JP2017154373A - 多機能小型含浸装置及びこれを用いた改質材料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】市場で要求される高度な品質を満足する改質木材などを製造することができ、多品種少量、短納期、コストダウンが可能で、且つ、安価な装置価格を有する多機能小型含浸装置を提供する。【解決手段】小型含浸装置100は、含浸釜部100aと薬液調整部100bと駆動部100cと制御手段とを有して被含浸材料に含浸用薬液を含浸する。含浸釜部100aは、薬液配管12、22、32、42により薬液調整部100bが備える薬液貯槽50と連通する2以上の含浸釜10、20、30、40を備え、当該含浸釜は、それぞれ昇温手段11を備えている。駆動部100cは、2以上の含浸釜10、20、30、40に作動する1つの減圧手段60と1つの加圧手段80と1つの給液手段70とを備えている。小型含浸装置100は、制御手段による制御のもと、2以上の含浸釜10、20、30、40がそれぞれ独立した条件で並行して駆動することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、改質木材などの製造に使用する多機能小型含浸装置に関するものである。また、本発明は、この多機能小型含浸装置を用いた改質材料の製造方法に関するものである。
近年ではリサイクル社会を実現するために、再生可能な木材の利用に建築業界や乗り物業界をはじめ多くの産業界から大きな期待が寄せられている。一方、木材は「寸法が狂う」、「軟質で傷付く」、「燃える」、「腐朽する」、「ヒヤケ(変色)する」等の欠点を有することから、その利用範囲が限られている。そこで、これらの欠点を改善する方法として、木材の改質加工が行われている。しかし、これまでの改質加工では、性能不足、加工による変色、加工コスト高、加工薬品による臭気等の問題があり、その利用は小規模な範囲に留まっていた。
近年、この分野における技術的進歩により、木材の最大の欠点である「寸法変化」と「軟質」を克服して、寸法の安定した硬い木材に改質することも可能となってきた。例えば、木材の微細組織に樹脂からなる改質薬液を充填し、木材を構成するセルロース分子と化学反応させると共に木材の内部で樹脂を硬化させる方法などがある。また、「不燃」、「防腐」、「ヒヤケ防止」などの機能性を付与した改質木材も開発されている。更に、「染色」により色彩の多様化を図り審美性を追求した改質木材も開発されている。
これらの改質木材の中でも、特に必要とされているのは、ワレや狂いの起こらない「寸法安定木材」、火災発生でも燃えない「不燃木材」、色彩を提案する「染色木材」の3つの改質木材である。これら3つの改質木材を製造する含浸技術(寸法安定、不燃、染色)は、木材の改質加工の重要テーマとして個々に確立されてきた。
一方、これらの改質技術の背景には、2つの基幹技術の発展がある。1つは、木材の欠点を改善する改質薬液の発展である。また、1つは、これらの改質薬液を木材中に含浸する含浸技術の発展である。特に、含浸技術の発展には、木材の微細組織の中に改質薬液を均一に含浸させる含浸装置の進化と、この含浸装置を使用した製造方法の進化がある。これらの含浸装置と製造方法を組み合わせることにより、目標とする品質の改質木材を市場に供給することができる。
ところが、含浸技術の歴史は、電柱、枕木、木質住宅基礎材の保存処理を目的として発達してきた。このような分野では、保存液(改質薬液)を木材の表層に含浸するだけでよく、木材の深部にまで含浸する必要がなかった。技術的には容易な改質技術であるが、長尺電柱や硬木の枕木等への含浸には2〜4日間を要した。また、含浸装置は、バッチ式加工装置であることから、一度に大量の木材を加工できる大型装置として発展してきた。現在に引き継がれている含浸装置や製造方法も、駆動部はパワーアップされ自動化されているが、1回に1種類の改質木材を大量に製造する大型含浸装置である。このような大型含浸装置は、製造コストも大きく高価格の装置となる。
このように、現在の含浸装置は大型化し、1回に1種類の改質木材を大量に製造する高価格の大型含浸装置である。このような大型含浸装置では、一度に大量の木材を改質できる反面、処理時間が長く、薬液の効率的な利用が難しく、改質コストが高くなるという問題があった。また、大型の装置内を均一に加圧し辛いことから木材内部にまで至る均一な含浸処理が難しく、改質木材の品質にばらつきが生じるという問題があった。これらを解決するには、更に長時間の含浸処理が必要であった。更に、上述の要求度の高い含浸技術(寸法安定、不燃、染色)を実施する場合には、1台の装置でそれぞれ大量の処理を順番に行わなければならず、多品種少量、短納期、コストダウンという現在の市場要求に反するという問題があった。
上記問題に対して、種々の薬液含浸装置が提案されている。例えば、下記特許文献1においては、予め定めた所定量の薬液を木材に含浸させることができ、処理された木材の品質のばらつきを減じることができる薬液含浸装置が提案されている。また、下記特許文献2においては、ムラなく短時間で薬液を木材内部に含浸させることができる木材用薬液含浸装置が提案されている。
特開2007−320199号公報 特開平5−147005号公報
ところで、上記特許文献1に記載の薬液含浸装置においては、改質タンク内の液面センサ及び薬液量検出装置による検出に基づき、薬液量制御手段が木材に含浸された薬液の量を制御することができる。しかし、高価格の大型含浸装置におけるこのような制御には、更に大きなコストを要し、また、処理時間と均一な含浸においては従来の大型含浸装置と変わることがない。よって、上記特許文献1に記載の薬液含浸装置においても、多品種少量、短納期、コストダウンという現在の市場要求を満足することができない。
また、上記特許文献2に記載の木材用薬液含浸装置においては、真空ポンプを利用した特殊構造の差圧発生手段による作用で木材内部に効率よく薬液を注入できる。しかし、このような差圧発生手段という特殊な構造によりに装置価格が更に高価になる。また、上記特許文献2に記載の薬液含浸装置においても、多品種少量、短納期、コストダウンという現在の市場要求を満足することができない。
そこで、本発明は、上記の諸問題に対処して、市場で要求される高度な品質を満足する改質木材などを製造することができ、多品種少量、短納期、コストダウンが可能で、且つ、安価な装置価格を有する多機能小型含浸装置を提供することを目的とする。また、本発明は、この多機能小型含浸装置を用いた改質木材の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、複数の含浸釜を1つの駆動部と制御手段により駆動して、並行して異なる含浸操作することにより、多品種少量、短納期、コストダウンが可能であることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明に係る多機能小型含浸装置は、請求項1の記載によると、
含浸釜部(100a)と、薬液調整部(100b)と、駆動部(100c)と、制御手段とを有して被含浸材料(10a、20a、30a、40a)に含浸用薬液(50a、50b、50c、50d)を含浸する小型含浸装置(100)であって、
前記含浸釜部は、薬液配管(12、22、32、42)により前記薬液調整部が備える薬液貯槽(50)と連通する2以上の含浸釜(10、20、30、40)を備え、当該含浸釜は、それぞれ昇温手段(11)を備え、
前記駆動部は、前記2以上の含浸釜に作動する1つの減圧手段(60)と1つの加圧手段(80)と1つの給液手段(70)とを備え、
前記制御手段による制御のもと、前記2以上の含浸釜がそれぞれ独立した条件で並行して駆動することを特徴とする。
