JP2017141685A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】目標着火遅れ指標値を一定として実着火遅れ指標値が目標着火遅れ指標値に近づくように燃料噴射量を制御している状況下において目標燃焼時期指標値を変化させた際に、実空燃比指標値の変化に起因して目標空燃比指標値に基づくエンジン制御に生じ得る誤差を抑制できるようにする。
【解決手段】実着火遅れ指標値が目標着火遅れ指標値に近づくように燃料噴射量を制御する。実燃焼時期指標値が目標燃焼時期指標値に近づくように点火時期を制御する。目標空燃比に基づくエンジントルク制御を実行する。目標着火遅れ指標値を一定として上記燃料噴射量の制御を実行している状況下において目標燃焼時期指標値を変更させた際に、着火時期が圧縮上死点に近づく方向に変化する場合(ステップ110の判定成立時)には目標空燃比をリーン補正し、着火時期が圧縮上死点から遠ざかる方向に変化する場合(ステップ110の判定不成立時)には目標空燃比をリッチ補正する。
【選択図】図5

Description

この発明は、内燃機関の制御装置に関する。
例えば、特許文献1には、内燃機関の燃焼制御装置が開示されている。この燃焼制御装置では、筒内圧センサの出力値に基づいて燃焼開始点と燃焼重心とが算出され、燃焼開始点から燃焼重心までのクランク角期間が判定値よりも大きい場合に燃焼が悪化したと判定される。そして、燃焼が悪化したと判定された場合には、燃焼の改善のために、噴射燃料の増量、点火時期の進角および燃料噴射時期の進角のうちの少なくとも1つが実行される。
特開2008−069713号公報 特開2009−264337号公報
ところで、筒内圧センサの出力値に基づいて実着火遅れ指標値と実燃焼時期指標値とを算出したうえで、実着火遅れ指標値が目標着火遅れ指標値に近づくように燃料噴射量を制御する(ここでは、「第1の制御」と称する)とともに実燃焼時期指標値が目標燃焼時期指標値に近づくように点火時期を制御する(ここでは、「第2の制御」と称する)ことが考えられる。本件発明者らの鋭意研究により、次のことが明らかになった。すなわち、目標着火遅れ指標値を一定として第1の制御を実行しつつ、第2の制御における目標燃焼時期指標値を変化させた場合には、実着火遅れ指標値を目標着火遅れ指標値に近づけるために燃料噴射量が補正される結果として、実空燃比指標値がリッチ側に変化することもあるし、逆にリーン側に変化することもあることが分かった。
また、第1および第2の制御とともに、目標空燃比指標値に基づくエンジン制御(ここでは、「第3の制御」と称する)を実行することも考えられる。この第3の制御が第1および第2の制御とともに実行されるようになっている場合において上記の実空燃比指標値の変化が生じると、実空燃比指標値が、想定している空燃比指標値(すなわち、目標空燃比指標値)から変化することになる。このことは、第3の制御の誤差要因となる。具体的には、例えば、第3の制御がエンジントルク制御である場合には目標トルクに対するトルク変化を生じさせる可能性があり、第3の制御が排気ガス成分(NOxなど)の排出を制御するものである場合には排気エミッションの悪化を招く可能性がある。
この発明は、上述のような課題に対処するためになされたもので、目標着火遅れ指標値を一定として実着火遅れ指標値が目標着火遅れ指標値に近づくように燃料噴射量を制御している状況下において目標燃焼時期指標値を変化させた際に、実空燃比指標値の変化に起因して目標空燃比指標値に基づくエンジン制御に生じ得る誤差を抑制することのできる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
本発明に係る内燃機関の制御装置は、気筒内の混合気に点火する点火装置と、前記気筒内に燃料を供給する燃料噴射弁と、筒内圧を検出する筒内圧センサとを備える内燃機関を制御する。前記制御装置は、指標値算出手段と、第1の制御手段と、第2の制御手段と、第2の制御手段と、補正手段とを備える。前記指標値算出手段は、前記筒内圧センサの出力値に基づいて、実着火遅れ指標値と実燃焼時期指標値とを算出する。前記第1の制御手段は、前記実着火遅れ指標値が目標着火遅れ指標値に近づくように燃料噴射量を制御する。前記第2の制御手段は、前記実燃焼時期指標値が目標燃焼時期指標値に近づくように点火時期を制御する。前記第3の制御手段は、空燃比指標値の目標値である目標空燃比指標値に基づくエンジン制御を実行する。前記補正手段は、前記第1の制御手段による燃料噴射量の制御を前記目標着火遅れ指標値を一定として実行しつつ前記目標燃焼時期指標値を変更させた際に、着火時期が圧縮上死点に近づく方向に変化する場合には前記目標空燃比指標値をリーン側の値に補正し、着火時期が圧縮上死点から遠ざかる方向に変化する場合には前記目標空燃比指標値をリッチ側の値に補正する。
本発明によれば、前提として、実着火遅れ指標値が目標着火遅れ指標値に近づくように燃料噴射量が制御され、実燃焼時期指標値が目標燃焼時期指標値に近づくように点火時期が制御され、目標空燃比指標値に基づくエンジン制御が実行される。そのうえで、上記燃料噴射量の制御を目標着火遅れ指標値を一定として実行している状況下において目標燃焼時期指標値を変更させた際に、着火時期が圧縮上死点に近づく方向に変化する場合には目標空燃比指標値がリーン側の値に補正され、着火時期が圧縮上死点から遠ざかる方向に変化する場合には目標空燃比指標値がリッチ側の値に補正される。これにより、上記状況下での目標燃焼時期指標値の変更に伴う実空燃比指標値の変化の影響を、上記エンジン制御に用いられる目標空燃比指標値に対して反映させられるようになる。このため、実空燃比指標値の変化に起因する上記エンジン制御の誤差を抑制できるようになる。
本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。 点火時期と燃焼質量割合の波形とを表した図である。 実CA50および実空燃比(A/F)と実SA−CA10との関係を表した図である。 モータリング時の筒内温度とクランク角度との関係を示す図である。 実施の形態1において実行される制御のメインルーチンを表したフローチャートである。 SA−CA10フィードバック制御に関する処理を表したサブルーチンを表したフローチャートである。 CA50フィードバック制御に関する処理を表したサブルーチンを表したフローチャートである。 実施の形態2において実行される制御のメインルーチンを表したフローチャートである。 実施の形態3においてA/F補正量を決定するために参照されるマップMの設定を説明するための図である。 実施の形態3において実行される制御のメインルーチンを表したフローチャートである。
実施の形態1.
