JP2017150815A - 臨床検査キット及び化学物質検出方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】検出対象の化学物質を捕捉するための分子鋳型ポリマー及びその製造方法と、その分子鋳型ポリマーを用いて当該化学物質を迅速に、高感度で、且つ低コストで識別する化学物質検出方法及び検出装置を提供する。
【解決手段】ステロイドホルモンの分子鋳型ポリマー微粒子であって、前記ステロイドホルモンと相互作用するポリマーからなる分子鋳型ポリマー微粒子。ポリマーは、重合単位にステロイドホルモンと相互作用する官能基を2つ以上有する含むことが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、分子鋳型ポリマーを用いた臨床検査キット及び化学物質検出方法に関する。
臨床検査、環境、衛生、防災等の分野で管理すべき化学物質は非常に多岐に渡り、その種類も極めて多い。例えば、ストレス疾患マーカーであるホルモン分子や、環境ホルモン問題における内分泌攪乱物質、工場跡地の土壌汚染物質、建築資材から発生するアスベスト、食品や容器、もしくはそれらの製造装置から発生する異臭や異味の原因となる化学物質等が挙げられる。そのような化学物質の多くは低分子であり、通常測定物中に極めて微量しか含まれていない。しかしながら、それらの化学物質を迅速に、また高感度に検出することは各分野での安全性等を確保する上で極めて重要な作業である。
現在の測定技術は、高度に洗練された分離技術、濃縮技術、分析手法の選択と組み合わせ等によって、ppt(1兆分の1)レベル以下であっても様々な化学物質の分析が可能となっている。そのように微量なレベルの分析の場合には、通常、検出対象物に合わせた最適な分離、濃縮、定性分析、及び定量分析等の各工程を経なければならない。必然的にそれは、多大な労力と多くの時間、そして高い分析コストを必要とすることになる。したがって、このような複雑多数の工程を必要とする分析手法は研究室内での測定手法として特化したものであり、測定現場における手法としては適していない。
測定現場で要求されるのは化学物質をその場で検出できる測定手法である。センサー技術は、そのようなニーズに基づいて分析技術とは異なる技術を発展させてきた。センサー手法では、化学物質の簡易かつ迅速な検出やモニタリングが可能であり、加えて測定装置の小型化も容易である。
本技術分野の背景技術として、特許文献1が挙げられる。この文献には、「液体サンプル中の小分子、ポリペプチド、タンパク質、細胞及び感染症作用物質を含む標的分子の高速で簡易な定量用のデバイス、方法及びキットは、流体サンプル中のこれらの実体の実時間計測が可能であり、高い選択性、高い感度、簡単な操作性、低コスト及び携帯可能である。デバイス、方法及びキットはまた、少なくとも幾つかの実施例で、貫流又は側流デバイスでMIPの使用を提供する」と記載されている(要約参照)。この文献で記されているMIPとは、分子鋳型ポリマー(molecularly imprinted polymer)のことであり、捕捉したい化学物質に応じて合成する手法は広く知られている。
さらに、特許文献2では、捕捉・検出したいステロイドホルモンに対する化学物質検出装置について言及している。特に、特許文献2中の段落0053では、標識化ターゲットと分子鋳型からなる化学物質検出装置の概念について言及し、「例えば検体中における125μM以下の濃度のターゲットを検出することができる」と述べている。
WO2009/083975 A2 WO2013/046826 A1
現在のセンサー技術は、分析技術のように高感度で分子の組成解析を行うことができるまでには至っていない。しかし、前述の各分野で検出対象となる化学物質は、測定物中に存在することすら不明の状態から出発することが一般的である。また、たとえ存在しても通常その量は極めて微量である。したがって、濃縮や分離を組み合わせることが測定上必須となるが、そのような工程を経る測定手法は、研究室内での分析手法に他ならず、前述のように測定現場での手法としては馴染まない。また、前述のように現在のセンサー技術の分析能力では、技術的に対応できないという問題があった。
本発明者らは、前述の問題を解決するために、分子鋳型技術に着目した。すなわち、化学物質を選択的に捕捉することにより、濃縮や分離の工程を必要とせずに、目的の化学物質を検出するセンサー技術を開発するというものである。
すなわち、本発明の化学物質検出方法及び検出装置は、分子鋳型ポリマーを利用して作製された捕捉体により化学物質を捕捉することで検出を行うものである。
本発明は、医療関係者(医者、臨床検査技師、看護士)はもちろんのこと、家庭の一般消費者にとっても使い勝手の良い検査キットを提供する。特に、ストレス疾患と密接に関わるコルチゾール等のステロイドホルモンを高感度に検出することで、ストレス疾患の予兆を早期に診断し、予防と早期治療に貢献することができる。
本発明の構成の一例は、検体を供給する検体注入部、標識化された特定種類の分子と検体を混合する混合部を有する。好ましくは、混合部にはあらかじめ、標識化された特定種類の分子を配置しておく。また、混合部を通過した検体中の特定種類の分子及び標識化された特定種類の分子を分子鋳型ポリマーにより捕捉する捕捉部、検体注入部から捕捉部へ検体が移動する経路に配置され、検体中の特定種類の分子以外の物質の少なくとも一部の、分子鋳型ポリマーへの吸着を抑制する抑制成分を含む検体移動部、を備える臨床検査キットである。
本発明の別の一例は、検体を供給する検体注入部、供給された検体中の特定種類の分子を分子鋳型ポリマーにより捕捉する捕捉部を備える。また、検体注入部から捕捉部へ検体が移動する経路に配置され、検体中の特定種類の分子以外の物質の少なくとも一部の、分子鋳型ポリマーへの吸着を抑制する抑制成分を含む検体移動部、を備え、捕捉部に存在する分子鋳型ポリマーの少なくとも一部は、標識化された特定種類の分子を既に捕捉した状態である臨床検査キットである。
本発明の分子鋳型ポリマーは、微粒子表面に分子鋳型ポリマーが被着されたコアシェル型分子鋳型ポリマー微粒子を用いることが望ましい。
また、臨床検査キットの構成は、板状またはシート状の支持シートに、種々の機能を有する板またはシート状の部材をもって構成することが望ましい。
本発明の他の側面は、板状またはシート状の支持シート、支持シート上に配置されたサンプルパッドおよび吸収パッド、サンプルパッドおよび吸収パッドの間に配置された捕捉・検出部を有するキットを用いる検査方法である。この捕捉・検出部には、特定種類の分子を捕捉する分子鋳型ポリマーが配置される。また、サンプルパッドに供給された液状の検体が、毛細管現象によって吸収パッドに移動するように構成される。サンプルパッドと捕捉・検出部の検体の移動経路には、特定種類の分子以外の物質の少なくとも一部の、分子鋳型ポリマーへの吸着を抑制する非特異吸着抑制成分が配置されている。
このキットでは、競合法又は置換法によって検出感度を増強するように構成することができる。そのために、標識化された特定種類の分子を予め臨床検査キットに内包せしめる。検査時には、サンプルパッドに検査対象となる検体を供給し、検体はサンプルパッド、非特異吸着抑制成分、分子鋳型ポリマー、吸着パッド、をこの順序で経由する。標識化された特定種類の分子は、検体の供給後に臨床検査キットにおいて検体と混合されるか、あるいは、検体の供給前に分子鋳型ポリマーに捕捉されている。分子鋳型ポリマーにより捕捉された、標識化された特定種類の分子の状態を検出することにより、検体中の特定種類の分子を定量することができる。
本発明の化学物質検出方法及び検出装置によれば、特定のポリマーからなる分子鋳型によって、濃縮工程や分離工程を必要とすることなく検出すべき低分子、特にステロイドホルモンを選択的に検出することができる。