また、本発明は、請求項2の記載によると、請求項1に記載の多機能小型含浸装置であって、
前記2以上の含浸釜は、耐圧10kg/cm以上で使用する高圧釜(10)、耐圧5kg/cm以上で使用する中圧釜(20)、及び、大気圧で使用する低圧釜(30、40)からなることを特徴とする。
また、本発明は、請求項3の記載によると、請求項1に記載の多機能小型含浸装置であって、
前記2以上の含浸釜は、耐圧10kg/cm以上で使用する高圧釜、及び、大気圧で使用する低圧釜からなることを特徴とする。
また、本発明は、請求項4の記載によると、請求項1に記載の多機能小型含浸装置であって、
前記2以上の含浸釜は、耐圧5kg/cm以上で使用する中圧釜、及び、大気圧で使用する低圧釜からなることを特徴とする。
また、本発明に係る改質材料の製造方法は、請求項5の記載によると、
請求項1〜4のいずれか1つに記載の多機能小型含浸装置(100)を使用して、被含浸材料(10a、20a、30a、40a)に含浸用薬液(50a、50b、50c、50d)を含浸する改質材料の製造方法であって、
前記含浸釜部が備える1つの含浸釜に対して被含浸材料を充填する充填工程と、
前記含浸釜と駆動部とを連結する連結工程と、
前記薬液調整部が備える薬液貯槽に含浸用薬液を準備する薬液準備工程と、
前記給液手段により前記含浸釜に前記薬液貯槽から薬液を給液する給液工程と、
前記制御手段による制御のもと前記含浸釜の内部で前記被含浸材料に前記含浸用薬液を含浸する含浸工程とを有して、
前記含浸工程の駆動中に前記含浸釜と前記駆動部とを切り離し、前記含浸釜部が備える他の含浸釜に対して、前記各工程を同様に行うことにより、前記含浸釜部が備える2以上の含浸釜において、それぞれ独立した条件で並行して各含浸工程が駆動することを特徴とする。
また、本発明は、請求項6の記載によると、請求項5に記載の改質材料の製造方法であって、
前記含浸釜部が備える2以上の含浸釜のうち、少なくとも1つの含浸釜に対して、
前記減圧手段により当該含浸釜の内部を減圧する減圧工程と、
前記加圧手段により当該含浸釜の内部を加圧する加圧工程とを有して、
当該加圧工程後に前記含浸釜と前記駆動部とを切り離した後の前記含浸工程中において、当該含浸釜が備える昇温手段により、当該含浸釜の内部の含浸用薬液を昇温して、当該含浸釜の内部の加圧状態を維持することを特徴とする。
また、本発明は、請求項7の記載によると、請求項5又は6に記載の改質材料の製造方法であって、
前記含浸工程が終了した前記含浸釜に対して、当該含浸釜の内部から残余の含浸用薬液を前記薬液貯槽に回収する回収工程と、
前記含浸釜の内部から前記被含浸材料を取り出す取出工程と、
当該被含浸材料を水切り養生する水切り養生工程と、
当該水切り養生工程後の被含浸材料を乾燥する乾燥工程と、
必要により当該被含浸材料を熱処理する熱処理工程とを有していることを特徴とする。
上記構成によれば、本発明に係る多機能小型含浸装置は、含浸釜部と、薬液調整部と、駆動部と、制御手段とを有している。含浸釜部は、薬液配管により薬液調整部が備える薬液貯槽と連通する2以上の含浸釜を備えている。また、各含浸釜は、それぞれ昇温手段を備えている。駆動部は、2以上の含浸釜に作動する1つの減圧手段と1つの加圧手段と1つの給液手段とを備えている。
このような構成において、制御手段による制御のもと、1つの減圧手段が2以上の含浸釜に作動することができる。また、1つの加圧手段が2以上の含浸釜に作動することができる。また、1つの給液手段が2以上の含浸釜に作動することができる。このことにより、2以上の含浸釜がそれぞれ独立した条件で並行して駆動することができる。
よって、上記構成によれば、市場で要求される高度な品質を満足する改質木材などを製造することができ、多品種少量、短納期、コストダウンが可能で、且つ、安価な装置価格を有する多機能小型含浸装置を提供することができる。
また、上記構成によれば、多機能小型含浸装置は、2以上の含浸釜として、耐圧10kg/cm以上で使用する高圧釜、耐圧5kg/cm以上で使用する中圧釜、及び、大気圧で使用する低圧釜などからなるどのような組み合わせで構成されていてもよい。本発明においては、2以上の含浸釜がどのような組み合わせであっても、それぞれ独立した条件で並行して駆動することができる。
また、上記構成によれば、本発明に係る改質材料の製造方法は、上記構成の多機能小型含浸装置を使用して、被含浸材料に含浸用薬液を含浸する。本製造方法は、充填工程と連結工程と薬液準備工程と給液工程と含浸工程とを有している。充填工程は、含浸釜部が備える1つの含浸釜に対して被含浸材料を充填する。連結工程は、含浸釜と駆動部とを連結する。液準備工程は、薬液調整部が備える薬液貯槽に含浸用薬液を準備する。給液工程は、給液手段により含浸釜に薬液貯槽から薬液を給液する。含浸工程は、制御手段による制御のもと含浸釜の内部で被含浸材料に含浸用薬液を含浸する。
上記構成によれば、このようにして進行する含浸工程の駆動中において、含浸釜と駆動部とを切り離す。ここで、切り離すとは、配管を取り外すことではなく管路を閉鎖することをいう。そして、含浸釜部が備える他の含浸釜に対して、上記各工程を同様の工程を行う。このことにより、含浸釜部が備える2以上の含浸釜において、それぞれ独立した条件で並行して各含浸工程が駆動することができる。よって、上記構成によれば、市場で要求される高度な品質を満足し、多品種少量、短納期、コストダウンが可能な改質材料の製造方法を提供することができる。
また、上記構成によれば、本発明に係る改質材料の製造方法は、含浸釜部が備える2以上の含浸釜のうち、少なくとも1つの含浸釜に対して、減圧工程と加圧工程とを有している。減圧工程は、含浸工程に先立って減圧手段により含浸釜の内部を減圧する。加圧工程は、含浸工程の初期において加圧手段により含浸釜の内部を加圧する。次に、加圧工程後に含浸釜と駆動部とを切り離す(管路を閉鎖する)。
その後の含浸工程中において、当該含浸釜が備える昇温手段により、当該含浸釜の内部の含浸用薬液を昇温する。このように、駆動部が切り離され加圧手段が作用しない状態においても、含浸釜の内部の加圧状態を昇温操作により維持することができる。このことにより、含浸釜部が備える2以上の含浸釜において、それぞれ独立した条件で並行して各含浸工程が駆動することができる。
また、上記構成によれば、本発明に係る改質材料の製造方法は、回収工程、取出工程、水切り養生工程、乾燥工程、及び、必要により熱処理工程を有している。回収工程は、含浸工程が終了した含浸釜に対して、当該含浸釜の内部から残余の含浸用薬液を薬液貯槽に回収する。取出工程は、含浸釜の内部から被含浸材料を取り出す。水切り養生工程は、含浸用薬液による被含浸材料の膨潤が完了するまで養生する。乾燥工程は、水切り養生後に膨潤が完了した被含浸材料を乾燥する。熱処理工程は、必要により当該被含浸材料を熱処理する。このようにして、市場で要求される高度な品質を満足し、多品種少量、短納期、コストダウンが可能な改質材料を製造する。
本発明に係る多機能小型含浸装置の一実施形態を示す構成図である。 図1の多機能小型含浸装置において第1含浸釜の駆動を示す概要図である。 図1の多機能小型含浸装置において第2含浸釜の駆動を示す概要図である。 図1の多機能小型含浸装置において第3含浸釜の駆動を示す概要図である。 図1の多機能小型含浸装置において第4含浸釜の駆動を示す概要図である。 多機能小型含浸装置の駆動部の運転状況を示す図であって、Aは図1の多機能小型含浸装置のもの、Bは従来の大型含浸装置のものである。 図1の多機能小型含浸装置において第1含浸釜の稼働状態を示す工程図である。 従来の大型含浸装置において大型含浸釜の稼働状態を示す工程図である。