まず、図1〜図7を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。
[実施の形態1のシステム構成]
図1は、本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。図1に示すシステムは、火花点火式の内燃機関(一例として、ガソリンエンジン)10を備えている。内燃機関10の筒内には、ピストン12が設けられている。筒内におけるピストン12の頂部側には、燃焼室14が形成されている。燃焼室14には、吸気通路16および排気通路18が連通している。
吸気通路16の吸気ポートには、当該吸気ポートを開閉する吸気弁20が設けられており、排気通路18の排気ポートには、当該排気ポートを開閉する排気弁22が設けられている。また、吸気通路16には、電子制御式のスロットルバルブ24が設けられている。内燃機関10の各気筒には、燃焼室14内(筒内)に燃料を供給するための燃料噴射弁(一例として、直接噴射式燃料噴射弁)26、および、混合気に点火するための点火装置(点火プラグのみを図示)28が、それぞれ設けられている。さらに、各気筒には、筒内圧を検出するための筒内圧センサ30が組み込まれている。
さらに、本実施形態のシステムは、内燃機関10を制御する制御装置として、電子制御ユニット(ECU)40とともに、下記の各種アクチュエータを駆動するための駆動回路(図示省略)などを備えている。ECU40が信号を取り込むセンサには、上述した筒内圧センサ30に加え、クランク軸(図示省略)の近傍に配置されたクランク角センサ42、および、吸気通路16の入口付近に配置されたエアフローセンサ44等のエンジン運転状態を取得するための各種センサが含まれる。また、ECU40が信号を取り込むセンサには、内燃機関10を搭載する車両のアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ46も含まれる。
ECU40が操作信号を出すアクチュエータには、上述したスロットルバルブ24、燃料噴射弁26および点火装置28等のエンジン運転を制御するための各種アクチュエータが含まれる。また、ECU40は、筒内圧センサ30の出力信号を、クランク角度と同期させてAD変換して取得する機能を有している。これにより、AD変換の分解能が許す範囲で、任意のクランク角タイミングにおける筒内圧を検出することができる。さらに、ECU40は、クランク角度と筒内容積との関係を定めたマップをメモリ40aに記憶しており、そのようなマップを参照して、クランク角度に対応する筒内容積を算出することができる。
[実施の形態1におけるエンジン制御]
(筒内圧センサを利用したMFBの実測データの算出)
図2は、点火時期と燃焼質量割合の波形とを表した図である。筒内圧センサ30とクランク角センサ42とを備える本実施形態のシステムによれば、内燃機関10の各サイクルにおいて、クランク角度同期での筒内圧Pの実測データ(より具体的には、所定クランク角度毎の値として算出された筒内圧Pの集合)を取得することができる。得られた筒内圧Pの実測データと熱力学第1法則とを用いて、任意のクランク角度θでの筒内の熱発生量Qを次の(1)、(2)式にしたがって算出することができる。そして、算出された筒内の熱発生量Qの実測データ(所定クランク角度毎の値として算出された熱発生量Qの集合)を用いて、任意のクランク角度θにおける燃焼質量割合(以下、「MFB」と称する)を次の(3)式にしたがって算出することができる。そのうえで、MFBの算出処理を所定クランク角度毎に実行することで、クランク角度同期でのMFBの実測データ(実測MFBの集合)を算出することができる。MFBの実測データは、燃焼期間およびその前後の所定クランク角期間(ここでは、一例として、吸気弁20の閉じ時期IVCから排気弁22の開き時期EVOまでのクランク角期間)で算出される。
Figure 2017141685

Figure 2017141685
ただし、上記(1)式において、Vは筒内容積、κは筒内ガスの比熱比である。また、上記(3)式において、θminは燃焼開始点であり、θmaxは燃焼終了点である。
上記手法によって算出されたMFBの実測データによれば、MFBが特定割合α%となる時のクランク角度(以下、「特定割合燃焼点」と称し、「CAα」を付して示す)を算出することができる。次に、図2を参照して代表的な特定割合燃焼点CAαについて説明する。筒内の燃焼は、点火時期SAにて混合気に点火を行った後に着火遅れを伴って開始する。この燃焼の開始点(上記(3)式中のθmin)、すなわち、MFBが立ち上がる時のクランク角度をCA0と称する。CA0からMFBが10%となる時のクランク角度CA10までのクランク角期間(CA0−CA10)が初期燃焼期間に相当し、CA10からMFBが90%となる時のクランク角度CA90までのクランク角期間(CA10−CA90)が主燃焼期間に相当する。また、本実施形態では、MFBが50%となる時のクランク角度CA50を燃焼重心点として用いている。MFBが100%となる時のクランク角度CA100は、熱発生量Qが最大値に到達する燃焼終了点(上記(3)式中のθmax)に相当する。燃焼期間は、CA0からCA100までのクランク角期間として特定される。
(SA−CA10を利用した燃料噴射量のフィードバック制御)
前提として、本実施形態では、理論空燃比よりも大きなリーン空燃比にてリーンバーン運転が行われるようになっている。ここで、点火時期(SA)からCA10までのクランク角期間(より具体的には、CA10から点火時期(SA)を引いて得られる差)を、「SA−CA10」と称する。SA−CA10は、着火遅れを代表する着火指標値の1つである。
