以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本実施形態に係る自動運転システム1の構成概要図である。図1において、本実施形態に係る自動運転システム1は、車両に搭載され、車両の自動運転制御を行う装置である。この自動運転システム1は、目的地が予め設定されていない場合に車両の走行計画を生成し、生成した走行計画に基づいて車両の自動運転制御を行う機能を備えている。自動運転は、自動運転システム1が自動で車両を走行させる運転状態を意味する。自動運転には、予め設定された目的地へと走行する自動運転と、目的地が予め設定されていない場合に現在の車両の位置に基づいて進路候補を生成し、当該進路候補に沿って走行する自動運転(以下、「道なり自動運転」と称する場合がある)と、が含まれる。自動運転システム1では、自動運転と手動運転とが切り替え可能とされている。手動運転は、車両のドライバが手動運転操作により車両の運転を行うことを意味する。
自動運転システム1は、ECU[Electronic Control Unit]10を備えている。ECU10は、車両の走行制御を行う電子制御ユニットであり、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]を含むコンピュータを主体として構成されている。ECU10の詳細については、後述する。
ECU10には、外部センサ2、GPS[Global Positioning System]受信部3、内部センサ4、地図データベース5、方向指示器(入力部)6、ナビゲーションシステム7、HMI[Human Machine Interface]8、及びアクチュエータ9がそれぞれ接続されている。
外部センサ2は、車両の周辺情報である外部状況を検出する検出機器である。外部センサ2は、カメラ、レーダー[Radar]、及びライダー[LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging]のうち少なくとも一つを含む。
カメラは、車両の外部状況を撮像する撮像機器である。カメラは、車両のフロントガラスの裏側に設けられている。カメラは、単眼カメラであってもよく、ステレオカメラであってもよい。ステレオカメラは、両眼視差を再現するように配置された二つの撮像部を有する。ステレオカメラの撮像情報には、奥行き方向の情報も含まれている。ステレオカメラを用いる場合、カメラは先行車や障害物を含む物体を検出する物体検出部として用いることができる。
レーダーは、電波(例えばミリ波)を利用して車両の外部の障害物を検出する。レーダーは、電波を車両の周囲に送信し、障害物で反射された電波を受信することで障害物等を検出する。レーダーは、検出した障害物情報をECU10へ送信する。
ライダーは、光を利用して車両の外部の障害物を検出する。ライダーは、光を車両の周囲に送信し、障害物等で反射された光を受信することで反射点までの距離を計測し、障害物等を検出する。ライダーは、検出した物体情報をECU10へ送信する。カメラ、ライダー、レーダー及び通信機は、必ずしも重複して備える必要はない。
GPS受信部3は、3個以上のGPS衛星から信号を受信することにより、車両の位置(例えば車両の緯度及び経度)を測定する。GPS受信部3は、測定した車両の位置情報をECU10へ出力する。なお、GPS受信部3に代えて、車両の緯度及び経度が特定できる他の手段を用いてもよい。また、車両の方位を測定する機能を持たせることは、センサの測定結果と後述する地図情報との照合のために好ましい。
内部センサ4は、車両の車両状態を検出する検出機器である。内部センサ4は、車両の走行状態を検出するセンサとして、車速センサ、加速度センサ、及びヨーレートセンサのうち少なくとも一つを備えている。車速センサは、車両の速度を検出する検出器である。車速センサとしては、車両の車輪又は車輪と一体に回転し又は同期して回転するドライブシャフト等の部材に対して設けられ、車輪の回転速度を検出する車輪速センサが用いられる。車速センサは、検出した車速情報(車輪速情報)をECU10に出力する。加速度センサは、車両の加速度を検出する検出器である。加速度センサは、車両の前後方向の加速度を検出する前後加速度センサと、車両の横加速度を検出する横加速度センサとを含んでいる。加速度センサは、車両の加速度情報をECU10に出力する。ヨーレートセンサは、車両の重心の鉛直軸周りのヨーレート(回転角速度)を検出する検出器である。ヨーレートセンサとしては、ジャイロセンサを用いることができる。ヨーレートセンサは、検出した車両のヨーレート情報をECU10へ出力する。
地図データベース5は、地図情報を記憶した地図データベースである。地図データベース5は、車両に搭載されたHDD[Hard Disk Drive]内に形成されている。地図情報には、道路の位置情報、道路形状の情報(例えば車線数、車線の種類等)、交差点及び分岐部の位置情報が含まれる。さらに、建物や壁等の遮蔽構造物の位置情報、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を使用するために、地図情報に外部センサ2の出力信号を含ませることが好ましい。地図情報には、自動運転制御におけるバックグラウンドマップ(BGマップ)とよばれる地図データが含まれる。なお、地図データベース5は、車両と通信可能な情報処理センター等の施設のコンピュータに記憶されていてもよい。
方向指示器6は、車両のドライバによる入力操作に応じてウインカを作動させる機器であり、ウインカレバー及び操作検出部を含む。操作検出部は、ウインカレバーに対して設けられ、車両のドライバによるウインカレバーの操作を検出する。操作検出部は、ドライバによるウインカレバーの操作が右ウインカを作動させる操作であるか左ウインカを作動させる操作であるかを操作情報として検出する。方向指示器6は、検出した操作情報をECU10へ出力する。方向指示器6は、ドライバ(乗員)による入力操作を、後述する進路候補の選択操作として受け付ける入力部である。
ナビゲーションシステム7は、車両の乗員(ドライバ以外も含む)により設定された目的地まで、車両の乗員に対して案内を行う装置である。ナビゲーションシステム7は、GPS受信部3により測定した車両の位置情報と地図データベース5の地図情報とに基づいて、車両の走行するルートを算出する。ルートは、複数車線の区間において好適な車線を特定したものであってもよい。ナビゲーションシステム7は、GPS受信部3により測定した車両の位置から目的地に至るまでの目標ルートを演算し、ディスプレイの表示及びスピーカの音声出力により乗員に対して目標ルートの報知を行う。ナビゲーションシステム7は、車両の目標ルートの情報をECU10へ出力する。なお、ナビゲーションシステム7は、車両と通信可能な情報処理センター等の施設のコンピュータに記憶されていてもよい。車両と通信可能な情報処理センターなどの施設と連携しても構わない。例えば、地図データベース5の一部を情報処理センターに配置しても構わないし、車両と通信可能な情報処理センター等の施設のコンピュータで目標ルート演算を実行しても構わない。