以下、本発明を図面に基づいて説明する。本実施形態は、被含浸材料として木質材料(木材)を使用し、この木材に各種改質薬液を含浸して改質木材を製造するために使用される。本実施形態にいう改質木材としては、含浸操作により改質薬液を付与するものであればどのようなものであってもよい。本実施形態においては、これらの改質木材に中で、特に要望の高い「寸法安定木材」、「不燃木材」、「染色木材」を採用する。これらの改質を1台の含浸装置で並行して行うことから、本実施形態に係る含浸装置を多機能小型含浸装置と呼ぶ。
図1は、本発明係る多機能小型含浸装置の一実施形態を示す構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る多機能小型含浸装置100は、含浸釜部100aと、薬液調整部100bと、駆動部100cと、制御手段(図示せず)とを有している。
含浸釜部100aは、4台の含浸釜10、20、30、40を備えている。本実施形態においては、各含浸釜の容量は0.5mとした。従って、従来の大型含浸釜の容量が2〜4mであることに比べ小さいが、そのことにより、より均一な含浸が可能で、且つ、多品種少量、短納期、コストダウンという現在の市場要求を満足することができる。更に、後述するように、これらの含浸釜が並行して稼働するので、従来の大型含浸釜に比べ生産性で劣るものではない。
図1において、含浸釜10(以下「第1含浸釜10」ともいう)は、主に「寸法安定木材」を製造するためのステンレス製の高圧釜であって、最大加圧10kg/cmが可能な高圧容器である。また、含浸釜20(以下「第2含浸釜20」ともいう)は、主に「不燃木材」を製造するためのステンレス製の中圧釜であって、最大加圧5kg/cmが可能な中圧容器である。また、含浸釜30(以下「第3含浸釜30」ともいう)及び含浸釜40(以下「第4含浸釜40」ともいう)は、いずれも、主に「染色木材」を製造するためのステンレス製の常圧釜である。なお、本実施形態においては、これら4つの含浸釜を採用するが、本発明に係る多機能小型含浸装置においては、含浸釜の種類と個数に関して特に限定するものではない。
各含浸釜10、20、30、40は、それぞれ、内部の含浸薬液を昇温するヒーターを具備している。なお、図1においては、含浸釜10の具備するヒーター11のみを記載し、含浸釜20、30、40の各ヒーターは図示を省略する。また、各含浸釜10、20、30、40は、それぞれ、薬液配管12、22、32、42により、駆動部100cを介して薬液調整部100bと連通している(後述する)。
更に、各含浸釜10、20、30、40は、それぞれ、空気配管13、23、33、43により、駆動部100cの真空ポンプ(後述する)と連通している。なお、各含浸釜10、20、30、40は、それぞれ、安全弁を具備している。なお、図1においては、含浸釜10の具備する安全弁14のみを記載し、含浸釜20、30、40の各安全弁は図示を省略する。
薬液調整部100bは、含浸用薬液を調整する薬液貯槽50を備えている。薬液貯槽50は、内部の含浸用薬液を昇温するヒーター51、含浸用薬液を混合する攪拌機53、液面センサ54、及び、液面計55を具備している。また、薬液貯槽50は、薬液配管52により、駆動部100cを介して各含浸釜10、20、30、40と連通している(後述する)。
駆動部100cは、1台の真空ポンプ60、1台の給液ポンプ70、及び、1台の加圧ポンプ80を備えている。真空ポンプ60は、空気配管63により空気配管13、23、33、43を介して各含浸釜10、20、30、40と連通している。空気配管13、23、33、43には、それぞれ電磁弁が設けられ、各含浸釜10、20、30、40は、それぞれ独立して真空ポンプ60と連通することができる。このことにより、1台の真空ポンプ60が4台の含浸釜10、20、30、40の内部をそれぞれ独立して減圧することができる。
給液ポンプ70は、一方の端部を薬液配管52により薬液貯槽50と連通すると共に、他方の端部を薬液配管72により薬液配管12、22、32、42を介して各含浸釜10、20、30、40と連通している。薬液配管12、22、32、42には、それぞれ電磁弁が設けられ、各含浸釜10、20、30、40は、それぞれ独立して給液ポンプ70と連通することができる。このことにより、1台の給液ポンプ70が薬液貯槽50の内部の含浸薬液を4台の含浸釜10、20、30、40の内部にそれぞれ独立して供給することができる。
加圧ポンプ80は、一方の端部を薬液配管72により給液ポンプ70と連通すると共に、他方の端部を薬液配管12、22、32、42により各含浸釜10、20、30、40と連通している。上述のように、薬液配管12、22、32、42には、それぞれ電磁弁が設けられ、各含浸釜10、20、30、40は、それぞれ独立して加圧ポンプ80と連通することができる。このことにより、1台の加圧ポンプ80が4台の含浸釜10、20、30、40の内部の含浸薬液をそれぞれ独立して加圧することができる。
このように、本実施形態においては、駆動部100cが備える1台の真空ポンプ60、1台の給液ポンプ70、及び、1台の加圧ポンプ80で、4台の含浸釜10、20、30、40の駆動をそれぞれ独立して行うことができる。このことにより、本実施形態に係る多機能小型含浸装置においては、4台の含浸釜がそれぞれ独立した条件で並行して駆動することができる。
制御手段は、図1において図示しないが、マイクロコンピュータと、各駆動回路とを備えている。マイクロコンピュータは、内蔵したコンピュータプログラムを実行する。なお、このコンピュータプログラムは、マイクロコンピュータのROMに読み出し可能に記憶されている。各駆動回路は、マイクロコンピュータによる制御のもと、駆動部100cの真空ポンプ60、給液ポンプ70及び加圧ポンプ80の作動、並びに、各薬液配管及び各空気配管に設けられた各電磁弁の開閉を制御する。このことにより、本実施形態に係る多機能小型含浸装置においては、4台の含浸釜がそれぞれ独立した条件で並行して駆動することができる。また、4台の含浸釜の各ヒーター及び温度センサによる昇温操作もマイクロコンピュータによる制御のもと、それぞれ独立して行われる。
次に、このように構成した多機能小型含浸装置100を使用して、複数種類の改質木材を同時に製造する方法について説明する。図2は、本実施形態に係る多機能小型含浸装置100において第1含浸釜10の駆動を示す概要図である。図3は、本実施形態に係る多機能小型含浸装置100において第2含浸釜20の駆動を示す概要図である。図4は、本実施形態に係る多機能小型含浸装置100において第3含浸釜30の駆動を示す概要図である。図5は、本実施形態に係る多機能小型含浸装置100において第4含浸釜40の駆動を示す概要図である。
本実施形態においては、第1含浸釜10⇒第2含浸釜20⇒第3含浸釜30⇒第4含浸釜40の順に従って、駆動部100cの真空ポンプ60、給液ポンプ70、及び、加圧ポンプ80が駆動する。
ここで、第1含浸釜10における改質木材の製造方法について図2を用いて説明する。第1含浸釜10は、上述のように、「寸法安定木材」を製造するための最大加圧10kg/cmが可能な高圧容器である。図2において、第1含浸釜10における改質木材の加工について、各工程に沿って説明する。なお、本実施形態においては、第1含浸釜10の稼働時間(加工時間)は、12時間であった。
《充填工程》
図2の充填工程においては、第1含浸釜10の内部に改質用の木材10aを充填する。本実施形態においては、従来の大型含浸装置のように電柱、枕木、木質住宅基礎材などの大きな木材を対象とするのではなく、床材、壁材、扉材、家具材などの高級木材を対象とする。従って、第1含浸釜10の容量を小さくして含浸釜の内部に桟木などを必要とせず、木材を効率的に充填して均一な高度改質を可能とする。なお、本実施形態においては、木材10aとして、厚35mm、巾110mm、長さ2010mmのスギ又はヒノキを使用した。
