JP2017145485A - 高強度高延性鋼板の製造方法 - Google Patents

高強度高延性鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】引張強度(TS)が780MPa以上で、TS×伸び(EL)が25000MPa%以上の、強度−延性バランスを確保しつつ、従来技術よりも生産性に優れた高強度高延性鋼板の製造方法を提供する。【解決手段】成分組成が、質量%で、C:0.05〜0.30%、Si:0〜2.0%、Mn:4.0〜10.0%、Al:0〜2.5%、P:0%超0.03%以下、S:0%超0.01%以下であり、残部が鉄および不可避的不純物からなる、熱延板または冷延板を、(Ae1+Ae3)/2以上[Ae3+50℃]以下の高温域において、[最高到達温度−10℃]以上の温度での滞在時間が3〜200sとなるように滞在させたのち、引き続きAe1以上((Ae1+2×Ae3)/3以下で且つ前記高温域における最高到達温度から20℃以上低い低温域において、±1℃/s以内の温度変化で30〜300s滞在させる焼鈍工程を備えた高強度高延性鋼板の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、自動用薄鋼板などとして有用な高強度高延性鋼板の製造方法に関し、詳しくは、Mnを4〜10質量%程度含有する中Mn鋼からなる鋼板の製造方法に関するものである。
例えば自動車の骨格部品などに使用される鋼板には、衝突安全性や車体軽量化による燃費軽減などを目的として高強度が求められるとともに、形状の複雑な骨格部品に加工するために優れた成形加工性も要求される。このため、具体的な機械的特性(以下、単に「特性」ともいう。)として、引張強度(TS)が780MPa以上で、TS×伸び(EL)が25000MPa%以上を確保する高強度高延性鋼板が使用されている。
上記特性を備えた鋼板として、強度−延性バランスに優れる、Mn含有量が4〜10質量%程度の中Mn鋼が注目されている。
たとえば、特許文献1には、熱間圧延後の鋼板をAc1〜Ac1+100℃の到達温度で3分以上保持する熱処理を施した後、そのまま、または20%以上の圧下率で冷間圧延した後、Ac1−30℃〜Ac1+100℃の到達温度で1分以上保持する焼鈍を施すことで中Mn鋼を製造する方法が開示されている。
また、特許文献2には、熱間圧延後の鋼板をAr1〜Ar1+(Ar1ーAr3)/2で巻取り、200℃以下まで冷却した後、Ac1−200℃〜Ac1で30min以上保持した後、冷間圧延を施し、その後、Ac1〜Ac1+(Ar1−Ar3)/2で30s以上360min以下の保持を行うことで中Mn鋼を製造する方法が開示されている。
中Mn鋼は、焼鈍工程において、セメンタイト等の炭化物を溶解させ、フェライト中からオーステナイト中へのMnの濃化を起こさせることによって、強度−延性バランスを向上させようとするものである。
しかしながら、従来技術のように焼鈍温度を一定温度として炭化物の溶解とオーステナイトへのMnの濃化を進めようとしても、焼鈍温度を高くすると炭化物の溶解は促進されるものの平衡でのオーステナイト中のMn濃度が低くなるためオーステナイト中へのMnの濃化の度合が小さくなる一方、焼鈍温度を低くすると炭化物の溶解に時間が掛かるため生産性が低くなるという問題があった。
さらに、強度を確保しようとして長時間の焼鈍を行うと、マルテンサイトや加工フェライトなど母相中の歪が緩和され回復(転移密度の低下)が進行し却って強度が低下してしまうため、鋼板全体の強度確保が困難になる問題もあった。
国際公開第2013/061545号パンフレット 特開2013−76162号公報
そこで本発明の目的は、引張強度(TS)が780MPa以上で、TS×伸び(EL)が25000MPa%以上の、強度−延性バランスを確保しつつ、従来技術よりも生産性に優れた高強度高延性鋼板の製造方法を提供することにある。
本発明の第1発明に係る高強度高延性鋼板の製造方法は、
成分組成が、質量%で、
C:0.05〜0.30%、
Si:0〜2.5%、
Mn:4.0〜10.0%、
Al:0〜2.0%、
P:0%超0.03%以下、
S:0%超0.01%以下であり、
残部が鉄および不可避的不純物からなる、
熱延板または冷延板を、
