JP2017160125A - 核酸代謝拮抗剤が結合したポリアミノ酸誘導体。 - Google Patents

核酸代謝拮抗剤が結合したポリアミノ酸誘導体。 Download PDF

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大地 長井
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Abstract

【課題】 抗腫瘍効果を向上させるとともに、副作用、特に骨髄抑制が低い核酸代謝拮抗剤の高分子化プロドラッグを提供することを課題とする。【解決手段】 ポリエチレングリコールセグメント及び核酸代謝拮抗剤が、側鎖カルボキシ基に直接又は結合基を介して結合したポリアミノ酸誘導体であって、該ポリアミノ酸誘導体の分子量が20キロダルトン以上で200キロダルトン以下であり、該ポリアミノ酸誘導体におけるポリエチレングリコールセグメントの質量含有率が30質量%以上90質量%以下である、核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体。【選択図】なし

Description

本発明は、核酸代謝拮抗剤が結合したポリアスパラギン酸誘導体又はポリグルタミン酸誘導体、及びその用途に関する。
悪性腫瘍あるいはウイルス性疾患の治療を目的として、種々の核酸代謝拮抗剤の開発が行なわれている。例えば、抗腫瘍剤(抗癌剤)としてはシタラビン(cytarabine)、ゲムシタビン(gemcitabine)、ドキシフルリジン(doxifluridine)、アザシチジン(azacitidine)、デシタビン(decitabine)、ネララビン(nelarabine)等がある。また、抗ウイルス剤としては、ザルシタビン(zalcitabine)、ラミブジン(lamivudine)等が臨床で使用されている。
これらの核酸代謝拮抗剤は、in vitroの評価において、極めて強力な薬理活性を有する。しかしながら、これらの薬剤は生体内において代謝・排泄を受けやすく、in vivoの評価では本来の薬剤が持つ薬効を十分に発揮できない課題がある。これらの薬剤は、臨床上の治療用法としては、投与量が高用量を要するものが多い。例えば、ゲムシタビンは、in vitroにおける細胞増殖抑制活性評価(IC50値)は、パクリタキセルやドキソルビシン等の強力な抗腫瘍剤に匹敵する強い活性を有している。一方、ゲムシタビンの臨床用法は、体表面積あたりの用法として、1,000mg/mの高用量投与が必要である。これは、2’−デオキシシチジンの代謝酵素であるシチジン脱アミノ化酵素によって、ゲムシタビンの核酸塩基部分の4位アミノ基が代謝され、失活されることにより、in vivo利用率が低くなるためと考えられている(非特許文献1)。
薬剤の代謝・失活を抑制して、生物学的利用能を改善する目的で、高分子担体に薬剤を結合させた高分子化薬剤が研究されている。該高分子化薬剤は、高分子量化に基づき薬物動態が変化し、治療効果の向上がみられることが期待される。非特許文献2には、平均分子量約30キロダルトンのポリグルタミン酸類に、核酸代謝拮抗剤であるシタラビンを結合させた高分子化誘導体が記載されている。しかしながら、薬剤の高分子化誘導体は生体で異物認識されやすく、肝臓等の貪食系組織へ、多くの薬剤が捕捉されてしまう懸念がある。また、免疫を惹起して過敏反応を引き起こす場合があり、その様な場合には、薬剤として繰返し投与ができなくなる懸念がある。
高分子化誘導体の異物認識を回避する方法として、ポリエチレングリコールを利用する方法が知られている。例えば、特許文献1には、ポリエチレングリコール類にシチジン系誘導体を結合させた高分子化誘導体が記載されている。また、非特許文献3には、ポリエチレングリコール類の両末端にアスパラギン酸を分枝状に置換させ、それにシタラビンを適当な結合基を介して結合させた高分子化誘導体が記載されている。さらに、特許文献2には、ポリエチレングリコール鎖の末端にアミノ酸を用い分岐させ、その各分岐がベンジル脱離反応を受けた後に薬剤を放出する構造を持つ高分子化誘導体が記載されている。
これら高分子誘導体は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の加水分解速度と血漿中の加水分解速度の差が大きく、加水分解反応が生体内の酵素に大きく依存するため、臨床上における治療効果が患者の個体差に大きく影響される可能性がある。
特許文献3及び特許文献4には、ポリエチレングリコール類とポリ酸性アミノ酸とのブロック共重合体の側鎖カルボキシ基に、核酸代謝拮抗剤及び疎水性置換基を結合させた高分子化誘導体が記載されている。特許文献5には、ポリエチレングリコール類とポリ酸性アミノ酸とのブロック共重合体の側鎖カルボキシ基に、疎水性置換基を有するリンカーを介して核酸代謝拮抗剤を結合させた高分子化誘導体が記載されている。
これらの核酸代謝拮抗剤の高分子結合体は、側鎖カルボキシ基に疎水性置換基が導入された疎水性セグメントと、親水性セグメントであるポリエチレングリコールを併せ持つ双極性高分子である。このため、該核酸代謝拮抗剤の高分子結合体は、水溶液中において疎水性セグメントの分子間凝集により、疎水性セグメントを内核にして親水性セグメントを外側にした自己会合体を形成すると考えられる。
該核酸代謝拮抗剤の高分子結合体は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液において加水分解を受け、緩やかに結合していた核酸代謝拮抗剤を解離する物性を有する。したがって、これらの高分子化核酸代謝拮抗剤は、従来の核酸代謝拮抗剤と比較して低投与量で長期に亘り腫瘍増殖阻害効果を発揮し続ける特徴を有する。しかしながら、このような徐放性の核酸代謝拮抗剤プロドラッグは、薬効と同作用機作で生じる副作用も、長期に亘り発現させてしまう。核酸代謝拮抗剤は、白血球減少等の発現として認められる骨髄抑制が、用量制限因子として問題となっている。徐放性の核酸代謝拮抗剤プロドラッグである高分子化核酸代謝拮抗剤は、骨髄抑制を遷延させる傾向があり、治療効果の向上と副作用の低減を両立させた有用な治療方法を確立する上で、大きな課題となっている。
特表2003−524028号公報 特表2004−532289号公報 国際公開WO2006/120914号 国際公開WO2008/056596号 国際公開WO2008/056654号
Cancer Science、Japanese Cancer Association、Vol.95、p.105−111(2004)「キャンサー・サイエンス」、日本癌学会発行、2004年、第95巻、105−111頁 Cancer Research、American Association for Cancer Research、Vol.44、p.25−30(1984)「キャンサー・リサーチ」(米国)、米国癌学会発行、1984年、第44巻、25−30頁 Journal of Controlled Release、Elsevier、Vol.79、p.55−70(2002)「ジャーナル オブ コントロールドリリース」(英国)、エルゼヴィア発行、2002年、第79巻、55−70頁
本発明の目的は、抗腫瘍効果を向上させるとともに、副作用、特に骨髄抑制が低い核酸代謝拮抗剤を提供することを課題とする。具体的には、腫瘍増殖阻害効果を長期に亘り発揮しつつ、骨髄抑制が遷延化されない核酸代謝拮抗剤を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、ポリアスパラギン酸等のポリ酸性アミノ酸の側鎖カルボキシ基に、複数のポリエチレングリコールセグメントと複数の核酸代謝拮抗剤を結合させたポリアミノ酸誘導体が、抗腫瘍効果の向上と、副作用である骨髄抑制の遷延化を回避できることを見出した。
即ち、本発明は次の[1]〜[11]に関する。
[1] 複数単位のアスパラギン酸誘導体及び/又はグルタミン酸誘導体を含有するポリアミノ酸誘導体あって、その側鎖カルボキシ基に、ポリエチレングリコールセグメント及び核酸代謝拮抗剤が、直接又は結合基を介して結合しており、該ポリアミノ酸誘導体の分子量が20キロダルトン以上で200キロダルトン以下であり、該ポリアミノ酸誘導体におけるポリエチレングリコールセグメントの質量含有率が30質量%以上90質量%以下である、核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体。
[2] 前記ポリエチレングリコールセグメントが2〜80ユニット結合している前記[1]に記載の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体。
[3] 前記核酸代謝拮抗剤がアミノ基を有する核酸代謝拮抗剤であり、該核酸代謝拮抗剤はアミノ基でアミド結合を介して結合している前記[1]又は[2]に記載の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体。
[4] 前記核酸代謝拮抗剤の質量含有率が、2質量%以上60質量%以下である前記[1]〜[3]の何れか一項に記載の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体。
[5] 前記核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体が一般式(1)
Figure 2017160125
[式中、Rは水素原子、炭素数(C1〜C8)のアルキル基及びポリエチレングリコールセグメントからなる群から選択される基であり、Rは水素原子、炭素数(C1〜C8)のアシル基及び炭素数(C1〜C8)のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される基を示し、Rはポリエチレングリコールセグメントを示し、Rは核酸代謝拮抗剤結合残基を示し、Rはアスパラギン酸結合残基及び/又はアスパラギン酸イミド結合残基を示し、Rは水酸基及び/又は−N(R)CONH(R)を示し、該R及び該Rは同一でも異なってもいてもよく、三級アミノ基で置換されていても良い炭素数(C1〜C8)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を示し、X及びXは結合基であり、Xはメチレン基又はエチレン基であり、a、b、c、d、e、f、g、h及びiはそれぞれ独立して0〜200の整数を示し、ポリアミノ酸誘導体の総重合数である(a+b+c+d+e+f+g+h+i)は3〜250であり、(a+b)は1〜95であり、(c+d)は1〜175であり、前記Rが結合したアミノ酸単位、前記Rが結合したアミノ酸単位、前記Rが結合したアミノ酸単位、前記Rが結合したアミノ酸単位及び側鎖カルボキシ基が分子内環化型のアミノ酸単位が、それぞれ独立してランダムな配列である]で示される前記[1]〜[4]の何れか一項に記載の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体。
[6] Xは、下記一般式(2)又は一般式(3)
Figure 2017160125
[式中、R、R10はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数(C1〜C8)のアルキル基を示し、R11は水素原子、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアラルキル基、置換基を有していても良い芳香族基及びカルボキシ基が保護されたアミノ酸結合残基からなる群から選択される1種以上の基を示し、CX−CYはCH−CH若しくはZ配置のC=C(二重結合)を示す]である前記[5]に記載の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体。
[6] Rが下記一般式(4)、一般式(5)及び一般式(6)
Figure 2017160125
[式中、R、R10、R11、CX−CYは前記と同じ意味を示し、R12は水酸基及び/又は−N(R13)CONH(R14)を示し、R13、R14は同一でも異なっていてもよく、三級アミノ基で置換されていても良い炭素数(C1〜C8)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を示す]からなる置換基群から選ばれる1種以上の基である前記[5]又は[6]に記載の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体。
[8] Rのポリエチレングリコールセグメントが、下記一般式(7)
Figure 2017160125
[式中、R15は水素原子又は置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を示し、nは5〜2,500の整数を示す]である前記[5]〜[7]の何れか一項に記載の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体。
[9] 核酸代謝拮抗剤が式(8):
Figure 2017160125
[式中、−Rfは、式(9):
Figure 2017160125
の置換基群より選ばれる基を示し、R16は水素原子又は脂肪酸エステルのアシル基を示す]で表される、いずれか1種以上の核酸代謝拮抗剤である、前記[1]〜[8]の何れか一項に記載の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体。
[10] 核酸代謝拮抗剤が式(10):
Figure 2017160125
[式中、−Rfは、式(11):
Figure 2017160125
の置換基群より選ばれる基を示し、R16は水素原子又は脂肪酸エステルのアシル基を示す]で表される前記[1]〜[9]の何れか一項に記載の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体。
[11] 前記[1]〜[10]に記載の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体を含有する医薬。
本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体は、ポリマー主鎖が側鎖カルボキシ基を有するアスパラギン酸及び/又はグルタミン酸であって、該側鎖カルボキシ基に、複数のポリエチレングリコールセグメント及び複数の核酸代謝拮抗剤を具備することを特徴とする。該ポリアミノ酸誘導体は、生体内に投与後、血中に滞留して体内分布しつつ、結合していた核酸代謝拮抗剤を徐々に解離して放出する物性を有する。該ポリアミノ酸誘導体は、適正範囲の分子量に制御すると共に、ポリエチレングリコールセグメントの含有量を制御することにより、核酸代謝拮抗剤の薬効を向上させつつ、副作用を回避することができる。特に骨髄抑制の遷延化を回避する薬剤を提供することができる。
本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体は、複数単位のアスパラギン酸誘導体及び/又はグルタミン酸誘導体を含有するポリアミノ酸誘導体であって、複数個を具備する側鎖カルボキシ基に対して、ポリエチレングリコールセグメントと核酸代謝拮抗剤であるヌクレオシド誘導体を具備することを特徴とする。以下に、その詳細について説明する。
本発明の、核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体は、複数単位のアスパラギン酸誘導体及び/又はグルタミン酸誘導体を含有するポリアミノ酸誘導体をポリマー主鎖構造とする高分子化合物である。すなわち、ポリマー主鎖として、酸性アミノ酸であるアスパラギン酸及び/又はグルタミン酸を含み、複数の側鎖カルボキシ基を有するポリアミノ酸誘導体を高分子担体の主鎖構造とし、該側鎖カルボキシ基が、ポリエチレングリコールセグメント及び核酸代謝拮抗剤により化学的に官能基化された高分子化誘導体である。
当該ポリアミノ酸誘導体のポリマー主鎖としては、複数のアスパラギン酸及び/又はグルタミン酸を含有し、複数の側鎖カルボキシ基を具備するポリマー構造物であれば特に限定されるものではない。すなわち、アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸を複数ユニット含有していれば良く、任意に他のアミノ酸を含有するポリアミノ酸誘導体であっても良い。該他のアミノ酸としては、天然アミノ酸または非天然アミノ酸であって良く、L体、D体のいずれでも特に限定されずに用いることができる。他のアミノ酸としては、例えば、グリシン、β−アラニン、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン等の炭化水素系アミノ酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸等を挙げることができる。
該ポリアミノ酸誘導体の側鎖カルボキシ基は、後述するポリエチレングリコールセグメント及び核酸代謝拮抗剤を結合させるための結合性官能基として用いられる。このため、当該ポリアミノ酸誘導体は、側鎖カルボキシ基の含有量が多い方が好ましい。したがって、当該ポリアミノ酸誘導体のポリマー主鎖は、アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸の含有ユニットが該ポリアミノ酸構成の50ユニット%以上含有するポリアミノ酸主鎖ポリマーであることが好ましく、該アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸ユニットが80ユニット%以上含有する主鎖ポリマーがより好ましい。特に好ましくは、アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸で構成されるポリアミノ酸主鎖である。すなわち、特に好ましい当該ポリアミノ酸主鎖としては、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸又はポリ(アスパラギン酸−グルタミン酸)共重合体である。
当該ポリアミノ酸誘導体における、アスパラギン酸は、一方のカルボキシ基が結合性官能基として機能できるよう側鎖として残り、もう一方のカルボキシ基を用いたアミド結合によりポリアミノ酸主鎖を構築する。ポリアミノ酸主鎖を構築するカルボキシ基は、α−アミド結合型重合体であっても、β−アミド結合型重合体であっても、その混合物であっても良い。また、当該ポリアミノ酸誘導体における、グルタミン酸も同様に、一方のカルボキシ基が結合性官能基として機能できるよう側鎖として残り、もう一方のカルボキシ基を用いたアミド結合によりポリアミノ酸主鎖を構築する。ポリアミノ酸主鎖を構築するカルボキシ基は、α−アミド結合型重合体であっても、γ−アミド結合型重合体であっても、その混合物であっても良い。
当該ポリアミノ酸誘導体のポリマー主鎖が、ポリアスパラギン酸又はポリグルタミン酸である場合、アスパラギン酸又はグルタミン酸が適当ユニット数で重合した構造物であるが、これはα−アミド結合型重合体であっても、β−アミド結合型重合体又はγ−アミド結合型重合体であっても良く、また、それらの混合物であっても良い。
当該ポリアミノ酸誘導体のポリマー主鎖が、前記ポリ(アスパラギン酸−グルタミン酸)共重合体である場合は、アスパラギン酸とグルタミン酸が混在したポリアミノ酸構造体であり、ランダム結合体であっても、ブロック結合体であっても良い。結合様式としては、α−アミド結合型重合体であっても、側鎖カルボキシ基とのβ−アミド結合型重合体又はγ−アミド結合型重合体であってもよく、それらの混合物であっても良い。