HMI8は、車両の乗員と自動運転システム1と間で情報の出力及び入力をするためのインターフェイスである。HMI8は、乗員に画像情報を表示するためのディスプレイパネル、音声出力のためのスピーカ、及び乗員が入力操作を行うための操作ボタン、操作レバー、又はタッチパネル等を備えている。HMI8は、乗員により自動運転制御の作動もしくは停止に係る入力操作が行われると、ECU10に信号を出力して自動運転制御を開始もしくは停止させる。HMI8は、無線で接続された携帯情報端末を利用して、乗員に対する情報の出力を行ってもよく、携帯情報端末を利用して乗員による入力操作を受け付けてもよい。HMI8は、乗員が入力操作を行っている場合、入力操作中であることを示す操作中信号をECU10へ出力してもよい。
HMI8は、車両の乗員に情報を表示する表示部として機能する。HMI8は、ECU10からの制御信号に応じて、後述の候補選択部143により限定された進路候補を、ディスプレイパネルに画像として表示する。HMI8は、乗員に進路候補を選択させるために進路候補を表示する。HMI8は、車両の乗員による候補提示モード(後述)の選択の入力操作を受け付けてもよい。
アクチュエータ9は、車両の走行制御を実行する装置である。アクチュエータ9は、エンジンアクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、及び操舵アクチュエータを少なくとも含む。エンジンアクチュエータは、ECU10からの制御信号に応じてエンジンに対する空気の供給量(スロットル開度)を制御し、車両の駆動力を制御する。なお、車両がハイブリッド車である場合には、エンジンに対する空気の供給量の他に、動力源としてのモータにECU10からの制御信号が入力されて当該駆動力が制御される。車両が電気自動車である場合には、動力源としてのモータにECU10からの制御信号が入力されて当該駆動力が制御される。
ブレーキアクチュエータは、ECU10からの制御信号に応じてブレーキシステムを制御し、車両の車輪へ付与する制動力を制御する。ブレーキシステムとしては、液圧ブレーキシステムを用いることができる。操舵アクチュエータは、電動パワーステアリングシステムのうち操舵トルクを制御するアシストモータの駆動を、ECU10からの制御信号に応じて制御する。これにより、操舵アクチュエータは、車両の操舵トルクを制御する。
ECU10は、外部状況認識部11、車両位置認識部12、走行状態認識部13、進路生成部14、走行計画生成部15、及び運転制御部16を備えている。
外部状況認識部11は、外部センサ2の検出結果(例えばカメラの撮像情報、レーダーの障害物情報、ライダーの障害物情報等)に基づいて、車両の外部状況を認識する。外部状況は、道路幅、道路の形状、車両の周辺の他車両の状況、車両の周辺の障害物の状況を含む。
車両位置認識部12は、GPS受信部3により測定した車両の位置情報、及び地図データベース5の地図情報に基づいて、地図上における車両の位置(車両位置)を認識する。
走行状態認識部13は、内部センサ4の検出結果(例えば車速センサの車速情報、加速度センサの加速度情報、ヨーレートセンサのヨーレート情報等)に基づいて、車両の走行状態を認識する。車両の走行状態には、車速、加速度、ヨーレートが含まれる。また、走行状態認識部13は、GPS受信部3により測定した車両の位置の時間的変化に基づいて、車両の走行方向を認識してもよい。
進路生成部14は、自動運転をするための目標進路を生成する。進路生成部14は、目的地が予め設定されている場合には、ナビゲーションシステム7で演算された目標ルートにおける目標進路を生成する。進路生成部14は、目的地が予め設定されていない場合には、道なり自動運転をするために、地図情報及び車両位置に基づいて複数の進路候補を算出し、進路候補に基づいて目標進路を生成する。進路生成部14の詳細は、後述する。
走行計画生成部15は、車両位置認識部12で認識された車両位置、外部状況認識部11で認識された車両Vの外部状況(車両位置、方位を含む)、及び進路生成部14により生成された目標進路に基づいて、車両Vの走行計画を生成する。走行計画は、進路生成部14により生成された目標進路において車両Vが進む軌跡に応じた走行計画である。このとき、走行計画生成部15は、車両Vの周辺の障害物の状況に基づき、障害物との接触を回避するように車両Vの走行計画を生成する。走行計画生成部15は、車両Vの周辺情報である外部状況と地図データベース5の地図情報とに少なくとも基づいて、候補選択部143にて認識された進路候補を目標進路として、当該目標進路上の位置に応じた車両Vの制御目標値を含む走行計画を生成する。制御目標値は、目標車速、目標加減速度、目標操舵トルク、障害物との間隔及び車間距離の目標値、及び目標加加速度を含む。
走行計画生成部15は、好ましくは、生成する走行計画を、車両Vの進路を車両Vに固定された座標系での目標位置pと各目標点での速度vとの二つの要素からなる組、すなわち配位座標(p、v)を複数持つものとして出力する。ここで、それぞれの目標位置pは、少なくとも車両Vに固定された座標系でのx座標、y座標の位置もしくはそれと等価な情報を有する。なお、走行計画は、車両Vの挙動を記すものであれば特に限定されるものではない。走行計画は、速度vの代わりに目標時刻tを用いてもよいし、目標時刻tとその時点での車両Vの方位とを付加したものでもよい。
また、通常、走行計画は、概ね現在時刻から数秒先の将来のデータで充分であるが、交差点の右折、車両Vの追い越し等の状況によっては数十秒のデータが必要となるので、走行計画の配位座標の数は可変、かつ配位座標間の距離も可変とすることが好ましい。さらに、配位座標をつなぐ曲線をスプライン関数等で近似し、当該曲線のパラメータを走行計画としてもよい。走行計画の生成としては、車両Vの挙動を記すことができるものであれば、任意の公知方法を用いることができる。
