<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る液体噴射装置100の構成図である。第1実施形態の液体噴射装置100は、液体の例示であるインクを媒体12に噴射するインクジェット方式の印刷装置である。媒体12は、典型的には印刷用紙であるが、樹脂フィルムおよび布帛等の任意の印刷対象が媒体12として利用され得る。液体噴射装置100には、インクを貯留する液体容器14が固定される。例えば液体噴射装置100に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、またはインクを補充可能なインクタンクが液体容器14として利用される。相異なる色彩の複数種のインクが液体容器14には貯留される。
図1に例示される通り、液体噴射装置100は、制御ユニット20と搬送機構22と液体噴射ヘッド24とを具備する。制御ユニット20は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の制御装置と半導体メモリ等の記録装置とを含んで構成され(図示略)、記憶装置に記憶されたプログラムを制御装置が実行することで液体噴射装置100の各要素を統括的に制御する。搬送機構22は、制御ユニット20による制御のもとで媒体12をY方向に搬送する。
第1実施形態の液体噴射装置100は、移動機構26を具備する。移動機構26は、制御ユニット20による制御のもとで液体噴射ヘッド24をX方向に往復させる機構である。液体噴射ヘッド24が往復するX方向は、媒体12が搬送されるY方向に交差(典型的には直交)する方向である。第1実施形態の移動機構26は、搬送体262と搬送ベルト264とを具備する。搬送体262は、液体噴射ヘッド24を支持する略箱形の構造体(キャリッジ)であり、搬送ベルト264に固定される。搬送ベルト264は、X方向に沿って架設された無端ベルトである。制御ユニット20による制御のもとで搬送ベルト264が回転することで液体噴射ヘッド24が搬送体262とともにX方向に沿って往復する。なお、液体容器14を液体噴射ヘッド24とともに搬送体262に搭載することも可能である。
液体噴射ヘッド24は、液体容器14から供給されるインクを制御ユニット20による制御のもとで媒体12に噴射する。搬送機構22による媒体12の搬送と移動機構26による液体噴射ヘッド24の搬送とが実行される期間内に液体噴射ヘッド24が媒体12にインクを噴射することで、媒体12には所望の画像が形成される。以下の説明では、X-Y平面に垂直な方向をZ方向と表記する。液体噴射ヘッド24から噴射されたインクはZ方向の正側に進行して媒体12の表面に着弾する。
図2は、液体噴射ヘッド24の分解斜視図である。図2に例示される通り、第1実施形態の液体噴射ヘッド24は、第1支持体242と複数の組立体244とを具備する。第1支持体242は、複数の組立体244を支持する板状部材(液体噴射ヘッド用支持体)である。複数の組立体244は、X方向に配列した状態で第1支持体242に固定される。1個の組立体244について代表的に図示した通り、複数の組立体244の各々は、接続ユニット32と第2支持体34と分配流路36と複数(第1実施形態では6個)の液体噴射モジュール38とを具備する。なお、液体噴射ヘッド24を構成する組立体244の総数や組立体244を構成する液体噴射モジュール38の総数は図示の例示に限定されない。
図3は、任意の1個の組立体244の正面図および側面図である。図2および図3から理解される通り、概略的には、接続ユニット32の直下に位置する第2支持体34に複数の液体噴射モジュール38が2列で配置され、複数の液体噴射モジュール38の側方に分配流路36が配置される。分配流路36は、液体容器14から供給されるインクを複数の液体噴射モジュール38の各々に分配する流路が内部に形成された構造体であり、複数の液体噴射モジュール38にわたるようにY方向に長尺に構成される。
図3に例示される通り、接続ユニット32は、筐体322と中継基板324と複数の駆動基板326とを具備する。筐体322は、中継基板324と複数の駆動基板326とを収容する略箱形の構造体である。複数の駆動基板326の各々は、液体噴射モジュール38に対応した配線基板である。所定の波形の駆動信号を生成する信号生成回路が駆動基板326に実装され、インクの噴射の有無をノズル毎に指定する制御信号と電源電圧とが駆動信号とともに駆動基板326から液体噴射モジュール38に供給される。駆動信号を増幅する増幅回路を駆動基板326に搭載することも可能である。中継基板324は、制御ユニット20と複数の駆動基板326との間で電気信号や電源電圧を中継するための配線基板であり、複数の液体噴射モジュール38にわたり共用される。図3に例示される通り、筐体322の底面には、相異なる駆動基板326に電気的に接続された接続部328(第2接続部の例示)が設置される。接続部328は、電気的な接続のためのコネクター(Board to Boardコネクター)である。
図4は、第2支持体34の平面図である。図3および図4に例示される通り、第2支持体34は、Y方向に長尺な構造体(フレーム)であり、X方向に相互に間隔をあけてY方向に延在する複数(図4の例示では3個)の支持部342と、各支持部342の端部を相互に連結する連結部344とを具備する。すなわち、第2支持体34は、Y方向に長尺な2個の開口部346がX方向に間隔をあけて形成された平板材である。第2支持体34の各連結部344は、第1支持体242の表面に対して間隔をあけた位置で第1支持体242に固定される。
図5は、任意の1個の液体噴射モジュール38の分解斜視図である。図5に例示される通り、第1実施形態の液体噴射モジュール38は、液体噴射ユニット40と連結ユニット50と伝送線56とを具備する。液体噴射ユニット40は、液体容器14から分配流路36を介して供給されるインクを媒体12に噴射する。第1実施形態の液体噴射ユニット40は、弁機構ユニット41と流路ユニット42と液体噴射部44とを包含する。弁機構ユニット41は、分配流路36から供給されるインクの流路の開閉を制御する弁機構を内包する。なお、弁機構ユニット41の図示は図2では便宜的に省略されている。図5に例示される通り、第1実施形態の弁機構ユニット41は、液体噴射ユニット40の側面からX方向に張り出すように設置される。他方、分配流路36は、液体噴射ユニット40の側面に対向するように第1支持体242に設置される。したがって、分配流路36の上面と各弁機構ユニット41の底面とは、Z方向に相互に間隔をあけて対向する。以上の構成において、分配流路36内の流路と弁機構ユニット41内の流路とが相互に連通する。
液体噴射ユニット40の液体噴射部44は、複数のノズルからインクを噴射する。流路ユニット42は、弁機構ユニット41を経由したインクを液体噴射部44に供給する流路が内部に形成された構造体である。液体噴射ユニット40の上面(具体的には流路ユニット42の上面)には、当該液体噴射ユニット40を接続ユニット32の駆動基板326に電気的に接続するための接続部384が設置される。連結ユニット50は、液体噴射ユニット40を第2支持体34に連結するための構造体である。図5の伝送線56は、例えばFFC(Flexible Flat Cable)やFPC(Flexible Printed Circuits)等の可撓性のケーブルである。
図6は、図5におけるVI-VI線の断面図である。図5および図6に例示される通り、第1実施形態の連結ユニット50は、第1中継体52と第2中継体54とを具備する。
