以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置10の一例を示す。図1(a)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す。図1(b)は、印刷装置10におけるヘッド部12の構成の一例を示す。図1(c)は、ヘッド部12におけるインクジェットヘッド102の構成の一例を示す。
尚、以下に説明をする点を除き、本例の印刷装置10は、公知のインクジェットプリンタと同一又は同様の構成を有してよい。例えば、印刷装置10は、図示した構成以外に、印刷の動作に必要な公知の各種構成を更に有してよい。
印刷装置10は、印刷対象の媒体(メディア)50に対してインクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタであり、ヘッド部12、プラテン14、ヒータ16、主走査駆動部18、副走査駆動部20、マルチパス制御情報格納部22、及び制御部24を有する。また、本例において、印刷装置10は、インク中の溶媒を揮発除去することで媒体50に定着する蒸発乾燥型のインクを用いて、媒体50に対する印刷を行う。蒸発乾燥型のインクとしては、例えば、溶媒として有機溶剤を用いたソルベントインク等を好適に用いることができる。また、蒸発乾燥型のインクとして、各種の水性インクを用いることも考えられる。また、印刷装置10の構成の変形例において、印刷装置10は、例えば紫外線硬化型インク等の、蒸発乾燥型以外のインクを用いて印刷を行ってもよい。この場合、印刷装置10の具体的な構成について、使用するインクに合わせて適宜変更することが好ましい。
ヘッド部12は、媒体50に対してインク滴を吐出する部分である。本例において、ヘッド部12は、複数のインクジェットヘッド102を有する。複数のインクジェットヘッドは、インクジェット方式でインク滴を吐出する印刷ヘッドであり、例えば図1(b)に示すように、予め設定された主走査方向(図中のY方向、スキャン方向)に並べて配設される。また、本例において、複数のインクジェットヘッドは、互いに異なる色のインク滴を吐出する。より具体的に、複数のインクジェットヘッド102のそれぞれは、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色等の、カラー印刷用の各色のインク滴を吐出する。
また、それぞれのインクジェットヘッド102は、例えば図1(c)に示すように、インク滴をそれぞれ吐出する複数のノズル202が所定の方向へ並ぶノズル列204を有する。また、より具体的に、インクジェットヘッド102のノズル列204において、複数のノズル202は、主走査方向と直交する副走査方向(図中のX方向、フィード方向)へ、一定のノズル間隔(ノズルピッチ)で並ぶ。また、印刷の動作時において、インクジェットヘッド102は、主走査方向へ移動しつつインク滴を吐出する主走査動作を行うことにより、それぞれのノズル202から媒体50上の各位置へインク滴を吐出する。
プラテン14は、媒体50を保持する台状部材であり、ヘッド部12と対向する位置において上面に媒体50を載置することにより、ヘッド部12と対向させて媒体50を保持する。また、本例において、プラテン14は、内部にヒータ16を収容する。
ヒータ16は、媒体50を加熱するヒータである。本例において、ヒータ16は、プラテン14内において媒体50を挟んでヘッド部12と対向する位置において、媒体50を加熱する。また、これにより、媒体50上のインクを乾燥させ、媒体50にインクを定着させる。
尚、ヒータ16は、媒体50にインクを定着させる定着手段の一例である。印刷装置10の変形例において、蒸発乾燥型以外のインクを用いる場合、ヒータ16に代えて、インクの種類に合わせた定着手段を用いることが好ましい。例えば、紫外線硬化型のインクを用いる場合には、定着手段として紫外線光源を用いることが考えられる。
主走査駆動部18は、ヘッド部12におけるインクジェットヘッド102に主走査動作を行わせる駆動部である。本例において、主走査駆動部18は、例えば、ヘッド部12における複数のインクジェットヘッド102を主走査方向へ移動させつつ、移動中の各インクジェットヘッド102に各ノズル202からインク滴を吐出させることにより、各インクジェットヘッド102に主走査動作を行わせる。
副走査駆動部20は、副走査方向へ媒体50に対して相対的に移動する副走査動作をインクジェットヘッド102に行わせる駆動部である。本例において、副走査駆動部20は、副走査方向と平行な搬送方向へ媒体50を搬送することにより、媒体50に対して相対的にインクジェットヘッド102を移動させる。また、副走査駆動部20は、主走査動作の合間に媒体50を搬送する。これにより、副走査駆動部20は、媒体50においてインクジェットヘッド102と対向する位置をずらし、媒体50において次回の主走査動作の対象となる領域を変更する。また、印刷装置10の構成の変形例においては、例えば、媒体50の位置を固定して、ヘッド部12を移動させることで副走査動作を行ってもよい。
マルチパス制御情報格納部22は、マルチパス方式での印刷動作の制御に用いる情報を格納(記憶)する格納部である。この場合、マルチパス方式とは、例えば、媒体50上の各位置に対して複数回の主走査動作を行うことで印刷を行う方式(マルチパス記録方式)もことである。マルチパス制御情報格納部22は、マルチパス方式での印刷動作の制御に用いる情報として、例えば、予め設定されたマスク(マスクデータ)を格納する。この場合、マスクとは、例えば、各回の主走査動作でインク滴の吐出対象を指定するデータである。
また、より具体的に、マスクは、例えば、各回の主走査動作で原理的に吐出可能な吐出位置の中から、マルチパス方式でのパス数に応じて、各回の主走査動作でインク滴を吐出すべき吐出位置を指定する。この場合、各回の主走査動作で原理的に吐出可能な吐出位置とは、例えば、マスクを用いずにできるだけ多くのインク滴を吐出するように主走査動作を行った場合にインク滴が吐出される吐出位置のことである。また、吐出位置は、インク滴を吐出する目標の位置であってよい。
また、本例において、マルチパス制御情報格納部22は、更に、異常ノズルが存在した場合に行う補正に用いるデータである補正用データを更に格納する。この場合、異常ノズルとは、吐出特性が予め設定された正常範囲から外れたノズル202のことである。また、この場合、ノズル列204における異常ノズル以外のノズル202については、正常ノズルとして扱う。この場合、正常ノズルとは、吐出特性が正常範囲内にあるノズルのことである。また、異常ノズルが存在した場合に行う補正の動作については、後に更に詳しく説明をする。
制御部24は、例えば印刷装置10のCPUであり、印刷装置10の各部の動作を制御する。また、より具体的に、制御部24は、例えば、印刷すべき画像を示す画像データに基づいて主走査駆動部18及び副走査駆動部20等の動作を制御することにより、媒体50に対して所望の画像をインクジェットヘッド102に印刷させる。