走行計画は、目標ルートに沿った進路を車両Vが走行する際における、車両Vの車速、加減速度及び操舵トルク等の推移を示すデータとしてもよい。走行計画は、車両Vの速度パターン、加減速度パターン及び操舵パターンを含んでいてもよい。ここでの走行計画生成部15は、旅行時間(車両Vが目的地に到着するまでに要される所要時間)が最も小さくなるように、走行計画を生成してもよい。
ちなみに、速度パターンとは、進路上に所定間隔(1m)で設定された目標制御位置に対して、目標制御位置ごとに時間に関連付けられて設定された目標車速からなるデータである。加減速度パターンとは、進路上に所定間隔(1m)で設定された目標制御位置に対して、目標制御位置ごとに時間に関連付けられて設定された目標加減速度からなるデータである。操舵パターンとは、進路上に所定間隔(1m)で設定された目標制御位置に対して、目標制御位置ごとに時間に関連付けられて設定された目標操舵トルクからなるデータである。
道なり自動運転では、目的地が予め設定されている自動運転の場合と異なり、目的地に早く到着することよりも、手軽な自動走行の実現が求められる場合がある。この場合には、走行計画生成部15は、走行計画における車両Vの制御目標値を微調整してもよい。制御目標値の微調整としては、目的地が予め設定されている自動運転の場合よりも安全な制御目標値を設定してもよい。一例として、自動走行における車両の目標速度を下げてもよい。自動走行における障害物との間隔及び車間距離の目標値を大きくしてもよい。自動走行における加速度の上下限の絶対値を小さくしてもよい。自動走行における加加速度の上下限の絶対値を小さくしてもよい。
運転制御部16は、走行計画生成部15で生成した走行計画に基づいて車両Vの走行制御を行う。運転制御部16は、走行計画に応じた制御信号をアクチュエータ9に出力する。これにより、運転制御部16は、走行計画に沿って車両Vが自動運転するように、車両Vの走行を制御する。運転制御部16は、乗員による自動運転制御の開始ボタンの操作等の開始条件に従って、自動運転制御を開始する。また、運転制御部16は、乗員による自動運転制御の終了ボタンの操作に従って、自動運転制御を終了する。なお、自動運転制御の開始又は終了は、上記の例に限定されず、運転制御部16は、例えばECU10の判断結果に基づいて自動的に自動運転制御を開始又は終了しても構わない。
上述した外部状況認識部11、車両位置認識部12、走行状態認識部13、進路生成部14、走行計画生成部15、及び運転制御部16は、ECU10にそれぞれの機能を実現するソフトウェア又はプログラムを導入することにより構成すればよい。また、それらの一部又は全部を別の電子制御ユニットにより構成してもよい。なお、ECU10の機能の一部は、車両Vと通信可能な情報処理センター等の施設のコンピュータで実行されてもよい。進路生成部14(候補算出部141、候補評価部142、及び候補選択部143)、並びに走行計画生成部15のうち少なくとも一つは、車両Vと通信可能な情報処理センター等の施設のコンピュータに設けられていてもよい。
進路生成部14の詳細について説明する。進路生成部14は、進路候補に基づいて目標進路を生成するための機能的構成として、候補算出部141と、候補評価部142と、候補選択部143とを有する。
候補算出部141は、地図情報及び車両位置に基づいて、複数の進路候補を算出する。図2の(a)及び(b)に示されるように、候補算出部141は、車両Vが走行する道路における車両位置に対して進行方向(図示の矢印方向)側において、地図情報に基づいて道路の分岐部を探索し、探索した分岐部で分岐する進行方向(道路又は車線)を特定することで、進路候補を算出する。ここでの分岐部は、例えば、交差点、右折車線等の分流部、脇道への分流部、道路に面した駐車場への入口等を含む。候補算出部141は、1つの分岐部について2つ以上の進行方向を特定する。候補算出部141は、特定した複数の進行方向に基づいて、進路候補を算出する。進路候補とは、1又は複数の分岐部で特定された1又は複数の進行方向の組み合わせで得られる、車両Vが走行し得る進路の候補である。
候補算出部141は、分岐部において複数の進行方向を特定した後、当該分岐部の更に先(車両Vからの距離が遠い方)へと分岐部の探索を継続する。候補算出部141は、更なる分岐部を発見した(分岐部が連続する)場合、当該更なる分岐部において分岐する進行方向を特定する。このように、候補算出部141は、複数の分岐部を発見した場合、それぞれの分岐部において進行方向を特定し、特定した進行方向に基づいて進路候補を算出する。換言すると、候補算出部141が1つの分岐部を発見した場合、1つの進路候補は、当該分岐部において1つの進行方向を特定して得られる進路と対応づく。候補算出部141が複数の分岐部を発見した場合、1つの進路候補は、発見した複数の分岐部のそれぞれにおいて1つの進行方向を特定して得られる進路と対応づく。これにより、複数の分岐部で分岐する複数の進行方向をまとめて1つの進路候補として扱えるため、ドライバによる進路候補の選択操作(後述)が煩雑になることを防ぐことができる。
候補算出部141は、探索開始地点(例えば車両Vの位置)からの距離が所定の第1距離閾値を超えた場合は、分岐部の探索を打ち切る。また、候補算出部141は、複数の分岐部について探索する際、既に探索された分岐部からの距離が第1距離閾値を超えて探索しても更なる分岐部を発見しない場合には、分岐部の探索を打ち切る。第1距離閾値は、分岐部の探索を打ち切るための距離の閾値であり、探索開始地点からの距離である。これにより、候補算出部141が算出する進路候補の数が膨大となることを防ぐことができる。ただし、候補算出部141は、既に探索された分岐部からの距離が第1距離閾値を超えたとしても、その時点において進行方向の特定を行っている分岐部(例えば交差点)については進路候補の算出を打ち切らずに継続する。これにより、交差点の途中で進路候補が途切れることを防ぐことができる。第1距離閾値は、道路構造等に応じて決定されてもよく、例えば車両Vが主要道を走行している場合には50m、それ以外の場合には30mであってもよい。
図2の(a)の例では、候補算出部141は、車両位置からの距離が近い順に分岐部B1〜B4を順次探索する。まず、分岐部B1では、候補算出部141は、車両Vが分岐部B1を左折する進行方向と、車両Vが分岐部B1を直進する進行方向と、を特定する。候補算出部141は、当該分岐部B1の更に先へと分岐部の探索を継続する。その結果、候補算出部141は、車両Vが分岐部B1を左折する進行方向に更なる分岐部を発見しないため、当該分岐部B1を左折する進行方向を進路候補L1として算出する。また、候補算出部141は、車両Vが分岐部B1を直進する進行方向に更なる分岐部B2を発見するため、分岐部B2において進行方向の特定を継続する。