第1中継体52は、液体噴射ユニット40に固定された構造体であり、収容体522と配線基板524(第2配線基板の例示)とを具備する。収容体522は、略箱形の筐体である。図6に例示される通り、液体噴射ユニット40は、例えばネジ等の締結具TAにより収容体522の底面側(Z方向の正側)に固定される。配線基板524は、収容体522の底面を構成する平板状の配線基板である。配線基板524のうち液体噴射ユニット40側の表面には接続部526(第3接続部の例示)が設置される。接続部526は、電気的な接続のためのコネクター(Board to Boardコネクター)である。第1中継体52が液体噴射ユニット40に固定された状態では、配線基板524の接続部526が液体噴射ユニット40の接続部384に着脱可能に連結される。
第2中継体54は、液体噴射モジュール38を第2支持体34に固定するとともに駆動基板326に電気的に接続するための構造体であり、取付基板542と配線基板544(第1配線基板の例示)とを具備する。取付基板542は、第2支持体34に固定される板状部材である。図6に例示される通り、第1中継体52の収容体522と第2中継体54の取付基板542とは連結具53で相互に連結される。連結具53は、円柱状の軸体の両端部が鍔状に成形されたピンであり、第1中継体52および第2中継体54の各々に形成された貫通孔に挿入される。連結具53の軸体の直径は、第1中継体52および第2中継体54の各々の貫通孔の内径を下回る。したがって、連結具53の軸体の外周面と貫通孔の内周面との間には隙間が形成され、第1中継体52と第2中継体54とは非拘束に連結される。すなわち、第1中継体52および第2中継体54の一方は、連結具53と貫通孔との間の隙間分だけ他方に対してX-Y平面内で移動することが可能である。
図6に例示される通り、X方向における第2中継体54(取付基板542)の寸法W2は、X方向における第1中継体52(収容体522)の寸法W1を上回る。したがって、取付基板542のうちX方向の両側に位置する縁部は、第1中継体52の側面からX方向の正側および負側に張り出す。第2中継体54の寸法W2は、X方向における第2支持体34の開口部346の寸法WFを上回る(W2>WF)。取付基板542のうち収容体522から張り出した部分は、締結具TB(図6の例示では複数のネジ)により第2支持体34における支持部342の上面に固定される。他方、X方向における第1中継体52の寸法W1は、第2支持体34の開口部346の寸法WFを下回る(W1<WF)。したがって、図6に例示される通り、第1中継体52(収容体522)の外壁面と第2支持体34の開口部346の内壁面との間には隙間が形成される。すなわち、第2支持体34に対する設置前の状態では、第1中継体52は第2支持体34の開口部346を通過し得る。以上の説明から理解される通り、第2中継体54が第2支持体34に固定されるとともに当該第2中継体54に第1中継体52が非拘束で連結されるから、第2中継体54は第2支持体34に対してX-Y平面内で僅かに移動し得る。
配線基板544は、取付基板542のうち第1中継体52とは反対側の表面に固定された板状部材である。配線基板544における接続ユニット32側(Z方向の負側)の表面には接続部546(第1接続部の例示)が設置される。すなわち、接続部546は、配線基板544と取付基板542とを介して第2支持体34に固定される。接続部546は、電気的な接続のためのコネクター(Board to Boardコネクター)である。具体的には、第2支持体34が接続ユニット32に固定された状態では、配線基板544の接続部546が接続ユニット32の接続部328に着脱可能に連結される。すなわち、接続ユニット32の接続部328は、液体噴射ユニット40とは反対側(Z方向の負側)から接続部546に着脱可能である。
伝送線56は、図6に例示される通り、配線基板544と配線基板524とにわたり架設されて接続部546と接続部526とを電気的に接続する。図5および図6に例示される通り、伝送線56は、接続部546と接続部526との間でX方向に平行な直線に沿って折り曲げられた状態で収容体522に収容される。伝送線56の一端は、配線基板544のうち配線基板524との対向面に接合されて接続部546に電気的に接続され、伝送線56の他端は、配線基板524のうち配線基板544との対向面に接合されて接続部526に電気的に接続される。
以上の説明から理解される通り、接続ユニット32の駆動基板326は、接続部328と接続部546と配線基板544と伝送線56と配線基板524と接続部526とを介して液体噴射ユニット40の接続部384に電気的に接続される。したがって、駆動基板326で生成された電気信号(駆動信号,制御信号)および電源電圧は、接続部328と接続部546と伝送線56と接続部526とを介して液体噴射ユニット40に供給される。
ところで、例えば、複数の接続部546の相対的な関係により各接続部546の位置を決定し、複数の液体噴射ユニット40の相対的な関係により各液体噴射ユニット40の位置を決定した場合には、接続部546と液体噴射ユニット40との間で位置の誤差が発生し得る。第1実施形態においては、伝送線56は可撓性の部材であり容易に変形し得るから、接続部546と液体噴射ユニット40との間の位置の誤差は伝送線56の変形により吸収される。すなわち、第1実施形態の伝送線56は、接続部546と液体噴射ユニット40との間の位置の誤差を吸収するように接続部546と液体噴射ユニット40とを連結する接続体として機能する。
以上の構成によれば、接続ユニット32の接続部328を接続部546に着脱する工程で、接続部546から液体噴射ユニット40に作用する応力が低減される。したがって、接続部546から液体噴射ユニット40に対する応力の作用(ひいては液体噴射ユニット40の位置ずれ)を考慮せずに液体噴射ヘッド24を容易に組立または分解することが可能である。第1実施形態では、前述の通り、接続部546と液体噴射ユニット40との間で伝送線56が折り曲げられているから、接続部546と液体噴射ユニット40との間の位置の誤差を吸収できるという効果は格別に顕著である。
図7は、液体噴射部44のうち媒体12に対向する表面の平面図(すなわち、液体噴射部44をZ方向の正側からみた平面図)である。図7に例示される通り、液体噴射部44のうち媒体12との対向面(以下「噴射面」という)Jには複数のノズル(噴射孔)Nが形成される。図7に例示される通り、第1実施形態の液体噴射部44は、噴射面Jに形成された複数のノズルNを具備する4個の駆動部D[1]〜D[4]を内包する。複数のノズルNが分布するY方向の範囲は2個の駆動部D[n](n=1〜4)の間で部分的に重複する。
図7に例示される通り、任意の1個の駆動部D[n]に対応する複数のノズルNは、第1列G1と第2列G2とに区分される。第1列G1および第2列G2の各々は、Y方向に沿って配列された複数のノズルNの集合である。第1列G1と第2列G2とは、X方向に相互に間隔をあけて並列する。各駆動部D[n]は、第1列G1の各ノズルNからインクを噴射する第1噴射部DAと、第2列G2の各ノズルNからインクを噴射する第2噴射部DBとを包含する。なお、第1列G1の各ノズルNと第2列G2の各ノズルNとでY方向の位置を相違させること(いわゆる千鳥配置またはスタガ配置)も可能である。また、液体噴射部44に設置される駆動部D[n]の個数は任意であり4個には限定されない。
図7に例示される通り、噴射面Jを内包する最小面積の長方形λを想定すると、長方形λの長辺(Y方向)に平行な中心線yを設定できる。図7に例示される通り、第1実施形態における噴射面Jの平面形状は、第1部分P1と第2部分P2と第3部分P3とをY方向(すなわち長方形λの長辺の方向)に連結した形状である。第2部分P2は第1部分P1からみてY方向の正側に位置し、第3部分P3は第1部分P1を挟んで第2部分P2とは反対側(Y方向の負側)に位置する。図7から理解される通り、第1部分P1は長方形λの中心線yを通過するが、第2部分P2および第3部分P3の各々は中心線yを通過しない。具体的には、第2部分P2は、中心線yからみてX方向の負側に位置し、第3部分P3は、中心線yからみてX方向の正側に位置する。すなわち、第2部分P2と第3部分P3とは中心線yを挟んで反対側に位置する。噴射面Jの平面形状は、第1部分P1のうちX方向の負側の縁辺に第2部分P2が連続し、第1部分P1のうちX方向の正側の縁辺に第3部分P3が連続する形状とも表現できる。
