以下、本発明の実施形態について説明する。
図1には、第1の実施形態に係る半導体加工用シート1が示される。半導体加工用シート1は、基材10と、基材10の片面に積層された半導体貼付層80と、半導体貼付層80における基材10とは反対の面に積層された剥離フィルム30と、基材10の半導体貼付層80とは反対の面における幅方向両側部に積層された保護材70と含む。
また、図2には、第2の実施形態に係る半導体加工用シート2が示される。半導体加工用シート1は、基材10と、基材10の片面に積層された半導体貼付層80と、半導体貼付層80における基材10とは反対の面に積層された剥離フィルム30と、剥離フィルム30の半導体貼付層80とは反対の面における幅方向両側部に積層された保護材70と含む。
本実施形態に係る半導体加工用シート1,2においては、少なくとも剥離シート30は長尺であり、基材10および半導体貼付層80も同様に長尺であることが好ましい。
半導体加工用シート1,2において、基材10は、半導体貼付層80に遠位な側に第1の面101を有し、半導体貼付層80に近位な側に第2の面102を有する。半導体貼付層80は、基材10に近位な側に第1の面801を有し、剥離フィルム30に近位な側に第2の面802を有する。剥離フィルム30は、半導体貼付層80に近位な側に第1の面301を有し、半導体貼付層80に遠位な側に第2の面302を有する。
本実施形態に係る半導体加工用シート1,2では、保護材70を備えることにより、半導体加工用シートをロール状に巻き取ったときに、保護材70と基材10または剥離フィルム30とが小さい面積で接触することになる。これにより、基材10と剥離フィルム30とが直接接触することがないか、接触したとしても接触した部分に巻き圧が殆どかかからない。その結果、基材10と剥離フィルム30とが全体的に密着することが防止される、ブロッキングの発生が抑制される。結果として、ロールからの半導体加工用シート1,2の繰り出しを良好に行うことができるとともに、繰り出しの際に意図しない界面での剥離が生じない。
さらに、本実施形態に係る半導体加工用シート1,2では、基材10の第1の面101における算術平均粗さRaが、0.01〜0.8μmである。これにより、当該面における平滑性が良好なものとなる。その結果、基材10は、所望の波長の光に対する高い光線透過性を有することができる。
1.基材
本実施形態に係る半導体加工用シート1,2では、基材10の第1の面101における算術平均粗さRaは、0.01〜0.8μmであり、特に0.02〜0.5μmであることが好ましく、さらには0.03〜0.3μmであることが好ましい。当該算術平均粗さRaが0.01μm未満であると、第1の面101が過度に平滑になり、半導体加工用シート1,2の作製時において、塗工装置における基材の繰り出し不良といった問題が生じる。また、当該算術平均粗さRaが0.8μmを超えると、第1の面101に照射された光が当該面において散乱し易くなり、光線透過性が損なわれる。なお、本明細書における算術平均粗さRaは、JIS B0601:2013に基づいて測定したものであり、測定方法の詳細は後述する実施例に示す通りである。
上記算術平均粗さRaを達成するためには、基材10の製造時に、上記算術平均粗さRaを有するように製造することが好ましい。例えば、基材10の押出成形に使用するロールの表面粗さを調整することにより、上記算術平均粗さRaを有する基材10を製造することが好ましい。あるいは、基材10をインフレーション法により製造する際に、第1の面101となる面の粗さが上記算術平均粗さRaとなるように調整することが好ましい。
基材10の第2の面102における算術平均粗さRaは、基材10の光線透過性を確保できる限り適宜設定することができ、例えば、0.01〜2.0μmであることが好ましく、特に0.03〜1.5μmであることが好ましく、さらには0.05〜1.0μmであることが好ましい。
本実施形態に係る半導体加工用シート1,2において、基材10の構成材料は、所望の波長の光に対する優れた光線透過性を発揮し、さらに半導体加工用シート1,2の使用工程における所望の機能を発揮する限り、特に限定されない。基材10は、樹脂系の材料を主材とするフィルム(樹脂フィルム)を含むものであってよい。好ましくは、基材10は樹脂フィルムのみからなる。樹脂フィルムの具体例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム;エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体フィルム、その他のエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム等のエチレン系共重合フィルム;ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、エチレン−ノルボルネン共重合体フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム等のポリオレフィン系フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム;(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム;ポリウレタンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;フッ素樹脂フィルムなどが挙げられる。ポリエチレンフィルムの例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム等が挙げられる。また、これらの架橋フィルム、アイオノマーフィルムといった変性フィルムも用いられる。基材10は、これらの1種からなるフィルムでもよいし、これらを2種類以上組み合わせた材料からなるフィルムであってもよい。また、上述した1種以上の材料からなる層が複数積層された、多層構造の積層フィルムであってもよい。この積層フィルムにおいて、各層を構成する材料は同種であってもよく、異種であってもよい。基材10としては、上記フィルムの中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニルフィルムまたはポリプロピレンフィルムを使用することが好ましい。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語についても同様である。
基材10においては、所望の波長の光に対する優れた光線透過性を損なわない限り、上記のフィルム内に、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、酸化防止剤、着色剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、イオン捕捉剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。これらの添加剤の含有量としては、特に限定されないものの、基材10が優れた光線透過性および所望の機能を発揮する範囲とすることが好ましい。
半導体貼付層80が後述する粘着剤層20を含み、当該粘着剤層20を硬化させるためにエネルギー線を使用する場合、基材10は当該エネルギー線に対する光線透過性を有することが好ましい。例えば、当該エネルギー線の例としては、紫外線や電子線が挙げられる。
基材10の第2の面102は、半導体加工用シート1,2における光線透過性を損なわない限り、半導体貼付層80との密着性を高めるために、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理が施されてもよい。
基材10の厚さは、半導体加工用シート1,2が使用される工程において適切に機能できる限り限定されない。当該厚さは、通常、20〜450μmであることが好ましく、特に25〜300μmであることが好ましく、さらには50〜200μmであることが好ましい。
2.剥離フィルム
剥離フィルム30を構成する材料としては、例えば樹脂フィルムを使用することができる。樹脂フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、およびポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。
剥離フィルム30は、通常、半導体貼付層80に対する剥離性を発揮するために、第1の面301側に剥離剤層が設けられる。また、本実施形態に係る半導体加工用シート1,2の剥離フィルム30では、第1の面301側および第2の面302側のそれぞれに剥離剤層を備えてもよい。この場合、剥離フィルム30は、例えば、樹脂フィルム等の基材の両面に剥離剤層を備えた構成を有する。剥離フィルム30の第2の面302側にも剥離剤層を備えることにより、半導体加工用シート1,2をロール状に巻き取った際に、基材10の第1の面101と剥離フィルム30の第2の面302とが接触する場合であっても、ブロッキングの発生を効果的に防止することができる。剥離剤としては、シリコーン系剥離剤、アルキッド系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤、ゴム系剥離剤等を用いることができる。
剥離フィルム30の第2の面302の算術平均粗さRaは、0.02〜0.8μmであることが好ましく、特に0.03〜0.5μmであることが好ましく、さらには0.05〜0.3μmであることが好ましい。第2の面302の算術平均粗さRaが0.02μm以上であることで、半導体加工用シート1,2をロール状に巻き取った際に、平滑な基材10の第1の面101に対しても剥離フィルム30の第2の面302が密着し難くなり、その結果、ブロッキングの発生を効果的に防止できる。さらに、第2の面302の算術平均粗さRaが0.8μm以下であることで、半導体加工用シート1,2をロール状に巻き取った際に、基材10の第1の面101と剥離フィルム30の第2の面302とが接触する場合であっても、第2の面302の表面形状が第1の面101に転写することに起因する、第1の面101の平滑性の低下が防止される。
上記算術平均粗さRaを達成するためには、剥離フィルム30の製造時に、上記算術平均粗さRaを有するように製造してもよい。あるいは、剥離フィルム30の構成材料をシート状に製造した後に、上記算術平均粗さRaを有するように当該シートに表面処理を施してもよい。前者の場合、例えば、剥離フィルム30の押出成形に使用するロールの表面粗さを調整することにより、上記算術平均粗さRaを有する剥離フィルム30を製造することができる。後者の場合、例えば、シートに対してサンドブラスト処理やエンボス加工等を施すことにより、上記算術平均粗さRaを有する剥離フィルム30を得ることができる。
剥離フィルム30の第1の面301における算術平均粗さRaは、適宜設定することができ、例えば、0.02〜0.10μmであることが好ましく、特に0.02〜0.07μmであることが好ましく、さらには0.03〜0.05μmであることが好ましい。
剥離フィルム30の厚さは、特に制限はないものの、通常12〜250μm程度である。
長尺の剥離フィルム30の幅は、特に制限はないものの、本実施形態に係る半導体加工用シート1,2が使用されるウエハ等のサイズに応じて設定することが好ましく、例えば、長尺の剥離フィルム30の幅は、通常150〜600mm程度である。
3.保護材
本実施形態に係る半導体加工用シート1,2では、基材10の第1の面101または剥離フィルム30の第2の面302に保護材70が積層されている。特に、図1に示される第1の実施形態に係る半導体加工用シート1では、基材10の第1の面101における幅方向両側部に保護材70が積層されている。また、図2に示される第2の実施形態に係る半導体加工用シート2では、剥離フィルム30の第2の面302に保護材70が積層されている。ここで、図3には、半導体加工用シート1同士が重なった様子が示されている。半導体加工用シート1が保護材70を備えることにより、図3に示されるように、保護材70と剥離フィルム30とが小さい面積で接触し、基材10と剥離フィルム30とが全体的に密着することが防止される。これにより、ブロッキングが発生しにくくなり、繰り出しを良好に行うことができるとともに、繰り出しの際に意図しない界面での剥離が生じない。半導体加工用シート2についても、半導体加工用シート2同士を重ねた場合に、保護材70と基材10とが小さい面積で接触し、基材10と剥離フィルム30とが全体的に密着することが防止される。その結果、ブロッキングが発生しにくくなり、繰り出しを良好に行うことができるとともに、繰り出しの際に意図しない界面での剥離が生じない。なお、基材10は、後述するように所定の形状にプリカットされていてもよい。基材10がプリカットされている場合、保護材70は、基材10の第1の面101における、剥離フィルム30の第2の面302の幅方向両側部に対応する位置に設けられる。
なお、本明細書において、「保護材70が基材10の第1の面101または剥離フィルム30の第2の面302に積層されている」といった表現における「積層」とは、保護材70が、基材10の第1の面101または剥離フィルム30の第2の面302に単に接触しているのみであり、固定されていない場合も含む。特に、半導体加工用シート1,2がロール状に巻き取られている場合、固定されていない保護材70は、半導体加工用シート1,2をロール状に巻き取った際の巻き圧により、保護材70が所定の位置から移動したり、半導体加工用シート1,2から脱落することが防止される。
保護材70は、平面視にて、一連の長尺形状を有していることが好ましく、例えば長尺の帯状であることが好ましい。基材10がプリカットされている場合、保護材70は、プリカットされた基材10に対応した形状を有してもよい。また、保護材70に後述する粘着剤層が設けられており、基材10または剥離フィルム30に貼付されている場合、途中で分断された断続形状を有してもよい。
保護材70の材料としては、樹脂フィルム、紙、金属箔等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;シアノエチルセルロース、セルロースアセテート等のセルロース系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン系樹脂;シリコーン系樹脂;エポキシ系樹脂;フッ素系樹脂;アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;フェノール系樹脂等の樹脂またはそれら樹脂を架橋したものからなるフィルム、それらフィルムの積層体、それらのフィルムまたは積層体の表面に金属蒸着処理をしたもの等が挙げられる。
保護材70における、半導体加工用シート1,2の表面の一部となる面側(第1の実施形態に係る半導体加工用シート1では、保護材70における基材10とは反対の面側であり、第2の実施形態に係る半導体加工用シート2では、保護材70における剥離フィルム30とは反対の面側)には、金属蒸着層、粗面化処理層またはハードコート層が設けられていてもよい。保護材70がこのような層を備えることにより、ロールから半導体加工用シート1,2を巻き出す際に必要な力を小さくすることが可能となる。このような層の好ましい例としては、表面が粗面化処理された金属蒸着層等が挙げられる。当該金属蒸着層を備える保護材70の好ましい例としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、表面が粗面化処理された金属蒸着層を設けたものが挙げられる。表面が粗面化処理された金属蒸着層は、公知の方法によって形成されたものであってよい。このような保護材70を使用することで、ロールから半導体加工用シート1,2を巻き出す際に必要な力をより小さくでき、さらには保護材70の見落としを効果的に防止することができる。なお、本明細書において、半導体加工用シートの表面とは、半導体加工用シートをロール状に巻き取ったり、半導体加工用シート同士を重ねたりしていない状態において、外部に露出する面のことを意味する。
金属蒸着層を構成する金属としては、例えば、アルミニウム、銀、銅、スズ、等が挙げられ、これらの中でも製造コストや蒸着が容易であるという観点からアルミニウムが好ましい。