前記ポリアミノ酸誘導体のアミノ酸主鎖の重合数としては、3〜300ユニットの重合体であることが好ましい。より好ましくはアミノ酸主鎖の重合数として3〜250ユニットであり、特に好ましくは重合数が10〜200ユニットである。そのうち、アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸の含有ユニット数が3〜300であり、好ましくは3〜250ユニットであり、特に好ましくは10〜200ユニットである。
前記ポリアミノ酸誘導体の末端基は、N末端基及びC末端基共に特に限定されるものではなく、無保護の遊離アミノ基及び遊離カルボン酸、並びにそれらの塩であっても良く、N末端基及びC末端基の適当な修飾体であっても良い。
該ポリアミノ酸誘導体のN末端基の修飾体としては、アシルアミド型修飾体、アルコキシカルボニルアミド型修飾体(ウレタン型修飾体)、アルキルアミノカルボニルアミド型修飾体(ウレア型修飾体)等を挙げることができる。
一方、該ポリアミノ酸誘導体のC末端基の修飾体としては、エステル型修飾体、アミド型修飾体、チオエステル型修飾体が挙げられる。
該ポリアミノ酸誘導体のN末端基及びC末端基の修飾基は、任意の修飾基であって良い。両末端基は、該ポリアミノ酸誘導体の親水性を妨げない置換基であることが好ましい。好ましくは、N末端基及びC末端基に結合する適当な結合基を介して、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数(C6〜C18)の芳香族基、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキル基等である末端修飾基を挙げることができる。または、水溶性を付与できるポリエチレングリコール置換基であっても良く、N末端基及びC末端基に結合する適当な結合基を介して結合した末端修飾基であることが挙げられる。
すなわち、N末端基は、適当なアシルアミド型修飾体又はアルコキシカルボニルアミド型修飾体(ウレタン型修飾体)であることが好ましく、カルボニル基又はカルボニルオキシ基を介した、前記置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数(C6〜C18)の芳香族基、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキル基であることが好ましい。
一方、C末端基としては、適当なアミド型置換基又はエステル型置換基であることが好ましく、アミド基又はエステル基を介した、前記置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数(C6〜C18)の芳香族基、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキル基であることが好ましい。
本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体は、側鎖カルボキシ基に、直接又は結合基を介して、ポリエチレングリコールセグメントが結合している。該ポリエチレングリコールセグメントは、エチレンオキシ基;(CHCHO)単位の繰り返し構造を有するセグメントである。好ましくはエチレンオキシ基単位重合度が5〜10,000ユニット、より好ましくは重合度が5〜5,000ユニットのポリエチレングリコール鎖を含むセグメント構造である。
すなわち該ポリエチレングリコールセグメントとは、ポリエチレングリコール相当の分子量として200ダルトン〜500キロダルトンのセグメント部であることが好ましく、より好ましくは分子量として200ダルトン〜250キロダルトンの構造部分であり、特に好ましくは分子量として200ダルトン〜150キロダルトンである。分子量が、1,000ダルトン〜50キロダルトンのポリエチレングリコールセグメントであることが、殊更好ましい。
なお、本発明で用いるポリエチレングリコールセグメントの分子量とは、本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体を調製する際において、用いるポリエチレングリコールセグメント構造化合物の、ポリエチレングリコール標準品を基準としたGPC法により測定されるピークトップ分子量により求められる平均分子量を採用する。
該ポリエチレングリコールセグメントの一方の末端基は、前記ポリアミノ酸主鎖のカルボキシ基と、直接又は結合基を介して結合するための連結基である。すなわち、エチレンオキシ基;(CHCHO)単位の酸素原子が末端基となる。
また、該ポリエチレングリコールセグメントのもう一方の末端基は、特に限定されるものではなく、水素原子、水酸基、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)のアルコキシ基、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキルオキシ基等を挙げることができる。該アルコキシ基、アラルキルオキシ基における置換基としては、水酸基、アミノ基、ホルミル基、カルボキシル基等が挙げられる。
該末端基における置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)のアルコキシ基としては、直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数(C1〜C8)のアルコキシ基が挙げられる。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、ネオペンチルオキシ基、1−エチルプロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、4−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、1−メチルペンチルオキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基、2,2−ジメチルブトキシ基、1,1−ジメチルブトキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基、1,3−ジメチルブトキシ基、2,3−ジメチルブトキシ基、2−エチルブトキシ基、シクロプロポキシ基、シクロペンチルオキシ基又はシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。好ましくは炭素数(C1〜C4)のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基又はt−ブトキシ基等であり、特に好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基又はイソプロポキシ基である。
該末端基における置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキルオキシ基としては、いずれか1カ所の水素原子がアリール基で置換されている直鎖または分岐鎖アルキル基である。例えば、ベンジルオキシ基、2−フェニルエチルオキシ基、4−フェニルブチルオキシ基、3−フェニルブチルオキシ基、5−フェニルペンチルオキシ基、6−フェニルへキシルオキシ基、8−フェニルオクチルオキシ基等が挙げられる。好ましくはベンジルオキシ基、4−フェニルブチルオキシ基、8−フェニルオクチルオキシ基である。
本発明におけるポリアミノ酸誘導体は、前記ポリエチレングリコールセグメントが、側鎖カルボキシ基に直接又は結合基を介して結合している。該ポリエチレングリコールセグメントが、該側鎖カルボキシ基に直接結合している態様としては、エチレンオキシ基;(CHCHO)単位の末端基が酸素原子であり、該側鎖カルボキシ基とエステル結合している態様である。
本発明は、該ポリエチレングリコールセグメントが、結合基を介して該側鎖カルボキシ基に結合している態様も含まれる。該結合基は、一方の末端基が、該ポリエチレングリコールセグメントの末端酸素原子とエーテル結合様式、エステル結合、ウレタン結合又はカーボネート結合する結合性官能基を有し、もう一方の末端基が、該側鎖カルボキシ基とエステル結合、アミド結合、チオエステル結合する結合性官能基を有する、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)のアルキレン基であることが好ましい。
前記結合基において、前記ポリエチレングリコールセグメントとエーテル結合し、側鎖カルボキシ基とアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合する結合基として、例えば、−(CH−NH−(xは1〜8の整数を示す)、−(CH−O−(xは1〜8の整数を示す)、−(CH−S−(xは1〜8の整数を示す)が挙げられる。ポリエチレングリコールセグメントとエステル結合し、側鎖カルボキシ基とアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合する結合基として、例えば、−CO−(CH−NH−(xは1〜8の整数を示す)、−CO−(CH−O−(xは1〜8の整数を示す)、−CO−(CH−S−(xは1〜8の整数を示す)が挙げられる。ポリエチレングリコールセグメントとウレタン結合し、側鎖カルボキシ基とアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合する結合基として、−CONH−(CH−NH−(xは1〜8の整数を示す)、−CONH−(CH−O−(xは1〜8の整数を示す)、−CONH−(CH−S−(xは1〜8の整数を示す)を挙げることができる。ポリエチレングリコールセグメントとカーボネート結合した様式とし、側鎖カルボキシ基とアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合する結合基として、−COO−(CH−NH−(xは1〜8の整数を示す)、−COO−(CH−O−(xは1〜8の整数を示す)、−COO−(CH−S−(xは1〜8の整数を示す)を挙げることができる。該結合基としては、ポリエチレングリコールセグメントとエーテル結合し、側鎖カルボキシ基とアミド結合する結合基である−(CH−NH−(xは1〜8の整数を示す)が特に好ましい。
また、ポリエチレングリコールセグメントと側鎖カルボキシ基の前記結合基として、アミノ酸誘導体を用いても良い。アミノ酸誘導体を結合基とする場合、該アミノ酸のN末アミノ基が、前記側鎖カルボキシ基とアミド結合し、C末カルボキシ基が、該ポリエチレングリコールセグメントの末端酸素原子とエステル結合する態様で用いられる。
該結合基としてアミノ酸誘導体を用いる場合、用いられるアミノ酸は、天然アミノ酸または非天然アミノ酸であってよく、L体、D体のいずれでも特に限定されずに用いることができる。例えば、グリシン、β−アラニン、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン等の炭化水素系アミノ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸等を用いることができる。
前記ポリエチレングリコールセグメントは、本発明に係るポリアミノ酸誘導体の複数有る側鎖カルボキシ基に対し、2〜80ユニットが結合していることが好ましい。すなわち、当該核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体は、複数ユニットのポリエチレングリコールセグメントを具備することが好ましい。より好ましくは2〜70ユニットのポリエチレングリコールセグメントを具備するものであり、特に好ましくは2〜60ユニットが結合した態様である。
本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体は、側鎖カルボキシ基に直接又は結合基を介して、核酸代謝拮抗剤を結合している。核酸代謝拮抗剤は、抗腫瘍活性又は抗ウイルス活性等の薬理活性を有するヌクレオシド誘導体の構造の化合物である。本発明における核酸代謝拮抗剤としては、ピリミジン塩基ヌクレオシド誘導体、プリン塩基ヌクレオシド誘導体、トリアジン塩基ヌクレオシド誘導体等を用いることが好ましい。該核酸代謝拮抗剤は、分子内にアミノ基及び/又は水酸基を有する化合物を用いることが好ましい。すなわち、前記アミノ基及び/又は水酸基によるアミド結合及び/又はエステル結合を介して、前述のポリアミノ酸主鎖に導入することができることから好ましい。特に、ヌクレオシドの核酸塩基にアミノ基を有する核酸代謝拮抗剤を用いることが好ましく、アミノ基を有するピリミジン塩基ヌクレオシド誘導体、アミノ基を有するプリン塩基ヌクレオシド誘導体、アミノ基を有するトリアジン塩基ヌクレオシド誘導体が好ましい。アミノ基を有する核酸代謝拮抗剤は、該アミノ基によるアミド結合でポリアミノ酸誘導体に導入することができることから、殊更好ましい。
当該核酸代謝拮抗剤として、抗腫瘍活性や抗ウイルス活性を有する複数の化合物が知られている。例えば、下記式(12)に構造を示すシタラビン(cytarabine)、ゲムシタビン(gemcitabine)、アザシチジン(azacitidine)、デシタビン(decitabine)、ネララビン(nelarabine)、2’−メチリデン−2’−デオキシシチジン(DMDC)、トロキサシタビン(troxacitabine)、3’−エチニルシチジン(Ethynylcytidine)、2’−シアノ−2’−デオキシ−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン(CNDAC)、2’−デオキシ−5、6−ジヒドロ−5−アザシチジン(DHAC)、5’−フルオロ−2’−デオキシシチジン(NSC−48006)、4’−チオ−β−D−アラビノフラノシルシトシン(OSI−7836)、クラドリビン(Cladribine)、クロファラビン(Clofarabine)又はフルダラビン(Fludarabine)、シタラビン−5’−エライジン酸エステル(CP−4055)、ゲムシタビン−5’−エライジン酸エステル(CP−4126)等が挙げられる。本発明のポリアミノ酸誘導体に用いられる核酸代謝拮抗剤は、これらの化合物に限定されるものではないが、適用する好ましい化合物として挙げることができる。
Figure 2017160125
本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体は、前記核酸代謝拮抗剤をポリアミノ酸の側鎖カルボキシ基へ、直接又は結合基を介して結合させたものである。
該核酸代謝拮抗剤を該側鎖カルボキシ基へ直接結合させる場合は、アミノ基及び/又は水酸基を有する核酸代謝拮抗剤を用い、該アミノ基による該側鎖カルボキシ基とのアミド結合又は該水酸基による該側鎖カルボキシ基とのエステル結合にて結合させれば良い。結合様式は、アミド結合のみの場合、エステル結合のみの場合、又はアミド結合とエステル結合との混合体の場合の何れでも良い。用いる核酸代謝拮抗剤の結合性官能基に応じて、側鎖カルボキシ基への結合様式を適宜選択して良い。
また、該核酸代謝拮抗剤は、該側鎖カルボキシ基へ適当な結合基を介して結合させる態様も含まれる。該結合基は、一方の末端基が、該核酸代謝拮抗剤の結合性官能基であるアミノ基及び/又は水酸基とアミド結合、エステル結合、カーボネート結合、ウレタン結合又はウレア結合できる結合性官能基を有し、もう一方の末端基が、該側鎖カルボキシ基とアミド結合、エステル結合、チオエステル結合する結合性官能基を有する、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)アルキレン基であることが好ましい。
核酸代謝拮抗剤と側鎖カルボキシ基を結合させる前記結合基において、核酸代謝拮抗剤のアミノ基及び/又は水酸基とアミド結合又はエステル結合し、側鎖カルボキシ基とアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合する様式としては、例えば、−CO−(CH−NH−(yは1〜8の整数を示す)、−CO−(CH−O−(yは1〜8の整数を示す)、−CO−(CH−S−(yは1〜8の整数を示す)が挙げられる。核酸代謝拮抗剤とウレア結合又はウレタン結合し、側鎖カルボキシ基とアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合する様式としては、例えば、−CONH−(CH−NH−(yは1〜8の整数を示す)、−CONH−(CH−O−(yは1〜8の整数を示す)、−CONH−(CH−S−(yは1〜8の整数を示す)が挙げられる。一方、核酸代謝拮抗剤とカーボネート結合し、側鎖カルボキシ基とアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合する様式としては、例えば、−COO−(CH−NH−(yは1〜8の整数を示す)、−COO−(CH−O−(yは1〜8の整数を示す)、−COO−(CH−S−(yは1〜8の整数を示す)を挙げることができる。
前記結合基のアルキレン基は水素原子が適当な置換基により修飾されていても良い。該置換基としては、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、炭素数(C1〜C8)のアルキル基、炭素数(C1〜C8)のアルキルカルボニルアルコキシ基、炭素数(C1〜C8)のアルキルカルボニルアミド基、炭素数(C1〜C8)のアルキルカルボニルアルキルアミド基、炭素数(C1〜C8)のアルキルアリール基、炭素数(C1〜C8)のアルコキシ基、炭素数(C1〜C8)のアルキルアミノ基、炭素数(C1〜C8)のアシルアミド基、炭素数(C1〜C8)のアルコキシカルボニルアミノ基等を挙げることができる。
前記結合基は、核酸代謝拮抗剤との結合側がカルボキシ基であり、もう一方がアミノ基又は水酸基を有する−CO−(CH−NH−(yは1〜8の整数を示す)、−CO−(CH−O−(yは1〜8の整数を示す)が好ましい。特に好ましくは、該核酸代謝拮抗剤とアミド結合又はエステル結合することができるカルボキシ基を有すると共に、該側鎖カルボキシ基とアミド結合できるアミノ基を有する−CO−(CH−NH−(yは1〜8の整数を示す)である。
該結合基として、好ましい−CO−(CH−NH−(yは1〜8の整数を示す)としては、−CO−CH−NH−、−CO−(CH−NH−、−CO−(CH−NH−、−CO−(CH−NH−である。
前記核酸代謝拮抗剤の、好ましい結合基として挙げた置換基を有していても良い−CO−(CH−NH−(yは1〜8の整数を示す)基において、該yが1の場合はアミノ酸骨格と同義である。したがって、当該結合基としてアミノ酸誘導体を用いても良い。該アミノ酸誘導体を結合基として用いる場合、該アミノ酸のN末アミノ基が前記側鎖カルボキシ基とアミド結合し、C末カルボキシ基が該核酸代謝拮抗剤のアミノ基又は水酸基とアミド結合又はエステル結合する態様の結合基として用いられる。
当該結合基としてアミノ酸誘導体を用いる場合、用いられるアミノ酸は、天然アミノ酸または非天然アミノ酸であってよく、L体、D体のいずれでも特に限定されずに用いることができる。例えば、グリシン、β−アラニン、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン等の炭化水素系アミノ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸等を用いることができる。