(Ae1+Ae3)/2以上[Ae3+50℃]以下の高温域において、[最高到達温度−10℃]以上の温度での滞在時間が3〜200sとなるように滞在させたのち、
引き続きAe1以上(Ae1+2×Ae3)/3以下で且つ前記高温域における最高到達温度から20℃以上低い低温域において、±1℃/s以内の温度変化で30〜300s滞在させる焼鈍工程
を備えたことを特徴とするものである。
本発明の第2発明に係る高強度高延性鋼板の製造方法は、
上記第1発明において、
前記熱延板または冷延板の成分組成が、さらに、質量%で、
Cr、Mo、Ni、Cuの1種または2種以上を合計量で0%超1.0%以下含むものである。
本発明の第3発明に係る高強度高延性鋼板の製造方法は、
上記第1または第2発明において、
前記熱延板または冷延板の成分組成が、さらに、質量%で、
V、Nb、Tiの1種または2種以上を合計量で0%超0.2%以下含むものである。
本発明によれば、Mnを4〜10質量%含有する鋼において、焼鈍工程として、2相域の高温側ないしオーステナイト単相域に少し入った高温域でごく短時間加熱した後に、2相域の低温域で従来技術より短い時間加熱する2段階加熱方式を採用したことで、焼鈍工程での合計加熱時間は従来技術より大幅に短縮されたうえ、炭化物の溶解を促進しつつ、オーステナイト中へのMnの濃化を加速し、さらには、母相の回復(転位密度の低下)を抑制することが可能となり、その結果、目標の強度−延性バランスを確保しつつ、従来より高生産性で高強度高延性鋼板を製造できるようになった。
本発明者らは、上記課題を解決するために、中Mn鋼において、炭化物の溶解を促進しつつ、オーステナイト中へのMnの濃化を加速させ、さらには母相の回復を抑制する手段について、以下の思考フローにより検討を行った。
・炭化物の溶解の促進
強度−伸びバランスを確保するために、フェライトとオーステナイトの分率を理想的な分率に調整しようとして2相域の中央付近の温度で加熱保持すると、炭化物(セメンタイト)からオーステナイトへの逆変態の駆動力が小さくなり、炭化物の溶解の進行が遅くなる。そこで、炭化物の溶解を促進させるため、まず、第1段階として、加熱温度を2相域の中央付近の温度より高める。
・オーステナイト中へのMnの濃化の加速
上記のように、炭化物の溶解を促進するために加熱温度を2相域の中央付近の温度より上昇させると、熱力学上の平衡関係より、オーステナイト中の平衡Mn濃度が低下するため、Mnの濃化が起こりにくくなる。そこで、つぎに、第2段階として、2相域の中央付近の温度より低い温度で加熱することで、Mnの拡散速度は低くなるものの、オーステナイト中の平衡Mn濃度を高めることによってフェライト中からオーステナイト中へのMnの分配を進行させることができる。また、低い温度での加熱によりオーステナイトの粗大化を抑制し、強度低下を防止できる。
・母相の回復の抑制
上記のようにして実質的に高温での滞在時間を短くすることで、母相中における転位密度の低下を抑制し、強度の確保をしやすくする。
本発明者らは、上記思考フローに基づき、後記実施例に示す確証試験によってさらに検討を進めた結果、本発明を完成するに至った。
このようにして完成した、本発明に係る高強度高延性鋼板の製造方法は、
成分組成が、質量%で、
C:0.05〜0.30%、
Si:0〜2.5%、
Mn:4.0〜10.0%、
Al:0〜2.0%、
P:0%超0.03%以下、
S:0%超0.01%以下であり、
残部が鉄および不可避的不純物からなる、
熱延板または冷延板を、
(Ae1+Ae3)/2以上[Ae3+50℃]以下の高温域において、[最高到達温度−10℃]以上の温度での滞在時間が3〜200sとなるように滞在させたのち、
引き続きAe1以上(Ae1+2×Ae3)/3以下で且つ前記高温域における最高到達温度から20℃以上低い低温域において、±1℃/s以内の温度変化で30〜300s滞在させる焼鈍工程
を備えたことを特徴とするものである。
以下、本発明をさらに詳しく説明するため、要件ごとに分説する。
〔熱延板または冷延板の成分組成〕
まず、本発明に用いる熱延板または冷延板の成分組成、すなわち、最終製品としての鋼板(以下、単に「鋼板」ともいう。)の成分組成について説明する。以下、化学成分の単位はすべて質量%である。また、各成分の「含有量」を単に「量」と記載することもある。