ハードコート層の材料は、硬化性の材料であってもよく、非硬化性の材料であってもよい。硬化性の材料としては、例えば、活性エネルギー線硬化性の材料であってもよく、熱硬化性の材料であってもよい。非硬化性の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂を使用することができる。上記の中でも、所望の厚さのハードコート層を容易に形成できる観点から、活性エネルギー線硬化性の材料を使用することが好ましく、特に多官能(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。多官能(メタ)アクリレートは、活性エネルギー線の照射により架橋して硬化し且つ速乾性に優れるため、所定の硬度が得られ易く、半導体加工用シートを巻き取ったときに、保護材70が巻圧で潰れるおそれがない。また、保護材70を構成する材料は、光重合開始剤、架橋剤、反応抑制剤、密着向上剤等を含有してもよい。
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記の中でも、特に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、またはペンタエリスリトールトリアクリレートを使用することが好ましい。
保護材70における、半導体加工用シート1,2の表面の一部となる面とは反対の側(第1の実施形態に係る半導体加工用シート1では、保護材70における基材10の側であり、第2の実施形態に係る半導体加工用シート2では、保護材70における剥離フィルム30の側)には、粘着剤層が設けられていてもよい。保護材70が粘着剤層を備えることで、保護材70を基材10の第1の面101上または剥離フィルム30の第2の面302上に貼付することが可能となる。これにより、保護材70が所定の位置から移動したり、半導体加工用シート1,2から脱落することが効果的に防止される。粘着剤の種類としては、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ゴム系、シリコーン系、エチレン−酢酸ビニル系等のいずれであってもよく、いわゆる粘接着剤であってもよい。
基材10または剥離フィルム30の幅方向両側部に設けられる2つの保護材70のそれぞれの幅(図1においてwとして示される長さ)は、5〜30mmであることが好ましく、特に5〜20mmであることが好ましく、さらには5〜10mmであることが好ましい。保護材70の幅が小さすぎる場合、基材10または剥離フィルム30の幅方向両側部に設けられた2つの保護材70の相互間の面積が大きくなり過ぎる。この場合、半導体加工用シート1,2をロール状に巻き取った際に、当該相互間において、基材10と剥離フィルム30とが接触し易くなる。しかしながら、当該幅wが5mm以上であることで、そのような接触が抑制され、基材10と剥離フィルム30とが密着し難くなり、耐ブロッキング性が効果的に発揮される。また、当該幅wが30mm以下であることで、半導体加工用シート1,2をロール状に巻き取った際に、保護材70と、それが接触する対象(第1の実施形態に係る半導体加工用シート1では剥離フィルム30であり、第2の実施形態に係る半導体加工用シート2では基材10)との接触面積が過度に大きくなることが防止される。これにより、保護材70の位置におけるブロッキングの発生を効果的に抑制することができる。また、保護材70が基材10の第1の面101に設けられる場合には、保護材70の幅wが30mm以下であることで、第1の面101における保護材70が積層されていない領域が十分に確保される。これにより、保護材70(特に、光線透過性を有しない保護材70)に邪魔されることなく、半導体加工用シート1,2を介した半導体貼付層80上に貼付されたチップの検査や、半導体加工用シート1,2を介した当該チップに対するレーザーの照射を良好に行うことができる。そのため、半導体加工用シート1,2を不要に幅広に製造する必要がなく、コストを抑えることができる。
保護材70の厚さは、30〜150μmであることが好ましく、特に50〜125μmであることが好ましく、さらには50〜100μmであることが好ましい。保護材70の厚さが30μm以上であることで、保護材70半導体加工用シート1,2をロール状に巻き取った際に、基材10と剥離フィルム30とが十分に離れ、これらの接触が生じにくくなる。これにより、耐ブロッキング性が効果的に発揮される。また、保護材70の厚さが150μm以下であることで、半導体加工用シート1,2の厚さが過度に厚くなること、および半導体加工用シート1,2のロールの直径が過度に大きくなることが防止される。
保護材70の面のうち、半導体加工用シート1,2の表面の一部となる面(第1の実施形態に係る半導体加工用シート1では、保護材70における基材10とは反対の面であり、第2の実施形態に係る半導体加工用シート2では、保護材70における剥離フィルム30とは反対の面)は、粗面化処理(マット加工)等の表面処理が施されてもよい。粗面化処理としては、例えば、エンボス加工法、サンドブラスト加工法等が挙げられる。
保護材70の表面に粗面化処理する場合、当該面における算術平均粗さRaは、0.05〜3μmであることが好ましく、特に0.05〜2μmであることが好ましい。
4.半導体貼付層
半導体貼付層80とは、本実施形態に係る半導体加工用シート1,2の使用に際し、半導体ウエハ等が貼付される層または半導体ウエハ等に貼付される層をいう。このときの貼付は、半導体加工用シート1,2の使用時に一時的に行われる貼付であってもよく、あるいは、半導体加工用シート1,2の使用後も継続される貼付であってもよい。半導体貼付層80の好ましい例としては、粘着剤層20、接着剤層40、保護膜形成層50、粘着剤層20と接着剤層40とからなる積層体、粘着剤層20と保護膜形成層50との積層体等が挙げられる。
図4には、第1の実施形態に係る半導体加工用シート1の第1の態様が示されている。当該態様に係る半導体加工用シート1aでは、半導体貼付層80が粘着剤層20となっている。半導体加工用シート1aにおいて、粘着剤層20は、基材10に近位な側に第1の面201を有し、剥離フィルム30に近位な側に第2の面202を有する。なお、半導体加工用シート1aは、例えば、ダイシングシートとして使用することができる。
図5には、第1の実施形態に係る半導体加工用シート1の第2の態様が示されている。当該態様に係る半導体加工用シート1bでは、半導体貼付層80が接着剤層40となっている。半導体加工用シート1bにおいて、接着剤層40は、基材10に近位な側に第1の面401を有し、剥離フィルム30に近位な側に第2の面402を有する。なお、半導体加工用シート1bは、例えば、ダイボンディングシートとして使用することができる。
図6には、第1の実施形態に係る半導体加工用シート1の第3の態様が示されている。当該態様に係る半導体加工用シート1cでは、半導体貼付層80が保護膜形成層50となっている。半導体加工用シート1cにおいて、保護膜形成層50は、基材10に近位な側に第1の面501を有し、剥離フィルム30に近位な側に第2の面502を有する。なお、半導体加工用シート1cは、例えば、保護膜形成用シートとして使用することができる。
図7には、第1の実施形態に係る半導体加工用シート1の第4の態様が示されている。当該態様に係る半導体加工用シート1dでは、半導体貼付層80が粘着剤層20と接着剤層40とからなる積層体となっている。半導体加工用シート1dにおいて、粘着剤層20は基材10に近位な側に位置し、接着剤層40は剥離フィルム30に近位な側に位置する。また、粘着剤層20は、基材10に近位な側に第1の面201を有し、剥離フィルム30に近位な側に第2の面202を有する。さらに、接着剤層40は、基材10に近位な側に第1の面401を有し、剥離フィルム30に近位な側に第2の面402を有する。なお、半導体加工用シート1dは、例えば、ダイシング・ダイボンディングシートとして使用することができる。
図8には、第1の実施形態に係る半導体加工用シート1の第5の態様が示されている。当該態様に係る半導体加工用シート1eでは、半導体貼付層80が粘着剤層20と保護膜形成層50とからなる積層体となっている。半導体加工用シート1eにおいて、粘着剤層20は基材10に近位な側に位置し、保護膜形成層50は剥離フィルム30に近位な側に位置する。また、粘着剤層20は、基材10に近位な側に第1の面201を有し、剥離フィルム30に近位な側に第2の面202を有する。さらに、保護膜形成層50は、基材10に近位な側に第1の面501を有し、剥離フィルム30に近位な側に第2の面502を有する。なお、半導体加工用シート1eは半導体ウエハのダイシングに使用でき、さらにはダイシング後、保護膜形成層50を加熱等することより、半導体チップに保護膜を形成することができる。また、半導体加工用シート1eは、保護膜形成用シートとしても使用することができる。
なお、第2の実施形態に係る半導体加工用シート2においても、半導体貼付層80が、粘着剤層20、接着剤層40、保護膜形成層50、粘着剤層20と接着剤層40とからなる積層体、粘着剤層20と保護膜形成層50との積層体等となることで、種々の態様をとることができる。
(1)粘着剤層
上記粘着剤層20は、非エネルギー線硬化性粘着剤から構成されてもよいし、エネルギー線硬化性粘着剤(エネルギー線硬化性を有しないポリマー)から構成されてもよい。非エネルギー線硬化性粘着剤としては、所望の粘着力および再剥離性を有するものが好ましく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等を使用することができる。これらの中でも、ダイシング工程等にて半導体ウエハや半導体チップ等の脱落を効果的に抑制することのできるアクリル系粘着剤が好ましい。
一方、エネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線照射により粘着力が低下するため、半導体ウエハや半導体チップ等と本実施形態に係る半導体加工用シートとを分離させたいときに、エネルギー線照射することにより、容易に分離させることができる。
粘着剤層20を構成するエネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とするものであってもよいし、非エネルギー線硬化性ポリマー(エネルギー線硬化性を有しないポリマー)と少なくとも1つ以上のエネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とするものであってもよい。また、エネルギー線硬化性を有するポリマーと非エネルギー線硬化性ポリマーとの混合物であってもよいし、エネルギー線硬化性を有するポリマーと少なくとも1つ以上のエネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物であってもよいし、それら3種の混合物であってもよい。
最初に、エネルギー線硬化性粘着剤が、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合について、以下説明する。
エネルギー線硬化性を有するポリマーは、側鎖にエネルギー線硬化性を有する官能基(エネルギー線硬化性基)が導入された(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)(以下「エネルギー線硬化型重合体(A)」という場合がある。)であることが好ましい。このエネルギー線硬化型重合体(A)は、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)と、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物(a2)とを反応させて得られるものであることが好ましい。
アクリル系共重合体(a1)は、官能基含有モノマーから導かれる構成単位と、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位とからなる。
アクリル系共重合体(a1)の構成単位としての官能基含有モノマーは、重合性の二重結合と、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基とを分子内に有するモノマーであることが好ましい。
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミノ基含有モノマーまたは置換アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、n−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アクリル系共重合体(a1)を構成する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が1〜20であるアルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが用いられる。これらの中でも、特に好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が用いられる。
アクリル系共重合体(a1)は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を通常3〜100質量%、好ましくは5〜40質量%の割合で含有し、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位を通常0〜97質量%、好ましくは60〜95質量%の割合で含有してなる。
アクリル系共重合体(a1)は、上記のような官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体とを常法で共重合することにより得られるが、これらモノマーの他にもジメチルアクリルアミド、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン等が共重合されてもよい。
上記官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)を、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物(a2)と反応させることにより、エネルギー線硬化型重合体(A)が得られる。
不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基は、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基含有モノマー単位の官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基がヒドロキシ基、アミノ基または置換アミノ基の場合、不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基としてはイソシアネート基またはエポキシ基が好ましく、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基がエポキシ基の場合、不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基としてはアミノ基、カルボキシ基またはアジリジニル基が好ましい。
また上記不飽和基含有化合物(a2)には、エネルギー線重合性の炭素−炭素二重結合が、1分子中に少なくとも1個、好ましくは1〜6個、さらに好ましくは1〜4個含まれている。このような不飽和基含有化合物(a2)の具体例としては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2−(1−アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
上記不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系共重合体(a1)の官能基含有モノマーに対して、通常5〜95モル%、好ましくは10〜95モル%の割合で用いられる。
アクリル系共重合体(a1)と不飽和基含有化合物(a2)との反応においては、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基と不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基との組合せに応じて、反応の温度、圧力、溶媒、時間、触媒の有無、触媒の種類を適宜選択することができる。これにより、アクリル系共重合体(a1)中に存在する官能基と、不飽和基含有化合物(a2)中の官能基とが反応し、不飽和基がアクリル系共重合体(a1)中の側鎖に導入され、エネルギー線硬化型重合体(A)が得られる。