前記核酸代謝拮抗剤の結合基としてアミノ酸誘導体を用いる場合、アスパラギン酸誘導体を用いることが好ましい。該アスパラギン酸誘導体としては、α−カルボキシ基が前記核酸代謝拮抗剤の結合基として機能し、β−カルボキシ基がアミド体であるアスパラギン酸誘導体結合基である。または、β−カルボキシ基が前記核酸代謝拮抗剤の結合基として機能し、α−カルボキシ基がアミド体であるアスパラギン酸誘導体であっても良い。該核酸代謝拮抗剤の結合基ではないもう一方のカルボキシ基における該アミド体とは、例えば置換基を有していても良い炭素数(C1〜20)のアルキルアミド、置換基を有していても良い炭素数(C5〜C20)の芳香族アミド、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキルアミド又はカルボキシ基が保護されたアミノ酸残基等が挙げられる。
核酸代謝拮抗剤と側鎖カルボキシ基を結合させる前記結合基は、一方のカルボキシ基が核酸代謝拮抗剤の結合基であり、一方のカルボキシ基がアミド誘導体であるアスパラギン酸誘導体を用いた場合が、核酸代謝拮抗剤の確実な解離が促されることから、特に好ましい。
結合基としてのアスパラギン酸誘導体の置換基を有していても良い炭素数(C1〜20)のアルキルアミドとしては、例えば、メチルアミド、エチルアミド、イソプロピルアミド、t−ブチルアミド、シクロヘキシルアミド、ドデシルアミド、オクタデシルアミド等が挙げられる。該アスパラギン酸誘導体の置換基を有していても良い炭素数(C5〜C20)の芳香族アミドとしては、例えば、フェニルアミド、4−メトキシフェニルアミド、4−ジメチルアミノフェニルアミド、4−ヒドロキシフェニルアミド等が挙げられる。該アスパラギン酸誘導体の置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキルアミドとしては、例えば、ベンジルアミド、2−フェニルエチルアミド、4−フェニルブチルアミド、8−フェニルオクチルアミド等が挙げられる。該アスパラギン酸誘導体のカルボキシ基が保護されたアミノ酸アミドとしては、例えば、グリシニル−メチルエステル、アラニル−メチルエステル、ロイシニル−メチルエステル、イソロイシニル−メチルエステル、バリニル−メチルエステル、フェニルアラニル−メチルエステル、アラニル−エチルエステル、ロイシニル−エチルエステル、イソロイシニル−エチルエステル、アラニル−ブチルエステル、ロイシニル−ブチルエステル等が挙げられる。
本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体は、アミノ基及び/又は水酸基を有する核酸代謝拮抗剤が、アスパラギン酸ユニットのカルボキシ基に直接結合した態様であることが好ましい。すなわち、当該ポリアミノ酸の主鎖ポリマーがポリアスパラギン酸である場合、主鎖ポリマーの側鎖カルボキシ基に該核酸代謝拮抗剤が直接結合して良く、また、核酸代謝拮抗剤と側鎖カルボキシ基を結合させる結合基としてアスパラギン酸誘導体を用いて、核酸代謝拮抗剤を結合させても良い。
また、当該ポリアミノ酸の主鎖ポリマーがポリグルタミン酸である場合、核酸代謝拮抗剤と側鎖カルボキシ基を結合させる結合基としてアスパラギン酸誘導体を用いて、核酸代謝拮抗剤を結合させることが好ましい。結合基として用いる該アスパラギン酸誘導体は、アスパラギン酸アミド誘導体を用いることが好ましい。
本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体は、複数のアスパラギン酸誘導体及び/又はグルタミン酸誘導体を含有するポリアミノ酸を主鎖として、該アスパラギン酸及び/又は該グルタミン酸の側鎖カルボキシ基に、ポリエチレングリコールセグメントと核酸代謝拮抗剤が、直接又は結合基を介して結合した化学構造を特徴とするポリアミノ酸誘導体であり、該ポリアミノ酸誘導体の分子量が20キロダルトン以上で200キロダルトン以下であることを特徴とする。より好ましくは、分子量が20キロダルトン以上であり160キロダルトン以下である。
本発明のポリアミノ酸誘導体の分子量は、上記の構成部分の各構成分子量を合算した計算値を当該「ポリアミノ酸誘導体の分子量」として採用する。すなわち、(1)ポリアミノ酸主鎖の分子量、(2)ポリエチレングリコールセグメントの分子量にその結合数を乗じたポリエチレングリコールセグメントの総分子量、(3)核酸代謝拮抗剤の結合残基分子量にその結合数を乗じた核酸代謝拮抗剤の総分子量、(4)任意のポリエチレングリコールセグメントの結合基残基分子量にその結合数を乗じた該結合基の総分子量、並びに(5)任意の核酸代謝拮抗剤の結合基残基分子量にその結合数を乗じた該結合基の総分子量、を合算した計算値を当該分子量とする。
当該ポリアミノ酸誘導体の分子量は、キロダルトン単位での精度による分子量規定が求められるものである。したがって、前記各構成部分の分析方法は、当該ポリアミノ酸誘導体のキロダルトン単位での分子量測定において、十分な精度の分析方法であれば特に限定されるものではなく、様々な分析方法を適宜選択して良い。以下に、各構成部分における好ましい分析方法を挙げる。
前記(1)ポリアミノ酸主鎖の分子量は、該主鎖の重合モノマー単位の分子量にその重合数を乗じた計算値である。該重合数はH−NMRの積分値から算出された重合数や、アミノ酸分析により算出される重合数を用いることができる。該ポリアミノ酸主鎖が、ポリアスパラギン酸等の単一のアミノ酸構成によるポリマー主鎖である場合は、H−NMRの分析が簡便であり好ましく、H−NMRの積分値から基準となるプロトンの積分値を用いて算出された重合数を用いることが好ましい。
前記(2)ポリエチレングリコールセグメントの総分子量は、ポリエチレングリコールセグメントの分子量にその結合量を乗じた計算値である。ポリエチレングリコールセグメントの分子量は、用いるポリエチレングリコールセグメント構造化合物の、ポリエチレングリコール標準品を基準としたGPC法により測定されるピークトップ分子量により求められる平均分子量を採用する。
ポリエチレングリコールセグメントの結合量は、核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体から、ポリエチレングリコールセグメントを開裂させて、遊離するポリエチレングリコールセグメントを定量分析することにより求める方法が挙げられる。または、核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体の構成成分はポリエチレングリコールセグメント,ポリアミノ酸主鎖および核酸代謝拮抗剤であるので,アミノ酸分析により算出されるアミノ酸主鎖の質量含有率と当該核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体を加水分解し、遊離する核酸代謝拮抗剤を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)定量分析することによって算出される核酸代謝拮抗剤の質量含有率を求め,残りの質量含有率をポリエチレングリコールセグメントとして算出する方法を用いても良い。若しくは、当該ポリアミノ酸主鎖に対しポリエチレングリコールセグメントを導入する反応において、ポリエチレングリコールセグメントの消費率から算出する方法であっても良い。
なお、前記(4)の任意のポリエチレングリコールセグメントの結合基の総分子量は、該結合基残基分子量にその結合数を乗じた計算値である。該結合基の結合数は、前述のポリエチレングリコールセグメントの結合数と同じであり、その値を用いることで算出することができる。
前記(3)核酸代謝拮抗剤の総分子量は、核酸代謝拮抗剤の結合残基分子量にその結合数を乗じた計算値である。該核酸代謝拮抗剤の結合数は、当該核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体を加水分解し、遊離する核酸代謝拮抗剤を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量分析することによって算出された値を用いることが好ましい。
なお、前記(5)の、任意の核酸代謝拮抗剤の結合基の総分子量は、該結合基残基分子量にその結合数を乗じた計算値である。該結合基の結合数は、前述の核酸代謝拮抗剤の結合数と同じであり、その値を用いることで算出することができる。
本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体は、該ポリアミノ酸誘導体におけるポリエチレングリコールセグメントの質量含有率が、30質量%以上90質量%以下であることを特徴とする。該ポリエチレングリコールセグメントの質量含有率は、前述の該ポリアミノ酸誘導体の分子量に対する、前記(2)のポリエチレングリコールセグメントの総分子量の含有比率により算出することができる。すなわち、ポリエチレングリコールセグメントの質量含有率は、以下の式で算出する。
(計算式) ポリエチレングリコールセグメントの質量含有率(%)=ポリエチレングリコールセグメント総分子量/ポリアミノ酸誘導体分子量×100
前記ポリエチレングリコールセグメントの質量分子量は、30質量%以上90質量%以下であり、35質量%以上85質量%以下であることが好ましい。
本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体は、該ポリアミノ酸誘導体における核酸代謝拮抗剤の質量含有率が、2質量%以上60質量%以下であることが好ましい。
核酸代謝拮抗剤の含有率が2質量%より少ないと、核酸代謝拮抗剤の有効量を確保するために当該ポリアミノ酸誘導体の総投与量が多くなり、投与利便性が低下するため好ましくない。一方、核酸代謝拮抗剤の含有率が60質量%より多い場合、骨髄抑制が強く発現する傾向がある。投与利便性を確保し、十分な薬効と副作用の低減を達成するために、核酸代謝拮抗剤の含有量を設定することが好ましい。
該ポリアミノ酸誘導体における核酸代謝拮抗剤の質量含有率は、前述の該ポリアミノ酸誘導体の分子量に対する、前記(3)核酸代謝拮抗剤の総分子量の含有比率により算出することができる。核酸代謝拮抗剤の含有量のより好ましい範囲は、5質量%以上で50質量%以下である。核酸代謝拮抗剤含量が5質量%以上で40質量%以下であることが特に好ましい。
本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体は、該ポリアミノ酸誘導体の水溶液を調製して、非経口的に投与して用いることが好ましい。該水溶液は、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS溶液)、5%ブドウ糖水溶液等により溶解して調製される。
本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体は、該水溶液において、会合性を示さない物性であることが好ましい。ここで会合性とは、当該ポリアミノ酸誘導体が10分子より多くの分子で自己会合した凝集体を形成する物性であることを示す。したがって、本発明における「会合性を示さない物性」とは、水溶液中における当該ポリアミノ酸誘導体が単分子体で存在するか、若しくは10分子以下の自己会合体を形成する態様を示す。
本発明において、当該ポリアミノ酸誘導体の濃度が1mg/mLの水溶液を、レーザー光散乱光度計にて計測し、光散乱強度が50,000cps以下である場合、該ポリアミノ酸誘導体が会合性を示さず、ほぼ単分子体〜数分子にて水溶液中に分散していると考えられる。好ましくは、光散乱強度が40,000cps以下となるポリアミノ酸誘導体である。
レーザー光散乱光度計としては、例えば、大塚電子社製ダイナミック光散乱光度計DLS−8000DL(測定温度25℃、測定角度:90°、波長:632.8nm、NDフィルター:5%、PH1:OPEN、PH2:SLIT、サンプル濃度:1mg/mL)を用い、当該ポリアミノ酸誘導体の濃度が1mg/mLの水溶液を、レーザー光散乱光度計にて光散乱強度を計測する測定方法を挙げることができる。この測定方法において、光散乱強度が50,000cps以下である場合が好ましい。より好ましくは40,000cps以下である。この場合、下限値は特に限定されるものではなく、明確な光散乱強度を示さない場合であり、水溶液中において自己会合性を示さない状態を示している。
本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体の水溶液中における自己会合性の有無は、骨髄抑制といった副作用と相関する。核酸代謝拮抗剤は、副作用として白血球減少等の骨髄抑制が発現し、該治療剤を用いた治療継続を困難とする問題がある。このため、骨髄抑制の少ない核酸代謝拮抗剤治療剤を提供することは、悪性腫瘍等の治療方法において、非常に有用である。本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体は、該誘導体の分子量を20キロダルトン以上で200キロダルトン以下にし、該ポリアミノ酸誘導体におけるポリエチレングリコールセグメントの質量含有率が30質量%以上90質量%以下とすることで、該誘導体が水溶液中における自己会合性を示さない物性となり、結果として骨髄抑制が少ない治療効果の高い医薬品を提供することができる。
本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体は、下記一般式(1)で示される核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体であることが好ましい。
Figure 2017160125
式中、Rは水素原子、炭素数(C1〜C8)のアルキル基及びポリエチレングリコールセグメントからなる群から選択される基であり、Rは水素原子、炭素数(C1〜C8)のアシル基及び炭素数(C1〜C8)のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される基を示し、Rはポリエチレングリコールセグメントを示し、Rは核酸代謝拮抗剤結合残基を示し、Rはアスパラギン酸結合残基及び/又はアスパラギン酸イミド結合残基を示し、Rは水酸基及び/又は−N(R)CONH(R)を示し、該R及び該Rは同一でも異なってもいてもよく、三級アミノ基で置換されていても良い炭素数(C1〜C8)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を示し、X及びXは結合基であり、Xはメチレン基又はエチレン基であり、a、b、c、d、e、f、g、h及びiはそれぞれ独立して0〜200の整数を示し、ポリアミノ酸誘導体の総重合数である(a+b+c+d+e+f+g+h+i)は3〜250であり、(a+b)は1〜95であり、(c+d)は1〜175であり、前記Rが結合したアミノ酸単位、前記Rが結合したアミノ酸単位、前記Rが結合したアミノ酸単位、前記Rが結合したアミノ酸単位及び側鎖カルボキシ基が分子内環化型のアミノ酸単位が、それぞれ独立してランダムな配列である核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体である。なお、該ポリアミノ酸誘導体の分子量が20キロダルトン以上で200キロダルトン以下であり、該ポリアミノ酸誘導体におけるポリエチレングリコールセグメントの質量含有率が30質量%以上90質量%以下であることを特徴とする。
前記一般式(1)におけるRは、水素原子、炭素数(C1〜C8)のアルキル基及びポリエチレングリコールセグメントからなる群から選択される置換基である。
前記炭素数(C1〜C8)のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数(C1〜C8)のアルキル基である。直鎖状アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−へキシル基、n−オクチル基等を挙げることができる。分岐鎖状アルキル基としては、例えばイソプロピル基、t−ブチル基、1−メチル−プロピル基、2−メチル−プロピル基、2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。環状アルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへキシルメチル基、シクロへキシルエチル基等が挙げられる。
前記一般式(1)のRにおけるポリエチレングリコールセグメントとしては、エチレンオキシ基;(CHCHO)単位の繰り返し構造を有するセグメントである。好ましくはエチレンオキシ基単位重合度が5〜10,000ユニット、より好ましくは重合度が5〜5,000ユニットのポリエチレングリコール鎖を含むセグメント構造である。すなわち該ポリエチレングリコールセグメントは、ポリエチレングリコール相当の平均分子量として200ダルトン〜500キロダルトンのセグメント部であることが好ましく、より好ましくは平均分子量として200ダルトン〜250キロダルトンの構造部分であり、特に好ましくは平均分子量として200ダルトン〜150キロダルトンである。平均分子量として1,000ダルトン〜50キロダルトンのポリエチレングリコールセグメントであることが、殊更好ましい。
なお、本発明で用いるポリエチレングリコールセグメントの平均分子量とは、本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体を調製する際において、用いるポリエチレングリコールセグメント構造化合物の、ポリエチレングリコール標準品を基準としたGPC法により測定されるピークトップ分子量により求められる平均分子量である。
該Rとしてのポリエチレングリコールセグメントにおける、ポリアミノ酸主鎖との結合側末端基は、該ポリアミノ酸誘導体への適当な結合基であれば特に限定されるものではない。好ましくは置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)のアルキレン基である。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。すなわち、エチレンオキシ基;(CHCHO)単位の酸素原子と、前記炭素数(C1〜C8)のアルキレン基がエーテル結合した構造である該ポリエチレングリコールセグメント構成であることが好ましい。
また、該Rにおける該ポリエチレングリコールセグメントの末端基は特に限定されるものではなく、水素原子、水酸基、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)のアルコキシ基、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)アラルキルオキシ基等を挙げることができる。該アルコキシ基、アルキニルオキシ基、アラルキルオキシ基における置換基としては、水酸基、アミノ基、ホルミル基、カルボキシル基等が挙げられる。
該末端基における置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)アルコキシ基としては、直鎖、分岐鎖又は環状の(C1〜C8)アルコキシ基が挙げられる。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、ネオペンチルオキシ基、1−エチルプロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、4−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、1−メチルペンチルオキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基、2,2−ジメチルブトキシ基、1,1−ジメチルブトキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基、1,3−ジメチルブトキシ基、2,3−ジメチルブトキシ基、2−エチルブトキシ基、シクロプロポキシ基、シクロペンチルオキシ基又はシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。好ましくは(C1〜C4)アルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基又はt−ブトキシ基等であり、特に好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基又はイソプロポキシ基である。