また、本発明の化学物質検出装置によれば、最も重要なセンサー部分に相当する分子捕捉部が小型化可能であることから、可搬性のある化学物質検出装置を提供することができる。
本発明の第1の実施形態に係る、化学物質検出装置の概念を説明するための縦断面図である。 分子鋳型ポリマーの代表的な製造方法を模式的に示す図である。 第1の実施形態による分子鋳型ポリマーの合成スキームを示す図である。 分子鋳型ポリマー微粒子の製造方法を模式的に示す図である。 コルチゾールの分子構造を示す図である。 イタコン酸の分子構造を示す図である。 コルチゾールとイタコン酸の相互作用を模式的に示す図である。 種々のステロイドホルモンの分子構造を示す図である。 実施例1に係るメタクリロイル化コルチゾールの分子構造を示す図である。 実施例2に係るコルチゾール誘導体の分子構造を示す図である。 実施例2に係るコルチゾール誘導体の分子構造を示す図である。 実施例3に係る化学物質検出装置の概念を説明するための縦断面図である。 実施例3に係る化学物質検出装置の概念を説明するための縦断面図である。 実施例3に係る化学物質検出装置の概念を説明するための縦断面図である。 実施例2のコルチゾールの検出結果を示すグラフである。 実施例2のコルチゾールの検出結果を示すグラフである。
本実施例は、コルチゾール等の低分子ターゲットを迅速、安価、高感度に検出するために、ターゲットに応じた分子鋳型ポリマー(MIP)を合成し、化学センサー構造に実装することで、上記課題を解決する。具体的には、例えば請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、本実施例に係る分子鋳型ポリマーは、「ステロイドホルモンの分子鋳型ポリマーであって、前記ステロイドホルモンと相互作用するポリマーと、蛍光標識化したステロイドホルモンを塗布した膜からなる化学センサーである」ことを特徴とする。
分子鋳型ポリマーの合成原理は1950年代頃から知られているものの、捕捉したい化学物質(ターゲット)に応じた合成原料、合成経路、反応時間、反応温度を綿密に検討する必要がある。よって、上記特許文献1に挙げられるようなポリマーを利用したデバイス構造は、原理としては提案できるが、実際にターゲットを高感度に捕捉するポリマーを作製するには、綿密な設計と合成、精製が必要となる。また、その化学センサーへの応用に関しても、綿密な設計、膜などの基材選定、実装(塗布など)が求められる。特許文献2では、チップ形態での検出装置について言及し、「例えば検体中における125μM以下の濃度のターゲットを検出することができる」と開示している。我々は、更なる低濃度のターゲットを検出するため、以下の発明の特徴を有する。(1)ターゲットを捕捉・検出するために、比表面積の大きい分子鋳型ポリマーをチップ上に固定化する。その際、所望の量を固定化する。(2)蛍光分子(発色分子、発色粒子、蛍光粒子、金属微粒子)などで標識化したターゲットをあらかじめチップに固定化する。その際、所望の量を固定化する。(3)検体中のターゲットと、標識化ターゲットを効率よく混合させ、捕捉・検出部位である分子鋳型ポリマーへ両者を効率よく展開させるため、添加剤を用いる。(4)捕捉・検出の効率化のため、検体中の夾雑物が捕捉・検出部位に付着するのを防止するための添加剤を、検体が通過する領域、分子鋳型ポリマーの領域にあらかじめ塗布・固定化しておく。上記の特徴を有する本実施例のさらなる詳細は以下に順次述べる。
モレキュラーインプリンティングによって作製される分子鋳型ポリマーは、様々なマトリクスを用いて構築することができる。本発明者らは、ストレス疾患に密接に関わるコルチゾール又はその誘導体等のステロイドホルモン分子に対するモレキュラーインプリンティングにおいて用いられるポリマーを見出した。
本実施例における分子鋳型ポリマーは、網目構造が適度な柔軟性を持ち、溶媒や環境に応じて膨潤・収縮する点で、ステロイドホルモンのインプリンティングに用いるマトリクスとして適している。すなわち、テンプレート分子によって形成される分子鋳型ポリマー内の認識部位は、テンプレート分子に近い大きさである必要がある。その一方で、重合後にテンプレート分子を除去したり、あるいは化学物質(ターゲット)が認識部位に再結合するためには、分子が網目構造内を移動できるよう、ある程度大きな空間が必要となる。このような相反する条件を満たすポリマー材料とその合成条件を見出した。特に、コルチゾール等のステロイドホルモンはステロイド骨格を持つため、分子が剛直であり、かつ水酸基等を持つため、モレキュラーインプリンティングの際に必要な、原料モノマーとの相互作用を形成することができる。特に本実施例では、原料モノマーの一部にコルチゾール等と2箇所で相互作用できるジカルボン酸誘導体を使用することで、高効率な捕捉を可能にする分子鋳型ポリマーの合成を図っている。
また、本実施例では、分子鋳型ポリマーの合成時に、ターゲットとなるコルチゾールの代わりに、コルチゾール分子の一部を変換して重合性置換基であるメタクリロイル化したコルチゾール誘導体を用いることで、分子鋳型ポリマーの原料となるモノマー分子と共有結合させることで、高効率な捕捉を可能にする分子鋳型ポリマーの合成を図っている。
加えて、臨床検査キットとしての高感度検出のためには、分子鋳型ポリマー表面を多数有することが必須である。特許文献2では、分子鋳型ポリマーを合成後に粉砕、分級する工程を経た分子鋳型ポリマーをチップに固定化している。我々は、更なる微粒子化による比表面積の増大を実施し、その分子鋳型ポリマー微粒子を備える検査チップを発明した。よって本実施例の化学物質検出方法は、捕捉したステロイドホルモンの検出感度を増強するように構成することによって高感度な検出能力を得るものである。
以下に、本発明を実施するための形態について説明する。なお、本発明はこれらの実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の態様で実施しうる。
図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
本発明の化学物質検出装置の一実施形態は、特定の化学物質を利用して形成した分子鋳型ポリマーを含む捕捉体をその表面に有する分子捕捉部と、当該分子捕捉部で捕捉された化学物質を定量する捕捉量計測部とから構成されている。前記捕捉体は、検体中の前記特定の化学物質(ターゲット)をその化学物質が有する特定分子構造に依存して捕捉することができる。本実施形態の化学物質検出装置は、この技術を基本として化学物質の分子認識を行うことを特徴とする。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る、臨床検査キットに用いる化学物質検出装置の概念を説明するための縦断面図である。図1に示すように、本実施形態の化学物質検出装置は、例えばポリエスチレンからなる支持シート21と、例えばニトロセルロース、樹脂、ガラス、シリカゲル、紙、あるいは金属からなるメンブレン22と、例えばガラスファイバからなるコンジュゲートパッド23と、例えばセルロースからなるサンプルパッド24と、捕捉・検出部25と、例えばガラスファイバからなる吸収パッド26を備える。メンブレン22、コンジュゲートパッド23、サンプルパッド24、捕捉・検出部25、吸収パッド26は、検体が液体の場合は、毛細管現象で移動できるように、繊維質の材質が望ましい。図1の例では、支持シート21とコンジュゲートパッド23およびサンプルパッド24の間には、空隙が存在している。別の例としては、空隙部をガラス、樹脂、セラミックのような部材で埋めてもよい。このようにすれば強度の向上が期待できる。また、これら部材が非吸水性の部材であれば、検体が効率的に捕捉・検出部25以降に搬送されるので、望ましい。
以下、各構成について詳細に説明する。まず、支持シート21の片側表面には、支持シート21とほぼ同じ大きさのメンブレン22が貼り付けられる。その密着性能を向上させるため、支持シート21とメンブレン22の間には、接着剤が存在してもよい。