このようにして得られるエネルギー線硬化型重合体(A)の重量平均分子量は、10,000以上であるのが好ましく、特に150,000〜1,500,000であるのが好ましく、さらに200,000〜1,000,000であるのが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
エネルギー線硬化性粘着剤が、エネルギー線硬化型重合体(A)といったエネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合であっても、エネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)をさらに含有してもよい。
エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル等を使用することができる。
かかるエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の単官能性アクリル酸エステル類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の多官能性アクリル酸エステル類、ポリエステルオリゴ(メタ)アクリレート、ポリウレタンオリゴ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エネルギー線硬化型重合体(A)に対し、エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合、エネルギー線硬化性粘着剤中におけるエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の含有量は、エネルギー線硬化型重合体(A)100質量部に対して、10〜400質量部であることが好ましく、特に30〜350質量部であることが好ましい。
ここで、エネルギー線硬化性粘着剤を得るためのエネルギー線として紫外線を用いる場合には、光重合開始剤(C)を添加することが好ましく、この光重合開始剤(C)の使用により、重合硬化時間および光線照射量を少なくすることができる。
光重合開始剤(C)としては、具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、(2,4,6−トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2−ベンゾチアゾール−N,N−ジエチルジチオカルバメート、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−プロペニル)フェニル]プロパノン}、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤(C)は、エネルギー線硬化型共重合体(A)(エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合には、エネルギー線硬化型共重合体(A)およびエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の合計量100質量部)100質量部に対して0.1〜10質量部、特には0.5〜6質量部の範囲の量で用いられることが好ましい。
エネルギー線硬化性粘着剤においては、上記成分以外にも、適宜他の成分を配合してもよい。他の成分としては、例えば、非エネルギー線硬化性ポリマー成分またはオリゴマー成分(D)、架橋剤(E)等が挙げられる。
非エネルギー線硬化性ポリマー成分またはオリゴマー成分(D)としては、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられ、重量平均分子量(Mw)が3000〜2,500,000のポリマーまたはオリゴマーが好ましい。当該成分(D)をエネルギー線硬化性粘着剤に配合することにより、硬化前における粘着性および剥離性、硬化後の強度、他の層との接着性、保存安定性などを改善し得る。当該成分(D)の配合量は特に限定されない。
架橋剤(E)としては、エネルギー線硬化型共重合体(A)等が有する官能基との反応性を有する多官能性化合物を用いることができる。このような多官能性化合物の例としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩、アンモニウム塩、反応性フェノール樹脂等を挙げることができる。当該成分(E)をエネルギー線硬化性粘着剤に配合することにより、硬化前における粘着性および剥離性、粘着剤の凝集性などを改善し得る。当該成分(E)の配合量は特に限定されず、エネルギー線硬化型共重合体(A)100質量部に対して0〜15質量部の範囲で適宜決定される。
次に、エネルギー線硬化性粘着剤が、非エネルギー線硬化性ポリマー成分と少なくとも1つ以上のエネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とする場合について、以下説明する。
非エネルギー線硬化性ポリマー成分としては、例えば、前述したアクリル系共重合体(a1)と同様の成分が使用できる。
少なくとも1つ以上のエネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、前述の成分(B)と同じものが選択できる。非エネルギー線硬化性ポリマー成分と少なくとも1つ以上のエネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの配合比は、非エネルギー線硬化性ポリマー成分100質量部に対して、少なくとも1つ以上のエネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマー10〜250質量部であるのが好ましく、特に25〜100質量部であるのが好ましい。
この場合においても、上記と同様に、光重合開始剤(C)や架橋剤(E)を適宜配合することができる。
粘着剤層20の厚さは、本実施形態に係る半導体加工用シートが使用される各工程において適切に機能できる限り、特に限定されない。具体的には、1〜50μmであることが好ましく、特に2〜40μmであることが好ましく、さらには3〜30μmであることが好ましい。
(2)接着剤層
上記接着剤層40を構成する材料としては、ダイシングの際にウエハを固定し、さらに、個片化されたチップに対して接着剤層40を形成できるものであれば、特に制限はなく使用することができる。このような接着剤層40を構成する材料としては、熱可塑性樹脂と低分子量の熱硬化性接着成分とからなるものや、Bステージ(半硬化状)の熱硬化型接着成分からなるもの等が用いられる。これらの中でも、接着剤層40を構成する材料としては、熱可塑性樹脂と熱硬化性接着成分とを含むものであることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリル系共重合体、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレン(メタ)アクリル酸系共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミドなどが挙げられるが、中でも、粘着性及び造膜性(シート加工性)の点から(メタ)アクリル系共重合体が好ましい。熱硬化性接着成分としては、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、シアネート系樹脂、ビスマレイミドトリアジン系樹脂、アリル化ポリフェニレンエーテル系樹脂(熱硬化性PPE)、ホルムアルデヒド系樹脂、不飽和ポリエステル又はこれらの共重合体などが挙げられるが、中でも、接着性の観点からエポキシ系樹脂が好ましい。接着剤層40を構成する材料としては、半導体ウエハへの貼付性に優れ、特に図7に示される半導体加工用シート1dにおいて粘着剤層20との剥離性が優れるという点から、特に、(メタ)アクリル系共重合体及びエポキシ系樹脂を含有する材料が好ましい。
(メタ)アクリル系共重合体としては、特に制限はなく、従来公知の(メタ)アクリル系共重合体を用いることができる。(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、10,000〜2,000,000であることが好ましく、特に100,000〜1,500,000であることが好ましい。(メタ)アクリル系共重合体のMwが10,000以上であることで、特に図7に示される半導体加工用シート1dにおいて、接着剤層40と粘着剤層20との剥離性がより良好となり、チップのピックアップを効果的に行うことができる。また、(メタ)アクリル系共重合体のMwが2,000,000以下であることで、接着剤層40が被着体の凹凸に対してより良好に追従することができ、ボイド等の発生を効果的に防ぐことができる。
(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、−60〜70℃であることが好ましく、−30〜50℃であることがより好ましい。(メタ)アクリル系共重合体のTgが−60℃以上であることで、特に図7に示される半導体加工用シート1dにおいて、接着剤層40と粘着剤層20との剥離性がより良好となり、チップのピックアップを効果的に行うことができる。また、(メタ)アクリル系共重合体のTgが70℃以下であることで、ウエハを固定するための接着力を十分に得ることができる。
(メタ)アクリル系共重合体を構成するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルモノマー又はその誘導体が挙げられ、より具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートなどの環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。また、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などのカルボキシ基を含有する不飽和単量体を用いてもよい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系共重合体を構成するモノマーとして、上記の中では、エポキシ系樹脂との相溶性の点から、少なくともヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルを用いることが好ましい。この場合、(メタ)アクリル系共重合体において、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位は、1〜20質量%の範囲で含まれることが好ましく、3〜15質量%の範囲で含まれることがより好ましい。(メタ)アクリル系共重合体として、具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体が好ましい。
また、(メタ)アクリル系共重合体は、本発明の目的を損なわない範囲で、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレンなどのモノマーを共重合させてもよい。
エポキシ系樹脂としては、従来公知の種々のエポキシ系樹脂を用いることができる。エポキシ系樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素変性エポキシ樹脂や、これらのハロゲン化物などの、構造単位中に2つ以上の官能基が含まれるエポキシ系樹脂が挙げられる。これらのエポキシ系樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
エポキシ系樹脂のエポキシ当量は特に限定されない。エポキシ当量は、通常、150〜1000g/eqであることが好ましい。なお、本明細書におけるエポキシ当量は、JIS K7236:2009に準じて測定される値である。
エポキシ系樹脂の含有量は、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、1〜1500質量部が好ましく、3〜1000質量部がより好ましい。エポキシ系樹脂の含有量が、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して1質量部以上であることで、十分な接着力を得ることができる。また、エポキシ系樹脂の含有量が、(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して1500質量部以下であることで、十分な造膜性が得られ、接着剤層40を効果的に形成することができる。
接着剤層40を構成する材料は、さらに、エポキシ系樹脂を硬化させるための硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤としては、エポキシ基と反応しうる官能基を分子中に2個以上有する化合物が挙げられ、その官能基としては、フェノール性ヒドロキシ基、アルコール性ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、酸無水物基などが挙げられる。これらの中では、フェノール性ヒドロキシ基、アミノ基及び酸無水物基が好ましく、フェノール性ヒドロキシ基及びアミノ基がより好ましい。
硬化剤の具体例としては、ノボラック型フェノール系樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール系樹脂、トリフェノールメタン型フェノール系樹脂、アラルキルフェノール系樹脂などのフェノール性熱硬化剤;DICY(ジシアンジアミド)などのアミン系熱硬化剤が挙げられる。硬化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬化剤の含有量は、エポキシ系樹脂100質量部に対して、0.1〜500質量部が好ましく、1〜200質量部がより好ましい。硬化剤の含有量が、エポキシ系樹脂100質量部に対して0.1質量部以上であることで、十分な接着力を得ることができる。また、硬化剤の含有量が、エポキシ系樹脂100質量部に対して500質量部以下であることで、接着剤層40の吸湿率の上昇が効果的に防止され、半導体パッケージの信頼性をより優れたものとすることができる。
接着剤層40を構成する材料(接着剤組成物)には、上記以外に、所望により、硬化促進剤、カップリング剤、架橋剤、エネルギー線硬化型化合物、光重合開始剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、顔料、染料、無機充填剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。これらの各添加剤は、1種が単独で含まれてもよいし、2種以上が組み合わせられて含まれてもよい。
硬化促進剤は、接着剤組成物の硬化速度を調整するために用いられる。硬化促進剤としては、エポキシ基とフェノール性ヒドロキシ基やアミン等との反応を促進し得る化合物が好ましい。かかる化合物としては、具体的には、3級アミン類、2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール等のイミダゾール類、有機ホスフィン類、テトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
カップリング剤は、接着剤組成物の被着体に対する接着性・密着性を向上させる機能を有する。また、カップリング剤を使用することで、接着剤組成物を硬化して得られる硬化物の耐熱性を損なうことなく、当該硬化物の耐水性を向上させることができる。カップリング剤は、上記(メタ)アクリル系重合体及びエポキシ系樹脂が有する官能基と反応する基を有する化合物であることが好ましい。このようなカップリング剤としては、シランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤としては特に制限はなく、公知のものが使用できる。例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上混合して使用することができる。