該末端基における置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)アラルキルオキシ基としては、いずれか1カ所の水素原子がアリール基で置換されている直鎖または分岐鎖アルキル基である。例えば、ベンジルオキシ基、2−フェニルエチルオキシ基、4−フェニルブチルオキシ基、3−フェニルブチルオキシ基、5−フェニルペンチルオキシ基、6−フェニルへキシルオキシ基、8−フェニルオクチルオキシ基等が挙げられる。好ましくはベンジルオキシ基、4−フェニルブチルオキシ基、8−フェニルオクチルオキシ基である。
前記一般式(1)におけるRは、水素原子、炭素数(C1〜C8)のアシル基及び炭素数(C1〜C8)のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される1種以上の置換基を示す。
前記炭素数(C1〜C8)のアシル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数(C1〜C8)のアシル基である。例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基、シクロプロピルカルボニル基、シクロペンタンカルボニル基等が挙げられる。
前記炭素数(C1〜C8)のアルコキシカルボニル基としては、直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数(C1〜C8)のアルコキシカルボニル基である。例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ペントキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、シクロプロポキシカルボニル基、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
前記一般式(1)におけるRは、ポリエチレングリコールセグメントを示す。該ポリエチレングリコールセグメントとしては、エチレンオキシ基;(CHCHO)単位の繰り返し構造を有するセグメントである。好ましくはエチレンオキシ基単位重合度が5〜10,000ユニット、より好ましくは重合度が5〜5,000ユニットのポリエチレングリコール鎖を含むセグメント構造である。すなわち該ポリエチレングリコールセグメントは、ポリエチレングリコール相当の平均分子量として200ダルトン〜500キロダルトンのセグメント部であることが好ましく、より好ましくは平均分子量として200ダルトン〜250キロダルトンの構造部分であり、特に好ましくは平均分子量として200ダルトン〜150キロダルトンである。平均分子量として1,000ダルトン〜50キロダルトンのポリエチレングリコールセグメントであることが、殊更好ましい。
なお、本発明で用いるポリエチレングリコールセグメントの平均分子量とは、本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体を調製する際において、用いるポリエチレングリコールセグメント構造化合物の、ポリエチレングリコール標準品を基準としたGPC法により測定されるピークトップ分子量により求められる平均分子量である。
該Rにおける該ポリエチレングリコールセグメントの、前記ポリアミノ酸主鎖の側鎖カルボキシ基と結合する側の末端基は、該側鎖カルボキシ基と直接又は結合基を介して結合するための連結基である。すなわち、エチレンオキシ基;(CHCHO)単位の酸素原子が末端基となる。
一方、該Rにおける該ポリエチレングリコールセグメントの他方の末端基は特に限定されるものではなく、水素原子、水酸基、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)のアルコキシ基、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキルオキシ基等を挙げることができる。該アルコキシ基、アルキニルオキシ基、アラルキルオキシ基における置換基としては、水酸基、アミノ基、ホルミル基、カルボキシル基等が挙げられる。
該末端基における置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)のアルコキシ基としては、直鎖、分岐鎖又は環状の(C1〜C8)のアルコキシ基が挙げられる。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、ネオペンチルオキシ基、1−エチルプロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、4−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、1−メチルペンチルオキシ基、3,3−ジメチルブトキシ基、2,2−ジメチルブトキシ基、1,1−ジメチルブトキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基、1,3−ジメチルブトキシ基、2,3−ジメチルブトキシ基、2−エチルブトキシ基、シクロプロポキシ基、シクロペンチルオキシ基又はシクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。好ましくは(C1〜C4)アルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基又はt−ブトキシ基等であり、特に好ましくはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基又はイソプロポキシ基である。
該末端基における置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキルオキシ基としては、いずれか1カ所の水素原子がアリール基で置換されている直鎖または分岐鎖アルキル基である。例えば、ベンジルオキシ基、2−フェニルエチルオキシ基、4−フェニルブチルオキシ基、3−フェニルブチルオキシ基、5−フェニルペンチルオキシ基、6−フェニルへキシルオキシ基、8−フェニルオクチルオキシ基等が挙げられる。好ましくはベンジルオキシ基、4−フェニルブチルオキシ基、8−フェニルオクチルオキシ基である。
前記一般式(1)におけるRは、より好ましくは下記一般式(7)で示されるポリエチレングリコールセグメントである。
Figure 2017160125
式中、R15は水素原子又は置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を示し、nは5〜2,500の整数を示す。
前記R15における置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基は、例えば、直鎖状アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−へキシル基、n−デシル基等を挙げることができる。分岐鎖状アルキル基としては、例えばイソプロピル基、t−ブチル基、1−メチル−プロピル基、2−メチル−プロピル基、2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。環状アルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
有しても良い置換基としては、メルカプト基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素環若しくは複素環アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、置換又は無置換アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、スルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はシリル基等を挙げることができる。芳香環上の置換位置は、オルト位でも、メタ位でも、パラ位でも良い。
前記一般式(1)におけるXは、前記Rに係るポリエチレングリコールセグメントとポリアミノ酸誘導体の側鎖カルボキシ基とを結合させる結合基である。該結合基としては、該ポリエチレングリコールセグメント末端基の酸素原子と、該ポリアミノ酸誘導体の側鎖カルボキシ基に対して、それぞれ結合可能な官能基を両末端に有する結合基であれば、特に限定されるものではない。
該結合基は、一方の末端基が、該ポリエチレングリコールセグメントの末端酸素原子とエーテル結合様式、エステル結合、ウレタン結合又はカーボネート結合する結合性官能基を有し、もう一方の末端基が、該側鎖カルボキシ基とエステル結合、アミド結合、チオエステル結合する結合性官能基を有する、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)のアルキレン基である。
該Xに係る結合基としては、ポリエチレングリコールセグメントとエーテル結合し、側鎖カルボキシ基とアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合する結合基として、例えば、−(CH−NH−(xは1〜8の整数を示す)、−(CH−O−(xは1〜8の整数を示す)、−(CH−S−(xは1〜8の整数を示す)等が挙げられる。ポリエチレングリコールセグメントとエステル結合し、側鎖カルボキシ基とアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合する結合基として、例えば、−CO−(CH−NH−(xは1〜8の整数を示す)、−CO−(CH−O−(xは1〜8の整数を示す)、−CO−(CH−S−(xは1〜8の整数を示す)等が挙げられる。ポリエチレングリコールセグメントとウレタン結合し、側鎖カルボキシ基とアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合する結合基として、例えば、−CONH−(CH−NH−(xは1〜8の整数を示す)、−CONH−(CH−O−(xは1〜8の整数を示す)、−CONH−(CH−S−(xは1〜8の整数を示す)等が挙げられる。また、ポリエチレングリコールセグメントとカーボネート結合し、側鎖カルボキシ基とアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合する結合基として、例えば、−COO−(CH−NH−(xは1〜8の整数を示す)、−COO−(CH−O−(xは1〜8の整数を示す)、−COO−(CH−S−(xは1〜8の整数を示す)等を挙げることができる。好ましくは、ポリエチレングリコールセグメントとエーテル結合し、側鎖カルボキシ基とアミド結合する結合基であり、該Xとしては、−(CH−NH−(xは1〜8の整数を示す)である。
また、該Xに係る結合基としてアミノ酸誘導体を用いても良い。アミノ酸誘導体を結合基とする場合の結合基の使用態様としては、アミノ酸誘導体のN末アミノ基が、前記側鎖カルボキシ基とアミド結合し、C末カルボキシ基が、該ポリエチレングリコールセグメントの末端酸素原子とエステル結合する態様である。
該Xに係る結合基としてアミノ酸誘導体を用いる場合、用いられるアミノ酸は、天然アミノ酸または非天然アミノ酸であってよく、L体、D体のいずれでも特に限定されずに用いることができる。例えば、グリシン、β−アラニン、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン等の炭化水素系アミノ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸等を用いることができる。
また、該Xは「結合」であってよい。「結合」とは、特に結合基を介せず、当該ポリアミノ酸誘導体の側鎖カルボキシ基と該ポリエチレングリコールセグメントの末端酸素原子が、直接エステル結合している態様を指す。
前記一般式(1)におけるRは、抗腫瘍活性又は抗ウイルス活性を有しヌクレオシド誘導体の構造を有する核酸代謝拮抗剤の結合残基である。本発明において、用いることができる核酸代謝拮抗剤としては、アミノ基及び/又は水酸基を有する核酸代謝拮抗剤であれば特に限定されるものではない。該核酸代謝拮抗剤としては、例えば、ピリミジン系代謝拮抗剤、プリン系代謝拮抗剤、トリアジン系代謝拮抗剤等が挙げられる。ここで、核酸代謝拮抗剤の結合残基とは、該核酸代謝拮抗剤のアミノ基によるアミド結合した場合の結合残基、若しくは、該核酸代謝拮抗剤の水酸基によるエステル結合した場合の、ヌクレオシド誘導体側の結合体構造を指す。
前記Rに係る核酸代謝拮抗剤は、ヌクレオシド塩基にアミノ基を有する核酸代謝拮抗剤を用いることが好ましい。すなわち、該Rは、アミノ基を有する核酸代謝拮抗剤であって、アミド結合により結合した結合残基であることが好ましい。
前記Rは、核酸塩基部分が下記式(8)から選択されるいずれか1種以上であり、それに結合している基(Rf)が下記式(9)から選択されるいずれか1種以上の組み合せである核酸代謝拮抗剤であることが特に好ましい。
Figure 2017160125
[式中、−Rfは、式(9):
Figure 2017160125
の置換基群より選ばれる基を示し、R16は水素原子又は脂肪酸エステルのアシル基残基を示す。]
前記R16における脂肪酸エステルのアシル基は、炭素数(C4〜C30)の炭化水素のモノカルボン酸がエステル結合したアシル残基である。炭素数(C4〜C30)の炭化水素は、飽和炭化水素である飽和脂肪酸であっても良く、1以上の二重結合を含む不飽和炭化水素である不飽和脂肪酸であってもよい。これらの脂肪酸エステルは、当該核酸代謝拮抗剤の脂溶性誘導体として知られており、本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体の有効成分として使用することができる。
前記R16としての脂肪酸エステルのアシル基残基の脂肪酸において、前記飽和脂肪酸としては、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸等が挙げられる。
また前記不飽和脂肪酸としては、9−ヘキサデセン酸、cis−9−オクタデセン酸、trans−9−オクタデセン酸、cis,cis−9,12−オクタデカジエン酸、9,12,15−オクタデカトリエン酸、6,9,12−オクタデカトリエン酸、5,8,11,14−エイコサテトラエン酸等が挙げられる。
一般式(1)のRに係る核酸代謝拮抗剤は、抗腫瘍剤又は抗ウイルス剤として有効性が知られている核酸代謝拮抗剤を用いることが特に好ましい。例えば、シタラビン(cytarabine)、ゲムシタビン(gemcitabine)、アザシチジン(azacitidine)、デシタビン(decitabine)、ネララビン(nelarabine)、2’−メチリデン−2’−デオキシシチジン(DMDC)、トロキサシタビン(troxacitabine)、3’−エチニルシチジン(Ethynylcytidine)、2’−シアノ−2’−デオキシ−1−β−D−アラビノフラノシルシトシン(CNDAC)、2’−デオキシ−5、6−ジヒドロ5−アザシチジン(DHAC)、5’−フルオロ−2’−デオキシシチジン(NSC−48006)、4’−チオ−β−D−アラビノフラノシルシトシン(OSI−7836)、クラドリビン(Cladribine)、クロファラビン(Clofarabine)又はフルダラビン(Fludarabine)、シタラビン−5’−エライジン酸エステル(CP−4055)、ゲムシタビン−5’−エライジン酸エステル(CP−4126)である。
一般式(1)のRにおける核酸代謝拮抗剤は、シチジン系代謝拮抗剤を用いることが好ましく、核酸塩基部分が下記式(10)で示されるシチジン塩基であり、それに結合している基(Rf)が下記式(11)の置換基群から選択されるいずれか1種以上の組み合せである核酸代謝拮抗剤であることが特に好ましい。ここで、R16は水酸基又は脂肪酸エステルのアシル基で表される化合物である。
Figure 2017160125
[式中、−Rfは、式(11):
Figure 2017160125
の置換基群より選ばれる基を示し、R16は水素原子又は脂肪酸エステルのアシル基を示す。]
これらのシチジン系代謝拮抗剤は、ゲムシタビン(gemcitabine)及びその脂肪酸エステル誘導体、シタラビン(cytarabine)及びその脂肪酸エステル誘導体、並びに3’−エチニルシチジン(Ethynylcytidine)及びその脂肪酸エステル誘導体である。脂肪酸エステル誘導体として、シタラビン−5’−エライジン酸エステル(CP−4055)、ゲムシタビン−5’−エライジン酸エステル(CP−4126)等である。
前記一般式(1)におけるXは、前記Rに係る核酸代謝拮抗剤と、ポリアミノ酸主鎖の側鎖カルボニル基とを結合させる結合基である。該結合基としては、該核酸代謝拮抗剤の結合性官能基と、該ポリアミノ酸誘導体の側鎖カルボキシ基に対して、それぞれ結合可能な官能基を両末端に有する結合基であれば、特に限定されるものではない。
該Xに係る結合基の該核酸代謝拮抗剤側の末端結合性官能基としては、カルボキシ基、オキシカルボキシ基又はアミノカルボキシ基が好ましい。該核酸代謝拮抗剤が分子中にアミノ基及び/又は水酸基を有することから、これらの結合性官能基は、該アミノ基及び/又は水酸基とアミド結合、エステル結合、ウレタン結合、カーボネート結合及びウレア結合する。
該Xに係る結合基のもう一方の、前記側鎖カルボキシ基側の末端結合性官能基としては、アミノ基、水酸基又はチオール基が好ましい。これらの結合性官能基は、側鎖カルボキシ基とアミド結合、エステル結合、チオエステル結合できる。
すなわち該Xに係る結合基は、一方の末端基がカルボキシ基、オキシカルボキシ基又はアミノカルボキシ基であり、もう一方の末端基がアミノ基、水酸基又はチオール基である置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)アルキレン基であることが好ましい。
前記Xに係る結合基としては、核酸代謝拮抗剤のアミノ基及び/又は水酸基とアミド結合又はエステル結合し、側鎖カルボキシ基とアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合する様式としては、例えば、−CO−(CH−NH−(yは1〜8の整数を示す)、−CO−(CH−O−(yは1〜8の整数を示す)、−CO−(CH−S−(yは1〜8の整数を示す)等が挙げられる。核酸代謝拮抗剤とウレア結合又はウレタン結合し、側鎖カルボキシ基とアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合する様式としては、−CONH−(CH−NH−(yは1〜8の整数を示す)、−CONH−(CH−O−(yは1〜8の整数を示す)、−CONH−(CH−S−(yは1〜8の整数を示す)等が挙げられる。一方、核酸代謝拮抗剤とカーボネート結合し、側鎖カルボキシ基とアミド結合、エステル結合又はチオエステル結合する様式としては、−COO−(CH−NH−(yは1〜8の整数を示す)、−COO−(CH−O−(yは1〜8の整数を示す)、−COO−(CH−S−(yは1〜8の整数を示す)を挙げることができる。