C:0.05〜0.30%
Cは、鋼板中の残留オーステナイトの量に寄与することで、鋼板の強度と延性を確保するために必須の元素である。このような作用を有効に発揮させるためには、鋼板中にCを0.05%以上、好ましくは0.06%以上、さらに好ましくは0.07%以上含有させる必要がある。ただし、鋼板中のC量が過剰になると、溶接性を劣化させるので、鋼板中のC量は0.30%以下、好ましくは0.28%以下、さらに好ましくは0.26%以下とする。
Si:0〜2.5%
Siは、固溶強化により鋼板の強度上昇に寄与するとともに、残留オーステナイトの分解を抑制することで残留オーステナイト量を確保できるようにして延性の向上に寄与する元素であるので、鋼板中に含有させてもよい。これらの作用を効果的に発揮させるためには、鋼板中にSiを0.1%以上、好ましくは0.3%以上、さらに好ましくは0.5%以上含有させるのが好ましい。ただし、鋼板中のSi量が過剰になると、母相の延性が劣化して鋼板の延性が却って劣化するので、鋼板中のSi量は2.5%以下、好ましくは2.3%以下、さらに好ましくは2.1%以下に制限する必要がある。
Mn:4.0〜10.0%
Mnは、鋼板中に残留オーステナイトを多量に確保するために、非常に有効であるとともに、残留オーステナイトに濃化して残留オーステナイトの安定度を高めることができ、その結果鋼板の延性向上に寄与する必須の元素である。これらの作用を有効に発揮させるためには、鋼板中にMnを4.0%以上、好ましくは4.5%以上、さらに好ましくは5.0%以上含有させる必要がある。ただし、鋼板中のMn量が過剰になると、Ae1点が低下することで、Ae1以上(Ae1+2×Ae3)/3以下で且つ前記高温域における最高到達温度から20℃以上低い低温域において滞在させる温度が低くなりすぎて、狙いとする短時間(30〜300sの滞在時間)ではMnの拡散が十分に起こらず所望の効果が得られなくなるので、鋼板中のMn量は10.0%以下、好ましくは9.0%以下、さらに好ましくは8.0%以下とする。
Al:0〜2.0%
Alは、Siと同様に、固溶強化により鋼板の強度上昇に寄与するとともに、残留オーステナイトの分解を抑制することで残留オーステナイト量を確保できるようにして延性の向上に寄与する元素であるので、鋼板中に含有させてもよい。これらの作用を効果的に発揮させるためには、鋼板中にAlを0.02%以上、さらには0.1%以上、特に0.3%以上含有させるのが好ましい。ただし、鋼板中のAl量が過剰になると、母相の延性が劣化して鋼板の延性が却って劣化するので、鋼板中のAl量は2.0%以下、好ましくは1.8%以下、さらに好ましくは1.6%以下に制限する必要がある。
P:0%超0.03%以下
Pは不純物元素として鋼板中に不可避的に存在し、固溶強化により強度の上昇に寄与するが、旧オーステナイト粒界に偏析し、粒界を脆化させることで伸びフランジ性を劣化させるので、鋼板中のP量は0.03%以下、好ましくは0.02%以下、さらに好ましくは0.015%以下とする。
S:0%超0.01%以下
Sも不純物元素として鋼板中に不可避的に存在し、MnS介在物を形成し、穴拡げ時に亀裂の起点となることで伸びフランジ性を低下させるので、鋼板中のS量は0.01%以下、好ましくは0.007%以下、さらに好ましくは0.005%以下とする。
本発明に係る製造方法で得られた鋼板は上記元素を基本成分とし、残部は鉄および不可避的不純物(N、O等)であるが、その他、本発明の作用を損なわない範囲で、下記の許容成分を含有させることができる。
Cr、Mo、Ni、Cuの1種または2種以上:合計量で0%超1.0%以下
これらの元素は、鋼板の焼入れ性を高めて、フェライトやパーライトといった拡散変態を抑制し、強度の確保、残留オーステナイトの確保に寄与することで鋼板の強度−延性バランスを改善するのに有用な元素である。これらの作用を効果的に発揮させるためには、これらの元素を鋼板中に合計量で0.01%以上、さらには0.02%以上、特に0.03%以上含有させるのが好ましい。ただし、これらの元素を鋼板中に過剰に含有させるとコストが高くなりすぎるので、合計量で1.0%以下、さらには0.8%以下、特に0.6%以下に制限するのが好ましい。
V、Nb、Tiの1種または2種以上:合計量で0%超0.2%以下