架橋剤は、接着剤層40の凝集力を調節するためのものである。上記(メタ)アクリル系重合体の架橋剤としては、特に制限はなく、公知のものが使用でき、例えば、粘着剤層20を構成する材料として上述したものを使用することができる。
エネルギー線硬化型化合物は、紫外線等のエネルギー線の照射を受けると重合硬化する化合物である。エネルギー線硬化型化合物をエネルギー線照射によって硬化させることで、特に図7に示される半導体加工用シート1dにおいて、接着剤層40と粘着剤層20との剥離性が向上するため、半導体チップのピックアップがしやすくなる。
エネルギー線硬化型化合物としては、アクリル系化合物が好ましく、分子内に少なくとも1つの重合性二重結合を有するものが特に好ましい。そのようなアクリル系化合物としては、具体的には、ジシクロペンタジエンジメトキシジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシ変性アクリレート、ポリエーテルアクリレート、イタコン酸オリゴマーなどが挙げられる。
アクリル系化合物の重量平均分子量は、通常、100〜30,000であり、好ましくは300〜10,000程度である。
接着剤組成物がエネルギー線硬化型化合物を含有する場合、エネルギー線硬化型化合物の含有量は、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、通常1〜400質量部、好ましくは3〜300質量部、より好ましくは10〜200質量部である。
光重合開始剤は、接着剤層40が上記エネルギー線硬化型化合物を含む場合に、紫外線の照射により重合硬化するにあたって、重合硬化時間及び紫外線の照射量を少なくすることができるものである。光開始剤としては、特に制限はなく、公知のものが使用でき、例えば、粘着剤層20を構成する材料として上述したものを使用することができる。
接着剤層40の厚さは、通常3〜100μmであり、好ましくは5〜80μmである。
(3)保護膜形成層
上記保護膜形成層50は、未硬化の硬化性接着剤からなることが好ましい。この場合、保護膜形成層50に半導体ウエハや半導体チップ等を重ね合わせた後、保護膜形成層50を硬化させることにより、保護膜を半導体ウエハや半導体チップ等に強固に接着することができ、耐久性を有する保護膜をチップ等に形成することができる。この保護膜形成層50に対しては、硬化性接着剤が未硬化の段階でも、硬化後の段階でも、レーザー光照射によって良好に印字することができる。
保護膜形成層50は、常温で粘着性を有するか、加熱により粘着性を発揮することが好ましい。これにより、上記のように保護膜形成層50に半導体ウエハや半導体チップ等を重ね合わせるときに両者を貼合させることができる。したがって、保護膜形成層50を硬化させる前に位置決めを確実に行うことができ、半導体加工用シート1c,1eの取り扱い性が容易になる。
上記のような特性を有する保護膜形成層50を構成する硬化性接着剤は、硬化性成分とバインダーポリマー成分とを含有することが好ましい。硬化性成分としては、熱硬化性成分、エネルギー線硬化性成分、またはこれらの混合物を用いることができるが、保護膜形成層50の硬化方法や硬化後の耐熱性を考慮すると、熱硬化性成分を用いることが特に好ましい。また、タクトタイムの短縮や作業性を考慮すると、エネルギー線硬化性成分を用いることが好ましい。
熱硬化性成分としては、例えば、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂等およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂およびこれらの混合物が好ましく用いられる。熱硬化性成分としては、通常分子量300〜10,000程度のものが用いられる。
エポキシ系樹脂は、加熱を受けると三次元網状化し、強固な被膜を形成する性質を有する。このようなエポキシ系樹脂としては、公知の種々のエポキシ系樹脂が用いられるが、通常は、重量平均分子量300〜2,500程度のものが好ましい。さらには、重量平均分子量300〜500の常態で液状のエポキシ系樹脂と、重量平均分子量400〜2,500、特に重量平均500〜2,000の常温で固体のエポキシ系樹脂とをブレンドした形で用いることが好ましい。また、エポキシ系樹脂のエポキシ当量は、50〜5,000g/eqであることが好ましい。
このようなエポキシ系樹脂としては、具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール、フェニルノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール類のグリシジルエーテル;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸のグリシジルエーテル;アニリンイソシアヌレート等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したグリシジル型もしくはアルキルグリシジル型のエポキシ樹脂;ビニルシクロヘキサンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−ジシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン等のように、分子内の炭素−炭素二重結合を例えば酸化することによりエポキシが導入された、いわゆる脂環型エポキシドを挙げることができる。その他、ビフェニル骨格、ジシクロヘキサジエン骨格、ナフタレン骨格等を有するエポキシ系樹脂を用いることもできる。
これらの中でも、ビスフェノール系グリシジル型エポキシ系樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ系樹脂およびフェノールノボラック型エポキシ系樹脂が好ましく用いられる。これらエポキシ系樹脂は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
エポキシ系樹脂を用いる場合には、助剤として、熱活性型潜在性エポキシ系樹脂硬化剤を併用することが好ましい。熱活性型潜在性エポキシ系樹脂硬化剤とは、室温ではエポキシ系樹脂と反応せず、ある温度以上の加熱により活性化し、エポキシ系樹脂と反応するタイプの硬化剤である。熱活性型潜在性エポキシ系樹脂硬化剤の活性化方法には、加熱による化学反応で活性種(アニオン、カチオン)を生成する方法;室温付近ではエポキシ系樹脂中に安定に分散しており高温でエポキシ系樹脂と相溶・溶解し、硬化反応を開始する方法;モレキュラーシーブ封入タイプの硬化剤で、高温で溶出して硬化反応を開始する方法;マイクロカプセルによる方法等が存在する。
熱活性型潜在性エポキシ系樹脂硬化剤の具体例としては、各種オニウム塩や、二塩基酸ジヒドラジド化合物、ジシアンジアミド、アミンアダクト硬化剤、イミダゾール化合物等の高融点活性水素化合物等を挙げることができる。これら熱活性型潜在性エポキシ系樹脂硬化剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。上記のような熱活性型潜在性エポキシ系樹脂硬化剤は、エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、特に好ましくは0.2〜10質量部、さらに好ましくは0.3〜5質量部の割合で用いられる。
フェノール系樹脂としては、アルキルフェノール、多価フェノール、ナフトール等のフェノール類とアルデヒド類との縮合物などのフェノール系ヒドロキシ基を有する重合体が特に制限されることなく用いられる。具体的には、フェノールノボラック系樹脂、o−クレゾールノボラック系樹脂、p−クレゾールノボラック系樹脂、t−ブチルフェノールノボラック系樹脂、ジシクロペンタジエンクレゾール系樹脂、ポリパラビニルフェノール系樹脂、ビスフェノールA型ノボラック系樹脂、あるいはこれらの変性物等が用いられる。
これらのフェノール系樹脂に含まれるフェノール性ヒドロキシ基は、上記エポキシ系樹脂のエポキシ基と加熱により容易に付加反応して、耐衝撃性の高い硬化物を形成することができる。このため、エポキシ系樹脂とフェノール系樹脂とを併用してもよい。
エネルギー線硬化性成分としては、例えば、粘着剤層20を構成する材料として前述したものを用いることができる。また、エネルギー線硬化性成分として、エネルギー線硬化性モノマー/オリゴマーを用いてもよい。さらに、エネルギー線硬化性成分と組み合わされるバインダーポリマー成分として、エネルギー線硬化性化合物が付加されたアクリル系ポリマーを用いてもよい。
バインダーポリマー成分は、保護膜形成層50に適度なタックを与えたり、半導体加工用シート1c,1eの操作性を向上したりすること等を目的として配合される。バインダーポリマーの重量平均分子量は、通常は30,000〜2,000,000、好ましくは50,000〜1,500,000、特に好ましくは100,000〜1,000,000の範囲にある。重量平均分子量が30,000以上であることにより、保護膜形成層50のフィルム形成が十分なものとなる。また、重量平均分子量が2,000,000以下であることにより、他の成分との相溶性が良好に維持され、保護膜形成層50のフィルム形成を均一に行うことができる。このようなバインダーポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系共重合体、ポリエステル系樹脂、フェノキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系共重合体等が用いられ、特に(メタ)アクリル系共重合体が好ましく用いられる。
(メタ)アクリル系共重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと(メタ)アクリル酸誘導体とを重合してなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。ここで(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が用いられる。また、(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
上記の中でもグリシジルメタクリレート等を構成単位として用いて(メタ)アクリル系共重合体にグリシジル基を導入すると、前述した熱硬化性成分としてのエポキシ系樹脂との相溶性が向上し、保護膜形成層50の硬化後のガラス転移温度(Tg)が高くなり、耐熱性が向上する。また、上記の中でもヒドロキシエチルアクリレート等を構成単位として用いて(メタ)アクリル系共重合体にヒドロキシ基を導入すると、半導体ウエハや半導体チップ等への密着性や粘着物性をコントロールすることができる。なお、グリシジルメタクリレート等を構成単位として用いて(メタ)アクリル系共重合体にグリシジル基を導入した場合における、その(メタ)アクリル系共重合体や、エポキシ基を有するフェノキシ系樹脂は、熱硬化性を有することがある。しかしながら、このような熱硬化性を有するポリマーも、本実施形態においては熱硬化性成分ではなく、バインダーポリマー成分に該当するものとする。
バインダーポリマーとして(メタ)アクリル系共重合体を使用した場合における、当該(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量は、好ましくは100,000以上であり、特に好ましくは150,000〜1,000,000である。(メタ)アクリル系共重合体のガラス転移温度は通常20℃以下、好ましくは−70〜0℃程度であり、常温(23℃)においては粘着性を有する。
硬化性成分とバインダーポリマー成分との配合比率としては、バインダーポリマー成分100質量部に対して、硬化性成分を、好ましくは50〜1500質量部、特に好ましくは70〜1000質量部、さらに好ましくは80〜800質量部配合することが好ましい。このような割合で硬化性成分とバインダーポリマー成分とを配合すると、硬化前には適度なタックを示し、貼付作業を安定して行うことができ、また硬化後には、被膜強度に優れた保護膜が得られる。
保護膜形成層50には、フィラーおよび/または着色剤を含有させることもできる。但し、半導体加工用シート1c,1eを、チップ形状の検査、ステルスダイシングまたは半導体チップのレーザー印字に使用する場合、保護膜形成層50が光線透過性を有する必要がある。そのため、この場合、当該光線透過性を阻害しない程度に、フィラーおよび/または着色剤を含有させる必要がある。一方、半導体加工用シート1c,1eを、保護膜形成層50またはそれが個片化されて形成される保護膜のレーザー印字に使用する場合、保護膜形成層50に光線透過性は要求されない。この場合、レーザー印字を可能にするために、保護膜形成層50は、当該レーザー光を遮断する必要がある。したがって、レーザー印字を効果的に行うために、保護膜形成層50はフィラーおよび/または着色剤を含有することが好ましい。また、保護膜形成層50がフィラーを含有すると、硬化後の保護膜の硬度を高く維持することができるとともに、耐湿性を向上させることができる。さらに、形成される保護膜の表面のグロスを所望の値に調整することもできる。さらにまた、硬化後の保護膜の熱膨張係数を半導体ウエハの熱膨張係数に近づけることができ、これによって加工途中の半導体ウエハの反りを低減することができる。
フィラーとしては、結晶シリカ、溶融シリカ、合成シリカ等のシリカや、アルミナ、ガラスバルーン等の無機フィラーが挙げられる。中でも合成シリカが好ましく、特に半導体装置の誤作動の要因となるα線の線源を極力除去したタイプの合成シリカが最適である。フィラーの形状としては、球形、針状、不定形のいずれであってもよい。
また、保護膜形成層50に添加するフィラーとしては、上記無機フィラーの他にも、機能性のフィラーが配合されていてもよい。機能性のフィラーとしては、例えば、帯電防止性の付与を目的とした、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、カーボン、セラミック、またはニッケル、アルミニウム等を銀で被覆した導電性フィラーや、熱伝導性の付与を目的とした、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、シリコン、ゲルマニウム等の金属材料やそれらの合金等の熱伝導性フィラーなどが挙げられる。
着色剤としては、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料など公知のものを使用することができる。
無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ジオキサジン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色等が挙げられる。これらの顔料又は染料は、目的とする光線透過率に調整するため適宜混合して使用することができる。
レーザー光照射による印字性の観点からは、上記の中でも、顔料、特に無機系顔料を使用することが好ましい。無機系顔料の中でも、特にカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックは、通常は黒色であるが、レーザー光照射によって削り取られた部分は白色を呈し、コントラスト差が大きくなるため、レーザー印字された部分の視認性に非常に優れる。
保護膜形成層50中におけるフィラーおよび着色剤の配合量は、所望の作用が奏されるよう適宜調整すればよい。具体的に、フィラーの配合量は、通常は40〜80質量%であることが好ましく、特に50〜70質量%であることが好ましい。また、着色剤の配合量は、通常は0.001〜5質量%であることが好ましく、特に0.01〜3質量%であることが好ましく、さらには0.1〜2.5質量%であることが好ましい。
保護膜形成層50は、カップリング剤を含有してもよい。カップリング剤を含有することにより、保護膜形成層50の硬化後において、保護膜の耐熱性を損なわずに、保護膜と半導体ウエハや半導体チップ等との接着性・密着性を向上させることができるとともに、耐水性(耐湿熱性)を向上させることができる。カップリング剤としては、その汎用性とコストメリットなどからシランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としては、例えば前述したものを使用することができる。