前記Xに係る結合基のアルキレン基は、水素原子が適当な置換基により修飾されていても良い。該置換基としては、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、炭素数(C1〜C8)のアルキル基、炭素数(C1〜C8)のアルキルカルボニルアルコキシ基、炭素数(C1〜C8)のアルキルカルボニルアミド基、炭素数(C1〜C8)のアルキルカルボニルアルキルアミド基、炭素数(C1〜C8)のアルキルアリール基、炭素数(C1〜C8)のアルコキシ基、炭素数(C1〜C8)のアルキルアミノ基、炭素数(C1〜C8)のアシルアミド基、炭素数(C1〜C8)のアルコキシカルボニルアミノ基等を挙げることができる。
前記Xに係る結合基として、好ましくは、核酸代謝拮抗剤との結合側がカルボキシ基であり、もう一方がアミノ基又は水酸基を有する結合基であり、−CO−(CH−NH−(yは1〜8の整数を示す)、−CO−(CH−O−(yは1〜8の整数を示す)を挙げることができる。特に好ましくは、該核酸代謝拮抗剤とアミド結合又はエステル結合することができるカルボキシ基を有すると共に、該側鎖カルボキシ基とアミド結合できるアミノ基を有する−CO−(CH−NH−(yは1〜8の整数を示す)である。
該Xに係る好ましい結合基である−CO−(CH−NH−(yは1〜8の整数を示す)の具体例としては、−CO−CH−NH−、−CO−(CH−NH−、−CO−(CH−NH−、−CO−(CH−NH−である。
前記Xに係る好ましい結合基として挙げた置換基を有していても良い−CO−(CH−NH−(yは1〜8の整数を示す)基において、該yが1の場合はアミノ酸骨格と同義である。したがって、当該Xに係る結合基として、アミノ酸誘導体を用いても良い。
該アミノ酸誘導体を結合基とする場合、該アミノ酸のN末アミノ基が前記側鎖カルボキシ基とアミド結合し、C末カルボキシ基が該核酸代謝拮抗剤のアミノ基又は水酸基とアミド結合又はエステル結合する態様の結合基として用いられる。
結合基としてアミノ酸誘導体を用いる場合、用いられるアミノ酸は、天然アミノ酸または非天然アミノ酸であってよく、L体、D体のいずれでも特に限定されずに用いることができる。例えば、グリシン、β−アラニン、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン等の炭化水素系アミノ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン等の塩基性アミノ酸等を用いることができる。
前記Xに係る結合基としてアミノ酸誘導体を用いる場合、アスパラギン酸誘導体を用いることが好ましい。該アスパラギン酸誘導体としては、α−カルボキシ基が前記核酸代謝拮抗剤の結合基として機能し、β−カルボキシ基がアミド体であるアスパラギン酸誘導体結合基である。または、β−カルボキシ基が前記核酸代謝拮抗剤の結合基として機能し、α−カルボキシ基がアミド体であるアスパラギン酸誘導体であっても良い。該核酸代謝拮抗剤の結合基ではない、もう一方のカルボキシ基がアミド体である場合は、置換基を有していても良い炭素数(C1〜20)のアルキルアミド、置換基を有していても良い炭素数(C5〜C20)の芳香族アミド、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキルアミド又はカルボキシ基が保護されたアミノ酸残基等が挙げられる。
前記Xに係る結合基として、一方のカルボキシ基が核酸代謝拮抗剤の結合基であり、一方のカルボキシ基がアミド誘導体であるアスパラギン酸誘導体を用いた場合が、核酸代謝拮抗剤の確実な解離が促されることから、特に好ましい。結合基としてのアスパラギン酸誘導体の置換基を有していても良い炭素数(C1〜20)のアルキルアミドとしては、例えば、メチルアミド、エチルアミド、イソプロピルアミド、t−ブチルアミド、シクロヘキシルアミド、ドデシルアミド、オクタデシルアミド等が挙げられる。該アスパラギン酸誘導体の置換基を有していても良い炭素数(C5〜C20)の芳香族アミドとしては、例えば、フェニルアミド、4−メトキシフェニルアミド、4−ジメチルアミノフェニルアミド、4−ヒドロキシフェニルアミド等が挙げられる。該アスパラギン酸誘導体の置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)のアラルキルアミドとしては、例えば、ベンジルアミド、2−フェニルエチルアミド、4−フェニルブチルアミド、8−フェニルオクチルアミド等が挙げられる。該アスパラギン酸誘導体のカルボキシ基が保護されたアミノ酸アミドとしては、例えば、グリシニル−メチルエステル、アラニル−メチルエステル、ロイシニル−メチルエステル、イソロイシニル−メチルエステル、バリニル−メチルエステル、フェニルアラニル−メチルエステル、アラニル−エチルエステル、ロイシニル−エチルエステル、イソロイシニル−エチルエステル、アラニル−ブチルエステル、ロイシニル−ブチルエステル等が挙げられる。
前記Xは、下記一般式(2)又は一般式(3)で示されるアスパラギン酸誘導体結合基又はマレイン酸誘導体結合基を用いることができる。
Figure 2017160125
ここで、式(2)及び(3)中、R、R10はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数(C1〜C8)のアルキル基を示し、R11は水素原子、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアラルキル基、置換基を有していても良い炭素数(C5〜C20)の芳香族基、及びカルボキシ基が保護されたアミノ酸結合残基からなる群から選択される1種以上の基を示し、CX−CYはCH−CH若しくはZ配置のC=C(二重結合)である。
前記Xの結合基として、一般式(2)又は式(3)で示すアスパラギン酸誘導体結合基又はマレイン酸誘導体結合基を用いる場合、式中、R、R10における、炭素数(C1〜C8)のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数(C1〜C8)のアルキル基である。
直鎖状アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−へキシル基等を挙げることができる。
分岐鎖状アルキル基としては、例えばイソプロピル基、t−ブチル基、1−メチル−プロピル基、2−メチル−プロピル基、2,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。
環状アルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
前記一般式(2)又は式(3)に係るR11において、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基とは、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基が挙げられる。
置換基を有していても良い炭素数(C7〜C20)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、2−フェニルエチル基、4−フェニルブチル基、8−フェニルオクチル基等が挙げられる。
置換基を有していても良い炭素数(C5〜C20)の芳香族基としては、例えば、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ジメチルアミノフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基等が挙げられる。
また、前記R11は、カルボキシ基が保護されたアミノ酸結合残基であっても良い。カルボキシ基が保護されたアミノ酸結合残基としては、例えば、グリシニル−メチルエステル基、アラニル−メチルエステル基、ロイシニル−メチルエステル基、バリニル−メチルエステル基、フェニルアラニル−メチルエステル基、アラニル−エチルエステル基、ロイシニル−エチルエステル基、アラニル−ブチルエステル基、ロイシニル−ブチルエステル基等が挙げられる。
また、該Xは「結合」であってよい。「結合」とは、特に結合基を介せず、当該ポリアミノ酸誘導体の側鎖カルボキシ基と、該核酸代謝拮抗剤の結合性置換基であるアミノ基及び/又は水酸基が、直接アミド結合及び/又はエステル結合している態様を指す。
前記一般式(1)において、Xはメチレン基又はエチレン基である。すなわち、該Xがメチレン基の場合、本発明に係るポリアミノ酸誘導体のポリマー主鎖はポリアスパラギン酸となる。一方、該Xがエチレン基の場合、本発明に係るポリアミノ酸誘導体のポリマー主鎖はポリグルタミン酸となる。したがって、該一般式(1)に係るポリアミノ酸誘導体は、ポリアスパラギン酸誘導体又はポリグルタミン酸誘導体である。
本発明は、アミノ基及び/又は水酸基を有する核酸代謝拮抗剤は、アスパラギン酸ユニットのカルボキシ基に直接結合した態様であることが好ましい。すなわち、一般式(1)において、Xがメチレン基であり、主鎖ポリマーがポリアスパラギン酸である場合、側鎖カルボキシ基に該核酸代謝拮抗剤が直接結合して良く、また、前記Xに係る結合基として、アスパラギン酸誘導体を介して核酸代謝拮抗剤を結合させても良い。また、一般式(1)において、Xがエチレン基であり、主鎖ポリマーがポリグルタミン酸である場合、前記Xに係る結合基として、アスパラギン酸誘導体を介して核酸代謝拮抗剤を結合させることが好ましい。なお、前記Xに係る結合基として、アスパラギン酸誘導体を用いる場合、アスパラギン酸アミド誘導体を用いることが好ましい。
前記一般式(1)におけるRは、アスパラギン酸残基又はアスパラギン酸イミド残基を示す。これらの残基は、前記Xに係る結合基として、アスパラギン酸誘導体結合基又はマレイン酸誘導体結合基を用いた場合、該結合基から核酸代謝拮抗剤が解離した残基を示すものである。したがって、該Rに係るアスパラギン酸残基又はアスパラギン酸イミド残基は、前述のアスパラギン酸誘導体結合基又はマレイン酸誘導体結合基における化学構造と同じである。
該Rに係るアスパラギン酸残基又はアスパラギン酸イミド残基としては、例えば、下記一般式(4)、一般式(5)及び一般式(6)からなる置換基群から選ばれる1種以上の残基である。
Figure 2017160125
ここで、式中、R、R10、R11、CX−CYは前記と同じ意味を示し、R12は水酸基及び/又は−N(R13)CONH(R14)を示し、R13及びR14は同一でも異なっていてもよく、三級アミノ基で置換されていても良い炭素数(C1〜C8)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を示す。
該R13及びR14における三級アミノ基で置換されていても良い炭素数(C1〜C8)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、好ましくはイソプロピル基、シクロへキシル基が挙げられる。
該三級アミノ基で置換されていても良い炭素数(C1〜C8)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基としては、例えば、2−ジメチルアミノエチル基、3−ジメチルアミノプロピル基、5−ジメチルアミノペンチル基、6−ジメチルアミノヘキシル基等が挙げられる。該R13及びR14として好ましくは、エチル基、イソプロピル基、シクロへキシル基、3−ジメチルアミノプロピル基が挙げられる。
前記R12が水酸基である場合、カルボン酸の態様を示す。また、そのカルボン酸の任意の塩態様であっても良い。
前記R12は水酸基及び/又は−N(R13)CONH(R14)であるが、水酸基のみである場合、水酸基及び−N(R13)CONH(R14)が共存する場合、若しくは−N(R13)CONH(R14)のみである場合の態様を取り得る。水酸基と−N(R13)CONH(R14)の存在比率は任意に設定されて良い。
前記一般式(1)におけるRは、水酸基及び/又は−N(R)CONH(R)を示す。ここで、R及びRは同一でも異なってもいても良く、三級アミノ基で置換されていても良い炭素数(C1〜C8)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基である。
該R及びRにおける三級アミノ基で置換されていても良い炭素数(C1〜C8)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、好ましくはイソプロピル基、シクロへキシル基が挙げられる。
該三級アミノ基で置換されていても良い炭素数(C1〜C8)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基としては、例えば、2−ジメチルアミノエチル基、3−ジメチルアミノプロピル基、5−ジメチルアミノペンチル基、6−ジメチルアミノヘキシル基等が挙げられる。該R13及びR14として好ましくは、エチル基、イソプロピル基、シクロへキシル基、3−ジメチルアミノプロピル基が挙げられる。
前記Rが水酸基である場合、当該核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体の側鎖カルボキシ基がカルボン酸の態様を示す。また、そのカルボン酸の任意の塩態様であっても良い。
前記Rは水酸基及び/又は−N(R)CONH(R)であるが、水酸基のみである場合、水酸基及び−N(R)CONH(R)が共存する場合、若しくは−N(R)CONH(R)のみである場合の態様を取り得る。水酸基と−N(R)CONH(R)の存在比率は任意に設定されていて良い。
一般式(1)において、ポリアミノ酸誘導体の構成単位の各含量を示すa、b、c、d、e、f、g、h及びiは、それぞれ独立に0〜200の整数を示す。当該ポリアミノ酸誘導体は、前記Rが結合したアミノ酸構成単位、前記Rが結合したアミノ酸構成単位、前記Rが結合したアミノ酸構成単位、前記Rが結合したアミノ酸構成単位及び側鎖カルボキシ基が分子内環化型のアミノ酸構成単位が存在するが、これらの各アミノ酸構成単位は、それぞれ任意の順番でランダムな配列で重合した構造である。すなわち、側鎖カルボキシ基にR、R、R、Rが結合したアミノ酸構成単位並びに側鎖カルボン酸が分子内環化構造をとるアミノ酸構成単位が、局在化した配列の態様であっても良く、それぞれの構成単位に規則性がないランダム配列で構成されたポリマー構造であっても良く、つまり、その側鎖修飾体の配列順序において特に規則性のない配列である。
更に、該ポリアミノ酸の構成単位の総重合数である(a+b+c+d+e+f+g+h+i)は3〜250の整数である。好ましくは該総重合数は5〜200である。該総重合数の平均値は3〜250であり、好ましくは5〜200である。
ここで、ポリエチレングリコールセグメントであるRが結合した総構成単位数である(a+b)は1〜95の整数である。該(a+b)の平均値も1〜95である。すなわち、ポリエチレングリコールセグメントのRが結合したポリアミノ酸構成単位は必須構成であり、該ポリアミノ酸誘導体において、少なくとも1ユニット以上のポリエチレングリコールセグメントを具備する。当該ポリアミノ酸誘導体において、Rであるポリエチレングリコールセグメントは、2ユニット以上結合していることが好ましく、80ユニット以下であることが好ましい。すなわち、該(a+b)は2〜80の整数であることが好ましく、該(a+b)の平均値も2〜80であることが好ましい。
また、核酸代謝拮抗剤の結合残基であるRが結合した総構成単位数である(c+d)は、1〜175の整数である。該(c+d)の平均値も1〜175である。すなわち、核酸代謝拮抗剤結合残基であるRが結合したポリアミノ酸構成単位は必須構成であり、該ポリアミノ酸誘導体において、少なくとも1ユニット以上の核酸代謝拮抗剤結合残基を具備する。当該ポリアミノ酸誘導体において、Rである核酸代謝拮抗剤結合残基は、5ユニット以上結合していることが好ましく、120ユニット以下であることが好ましい。すなわち、該(c+d)は5〜120の整数であることが好ましく、該(c+d)の平均値も5〜120であることが好ましい。
一般式(1)において、R及びRが結合したアミノ酸構成単位及び側鎖カルボキシ基が分子内環化したアミノ酸構成単位は、任意の構成である。特に、R及びRが結合したアミノ酸構成単位は、前記X及びXが「結合」である場合は、通常、R及びRが結合したアミノ酸構成単位は存在しないため、前記e、f及びgはそれぞれ0となる。
一般式(1)で表される核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体の総分子量は、20キロダルトン以上で200キロダルトン以下である。好ましくは20キロダルトン以上で180キロダルトン以下であり、より好ましくは20キロダルトン以上で160キロダルトン以下である。
この総分子量の算出方法は、前述と同義であり、その構成部分の各構成分子量を合算した計算値を当該「ポリアミノ酸誘導体の分子量」として採用する。すなわち、(1)ポリアミノ酸主鎖の分子量、(2)ポリエチレングリコールセグメントの分子量にその結合数を乗じたポリエチレングリコールセグメントの総分子量、(3)核酸代謝拮抗剤の結合残基分子量にその結合数を乗じた核酸代謝拮抗剤の総分子量、(4)任意のポリエチレングリコールセグメントの結合基残基分子量にその結合数を乗じた該結合基の総分子量、並びに(5)任意の核酸代謝拮抗剤の結合基残基分子量にその結合数を乗じた該結合基の総分子量、を合算した計算値を当該分子量とする。
当該ポリアミノ酸誘導体の分子量は、キロダルトン単位での精度による分子量規定が求められるものである。したがって、前記各構成部分の分析方法は、当該ポリアミノ酸誘導体のキロダルトン単位での分子量測定において、十分な精度の分析方法であれば特に限定されるものではなく、様々な分析方法を適宜選択して良い。
また、一般式(1)のRに係るポリエチレングリコールセグメントは、セグメントあたりの平均分子量は200ダルトン〜500キロダルトンである。好ましくは500ダルトン〜100キロダルトン、より好ましくは1キロダルトン〜50キロダルトンである。
該ポリエチレングリコールセグメントの分子量とは、ポリエチレングリコール標準品を基準とした、GPC法により測定されるピークトップ分子量である。一般式(1)において、Rを具備するアミノ酸構成単位数(a+b)が1〜95であることから、Rに係るポリエチレングリコールセグメントの総分子量は、400ダルトン〜180キロダルトンであり、好ましくは1キロダルトン〜150キロダルトンであり、より好ましくは2キロダルトン〜130キロダルトンである。
一般式(1)の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体は、該ポリアミノ酸誘導体におけるポリエチレングリコールセグメントの質量含有率が、30質量%以上90質量%以下であることを特徴とする。該ポリエチレングリコールセグメントの質量含有率は、前述と同義であり、該ポリアミノ酸誘導体の総分子量に対する、ポリエチレングリコールセグメントの総分子量の含有比率により算出することができる。
前記ポリエチレングリコールセグメントの質量分子量は、30質量%以上90質量%以下であり、35質量%以上85質量%以下であることが好ましい。
一般式(1)におけるRの核酸代謝拮抗剤結合残基は、該核酸代謝拮抗剤の結合モル当量による質量含有量において2〜60質量%であることが好ましい。より好ましくは5〜50質量%であり、最も好ましくは5〜40質量%である。