SA−CA10と空燃比との間には一定の相関がある。より具体的には、空燃比が理論空燃比よりも大きなリーン空燃比領域においては、空燃比がリーンになるほどSA−CA10が大きくなるという関係がある。本実施形態では、筒内圧センサ30の出力値に基づくSA−CA10の算出値である実SA−CA10が、狙いとする空燃比に対応する目標SA−CA10に近づくように、燃料噴射量が制御される。この制御を、便宜上、「SA−CA10フィードバック制御」と称する。具体的には、SA−CA10フィードバック制御によれば、目標SA−CA10よりも小さい実SA−CA10が得られた気筒では、空燃比をリーン化して実SA−CA10を大きくするために、次の燃焼サイクルで用いる燃料噴射量を減少させる補正が実行される。これとは逆に、目標SA−CA10よりも大きい実SA−CA10が得られた気筒では、空燃比をリッチ化して実SA−CA10を小さくするために、次の燃焼サイクルで用いる燃料噴射量を増やす補正が実行される。なお、SA−CA10フィードバック制御による修正対象となる基本燃料噴射量としては、後述の目標空燃比に応じたエンジントルク制御において設定されるフィードフォワード値が相当する。
(CA50を利用した点火時期のフィードバック制御)
本実施形態では、リーンバーン運転中に、SA−CA10フィードバック制御とともに、筒内圧センサ30の出力に基づくCA50の算出値である実CA50が目標CA50に近づくように点火時期を調整するフィードバック制御(以下、単に、「CA50フィードバック制御」と称する)が実行される。目標CA50は、基本点には、MBT点火時期が得られるときのCA50(以下、「CA50MBT」と称する)とされる。より具体的には、CA50フィードバック制御によれば、目標CA50よりも遅角側の値として実CA50が得られた気筒では、実CA50を進角させるために、次の燃焼サイクルで用いる点火時期を進角させる補正が実行される。これとは逆に、目標CA50よりも進角側の値として実CA50が得られた気筒では、実CA50を遅角させるために、次の燃焼サイクルで用いる点火時期を遅角させる補正が実行される。これにより、目標CA50がCA50MBTである場合には、リーンバーン運転時の点火時期をMBT点火時期に調整できるようになる。なお、SA−CA10フィードバック制御による修正対象となる基本点火時期としては、後述の目標空燃比に応じたエンジントルク制御において設定される値(フィードフォワード値)が相当する。
なお、本実施形態の内燃機関10は、各気筒に筒内圧センサ30を備えている。これにより、SA−CA10フィードバック制御およびCA50フィードバック制御を気筒毎に行えるようになる。しかしながら、例えば、1つの代表気筒にのみ筒内圧センサを備えている構成の内燃機関であれば、単一の筒内圧センサから得られる筒内圧に基づいて、SA−CA10フィードバック制御およびCA50フィードバック制御によって全気筒の燃料噴射量および点火時期を制御してもよい。
(目標空燃比に基づくエンジン制御(フィードフォワード制御))
本実施形態では、リーンバーン運転中に、目標空燃比に基づくエンジン制御を実行する。このエンジン制御の一例として、本実施形態では、目標トルクが得られるようにするためのエンジントルク制御が実行される。
目標空燃比は、一例として、排気エミッションの抑制および燃焼保証(より具体的には、内燃機関10のドライバビリティの保証)を目的として決定されるものである。このような目的を満足する値として、目標空燃比は、エンジン運転条件(例えば、エンジン負荷率とエンジン回転速度)に応じた値として決定される。本エンジントルク制御では、この目標空燃比を満たしつつ目標トルクを実現するための吸入空気量、燃料噴射量および点火時期のフィードフォワード値が設定される。
より具体的には、目標トルクは、アクセル開度センサ46により取得されるアクセル開度に基づいて設定される。吸入空気量の上記フィードフォワード値は、目標空燃比の下で目標トルクを実現するために必要な吸入空気量(目標吸入空気量)として決定される。燃料噴射量の上記フィードフォワード値は、基本燃料噴射量に相当し、目標吸入空気量の下で目標空燃比を満たすために必要な値として決定される。点火時期の上記フィードフォワード値は、基本点火時期に相当し、基本的にはMBT点火時期である。
(上述の3種のエンジン制御を実行する場合の課題)
既述したように、CA50フィードバック制御における目標CA50は、基本的には、CA50MBTである。しかしながら、内燃機関10の運転中には、CA50MBTに対して進角もしくは遅角された目標CA50が使用されることがある。具体例は次の通りである。すなわち、目標CA50は、ノック制御によって進角または遅角されることがある。また、車両が備える変速機の変速時、アイドリング時、フューエルカットの実施前後、リッチスパイク制御時、および急加減速時などにおけるエンジントルクの制御のために、目標CA50が進角または遅角されることがある。また、目標CA50は、排気エミッションの観点での排気温度制御時およびNOx濃度制御時などにおいて進角または遅角されることがある。さらに、エンジン保護の観点で筒内圧最大値を抑制するために目標CA50が遅角されることがある。
図3は、実CA50および実空燃比(A/F)と実SA−CA10との関係を表した図である。図3は、同一エンジン運転条件(エンジン負荷率およびエンジン回転速度などの条件)でのものである。図3より、実CA50が変化すると、実SA−CA10が等しい作動点を繋いで得られる等SA−CA10ライン上の実空燃比の値が変化することが分かる。したがって、目標SA−CA10を一定としてSA−CA10フィードバック制御を実行している状況下において目標CA50を変化させた場合には、実SA−CA10を一定に近づけているにもかかわらず、実空燃比が変化することが分かる。