保護膜形成層50は、硬化前の凝集力を調節するために、有機多価イソシアネート系化合物、有機多価イミン系化合物、有機金属キレート系化合物等の架橋剤を含有してもよい。また、保護膜形成層50は、静電気を抑制し、チップの信頼性を向上させるために、帯電防止剤を含有してもよい。さらに、保護膜形成層50は、保護膜の難燃性能を高め、パッケージとしての信頼性を向上させるために、リン酸系化合物、ブロム系化合物、リン系化合物等の難燃剤を含有してもよい。
保護膜形成層50の厚さは、保護膜としての機能を効果的に発揮させるために、3〜300μmであることが好ましく、特に5〜250μmであることが好ましく、さらには7〜200μmであることが好ましい。
保護膜形成層50の第1の面501のグロス値は、25以上であることが好ましく、特に30以上であることが好ましい。第1の面501のグロス値が25以上であることで、当該面にレーザー印字した際に、美観が優れるとともに、形成される印字の視認性に優れる。なお、本明細書におけるグロス値は、JIS Z8741:1997に準じ、測定角60°にて光沢計を使用して測定した値とする。
5.治具用粘着剤層
本実施形態に係る半導体加工用シートは、治具用粘着剤層をさらに備えてもよい。図9および10には、治具用粘着剤層60を備える、半導体加工用シートの断面図が示される。
図9には、半導体貼付層80と剥離フィルム30との間に治具用粘着剤層60を備える第3の実施形態に係る半導体加工用シート3の断面図が示される。通常、治具用粘着剤層60は、半導体貼付層80の剥離フィルム30側の面上において、後述する通り環状に形成されている。この半導体加工用シート3において、治具用粘着剤層60は、半導体貼付層80に近位な側に第1の面601を有し、剥離フィルム30に近位な側に第2の面602を有する。なお、図9では、半導体貼付層80と剥離フィルム30とが、治具用粘着剤層60が設けられていない位置において接触するように示されているが、このような接触が生じていなくてもよい。
第3の実施形態に係る半導体加工用シート3において、半導体貼付層80は、接着剤層40または保護膜形成層50を含むことが好ましい。この場合、半導体貼付層80は、接着剤層40または保護膜形成層50であってもよく、または、半導体貼付層80は、基材10と、当該接着剤層40または当該保護膜形成層50との間に位置する粘着剤層20をさらに備えてもよい。これらにより、半導体加工用シート3は、ダイシング・ダイボンディングシート、保護膜形成用シート等として好適に使用することができる。
図10には、剥離フィルム30の半導体貼付層80側における、平面視にて半導体貼付層80とは異なる位置に治具用粘着剤層60を備える第4の実施形態に係る半導体加工用シート4の断面図が示される。通常、治具用粘着剤層60は、基材10と剥離フィルム30との間において、後述する通り環状に形成されている。また、本実施形態における半導体貼付層80は、通常、平面視で円形状の形状を有し、環状の治具用粘着剤層60に取り囲まれている。この半導体加工用シート4において、治具用粘着剤層60は、基材10に近位な側に第1の面601を有し、剥離フィルム30に近位な側に第2の面602を有する。なお、図10では、半導体貼付層80と治具用粘着剤層60とが同一の厚さを有するように示されているが、これらは異なる厚さを有していてもよい。
第4の実施形態に係る半導体加工用シート4において、半導体貼付層80は、接着剤層40または保護膜形成層50を含むことが好ましい。この場合、半導体貼付層80は、接着剤層40または保護膜形成層50であってもよい。あるいは、半導体貼付層80は、接着剤層40または保護膜形成層50と、粘着剤層20との積層体であってもよい。当該積層体において、粘着剤層20は、基材10と、当該接着剤層40または当該保護膜形成層50との間に位置することが好ましい。これらにより、半導体加工用シート4を、ダイシング・ダイボンディングシート、保護膜形成用シート等として好適に使用することができる。
図11には、剥離フィルム30の半導体貼付層80側における、平面視にて半導体貼付層80とは異なる位置に治具用粘着剤層60を備え、さらに、基材10と、半導体貼付層80および治具用粘着剤層60との間に位置する第2の粘着剤層20’を備える第5の実施形態に係る半導体加工用シート5の断面図が示される。通常、治具用粘着剤層60は、基材10と剥離フィルム30との間において、環状に形成されている。また、本実施形態に係る半導体貼付層80は、通常、平面視で円形状の形状を有し、環状の治具用粘着剤層60に取り囲まれている。この半導体加工用シート5において、治具用粘着剤層60は、基材10に近位な側に第1の面601を有し、剥離フィルム30に近位な側に第2の面602を有する。なお、図11では、半導体貼付層80と治具用粘着剤層60とが同一の厚さを有するように示されているが、これらは異なる厚さを有していてもよい。
第5の実施形態に係る半導体加工用シート5において、半導体貼付層80は、接着剤層40または保護膜形成層50であることが好ましい。これにより、半導体加工用シート5を、ダイシング・ダイボンディングシート、保護膜形成用シート等として好適に使用することができる。
治具用粘着剤層60は、リングフレーム等の治具の形状に対応する形状に形成され、通常、環状に形成される。これにより、半導体加工用シート3,4,5をリングフレーム等の治具に貼付して確実に固定することができる。なお、図9〜11では、保護材70が基材10の第1の面101の幅方向両側部に積層されているものの、保護材70が剥離フィルム30の第2の面302の幅方向両側部に積層されていてもよい。
本実施形態における治具用粘着剤層60は、単層からなってもよいし、2層以上の多層からなってもよく、多層の場合、芯材が間に入った構成であることが好ましい。
治具用粘着剤層60を構成する粘着剤は、リングフレーム等の治具に対する粘着力の観点から、非エネルギー線硬化性の粘着剤から構成されることが好ましい。非エネルギー線硬化性の粘着剤としては、所望の粘着力および再剥離性を有するものが好ましく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等を使用することができ、中でも粘着力および再剥離性の制御が容易なアクリル系粘着剤が好ましい。
芯材としては、通常樹脂フィルムが用いられ、中でもポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルムが好ましく、特にポリ塩化ビニルフィルムが好ましい。ポリ塩化ビニルフィルムは、加熱して軟化したとしても、冷却した際に復元し易い性質を有する。芯材の厚さは、2〜200μmであることが好ましく、特に5〜100μmであることが好ましい。
治具用粘着剤層60の厚さは、リングフレーム等の治具に対する接着性の観点から、5〜200μmであることが好ましく、特に10〜100μmであることが好ましい。
治具用粘着剤層60を有する半導体加工用シート3,4,5は、基材10の第1の面101における算術平均粗さRaが0.01〜0.8μmであることで、当該面における平滑性は良好なものとなり、少なくとも基材10が、所望の波長の光に対する高い光線透過性を有する。さらに、半導体加工用シート3,4,5が保護材70を備えることにより、半導体加工用シート3,4,5をロール状に巻き取ったときに、剥離フィルム30と保護材70とが小さい面積で接触し、基材10と剥離フィルム30とが全体的に密着することが防止される。これにより、ブロッキングが発生しにくくなり、ロールからの半導体加工用シート3,4,5の繰り出しを良好に行うことができるとともに、繰り出しの際に意図しない界面での剥離が生じない。
6.プリカット
本実施形態に係る半導体加工用シートは、剥離フィルム30以外の層が所望の形状に切断加工された、いわゆるプリカットされた状態のものであってもよい。すなわち、本実施形態に係る半導体加工用シートは、長尺の剥離フィルム30に、平面視にて剥離フィルム30とは異なる形状を有する、前記基材、前記半導体貼付層および前記保護材を含む積層体が積層されてなるものであってもよい。図12には、このようなプリカットされた、第6の実施形態に係る半導体加工用シート6を基材側から見た平面図が示されている。半導体加工用シート6では、長尺の剥離フィルム30上に、円形にカットされた基材10aと半導体貼付層80aとの積層体(以下「主使用部」という場合がある。)が設けられている。主使用部は、剥離フィルム30の長辺方向に複数配置されている。また、剥離フィルム30の長辺方向の両端部には、主使用部と接触しないようにカットされた、基材10bと半導体貼付層80bとの積層体(以下「シート残留部」という場合がある。)が設けられている。さらに、シート残留部上に、長尺の保護材70が設けられている。なお、図13には、図12のA−A線に沿った断面図が示されている。また、別の実施態様として、保護材70は、シート残留部上ではなく、剥離フィルム30の第2の面302の幅方向両側部に積層されていてもよい。
半導体加工用シート6を構成する各層としては、半導体加工用シート1a,1b,1c,1d,1eについて上述したものを使用することができる。
また、上述した治具用粘着剤層60を含む半導体加工用シート3を、プリカットが施されたシートとすることができる。当該シートでは、治具用粘着剤層60が、主使用部の周縁部に設けられる。
半導体加工用シート6において、主使用部は、剥離フィルム30から剥離された後に、半導体ウエハや半導体チップ等に貼付される。一方、シート残留部は、半導体加工用シート6をロール状に巻き取った際の巻き圧が主使用部に集中することを防ぐ。
一般に、プリカットされた半導体加工用シートでは、ロールから繰り出す際に、剥離フィルムから主使用部が剥離したり、当該剥離した主使用部の基材側が、剥離フィルムの第2の面に貼り付くといった不具合が生じ易い。しかしながら、半導体加工用シート6が保護材70を備えることにより、半導体加工用シート6をロール状に巻き取ったときに、主使用部と剥離フィルム30とが直接接触することがないか、接触したとしても接触した部分に巻き圧が殆どかからない。これにより、優れた耐ブロッキング性が発揮され、ロールからの半導体加工用シート6の繰り出しを良好に行うことができるとともに、繰り出しの際に意図しない界面での剥離が生じない。
7.半導体加工用シートの物性等
剥離フィルム30の第1の面301と、半導体貼付層80の第2の面802との界面での剥離力は、10〜1000mN/50mmであることが好ましく、特に10〜500mN/50mmであることが好ましく、さらには30〜200mN/50mmであることが好ましい。ここで、上記剥離力は、剥離フィルム30の第1の面301と半導体貼付層80の第2の面802とが貼付された状態で、乾燥状態において40℃で3日間保管した後における、半導体貼付層80に対する剥離フィルム30の剥離力である。当該剥離力が10mN/50mm以上であることで、ロールから半導体加工用シートを繰り出す際や、それ以外の段階において、半導体加工用シートからの剥離フィルム30の意図しない剥がれが防止される。また、当該剥離力が1000mN/50mm以下であることで、半導体加工用シートを使用する際に剥離フィルム30を容易に剥がすことが可能となり、作業性に優れる。
なお、図9に示される半導体加工用シート3では、剥離フィルム30の第1の面301が、その中央部において半導体貼付層80に接し、周縁部において治具用粘着剤層60に接する。ここで、半導体加工用シート3をロール状に巻き取った際、その巻き圧は治具用粘着剤層60が存在する位置に集中する。これにともない、ブロッキングも治具用粘着剤層60が存在する位置において発生し易くなる。そのため、半導体加工用シート3をロールから良好に巻き出せるか否かは、剥離フィルム30の第1の面301と治具用粘着剤層60の第2の面602との密着性が大きく影響する。したがって、半導体加工用シート3については、剥離フィルム30の第1の面301と治具用粘着剤層60の第2の面602との界面での剥離力が上述した範囲であることが好ましい。
本実施形態に係る半導体加工用シートの厚さは、半導体加工用シートが使用される工程において適切に機能できる限り限定されない。当該厚さは、通常、50〜300μmであることが好ましく、特に50〜250μmであることが好ましく、さらには50〜230μmであることが好ましい。なお、本明細書における半導体加工用シートの厚さとは、半導体加工用シートの使用前に剥離される剥離フィルム30を除いた厚さを意味する。
8.半導体加工用シートの製造方法
粘着剤層20を含む半導体加工用シート1aの製造方法は、特に限定されず、常法を使用することができる。当該製造方法の第1の例としては、まず、粘着剤層20の材料を含む粘着剤組成物、および所望によりさらに溶媒または分散媒を含有する塗工用組成物を調製する。次に、この塗工用組成物を、剥離フィルム30の第1の面301上に、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、スリットコーター、ナイフコーター等により塗布して塗膜を形成する。さらに、当該塗膜を乾燥させることにより、粘着剤層20を形成することができる。その後、粘着剤層20の第1の面201と、基材10の第2の面102とを貼合し、基材10と粘着剤層20と剥離フィルム30とからなる積層体を得る。続いて、当該積層体における基材10の第1の面101の幅方向両側部に、保護材70を積層する。これにより、基材10の第1の面101の幅方向両側部に保護材70が設けられた半導体加工用シート1aが得られる。
塗工用組成物は、塗布を行うことが可能であればその性状は特に限定されない。粘着剤層20を形成するための成分は、塗工用組成物中に溶質として含有されてもよく、または分散質として含有されてもよい。
塗工用組成物が架橋剤(E)を含有する場合、所望の存在密度で架橋構造を形成させるために、上記の乾燥の条件(温度、時間など)を変えてもよく、または加熱処理を別途設けてもよい。架橋反応を十分に進行させるために、通常は、上記の方法などによって基材に粘着剤層を積層した後、得られた半導体加工用シート1を、例えば23℃、相対湿度50%の環境に数日間静置するといった養生を行う。
保護材70を積層する際、保護材70の材料としての樹脂フィルム等を、予め保護材70の形状に形成した状態で基材10の第1の面101の幅方向両側部に積層してもよく、あるいは、樹脂フィルム等を基材10の第1の面101上に積層した後に、保護材70の形状にハーフカットして、当該保護材70の間に位置する、樹脂フィルム等の不要部分を除去してもよい。保護材70として、その片面または両面に金属蒸着層またはハードコート層が設けられたものを使用する場合、金属の蒸着およびハードコート層の形成は、一般的な方法により行うことができる。また、保護材70として、粘着剤層が設けられたものを使用する場合、保護材70の粘着剤層側の面が、基材10の第1の面101に貼付される。また、粘着剤層の形成は、一般的な方法により行うことができる。
半導体加工用シート1aの製造方法の第2の例としては、まず、基材10の第2の面102上に上記塗工用組成物を塗布して、塗膜を形成する。次に、当該塗膜を乾燥させて、基材10の第2の面102上に粘着剤層20を形成する。さらに、この粘着剤層20の第2の面202と、剥離フィルム30の第1の面301とを貼合し、基材10と粘着剤層20と剥離フィルム30とからなる積層体を得る。続いて、当該積層体における基材10の第1の面101の幅方向両側部に、保護材70を積層する。これにより、基材10の第1の面101の幅方向両側部に保護材70が設けられた半導体加工用シート1aが得られる。
図2に示すように保護材70を剥離フィルム30の第2の面302上に設ける場合においても、その製造方法は、特に限定されず、常法を使用することができる。例えば、半導体加工用シート1aの製造方法として上述した方法を参考に製造することができる。但し、上述した第1の例および第2の例の方法において、保護材70は剥離フィルム30の第2の面302上に積層される。