メンブレン22上には、検体が流れる順に従って、次の順で構造部分が構成される。まず、メンブレン22の一端側には、コンジュゲートパッド23が貼り付けられ、そのコンジュゲートパッド23上には、サンプルパッド24が貼り付けられる。このコンジュゲートパッド23には、あらかじめ所望の量の標識化ターゲット分子が塗布されている。また、その際、検体と標識化ターゲット分子が効率よく、混合されるように、添加物を備えていてもよい。
また、メンブレン22上には、コンジュゲートパッド23が貼り付けられていない部分に、分子鋳型ポリマーが塗布、固定化された捕捉・検出部25が配置されている。分子鋳型ポリマーを含む液体をメンブレンに塗布した場合、液体はメンブレン22内部に浸透する場合がある。このとき、分子鋳型ポリマーは、メンブレン22表面だけでなく、メンブレン22内部にも拡散して配置される。ついで、メンブレン22上の、何も貼り付けられていない部分を介した先には、吸収パッド26が供えられる。
したがって、実施の検体の分析の際には、検体は、(1)サンプルパッド24に塗布または滴下または固定化され、その後、(2)コンジュゲートパッド23で、検体と標識化ターゲット分子が混合され、両者が(3)メンブレン22を通過し、(4)分子鋳型ポリマーで捕捉・検出される。更にここで想定される検体の多くは液体のため、吸水効率を上げ、検出効率を向上させるため、(5)吸収パッド26で吸収される。
更に、検出効率をあげるために、検体をサンプルパッド24に塗布後に、サンプルパッドが濡れている状態、乾燥している状態とを問わずに、サンプルパッドに後から、緩衝液や水、生理食塩水、アルコールなどの有機溶媒(キットの基材や接着成分を破壊しないもの)を送液してもよい。
本実施例の特徴は、上記のように(1)〜(5)の工程を経て、検体が検査される工程を実現する構造にある。ここで、「検体」とは、測定の対象となる液体又は固体をいう。
上記で述べたとおり、メンブレン22上には、あらかじめ所望の分量の分子鋳型ポリマーを塗布乾燥して固定化しておく。化学物質の検出高感度化のため、分子鋳型ポリマーの表面積は大きいほど好適である。したがって、分子鋳型ポリマーを合成後に得られた紛体を粉砕し、分級することで、粒径が小さくかつ揃った分子鋳型ポリマーを使用した。また、望ましくは、更に粒径を小さくするため、実施例1で述べる方法で、サブミクロンオーダーの粒径を持つ微粒子の表面に分子鋳型ポリマーを被覆した粒子を用いた。この分子鋳型ポリマー粒子が塗布された領域が、ターゲット分子の捕捉・検出部25に相当する。
また、検出する対象である検体には、ターゲットがある場合とともに、検査のノイズ成分となる夾雑物等が含まれる。当然のことであるが、検体によっては、ターゲットを含まない場合や、より多くの種類の夾雑物を含むことがある。
そこで、我々は、捕捉・検出部位である分子鋳型ポリマーに、夾雑物が付着しないよう、非特異吸着抑制成分をあらかじめメンブレン上に塗布した。
支持体シート21の材質は、一定の形状を保持できるものであれば特には限定されない。具体的には、プラスチック、金属、ガラス、合成ゴム、セラミックス、耐水処理や強化処理を施した紙、又はそれらの組み合わせ等が挙げられる。
捕捉とは、結合や相互作用によって捉えることをいう。当該捕捉は、直接的捕捉、間接的捕捉のいずれも含む概念である。例えば、検出すべきターゲットの直接的な捕捉であっても良いし、分子捕捉部に固定された第二捕捉体を介して、検出すべきターゲットを間接的に捕捉しても良い。
本実施例の捕捉・検出部25は、ターゲットの捕捉体を兼ねている。本実施例では、特定のテンプレート分子を利用して形成した分子鋳型ポリマーを含むものであって、ターゲットとなる化学物質をそのターゲットが有する特定分子構造に依存して捕捉できるものである。当該捕捉体の材質は、特定分子構造に依存してターゲットを捕捉する機能を有するものであれば特に限定されない。例えば、タンパク質であっても良いし、ポリマーであっても良いし、また金属であっても良い。具体的には抗体や分子鋳型ポリマー等が該当する。
本実施例で捕捉・検出部25に使用する分子鋳型ポリマーの製造方法は、以下の通りである。
図2に、本実施形態に適用される、分子鋳型ポリマー12の代表的な作製原理を示す。まず、捕捉したいターゲット10と、このターゲット10に相互作用するモノマー原料A101、モノマー原料B102、及びモノマー原料C103との混合物中で重合反応を行い、ターゲット10の認識部位11を形成させる。その後、ターゲット10を洗浄等により除去することで、認識部位11を有する分子鋳型ポリマー(MIP)12を作製することができる。ここでは、認識部位11を形成するためのテンプレート分子としてターゲット10を使用した例を示したが、ターゲット10の代わりに、ターゲット10の誘導体や類似体を用いても良い。
例えば、まず、ターゲット又はターゲット類似の化学物質10の存在下で、そのターゲット等10とイオン結合や水素結合によって相互作用する機能性モノマーを、必要に応じて用いる他のモノマー成分と共に重合させ、ターゲット等10をポリマー内に固定する。その際、機能性モノマーと他のモノマー成分との共重合比は、各モノマー成分の種類等によって異なり特に限定されるものではない。例えば機能性モノマー:他のモノマー成分=1:16〜1:64(モル比)とすることができる。特に、1:32が望ましい。その後、洗浄によってポリマーから当該ターゲットを除去する。ポリマー中に残ったキャビティー(空間)はターゲットの形状を記憶すると共に、キャビティー内に固定されている機能性モノマーによって化学的認識能も備えている。
ターゲットとしては、本実施形態ではステロイドホルモンの例について説明するが、これに限定されず、常温常圧下で気化した状態、又は液体状態(溶媒中に溶解した場合等を含む)で存在する種々の物質が含まれる。例えば、揮発性化学物質、電解質、酸、塩基、糖質、脂質、タンパク質等が該当する。また、当該ターゲットには、常温常圧下では固体状態でのみ存在可能な物質であって、気体中もしくは液体中で微粒子として存在できる化学物質も含むものとする。分子捕捉部に対して腐蝕効果、溶解効果、変性効果等を有するターゲットは不適である。
ターゲットの分子量は、捕捉体が捕捉可能な分子量であれば特に限定はされないが、低分子化学物質の検出を主たる目的とする本実施例においては、数十から数百程度の低分子であることが好ましい。
捕捉・検出部25における検出においては、電気計測、インピーダンス測定、表面プラズモン共鳴、水晶振動子などの計測手段を使用してもよい。本実施例では、比色法及び蛍光法についての例を具体的に述べる。
図3Aに、分子鋳型ポリマー微粒子の合成スキームの例を示す。図3Aの例では、まず微粒子の合成を行い、その合成した微粒子の存在下で、ターゲットと重合性のビニルモノマーを重合反応させ、分子鋳型ポリマーの微粒子を作製するところに特徴がある。その後、遠心分離工程、加水分解工程、洗浄工程を経て分子鋳型ポリマーの微粒子を得ることができる。
図3Bはこの合成スキームにのっとり、合成される分子鋳型ポリマー微粒子ができる様子を模式的に示したものである。微粒子35は、分子鋳型ポリマーの原料(モノマー)および鋳型となるターゲットまたはターゲット誘導体などにより形成された、分子鋳型ポリマー36により被覆される。分子鋳型ポリマーは、ターゲット認識部位361を有している。分子鋳型ポリマー36により被覆された微粒子の割断面図を示すと、微粒子35とそれを被覆する分子鋳型ポリマー38が存在する。微粒子35の核(コア)を有する2層構造の微粒子であることから、本実施例の分子鋳型ポリマー微粒子はコアシェル型を形成している。
得られた分子鋳型のポリマー微粒子は、サブミクロンサイズであり、かつ粒径が均一であるため、カラム状や平板に分子鋳型ポリマー微粒子を並べた際に、密に詰まるためターゲットに対する認識力が高い。