《連結工程》
図2の連結工程においては、駆動部100cの各装置と第1含浸釜10とを連結する。なお、実際には各装置は配管で連結しており、ここでいう連結工程とは、必要な時に電磁弁が開閉して各装置が連通することをいう。具体的には、空気配管13を介して真空ポンプ60を第1含浸釜10に連通する。また、薬液配管12を介して給液ポンプ70及び加圧ポンプ80を第1含浸釜10に連通する。ここで、駆動部100cの給液ポンプ70及び加圧ポンプ80は、薬液配管52を介して薬液貯槽50と連通している。なお、図2においては、空気配管13及び薬液配管12を簡略化して1本の配管として記載する。また、空気配管13及び薬液配管12が具備する各電磁弁を包含する電奇弁Vとして記載する。
《薬液準備工程》
図2の薬液準備工程においては、薬液貯槽50に「寸法安定木材」用の改質薬液50aを調液する。本実施形態においては、「寸法安定木材」用の改質薬液50aとしてその種類及び使用濃度を限定するものではなく、どのような薬液をどのような量で使用してもよい。ここで、「寸法安定木材」用の改質薬液50aとしては、例えば、グリオキサール誘導体などの環状尿素樹脂、グリオキサール誘導体とポリグリコールとの併用樹脂、グリオキサール誘導体とエポキシとの併用樹脂、ポリエチレングリコールによる架橋などを挙げることができる。なお、改質薬液50aは、予め調液して予備貯槽に維持しておいてもよい。
《減圧工程》
図2の減圧工程においては、まず、第1含浸釜10の内部を外部環境と気密的に遮蔽する。次に、制御手段による制御のもと真空ポンプ60を作動して空気配管13を介して第1含浸釜10の内部を減圧する。このことにより、第1含浸釜10の内部に充填された木材10aが含有する空気が排除され、含浸効率が向上する。なお、減圧工程の詳細については後述する。
《給液工程》
図2の給液工程においては、まず、空気配管13を閉鎖する。次に、第1含浸釜10の内部の減圧状態を維持したまま、制御手段による制御のもと給液ポンプ70を作動する。このことにより、薬液配管12を介して薬液貯槽50に調液した改質薬液50aを第1含浸釜10の内部に供給する。この間、第1含浸釜10の内部においては、減圧状態から常圧状態に移行すると共に、これに伴って給液ポンプ70の作動も相まって改質薬液50aの移動が起こる。なお、同様の作用により、木材10aの外部と内部の圧力差が大きいほど改質薬液50aは細い通導を経てより木材10aの内部深く浸透する。
《加圧工程》
図2の加圧工程においては、まず、第1含浸釜10の内部に所定量の改質薬液50aが供給された段階で、給液ポンプ70の作動を維持して第1含浸釜10の内部で改質薬液50aを循環させる。次に、改質薬液50aの循環を維持した状態で、加圧ポンプ80を作動して第1含浸釜10の内部を加圧する。この加圧工程は、続く含浸工程の一部を構成する。具体的には、加圧ポンプ80を作動して第1含浸釜10の内部を加圧することで木材10aの外側と内部間に圧力傾斜が維持される。このことにより、木材10aの通導内の改質薬液50aは圧力傾斜に沿って木材10aの内部へより浸透する。その結果、木材10aの内部の全ての空隙に改質薬液50aを充填することができる。
一般に、1気圧の元で木材が吸水すると、その体積の約10%が膨潤する。従って、改質薬液の加圧工程の初期においては、浸透膨潤を十分行う必要がある。改質薬液を木材内部に充填する際には、未含浸部分を少なくするために加圧によって未含浸部分の細い通導の圧迫拘束を少なく小さくすることが大切である。一方、高加圧による未含浸部分の変形や破壊が生じるに至っては、十分な含浸目的の達成はできない。従って、木材の種類により異なるが、改質薬液の加圧工程の初期は圧縮破壊強度(常態、吸水、吸水加温)を越えて加圧してはいけない。
《含浸工程》
図2の含浸工程においては、上述の加圧工程後にその加圧状態を維持しながら木材10aの内部に改質薬液50aを含浸する。なお、第1含浸釜10における含浸工程においては、第1含浸釜10が具備するヒーターを用いて改質薬液50aを20℃〜60℃まで段階的に昇温しながら木材10aの内部に改質薬液50aを含浸する。また、本実施形態においては、この含浸工程の駆動中に駆動部100cの各装置と第1含浸釜10とを切り離す(管路を閉鎖する)。なお、本実施形態においては、減圧工程、加圧工程及び含浸工程を纏めて「含浸操作」という。本実施形態における「含浸操作」の詳細及び加圧状態の維持については後述する。
《回収工程》
図2の回収工程においては、含浸工程後の残余の改質薬液50aを給液ポンプ70の逆作動により薬液貯槽50に回収する。回収した改質薬液50aは、予備貯槽に維持しておき次回の改質加工において使用するようにしてもよい。
《取出工程》
図2の取出工程においては、第1含浸釜10の内部から含浸後の木材10aを取り出す。取出した木材10aは、必要により表面の洗浄などを行い水切り養生工程に移動する。
《水切り養生工程》
図2の水切り養生工程においては、含浸工程後の木材10aを水切り養生する。ここで、水切り養生には、次のような効果がある。
一般に、木材は、改質薬液の含浸直後から寸法が膨潤(体積膨潤)し、この膨潤が完了するまでには長時間を要する。木材は、その種類により含浸が容易な樹種から非常に困難な樹種まであり、体積膨潤も大きい樹種から少ない樹種まで、そのばらつきの範囲は広く大きいことが知られている。木材の体積膨潤の主な原因は、細胞壁内の微細組織であるセルロースの末端OH基と改質薬液との化学反応による疎水化や、微細組織間への改質薬液の充填(バルキング)効果である。「寸法安定木材」用の改質薬液などに関しても、同様な効果が期待できる。従って、含浸工程後の木材の体積膨潤が完了するまでの間は化学反応の密度がより高くなり、効果も高くなる事から、水切り養生工程は必要な加工工程である。
更に説明すれば、含浸工程は、改質薬液を木材内すなわち細胞内に含浸充填する工程であり、含浸と共に細胞壁内に含浸した僅かな改質薬液により体積膨潤が起こっている。水切り養生工程においては、改質薬液で満たされた細胞腔内(細胞壁に囲まれた大きな空隙部分)において、蒸散が始まり改質薬液の濃度が上昇する。濃度が上昇した改質薬液は、細胞壁を通し浸透圧により細胞壁内に浸透移動して微細組織内に拡散する。このことにより、化学反応や充填により寸法安定効果を発揮する。このように、含浸工程から水切り養生工程を経て木材の内部への改質薬液の含浸が完結する。
《乾燥工程》及び《熱処理工程》
図2の乾燥工程においては、水切り養生工程後の木材10aを乾燥する。木材10aの乾燥装置は、特に限定するものではなく、通常の木材の乾燥工程に使用されるものを採用すればよい。また、必要により乾燥した木材10aを熱処理して、改質薬剤を架橋、重合などしてその効果を引き出すようにしてもよい。
ここで、多機能小型含浸装置の駆動部の運転状況について説明する。図6Aは、本実施形態に係る多機能小型含浸装置の駆動部の運転状況を示す図である。図6Aにおいて、最上段の図は、第1含浸釜10における加工時間の推移(図示右方向への時間軸)を示している。ここで、記号T1で示す部分が駆動部100cの各装置が第1含浸釜10に対して駆動している時間帯である。
なお、図6Aにおいて、上から二段目の図は、第2含浸釜20における加工時間の推移(図示右方向への時間軸)を示している。記号C1の部分で、駆動部100cの各装置が第1含浸釜10から切り離され、第2含浸釜20と連結されたことを示している。この状態において、駆動部100cの各装置が第2含浸釜20に対して駆動している(記号T2参照)。これに対して、図6Bは、従来の大型含浸装置の駆動部の運転状況を示す図である。図6Bにおいて、駆動部は1台の大型含浸釜に対してのみ駆動し(記号T5参照)、その後は間欠的な稼働(記号T6参照)を行っている。