核酸代謝拮抗剤の含有率が2質量%より少ないと、核酸代謝拮抗剤の有効量を確保するために当該ポリアミノ酸誘導体の総投与量が多くなり、投与利便性が低下するため好ましくない。一方、核酸代謝拮抗剤の含有率が60質量%より多い場合、骨髄抑制が強く発現する傾向がある。投与利便性を確保し、十分な薬効と副作用の低減を達成するために、核酸代謝拮抗剤の含有量を設定することが好ましい。
該ポリアミノ酸誘導体における核酸代謝拮抗剤の質量含有率は、前述の該ポリアミノ酸誘導体の分子量に対する、前記(3)核酸代謝拮抗剤の総分子量の含有比率により算出することができる。核酸代謝拮抗剤の含有量のより好ましい範囲は、5質量%以上で50質量%以下である。核酸代謝拮抗剤含量が5質量%以上で40質量%以下であることが特に好ましい。
一般式(1)の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体は、該ポリアミノ酸誘導体の水溶液において、会合性を示さない物性であることが好ましい。当該ポリアミノ酸誘導体の水溶液中における会合性の有無は前述と同義であり、1mg/mLの当該水溶液をレーザー光散乱光度計にて計測し、光散乱強度により規定することができる。すなわち、光散乱強度が50,000cps以下であれば良く、40,000cps以下となるポリアミノ酸誘導体がより好ましい。
レーザー光散乱光度計による光散乱強度の測定方法は前述と同義である。
次に、本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体の製造方法について説明する。
本発明の該ポリアミノ酸誘導体は、アスパラギン酸及び/又はグルタミン酸の側鎖カルボキシ基に、ポリエチレングリコールセグメント及び核酸代謝拮抗剤を結合させたアスパラギン酸誘導体構成単位及び/又はグルタミン酸誘導体構成単位を含むポリアミノ酸誘導体である。
当該ポリアミノ酸誘導体の製造方法としては、各アミノ酸構成単位を順次重合させて当該ポリアミノ酸誘導体を製造しても良い。また別法として、複数の側鎖が遊離のカルボン酸であるアスパラギン酸及び/又はグルタミン酸を含むポリアミノ酸のポリマー主鎖を構築し、その後、該遊離カルボン酸側鎖に対し、ポリエチレングリコールセグメント及び核酸代謝拮抗剤を化学結合させる方法を挙げることができる。当該製造方法としては、該ポリエチレングリコールセグメント導入量及び該核酸代謝拮抗剤の結合量を制御しやすいことから、後者の方法が好ましい。
例えば、L−アスパラギン酸−N−カルボン酸無水物を開環重合させて、ポリアスパラギン酸を得る。これに、ポリエチレングリコールセグメントを含む化合物及び核酸代謝拮抗剤を反応させることにより、本発明に係るポリアミノ酸誘導体を製造することができる。ポリエチレングリコールセグメント及び/又は核酸代謝拮抗剤の結合において、任意の結合基を用いる場合、該結合基を具備したポリエチレングリコールセグメント及び/又は核酸代謝拮抗剤を調製し、これをポリアスパラギン酸に反応させることにより、結合基を用いた本発明に係るポリアミノ酸誘導体を製造することができる。該反応終了後、任意に精製工程を施しても良く、医薬品として適用することができるポリエチレングリコールセグメント及び核酸代謝拮抗剤を側鎖カルボキシ基に導入したポリアスパラギン酸誘導体を製造することができる。
本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体は、生体内に投与後、核酸代謝拮抗剤を徐々に遊離する性質を有し、該核酸代謝拮抗剤を有効成分とする医薬としての用途を有する。
本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体の医薬品としての用途は、該核酸代謝拮抗剤により治療効果を奏する疾病であれば特に限定されるものではない。例えば、悪性腫瘍、ウイルス疾患等の治療に用いられる医薬に適する。特に好ましくは、悪性腫瘍の治療用医薬である。悪性腫瘍としては、非小細胞肺癌、膵臓癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、AIDS関連カポジ肉腫等を挙げることができる。
本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体を含む医薬は、医薬品として通常容認される他の添加剤を有していても良い。該添加剤としては、賦形剤、増量剤、充填剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤及び等張化剤等が挙げられる。
本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体を含む医薬は、治療用の医薬品製剤として調製されても良い。該製剤としては、経口、注射、直腸内投与、門脈内投与、臓器の灌流液に混合、患部臓器への局所投与等いずれの投与方法でも可能であるが、好ましくは非経口的投与であり、より好ましくは注射による静脈内投与、動脈内投与又は患部臓器への局所投与である。
本発明の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体を含む医薬の投与量は、病状、投与方法、患者の状態、年齢、体重等により異なるが、通常、核酸代謝拮抗剤換算で体表面積1mあたり1mg〜5,000mg、好ましくは10mg〜2,000mgであり、これを1日1回又は数回に分けて投与しても良い。又、この投与は連日行なうこともできるが、数日から数ヶ月の間をおいて反復投与を行なっても良い。必要に応じて前記以外の投与方法、投与量、投与スケジュールを用いることができる。
以下、本発明を実施例により更に説明する。ただし、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例の「ポリアミノ酸誘導体の分子量」は、以下の計算式により算出した。
[ポリアミノ酸誘導体分子量]=[主鎖ポリアミノ酸ユニット分子量×重合数]+[(ポリエチレングリコールセグメント+ポリエチレングリコールの結合基残基)分子量×結合数]+[核酸代謝拮抗剤残基分子量×結合数]+[核酸代謝拮抗剤の結合基残基分子量×結合数]
本実施例において「ポリエチレングリコールセグメント」はポリエチレングリコールセグメントに結合基であるプロピレンアミノ基が一体となったポリエチレングリコールセグメント化合物を用いており、これらを合算してポリエチレングリコールセグメント分子量とした。
したがって、本実施例の「ポリアミノ酸誘導体の分子量」は、主要構成である、主鎖ポリアミノ酸セグメントの分子量、(ポリエチレングリコールセグメント+該結合基残基)の総分子量及び核酸代謝拮抗剤の総分子量、並びに任意の核酸代謝拮抗剤の結合基残基の総分子量を足し合わせた計算値を用いた。
なお、主鎖ポリアミノ酸の重合数は、ポリエチレングリコールセグメント及び核酸代謝拮抗剤を導入する前のポリアミノ酸誘導体前駆体化合物を、H−NMR分析することにより、その積分値から算出した。
ポリエチレングリコールセグメントの分子量は、導入反応前のポリエチレングリコールセグメント化合物において、ポリエチレングリコール標準物質を基準としたGPC分析における、ピークトップ分子量を採用した。
ポリエチレングリコールセグメントの結合数は、ポリアミノ酸誘導体前駆体化合物とポリエチレングリコールセグメント化合物の結合反応において、ポリエチレングリコールセグメント化合物の仕込み量に対する、該反応における消費率から算出した。
ポリエチレングリコール化合物の消費量は、以下の分析により得られた数値を用いて算出した。
ポリアミノ酸誘導体前駆体化合物とポリエチレングリコールセグメント化合物及び核酸代謝拮抗剤の、反応開始前(ジイソプロピルカルボジイミド添加前)の反応液10μLを1%リン酸90μLで希釈し、HPLC(使用カラム:Superdex 75 10/300 GL、GEヘルスケア社製、検出器:RI)にて分析した。この時のポリエチレングリコールセグメント化合物に相当するピーク面積をAsとし、反応終了時の反応液10μLを、1%リン酸90μLで希釈しHPLCにて分析したときのポリエチレングリコール化合物に相当するピーク面積をAtとした。そして、以下の式によりポリエチレングリコールセグメントの消費率を算出した。
[ポリエチレングリコールセグメント化合物の消費率]=1−At/As
核酸代謝拮抗剤の結合数は、得られた実施例及び比較例のポリアミノ酸誘導体を10mgを精秤し、アセトニトリル1mLを加えて溶解し、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液1mLを加えて混合し、30分間撹拌することで加水分解した。この加水分解溶液に、1mol/L塩酸1mLを加え、水/アセトニトリル混液(1:1)を加えて正確に10mLとした。この溶液を、HPLCを用いて遊離する核酸代謝拮抗剤を定量分析することにより算出した。
実施例及び比較例の「ポリエチレングリコールセグメントの含有率」は、以下の計算式で算出した。
「ポリエチレングリコールセグメント含有率」(%)=「ポリエチレングリコールセグメント総分子量」/「ポリアミノ酸誘導体分子量」×100
該「ポリエチレングリコールセグメント総分子量」は、前記ポリエチレングリコールセグメントの分子量に前記ポリエチレングリコールセグメントの結合数を乗じて算出した数値を用いた。
該「ポリアミノ酸誘導体分子量」は、前記の各構成部分の分子量の総和により算出した数値を用いた。
実施例及び比較例のポリアミノ酸誘導体の散乱強度測定は、大塚電子社製ダイナミック光散乱光度計DLS−8000DL(測定温度25℃、測定角度:90°、波長:632.8nm、NDフィルター:5%、PH1:OPEN、PH2:SLIT)にて行った。
散乱強度測定の測定サンプルは、ポリアミノ酸誘導体濃度1mg/mLになるように5%ブドウ糖注射液を加え、氷冷下にて超音波を3分間照射し調製した溶液を用いた。
実施例及び比較例のポリアミノ酸誘導体の、測定サンプル溶液中における会合分子数は以下の計算式で算出した。
[会合分子数]=[SEC−MALS測定分子量]/[ポリアミノ酸誘導体分子量]
なお、SEC−MALS測定分子量は、Wyatt Technology社製DAWN EOS(光散乱検出器)及びOptilab rEX(RI検出器)にて行い、dn/dcはポリエチレングリコールの値(0.135)を用い算出した。
使用カラム:Superdex 200 Increase 10/300 GL、GEヘルスケア社製
測定サンプルは、ポリアミノ酸誘導体濃度1mg/mLになるように5%ブドウ糖注射液を加え、氷冷下にて超音波を3分間照射し調製した溶液を用いた。
[合成例1] 平均重合数89のポリアスパラギン酸の合成(化合物1)
n−ブチルアミン(東京化成製、99.2mg)をDMSO(202mL)に溶解後、γ−ベンジル−L−アスパラギン酸−N−カルボン酸無水物(BLA−NCA,33.8g、99.9当量)を加え、30℃にて一夜攪拌した。反応液を、エタノール(750mL)及びジイソプロピルエーテル(3200mL)の混合溶媒中に1時間かけて滴下し、室温にて3時間攪拌した。沈析物を濾取後、真空乾燥し固形物(22.6g)を得た。
この固形物(21.8g)にジメチルイミダゾリジノン(DMI)(400mL)を加え、80℃にて溶解後、65℃にて無水酢酸1mLを加えた。3時間攪拌後、反応液を酢酸エチル(1.1L)及びジイソプロピルエーテル(10L)の混合溶液中に1時間かけて滴下し、室温にて1時間攪拌した。沈析物を濾取後、真空乾燥し固形物(23.2g)を得た。
この固形物(23.0g)にアセトニトリル(200mL)及び0.2規定の水酸化ナトリウム水溶液(700mL)を添加し、室温にて一夜攪拌した。反応後、減圧濃縮にてアセトニトリルを除去後、酢酸エチル(700mL)を用い濃縮液を3回洗浄した。水層を減圧濃縮後、Dowex 50W(ダウケミカル社製、プロトン型、40mL)のカラムに通塔、溶出し、凍結乾燥を行い、化合物1(13.0g)を得た。
H−NMR(400MHz、DO、NaOD、ppm):0.7(n−ブチルアミン末端CH、3H、積分値3.00)、4.2−4.6(アスパラギン酸αCH、1H、積分値89.2)
n−ブチルアミンとアスパラギン酸の積分値から算出されたモル比から、重合数は89と算出された。したがって、化合物1の分子量は、10キロダルトンであった。
[合成例2] 平均重合数22のポリアスパラギン酸の合成(化合物2)
合成例1記載の方法に準じ、n−ブチルアミンに対してBLA−NCAを22.5当量用いることにより、標記化合物2を得た。
H−NMR(400MHz、DO、NaOD、ppm):0.7(n−ブチルアミン末端CH、3H、積分値3.00)、4.2−4.6(アスパラギン酸αCH、1H、積分値22.4)
n−ブチルアミンとアスパラギン酸の積分値から算出されたモル比から、重合数は22と算出された。したがって、化合物2の分子量は、2.6キロダルトンであった。
[合成例3] 平均重合数60のポリアスパラギン酸の合成(化合物3)
合成例1記載の方法に準じ、n−ブチルアミンに対してBLA−NCAを67.4当量用いることにより、標記化合物3を得た。
H−NMR(400MHz、DO、NaOD、ppm):0.7(n−ブチルアミン末端CH、3H、積分値3.00)、4.2−4.6(アスパラギン酸αCH、1H、積分値60.4)
n−ブチルアミンとアスパラギン酸の積分値から算出されたモル比から、重合数は60と算出された。したがって、化合物3の分子量は、7.0キロダルトンであった。
[合成例4] 平均重合数110のポリアスパラギン酸の合成(化合物4)
合成例1記載の方法に準じ、n−ブチルアミンに対してBLA−NCAを135当量用いることにより、標記化合物4を得た。
H−NMR(400MHz、DO、NaOD、ppm):0.7(n−ブチルアミン末端CH、3H、積分値3.00)、4.2−4.6(アスパラギン酸αCH、1H、積分値109.8)
n−ブチルアミンとアスパラギン酸の積分値から算出されたモル比から、重合数は110と算出された。したがって、化合物4の分子量は、13キロダルトンであった。
[合成例5] アスパラギン酸−1−アラニンメチルエステル−4−ゲムシタビンアミドの合成(化合物5)
N−(t−ブトキシカルボニル)アスパラギン酸−4−ベンジルエステル(15.0g)と、L−アラニンメチルエステル(6.5g)をDMF(160mL)に溶解後、1−エチル−3−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド(WSCD)塩酸塩(13.3g)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(8.53g),トリエチルアミン(6.5mL)を加え、氷浴下にて4時間撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルにて抽出し、5%クエン酸水溶液,飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下、酢酸エチルを留去し真空乾燥して油状物(13.9g)得た。
この油状物(13.9g)をメタノール(350mL)に溶解し、10%パラジウム炭素(水分含有量50%)(1.39g)を加えた後、系内を水素置換し、室温にて3時間攪拌した。10%パラジウム炭素を濾過し、メタノール(50mL)で洗浄後、減圧下、メタノールを留去し真空乾燥して油状物(10.6g)を得た。
この油状物とゲムシタビン(3.0g、SCINO PHARM社製)を、DMF(56mL)に溶解後、HOBt(2.1g)、WSCD塩酸塩(3.3g)を加え、0℃から室温に昇温させ、一夜撹拌した。反応液に精製水を加え、酢酸エチル(170mL)を用いて抽出した。有機層を、飽和食塩水を用いて2回洗浄し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。減圧濃縮にて酢酸エチルを除去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、真空乾燥後、油状物(3.9g)を得た。
この油状物を酢酸エチル(41mL)に溶解させ、4規定の塩酸−酢酸エチル溶液(31mL)を加え、室温にて2時間攪拌した。反応液に酢酸エチル(80mL)及びn−ヘキサン(20mL)の混合溶媒を加え、沈析物を濾取し、真空乾燥させ、化合物5(2.99g)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d6,ppm):1.20(d,3H)、2.95−3.10(m,2H)、3.63(s,3H)、3.67(dd,1H)、3.90−4.02(m,5H)、4.18−4.31(m,3H)、6.18(dd,1H)、7.22(d,1H)、8.25(s,2H)、8.92(d,1H)、11.3(br,1H)
[合成例6] アスパラギン酸−1−ロイシンメチルエステル−4−ゲムシタビンアミドの合成(化合物6)
N−(t−ブトキシカルボニル)−L−アスパラギン酸−4−ベンジル(渡辺化学工業社製、4.9g)及びL−ロイシン−メチルエステル塩酸塩(国産化学社製、2.7g)をDMF(75mL)に溶解後、HOBt(2.8g)、ジイソプロピルエチルアミン(2.6mL)、WSCD塩酸塩(4.3g)を加え、0℃にて2時間攪拌した。反応液に精製水を加え、酢酸エチル(250mL)を用いて抽出した。有機層を飽和重曹水、飽和食塩水を用いて洗浄し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。減圧濃縮にて酢酸エチルを除去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、真空乾燥後、油状物(6.8g)を得た。
この油状物をメタノール(150mL)に溶解後、10%(w/w)パラジウム炭素を加え、水素雰囲気化で2時間攪拌した。反応液を濾過後、濾液を真空乾燥し、油状物(5.37g)を得た。
この油状物とゲムシタビン(3.0g、SCINO PHARM社製)をDMF(57mL)に溶解後、HOBt(2.1g)、WSCD塩酸塩(3.3g)を加え、0℃から室温に昇温させ、一夜撹拌した。反応液に精製水を加え、酢酸エチル(170mL)を用いて抽出した。有機層を、飽和食塩水を用いて2回洗浄し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。減圧濃縮にて酢酸エチルを除去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、真空乾燥後、油状物(4.9g)を得た。
この油状物を酢酸エチル(44mL)に溶解させ、4規定の塩酸酢酸エチル溶液(33mL)を加え、室温にて2時間攪拌した。反応液に酢酸エチル(80mL)及びn−ヘキサン(20mL)の混合溶媒を加え、沈析物を濾取し、真空乾燥させ、化合物6(3.62g)を得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d6,ppm):0.89(dd,6H)、1.49−1.71(m,3H)、2.97−3.17(m,4H)、3.63(s,3H)、3.66(dd,1H)、3.80−3.93(m,2H)、4.10−4.28(m,4H)、6.18(dd,1H)、7.22(d,1H)、8.32(s,2H)、8.91(d,1H)、11.3(br,1H)
[実施例1] 一般式(1)においてa+b+c+d+e+f+g+h+iの平均値=89、a+bの平均値=3.6、c+dの平均値=41、e+f=0、g+h+i=44.4、R=n−ブチル基、R=アセチル基、R=ゲムシタビン結合残基、R=水酸基、R15=メチル基、nの平均値=272、X=−(CH−NH−基、X=結合、X=メチレン基の化合物の合成