また、本例において、制御部24は、更に、主走査駆動部18及び副走査駆動部20等の動作を制御することにより、マルチパス方式での印刷をインクジェットヘッド102に行わせる。この場合、各回の主走査動作において、制御部24は、マルチパス制御情報格納部22に格納されているマスクに基づき、マスクで指定される吐出位置へインクジェットヘッド102にインク滴を吐出させる。また、これにより、制御部24は、各回の主走査動作において、インクジェットヘッド102におけるそれぞれのノズル202からのインク滴の吐出の制御を行う。
また、より具体的に、各回の主走査動作において、制御部24は、例えば、インクジェットヘッド102におけるズル列の各ノズル202に、マスクのパターンに従ってインク滴を吐出させる。マスクに従ってインクジェットヘッド102にインク滴を吐出させるとは、例えば、各ノズル202からインク滴を吐出する吐出位置について、マスクで指定されている吐出位置に設定することである。また、この場合、吐出位置とは、例えば、インクジェットヘッド102のノズル202からインク滴と吐出すべき媒体50上の位置のことである。また、この吐出位置は、印刷される画像を構成する複数の画素のいずれかに対応する位置である。本例によれば、例えば、マルチパス方式での印刷の動作により、媒体50に対して適切に印刷を行うことができる。
また、上記においても説明をしたように、本例の印刷装置10において、ノズル列204中に異常ノズルが含まれている場合、補正の動作を行う。この場合、制御部24は、マルチパス制御情報格納部22に格納されている補正用データに基づき、補正の動作を行う。以下、異常ノズルが存在した場合に行う補正の動作について、更に詳しく説明をする。
尚、異常ノズルが存在する場合に行う補正の動作以外の点において、本例において行うマルチパス方式の動作は、公知のマルチパス方式の動作と同一又は同様である。すなわち、異常ノズルが存在しない場合について行うマルチパス方式の動作については、公知のマルチパス方式の動作と同一又は同様であるといえる。そこで、先ず、異常ノズルが存在しない場合について行うマルチパス方式の動作について、説明をする。
図2は、本例において行うマルチパス方式の動作の一例を示す。図2(a)は、マルチパス方式の動作を簡略化して示す図であり、印刷のパス数分の主走査動作に関し、各回の主走査動作時のインクジェットヘッド102について、副走査方向における位置の例を示す。
マルチパス方式で印刷を行う場合、主走査駆動部18及び副走査駆動部20(図1参照)は、インクジェットヘッド102に、主走査動作及び副走査動作を繰り返して行わせる。また、この場合、各回の副走査動作における送り量を予め設定されたパス幅にすることで、媒体50(図1参照)の各位置とインクジェットヘッド102のノズル列との位置関係をパス幅分だけ順次ずらす。副走査動作における送り量とは、例えば、副走査動作時に媒体50に対して相対的にインクジェットヘッド102を移動させる移動量のことである。また、これにより、各回の主走査動作において媒体50の各位置へインク滴を吐出するノズルを順次変更する。より具体的に、図2(a)では、印刷のパス数を8にした場合に関し、1〜8回目の各回(1〜8パス目)の主走査動作時のインクジェットヘッド102について、副走査方向における位置を示している。
図2(b)、(c)は、マルチパス方式の動作により媒体50上に形成するインクのドット302の並びの一例を示す図であり、印刷のパス数を8(8パス)にした場合について、一のインクジェットヘッド102により形成されるインクのドットの並びの一例を示す。図2(b)は、各回の主走査動作(1〜8パス目)に形成されるインクのドット302の並びについて、主走査動作の回毎に異なる模様を付けて各ドット302示す図である。図2(c)は、図2(b)に破線で示した領域310内のドット302を抜き出して示す図である。
尚、図2(b)においては、説明の便宜上、印刷の解像度で並ぶ全ての画素の位置に対してドット302を形成した場合のドット302の並びを図示している。実際の印刷時には、必ずしも全ての画素の位置にドット302を形成するのではなく、例えば、印刷する画像に応じて選択された位置に対して、ドット302を形成する。
マルチパス方式で印刷を行う場合、例えば図2(b)に示すように、各回の主走査動作でそれぞれ異なる位置にインクのドット302を形成する。また、これにより、印刷の解像度に対応する間隔でインクのドット302が並ぶように、複数のドット302を並べて形成する。
また、この場合、より具体的に、例えば図2(b)における領域310内の8個のドット302のような所定の単位領域内のドット302に着目した場合、各回の主走査動作(1〜8パス目のそれぞれ)のそれぞれで1個のドット302を形成する。例えば、この領域310に対して行う1回目の主走査動作(1パス目)では、図2(c)において数字1を付して示したドット302を形成する。また、2〜8回目の主走査動作(2〜8パス目)のそれぞれでは、図2(c)において数字2〜8を付して示したドット302をそれぞれ形成する。このように構成すれば、例えば、マルチパル方式での動作を適切に行うことができる。
ここで、マルチパス方式で印刷を行うことで得られる効果等について、説明をする。マルチパス方式で印刷を行う場合、例えば、高い解像度での印刷を行うことや、個々のノズルの吐出特性の影響を低減すること等が可能になる。
より具体的に、媒体50の各位置に対して1回の主走査動作のみを行う場合、印刷の解像度は、インクジェットヘッド102の構成等により制限される。例えば、インクジェットヘッド102のノズル列での副走査方向におけるノズル間隔をLx0とした場合、1回の主走査動作で形成するドット302の副走査方向における最小間隔は、Lx0になる。
また、主走査動作時において、インクジェットヘッド102の各ノズルは、吐出信号に応じてインク滴を吐出する。そのため、連続してインク滴を吐出する場合における吐出の時間間隔は、駆動信号の周期に等しくなる。また、その結果、主走査動作時のインクジェットヘッド102の移動速度と駆動信号の周期との積により得られる距離をLy0とした場合、1回の主走査動作で形成するドット302の主走査方向における最小間隔は、Ly0になる。すなわち、媒体50の各位置に対して1回の主走査動作のみを行う場合、副走査方向におけるドット302間の距離はLx0以上になり、主走査方向におけるドット302間の距離はLy0以上になる。
これに対し、マルチパス方式で印刷を行う場合、各回の主走査動作(パス)でドット302を形成する位置を互いにずらすことで、最終的に得られるドット302の並びにおけるドット302間の間隔をより小さくすることができる。例えば、図2(b)に示した場合においては、1回の主走査動作で形成可能のドット302の並びの間に他の回の主走査動作でドット302を形成することで、マルチパス方式で印刷した場合の副走査方向におけるドット302間の距離LxpをLx0よりも小さくしている。また、マルチパス方式で印刷した場合の主走査方向におけるドット302間の距離LypをLy0よりも小さくしている。より具体的に、図示した場合において、Lxpは、Lx0の1/2である。また、Lypは、Ly0の1/2である。このように、マルチパス方式で印刷を行うことで、高い印刷の解像度を適切に実現できる。