図3に示す関係上において一方向に実CA50を変化させた際の等SA−CA10ライン上の空燃比の変化の傾向についてより詳細に説明する。ここでは、等SA−CA10ライン上に沿ってCA50を遅角するケースを例に挙げて説明する。図3中のそれぞれの等SA−CA10ラインを見ると分かるように、CA50が進角側(図3の上側)の値である場合には、CA50の遅角化に伴い、実空燃比がリーン化する。一方、CA50が遅角側(図3の下側)の値である場合には、CA50の遅角化に伴い、実空燃比がリッチ化する。
以上説明した図3に示す関係に対して何らの配慮もなされていないと、次のような課題がある。すなわち、目標SA−CA10を一定にしてSA−CA10フィードバック制御を実行している状況下において目標CA50を変化させた際に、実空燃比がリッチ化もしくはリーン化することで、実空燃比が、想定している空燃比(すなわち、目標空燃比)から変化することになる。このことは、目標空燃比に基づくエンジントルク制御の誤差要因となる。その結果、エンジントルクの制御性が低下する可能性がある。
(上記課題への実施の形態1の対策)
上記課題に対処するためには、目標SA−CA10を一定としてSA−CA10フィードバック制御を実行している状況下において目標CA50を変更させた際に、実空燃比がリッチ側およびリーン側の何れの方向に変化するのかを把握でき、かつ、その実空燃比の変化を目標空燃比に反映させられるようになっていることが好ましいといえる。そこで、本件発明者らは、図3に示す関係について、さらなる分析を以下に説明するように行った。
図3中には、CA10がTDC(圧縮上死点)となる条件での作動点が通るラインL1と、CA0がTDCとなる条件での作動点が通るラインL2とが表されている。図3に示すように、それぞれの等SA−CA10ラインでは、これらのラインL1およびL2によって囲まれた範囲内において、実CA50の変化に対する実空燃比の変化の度合いが相対的に小さくなる。そして、この範囲内において、一方向のCA50の変化(遅角もしくは進角)に伴う空燃比の変化の大小の傾向が切り替わる変曲点が存在するといえる。
ここで、図4を参照しながら上記特性が得られる理由について説明する。本実施形態のフィードバック制御に利用されるSA−CA10およびCA50は、ともに燃焼状態量であり、互いに独立していない。このため、一方が変化した場合、その影響が他方に及ぶことになる。SA−CA10は着火遅れ(期間)を代表するパラメータであり、その大きさは点火時期から燃焼開始点(CA0)までのクランク角期間付近での燃焼に関する環境(空燃比、筒内温度および筒内圧など)に応じて変化する。
図4は、モータリング時の筒内温度とクランク角度との関係を示す図である。図4に示すように、モータリング時の筒内温度はクランク角度によって変化し、吸気弁20を閉じた後の圧縮上死点付近で最も高くなり、このことは筒内圧についても同様である。このため、着火時期(≒燃焼開始点CA0)が圧縮上死点に近いほど、着火性が良くなる(すなわち、着火遅れを代表する実SA−CA10が小さくなる)。そして、等SA−CA10の下では、着火時期(≒燃焼開始点CA0)は点火時期で定まることになり、点火時期は目標CA50に応じて変化する。したがって、目標CA50の変更に伴って着火時期が圧縮上死点に近づくことは、目標CA50の変更に伴って着火性が良くなる条件が得られることに相当する。そして、着火性が良くなると、実SA−CA10が短くなる。したがって、目標CA50の変更によって着火性が良くなる条件(着火時期が圧縮上死点付近にある条件)に移行した際に等SA−CA10が維持されるためには、空燃比のリーン化が必要になる。
図3中に示すラインL1とL2とで囲まれた範囲は、着火時期が圧縮上死点付近に存在する範囲、すなわち、着火性の良くなる条件を満たす範囲であるといえる。このため、図3に示すように、それぞれの等SA−CA10ライン上の実空燃比の値は、上記範囲内において最もリーン化することが分かる。したがって、一方向のCA50の変化に伴う空燃比の変化の大小の傾向が切り替わる変曲点は上記範囲内において存在するといえる。
以上のように、等SA−CA10の下では、着火時期が圧縮上死点付近に位置するときに、空燃比が最もリーン化し、換言すると、等SA−CA10ラインに上記変曲点が生じるといえる。そこで、本実施形態では、目標SA−CA10を一定としてSA−CA10フィードバック制御を実行している状況下において目標CA50を変化させた際に、着火時期が圧縮上死点に近づいた場合には目標空燃比をリーン化させることとした。一方、着火時期が圧縮上死点から遠ざかった場合には目標空燃比をリッチ化させることとした。これにより、等SA−CA10を目標とするSA−CA10フィードバック制御の実行中に目標CA50を変更させた場合に、図3を参照して説明した実空燃比の変化への着目なしに目標空燃比を設定する場合と比べて、エンジントルク制御の入力となる目標空燃比を実空燃比により近づけられるといえる。
(実施の形態1における具体的な処理)
図5は、実施の形態1において実行される制御のメインルーチンを表したフローチャートである。なお、本ルーチンは、各気筒において排気弁22の開き時期を経過したタイミング(すなわち、MFBの実測データの算出の基礎となる筒内圧Pのデータの取得を終えたタイミング)で起動され、かつ、燃焼サイクル毎に繰り返し実行される。
図5に示すメインルーチンでは、ECU40は、まず、リーンバーン運転中であるか否かを判定する(ステップ100)。内燃機関10では、所定の運転領域において理論空燃比よりも大きな(リーンな)空燃比でのリーンバーン運転が行われるようになっている。ここでは、現在の運転領域がそのようなリーンバーン運転を行う運転領域に該当するか否かが判定される。ここでいう運転領域は、例えば、エンジン負荷率とエンジン回転速度とに基づいて規定することができる。エンジン負荷率は、例えば、エアフローセンサ44を用いて取得される吸入空気量と、エンジン回転速度とに基づいて算出することができる。