上記の手順に従い、ステロイドホルモンの一種であるコルチゾールの分子鋳型ポリマー微粒子を合成する場合について以下に説明する。なお、以下に示す方法は、コルチゾールとそれを囲む分子鋳型ポリマー微粒子を一部で共有結合させ、よりコルチゾールとの認識力が高い分子鋳型ポリマーの作成法を示す。しかし、微粒子の存在下で分子鋳型ポリマーを作成するのであれば、コルチゾールとまわりのビニルモノマーとの相互作用は、共有結合に限らず、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス力、疎水―疎水結合などの一部または組み合わせを利用してもよい。
(コルチゾールの分子鋳型ポリマー微粒子の製造)
コアとなる微粒子とターゲットとなるコルチゾールの存在下で、コルチゾールと相互作用する機能性モノマーの重合を行い、重合反応によって得られたポリマーを洗浄することにより、内部にコルチゾールを特異的に認識する分子鋳型を得ることができる。
図4Aに、コルチゾールの分子構造を示す。図4Bには、イタコン酸の分子構造を示す。図4Aに示す通り、コルチゾールの骨格のうち、末端5員環の炭素をC4と名づけると、その隣のカルボニル基の炭素をC3、その隣のメチレン基の炭素をC2、その隣の水酸基の酸素をO1と名づけられる。O1までを骨格と考えると、ステロイド骨格の末端から、炭素を2つ介して、酸素まで結合が形成されている。
図4Bは、イタコン酸の分子構造を示す図である。イタコン酸は、図4Bに示すように、図左側のカルボキシル基の炭素をC1’と名づけると、隣のメチレン基の炭素はC2’、その隣のビニル基の炭素はC3’、その隣のカルボキシル基の炭素はC4’と名づけられる。
本実施例の分子鋳型ポリマーの製造において重要な点は、ターゲットと重合性モノマーとの相互作用力の強さである。コルチゾールの分子鋳型ポリマーの原料にイタコン酸を用いるのは、イタコン酸の分子の両末端にカルボキシル基が存在し、かつその距離が適切であるため、コルチゾールの一部と相互作用しやすいと考えられるためである。
図5に、コルチゾールとイタコン酸の相互作用について模式的に示す。点線501と点線502で示すように、イタコン酸を用いることで、複数箇所でコルチゾールと相互作用することができる。このように、コルチゾール等のステロイドホルモンと相互作用する官能基を2つ以上有するモノマーを重合単位に含むことによって、ステロイドホルモンとモノマーとのフィッティング性が向上し、分子鋳型ポリマーとしての有意な性質をもたらすことができると考えられる。
ここで、「官能基」とは、ある化学物質の集団に共通して含まれ、かつ当該集団において共通した化学的物性や反応性を示す原子団をいう。例えば、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、スルホン基、アゾ基等が挙げられる。上記ステロイドホルモンと相互作用するモノマーが2つ以上の官能基を有する場合、その官能基としては、特にカルボキシル基が好ましい。
コルチゾール以外のステロイドホルモンに対しても、好ましくは複数点で相互作用する重合性モノマーを利用することによって、分子鋳型ポリマーを合成することができる。天然のステロイドホルモンは、一般に生殖腺や副腎においてコレステロールから合成される。
図6は、コレステロールと代表的なステロイドホルモンの分子構造を示す。上述のコルチゾールの分子鋳型ポリマー微粒子合成の手法を用いれば、他のステロイドホルモンの分子鋳型ポリマー微粒子を作製できる。図6の(A)は、コレステロールであり、これを母骨格として、図6の(B)のアルドステロン、(C)のエストラジオール、(D)のテストステロンが代謝合成される。
上述のように、コルチゾールに対する分子鋳型ポリマーの原料には好ましくはイタコン酸が用いられるが、これは多点で水素結合させることを狙って原料を選定したものである。これと同様に、平面性の高いステロイド骨格を有するステロイドホルモンに適したモノマー構造を選定することができる。図6の(B)のアルドステロンに対しては、末端にカルボニル基及びメチレン基を介して存在する水酸基(OH)と、骨格に直接結合するアルデヒド基(CHO)の2つに着目して、分子鋳型ポリマーのモノマー原料を選定することができる。上記のような複数の官能基に対して、同時に相互作用できるような長さのモノマー分子を分子鋳型ポリマーの原料に用いれば良い。すなわち、ビニルモノマーであって、骨格にカルボキシル基を2つ有し、分子鋳型ポリマーのターゲットにフィッティングする適切な距離(メチレン基で2又は3)を有するモノマーを重合単位として分子鋳型ポリマーを製造すれば良い。コルチゾールの分子鋳型ポリマーと同様に、ターゲットとするステロイドホルモンの存在下で、上記ビニルモノマーと、必要に応じてスチレンやジビニルベンゼン等の他のモノマー成分とを、重合開始剤ともに共重合させることによって分子鋳型ポリマーを得ることができる。共重合する以外に、相互作用するビニルモノマーを単独重合させても良い。上記ビニルモノマーと他のモノマー成分とを共重合させる場合、その共重合比は、各モノマー成分やステロイドホルモンの種類等によって異なり特に限定されるものではないが、例えば、ステロイドホルモンと相互作用するビニルモノマー:他のモノマー成分=1:16〜1:64(モル比)とすることができる。特に、1:32が望ましい。
図6の(C)のエストラジオールや(D)のテストステロンは官能基が離れているので、分子鋳型ポリマーを作製時に、一つのモノマーに対し同時に複数点で相互作用する必要はなく、それぞれの官能基を認識する複数の重合性モノマーを用いて、ターゲットの存在下、スチレンやジビニルベンゼン、重合開始剤等とともに共重合させれば良い。
上記の例では、ステロイドホルモンとモノマーとの間に水素結合等による相互作用を形成させる場合について説明したが、別の実施形態として、テンプレート分子とするステロイドホルモンを誘導体化し、分子鋳型ポリマーを形成するモノマーと共重合反応する官能基を導入しても良い。ステロイドホルモンとモノマーとの間に共重合反応による共有結合を形成することによって、両者の相互作用がより強固となり、ステロイドホルモンとモノマーとのフィッティング性が向上し、分子鋳型ポリマーとしての有利な性質をもたらすことができる。このようなステロイドホルモンと共重合させるモノマーとしては、上記と同様に、官能基を2つ以上有するイタコン酸等のモノマーや、複数種のモノマーを組み合わせて用いることができる。
また、ステロイドホルモン分子に導入される、モノマーと共重合反応する官能基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、エポキシ基、など重合性の置換基等が挙げられ、特に、メタクリロイル基が好ましい。
次に、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、以下の実施例は単に例示するのみであり、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
原料とターゲット分子との間の共有結合を利用した分子鋳型ポリマー微粒子合成の例について、以下詳細に述べる。
(コルチゾールのメタクリロイル化)
まず、合成にあたり、テンプレート分子であるコルチゾールを以下の手順に従って変換し、コルチゾール誘導体を合成した。
まず、窒素雰囲気下、コルチゾール(2.5mmol、907mg)を乾燥THF(40mL)に溶解し、トリエチルアミン(30mmol、4.2ml)を加え氷冷した。これに、塩化メタクリロイル(15mmol、1.5ml)を溶解した乾燥THF(40mL)を徐々に滴下し、0℃で1時間、その後室温で4時間攪拌した。続いて、反応液に酢酸エチルを加え、分液ロートで有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、クエン酸、及び塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。その後、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。次に、溶媒をエバポレーターで留去し、抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲルC−200、展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1:1)で分離精製し、白色固体を得た(収率65%)。