合成例1で得られた化合物1(分子量10キロダルトン、3.8g)と、片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール化合物(SUNBRIGHT MEPA−12T、日油社製、平均分子量12キロダルトン、15.7g)とゲムシタビン(6.9g、SCINO PHARM社製)を、DMF(375mL)に35℃にて溶解し、25℃にて1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(4.9g)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)(10.3mL)を加えて、一夜撹拌した。反応液をエタノール(1.5L)及びジイソプロピルエーテル(6L)の混合溶媒中に30分かけて滴下し、室温にて30分攪拌した。沈析物を濾取してエタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、1.5L)で洗浄した。得られた沈析物をアセトニトリル(720mL)に溶解後、精製水(128mL)及びイオン交換樹脂(ダウケミカル製ダウエックス50(H)、160mL)を加えた。30分攪拌後、濾過し、濾液を減圧濃縮後、凍結乾燥を行い、実施例1の標記化合物(22.2g)を得た。
実施例1の化合物をアルカリ加水分解後、遊離したゲムシタビンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量することにより、本化合物におけるゲムシタビン含有量を求めた。その結果、実施例1におけるゲムシタビン含有量は17.1%(w/w)であった。したがって、ポリアミノ酸主鎖であるアスパラギン酸重合数89に対する結合率は46.0%と算出された。
この結果、実施例1のゲムシタビン総分子量は11キロダルトンであった。
実施例1のポリエチレングリコール化合物の結合量は、ポリエチレングリコール化合物の仕込当量およびポリエチレングリコール化合物の消費率より3.6分子であった。したがって、総ポリエチレングリコールセグメント分子量は43キロダルトンであった。
なお、本反応における主鎖アスパラギン酸誘導体のカルボキシ基に対するポリエチレングリコールセグメント化合物の仕込当量=3.6当量であり、ポリエチレングリコールセグメント化合物の消費率=1であった。
上記の主鎖ポリアスパラギン酸分子量、結合ゲムシタビン総分子量及び結合ポリエチレングリコールセグメント分子量から、実施例1のポリアミノ酸誘導体の分子量は、64キロダルトンと算出された。
また、ポリエチレングリコールセグメント含有量は、67質量%と算出された。
また、実施例1のポリアミノ酸誘導体の会合度をレーザー光散乱強度により測定したところ、光散乱強度は23,505cpsであった。また、SEC−MALS測定分子量は104,300であり、会合分子数は1.6であった。
[実施例2] 一般式(1)において、a+b+c+d+e+f+g+h+iの平均値=89、a+bの平均値=8.3、c+dの平均値=39.6、e+f=0、g+h+i=41.1、R=n−ブチル基、R=アセチル基、R=ゲムシタビン結合残基、R=水酸基、R15=メチル基、nの平均値=114、X=−(CH−NH−基、X=結合、X=メチレン基の化合物の合成
合成例1で得られた化合物1(分子量10キロダルトン、0.47g)と片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−50H、日油社製、平均分子量5キロダルトン、2.04g)とゲムシタビン(0.86g、SCINO PHARM社製)をDMF(48mL)に35℃にて溶解し、20℃にてHOBt(0.61g)、DIPCI(1.3mL)を加えて、一夜撹拌した。反応液を、外液精製水にて透析し、その後、外液アセトニトリルにて透析し、内液を凍結乾燥して実施例2に係る標記化合物(2.62g)を得た。
実施例2の化合物をアルカリ加水分解後、遊離したゲムシタビンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量することにより、本化合物のゲムシタビン含有量を求めた。その結果、実施例2におけるゲムシタビン含有量は17.0%(w/w)であった。したがって、ポリアミノ酸主鎖であるアスパラギン酸重合数89に対する結合率は44.5%であった。
この結果、実施例2のゲムシタビン総分子量は10キロダルトンであった。
実施例2のポリエチレングリコール化合物の結合量は、ポリエチレングリコール化合物の仕込当量およびポリエチレングリコール化合物の消費率より8.3分子であった。したがって、総ポリエチレングリコールセグメント分子量は42キロダルトンと算出された。
なお、実施例2において、主鎖アスパラギン酸誘導体のカルボキシ基に対するポリエチレングリコールセグメント化合物の仕込当量=8.9当量であり、ポリエチレングリコールセグメント化合物の消費率=0.93であった。
上記の主鎖ポリアスパラギン酸分子量、結合ゲムシタビン総分子量及び結合ポリエチレングリコールセグメント分子量から、実施例2のポリアミノ酸誘導体の分子量は、62キロダルトンと算出された。
また、ポリエチレングリコールセグメント含有量は、67質量%と算出された。
また、実施例2のポリアミノ酸誘導体の会合度をレーザー光散乱強度により測定したところ、光散乱強度は7,430cpsであった。また、SEC−MALS測定分子量は74,150であり、会合分子数は1.2であった。
[実施例3] 一般式(1)においてa+b+c+d+e+f+g+h+iの平均値=60、a+bの平均値=3.0、c+dの平均値=23.0、e+f=0、g+h+i=34.0、R=n−ブチル基、R=アセチル基、R=ゲムシタビン結合残基、R=水酸基、R15=メチル基、nの平均値=272、X=−(CH−NH−基、X=結合、X=メチレン基の化合物の合成
合成例3で得られた化合物3(分子量7.0キロダルトン、0.37g)と片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−12T、日油社製、平均分子量12キロダルトン、1.92g)とゲムシタビン(0.67g、SCINO PHARM社製)をDMF(35mL)に35℃にて溶解し、20℃にてHOBt(0.48g)、DIPCI(1.0mL)を加えて、一夜撹拌した。反応液を酢酸エチル(105mL)及びジイソプロピルエーテル(0.9L)の混合溶媒中に30分かけて滴下し、室温にて1時間攪拌した。沈析物を濾取して酢酸エチル/ジイソプロピルエーテル(1/9(v/v)、0.5L)で洗浄した。得られた沈析物を精製水(50mL)に溶解後、イオン交換樹脂(ダウケミカル製ダウエックス50(H)、12mL)を加えた。20分攪拌後、濾過し、凍結乾燥を行い、実施例3に係る標記化合物(2.38g)を得た。
実施例3の化合物をアルカリ加水分解後、遊離したゲムシタビンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量することにより、本化合物のゲムシタビン含有量を求めた。その結果、実施例3におけるゲムシタビン含有量は12.5%(w/w)であった。したがって、ポリアミノ酸主鎖であるアスパラギン酸重合数60に対する結合率は38.3%であった。
この結果、実施例3のゲムシタビン総分子量は6.0キロダルトンであった。
実施例3のポリエチレングリコール化合物の結合量は、ポリエチレングリコール化合物の仕込当量およびポリエチレングリコール化合物の消費率より3.0分子であった。したがって、総ポリエチレングリコールセグメント分子量は36キロダルトンと算出された。
なお、主鎖アスパラギン酸誘導体に対するポリエチレングリコール化合物の仕込当量=3.0当量であり、ポリエチレングリコール化合物の消費率=1であった。
上記の主鎖ポリアスパラギン酸分子量、結合ゲムシタビン総分子量及び結合ポリエチレングリコールセグメント分子量から、実施例3のポリアミノ酸誘導体の分子量は、49キロダルトンと算出された。
また、ポリエチレングリコールセグメント含有量は、73質量%と算出された。
また、実施例3のポリアミノ酸誘導体の会合度をレーザー光散乱強度により測定したところ、光散乱強度は10,270cpsであった。また、SEC−MALS測定分子量は102,500であり、会合分子数は2.1であった。
[実施例4] 一般式(1)においてa+b+c+d+e+f+g+h+iの平均値=110、a+bの平均値=5.5、c+dの平均値=44、e+f=0、g+h+i=60.5、R=n−ブチル基、R=アセチル基、R=ゲムシタビン結合残基、R=水酸基、R15=メチル基、nの平均値=272、X=−(CH−NH−基、X=結合、X=メチレン基の化合物の合成
合成例4で得られた化合物4(分子量13キロダルトン、0.50g)と片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−12T、日油社製、平均分子量12キロダルトン、2.6g)とゲムシタビン(0.92g、SCINO PHARM社製)をDMF(50mL)に35℃にて溶解し、20℃にてHOBt(0.65g)、DIPCI(2.0mL)を加えて、一夜撹拌した。反応液をエタノール(0.2L)及びジイソプロピルエーテル(0.8L)の混合溶媒中に30分かけて滴下し、室温にて1時間攪拌した。沈析物を濾取してエタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、0.2L)で洗浄した。得られた沈析物をアセトニトリル(90mL)に溶解後、精製水(15mL)及びイオン交換樹脂(ダウケミカル製ダウエックス50(H)、30mL)を加えた。1時間攪拌後、濾過し、濾液を減圧濃縮後、凍結乾燥を行い、実施例4に係る標記化合物(3.01g)を得た。
実施例4の化合物をアルカリ加水分解後、遊離したゲムシタビンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量することにより、本化合物のゲムシタビン含有量を求めた。その結果、実施例4におけるゲムシタビン含有量は12.9%(w/w)であった。したがって、ポリアミノ酸主鎖であるアスパラギン酸重合数110に対する結合率は44.0%であった。
この結果、実施例4のゲムシタビン総分子量は13キロダルトンであった。
ポリエチレングリコール化合物の結合量は、ポリエチレングリコール化合物の仕込当量およびポリエチレングリコール化合物の消費率より5.5分子であった。したがって、総ポリエチレングリコールセグメント分子量は91キロダルトンと算出された。
なお、主鎖アスパラギン酸誘導体に対するポリエチレングリコール化合物の仕込当量=5.5当量であり、ポリエチレングリコール化合物の消費率=1であった。
上記の主鎖ポリアスパラギン酸分子量、結合ゲムシタビン総分子量及び結合ポリエチレングリコールセグメント分子量から、実施例4のポリアミノ酸誘導体の分子量は、91キロダルトンと算出された。
また、ポリエチレングリコールセグメント含有量は、72質量%と算出された。
また、実施例4のポリアミノ酸誘導体の会合度をレーザー光散乱強度により測定したところ、光散乱強度は11,215cpsであった。また、SEC−MALS測定分子量は112,200であり、会合分子数は1.2であった。
[実施例5] 一般式(1)においてa+b+c+d+e+f+g+h+iの平均値=89、a+bの平均値=3.6、c+dの平均値=45、e+f=0、g+h+i=40.4、R=n−ブチル基、R=アセチル基、R=ゲムシタビン結合残基、R=水酸基、R15=メチル基、nの平均値=113、X=−(CH−NH−基、X=結合、X=メチレン基の化合物の合成
合成例1で得られた化合物1(分子量10キロダルトン、0.5g)と片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−50H、日油社製、平均分子量5キロダルトン、0.870g)とゲムシタビン(0.915g、SCINO PHARM社製)をDMF(50mL)に35℃にて溶解し、20℃にてHOBt(0.646g)、DIPCI(2.04mL)を加えて、一夜撹拌した。反応液をエタノール(0.2L)及びジイソプロピルエーテル(0.8L)の混合溶媒中に15分かけて滴下し、室温にて30分攪拌した。沈析物を濾取してエタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、0.2L)で洗浄した。得られた沈析物をアセトニトリル(90mL)に溶解後、精製水(16mL)及びイオン交換樹脂(ダウケミカル製ダウエックス50(H)、20mL)を加えた。1時間攪拌後、濾過し、濾液を減圧濃縮後、凍結乾燥を行い、実施例5に係る化合物(1.38g)を得た。
実施例5の化合物をアルカリ加水分解後、遊離したゲムシタビンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量することにより、本化合物のゲムシタビン含有量を求めた。その結果、実施例5におけるゲムシタビン含有量は、27.9%(w/w)であった。したがって、ポリアミノ酸主鎖であるアスパラギン酸重合数89に対する結合率は50.6%であった。
この結果、実施例5のゲムシタビン総分子量は12キロダルトンであった。
ポリエチレングリコール化合物の結合量は、ポリエチレングリコール化合物の仕込当量およびポリエチレングリコール化合物の消費率より3.6分子であった。したがって、総ポリエチレングリコールセグメント分子量は18キロダルトンと算出された。
なお、主鎖アスパラギン酸誘導体に対するポリエチレングリコール化合物の仕込当量=3.6当量であり、ポリエチレングリコール化合物の消費率=1であった。
上記の主鎖ポリアスパラギン酸分子量、結合ゲムシタビン総分子量及び結合ポリエチレングリコールセグメント分子量から、実施例5のポリアミノ酸誘導体の分子量は、42キロダルトンと算出された。
また、ポリエチレングリコールセグメント含有量は、43質量%と算出された。
また、実施例5のポリアミノ酸誘導体の会合度をレーザー光散乱強度により測定したところ、光散乱強度は35,280cpsであった。また、SEC−MALS測定分子量は347,200であり、会合分子数は8.4であった。
[実施例6] 一般式(1)においてa+b+c+d+e+f+g+h+iの平均値=89、a+bの平均値=24.0、c+dの平均値=27.5、e+f=0、g+h+i=37.5、R=n−ブチル基、R=アセチル基、R=ゲムシタビン結合残基、R=水酸基、R及びR10=水素原子、R11=アラニンメチルエステル基、R12=水酸基、R15=メチル基、nの平均値=45、X=−(CH−NH−基、X=メチレン基の化合物の合成
合成例1で得られた化合物1(分子量10キロダルトン、0.53g)と片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−20H、日油社製、平均分子量2キロダルトン、2.47g)をDMF(50mL)に35℃にて溶解し、20℃にてHOBt(0.68g)及びDIPCI(1.4mL)を加えて3.5時間攪拌した。3.5時間後、合成例5で得られた化合物5(1.1g)とジイソプロピルエチルアミン(0.4mL)を加えて、一夜撹拌した。反応液をジイソプロピルエーテル(1.5L)に30分かけて滴下し、室温にて1時間攪拌した。沈析物を濾取してジイソプロピルエーテル(0.5L)で洗浄した。得られた沈析物を精製水(50mL)に溶解後、イオン交換樹脂(ダウケミカル製ダウエックス50(H)、20mL)を加えた。20分攪拌後、濾過し、凍結乾燥を行い、実施例6に係る標記化合物(3.55g)を得た。
実施例6の化合物をアルカリ加水分解後、遊離したゲムシタビンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量することにより、本化合物のゲムシタビン含有量を求めた。その結果、実施例6におけるゲムシタビン含有量は、10.1%(w/w)であった。したがって、ポリアミノ酸主鎖であるアスパラギン酸重合数89に対する結合率は30.9%であった。
この結果、実施例6のゲムシタビン総分子量は7.2キロダルトンであった。
ポリエチレングリコール化合物の結合量は、ポリエチレングリコール化合物の仕込当量およびポリエチレングリコール化合物の消費率より24分子であった。したがって、総ポリエチレングリコールセグメント分子量は48キロダルトンと算出された。
なお、主鎖アスパラギン酸誘導体に対するポリエチレングリコール化合物の仕込当量=24当量であり、ポリエチレングリコール化合物の消費率=1であった。
上記の主鎖ポリアスパラギン酸分子量、結合ゲムシタビン総分子量及び結合ポリエチレングリコールセグメント分子量から、実施例6のポリアミノ酸誘導体の分子量は、71キロダルトンと算出された。
また、ポリエチレングリコールセグメント含有量は、68質量%と算出された。
また、実施例5のポリアミノ酸誘導体の会合度をレーザー光散乱強度により測定したところ、光散乱強度は6,025cpsであった。また、SEC−MALS測定分子量は64,790であり、会合分子数は0.9であった。
[実施例7] 一般式(1)においてa+b+c+d+e+f+g+h+iの平均値=89、a+bの平均値=24.0、c+dの平均値=18.7、e+f=0、g+h+i=46.3、R=n−ブチル基、R=アセチル基、R=ゲムシタビン結合残基、R=水酸基、R及びR10=水素原子、R11=ロイシンメチルエステル基、R12=水酸基、R15=メチル基、nの平均値=45、X=−(CH−NH−基、X=メチレン基の化合物の合成
合成例1で得られた化合物1(分子量10キロダルトン、0.56g)と片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−20H、日油社製、平均分子量2キロダルトン、2.64g)をDMF(50mL)に35℃にて溶解し、20℃にてHOBt(0.73g)及びDIPCI(1.5mL)を加えて4時間攪拌した。4時間後、反応液に合成例6で得られた化合物6(1.3g)とジイソプロピルエチルアミン(0.4mL)を加えて、一夜撹拌した。反応液を酢酸エチル(150mL)及びジイソプロピルエーテル(1.4L)の混合溶媒中に30分かけて滴下し、室温にて1時間攪拌した。沈析物を濾取して酢酸エチル/ジイソプロピルエーテル(1/9(v/v)、0.5L)で洗浄した。得られた沈析物を精製水(50mL)に溶解後、イオン交換樹脂(ダウケミカル製ダウエックス50(H)、20mL)を加えた。20分攪拌後、濾過し、凍結乾燥を行い、実施例7に係る標記化合物(3.73g)を得た。
実施例7の化合物をアルカリ加水分解後、遊離したゲムシタビンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量することにより、本化合物のゲムシタビン含有量を求めた。その結果、実施例7におけるゲムシタビン含有量は、7.3%(w/w)であった。したがって、ポリアミノ酸主鎖であるアスパラギン酸重合数89に対する結合率は21.0%であった。
この結果、実施例7のゲムシタビン総分子量は4.9キロダルトンであった。
ポリエチレングリコール化合物の結合量は、ポリエチレングリコール化合物の仕込当量およびポリエチレングリコール化合物の消費率より24分子であった。したがって、総ポリエチレングリコールセグメント分子量は48キロダルトンと算出された。
なお、主鎖アスパラギン酸誘導体に対するポリエチレングリコール化合物の仕込当量=24当量であり、ポリエチレングリコール化合物の消費率=1であった。