ステップ100においてリーンバーン運転中であると判定した場合には、ECU40は、SA−CA10フィードバック制御を実行する(ステップ102)。図6は、SA−CA10フィードバック制御に関する処理を表したサブルーチンを表したフローチャートである。
図6に示すサブルーチンでは、ECU40は、まず、エンジン負荷率およびエンジン回転速度を取得する(ステップ200)。次いで、ECU40は、目標SA−CA10を算出する(ステップ202)。ECU40は、エンジン負荷率およびエンジン回転速度との関係で目標SA−CA10を定めたマップ(図示省略)を記憶している。このマップは、CA50フィードバック制御の目標CA50の適合値(初期値)の下での関係を規定するものである。そして、本実施形態では、一例として、目標CA50の適合値は、MBT点火時期が得られるときのCA50(CA50MBT)とされている。本ステップ202では、このようなマップを参照して、エンジン負荷率およびエンジン回転速度に応じた目標SA−CA10を算出する。
次に、ECU40は、筒内圧センサ30の出力値を利用して、クランク角度ベースでの筒内圧データを取得する(ステップ204)。次いで、ECU40は、目標点火時期を取得する(ステップ206)。目標点火時期は、既述した基本点火時期(フィードフォワード値)に対してCA50フィードバック制御による点火時期の最新の補正量を加えて得られる値である。
次に、ECU40は、実SA−CA10を算出する(ステップ208)。実SA−CA10は、ステップ208において取得した目標点火時期から、ステップ204において取得した筒内圧データの解析結果として得られる実CA10までのクランク角期間として算出される。次いで、ECU40は、ステップ202および208において算出した目標SA−CA10と実SA−CA10との差分を算出する(ステップ210)。次に、ECU40は、算出した差分と所定のPIゲイン(比例項ゲインと積分項ゲイン)とを用いて、当該差分およびその積算値の大きさに応じた噴射量補正量を算出する(ステップ212)。そして、ECU40は、算出した噴射量補正量に基づいて、次のサイクルで使用する燃料噴射量を補正する(ステップ214)。
図5に示すメインルーチンでは、ECU40は、ステップ102のSA−CA10フィードバック制御に続いて、CA50フィードバック制御を実行する(ステップ104)。図7は、CA50フィードバック制御に関する処理を表したサブルーチンを表したフローチャートである。
図7に示すサブルーチンでは、ECU40は、まず、エンジン負荷率およびエンジン回転速度とともに目標点火効率を取得する(ステップ300)。点火効率は、点火時期の調整によるエンジントルクの発生効率に関する指標であり、CA50MBTにおいて1(ピーク値)となり、このCA50よりもCA50が点火時期の調整によって進角または遅角されると低下するというものである。したがって、点火時期は、基本的にはMBT点火時期になるように制御されるため、目標点火効率は基本的には1に設定される。一方、上述のように、ノック制御等の観点でMBT点火時期に対する点火時期の遅角もしくは遅角が要求される場合には、目標点火効率は1以外の値に変更される。
次に、ECU40は、目標CA50を算出する(ステップ302)。目標CA50は、ステップ300において取得したエンジン回転速度、エンジン負荷率および目標点火効率に基づいて設定される。より具体的には、目標点火効率が1である場合、すなわち、MBT点火時期を目標点火時期とする場合には、CA50MBTが目標CA50として使用される。また、目標点火効率が1より小さい値である場合、すなわち、目標点火時期がMBT点火時期に対して遅角もしくは進角させる要求がある場合には、目標CA50は、CA50MBTに対して進角もしくは遅角された値が使用される。
次に、ECU40は、筒内圧データを取得したうえで(ステップ304)、取得した筒内圧データの解析結果を利用して実CA50を算出する(ステップ306)。次いで、ECU40は、ステップ302および306において算出した目標CA50と実CA50との差分を算出する(ステップ308)。次に、ECU40は、算出した差分と所定のPIゲイン(比例項ゲインと積分項ゲイン)とを用いて、当該差分およびその積算値の大きさに応じた点火時期補正量を算出する(ステップ310)。そして、ECU40は、算出した点火時期補正量に基づいて、次のサイクルで使用する点火時期を補正する(ステップ312)。
図5に示すメインルーチンでは、ECU40は、ステップ104のCA50フィードバック制御を実行した後に、等SA−CA10の下で目標CA50がCA50MBT以外の値に変更されたか否かを判定する(ステップ106)。目標CA50がCA50MBT以外の値に変更されたか否かは、例えば、前回の燃焼サイクルのためのステップ300の処理により取得された目標点火効率が1であって、今回の燃焼サイクルのために取得された目標点火効率が1以外の値に変化したか否かに基づいて判断することができる。また、目標CA50の変更が等SA−CA10の下で行われたものであるか否かについては、例えば、目標SA−CA10の算出値の履歴がメモリ40aの記憶されるようになっている前提の下で、前回と今回の燃焼サイクルのためのそれぞれの処理で算出された目標SA−CA10が等しいかどうかに基づいて判断することができる。