図7に、これにより得られたメタクリロイル化コルチゾールの分子構造を示す。
なお、この図7に示すメタクリロイル化コルチゾールは、以下の方法でも得ることができた。すなわち、窒素雰囲気下、二口フラスコ中で、コルチゾール(2.5mmol、907mg)及びジメチルアミノピリジン(0.25mmol、30.5mg)を乾燥THF(40mL)に溶解し、氷冷した。続いて、トリエチルアミン(30mmol、4.2ml)及びメタクリル酸無水物(7.5mmol、1.2ml)を徐々に滴下し、0℃で1時間、その後室温で2日間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え、分液ロートで有機相を純水で3回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒をエバポレーターで留去し、抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲルC−200、展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1:1)で分離精製し、白色固体を得た(収率89%)。
(コアとなる微粒子の合成)
表1のレシピに従って二口フラスコに、スチレン760mg(7.3mmol)、DVB(ジビニルベンゼン)40mg(0.31mmol)、水79.2g、V−50(2、2’−Azobis(2−methylpropionamidine)dihydrochloride)41.3 mg(0.15mmol)を量りとり、窒素置換後、80℃で48時間反応させた。その後、溶液を氷浴により急冷し、酸素封入により反応を停止した。その反応過程では、反応数時間後から反応溶液が白濁し始め、48時間後には白濁したエマルションが得られた。電子顕微鏡観察の結果、粒子の粒径は125nmであり、粒径の均一性が高い。
以下の表1は微粒子の合成原料を示す。
Figure 2017150815
(分子鋳型ポリマー微粒子の合成)
上記のいずれかの方法で調製したメタクリロイル基を導入したコルチゾール誘導体をテンプレート分子として、以下の表2に示す原料組成に従って分子鋳型ポリマー微粒子を合成した。メタクリロイル基はエチレン性不飽和基を有し、重合反応性であるため、メタクリロイル基を導入したコルチゾールは、表2に示す添加モノマーと共重合可能である。その結果、分子鋳型ポリマーの原料とコルチゾール誘導体は強く結合、認識できるため、コルチゾールを高い選択性で捕捉可能な分子鋳型ポリマーを作製することができる。
具体的には、表2のレシピに従い分子鋳型ポリマーとして、nano−MIP1とNano−MIP2の重合を行った。
(Nano−MIP1の合成法)
バイアル瓶に、表1に従い合成したポリスチレン懸濁液(3重量%、20g/水)を入れ、そこに、メタクリロイル化コルチゾールを3.9mg(9μmol)、イタコン酸を4.7mg(36μmol)、メチレンビスアクリルアミドを69.0mg(447.5μmol)を加え、懸濁液(THF)に溶解させた後、φ18×180mmの試験管に移し、重合開始剤であるV−50(2、2’−Azobis(2−methylpropionamidine)dihydrochloride)を2.7mg(9.85μmol)を溶解させた。セプタムキャップをして窒素置換し、80℃で24時間、800rpmの条件で重合反応を行った。重合液を回収し、遠心分離機にかけ、上澄み溶液を除去した後、50mlの2M水酸化ナトリウム水溶液/メタノール=1:1で24時間加水分解した。その後、50mlの1M塩酸/メタノール=1:1、50mlの純水/メタノール=1:1で数時間洗浄した。この加水分解と洗浄工程により、分子鋳型ポリマー内部に取り込まれていたコルチゾール誘導体を分子鋳型ポリマーから除去することができる。
(Nano−MIP2の合成法)
バイアル瓶に、表1に従い合成したポリスチレン懸濁液(3重量%、20g/水)を入れ、そこに、メタクリロイル化コルチゾールを3.9mg(9μmol)、イタコン酸を4.7mg(36μmol)、ジビニルベンゼン(DVB)を59.5mg(457μmol)、スチレン9.5mg(91.2μmol)を加え、重合開始剤であるV−50(2、2’−Azobis(2−methylpropionamidine)dihydrochloride)を3.2mg(11.8μmol)を溶解させた。セプタムキャップをして窒素置換し、80℃で24時間、800rpmの条件で重合反応を行った。重合液を回収し、遠心分離機にかけ、上澄み溶液を除去した後、50mlの2M水酸化ナトリウム水溶液/メタノール=1:1で24時間加水分解した。その後、50mlの1M塩酸/メタノール=1:1、50mlの純水/メタノール=1:1で数時間洗浄した。この加水分解と洗浄工程により、分子鋳型ポリマー内部に取り込まれていたコルチゾール誘導体を分子鋳型ポリマーから除去することができる。上記の方法により、ステロイドホルモンの分子鋳型ポリマー微粒子であって、前記ステロイドホルモンと相互作用するポリマーからなる分子鋳型ポリマーが微粒子の周りを被覆する構造を有するコアシェル型分子鋳型ポリマー微粒子を作製できた。
以下の表2は分子鋳型ポリマー微粒子2種の合成原料を示す。
Figure 2017150815
(コルチゾールの蛍光標識化:ダンシル基の導入)
コルチゾールを高感度に検出するために、蛍光標識化コルチゾールの利用を考え、合成した。以下で合成した分子の分子構造は、図8Aの(E)〜(G)、図8Bの(I)〜(J)に示す。
反応(1):不飽和結合のエポキシ化とアミノ基の導入
窒素置換した二口フラスコにコルチゾール1.82g (5mmol)を量りとり、メタノール65ml、エタノール25mlに部分溶解した。氷浴にて0℃にした後、10%水酸化ナトリウム水溶液5mlと30%過酸化水素水(H2O2)5mlをシリンジで加え、0℃にて3時間反応後、室温で一晩反応させ、中間体としてコルチゾール誘導体(E)を得た。その後、2−(Boc−amino)ethanethiolを1ml加え、6時間室温で反応させた後、反応溶液を希塩酸で中和した。飽和食塩水30mlを加え、酢酸エチルで3回抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒をエバポレーターで留去した。粗生成物をTHF、クロロホルムで溶媒分別後、濾液をカラムクロマトグラフィー(展開層:Silicagel C−200、展開溶媒:クロロホルム/メタノール/トリエチルアミン=20/1/0.2)で分離精製したところ、黄白色固体(コルチゾール誘導体F)が得られた(収率20%)。
反応(2):Boc基の脱保護
コルチゾール誘導体F(54mg、0.1mmol)に0.5M塩酸/メタノール溶液1mlを加えた。遮光しながら、室温で4時間反応させた後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した。飽和食塩水を加え、酢酸エチルで3回抽出後、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去したところ、黄褐色固体のコルチゾール誘導体Gが得られた(粗収率:90%)。
反応(3):ダンシル化