分岐部B2では、候補算出部141は、車両Vが分岐部B2を左折する進行方向と、車両Vが分岐部B2を直進する進行方向と、車両Vが分岐部B2を右折する進行方向と、を特定する。候補算出部141は、当該分岐部B2の更に先へと分岐部の探索を継続する。その結果、候補算出部141は、車両Vが分岐部B2を左折する進行方向に更なる分岐部を発見しないため、当該分岐部B2を左折する進行方向を進路候補L2として算出する。候補算出部141は、車両Vが分岐部B2を直進する進行方向に更なる分岐部B4を発見する前に探索開始地点からの距離が第1距離閾値を超えるため、分岐部B4においては進行方向の特定をせず、分岐部の探索を打ち切る。候補算出部141は、分岐部B2を直進する進行方向を進路候補L5として算出する。
また、候補算出部141は、車両Vが分岐部B2を右折する進行方向に更なる分岐部B3を発見するため、分岐部B3において進行方向の特定を継続する。分岐部B3では、候補算出部141は、車両Vが分岐部B3を直進する進行方向と、車両Vが分岐部B3を左折する進行方向と、を特定する。候補算出部141は、当該分岐部B3の更に先へと分岐部の探索を継続する。その結果、候補算出部141は、車両Vが分岐部B3を直進する進行方向に更なる分岐部を発見しないため、分岐部B2を右折し且つ当該分岐部B3を直進する進行方向を進路候補L3として算出する。また、候補算出部141は、車両Vが分岐部B3を左折する進行方向に更なる分岐部を発見しないため、分岐部B2を右折し且つ当該分岐部B3を左折する進行方向を進路候補L4として算出する。
候補算出部141は、車両Vが複数車線の道路を走行している場合、右折車線への分流も分岐とみなし、進行方向を特定してもよい。図2の(b)の例では、分岐部B5は、右折車線への分流部である。候補算出部141は、車両位置からの距離が近い順に分岐部B5,B6を順次探索する。分岐部B5では、候補算出部141は、車両Vが分岐部B5で右折車線へ分流する進行方向と、車両Vが分岐部B5を直進する進行方向とを特定する。候補算出部141は、当該分岐部B5の更に先へと分岐部の探索を継続する。その結果、候補算出部141は、車両Vが右折車線へ分流するための進行方向及び車両Vが直進する進行方向に更なる分岐部B6を発見するため、分岐部B6において進行方向の特定を継続する。分岐部B6では、候補算出部141は、車両Vが分岐部B6を左折する進行方向と、車両Vが分岐部B6を直進する進行方向と、車両Vが分岐部B6を右折する進行方向と、を特定する。候補算出部141は、当該分岐部B6の更に先へと分岐部の探索を継続する。その結果、候補算出部141は、車両Vが分岐部B6を左折する進行方向に更なる分岐部を発見しないため、分岐部B5を直進し且つ当該分岐部B6を左折する進行方向を進路候補L6として算出する。また、候補算出部141は、車両Vが分岐部B6を直進する進行方向に更なる分岐部を発見しないため、分岐部B5を直進し且つ当該分岐部B6を直進する進行方向を進路候補L7として算出する。また、候補算出部141は、車両Vが分岐部B6を右折する進行方向に更なる分岐部を発見しないため、分岐部B5で右折車線へ分流し且つ当該分岐部B6を右折する進行方向を進路候補L8として算出する。
候補算出部141は、特定した複数の進行方向に対して、所定の探索アルゴリズムに基づいて進路候補を算出してもよい。探索アルゴリズムとは、探索された分岐部において特定された進行方向についての重み値を調整するロジックを含むプログラム等である。一例として、候補算出部141は、複数の進路を特定する際に、ある分岐で進行方向を決定した後、進行方向に続く次の分岐を探索していくことで進路候補を探索する、深さ優先探索によって進路候補を算出してもよい。別の例では、候補算出部141は、複数の進路を特定する際に、ある分岐で異なる進行方向に対応する複数の進行方向を算出(列挙)し、その後にそれぞれの進行方向の先に続く分岐に対して同様の処理を行うことで進路候補を探索する、幅優先探索によって進路候補を算出してもよい。別の例では、候補算出部141は、探索された進行方向に対して道路の道幅や直線部分の長さに応じた重みを評価し、重みが小さい進行方向に対しては探索を打ち切り、それ以外の進行方向に対しては探索処理を継続する枝刈り処理を行ってもよい。
候補評価部142は、候補算出部141が算出した複数の進路候補に対しての重み付けを予め設定された重みで行い、進路候補を評価する。候補評価部142は、複数の重み条件と、重み条件に対応付けられた重み値(重み)と、を記憶している。候補評価部142は、1つの進路候補に対し、当該進路候補が重み条件を満たすと判定する場合、当該重み条件に対応付けられた重み値を当該進路候補に対して付与して重み付けを行う。候補評価部142は、進路候補が重み条件を満たすか否かを、複数の重み条件についそれぞれ判定し、付与した重み値の合計を算出する。候補評価部142は、候補算出部141により算出された全ての進路候補に対して重み付けを行う。
重み条件は、進路候補を評価するための複数の重み条件である。候補評価部142は、以下のように、地図情報に応じた重み条件と、外部状況認識部11の認識結果に応じた重み条件と、走行履歴に関する情報に応じた重み条件と、に基づいて、進路候補に対し重み値を付与する。重み値は、重み条件ごとに設定され、重み条件に対応付けられた重みの値である。進路候補が重み条件を満たす場合の重み値は、進路候補が重み条件を満たさない場合の重み値よりも大きく設定される。重み値は、一例として、車両Vの乗員に対する有用性等に応じて、複数の重み条件ごとに異なる値に設定される。候補評価部142は、地図情報に応じた重み条件、外部状況認識部11の認識結果に応じた重み条件、走行履歴に関する情報に応じた重み条件、のうち少なくとも1つに基づいて、進路候補に対し重み値を付与してもよい。