ECU40は、ステップ106の判定が成立する場合には、後述のステップ112または114の処理による目標空燃比の補正処理の完了時期を判定するために、ステップ108の処理を実行する。具体的には、一例として、今回の燃焼サイクルのためのステップ212の処理によって算出された燃料の噴射量補正量と、MBT点火時期の使用時の噴射量補正量MBTとの差の絶対値が判定値Fthよりも大きいか否かが判定される。本ステップ108では、この差の絶対値が判定値Fth以下となる場合に、目標空燃比の補正処理の完了時期が到来したと判定される。なお、噴射量補正量MBTは、MBT点火時期を使用したSA−CA10フィードバック制御の実行時に学習され、メモリ40aにはその学習値が記憶されているものとする。より具体的には、噴射量補正量MBTの学習値は、学習実行時のエンジン負荷率、エンジン回転速度および目標空燃比に応じた値として記憶され、本ステップ108では、現在のエンジン負荷率、エンジン回転速度および目標空燃比に対応する学習値の記憶値が参照される。
ECU40は、ステップ108の判定が成立する場合、すなわち、目標空燃比の補正処理を継続すべきと判断した場合には、MBT点火時期が得られるときの実CA10であるCA10MBTの絶対値と、今回の燃焼サイクルの実CA10であるCA10の絶対値との差がゼロよりも大きいか否かを判定する(ステップ110)。この判定処理は、目標SA−CA10を一定としてSA−CA10フィードバック制御を実行している状況下において目標CA50が変更された際に着火時期が圧縮上死点に近づいたか、あるいは遠ざかったかを判定するための処理の一例に相当する。ECU40は、本ステップ110の判定が成立した場合には目標CA50の変更の結果として着火時期が圧縮上死点に近づいたと判定し、一方、本判定が不成立となる場合には着火時期が圧縮上死点から遠ざかったと判定する。なお、CA10MBTとしては、事前に取得された適合値を用いてもよいし、内燃機関10の運転中に取得された学習値を用いてもよい。
ECU40は、ステップ110の判定が成立する場合、つまり、目標CA50の変更の結果として着火時期が圧縮上死点に近づいたと判断した場合には、目標空燃比(A/F)を所定量Cだけリーン化する補正処理を実行する(ステップ112)。本実施形態では、この所定量Cは固定値とされる。本ステップ112の処理は、ステップ108の処理が成立する間は繰り返し実行され、その結果として、目標空燃比が所定量Cずつリーン化されていく(大きくされていく)。
より具体的には、目標SA−CA10を一定としてSA−CA10フィードバック制御を実行している状況下において目標CA50が変更された結果として実SA−CA10が小さくなった場合には、実SA−CA10を目標SA−CA10に近づけるために、燃料噴射量を減らすための噴射量補正量がSA−CA10フィードバック制御によって算出される。この噴射量補正量は、実SA−CA10が目標SA−CA10に近づくにつれて小さくなっていく。そして、この場合には、本ステップ112の処理によって目標空燃比が燃焼サイクル毎に所定量Cずつリーン化されていく。そして、本ステップ112による目標空燃比の補正処理は、上記ステップ108の判定が不成立となった場合、すなわち、SA−CA10フィードバック制御による噴射量補正量が噴射量補正量MBT相当にまで収束したと判定された場合に完了したと判定され、終了される。このことは、次に説明するステップ114による補正処理についても同様である。
ECU40は、ステップ110の判定が不成立となる場合、つまり、目標CA50の変更の結果として着火時期が圧縮上死点から遠ざかったと判断した場合には、目標空燃比(A/F)を所定量Cだけリッチ化する補正処理を実行する(ステップ114)。本ステップ114においても、この所定量Cは固定値とされる。本ステップ114の処理は、ステップ108の処理が成立する間は繰り返し実行され、その結果として、目標空燃比が所定量Cずつリッチ化されていく(小さくされていく)。
以上説明した図5〜図7に示すルーチンによれば、目標SA−CA10を一定としてSA−CA10フィードバック制御を実行している状況下において目標CA50を変化させた際、着火時期が圧縮上死点に近づいた場合には目標空燃比がリーン化され、一方、着火時期が圧縮上死点から遠ざかった場合には目標空燃比がリッチ化される。これにより、目標空燃比を利用するエンジントルク制御において算出される各種フィードフォワード値に対して、上記状況下での目標CA50の変更に伴う実空燃比の変化の影響を適切かつ速やかに反映させられるようになる。このため、上記の実空燃比の変化に起因する誤差が、目標空燃比に基づくエンジントルク制御に生じることを抑制できるようになる。その結果、エンジントルク制御の精度向上が図れるので、エンジントルクの制御性を向上させることができる。
また、目標空燃比に基づくエンジン制御として、上述のエンジントルク制御以外にも、例えば、排気ガス成分(例えば、NOx)の排出に関する制御(排気エミッション制御)がある。本実施形態の制御によれば、このような排気エミッション制御が実行される場合においても、当該排気エミッション制御によるフィードフォワード値(例えば、燃料噴射量のフィードフォワード値)の算出のための入力となる目標空燃比に対して、上述の目標CA50の変更に伴う実空燃比の変化の影響を同様に反映させられるようになる。このため、排気ガス成分の排出の制御性を向上させることができる。
さらに付け加えると、本実施形態における目標空燃比の修正手法によれば、実機上で目標空燃比をリッチ化すべきかあるいはリーン化すべきかを自動的に決定できるようになる。これに対し、後述の実施の形態3のようにマップを参照して目標空燃比のA/F補正量を設定する手法を用いる場合には、内燃機関の個体差、経年変化、および燃焼に関する環境変化を考慮した余裕代をA/F補正量の適合値(マップ値)に持たせる必要がある。この点に関し、本実施形態の手法によれば、そのような余裕代を考慮する必要がなく、ロバスト性を向上させられるといえる。
実施の形態2.