また、この場合、図から明らかなように、主走査方向へ並ぶドット302の列において、異なる回の主走査動作で形成されたドット302が混在して並ぶことになる。すなわち、この場合、主走査方向へ並ぶドット302の列について、複数のノズルを用いて形成することになる。そして、この場合、一のノズルのみで一列のドット302の全てを形成する場合と比べ、ノズルの吐出特性を平均化して、個々のノズルの吐出特性の影響を抑えることができる。そのため、マルチパス方式で印刷を行うことにより、個々のノズルの吐出特性の影響を抑えることも可能になる。また、これにより、高い品質の印刷をより適切に行うことができる。
ここで、図示した場合において、1回の主走査動作で実際に形成するドット302の主走査方向における間隔は、形成可能な最小の間隔Ly0よりも大きくなっている。この場合、例えば、主走査方向へ並ぶドット302の列について、より多くの回の主走査動作に分けて形成することができる。また、これにより、個々のノズルの吐出特性の影響をより適切抑え、高い品質の印刷をより適切に行うことができる。また、より具体的に、図示した場合において、実際に1回の主走査動作で形成するドット302の主走査方向における間隔は、Ly0の2倍になっている。すなわち、この場合、原理的には1回の主走査動作で形成可能なドット302について、2回の主走査動作に分けて形成しているといえる。
また、この場合、各ドット302の位置に着目すると、一のドット302の位置へ原理的にインク滴を吐出可能な主走査動作(パス)の数が複数になっているともいえる。より具体的に、例えば、図2に示した場合において、それぞれのドット302の位置へインク滴を吐出可能な主走査動作の数は、2になっている。
図3は、一のドット302の位置へインク滴を吐出可能な主走査動作(パス)の一例を示す。図3(a)は、図2に示したマルチパス方式の動作を行う場合について、それぞれのドット302の位置へインク滴を吐出可能なパスの例を示す。
図中において、8個のマス目のそれぞれは、図2(c)に示した8個のドット302のそれぞれの位置を示す。また、各マス目において、括弧に入れずに示した数字は、通常の動作時にその位置にドット302を形成するパスを示す。この場合、通常の動作時とは、例えば、図2(c)に示した場合の動作時のことである。また、括弧に入れて示した数字は、通常の動作時にドット302を形成するパス以外で、原理的にはその位置にドット302を形成可能なパスを示す。
また、この場合、上記のように、それぞれのドット302の位置へインク滴を吐出可能なパスの数は、2になっている。そのため、それぞれのドット302の位置において、通常の動作時以外でドット302を形成可能なパスの数は1になる。より具体的に、例えば、上側の列で一番左にあるマス目の位置の場合、通常の動作時において、1パス目にドット302を形成する。また、それ以外に、原理的には、3パス目でもドット302を形成可能である。また、その他のマス目の位置においても、同様に、原理的にドット302を形成可能なパスを示している。
ここで、それぞれのドット302の位置について、通常の動作時にドット302を形成するパス以外で、原理的にドット302を形成可能なパスは、代替処理において使用可能なパスと考えることができる。また、本例においても、このような関係を利用して、後に詳しく説明をするように、異常ノズルが存在した場合の補正を行う。
また、上記の説明から明らかなように、それぞれのドット302の位置に原理的にドット302を形成可能なパスの数は、1回の主走査動作で実際に形成するドット302の主走査方向における間隔と、上記において説明をした最小間隔Ly0との関係に応じて決まる。そのため、1回の主走査動作で実際に形成するドット302の主走査方向における間隔がより大きい場合には、原理的にドット302を形成可能なパスの数も多くなる。
図3(b)は、原理的にドット302を形成可能なパスの数がより多い場合について、それぞれのドット302の位置へインク滴を吐出可能なパスの例を示す。より具体的に、図示した場合において、1回の主走査動作で実際に形成するドット302の主走査方向における間隔は、Ly0の4倍になっている。
この場合、それぞれのドット302の位置において、通常の動作時以外でドット302を形成可能なパスの数は3になる。より具体的に、例えば、上側の列で一番左にあるマス目の位置の場合、通常の動作時において、1パス目にドット302を形成する。また、それ以外に、原理的には、3、5、7パス目でもドット302を形成可能である。また、その他のマス目の位置においても、同様に、原理的にドット302を形成可能なパスを示している。
尚、1回の主走査動作で形成するドット302の主走査方向における間隔について、最小の間隔Ly0よりも多くした場合、その分だけ、必要な主走査動作の回数(パス数)が多くなる。また、その結果、印刷の速度が低下することになる。すなわち、印刷の品質と、印刷速度については、トレードオフの関係にあるといえる。そのため、印刷のパス数については、求められる印刷の品質や、必要な印刷速度等に応じて決定することが好ましい。
続いて、異常ノズルが存在した場合に行う補正の動作について、説明をする。図4は、本例において行う補正の動作の一例について説明をする図である。図4(a)は、異常ノズルが存在しない場合のドット302の並びの一例を示す図であり、印刷の解像度に応じた間隔で主走査方向へ並ぶ複数のドット302の並びの一例を示す。図4(a)に示したドット302の並びは、図2(b)に示したドット302の並びのうち、主走査方向へのドット302の並びを一列だけ抜き出して示したものである。また、図4(a)においても、図2(b)と同様に、各回の主走査動作で形成するドット302について、異なる模様を付して示している。
図2に関連しても説明をしたように、本例において、インクジェットヘッド102(図1参照)は、主走査方向へのドット302の並びを、マルチパス方式における複数回の主走査動作(パス)により形成する。また、これにより、図4(a)に示すように、主走査方向へのドット302の並びにおいては、異なる回の主走査動作で形成されたドット302が混在して並ぶことになる。
また、マルチパス方式での動作上、図4(a)において同じ模様のドット302は、ノズル列における同じノズルで形成される。また、互いに異なる模様のドット302は、互いに異なるノズルで形成される。そのため、図4(a)に示したドット302の形成に用いるノズルのうち、いずれかのノズルが異常ノズルである場合、同じ模様で示されている複数のドット302に影響が生じることになる。より具体的に、例えば、図4(a)において符号Aを付して示した位置のドット302を形成するノズルが異常ノズルである場合、符号A、B、C、Dを付して示した同じ模様のドット302において、吐出特性の異常の影響が生じることになる。また、この場合、他のドット302を形成するノズルが正常ノズルであれば、他のドット302は、正常に形成される。