これらの元素は、析出強化により鋼板の強度を高めるのに有用な元素である。このような作用を効果的に発揮させるためには、これらの元素を鋼板中に合計量で0.01%以上、さらには0.02%以上、特に0.05%以上含有させるのが好ましい。ただし、これらの元素を鋼板中に過剰に含有させるとコストが高くなりすぎるので、合計量で0.2%以下、さらには0.18%以下、特に0.15%以下に制限するのが好ましい。
〔本発明に用いる熱延板または冷延板〕
つぎに、本発明に用いる中間材である、熱延板または冷延板について説明する。
本発明は、上記組成を有する中間材を用いるが、その中間材としては、熱延板を用いてもよく、冷延板を用いてもよい。熱延板としては、特にその製造条件を限定するものではなく、例えば上記成分組成を有する鋼材を常法により熱間圧延して得られたものを用いることができる。また、冷延板としても、特にその製造条件を限定するものではなく、例えば上記成分組成を有する鋼材を常法により熱間圧延した後、さらに常法により冷間圧延したものを用いることができる。なお、冷延板として、Mnを高濃度に含有するものを用いる場合には、熱間圧延後の冷却により熱延板の強度が高くなり冷間圧延しにくくなるため、熱間圧延後に一旦軟化焼鈍を施してから冷間圧延したものを用いることも推奨される。
〔焼鈍工程〕
つぎに、本発明を特徴づける焼鈍工程について説明する。
上述したとおり、本発明は、その焼鈍工程として、2相域の高温側ないしオーステナイト単相域に少し入った高温域でごく短時間加熱処理した後に、2相域の低温域で従来技術より短い時間加熱処理する2段階加熱処理方式を採用した点で、上記従来技術と異なる。
<第1段階の加熱保持:(Ae1+Ae3)/2以上[Ae3+50℃]以下の高温域において、[最高到達温度−10℃]以上の温度での滞在時間が3〜200sとなるように滞在>
炭化物の溶解を促進するために、逆変態が進行しやすい、2相域の中間温度より高温側の温度域(高温域)で加熱保持する。このような作用を有効に発揮させるため、高温域の下限は(Ae1+Ae3)/2、とする必要がある。ただし、加熱温度を高くしすぎたり、滞在時間を長くしすぎたりすると、オーステナイト分率が上昇する一方、フェライト分率が低下して、最終製品としての鋼板の強度−延性バランスが確保できなくなるので、加熱温度の上限はAe3+50℃に制限する。
<第2段階の加熱保持:引き続きAe1以上(Ae1+2×Ae3)/3以下で且つ前記高温域における最高到達温度から20℃以上低い低温域において、±1℃/s以内の温度変化で30〜300s滞在>
上記第1段階での加熱保持により炭化物を十分に溶解させた後、オーステナイト/フェライト分率を適切に制御するとともに、オーステナイト中へのMnの濃化を促進するため、引き続き上記第1段階での温度域(高温域)より低温側の2相域(低温域)で加熱保持する。このような作用を有効に発揮させるため、低温域は、Ae1以上(Ae1+2×Ae3)/3以下で且つ前記高温域における最高到達温度から20℃以上低い温度域とし、その温度域にて±1℃/s以内の温度変化で、すなわち、緩冷却、緩昇温、または一定温度に保持の状態で30s以上滞在させる必要がある。なお、上記温度変化は温度降下側をプラス(+)で、温度上昇側をマイナス(−)でそれぞれ表示する。ただし、滞在時間を長くしすぎると、上記作用効果が飽和し、生産性が低下するだけであるので、その上限は300s以下に制限する。
なお、Ae1(℃)およびAe3(℃)は、熱力学計算ソフト(Thermo−Calc Software、AB社製Thermo−Calc)にて熱力学データベースとしてTCFE7を用い、C、Mn、Si、Alの含有量(質量%)から各温度におけるFCC、BCC、セメンタイト各相の相分率を求め、BCC−セメンタイトの2相状態からFCC−BCC−セメンタイトの3相状態に遷移する温度をAe1(℃)、FCC−BCCの2相状態からFCCの単相に遷移する温度をAe3(℃)と定義して求めた。