以下、同様にして記号C2の部分で、駆動部100cの各装置が第2含浸釜20から切り離され、第3含浸釜30と連結される。また、記号C3の部分で、駆動部100cの各装置が第3含浸釜30から切り離され、第4含浸釜40と連結される。このことにより、含浸釜部100aが備える4台の含浸釜10、20、30、40において、それぞれ独立した条件で並行して各含浸工程が駆動することができる。
次に、第2含浸釜20における改質木材の製造方法について図3を用いて説明する。第2含浸釜20は、上述のように、「不燃木材」を製造するための最大加圧5kg/cmが可能な中圧容器である。図3において、第2含浸釜20における改質木材の加工について、各工程に沿って説明する。なお、本実施形態においては、第2含浸釜20の稼働時間(加工時間)は、12時間であった。
《充填工程》
図3の充填工程においては、第2含浸釜20の内部に改質用の木材20aを充填する。本実施形態においては、第2含浸釜20も床材、壁材、扉材、家具材などの高級木材を対象とする。従って、第2含浸釜20の容量を小さくして含浸釜の内部に桟木などを必要とせず、木材を効率的に充填して均一な高度改質を可能とする。なお、本実施形態においては、木材20aとして、厚35mm、巾110mm、長さ2010mmのスギ又はヒノキを使用した。
ここで、第2含浸釜20の充填工程と並行して、薬液貯槽50及び駆動部100cの各装置の各配管を洗浄しておく。薬液貯槽50及び駆動部100cの各装置は、4台の含浸釜10、20、30、40に対して、効率よく1台のみで対応するためである。
《連結工程》
図3の連結工程においては、駆動部100cの各装置と第2含浸釜20とを連結する。なお、実際には各装置は配管で連結しており、ここでいう連結工程とは、必要な時に電磁弁が開閉して各装置が連通することをいう。具体的には、空気配管23を介して真空ポンプ60を第2含浸釜20に連通する。また、薬液配管22を介して給液ポンプ70及び加圧ポンプ80を第2含浸釜20に連通する。ここで、駆動部100cの給液ポンプ70及び加圧ポンプ80は、薬液配管52を介して薬液貯槽50と連通している。なお、図3においては、空気配管23及び薬液配管22を簡略化して1本の配管として記載する。また、空気配管23及び薬液配管22が具備する各電磁弁を包含する電奇弁Vとして記載する。なお、駆動部100cの各装置と第1含浸釜10とは切り離されているが、第1含浸釜10の含浸工程は独立して稼働中である。
《薬液準備工程》
図3の薬液準備工程においては、薬液貯槽50に「不燃木材」用の改質薬液50bを調液する。本実施形態においては、「不燃木材」用の改質薬液50bとしてその種類及び使用濃度を限定するものではなく、どのような薬液をどのような量で使用してもよい。ここで、「不燃木材」用の改質薬液50bとしては、例えば、硼酸、硼砂、リン酸グアニジン、リン酸アンモニウム、珪酸系処理剤などを挙げることができる。なお、改質薬液50bは、予め調液して予備貯槽に維持しておいてもよい。
なお、「不燃木材」用の改質薬液の薬液貯蔵温度は50℃程度で維持することが好ましい。その理由は、続く減圧工程で含浸釜の内部が20torr(2.67kPa)に達したとき、含浸釜の内部は冷却されて約15℃程度となっている。そのため、含浸釜への改質薬液の注液時に、一瞬の水分の蒸発と低温の影響で木材木口の通導入口に結晶化した改質薬液が付着し、浸透阻害になることがある。これを避ける必要から、薬液貯蔵温度は50℃程度に加温する必要がある。一般に、木材に液体を含浸する場合、素早く浸透させるための適温は、水で30〜45℃であり高温水がより有利である。
《減圧工程》
図3の減圧工程においては、まず、第2含浸釜20の内部を外部環境と気密的に遮蔽する。次に、制御手段による制御のもと真空ポンプ60を作動して空気配管23を介して第2含浸釜20の内部を減圧する。このことにより、第2含浸釜20の内部に充填された木材20aが含有する空気が排除され、含浸効率が向上する。
《給液工程》
図3の給液工程においては、まず、空気配管23を閉鎖する。次に、第2含浸釜20の内部の減圧状態を維持したまま、制御手段による制御のもと給液ポンプ70を作動する。このことにより、薬液配管22を介して薬液貯槽50に調液した改質薬液50bを第2含浸釜20の内部に供給する。
《加圧工程》
図3の加圧工程においては、まず、第2含浸釜20の内部に所定量の改質薬液50bが供給された段階で、給液ポンプ70の作動を維持して第2含浸釜20の内部で改質薬液50bを循環させる。次に、改質薬液50bの循環を維持した状態で、加圧ポンプ80を作動して第2含浸釜20の内部を加圧する。この加圧工程は、続く含浸工程の一部を構成する。
一般に、「不燃木材」用の改質薬液は、結晶化しやすく流動性に欠ける性質がある。従って、常温での含浸釜への注入から初期加圧工程で木材内部への圧力傾斜が大きくなっても、改質薬液の温度が低いため浸透には長時間を要する。一方、改質薬液の加圧力を高くすることは、未含浸部分の細い通導の圧迫拘束ひいては圧縮変形を生じることとなり、避けなければならない。また、「不燃木材」用の改質薬液は、高温加熱で劇的に流動性が向上して活性化し、その流動性は他の改質薬液に近似する。また、木材自身の熱伝道が低いので、改質薬液の加温と含浸釜内の加温を続けながら浸透促進を図らなければならない。
このように、「不燃木材」用の改質薬液の場合には、木材内部への急速な浸透ではなく、密度の高い(未含浸部分の少ない)浸透で木材深部まで、12時間の加工時間で充填する。従って、改質薬液の注入後、素早く昇温して改質液を活性化することが重要である。なお、改質薬液の加圧力は、木材の変形や破壊の起こらない5kg/cm以下の含浸処理となり、含浸釜の耐圧設計も5kg/cm以下でよい。
《含浸工程》
図3の含浸工程においては、上述の加圧工程後にその加圧状態を維持しながら木材20aの内部に改質薬液50bを含浸する。なお、第2含浸釜20における含浸工程においては、第2含浸釜20が具備するヒーターを用いて改質薬液50bを50℃〜90℃まで段階的に昇温しながら木材10aの内部に改質薬液50bを含浸する。また、本実施形態においては、この含浸工程の駆動中に駆動部100cの各装置と第2含浸釜20とを切り離す(管路を閉鎖する)。また、第2含浸釜20における《回収工程》、《取出工程》、《水切り養生工程》、《乾燥工程》、及び、《熱処理工程》については、上記第1含浸釜10に対する説明と同様であり省略する。なお、本実施形態における「含浸操作」の詳細及び加圧状態の維持については後述する第1含浸釜10に対する説明と同様であり省略する。
ここで、多機能小型含浸装置の駆動部の運転状況を示す図6Aにおいて、上から二段目の図は、第2含浸釜20における加工時間の推移(図示右方向への時間軸)を示している。ここで、記号T2で示す部分が駆動部100cの各装置が第2含浸釜20に対して駆動している時間帯である。
なお、図6Aにおいて、上から三段目の図は、第3含浸釜30における加工時間の推移(図示右方向への時間軸)を示している。記号C2の部分で、駆動部100cの各装置が第2含浸釜20から切り離され、第3含浸釜30と連結されたことを示している。この状態において、駆動部100cの各装置が第3含浸釜30に対して駆動している(記号T3参照)。これに対して、図6Bは、従来の大型含浸装置の駆動部の運転状況を示す図である。図6Bにおいて、駆動部は1台の大型含浸釜に対してのみ駆動し(記号T5参照)、その後は間欠的な稼働(記号T6参照)を行っている。
以下、同様にして記号C3の部分で、駆動部100cの各装置が第3含浸釜30から切り離され、第4含浸釜40と連結される。このことにより、含浸釜部100aが備える4台の含浸釜10、20、30、40において、それぞれ独立した条件で並行して各含浸工程が駆動することができる。