図5および図7に例示される通り、液体噴射部44の端面には張出部442と張出部444とが形成される。張出部442は、第2部分P2のうち第1部分P1とは反対側(Y方向の正側)の端部にて液体噴射部44の端面から張り出す平板状の部分である。他方、張出部444は、第3部分P3のうち第1部分P1とは反対側(Y方向の負側)の端部にて液体噴射部44の端面から張り出す平板状の部分である。また、図7に例示される通り、第1部分P1のうち第2部分P2側の縁辺(第2部分P2が存在しない縁辺)には突起部446が形成される。突起部446は、張出部442および張出部444と同様に液体噴射部44の側面から突起する平板状の部分(第1張出部の例示)である。張出部444(第2張出部の例示)には、突起部446に対応した形状の切欠部445が形成される。
図8は、第1支持体242の表面(Z方向の負側の表面)の平面図であり、図9は、液体噴射部44を図8に追記した平面図である。図8および図9では、Y方向に隣合う2個の液体噴射部44(44A,44B)が位置する範囲を便宜的に図示した。図8および図9に例示される通り、各液体噴射部44(各液体噴射モジュール38)に対応する開口部60が第1支持体242には形成される。具体的には、図2から理解される通り、各液体噴射部44に対応する6個の開口部60が組立体244毎に形成され、複数の組立体244の配列に対応するようにY方向に並列される。図8および図9に例示される通り、各開口部60は、液体噴射部44の噴射面Jの外形に対応した平面形状の貫通孔である。液体噴射ユニット40は、液体噴射部44が第1支持体242の開口部60に挿入された状態で第1支持体242に固定される。すなわち、液体噴射部44の噴射面Jは開口部60の内側で第1支持体242からZ方向の正側に露出する。
図8および図9に例示される通り、Y方向に隣合う2個の開口部60の間には梁状部62が形成される。任意の1個の梁状部62は、第1支持部621と第2支持部622と中間部623とを相互に連結した梁状の部分である。第1支持部621は、梁状部62のうちX方向の正側に位置する部分であり、第2支持部622は、梁状部62のうちX方向の負側に位置する部分である。中間部623は、第1支持部621と第2支持部622とを連結する部分である。
図9から理解される通り、各液体噴射部44の張出部442は梁状部62のうち第1支持部621に平面視で(すなわちZ方向に平行な方向からみて)重複し、各液体噴射部44の張出部444は梁状部62のうち第2支持部622に平面視で重複する。そして、張出部442を締結具TC1で第1支持部621に固定するとともに張出部444を締結具TC2で第2支持部622に固定することで液体噴射部44は第1支持体242に固定される。締結具TC1および締結具TC2は例えばネジである。以上の通り、噴射面Jの両端部において液体噴射部44(液体噴射ユニット40)が第1支持体242に固定されるから、第1支持体242に対する液体噴射部44の傾斜を効果的に抑制することが可能である。図9の例示のように、液体噴射部44Aに対応する開口部60と液体噴射部44Bに対応する開口部60とに着目すると、両者間の梁状部62の第1支持部621に液体噴射部44Aの張出部442が固定され、当該梁状部62の第2支持部622に液体噴射部44Bの張出部444が固定される。
各液体噴射部44の突起部446には係合孔hAが形成され、張出部444には、締結具TC2が挿入される貫通孔とともに係合孔hBが形成される。係合孔hAおよび係合孔hBは、第1支持体242の表面に設置された突起に係合する貫通孔(位置決め部の例示)である。第1支持体242の表面の突起が係合孔hAおよび係合孔hBの各々に係合することで液体噴射部44のX-Y面内の位置が確定される。すなわち、第1支持体242に対する液体噴射部44の位置合わせが実現される。図9に例示される通り、突起部446の係合孔hAと張出部444の係合孔hBとはY方向(中心線y)に平行な直線上に位置する。したがって、液体噴射部44(液体噴射ユニット40)の傾斜を抑制しながら当該液体噴射部44を第1支持体242に対して高精度に位置決めできるという利点がある。なお、張出部444および突起部446に形成された突起を第1支持体242の表面の係合孔(有底孔または貫通孔)に係合させることで第1支持体242に対して液体噴射部44を位置合わせすることも可能である。
以上に説明した通り、第1実施形態では、Y方向に隣合う2個の開口部60の間に梁状部62が形成されるから、第1支持体242のX方向のサイズを削減できるという利点がある。また、第1実施形態では梁状部62に中間部623が形成されるから、液体噴射部44の噴射面Jを露出させる開口部60が複数の液体噴射部44にわたり連続する構成(梁状部62が形成されない構成)と比較して第1支持体242の機械的な強度を維持することが可能である。ところで、噴射面Jの第2部分P2および第3部分P3が中心線yを通過する構成(以下「対比例」という)のもとで、複数の液体噴射部44をY方向に充分に近接させた位置に配置するためには、図10に例示される通り、各液体噴射部44のX方向の位置を相違させる必要がある。第1実施形態では、第2部分P2および第3部分P3が中心線yを通過しないから、図9に例示される通り、複数の液体噴射部44をY方向に沿って直線状に配列することが可能である。したがって、液体噴射ヘッド24(1個の組立体244)の幅方向のサイズを対比例と比較して削減できるという利点がある。
図11は、液体噴射ユニット40と連結ユニット50と第2支持体34との関係を示す平面図である。図11に例示される通り、X方向における液体噴射ユニット40の寸法WHは、X方向における第2支持体34の開口部346の寸法WFを下回る(WH<WF)。図6を参照して前述した通り、第1中継体52の寸法W1も開口部346の寸法WFを下回るから、液体噴射ユニット40と第1中継体52とは第2支持体34の開口部346を通過し得る。以上の通り、第2支持体34の開口部346を通過させて液体噴射ユニット40および第2中継体54を着脱することが可能であるから、第1実施形態によれば、液体噴射ヘッド24の組立および分解の負担を軽減することが可能である。
図11に例示される通り、Y方向における第1中継体52の寸法L1および第2中継体54の寸法L2は、Y方向における液体噴射ユニット40の寸法LHを下回る(L1<LH,L2<LH)。したがって、第1中継体52におけるY方向の両側の外壁面を手指で把持した状態で、液体噴射モジュール38を第2支持体34に対して容易に着脱することが可能である。また、図11に例示される通り、第1中継体52および第2中継体54は、液体噴射ユニット40を第1支持体242に固定するための締結具TC1および締結具TC2に平面視で重ならない。したがって、液体噴射ユニット40を締結具TC1および締結具TC2により第1支持体242に固定する作業が容易であるという利点がある。
図12は、液体噴射ヘッド24の製造方法のフローチャートである。図12に例示される通り、まず、第2支持体34と分配流路36とを第1支持体242に固定する(ST1)。他方、締結具TAを利用して連結ユニット50を液体噴射ユニット40に固定することで液体噴射モジュール38を組立てる(ST2)。なお、工程ST1の実行前に工程ST2を実行することも可能である。