候補評価部142は、地図情報に応じた重み条件に基づいて重み付けを行う場合、地図データベース5から地図情報を取得し、この地図情報に基づいて進路候補が重み条件を満たすか否かを判断する。地図情報に応じた重み条件としては、例えば、(1)進路候補に係る道路の道幅が、車両Vが現在走行中の道路の道幅と同等又は広い場合、(2)進路候補に係る道路が幹線道路につながる場合、又は進路候補に係る道路において車両Vの進行方向に幹線道路がある場合、(3)交差点を含む進路候補に係る道路において交差点への進入時の方位と退出時の方位の差が小さい場合、(4)交差点での左折を含む進路候補の場合、(5)進路候補に係る道路の地図情報が存在し且つ整備されている進路候補の場合、又は進路候補に係る道路において工事情報がない場合、が挙げられる。例えば、重み条件(1)に基づくと、進路候補に係る道路の道幅が、車両Vが現在走行中の道路の道幅と同等又は広い場合、進路候補に係る道路の道幅が、車両Vが現在走行中の道路の道幅より狭い場合と比べて、当該進路候補に対し大きい重み値が付与される。これにより、脇道に入りにくい進路候補を算出することができる。同様に、重み条件(2)に基づくと、主要道に向かう進路候補を算出することができる。重み条件(3)に基づくと、物理的に直進に近い方位に進む進路候補を算出することができる。重み条件(4)に基づくと、難易度の低い進行方向を優先的に選ぶように進路候補を算出することができる。重み条件(5)に基づくと、できるだけ自動運転を継続可能な進路候補を算出することができる。
候補評価部142は、外部状況認識部11の認識結果に応じた重み条件に基づいて重み付けを行う場合、外部状況認識部11の認識結果を取得し、この認識結果に基づいて進路候補が重み条件を満たすか否かを判断する。外部状況認識部11の認識結果に応じた重み条件としては、例えば、(6)進路候補に係る道路において、外部状況認識部11で認識できている範囲内における歩行者、自転車、及び障害物が少ない場合が挙げられる。重み条件(6)に基づくと、外部状況が複雑でない進路候補を選択し易くすることができる。
候補評価部142は、走行履歴に関する情報に応じた重み条件に基づいて重み付けを行う場合、車両Vと通信可能な情報処理センター等の施設のコンピュータ(外部コンピュータ)から走行履歴に関する情報を取得し、この情報に基づいて進路候補が重み条件を満たすか否かを判断する。この外部コンピュータは、走行履歴に関する情報と、地図情報と、を記憶する記憶部を備えている。記憶部は、自動運転システム1が備えていてもよい。走行履歴に関する情報に応じた重み条件としては、例えば、(7)進路候補が、車両Vのドライバがよく行く目的地(例えば職場や自宅)への進路と重なっている場合、(8)進路候補が、車両がよく通る場所(例えばドライバ自身による運転での車両Vの走行軌跡が多い場所、他車両による走行軌跡が多い場所、又は車両に関する変動率が大きい場所)と重なっている場合、(9)進路候補が、ドライバ自身による運転での車両Vの直近の走行軌跡に重なっていない場合、が挙げられる。重み条件(7)及び重み条件(8)に基づくと、日常的な車両Vの使用でドライバによる進路候補の選択回数を減らすことができる。重み条件(9)に基づくと、車両Vが直近に走行した進路を再度走ることを避けることができる。
ECU10は、外部状況認識部11の認識結果と、車両位置認識部12で認識した車両位置と、を外部コンピュータに送信する。外部コンピュータは、送信された外部状況認識部11の認識結果、送信された車両位置、及び記憶している地図情報に基づいて、車両に関する変動率を算出する。外部コンピュータは、算出した車両に関する変動率をECU10に送信する。車両に関する変動率は、バックグラウンドマップにおいて外部状況認識部11の認識結果における背景差分成分を除いて、交差点等を走行する車両を空間的又は時間的観点で動的にトラッキングした場合における、当該車両の空間的又は時間的な変化の程度である。車両に関する変動率が大きいことは、その場所は車両がよく通る場所であるとの車両の走行履歴に関する情報であるといえる。
候補評価部142では、乗員による候補提示モードの選択操作に応じて重み値の大きさを可変に設定してもよい。候補提示モードは、どの進路候補を乗員に提示(表示)するかを変更するためのモードであり、候補評価部142が複数の進路候補をどのように限定するかを変更させる。候補評価部142は、ドライバによる候補提示モードの選択操作に応じて重み値の大きさを変更することで、複数の進路候補をどのように限定するかを変更する。候補提示モードは、例えば「日常モード」と「お出かけモード」とを含む。「日常モード」では、上記「走行履歴に関する情報に応じた重み条件」における「車両Vのドライバがよく行く目的地へのルートと重なっている」を進路候補が満たしたときの重み値を大きくする。これにより、よく行く目的地へのルートをドライバが簡便に選択することができる。「お出かけモード」では、上記「地図情報に応じた重み条件」における「幹線道路につながる」を進路候補が満たしたときの重み値を大きくする。これにより、遠くの目的地へ行く経路をドライバが簡便に選択することができる。
候補選択部143は、候補評価部142での評価結果に基づいて、複数の進路候補を限定する。候補選択部143は、候補評価部142によって重み付けされた複数の進路候補に対し、付与された重み値の合計が所定の重み閾値以上であるかを判定することで、HMI8に表示させる進路候補の数を制限する。重み閾値は、候補算出部141により算出された複数の進路候補を、乗員にとって有用な進路候補に限定するための閾値である。重み閾値は、固定値に予め設定してもよいし、限定された候補数が所定の個数になるように変動する値であってもよい。
候補選択部143は、限定した進路候補をHMI8に表示させる。候補選択部143は、付与された重み値の合計と、進路候補における交差点からの退出方位とに基づいて、限定した進路候補をHMI8に表示させる。進路候補における交差点からの退出方位に基づいて進路候補をHMI8に表示させることで、乗員は、HMI8に表示された進路候補に基づいて、進路候補の選択操作(後述)を直感的に行うことができる。
図3の(a)の例では、候補算出部141は、分岐部B11を直進し且つ分岐部B12を左折する進行方向を進路候補L11として算出する。分岐部B11を直進し、分岐部B12を直進し且つ分岐部B13を左折する進行方向を進路候補L12として算出する。分岐部B11を直進し、分岐部B12を直進し且つ分岐部B13を直進する進行方向を進路候補L13として算出する。分岐部B11で右折車線へ分流し且つ分岐部B12を右折する進行方向を進路候補L14として算出する。ここで、一例として、候補評価部142により、進路候補L11に重み値の合計「6」が付与され、進路候補L12に重み値の合計「2」が付与され、進路候補L13に重み値の合計「10」が付与され、進路候補L14に重み値の合計「5」が付与されたとする。