次に、第3含浸釜30における改質木材の製造方法について図4を用いて説明する。第3含浸釜30は、上述のように、「染色木材」を製造するための常圧容器である。図4において、第3含浸釜30における改質木材の加工について、各工程に沿って説明する。なお、本実施形態においては、第3含浸釜30の稼働時間(加工時間)は、5時間であった。
《充填工程》
図4の充填工程においては、第3含浸釜30の内部に改質用の木材30aを充填する。本実施形態においては、第3含浸釜30も床材、壁材、扉材、家具材などの高級木材を対象とする。従って、第3含浸釜30の容量を小さくして含浸釜の内部に桟木などを必要とせず、木材を効率的に充填して均一な高度改質を可能とする。なお、本実施形態においては、木材30aとして、厚35mm、巾110mm、長さ2010mmのスギ又はヒノキを使用した。
ここで、第3含浸釜30の充填工程と並行して、薬液貯槽50及び駆動部100cの各装置の各配管を洗浄しておく。薬液貯槽50及び駆動部100cの各装置は、4台の含浸釜10、20、30、40に対して、効率よく1台のみで対応するためである。
《連結工程》
図4の連結工程においては、駆動部100cの各装置と第3含浸釜30とを連結する。なお、実際には各装置は配管で連結しており、ここでいう連結工程とは、必要な時に電磁弁が開閉して各装置が連通することをいう。具体的には、空気配管33を介して真空ポンプ60を第3含浸釜30に連通する。また、薬液配管32を介して給液ポンプ70及び加圧ポンプ80を第3含浸釜30に連通する。なお、第3含浸釜30は常圧釜であり加圧ポンプ80を必要としないが、本実施形態においては薬液配管によって給液ポンプ70と連通している。ここで、駆動部100cの給液ポンプ70及び加圧ポンプ80は、薬液配管52を介して薬液貯槽50と連通している。
なお、図4においては、空気配管33及び薬液配管32を簡略化して1本の配管として記載する。また、空気配管33及び薬液配管32が具備する各電磁弁を包含する電奇弁Vとして記載する。なお、駆動部100cの各装置と第1含浸釜10及び第2含浸釜20とは切り離されているが、第1含浸釜10及び第2含浸釜20の含浸工程はそれぞれ独立して稼働中である。
《薬液準備工程》
図4の薬液準備工程においては、薬液貯槽50に「染色木材」用の染色薬液50cを調液する。本実施形態においては、「染色木材」用の染色薬液50cとして染料及び染色助剤の種類及び使用濃度を限定するものではなく、どのような染料及び染色助剤をどのような量で使用してもよい。染料としては、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料、アゾ染料、硫化染料などを挙げることができる。また、染色助剤としては、例えば、界面活性剤、緩衝剤、分散剤などを挙げることができる。なお、染色薬液50cは、予め調液して予備貯槽に維持しておいてもよい。
《減圧工程》
図4の減圧工程においては、まず、第3含浸釜30の内部を外部環境と気密的に遮蔽する。次に、制御手段による制御のもと真空ポンプ60を作動して空気配管33を介して第3含浸釜30の内部を減圧する。このことにより、第3含浸釜30の内部に充填された木材30aが含有する空気が排除され、含浸効率が向上する。なお、第3含浸釜30は常圧釜であり、その減圧程度は上記第1含浸釜10及び第2含浸釜20よりも軽度である。
《給液工程》
図4の給液工程においては、まず、空気配管33を閉鎖する。次に、第3含浸釜30の内部の減圧状態を維持したまま、制御手段による制御のもと給液ポンプ70を作動する。このことにより、薬液配管32を介して薬液貯槽50に調液した染色薬液50cを第3含浸釜30の内部に供給する。なお、第3含浸釜30は常圧釜であり、減圧程度後の加圧工程を必要としない。
《含浸工程》
図4の含浸工程においては、第3含浸釜30が具備するヒーターを用いて染色薬液50cを40℃〜90℃に加熱しながら木材30aの内部に染色薬液50cを含浸する。このとき、80℃以上において染料と木材成分の化学結合反応を行うため、含浸最終30分〜60分で行うことが好ましい。なお、本実施形態においては、この含浸工程の駆動中に駆動部100cの各装置と第3含浸釜30とを切り離す(管路を閉鎖する)。なお、第3含浸釜30における《回収工程》、《取出工程》、《水切り養生工程》、《乾燥工程》、及び、《熱処理工程》については、上記第1含浸釜10に対する説明と同様であり省略する。
ここで、多機能小型含浸装置の駆動部の運転状況を示す図6Aにおいて、上から三段目の図は、第3含浸釜30における加工時間の推移(図示右方向への時間軸)を示している。ここで、記号T3で示す部分が駆動部100cの各装置が第3含浸釜30に対して駆動している時間帯である。
なお、図6Aにおいて、上から四段目の図は、第4含浸釜40における加工時間の推移(図示右方向への時間軸)を示している。記号C3の部分で、駆動部100cの各装置が第3含浸釜30から切り離され、第4含浸釜40と連結されたことを示している。この状態において、駆動部100cの各装置が第4含浸釜40に対して駆動している(記号T4参照)。これに対して、図6Bは、従来の大型含浸装置の駆動部の運転状況を示す図である。図6Bにおいて、駆動部は1台の大型含浸釜に対してのみ駆動し(記号T5参照)、その後は間欠的な稼働(記号T6参照)を行っている。
次に、第4含浸釜40における改質木材の製造方法について図5を用いて説明する。第4含浸釜40は、上述のように、第3含浸釜30と同様に「染色木材」を製造するための常圧容器である。但し、本実施形態においては、「染色木材」ではなく「漂白木材」を製造するために使用する。図5において、第4含浸釜40における改質木材の加工について、各工程に沿って説明する。なお、本実施形態においては、第4含浸釜4の稼働時間(加工時間)は、5時間であった。
《充填工程》
図5の充填工程においては、第4含浸釜40の内部に改質用の木材40aを充填する。本実施形態においては、第4含浸釜40も床材、壁材、扉材、家具材などの高級木材を対象とする。従って、第4含浸釜40の容量を小さくして含浸釜の内部に桟木などを必要とせず、木材を効率的に充填して均一な高度改質を可能とする。なお、本実施形態においては、木材40aとして、厚2mm、巾110mm、長さ2010mmのスギ又はヒノキを使用した。
ここで、第4含浸釜40の充填工程と並行して、薬液貯槽50及び駆動部100cの各装置の各配管を洗浄しておく。薬液貯槽50及び駆動部100cの各装置は、4台の含浸釜10、20、30、40に対して、効率よく1台のみで対応するためである。
《連結工程》
図5の連結工程においては、駆動部100cの各装置と第4含浸釜40とを連結する。なお、実際には各装置は配管で連結しており、ここでいう連結工程とは、必要な時に電磁弁が開閉して各装置が連通することをいう。具体的には、空気配管43を介して真空ポンプ60を第4含浸釜40に連通する。また、薬液配管42を介して給液ポンプ70及び加圧ポンプ80を第4含浸釜40に連通する。なお、第4含浸釜40は常圧釜であり加圧ポンプ80を必要としないが、本実施形態においては薬液配管によって給液ポンプ70と連通している。ここで、駆動部100cの給液ポンプ70及び加圧ポンプ80は、薬液配管52を介して薬液貯槽50と連通している。
なお、図5においては、空気配管43及び薬液配管42を簡略化して1本の配管として記載する。また、空気配管43及び薬液配管42が具備する各電磁弁を包含する電奇弁Vとして記載する。なお、駆動部100cの各装置と第1含浸釜10、第2含浸釜20及び第3含浸釜30とは切り離されているが、第1含浸釜10、第2含浸釜20及び第3含浸釜30の含浸工程はそれぞれ独立して稼働中である。
《薬液準備工程》