工程ST1および工程ST2の実行後の工程ST3では、複数の液体噴射モジュール38の各々について、液体噴射モジュール38を第1支持体242とは反対側から第2支持体34の開口部346に挿入し、液体噴射ユニット40を締結具TC1および締結具TC2により第1支持体242に固定する(ST3)。液体噴射モジュール38を開口部346に挿入して第1支持体242に接近させる過程で、弁機構ユニット41と分配流路36とが相互に連通する。工程ST3の実行後の工程ST4では、複数の液体噴射モジュール38の各々について、連結ユニット50の第2中継体54を締結具TBにより第2支持体34に固定する。なお、工程ST3の実行前に工程ST4を実行することも可能である。
工程ST3および工程ST4の実行後の工程ST5では、連結ユニット50を挟んで液体噴射ユニット40とは反対側(Z方向の負側)から接続ユニット32を各液体噴射モジュール38に接近させる。そして、複数の液体噴射モジュール38について一括的に、接続部546と接続ユニット32の接続部328とを着脱可能に接続する。
以上の工程(ST1〜ST5)により接続ユニット32と第2支持体34と分配流路36と複数の液体噴射モジュール38とを含む1個の組立体244が第1支持体242に設置される。同様の工程を反復して複数の組立体244を第1支持体242に固定することで図2の液体噴射ヘッド24が製造される。
以上の説明から理解される通り、工程ST3は、液体噴射ユニット40を第1支持体242に固定する工程であり、工程ST4は、連結ユニット50を第2支持体34に固定する工程である。また、工程ST5は、接続ユニット32を複数の液体噴射モジュール38に接近させることで接続部546と接続部328とを着脱可能に接続する工程である。もっとも、液体噴射ヘッド24の製造方法は、以上に例示した方法には限定されない。
以上に例示した液体噴射ユニット40の具体的な構成を説明する。図13は、液体噴射ユニット40にインクを供給する流路の説明図である。図5を参照して前述した通り、液体噴射ユニット40の液体噴射部44は4個の駆動部D[1]〜D[4]を具備する。各駆動部D[n]は、第1列G1の各ノズルNからインクを噴射する第1噴射部DAと、第2列G2の各ノズルNからインクを噴射する第2噴射部DBとを内包する。図13に例示される通り、弁機構ユニット41は4個の開閉弁B[1]〜B[4]を具備し、液体噴射ユニット40の流路ユニット42は4個のフィルターF[1]〜F[4]を具備する。開閉弁B[n]は、液体噴射部44にインクを供給する流路を開閉する弁機構である。フィルターF[n]は、流路内のインクに混入した気泡や異物を捕集する。
図13に例示される通り、開閉弁B[1]とフィルターF[1]とを通過したインクは、駆動部D[1]および駆動部D[2]の第1噴射部DAに供給され、開閉弁B[2]とフィルターF[2]とを通過したインクは、駆動部D[1]および駆動部D[2]の第2噴射部DBに供給される。同様に、開閉弁B[3]とフィルターF[3]とを通過したインクは、駆動部D[3]および駆動部D[4]の第1噴射部DAに供給され、開閉弁B[4]とフィルターF[4]とを通過したインクは、駆動部D[3]および駆動部D[4]の第2噴射部DBに供給される。すなわち、開閉弁B[1]または開閉弁B[3]を通過したインクは第1列G1の各ノズルNから噴射され、開閉弁B[2]または開閉弁B[4]を通過したインクは第2列G2の各ノズルNから噴射される。
図14は、液体噴射部44(第1噴射部DAまたは第2噴射部DB)のうち任意の1個のノズルNに対応した部分の断面図である。図14に例示される通り、第1実施形態の液体噴射部44は、圧力室基板482と振動板483と圧電素子484と筐体部485と封止体486とが流路基板481の一方側に配置されるとともに、他方側にノズル板487および緩衝板488が配置された構造体である。流路基板481と圧力室基板482とノズル板487とは例えばシリコンの平板材で形成され、筐体部485は例えば樹脂材料の射出成形で形成される。複数のノズルNはノズル板487に形成される。ノズル板487のうち流路基板481とは反対側の表面が噴射面Jに相当する。
流路基板481には、開口部481Aと分岐流路(絞り流路)481Bと連通流路481Cとが形成される。分岐流路481Bおよび連通流路481CはノズルN毎に形成された貫通孔であり、開口部481Aは複数のノズルNにわたり連続する開口である。緩衝板488は、流路基板481のうち圧力室基板482とは反対側の表面に設置されて開口部481Aを閉塞する平板材(コンプライアンス基板)である。開口部481A内の圧力変動は緩衝板488により吸収される。
筐体部485には、流路基板481の開口部481Aに連通する共通液室(リザーバー)SRが形成される。共通液室SRは、第1列G1および第2列G2の一方を構成する複数のノズルNに供給されるインクを貯留する空間であり、複数のノズルNにわたり連続する。上流側から供給されるインクが流入する流入口Rinが共通液室SRには形成される。
圧力室基板482にはノズルN毎に開口部482Aが形成される。振動板483は、圧力室基板482のうち流路基板481とは反対側の表面に設置された弾性変形可能な平板材である。圧力室基板482の各開口部482Aの内側で振動板483と流路基板481とに挟まれた空間は、共通液室SRから分岐流路481Bを介して供給されるインクが充填される圧力室(キャビティ)SCとして機能する。各圧力室SCは、流路基板481の連通流路481Cを介してノズルNに連通する。
振動板483のうち圧力室基板482とは反対側の表面にはノズルN毎に圧電素子484が形成される。各圧電素子484は、相互に対向する電極間に圧電体を介在させた駆動素子である。駆動信号の供給により圧電素子484が変形することで振動板483が振動すると、圧力室SC内の圧力が変動して圧力室SC内のインクがノズルNから噴射される。封止体486は、複数の圧電素子484を保護する。
図15は、液体噴射ユニット40の内部流路の説明図である。図15では、開閉弁B[1]とフィルターF[1]とを経由して駆動部D[1]および駆動部D[2]の第1噴射部DAにインクを供給する流路を便宜的に例示したが、図13を参照して説明した他の流路についても同様の構成が設置される。弁機構ユニット41と流路ユニット42と液体噴射部44の筐体部485とは、ノズルNにインクを供給するための内部流路を構成する流路構造体として機能する。
図16は、弁機構ユニット41の内部に着目した説明図である。図15および図16に例示される通り、弁機構ユニット41の内部には空間R1と空間R2と制御室RCとが形成される。空間R1は、分配流路36を介して液体圧送機構16に接続される。液体圧送機構16は、液体容器14に貯留されたインクを加圧状態で液体噴射ユニット40に供給(すなわち圧送)する機構である。空間R1と空間R2との間に開閉弁B[1]が設置され、空間R2と制御室RCとの間には可動膜71が介在する。図16に例示される通り、開閉弁B[1]は、弁座721と弁体722と受圧板723とバネ724とを具備する。弁座721は、空間R1と空間R2とを仕切る平板状の部分である。弁座721には、空間R1と空間R2とを連通させる連通孔HAが形成される。受圧板723は、可動膜71のうち弁座721との対向面に設置された略円形状の平板材である。
第1実施形態の弁体722は、基部725と弁軸726と封止部(シール)727とを包含する。基部725の表面から弁軸726が垂直に突起し、平面視で弁軸726を包囲する円環状の封止部727が基部725の表面に設置される。弁体722は、連通孔HAに弁軸726が挿入された状態で空間R1内に配置され、バネ724により弁座721側に付勢される。弁軸726の外周面と連通孔HAの内周面との間には隙間が形成される。