次に、図8を主に参照して、本発明の実施の形態2について説明する。以下の説明では、実施の形態2のシステム構成の一例として、図1に示す構成が用いられているものとする。
[実施の形態2におけるエンジン制御]
上述した実施の形態1においては、目標空燃比の1回の補正量(以下、「A/F補正量」と称する)を、固定値である所定量Cとした。これに対し、本実施形態のエンジン制御は、A/F補正量の決定手法において実施の形態1のエンジン制御と相違している。
ここで、着火時期を代表するパラメータ(CA10、CA0および点火時期など)は、空燃比がリーンかつCA50が進角されるほど進角し、一方、空燃比がリッチかつCA50が遅角されるほど遅角する。また、図4からも分かるように、基本的には、圧縮上死点から離れたクランク角度位置の方が、圧縮上死点に近いクランク角度位置と比べて、あるクランク角度の変化に対する筒内容積の変化量が大きくなり、その結果として、筒内温度および筒内圧の変化量も大きくなる。このため、これらの着火時期を代表するパラメータが圧縮上死点から離れているほど、目標CA50をある量だけ変更したときの実空燃比の変化量が大きくなる。
また、着火時期が存在するような圧縮上死点に相対的に近いクランク角度範囲では、エンジン負荷率が高いほど、目標CA50をある量だけ変更したときの筒内温度および筒内圧の変化量が大きくなる。このため、目標CA50をある量だけ変更したときの実空燃比の変化量は、エンジン負荷率が高いほど大きくなる。
そこで、本実施形態では、目標空燃比の1回のA/F補正量は、当該A/F補正量を算出する燃焼サイクルの実CA10であるCA10に基づいて決定することとした。より具体的には、CA10が圧縮上死点から離れているほど、A/F補正量が大きくされる。また、エンジン負荷率が高いほど、A/F補正量が大きくされる。このように、本実施形態では、A/F補正量はCA10に応じて可変される。
(実施の形態2における具体的な処理)
図8は、実施の形態2において実行される制御のメインルーチンを表したフローチャートである。なお、図8において、実施の形態1における図5に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
図8に示すメインルーチンでは、ECU40は、ステップ110の判定が成立する場合、つまり、目標CA50の変更の結果として着火時期が圧縮上死点に近づいたと判断した場合には、ステップ400に進む。ステップ400では、A/F補正量(この場合には正の値)は、CA10が圧縮上死点から離れているほど大きく、かつ、エンジン負荷率が高いほど大きい値となるように算出される。
次に、ECU40は、ステップ400において算出したA/F補正量を用いて、目標空燃比をリーン化する補正処理を実行する(ステップ402)。その結果、目標空燃比は、CA10が圧縮上死点から離れているほどより大きくリーン化され、また、エンジン負荷率が高いほどより大きくリーン化される。
一方、ECU40は、ステップ110の判定が不成立となる場合、つまり、目標CA50の変更の結果として着火時期が圧縮上死点から遠ざかったと判断した場合には、ステップ404に進む。ステップ404では、A/F補正量(この場合には負の値)は、CA10が圧縮上死点から離れているほど(負側に)大きく、かつ、エンジン負荷率が高いほど(負側に)大きい値となるように算出される。
次に、ECU40は、ステップ404において算出したA/F補正量を用いて、目標空燃比をリッチ化する補正処理を実行する(ステップ406)。その結果、目標空燃比は、CA10が圧縮上死点から離れているほどより大きくリッチ化され、また、エンジン負荷率が高いほどより大きくリッチ化される。
以上説明した図8(および説明を省略した図6および図7)に示すルーチンによれば、A/F補正量が、圧縮上死点に対するCA10の位置関係、およびエンジン負荷率に応じて可変とされる。これにより、固定値である所定量CをA/F補正量として利用する実施の形態1と比べて、目標CA50の変更に伴う実空燃比の変化の特性をより詳細に考慮して、A/F補正量を適切に設定することができる。その結果、実施の形態1と比べて、エンジントルク制御(排気エミッション制御を行う場合も同様)に入力される目標空燃比をより速やかに適切な値に修正できるようになる。
ところで、上述した実施の形態2におけるA/F補正量の決定手法に代え、あるいはそれとともに、次のような決定手法を利用してもよい。すなわち、目標CA50が変更された後にSA−CA10フィードバック制御によって実SA−CA10を目標SA−CA10に近づける処理が進むにつれて、今回の噴射量補正量とMBT点火時期の使用時の噴射量補正量MBTとの差の絶対値が小さくなる。そこで、上記の処理の進捗状況を見て、今回の噴射量補正量とMBT点火時期の使用時の噴射量補正量MBTとの差の絶対値が大きいほど、A/F補正量が正側(リーン補正時)もしくは負側(リッチ補正時)で大きくなるように設定してもよい。
また、実施の形態2においては、A/F補正量を設定する際に、CA10を利用して、圧縮上死点に対する着火時期の位置関係を把握している。しかしながら、この目的のために使用されるパラメータは、A/F補正量を算出する燃焼サイクルの着火時期を代表するものであればよく、例えば、点火時期(目標点火時期)でもよいし、あるいはCA0(燃焼開始点)であってもよい。
実施の形態3.