これに対し、異常ノズルの影響を抑えるためには、例えば、異常ノズルを不吐出ノズルに設定して、インク滴の吐出をさせないことが考えられる。また、この場合、例えば、従来の印刷装置の構成のように、異常ノズルの代わりに他の正常ノズルでインク滴を吐出する代替処理(リカバリ)を行うことが考えられる。
図4(b)は、異常ノズルを不吐出ノズルに設定して代替処理を行う場合の例を示す。図2及び図3を用いて説明をしたマルチパス方式の動作のように、1回の主走査動作で実際に形成するドット302の主走査方向における間隔が形成可能な最小の間隔よりも大きくなっている場合、それぞれのドット302の位置へインク滴を吐出可能な主走査動作(パス)の回数は、複数回になる。より具体的に、各回の主走査動作(1〜8パス目)に形成するドット302の模様を図2(c)のように示した場合、図4(a)で符号A、B、C、Dを付したドット302は、1パス目に形成される。また、図3(a)を用いて説明したように、動作の原理上、これらの位置のドット302は、1パス目以外に、3パス目にも形成可能である。
そのため、異常ノズルを完全に不吐出ノズルに設定して代替処理を行う場合において、例えば符号A、B、C、Dを付したドット302を1パス目に形成するノズルが異常ノズルであれば、これらの位置のドット302について、3パス目に形成することが考えられる。また、図4(b)においては、このような代替処理を行った場合について、図4(a)に示したドット302の並びから符号A、B、C、Dの位置のドット302のみを抜き出して示している。
このように構成すれば、異常ノズルにドット302を形成させないことにより、異常ノズルの影響を適切に抑えることができる。また、異常ノズルの代わりに他の正常ノズルでドット302を形成することにより、ドット302が欠けること等を防ぐこともできる。
しかし、このような方法で代替処理を行った場合、上記においても説明をしたように、代替処理で形成されるインクのドットと周囲のドットとの間で、状態の違いが目立ち、印刷の品質が低下する場合もある。より具体的には、例えば、ドットを形成するタイミングが代わる影響により、代替処理で形成したドットが目立ちやすくなる場合がある。また、例えば、パス間に行う副走査動作での送り量の誤差等の影響により、代替処理で形成したドットの位置でズレが目立つ場合もある。また、これらの影響により、画像を構成する画素の状態の連続性が低下して、印刷の品質が低下する場合がある。
また、代替処理で形成したドットについては、例えば高精度(高解像度)の印刷を行う場合に特に目立ちやすい。また、例えば、紫外線硬化型インクを用いる場合のように、印刷面がマット状になる場合等にも、表面の状態による見え方の変化が顕著になり、代替処理で形成したドットが目立ちやすくなる。そのため、これらの場合には、印刷の品質が特に低下しやすいと考えられる。
また、例えばノズル列の端部付近に多くの異常ノズルが存在する場合、全ての異常ノズルを不吐出にすると、ノズル列においてインク滴を吐出可能な領域が大幅に減少することになる。また、その結果、印刷の生産性が低下することが考えられる。
これに対し、本例においては、以下において詳しく説明をするように、異常ノズルを完全に不吐出にするのではなく、異常ノズルでも一部のドット302を形成しつつ、形成するドット302の割合を減らす。このように構成すれば、例えば、代替処理により生じる問題を抑えつつ、異常ノズルの影響を抑えることができる。また、これにより、例えば、高精度の印刷を行う場合や、表面の状態による見え方の変化が顕著になる場合等でも、より適切に異常ノズルの影響を抑えることができる。また、例えばノズル列の端部付近に多くの異常ノズルが存在する場合にも、ノズル列においてインク滴を吐出可能な領域をより多く確保できる。また、これにより、代替処理により生じる印刷の生産性低下を適切に抑えることができる。
図4(c)は、本例において行う補正の動作の一例を示す図であり、図4(a)において符号A、B、C、Dを付したドット302を1パス目に形成するノズルが異常ノズルである場合について、符号A、B、C、Dの各位置のドット302を形成するパスの例を示す。図示した場合においては、符号A、B、C、Dの各位置のドット302のうち、一部の位置である符号B、Dの位置のドット302を1パス目に形成し、他の位置である符号A、Cの位置のドット302を3パス目に形成している。また、この場合、符号B、Dの位置のドット302を異常ノズルで形成し、符号A、Cの位置のドット302を他の正常ノズルで形成しているともいえる。
このように構成した場合、本来は異常ノズルで形成すべき位置のドット302の一部を他の正常ノズルで形成することにより、異常ノズルで形成するドット302を減らし、異常ノズルの影響を適切に抑えることができる。この場合、本来は異常ノズルで形成すべき位置のドット302とは、その異常ノズルが正常ノズルであったとした場合にそのノズルで形成すべき位置のドット302のことである。
また、この場合、異常ノズルについて、完全に不吐出にするのではなく、一部のドット302を異常ノズルでそのまま形成することにより、代替処理を行わない本来の状態で形成するドット302をある程度残すことができる。また、これにより、例えば、媒体上に形成されるインクのドットの並びの連続性等を高めるように、異常ノズルの位置のドット302の影響をある程度残すことができる。より具体的には、例えば、ドットを形成するタイミングが代わる影響や、送り量の誤差等の影響等のような、代替処理により生じる影響を適切に抑えることができる。
そのため、本例によれば、例えば、代替処理により生じる問題を抑えつつ、異常ノズルの影響を適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、例えば異常ノズルを完全に不吐出にして代替処理を行う場合と比べ、より自然な印象で代替処理を行うことができる。
また、本例において行う補正の動作について、より一般化して考えると、ノズル列におけるいずれかのノズルが異常ノズルである場合に、印刷装置10(図1参照)の制御部24(図1参照)により、その異常ノズルが正常ノズルであった場合に設定される正常時吐出対象位置のうちの一部の吐出位置に対して、その異常ノズルにインク滴を吐出させる構成と考えることができる。この場合、正常時吐出対象位置とは、ノズル列におけるそれぞれのノズルについて、そのノズルが正常ノズルである場合にインク滴を吐出する吐出位置のことである。例えば、図4(a)に示した場合において、1パス目にインク滴を吐出するノズルに対応する正常時吐出対象位置は、符号A、B、C、Dで示したドット302の位置になる。また、本例において、いずれかのノズルが異常ノズルである場合、制御部24は、正常時吐出対象位置における一部の吐出位置以外の吐出位置に対し、その異常ノズル以外のノズルにインク滴を吐出させる。