図16に例示される通り、制御室RCには袋状体73が設置される。袋状体73は、ゴム等の弾性材料で形成された袋状の部材であり、内部空間の加圧により膨張するとともに内部空間の減圧により収縮する。図15に例示される通り、袋状体73は、分配流路36内の流路を介して圧力調整機構18に接続される。圧力調整機構18は、当該圧力調整機構18に接続された流路に空気を供給する加圧動作と、当該流路から空気を吸引する減圧動作とを、制御ユニット20からの指示に応じて選択的に実行可能である。圧力調整機構18から内部空間に空気が供給されること(すなわち加圧)で袋状体73は膨張し、圧力調整機構18による空気の吸引(すなわち減圧)により袋状体73は収縮する。
袋状体73が収縮した状態では、空間R2内の圧力が所定の範囲内に維持されている場合には、弁体722をバネ724が付勢することで封止部727が弁座721の表面に密着する。したがって、空間R1と空間R2とは遮断される。他方、液体噴射部44によるインクの噴射や外部からの吸引に起因して空間R2内の圧力が所定の閾値を下回る数値まで低下すると、可動膜71が弁座721側に変位することで受圧板723が弁軸726を押圧し、弁体722がバネ724による付勢に対抗して移動することで封止部727が弁座721から離間する。したがって、空間R1と空間R2とが連通孔HAを介して相互に連通する。
また、圧力調整機構18による加圧で袋状体73が膨張すると、袋状体73による押圧で可動膜71が弁座721側に変位する。したがって、受圧板723による押圧で弁体722が移動して開閉弁B[1]が開放される。すなわち、空間R2内の圧力の高低に関わらず、圧力調整機構18による加圧で強制的に開閉弁B[1]を開放することが可能である。
図15に例示される通り、第1実施形態の流路ユニット42は、脱泡空間QとフィルターF[1]と鉛直空間RVと逆止弁74とを包含する。脱泡空間Qは、インクから抽出された気泡が一時的に滞留する空間である。
フィルターF[1]は、液体噴射部44にインクを供給するための内部流路を横断するように設置され、インクに混入した気泡や異物を捕集する。具体的には、フィルターF[1]は、空間RF1と空間RF2とを仕切るように設置される。上流側の空間RF1は弁機構ユニット41の空間R2に連通し、下流側の空間RF2は鉛直空間RVに連通する。
空間RF1と脱泡空間Qとの間には気体透過膜MC(第2気体透過膜の例示)が介在する。具体的には、空間RF1の天井面が気体透過膜MCで構成される。気体透過膜MCは、気体(空気)は透過させるけれどもインク等の液体は透過させない気体透過性の膜体(気液分離膜)であり、例えば公知の高分子材料で形成される。フィルターF[1]で捕集された気泡は、浮力による上昇で空間RF1の天井面に到達し、気体透過膜MCを透過することで脱泡空間Qに排出される。すなわち、インクに混入した気泡が分離される。
鉛直空間RVは、インクを一時的に貯留するための空間である。第1実施形態の鉛直空間RVには、フィルターF[1]を通過したインクが空間RF2から流入する流入口Vinと、インクがノズルN側に流出する流出口Voutとが形成される。すなわち、空間RF2内のインクは、流入口Vinを介して鉛直空間RVに流入し、鉛直空間RV内のインクは流出口Voutを介して液体噴射部44(共通液室SR)に流入する。図15に例示される通り、流出口Voutと比較して鉛直方向の上方(Z方向の負側)に流入口Vinが位置する。
鉛直空間RVと脱泡空間Qとの間には気体透過膜MA(第1気体透過膜の例示)が介在する。すなわち、フィルターF[1]と気体透過膜MAとは共通の単一部材(すなわち流路構造体を構成する流路ユニット42)に設置される。フィルターF[1]が設置された空間RF2の直下に位置する鉛直空間RV(貯留空間の例示)の壁面を気体透過膜MAが構成する、と換言することも可能である。具体的には、鉛直空間RVの天井面が気体透過膜MAで構成される。したがって、フィルターF[1]の表面(捕集面)と気体透過膜MAの表面とは相互に交差する。具体的には、フィルターF[1]の表面は鉛直方向に平行であるが、気体透過膜MAの表面は鉛直方向に垂直(水平方向に平行)である。気体透過膜MAは、前述の気体透過膜MCと同様に気体透過性の膜体である。したがって、フィルターF[1]を通過して鉛直空間RVに進入した気泡は浮力により上昇し、鉛直空間RVの天井面の気体透過膜MAを透過して脱泡空間Qに排出される。前述の通り、流入口Vinは流出口Voutと比較して鉛直方向の上方に位置するから、鉛直空間RV内での浮力を利用して気泡を効果的に天井面の気体透過膜MAに到達させることが可能である。また、フィルターF[1]の表面と気体透過膜MAの表面とが相互に交差するから、フィルターF[1]と気体透過膜MAとが平行に配置された構成(例えばフィルターF[1]が水平に配置された後掲の図28の構成)と比較して、気体透過膜MAの面内方向において流路ユニット42の小型化が容易であるという利点もある。他方、フィルターF[1]の表面と気体透過膜MAの表面とが相互に平行である構成によれば、フィルターF[1]の表面と気体透過膜MAの表面とが相互に交差する構成と比較して、気体透過膜MAに交差する方向において流路ユニット42の小型化が容易であるという利点がある。
図17に例示される通り、空間RF1に発生した気泡bは、フィルターF[1]を通過するときに複数の微細な気泡に細分化されたうえで鉛直空間RVに移動する。以上のように気泡が細分化されることで、鉛直空間RV内の気体透過膜MAに気泡が接触する面積が増加する。すなわち、フィルターF[1]により気泡bが細分化されることで気泡を脱泡空間Qに効果的に排出できるという利点がある。また、鉛直空間RV内の気泡が常時的に脱泡空間Qに排出されるから、細分化された気泡が鉛直空間RVの下流側に移動する可能性を低減できるという利点もある。
第1実施形態では、フィルターF[1]と気体透過膜MAとが流路構造体(流路ユニット42)における共通の単一部材に設置される。また、フィルターF[1]が設置された空間RF[2]の直下の鉛直空間RVに気体透過膜MAが設置される。以上の説明から理解される通り、フィルターF[1]と気体透過膜MAとは相互に近い位置に設置される。したがって、フィルターF[1]により細分化された気泡を効率的に気体透過膜MAから排出できるという利点がある。
液体噴射部44の共通液室SRには、前述の通り、鉛直空間RVの流出口Voutから供給されるインクが流入する流入口Rinが形成される。すなわち、鉛直空間RVの流出口Voutから流出したインクは流入口Rinを介して共通液室SRに流入し、開口部481Aを経由して各圧力室SCに供給される。また、第1実施形態の共通液室SRには排出口Routが形成される。排出口Routは、共通液室SRの天井面49に形成された流路である。図15に例示される通り、共通液室SRの天井面49は、流入口Rin側から排出口Rout側にかけて高くなる傾斜面(平面または曲面)である。したがって、流入口Rinから進入した気泡は浮力の作用で天井面49に沿って排出口Rout側に誘導される。
共通液室SRと脱泡空間Qとの間には気体透過膜MB(第1気体透過膜の例示)が介在する。気体透過膜MBは、気体透過膜MAや気体透過膜MCと同様に気体透過性の膜体である。したがって、共通液室SRから排出口Routに進入した気泡は浮力により上昇し、気体透過膜MBを透過して脱泡空間Qに排出される。前述の通り、共通液室SR内の気泡は天井面49に沿って排出口Routに誘導されるから、例えば共通液室SRの天井面49を水平面とした構成と比較して共通液室SR内の気泡を効果的に排出することが可能である。なお、気体透過膜MAと気体透過膜MBと気体透過膜MCとを単一の膜体で形成することも可能である。