上記第2段階の加熱保持後は、組織を凍結するため、すなわち、当該加熱保持により得られた適切なオーステナイト/フェライト分率をそれ以上変化させないため、常識的な範囲の冷却速度で冷却を行えばよい。例えば、第2段階の加熱処理終了温度から[Ae1−50℃]以下までを1℃/s以上の冷却速度で冷却することが推奨される。また、鋼板の靱性をより向上させるため、前記冷却後に、必要に応じてさらに焼戻し処理を行ってもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することももちろん可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記表1に示す成分の冷延板に対して、下記表2に示す熱処理条件で焼鈍を施して鋼板を作製した。
なお、下記表2に示す全ての熱処理No.において、第1段階の加熱保持までの加熱速度は10℃/s一定とした。また、熱処理No.1−Tでは、第2段階の加熱保持後にさらに焼戻しを実施したが、その焼戻し条件は、冷却停止温度20℃で50s保持した後、30℃/sの加熱速度で400℃まで再加熱してその温度で20s保持したのち、10℃/sの冷却速度で冷却する条件とした。
そして、上記熱処理後の各鋼板について、以下の測定方法により、鋼組織中の各相の面積率および残留オーステナイト中のMn濃度を測定した。
まず、鋼板をナイタール腐食し、光学顕微鏡(倍率400倍)で観察して残留オーステナイト以外の各相を同定し、画像解析により各相の面積率を測定した。
次いで、残留オーステナイトの面積率は、鋼板の1/4の厚さまで研削した後、化学研磨してからX線回折法により測定した(ISIJ Int.Vol.33,(1933),No.7,p.776)。
残留オーステナイト中のMn濃度については、薄膜の試料をFIB(FEI製 Nova200)を用いて作製し、これを球面収差補正機能付き透過型電子顕微鏡(日本電子社製 JEM−ARM200F)で像を観察しながら付属のEDS分析装置(日本電子製 JED−2300T)を用いてMn濃度を測定した。
また、上記各鋼板について、強度−延性バランスを評価するために、引張試験により、引張強度TSおよび伸び(全伸び)ELを測定した。なお、引張試験は、圧延方向と平行になるように、サンプルを採取し、JIS 14B号試験片(t=2mm、w=7mm、GL=20mm)を用いて、JIS Z 2241に従って実施した。
測定結果を下記表3に示す。同表において、鋼板の組織について、残留オーステナイトの面積率が、対応する標準条件の鋼板よりも高く、かつ、その残留オーステナイト中のMn濃度Mnγと鋼板全体のMn含有量[Mn]との比Mnγ/[Mn]が1.20以上であり、さらに、鋼板の機械的特性について、TSが780MPa以上であるとともに、TS×ELが25000MPa%以上で、かつ標準条件の鋼板よりも2000MPa%以上高くなっているものを発明例とし、それ以外のものを比較例とした。
表3において、試験No.1、22、24、26、28、30および32は、表2に示すように、焼鈍を1段階のみの加熱保持で行う標準条件(それぞれ標準条件1〜7)であり、従来技術に相当するものである。これに対し、試験No.2〜21、23、25、27、29、31および33は、上記各標準条件にそれぞれ対応する2段階の加熱保持について種々条件を変更して行った試験である。
表1〜3に示すとおり、試験No.2〜4、8、11、12、14〜16、19、21、23、25、27および33は、本発明の要件を全て満たす発明例である。表3に示すとおり、いずれの発明例も、対応する標準条件に比べて、残留オーステナイト量が増加しているとともに、残留オーステナイト中へのMnの濃化が促進され、強度を確保しつつ、強度−延性バランスが向上していることがわかる。そして、いずれの発明例も、焼鈍工程における合計滞在時間が、対応する標準条件の合計滞留時間(30s+200s=230s)と等しいか、あるいは短いので、対応する標準条件と同等の強度−延性バランスを確保するには、焼鈍工程における合計滞在時間を標準条件より短くできることが明らかである。
これに対し、試験No.5〜7、9、10、13、17、18、20、29および31は、本発明の要件いずれかを満たさない比較例である。
すなわち、試験No.5〜7、9、10、13、17、18および20は、本発明の成分規定の要件を満足する鋼種を用いているものの、焼鈍条件の要件を一部外れる条件で焼鈍しているため、組織規定の要件を充足せず、機械的特性が劣っている。