このとき、候補選択部143は、付与された重み値の合計が最も大きい進路候補L13に番号N=0を割り当てる。番号Nは、整数の数値であり、進路候補をHMI8に表示させる際のHMI8のディスプレイパネル上における進路候補の序列に対応する番号である。番号Nは、進路候補L13を基準として交差点の退出方位の順に設定される。番号N=0を割り当てられた進路候補は、進路候補の序列の基準となる進路候補である。番号N<0を割り当てられた進路候補は、乗員がディスプレイパネルに向かった状態において、ディスプレイパネル上において基準となる進路候補(以下、単に「基準進路候補」という)に対して左側に位置する進路候補である。番号N>0を割り当てられた進路候補は、乗員がディスプレイパネルに向かった状態において、基準進路候補に対して右側に位置する進路候補である。なお、以下の説明では、「左側」は「乗員がディスプレイパネルに向かった状態において左側」を意味し、「右側」は「乗員がディスプレイパネルに向かった状態において右側」を意味する。
図3の(b)の例では、付与された重み値の合計が最も大きい「10」である進路候補L13に番号N=0が割り当てられ、進路候補L13が基準進路候補となる。付与された重み値の合計が「2」である進路候補L12に番号N=−1が割り当てられ、基準進路候補から左側へ数えて1つ目に表示される進路候補となる。付与された重み値の合計が「6」である進路候補L11に番号N=−2が割り当てられ、基準進路候補から左側へ数えて2つ目に表示される進路候補となる。付与された重み値の合計が「5」である進路候補L14に番号N=+1が割り当てられ、基準進路候補から右側へ数えて1つ目に表示される進路候補となる。
候補選択部143は、方向指示器6での受け付け結果に基づいて、HMI8に表示された進路候補のうちドライバにより選択された進路候補を認識する。方向指示器6での受け付け結果とは、方向指示器6がドライバによる候補選択操作を受け付けた結果である。候補選択操作は、車両VのドライバがHMI8に表示された進路候補を選択するために方向指示器6を操作する入力操作である。候補選択操作は、ディスプレイパネル上に表示された進路候補のうち、現在選択している進路候補の1つ左側の進路候補をドライバが選ぶ操作(例えばウインカレバーがステアリングコラムの右側に設けられている車両Vの場合においては、ウインカレバーを上に押し上げる操作。以下「左方選択操作」という)と、現在選択している進路候補L13の1つ右の進路候補を選ぶ操作(例えばウインカレバーがステアリングコラムの右側に設けられている車両Vの場合においては、ウインカレバーを下に押し下げる操作。以下「右方選択操作」という)と、を含む。候補選択操作には、左方選択操作及び右方選択操作が含まれる。
候補選択部143は、進路候補をHMI8に表示させる際、基準進路候補である進路候補L13を、ドライバが当初選択していることとする。つまり、付与された重み値の合計が最も大きい基準進路候補をドライバが当初選択している状態で、ドライバによる候補選択操作が方向指示器6で受け付けられる。
候補選択部143は、ドライバによる1回の左方選択操作を方向指示器6が受け付けた場合には、現在選択している進路候補L13の1つ左側の進路候補L12を、ドライバにより選択された進路候補として認識する。候補選択部143は、ドライバによる1回の右方選択操作を方向指示器6が受け付けた場合には、現在選択している進路候補L13の1つ右側の進路候補L14を、ドライバにより選択された進路候補として認識する。このように、ドライバが進路候補を選択する際、左方選択操作又は右方選択操作に応じて、ドライバが選択している進路候補が基準進路候補に対する番号Nの順番で連続的に変更される。よって、ドライバは進路候補の選択操作を直感的に行うことができる。
なお、「選択」とは、ドライバによる操作がなされた場合のみならず、ドライバによる操作がなされた場合も含む。具体的には、「ドライバにより選択された進路候補」とは、ドライバが候補選択操作をして明示的に選択された(積極的に選択された)進路候補だけではなく、当初から選択されていた基準進路候補を含む。つまり、ドライバが候補選択操作をしなかった場合(ドライバが進路候補を積極的に選択する入力操作を行わなかった場合)、ドライバは、当初から選択されていた基準進路候補を結果的に選択したものとする。
候補選択部143は、一例として、図4及び図5に示されるように進路候補をHMI8に表示させる。図4の(a)の例では、連続する2つの分岐部B21,B22に対して、分岐部B21を左折した後に分岐部B22を直進する進路候補L21、分岐部B21を左折した後に分岐部B22を右折する進路候補L22、分岐部B21を直進する進路候補L23、及び分岐部B21を右折する進路候補L24が表示されている。候補選択部143は、車両Vと分岐部B21との距離が所定の第2距離閾値以下となった場合、進路候補L21〜L24をHMI8に表示させる。第2距離閾値は、例えば車両Vが主要道を走行している場合には50m、それ以外の場合には30mであってもよい。車両Vと分岐部B21との距離が所定の第3距離閾値以下となるまでは、ドライバは進路候補を選択可能であり、ドライバによる候補選択操作が方向指示器6で受け付けられる。図4の(a)の例では、ドライバは進路候補L22を選択している。選択された進路候補L22は、選択されていない進路候補L21,L23,L24とは異なる色彩及び太さで表示される。第3距離閾値は、例えば15mであってもよい。第2距離閾値は、進路候補をHMI8に表示させるための距離の閾値であり、車両Vと車両Vの進行方向において最も近い分岐部との距離である。第3距離閾値は、選択されている進路候補からの変更を禁止するための距離の閾値であり、車両Vと車両Vの進行方向において最も近い分岐部との距離である。
車両Vが分岐部B21に接近し、車両Vと分岐部B21との距離が所定の第3距離閾値以下となると、図4の(b)に示されるように、候補選択部143は、ドライバにより選択された進路候補L22以外のL21,L23,L24を表示させない。選択された進路候補L22は、図4の(a)における色彩とは異なる色彩で表示される。このとき、候補選択部143は、方向指示器6がドライバによる候補選択操作を受け付けた場合でも、選択されている進路候補からの変更を禁止する。その後、車両Vが分岐部B21に到達すると、図5の(a)に示されるように、候補選択部143は、車両Vが進路候補L22に沿って自動走行している状態を表示させる。その後、車両Vが進路候補L22を通り抜けると、図5の(b)に示されるように、候補選択部143は、分岐部B22の先に存在する分岐部B23及び分岐部B23において特定された進行方向を表示させる。図5の(b)の例では、車両Vと分岐部B23との距離が所定の第3距離閾値以下となっており、候補選択部143は、次の進路候補L25,L26が表示させている。