以上に説明した通り、第1実施形態では、鉛直空間RVと脱泡空間Qとの間に気体透過膜MAが介在し、共通液室SRと脱泡空間Qとの間に気体透過膜MBが介在し、空間RF1と脱泡空間Qとの間に気体透過膜MCが介在する。すなわち、気体透過膜MAと気体透過膜MBと気体透過膜MCとの各々を透過した気泡が共通の脱泡空間Qに到達する。したがって、液体噴射ユニット40の各部にて抽出された気泡が別個の空間に供給される構成と比較して、気泡の排出のための構造が簡素化されるという利点がある。なお、内部流路を流通するインクの流速が変動すると、フィルターF[1]の上流側と下流側との圧力損失差が変動するから、フィルターF[1]により捕集できる気泡量も変動する。第1実施形態では、気体透過膜MAおよび気体透過膜MBの双方を介して気泡が脱泡空間Qに排出される。したがって、内部流路内の流速の変動に関わらず、気泡を効果的に脱泡空間Qに排出できるという利点もある。
図15に例示される通り、脱泡空間Qは脱泡経路75に連通する。脱泡経路75は、脱泡空間Qに滞留した空気を装置外部に排出するための経路である。脱泡空間Qと脱泡経路75との間には逆止弁74が介在する。逆止弁74は、脱泡空間Qから脱泡経路75に向かう空気の流通を許可する一方、脱泡経路75から脱泡空間Qに向かう空気の流通を阻害する弁機構である。
図18は、流路ユニット42のうち逆止弁74の近傍に着目した説明図である。図18に例示される通り、第1実施形態の逆止弁74は、弁座741と弁体742とバネ743とを包含する。弁座741は、脱泡空間Qと脱泡経路75とを仕切る平板状の部分である。弁座741には、脱泡空間Qと脱泡経路75とを連通させる連通孔HBが形成される。弁体742は、弁座741に対向するとともにバネ743により弁座741側に付勢される。脱泡経路75内の圧力が脱泡空間Q内の圧力以上に維持された状態(脱泡経路75内が大気開放または加圧された状態)では、バネ743からの付勢により弁体742が弁座741に密着することで連通孔HBが閉塞される。したがって、脱泡空間Qと脱泡経路75とは遮断される。他方、脱泡経路75内の圧力が脱泡空間Q内の圧力を下回る状態(脱泡経路75内が減圧された状態)では、弁体742がバネ743による付勢に対抗して弁座741から離間する。したがって、脱泡空間Qと脱泡経路75とが連通孔HBを介して相互に連通する。
第1実施形態の脱泡経路75は、圧力調整機構18と弁機構ユニット41の制御室RCとを連結する経路に接続される。すなわち、圧力調整機構18に接続された経路が2系統に分岐し、一方が制御室RCに接続されるとともに他方が脱泡経路75に接続される。
図15に例示される通り、液体噴射ユニット40から弁機構ユニット41を経由して分配流路36の内部に至る排出経路76が形成される。排出経路76は、液体噴射ユニット40の内部流路(具体的には液体噴射部44にインクを供給するための流路)に連通する経路である。具体的には、排出経路76は、各液体噴射部44の共通液室SRの排出口Routと鉛直空間RVとに連通する。
排出経路76のうち液体噴射ユニット40とは反対側の端部は閉塞弁78に接続される。閉塞弁78が設置される位置は任意であるが、分配流路36内に閉塞弁78を設置した構成が図15では例示されている。閉塞弁78は、通常状態では排出経路76を閉塞し(ノーマリークローズ)、一時的に排出経路76を大気に開放可能な弁機構である。
内部流路からの気泡の排出に着目した液体噴射ユニット40の動作を説明する。図19に例示される通り、液体噴射ユニット40に最初にインクを充填(以下「初期充填」という)する段階では、圧力調整機構18が加圧動作を実行する。すなわち、袋状体73の内部空間と脱泡経路75内とが空気の供給により加圧される。したがって、制御室RC内の袋状体73が膨張して可動膜71および受圧板723が変位し、受圧板723からの押圧により弁体722が移動して空間R1と空間R2とが連通する。脱泡経路75が加圧された状態では逆止弁74により脱泡空間Qと脱泡経路75とが遮断されるから、脱泡経路75内の空気は脱泡空間Qには流入しない。他方、初期充填の段階では閉塞弁78が開放される。
以上の状態において、液体圧送機構16は、液体容器14に貯留されたインクを液体噴射ユニット40の内部流路に圧送する。具体的には、液体圧送機構16から圧送されたインクは、開放状態にある開閉弁B[1]を介して鉛直空間RVに供給され、鉛直空間RVから共通液室SRおよび各圧力室SCに供給される。前述の通り閉塞弁78は開放されているから、初期充填の実行前に内部流路に存在していた空気は、内部流路および排出経路76に対するインクの充填とともに排出経路76と閉塞弁78とを通過して装置外部に排出される。したがって、液体噴射ユニット40の共通液室SRと各圧力室SCとを含む内部流路の全体にインクが充填され、圧電素子484の動作によりノズルNからインクを噴射可能な状態となる。以上に例示した通り、第1実施形態では、液体圧送機構16から液体噴射ユニット40にインクが圧送されるときに閉塞弁78が開放されるから、液体噴射ユニット40の内部流路にインクを効率的に充填することが可能である。以上に説明した初期充填が完了すると、圧力調整機構18による加圧動作が停止するとともに閉塞弁78が閉塞される。
図20に例示される通り、初期充填が完了して液体噴射装置100が使用可能な状態では、液体噴射ユニット40の内部流路に存在する気泡が常時的に脱泡空間Qに排出される。具体的には、空間RF1内の気泡は気体透過膜MCを介して脱泡空間Qに排出され、鉛直空間RV内の気泡は気体透過膜MAを介して脱泡空間Qに排出され、共通液室SR内の気泡は気体透過膜MBを介して脱泡空間Qに排出される。他方、開閉弁B[1]は、空間R2内の圧力が所定の範囲内に維持された状態では閉塞され、空間R2内の圧力が所定の閾値を下回ると開放される。開閉弁B[1]が開放されると、液体圧送機構16から供給されるインクが空間R1から空間R2に流入し、結果的に空間R2の圧力が上昇することで開閉弁B[1]は閉塞される。
図20に例示した動作状態で脱泡空間Qに滞留した空気は、脱泡動作により装置外部に排出される。脱泡動作は、例えば液体噴射装置100の電源投入の直後や印刷動作の間等の任意の時期に実行され得る。図21は、脱泡動作の説明図である。図21に例示される通り、脱泡動作を開始すると、圧力調整機構18は減圧動作を実行する。すなわち、袋状体73の内部空間と脱泡経路75とが空気の吸引により減圧される。
脱泡経路75が減圧されると、逆止弁74の弁体742がバネ743による付勢に対抗して弁座741から離間し、脱泡空間Qと脱泡経路75とが連通孔HBを介して相互に連通する。したがって、脱泡空間Q内の空気は脱泡経路75を介して装置外部に排出される。他方、内部空間の減圧により袋状体73は収縮するが、制御室RC内の圧力(ひいては可動膜71)には影響しないから、開閉弁B[1]は閉塞した状態に維持される。
以上に例示した通り、第1実施形態では、開閉弁B[1]の開閉と逆止弁74の開閉とに圧力調整機構18が共用されるから、開閉弁B[1]と逆止弁74とを別個の機構により制御する構成と比較して、開閉弁B[1]および逆止弁74を制御するための構成が簡素化されるという利点がある。
第1実施形態における閉塞弁78の具体的な構成を説明する。図22は、閉塞弁78の構成を例示する断面図である。図22に例示される通り、第1実施形態の閉塞弁78は、連通管781と移動体782と封止部783とバネ784とを具備する。連通管781は、開口部785が端面に形成された円管体であり、移動体782と封止部783とバネ784とを収容する。連通管781の内部空間が排出経路76の末端部に相当する。