また、本例において、ノズル列の正常ノズルは、各回の主走査動作において、主走査方向に並ぶ複数のドット302を形成する。そのため、1回の主走査動作で一の正常ノズルによりインク滴を吐出する複数の吐出位置の並びについて、一列の正常時吐出対象位置と定義することができる。この場合、一列の正常時吐出対象位置とは、図4(a)において符号A、B、C、Dで示した複数のドット302のような、一の正常ノズルにより一回の主走査動作で形成されるドット302の並びのことである。そして、このように一列の正常時吐出対象位置を定義した場合において、ノズル列におけるいずれかのノズルが異常ノズルである場合、制御部24の動作について、一の回の主走査動作において、一列の正常時吐出対象位置のうちの一部の吐出位置に対して、その異常ノズルにインク滴を吐出させる動作と考えることができる。また、この場合、制御部24は、例えば、他の回の主走査動作において、その一列の正常時吐出対象位置における上記一部の吐出位置以外の吐出位置に対し、その異常ノズル以外のノズルにインク滴を吐出させる。
また、このように一般化した考え方から明らかなように、一部のドット302を異常ノズルで形成する場合において、異常ノズルにインク滴を吐出させる吐出位置については、図4(c)に示した場合に限らず、様々に変更可能である。この場合、異常ノズルにインク滴を吐出させる吐出位置とは、異常ノズルによってドット302を形成する位置のことである。
図4(d)、(e)は、異常ノズルにインク滴を吐出させる吐出位置の他の例を示す。図4(d)に示した場合においては、符号A、B、C、Dの各位置のドット302のうち、符号Cの位置のドット302を1パス目に異常ノズルで形成し、他の符号A、B、Dの位置のドット302を3パス目に他の正常ノズルで形成している。図4(e)に示した場合においては、符号A、B、C、Dの各位置のドット302のうち、符号A、C、Dの位置のドット302を1パス目に異常ノズルで形成し、他の符号Bの位置のドット302を3パス目に他の正常ノズルで形成している。これらの場合も、例えば、代替処理により生じる問題を抑えつつ、異常ノズルの影響を適切に抑えることができる。
また、異常ノズルにインク滴を吐出させる吐出位置を選択する選択比率については、複数段階で変更可能にすることが好ましい。この場合、異常ノズルにインク滴を吐出させる吐出位置を選択する選択比率とは、例えば、本来は異常ノズルで形成すべき位置のドット302のうち、他の正常ノズルによってドット302を形成せずに、異常ノズルをそのまま用いて形成するドット302の比率のことである。
この場合、印刷装置10において、制御部24は、例えば、この選択比率について、複数段階で変更可能な構成を有する。そして、インクジェットヘッド102のノズル列においていずれかのノズルが異常ノズルである場合、制御部24は、選択比率に応じて正常時吐出対象位置の中から選択される吐出位置に対して、その異常ノズルにインク滴を吐出させる。
また、この場合、例えば、異常ノズルについて、吐出特性の異常度合に応じて選択比率を決定することが考えられる。より具体的に、例えば、吐出特性が正常範囲により近い場合、より多くの吐出位置を選択する選択比率を用いることが考えられる。また、吐出特性が正常範囲からより離れている場合、より少ない吐出位置を選択する選択比率を用いることが考えられる。
また、選択比率を複数段階で変更可能にする場合、印刷装置10におけるマルチパス制御情報格納部22(図1参照)において、異常ノズルの異常度合を示す情報を格納することが好ましい。このように構成すれば、例えば、異常ノズルの異常度合に応じた選択比率をより適切に設定することができる。
ここで、上記においては、例えば図4(b)〜(e)に示すように、主に、一の異常ノズルの代替を一の正常ノズルで行う場合について、説明をした。この場合において、いずれかのノズルが異常ノズルである場合、制御部24は、その異常ノズルに対応する正常時吐出対象位置における一部の吐出位置以外の吐出位置に対し、その異常ノズル以外の一のノズルにインク滴を吐出させる。
しかし、異常ノズルと、代替に用いる正常ノズルとの関係は、1対1に限らず、例えば、1対多(複数)の関係にしてもよい。より具体的に、例えば、マルチパス動作でのパス数がより多い場合等のように、同じドット302の位置に対して原理的にインク滴を吐出可能な主走査動作(パス)の数が3以上である場合、上記のような1対多の関係を用いることが考えられる。この場合において、いずれかのノズルが異常ノズルである場合、制御部24は、例えば、その異常ノズルに対応する正常時吐出対象位置における一部の吐出位置以外の吐出位置に対し、その異常ノズル以外の複数のノズルにインク滴を吐出させる。
図4(f)は、本例において行う補正の動作の他の例を示す図であり、一の異常ノズルに対して複数の正常ノズルで代替処理を行う場合の動作の一例を示す。尚、この場合、1回の主走査動作で形成可能のドット302の並びの間隔と、印刷の解像度との関係は、図4(a)〜(e)を用いて説明をした場合と一部異ならせている。より具体的に、図4(f)に示した場合においては、例えば図3(b)を用いて説明をした場合のように、1パス目に形成するドット302の位置に対し、3パス目のみではなく、5、7パス目にもインク滴を吐出可能な構成になっている。
また、図において、符号A、B、C、Dで示したドット302の位置は、異常ノズルに対応する正常時吐出対象位置の一例であり、例えば、本来は1パス目に一のノズルで形成するドット302の位置の例を示す。そして、図示した場合においては、符号A、B、C、Dの各位置のドット302のうち、符号Cの位置のドット302のみを1パス目に異常ノズルで形成し、他の符号A、B、Dの位置のドット302を他の回のパスにおいて他の正常ノズルで形成している。また、この場合、より具体的に、例えば、それぞれ異なる正常ノズルにより、符号Bの位置のドット302を3パス目に、符号Aの位置のドット302を5パス目に、符号Dの位置のドット302を7パス目に形成する。このように構成すれば、例えば、一の正常ノズルのみで代替処理を行う場合と比べ、代替処理に用いる正常ノズルの特性を複数のノズルで平均化することができる。また、これにより、例えば、より高い品質での代替処理が可能になる。
以上のように、本例によれば、例えば、異常ノズルの影響を適切に抑え、高い品質の印刷を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、ノズルの異常に対し、より適切な方法で対処することができる。
続いて、異常ノズルが存在した場合に行う補正の動作に関し、代替処理のより具体的な方法等について、説明をする。上記においても説明をしたように、マルチパス方式で印刷を行う場合、制御部24は、各回の主走査動作においてインク滴を吐出する位置を、予め設定されたマスクに基づいて決定する。例えば、本例において、制御部24は、マルチパス制御情報格納部22に格納されているマスクに基づき、マスクで指定される吐出位置へインクジェットヘッド102にインク滴を吐出させる。また、マスクにおいては、マスクのパターンに応じて、ノズル列における各ノズルに対し、各回の主走査動作においてインク滴を吐出する比率であるデューティが設定されている。このデューティは、例えば印刷のパス数に応じて予め設定された比率であり、1回の主走査動作によりそれぞれのノズルによりインク滴を吐出する吐出位置の割合を示す。