なお、選択されている進路候補からの変更可否は、上記に示した分岐までの距離のみならず、自動運転の制御モード(自動・手動)や、ドライバが設定可能なモードによって決定されても構わず、たとえば自動運転中では分岐までの距離が閾値より小さい場合は候補の変更は禁止されているが、手動運転に切り替えれば候補の変更が許可されてもよい。
次に、本実施形態に係る自動運転システム1の動作について説明する。
図6は、本実施形態に係る自動運転システム1における自動運転制御の処理の概要を示すフローチャートである。自動運転制御の処理は、自動運転制御の開始操作等により開始され、ECU10により実行される。
図6に示されるように、まず、センサ情報の読み込み処理が行われる(ステップS10)。この処理は、外部センサ2、GPS受信部3、内部センサ4、地図データベース5の情報を読み込む処理である。外部状況認識部11は、外部センサ2の検出情報を読み込み、その外部センサ2の検出情報に基づいて、道路幅、道路の形状、車両V周辺の他車両の走行状況、車両V周辺の障害物の状況等を認識する。また、車両位置認識部12は、GPS受信部3により測定された車両Vの位置情報及び地図データベース5の地図情報を読み込み、地図上における車両位置を認識する。さらに、走行状態認識部13は、内部センサ4の検出情報を読み込み、その検出情報に基づいて、車両Vの走行状態を認識する。車両Vの走行状態には、車速、加速度、ヨーレートが含まれる。
続いて、進路の生成処理が行われる(ステップS12)。進路の生成処理は、車両Vの目標進路を生成する処理である。このステップS12では、ナビゲーションシステム7で演算された目標ルート、外部状況認識部11で認識された車両Vの外部状況、車両位置認識部12で認識された車両位置、及び走行状態認識部13で認識された車両Vの走行状態に基づいて、進路生成部14が車両Vの目標進路を生成する。
続いて、走行計画の生成処理が行われる(ステップS14)。このステップS14では、車両位置認識部12で認識された車両位置、外部状況認識部11で認識された車両Vの外部状況、及び進路生成部14により生成された目標進路に基づいて、走行計画生成部15が目標進路上の位置に応じた車両Vの制御目標値を含む走行計画を生成する。
続いて、運転制御処理が行われる(ステップS16)。運転制御処理は、ステップS14にて生成された走行計画に従って車両Vを走行させるように自動運転制御を行う処理である。運転制御部16は、アクチュエータ9に制御信号を出力する。これにより、アクチュエータ9が作動され、車両Vの操舵動作、駆動動作又は制動動作が行われ、車両Vが目標とする進路に沿って自動運転される。
そして、ステップS18に処理が移行し、自動運転制御が終了であるか否かが判定される。運転制御部16は、制御終了条件が成立する場合に自動運転制御を終了し、制御終了条件が成立しない場合には自動運転制御を継続する。制御終了条件としては、乗員により制御終了の操作が行われたこと、車両Vが制御終了地点に到着したこと等が該当する。S18にて自動運転制御の終了でないと判定された場合には、ステップS10に戻る。一方、ステップS18にて自動運転制御の終了であると判定された場合には、図4の一連の制御処理が終了する。
図7は、進路生成部14による進路の生成処理を示すフローチャートである。進路の生成処理は、進路生成部14により実行され、自動運転制御の開始に伴って開始される。そして、進路の生成処理は、自動運転制御中において繰り返し実行され、自動運転制御の終了と共に終了する。
図7に示されるように、進路生成部14は、ナビゲーションシステム7で演算された目標ルートが存在するか否かを判定する(ステップS20)。ステップS20において目標ルートが存在すると判定された場合、進路生成部14は、目標ルートにおける目標進路を設定する(ステップS22)。
ステップS20において目標ルートが存在しないと判定された場合、候補算出部141は、地図情報及び車両位置に基づいて、複数の進路候補を算出する(ステップS24)。続いて、候補評価部142は、ステップS22にて生成された複数の進路候補に対しての重み付けを予め設定された重みで行い、進路候補を評価する(ステップS26)。続いて、候補選択部143は、ステップS26での評価結果に基づいて、複数の進路候補を限定し、限定した進路候補をHMI8に表示させる(ステップS28)。
続いて、候補選択部143は、方向指示器6での受け付け結果に基づいて、ドライバによる進路候補の選択が存在するか否かを判定する(ステップS30)。ステップS30においてドライバによる進路候補の選択が存在すると判定された場合、進路生成部14は、ドライバが選択した進路候補により目標進路を設定する(ステップS32)。ステップS30においてドライバによる進路候補の選択が存在しないと判定された場合、進路生成部14は、基準進路候補を運転者が選択したものとして、進路候補の評価に基づき、付与された重み値の合計が最も大きい進路候補により目標進路を設定する(ステップS34)。
以上説明したように、本実施形態に係る自動運転システム1によれば、候補算出部141が複数の進路候補を算出する。算出した進路候補に対して重み付けを予め設定された重みで行うことで、候補評価部142が進路候補を評価する。候補評価部142での評価結果に基づいて、候補選択部143が複数の進路候補を限定し、限定された進路候補をHMI8に表示させる。すなわち、HMI8に表示される進路候補の数が制限される。この結果、目的地が予め設定されていない場合において、ドライバが進路候補を選択することが簡便となる。従って、自動運転システム1は、目的地が設定されていない場合において利便性が高い。
なお、上述した実施形態は、本発明に係る自動運転システムの一実施形態を説明したものであり、本発明に係る自動運転システムは上記実施形態に記載されたものに限定されない。本発明に係る自動運転システムは、請求項に記載した要旨を変更しないように上記実施形態に係る自動運転システムを変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
上記実施形態では、候補選択部143は、図4及び図5で例示した連続する2つの分岐部B21,B22における進路候補L21〜L24を、図8及び図9に示されるように矢印アイコンで進路候補を表現してHMI8の表示領域81及び表示領域82に表示させてもよい。候補選択部143は、分岐部B21において特定された進行方向を表示領域81に表示し、分岐部B22において特定された進行方向を表示領域82に表示する。進路候補は、表示領域81に表示された進行方向と表示領域82に表示された進行方向との組み合わせにより表現される。矢印アイコンは、分岐部において特定された進行方向に対応する車両Vの動作方向(例えば左折、直進、右折等)を指し示す図形である。矢印アイコンは、進路候補に応じて表示領域81及び表示領域82に表示される。選択された進路候補に対応する矢印アイコンは、選択されていない進路候補に対応する矢印アイコンとは異なる色彩で表示される。