図5の薬液準備工程においては、薬液貯槽50に「漂白木材」用の漂白薬液50cを調液する。本実施形態においては、「漂白木材」用の漂白薬液50cとして漂白剤及び漂白助剤の種類及び使用濃度を限定するものではなく、どのような漂白剤及び漂白助剤をどのような量で使用してもよい。漂白剤としては、例えば、過酸化水素や次亜塩素酸ナトリウム、過炭酸ナトリウムなどを挙げることができる。なお、漂白薬液50cは、予め調液して予備貯槽に維持しておいてもよい。
《減圧工程》
図5の減圧工程においては、まず、第4含浸釜40の内部を外部環境と気密的に遮蔽する。次に、制御手段による制御のもと真空ポンプ60を作動して空気配管43を介して第4含浸釜40の内部を減圧する。このことにより、第4含浸釜40の内部に充填された木材40aが含有する空気が排除され、含浸効率が向上する。なお、第4含浸釜40は常圧釜であり、その減圧程度は上記第1含浸釜10及び第2含浸釜20よりも軽度である。
《給液工程》
図5の給液工程においては、まず、空気配管43を閉鎖する。次に、第4含浸釜40の内部の減圧状態を維持したまま、制御手段による制御のもと給液ポンプ70を作動する。このことにより、薬液配管42を介して薬液貯槽50に調液した漂白薬液50cを第4含浸釜40の内部に供給する。なお、第4含浸釜40は常圧釜であり、減圧程度後の加圧工程を必要としない。
《含浸工程》
図5の含浸工程においては、加圧は行わず、化学反応における気体発生に備え常圧を維持しながら含浸する。含浸は、第4含浸釜40が具備するヒーターを用いて漂白薬液50cを40℃〜90℃に加熱しながら木材40aの内部に漂白薬液50cを含浸し漂白する。本実施形態においては、この含浸工程の駆動中に駆動部100cの各装置と第4含浸釜40とを切り離す(管路を閉鎖する)。なお、第4含浸釜40における《回収工程》、《取出工程》、《水切り養生工程》、《乾燥工程》、及び、《熱処理工程》については、上記第1含浸釜10に対する説明と同様であり省略する。
ここで、多機能小型含浸装置の駆動部の運転状況を示す図6Aにおいて、上から四段目の図は、第4含浸釜40における加工時間の推移(図示右方向への時間軸)を示している。ここで、記号T4で示す部分が駆動部100cの各装置が第4含浸釜40に対して駆動している時間帯である。
なお、図6Aにおいて、駆動部100cの各装置が第4含浸釜40に対して駆動している時間帯においても、第1含浸釜10、第2含浸釜20及び第3含浸釜30の含浸工程はそれぞれ独立して稼働中である。このように、駆動部100cが備える1台の真空ポンプ60、1台の給液ポンプ70、及び、1台の加圧ポンプ80は、含浸釜部100aが備える4台の含浸釜10、20、30、40に対して、それぞれ独立した条件で駆動することができる。
よって、本実施形態においては、市場で要求される高度な品質を満足する改質木材を製造することができ、多品種少量、短納期、コストダウンが可能で、且つ、安価な装置価格を有する多機能小型含浸装置を提供することができる。
次に、第1含浸釜10における「含浸操作」の詳細及び加圧状態の維持について説明する。図7は、本実施形態に係る多機能小型含浸装置において第1含浸釜の稼働状態を示す工程図である。図7において、第1含浸釜10による「寸法安定木材」の加工時間は12時間である。図7の横軸は、加工時間の推移(図示右方向への時間軸)を示している。また、図7の縦軸は、第1含浸釜10の内部の圧力であり、図示上方に加圧、下方に減圧を示している。
まず、駆動部100cの各装置(真空ポンプ60、給液ポンプ70、及び、加圧ポンプ80)と第1含浸釜10とが連結した状態で減圧工程が開始する。減圧工程においては、真空ポンプ60の駆動により第1含浸釜10の内部の圧力が20torr(2.67kPa)まで減圧する。この状態を約1時間維持して、木材10aが含有する空気を排除する。このことにより、含浸効率が向上する。なお、本実施形態に係る第1含浸釜10は、従来の大型含浸装置に比べ容量が小さく、減圧効率が良い。よって、木材の種類にもよるが、木材中の空気の95%程度を排除することも可能である。
次に、第1含浸釜10の内部の減圧状態を維持したまま、給液工程が開始する。給液工程においては、給液ポンプ70の駆動により所定量の改質薬液50aを第1含浸釜10の内部に供給する。更に、加圧工程において、加圧ポンプ80の駆動により第1含浸釜10の内部の改質薬液50aを加圧する。図7においては、加圧が4kg/cm2(約0.4MPa)、6kg/cm2(約0.6MPa)を経て10kg/cm2(約1MPa)まで段階的に行われる。このように、第1含浸釜10に対する駆動部100cの駆動は、約3時間である(図7参照)。
次に、駆動部100cの各装置(真空ポンプ60、給液ポンプ70、及び、加圧ポンプ80)と第1含浸釜10とが切り離される。この状態において、第1含浸釜10の内部の加圧状態を加圧ポンプ80の稼働によって維持することができない。そこで、第1含浸釜10の含浸工程においては、独立して駆動するヒーター11(図1参照)によって、改質薬液50aを20℃〜60℃まで段階的に昇温しながら第1含浸釜10の内部の加圧状態を維持する。
具体的には、給液工程で供給された改質薬液50aの液温は20℃であった。この状態で加圧ポンプ80の駆動により、第1含浸釜10の内部の圧力が10kg/cm2(約1MPa)まで加圧された。この状態で、徐々に圧力が低下することに伴って、制御手段による制御のもと、ヒーター11の駆動により改質薬液50aの液温を40℃、50℃、60℃と段階的に昇温して、第1含浸釜10の内部の圧力を10kg/cm2(約1MPa)に維持することができる。このことにより、安定した含浸工程が維持できる。
これに対して、従来の大型含浸装置における含浸工程の詳細及び加圧状態の維持について説明する。図8は、従来の大型含浸装置において大型含浸釜の稼働状態を示す工程図である。図8においても、大型含浸釜による「寸法安定木材」の加工時間は12時間である。図8の横軸は、加工時間の推移(図示右方向への時間軸)を示している。また、図8の縦軸は、大型含浸釜の内部の圧力であり、図示上方に加圧、下方に減圧を示している。
大型含浸装置においては、駆動部の各装置(真空ポンプ、給液ポンプ、及び、加圧ポンプ)と1台の大型含浸釜とが常に連結した状態にある。この状態で減圧工程が開始する。減圧工程においては、真空ポンプの駆動により大型含浸釜の内部の圧力が50torr(6.67kPa)まで減圧する。この状態を約2時間維持して、木材10aが含有する空気を排除する。このように、大型含浸装置においては、含浸釜の容量が大きく、内部に充填する木材が長大であることもあり良好な減圧度が得られず、木材中の空気の排除に長時間を要する。よって、木材の種類にもよるが、最大でも木材中の空気の80%程度しか排除することができない。
次に、大型含浸釜の内部の減圧状態を維持したまま、給液工程が開始する。給液工程においては、給液ポンプの駆動により所定量の改質薬液を大型含浸釜の内部に供給する。更に、加圧工程において、加圧ポンプの駆動により大型含浸釜の内部の改質薬液を加圧する。図8においては、加圧が2kg/cm2(約0.2MPa)、4kg/cm2(約0.4MPa)、6kg/cm2(約0.6MPa)8kg/cm2(約0.8MPa)、10kg/cm2(約1MPa)を経て15kg/cm2(約1.5MPa)まで段階的に行われる。この加圧段階においても長時間を要し、大型含浸釜に対する駆動部の駆動は、約5.5時間である(図8参照)。
この大型含浸装置においては、駆動部の各装置と1台の大型含浸釜とが常に連結した状態にある。従って、給液工程で供給された改質薬液の液温を30℃に維持したまま、加圧ポンプの間欠的な駆動により大型含浸釜の内部の加圧状態を維持している(図6B参照)。よって、1台の大型含浸釜に対して1組の駆動部が駆動するが、その駆動効率が悪く大型含浸釜の大容量により生産性を維持している。このような、大型含浸装置においては、多品種少量、短納期、コストダウンを実現することができない。