また、マルチパス方式での各回の主走査動作において、制御部24の制御に応じて、主走査駆動部18(図1参照)は、ノズル列におけるそれぞれのノズルに、主走査方向へ並ぶ複数の吐出位置のうち、デューティに応じて選択した一部の吐出位置に対し、インク滴を吐出させる。この場合、主走査方向へ並ぶ複数の吐出位置とは、例えば、印刷の解像度に対応する間隔で主走査方向へ並ぶ複数の吐出位置のことである。
また、本例において、制御部24は、異常ノズルの位置に応じてデューティを補正することにより、上記において説明をした代替処理の動作を行う。この場合、より具体的に、制御部24は、例えば、マスクを補正することでデューティの補正を行う。また、制御部24は、例えば、マルチパス制御情報格納部22に格納されている補正用データに基づき、デューティの補正を行う。この場合、マルチパス制御情報格納部22は、補正用データとして、例えば、ノズル列における異常ノズルの位置や、異常ノズルの異常の程度(異常度合)等を格納することが好ましい。
図5は、デューティを補正する動作について説明をする図である。尚、以下の説明においては、ノズル列における全てのノズルが正常ノズルである場合にそれぞれのノズルに対して設定されるデューティを正常時デューティと定義する。この正常時デューティは、例えば、異常ノズルの存在時におけるデューティの補正を行う前のデューティである。また、いずれかのノズルが異常ノズルである場合にそれぞれのノズルに対して設定されるデューティを異常時デューティと定義する。この異常デューティは、例えば、異常ノズルの存在時におけるデューティの補正を行った後のデューティである。
図5(a)は、デューティを補正する動作の一例を示す図であり、ノズル列の各ノズルに対する正常時デューティとして均一なデューティが設定されている場合の補正の動作の例を示す。図において、領域402a〜hは、マルチパス方式のパス数に応じてノズル列204を分割した領域である。各回のパスにおいて、インクジェットヘッド102(図1参照)は、領域402a〜hのそれぞれに含まれるノズルにより、媒体上にインク滴を吐出する。また、図中において、文字Errorと共に示した矢印は、ノズル列に存在する異常ノズルの位置を示す。
また、図5(a)に図示した場合において、各ノズルに対する正常時デューティは、一定の値の直線状に設定されている。これに対し、いずれかのノズルが異常ノズルである場合、その異常ノズルのデューティを下げることにより、異常ノズルにより形成するドットの割合を低下かせる。より具体的に、この場合、印刷装置10(図1参照)における制御部24(図1参照)は、異常ノズルに対する異常時ディーティとして、0より大きく、かつ、正常時デューティよりも小さな値(0<異常時デューティ<正常時デューティ)を設定する。
また、この場合、異常ノズルに対して下げたデューティに応じて、他のノズルのデューティを大きくする。より具体的に、この場合、制御部24は、異常ノズル以外のいずれかの正常ノズルに対し、正常時デューティよりも大きな値の異常時デューティ(正常時デューティ<異常時デューティ)を設定する。また、この場合、デューティを上げる正常ノズルとして、例えば、他の回のパスにおいて異常ノズルの代わりにドットを形成可能なノズルを選択する。また、これにより、他の回のパスにおいて、一部のドットの位置に対し、異常ノズルに代わって正常ノズルにインク滴の吐出を行わせる。
このように構成すれば、例えば、異常ノズルに一部の吐出位置へインク滴を吐出させつつ、異常ノズルの代替処理を適切に行うことができる。また、これにより、異常ノズルの影響を適切に抑え、高い品質の印刷を適切に行うことができる。
ここで、異常ノズル等に対するデューティの補正について、最も単純に行うためには、1個のノズル単位で補正を行い、1個の異常ノズルと、その異常ノズルに対応する1個の正常ノズルのみを対象にすることが考えられる。しかし、上記のようなデューティの補正について、例えば1個のノズル単位で行った場合、例えば、ノズル列全体に対する補正後の異常時デューティにおいて、異常ノズル等の位置でのみ値が大きく変化すること等により、補正を行った箇所が目立ちやすくなるおそれがある。
そのため、異常ノズルに対するデューティの補正においては、異常ノズルのみを対象にするのではなく、異常ノズルとその周囲の正常ノズルとを含む複数のノズルに対して行うことが好ましい。例えば、いずれかのノズルが異常ノズルである場合、制御部24は、異常ノズルを含んで並ぶ複数のノズルのそれぞれに対する異常時ディーティとして、0より大きく、かつ、正常時デューティよりも小さな値を設定することが好ましい。また、より具体的に、本例においては、異常ノズルを含んで並ぶ複数のノズルとして、例えば、ノズル列において連続して並ぶ複数のノズルを選択する。この場合、連続して並ぶ複数のノズルを選択するとは、例えば、間に非選択のノズルを挟まずに、ノズル列中の一部の領域に並ぶ複数のノズルを選択することである。
また、この場合、異常ノズル側の補正量に合わせて、異常ノズルの代わりにインク滴を吐出する正常ノズルに対しても、その正常ノズルと周囲の正常ノズルとを含む複数のノズルに対して、デューティの補正を行う。
このように構成すれば、例えば、複数のノズルを単位にしたデューティの補正を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、異常ノズルのみのデューティを変更する場合と比べ、より自然な補正を行うことができる。また、例えば、周囲との連続性をより高めつつ、代替処理をより適切に行うことができる。
また、異常ノズルの周囲のノズルも含む複数のノズルに対するデューティの補正を行う場合、それぞれのノズルに対する補正量を異ならせてもよい。この場合、補正後の異常時ディーティがより滑らかに変化するように、各ノズルに対する補正量を設定することが好ましい。異常時ディーティがより滑らかに変化するとは、例えば、各ノズルの補正量を同一にした場合よりも異常時ディーティがより滑らかに変化することである。
また、補正の対象とする範囲の幅、すなわち、異常ノズルを含む複数のノズルが連続して並ぶ領域の副走査方向における幅については、視覚的に目立たず、かつ、大きくなりすぎない範囲の幅にすることが好ましい。より具体的には、この幅について、例えば、視覚の感度の空間周波数特性におけるピーク波長の2倍よりも大きく、かつ、マルチパス方式におけるパス幅よりも小さくすること等が考えられる。また、補正の対象とする範囲の幅は、視覚の感度の空間周波数特性におけるピーク波長よりも十分に大きく(例えば、ピーク波長の5倍以上に)することが好ましい。このように構成すれば、例えば、補正を行った領域が目立つことをより適切に防ぐことができる。また、この場合、補正の対象とする範囲の幅をパス幅よりも小さくすることにより、異常ノズル等の代わりにデューティを大きくするノズルを容易かつ適切に選択することができる。
また、実用上、補正の対象とする範囲の幅については、例えば、異常ノズルを含んで連続して並ぶ3〜20個程度のノズルを対象にすることが考えられる。また、この範囲は、例えば、連続して並ぶ5〜10個程度のノズルを対象にすることがより好ましい。