封止部783は、ゴム等の弾性材料で形成された円環状の部材であり、連通管781の内部空間の一端側に当該連通管781と同心に設置される。移動体782は、連通管781の内側で当該連通管781の中心軸の方向に移動可能な部材であり、図22に例示される通り、バネ784による付勢で封止部783に密着する。移動体782と封止部783とが相互に密着することで連通管781の内部の排出経路76は閉塞される。以上の通り、移動体782は排出経路76を閉塞するように付勢されるから、液体噴射装置100の通常使用時(図20)に、排出経路76を介して液体噴射ユニット40内のインクに気泡が混入する可能性や、液体噴射ユニット40内のインクが排出経路76を介して漏出する可能性を低減することが可能である。他方、連通管781の開口部785を介した外力の作用で移動体782を封止部783から離間させると、封止部783を介して連通管781の内部の排出経路76が外部に連通する。すなわち、排出経路76は開放された状態(図19)となる。
図19に例示した初期充填の段階で閉塞弁78の移動体782を移動させるために、図22の開弁ユニット80が使用される。第1実施形態の開弁ユニット80は、挿入部82と基礎部84とを具備する。挿入部82は、連通流路822が内部に形成された針状の部分であり、連通流路822に連通する開口部824が先端部820(基礎部84とは反対側)に形成される。基礎部84は、挿入部82の連通流路822に連通する滞留空間842と、連通流路822を閉塞する気体透過性の気体透過膜844と、気体透過膜844を挟んで連通流路822とは反対側に形成された排出口846とを具備する。
初期充填の段階では、図23に例示される通り、開弁ユニット80の挿入部82が開口部785から連通管781に挿入される。挿入部82の先端部820から付与される外力により、移動体782は、封止部783から離間する方向に移動する。挿入部82を更に挿入すると、挿入部82の外周面と封止部783の内周面とが密着し、挿入部82が封止部783により保持された状態となる。以上の状態では、封止部783からみて排出経路76側(移動体782側)に挿入部82の開口部824が位置する。すなわち、挿入部82のうち開口部824からみて基端側の外周面と連通管781の内周面(排出経路76の内周面)との間が封止部783により封止される。以上の状態における移動体782の位置を以下では「開放位置」と表記する。移動体782が開放位置に移動した状態では、開弁ユニット80の先端部820の開口部824を介して排出経路76が滞留空間842に連通する。以上の説明から理解される通り、第1実施形態では、開弁ユニット80の挿入により移動体782を開放位置に簡便に移動させることが可能である。
図19を参照して前述した通り、液体圧送機構16からインクが圧送されるときに、開弁ユニット80を連通管781の開口部785に挿入することで移動体782を開放位置まで移動させる。したがって、液体噴射ユニット40の内部流路に存在していた空気がインクとともに排出経路76に排出され、図23の矢印のように開口部824と連通流路822とを通過して開弁ユニット80の滞留空間842まで到達する。滞留空間842に到達した気泡は、気体透過膜844を透過して排出口846から外部に排出される。以上の通り、第1実施形態では、開弁ユニット80の連通流路822を閉塞する気体透過膜844が設置されるから、排出経路76が連通流路822に流入した液体が開弁ユニット80から漏出する可能性を低減することが可能である。
第1実施形態では、開弁ユニット80の外周面と排出経路76の内周面(連通管781の内周面)との間が封止部783により封止されるから、開弁ユニット80の外周面と排出経路76の内周面との隙間を介してインクが漏出する可能性を低減することが可能である。また、第1実施形態では、開弁ユニット80の外周面と排出経路76の内周面との間の封止と、移動体782と排出経路76の内周面との間の封止とに封止部783が共用される。したがって、双方の封止に別個の部材を使用する構成と比較して、閉塞弁78の構造が簡素化されるという利点がある。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各構成において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
図24は、第2実施形態における伝送線56の配置の説明図である。第1実施形態では、図6を参照して前述した通り、配線基板544のうち接続部546とは反対側の表面に伝送線56の一端が接合され、配線基板524のうち接続部526とは反対側の表面に伝送線56の他端が接合された構成を例示した。第2実施形態では、図24に例示される通り、配線基板544のうち接続部546が設置された表面に伝送線56の一端が接合され、配線基板524のうち接続部526が設置された表面に伝送線56の他端が接合される。すなわち、伝送線56は、配線基板544のうちZ方向の負側の表面から配線基板524のうちZ方向の正側の表面に至るように屈曲される。
第1実施形態のように接続部546や接続部526とは反対側の表面に伝送線56を接合する構成では、接続部546と伝送線56とを電気的に接続する導通孔(ビアホール)を配線基板544に形成し、接続部526と伝送線56とを電気的に接続する導通孔を配線基板524に形成する必要がある。第2実施形態では、配線基板544のうち接続部546側の表面に伝送線56の一端が接合され、配線基板524のうち接続部526側の表面に伝送線56の他端が接合されるから、配線基板544および配線基板524に両面間にわたる導通孔を形成する必要がないという利点がある。
<第3実施形態>
図25は、第3実施形態における連結ユニット50の部分的な構成図である。第1実施形態では、接続部546と液体噴射ユニット40とを可撓性の伝送線56により電気的に接続した。第3実施形態では、図25に例示される通り、配線基板544の接続部546と液体噴射ユニット40の接続部384とを接続部58により電気的に接続する。接続部58は、フローティング構造のコネクター(Board to Boardコネクター)であり、接続対象に対して移動し得る構成により公差を吸収することが可能である。したがって、第3実施形態においても第1実施形態と同様に、接続部546から液体噴射ユニット40に対する応力の作用(ひいては液体噴射ユニット40の位置ずれ)を考慮せずに液体噴射ヘッド24を容易に組立または分解することが可能である。
以上の説明から理解される通り、第1実施形態および第2実施形態の伝送線56と第3実施形態の接続部58とは、接続部546と液体噴射ユニット40との間の位置の誤差を吸収するように接続部546と液体噴射ユニット40との間に設置されて接続部546と液体噴射ユニット40とを連結する接続体として包括的に表現される。
<第4実施形態>
図26は、第4実施形態における閉塞弁78および開弁ユニット80の構成図である。図26に例示される通り、第4実施形態の開弁ユニット80には液面センサー92が接続される。液面センサー92は、開弁ユニット80の挿入部82の連通流路822内の液面を検出する検出器である。例えば、連通流路822内に光を照射するとともに液面での反射光を受光する光学センサーが液面センサー92として好適である。図19に例示した初期充填の過程では、液体噴射ユニット40に対する液体圧送機構16のインクの圧送が進行するほど、連通流路822内の液面が高くなるという傾向がある。
初期充填の過程において、第4実施形態の制御ユニット20は、液面センサー92による検出結果に応じて液体圧送機構16による圧送を制御する。具体的には、液面センサー92が検出した液面が所定の基準位置よりも低い場合、液体圧送機構16は、液体噴射ユニット40に対するインクの圧送を継続する。他方、液面センサー92が検出した液面が基準位置よりも高い場合、液体圧送機構16は、液体噴射ユニット40に対するインクの圧送を停止する。