例えば、試験No.5(熱処理No.1−D)は、第1段階加熱保持における加熱温度(最高到達温度)が本発明の規定範囲から外れて低すぎるため、逆変態が十分に進行せず、最終製品としての鋼板中の残留オーステナイト量が不足し、TSおよびTS×ELが劣っている。
一方、試験No.6(熱処理No.1−E)は、逆に第1段階加熱保持における加熱温度(最高到達温度)が本発明の規定範囲から外れて高すぎるため、オーステナイト分率が上昇して最終製品としての鋼板中のマルテンサイト分率が上昇する一方、フェライト分率が低下して、TS×ELが劣っている。
また、試験No.7(熱処理No.1−F)は、第1段階加熱保持における滞在時間が本発明の規定範囲から外れて短すぎるため、逆変態が十分に進行せず、最終製品としての鋼板中の残留オーステナイト量が不足し、TS×ELが劣っている。
一方、試験No.9(熱処理No.1−H)は、逆に第1段階加熱保持における滞在時間が本発明の規定範囲から外れて長すぎるため、オーステナイト分率が上昇して最終製品としての鋼板中のマルテンサイト量が過剰となる一方、フェライト量が不足して、TS×ELが劣っている。
また、試験No.10(熱処理No.1−I)は、第2段階加熱保持における加熱温度(開始温度および終了温度)が本発明の規定範囲から外れて低すぎるため、最終製品としての鋼板中の残留オーステナイト量が不足し、TSおよびTS×ELが劣っている。
一方、試験No.13(熱処理No.1−L)は、逆に第2段階加熱保持における加熱温度(開始温度および終了温度)が本発明の規定範囲から外れて高すぎるため、最終製品としての鋼板のTS×ELが劣っている。
また、試験No.17(熱処理No.1−P)は、第2段階加熱保持における温度変化が本発明の規定範囲から外れて大きすぎるため、最終製品としての鋼板のΔTS×ELが不足している。
また、試験No.18(熱処理No.1−Q)は、第2段階加熱保持における滞在時間が本発明の規定範囲から外れて短すぎるため、最終製品としての鋼板のTS×ELが劣っている。
一方、試験No.20(熱処理No.1−S)は、逆に第2段階加熱保持における滞在時間が本発明の規定範囲から外れて長すぎるため、最終製品としての鋼板の鋼組織および機械的特性は合格基準を満たすものの、生産性が劣っている。
一方、鋼No.29および31は、本発明で規定する焼鈍条件で焼鈍しているものの、本発明の成分規定の要件を一部外れる鋼種を用いているため、組織規定の要件を充足せず、機械的特性が劣っている。
例えば、鋼No.29(鋼種e)は、Mn量が多すぎるため、残留オーステナイト中へのMnの濃化が不十分となり、Δ(TS×EL)が不足している。
また、鋼No.31(鋼種f)は、逆にMn量が少なすぎるため、残留オーステナイト量が不足するとともに、残留オーステナイト中へのMnの濃化が不十分となり、TS×ELが劣っている。

Claims (3)

  1. 成分組成が、質量%で、
    C:0.05〜0.30%、
    Si:0〜2.5%、
    Mn:4.0〜10.0%、
    Al:0〜2.0%、
    P:0%超0.03%以下、
    S:0%超0.01%以下であり、
    残部が鉄および不可避的不純物からなる、
    熱延板または冷延板を、
    (Ae1+Ae3)/2以上[Ae3+50℃]以下の高温域において、[最高到達温度−10℃]以上の温度での滞在時間が3〜200sとなるように滞在させたのち、
    引き続きAe1以上(Ae1+2×Ae3)/3以下で且つ前記高温域における最高到達温度から20℃以上低い低温域において、±1℃/s以内の温度変化で30〜300s滞在させる焼鈍工程
    を備えたことを特徴とする高強度高延性鋼板の製造方法。
  2. 前記熱延板または冷延板の成分組成が、さらに、質量%で、
    Cr、Mo、Ni、Cuの1種または2種以上を合計量で0%超1.0%以下含む、
    請求項1に記載の高強度高延性鋼板の製造方法。
  3. 前記熱延板または冷延板の成分組成が、さらに、質量%で、
    V、Nb、Tiの1種または2種以上を合計量で0%超0.2%以下含む、
    請求項1または2に記載の高強度高延性鋼板の製造方法。
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