接着剤層40を含む半導体加工用シート1bの製造方法は、特に限定されず、常法を使用することができる。例えば、接着剤層40の材料を含む接着剤組成物および所望によりさらに溶媒または分散媒を含有する塗工用組成物を、剥離フィルム30の第1の面301上に塗布し、乾燥させることにより接着剤層40を形成する。その後、接着剤層40の第1の面401と、基材10の第2の面102とを貼合し、基材10と接着剤層40と剥離フィルム30とからなる積層体を得る。続いて、当該積層体における基材10の第1の面101の幅方向両側部に、保護材70を積層する。これにより、基材10の第1の面101の幅方向両側部に保護材70が設けられた半導体加工用シート1bが得られる。
保護膜形成層50を含む半導体加工用シート1cの製造方法は、上述した半導体加工用シート1bの製造方法を参考に製造することができる。特に、半導体加工用シート1bの製造方法において、接着剤層40の材料を含む接着剤組成物を、保護膜形成層50の材料を含む保護膜形成層組成物に置き換えることで、半導体加工用シート1cを得ることができる。
粘着剤層20および接着剤層40を含む半導体加工用シート1dの製造方法は、特に限定されず、常法を使用することができる。例えば、接着剤層40の材料を含む接着剤組成物および所望によりさらに溶媒または分散媒を含有する塗工用組成物を、剥離フィルム30の第1の面301上に塗布し、乾燥させることにより接着剤層40を形成する。これにより、剥離フィルム30と接着剤層40との積層体を得る。次に、予め作製した半導体加工用シート1aから剥離フィルム30を剥離し、露出した粘着剤層20側の面と、上記積層体の接着剤層40側の面とを貼り合せることで、半導体加工用シート1dが得られる。
粘着剤層20および保護膜形成層50を含む半導体加工用シート1eは、上述した半導体加工用シート1dの製造方法を参考に製造することができる。特に、半導体加工用シート1dの製造方法において、接着剤層40の材料を含む接着剤組成物を、保護膜形成層50の材料を含む保護膜形成層組成物に置き換えることで、半導体加工用シート1eを得ることができる。
治具用粘着剤層60を含む半導体加工用シート3は、常法によって製造することができる。例えば、所望の形状に形成された治具用粘着剤層60を、基材10および半導体貼付層80を含む積層体における、基材10とは反対側の面に積層した後、基材10の第1の面101の幅方向両側部に保護材70を設けることで、半導体加工用シート3を製造することができる。
また、治具用粘着剤層60を含む半導体加工用シート3をプリカットされたシートとする場合には、例えば、次のように製造することができる。まず、剥離フィルム30の剥離面上に、治具用粘着剤層60を構成するための治具用粘着剤をシート状に形成する。次に、このシート状治具用粘着剤における、治具用粘着剤層60の内周縁となる部分を、剥離フィルム30を残してシート状治具用粘着剤を切断(ハーフカット)し、その内側の円形部分を除去する。次いで、円形部分を除去した後のシート状治具用粘着剤と剥離フィルム30とからなる積層体のシート状治具用粘着剤側の面を、別途用意した、基材10と半導体貼付層80とからなる積層体の半導体貼付層80側の面に貼付する。これにより、剥離フィルム30と、シート状治具用粘着剤と、半導体貼付層80と、基材10とが順に積層された積層体を得る。次に、この積層体において、剥離フィルム30を残して、シート状治具用粘着剤、半導体貼付層80および基材10を切断(ハーフカット)する。このとき、治具用粘着剤層60の外周縁となる部分を、剥離フィルム30を残して切断(ハーフカット)し、不要な部分を除去することで、主使用部を形成することができる。これにより、シート状治具用粘着剤は、環状の治具用粘着剤層60となる。また、主使用部となる部分以外の位置を適宜ハーフカットして、シート残留部を形成することもできる。最後に、基材10の第1の面101の幅方向両側部に保護材70を設けることで、プリカットされた半導体加工用シート3を製造することができる。
治具用粘着剤層60を含む半導体加工用シート4は、常法によって製造することができる。例えば、剥離フィルム30の剥離面上に、環状の治具用粘着剤層60を形成することで、第1の積層体を得る。一方、基材10の片方の面に円形状の半導体貼付層80を形成することで、第2の積層体を得る。次に、環状の治具用粘着剤層60における環の内側に半導体貼付層80が収まるように、第1の積層体における治具用粘着剤層60が形成された面と、第2の積層体における半導体貼付層80が形成された面とを貼り合わせる。その後、基材10の第1の面101の幅方向両側部に保護材70を設けることで、半導体加工用シート4を製造することができる。
治具用粘着剤層60とともに、第2の粘着剤層20’を含む半導体加工用シート5についても、半導体加工用シート4と同様に製造することができる。この場合、基材10の片方の面に第2の粘着剤層20’を形成し、さらに当該第2の粘着剤層20’の基材10とは反対の面側に円形状の半導体貼付層80を形成することで得られる積層体を、上述の第2の積層体の代わりに使用する。
プリカットされた半導体加工用シート6の製造方法は特に限定されず、常法を使用することができる。
9.半導体加工用シートの巻取体
本実施形態に係る半導体加工用シート1,2,3,4,5,6は、長尺方向に巻収することで半導体加工用シート1,2,3,4,5,6の巻取体とすることができる。巻取体とする場合、基材10側の面および剥離フィルム30側の面のどちらを内側になるように巻収してもよい。また、保護材70が存在する側の面および保護材70が存在しない側の面のどちらを内側になるように巻収してもよい。
保護材70が、本実施形態に係る半導体加工用シート1,2,3,4,5,6において固定されていない場合、当該半導体加工用シート1,2,3,4,5,6の巻取体は、次のように製造することが好ましい。すなわち、まず、前述した半導体加工用シート1,2,3,4,5,6を構成する各層のうち保護材70を除く層からなる積層体を得る。この工程は、一般的な方法により行うことができる。その後、または、当該積層体の製造工程と連続する工程として、当該積層体における基材10と剥離フィルム30との間における、剥離フィルム30の幅方向両側部に保護材70が位置するように、当該積層体を保護材70とともに長尺方向に巻収する。
10.半導体加工用シートの使用方法
本実施形態に係る半導体加工用シート1,2,3,4,5,6は、バックグラインドシート、ダイシングシート等として使用することができる。当該シート1,2,3,4,5,6を使用する際、シート裏面からレーザーを照射してダイシングを行うことができる。また、バックグラインドやダイシング等の工程の後に、本実施形態に係る半導体加工用シート1,2,3,4,5,6を介して、ウエハやチップの形状を検査することができる。さらに、本実施形態に係る半導体加工用シート1,2,3,4,5,6を介して、ウエハやチップの裏面に対してレーザー印字することもできる。
また、特に、接着剤層40を含む半導体加工用シート1b,1dは、ダイシング・ダイボンディングシートとして使用することができる。すなわち、半導体加工用シート1b,1dを使用することで、チップの裏面に保護膜を形成することができる。この場合、保護膜形成層50を含む半導体加工用シート1c,1eにウエハを貼付し、保護膜形成層50を硬化させる。続いて、半導体加工用シート1c,1e上にてウエハをダイシングし、必要に応じてエキスパンド工程を行う。その後、得られたチップをピックアップすることで、接着剤層が付与されたチップを得ることができる。さらに、保護膜形成層50を含む半導体加工用シート1c,1e上にてウエハをダイシングし、必要に応じてエキスパンド工程を行った後に、得られたチップをピックアップすることで、裏面に保護膜が形成されたチップを得ることができる。
本実施形態に係る半導体加工用シート1,2,3,4,5,6は、保管等のために、ロール状に巻き取った状態にすることができる。本実施形態に係る半導体加工用シート1,2,3,4,5,6は、このように巻き取った場合であっても、保護材70を備えるため、基材10と剥離フィルム30とが直接接触することがないか、接触したとしても接触した部分に巻き圧が殆どかからない。これにより、半導体加工用シート1,2,3,4,5,6同士の密着性が、半導体加工用シート1,2,3,4,5,6を構成する各層同士の密着性よりも高くなることがない。このため、優れた耐ブロッキング性が発揮され、半導体加工用シート1,2,3,4,5,6のロールからの繰り出しを良好に行うことができ、さらに、繰り出しの際の意図しない層間での剥離を抑制することができる。また、基材10の第1の面101における算術平均粗さRaが0.01〜0.8μmであることで、当該面における平滑性は良好なものとなり、基材10が所望の波長の光に対する高い光線透過性を有する。その結果、上述したような、裏面からのレーザーダイシング、検査およびレーザー印字を良好に行うことができる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、本実施形態に係る半導体加工用シート1,2,3,4,5,6における基材10と半導体貼付層80との間には、他の層が介在していてもよい。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
(1)基材の作製
基材として、ポリ塩化ビニルフィルムをカレンダー製膜法により作製した。当該ポリ塩化ビニルフィルムは、第1の面の算術平均粗さRaが0.03μmであり、JIS K7161:1994に準拠して測定した23℃におけるMD方向の引張弾性率(ヤング率)が250MPaであり、厚さが80μmであった。
なお、本実施例における算術平均粗さRaは、触式表面粗さ計(Mitsutoyo社製「SURFTEST SV−3000」)を用い、JIS B0601:2013に準拠して、面内で10点測定し、その平均値を算出したものである。
また、上記基材単体について、印字用レーザー光(波長:532nm)の透過性、ステルスダイシング用レーザー光(波長:1600nm)の透過性、および検査用赤外線(波長:1069nm)の透過性を評価したところ、いずれの場合も優れた透過性を示した。
(2)剥離フィルムの準備
剥離フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面(第1の面)をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離フィルム(リンテック社製,製品名「SP−PMF381031H」,厚さ:38μm)を用いた。この剥離フィルムの第1の面の算術平均粗さRaは、0.03μmであり、第2の面の算術平均粗さRaは、0.3μmであった。
(3)粘着剤組成物(I)の調製
2−エチルヘキシルアクリレート18.5質量部(固形分換算,以下同じ)と、酢酸ビニル75質量部と、アクリル酸1質量部と、メチルメタクリレート5質量部と、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.5質量部とを共重合させて、重量平均分子量600,000のアクリル系共重合体を得た。
得られたアクリル系共重合体100質量部と、エネルギー線硬化性化合物としての2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(Mw=8000)60質量部と、エネルギー線硬化性化合物としての6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(Mw=2000)60質量部と、光重合開始剤としてのα−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製,製品名「イルガキュア184」)3質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー社製,製品名「コロネートL」)1.6質量部とを溶媒中で混合し、粘着剤組成物の塗布溶液を得た。
(4)半導体加工用シートの作製
上記工程(2)で作製した剥離フィルムの第1の面に対し、上記工程(3)で得られた粘着剤組成物(I)の塗布溶液を、ナイフコーターで塗布した。次いで、100℃で1分間処理して、塗膜を乾燥させるとともに架橋反応を進行させた。これにより、剥離フィルムと厚さ10μmの粘着剤層とからなる第1の積層体を得た。さらに、当該積層体における粘着剤層の第1の面と、上記工程(1)で作製した基材の第2の面とを貼合することで、基材と粘着剤層と剥離フィルムとからなる第2の積層体を得た。次に、当該第2の積層体における基材の第1の面の幅方向両側部に、保護材としての、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にアルミニウムによる金属蒸着層が設けられたフィルム(厚さ50μm,幅10mm,金属蒸着層が設けられた面の算術平均粗さRa:0.3μm)を、当該フィルムの金属蒸着層が設けられた面とは反対側の面と基材の第1の面とが接触するように積層した。これにより、基材の第1の面の幅方向両側部に保護材が設けられた半導体加工用シートを得た。その後、当該半導体加工用シートを、温度23℃、相対湿度50%の環境下で7日間養生した。
〔実施例2〕
(1)基材の作製
基材として、エチレン−メタクリル酸共重合体フィルムをTダイ製膜法によって作製した。当該エチレン−メタクリル酸共重合体フィルムは、第1の面の算術平均粗さRaが0.05μmであり、JIS K7161:1994に準拠して測定した23℃におけるMD方向の引張弾性率(ヤング率)が130MPaであり、厚さが80μmであった。
なお、上記基材単体について、印字用レーザー光(波長:532nm)の透過性、ステルスダイシング用レーザー光(波長:1600nm)の透過性、および検査用赤外線(波長:1069nm)の透過性を評価したところ、いずれの場合も優れた透過性を示した。
(2)粘着剤組成物(II)の調製
ブチルアクリレート99質量部と、アクリル酸1質量部とを共重合させて、重量平均分子量600,000のアクリル系共重合体を得た。
次いで、得られたアクリル系共重合体100質量部と、エネルギー線硬化性モノマーとしてのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製,製品名「KAYARAD DPHA)120質量部と、光重合開始剤としてのα−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製,製品名「イルガキュア184」)3質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー社製,製品名「コロネートL」)17質量部とを溶媒中で混合し、粘着剤組成物(II)の塗布溶液を得た。
(3)半導体加工用シートの作製
上記のように作製した、エチレン−メタクリル酸共重合体を材料とする基材、および粘着剤組成物(II)を使用する以外、実施例1と同様に半導体加工用シートを作製した。
〔実施例3〕
(1)基材の作製
基材として、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムをTダイ製膜法によって作製した。当該エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムは、第1の面の算術平均粗さRaが0.06μmであり、JIS K7161:1994に準拠して測定した23℃におけるMD方向の引張弾性率(ヤング率)が75MPaであり、厚さが100μmであった。
なお、上記基材単体について、印字用レーザー光(波長:532nm)の透過性、ステルスダイシング用レーザー光(波長:1600nm)の透過性、および検査用赤外線(波長:1069nm)の透過性を評価したところ、いずれの場合も優れた透過性を示した。
(2)粘着剤組成物(III)の調製
2−エチルヘキシルアクリレート40質量部と、酢酸ビニル40質量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート20質量部とを共重合させて、重量平均分子量420,000のアクリル系共重合体を得た。
次いで、得られたアクリル系共重合体100質量部と、エネルギー線硬化性基含有化合物としての2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)30.2質量部とを反応させることで、側鎖にエネルギー線硬化性基(メタクリロイル基)が導入されたエネルギー線硬化型重合体を得た。