窒素雰囲気下、コルチゾール誘導体G(30mg、0.069mmol)にジメチルアミノピリジン(10mg)を加え、蒸留したTHF3mlに溶解した。その後、トリエチルアミン(0.1ml)と蒸留THF2mlに溶解した。蛍光分子であるダンシルクロライド(20mg、1.1等量)を加え、一晩室温で反応させた。溶媒をエバポレーターで留去し、飽和食塩水を加え、ジクロロメタンで3回抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去したところ、黄色の粘調固体得られた。粗生成物をTHFに溶解させ、分取TLC(展開層:Silicagel C−200、展開溶媒:クロロホルム/メタノール/トリエチルアミン=20/1/0.2)で分離精製したところ、黄白色固体(コルチゾール誘導体H)が得られた。
(蛍光標識化されたコルチゾール誘導体(H)の蛍光測定)
蛍光標識化されたコルチゾール誘導体(H)をクロロホルムに溶解し、蛍光分光光度計にて蛍光スペクトルを測定した。励起波長(375nm)にて励起させた際の蛍光スペクトルを確認したことろ、450nm付近に蛍光極大ピークが確認された。したがって、蛍光標識化されたコルチゾール誘導体(H)を使い、分子鋳型ポリマー微粒子(Nano−MIP1、Nano−MIP2)のコルチゾールに対する検出力を評価した。
(検査キットの作製)
上記で合成、準備したポリマーや蛍光標識化コルチゾールを用いて、検査キットを試作した。
図9A上方に、本実施例の化学物質検出装置の断面図を示し、図9A下方に、断面図に対応する平面図と寸法を記す。図9Aの化学物質検出装置は、競合法の例である。化学物質検出装置は、主に樹脂やガラス、シリカゲル、紙、金属等の素材に分子鋳型ポリマーを塗布したものである。検出装置は、大きく5つの部分から構成され、すなわち、支持シート90、メンブレン91、サンプルパッド94、コンジュゲートパッド93、分子鋳型ポリマー95、吸収パッド96である。メンブレン91は、ニトロセルロースからなり、メンブレンの一方の面は支持シート90に貼り付けられ、メンブレンの他方の面はコンジュゲートパッド93、分子鋳型ポリマー95、吸収パッド96が固定化されている。分子鋳型ポリマー95は、メンブレン22内部にも拡散して固定化されている。検体中のタンパク質や脂質等は、分子鋳型ポリマーによる検査を阻害する夾雑物成分となるため、メンブレンにはあらかじめ、非特異吸着抑制成分を含侵、塗布、乾燥してある。非特異吸着抑制成分は、牛血清アルブミン(BSA)、カゼイン、PEG、ゼラチン、などから一つまたは複数を用いればよい。
図9Aに示すように、本実施例では短辺数ミリ、長辺数十ミリ程度の短冊状のキットであり、上述のシートやパッドが積層されている。シートやパッドの厚さには制限はなく、検体の量や質、目的とする感度により設計すればよい。上述の素材で形成すれば、合計数ミリ以下の厚さで構成することができる。各部の材質を繊維状のセルロース等で構成すれば、液状の検体を毛細管現象により移動させることができるので、動力も不要である。従って、安価で生産可能で携帯や運用が簡単な、臨床検査キットを提供することができる。
また、本実施例では、複数種類の形状や材質のパッドやシートでキットを構成しているので、ポリマー、蛍光標識化コルチゾール、非特異吸着成分、リリース促進成分等の検査に用いる物質を、適切な個所に適切な分量で配置することが可能となる。
今回の検査のシステムでは、以下の競合法で検出を行うこととした。競合法を用いた検出法の例を、図9Aに基づき説明する。検体92は、ターゲット920や、夾雑物A921及び夾雑物B922等を含んでいる。無論、ターゲット920が存在しない場合や夾雑物が多種存在する場合もあり得る。標識化ターゲット930は、ターゲット部分932と標識部分931からなる。ターゲット920及び標識化ターゲット930を競合させて分子鋳型ポリマーと1時間室温で反応させた後、標識部分931の比色量や蛍光量を測定することで、検体92中のターゲット量を算出することができる。すなわち、検体92内のターゲット量が多いほど、比色量や蛍光量は小さくなる。検体92中のターゲット量の算出には、別途算出した比色量や蛍光量の検量線を用いれば良い。
検体を送液後の検出の模式図を図9Bに示す。この測定により、例えば、検体中に25nM以下の濃度で含まれているコルチゾールを優位に定量することができる。
したがって、あらかじめ蛍光標識(標識化)したターゲットをコンジュゲートパッドに所望量を塗布する。その際に、検体と蛍光標識したターゲットの混合を迅速に行うため、あらかじめコンジュゲートパッドに、リリース促進成分を添加した。このリリース促進成分は、糖分子、スクロースなどから選ばれればよい。他の方法としては、あらかじめ検体にリリース促進成分を混合しておいてもよい。
検出には、蛍光顕微鏡や目視確認、光学顕微鏡等を用いることで、発色する色を判定する等により行うことができる。このチップ形態の化学物質検出装置を用いることにより、例えば検体中における250nM以下の濃度のターゲットを検出することができた。
次いで、本実施例の化学物質検出装置の置換法の例について、その模式図を9Cに示す。図9Aと9Bと装置の主たる構造は、共通であるが、あらかじめ、標識化ターゲット930を分子鋳型ポリマー95に、所定量塗布させておく所に特徴がある。あらかじめ所定量の標識化ターゲットを塗布し、その量を蛍光や光学顕微鏡などで定量しておく。検体92を由来とするコルチゾール920が来た際には、コルチゾールが分子鋳型ポリマ95へ吸着するため、あらかじめ塗布された標識化ターゲットのうち、いくつかが分子鋳型ポリマーから脱着する。よって、あらかじめ定量しておいた蛍光量などが、検体中のコルチゾールの量にしたがって、減少する。この分子鋳型ポリマーでの置換による方法で、検体中のコルチゾール量を定量できる。本手法には、当然、あらかじめコルチゾール量に応じた標識化コルチゾールの減少量を把握しておき、検量線を作成しておくことで、更に検体中のコルチゾール定量の精度が増す。なお、図9Cの構成では、コンジュゲーションパッド93は省略することができる。あるいは、省略せずにコンジュゲーションパッド93に吸着抑制成分を担持させてもよい。
以上競合法と置換法について説明した。これらは、検体の特性や量、標識の性質、あるいは、分析の目的等に応じて選択することができる。 したがって、実施の検体の分析の際には、検体92は、(1)サンプルパッド94に塗布または滴下または固定化され、その後、(2)コンジュゲートパッド93で、検体92と標識化ターゲット分子930が混合され、両者が(3)メンブレン91を通過し、(4)分子鋳型ポリマー95で捕捉・検出される。更にここで想定される検体の多くは液体のため、吸水効率を上げるため、(5)吸収パッド96で吸収される。更に、検出効率をあげるために、検体をサンプルパッド94に塗布後に、サンプルパッドが濡れている状態、乾燥している状態を問わずに、緩衝液や水、生理食塩水、アルコールなどの有機溶媒(キットの基材や接着成分を破壊しないもの)を送液してもよい。
以上の実施例の特徴は、上記のように(1)〜(5)工程を経て、検体が検査される工程を実現する構造にある。
メンブレン上には、あらかじめ所望の分量の分子鋳型ポリマーを塗布乾燥して固定化しておく。化学物質の検出高感度化のため、分子鋳型ポリマーの表面積は大きいほど好適である。したがって、分子鋳型ポリマーを合成後に、粉砕、分級することで、粒径が小さくかつ揃った分子鋳型ポリマーを使用した。また、望ましくは、更に粒径を小さくするため、実施例1で述べる方法で、サブミクロンオーダーの粒径を持つ微粒子の表面に分子鋳型ポリマーを被覆した粒子を用いた。この分子鋳型ポリマー、すなわち分子鋳型ポリマー粒子が塗布された領域が、ターゲット分子の捕捉、検出部に相当する。
また、検出する対象である検体には、ターゲットがある場合とともに、検査のノイズ成分となる夾雑物等が含まれる。当然のことであるが、検体によっては、ターゲットを含まない場合や、より多くの種類の夾雑物を含むことがある。
