能である。
本発明は、例えば映像表示装置やHMDに用いられるHOEの製造に利用可能である。
2 照明光学系
5 表示素子
6 接眼光学系
21 接眼プリズム
23 HOE(ホログラフィック光学素子)
50 感光材料
61 点光源
62 点光源
63 ダイクロイックミラー(光学素子、光学部材)
71 点光源
72 点光源
73 点光源
74 ダイクロイックミラー(光学素子、光学部材)
75 自由曲面ミラー(光学素子)
A 光線(第1の光線)
B 光線(第2の光線)
C 光線(第3の光線)
L1 光束(一方の光束)
T1 交点(第1の交点)
T2 交点(第2の交点)
T3 交点(第3の交点)
O 基準位置
P 光学瞳

Claims (8)

  1. 少なくとも1色に対応する二光束を感光材料の表裏からそれぞれ入射させて、前記二光束の干渉による縞を前記感光材料に形成することにより、光学パワーを有する反射型のホログラフィック光学素子を作製する作製工程を含む、ホログラフィック光学素子の製造方法であって、
    作製時に用いる前記二光束の波長は、前記ホログラフィック光学素子の使用時の波長とは異なっており、
    使用時に、前記ホログラフィック光学素子に入射した光が回折反射されて一点またはほぼ一点に集光する設計時の位置を、基準位置としたとき、
    前記作製工程では、
    前記少なくとも1色について、前記二光束の前記感光材料に対する入射角度をそれぞれ変化させることによって、使用時の前記縞の法線方向を設計した方向に維持しつつ、使用時に前記ホログラフィック光学素子にて回折反射されて前記基準位置に向かう光の使用波長を、前記ホログラフィック光学素子の回折ピーク波長からずらし、
    使用時に表示面から出射された光が前記ホログラフィック光学素子で回折反射されて前記基準位置に導かれるときに、前記表示面の中心と前記基準位置とを光学的に結ぶ光路上を進行する、前記ホログラフィック光学素子に対する入射光線および出射光線を含む平面内において、
    作製時の前記二光束のうちで前記基準位置側から前記感光材料に発散状態で入射する一方の光束に含まれる各光線の、前記感光材料に入射する直前の光路を、前記感光材料側から逆トレースして直線状に延長したときに、延長した各光路が前記基準位置からずれた位置で交差することによって複数の交点が生じ、かつ、前記複数の交点の位置が前記二光束の前記感光材料に対する入射角度の変化によって互いにずれるように、前記使用波長が前記回折ピーク波長からずれる色についての前記一方の光束が発散して前記感光材料に入射し、
    前記平面内において、前記一方の光束に含まれる画角両端の2つの光線の、前記逆トレースして延長した各光路上での交点を第1の交点とし、前記2つの光線のうち、前記第1の交点と前記感光材料との間の光路中で、前記基準位置により近い側の光線を第1の光線とし、前記基準位置からより遠い側の光線を第2の光線とし、前記一方の光束に含まれる前記第1および前記第2の光線以外の光線を第3の光線とし、前記第1の光線と前記第3の光線との、前記逆トレースして延長した各光路上での交点を第2の交点とし、前記第2の光線と前記第3の光線との、前記逆トレースして延長した各光路上での交点を第3の交点としたとき、
    前記平面内で、前記第3の光線が前記第1の光線側に近づくにつれて、前記第2の交点の位置が、前記第1の交点側から前記感光材料側に近づく一方、前記第3の光線が前記第2の光線側に近づくにつれて、前記第3の交点の位置が、前記第1の交点側から前記感光材料とは反対側に遠ざかるように、前記第1、前記第2および前記第3の交点を含む前記複数の交点の位置がずれていることを特徴とするホログラフィック光学素子の製造方法。
  2. 前記作製工程では、
    複数の色に対応する二光束を感光材料の表裏からそれぞれ入射させて、カラーの前記ホログラフィック光学素子を作製し、
    1色または2色について、前記感光材料の同じ位置に入射する光線の入射角度が、他の色と異なっており、
    前記感光材料に対して前記基準位置側に、前記複数の色に対応する複数の点光源を位置させるとともに、前記複数の点光源のうち、前記入射角度が前記他の色と異なる光を出射する点光源と、前記感光材料との間の光路中に光学素子を配置し、
    前記点光源から出射される光のみを、前記光学素子によって、前記平面内で前記複数の交点の位置がずれるような発散光に変換して、前記感光材料に入射させることを特徴とする請求項1に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。
  3. 前記光学素子は、前記光を透過させることによって前記発散光に変換する光学部材を含むことを特徴とする請求項2に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。
  4. 前記光学部材は、前記光を出射する前記点光源とは異なる点光源から出射される前記他の色の光を反射させて、前記感光材料に入射させることを特徴とする請求項3に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。
  5. 前記光学部材は、平板状のダイクロイックミラーであることを特徴とする請求項3または4に記載のホログラフィック光学素子の製造方法。
  6. 前記光学素子は、前記光を反射させることによって前記発散光に変換する自由曲面ミラーを含むことを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載のホログラフィック光学素子の製造方法。
  7. 前記作製工程では、前記感光材料および前記光学素子を静止させた状態で、前記二光束を前記感光材料に入射させることを特徴とする請求項2から6のいずれかに記載のホログラフィック光学素子の製造方法。
  8. 照明光学系からの光を変調して映像を表示する表示素子と、
    前記表示素子からの映像光を、観察者の瞳が位置する設計時の基準位置に導く接眼光学系とを有し、
    前記接眼光学系は、
    前記映像光を内部で導光する接眼プリズムと、
    前記接眼プリズムに接して設けられ、前記接眼プリズム内部で導光された前記映像光を回折反射する体積位相型で反射型のホログラフィック光学素子とを有する映像表示装置の製造方法であって、
    前記接眼プリズムに感光材料を貼り付ける貼付工程と、
    前記感光材料を二光束で露光することにより、前記ホログラフィック光学素子を作製する露光工程とを有しており、
    前記露光工程では、請求項1から7のいずれかに記載の製造方法を用いて、前記ホログラフィック光学素子を作製することを特徴とする映像表示装置の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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