得られたエネルギー線硬化型重合体100質量部と、光重合開始剤としてのα−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製,製品名「イルガキュア184」)3質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー社製,製品名「コロネートL」)1.1質量部とを溶媒中で混合し、粘着剤組成物(III)の塗布溶液を得た。
(3)半導体加工用シートの作製
上記のように作製した、エチレン−酢酸ビニル共重合体を材料とする基材、および粘着剤組成物(III)を使用する以外、実施例1と同様に半導体加工用シートを作製した。
〔実施例4〕
(1)基材の作製
基材として、ポリプロピレンフィルムをTダイ製膜法によって作製した。当該ポリプロピレンフィルムでは、第1の面の算術平均粗さRaが0.3μmであり、JIS K7161:1994に準拠して測定した23℃におけるMD方向の引張弾性率(ヤング率)が360MPaであり、厚さが100μmであった。
なお、上記基材単体について、印字用レーザー光(波長:532nm)の透過性、ステルスダイシング用レーザー光(波長:1600nm)の透過性、および検査用赤外線(波長:1069nm)の透過性を評価したところ、いずれの場合も優れた透過性を示した。
(2)半導体加工用シートの作製
上記のように作製したポリプロピレンを材料とする基材、および実施例2において作製した粘着剤組成物(II)を使用する以外、実施例1と同様に半導体加工用シートを作製した。
〔実施例5〕
(1)剥離フィルムの準備
剥離フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面(第1の面)をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離フィルム(リンテック社製,製品名「SP−PET301031」,厚さ:30μm)を用いた。この剥離フィルムの第1の面の算術平均粗さRaは、0.03μmであり、第2の面の算術平均粗さRaは、0.3μmであった。
(2)粘着剤組成物(IV)の調製
ブチルアクリレート80質量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート20質量部とを共重合させて、重量平均分子量700,000のアクリル系共重合体を得た。
次いで、得られたアクリル系共重合体100質量部と、エネルギー線硬化性基含有化合物としての2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)30.2質量部とを反応させることで、側鎖にエネルギー線硬化性基(メタクリロイル基)が導入されたエネルギー線硬化型重合体を得た。
得られたエネルギー線硬化型重合体100質量部と、光重合開始剤としてのα−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製,製品名「イルガキュア184」)3質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー社製,製品名「コロネートL」)0.5質量部とを溶媒中で混合し、粘着剤組成物(IV)の塗布溶液を得た。
(3)半導体加工用シートの作製
上記のように作製した、厚さ30μmの剥離フィルムおよび粘着剤組成物(IV)を使用する以外、実施例2と同様に半導体加工用シートを作製した。
〔実施例6〕
(1)剥離フィルムの準備
剥離フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面(第1の面)をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離フィルム(リンテック社製,製品名「SP−PET501031」,厚さ:50μm)を得た。この剥離フィルムの第1の面の算術平均粗さRaは、0.03μmであり、第2の面の算術平均粗さRaは、0.3μmであった。
(2)半導体加工用シートの作製
上記のように作製した厚さ50μmの剥離フィルム、およびポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にアルミニウムによる金属蒸着層が設けられたフィルム(厚さ100μm,幅10mm,金属蒸着層が設けられた面の算術平均粗さRa:0.3μm)からなる保護材を使用する以外、実施例5と同様に半導体加工用シートを作製した。
〔実施例7〕
(1)接着剤層を含む第1の積層体の作製
次のアクリル重合体、熱硬化性樹脂、フィラー、シランカップリング剤および架橋剤を混合して接着剤組成物を得た後、固形分濃度が20質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、接着剤組成物の塗布溶液を調製した。
アクリル重合体:メチルアクリレート95質量部及び2−ヒドロキシエチルアクリレート5質量部からなる共重合体(Mw:500,000、Mw/Mn:2.9、Tg:9℃)を100質量部
熱硬化性樹脂:
アクリロイル基付加クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製,製品名「CNA−147」)を30質量部
熱硬化剤:アラルキルフェノール樹脂(三井化学社製,製品名「ミレックスXLC−4L」)を6質量部
フィラー:メタクリロキシ基修飾のシリカフィラー(平均粒径0.05μm,アドマテックス社製,3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン処理品)を35質量部
シランカップリング剤:(三菱化学社製,製品名「MKCシリケートMSEP2」)を0.5質量部
架橋剤:芳香族性多価イソシアネート(東ソー社製,製品名「コロネートL」)を1.5質量部
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第1の剥離フィルム(リンテック社製,製品名「SP−PET381031」,厚さ:38μm)と、PETフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第2の剥離フィルム(リンテック社製,製品名「SP−PET381130」,厚さ:38μm)とを用意した。
次に、第1の剥離フィルムの剥離面上に、前述の接着剤組成物の塗布溶液を、ナイフコーターを用いて塗布し、乾燥させて、厚さ5μmの接着剤層を形成した。その後、接着剤層に第2の剥離フィルムの剥離面を重ねて両者を貼り合わせ、第1の剥離フィルムと、接着剤層(厚さ:5μm)と、第2の剥離フィルムとからなる第1の積層体を得た。その後、当該第1の積層体を、温度23℃、相対湿度50%の環境下で7日間養生した。
(2)粘着剤層を含む第2の積層体の作製
次の粘着主剤および架橋剤を混合して粘着剤組成物(V)を得た後、固形分濃度が25質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、粘着剤組成物(V)の塗布溶液を調製した。
粘着主剤:(メタ)アクリル酸エステル共重合体(日本合成化学工業社製,2−エチルヘキシルアクリレート60質量部、メタクリル酸メチル30質量部および2−ヒドロキシエチルアクリレート10質量部を共重合して得た共重合体,重量平均分子量:600,000)100質量部
架橋剤:トリメチロールプロパンのキシレンジイソシアネート付加物(三井武田ケミカル社製,製品名「タケネートD110N」)20質量部
第3の剥離フィルムとして、PETフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離フィルム(リンテック社製,製品名「SP−PET381031」,厚さ:38μm)を用意した。
また、ポリプロピレンフィルムを基材として使用した。当該ポリプロピレンフィルムでは、第1の面の算術平均粗さRaが0.3μmであり、厚さが100μmであった。
次に、第3の剥離フィルムの剥離面上に、前述の粘着剤組成物(V)の塗布溶液を、ナイフコーターを用いて塗布し、乾燥させるとともに架橋反応を進行させて、厚さ5μmの粘着剤層を形成した。その後、粘着剤層の第3の剥離フィルムとは反対側の面に上記基材の第2の面を貼合し、基材と、粘着剤層と、第3の剥離フィルムとからなる第2の積層体を得た。これを、温度23℃、相対湿度50%の環境下で7日間養生した。
(3)治具用粘着剤層を含む第3の積層体の作製
次の粘着主剤および架橋剤の成分を混合して治具用粘着剤組成物を得た後、固形分濃度が15質量%となるようにトルエンで希釈して、治具用粘着剤組成物の塗布溶液を調製した。
粘着主剤:(メタ)アクリル酸エステル共重合体(ブチルアクリレート69.5質量部、メチルアクリレート30質量部および2−ヒドロキシエチルアクリレート0.5質量部を共重合して得られた共重合体,重量平均分子量:500,000)100質量部
架橋剤:芳香族性多価イソシアネート(東ソー社製,製品名「コロネートL」)5質量部
PETフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第4および第5の剥離フィルム(リンテック株式会社製,製品名「SP−PET381031」,厚さ:38μm)と、芯材としてポリ塩化ビニルフィルム(オカモト株式会社製,厚さ:50μm)とを用意した。
次に、第4の剥離フィルムの剥離面上に、前述の治具用粘着剤組成物の塗布溶液を、ナイフコーターを用いて塗布し、乾燥させて、厚さ5μmの第1の粘着剤層を形成した。その後、第1の粘着剤層に上記芯材を貼合し、芯材と、第1の粘着剤層と、第4の剥離フィルムとからなる積層体Aを得た。
次に、第5の剥離フィルムの剥離面上に、前述の治具用粘着剤組成物の塗布溶液を、ナイフコーターを用いて塗布し、乾燥させて、厚さ5μmの第2の粘着剤層を形成した。その後、第2の粘着剤層に上記積層体Aにおける芯材の露出した面を貼合し、第4の剥離フィルム/第1の粘着剤層/芯材/第2の粘着剤層/第5の剥離フィルムからなる第3の積層体を得た。その後、当該第3の積層体を、温度23℃、相対湿度50%の環境下で7日間養生した。この第3の積層体においては、第1の粘着剤層と、芯材と、第2の粘着剤層とにより、厚さ60μmの治具用粘着剤層が構成される。
(4)第4の積層体の作製
上記(1)で得られた第1の積層体から第2の剥離フィルムを剥離し、接着剤層を露出させた。一方、上記(2)で得られた第2の積層体から第3の剥離フィルムを剥離して、粘着剤層を露出させた。その粘着剤層に、上記接着剤層が接触するように、第1の積層体と第2の積層体とを貼り合わせ、基材と、粘着剤層と、接着剤層と、第1の剥離フィルムとが積層されてなる第4の積層体を得た。
(5)半導体加工用シートの作製
上記(3)で得られた第3の積層体から第5の剥離フィルムを剥離し、第4の剥離フィルムを残して、治具用粘着剤層の内周縁となる部分を第2の粘着剤層側から切断し、内側の円形部分を除去した。このとき、治具用粘着剤層の内周縁の直径は230mmとした。
上記(4)で得られた第4の積層体から第1の剥離フィルムを剥離し、露出した接着剤層と、第3の積層体において露出している治具用粘着剤層とを重ね合わせて圧着した。その後、第3の積層体における第4の剥離フィルムを残して、半導体加工用シートの外周縁となる部分を基材側から切断し、外側の部分を除去した。このとき、半導体加工用シートの外周縁の直径は270mmとした。
このようにして、基材の上に、粘着剤層(厚さ:5μm)と、粘着剤層における基材とは反対側に積層された接着剤層と、接着剤層における粘着剤層とは反対側の周縁部に積層された環状の治具用粘着剤層と、治具用粘着剤層における接着剤層とは反対側に積層された第4の剥離フィルムとからなる積層体を得た。最後に、当該積層体における基材の第1の面の幅方向両側部に、保護材としての、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にアルミニウムによる金属蒸着層が設けられたフィルム(厚さ50μm,幅10mm,金属蒸着層が設けられた面の算術平均粗さRa:0.3μm)を、当該フィルムの金属蒸着層が設けられた面とは反対側の面と基材の第1の面とが接触するように積層した。これにより、基材の第1の面の幅方向両側部に保護材が設けられた半導体加工用シートを得た。なお、第4の剥離フィルムにおける治具用粘着剤層側の面(第1の面)の算術平均粗さRaは、0.03μmであり、当該第1の面とは反対側の面(第2の面)の算術平均粗さRaは、0.3μmであった。
〔実施例8〕
(1)保護膜形成層を含む第1の積層体の作製
次のバインダーポリマー、熱硬化性樹脂、熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤、硬化促進剤、フィラー、着色剤およびシランカップリング剤を混合して保護膜形成層組成物を得た後、固形分濃度が50質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、保護膜形成層組成物の塗布溶液を調製した。
バインダーポリマー:(メタ)アクリル酸エステル共重合体(n−ブチルアクリレート10質量部、メチルアクリレート70質量部、グリシジルメタクリレート5質量部、および2−ヒドロキシエチルアクリレート15質量部を共重合して得た共重合体,重量平均分子量:800,000,ガラス転移温度:−1℃)150質量部
熱硬化性成分:
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製,製品名「jER828」,エポキシ当量184〜194g/eq)60質量部
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製,製品名「jER1055」,エポキシ当量800〜900g/eq)10質量部
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製,製品名「エピクロンHP−7200HH」,エポキシ当量255〜260g/eq)30質量部
熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤:ジシアンジアミド(ADEKA社製,製品名「アデカハ−ドナーEH3636AS」,活性水素量21g/eq)2質量部
硬化促進剤:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製,製品名「キュアゾール2PHZ」)2質量部
フィラー:シリカフィラー(アドマテックス社製,製品名「SC2050MA」平均粒径:0.5μm)320質量部
着色剤:カーボンブラック(三菱化学社製,製品名「#MA650」,平均粒径:28nm)1.2質量部
シランカップリング剤:(信越化学工業社製,製品名「KBM−403」)2質量部
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第1の剥離フィルム(リンテック社製,製品名「SP−PET381031」,厚さ:38μm)と、PETフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第2の剥離フィルム(リンテック社製,製品名「SP−PET381130」,厚さ:38μm)とを用意した。
最初に、第1の剥離フィルムの剥離面上に、前述の保護膜形成層組成物の塗布溶液を、ナイフコーターを用いて塗布し、乾燥させて、厚さ25μmの保護膜形成層を形成した。その後、保護膜形成層に第2の剥離フィルムの剥離面を重ねて両者を貼り合わせ、第1の剥離フィルムと、保護膜形成層(厚さ:25μm)と、第2の剥離フィルムとからなる第1の積層体を得た。この第1の積層体を、温度23℃、相対湿度50%の環境下で7日間養生した。
(2)半導体加工用シートの作製
上記のように作製した第1の積層体を使用する以外、実施例7と同様に半導体加工用シートを作製した。
〔実施例9〕
(1)粘着剤組成物(VI)の調製
ブチルアクリレート68.5質量部と、メタクリル酸30質量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.5質量部と、アクリルアミド1質量部とを共重合させて、重量平均分子量620,000のアクリル系共重合体を得た。
次いで、得られたアクリル系共重合体100質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー社製,製品名「コロネートL」)10質量部とを溶媒中で混合し、粘着剤組成物(VI)の塗布溶液を得た。