そこで、我々は、検出部分である分子鋳型ポリマーに、可能な限り夾雑物が流れ込まないよう、非特異吸着抑制成分(図示せず)をあらかじめメンブレン上に塗布した。
支持体シートの材質は、一定の形状を保持できるものであれば特には限定されない。具体的には、プラスチック、金属、ガラス、合成ゴム、セラミックス、耐水処理や強化処理を施した紙、又はそれらの組み合わせ等が挙げられる。
以上のことから、本実施例の検査キットでは、(1)ターゲットに対応する分子鋳型ポリマー微粒子(Nano−MIP2)を備え、(2)蛍光標識化ターゲットとリリース促進成分を塗布したコンジュゲートパッド、(3)非特異吸着抑制成分を含侵・塗布したメンブレンを備えることを特徴とする。
上記で作製したチップを用いて、コルチゾールの検出を試みた。チップの作製条件は表3のとおりである。
以下の表3に本実施例の検査キットの部位とその素材を示す。
Figure 2017150815
まず、上記のコンジュゲートパッド(ガラスファイバ)(幅:5mm、長さ:8mm)に、蛍光標識化コルチゾール誘導体(H)の5μmol/Lの溶液(溶媒は、メタノール:水=1:1)を17μL滴下した。その後、真空減圧乾燥により、パッドを乾燥させた。なお、この際に、あらかじめ蛍光標識化コルチゾール誘導体(H)の5μmol/Lの溶液に、2.5%スクロース水溶液を添加した。スクロース添加有、無の溶液をそれぞれメタノール/水(1:1)の溶媒で、希釈し溶液を準備した。表4にまとめる。
以下の表4はコンジュゲートパッド塗布に用いた蛍光標識化コルチゾールの仕様を示す。
Figure 2017150815
ついで、メンブレンに対して、分子鋳型ポリマー粒子を塗布した。実施例1の方法で作製したNano−MIP2をメンブレンに対して、1μL/cmで塗布した。用いたNano−MIP2は、2種類の濃度(1mg/mLまたは0.1mg/mL)である。塗布後に、メンブレンを0.5%乳製カゼイン水溶液に浸した。したがって、検査キットとしては、コンジュゲートパッド6種類、メンブレン2種類を用いて、図1に示す構造で、キットとして張り合わせた。よって、表5に示す12種類のキットを準備した。
以下の表5はコンジュゲートパッド塗布に用いた蛍光標識化コルチゾールの仕様を示す。
Figure 2017150815
キットの検出能力を評価するため、ここでは、模擬検体として、同じ蛍光標識化コルチゾールの溶液(50nmol/L)を用いた。添加量は100μLである。表5に示すキット(1)〜(12)について評価した。
検出能力を評価するため、蛍光検出を用いた。捕捉・検出部分へ照射する励起光としては、波長365nmのレーザーを用いて、同部分の検出には420nm−450nmの波長を検出するのに最適なフォトダイオードを用いた。
キット(1)の評価結果を示す。試作したキットの位置に従い、蛍光強度を測定した結果を図10Aに示す。横軸は位置(mm)、縦軸は蛍光強度(任意単位)である。グラフ中の破線は、模擬検体を送液前の蛍光強度の位置依存性であり、グラフ中の実線は、模擬検体を送液後の蛍光強度の位置依存性である。サンプルパッドに位置に相当する領域(位置:0〜5mm)では、模擬検体の送液後の蛍光強度は、模擬検体の送液前の蛍光強度を上回った。これは、模擬検体を送液後も、一部の模擬検体がまだ、サンプルパッドに残存していることを示す。検体送液前での蛍光強度は、サンプルパッド自身の蛍光である。
次いで、コンジュゲートパッドに相当する領域(位置:5−10mm)では、模擬検体送液前では、あらかじめコンジュゲートパッドに含侵、固定したダンシル化コルチゾールにより、蛍光強度が強く検出される。一方、模擬検体送液後は、コンジュゲートパッド上の蛍光強度は、模擬検体送液前よりも低減した。
次いで、捕捉・検出部分に相当する領域(位置:10−15mm)では、模擬検体の送液後では、強い蛍光強度(ピーク値:2100)を示す。一方、模擬検体の送液前では、蛍光強度は弱く極大を持たなかった(平均ピーク値:1500)であった。以上のことから、本実施例の検査キットでは、ターゲットに応じた分子鋳型ポリマーと非特異吸着抑制成分(カゼインなど)を塗布したメンブレン、蛍光標識化ターゲットとリリース促進成分(糖、スクロース)を塗布したコンジュゲートパッドを用いて、蛍光検出を用いることで、極低濃度のターゲットを検出できた。結果を表6にまとめる。
同様の結果が、キット(1)〜(6)について得られ、検体としてのコルチゾールの検出濃度25nmol/Lを検出できた。これら(1)〜(6)のキットは、すべてコンジュゲートパッドにスクロースを固定化したものである。
一方、(7)〜(12)のキットについては、スクロースを用いていない。そこで、模擬検体を送液後でのキットの各部位での蛍光強度を図10Bで比較する。図10Bのグラフの横軸は位置(mm)、縦軸は蛍光強度(任意単位)である。グラフ中の破線は、スクロース(糖)添加なしの場合の結果(キット(7))であり、実線はキット(1)の結果である。サンプルパッドに位置に相当する領域(位置:0〜5mm)では、模擬検体送液後の蛍光強度は、(1)と(7)でほぼ同様である。
次いで、コンジュゲートパッドに相当する領域(位置:5−10mm)では、キット(1)とキット(7)とも同様に低い値を示す。あらかじめコンジュゲートパッドに含侵、固定したダンシル化コルチゾールが模擬検体の送液により、蛍光強度が減少したことがわかる。
次いで、捕捉・検出部分に相当する領域(位置:10−15mm)では、キット(1)では、強い蛍光強度(ピーク値:2100)を示す。一方、キット(7)では、弱い蛍光強度(ピーク値:1600)であった。結果を表7にまとめる。
以上のことから、本実施例の検査キット、すなわち、ターゲットに応じた分子鋳型ポリマーと非特異吸着抑制成分(カゼインなど)を塗布したメンブレン、蛍光標識化ターゲットとリリース促進成分(糖、スクロース)を塗布したコンジュゲートパッド、および蛍光検出では、リリース促進成分があることが望ましい。本実施例のキットの評価結果を表8にまとめる。
以下の表6はキット(1)の模擬検体送液前後での蛍光強度の比較を示す。
Figure 2017150815
以下の表7はキット(1)と(7)に関する部位ごとの蛍光強度を示す。
Figure 2017150815
以下の表8は各キットの検出評価結果を示す。
Figure 2017150815
[コルチゾールの蛍光標識:ピレンの導入]
上記までの実施例では、蛍光標識分子として、ダンシル基を用いた例を示した。コンジュゲートパッド、メンブレン、などの基材が発する自家蛍光を考慮すると、検出する蛍光波長は、基材に応じて選定することが重要である。そこで、更なるキット素材の多様性に対応するため、ターゲット分子の蛍光標識化の他の例を以下に示す。ここではコルチゾールを例に取り上げるが、この方法は、コルチゾールに限られるものでなく、他のターゲットにも活用できる。
コルチゾールを高感度に検出するために、蛍光標識化コルチゾールの利用を考え、合成することとした。上記では、ダンシル基を導入したコルチゾールによる検出例を示した。続いて、ピレンを導入したコルチゾールによる検出例を示す。
反応(5)ピレン活性エステルの合成
窒素雰囲気下、1−Pyrene Acetic Acid(260.3mg、1mmol)を蒸留したTHF(5mL)に溶解した。そこえ、蒸留したTHF(1ml)で希釈した1−(3−Dimethylaminopropyl)−3−ethylcarbodiimide(EDC)(212μl、1.2mL)と蒸留したTHF(5ml)に溶解したN−Hydroxy Succinimide(138.1mg、1.2mmol)を加え、遮光しながら室温で一晩攪拌した。反応終了後、反応液をエバポレーターで留去し、純水を加え、塩化メチレンで3回抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒をエバポレーターで留去したところ、茶褐色の固体が得られた。得られた固体を酢酸エチルでデカンテーションした後、上澄み溶液をカラムクロマトグラフィー(展開層:C−200、展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1:1)で分離精製したところ、黄色の固体(ピレン誘導体、図8Bの分子構造I)が得られた(収率:83%)。