第4実施形態では、連通流路822内の液面を液面センサー92が検出した結果に応じて液体圧送機構16によるインクの圧送が制御されるから、液体噴射ユニット40に対する過剰なインクの供給を抑制することが可能である。
<第5実施形態>
第4実施形態では、連通流路822内の液面の検出結果に応じて液体圧送機構16の動作を制御する構成を例示した。図19に例示した初期充填の過程において、第5実施形態の制御ユニット20は、液体噴射ユニット40のノズルNから排出されたインクの検出結果に応じて液体圧送機構16による圧送を制御する。液体噴射ユニット40に対して液体圧送機構16から過剰にインクが供給されると、圧電素子484を駆動していない状態でも液体噴射ユニット40のノズルNからインクが漏出し得る。そこで、第5実施形態の液体圧送機構16は、特定のノズルNからのインクの漏出が検出されない場合には、液体噴射ユニット40に対するインクの圧送を継続し、当該ノズルNからのインクの漏出が検出された場合にはインクの圧送を停止する。インクの漏出を検出する方法は任意であるが、例えばノズルNから排出されたインクを検出する漏液センサーが好適に利用され得る。また、ノズルNからのインクの漏出の有無に応じて圧力室SC内の残留振動(圧電素子484の変位後に圧力室SC内に残留する振動)の特性が相違するという傾向を考慮すると、残留振動を解析することでインクの漏出を検出することも可能である。
第5実施形態では、液体噴射ユニット40のノズルから排出されたインクの検出結果に応じて液体圧送機構16によるインクの圧送が制御されるから、液体噴射ユニット40に対する過剰なインクの供給を抑制することが可能である。
<変形例>
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
(1)脱泡経路75および排出経路76を介した気泡の排出に加え、液体噴射ヘッド24の内部流路のインクをノズルN側から吸引することでノズルNから気泡を排出することも可能である。具体的には、噴射面Jをキャップにより密閉し、噴射面Jとキャップとの間の空間を減圧することで、気泡がインクとともにノズルNから排出される。弁機構ユニット41と流路ユニット42と液体噴射部44の筐体部485とで構成される流路構造体の内部流路に存在する気泡は、前述の各形態で例示した脱泡経路75および排出経路76を介した排出が効果的であり、液体噴射部44のうち分岐流路481BからノズルNまでの流路に存在する気泡は、ノズルN側からの吸引による排出が効果的である。
(2)前述の各形態では、噴射面Jが第1部分P1と第2部分P2と第3部分P3とを含む構成を例示したが、第2部分P2および第3部分P3の一方は省略され得る。また、前述の各形態では、第2部分P2と第3部分P3とが中心線yを挟んで反対側に位置する構成を例示したが、第2部分P2と第3部分P3とを中心線yに対して同じ側に位置させることも可能である。
(3)第1支持体242における梁状部62の形状(または開口部60の形状)は、前述の各形態で例示した形状に限定されない。例えば、前述の各形態では、第1支持部621と第2支持部622と中間部623とを相互に連結した形状の梁状部62を例示したが、中間部623を省略した形状(第1支持部621と第2支持部622とが相互に離間した形状)の梁状部62を第1支持体242に形成することも可能である。
(4)前述の各形態では、液体噴射ヘッド24を搭載した搬送体262がX方向に移動するシリアル方式の液体噴射装置100を例示したが、液体噴射ヘッド24の複数のノズルNが媒体12の全幅にわたり分布するライン方式の液体噴射装置にも本発明を適用することが可能である。ライン方式の液体噴射装置では、前述の各形態で例示した移動機構26が省略され得る。
(5)圧力室SCの内部に圧力を付与する要素(駆動素子)は、前述の各形態で例示した圧電素子484に限定されない。例えば、加熱により圧力室SCの内部に気泡を発生させて圧力を変動させる発熱素子を駆動素子として利用することも可能である。以上の例示から理解される通り、駆動素子は、液体を噴射するための要素(典型的には圧力室SCの内部に圧力を付与する要素)として包括的に表現され、動作方式(圧電方式/熱方式)や具体的な構成の如何は不問である。
(6)前述の各形態では、電気的な接続に使用される接続部(328,384,526,546)を例示したが、インク等の液体が流通する流路を接続するための接続部にも本発明を適用することが可能である。すなわち、本発明における接続体は、第1接続部と液体噴射ユニットとを電気的に接続する要素(例えば伝送線56)のほか、第1接続部の流路と液体噴射ユニットの流路とを接続する要素(例えば弾性材料で形成されたチューブ)を包含する。
(7)図27に例示される通り、フィルターF[1]の上流側の空間RF1が空間rを含む構成も好適である。空間rは、空間RF1のうち上方側に位置する一部の空間であり、フィルターF[1]と気体透過膜MCとの間に位置する。すなわち、フィルターF[1]の上端からみて鉛直方向の上方側に空間rが位置する。空間rの天井面に気体透過膜MCが配置される。図27の構成では、空間RF1に発生した気泡は空間rに停留する。したがって、空間rが形成されない図15の構成と比較して、空間RF1内の気泡がフィルターF[1]を閉塞する可能性が低減されるという利点がある。フィルターF[1]が気泡により閉塞されると圧力損失が増加するから、ノズルNから噴射されるインクの重量が変動する可能性がある。図27の構成によれば、気泡によるフィルターF[1]の閉塞が抑制されるから、ノズルNから噴射されるインクの重量の変動を低減できるという利点がある。
(8)前述の各形態では、フィルターF[1]の表面と気体透過膜MAの表面とが相互に交差する構成を例示したが、図28に例示される通り、フィルターF[1]の表面(捕集面)と気体透過膜MAまたは気体透過膜MCの表面とが相互に交差しない構成も採用され得る。図28に例示された構成では、フィルターF[1]の表面と気体透過膜MAおよび気体透過膜MCの表面とが平行(水平方向)である。ただし、流路構造体(流路ユニット42)の小型化という観点からは、前述の例示の通り、フィルターF[1]と気体透過膜MAとが相互に交差する構成が好適である。
(9)前述の各形態では、流路構造体の内部流路を構成する部材(以下「流路形成部材」という)とは別体の気体透過膜(MA,MB,MC)を例示したが、流路形成部材と一体に気体透過膜を形成することも可能である。具体的には、流路形成部材のうち脱泡空間Qに接する部分を充分に薄く成形することで、気体透過膜(MA,MB,MC)として利用することが可能である。すなわち、流路形成部材のうち脱泡空間Qに接する部分(壁面)を、脱泡空間Qに接しない部分と比較して気体を透過させる構成とすれば、脱泡空間Qに接する部分を気体透過膜(MA,MB,MC)として利用することが可能である。気体透過膜844についても同様に、開弁ユニット80と一体に形成することが可能である。
(10)前述の各形態では、弁機構ユニット41と流路ユニット42と液体噴射部44の筐体部485とを流路構造体として例示したが、液体噴射装置100の全体や一部を流路構造体として把握することも可能である。すなわち、流路構造体は、ノズルNに供給される液体が流通する内部流路を含む構造体として包括的に表現される。
(11)前述の各形態では、逆止弁74が流路ユニット42に設置された構成を例示したが、逆止弁74が設置される位置は以上の例示に限定されない。例えば、液体噴射部44や分配流路36の内部に逆止弁74を設置することも可能である。また、移動機構26の搬送体262(キャリッジ)に逆止弁74を設置した構成や、液体噴射装置100の筐体に逆止弁74を設置した構成も採用され得る。