(2)半導体加工用シートの作製
上記のように作製した、粘着剤組成物(VI)を使用する以外、実施例1と同様に半導体加工用シートを作製した。
〔実施例10〕
(1)接着剤層を含む第1の積層体の作製
次のアクリル重合体、熱硬化性樹脂、フィラー、シランカップリング剤および架橋剤を混合して接着剤組成物を得た後、固形分濃度が20質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、接着剤組成物の塗布溶液を調製した。
アクリル重合体:メチルアクリレート95質量部及び2−ヒドロキシエチルアクリレート5質量部からなる共重合体(Mw:500,000、Mw/Mn:2.9、Tg:9℃)を100質量部
熱硬化性樹脂:
アクリロイル基付加クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製,製品名「CNA−147」)を30質量部
熱硬化剤:アラルキルフェノール樹脂(三井化学社製,製品名「ミレックスXLC−4L」)を6質量部
フィラー:メタクリロキシ基修飾のシリカフィラー(平均粒径0.05μm,アドマテックス社製,3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン処理品)を35質量部
シランカップリング剤:(三菱化学社製,製品名「MKCシリケートMSEP2」)を0.5質量部
架橋剤:芳香族性多価イソシアネート(東ソー社製,製品名「コロネートL」)を1.5質量部
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第1の剥離フィルム(リンテック社製,製品名「SP−PET381031」,厚さ:38μm)を用意した。
また、ポリプロピレンフィルムを基材として使用した。当該ポリプロピレンフィルムでは、第1の面の算術平均粗さRaが0.3μmであり、厚さが100μmであった。
次に、第1の剥離フィルムの剥離面上に、前述の接着剤組成物の塗布溶液を、ナイフコーターを用いて塗布し、乾燥させて、厚さ5μmの接着剤層を形成した。その後、接着剤層の第1の剥離フィルムとは反対側の面に上記基材の第2の面を貼合し、基材と、粘着剤層と、第1の剥離フィルムとからなる第1の積層体を得た。この第1の積層体を、温度23℃、相対湿度50%の環境下で7日間養生した。
(2)治具用粘着剤層を含む第2の積層体の作製
次の粘着主剤および架橋剤の成分を混合して治具用粘着剤組成物を得た後、固形分濃度が15質量%となるようにトルエンで希釈して、治具用粘着剤組成物の塗布溶液を調製した。
粘着主剤:(メタ)アクリル酸エステル共重合体(ブチルアクリレート69.5質量部、メチルアクリレート30質量部および2−ヒドロキシエチルアクリレート0.5質量部を共重合して得られた共重合体,重量平均分子量:500,000)100質量部
架橋剤:芳香族性多価イソシアネート(東ソー社製,製品名「コロネートL」)5質量部
PETフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第2および第3の剥離フィルム(リンテック株式会社製,製品名「SP−PET381031」,厚さ:38μm)と、芯材としてポリ塩化ビニルフィルム(オカモト株式会社製,厚さ:50μm)とを用意した。
次に、第2の剥離フィルムの剥離面上に、前述の治具用粘着剤組成物の塗布溶液を、ナイフコーターを用いて塗布し、乾燥させて、厚さ5μmの第1の粘着剤層を形成した。その後、第1の粘着剤層に上記芯材を貼合し、芯材と、第1の粘着剤層と、第2の剥離フィルムとからなる積層体Aを得た。
次に、第3の剥離フィルムの剥離面上に、前述の治具用粘着剤組成物の塗布溶液を、ナイフコーターを用いて塗布し、乾燥させて、厚さ5μmの第2の粘着剤層を形成した。その後、第2の粘着剤層に上記積層体Aにおける芯材の露出した面を貼合し、第2の剥離フィルム/第1の粘着剤層/芯材/第2の粘着剤層/第3の剥離フィルムからなる第2の積層体を得た。この第2の積層体においては、第1の粘着剤層と、芯材と、第2の粘着剤層とにより、厚さ60μmの治具用粘着剤層が構成される。これを、温度23℃、相対湿度50%の環境下で7日間養生した。
(3)半導体加工用シートの作製
上記(2)で得られた第2の積層体から第3の剥離フィルムを剥離し、第2の剥離フィルムを残して、治具用粘着剤層の内周縁となる部分を第2の粘着剤層側から切断し、内側の円形部分を除去した。このとき、治具用粘着剤層の内周縁の直径は230mmとした。
上記(1)で得られた第1の積層体から第1の剥離フィルムを剥離し、露出した接着剤層と、第2の積層体において露出している治具用粘着剤層とを重ね合わせて圧着した。その後、第2の積層体における第2の剥離フィルムを残して、半導体加工用シートの外周縁となる部分を基材側から切断し、外側の部分を除去した。このとき、半導体加工用シートの外周縁の直径は270mmとした。
このようにして、基材の上に、接着剤層と、接着剤層における基材とは反対側の周縁部に積層された環状の治具用粘着剤層と、治具用粘着剤層における接着剤層とは反対側に積層された第2の剥離フィルムとからなる積層体を得た。最後に、当該積層体における基材の第1の面の幅方向両側部に、保護材としての、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にアルミニウムによる金属蒸着層が設けられたフィルム(厚さ50μm,幅10mm,金属蒸着層が設けられた面の算術平均粗さRa:0.3μm)を、当該フィルムの金属蒸着層が設けられた面とは反対側の面と基材の第1の面とが接触するように積層した。これにより、基材の第1の面の幅方向両側部に保護材が設けられた半導体加工用シートを得た。なお、第2の剥離フィルムにおける治具用粘着剤層側の面(第1の面)の算術平均粗さRaは、0.03μmであり、当該第1の面とは反対側の面(第2の面)の算術平均粗さRaは、0.3μmであった。
〔実施例11〕
(1)保護膜形成層を含む第1の積層体の作製
次のバインダーポリマー、熱硬化性樹脂、熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤、硬化促進剤、フィラー、着色剤およびシランカップリング剤を混合して保護膜形成層組成物を得た後、固形分濃度が50質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、保護膜形成層組成物の塗布溶液を調製した。
バインダーポリマー:(メタ)アクリル酸エステル共重合体(n−ブチルアクリレート10質量部、メチルアクリレート70質量部、グリシジルメタクリレート5質量部、および2−ヒドロキシエチルアクリレート15質量部を共重合して得た共重合体,重量平均分子量:800,000,ガラス転移温度:−1℃)150質量部
熱硬化性成分:
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製,製品名「jER828」,エポキシ当量184〜194g/eq)60質量部
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製,製品名「jER1055」,エポキシ当量800〜900g/eq)10質量部
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製,製品名「エピクロンHP−7200HH」,エポキシ当量255〜260g/eq)30質量部
熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤:ジシアンジアミド(ADEKA社製,製品名「アデカハ−ドナーEH3636AS」,活性水素量21g/eq)2質量部
硬化促進剤:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製,製品名「キュアゾール2PHZ」)2質量部
フィラー:シリカフィラー(アドマテックス社製,製品名「SC2050MA」平均粒径:0.5μm)320質量部
着色剤:カーボンブラック(三菱化学社製,製品名「#MA650」,平均粒径:28nm)1.2質量部
シランカップリング剤:(信越化学工業社製,製品名「KBM−403」)2質量部
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第1の剥離フィルム(リンテック社製,製品名「SP−PET381031」,厚さ:38μm)を用意した。
また、ポリプロピレンフィルムを基材として使用した。当該ポリプロピレンフィルムでは、第1の面の算術平均粗さRaが0.3μmであり、厚さが100μmであった。
次に、第1の剥離フィルムの剥離面上に、前述の保護膜形成層組成物の塗布溶液を、ナイフコーターを用いて塗布し、乾燥させて、厚さ25μmの保護膜形成層を形成した。その後、保護膜形成層の第1の剥離フィルムとは反対側の面に上記基材の第2の面を貼合し、基材と、保護膜形成層と、第1の剥離フィルムとからなる第1の積層体を得た。この第1の積層体を、温度23℃、相対湿度50%の環境下で7日間養生した。
(2)半導体加工用シートの作製
上記のように作製した第1の積層体を使用する以外、実施例10と同様に半導体加工用シートを作製した。
〔比較例1〕
ポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面(第1の面)をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離フィルム(リンテック社製,製品名「SP−PET381031」,厚さ:38μm)を剥離フィルムとして使用し、保護材を設けない以外、実施例1と同様に半導体加工用シートを作製した。なお、当該剥離フィルムの第1の面の算術平均粗さRaは、0.03μmであり、他方の面(第2の面)の算術平均粗さRaは、0.05μmであった。
〔比較例2〕
ポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面(第1の面)をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離フィルム(リンテック社製,製品名「SP−PET381031」,厚さ:38μm)を剥離フィルムとして使用し、保護材を設けない以外、実施例3と同様に半導体加工用シートを作製した。なお、当該剥離フィルムの第1の面の算術平均粗さRaは、0.03μmであり、他方の面(第2の面)の算術平均粗さRaは、0.05μmであった。
〔比較例3〕
ポリエチレンテレフタレートフィルム製の剥離フィルム(三菱樹脂社製,製品名「ダイアホイル(登録商標)T−100 38」,厚さ:38μm)を剥離フィルムとして使用し、保護材を設けない以外、実施例2と同様に半導体加工用シートを作製した。なお、当該剥離フィルムの両面の算術平均粗さRaは、ともに0.05μmであった。
〔試験例1〕(剥離フィルム半導体貼付層との界面における剥離力の測定)
実施例および比較例で製造した半導体加工用シートを幅50mm×長さ100mmに裁断した。このとき、半導体加工用シートの製造時における流れ方向(MD方向)が長さ方向となるように裁断した。このように裁断した半導体加工用シートを、基材を上側として10枚積層し、この積層体を、幅75mm×長さ15mm×厚さ5mmのガラス板で上下から挟んだ。そして、500gの重りを上側のガラス板上に置いた状態で、40℃で乾燥状態に設定した湿熱促進器(ESPEC社製,製品名「SH641」)内で3日間保管した。なお、半導体加工用シートがエネルギー線硬化性の材料を含む場合には、積層体を遮光した状態で保管した。
保管が完了した後、上記積層体から、1枚の半導体加工用シートを取り出し、基材の第1の面をステンレス板に両面粘着テープを用いて貼り合わせ、万能引張試験機(オリエンテック社製,製品名:テンシロン UTM−4−100)に固定した。その後、温度23℃、相対湿度50%RHの条件下で、剥離フィルムのみを、180°方向に引張速度300mm/分で剥離した。すなわち、剥離フィルムと、当該剥離フィルムに接する半導体貼付層との界面で剥離させた。このときの剥離力(mN/50mm)を測定した。結果を表1に示す。
〔試験例2〕(ロールからの繰り出しの評価)
実施例および比較例で製造した半導体加工用シートを、290mmの幅を有する長尺のシートとして準備した。そして、基材側から切れ込みを入れて、図12に示されるように円形の主使用部およびシート残留部を形成した。このとき、保護材および剥離フィルム以外の層を切断(ハーフカット)し、また、主使用部の直径は、270mmとした。その後、主使用部およびシート残留部以外の基材と、当該基材と剥離フィルムとの間に存在する層とを除去した。これにより、100個の主使用部を有する半導体加工用シートを得た。当該半導体加工用シートを、基材側が外側となるように巻き取り、ロール状とした。
このように得られたロール状の半導体加工用シートを、40℃で乾燥状態に設定した湿熱促進器(ESPEC社製,製品名「SH641)内で3日間保管した。なお、半導体加工用シートがエネルギー線硬化性の材料を含む場合には、積層体を遮光した状態で保管した。
保管が完了した後、ウエハマウンター(リンテック社製,製品名「RAD−2500m/8」)を使用して、ロール状に巻き取られた半導体加工用シートを繰り出した。そして、半導体加工用シートの長さ方向の両端部における、主使用部20枚分が存在する領域(すなわち、ロールの外側の部分における主使用部20枚分が存在する領域、および内側の部分における主使用部20枚分が存在する領域)について、良好な繰り出しが可能であるかどうかを確認した。このとき、いずれの領域においても主使用部20枚分連続で良好に繰り出せた場合、○と評価した。一方、剥離フィルムの第2の面に、その下に重なっていた主使用部が密着して、繰り出すことができないといった不具合が1枚でも生じた場合、×と評価した。結果を表1に示す。
〔試験例3〕(マウントの評価)
上記試験例2と同様に、ロール状の半導体加工用シートを作製し、40℃で3日間保管した。その後、ウエハマウンター(リンテック社製,製品名「RAD−2500m/8」)を使用して、このロールの剥離フィルムから主使用部を剥離し、当該主使用部を半導体ウエハに貼付(マウント)した。この操作を連続して20回繰り返し、良好に完了した場合、○と評価した。一方、剥離フィルムからの主使用部の剥離不良などにより、マウントに不具合が生じた場合、×と評価した。結果を表1に示す。
〔試験例4〕(光線透過性の評価)
厚さ350μmのシリコンウエハのミラー面に対し、ウエハマウンター(リンテック社製,製品名「RAD−2500m/8」)を使用して、試験例3において3日間の保管が完了した後の半導体加工用シート、およびリングフレームを貼付した。その後、ダイシング装置(DISCO社製,製品名「DFD−651」)を使用して、以下の条件で、シリコンウエハのダイシングを行った。
ダイシング条件:
・ワーク(被切断物):シリコンウエハ(サイズ:6インチ,厚さ:350μm,貼付面:ミラー)
・ダイシングブレード:ディスコ社製,製品名「27HECC」
・ブレード回転数:30,000rpm
・ダイシングスピード:10mm/秒
・切り込み深さ:基材の、ダイシング装置テーブルとは反対の面から20μmの深さまで切り込み
・ダイシングサイズ:5mm×5mm
上記ダイシングにより得られた、半導体加工用シートに貼付されたチップについて、半導体加工用シートおけるチップとは反対の面(基材の第2の面)側から、半導体加工用シートを介してチップの周縁部および角部を認識できるか目視により確認した。なお、接着剤層を備える半導体加工用シートを使用した場合については、接着剤付きのチップについて、その周縁部および角部を確認し、保護膜形成層を備える半導体加工用シートを使用した場合については、保護膜付きのチップについて、その周縁部および角部を確認した。チップの周縁部および角部が確認できたものを光線透過性(可視光線透過性)が良好(○)、確認できなかったものを光線透過性(可視光線透過性)が不良(×)と評価した。結果を表2に示す。
表2から明らかなように、実施例の半導体加工用シートは、光線透過性に優れるとともに、ロールからの繰り出しおよびマウントの両方において、優れた評価が得られた。一方、比較例の半導体加工用シートでは、ロールからの繰り出しおよびマウントの何れかにおいて、不具合が生じた。