このように、本実施形態に係る多機能小型含浸装置100の第1含浸釜10における「含浸操作」と従来の大型含浸装置の大型含浸釜における「含浸操作」とを比較した。いずれも12時間の稼働時間であるが、その中で駆動部の駆動状況が大きく異なっている。
本実施形態においては、第1含浸釜10に対する3時間の駆動の後、第2含浸釜20の駆動を3時間行っている(図6A参照)。その後、同様に第3含浸釜30及び第4含浸釜40の駆動をそれぞれ3時間行っている。即ち、第1含浸釜10の12時間の加工時間の間に4台の含浸釜を駆動でき、駆動部の駆動効率が非常に高い。また、この間には4台4種類の含浸工程が進行している(図6A参照)。これに対して、大型含浸装置の駆動部は、1台の大型含浸釜に対して5.5時間の連続駆動ののち間欠駆動が繰り返され、駆動部の駆動効率が悪い。また、この間には1台1種類の含浸工程のみが進行している。
一方、本実施形態に係る多機能小型含浸装置100においては、小型の含浸釜を使用することから、減圧度(20torr)が従来の大型含浸装置(50torr)に比べ良好である。このことにより、減圧時間の短縮と木材中の空気の排除が良好となり、高度な品質の改質木材を効率よく生産することができる。更に、これらのことから装置価格も安価で、生産性の高い含浸装置である。
以上のように、本実施形態においては、市場で要求される高度な品質を満足する改質木材などを製造することができ、多品種少量、短納期、コストダウンが可能で、且つ、安価な装置価格を有する多機能小型含浸装置を提供することができる。また、本実施形態においては、この多機能小型含浸装置を用いた改質木材の製造方法を提供することができる。
なお、本発明の実施にあたり、上記実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記実施形態においては、1台の高圧釜と1台の中圧釜と2台の常圧釜の計4台の含浸釜を使用するものであるが、これに限定するものではなく、任意の耐圧性の含浸釜を2台以上どのように組み合わせるようにしてもよい。
(2)上記実施形態においては、1台のマイクロコンピュータを使用して駆動部の各装置及び電磁弁、並びに、各含浸釜のヒーターを制御するものであるが、例えば、駆動部の各装置及び電磁弁を制御する正制御部と、各含浸釜のヒーターを制御する副制御部とに分けて、複数台のマイクロコンピュータを使用するようにしてもよい。
(3)上記実施形態においては、改質木材の製造を目的とするものであるが、これに限るものではなく、木材以外の材料に各種薬液を含浸する際に使用することができる。
(4)上記実施形態においては、次の含浸釜への木材の充填工程の際に薬液貯槽と配管を洗浄するものであるが、これに限るものではなく、薬液貯槽と配管とが切り離され(閉鎖され)ていれば、いずれの工程中において洗浄を実施するようにしてもよい。例えば、含浸釜が減圧工程にあるときには、薬液貯槽と配管とが切り離され(閉鎖され)ており、この時に洗浄を行うようにしてもよい。
(5)上記実施形態においては、各含浸釜がそれぞれ独立した薬液配管及び空気配管を具備するものであるが、これに限るものではなく、複数の含浸釜で薬液配管及び空気配管を共有するようにしてもよい。例えば、図1において、高圧で使用する含浸釜10は、薬液配管12及び空気配管13を独立して具備し、他の3つの含浸釜20、30、40は、1経路の薬液配管22及び1経路の空気配管23を共有するようにしてもよい。このことにより、設備費用が更に軽減でき、安価な装置価格を有する多機能小型含浸装置を提供することができる。
100…多機能小型含浸装置、
100a…含浸釜部、100b…薬液調整部、100c…駆動部、
10、20、30、40…含浸釜、
10a、20a、30a、40a…木材、
12、22、32、42、52、72、82…薬液配管、
13、23、33、43、63…空気配管、
50…薬液貯槽、11、51…ヒーター、
50a、50b、50c、50d…含浸用薬液、
53…攪拌機、54…液面センサ、55…液面計、
60…真空ポンプ、70…給液ポンプ、80…加圧ポンプ、
C1、C2、C3…切り離し部分、T1〜T6…駆動時間帯。

Claims (7)

  1. 含浸釜部と、薬液調整部と、駆動部と、制御手段とを有して被含浸材料に含浸用薬液を含浸する小型含浸装置であって、
    前記含浸釜部は、薬液配管により前記薬液調整部が備える薬液貯槽と連通する2以上の含浸釜を備え、当該含浸釜は、それぞれ昇温手段を備え、
    前記駆動部は、前記2以上の含浸釜に作動する1つの減圧手段と1つの加圧手段と1つの給液手段とを備え、
    前記制御手段による制御のもと、前記2以上の含浸釜がそれぞれ独立した条件で並行して駆動することを特徴とする多機能小型含浸装置。
  2. 前記2以上の含浸釜は、耐圧10kg/cm以上で使用する高圧釜、耐圧5kg/cm以上で使用する中圧釜、及び、大気圧で使用する低圧釜からなることを特徴とする請求項1に記載の多機能小型含浸装置。
  3. 前記2以上の含浸釜は、耐圧10kg/cm以上で使用する高圧釜、及び、大気圧で使用する低圧釜からなることを特徴とする請求項1に記載の多機能小型含浸装置。
  4. 前記2以上の含浸釜は、耐圧5kg/cm以上で使用する中圧釜、及び、大気圧で使用する低圧釜からなることを特徴とする請求項1に記載の多機能小型含浸装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載の多機能小型含浸装置を使用して、被含浸材料に含浸用薬液を含浸する改質材料の製造方法であって、
    前記含浸釜部が備える1つの含浸釜に対して被含浸材料を充填する充填工程と、
    前記含浸釜と駆動部とを連結する連結工程と、
    前記薬液調整部が備える薬液貯槽に含浸用薬液を準備する薬液準備工程と、
    前記給液手段により前記含浸釜に前記薬液貯槽から薬液を給液する給液工程と、
    前記制御手段による制御のもと前記含浸釜の内部で前記被含浸材料に前記含浸用薬液を含浸する含浸工程とを有して、
    前記含浸工程の駆動中に前記含浸釜と前記駆動部とを切り離し、前記含浸釜部が備える他の含浸釜に対して、前記各工程を同様に行うことにより、前記含浸釜部が備える2以上の含浸釜において、それぞれ独立した条件で並行して各含浸工程が駆動することを特徴とする改質材料の製造方法。
  6. 前記含浸釜部が備える2以上の含浸釜のうち、少なくとも1つの含浸釜に対して、
    前記減圧手段により当該含浸釜の内部を減圧する減圧工程と、
    前記加圧手段により当該含浸釜の内部を加圧する加圧工程とを有して、
    当該加圧工程後に前記含浸釜と前記駆動部とを切り離した後の前記含浸工程中において、当該含浸釜が備える昇温手段により、当該含浸釜の内部の含浸用薬液を昇温して、当該含浸釜の内部の加圧状態を維持することを特徴とする請求項5に記載の改質材料の製造方法。
  7. 前記含浸工程が終了した前記含浸釜に対して、当該含浸釜の内部から残余の含浸用薬液を前記薬液貯槽に回収する回収工程と、
    前記含浸釜の内部から前記被含浸材料を取り出す取出工程と、
    当該被含浸材料を水切り養生する水切り養生工程と、
    当該水切り養生工程後の被含浸材料を乾燥する乾燥工程と、
    必要により当該被含浸材料を熱処理する熱処理工程とを有していることを特徴とする請求項5又は6に記載の改質材料の製造方法。
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