次に、図9および図10を主に参照して、本発明の実施の形態3について説明する。以下の説明では、実施の形態3のシステム構成の一例として、図1に示す構成が用いられているものとする。
[実施の形態3におけるエンジン制御]
上述した実施の形態1および2においては、目標空燃比をリッチ側とリーン側の何れの方向に補正すべきかを、目標CA50の変更の結果として着火時期が圧縮上死点に近づいたか、もしくは遠ざかったかを実際に判定したうえで決定している。これに対し、本実施形態では、上記判定のための処理を行うのではなく、以下に図9を参照して一例を示すように、燃焼時期を代表する燃焼時期指標値(ここでは、一例としてCA50)の情報を入力として含むマップMを利用することで、目標空燃比をリーン補正するかあるいはリッチ補正するかが決定される。また、そのようなマップMを利用して、A/F補正量の大きさも決定される。
図9は、実施の形態3においてA/F補正量を決定するために参照されるマップMの設定を説明するための図である。このマップMでは、ΔCA50と実SA−CA10とエンジン負荷率とがマップ軸として使用されている。ここでいうΔCA50とは、上述の目標CA50の変更後の目標CA50のCA50MBTに対する差(乖離量)である。マップMは、図3に示す実CA50、実SA−CA10および実空燃比との関係を考慮して、ΔCA50と実SA−CA10とで規定されるマップ領域の各マップ値が決定されている。
より具体的には、図9に示すように、マップMのマップ領域には、目標空燃比をリーン化する領域とリッチ化する領域とが設定されている。これらの領域は、目標CA50を変化させた際、着火時期が圧縮上死点に近づいた場合には目標空燃比をリーン化でき、一方、着火時期が圧縮上死点から遠ざかった場合には目標空燃比をリッチ化できるA/F補正量が得られるように設定されている。そして、図3に示す関係を考慮して、各領域におけるマップ値(すなわち、A/F補正量)の大きさが設定されている。
また、実施の形態2において既述したように、エンジン負荷率が高いほど、目標CA50をある量だけ変更したときの実空燃比の変化量が大きくなる。このため、図9に示すように、マップMは所定エンジン負荷率毎に用意され、これにより、それぞれのエンジン負荷率に応じた適切なマップ値を取得可能となっている。
(実施の形態3における具体的な処理)
図10は、実施の形態3において実行される制御のメインルーチンを表したフローチャートである。なお、図10において、実施の形態1における図5に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
図10に示すルーチンでは、ECU40は、ステップ106において目標CA50がCA50MBT以外の値に変更されたと判定した場合には、ステップ500に進む。ステップ500では、目標空燃比のA/F補正量がマップMを参照して算出される。次いで、ECU40は、算出したA/F補正量を用いて目標空燃比を補正する(ステップ502)。
以上説明した図10(および説明を省略する図6および図7)に示すルーチンによれば、マップMを参照してA/F補正量を取得することで、目標SA−CA10を一定としてSA−CA10フィードバック制御を実行している状況下において目標CA50を変化させた際、着火時期が圧縮上死点に近づいた場合には目標空燃比がリーン化され、一方、着火時期が圧縮上死点から遠ざかった場合には目標空燃比がリッチ化される。このような手法によっても、目標空燃比を利用するエンジントルク制御において算出される各種フィードフォワード値に対して、目標CA50の変更に伴う実空燃比の変化の影響を適切に反映させられるようになる。
ところで、上述した実施の形態1〜3においては、着火遅れを代表する着火遅れ指標値として、SA−CA10を例示した。しかしながら、本発明における「着火遅れ指標値」は、着火遅れ期間(点火時期から発熱が始まる時期(燃焼開始点CA0)までのクランク角期間)を含むものであればよく、SA−CA10に代え、例えば、点火時期(SA)からCA10以外の任意の特定割合燃焼点CAα1までのクランク角期間を用いることができる。また、「燃焼時期指標値」については、燃焼時期を代表する指標値であればよく、例示したCA50に代え、例えば、CA50以外の任意の特定割合燃焼点CAα2であってもよく、あるいは、MBT点火時期からの点火時期変化量であってもよい。さらには、筒内圧最大クランク角度θPmaxであってもよい。また、本発明における「空燃比指標値」は、実施の形態1〜3で用いられた空燃比自体に限られず、空燃比と相関のある指標値であればよく、例えば、燃空比、空気過剰率、または当量比であってもよい。
10 内燃機関
12 ピストン
14 燃焼室
16 吸気通路
18 排気通路
20 吸気弁
22 排気弁
24 スロットルバルブ
26 燃料噴射弁
28 点火装置
30 筒内圧センサ
40 電子制御ユニット(ECU)
40a メモリ
42 クランク角センサ
44 エアフローセンサ
46 アクセル開度センサ

Claims (1)

  1. 気筒内の混合気に点火する点火装置と、前記気筒内に燃料を供給する燃料噴射弁と、筒内圧を検出する筒内圧センサとを備える内燃機関を制御する制御装置であって、
    前記筒内圧センサの出力値に基づいて、実着火遅れ指標値と実燃焼時期指標値とを算出する指標値算出手段と、
    前記実着火遅れ指標値が目標着火遅れ指標値に近づくように燃料噴射量を制御する第1の制御手段と、
    前記実燃焼時期指標値が目標燃焼時期指標値に近づくように点火時期を制御する第2の制御手段と、
    空燃比指標値の目標値である目標空燃比指標値に基づくエンジン制御を実行する第3の制御手段と、
    前記第1の制御手段による燃料噴射量の制御を前記目標着火遅れ指標値を一定として実行しつつ前記目標燃焼時期指標値を変更させた際に、着火時期が圧縮上死点に近づく方向に変化する場合には前記目標空燃比指標値をリーン側の値に補正し、着火時期が圧縮上死点から遠ざかる方向に変化する場合には前記目標空燃比指標値をリッチ側の値に補正する補正手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
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