上記の主鎖ポリアスパラギン酸分子量、結合ゲムシタビン総分子量及び結合ポリエチレングリコールセグメント分子量から、実施例7のポリアミノ酸誘導体の分子量は、69キロダルトンと算出された。
また、ポリエチレングリコールセグメント含有量は、70質量%と算出された。
また、実施例7のポリアミノ酸誘導体の会合度をレーザー光散乱強度により測定したところ、光散乱強度は5,740cpsであった。また、SEC−MALS測定分子量は64,630であり、会合分子数は0.9であった。
[実施例8] 一般式(1)においてa+b+c+d+e+f+g+h+iの平均値=89、a+bの平均値=34.0、c+dの平均値=10.9、e+f=0、g+h+i=44.4、R=n−ブチル基、R=アセチル基、R=CP−4126結合残基、R=水酸基、R15=メチル基、nの平均値=45、X=−(CH−NH−基、X=結合、X=メチレン基の化合物の合成
合成例1で得られた化合物1(分子量10キロダルトン、0.58g)と片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−20H、日油株式会社製、平均分子量2キロダルトン、1.97g)とGemcitabine 5’−elaidate(CP−4126、0.45g、MedKoo Biosciences社製)をDMF(53mL)に35℃にて溶解し、25℃にてHOBt(0.845g)、DIPCI(0.75mL)を加えて、一夜撹拌した。反応液をジイソプロピルエーテル(1060mL)の混合溶媒中に30分かけて滴下し、室温にて30分攪拌した。沈析物を濾取してジイソプロピルエーテル(50mL)で洗浄した。得られた沈析物を精製水(53mL)に溶解後、イオン交換樹脂(ダウケミカル製ダウエックス50(H)、25mL)を加えた。30分攪拌後、濾過し、濾液を減圧濃縮後、凍結乾燥を行い、実施例8に係る標記化合物(4.79g)を得た。
実施例8の化合物をアルカリ加水分解後、遊離したゲムシタビンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量することにより、本化合物のゲムシタビン含有量を求めた。その結果、実施例8におけるゲムシタビン含有量は、3.5%(w/w)であった。したがって、ポリアミノ酸主鎖であるアスパラギン酸重合数89に対する結合率は12.3%であった。
この結果、実施例8のゲムシタビン総分子量は2.9キロダルトンであった。
ポリエチレングリコール化合物の結合量は、ポリエチレングリコール化合物の仕込当量およびポリエチレングリコール化合物の消費率より34.0分子であった。その結果、総ポリエチレングリコールセグメント分子量は68キロダルトンと算出された。
なお、主鎖アスパラギン酸誘導体に対するポリエチレングリコール化合物の仕込当量=37当量であり、ポリエチレングリコール化合物の消費率=0.92であった。
上記の主鎖ポリアスパラギン酸分子量、結合ゲムシタビン総分子量及び結合ポリエチレングリコールセグメント分子量から、実施例8のポリアミノ酸誘導体の分子量は、83キロダルトンと算出された。
また、ポリエチレングリコールセグメント含有量は、82質量%と算出された。
また、実施例8のポリアミノ酸誘導体の会合度をレーザー光散乱強度により測定したところ、光散乱強度は20,545cpsであった。また、SEC−MALS測定分子量は252,800であり、会合分子数は3.1であった。
[比較例1] 一般式(1)においてa+b+c+d+e+f+g+h+iの平均値=22、a+bの平均値=4.4、c+dの平均値=9.2、e+f=0、g+h+i=8.4、R=n−ブチル基、R=アセチル基、R=ゲムシタビン結合残基、R=水酸基、R15=メチル基、nの平均値=45、X=−(CH−NH−基、X=結合、X=メチレン基の化合物の合成
合成例2で得られた化合物2(分子量2.6キロダルトン、0.56g)と片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−20H、日油社製、平均分子量2キロダルトン、1.94g)とゲムシタビン(1.0g、SCINO PHARM社製)をDMF(50mL)に35℃にて溶解し、20℃にてHOBt(0.72g)、DIPCI(1.5mL)を加えて、一夜撹拌した。反応液を酢酸エチル(150mL)及びジイソプロピルエーテル(1.4L)の混合溶媒中に30分かけて滴下し、室温にて1時間攪拌した。沈析物を濾取して酢酸エチル/ジイソプロピルエーテル(1/9(v/v)、0.5L)で洗浄した。得られた沈析物を精製水(50mL)に溶解後、イオン交換樹脂(ダウケミカル製ダウエックス50(H)、12mL)を加えた。20分攪拌後、濾過し、凍結乾燥を行い、比較例1に係る標記化合物(2.65g)を得た。
比較例1の化合物をアルカリ加水分解後、遊離したゲムシタビンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量することにより、本化合物のゲムシタビン含有量を求めた。その結果、比較例1におけるゲムシタビン含有量は、17.6%(w/w)であった。したがって、ポリアミノ酸主鎖であるアスパラギン酸重合数22に対する結合率は38.2%であった。
この結果、比較例1のゲムシタビン総分子量は2.2キロダルトンであった。
ポリエチレングリコール化合物の結合量は、ポリエチレングリコール化合物の仕込当量およびポリエチレングリコール化合物の消費率より4.4分子であった。その結果、総ポリエチレングリコールセグメント分子量は8.8キロダルトンと算出された。
なお、主鎖アスパラギン酸誘導体に対するポリエチレングリコール化合物の仕込当量=4.4当量であり、ポリエチレングリコール化合物の消費率=1であった。
上記の主鎖ポリアスパラギン酸分子量、結合ゲムシタビン総分子量及び結合ポリエチレングリコールセグメント分子量から、比較例1のポリアミノ酸誘導体の分子量は、14キロダルトンと算出された。
また、ポリエチレングリコールセグメント含有量は、64質量%と算出された。
また、比較例1のポリアミノ酸誘導体の会合度をレーザー光散乱強度により測定したところ、光散乱強度は3,030cpsであった。また、SEC−MALS測定分子量は17,810であり、会合分子数は1.3であった。
[比較例2] 一般式(1)においてa+b+c+d+e+f+g+h+iの平均値=89、a+bの平均値=3.6、c+dの平均値=49、e+f=0、g+h+i=36.4、R=n−ブチル基、R=アセチル基、R=ゲムシタビン結合残基、R=水酸基、R15=メチル基、nの平均値=45、X=−(CH−NH−基、X=結合、X=メチレン基の化合物の合成
合成例1で得られた化合物1(分子量10キロダルトン、0.50g)と片末端メトキシ基及び片末端3−アミノプロピル基のポリエチレングリコール(SUNBRIGHT MEPA−20H、日油社製、平均分子量2キロダルトン、0.35g)とゲムシタビン(0.915g、SCINO PHARM社製)をDMF(50mL)に35℃にて溶解し、20℃にてHOBt(0.65g)、DIPCI(2.0mL)を加えて、一夜撹拌した。反応液をエタノール(0.2L)及びジイソプロピルエーテル(0.8L)の混合溶媒中に15分かけて滴下し、室温にて30分攪拌した。沈析物を濾取してエタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、0.2L)で洗浄した。得られた沈析物をアセトニトリル(90mL)に溶解後、精製水(16mL)及びイオン交換樹脂(ダウケミカル製ダウエックス50(H)、20mL)を加えた。30分攪拌後、濾過し、濾液を減圧濃縮後、凍結乾燥を行い、比較例2に係る標記化合物(0.89g)を得た。
比較例2の化合物をアルカリ加水分解後、遊離したゲムシタビンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量することにより、本化合物のゲムシタビン含有量を求めた。その結果、比較例1におけるゲムシタビン含有量は、41.5%(w/w)であった。したがって、ポリアミノ酸主鎖であるアスパラギン酸重合数89に対する結合率は55.1%であった。
この結果、比較例2のゲムシタビン総分子量は13キロダルトンであった。
ポリエチレングリコール化合物の結合量は、ポリエチレングリコール化合物の仕込当量およびポリエチレングリコール化合物の消費率より3.6分子であった。したがって、総ポリエチレングリコールセグメント分子量は7.2キロダルトンと算出された。
なお、主鎖アスパラギン酸誘導体に対するポリエチレングリコール化合物の仕込当量=3.6当量であり、ポリエチレングリコール化合物の消費率=1であった。
上記の主鎖ポリアスパラギン酸分子量、結合ゲムシタビン総分子量及び結合ポリエチレングリコールセグメント分子量から、比較例2のポリアミノ酸誘導体の分子量は、30キロダルトンと算出された。
また、ポリエチレングリコールセグメント含有量は、24質量%と算出された。
また、比較例2のポリアミノ酸誘導体の会合度をレーザー光散乱強度により測定したところ、光散乱強度は205,765cpsであった。また、SEC−MALS測定分子量は1,520,000であり、会合分子数は50.1であった。
[試験例1] 非担癌マウスに対する血液毒性評価
実施例1〜6及び比較例1,2の化合物、並びに対照薬として塩酸ゲムシタビンを用いて、非担癌マウス(ICR系マウス(Crlj:CD−1))に対する血液毒性評価試験を実施した。
実施例1〜6及び比較例1,2の化合物は5%ブドウ糖注射液に溶解し、対照薬である塩酸ゲムシタビンは生理食塩液溶液として、実施例1〜6及び比較例1,2の化合物並びに塩酸ゲムシタビンはゲムシタビン換算で40mg/kgで、また、比較例2はゲムシタビン換算20mg/kgの投与量で各々静脈内に単回投与した。また、溶媒(5%ブドウ糖注射液、あるいは生理食塩液、10mL/kg)を投与した群を設定し、実施例1〜6及び比較例1,2の化合物に対しては5%ブドウ糖注射液投与群を,塩酸ゲムシタビンに対しは生理食塩液投与群をそれぞれ対照群とした。
投与後7日に採血し、網状赤血球数を血球分析装置(XT−2000iV)により測定した。投与後7日における溶媒対照群に対する各化合物投与群の、網状赤血球数の相対値を算出した。その結果を表1に示した。
[表1]
Figure 2017160125
この結果、比較例2の化合物は投与量が低いにも関わらず、対照薬である塩酸ゲムシタビンと比較して、網状赤血球数を著しく低下させており、血液毒性の発現が認められた。この現象は、投与7日後であっても、網状赤血球数の回復が遅延していることを示し、血液毒性の遷延化現象であると考えられる。これに対し、本発明の実施例1〜6に係る化合物は、網状赤血球数の低下が確認されておらず、投与後7日時点において、血液毒性が認められていないことが示された。塩酸ゲムシタビンは、臨床使用において、血液毒性が主たる副作用である。したがって、実施例1〜6に係る化合物は、血液毒性を遷延化させず、早い回復性を示したと考察される。
[試験例2]ヒト膵がん移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果試験
実施例1,2,5及び6並びに比較例1,2の化合物の抗腫瘍効果試験を実施した。
ヌードマウス皮下で継代したヒト膵がんAsPC−1の腫瘍塊を、約3mm角のブロックにし、套管針を用いてヌードマウスの背側部皮下に移植した。腫瘍移植後平均腫瘍体積が300mm以上になった時点で、実施例1,2,5及び6の化合物を5%ブドウ糖注射液に溶解し、ゲムシタビン換算量として40mg/kgで投与した。また、比較例1及び2を5%ブドウ糖注射液に溶解し、比較例1をゲムシタビン換算量として40mg/kg、比較例2はゲムシタビン換算量として20mg/kgで投与した。対照薬として塩酸ゲムシタビンを生理食塩液に溶解し、40mg/kgで投与した。各化合物及び対照薬は、3日間隔で4回、尾静脈内に投与した。
投与開始日及び評価日(投与開始後16日目または14日目)の腫瘍体積から相対腫瘍体積を求め、抗腫瘍効果の指標とした。なお、腫瘍体積は、腫瘍の長径(L:mm)及び短径(W:mm)を計測して、(L×W)/2の計算式にて算出した。試験は3回に分けて行った。結果を表2、3及び4に示した。
[表2]
Figure 2017160125
[表3]
Figure 2017160125
[表4]
Figure 2017160125
この結果、比較例1の化合物は、対照薬と比較して抗腫瘍効果に有意差はなかった。これに対し、本発明の化合物は対照薬と比較して、強力な抗腫瘍効果を示すと共にその効果持続性が認められた。この理由として、比較例1の化合物は、本発明の化合物に比べ血中滞留性が悪く、対照薬より強力な抗腫瘍効果を示すために必要な薬剤濃度を維持できなかったことが考えられる。低分子量の化合物は腎臓等による排泄が亢進されることが知られている。比較例1の化合物は、分子量が14キロダルトンであり、本発明の化合物と比較し分子量が低い。本発明の実施例1〜6に係る化合物は、適正範囲の分子量に制御したことにより血中滞留性が上がり、薬効を示すのに十分な薬剤濃度を維持させたため、対照薬より強力な抗腫瘍効果を示したと考察される。

Claims (11)

  1. 複数単位のアスパラギン酸誘導体及び/又はグルタミン酸誘導体を含有するポリアミノ酸誘導体であって、その側鎖カルボキシ基に、ポリエチレングリコールセグメント及び核酸代謝拮抗剤が、直接又は結合基を介して結合しており、該ポリアミノ酸誘導体の分子量が20キロダルトン以上で200キロダルトン以下であり、該ポリアミノ酸誘導体におけるポリエチレングリコールセグメントの質量含有率が30質量%以上90質量%以下である、核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体。
  2. 前記ポリエチレングリコールセグメントが2〜80ユニット結合している請求項1に記載の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体。
  3. 前記核酸代謝拮抗剤がアミノ基を有する核酸代謝拮抗剤であり、該核酸代謝拮抗剤はアミノ基でアミド結合を介して結合している請求項1又は2に記載の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体。
  4. 前記核酸代謝拮抗剤の質量含有率が、2質量%以上60質量%以下である請求項1〜3の何れか一項に記載の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体。
  5. 前記核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体が一般式(1)
    Figure 2017160125
    [式中、Rは水素原子、炭素数(C1〜C8)のアルキル基及びポリエチレングリコールセグメントからなる群から選択される基であり、Rは水素原子、炭素数(C1〜C8)のアシル基及び炭素数(C1〜C8)のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される基を示し、Rはポリエチレングリコールセグメントを示し、Rは核酸代謝拮抗剤結合残基を示し、Rはアスパラギン酸結合残基及び/又はアスパラギン酸イミド結合残基を示し、Rは水酸基及び/又は−N(R)CONH(R)を示し、該R及び該Rは同一でも異なってもいてもよく、三級アミノ基で置換されていても良い炭素数(C1〜C8)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を示し、X及びXは結合基であり、Xはメチレン基又はエチレン基であり、a、b、c、d、e、f、g、h及びiはそれぞれ独立して0〜200の整数を示し、ポリアミノ酸誘導体の総重合数である(a+b+c+d+e+f+g+h+i)は3〜250であり、(a+b)は1〜95であり、(c+d)は1〜175であり、前記Rが結合したアミノ酸単位、前記Rが結合したアミノ酸単位、前記Rが結合したアミノ酸単位、前記Rが結合したアミノ酸単位及び側鎖カルボキシ基が分子内環化型のアミノ酸単位が、それぞれ独立してランダムな配列である]で示される請求項1〜4の何れか一項に記載の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体。
  6. は、下記一般式(2)又は一般式(3)
    Figure 2017160125
    [式中、R、R10はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数(C1〜C8)のアルキル基を示し、R11は水素原子、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数(C1〜C20)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアラルキル基、置換基を有していても良い芳香族基及びカルボキシ基が保護されたアミノ酸結合残基からなる群から選択される1種以上の基を示し、CX−CYはCH−CH若しくはZ配置のC=C(二重結合)を示す]である請求項5に記載の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体。
  7. が下記一般式(4)、一般式(5)及び一般式(6)
    Figure 2017160125
    [式中、R、R10、R11、CX−CYは前記と同じ意味を示し、R12は水酸基及び/又は−N(R13)CONH(R14)を示し、R13、R14は同一でも異なっていてもよく、三級アミノ基で置換されていても良い炭素数(C1〜C8)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を示す]からなる置換基群から選ばれる1種以上の基である請求項5又は6に記載の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体。
  8. のポリエチレングリコールセグメントが、下記一般式(7)
    Figure 2017160125
    [式中、R15は水素原子又は置換基を有していても良い炭素数(C1〜C8)の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を示し、nは5〜2,500の整数を示す]である請求項5〜7の何れか一項に記載の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体。
  9. 核酸代謝拮抗剤が式(8):
    Figure 2017160125
    [式中、−Rfは、式(9):
    Figure 2017160125
    の置換基群より選ばれる基を示し、R16は水素原子又は脂肪酸エステルのアシル基を示す]で表される、いずれか1種以上の核酸代謝拮抗剤である、請求項1〜8の何れか一項に記載の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体。
  10. 核酸代謝拮抗剤が式(10):
    Figure 2017160125
    [式中、−Rfは、式(11):
    Figure 2017160125
    の置換基群より選ばれる基を示し、R16は水素原子又は脂肪酸エステルのアシル基を示す]で表される請求項1〜9の何れか一項に記載の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体。
  11. 請求項1〜10に記載の核酸代謝拮抗剤結合ポリアミノ酸誘導体を含有する医薬。

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