尚、例えば従来の構成のように、異常ノズルを完全に不吐出にする場合、このような複数のノズル単位での補正を行うと、周囲と状態の違いが目立つバンド状の領域が発生し、印刷の品質が大きく低下するおそれがある。また、異常ノズル等の代わりにインク滴を吐出する正常ノズルの負担が大きくなり、インクジェットヘッドの寿命が短くなるおそれもある。これに対し、本例においては、異常ノズルを完全に不吐出にはしないことにより、これらの問題を適切に抑えることができる。また、これにより、複数のノズル単位での補正をより適切に行うことができる。
また、正常時デューティの設定については、上記のような均一な場合に限らず、様々に変更してもよい。図5(b)は、デューティを補正する動作の他の例を示す図であり、ノズル列の各ノズルに対する正常時デューティとして均一以外のデューティを設定する場合の補正の動作の例を示す。
より具体的に、図5(b)においては、正常時デューティとして、ノズル列の中央部に比べて端のノズルの使用率が低くなるようなデューティを用いている。また、各位置でのノズルの使用率について、ノズル列の中央で最も高くなり、端に向かって徐々に低くしている。このような正常時デューティを用いた場合、例えば、各回の主走査動作での印刷結果をグラデーション状にして、印刷結果に影響を与えやすいノズル列の端のノズルで形成するインクのドットを少なくできる。また、これにより、例えば、高品質な印刷をより適切に行うことができる。
また、このような正常時デューティの設定を用いる場合も、図5(a)を用いて説明をした場合と同様に、デューティの補正を行うことができる。より具体的に、この場合も、異常ノズルに対するデューティを0にならない範囲で下げ、かつ、異常ノズルに対して下げたデューティに応じて、他のノズルのデューティを大きくする。また、この場合も、デューティの補正において、異常ノズルのみを対象にするのではなく、異常ノズルとその周囲の正常ノズルとを含む複数のノズルに対して行うことが好ましい。この場合も、異常ノズルの影響を適切に抑え、高い品質の印刷を適切に行うことができる。
ここで、異常ノズルに対するデューティの変更については、上記のように、異常ノズルとその周囲の正常ノズルとを含む複数のノズルに対して行うことが好ましい。また、この場合において、複数のノズルについては、例えば、異常ノズルを中心にして並ぶ複数のノズルを選択すること等が考えられる。また、より簡易に補正を行うためには、例えば、ノズル列におけるノズルを予めグループ分けしておき、そのグループを単位に補正を行うこと等も考えられる。
図6は、予め設定されたグループ単位でデューティの補正を行う構成の一例を示す図であり、ノズル列204において一のパス分の領域402に含まれる複数のノズルを複数のグループ404に分ける場合の構成の一例を示す。図6において、領域402は、図5に示した領域402a〜hのいずれかに対応する領域である。
この場合、印刷装置10(図1参照)における制御部24(図1参照)は、ノズル列204における複数のノズル202について、連続して並ぶ複数のノズル202をそれぞれ含む複数のグループ404に分けて管理する。また、異常ノズルが存在する場合のデューティの補正について、グループ404単位でのデューティの変更を行う。より具体的に、例えば、いずれかのノズルが異常ノズルである場合、制御部24は、その異常ノズルを含むグループ404に含まれるそれぞれのノズルについて、異常時ディーティとして、0より大きく、かつ、正常時デューティよりも小さな値を設定する。また、異常ノズルを含むグループ404に対する代替処理として、異常ノズルの代わりに使用する正常ノズルを含むグループ404に含まれるそれぞれのノズルについて、異常時ディーティとして、正常時デューティよりも大きな値を設定する。このように構成すれば、例えば、より簡易かつ適切にデューティの補正を行うことができる。
また、この場合、ノズル列におけるどのノズルが異常ノズルであるかを完全に特定しなくても、例えば異常ノズルがどのグループ404に含まれているかがわかれば、補正の対象とするグループ404を決定することができる。そのため、この点でも、異常ノズルに対する代替処理をより簡易かつ適切に行うことができる。
ここで、印刷装置10においては、それぞれのノズルの吐出特性を確認するためのテストパターン(テストチャート)を印刷する場合がある。そして、このようなグループ単位での補正を行う場合、例えば、グループ404単位での吐出特性を確認可能なテストパターンを印刷することが好ましい。この場合、テストパターンとして、例えば、ノズル列におけるそれぞれのグループ404と対応付けられたパターンを含むパターンを用いることが考えられる。
このように構成すれば、異常ノズルがどのグループ404に含まれているかについて、より容易かつ適切に確認できる。また、これにより、異常ノズルに対する代替処理をより簡易かつ適切に行うことができる。
続いて、本例において行う補正の動作について、補足説明等を行う。上記においても説明をしたように、異常ノズルにインク滴を吐出させる吐出位置を選択する選択比率については、複数段階で変更可能にすることが好ましい。そして、この場合、デューティの補正時において、デューティの変化量を複数段階で変更可能にすることが好ましい。
また、本例においては、異常ノズルを完全に不吐出にしないことで、より高い品質での印刷を実現している。しかし、異常ノズルの状態によっては、異常ノズルを不吐出に設定してもよい。例えば、異常ノズルについて、その異常ノズルの吐出特性が正常範囲に対して予め設定された許容範囲を超えて外れている場合、その異常ノズルを完全に不吐出に設定してもよい。この場合、制御部24は、その異常ノズルにインク滴を吐出させず、その異常ノズルに対応する全ての正常時吐出対象位置に対し、その異常ノズル以外のノズルにインク滴を吐出させる。
このように構成すれば、例えば、異常度合の大きなノズルが存在する場合にも、より適切に代替処理を行うことができる。また、この場合、例えば、ノズルの詰まり等で不吐出ノズルが発生した場合にも、適切に代替処理を行うことができる。
また、ノズル列のおける各ノズルの異常としては、例えば、吐出速度や吐出方向(曲がり角度)の異常や、インク滴の量(ボリューム)の異常等が考えられる。また、インク滴の量の異常としては、例えば、ボリューム不足の場合、ボリュームが過剰な場合、又は完全に不吐出な場合等が考えられる。
これに対し、各ノズルの異常を確認する方法としては、例えば、NCU(ノズルチェックユニット)を用いる方法、テストパターン(テストチャート)を用いる方法、ヘッド特性パラメータデータを用いる方法等が考えられる。ヘッド特性パラメータとは、インクジェットヘッドの特性を示すデータであり、例えば、インクジェットヘッドの製造者から提供される。
また、この場合、NCUを用いる方法では、例えば、吐出速度の異常等を適切に確認できる。また、テストパターンを用いる方法では、例えば、着弾位置のズレを確認することで、吐出速度及び吐出方向の複合的な異常等を確認できる。また、形成されるドットのドット径を確認することで、インク滴の量の異常を確認することもできる。また、ヘッド特性パラメータデータを用いる方法では、吐出速度や吐出方向の異常や、インク滴の量の異常等を確認することができる。