以上、本発明を実施するための形態について説明した。分子鋳型ポリマーは、生体高分子である抗体のような選択性、捕捉性を有しながら、非天然合成物であるため、環境耐性や温度耐性に優れている。したがって、ユーザが保管等に神経質にならずとも使える長所がある。したがって、ユーザとして想定される、医療関係者(医者、臨床検査技師、看護士)をはじめ、家庭の一般消費者においても使い勝手の良いケミカルセンサーを提供できる。特に、ストレス疾患と密接に関わるコルチゾール等のステロイドホルモンを高感度に検出することで、ストレス疾患の予兆を早期に診断し、予防と早期治療に貢献することができる。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることが可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
10 ターゲット
101 モノマー原料A
102 モノマー原料B
103 モノマー原料C
11 認識部位
12 分子鋳型ポリマー
15 微粒子
21 支持シート
22 メンブレン
23 コンジュゲートパッド
24 サンプルパッド
25 捕捉・検出部
26 吸収パッド
36 分子鋳型ポリマー
361 認識部位
37 微粒子
38 分子鋳型ポリマー
501 点線
502 点線
90 支持シート
91 メンブレン
92 検体
920 ターゲット
921 夾雑物A
922 夾雑物B
93 コンジュゲートパッド
930 標識化ターゲット
931 標識部分
932 ターゲット部分
94 サンプルパッド
95 分子鋳型ポリマー
96 吸収パッド

Claims (16)

  1. 検体を供給する検体注入部、
    標識化された特定種類の分子と上記検体を混合する混合部、
    上記混合部を通過した上記検体中の特定種類の分子を分子鋳型ポリマーにより捕捉する捕捉部、
    上記検体注入部から上記捕捉部へ上記検体が移動する経路に配置され、上記検体中の上記特定種類の分子以外の物質の少なくとも一部の、上記分子鋳型ポリマーへの吸着を抑制する抑制成分を含む検体移動部、
    を備える臨床検査キット。
  2. 上記抑制成分は、牛血清アルブミン(BSA)、カゼイン、PEG、ゼラチンから選択された少なくとも1つからなる請求項1記載の臨床検査キット。
  3. 上記混合部は、糖分子またはスクロースを含む請求項1記載の臨床検査キット。
  4. 上記分子鋳型ポリマーは、微粒子表面に分子鋳型ポリマーが被着されたコアシェル型分子鋳型ポリマー微粒子である請求項1記載の臨床検査キット。
  5. 板状またはシート状の支持シート、
    支持シート上に配置されたメンブレン、
    該メンブレン上に配置されたコンジュゲーションパッド、
    該コンジュゲーションパッドに隣接配置されたサンプルパッド、
    上記メンブレン上に上記コンジュゲーションパッドとは離れて配置された吸収パッド、を有し、
    上記サンプルパッドが上記検体注入部を構成し、
    上記コンジュゲーションパッドが上記混合部を構成し、
    上記コンジュゲーションパッドと上記吸収パッドの間の上記メンブレンが上記捕捉部を構成し、
    上記コンジュゲーションパッドと上記捕捉部の間の上記メンブレンが、上記検体移動部を構成し、上記抑制成分は上記メンブレンに配置されている請求項1記載の臨床検査キット。
  6. 上記メンブレン、上記コンジュゲーションパッド、および上記サンプルパッドは、繊維質の材質で構成され、毛細管現象により液体からなる検体を移動させる請求項5記載の臨床検査キット。
  7. 検体を供給する検体注入部、
    上記供給された上記検体中の特定種類の分子を分子鋳型ポリマーにより捕捉する捕捉部、
    上記検体注入部から上記捕捉部へ上記検体が移動する経路に配置され、上記検体中の上記特定種類の分子以外の物質の少なくとも一部の、上記分子鋳型ポリマーへの吸着を抑制する抑制成分を含む検体移動部、
    を備え、
    上記捕捉部に存在する分子鋳型ポリマーの少なくとも一部は、標識化された特定種類の分子を既に捕捉した状態である臨床検査キット。
  8. 上記抑制成分は、牛血清アルブミン(BSA)、カゼイン、PEG、ゼラチンから選択された少なくとも1つからなる請求項7記載の臨床検査キット。
  9. 上記分子鋳型ポリマーは、微粒子表面に分子鋳型ポリマーが被着されたコアシェル型分子鋳型ポリマー微粒子である請求項7記載の臨床検査キット。
  10. 板状またはシート状の支持シート、
    支持シート上に配置されたメンブレン、
    該メンブレン上に配置されたサンプルパッド、
    上記メンブレン上に上記サンプルパッドとは離れて配置された吸収パッド、を有し、
    上記サンプルパッドが上記検体注入部を構成し、
    上記サンプルパッドと上記吸収パッドの間の上記メンブレンが上記捕捉部を構成し、
    上記サンプルパッドと上記捕捉部の間の上記メンブレンが、上記検体移動部を構成し、上記抑制成分は上記メンブレンに配置されている請求項7記載の臨床検査キット。
  11. 上記メンブレン、および、上記サンプルパッドは、繊維質の材質で構成され、毛細管現象により液体からなる検体を移動させる請求項10記載の臨床検査キット。
  12. 板状またはシート状の支持シート、
    上記支持シート上に配置されたサンプルパッドおよび吸収パッド、
    上記サンプルパッドおよび吸収パッドの間に配置された捕捉・検出部、
    を有し、
    上記捕捉・検出部には、特定種類の分子を捕捉する分子鋳型ポリマーが配置され、
    上記サンプルパッドに供給された液状の検体が、毛細管現象によって上記吸収パッドに移動するように構成され、
    上記サンプルパッドと上記捕捉・検出部の間の上記検体の移動経路には、上記特定種類の分子以外の物質の少なくとも一部の、上記分子鋳型ポリマーへの吸着を抑制する非特異吸着抑制成分が配置された、臨床検査キット、
    を用いた化学物質検出方法であって、
    標識化された上記特定種類の分子を予め上記臨床検査キットに内包せしめ、
    上記サンプルパッドに検査対象となる検体を供給し、
    上記検体は上記サンプルパッド、非特異吸着抑制成分、分子鋳型ポリマー、吸着パッド、をこの順序で経由し、
    上記標識化された上記特定種類の分子は、上記検体の供給後に上記臨床検査キットにおいて上記検体と混合されるか、あるいは、上記検体の供給前に上記分子鋳型ポリマーに捕捉されており、
    上記検体が上記吸収パッドに到着した後、上記分子鋳型ポリマーにより捕捉された、上記標識化された特定種類の分子の状態を検出することにより、上記検体中の特定種類の分子を定量する化学物質検出方法。
  13. 上記検体にあらかじめ糖分子またはスクロースを混合してから上記サンプルパッドに供給する請求項12記載の化学物質検出方法。
  14. 上記臨床検査キットは、上記検体と糖分子またはスクロースとを混合する混合部を有する請求項12記載の化学物質検出方法。
  15. 上記非特異吸着抑制成分は、牛血清アルブミン(BSA)、カゼイン、PEG、ゼラチンから選択された少なくとも1つからなる請求項12記載の化学物質検出方法。
  16. 上記分子鋳型ポリマーは、検出すべきステロイドホルモンに対応する分子鋳型ポリマーを表面に有し、その微粒子の内部には、別の組成の微粒子構造を有するコアシェル型分子鋳型ポリマー微粒子である請求項12記載の化学物質検出方法。
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