図8の(a)の例では、図4の(a)の例と同様、候補選択部143が進路候補L21〜L24をHMI8に表示させており、進路候補L22がドライバにより選択されている。進路候補L22は、分岐部B21での左折を意味する表示領域81の矢印アイコンと、その後の分岐部B22での右折を意味する表示領域82の矢印アイコンと、により表現されている。
図8の(b)は、図8の(a)においてドライバによる1回の右方選択操作を方向指示器6が受け付けた場合を示している。つまり、図8の(b)の例では、図8の(a)において選択していた進路候補L22の1つ右側の進路候補L23がドライバにより選択されている。候補選択部143は、分岐部B21での直進を意味する表示領域81の矢印アイコンを、選択されていない進路候補に対応する矢印アイコンとは異なる色彩で表示させる。この場合、進路候補L23は分岐部B21の先の分岐部において特定される進行方向を含まないため、143は、表示領域82には特に何も表示させない。
その後、車両Vが分岐部B21に到達すると、図9の(a)に示されるように、車両Vが進路候補L23に沿って自動走行している状態として、候補選択部143は、分岐部B21での直進を意味する表示領域81の矢印アイコンを、図8の(b)における当該矢印アイコンの色彩とは異なる色彩で表示させる。その後、車両Vが進路候補L23を通り抜けると、図9の(b)に示されるように、候補選択部143は、分岐部B21の先に存在する分岐部において特定された進行方向をHMI8に表示させる。
図8及び図9の例において、選択された進路候補に対応する矢印アイコンは、色彩以外の要素において、選択されていない進路候補に対応する矢印アイコンとは異なるように表示されてもよい。なお、上記実施形態の図4及び図5の例において、選択された進路候補L22は、色彩及び太さ以外の要素において、選択されていない進路候補L21,L23,L24とは異なるように表示されてもよい。
上記実施形態では、候補選択部143は、限定された進路候補をHMI8に表示させたが、限定された進路候補を表示する第1モードと、第1モードとは異なる個数の進路候補を表示する第2モードと、を乗員の切替要求に応じて切り替えてHMI8に表示させてもよい。これにより、限定された進路候補が乗員の期待に沿っていない場合であっても、HMI8に表示される進路候補の個数を乗員の切替要求に応じて変更することができる。
この場合、第2モードは、第1モードよりも多い進路候補を表示する態様であってもよい。第2モードは、予め設定した第1モードよりも多い個数の進路候補を表示するモードであってもよい。第2モードは、候補算出部141にて算出した進路候補を全て表示するモードであってもよい。
第2モードは、第1モードよりも少ない進路候補を表示する態様であってもよい。第2モードは、予め設定した第1モードよりも少ない個数の進路候補を表示するモードであってもよい。第2モードは、付与された重み値の合計が最も大きい進路候補のみを表示する態様であってもよい。第2モードは、進路候補を表示しない(0個の進路候補を表示する)態様であってもよい。例えば、候補選択部143は、上述した乗員の切替要求が取得されるまでは、第2モードで進路候補をHMI8に表示させてもよい。
第1モード及び第2モードは、進路候補を所定の条件でグループ分けした進路候補を表示する態様であってもよい。この場合、第1モードに含まれる進路候補と、第2モードに含まれる進路候補との重複があってもよい。
候補選択部143は、これらの場合における乗員の切替要求を、以下のようにして取得する。候補選択部143は、乗員が第1モード又は第2モードを選択可能なモードスイッチをHMI8に表示させる。候補選択部143は、HMI8を介した乗員の入力操作により乗員の切替要求を取得する。候補選択部143は、HMI8に表示させる進路候補の数を指定する乗員の入力操作に基づいて、乗員の切替要求を取得してもよい。候補選択部143は、ドライバによる方向指示器6の操作(例えばウインカレバーを上に押し上げる操作)に基づいて、乗員の切替要求を取得してもよい。
上記実施形態において、候補選択部143は、一旦停止の標識が設けられた交差点又は信号が設けられた交差点でのみHMI8に進路候補を表示させる第3モードと、候補算出部141にて算出した進路候補を全ての分岐部において表示する第4モードと、を乗員の切替要求に応じて切り替えてHMI8に表示させてもよい。候補選択部143は、この場合における乗員の切替要求を以下のようにして取得する。候補選択部143は、乗員が第3モードと第4モードとを選択可能なモードスイッチをHMI8に表示させる。候補選択部143は、HMI8を介した乗員の入力操作により乗員の切替要求を取得する。
上記実施形態では、自動運転システム1が、入力部として方向指示器6を備えているが、例えば、入力部として、操舵角センサを備えていてもよい。この場合、操舵角センサは、ドライバによる操舵操作を乗員による入力操作として受け付ける。自動運転システム1が、入力部として、ドライバ撮像カメラと、視線検出部と、を備えていてもよい。この場合、視線検出部は、ドライバ撮像カメラからの出力に基づいて、ドライバの視線変化を検出し、この視線変化を乗員による入力操作として受け付ける。自動運転システム1が、入力部として、ACC[Adaptive Cruise Control]レバーと、ACCレバー操作検出部と、を備えていてもよい。この場合、ACCレバー操作検出部は、ドライバによるACCレバーの操作を乗員による入力操作として受け付ける。入力部は、HMI8の操作ボタン、操作レバー、タッチパネル、又は新規に設けられたボタンやパッド等であってもよい。この場合、入力部は、ドライバ以外の乗員による進路候補の選択操作を受け付けることが可能となる。
候補評価部142は、進路候補ごとに重み値を合計し、合計した重み値を比較することにより、予め設定された重みでの重み付けを行っているが、重み係数を含む多項式で定義される関数を進路候補ごとに設定し、関数の値を比較することにより、予め設定された重みでの重み付けを行ってもよい。この場合、重み係数は、重み条件ごとに設定され、重み条件に対応付けられた重み係数である。進路候補が重み条件を満たす場合の重み係数は、例えば、進路候補が重み条件を満たさない場合の重み係数よりも大きく設定される。