また、吐出特性の正常範囲は、例えば、各ノズルの異常を確認する方法に応じて予め設定される。また、例えば複数の方法で各ノズルの異常を確認する場合、それぞれの方法毎に正常範囲を設定することが好ましい。この場合、吐出特性が正常範囲から外れるとは、いずれかの方法でノズルの異常を確認した場合に吐出特性が正常範囲から外れることであってよい。
また、本例においては、これらの様々な方法で確認したノズルの異常に基づき、デューティの補正を行う。また、これにより、インクジェットヘッドの状態に合わせて、例えば、デューティにより指定されるグラデーションの割合や使用するノズル数等を変更する。このように構成すれば、例えば、ノズル列中の異常ノズルについて、どの程度使用するかを適切に調整できる。また、これにより、異常ノズルをある程度使用しつつ、異常ノズルに対する代替処理を適切に行うことができる。
また、上記においても説明をしたように、デューティの補正は、異常ノズルの異常度合に応じて設定することが好ましい。この場合、異常ノズルの異常度合とは、例えば、吐出速度、吐出方向、及びインク滴の容量等のそれぞれについての、正常範囲からのズレ量のことである。
また、上記においても説明をしたように、このようなデューティの補正については、マルチパス方式で用いるマスクの補正により行うことができる。そのため、このようなデューティの補正については、例えば、異常ノズルに対応したマスクの設定を用いる動作と考えることができる。
また、上記においては、異常ノズルに対する代替処理として、主に、異常ノズルによる本来の吐出位置と同じ位置へ正常ノズルによりインク滴を吐出する場合について、説明をした。しかし、異常ノズルをある程度使用しつつ、異常ノズルに対する代替処理を行うという観点で考えた場合、異常ノズルの代わりに使用する正常ノズルでのインク滴の吐出位置は、異常ノズルと完全に同じ位置ではなく、その近隣の位置であってもよい。また、この場合、代替用の正常ノズルとして、必ずしも他の回の主走査動作でインク滴と吐出するノズルではなく、同じ回の主走査動作(同一パス内)でインク滴を吐出するノズルを用いてもよい。すなわち、本例において行う代替処理においては、代替用の正常ノズルとして、他の回の主走査動作において異常ノズルと同じ位置に来る他のノズルに限らず、同一のパス内で異常ノズルの近辺でインク滴を吐出する周囲のノズルを用いることも考えられる。
また、デューティの設定やデューティの補正の仕方については、上記において説明をした形態に限らず、様々な形態で行うことができる。図7〜9は、デューティの設定及び補正の仕方の様々な例を示す。図7(a)、(b)、図8(a)、(b)、(c)、図9(a)、(b)は、デューティの設定及び補正の例を示す。
尚、これらの各図においては、補正前のデューティである正常時デューティについて、通常時(before)のデューティとして示している。また、吐出特性として、異常ノズルの位置を示している。吐出特性のグラフのうち、0を示す線から外れている位置が、異常ノズルの位置である。また、この場合、異常の度合の大きさについて、0から離れる距離で示している。また、異常ノズルの位置に合わせて補正を行った後のデューティである異常時デューティについて、変更後(after)のデューティとして示している。
また、これらの図のうち、図7(a)は、図5(b)に示した場合と同一又は同様の正常時デューティを用いる場合において、ノズル列の両端付近に異常ノズルが存在する場合の例を示す。この場合、ノズル列の両端でのデューティを下げることにより、異常ノズルの使用率を低下させる。また、この変更に合わせてノズル列の中央付近のデューティを上げることにより、正常ノズルによる代替処理を行う。このように構成すれば、例えば、異常ノズルを使用しつつ、代替処理を適切に行うことができる。
また、図7(b)は、図7(a)と同様の正常時デューティを用いる場合において、ノズル列の一方の端付近に異常ノズルが存在する場合の例を示す。この場合、ノズル列の一方の端でのデューティを下げることにより、異常ノズルの使用率を低下させる。また、この変更に合わせてノズル列の中央付近のデューティを上げることにより、正常ノズルによる代替処理を行う。このように構成すれば、例えば、異常ノズルを使用しつつ、代替処理を適切に行うことができる。
尚、この場合、図中に示すように、補正後の異常時デューティにおいて、ノズル列の中央でのデューティの変化が不連続になると考えられる。そのため、ノズル列の一方の端のみに異常ノズルが存在する場合にも、図7(a)に示す場合と同様に、ノズル列の両側のデューティを下げてもよい。このように構成すれば、例えば、異常時デューティに不連続な部分が発生することを適切に防ぐことができる。
また、図8は、図7(a)と同様の正常時デューティを用いる場合において、ノズル列の端以外の位置に異常ノズルが存在する場合の例を示す。図8(a)は、ノズル列の中央付近に異常ノズルが存在する場合の例を示す。この場合、ノズル列の中央付近でのデューティを下げることにより、異常ノズルの使用率を低下させる。また、この変更に合わせてノズル列の両端付近のデューティを上げることにより、正常ノズルによる代替処理を行う。このように構成すれば、例えば、異常ノズルを使用しつつ、代替処理を適切に行うことができる。
また、図8(b)、(c)は、ノズル列の端及び中央付近以外に異常ノズルが存在する場合の例を示す。この場合も、ノズル列において異常ノズルが存在する位置でのデューティを下げることにより、異常ノズルの使用率を低下させる。また、この変更に合わせてノズル列の他の対応箇所のデューティを上げることにより、正常ノズルによる代替処理を行う。
また、より具体的に、図8(b)は、異常時デューティにおいてデューティを変化させた位置でのデューティの変化(傾き)が周囲に対して逆にならないように補正を行う場合の例を示す。図8(c)は、異常時デューティにおいてデューティを変化させた位置でのデューティの変化(傾き)が周囲に対して逆になることを許容して補正を行う場合の例を示す。これらの場合も、例えば、異常ノズルを使用しつつ、代替処理を適切に行うことができる。
図9は、図7(a)と異なる正常時デューティを用いる場合の例を示す。図9(a)、(b)は、ノズル列の中央部と比べて端のノズルの使用率が低くなり、かつ、ノズル列における所定の位置でステップ状にノズル列の使用率を変化させる正常時デューティを用いる場合において、ノズル列の一方の端付近に異常ノズルが存在する場合の例を示す。このような正常時デューティを用いる場合にも、異常ノズルの位置でのデューティを下げ、かつ、対応する他の位置のノズルのデューティを上げることにより、適切にデューティを補正することができる。
また、より具体的に、図9(a)は、正常時デューティの傾斜(傾き)を維持しつつ、異常ノズル及び他の対応位置のノズルのデューティを変化させる場合の例を示す。また、図9(b)は、デューティの傾斜も変化させつつ、異常ノズル及び他の対応位置のノズルのデューティを変化させる場合の例を示す。これらの場合も、例えば、異常ノズルを使用しつつ、代替処理を適切に行うことができる。